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特表2024-500840重炭酸アルカリ及び炭酸アルカリを生成するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】重炭酸アルカリ及び炭酸アルカリを生成するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C01D 7/07 20060101AFI20231227BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20231227BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20231227BHJP
   B01F 23/231 20220101ALI20231227BHJP
   B01F 23/232 20220101ALI20231227BHJP
   B01F 25/21 20220101ALI20231227BHJP
【FI】
C01D7/07
B01D53/62 ZAB
B01D53/14 210
B01D53/18 110
B01F23/2373
B01F23/231
B01F23/232
B01F25/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537542
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 IL2021051488
(87)【国際公開番号】W WO2022130380
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/125,553
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523227041
【氏名又は名称】アイロベーション テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーヤン、マラット
(72)【発明者】
【氏名】ストイン、ウリ
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G035
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC04
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA13
4D002CA06
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA12
4D002DA52
4D002EA13
4D002FA04
4D002FA05
4D002GA01
4D002GB05
4D002GB08
4D002GB20
4D002HA03
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA30
4D020BB03
4D020CB02
4D020CC07
4D020CC09
4D020DA03
4D020DB05
4D020DB07
4D020DB12
4G035AB07
4G035AC15
4G035AE13
(57)【要約】
本発明は、炭酸/重炭酸アルカリ塩を調製するための方法であって、水酸化アルカリ水溶液をガス・液体接触器に連続的に給送するステップと、流入CO含有ガス流を水酸化アルカリ水溶液の表面レベルの下方のガス・液体接触器内に浸漬されたスパージングデバイスに強制して通して、バブル及び/又はマイクロバブルを発生させるステップと、バブル及び/又はマイクロバブルが発生するスパージングデバイスのオリフィスの近くで過酸化水素を添加するステップであって、過酸化水素の供給が、炭酸アルカリの形成を減少させ、重炭酸アルカリの形成を増加させるように調整される、ステップと、ガス・液体接触器から流出物を連続的に排出し、そこから、重炭酸塩成分が大半を占める炭酸及び重炭酸アルカリ塩を回収するステップとを含む、方法に関する。ガス・液体接触器及び装置も本発明によって提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸/重炭酸アルカリ塩を調製するための方法であって、
水酸化アルカリ水溶液をガス・液体接触器に連続的に給送するステップと、
流入CO含有ガス流を前記水酸化アルカリ水溶液の表面レベルの下方の前記ガス・液体接触器内に浸漬されたスパージングデバイスに強制して通して、バブル及び/又はマイクロバブルを発生させるステップと、
前記バブル及び/又はマイクロバブルが発生する前記スパージングデバイスのオリフィスの近くで過酸化水素を添加するステップであって、過酸化水素の供給が、炭酸アルカリの形成を減少させ、重炭酸アルカリの形成を増加させるように調整される、ステップと、
前記ガス・液体接触器から流出物を連続的に排出し、そこから、重炭酸塩成分が大半を占める炭酸及び重炭酸アルカリ塩を回収するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記流入CO含有ガス流が、前記水酸化アルカリ水溶液の前記表面レベルの下方の前記ガス・液体接触器内に浸漬されたトンネル形状のスパージングユニットのアレイを通って流れ、スパージングユニットが、少なくとも部分的に曲面によって区切られている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スパージングユニットの前記オリフィスがその曲面上に分配されており、前記オリフィスの直径が50~700μmである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス・液体接触器へのHの前記添加が、前記オリフィスの近くに複数の個別のH流を注入することによって行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水酸化アルカリ溶液の濃度が10重量%~飽和までであり、前記水酸化アルカリ溶液の流速が10~120m/時間であり、過酸化水素溶液の濃度が4重量%~50重量%であり、前記H溶液の流速が1~20m/時間の範囲内で調整される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
回収される生成物中の前記重炭酸アルカリのモル濃度が90%以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水性Hの前記流速が、生成物混合物中の重炭酸塩/炭酸塩の分配の分析に応じて増加又は減少する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記CO含有ガス流が、発電所、焼却ユニット、又は蒸気メタン改質(SMR)プラントの煙突からのものである、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
底部表面、頂部セクション、及び側面によって区切られた長手方向の水平型ハウジングと、
前記ハウジングの内部に互いに水平且つ平行に配置されたトンネル形状のスパージングユニット(28)、(28)、...、(28)のアレイであって、スパージングユニットが上向きの曲面によって区切られており、オリフィスが前記曲面上に分配されている、アレイと、
前記ハウジングの内部に互いに水平且つ平行に配置された管のアレイ(26、26、...、26;m≧n)であって、各管に、その長さに沿って並べられたノズル先端が設けられており、少なくとも1つの管が、一対の隣接したトンネル形状のスパージングユニット間の空間に配設されている、アレイと、
個別のガス流を前記トンネル形状のスパージングユニットに導入するのに好適である、トンネル形状のスパージングユニットの前記アレイに結合されたガス入口マニホールドと、
ガス排出ラインに接続された、前記頂部セクションに置かれているガス出口開口部と、
1つ以上の液体入口開口部を介して前記ハウジング内に水性水酸化アルカリの液体流を提供するように構成された第1の液体給送ラインと、
管の前記アレイを横切って水性過酸化水素の液体流を提供するように構成された第2の液体供給ラインと、
反応生成物を前記ガス・液体接触器から除去するために流出物排出ラインが接続されている排出開口部と
を備える、ガス・液体接触器。
【請求項10】
前記ガス入口マニホールドが、前記ガス・液体接触器の第1の側面に外側で設置されており、前記水性水酸化アルカリ入口開口部が、前記ハウジングの前記第1の側面に置かれており、前記第2の液体給送ラインが、前記第1の側面の反対側の第2の側面に設置されている、請求項9に記載のガス・液体接触器。
【請求項11】
前記第2の給送ラインが、前記ガス・液体接触器に入って前記ガス/液体接触器内に配設されている管の前記アレイを横切って流れる複数の個別流へと主要なH給送溶液を分岐させるマニホールドを備える、請求項10に記載のガス・液体接触器。
【請求項12】
前記オリフィスが、前記トンネル形状のスパージングユニットの前記曲面の長さに沿って、横弧状に並べられたオリフィスからなるパターンを作製して、密に分配されており、隣接した弧が、0.5~10mm空けて離間されており、各弧が複数のオリフィスからなり、隣接したオリフィス間の中心間距離が0.5mm~5mmである、請求項1から11までのいずれか一項に記載のガス・液体接触器。
【請求項13】
前記オリフィスの直径が50~700μmである、請求項9から12までのいずれか一項に記載のガス・液体接触器。
【請求項14】
CO排出プラント、例えば、発電所、焼却プラント、及びSMRプラントの近傍に配置すべき、重炭酸/炭酸アルカリを生成するための装置であって、
請求項9から13までのいずれか一項に定義されているようなガス・液体接触器、
空気/CO流を前記ガス・液体接触器に強制して通す第1のブロワー、
液体及びスラリーを送達するポンプのセット、
以下のもの:
前記ガス/液体接触器の前記第1の液体給送ラインに接続された、水酸化アルカリ水溶液を収容する1つ以上のタンク、
前記ガス/液体接触器の前記第2の液体給送ラインに接続された、過酸化水素を収容する1つ以上のタンク、
熱伝達のために周囲空気を使用する第1の熱交換器であって、前記熱交換器に、前記プラントの煙突からの空気/CO流を受け取るための給送ラインが設けられており、前記熱交換器の出口が、空気/CO及び水流をそれぞれ取り出すためのガス排出ライン及び液体排出ラインを備えた第1のガス・液体分離器に接続されており、前記ガス排出ラインが、前記ガス・液体接触器の前記ガス入口マニホールドに接続されている、第1の熱交換器
を含む上流処理ユニット、
以下のもの:
前記ガス・液体接触器の流出物排出ラインによって給送されるガス・液体分離器であって、前記ガス・液体分離器のガス排出ラインが、任意選択的に、前記ガス・液体接触器の前記ガス排出ラインに合流しており、前記ガス・液体分離器の液体排出ラインが2つのラインに分岐しており、第1のラインが、前記ガス・液体接触器に接続されたリサイクルラインであり、前記リサイクルラインが、熱伝達に冷水を使用する第2の熱交換器と、蒸発ユニットの給送ラインである第2のラインとを備え、前記蒸発ユニットの前記ガス排出ラインに凝縮器が設けられており、前記蒸発ユニットの前記液体排出ラインが、分離された固体を乾燥機に供給するコンベアを備えた液体・固体分離ユニットの前記給送ラインである、ガス・液体分離器
を含む下流処理ユニット
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
重炭酸及び炭酸アルカリは、水酸化アルカリの水溶液に二酸化炭素を通すことによって調製することができる。有用な二酸化炭素源は、COを有する工業ガス流中に見られる。例えば、化石火力発電所によって排出される、又は他の工業ガス流中に存在する二酸化炭素は、水酸化アルカリの水溶液でガスをスクラビングすることによって捕捉することができる。これは、大気へのCO排出量の削減及び商業的に有用な化学試薬へのその場での直接的な変換という2重の目的を果たすことができるだろう。例えば、重炭酸ナトリウム(NaHCO)は、ベーキングパウダー(「重曹」としても知られている)、並びに繊維、紙及びセラミック工業で使用されている。
【0002】
水酸化アルカリ溶液による煙道ガスからのCO捕捉及び炭酸塩/重炭酸塩生成物の回収という目標を達成するために、様々なスクラバー設計が提案されてきた。従来的なアプローチは向流充填カラムに基づいており、すなわち、Salmonら[Applied Science 2018,8,996]によって示されているように、アルカリ溶液は、充填材料で満たしたカラムの頂部から噴霧されて、上方へと流れるCOを有する流入ガスと混合され、ここでは、充填カラムの性能が繊維膜接触器によって達成される性能と比較された。他の設計は、国際公開第2011/129707号及び米国特許第7,727,374号で見ることができ、後者のものは、具体的には、CO/NaOHバブルカラム設計について言及している。Shimら[Environmental Engineering Research,2016;21(3):297~303]は、バブルを生成するために使用されるスパージャーのマイクロサイズの穴が、溶液から沈殿した炭酸ナトリウムの結晶によって詰まったために、バブル反応器内での重炭酸ナトリウムの生成が困難に直面したと報告した。
【0003】
共同譲渡された国際公開第2018/002710号では、バブル又はマイクロバブルの作製に基づいたガス/液体接触パターンを使用して、水性水酸化アルカリ/過酸化水素(MOH/H試薬、M=アルカリ金属、例えば、Na又はK)を用いて、対象のガス、主に、火炎の場合に生じる一酸化炭素を空気から除去することが提案された。このアプローチの背後にある理論的根拠は、強アルカリ溶液中での過酸化水素の分解が、特定の化学量論に、すなわち、適切なpHで2:3のモル比(MOH:H)に従うように制御された場合に、スーパーオキシドラジカルアニオン(O-・)の形成を理由として非常に強い酸化特性をもたらし得ることである。スーパーオキシドの発生は、一連の出版物(国際公開第2013/093903号;StoinらChemPhysChem,2013,14,4158;及び国際公開第2015/170317号)でこれまでに報告されており、ここでは、水性MOH/H試薬が、煙道ガスからの二酸化炭素の吸収などの異なる汚染物質の処理に有用であることが示された。
【0004】
現在、本発明者らは、アルカリ溶液によるCOの捕捉を通じた炭酸/重炭酸ナトリウムの生成を調べており、ここでは、ガスは、マイクロバブルの形態で溶液と接触させられる。考慮する必要のある1つの要因は、水への2種の塩の溶解度の違いであり、炭酸ナトリウムは、重炭酸ナトリウムよりも水にかなり溶解しにくい(対応するカリウム塩にも同じことが当てはまる)。溶解度におけるこの違いのために、生成物中で炭酸ナトリウムが大半であると、マイクロバブルを発生させるスパージャーの穴が詰まり、その後、炭酸ナトリウムの早期結晶化が起こることを原因として、方法の効率が損なわれ得る。同様の問題が、Shimら(上記を参照)によって彼らの実験セットアップで報告された;著者らは、充填カラムを組み込んで異なる設計に切り替えることを推奨していた。
【0005】
この発明を裏付けるために行われた実験研究は、マイクロバブル/液体接触パターンでCOを捕捉するように操作して過酸化水素をアルカリ溶液に制御的に添加することが、塩生成物へのCOの変換を改善することを示す。好適な量の添加されたHの存在下では、おそらくは重炭酸ナトリウムの形成に都合良く化学反応をシフトさせることによって炭酸ナトリウムの結晶化を抑制して、COの高い変換率が長期間にわたって測定された。
【0006】
以下に報告される実験結果によって示されるように、過酸化水素の不在下では、アルカリ溶液による許容可能なCO変換率(例えば、80~90%)が生じるのが非常に遅く、経時的に維持することが困難である。他方で、国際公開第2013/093903号で推奨されている化学量論、すなわち、2:3のモル比(MOH:H)を促進するために多量のHを添加すると、非常に迅速に高いCO変換が達成されることが示されたが、アルカリ溶液によるCOの化学吸収を長期間にわたって維持することはできなかった。炭酸ナトリウムが溶液中でのその溶解度限界を超えていることを明らかに原因として、アルカリ溶液によるCO捕捉が突然止まり、結晶化と、マイクロバブルを発生させる役割を果たしていた膜における細孔の詰まりとが生じた。すなわち、等式(1):
2NaOH+3H+CO→NaCO+4HO+1.5O (1)
によって表される化学反応によって提示されているように、マイクロバブル/液体に基づく接触パターンが使用される場合、2:3のモル比(MOH:H)によって、あまり好ましくない生成物であるNaCOの形成が促進される。
【0007】
しかしながら、本発明者らは、バブルを作製するスパージングデバイスのオリフィスのすぐ近くでHをアルカリ溶液に適度に供給すると、重炭酸塩の優先的な形成を伴って、長い試験期間にわたって持続する非常に良好なCO変換率が生じたことを見出した。理論に縛られることを望むものではないが、Hをアルカリ溶液にゆっくりと添加すると、COの変換に関与するのに利用可能な準化学量論量のHが存在すると考えられる[「準化学量論量」とは、等式(1)の2:3のモル比(MOH:H)よりも小さいことを意味する]。これらの条件下では、スパージングデバイスのオリフィスの近傍で優先的に起こる反応は、炭酸塩形成反応ではなく、重炭酸塩形成反応、例えば、
NaOH+nH+CO→NaHCO+nHO+1/2nO(0.1≦n≦0.4) (2)
であり、それによって、炭酸塩結晶によるスパージングデバイスのオリフィスの閉塞が最小限に抑えられるか、又は遅延させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2011/129707号
【特許文献2】米国特許第7,727,374号
【特許文献3】国際公開第2018/002710号
【特許文献4】国際公開第2013/093903号
【特許文献5】国際公開第2015/170317号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Salmonら[Applied Science 2018,8,996]
【非特許文献2】Shimら[Environmental Engineering Research,2016;21(3):297~303]
【非特許文献3】StoinらChemPhysChem,2013,14,4158
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明は主に、炭酸及び/又は重炭酸アルカリ塩を調製するための方法であって、
水酸化アルカリをガス・液体接触器に連続的に給送するステップと、
流入CO含有ガス流を水酸化アルカリ水溶液の表面レベルの下方のガス・液体接触器内に浸漬されたスパージングデバイスに強制して通して、バブル及び/又はマイクロバブルを発生させるステップと、
バブル/マイクロバブルが発生するスパージングデバイスのオリフィスの近くで過酸化水素を添加するステップであって、過酸化水素の供給が、炭酸アルカリの形成を減少させ、重炭酸アルカリの形成を増加させるように調整される、ステップと、
ガス・液体接触器から流出物を連続的に排出し、そこから、重炭酸塩成分が大半を占める炭酸/重炭酸アルカリ塩を回収するステップと
を含む、方法を対象とする。
【0011】
工業施設から引き込まれるCO含有ガス、例えば、化石火力発電所によって排出される煙道ガスは、炭酸塩/重炭酸塩の生成における二酸化炭素源としての役割を果たし得る。流入ガス流におけるCOレベルは、380ppm以上であり、例えば、10,000~200,000ppmの範囲で変動する(1~20%、例えば1~18%、例えば1~15%、例えば7~14%のCO)。例えば、煙道ガスはまず、(例えば、濾過又は静電沈殿による)微粒子除去、脱窒ユニット(窒素酸化物の変換)、及び(SOの選択的除去のための)湿式スクラビングからなる一連の処理を通って、本質的に他の酸性成分なしのCO含有ガスを発生させることができる(この段階でのガス温度は、一般に100~200℃である)。微粒子なしの煙道ガスを使用することも可能であるが、この場合、二酸化炭素との競合を最小限に抑えるために、ガスのSO含有量は、10000ppm未満であるべきである。
【0012】
アルカリ溶液によってCOを化学吸収して重炭酸塩/炭酸塩を生成することは、ガス・液体接触器として設計された反応器内で行われる(以下、「反応器」及び「ガス・液体接触器」という用語は、互換的に使用される)。これがガス・液体接触器に入る前に、NO及びSOなしの煙道ガスは、(ガス流を約40~50℃に冷却するために)熱交換器を通る。煙道ガスによって放出される熱は、下流の操作、すなわち、下記のような反応混合物からの重炭酸塩/炭酸塩の分離の役割を果たすように案内され得る新鮮な空気流を使用して回収することができる。煙道ガス中に存在する水蒸気は凝縮にかけられ、水滴は、ガス・液体分離器、例えば水平又は垂直ノックアウトドラム内で、2相流体流から除去され得る。ここで、ガス流はガス・液体接触器に導かれ、そこで、塩形成反応が起こる。
【0013】
MOH水溶液(例えば、NaOH又はKOH)に関して、ガス/液体接触器に給送される溶液の濃度は、10重量%超且つ飽和(48%)まで、例えば、25~35%の範囲、通常は約30重量%である。水溶液は、商業的な飽和溶液を水で希釈すること、又は固体の水酸化アルカリ(顆粒、ペレット、又はフレークの形態で市場において入手可能)を水に溶解させることのいずれかによって、その場で調製することができる。反応器へのMOH溶液の連続的な給送を可能にするために、1つ(又はより多く)のMOH生成ユニットが提供され得る。各MOH生成ユニットは、固体のMOH及び水(すなわち、新鮮な水及び下流の操作から回収された水)が混合される混合タンクと、MOH溶液をガス・液体接触器に送達するポンプとからなる。好適なポンプは、ステンレス鋼製であり、COガスを排出するプラントの需要を満たすために、例えば、10~120m/時間の範囲又はその他の範囲の能力で動作する。そのようなセットアップは、交互に動作するMOH生成ユニットと供給ユニットとからなり、一方のユニットが給送流としての予め調製されたMOH溶液をガス・液体接触器に供給する際(MOH装填段階)に稼働することを可能にし、もう一方のユニットがMOH溶液を生成及び保管すること(MOH生成段階)を可能にし、本発明の重炭酸塩/炭酸塩調製方法は、1つのユニットから別のユニットに切り替わる。水へのMOHの溶解反応は発熱性であるため、混合タンクから取り出されたMOH溶液が冷却器を通り、それによって、溶解反応の最中に発生した熱が、MOH溶液から放出され、冷水流によって吸収され、冷却されたMOH流が混合タンクに戻るように、再循環ラインが備えられた各MOH生成ユニットを有することが有益である。
【0014】
過酸化水素に関して、これは、例えば、市販の35重量%のグレードを使用することによって、又はより高い強度のHグレード(50~70重量%)を希釈することによって、例えば4~50重量%、例えば10~50重量%、例えば30~40重量%の濃度で、水性形態で反応器に供給される。
【0015】
ここでガス・液体接触器の設計を見ると、流入CO含有流をマイクロバブルに変換するためのガス・液体接触器に取り付けられたスパージングデバイスは、異なる幾何学的形状、例えば、平らな幾何学的形状(多孔板、水平に位置している膜)及び管状構成で構成され得ることに留意されたい。
【0016】
しかしながら、1つの好ましい方法設計は、流入CO含有ガス流を水酸化アルカリ水溶液の表面レベルの下方のガス・液体接触器内に浸漬されたトンネル形状のスパージングユニットのアレイに強制して通すことに基づいており、スパージングユニットは、少なくとも部分的に曲面によって区切られている。例えば、本発明の方法で動作するスパージングユニットは、半円筒の形状であり得る。スパージングユニットのオリフィスは、以下で説明されているように、その曲面上に分配されている。スパージングデバイスの重要な特性は、空気/COガス混合物にマイクロバブルを作製させるオリフィスのサイズが、700μm未満、例えば500μm未満、例えば50~300μmの範囲の直径、例えば100~200μmであることである。ガス・液体接触器へのHの添加は、好ましくは、トンネル形状のスパージングユニットの曲面上に設けられたオリフィスの近くに複数の個別のH流を注入することによって行われる。これは、下記のように、スパージングユニットに隣接して平行に位置しているパイプを用いて達成され得る。
【0017】
本発明の方法による重炭酸塩/炭酸塩の調製における使用に好適な、先に記載されている特徴を有する例示的なガス・液体接触器を、図1~5を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1及び図2は、底部表面、頂部セクション(16)、及び4つの側面(20a、20b、20c、及び(20d;図示せず))によって区切られた、略平行六面体の形状の水平型ガス・液体接触器(10)を示す。一般的な発電所によって排出される煙道ガスからCOを効果的に吸収することができるように、ガス・液体接触器(10)の長さ、幅、及び高さを、100~600cm、100~250cm、及び30~100cmの範囲でそれぞれ調整する。
【0019】
例えば、1000~7000m/時間のガス流を発生させるように動作するブロワー/ファン(図示せず)は、空気/CO流を反応器内に引き込む。ガスマニホールド(14、14、14、...14;例えば、1≦n≦8)は、ガス・液体接触器(10)の側面(20a)に設置されており、直径30~100cmの導管(14)を介して流れる流入ガス流を、パイプ(14、14、...14)を介して反応器(10)に入る副流に分割する。精製された(COなしの)空気流は、反応器の頂部セクション(16)において中央に位置しているガス出口開口部(18)を通して放出される(頂部セクション(16)について例示されている設計は、傾斜した台形板16a及び16bと傾斜した三角形板(16c、16d)とから構成されており、傾斜した屋根の設計を作製しているが、必須ではない)。
【0020】
水酸化アルカリ水溶液は、ガス・液体接触器の側面のうちの1つ(例えば、流入空気/COガス流が入って通過する反応器の同じ側(20a))を通ってパイプ(24)によってガス・液体接触器(10)に給送される。パイプ(24)は、水酸化アルカリ水溶液が、図5の対応する内壁に示されている等しく離間された開口部を介して反応器に流れるように、側面(20a)に平行に設置されている。反応器内のアルカリ溶液のレベルは、図3及び5の反応器の内壁に沿って破線(32)でマーキングされている。最大レベル超の過剰の水酸化アルカリ溶液は、制御パイプ12を介して反応器から除去される。水酸化アルカリ溶液のレベル32は、水酸化アルカリ水溶液による(マイクロバブルの形態での)ガスの十分なスクラビングを確実にし、それによって、煙道ガスから二酸化炭素を除去して塩を生成するように設計されている。
【0021】
水性過酸化水素は、反応器に入ってガス・液体接触器内に配設されているパイプのアレイを横切って流れる複数の個別流へと主要なH給送溶液を分岐させるマニホールド(26)を用いて、反対側の側面(20c)から反応器(10)に給送される(図3~5に示されている)。
【0022】
数字(21)は、排出パイプを示し、これを通して、反応混合物が連続的に排出される(及び図6~8に示されているように、結晶性重炭酸塩/炭酸塩を回収するために処理される)。
【0023】
ここでは、図3~5を参照して、スパージングユニット及びHパイプが内部に設置されている独自のアレイを有するガス/液体接触器の内部を詳細に説明する。
【0024】
トンネル形状のスパージングユニット(28)、(28)、...、(28)は、破線(32)でマーキングされたアルカリ溶液の表面レベルの下方において、ガス/液体接触器(10)の底部で互いに水平且つ平行に配置されている。隣接したスパージングユニット間の距離は、5~50mm、例えば10~30mmである。例えば、トンネル形状のスパージングユニットの断面は、10mm~300mmの範囲の半径を有する円又は円の一部、すなわち、弧及びその弦によって区切られた円の一部に対応し、弦上にある対応する中心角αは、好ましくは、90°≦α≦360°の範囲である。例えば、トンネル形状のスパージングユニットは、半円筒の形状を有する(α=180°)。別の実例では、トンネル形状のスパージングユニットは、管状の形状を有する(全円、α=360°)。
【0025】
図3~5、例えば図4に示されている特定の設計では、トンネル形状のスパージングユニットは、長手方向に延在する平らな基部(34)(例えば、ガス/液体接触器の床に取り付けられているか、又はその一部である、長方形の形状の基部)によって区切られており、基部(34)の反対側の長手方向側面には曲面(35)が合流しており、マニホールド(14)のパイプ(14)からガス流が導かれる内部空間を画定している。図4の特定の設計では、トンネル形状のスパージングユニットを画定する曲面(35)は、半円筒の側部表面である。
【0026】
オリフィス(29)は、トンネル形状のスパージングユニットの曲面の長さに沿って、好ましくは、曲面の長さに沿って横列に並べられたオリフィスからなるパターンを作製するなどの均一な方法で、又はより正確には弧(36)(表面の湾曲に基づく)で、密に分配されている。隣接した弧は0.5~10mm空けて離間されている。各弧は、複数のオリフィスからなり、隣接したオリフィス間の中心間距離は、0.5mm~5mmである。先で指摘したように、水溶液内での所望のサイズのマイクロバブルの作製を確実にするために、オリフィスの直径は50~700μmである。
【0027】
半円筒形又は円筒形のスパージングユニットは、任意選択的に、それらの軸方向の軸に沿って回転可能であり、オリフィスを通して発生するバブルに作用するせん断力を作製して、それらのサイズを縮小し、塩の結晶をオリフィスの近傍からバルク溶液に吐き出す。
【0028】
マニホールド(26)は、複数のH管(26、26、...、26;m≧n)を含む。少なくとも1つの過酸化物管(26)が、2つの隣接したスパージングユニット間の空間に、すなわち、スパージングユニットに平行に配設されている。H管及びスパージングユニットは、ほぼ長さが等しいが、H管は、直径がより小さく、例えば、H管は、典型的には3mm~30mmの直径を有する。ノズル(23)は、0.1mm~2mmの直径を有するH管の長さに沿って配設されており、ノズル先端は、2つの隣接したスパージングユニットのうちの1つに向けられている。ノズルは、好ましくは、H管に沿って等しく離間されており、隣接したノズル間の距離は、例えば、1cm~10cmである。表面(35)の十分なフラッシングを確実にするために、各ノズルは、水平面に対して1度~90度の小さな傾斜角で加圧流を噴射する。各スパージングユニット(28)に向けられた連続的な加圧H流を供給すると、経時的にスパージングユニットのオリフィス(29)を詰まらせる炭酸ナトリウム結晶の蓄積が最小限に抑えられることが見出された。スパージングユニット(28)及びH管(26)はステンレス鋼製である。
【0029】
本発明の別の態様は、
底部表面、頂部セクション、及び側面によって区切られた長手方向の水平型ハウジングと、
ハウジングの内部に互いに水平且つ平行に配置されたトンネル形状のスパージングユニット(28)、(28)、...、(28)のアレイであって、スパージングユニットが上向きの曲面によって区切られており、オリフィスが該曲面上に分配されている、アレイと、
ハウジングの内部に互いに水平且つ平行に配置された管のアレイ(26、26、...、26;m≧n)であって、各管に、その長さに沿って並べられたノズル先端が設けられており、少なくとも1つの管が、一対の隣接したトンネル形状のスパージングユニット間の空間に配設されている、アレイと、
例えばガス・液体接触器の第1の側面に外側で設置された、個別のガス流を該トンネル形状のスパージングユニットに導入するのに好適である、トンネル形状のスパージングユニットの該アレイに結合されたガス入口マニホールドと、
ガス排出ラインに接続された、頂部セクションに置かれているガス出口開口部と、
該ハウジングの側面のうちの少なくとも1つ(例えば、該第1の側面)などに置かれている1つ以上の液体入口開口部を介して該ハウジング内に液体流(例えば、水性水酸化アルカリの液体流)を提供するように構成された第1の液体給送ラインと、
該第1の側面の反対側の第2の側面などに設置された、管の該アレイを横切って液体流(例えば、水性過酸化水素の液体流)を提供するように構成された第2の液体給送ラインと、
反応生成物をガス・液体接触器から除去するために排出ラインが接続されている排出開口部と
を備える、ガス・液体接触器である。
【0030】
工業スケールでは、ガス・液体接触器に連続的に給送される水酸化アルカリ溶液の流速は、10~120m/時間である。先で指摘したように、ガス・液体接触器に供給されるHの流速は、炭酸塩の形成が最小限に抑えられ、重炭酸塩の形成が最大になるように、例えば、回収された生成物中の重炭酸塩のモル濃度が、70%以上、例えば、90%超、95%超、99%超であるように、例えば、1~20m/時間の範囲内に調整される。
【0031】
水性Hの給送速度は、工業スケールでのCO変換率である80%超~90%でガス・液体接触器から排出されるポンプ輸送可能なスラリーの安定した流れを達成するために、流入ガス流中のCOの負荷、水酸化アルカリ溶液の濃度及び純度、並びにスパージングユニット及びH管の特定の設計、反応及び外部の温度に基づいて、トライアルアンドエラーによって決定され得る。この発明を裏付けるために研究室で行われた実験研究は、延長された塩形成反応を達成するための水性Hの適切な給送速度が、遅すぎることも速すぎることもない高いCO変換に達するものであることを提示している。水性Hの流速はまた、生成物混合物中の重炭酸塩/炭酸塩の分配の分析に応じて増加又は減少し得る。
【0032】
反応器から連続的に排出される流出物は、水溶液であるか、又はよりあり得るのは、ポンプ輸送可能なスラリーである。流出物からの塩の単離は、以下の3つの主要なステップからなる:
1) 流出物をガス・液体分離器に給送してその中に溶解しているガスを分離し、溶液/スラリーをガス・液体分離器の底部から取り出し、これを冷却した後に、溶液/スラリーの第1の部分をガス・液体接触器に再循環させるステップ、
2) 溶液/スラリーの第2の部分を、例えば部分蒸発によって濃縮するステップ、及び
3) 固体塩を水相から分離して乾燥させるステップ。
【0033】
図6は、第1のステップを例示している。反応器(10)からの流出物流は第1のガス・液体分離器(61)に流れ、そこで、流出物中に溶解しているガスが除去されて、ブロワー(63B-03)の作用によって、反応器(10)から放出されている主要な精製された(COなしの)ガス流(62)に合流する。第1のガス・液体分離器の底部から出る溶液/スラリー流(64)は、ポンプ輸送され(65P06、例えば、容量75m/h、ヘッドは水20m)、2つの流れに分割され、一方の流れは、リサイクルライン(66)を介して再循環させられて反応器(10)に戻され、別の流れ(67)は、塩を回収するために必要な次の分離ステップに進む。リサイクルライン(66)には、反応器(10)からの熱除去を促進するために、スパイラル熱交換器の形態などの冷却器(68C-04)が設けられている。反応器(10)内で起こる塩形成反応は発熱性である;この反応によって放出される熱は、冷却器(68)内で反応器(10)の流出物から回収され、それによって、反応器(10)内の安定した温度が保たれる。
【0034】
図7は、第2のステップ、すなわち、溶液/スラリーの濃縮を例示している。流れ(67)は、例えばフラッシュドラム(71F-03)内で、部分蒸発にかけられ、そのため、水蒸気は、10~100ミリバール(P-09)の真空下で除去されて、可溶化塩の沈殿を強制する。水蒸気は、凝縮(C-05、例えば、フラッシュ凝縮器)にかけられて、反応器(10)に給送される水酸化アルカリ溶液の調製などのための方法に供給可能な水流を生成する。フラッシュドラム(71)の底部から取り出されたポンプ輸送可能なスラリー(ポンプ72P-07)は、撹拌タンク(73T-05)に流れ、そこから、ポンプ(74P-08)によって固体/液体分離ユニットに送達される。
【0035】
図8は、第3のステップ、すなわち、重炭酸塩/炭酸塩の単離を例示している。タンク(73)から送達された流れからの固体の分離は、例えば、1つ以上の遠心分離機などの、液体/固体分離のための連続的な設備を用いて、例えば、連続遠心分離機を用いるか、又は第1のバッチ式遠心分離機がその内部に導入された液体-固体混合物を分離し、その一方で、第2のバッチ式遠心分離機が水性上澄み及び生成された湿潤ケーキを送達するように交互に動作する2つ以上の切り替え可能なバッチ式遠心分離機(75a、75b)を用いて達成され、水性上澄み(76)は、先に述べたように、再循環させて、例えば水酸化アルカリを溶解させるための水を供給するために、方法の以前のステップにおいて使用することができる。湿潤した塩粒子は、例えばコンベアスクリュー(77)を介して乾燥機に移送されて、例えば熱乾燥によって残留水分が除去される。乾燥機の1つ好適なタイプは、方法のどこかからの回収によって消費される熱、すなわち、方法のまず始めに煙道ガスの流入流から熱を吸収した空気流が使用され得るため、流動層乾燥機(78)である。炭酸/重炭酸アルカリ粒子は、好ましくは、50℃以下の温度で乾燥させる。他の一般的なタイプの乾燥機も利用することができる。S-04は、バグフィルターであり、固体をさらに分離し、排気ファン(B-02)を使用して塵なしの空気を放出する。
【0036】
本発明の別の態様は、CO排出プラント(例えば、発電所、焼却プラント、及びSMRプラント)の近傍に配置すべき、重炭酸/炭酸アルカリを生成するための装置であって、
上記のようなガス・液体接触器、
空気/CO流を該ガス・液体接触器に強制して通す第1のブロワー、
液体及びスラリーを送達するポンプのセット、
以下のもの:
該ガス・液体接触器の第1の液体給送ラインに接続された、水酸化アルカリ水溶液を収容する1つ以上のタンク、
該ガス・液体接触器の第2の液体給送ラインに接続された、過酸化水素を収容する1つ以上のタンク、
熱伝達のために第2のブロワーによって推進される周囲空気を使用する第1の熱交換器であって、該熱交換器に、該プラントの大煙突からの空気/CO流を受け取るための給送ラインが設けられており、該熱交換器の出口が、空気/CO及び水流をそれぞれ取り出すためのガス排出ライン及び液体排出ラインを備えた第1のガス・液体分離器に接続されており、該ガス排出ラインが、該ガス・液体接触器のガス入口マニホールドに接続されている、第1の熱交換器
を含む上流処理ユニット、
以下のもの:
該ガス・液体接触器の流出物排出ラインによって給送されるガス・液体分離器であって、該ガス・液体分離器のガス排出ラインが、任意選択的に、該ガス・液体接触器のガス排出ラインに合流しており、該ガス・液体分離器の液体排出ラインが2つのラインに分岐しており、第1のラインが、該ガス・液体接触器に接続されたリサイクルラインであり、該リサイクルラインが、熱伝達に冷水を使用する第2の熱交換器と、蒸発ユニットの給送ラインである第2のラインとを備え、該蒸発ユニットのガス排出ラインに凝縮器が設けられており、該蒸発ユニットの液体排出ラインが、分離された固体を乾燥機に供給するコンベアを備えた液体・固体分離ユニットの給送ラインである、ガス・液体分離器
を含む下流処理ユニット
を備える、装置である。
【0037】
本発明の方法は、給送原料として異なるCO含有ガスを利用する。例えば、これは、蒸気メタン改質(SMR)によって生成されたCOを炭酸塩/重炭酸塩に変換するために使用され得る。SMRは、副生成物として水素及びCOを生成する;そのため、CO捕捉/除去技術がSMRに統合されている。本発明は、この目的のために、すなわち、CO含有ガスを蒸気メタン改質プラントから受け取って、CO濃度が比較的高いこと(約17%)及びSMRによって排出される流れの中に不純物が存在しないことの利益を受けるのに良好に適している。そのような給送原料を用いて、高純度グレードの炭酸塩/重炭酸塩を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】底部表面、頂部セクション、及び4つの側面によって区切られた、略平行六面体の形状のガス・液体接触器の斜視図を示す。
図2】底部表面、頂部セクション、及び4つの側面によって区切られた、略平行六面体の形状のガス・液体接触器の斜視図を示す。
図3】スパージングユニットが設置されており、且つ管のアレイがガス・液体接触器の内部に展開されている、ガス・液体接触器の内部の斜視図を示す。
図4】スパージングユニットが設置されており、且つ管のアレイがガス・液体接触器の内部に展開されている、ガス・液体接触器の内部の斜視図を示す。
図5】スパージングユニットが設置されており、且つ管のアレイがガス・液体接触器の内部に展開されている、ガス・液体接触器の内部の斜視図を示す。
図6】ガス・液体接触器の下流のガス・液体分離ユニットを概略的に示す。
図7】真空フラッシュ分離ユニットを概略的に示す。
図8】遠心分離機及び乾燥ユニットを概略的に示す。
図9】実例1~4で使用された実験セットアップを示す。
図10】実例1~4で報告された実験で測定されたCOレベル対時間のプロットである。
【実施例
【0039】
実例1(比較)、2~3(本発明)、及び4(比較)
水酸化ナトリウム溶液を通してバブリングしたCO/空気流からのCOの化学吸収に対するHの添加の効果を調べるために、一連の実験を行った。
【0040】
実験のセットアップは図9に示されている。反応器(100)は、管状の形状である(内径:9cm;高さ:40cm)。厚さ5mmのステンレス鋼膜(101)を反応器の底部から約2.5cmに反応器内で水平に取り付ける。膜の細孔径は147μmであった;隣接した細孔間の中心間距離は約50μmである。
【0041】
各実験において、反応器内の液体レベルが7cmになるように、すなわち、膜(101)が液体の表面レベルの約4.5cm下方に浸漬されるように、反応器に250mlの水性NaOH(30重量%の溶液)を装填した。
【0042】
CO源は、ガスシリンダー内に保持された市販の100%のCOであった。ポンプによってCO及び空気をガスミキサー(102)に流して混合させて、1000ppmのCOを有する空気の混合流を作製し、これをポンプ(103)によって13L/分の流速で反応器(101)に導いた(ガス入口回転計(104))。
【0043】
過酸化水素溶液(10%の溶液)を、蠕動ポンプ「B」を使用して、異なる流速(1ml/h、2ml/h、及び10ml/h;まったく添加のない参照実験)で反応器(100)に連続的に添加する。H流を、膜(101)の近くで、反応器内の水酸化ナトリウム溶液の表面レベルの下方に給送する。
【0044】
流入(1000ppmのCOを有する空気)及び流出(精製された)流(それぞれ106及び107)に接続された一対のCO検出器(105入口及び105出口-BGA-EDG-MA、Emproco Ltd.,Israel)を使用してCOの濃度をそれぞれ測定した。
【0045】
操作の最中に、流入空気/CO混合ガス流(106)は、反応器の底部を通って反応器(100)に入り、膜(101)を流れるように強制されて、バブルを作製した。COは、水酸化ナトリウム媒体によって化学的に吸収された。流入及び流出ガス流中のCOレベルは、試験期間にわたって継続的に記録した。
【0046】
これらの結果は図10にグラフで表されている。実験の時間全体にわたって測定された流入空気/COガス流中の一定のCOレベルが示されている(1000ppm=0.1%)。各実験についてのCO濃度対時間のプロット(流出流において測定)も示されている。実験の終了は、入口流及び出口流において測定された等しいCOレベル(すなわち、1000ppm)に達することによって示される。
【0047】
の添加がないと、COの化学吸収が36時間の期間にわたって少なくともある程度起こることが分かる。しかしながら、試験期間の最中に、測定された変換率は満足できるものではなかった。Hの供給によって、COの変換率が著しく改善された。Hを高い流速(10ml/h)で添加すると、非常に効率的な吸収(90%)が急速に達成されるが、長期間(約27~28時間まで)にわたって維持することはできない。スクラビングシステムへのHの適度な添加速度(1ml/h及び2ml/h)によって、延長された期間(それぞれ約40時間及び53時間)にわたって水酸化ナトリウム媒体によるCOの高い変換率が可能になる。実験の条件及び結果も以下に表形式で表されている。
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】