IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レイニオンズ コーポレーションの特許一覧

特表2024-500864負イオンベースの汚染物質低減のための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】負イオンベースの汚染物質低減のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/22 20060101AFI20231227BHJP
   B01D 53/44 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 53/66 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61L9/22 ZAB
B01D53/44
B01D53/50
B01D53/56
B01D53/62
B01D53/62 100
B01D53/66
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537712
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 US2021072991
(87)【国際公開番号】W WO2022133485
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】17/127,273
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523230074
【氏名又は名称】レイニオンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ディカルロ,マーク
【テーマコード(参考)】
4C180
4D002
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB02
4C180BB05
4C180BB09
4C180CA10
4C180HH05
4C180LL11
4C180LL20
4D002AA02
4D002AA08
4D002AA09
4D002AA12
4D002AA18
4D002AA40
4D002BA14
4D002CA07
4D002DA70
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB03
4D002GB04
4D002GB20
(57)【要約】
室内空気、屋外空気、乗り物排ガス、及び産業排ガスなどの様々な環境を浄化するための浄化システム及びそのようなシステムを使用する方法が提供される。浄化システムは、基板と活性コーティングとを有するイオン化浄化装置を備える。活性コーティングは、焦電性材料及び/又は圧電性材料を含む。運転中、流入ストリームは、活性コーティングに及ぼす平均圧力を制御しながら、活性コーティングの方に向けられる。この流入ストリームと活性コーティングの接触により、温度及び圧力/力/振動、その他の変化を通じて、流入ストリームの成分から負イオンが発生する。負イオンは次いで汚染物質と相互作用し、汚染物質を流出ストリームの安全で浄化された物質へ変換する。流入ストリームの汚染物質とは異なり、浄化された物質は無害であり、及び/又は、例えばフィルタリング及び/又は他の分離技術によって、流出ストリームから容易に除去することができる。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化システムを使用して流入ストリームを浄化し、流出ストリームを形成する方法であって、
前記流入ストリームを前記浄化システムのイオン化浄化装置に流し込むことであって、
前記流入ストリームは1種又は複数種の汚染物質を含み、
前記イオン化浄化装置は、基板と、前記基板上に配置され、焦電性及び/又は圧電性である材料を含む活性コーティングとを備える、
流し込むことと、
前記流入ストリームが前記活性コーティングに及ぼす平均圧力を制御しながら、前記流入ストリームを前記活性コーティングに向けることであって、
前記流入ストリームは、前記活性コーティングと接触すると、前記流入ストリームの1種又は複数種の成分から負イオンを発生させ、前記負イオンは、前記1種又は複数種の汚染物質と相互作用して、前記流出ストリームの浄化された物質を形成する、
向けることと、
前記浄化された物質を含む前記流出ストリームを前記イオン化浄化装置から誘導することと
を含む方法。
【請求項2】
前記流入ストリームを前記活性コーティングに向けることが、前記活性コーティングと接触する前に前記流入ストリームの温度を制御しながら実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流入ストリームを前記活性コーティングに向けることが、前記活性コーティングの温度を制御しながら実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活性コーティングの温度を制御することが、前記イオン化浄化装置に流れ込む前記流入ストリームの流量を制御することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記流入ストリームを前記活性コーティングに向けることが、前記流入ストリームと前記活性コーティングとの間の接触角を制御しながら実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記活性コーティングが前記イオン化浄化装置内に封入され、前記イオン化浄化装置は、前記流入ストリームが前記流入ストリームの前記1種又は複数種の成分から前記負イオンを発生させるときに環境光を遮断する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記流入ストリームを前記活性コーティングに向けることが、一組の同心構造を通して行われ、そのうちの少なくとも1つは、前記活性コーティングの前記基板として動作可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記流入ストリームを前記活性コーティングに向けることが、流速制御装置として動作可能な送風機を使用して実行され、前記流入ストリームが前記活性コーティングに及ぼす平均圧力を制御することが、前記送風機の回転速度を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン化浄化装置に流し込まれる前記流入ストリームが水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記流出ストリームから前記浄化された物質を分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
流入ストリームを浄化するための浄化システムであって、
基板と、前記基板上に配置され、焦電性及び/又は圧電性である材料を含む活性コーティングとを備えるイオン化浄化装置を備え、
前記浄化システムは、前記流入ストリームが前記活性コーティングに及ぼす平均圧力を制御しながら、前記流入ストリームを前記活性コーティングに向けるように構成される、
浄化システム。
【請求項12】
前記材料が、窒化アルミニウム、リン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス、窒化ガリウム、リン酸ガリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、石英、トルマリン、硫酸トリグリシン、及び酸化亜鉛のうちの1つを含む、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項13】
前記材料が、窒化アルミニウム、リン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス、窒化ガリウム、リン酸ガリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、石英、トルマリン、硫酸トリグリシン、及び酸化亜鉛のうちの少なくとも2つの異なるもの、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項14】
前記流入ストリームが前記活性コーティングに接触する前に前記流入ストリームの温度を制御するように構成された温度制御装置をさらに備える、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項15】
前記活性コーティングに熱的に結合され、前記活性コーティングの温度を制御するように構成された温度制御装置をさらに備える、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項16】
前記流入ストリームと前記活性コーティングとの間の接触角を制御するように構成された流れ誘導装置をさらに備える、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項17】
前記活性コーティングを支持する前記基板が、送風機の羽根、フィルタ表面、筐体表面、イオナイザー電極、煙突内壁、スクラバー構成要素、及び静電集塵機構成要素からなる群から選択される、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項18】
前記活性コーティングが連続コーティングであり、前記活性コーティング下の前記基板を環境から隔離する、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項19】
前記活性コーティングが、前記基板の表面上に位置決めされた複数の不連続粒子を含む、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項20】
前記基板が多孔質であり、前記活性コーティングが、前記基板内に配置され、前記基板の表面から離れた複数の不連続粒子を含む、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項21】
前記基板が、前記活性コーティングが孔の表面を形成するような孔を含む、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項22】
前記活性コーティングが、前記流入ストリームが活性コーティング孔内に向けられるように構成された活性コーティング孔を含む、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項23】
そのうちの少なくとも1つが前記活性コーティングの前記基板として動作可能であるような一組の同心構造をさらに備え、前記同心構造のうちの少なくとも別の1つが、前記流入ストリームを前記活性コーティングに向ける流れ誘導装置として動作可能な一組の開口部を備える、請求項11に記載の浄化システム。
【請求項24】
前記一組の同心構造の少なくとも別の1つがエアフィルタ又は自動車排気システムの一部である、請求項23に記載の浄化システム。
【請求項25】
前記流入ストリームが前記活性コーティングに及ぼす平均圧力を制御するように構成された流速制御装置をさらに備え、前記流速制御装置の回転速度を制御することを含む、請求項11に記載の浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、「METHODS AND SYSTEMS FOR NEGATIVE ION-BASED POLLUTION REDUCTION」と題され、Mark DiCarloにより2020年12月18日に提出された係属中の米国特許出願第17/127,273号に付与された優先権を主張する。この出願は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
大気汚染は、様々な健康問題に起因して、世界中で大きな問題になっている。例えば、推定700万人が毎年大気汚染により死亡している。同時に、大気汚染は、水と陸を合わせたよりも多くの汚染物質が大気中に排出されており、世界における汚染の主要な形態となっているようである。本開示の目的上、大気汚染とは、大気の自然特性を変化させるあらゆる薬剤による大気の環境汚染と定義される。
【0003】
大気汚染を緩和するために、より具体的には、周囲の大気及び大気中に排出されるガス流(例えば、乗り物の排気システム、煙突)から汚染物質を除去するために、様々な方法及びシステムが提案されてきた。例えば、イオナイザーが汚染低減のために提案されている。典型的なイオナイザーでは、電極間に電圧を印加し、電極間の環境を通して放電を引き起こす。しかしながら、このような方法では一般的に、オゾンの発生など他の環境上の懸念が生じる。さらに、これらの方法は非効率的で、多大な電力や特殊な構造を必要とする傾向があり、自然界に見られる空気浄化の方法に頼っていない。
【発明の概要】
【0004】
基板と活性コーティングとを有するイオン化浄化装置を備える浄化システムを介して、室内空気、屋外空気、乗り物排ガス、産業排ガスなどの様々な環境を浄化するための浄化システム及びそのようなシステムを使用する方法が提供される。活性コーティングは、焦電性材料及び/又は圧電性材料を含む。運転中、流入ストリームは、活性コーティングに及ぼす平均圧力を制御しながら、活性コーティングに向かって誘導される。この流入ストリームと活性コーティングの接触により、温度及び圧力/力/振動、その他の変化を通じて、流入ストリームの成分から負イオンが発生する。負イオンは次いで汚染物質と相互作用し、汚染物質を流出ストリームの安全で浄化された物質へ変換する。流入ストリームの汚染物質とは異なり、浄化された物質は無害であり、及び/又は、例えばフィルタリング及び/又は他の分離技術によって、流出ストリームから容易に除去することができる。
【0005】
いくつかの例では、浄化システムを使用して流入ストリームを浄化し、流出ストリームを形成する方法が提供される。本方法は、流入ストリームを浄化システムのイオン化浄化装置に流し込むことを含む。流入ストリームは、1種又は複数種の汚染物質を含む。イオン化浄化装置は、基板と、基板上に配置され、焦電性及び/又は圧電性である材料を含む活性コーティングとを備える。本方法はまた、流入ストリームが活性コーティングに及ぼす平均圧力を制御しながら、流入ストリームを活性コーティングに向けることを含む。流入ストリームは、活性コーティングと接触すると、流入ストリームの1種又は複数種の成分から負イオンを発生させる。負イオンは、1種又は複数種の汚染物質と相互作用して、流出ストリームの浄化された物質を形成する。本方法はさらに、浄化された物質を含む流出ストリームをイオン化浄化装置から誘導することを含む。
【0006】
いくつかの例では、材料は、窒化アルミニウム、リン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス、窒化ガリウム、リン酸ガリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、石英、トルマリン、硫酸トリグリシン、及び酸化亜鉛のうちの1つを含む。より具体的な例では、材料は、窒化アルミニウム、リン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス、窒化ガリウム、リン酸ガリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、石英、トルマリン、硫酸トリグリシン、及び酸化亜鉛のうちの少なくとも2つの異なるものを含む。
【0007】
いくつかの例では、流入ストリームを活性コーティングに向けることは、活性コーティングと接触する前に流入ストリームの温度を制御しながら実行される。より具体的には、活性コーティングに接触する前に流入ストリームの温度を制御することは、活性コーティングに接触する前に流入ストリームを温度制御装置を通して流すことを含む。いくつかの例では、温度制御装置は、ヒータ及びエアコンディショナ/チラーの少なくとも1つを含む。
【0008】
いくつかの例では、流入ストリームを活性コーティングに向けることは、活性コーティングの温度を制御しながら行われる。より具体的な例では、活性コーティングの温度を制御することは、活性コーティングに熱的に結合された温度制御装置を用いて行われる。例えば、活性コーティングの温度を制御することは、イオン化浄化装置に流れ込む流入ストリームの流量を制御することを含む。
【0009】
いくつかの例では、流入ストリームを活性コーティングに向けることは、流入ストリームと活性コーティングとの間の接触角を制御しながら実行される。より具体的な例では、流入ストリームと活性コーティングとの間の接触角を制御することは、流入ストリームを流れ誘導装置を通して誘導することを含む。
【0010】
いくつかの例では、活性コーティングはイオン化浄化装置内に封入され、イオン化浄化装置は、流入ストリームが流入ストリームの1種又は複数種の成分から負イオンを発生させるときに環境光を遮断する。より具体的な例では、活性コーティングは、負イオンを発生させる際に太陽光に露出されない。
【0011】
いくつかの例では、活性コーティングを支持する基板は、送風機の羽根、フィルタ表面、筐体表面、イオナイザー電極、煙突内壁、スクラバー構成要素、及び静電集塵機構成要素からなる群から選択される。同じ例又は他の例において、活性コーティングは連続コーティングであり、活性コーティング下の基板を環境から隔離する。あるいは、活性コーティングは、基板の表面上に位置決めされた複数の不連続粒子を含む。いくつかの例では、基板は多孔質である。活性コーティングは、基板内に配置され、基板の表面から離れた複数の不連続粒子を含む。いくつかの例では、基板は、活性コーティングが孔の表面を形成するような孔を含む。いくつかの例では、活性コーティングは、流入ストリームが活性コーティング孔内に向けられるような活性コーティング孔を含む。
【0012】
いくつかの例では、流入ストリームを活性コーティングに向けることは、一組の同心構造を通して行われ、そのうちの少なくとも1つは、活性コーティングの基板として動作可能である。例えば、同心構造のうちの少なくとも別の1つは、流入ストリームを活性コーティングに向ける流れ誘導装置として動作可能な一組の開口部を含む。いくつかの例では、一組の同心構造の少なくとも1つの構造はエアフィルタである。いくつかの例では、一組の同心構造は自動車排気システムの一部である。
【0013】
いくつかの例では、流入ストリームを活性コーティングに向けることは、流速制御装置として動作可能な送風機を使用して実行される。流入ストリームが活性コーティングに及ぼす平均圧力の制御は、送風機の回転速度を制御することを含む。
【0014】
いくつかの例では、イオン化浄化装置に流し込まれる流入ストリームは水を含む。
【0015】
いくつかの例では、本方法は、流出ストリームから浄化された物質を分離することをさらに含む。
【0016】
また、流入ストリームを浄化するための浄化システムが提供される。いくつかの例では、浄化システムは、基板と活性コーティングとを含むイオン化浄化装置を備える。活性コーティングは、基板上に配置され、焦電性及び/又は圧電性である材料を含む。浄化システムは、流入ストリームが活性コーティングに及ぼす平均圧力を制御しながら、流入ストリームを活性コーティングに向けるように構成される。
【0017】
いくつかの例では、浄化システムは、流入ストリームが活性コーティングに接触する前に流入ストリームの温度を制御するように構成された温度制御装置をさらに備える。例えば、温度制御装置は、ヒータ及びエアコンディショナ/チラーの少なくとも1つを備える。
【0018】
いくつかの例では、浄化システムは、活性コーティングに熱的に結合され、活性コーティングの温度を制御するように構成された温度制御装置をさらに備える。
【0019】
いくつかの例では、浄化システムは、流入ストリームと活性コーティングとの間の接触角を制御するように構成された流れ誘導装置を備える。
【0020】
いくつかの例では、浄化システムは、そのうちの少なくとも1つが活性コーティングの基板として動作可能であるような一組の同心構造をさらに備える。
【0021】
いくつかの例では、浄化システムは、流入ストリームが活性コーティングに及ぼす平均圧力を制御するように構成された流速制御装置をさらに備え、送風機の回転速度を制御することを含む。
【0022】
これら及び他の実施形態は、図を参照して以下にさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】いくつかの例による、流入ストリームが活性コーティングに接触するときに生成される負イオンを使用して流入ストリームを浄化することを示す概略図である。
図1B】流入ストリームによって活性コーティングに加えられる圧力の関数として負イオン発生率を示すプロットである。
図1C】流入ストリームが活性コーティング表面に向けられている間の、活性コーティング表面の温度の関数として負イオン発生率を示すプロットである。
図2A】いくつかの例による、流入ストリームを浄化するための、イオン化浄化装置を備える浄化システムの概略ブロック図である。
図2B】孔内に配置された活性コーティングを有する孔を備えるイオン化浄化装置を備える浄化システムの一例の概略断面図である。
図2C】イオン化浄化装置が浄化システム内に長大な経路を形成している、浄化システムの別の例の概略断面図である。
図3A-3E】基板及びこれらの基板上に配置された活性コーティングの異なる例の概略断面図である。
図4A-4G】異なる活性コーティング例の概略断面図である。
図5】いくつかの例による、浄化システムを使用して流入ストリームを浄化する方法に対応するプロセスフローチャートである。
図6A-6D】いくつかの例による、浄化システムとして動作可能であり、イオン化浄化装置を備える、乗り物排気システムにおける異なる構成要素及び特徴の概略断面図である。
図7A-7B】それぞれ1つ又は複数のイオン化浄化装置を備える産業用排ガスシステムの2つの例である。
図8】いくつかの例による、一体化されたイオン化浄化装置を有するイオナイザーの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の記載において、提示された概念を徹底的に理解するために、数多くの具体的な詳細を概説する。提示された概念は、これらの具体的な詳細の一部又は全部がなくても実施することができる。他の例では、よく知られたプロセス操作は、記載された概念を不必要に不明瞭にしないために詳細には記載されていない。いくつかの概念を特定の実施形態と併せて記載するが、これらの実施形態は限定を意図するものではないことが理解されよう。
【0025】
導入部
本明細書において、負イオンを使用して様々な環境を浄化するための方法及びシステムを記載する。このような浄化方法は、イオンベースの浄化及び/又はイオンベースの汚染低減とも呼ばれ得る。これらの方法及びシステムは、多くの異なる用途に使用することができ、その様々な例が本明細書に開示されている。これらの用途には、屋内及び屋外の用途、乗り物排ガス、及び産業用途が含まれる。具体的な例としては、医療施設(例えば、手術室/オペ室)の環境浄化、家庭やオフィスビルの空気浄化(例えば、独立型システムとして、又は暖房-換気-空調(HVAC)システムに統合される)、工場の煙突、スクラバー、静電集塵機、及び他のタイプの産業機器における排ガス処理、二酸化炭素回収技術/機器、及び他の多くの同様の用途が挙げられる。さらに、これらの方法及びシステムは、粒子状物質、オゾン、一酸化炭素、鉛、炭化水素、揮発性有機化合物、窒素酸化物、二酸化炭素、二酸化硫黄、スモッグ、火山ガス、及び他の多くの同様の汚染物質など、人工及び天然の汚染物質の両方を除去することができる。
【0026】
従来の浄化アプローチとは異なり、本明細書に開示される方法及びシステムは、環境に優しく、効率的で、コスト効率が高い。具体的には、これらの方法及びシステムは、バイオミミクリーに基づく解決策を利用し、これらは自然界に見られる大気汚染物質浄化の様々な方法を表す。次に、図1Aを参照して、この新規な浄化アプローチを紹介する。具体的には、図1Aは、流入ストリーム180の処理中のイオン化浄化装置110の概略図である。イオン化浄化装置110は、図2A~2Cを参照して後述する様々な浄化システム、図6A~6Dを参照して後述する乗り物排ガスシステム、及び図7A及び7Bを参照して後述する工業排ガス制御システムなど、様々なシステムの一部であり得る。
【0027】
図1Aを参照すると、イオン化浄化装置110は、基板120と、基板120上に配置された活性コーティング130とを備える。いくつかの例では、活性コーティング130及び基板120は同じ構成要素であり、すなわち、活性コーティング130は自己支持構造である。活性コーティング130は、焦電性及び/又は圧電性の材料131を含む。適切な焦電性及び/又は圧電性材料の様々な例を以下に示す。すべての既知の焦電性材料は圧電性でもあることに留意されたい。
【0028】
活性コーティング130、基板120、及びこれらの方法及びシステムの他の特徴(例えば、流量、温度)は、活性コーティング130の表面134に負イオン192を発生させるように独自に選択される。より具体的には、活性コーティング130は、加熱又は冷却されたとき、及び/又は圧力/応力/力がコーティング表面134に加えられたときに、電気変化及び負イオンを発生する。圧力は、例えば、1つ又は複数の汚染物質186を含む流入ストリーム180によって加えられる。流入ストリーム180の他の成分は、空気182、水184(例えば、気体の形態)、及びイオン化成分188を含み得る。流入ストリーム180中のこれらの成分のいずれか1つが、コーティング表面134に対して、加熱又は冷却の影響、及び/又は圧力/力を発生させると、負イオン192を発生させる可能性がある。
【0029】
活性コーティング130と流入ストリーム180との界面における温度と、流入ストリーム180によってコーティング表面134に加えられる圧力との両方が、負イオン発生に影響を及ぼすことに留意すべきである。図1Bは、流入ストリーム180によって活性コーティング130に加えられる圧力の関数としての負イオン発生率を示すプロットである。イオン発生率は、圧力とともに上昇する。特定の理論に制限されることなく、この圧力によって提供される機械的エネルギーは、活性コーティング130によって提供される圧電効果によって電気エネルギーに変換されると考えられる。例えば、およそ100パスカルの圧力上昇は、特定の種類のトルマリンの排出速度を、毎秒1立方センチメートル当たり62,000イオンまで増加させる。この特定の圧力は、流入ストリーム180の流量(例えば、流量)、流入ストリーム180の密度、及び接触角の関数であることに留意すべきである。
【0030】
図1Cは、流入ストリーム180が活性コーティング表面134に向けられている間、その表面の温度の関数としての負イオン発生率を示すプロットである。特定の理論に制限されることなく、活性コーティング130によって提供される焦電効果により、熱エネルギーが電気エネルギーに変換されると考えられる。熱エネルギーは、流入ストリーム180(例えば、高温の乗り物排ガス)及び/又は別個の加熱要素(例えば、図2A~2Cを参照して後述する温度コントローラ150)によって供給される。さらに、熱は、流入ストリーム180によって、及び/又は活性コーティング130(例えば、活性コーティング130に熱的に結合されたヒータ)によって、活性コーティング表面134に運ばれてもよい。例えば、室温(例えば、約20℃)において、80ナノメートル粒径のトルマリンの排出速度は、毎秒1立方センチメートル当たり約1500イオンである。この特定品種のトルマリンを45℃に加熱すると、排出速度は毎秒1立方センチメートル当たり約2,800イオンである。135℃では、排出速度は毎秒1立方センチメートル当たり約24,000イオンであった。この温度は、例えば、流入ストリーム180の温度、及び/又は、活性コーティング130に熱的に結合されている様々な温度コントローラ(例えば、ヒータ及び/又はエアコンディショナ/チラー)によって制御される。
【0031】
図1Aに戻ると、負イオン192は汚染物質186と相互作用して、流出ストリーム190の一部である浄化された物質194を形成する。流入ストリーム180の様々な成分(例えば、空気182、イオン化成分188)も、(例えば、負イオン192と相互作用することなく、及び/又は負イオン192の形成に関与することなく)流出ストリーム190の一部を形成し得る。負イオン192と汚染物質186との間の様々なタイプの相互作用は、(1)正に帯電した汚染物質を中和する、(2)不安定な汚染物質をさらに不安定にする(例えば、最終的に分解を引き起こす)、及び/又は(3)特定の分子の電子親和力を利用して電子を吸収する、などの範囲内である。例えば、強い毒性、有毒性、腐食性を持つ塩素(Cl)は、電子を吸収する親和性が高いため、負イオンと相互作用する。負イオンと反応すると、塩素は電子を獲得し、塩化ナトリウム(NaCl)(これはより一般的には塩と呼ばれる)などの塩化物に変化する。塩素(Cl)とは異なり、ほとんどの塩化物は安全で毒性がなく、植物に容易に吸収される。別の例では、負イオンは正に帯電した汚染物質やほこりを引き寄せてそれに付着する。例えば、空気中のほこり粒子はほとんどすべて正に帯電している。正に帯電したほこりと負イオンが互いに引き合うと、負イオン同士がくっつき、より大きく重いほこりの粒子を形成する。これらの粒子は重くなりすぎて空気中に浮遊できなくなり、地面に落ちたり、密閉された空間や建物の壁に引き寄せられたりする。この汚染物質結合プロセスは、空気から浮遊汚染物質を除去するのに役立つ。負イオンが大気汚染を排除できることは長年の科学的研究と数々の研究によって実証されていることに留意されたい。この技術は、(1)正に帯電した汚染物質を中和すること、(2)不安定な汚染物質をさらに不安定にすること(例えば、最終的に分解を引き起こすこと)、及び/又は(3)特定の分子の電子親和力を利用して電子を吸収すること、によって大気汚染を排除する。
【0032】
いくつかの例では、本明細書に記載の方法及びシステムはまた、存在する水の存在下でレナード効果を利用する。本開示の目的のために、レナード効果は、上記の1つ又は複数の焦電性材料及び/又は圧電性材料の表面に水をかけることによって電荷を発生させるプロセスとして定義される。これらの例では、水は、微細なスプレー、ミスト、あるいは気体(例えば、蒸気)として提供され、各使用例に特有の圧力及び温度を使用して焦電性材料及び/又は圧電性材料の表面に向けられる。この流入ストリームには他の成分も含まれることに留意すべきである。汚染物質は、これらの他の成分の間及び/又は水中に存在する可能性がある。例えば、スクラバーは水を利用して汚染物質を水中に溶解させる。スクラバーは、図7Aを参照して以下にさらに記載するように、活性コーティングを備え得る。
【0033】
浄化システムの例
図2Aは、いくつかの例による浄化システム100の概略ブロック図である。図2B及び2Cは、浄化システム100の2つの例の概略図である。浄化システム100は、少なくともイオン化浄化装置110を備え、そのいくつかの例は、図1Aを参照して上述した。イオン化浄化装置110以外の浄化システム100の他の構成要素は任意である。いくつかの例において、浄化システム100はまた、例えば図2A及び2Bに示されるように、流入ストリーム180が活性コーティング130に向けられる際に流入ストリーム180の速度を制御するための流速制御装置140を備える。上述したように、流入ストリーム180の速度は、活性コーティング表面134への圧力及び負イオン192の発生を決定する。流速制御装置140のいくつかの例は、送風機、タービン、バルブ、流れ制限器、流れ分流器等を含むが、これらに限定されない。流速制御装置140への入力は、様々なセンサ、例えば、流量計、汚染物質センサ等(例えば、図2Bのセンサ172)から提供されてもよい。いくつかの例では、流入ストリーム180の速度は、浄化システム100の外部、例えば、乗り物排気システム、煙突、スクラバー、静電集塵機等において制御される。イオン化浄化装置110のいくつかの機能は、流速制御装置140によって提供され得ることに留意すべきである。例えば、送風機の羽根又はタービンブレードは、活性コーティング130のための基板120として機能し得る。さらに、いくつかの例では、流入ストリーム180によって活性コーティング130に加えられる圧力は、例えば送風機の羽根又はタービンブレードの表面上の活性コーティング130の動きによって制御される。
【0034】
いくつかの例では、浄化システム100は、別の任意選択の構成要素である温度制御装置150を備える。温度制御装置150は、例えば図2Bに示されるように、流入ストリーム180が活性コーティング130に接触する前に流入ストリーム180の温度を制御する(例えば、変化させる)ように構成される。同じ例又は他の例において、温度制御装置150は、活性コーティング130の温度を直接制御する(例えば、変化させる)ように構成される。例えば、温度制御装置150は、例えば図2Cに示されるように、活性コーティング130に熱的に結合される。温度制御装置150のいくつかの例には、ヒータ(例えば、抵抗ヒータ)及びエアコンディショナ/チラーが含まれるが、これらに限定されない。温度制御装置150への入力は、様々なセンサ172、例えば、流入ストリーム180の流路上に位置決めされた熱電対、活性コーティング表面134において向けられた熱電対、汚染物質センサ172等から提供されてもよい。いくつかの例では、流入ストリーム180の温度は、浄化システム100の外部、例えば、乗り物排気システム、煙突、スクラバー、電気集塵機等において制御される。
【0035】
いくつかの例では、浄化システム100は、さらに別の任意選択の構成要素である流れ誘導装置160を備える。流れ誘導装置160は、流入ストリーム180を活性コーティング表面134に向けるように構成され、より具体的な例では、流入ストリーム180が活性コーティング表面134に向けられる角度を制御するように構成される。流れ誘導装置160のいくつかの例は、ジェット、ノズル、開口部等を含むが、これらに限定されない。いくつかの例では、流れ誘導装置160はフィルタとして動作可能であり、汚染物質が活性コーティング表面134に到達する前に汚染物質の少なくとも一部を捕捉するように構成される。あるいは、フィルタ170は、例えば図2A及び2Bに示すように、独立した構成要素である。例えば、フィルタ170は、イオン化浄化装置110の後ろに、例えば、残りの汚染物質及び/又は浄化された物質194を捕捉するために、流出ストリーム190の経路上に位置決めされてもよい。
【0036】
上述のように、イオン化浄化装置110は、基板120上に配置された活性コーティング130を備える。基板120及び/又は活性コーティング130は、流入ストリーム180の背圧を最小にしつつ活性コーティング130の表面積を増大させるように特に構成され得る。例えば、背圧の増加は、乗り物排気システムなど、様々な用途にとって望ましくない可能性がある。図3Aは、孔122内に配置され、これらの孔122の表面を形成する活性コーティング130を有する複数の孔122を備える基板120を示す。流入ストリーム180は孔122に流れ込み、活性コーティング130に接触して負イオンを発生する。これらの負イオンは、流入ストリーム180中の汚染物質と相互作用する。図3Bは、1つの孔122の拡大図である。マフラー/テールパイプのいくつかの例では、各孔122の直径は約1ミリメートルと5ミリメートルの間である。同じ又は他の例において、活性コーティング130の厚さは0.1ミリメートルと0.5ミリメートルの間である。
【0037】
図3C及び3Dを参照すると、孔122は、流入ストリーム180の方向に対して異なる向きを有し得る。具体的には、図3Cは、孔122が流入ストリーム180の方向に対して実質的に平行である例を示す。この例は、例えば、イオン化浄化装置110を通る背圧を低減するために使用され得る。図3Dは、孔122が流入ストリーム180の方向に対してある角度(例えば、1°~15°)で位置決めされているマフラー/テールパイプの例を示す。この例は、例えば、図1Bを参照して上述したように、流入ストリーム180によって活性コーティング130に加えられる圧力を増加させ、負イオン発生率を高めるために使用され得る。いくつかの例では、流速制御装置140が、例えば図3Eに概略的に示されているように、孔122内に位置決めされる。これらの例において、流速制御装置140は、例えば、孔122内の流入ストリーム180の均等な分配のために、流れ誘導装置160としても動作可能であり得る。
【0038】
さらに、上述したように、活性コーティング130は、焦電性及び/又は圧電性である材料131を含む。本開示の目的上、焦電性材料は、加熱又は冷却されたときに電位を発生できる材料として定義される。圧電材料は、機械的応力(例えば、圧縮)に応答して電荷を生成できる材料として定義される。すべての既知の焦電性材料は圧電性でもあることに留意すべきである。材料131の例としては、窒化アルミニウム(AlN)、リン酸アルミニウム(AlPO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ビスマス(Bi12TiO20、BiTi12及び/又はBiTi)、窒化ガリウム(GaN)、リン酸ガリウム(GaPO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、四ホウ酸リチウム(Li)、石英(SiO)、トルマリン(例えば、アルミニウム、鉄、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウムなどの元素と複合した結晶性ホウケイ酸塩鉱物)、硫酸トリグリシン((NHCHCOOH)・HSO)、及び酸化亜鉛(ZnO)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの材料の1つ又は複数が(例えば、特定の組み合わせとして)、温度、圧力、表面積等を含むがこれらに限定されない多数の要因に応じて、特定の使用例に使用される。
【0039】
次に、活性コーティング130の様々な構造例を、図4A~4Gを参照して記載する。図4Aは、活性コーティング130が連続的であり、活性コーティング130の下に配置された基板120を環境から隔離している例を示す。例えば、材料131の粒子が融合して活性コーティング130を形成する。あるいは、活性コーティング130は、例えば、図4B図4C、及び図4Dに概略的に示されているように、少なくとも基板120の表面上に位置決めされた、複数の不連続粒子を含む。例えば、図4Bは、(活性コーティング130を形成する)不連続粒子が、接着剤124又は任意の他の結合材料を用いて基板120の表面上に支持される例を示す。図4Cは、(活性コーティング130を形成する)不連続粒子が、いかなる中間材料も使用することなく、基板120に直接組み込まれる例を示す。図4Dは、(活性コーティング130を形成する)不連続粒子が、表面上だけでなく、基板120の体積全体にわたって分布しているさらに別の例である。この例は、例えば、流入ストリーム180が基板120を貫通することができる多孔質基板に使用することができる。例えば、基板120は、コンクリート、より具体的には、コンクリート中に分散された粒子の形態の活性コーティング130を有する多孔質コンクリートを含み得る。
【0040】
いくつかの例では、基板120は連続的な不透過性構造ではない。例えば、基板120は、メッシュ(例えば、図4Eに示されるような)、発泡体、又は流入ストリーム180が基板120の表面に位置決めされた活性コーティング130に接触しながら基板を通って流れることを可能にする他の構造の形態であり得る。このタイプの基板は、流入ストリームの流量が大きく、背圧が特に望ましくないシステムに使用することができる。
【0041】
いくつかの例では、活性コーティング130は、例えば図4Fに示されるように、活性コーティング孔132を備える。これらの例では、流入ストリーム180は活性コーティング孔132の中に導かれる。これらの例は、基板120なしで使用されてもよく、これは任意選択である。
【0042】
全体として、活性コーティング130の粒子は、様々な形態、例えば、粉末、石、砕石、チップ、小石、砂利、ロッド等であり得る。粒子は、1-D構造(図4Gにおいて134a及び134bと表示)、2-D構造(図4Gにおいて134cと表示)、及び3-D構造(図4Gにおいて134dと表示)として識別され得る。本開示の目的上、1-D構造は、1つの主たる寸法対残りの2つの寸法のそれぞれの比が10より大きい。いくつかの例には、ナノチューブ、ナノワイヤ、及び繊維が含まれるが、これらに限定されない。2次元構造は、2つの主たる寸法のそれぞれ対残りの寸法の比が10より大きい。例としては、フレークやシート、より具体的には薄い導電性グラファイトやグラフェンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。3-D構造における任意の2つの主たる寸法の比は10未満である。
【0043】
いくつかの例では、活性コーティング130は、3D印刷方法/プロセスによって形成され、そのいくつかの例には、バインダージェッティング(例えば、液体結合剤を使用して材料の層を結合して部品を形成する)及びバウンド粉末押出成形(例えば、押出成形ベースの金属積層造形プロセス)が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
いくつかの例では、活性コーティング130を支持する基板120は、送風機の羽根、フィルタ表面、筐体表面、イオナイザー電極、煙突内壁、スクラバー構成要素、及び静電集塵機構成要素からなる群から選択される。換言すれば、活性コーティング130は、浄化システムの様々な構成要素に一体化することができる。したがって、異なる構成要素の機能が重複することがある。
【0045】
動作例
図5は、いくつかの例による、浄化システム100を使用して流入ストリーム180を浄化する方法500に対応するプロセスフローチャートである。浄化システム100の様々な特徴及び例が上述されている。例えば、浄化システム100はイオン化浄化装置110を備え、このイオン化浄化装置110は基板120及び活性コーティング130を備える。活性コーティング130は基板120上に配置され、焦電性及び/又は圧電性である材料131を含む。材料131の組成、活性コーティング130の他の特徴、及び処理条件(以下でさらに記載する)は、浄化システム100の動作中、より具体的には、イオン化浄化装置110の動作中、さらに具体的には、流入ストリーム180が活性コーティング130に接触するときに、負イオンの発生を可能にするように特に選択される。
【0046】
いくつかの例では、方法500は、流入ストリーム180をイオン化浄化装置110に流し込むことを含む(図5のブロック510)。流入ストリーム180は、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素、及び/又は粒子状物質などの1種又は複数種の汚染物質186を含む。流入ストリーム180の他の成分は、空気182、水184(例えば、水蒸気として)、及び/又は他のイオン化成分188を含み得るが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの例では、流入ストリーム180は、内燃機関、バーナ等などの1つ又は複数の排ガス源から(イオン化浄化装置110内に)流れる。あるいは、流入ストリーム180は、環境(例えば、周囲空気、家屋内部、乗り物内部)から収集され得る。
【0048】
方法500は、流入ストリーム180を活性コーティング130に向けることで進行する(図5のブロック540)。具体的には、流入ストリーム180が活性コーティング130に及ぼす平均圧力を制御しながら、流入ストリーム180を活性コーティング130に向ける。上述したように、この圧力は駆動力の1つである、すなわち、イオン化浄化装置110内で負イオンを発生させる。いくつかの例では、マフラー/テールパイプ内の平均圧力は、0.25barと2barの間、より具体的には、0.50barと1.25barの間である。いくつかの例では、圧力は活性コーティング130の表面全体で変化し得ることに留意すべきである。
【0049】
活性コーティング130と接触すると、流入ストリーム180は流入ストリーム180の1種又は複数種の成分から負イオン192を生成する。いくつかの例では、負イオンの発生率は、毎秒1立方センチメートル当たり15,000から25,000の間である。この率は、流入ストリーム180の組成、流入ストリーム180の温度、活性コーティング130の温度、流入ストリーム180が活性コーティング130に及ぼす圧力、及び/又は活性コーティング130の組成など、様々な要因に依存する。例えば、負イオン発生率は、図1B及び1Cを参照して上述したように、(活性コーティング130及び/又は流入ストリーム180の)温度の上昇及び圧力の上昇に伴って向上する。一旦負イオン192が生成されると、負イオン192は、1種又は複数種の汚染物質186と相互作用を開始し、流出ストリーム190の浄化された物質194を形成する。これらの相互作用の様々な例は、図1Aを参照して上述されている。
【0050】
いくつかの例では、流入ストリーム180を活性コーティング130に向けること(ブロック540)は、活性コーティング130に接触する前に流入ストリーム180の温度を制御しながら(ブロック542)実行される。この温度制御の一例は、流入ストリーム180を活性コーティング130と接触させる前に温度制御装置150を通して流すこと(ブロック544)である。温度制御装置150の様々な例が上に提示されている(例えば、ヒータ及び/又はエアコンディショナ/チラー)。この例では、温度制御装置150は、流入ストリーム180が活性コーティング130に接触する前に、流入ストリーム180の温度を変化させる(例えば、流入ストリーム180を冷却するか、又は流入ストリーム180を加熱する)。いくつかの例では、流入ストリーム180を活性コーティング130に向けること(ブロック540)は、活性コーティング130の温度を制御しながら(ブロック545)実行される。例えば、活性コーティング130の温度を制御することは、活性コーティング130に熱的に結合された(例えば、基板120に一体化された)温度制御装置150を用いて行うことができる。
【0051】
いくつかの例では、流入ストリーム180は乗り物排気ガスである。排気温度は、乗り物、エンジンサイズ、運転状況、周囲状況等によって異なる。例えば、流入ストリーム180が小型車の活性コーティング130に接触するときの活性コーティング130の温度は、約300~500℃の間であり得る。
【0052】
いくつかの例では、活性コーティング130の温度を制御すること(ブロック545)は、流入ストリーム180がイオン化浄化装置110に流れ込む際に流入ストリーム180の流量を制御すること(ブロック549)を含む。例えば、流入ストリーム180は、活性コーティング130を加熱するための熱源であり得、例えば、内燃機関によって生成され、排気システムに流される排気ガスであり得る。前述したように、活性コーティング130は、システムの様々な内部構成要素によって支持されて、排気システム内に位置決めされてもよい。流入ストリーム180の流量、流入ストリーム180の温度、及び活性コーティング130の熱隔離が、活性コーティング130の温度を決定する。
【0053】
いくつかの例では、流入ストリーム180を活性コーティング130に向けることは、流入ストリーム180と活性コーティング130との間の接触角を制御しながら実行される(ブロック550)。上述したように、この接触角は、流入ストリーム180が活性コーティング130に及ぼす平均圧力を少なくとも部分的に決定する。他の要因には、流入ストリーム180の流量及び流入ストリーム180中の様々なガスの濃度が含まれる。
【0054】
いくつかの例では、流入ストリーム180と活性コーティング130との間の接触角を制御すること(ブロック550)は、流入ストリーム180を流れ誘導装置160を通して流すこと(552)を含む。流れ誘導装置160の様々な例(例えば、ノズル、ジェット)が上に提示されている。
【0055】
いくつかの例では、流入ストリーム180を活性コーティング130に向けることは、例えば図6A~6Dに示されるように、一組の同心構造128を通して実行される。同心構造128の少なくとも1つは、活性コーティング130用の基板120として動作可能である。さらに、同心構造128の少なくとも別の1つは、流入ストリーム180を活性コーティング130に向ける流れ誘導装置160として動作可能な一組の開口部127を備える。いくつかの例では、同心構造128の少なくとも別の1つはエアフィルタである。同じ又は他の例において、一組の同心構造128は自動車排気システムの一部である。
【0056】
いくつかの例では、流入ストリーム180を活性コーティング130に向けること(ブロック540)は、流速制御装置140として動作可能な送風機を用いて実行される。これらの例において、流入ストリーム180が活性コーティング130に及ぼす平均圧力を制御することは、送風機の回転速度を制御することを含む(ブロック554)。
【0057】
いくつかの例では、活性コーティング130はイオン化浄化装置110内に封入され、イオン化浄化装置110は、流入ストリーム180が流入ストリーム180の1種又は複数種の成分から負イオン192を生成するときに環境光を遮断する。このように、負イオン192は、光、より具体的には太陽光のない状態で生成される。イオン化エネルギーは、活性コーティング130と流入ストリーム180の界面、より具体的には、流入ストリーム180が活性コーティング130に接触する際のこの界面における熱及び/又は圧力から引き出される。このように、いくつかの例では、活性コーティング130は、負イオン192を生成する際に太陽光に露出されない。
【0058】
方法500は、イオン化浄化装置110から流出ストリーム190を流すことで進行する(ブロック560)。この段階で、流出ストリーム190は浄化された物質194を含む。いくつかの例では、イオン化浄化装置110から流出ストリーム190を導くように送風機が位置決めされる。
【0059】
いくつかの例では、方法500は、流出ストリーム190から浄化された物質194を分離すること(ブロック570)をさらに含む。例えば、流出ストリーム190は、フィルタ、スクラバー等に通すことができる。分離装置の様々な例がその範囲内にある。
【0060】
適用例
いくつかの例では、浄化システム100は、例えば図6Aに概略的に示されているように、乗り物排出ガスシステム600の一部として使用される。乗り物排出ガスシステム600は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、圧縮天然ガス(CNG)エンジン等など、内燃機関を備えた乗り物の一部であり得る。図6Aを参照すると、いくつかの例では、乗り物排出ガスシステム600は、触媒コンバータ610、接続パイプ615、及びマフラー620を備える。浄化システム100、より具体的には、イオン化浄化装置110は、これらの構成要素の1つ又は複数に一体化されてもよい。例えば、活性コーティング130は、接続パイプ615及び/又はマフラー620に位置決めすることができる。マフラー620の内部構成要素は、次に図6B、6C、及び6Dを参照して記載するように、イオン化浄化装置110の性能を高めるように特別に構成されてもよい。
【0061】
具体的には、図6B、6C、及び6Dは、一組の同心構造128を示し、そのうちの少なくとも1つは、活性コーティング130用の基板120として動作可能である。例えば、この一組の同心構造128は、マフラー620内に位置決めされてもよい。同じ例又は他の例において、この組はフィルタとして使用されてもよい。一組の同心構造128の少なくとも別の1つは、流入ストリーム180を活性コーティング130に向ける流れ誘導装置160として動作可能な一組の開口部127を備える。例えば、図6C及び6Dの構造の配置は、マフラー内の有孔管から放出される乗り物排ガス気流と相互作用するが、一方でマフラーからテールパイプに向かう排気の直線的な水平方向の流れを妨げないように設計されている。
【0062】
負イオンに基づく浄化は、乗り物排ガスを清浄化するための独自の機会を提供する。乗り物排ガスシステム600内の様々な熱勾配は、乗り物排ガスシステム600全体にわたる活性コーティング130の特定の位置による負イオン発生のために使用され得る。さらに、乗り物排ガス中に存在し、燃焼プロセスの一部である水蒸気は、この浄化プロセス中にレナード効果を誘発するのに役立つ。一般に、水は活性コーティング130と接触する前に流入ストリーム180には添加されないことに留意すべきである。しかしながら、流入ストリーム180のいくつかの例(例えば、乗り物排気)は、流入ストリーム180の一成分として既に水を含有する。
【0063】
上述した乗り物排ガスシステム600は、自動車及びトラックに限定されないことに留意すべきである。これらの特徴は、クルーズ船/貨物船、旅客フェリー、飛行機、産業機械、装置(チェーンソー、芝刈り機、リーフブロワー、その他)等にも適用可能である。
【0064】
図7A及び7Bは、それぞれ1つ又は複数のイオン化浄化装置を備える産業用排ガスシステムの2つの例である。どのような煙突も、例えばこれらの図に示されているように、活性コーティング130でライニング/溶融/注入することができる。煙突及びスクラバーは、活性コーティング130を位置決めするためのより大きな表面積を提供する。さらに、活性コーティング130以外にも、浄化システム100の作動を可能にする様々な構成要素が、これらの産業用排ガスシステムに既に存在している可能性がある。例えば、図7Aに示すスクラバーは水を分配し、これによりレナード効果を誘発し、負イオン発生を補助することができる。さらに、スクラバーは、スクラバーを通して産業排ガスを移動させるための様々な流れ制御装置(例えば、送風機)を備えることができる。これらの流れ制御装置は、流入ストリーム180によって活性コーティング130に加えられる圧力を制御するように動作可能であり得る。図7Bを参照すると、煙突は高温の排ガスを運ぶ。この熱エネルギーは、負イオン生成のために活性コーティング130によって使用され得る。
【0065】
図8は、いくつかの例による、一体型イオン化浄化装置を有するイオナイザーの概略断面図である。イオナイザーの一例は、静電集塵機(ESP)であり、電気エネルギーを使用して粒子を正又は負のいずれかに帯電させることにより、ガスストリームから粒子を除去する。いくつかの例では、イオナイザーの電極に活性コーティング130を組み込むことができる。これらの例では、電気エネルギーは、負イオン発生にも使用される。
【0066】
いくつかの例では、活性コーティング130は、室内の快適性と制御のために使用される暖房、換気、空調(HVAC)システムの様々な表面に位置決めすることができる。HVACは、住宅構造(例えば、一戸建て住宅、アパート、コンドミニアム)、ホテル、高齢者生活施設、オフィスビル、乗り物(例えば、自動車、列車、飛行機、船舶、及び潜水艦)、又は湿度、温度、その他に関してコンディションが調節される他の空間の重要な構成要素である。本開示の目的上、HVACは、あらゆるタイプのシステム(例えば、中央HVACシステム、窓ユニット、スタンドアロン/ポータブルヒータ及びエアコンディショナ/クーラ等)を指す。例えば、活性コーティング130は、空気ダクト、フィルタ要素、送風機の羽根、蒸発器コイル等の中/上に位置決めされ得る。
【0067】
結論
前述の概念は、理解を明確にする目的である程度詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲の範囲内で、特定の変更及び修正が実施され得ることは明らかであろう。プロセス、システム、及び装置を実践する多くの代替方法が存在することに留意すべきである。したがって、本実施形態は例示であって制限的なものではないと考えられる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8
【国際調査報告】