(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】無細胞製造システムにおけるグリセロールからのゲラニルピロリン酸の無細胞生成
(51)【国際特許分類】
C12P 9/00 20060101AFI20231227BHJP
C12N 11/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C12P9/00 ZNA
C12N11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537593
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 US2021064034
(87)【国際公開番号】W WO2022133213
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523228060
【氏名又は名称】デビュー バイオテクノロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブリトン, ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ブリドー, ニコラス
【テーマコード(参考)】
4B033
4B064
【Fターム(参考)】
4B033NA23
4B033NA25
4B033NA35
4B033ND02
4B033NG09
4B033NH09
4B064AE63
4B064CA21
4B064CA31
4B064CD10
(57)【要約】
ゲラニルピロリン酸(GPP)は、数千もの天然産物のバイオプロダクションにおける重要な中間体分子である。現在、天然産物は、植物から培養されるか、複雑な化学合成戦略によって合成されるか、または細胞ベースの工場(バイオファウンドリとしても知られる)を通じて合成されるかのいずれかである。しかし、無細胞環境においてそのプロセスを複製するためには、多数の酵素および補因子が利用されなければならず、このことが、このアプローチを高価で実行不能にする。このプロセスを実行可能にするために、より少ない酵素および補因子しか使用しない新規なアプローチが、必要であった。本明細書におぃて記載されるとおり、本発明は、細胞の外側での短く簡潔な生合成経路を通じてグリセロールからGPPを生成することが可能であることを、示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロールをゲラニルピロリン酸(GPP)および追加の二次代謝産物へと変換する方法であって、
a)グリセロールを反応混合物に添加する工程;
b)複数の酵素を工程(a)からの反応混合物に添加する工程であって、該酵素は、アルジトールオキシダーゼ(Aldo)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)、ピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)、リン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA)、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(PhaA)、HMG-CoAシンターゼA110G(HMGS)、HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)、メバロン酸キナーゼ(MVK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMVK)、ジホスホメバロン酸キナーゼ(MDC)、イソペンチル-PPイソメラーゼ(IDI)、およびファルネシル-PPシンターゼS82F(FPPS)からなる群より選択される、工程;
c)工程(b)からの反応混合物から上清を除去する工程;ならびに
d)GPPを単離する工程;
を含む、方法。
【請求項2】
少なくとも2種の酵素が前記反応混合物に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも5種の酵素が前記反応混合物に添加される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも10種の酵素が前記反応混合物に添加される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
NphB酵素を工程(b)に添加してGPPを(カンナビゲロール酸)CBGAへと変換する工程
をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
GPPからCBGAへの変換を使用して、前記方法から生成されるGPPの量を決定する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物が補因子を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記補因子が、アデノシン三リン酸(ATP)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP
+)、またはそれらの組合せである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記補因子がリサイクルされる、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、およびポリリン酸キナーゼ2(PPK2)を前記反応混合物に添加して前記補因子がリサイクルされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素のうちの1種または複数種が固定されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の酵素が固定されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記酵素のうちの1種または複数種が固定されていない、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の酵素が固定されていない、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
グリセロールをゲラニルピロリン酸(GPP)および追加の二次代謝産物へと変換する方法であって、
a)グリセロールおよびアルジトールオキシダーゼ(Aldo)を反応混合物に添加する工程;
b)ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)を工程(a)からの反応混合物に添加する工程;
c)工程(b)からの反応混合物の上清を除去する工程;
d)ピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)を工程(c)からの反応混合物の上清に添加する工程;
e)工程(d)からの反応混合物の上清を除去する工程;
f)リン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA)、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(PhaA)、HMG-CoAシンターゼA110G(HMGS)、HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)、メバロン酸キナーゼ(MVK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMVK)、ジホスホメバロン酸キナーゼ(MDC)、イソペンチル-PPイソメラーゼ(IDI)、およびファルネシル-PPシンターゼS82F(FPPS)からなる群より選択される少なくとも2種の酵素を、工程(e)からの反応混合物の上清に添加する工程;
g)工程(f)からの反応混合物から上清を除去する工程;ならびに
h)GPPを単離する工程;
を含む、方法。
【請求項16】
NphB酵素を工程(f)に添加してGPPを(カンナビゲロール酸)CBGAへと変換する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
GPPからCBGAへの変換を使用して、前記方法から生成されるGPPの量を決定する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応混合物が補因子を含む、請求項15~請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記補因子が、アデノシン三リン酸(ATP)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP
+)、またはそれらの組合せである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記補因子がリサイクルされる、請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項21】
グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、およびポリリン酸キナーゼ2(PPK2)を前記反応混合物に添加して前記補因子がリサイクルされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記酵素のうちの1種または複数種が固定されている、請求項15~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記酵素すべてが固定されている、請求項15~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記酵素のうちの1種または複数種が固定されていない、請求項15~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記酵素すべてが固定されていない、請求項15~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年12月18日に出願された米国仮出願番号63/127,836および2020年12月18日に出願された米国仮出願番号63/127,758の利益を主張し、これらの明細書は、本明細書において参照によりその全体が援用される。
【0002】
(配列表に対する言及)
本出願人は、規則13の3.1(a)の下で提出した「DEBUT_20_03_PCT_Sequence_Listing_ST25」という題のAnnex C/ST.25テキストファイルの形式で記録された情報が、出願した国際出願の部分を形成する情報と同一であることを断言する。この配列表の内容は、本明細書において参照によりその全体が援用される。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、ゲラニルピロリン酸(GPP)をグリセロールから生成する方法を特徴とし、特に、本発明は、無細胞生成方法を特徴とする。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
ゲラニルピロリン酸(GPP)は、数千もの天然産物のバイオプロダクションにおける重要な中間体分子である。ここで、天然産物とは、植物、動物、および細菌などの生物において多段階酵素経路を通じて形成される分子である。現在、天然産物は、植物から培養されるか、複雑な化学合成戦略によって合成されるか、または細胞ベースの工場(バイオファウンドリとしても知られる)を通じて合成されるかのいずれかである。
【0005】
以前に、Valliereら(2019)が、グルコースを出発物質として使用して、無細胞環境においてGPPを製造した。天然酵素系のこの完全なレプリカは、22種の酵素を使用し、40補因子当量(12個のアデノシン三リン酸(ATP)、12個のアデノシン二リン酸(ADP)、4個のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP
+)、2個のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+)、6個のアセチルコエンザイムA(CoA)、および4個のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を含む)を必要とする。この文献に記載されたプロセスによって必要とされる補因子の数は、このアプローチが常に高価で実行不能であることを意味する(
図1B)。このプロセスを実行可能にするために、より少ない酵素および補因子しか使用せず信頼性を改善する、新規なアプローチが必要である。本明細書において記載されるとおり、本発明は、細胞の外側での短く簡潔な生合成経路(無細胞生合成として知られる)を通じてGPPを生成することが可能であることを実証する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な概要)
独立請求項において明示されるとおり、無細胞生合成プラットフォームによって、グリセロールから出発してゲラニルピロリン酸(GPP)および追加の二次代謝産物を生成する生産を可能にする、無細胞方法を提供することが、本発明の一目的である。本発明の実施形態は、従属請求項において提供される。本発明の実施形態は、それらが相互排他的ではない場合には、互いに自由に組み合わされ得る。
【0007】
培養によるか、化学合成によるか、または細胞における天然産物の製造は、高価値化学生産の商業的実行性を制限する多くの問題に悩まされる。第一に、培養は、しばしば経済的に実行不能であり、大量の土地/エネルギー/水を必要とし、植物が、高価値物質を少量でしか生成できない。次に、化学合成は、しばしば複雑過ぎて実験室では生成できない天然産物を生成するために、広大で、精巧で、高価で、毒性があり、非効率的な多段階化学反応を必要とする。最後に、バイオファウンドリ(細胞全体の使用)は、産物の毒性、炭素フラックスの向け直し(redirection)、細胞壁を通る拡散の問題、および毒性副産物の産生に悩まされる。これらの上記の問題を回避するために、無細胞製造が、実行可能な選択肢として現れる。
【0008】
無細胞系において、細胞の重要成分、すなわち、補因子および酵素が、細胞を伴わない化学反応において使用される。植物、動物、および細菌において見出される同じ酵素が、インビボで(代表的には、細菌などの宿主におけるタンパク質過剰発現を通じて)生成され、クロマトグラフィーによって単離され、その後、基質(出発物質)を含むバイオリアクター中に添加される。その酵素は、植物、動物、および細菌において生じるのと同じ様式でその基質を変換するが、生物の複雑性は伴わない。この様式では、天然産物は、植物も、細胞も、または化学合成も用いずに生成され始め得る。
【0009】
本発明は、グリセロールをGPPへと変換するための、より短く値段が手頃でより簡単なプロセスを可能にするために、(グルコースをピルビン酸にする)解糖系を除去する酵素経路(
図1A)を作製する。本願プロセスは、12個の酵素工程を使用し、24補因子当量および10種の酵素を排除する(
図1B)。さらに、酵素固定を使用して、酵素の沈殿、不活化、および非固定系の信頼性の無さを回避することによって、GPPへの変換を改善した。本発明はまた、酵素固定を用いない場合に、酵素の沈殿およびその酵素経路の破壊が観察されることを示す、証拠を提供する。最後に、このプロセスは、グルコースではなく、グリセロールから出発する。グリセロールは、GPPの生産において使用されていない豊富な天然物質である。本発明は、この天然の産業廃棄物が、グルコースの実行可能な代替品として利用されることを可能にする。
【0010】
一部の実施形態において、これは、グリセロールをゲラニルピロリン酸(GPP)および追加の二次代謝産物へと変換する方法を特徴とする。一部の実施形態において、その方法は、グリセロールを反応混合物に添加する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、複数の酵素を上記反応混合物に添加する工程を含む。一部の実施形態において、それらの酵素は、アルジトールオキシダーゼ(Aldo)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)、ピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)、リン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA)、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(PhaA)、HMG-CoAシンターゼA110G(HMGS)、HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)、メバロン酸キナーゼ(MVK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMVK)、ジホスホメバロン酸キナーゼ(MDC)、イソペンチル-PPイソメラーゼ(IDI)、およびファルネシル-PPシンターゼS82F(FPPS)からなる群より選択される。一部の実施形態において、その方法は、上清を上記反応混合物から除去する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、GPPを単離または生成する工程を含む。一部の実施形態において、その酵素は、その反応混合物に非同期的に添加され得る。他の実施形態において、その酵素は、その反応混合物に同時に添加され得る。
【0011】
他の実施形態において、本発明は、グリセロールをゲラニルリン酸(GPP)および追加の二次代謝産物へと変換する方法を特徴とする。一部の実施形態において、その方法は、グリセロールおよびアルジトールオキシダーゼ(Aldo)を反応混合物に添加する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)をその反応混合物に添加する工程をさらに含む。一部の実施形態において、その方法は、上記反応混合物の上清を除去する工程、およびピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)をその反応混合物の上清に添加する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、上記反応混合物の上清を除去する工程、ならびにその反応混合物の上清へ、リン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA)、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(PhaA)、HMG-CoAシンターゼA110G(HMGS)、HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)、メバロン酸キナーゼ(MVK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMVK)、ジホスホメバロン酸キナーゼ(MDC)、イソペンチル-PPイソメラーゼ(IDI)、およびファルネシル-PPシンターゼS82F(FPPS)からなる群より選択される少なくとも2種の酵素を添加する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、上記反応混合物から上清を除去する工程、およびGPPを生成する工程を含む。一部の実施形態において、その酵素は、その反応混合物に非同期的に添加され得る。他の実施形態において、その酵素は、その反応混合物に同時に添加され得る。
【0012】
本発明の独特で進歩的な技術特徴の1つは、グリセロールから出発するゲラニルピロリン酸(GPP)および追加の二次代謝産物の生成のための無細胞系の使用である。本発明をいかなる理論にも機構にも限定することは望まないが、本発明の技術的特徴は、有利なことに、より高い反応濃度、生成物および基質の拡散のために戦うべき細胞壁がないこと、炭素フラックスおよび副産物形成について細胞中での競合がないこと、毒性化合物の形成が原因である細胞死がないこと(細胞が存在しない)、および多数の化合物を生成するためのプラットフォーム溶液として、毎回再プログラム化されなければならない細胞と比較して増加した柔軟性を提供すると、考えられる。このアプローチにおいて、経路中の酵素を単に変えるだけで、新規化学実体を生成し得る。
【0013】
さらに、先行文献は、本発明から遠ざかることを教示している。例えば、Valliereら(2019)は、グルコースからのカンナビジオール(CBD)の生成における中間体としてGPPを生成するために、より複雑な無細胞系を使用した。本発明の経路は、高価な補因子のうちの60%、10種の酵素、および精巧なパージバルブを排除し、代替的出発物質を使用する。本発明は、Valliereらのアプローチとは10種の酵素を共有するが、本発明は、10種の酵素すべてを固定し最適化することによって、酵素の活性、寿命および信頼性を顕著に改善した。注目すべきことに、Valliereらは、反応混合物中でのすべての酵素のインキュベーション後に酵素の沈殿を示すデータを含む。これらの酵素の沈殿はまた、反応混合物中で合わせたほんの16時間程度後に作業を反復する場合にも観察され、上記研究を厳しく制限した。重要な成功は、12種の酵素の各々を固定して、沈殿を排除することによって、それらの酵素が反応混合物中で長期間活性のままでいることを可能にしたことであった。
【0014】
さらに、本発明の進歩的な技術的特徴は、驚くべき結果に寄与した。本発明の経路中の第1モジュールは、Gaoら(2015)において報告されたとおりアルジトールオキシダーゼ(ALDO)の活性とジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)の活性を組み合わせることによって、グリセロールをピルビン酸へと変換する。驚くべきことに、本発明は、ピルビン酸をグリセロールから首尾良く生成するためには、この公開された研究に対していくつかの改変を行わなければならなかった。第一に、マルトース結合タンパク質をStreptomycesのALDOのN末端に添加して、その酵素(配列番号1)の活性を維持しながら溶解度および安定性を補助した。第二に、MBP-ALDOは、最適な活性のためには酸素化を必要としたことが、見出された。第三に、Gaoら(2015)において報告されたSulfolobus solfataricusのDHADは、機能しなかった。多くのDHADオルソログをスクリーニングし、Thermosynechococcus vulcanusのDHAD(配列番号2)が最も活性であることが、見出された。第四に、DHADは、最適な活性のためには脱酸素化および非常に特異的なpH範囲を必要としたことが、見出された。
【0015】
本明細書において記載されるあらゆる特徴または特徴の組合せは、文脈、本明細書および当業者の知識から明らかであるとおり、任意のそのような組合せに含まれる特徴が相互に矛盾しない限りは、本発明の範囲内に含まれる。本発明のさらなる利点および局面が、以下の詳細な説明および特許請求の範囲において明らかである。
【0016】
(図面のいくつかの図の簡単な説明)
本発明の特徴および利点は、提示される以下の詳細な説明を添付の図面と組み合わせて考慮することから明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、ゲラニルピロリン酸(GPP)の生成のために使用される経路(左、
図1A)を、グルコースからGPPへの以前の試み(右、
図1B)と対比して示す。示されるとおり、左(
図1A)の経路は、70%少ない補因子および10個少ない酵素を有する。
【0018】
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、カンナビゲロール酸(CBGA)のHPLCトレースを、CBGA標準物質(上、
図2A)および固定した酵素バッチ反応(下、
図2B)の両方について示す。228nmにて3.68分の保持時間が、両方の反応について認められる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本化合物、組成物および方法が開示され記載される前に、具体的な合成方法または具体的な組成物は当然変化し得るので、本発明はそれらに限定されないことが、理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載することだけを目的とし、限定することは意図されないこともまた、理解されるべきである。
【0020】
さらに、本開示の実施形態が詳細に記載されてきたが、本明細書において記載される特徴および利点すべてを提供するわけではない実施形態を含む特定の変化形および改変が、当業者にとって明らかになる。本開示は、具体的に開示された実施形態を越えて、他の代替的もしくは追加の実施形態および/または使用ならびにそれらの自明な改変および等価物にまで及ぶことが、当業者によって理解される。さらに、多くの変化形が種々の詳細さで示され記載されてきたが、本開示の範囲内にある他の改変が、本開示に基づいて当業者にとって容易に明らかになる。それらの実施形態の具体的な特徴および局面の種々の組合せまたは部分的組合せが行われ得、依然として本開示の範囲内にあることもまた、企図される。したがって、開示される実施形態の種々の特徴および局面は、本開示の種々の形態を形成するために互いに組み合わされてもよく、または互いに置換されてもよいことが、理解されるべきである。したがって、本明細書において開示される開示の範囲は、本明細書において記載される特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが、意図される。
【0021】
本明細書において使用される場合、文脈によって明確に違うと示されない限りは、単数形「a」、「an」、および「the」は複数形もまた含むことが意図される。さらに、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「含む(有する)(with)」またはそれらの変化形が詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかで使用される限り、そのような用語は、用語「含む(comprising)」と同様の様式で包括的であることが意図される。
【0022】
本明細書において使用される場合、「反応溶液」とは、酵素ベースの化学変換に必要なすべての成分を指し得る。これは、代表的には、緩衝化剤、塩、補因子、および基質(すなわち、出発物質)であるが、それらに限定はされない。
【0023】
本明細書において使用される場合、「反応混合物」とは、「反応溶液」からのすべての成分と、それに加えて酵素および/または反応生成物を指し得る。一部の実施形態において、「反応混合物」とは、いかなる酵素も反応生成物も含まない、反応溶液のみを指し得る。
【0024】
一部の実施形態において、「反応溶液」と「反応混合物」とは、交換可能に使用され得る。
【0025】
本明細書において使用される場合、「緩衝化剤」とは、酸-塩基共役成分の作用によってpH変化に抵抗する水ベースの溶液に添加された化学物質を指し得る。
【0026】
本明細書において使用される場合、「上清」とは、サンプルの可溶性液体画分を指し得る。
【0027】
本明細書において使用される場合、「バッチ反応」とは、閉鎖系(発酵槽または典型的反応フラスコなど)において実施される化学反応または生化学反応を指し得る。
【0028】
本明細書において使用される場合、「補因子」とは、タンパク質に結合し、生物学的な化学反応を支援し得る、非タンパク質化合物を指し得る。補因子は、金属イオン、有機化合物、または他の化学物質であり得る。補因子の非限定的例としては、ATPおよびNADPHが挙げられ得るが、それらに限定はされない。
【0029】
本明細書において使用される場合、「補因子リサイクリング」とは、酵素触媒反応に関与可能な機能的補因子の再生を指し得る。この再生の非限定的例は、一次酵素反応によって生成される変化した補因子に作用する別個の反応(ADPをATPに戻す酵素変換など)である。
【0030】
ここで
図1A、
図1B、
図2A、および
図2Bを参照すると、本発明は、ゲラニルピロリン酸(GPP)および追加の二次代謝産物をグリセロールから生成する方法を特徴とする。
【0031】
これは、グリセロールをゲラニルピロリン酸(GPP)および追加の二次代謝産物へと変換する方法を特徴とする。一部の実施形態において、その方法は、グリセロールを反応混合物に添加する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、複数の酵素を上記反応混合物に添加する工程を含む。一部の実施形態において、それらの酵素は、アルジトールオキシダーゼ(Aldo)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)、ピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)、リン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA)、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(PhaA)、HMG-CoAシンターゼA110G(HMGS)、HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)、メバロン酸キナーゼ(MVK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMVK)、ジホスホメバロン酸キナーゼ(MDC)、イソペンチル-PPイソメラーゼ(IDI)、およびファルネシル-PPシンターゼS82F(FPPS)からなる群より選択される。一部の実施形態において、その方法は、上清を上記反応混合物から除去する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、GPPを単離または生成する工程を含む。
【0032】
本発明はまた、グリセロールをゲラニルリン酸(GPP)および追加の二次代謝産物へと変換する方法も特徴とする。一部の実施形態において、その方法は、グリセロールおよびアルジトールオキシダーゼ(Aldo)を反応混合物に添加する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)をその反応混合物に添加する工程をさらに含む。一部の実施形態において、その方法は、上記反応混合物の上清を除去する工程、およびピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)をその反応混合物の上清に添加する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、上記反応混合物の上清を除去する工程、ならびにその反応混合物の上清へ、リン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA)、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(PhaA)、HMG-CoAシンターゼA110G(HMGS)、HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)、メバロン酸キナーゼ(MVK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMVK)、ジホスホメバロン酸キナーゼ(MDC)、イソペンチル-PPイソメラーゼ(IDI)、およびファルネシル-PPシンターゼS82F(FPPS)からなる群より選択される少なくとも2種の酵素を添加する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、上記反応混合物から上清を除去する工程、およびGPPを生成または単離する工程を含む。
【0033】
一部の実施形態において、少なくとも1種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも2種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも3種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも4種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも5種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも6種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも7種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも8種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも9種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも10種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも11種の酵素が、その反応混合物に添加される。一部の実施形態において、少なくとも12種の酵素が、その反応混合物に添加される。
【0034】
一部の実施形態において、その酵素は、その反応混合物に非同期的に添加され得る。他の実施形態において、その酵素は、その反応混合物に同時に添加され得る。
【0035】
一部の実施形態において、その方法は、その反応混合物からの上清の最終的除去の前にNphB酵素を添加してGPPをカンナビゲロール酸(CBGA)に変換する工程をさらに含む。一部の実施形態において、CBGAが使用されて、上記方法において生成されるGPPの量が決定される。一部の実施形態において、CBGAの生成が、分析ツールとして使用される。一部の実施形態において、NphBによるGPPからのCBGAの生成が、検出方法として使用される。一部の実施形態において、NphBによるCBGAの生成が使用されて、GPPの量が検出される。一部の実施形態において、CBGAがNphB酵素によるGPPの変換から生成される量は、1:1である。
【0036】
一部の実施形態において、本明細書において記載される反応混合物は、補因子を含む。一部の実施形態において、その補因子は、アデノシン三リン酸(ATP)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、本明細書において記載される方法は、補因子リサイクリングを利用した。一部の実施形態において、その補因子は、リサイクルされる。一部の実施形態において、その方法は、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、およびポリリン酸キナーゼ2(PPK2)をその反応混合物に添加する工程をさらに含む。一部の実施形態において、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、およびポリリン酸キナーゼ2(PPK2)がその反応混合物に添加されて、補因子がリサイクルされる。
【0037】
一部の実施形態において、反応の温度は、約22℃~約50℃の範囲であり得る。一部の実施形態において、反応の温度は、約20℃である。一部の実施形態において、反応の温度は、約25℃である。一部の実施形態において、反応の温度は、約30℃である。一部の実施形態において、反応の温度は、約35℃である。一部の実施形態において、反応の温度は、約40℃である。一部の実施形態において、反応の温度は、約45℃である。一部の実施形態において、反応の温度は、約50℃である。一部の実施形態において、反応の温度は、約55℃である。
【0038】
一部の実施形態において、反応のpHは、約6.5~約9.0の範囲であり得る.一部の実施形態において、反応のpHは、約5.0である。一部の実施形態において、反応のpHは、約5.5である。一部の実施形態において、反応のpHは、約6.0である。一部の実施形態において、反応のpHは、約6.5である。一部の実施形態において、反応のpHは、約7.0である。一部の実施形態において、反応のpHは、約8.5である。一部の実施形態において、反応のpHは、約9.0である。一部の実施形態において、反応のpHは、約9.5である。一部の実施形態において、反応のpHは、約10.0である。
【0039】
一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約2時間~約32時間の範囲であり得る。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約0.5時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約1時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約2時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約5時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約10時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約15時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約20時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約25時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約30時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約35時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約40時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約45時間である。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、45時間よりも長い。
【0040】
一部の実施形態において、酵素は、固定されている。一部の実施形態において、固定された酵素が、固体支持体に固定されている。固体支持体の非限定的な例としては、エポキシメタクリレート、アミノC6メタクリレート、または微孔質ポリメタクリレートが挙げられ得るが、それらに限定はされない。さらなる実施形態において、種々の界面化学が、その固定した酵素を固体表面に連結するために使用され得、それには、共有結合、吸着、イオン性、親和性、カプセル封入、または捕捉が挙げられるが、それらに限定はされない。他の実施形態において、酵素は、固定されていない.
【0041】
一部の実施形態において、それらの酵素のうちの1種または複数種が、固定されている。他の実施形態において、それらの酵素すべてが、固定されている。一部の実施形態において、それらの酵素のうちの1種または複数種が、固定されていない。他の実施形態において、それらの酵素すべてが、固定されていない。一部の実施形態において、複数の酵素が、固定されている。他の実施形態において、複数の酵素が、固定されていない。
【0042】
一部の実施形態において、種々の反応条件が、機能的酵素を確実にするために変更され得、それには、反応時間、酸素化/脱酸素化、pH、緩衝化剤、および反応温度が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0043】
一部の実施形態において、本明細書において記載される方法は、以前に記載された方法から遠ざかることを教示する。その理由は、本願方法は、GPPを生成するために、より少ない酵素および補因子しか利用しなかったからである。特定の実施形態において、本明細書において記載される方法は、Valliereらによって使用された24補因子当量(または60%の補因子)を使用しない。特定の実施形態において、Valliereらによって教示された酵素のうちの10種しか、本願方法において使用されない。
【実施例】
【0044】
(実施例)
【0045】
以下は、本発明の非限定的な実施例である。この実施例は本発明をいかなる様式でも限定することは意図されないことが、理解されるべきである。等価物または置換物は、本発明の範囲にある。
【0046】
(酵素の発現および精製):すべての遺伝子を合成し、発現プラスミド中にクローン化し、その後、発現のためにE.coli中に形質転換した。細胞を、50μg/mLの硫酸カナマイシンを補充したTB培地において37℃および200rpmにてA600=0.6まで増殖させた。細胞を18℃に冷却し、発現を誘導し、さらに18時間増殖させた。細胞ペレットを遠心分離によって収集し、凍結させ、その後、細胞ペースト1g当たり5mLの溶解緩衝液(50mM Tris(pH8.0)、300mM NaCl、5%グリセロール、1mM PMSF)中に再懸濁した。細胞溶解物を超音波処理によって調製し、細胞残屑を遠心分離によって除去した。清澄になった溶解物を、IMAC-ニッケル樹脂を含むGE XKシリーズのカラムにロードした。タンパク質を、緩衝液A(50mM Tris(pH8.0)、300mM NaCl、10%グリセロール)から70%緩衝液B(2Mイミダゾール、50mM Tris(pH8.0)、300mM NaCl、10%グリセロール)への15CV勾配を使用して溶出させた。目的のタンパク質を含む画分をプールし、GE HiPrep 26/10脱塩カラムを用いて緩衝液A(上記)中に移行させ、ただしMBP-Aldoは例外とし、これを50mM Tris(pH 8.0)、500mM NaCl、0.1% Triton(登録商標)X-100中に保存した。
【0047】
(1.0 固定していない無細胞経路によるGPPの生成):本明細書におぃて記載されるとおり、この経路は、まず、アルジトールオキシダーゼ(Aldo、EC 1.1.3.41)を使用してグリセロールをグリセリン酸へと変換し、その後、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD、EC 4.2.1.9、
図1A)を使用してピルビン酸へと変換した。最初の2種の酵素を記載したが、いくつかの顕著な進歩が、この経路を機能させるためには必要であった。その理由は、以前に報告された研究は再現できなかったからである。
【0048】
機能的酵素を確実にするために、時限式反応酸素化、脱酸素化、pH変化、特定の緩衝液、および反応温度などの特定の反応条件を、見出す必要があった。第一に、報告されたAldoは、不安定で不活性である。これを克服するために、溶液中での溶解度および安定性を改善するために融合マルトース結合タンパク質(MBP)タグを含む、改変型Aldo(配列番号1)を作製した。このMBP融合型Aldoは、グリセロールをグリセリン酸へと変換した(100%、1.75g/L)。第二に、Sulfolobus solfataricusのDHADを用いた公開された反応もまた、再現可能ではなかった。これを克服するために、多くのDHAD酵素オルソログをスクリーニングし、Thermosynechococcus vulcanus由来のDHADが100%のグリセリン酸をピルビン酸(1.32g/L)へ変換したことを。見出した。
【0049】
これらの新規な酵素を用いて、Aldo(11μM)およびDHAD(16μM)の両方を含むワンポット反応が、グリセロールをピルビン酸へと変換した(100%変換、収量1.23g/L)。グルコースから出発する以前の研究と比較して、本改良システムは、14mMのピルビン酸を24時間で提供し、補因子を使用することがなく、9種少ない酵素は、顕著な改善を提供した。グルコースからの以前の試みは、多くのさらなる酵素、補因子、および反応製造複雑化(タンパク質沈殿など)を必要とすることもまた、留意されるべきである。これらの制約を除去することは、安価な炭素源からGPPへの商業的に実行可能なアプローチを可能にする。
【0050】
AldoおよびDHADの最適化の後、ピルビン酸をゲラニルピロリン酸に変換する、経路中の残りの酵素を、生成し最適化しなければならなかった(GPP、
図1Aおよび
図1B)。個々の酵素の最適化の後、GPPを得た(120時間で43mg/L)。この結果は、GPP製造のためにはるかに少ない補因子しか用いない、このより短い改良型経路を検証したが、数日後にタンパク質沈殿が観察され、このことは、このアプローチが商業生産には適しないだろうことを意味した。この制限を克服するために、この経路中の各酵素を固体支持体に固定して、タンパク質が活性で使用可能なままであることを確実にした。これは、個々の酵素-固体支持体複合体を作製するために広範な最適化および理解を必要とした。
【0051】
(2.0 タンパク質の固定および最適化):安定性、寿命、および触媒作用を増加させるために、その経路中の精製酵素各々を、固体支持体に固定した。種々の市販の支持体物質を、生成物および基質の保持、酵素の保持、および固定した酵素の活性について、通常通りにスクリーニングした。その支持体コレクションは、以下の型の連結のための種々の界面化学を含んだ:共有結合、吸着、イオン性、親和性、カプセル封入、および捕捉。代表的には、50mgの樹脂を4.0mgの酵素と脱塩緩衝液中で16時間~24時間、室温にて混合した。BCAアッセイまたはBradfordアッセイのいずれかによって固定前および固定後の溶液中のタンパク質濃度を測定することによって、固定した酵素の量を定量した。固定した酵素すべてを、樹脂の型、基質濃度(5mM~250mM)、pH(5.0~9.0)、温度(20℃~50℃)、緩衝化剤(Tris、HEPES、PO4)、および時間(1時間~36時間)について最適値についてスクリーニングした。各酵素について最適な反応条件および結果は、以下のとおりである(表1A)。
【0052】
【0053】
上記の表中の収率パーセントは、例示目的のために提示される。一部の実施形態において、GPPバイオ製造プロセスの各工程は、99%まで、99.5%まで、99.9%まで、または100%までの収率パーセントを有し得る。一部の実施形態において、GPPバイオ製造プロセスの各工程における収率パーセントは、以下の表(表1B)中の範囲内にある値を有し得る。
【0054】
【0055】
(2.1 アルジトールオキシダーゼ(Aldo)の最適化):MBP-Aldoを、活性化アミノC6メタクリレート樹脂に固定した。その固定した酵素を使用して、グリセロールをグリセリン酸へと変換した。その反応溶液(50mM Tris(pH9)、2.5mM MgCl2、20mMグリセロール)を、50μMの固定した酵素と37℃にて21時間混合した。固定したMBP-Aldoは、100%の20mMグリセロールを変換して20mM(1.75g/L)のグリセリン酸を生じた。サンプリングのために、その反応混合物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。このHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、マイクロガードカチオンHリフィルカートリッジを備えた30cm Aminex HPX-87Hカラムを取り付けた。このカラムを55℃に加熱し、サンプルブロックを25℃にて維持した。各サンプルについて、1μLを注入し、100%硫酸(10mM)で構成される移動相を使用した。サンプル時間は合計45分であり、グリセリン酸が17.2分で溶出し、グリセロールが21.0分で溶出した。2時間の平衡期間により安定なベースラインを生じた後に、Refractive Index Detector(RID、Agilent)を使用した。
【0056】
(2.2 ジヒドロキシデヒドラターゼ(DHAD)の最適化):DHADを活性化アミノC6メタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してグリセリン酸をピルビン酸へと変換した。その反応溶液(50mM Tris(pH8.5)、2.5mM MgCl2、20mMグリセリン酸)を50μMの固定した酵素と45℃にて16時間混合した。固定したDHADは、収量15mM(1.32g/L、75%)のピルビン酸のために99%の20mMグリセリン酸を変換可能であった。サンプリングのために、その反応混合物をHPLCシステムにて検査して、グリセロールおよびグリセリン酸の量を調べた。このHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、マイクロガードカチオンHリフィルカートリッジを備えた30cm Aminex HPX-87Hカラムを取り付けた。このカラムを55℃に加熱し、サンプルブロックを25℃にて維持した。各サンプルについて、1μLを注入し、100%硫酸(10mM)で構成されるアイソクラティック勾配を移動相として使用した。サンプル時間は合計45分であり、ピルビン酸が16.0分で溶出し、グリセリン酸が17.2分で溶出した。2時間の平衡期間により安定なベースラインを生じた後に、Refractive Index Detector(Agilent)を使用した。
【0057】
(2.3 ピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)の最適化):PyOxを活性化アミノC6メタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用して、ピルビン酸をアセチルリン酸へと変換した。その反応溶液(10mM Tris、50mM KH2PO4、50mM K2HPO4、pH6.5、5.0mM MgCl2、100mM NaCl、20mMピルビン酸、20mMチアミンピロリン酸)を3.85μMの固定した酵素と37℃にて16時間混合した。固定したPyOxは、収量4.55mM(837mg/L)のアセチルリン酸のために91%の5mMピルビン酸を変換可能であった。サンプリングのために、その反応液をHPLCシステムにて検査して、ピルビン酸およびアセチルリン酸の量を調べた。このHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、マイクロガードカチオンHリフィルカートリッジを備えた30cm Aminex HPX-87Hカラムを取り付けた。このカラムを55℃に加熱し、サンプルブロックを25℃にて維持した。このHPLC方法は5μlサンプル注入体積で構成され、100%硫酸(10mM)で構成されるアイソクラティック勾配を移動相として使用した。実行時間は合計25分であり、アセチルリン酸が23.6分で溶出し、ピルビン酸が16.0分で溶出した。2時間の平衡期間により安定なベースラインを生じた後に、Refractive Index Detector(Agilent)を使用した。
【0058】
(2.4 リン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA)の最適化):PTAをエポキシメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してアセチルリン酸をアセチルコエンザイムA(アセチルCoA)へと変換した。その反応溶液(10mM Tris、50mM KH2PO4、50mM K2HPO4、pH 8.0、5.0mM MgCl2、100mM NaCl、3.2mMアセチルリン酸、3.2mM CoA)をその固定した酵素と32℃にて8時間混合した。固定したPTA(38.4μM)は、収量1.92mM(1.7g/L)のアセチルCoAのために60%の3.2mMアセチルリン酸を変換可能であった。サンプリングのために、その反応液をHPLCシステムにて検査して、アセチルリン酸およびアセチルCoAの量を調べた。このHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、BetaSil C18 20mm×2.1mmガードカラムを備えたHYPERSIL ODS COLUMN 150mm×3mmを取り付けた。このカラムを25℃に加熱し、サンプルブロックを4℃にて維持した。HPLC方法は5μlサンプル注入体積で構成され、アイソクラティック移動相が、75mM CH3COONa(酢酸ナトリウム)および100mM NaH2PO4(リン酸二水素ナトリウム)をアセトニトリル(ACN)と比率94:6で混合して構成された。実行時間は合計12分であり、アセチルCoAが8.5分で溶出し、コエンザイムA(CoA)が3.9分で溶出した。ダイオードアレイ検出器(Agilent)を、259nmでの目的分子の検出のために使用した。
【0059】
(2.5 アセチルコエンザイムA C-アセチルトランスフェラーゼ(PhaA)の最適化):PhaAをエポキシメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してアセチルCoAをアセトアセチルCoAへと変換した。その反応溶液(50mM Tris、50mM KH2PO4、50mM K2HPO4、pH8.0、5.0mM MgCl2、100mM NaCl、2.5mMアセチルCoA)をその固定した酵素と32℃にて8時間混合した。固定したPhaA(20μM)は、収量1.1mM(1.1g/L)のアセトアセチルCoAのために44%の2.5mMアセチルCoAを変換可能であった。AcCoAおよびアセトアセチルCoAの保持時間は一致している。したがって、PhaA活性を、この反応において生成されたCoAの量に基づいて測定した。その理由は、CoAとアセトアセチルCoAとは等モル量で生成されるからである。サンプリングのために、その反応液をHPLCシステムにて検査して、AcCoAおよびCoAの量を調べた。このHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、BetaSil C18 20mm×2.1mmガードカラムを備えたHYPERSIL ODS COLUMN 150mm×3mmを取り付けた。このカラムを25℃に加熱し、サンプルブロックを4℃にて維持した。HPLC方法は5μlサンプル注入体積で構成され、アイソクラティック移動相が、75mM CH3COONaおよび100mM NaH2PO4をACNと比率94:6で混合して構成された。実行時間は合計12分であり、アセチルCoAが8.5分で溶出し、コエンザイムAが3.9分で溶出した。ダイオードアレイ検出器(Agilent)を、259nmでの目的分子の検出のために使用した。
【0060】
(2.6 ヒドロキシメチルグルタリルCoAシンターゼ(HMGS)の最適化):HMGSをエポキシメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してアセトアセチルCoAをHMG-CoAへと変換した。その反応溶液(50mM Tris、100mM NaCl、5mM MgCl2、pH7.5、5mMアセトアセチルCoA)を0.5μMの固定した酵素と32℃にて2時間混合した。2時間後、その反応溶液を20.7μMのHMGRおよび5mMのNADPHとともにインキュベートした。HMGRを使用してNADPHをNADP+へと変換する。したがって、反応成績を340nmにてモニターし得る。この共役反応は、54%の出発物質をメバロン酸(2.7mMまたは416mg/L)へと変換可能であった。HMGRの活性を、340nmでのNADPHの損失を分光光度計を使用してモニターすることによって測定した。
【0061】
(2.7 ヒドロキシメチルグルタリルCoAレダクターゼ(HMGR)の最適化):HMGRをエポキシメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してNADPHをNADP+へと変換した。その反応溶液(50mM Tris、100mM NaCl、5mM MgCl2、pH7、0、5mM NADPH)を0.4μMの固定した酵素と32℃にて2時間混合した。固定したHMGRは、収量4.9mM NADP+のために98%の5mM(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を変換可能であった。この収量は、この反応において生成されるメバロン酸(4.9mMまたは755mg/L)と等モルである。HMGRの活性を、340nmでのNADPHの損失を分光光度計を使用してモニターすることによって測定した。
【0062】
(2.8 メバロン酸キナーゼ(MVK)の最適化):MVKをマクロ孔質ポリメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してメバロン酸をメバロン酸-5-リン酸へと変換した。反応溶液(50mM Tris、5mM MgCl2、pH8、4mM ATP、4mMメバロン酸)を133μMの固定した酵素と37℃にて8時間混合した。固定したMVKは、収量3.16mM(1.68g/L)のADPのために79%の4mM ATPを変換可能であった。サンプリングのために、その反応混合物をHPLCシステムにて検査して、アデノシン三リン酸(ATP)およびアデノシン二リン酸(ADP)の量を調べた。そのHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、BetaSil C18 20mm×2.1mmガードカラムを備えたHYPERSIL ODS COLUMN 150mm×3mmを取り付けた。このカラムを25℃に加熱し、サンプルブロックを4℃にて維持した。HPLC方法は、5μlサンプル注入体積で構成され、アイソクラティック移動相が、100mMのKH2PO4(リン酸二水素カリウム)、8mMのTBAHS(硫酸水素テトラブチルアンモニウム)、pH6.0、20%のメタノール(体積/体積)で構成された。実行時間は合計10分であり、ATPが5.7分で溶出し、ADPが4.6分で溶出した。ダイオードアレイ検出器(Agilent)を、254nmでの目的分子の検出のために使用した。
【0063】
(2.9 ホスホメバロン酸キナーゼ(PMVK)の最適化):PMVKをアミノC6メタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してメバロン酸-5-リン酸をメバロン酸-5-ピロリン酸へと変換した。その反応溶液(50mM Tris、5mM MgCl2、pH8、4mM ATP、4mMメバロン酸-5-リン酸)を160μMの固定した酵素と37℃にて32時間混合した。固定したMVKは、収量3.84mM(1.79g/L)のADPのために96%の4mM ATPを変換可能であった。サンプリングのために、その反応液をHPLCシステムにて検査して、ATPおよびADPの量を調べた。そのHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、BetaSil C18 20mm×2.1mmガードカラムを備えたHYPERSIL ODS COLUMN 150mm×3mmを取り付けた。このカラムを25℃に加熱し、サンプルブロックを4℃にて維持した。HPLC方法は、5μlサンプル注入体積で構成され、アイソクラティック移動相が、100mM KH2PO4、8mM TBAHS、pH6.0、20%のメタノール(体積/体積)で構成された。実行時間は合計10分であり、ATPが5.7分で溶出し、ADPが4.6分で溶出した。ダイオードアレイ検出器(Agilent)を、254nmでの目的分子の検出のために使用した。
【0064】
(2.10 ジホスホメバロン酸キナーゼ(MDC)の最適化):MDCをエポキシメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してメバロン酸-5-ピロリン酸をイソペンテニルピロリン酸へと変換した。反応溶液(50mM Tris、5mM MgCl2、pH8、4mM ATP、4mMメバロン酸-5-ピロリン酸)を、160μMの固定した酵素と37℃にて32時間混合した。固定したMVKは、収量1.8mM(839mg/L)のADPのために94%の2mM ATPを変換可能であった。サンプリングのために、その反応液をHPLCシステムにて検査して、ATPおよびADPの量を調べた。そのHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、BetaSil C18 20mm×2.1mmガードカラムを備えたHYPERSIL ODS COLUMN 150mm×3mmを取り付けた。このカラムを25℃に加熱し、サンプルブロックを4℃にて維持した。HPLC方法は、5μlサンプル注入体積で構成され、アイソクラティック移動相が、100mM KH2PO4、8mM TBAHS、pH6.0、20%のメタノール(体積/体積)で構成された。実行時間は合計10分であり、ATPが5.7分で溶出し、ADPが4.6分で溶出した。ダイオードアレイ検出器(DAD)を、254nmでの目的分子の検出のために使用した。
【0065】
(2.11 イソペンテニル二リン酸Δイソメラーゼ(IDI)の最適化):IDIをマクロ孔質ポリメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してイソペンテニルピロリン酸(IPP)をジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)へと変換した。その反応溶液(50mM Tris(pH8)、5mM MgCl2、10mM NaCl、0.24mM IPP)を86μMの固定した酵素と25℃にて2時間混合した。その後、その反応混合物を、0.24mMのオリベトール酸、85μM NphB、および29.7μM FPPSとともに2時間インキュベートした。完了した反応物を酢酸エチルで3回抽出し、蒸発させ、その後で、反応混合物中に存在するCBGAの量を調べるためのHPLCシステムでの分析のためにメタノール中に再懸濁した。この共役反応は、28%の出発物質を21.3mg/Lの生成物へと変換可能であった。そのHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、ガードカラムを備えた250mm×4.6mmの5μm liChrospher RP8カラムを取り付けた。このカラムを30℃に加熱し、サンプルブロックを25℃にて維持した。HPLC方法は、5μlサンプル注入体積で構成され、アイソクラティック移動相が、25%の緩衝液A(水、0.1%ギ酸、5mMギ酸アンモニウム)および75%の緩衝液B(アセトニトリル、0.1%ギ酸、5mMギ酸アンモニウム)で構成された。この反応で生成されたCBGAを、228nmにてDADを使用して測定した。実行時間は合計10分であり、CBGAが3.68分で溶出した。
【0066】
(2.12 ポリプレニルシンテターゼファミリータンパク質(FPPS)の最適化):FPPSをマクロ孔質ポリメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してイソペンテニルピロリン酸(IPP)およびジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)をゲラニルピロリン酸(GPP)へと変換した。その反応溶液(50mM Tris(pH8)、5mM MgCl2、10mM NaCl、0.24mM IPP、0.24mM DMAPP、0.24mMオリベトール酸(OA))および120μMのNphBタンパク質を、86μMの固定した酵素と25℃にて4時間混合した。固定したFPPSは、収量195μMのGPPのために81%の240μM IPPおよび240μM DMAPPを変換可能であった。GPP生成の分析は、GPPとオリベトール酸とを合わせてCBGAを生成するプレニルトランスフェラーゼ(NphB)の活性に結びついている。完了した反応物を酢酸エチルで3回抽出し、蒸発させ、反応混合物中に存在するCBGAの量を調べるためのHPLCシステムでの分析のためにメタノール中に再懸濁した。そのHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、ガードカラムを備えた250mm×4.6mmの5μm liChrospher RP8カラムを取り付けた。このカラムを30℃に加熱し、サンプルブロックを25℃にて維持した。HPLC方法は、5μlサンプル注入体積で構成され、アイソクラティック移動相が、25%の緩衝液A(水、0.1%ギ酸、5mMギ酸アンモニウム)および75%の緩衝液B(アセトニトリル、0.1%ギ酸、5mMギ酸アンモニウム)で構成された。この共役反応は、カンナビゲロール酸(CBGA)を129.6μMまたは41mg/Lで生じた。この反応において生成されたCBGAを、228nmにてDADを使用して測定した。実行時間は合計10分であり、CBGAが3.68分で溶出した。
【0067】
(2.13 ポリリン酸キナーゼ2(PPK2)の最適化):PPK2をエポキシメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してADPをATPへと変換してこの補因子をリサイクルした。反応溶液(10mM Tris(pH9)、10mM MgCl2、10mM NaCl、5.0mMポリリン酸(polyphosphate)、5.0mM ADP)を、95μMの固定した酵素と37℃にて1時間混合した。固定したPPK2は、収量5.0mMのATP(100%、2.5g/L)のために5.0mMのADPを変換可能であった。サンプリングのために、その反応液をHPLCシステムにて検査して、その反応混合物中に存在するATPおよびADPの量を調べた。そのHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、BetaSil C18 20mm×2.1mmガードカラムを備えたHYPERSIL ODS Column 150mm×3mmを取り付けた。このカラムを25℃に加熱し、サンプルブロックを4℃にて維持した。各サンプルについて、5μlを注入し、アイソクラティック移動相が、100mM KH2PO4、8mM TBAHS、pH6.0、20%のメタノールで構成された。実行時間は合計10分であり、ATPが5.7分で溶出し、ADPが4.6分で溶出した。ダイオードアレイ検出器(DAD)を、254nmでの目的分子の検出のために使用した。
【0068】
(2.14 グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)の最適化):GDHをエポキシメタクリレート樹脂と混合し、その固定した酵素を使用してNADP+をNADPHへと変換してこの必須の補因子をリサイクルした。その反応溶液(50mM Tris(pH9)、20mMグルコース、5.0mM NADP+)を、200μMの固定した酵素と22℃にて15分間混合した。固定したGDHは、5.0mMのNADPH(100%、3.7g/L)を生じるように5.0mMのNADP+を変換可能であった。GDHの活性を、この反応溶液のNADPH濃度を340nmにてプレートリーダーで測定することによって検出した。
【0069】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
*注記:ピルビン酸オキシダーゼ(PyOx、Aerococcus viridans)は、AG Scientific(製品P-1600)から購入した。
【0070】
(3.0 グリセロールからGPPを生成するためのすべて固定した酵素の使用):遊離酵素を用いたグリセロールからのGPPの生成を示し、必要な個別の酵素のすべてが固定された場合に活性であることもまた示した後で、次の目標は、固定した酵素を使用してグリセロールからGPPを生成することであった。各酵素を、表3において列挙した10mgの樹脂に固定した。精製した酵素を樹脂と21℃にて18時間混合し、固定した酵素を単一チューブにプールした。
【0071】
【0072】
この多段階反応のために、最初の3種の酵素(Aldo、DHAD、およびPyOX)を、最初にバッチリアクターに順次添加した。最初に、固定したMBP-Aldoを、反応溶液(50mM Tris(pH9)、2.5mM MgCl
2、10mMグリセロール)に37℃にて18時間添加した。次に、固定したDHADをその反応溶液に添加し、45℃にて18時間インキュベートした。その上清を、その固定した酵素から除去し、その反応溶液を調整して50mMのNaCl、20mMのリン酸カリウム(pH6.5)、10mMのチアミンピロリン酸を含むようにし、最後に、その反応溶液のpHをpH6.0に調整した。その後、固定したPyOxを、その反応溶液に37℃にて16時間添加した。その後、その上清を、固定した酵素から除去し、その反応溶液を調整して50mMのTris、20mMのリン酸カリウム、2.5mMのMgCl
2、50mMのNaCl、10mMのNADPH、10mMのATP、10mMのCoA、4mMのオリベトール酸、およびpH8.0を最終体積1.0mLについて含むようにした。この経路中の残りの10種の固定した酵素を、この反応混合物に添加した。この反応を37℃にて5日間実行した後、酢酸エチル(2×200μL)で抽出し、減圧下で蒸発させ、この反応混合物中に存在するCBGAの量を調べるためのHPLCシステムでの分析のためにメタノール(1mL)中に再懸濁した。そのHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、ガードカラムを備えた250mm×4.6mmの5μm liChrospher RP8カラムを取り付けた。このカラムを30℃に加熱し、サンプルブロックを25℃にて維持した。HPLC方法は、5μlサンプル注入体積で構成され、25%の緩衝液A(水、0.1%ギ酸、5mMギ酸アンモニウム)および75%の緩衝液B(アセトニトリル、0.1%ギ酸、5mMギ酸アンモニウム)で構成されたアイソクラティック勾配を、移動相として使用した。この反応は、カンナビゲロール酸(CBGA)を155μMまたは49mg/Lで生じた(
図2Aおよび
図2B)。この反応で生成されたCBGAを、228nmにてDADを使用して測定した。実行時間は合計10分であり、CBGAが3.68分で溶出した。
【0073】
(4.0 補因子(ATPおよびNADPHのリサイクリング)を用いてグリセロールからGPPを生成するための固定した酵素の使用):固定したグリセロールからGPPへの経路の成功を示すことに加えて、その反応における2種の共通する補因子(ATPおよびNADPH)のリサイクリングを達成した。表4において示される固定した酵素の組成を、その反応において使用した。
【0074】
【0075】
この多段階反応のために、最初の3種の酵素(Aldo、DHAD、およびPyOX)を、最初にバッチリアクターに順次添加した。最初に、固定したMBP-Aldoを、反応溶液(50mM Tris(pH9)、2.5mM MgCl2、10mMグリセロール)に37℃にて18時間添加した。次に、固定したDHADをその反応溶液に添加し、45℃にて18時間インキュベートした。その上清を、その固定した酵素から除去し、その反応溶液を調整して50mMのNaCl、20mMのリン酸カリウム(pH6.5)、10mMのチアミンピロリン酸を含むようにし、最後に、その反応溶液のpHをpH6.0に調整した。その後、固定したPyOxを、その反応溶液に37℃にて16時間添加した。その後、その上清を、固定した酵素から除去し、その反応溶液を調整して50mMのTris、20mMのリン酸カリウム、2.5mMのMgCl2、50mMのNaCl、10mMのNADPH、10mMのATP、10mMのCoA、4mMのオリベトール酸、およびpH8.0を最終体積1.0mLについて含むようにした。残りの12種の酵素(表4に示されるとおり)を、最終体積1.0mL中で50mMのTris、20mMのリン酸カリウム、2.5mMのMgCl2、50mMのNaCl、3.3mMのNADPH、3.3mMのATP、5.0mMのポリリン酸、5.0mMのグルコース、10mMのCoA、4mMのオリベトール酸およびpH8.0の反応溶液に添加した。バッチ反応を37℃にて5日間継続させ、その後、酢酸エチル(3×200μL)で抽出し、減圧下で蒸発させ、この反応混合物中に存在するCBGAの量を調べるためのHPLCシステムでの分析のためにメタノール(1mL)中に再懸濁した。そのHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、ガードカラムを備えた250mm×4.6mmの5μm liChrospher RP8カラムを取り付けた。このカラムを30℃に加熱し、サンプルブロックを25℃にて維持した。このHPLC方法は、5μlサンプル注入体積で構成され、移動相が、25%の緩衝液A(水、0.1%ギ酸、5mMギ酸アンモニウム)および75%の緩衝液B(アセトニトリル、0.1%ギ酸、5mMギ酸アンモニウム)で構成された。この反応は、カンナビゲロール酸(CBGA)を114μMまたは36mg/Lで生じた。この反応で生成されたCBGAを、228nmにてDADを使用して測定した。実行時間は合計10分であり、CBGAが3.68分で溶出した。
【0076】
本明細書において使用される場合、用語「約」とは、言及された数±10%を指す。
【0077】
本発明の好ましい実施形態が示され記載されてきたが、添付の特許請求の範囲を越えない改変がそれらの本発明の好ましい実施形態に対して行われ得ることが、当業者にとって容易に明らかである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。一部の実施形態において、本出願において提示される図面は、角度、寸法比などを含んで正確な縮尺である。一部の実施形態において、図面は例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲は、図面の寸法によっては限定されない。一部の実施形態において、句「含む(comprising)」を使用して本明細書において記載された発明の記載は、「本質的にからなる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」として記載され得た実施形態を含み、したがって、句「本質的にからなる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」を使用して本発明の1つまたは複数の実施形態を特許請求することに関する記載要件は、満たされている。
【配列表】
【国際調査報告】