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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】成長因子に結合するタンパク質基板
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/78 20060101AFI20231227BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20231227BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20231227BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20231227BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
C07K14/78 ZNA
C07K14/435
C12N5/071
C12N5/09
C12N15/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537578
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 KR2021019159
(87)【国際公開番号】W WO2022131809
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,245
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523227535
【氏名又は名称】ティーエムイー セラピューティクス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ サンゼ
(72)【発明者】
【氏名】ホン ボンジン
(72)【発明者】
【氏名】パク ミンチョル
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045CA50
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
成長因子受容体及びインテグリン全てに同時に又は選択的に結合するかこれを活性化させることができるインテグリン結合モチーフ及び成長因子(GF)結合ペプチドモチーフを含むタンパク質基板が提供される。前記基板のタンパク質は、イガイ接着タンパク質の形態であってよく、ここで、インテグリン結合ペプチドモチーフから由来される細胞外基質(ECM)タンパク質及びGF結合ペプチドモチーフが前記イガイ接着タンパク質内に組換え的に統合される。また、生物工程、傷治癒、組織工学、及び治療適用分野において必須的な工程である細胞付着、移動、又は増殖を含む細胞の挙動を調節するためのタンパク質基板の用途が提供される。他の具現例において、本発明は、プロテアーゼ消化又は細胞内への内在化(又は細胞摂取)から成長因子を安定化及び保護して成長因子の継続的かつ持続的な機能を維持するための方法及び組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテグリン結合モチーフ及び成長因子に結合するかこれを隔離することができるヘパリン結合モチーフに遺伝的に機能化された組換え接着タンパク質を含む、タンパク質基板。
【請求項2】
前記ヘパリン結合モチーフは、コラーゲン、ビトロネクチン、及び骨シアロタンパク質のフィブロネクチンドメインIII、ラミニン球状ドメイン、及びヘパリン結合ドメインよりなる群から由来される、請求項1に記載のタンパク質基板。
【請求項3】
フィブロネクチンドメインIIIから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、KYILRWRPKNS(配列番号7)、YRVRVTPKEKTGPMKE(配列番号8)、SPPRRARVT(配列番号9)、ATETTITIS(配列番号10)、VSPPRRARVTDATETTITISWRTKTETITGFG(配列番号11)、ANGQTPIQRYIK(配列番号12)、KPDVRSYTITG(配列番号13)、PRARITGYIIKYEKPGSPPREVVPRPRPGV(配列番号14)、WQPPRARI(配列番号15)、WQPPRARITGYIIKYEKPG(配列番号16)、YEKPGSPPREVVPRPRP(配列番号17)、及びKNNQKSEPLIGRKKT(配列番号18)よりなる群から選択される、請求項2に記載のタンパク質基板。
【請求項4】
ラミニン球状ドメインから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、GLIYYVAHQNQM(配列番号19)、RKRLQVQLSIRT(配列番号20)、GLLFYMARINHA(配列番号21)、KNSFMALYLSKG(配列番号22)、VVRDITRRGKPG(配列番号23)、RAYFNGQSFIAS(配列番号24)、GEKSQFSIRLKT(配列番号25)、TLFLAHGRLVFMFNVGHKKL(配列番号26)、TLFLAHGRLVFM(配列番号27)、LVFMFNVGHKKL(配列番号28)、GAAWKIKGPIYL(配列番号29)、VIRDSNVVQLDV(配列番号30)、GKNTGDHFVLYM(配列番号31)、RLVSYSGVLFFLK(配列番号32)、GPLPSYLQFVGI(配列番号33)、RNRLHLSMLVRP(配列番号34)、LVLFLNHGHFVA(配列番号35)、AGQWHRVSVRWG(配列番号36)、KMPYVSLELEMR(配列番号37)、RYVVLPR(配列番号38)、VRWGMQQIQLVV(配列番号39)、TVFSVDQDNMLE(配列番号40)、APMSGRSPSLVLK(配列番号41)、VLVRVERATVFS(配列番号42)、PGRWHKVSVRWE(配列番号76)及びRNIAEIIKDI(配列番号43)よりなる群から選択される、請求項2に記載のタンパク質基板。
【請求項5】
前記コラーゲンのヘパリン結合ドメインから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、KGHRGF(配列番号44)、TAGSCLRKFSTM(配列番号45)、及びGEFYFDLRLKGDK(配列番号46)よりなる群から選択される、請求項2に記載のタンパク質基板。
【請求項6】
ビトロネクチンのヘパリン結合ドメインから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、KKQRFRHRNRKGYRSQ(配列番号47)である、請求項2に記載のタンパク質基板。
【請求項7】
骨シアロタンパク質のヘパリン結合ドメインから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、KRSR(配列番号48)、又はKRRA(配列番号49)である、請求項2に記載のタンパク質基板。
【請求項8】
前記ヘパリン結合モチーフは、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、転換成長因子β(TGF-β)、又は血小板由来成長因子(PDGF)に結合することができる、請求項1に記載のタンパク質基板。
【請求項9】
前記インテグリン結合モチーフは、αvβ3-、αvβ6-、αvβ8-、α5β1-、α9β1結合ペプチドから選択される、請求項1に記載のタンパク質基板。
【請求項10】
前記インテグリン結合モチーフは、インテグリンαvβ6を活性化させることができ、前記ヘパリン結合モチーフは、TGF-βに結合することができる、請求項1に記載のタンパク質基板。
【請求項11】
前記インテグリン結合モチーフは、インテグリンα5β1又はα9β1を活性化させることができ、前記ヘパリン結合モチーフは、bFGFに結合することができる、請求項1に記載のタンパク質基板。
【請求項12】
前記組換え接着タンパク質は、組換えイガイ接着タンパク質から由来される、請求項1に記載のタンパク質基板。
【請求項13】
前記組換えイガイ接着タンパク質は、配列番号1-6、及び60-74よりなる群から選択されるペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質基板。
【請求項14】
前記インテグリン結合モチーフ及び/又はヘパリン結合モチーフは、前記組換え接着タンパク質のN-末端及び/又はC-末端に結合される、請求項1に記載のタンパク質基板。
【請求項15】
前記インテグリン結合モチーフ及びヘパリン結合モチーフは、いずれも前記組換え接着タンパク質のN-末端又はC-末端に結合される、請求項1に記載のタンパク質基板。
【請求項16】
前記インテグリン結合モチーフ及びヘパリン結合モチーフは、スペーサーリンカーペプチドを介して連結される、請求項15に記載のタンパク質基板。
【請求項17】
前記スペーサーリンカーペプチドは、配列番号75のペプチドである、請求項16に記載のタンパク質基板。
【請求項18】
細胞の可塑性を調節するための細胞外微細環境表面であって、
前記微細環境表面は、インテグリン及び成長因子受容体を同時に活性化させることにより組合的信号伝達を誘導することができる、請求項1から17のいずれか一項に記載のタンパク質基板を含む、細胞外微細環境表面。
【請求項19】
前記細胞の可塑性は、上皮-間葉移行である細胞である、請求項18に記載の外微細環境表面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグリン(integrin)結合ペプチドモチーフ(motif)及び成長因子/サイトカイン(cytokine)結合ペプチドモチーフのいずれも有するタンパク質基板(substrate)を含むECM模倣体及び成長因子複合体(complex)に関する。特定の具現例において、本発明は、直接的に、FGF、TGFβ、PDGF、及びVEGF結合ペプチドモチーフのうち1つ、及びフィブロネクチン(fibronectin)、コラーゲン(collagen)、ラミニン(laminin)、ビトロネクチン(vitronectin)、及びテナシン(tenascin)から由来されるインテグリンαv、α2、α4、α5、及びα9結合モチーフのうち1つを含むタンパク質基板に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞付着受容体、インテグリン、及び成長因子受容体は、発生及び/又は病理学的工程の間に信号伝達に対する特異性を提供する上で重要な分子的決定子である。インテグリン及び成長因子受容体は独立して細胞内信号を伝えることができるが、細胞外基質(ECM)及び成長因子(GF)により提供される信号のシナジー(synergy)が胚形成の間の血管発生、傷治癒だけでなく、腫瘍成長/転移を含む複合的な工程を調節するものとみられる。
【0003】
GFは、多様な細胞工程の調節に関与し、典型的に細胞間の信号伝達分子として作用する。GFは、細胞増殖、分化及び成熟を促進し、これらは成長因子において多様である。大部分の成長因子は、拡散可能な方式で作用し、一般的に組織環境においては不安定である。このような延長された維持は、細胞又はその環境において成長因子の活性を維持し、生物工程(bioprocess)、再生医学適用分野において有利なものと見なされる。
【0004】
したがって、成長因子の性能(例えば、その活性期間及び安全性)を改善するための多くの試みがなされてきた。その環境において成長因子の維持を延長させるための最も一般的な戦略は、成長因子を化学的結合により固体基板上に固定することであり、前記基板は、傷治癒、組織工学などを含む多くの医学的及び生物学的適用分野のために用いられ得る(Mirhamed Hajimiri,et al,Growth factor conjugation:Strategies and applications,J.Biomedical Materials Research,Volume 103,Issue 2.2015 p819-838)。併せて、人工臓器のために用いられる生体物質に細胞機能の調節のような生体機能性を付加することが非常に重要である。細胞又はスキャフォルド(scaffold)生体物質に対する固定化又は高親和性結合のために成長因子を変形することは、多様な研究者により行われてきた(Seiichi Tada,et al,Design and Synthesis of Binding Growth Factors、Int J Mol Sci.2012;13(5):6053-6072参照)。しかし、これらの大部分はその効果が制限的であるが、これは主にキャリア(carrier)と連関時に成長因子活性が喪失され、成長因子が非効率的に放出制御され、タンパク質分解及び/又は分解からよく保護されないからである。
【0005】
細胞外基質は、多くの構成成分、例えば、成長因子に結合して多数のその活性を調節するための接着分子、ノッチ(notch)信号伝達分子、牽引可能(traction-enabling)付着分子及びプロテオグリカン分子を含有する(Cao L.,et al.2009 Promoting angiogenesis via manipulation of VEGF responsiveness with notch signaling.Biomaterials 30,4085-4093;Discher D.E.,et al.2005 Tissue cells feel and respond to the stiffness of their substrate.Science 310,1139-1143; Ramirez F.& Rifkin D.B.,2003 Cell signaling events:a view from the matrix.Matrix Biol.22,101-107)。
【0006】
多くのECMタンパク質は、成長因子が局所的に放出されてその細胞表面受容体に結合させる、成長因子及び細胞付着の全てのための結合部位を有する。よって、前記ECMは共同因子として機能し、細胞表面受容体に対する成長因子を提供する。また、ECM結合による成長因子の局所化は、可溶性ケモカイン(chemokine)及び成長因子モルフォゲン(morphogen)の濃度勾配の確立に寄与し、これは発生工程で核心的役割を担う。成長因子はまた、局所化貯蔵所として機能することになるECMに隔離されてよい。その後、ECMが分解されると、可溶性活性リガンドに転換される固体非活性成長因子を放出するはずである(Kim,S.-H.,et al.2011.Extracellular matrix and cell signalling:the dynamic cooperation of integrin,proteoglycan and growth factor receptor.The Journal of endocrinology、209(2),p139-51;Hynes,et al.2012.Overview of the matrisome-an inventory of extracellular matrix constituents and functions.Cold Spring Harbor perspectives Hynes,R.O.,2009;The extracellular matrix:not just pretty fibrils.Science(New York,N.Y.),326(5957),pp.1216-9)。一部の成長因子は拡散しない方式で作用するものと知られており、このような成長因子はHB-EGF、TGF、TNF、及びCSFであり、大部分の成長因子は拡散可能な方式で作用する(Seiichi Tada,et al.Int J Mol Sci.2012;13(5):6053-6072.Design and Synthesis of Binding Growth Factors)。
【0007】
本発明の目的は、ECM由来GF結合ペプチドモチーフ及びインテグリン結合モチーフを用いることにより、長期間持続する安全性及び機能性で成長因子を固定化するためのより単純かつ信頼可能なタンパク質基板を提供することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、インテグリン結合モチーフ及び成長因子と結合するかこれを隔離することができるヘパリン(heparin)結合モチーフに遺伝的に機能化された組換え接着タンパク質を含むタンパク質基板を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、細胞の可塑性(plasticity)を調節するための細胞外微細環境表面を提供することにあり、ここで、前記微細環境表面は、インテグリン及び成長因子受容体を同時に活性化させることにより組合的信号伝達を誘導することができる請求項1から17のいずれか一項に記載のタンパク質基板を含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、一側面において、本発明は、インテグリン結合モチーフ及び成長因子と結合するかこれを隔離することができるヘパリン結合モチーフに遺伝的に機能化された組換え接着タンパク質を含むタンパク質基板を提供する。
【0011】
本発明の一具現例において、前記ヘパリン結合モチーフは、コラーゲン、ビトロネクチン、又は骨シアロタンパク質(sialoprotein)のフィブロネクチンドメイン(domain)III、ラミニン球状(globular)ドメイン、ヘパリン結合ドメインから由来され得る。
【0012】
本発明の好ましい具現例において、フィブロネクチンドメインIIIから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、KYILRWRPKNS(配列番号7)、YRVRVTPKEKTGPMKE(配列番号8)、SPPRRARVT(配列番号9)、ATETTITIS(配列番号10)、VSPPRRARVTDATETTITISWRTKTETITGFG(配列番号11)、ANGQTPIQRYIK(配列番号12)、KPDVRSYTITG(配列番号13)、PRARITGYIIKYEKPGSPPREVVPRPRPGV(配列番号14)、WQPPRARI(配列番号15)、WQPPRARITGYIIKYEKPG(配列番号16)、YEKPGSPPREVVPRPRP(配列番号17)、又はKNNQKSEPLIGRKKT(配列番号18)のペプチドであってよい。本発明の他の好ましい具現例において、ラミニン球状ドメインから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、GLIYYVAHQNQM(配列番号19)、RKRLQVQLSIRT(配列番号20)、GLLFYMARINHA(配列番号21)、KNSFMALYLSKG(配列番号22)、VVRDITRRGKPG(配列番号23)、RAYFNGQSFIAS(配列番号24)、GEKSQFSIRLKT(配列番号25)、TLFLAHGRLVFMFNVGHKKL(配列番号26)、TLFLAHGRLVFM(配列番号27)、LVFMFNVGHKKL(配列番号28)、GAAWKIKGPIYL(配列番号29)、VIRDSNVVQLDV(配列番号30)、GKNTGDHFVLYM(配列番号31)、RLVSYSGVLFFLK(配列番号32)、GPLPSYLQFVGI(配列番号33)、RNRLHLSMLVRP(配列番号34)、LVLFLNHGHFVA(配列番号35)、AGQWHRVSVRWG(配列番号36)、KMPYVSLELEMR(配列番号37)、RYVVLPR(配列番号38)、VRWGMQQIQLVV(配列番号39)、TVFSVDQDNMLE(配列番号40)、APMSGRSPSLVLK(配列番号41)、VLVRVERATVFS(配列番号42)、又はRNIAEIIKDI(配列番号43)のペプチドであってよい。本発明の他の好ましい具現例において、コラーゲンのヘパリン結合ドメインから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、KGHRGF(配列番号44)、TAGSCLRKFSTM(配列番号45)、又はGEFYFDLRLKGDK(配列番号46)のペプチドであってよい。本発明の他の好ましい具現例において、ビトロネクチンのヘパリン結合ドメインから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、KKQRFRHRNRKGYRSQ(配列番号47)のペプチドであってよい。本発明の他の好ましい具現例において、骨シアロタンパク質のヘパリン結合ドメインから由来される前記ヘパリン結合モチーフは、KRSR(配列番号48)、又はKRRA(配列番号49)のペプチドであってよい。
【0013】
本発明の一具現例において、前記ヘパリン結合モチーフは、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、転換成長因子β(TGF-β)、又は血小板由来成長因子(PDGF)に結合することができる。
【0014】
本発明の他の具現例において、前記インテグリン結合モチーフは、αvβ3-、αvβ6-、αvβ8-、α5β1-、又はα9β1結合ペプチドであってよい。本発明の好ましい具現例において、前記インテグリン結合モチーフはインテグリンαvβ6を活性化させることができ、前記ヘパリン結合モチーフはTGF-βに結合することができる。本発明の他の好ましい具現例において、前記インテグリン結合モチーフはインテグリンα5β1又はα9β1を活性化させることができ、前記ヘパリン結合モチーフはbFGFに結合することができる。
【0015】
本発明の一具現例において、前記組換え接着タンパク質は、組換えイガイ接着タンパク質から由来され得る。本発明の好ましい具現例において、前記組換えイガイ接着タンパク質は、配列番号1-6、及び60-74のペプチド配列を含むか、これにより本質的になされるか、これからなされ得る。本発明の他の好ましい具現例において、前記インテグリン結合モチーフ及び/又はヘパリン結合モチーフは、前記組換え接着タンパク質のN-末端及び/又はC-末端に結合されてよい。本発明の他の好ましい具現例において、前記インテグリン結合モチーフ及びヘパリン結合モチーフは、いずれも前記組換え接着タンパク質のN-末端又はC-末端に結合されてよい。
【0016】
本発明の一具現例において、前記インテグリン結合モチーフ及びヘパリン結合モチーフは、スペーサーリンカーペプチドを介して連結されてよい。本発明の好ましい具現例において、前記スペーサーリンカーペプチドは、配列番号75のペプチドであってよい。
【0017】
他の側面において、本発明は、細胞の可塑性を調節するための細胞外微細環境表面を提供する。
【0018】
本発明の一具現例において、前記微細環境表面は、インテグリン及び成長因子受容体を同時に活性化させることにより組合的信号伝達を誘導することができる本発明のタンパク質基板を含むことができる。本発明の好ましい具現例において、前記細胞の可塑性は、上皮-間葉移行(epithelial-mesenchymal transition)であってよい。
【0019】
タンパク質基板は、GF結合ペプチドモチーフ及びインテグリン結合ペプチドモチーフを含む組換え接着タンパク質の形態で提供される。前記タンパク質基板は、成長因子受容体又はインテグリンを同時に又は順次活性化させることにより、細胞付着、移動、成長、及び生存を含む広い範囲の細胞挙動を誘導又は操作する。
【0020】
一側面において、本発明は、次の3個のドメインを含む組換え接着タンパク質の形態でタンパク質基板を提供する:
1)細胞、組織、又は任意の基板、例えば、プラスチック及びガラスの表面に付着するイガイ接着タンパク質ドメイン;
2)同族(cognate)成長因子受容体を活性化又は抑制するために成長因子を固定化又は隔離することができる成長因子結合ドメイン;及び
3)インテグリンを活性化させることができるインテグリン結合ドメイン。
【0021】
本発明によると、任意の組換えイガイ接着タンパク質が本発明の目的のために用いられ得る。本発明の一具現例において、前記組換えイガイ接着タンパク質は、配列番号1-6、及び60-74のペプチドを含むか、これにより本質的になされるか、これからなされ得る。本発明の好ましい具現例において、前記組換えイガイ接着タンパク質は、足糸タンパク質(foot protein)1デカペプチド繰り返し体(配列番号1)、足糸タンパク質3(配列番号2)、足糸タンパク質5(配列番号3-4)又はその組み合わせから選択されてよい。好ましくは、足糸タンパク質1デカペプチド繰り返し体及び足糸タンパク質3、足糸タンパク質1デカペプチド繰り返し体及び足糸タンパク質5、又は足糸タンパク質1、足糸タンパク質3及び足糸タンパク質5のハイブリッド(hybrid)である。好ましくは、ムラサキイガイ(Mytilus edulis)の足糸タンパク質5(配列番号3)又はムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis)の足糸タンパク質5(配列番号4)のN-及びC-末端に足糸タンパク質1デカペプチドの6個繰り返し体からなるハイブリッドタンパク質(配列番号5及び配列番号6)が本発明のために用いられる。
【0022】
本発明において、前記GF結合ドメインは、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、フィブリノーゲン(fibrinogen)、テナシン、又は骨シアロタンパク質を含むECMタンパク質から由来されるヘパリン結合又はシンデカン(syndecan)結合ペプチドモチーフであってよい。ヘパリン結合又はシンデカン結合モチーフにより結合又は隔離される成長因子は、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、及び血管内皮細胞成長因子(VEGF)を含み、ヘパリン又はシンデカン結合モチーフにより結合又は隔離されるサイトカインは、転換成長因子β(TGF-β)、インターロイキン(interleukin)-2、及びインターロイキン-6である。
【0023】
他の側面において、本発明は、ECM由来インテグリン結合ペプチド及び外因性成長因子を固定するための1つ以上のGF結合モチーフを含む価値のある細胞を培養するための合成細胞外微細環境を生成するためのタンパク質基板を提供する。ヘパリン又はシンデカン結合モチーフに結合される外因性成長因子は、本発明によるタンパク質基板内に維持される。
【0024】
他の側面において、本発明は、生物工程又は組織工学適用分野のための徐放性(sustained)成長因子の運搬のためのタンパク質基板を提供する。
【0025】
他の側面において、本発明は、第1側面のタンパク質基板及び薬学的に許容可能な担体を含む細胞治療法、傷治癒又は組織工学のための組成物を提供する。
【0026】
他の側面において、本発明は、成長因子又はサイトカインを維持する合成細胞外基質としてタンパク質基板を提供する。
【0027】
他の側面において、本発明は、成長因子受容体及びインテグリンのいずれにも結合するタンパク質基板を用いる段階を含む細胞移動を促進する方法を提供する。
【0028】
本発明は、細胞、組織、又は器官に運搬するために成長因子又はサイトカインを固定するための基板を提供する。本発明の具現例だけでなく、特徴及び利点は、本明細書の追加的な記述から明確であろう。
【発明の効果】
【0029】
本発明のタンパク質基板は、細胞培養関連適用分野、例えば、幹細胞拡張、組織工学のための成長因子の運搬、又は治療的適用分野のための生物工程のための表面コーティング用として用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1a図1aは、インテグリン結合モチーフ及び多様な成長因子を活性化させるかこれに結合することができるヘパリン結合モチーフを提供するタンパク質基板の2種の基本的方式を示す図である。方式Aは、C-末端及びN-末端にインテグリン結合及びGF結合ペプチドモチーフを有するタンパク質基板であり、方式Bでは、結合ペプチドモチーフがいずれもタンパク質基板のC-末端に統合されている。
図1b図1bは、本発明のタンパク質基板の作用メカニズムを示す図である。特異性のために、コーティングされた表面がコーティングされたタンパク質基板は、図1bに示したように、結合モチーフ及び成長因子受容体又はインテグリン間の特異的相互作用を許容する島と類似の地形を形成する。
図2a図2aは、GFに高い親和度を有する任意のペプチドモチーフをスクリーニングするためのヘパリン結合ペプチドモチーフ配列のレイアウト(layout)を示す図である。図2aは、フィブロネクチン、コラーゲン、及びラミニン由来のヘパリン又はシンデカン結合ペプチドモチーフのレイアウトである。
図2b図2bは、GFに高い親和度を有する任意のペプチドモチーフをスクリーニングするためのヘパリン結合ペプチドモチーフ配列のレイアウト(layout)を示す図である。図2bは、ラミニンLGドメイン由来のヘパリン又はシンデカン結合ペプチドのレイアウトである。
図3図3は、GF結合モチーフに対する計算されたGF結合親和度を示す図である。
図4a図4aは、bFGFに対する多様なECM由来GF結合ペプチドモチーフのスクリーニング結果を示す図である。
図4b図4bは、TGF-βに対する多様なECM由来GF結合ペプチドモチーフのスクリーニング結果を示す図である。
図4c図4cは、それぞれbFGF、TGF-β、及びPDGFに対するラミニン由来GF結合ペプチドモチーフのスクリーニング結果を示す図である。
図5a図5aは、TGF-βに高い親和度を有するタンパク質基板に結合されたTGF-βの徐放性放出を示す図である。図5aは、TGF-βに高い親和度を有するTGF-β結合ペプチドモチーフのレイアウトである。
図5b図5bは、TGF-βに高い親和度を有するタンパク質基板に結合されたTGF-βの徐放性放出を示す図である。図5bは、TGF-βの長期間の徐放性放出を示すTGF-βに対して高い親和度を有するGF結合モチーフの吸収プロフィールを示す。
図6a図6aは、上皮-間葉移行(EMT)誘導可能なインテグリンαv、α2、及びα9に結合するECM由来ペプチドモチーフのレイアウトを示す図である。
図6b図6bは、EMT誘導可能なインテグリン結合モチーフがコーティングされた表面で培養された乳房上皮細胞であるMCF-10Aのウエスタンブロット(Western blot)結果を示す図である。図6bにおいて、フィブロネクチン発現は、タンパク質基板に結合されたTGF-β誘導EMTマーカーとして示す。TGF-βに対して高い親和度を有するGF結合モチーフ(YEK & ANG)を有するタンパク質基板は、フィブロネクチンの高い発現を誘導したが、TGF-βに対して低い親和度を有するGF結合モチーフ(WQ)を有するタンパク質基板は、フィブロネクチン発現を誘導しなかった。
図7図7は、ウエスタンブロットにより分析されたトリプシン-媒介TGF-β切断を示す図である。タンパク質基板に結合されたTGF-βは、低いレベルのトリプシン消化を有するが、タンパク質基板がないTGF-βはトリプシンで処理されるときに大部分消化された。
図8a図8aは、低い血清条件(0.5%FBS)においてヒト包皮(foreskin)線維芽細胞の成長及び増殖に対するタンパク質基板に結合されたGFの効果を示す図である。図8aは、細胞成長及び増殖に対するタンパク質基板に結合されたPDGFの効果である。
図8b図8bは、低い血清条件(0.5%FBS)においてヒト包皮(foreskin)線維芽細胞の成長及び増殖に対するタンパク質基板に結合されたGFの効果を示す図である。図8bは、タンパク質基板に結合されたFGF2の効果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、細胞挙動を調節するためにインテグリン及び成長因子/サイトカイン受容体により同時に又は選択的に媒介された信号伝達を誘導するタンパク質基板に関する。タンパク質基板は、次の3個のドメインを含む組換え接着タンパク質の形態で提供され得る:
1)細胞、組織、又は任意の基板の表面、例えば、プラスチック又はガラスに付着する組換えイガイ接着タンパク質ドメイン;
2)同族成長因子受容体又はサイトカイン受容体を活性化又は抑制するために成長因子又はサイトカインを固定化又は隔離することができる成長因子結合ドメイン;及び
3)インテグリン受容体を活性化させることができるインテグリン結合ドメイン。
【0032】
本明細書で用いられるとき、用語「基板」は、他の物質が適用される物質を意味する。生物学において、有機体、例えば、植物、真菌、又は動物が生きていく表面は基板と称することができる。前記表面は、いずれも生物的、又は非生物的構成成分を含むことができる。
【0033】
本明細書で用いられるとき、組換えイガイ接着タンパク質は、イガイ足糸タンパク質FP-5及びイガイ足糸タンパク質FP-1デカペプチドを含む融合タンパク質を示す。一具現例において、本明細書で提供されるタンパク質基板は、配列番号5-6よりなる群から選択されるイガイ足糸タンパク質を含む。
【0034】
本明細書で用いられるとき、用語「GF結合ペプチドモチーフ」は、例えば、フィブロネクチンドメインIII、ラミニンLGドメイン、コラーゲンヘパリン結合ドメイン、ビトロネクチンヘパリン結合ドメイン、又はフィブリノーゲンを非制限的に含む細胞外基質タンパク質のヘパリン結合又はシンデカン結合ドメインから由来される短いペプチドを示す。一具現例において、前記GF結合ペプチドモチーフは、5-40個のアミノ酸又はその組み合わせを含む。多様な具現例において、前記GF結合ペプチドモチーフは、フィブロネクチン由来のKYILRWRPKNS(配列番号7)、YRVRVTPKEKTGPMKE(配列番号8)、SPPRRARVT(配列番号9)、ATETTITIS(配列番号10)、VSPPRRARVTDATETTITISWRTKTETITGFG(配列番号11)、ANGQTPIQRYIK(配列番号12)、KPDVRSYTITG(配列番号13)、PRARITGYIIKYEKPGSPPREVVPRPRPGV(配列番号14)、WQPPRARI(配列番号15)、WQPPRARITGYIIKYEKPG(配列番号16)、YEKPGSPPREVVPRPRP(配列番号17)、KNNQKSEPLIGRKKT(配列番号18)、又はラミニン由来のGLIYYVAHQNQM(配列番号19)、RKRLQVQLSIRT(配列番号20)、GLLFYMARINHA(配列番号21)、KNSFMALYLSKG(配列番号22)、VVRDITRRGKPG(配列番号23)、RAYFNGQSFIAS(配列番号24)、GEKSQFSIRLKT(配列番号25)、TLFLAHGRLVFMFNVGHKKL(配列番号26)、TLFLAHGRLVFM(配列番号27)、LVFMFNVGHKKL(配列番号28)、GAAWKIKGPIYL(配列番号29)、VIRDSNVVQLDV(配列番号30)、GKNTGDHFVLYM(配列番号31)、RLVSYSGVLFFLK(配列番号32)、GPLPSYLQFVGI(配列番号33)、RNRLHLSMLVRP(配列番号34)、LVLFLNHGHFVA(配列番号35)、AGQWHRVSVRWG(配列番号36)、KMPYVSLELEMR(配列番号37)、RYVVLPR(配列番号38)、VRWGMQQIQLVV(配列番号39)、TVFSVDQDNMLE(配列番号40)、APMSGRSPSLVLK(配列番号41)、VLVRVERATVFS(配列番号42)、RNIAEIIKDI(配列番号43)、PGRWHKVSVRWE(配列番号76)、又はコラーゲン由来のKGHRGF(配列番号44)、TAGSCLRKFSTM(配列番号45)、GEFYFDLRLKGDK(配列番号46)、又はビトロネクチン由来のKKQRFRHRNRKGYRSQ(配列番号47)、又は骨シアロタンパク質由来のKRSR(配列番号48)、KRRA(配列番号49)からなるヘパリン結合又はシンデカン結合ペプチドの群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0035】
本明細書で用いられるとき、用語「インテグリン結合モチーフ」は、例えば、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、ビトロネクチン、又はテナシンを非制限的に含む細胞外基質タンパク質から由来される短いペプチドを示す。前記インテグリン結合モチーフは、インテグリンαv、α5、α8又はα9に結合し、これを活性化させて細胞付着を支持し、ヘパリン結合モチーフに結合された成長因子とともに形態形成(morphogenesis)を誘導することができる。多様な具現例において、前記ヘパリン結合ペプチドは、インテグリンαv結合のRGD(配列番号50)、RGDV(配列番号51)、PQVTRGDVFTMP(配列番号52)、又はインテグリンα5結合のGRGDSP(配列番号53)、PHSRNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号54)、又はインテグリンα9結合のEDGIHEL(配列番号55)、VAEIDGIEL(配列番号56)、又はインテグリンα8結合のVFDNFVLK(配列番号57)よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0036】
一具現例において、本発明は、成長因子を同時に又は選択的に隔離するか、これに結合するGF結合ペプチドモチーフを提供するタンパク質基板を開示する。任意の好適なGF結合ペプチドモチーフは、前記ヘパリン結合モチーフの用語の定義で詳細に記述されているように、フィブロネクチンドメインIII、ラミニンLGドメイン、コラーゲンヘパリンドメイン、ビトロネクチンヘパリンドメイン、又は骨シアロタンパク質から由来されるヘパリン結合又はシンデカン結合モチーフよりなる群から選択されてよい。
【0037】
一具現例において、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を隔離するかこれに結合するためのタンパク質基板が開示される。一般的に、前記GF結合ペプチドモチーフは、bFGF結合のためのフィブロネクチン、ラミニン及びコラーゲンのヘパリン/シンデカン結合ドメインから選択されてよい。好ましくは、フィブロネクチン由来ペプチドのPRARITGYIIKYEKPGSPPREVVPRPRPGV(配列番号14)、WQPPRARI(配列番号15)、ラミニン由来ペプチドのRYVVLPR(配列番号38)、VRWGMQQIQLVV(配列番号39)、VLVRVERATVFS(配列番号42)、又はコラーゲン由来のKGHRGF(配列番号44)がbFGFを隔離するかこれに結合するために選択されてよい。
【0038】
他の具現例において、本発明は、転換成長因子β(TGF-β)を隔離するかこれに結合するためのGF結合ペプチドモチーフを提供するためのタンパク質基板を開示する。前記GF結合ペプチドモチーフは、TGF-β結合のためのフィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、ビトロネクチン、又は骨シアロタンパク質のヘパリン/シンデカン結合ドメインから選択されてよい。好ましくは、フィブロネクチン由来モチーフのANGQTPIQRYIK(配列番号12)、KPDVRSYTITG(配列番号13)、PRARITGYIIKYEKPGSPPREVVPRPRPGV(配列番号14)、WQPPRARI(配列番号15)、WQPPRARITGYIIKYEKPG(配列番号16)、YEKPGSPPREVVPRPRP(配列番号17)、又はラミニン由来ペプチドのGLIYYVAHQNQM(配列番号19)、RKRLQVQLSIRT(配列番号20)、GLLFYMARINHA(配列番号21)、KNSFMALYLSKG(配列番号22)、VVRDITRRGKPG(配列番号23)、RAYFNGQSFIAS(配列番号24)、GEKSQFSIRLKT(配列番号25)、TLFLAHGRLVFMFNVGHKKL(配列番号26)、TLFLAHGRLVFM(配列番号27)、LVFMFNVGHKKL(配列番号28)、GAAWKIKGPIYL(配列番号29)、VIRDSNVVQLDV(配列番号30)、GKNTGDHFVLYM(配列番号31)、RLVSYSGVLFFLK(配列番号32)、GPLPSYLQFVGI(配列番号33)、RNRLHLSMLVRP(配列番号34)、LVLFLNHGHFVA(配列番号35)、AGQWHRVSVRWG(配列番号36)、KMPYVSLELEMR(配列番号37)、RYVVLPR(配列番号38)、VRWGMQQIQLVV(配列番号39)、TVFSVDQDNMLE(配列番号40)、APMSGRSPSLVLK(配列番号41)、VLVRVERATVFS(配列番号42)、RNIAEIIKDI(配列番号43)、又はコラーゲン由来のKGHRGF(配列番号44)、TAGSCLRKFSTM(配列番号45)、GEFYFDLRLKGDK(配列番号46)、又はビトロネクチン由来のKKQRFRHRNRKGYRSQ(配列番号47)、又は骨シアロタンパク質由来のKRSR(配列番号48)、KRRA(配列番号49)がTGF-βに結合するかこれを隔離するために選択されてよい。より好ましくは、前記ヘパリン結合モチーフは、フィブロネクチン由来のANGQTPIQRYIK(配列番号12)、KPDVRSYTITG(配列番号13)、YEKPGSPPREVVPRPRP(配列番号17)、又はラミニン由来のKNSFMALYLSKG(配列番号22)、RYVVLPR(配列番号38)、GKNTGDHFVLYM(配列番号31)、RLVSYSGVLFFLK(配列番号32)、VLVRVERATVFS(配列番号42)、又はビトロネクチン由来のKKQRFRHRNRKGYRSQ(配列番号47)、又は骨シアロタンパク質由来のKRSR(配列番号48)、KRRA(配列番号49)から選択されてよい。
【0039】
他の具現例において、本発明は、血小板由来成長因子(PDGF)を隔離するかこれに結合するためのGF結合ペプチドモチーフを提供するためのタンパク質基板を開示する。前記PDGF結合モチーフは、ラミニン由来モチーフのGLIYYVAHQNQM(配列番号19)、RKRLQVQLSIRT(配列番号20)、GLLFYMARINHA(配列番号21)、KNSFMALYLSKG(配列番号22)、VVRDITRRGKPG(配列番号23)、RAYFNGQSFIAS(配列番号24)、GEKSQFSIRLKT(配列番号25)、TLFLAHGRLVFMFNVGHKKL(配列番号26)、TLFLAHGRLVFM(配列番号27)、LVFMFNVGHKKL(配列番号28)、GAAWKIKGPIYL(配列番号29)、VIRDSNVVQLDV(配列番号30)、GKNTGDHFVLYM(配列番号31)、RLVSYSGVLFFLK(配列番号32)、GPLPSYLQFVGI(配列番号33)、RNRLHLSMLVRP(配列番号34)、LVLFLNHGHFVA(配列番号35)、AGQWHRVSVRWG(配列番号36)、KMPYVSLELEMR(配列番号37)、RYVVLPR(配列番号38)、VRWGMQQIQLVV(配列番号39)、TVFSVDQDNMLE(配列番号40)、APMSGRSPSLVLK(配列番号41)、VLVRVERATVFS(配列番号42)、RNIAEIIKDI(配列番号43)、PGRWHKVSVRWE(配列番号76)、又はビトロネクチン由来のKKQRFRHRNRKGYRSQ(配列番号47)、又は骨シアロタンパク質由来のKRSR(配列番号48)、KRRA(配列番号49)から選択されてよい。より好ましくは、前記PDGF結合モチーフは、RKRLQVQLSIRT(配列番号20)、KNSFMALYLSKG(配列番号22)、RYVVLPR(配列番号38)、GKNTGDHFVLYM(配列番号31)、VLVRVERATVFS(配列番号42)、又はビトロネクチン由来のKKQRFRHRNRKGYRSQ(配列番号47)、又は骨シアロタンパク質由来のKRSR(配列番号48)から選択されてよい。
【0040】
本発明はさらに、生理的条件で成長因子の徐放性放出のためのタンパク質基板を開示する。
【0041】
細胞外基質に存在するヘパリンサルフェートとの相互作用は、組織の恒常性においてFGFのような成長因子の拡散(Duchesne L,et al,ransport of fibroblast growth factor 2 in the pericellular matrix is controlled by the spatial distribution of its binding sites in heparan sulfate.PLoS Biol.2012;10(7):e1001361.,Dowd CJ,et al,Heparan sulfate mediatesbFGF transport through basement membrane by diffusion with rapid reversible binding.J Biol Chem.1999 19;274(8):5236-44)だけではなく、FGFの貯蔵及び放出を直接的に調節することがよく知られている(Bashkin P,et al.,asic fibroblast growth factor binds to subendothelial extracellular matrix and is released by heparitinase and heparin-like molecules. Biochemistry.1989 21;28(4):1737-43)。
【0042】
一具現例において、本発明は、生理学的条件において数日の期間にわたり機能の損失がないTGF-βの徐放性放出システムとしてタンパク質基板を提供する。前記タンパク質基板は、生理的条件において、TGF-βの徐放性放出のために、KNSFMALYLSKG(配列番号22)、RYVVLPR(配列番号38)、GKNTGDHFVLYM(配列番号31)、RLVSYSGVLFFLK(配列番号32)、VLVRVERATVFS(配列番号42)から選択されるTGF-β結合モチーフを提供する。
【0043】
本発明はまた、インテグリン結合ペプチドモチーフ及びGF結合ペプチドモチーフを同時に提供するためのタンパク質基板を開示する。インテグリン結合モチーフは、組換え接着タンパク質のN-末端内に統合されてよく、成長因子又はサイトカイン結合モチーフは、前記接着タンパク質のC-末端内に統合されてよく、その反対であってもよい。
【0044】
インテグリン及び成長因子受容体間のクロストーク(crosstalk)はよく知られている。例えば、腸などは、FGF2-FNIII9-10融合タンパク質がFNIII9-10単独と比較してMG63細胞の細胞付着及び増殖の顕著な増加を示し(Jun-Hyeog Jang & Chong-Pyoung Chung,Engineering and expression of a recombinant fusion protein possessing fibroblast growth factor-2 and fibronectin fragment.Biotechnology Letters volume 26,p1837-1840(2004)),FNIII9-10-媒介付着がPC12細胞の神経突起成長物(neurite outgrowth)に対するFGF1の効果を促進することを報告した(Choung PH,et al.,Synergistic activity of fibronectin and fibroblast growth factor receptors on neuronal adhesion and neurite extension through extracellular signal-regulated kinase pathway.Biochem Biophys Res Commun,2002,295:898-902)。
【0045】
一具現例において、本発明は、RGDSGSGSGSGSGANGQTPIQRYIK(配列番号58)を有するフィブロネクチンドメインIIIを模倣するタンパク質基板を開示する。
【0046】
他の具現例において、本発明は、フィブロネクチンドメインIII(配列番号59)を模倣するタンパク質基板を開示し、ここで、インテグリン結合モチーフのRGD(配列番号50)は接着タンパク質のC-末端に統合され、成長因子又はサイトカイン、例えば、TGF-β結合モチーフのANGQTPIQRYIK(配列番号12)は接着タンパク質のN-末端に統合される。
【0047】
本発明はまた、傷治癒、血管形成又は発病、例えば、線維症又は腫瘍の転移と直接的に連関される表現型可塑性を制御するためにインテグリン及び成長因子受容体を同時に活性化させる微細環境表面を提供する。
【0048】
一具現例において、本発明は、上皮細胞で上皮-間葉移行(EMT)を誘導するために、前記タンパク質基板を含む合成腫瘍微細環境表面を提供する。
【0049】
EMTは、上皮細胞がE-カドヘリン(Cadherin)を含む上皮タンパク質を失い、N-カドヘリン、ビメンチン(Vimentin)及びフィブロネクチンのような間葉マーカーを獲得する工程である。EMTは、胚芽又は癌の発生及び/又は進行(Kalluri R,et al.The basics of epithelial-mesenchymal transition.J Clin Invest.2009;119:1420-8. Jordan NV,et al.Tracking the intermediate stages of epithelial-mesenchymal transition in epithelial stem cells and cancer.Cell Cycle.201;10:2865-73)、傷治癒及び組織復旧、及び細胞移動を含む多くの工程と連関される(Hosaka K,et al.Pericyte-fibroblast transition promotes tumor growth and metastasis.Proc Natl Acad Sci U S A.2016;113:E5618-27.Yang X,et al.Silencing Snail suppresses tumor cell proliferation and invasion by reversing epithelial-to-mesenchymal transition and arresting G2/M phase in non-small cell lung cancer.Int J Oncol.2017;50:1251-60)。EMT事件は、発生及び傷復旧のために必須的ではあるが、これはまた、線維性疾患及び癌に対する寄与因子として認識されてきた。TGF-β及びECMタンパク質を含む多くの可溶性及び不溶性因子がEMT事件の程度及び期間を決める。具体的に、サイトカイン、例えば、TGF-β、TNFα、及びIL6及び低酸素症は、多様な腫瘍でEMTを誘導し得る。
【0050】
コラーゲン-I、フィブロネクチン、及びヒアルロナン(hyaluronan)を含む幾つかの細胞外基質(ECM)タンパク質、及び細胞外リシルオキシダーゼ(lysyl oxidase)によるECMリモデリングがまたEMTの調節に影響を及ぼす(Hae-Yun Jung,et al.Clin Cancer Res;21(5) March 1、2015.Molecular Pathways:Linking Tumor Microenvironment to Epithelial-Mesenchymal Transition in Metastasis)。幾つかのインテグリンは、EMTを媒介するものと知られている。例えば、EMTは、TGF-β1-Smad2/3の信号伝達経路の活性化を介してインテグリンαvβ6により調節される(Wang J,et al.(2015)Interleukin-1beta promotes epithelial-derived alveolar elastogenesis via αvβ6 integrin-dependent TGF-beta activation.Cell Physiol Biochem 36:2198-2216)。フィブロネクチンに結合するα5β1、及びコラーゲンIと相互作用するインテグリンα1β1及びα2β1を含む幾つかのインテグリン複合体の発現がまたEMTの間に上向き調節され、E-カドヘリン複合体の破壊を媒介するものと表われた。ECMと細胞の相互作用は、ECM連関タンパク質、例えば、コラーゲン及びα2β1の相互作用を促進するための糖タンパク質であるSPARCにより調整されるものと表われた。
【0051】
一具現例において、本発明は、乳癌細胞株であるMCF-10AでEMTを誘導するために、インテグリンα5β1、α9β1、又はαvβ3結合モチーフから選択されるインテグリン結合モチーフ、及びANGQTPIQRYIK(配列番号12)、KPDVRSYTITG(配列番号13)又はYEKPGSPPREVVPRPRP(配列番号17)から選択されるサイトカイン結合モチーフを含むタンパク質基板を提供する。
【0052】
本発明はまた、細胞培養培地又はバッファー溶液、例えば、PBSバッファーで成長因子又はサイトカイン結合モチーフを含むタンパク質基板を成長因子又はサイトカインと混合することにより、細胞培養条件で長期間の間生物学的活性の損失に対して成長因子又はサイトカインを安定化させるための方法を提供する。
【0053】
一具現例において、サイトカイン結合モチーフのANGQTPIQRYIK(配列番号12)及び成長因子結合モチーフのYEKPGSPPREVVPRPRP(配列番号17)を提供するタンパク質基板を含む組成物は、DMEMのような細胞培養培地又はPBSのようなバッファー溶液に溶解される。前記組成物は、乳房上皮細胞株であるMCF-10AでのEMT促進テストで実証されるように、その生物学的活性の損失なく少なくとも1週間保管され得る。
【0054】
以下、本発明は、製造例、実施例、及びその実験例を参照しつつ詳細に記述される。
【0055】
しかし、次の製造例、実施例、及び実験例は、本発明を例示するための目的で提供されるだけであり、本発明の範囲を制限するための意図ではないことが理解されなければならない。
【0056】
実施例
実施例1.インテグリン結合モチーフ及びヘパリン結合モチーフを提供するタンパク質基板の製造
イガイ足糸タンパク質1及び足糸タンパク質5の融合タンパク質を含む多様なイガイ接着タンパク質を効率的な方式で生産するための大腸菌(E.coli)基盤のタンパク質発現システムが商業化されており(US2020/0062809A1及びWO2011/115420A2参照)、前記イガイ接着タンパク質は、Kollodis Biosciences社により市販されるブランドMAPTrix(登録商標)下に商業的に利用可能である。イガイ接着タンパク質を製造するための方法は、本明細書に完全に開示されているように、全ての目的のために引用により本明細書に統合されるUS20200/062809A1及びWO2011/115420A2に完全に記述されている。
【0057】
タンパク質基板の基本的な方式は、図1aに例示されている。図1aに示したように、2個のペプチドモチーフは、それぞれイガイ接着タンパク質のN-末端及びC-末端内に統合され得る(方式A)。代案的に、図1bに示したように、両方のモチーフは、C-末端又はN-末端内に統合されてよく(方式B)、ここで、SGSGSGSGSGのようなスペーサーリンカーペプチドは、相乗効果のために2個のペプチドを効果的に分離する。
【0058】
配列番号58(以下、「MAP-RGD-GF」と記す)及び配列番号59(以下、「GF-MAP-RGD」と記す)を有する2タイプのタンパク質基板をUS2020/0062809A1及びWO2011/115420A2に開示されているように組換え的にデザインし、大腸菌発現システムで発現及び精製した。GF結合モチーフを有する多数のタンパク質基板を同一の手順で生産した。全てのタンパク質基板を凍結乾燥し、さらなる実験のために冷蔵庫に保管した。
【0059】
実施例2.成長因子結合分析法
成長因子又はサイトカイン結合分析法のための複数の配列は、図2a及び図2bに示したように、96ウェルフォーマットに整列された多数のヘパリン結合ペプチドモチーフで構成されている。図2aは、フィブロネクチン、コラーゲン、及びラミニン由来GF結合モチーフの配列レイアウトであり、図2bは、ラミニン球状ドメイン由来GF結合モチーフの配列レイアウトである。
【0060】
成長因子又はサイトカインに対するペプチドモチーフの特異的結合のために、低い細胞付着又は超疎水性表面を基板タンパク質でコーティングし、ここで、前記基板タンパク質は粒子として形成された。よって、前記表面は、図1bに示したように、粒子島のように見える。前記コーティング方法は最新技術であり、詳細な手順は、本発明者達により開発され、参照として本明細書に完全に統合される米国特許出願US16/546,966に記述されている。前記表面は、GFのような生体分子又は標的細胞が表面に提供されるペプチドモチーフに特異的に結合させる。非標的生体分子又は細胞は、懸濁するように強制され、結局、洗浄されてしまう。
【0061】
組換え塩基性FGF、TGF-β、PDGF-BBは、R&Dシステムズ(Camarillo、CA)から購入し、超低(Ultralow)細胞付着96ウェルプレートは、コーニング(Corning,NY)から購入した。脂肪酸不含ウシ血清アルブミン(BSA)は、シグマアルドリッチ社(St.Louise,MO)から購入し、ウシ胎児血清は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Waltham,MA)から購入した。
【0062】
組換え成長因子の任意の非特異的結合を除去するか最小化するために、基板タンパク質でコーティングされた96ウェルプレート表面をPBSTバッファー(4mMのフォスフェート及び155mMの塩化ナトリウム、0.05wt%のTween-20、pH7.4)中の2wt%のBSAを用いて、前記プレートを室温で1時間撹拌することにより遮断した。その後、PBSTに溶解された個別の組換え成長因子(50nM)を、ヘパリン結合モチーフを含む遮断されたウェルプレートに添加し、前記プレートを4℃で一晩中撹拌した。前記ウェルプレートにコーティングされたタンパク質基板に対する成長因子の結合は、免疫親和度分析法により確認した。簡単に、前記ウェルプレートを前記成長因子に対する1次抗体及びホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識された2次抗体で順次処理した。最後に、TMB(3,3’、5,5’-tetramethylbenzidine)基板をHRPにより化学的に交換し、450nmにおける吸光度の値を用いてそれぞれの結合モチーフに対する成長因子の結合を分析した。図3は、成長因子結合に対応するTMB吸光度の値を示す。前記値に成長因子がないブランクサンプルの吸光度の値が引かれた。0.1を超過する吸光度の判読値は、意味のある相互作用として見なした。
【0063】
図4a及び図4bに示したように、本発明者達は、bFGF、TGF-β、及びPDGF-BBに特異的に結合するフィブロネクチン由来GF結合モチーフを確認した。それぞれの成長因子に対して高い親和度を有するGF結合モチーフは、次の表1に要約されている。
【0064】
【表1】
【0065】
図4cに示したように、大部分のラミニン由来GF結合ペプチドモチーフは、TGF-β及びPDGFに対してより高い親和度を示したが、フィブロネクチンGF結合モチーフの場合と似てbFGFに対しては相対的に低い親和度を示した。
【0066】
実施例3.タンパク質基板に結合された成長因子の徐放性放出
ECMタンパク質内のヘパリン結合ドメインは、生理学的条件において成長を安定化させるものと表われた。前記GF結合ペプチドモチーフが成長因子に対する任意の保護効果を付与するのか否かを決定するために、実施例2で確認されたGF結合ペプチドモチーフの存在又は不在下にTGF-βをPBSバッファー又は細胞培養培地であるDMEMを用いて条件化した。bFGF(0.5μg)を前記タンパク質基板コーティング表面に添加し、37℃で2、4、及び7日間インキュベーションした。本発明者達は、酵素-結合免疫吸着分析法(ELISA)を用いて37℃で時間に応じたTGF-βの安全性を評価し、タンパク質基板から徐々に放出されることとその半減期が4日であることを明らかにした。図5bに示したように、TGF-βに対して高い親和度を有するGF結合モチーフ(ANG-MAP-RGD-IDAP)は、細胞培養条件でTGF-βの長期間の徐放性放出を示す。
【0067】
実施例4.上皮細胞の間葉細胞への分化転換(transdifferentiation)を誘導するための合成微細環境
実施例2及び実施例3で確認されたTGF-β結合モチーフを6ウェルプレートに配列した。実施例2に開示されたように、TGF-β(5ng)を処理した後、前記6ウェルプレートを所定の時間の間(例えば、それぞれ2、4及び7日)37℃のCOインキュベーターに保管した。乳房上皮細胞であるMCF-10Aを接種し、TGF-β結合ペプチドモチーフがコーティングされたウェルプレートで培養した。図6bに示したように、TGF-βに対する高い親和度を有する2個のモチーフは、MCF-10AがEMTを経験することを誘導することができたが、低いTGF-β結合親和度モチーフであるWQPPRARI(配列番号15)は、フィブロネクチン上向き調節がないことにより立証されるようにEMTを誘導することができなかった。
【0068】
実施例5.トリプシン活性からのGF保護
実施例2及び実施例3で確認されたTGF-β結合ペプチドモチーフを30℃で15分間TGF-β(2μg)及びトリプシン(0.3μg)とともにインキュベーションした。トリプシン化した後、サンプルのタンパク質をサイズ依存的方式で15%のSDS-PAGEにより分離した。その後、SDS-PAGEを2時間クマシーブルー(Coomassie blue)溶液で染色した。脱染色後、クマシーブルー溶液により染色したバンドの強度を分析した。図7に示したように、ANGQTPIQRYIK(配列番号12)、ANG-M-RGD(配列番号59)、KNSFMALYLSKG(配列番号22)、KRSR(配列番号48)、及びRKRLQVQLSIRT(配列番号20)モチーフは、MAP-融合モチーフがない場合と比較してTGF-βのトリプシン化を抑制した。
【0069】
実施例6.細胞成長のための成長因子結合タンパク質基板
総96-ウェルのプレート(非組織培養処理される、SPL Life Science)を酢酸ナトリウムバッファーで室温で1時間、GF結合ペプチドモチーフを有するタンパク質基板を用いて50μg/mlでコーティングした。0.5%FBSを有するDMEM中の20ng/mlのFGF2及びPDGF-BB(BioVision,Milpitas,CA,USA)を個別ウェルに添加し、COインキュベーターで37℃で1時間インキュベーションした。0.5%のウシ胎児血清(FBS)で補充されたDMEM培地(Invitrogen)でヒト包皮線維芽細胞(Hs68、ATCC)を用いて細胞成長分析法を行った。細胞をGF結合基板が事前にコーティングされたプレート上に1,500細胞/ウェルで接種し、COインキュベーターで37℃で48時間インキュベーションした。その後、CCK-8分析法を行って細胞成長を決定した。Hs68細胞に対してマイコプラズマ(mycoplasma)汚染をチェックした後、5から10の継代培養に用いた。GF結合ペプチドモチーフ及びヘパリンがないタンパク質基板をそれぞれ陰性及び陽性対照群として用いた。
【0070】
図8a及び図8bに示したように、GF結合タンパク質基板は、細胞の成長及び増殖を裏付けた。タンパク質基板に結合されたGFは、ヘパリン結合GFと比較するとき低い血清条件(0.5%FBS)でヒト包皮線維芽細胞の成長及び増殖を強く裏付けた。
【0071】
前記技術から、本開示された主題に対して多様な用法及び条件に採用されるための変更及び変形が行われ得ることが自明であろう。このような具現例はまた、次の特許請求の範囲内に属する。
【0072】
本明細書に開示された変数の任意の定義において要素の目録を引用することは、任意の単一要素又は列挙された要素の組み合わせ(又は下位組み合わせ)のような当該変数の定義を含む。本明細書において具現例を引用することは、任意の単一具現例又は任意の他の具現例又はその一部との組み合わせとしての当該具現例を含む。
【0073】
本明細書に引用された全ての特許及び公開文献は、それぞれの独立的な特許又は公開文献が具体的に及び個別的に引用により統合されることを示唆するのと同じ程度に引用によって本明細書に統合される。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
【配列表】
2024500845000001.app
【国際調査報告】