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特表2024-500878組織再生を増加させるための細胞代謝回転因子の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】組織再生を増加させるための細胞代謝回転因子の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20231227BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/22 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/32 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/38 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/42 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/33 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231227BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20231227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 35/13 20150101ALI20231227BHJP
【FI】
A61K35/12
A61K35/407
A61K35/22
A61K35/39
A61K35/34
A61K35/32
A61K35/38
A61K35/42
A61K35/36
A61K35/30
A61K35/33
A61K35/15
A61K35/17
A61K35/44
A61P43/00 107
A61P1/16
A61P13/12
A61P1/18
A61P1/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P21/00
A61K35/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537948
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021064710
(87)【国際公開番号】W WO2022140457
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/128,530
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519263969
【氏名又は名称】フラグシップ パイオニアリング イノベーションズ ブイ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガフ,ピーター,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ダービー,ライ
(72)【発明者】
【氏名】クティレク,ヴィクトリア,ダイアン
(72)【発明者】
【氏名】バーソッティ,アンソニー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】プサパティ,ラジュ バラハ ラクスミ,エヌ.
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB41
4C087BB43
4C087BB45
4C087BB46
4C087BB47
4C087BB48
4C087BB50
4C087BB51
4C087BB52
4C087BB55
4C087BB63
4C087CA04
4C087CA06
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA28
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA94
4C087ZB22
(57)【要約】
本開示は、組織、器官、小器官、又は器官培養物を処置するための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物により組織、器官、小器官、又は器官器内培養を処置することを含む方法を提供する。本開示はまた、対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を対象に投与することを含み、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織の再生を増加させるのに十分な量で対象に投与される方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、前記組織の再生を増加させるのに十分な量で及び時間、組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物は、(a)哺乳動物細胞をストレス条件に曝露すること及び(b)前記組成物を産生するために前記曝露した細胞又は前記曝露した細胞由来の馴化培地を収集することによって作製される方法。
【請求項2】
前記ストレス条件は、小胞体ストレスを誘導する化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストレス条件は、チオアセトアミド、ツニカマイシン、PhenolaTi、ゼアラレノン、志賀毒素2型、四塩化炭素(CCl4)、及びアセトアミノフェンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ストレス条件は、チオアセトアミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ストレス条件に曝露される前記哺乳動物細胞は、前記組織又は器官中に存在するタイプのものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ストレス条件に曝露される前記哺乳動物細胞は、肝細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、筋細胞、骨細胞、腸内壁の細胞、心臓細胞、肺細胞、皮膚細胞、神経細胞、中枢神経系(CNS)の細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及び免疫細胞からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ストレス条件に曝露される前記哺乳動物細胞は、肝細胞であり、前記器官は、肝臓である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞又は前記馴化培地は、前記組成物を産生するためにさらに分画される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ストレス条件に曝露される前記哺乳動物細胞は、前記対象にとって自家である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物対象は、ヒトである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物は、前記組成物により処置されない対象と比較して、前記組織の再生を増加させるのに十分な量で前記対象に投与される方法。
【請求項12】
ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を組織再生の増加を必要とする対象に送達するための方法であって、前記組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
前記組織は、肝組織であり、前記対象は、慢性肝損傷、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、薬剤性肝傷害、劇症及び遅発性肝不全(LOHF)、劇症肝炎(FH)、肝硬変、肝線維症、劇症肝不全(FHF)、B型肝炎、並びにC型肝炎からなる群から選択される障害を有する、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記組織は、腎臓組織であり、前記対象は、真性糖尿病、関節リウマチ、腎炎症候群、ネフローゼ症候群、高血圧腎症、多発性嚢胞腎疾患、進行性慢性腎疾患、慢性腎不全、ファブリ病、シスチン症、ネフロン癆、アルポート症候群、再灌流傷害、急性腎障害、腎線維症、及び腎移植からなる群から選択される障害又は状態を有する、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記組織は、膵臓組織であり、前記対象は、膵臓癌、真性糖尿病、インスリン抵抗性、低血糖症、高血糖症、リパーゼ欠損症、コレシストキニン(CCK)欠損症、急性膵炎、慢性膵炎、及び遺伝性膵炎からなる群から選択される障害を有する、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項16】
前記組織は、腸内壁組織であり、前記対象は、炎症性胃腸障害、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、憩室炎、寄生虫感染、細菌感染、機能性胃腸障害、潰瘍性大腸炎(UC)、並びに腸の外科的切除からなる群から選択される障害又は状態を有する、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項17】
前記組織は、心臓組織であり、前記対象は、心筋梗塞、心不全、心不全虚血性事象による心臓傷害、及び非虚血性事象による心臓傷害からなる群から選択される心血管疾患を有する、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項18】
前記組織は、肺組織であり、前記対象は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺癌、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)、中皮腫、嚢胞性線維症、喘息、特発性肺線維症、加齢による肺不全、肺線維症、間質性肺疾患(ILD)、肺動脈高血圧症、及びα1-アンチトリプシン障害からなる群から選択される障害又は状態を有する、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項19】
前記組織は、筋組織であり、前記対象は、筋炎、自己免疫疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、サルコペニア、小児シャルコー・マリー・トゥース病、加齢による筋肉損失、傷害からの肉離れ、筋萎縮症、筋ジストロフィー、皮膚筋炎、ギヤン-バレー症候群、多発性硬化症、ポリオ、及び多発性筋炎からなる群から選択される障害又は状態を有する、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物は、組織再生を増加させる器官を標的にするために製剤される、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、腸内壁、心臓、又は肺を標的にするために製剤される、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物は、肝臓を標的にするために製剤される、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物は、腎臓を標的にするために製剤される、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物は、前記組成物により処置されない対象と比較して、前記組織再生を増加させる前記組織において壊死を減少させるのに十分な量で前記対象に投与される、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物は、前記組成物により処置されない対象と比較して、前記組織再生を増加させる前記組織において脂肪症を減少させるのに十分な量で前記対象に投与される、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物は、前記組成物により処置されない対象と比較して、前記組織再生を増加させる前記器官の重量を増加させるのに十分な量で前記対象に投与される、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物は、前記組成物により処置されない対象と比較して、前記組織における1つ又は複数の細胞増殖マーカータンパク質の発現を増加させるのに十分な量で前記対象に投与される、請求項1、11、又は12に記載の方法。
【請求項28】
移植器官又は組織において組織再生を増加させるための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりエクスビボで器官又は組織を処置することを含み、前記器官又は組織は、前記組成物により処置されない器官又は組織と比較して、対象への移植後に前記器官又は組織において組織再生を増加させるのに十分な量で前記組成物により処置される方法。
【請求項29】
組織、器官、小器官、又は器官培養物を処置するための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物とインビトロで組織、器官、小器官、又は器官培養物を接触させることを含む方法。
【請求項30】
対象への移植のための器官又は組織を調製するための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりエクスビボで器官又は組織を処置することを含む方法。
【請求項31】
前記器官又は組織は、前記組成物により処置されない器官又は組織と比較して、前記対象への移植後に前記器官又は組織における組織再生を増加させるのに十分な量で前記組成物により処置される、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記器官又は組織は、前記組成物により処置されていない器官又は組織を移植される対象と比較して、前記対象への前記器官又は組織の移植後に前記対象の生存を増加させるのに十分な量で前記組成物により処置される、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記器官又は組織は、前記組成物により処置されない器官又は組織と比較して、前記対象への移植後に前記器官又は組織の生着を改善するのに十分な量で前記組成物により処置される、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記器官又は組織は、前記組成物により処置されない器官又は組織と比較して、前記対象への移植前に、前記器官又は組織の生存率を延長するのに十分な量で前記組成物により処置される、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ストレス条件は、非生物的ストレス、生物ストレス、及び/又は化学的ストレスを含む、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ストレス条件は、非生物的ストレスを含む、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記非生物的ストレスは、栄養素の欠乏、熱、冷たさ、放射線、低酸素、浸透圧、及びpHストレスからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ストレス条件は、生物ストレスを含む、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記生物ストレスは、自然に生じるウイルスによるウイルス感染、細菌感染、及び真菌感染からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ストレス条件は、アポトーシスを受けるように前記細胞を誘導する、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ストレス条件は、化学的ストレスを含む、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記化学的ストレスは、前記細胞による細胞代謝回転因子の産生を促進する化合物と前記細胞を接触させることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ストレス条件に曝露される前記細胞は、前記対象にとって同種異系である、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
ストレス条件に曝露される前記細胞は、前記対象にとって自家である、請求項11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
ストレス条件に曝露される前記細胞は、肝細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、筋細胞、骨細胞、腸内壁の細胞、心臓細胞、肺細胞、皮膚細胞、神経細胞、中枢神経系(CNS)の細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及び免疫細胞からなる群から選択される、請求項11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、又は免疫細胞は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、骨、腸内壁、心臓、肺、皮膚、又は前記中枢神経系に由来する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ストレス条件に曝露される前記細胞は、前記組織再生が生じる同じタイプの組織に由来する、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
ストレス条件に曝露される前記細胞は、肝細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、肝組織である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、腎臓細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、腎臓組織である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、肺細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、肺組織である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、筋細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、筋組織である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、骨細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、骨組織である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、膵臓細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、膵臓組織である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、心臓細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、心臓組織である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、腸内壁の細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、腸の内壁である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、皮膚細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、皮膚組織である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、CNSの細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、CNS組織である;ストレス条件に曝露される前記細胞は、上皮細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、上皮である;又はストレス条件に曝露される前記細胞は、内皮細胞であり、前記組織再生が生じる前記組織は、内皮である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ストレス条件に曝露される前記細胞は、前記組織再生が生じる同じタイプの組織に由来しない、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
ストレス条件に曝露される前記細胞は、癌細胞である、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記癌細胞は、不死化される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記癌細胞は、対象から単離される初代細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物は、インタクトな細胞を含まない、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記組成物は、ストレス条件に曝露された前記細胞から調製される無細胞抽出物を含む、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物は、ストレス条件に曝露された前記細胞由来の馴化培地を含む、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記組成物は、前記馴化培地の機能的な画分を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記機能的な画分は、前記馴化培地から分子量に基づいて分子を単離することによって調製される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記組成物は、前記細胞から単離される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記1つ又は複数の細胞代謝回転因子は、精製される又は部分的に精製される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物は、少なくとも10種の細胞代謝回転因子を含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物は、少なくとも2種の細胞代謝回転因子を含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物は、1種の細胞代謝回転因子しか含まない、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記器官は、実質器官である、請求項1、11、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記器官は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、腸内壁、心臓、及び肺から選択される、請求項1、11、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記器官は、傷害を有する、請求項1、11、28~20、63、及び64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記傷害は、薬物、毒素、ウイルス感染、又は前記器官に対する外科手術によって引き起こされる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記組成物は、前記器官傷害後に前記対象に投与される、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
前記対象は、前記器官に対する外科手術を必要とする、請求項1、11、及び63~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記組成物は、前記器官に対する外科手術前に前記対象に投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記組成物は、前記器官に対する外科手術後に前記対象に投与される、請求項68又は69に記載の方法。
【請求項71】
前記外科手術は、前記器官に関わる癌切除を含む、請求項67~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記組織は、肝組織、腎臓組織、膵臓組織、筋組織、腸内壁、心臓組織、及び肺組織からなる群から選択される、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記方法は、前記1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む前記組成物を調製するステップをさらに含む、請求項1、11、12、及び28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記組成物を調製するステップは、前記細胞を前記ストレス条件に曝露することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、前記対象において標的細胞の細胞代謝回転を誘導する化合物を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物は、前記組成物により処置されない対象と比較して、前記組織の再生を増加させるのに十分な量で投与される方法。
【請求項76】
前記化合物は、前記標的細胞において小胞体(ER)ストレスを誘導する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記ERストレスは、アンフォールドタンパク質応答を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記化合物は、前記標的細胞においてアポトーシスを誘導する、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記化合物は、前記標的細胞において活性酸素種(ROS)の産生を誘導する、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記標的細胞におけるROSの産生は、前記標的細胞の死を誘導するのに十分なレベルである、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
前記化合物は、小分子である、請求項75~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記化合物は、タンパク質である、請求項75~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記化合物は、組織再生を増加させる前記器官を標的にする、請求項75~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記化合物は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、骨、腸内壁、心臓、又は肺を標的にする、請求項75~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記化合物は、組織再生を増加させる前記器官を標的にする抗体にコンジュゲートされる、請求項75に記載の方法。
【請求項86】
前記抗体は、組織再生を増加させる前記器官の組織特異抗原に特異的に結合する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記抗体は、肝臓を標的にする、請求項85又は86に記載の方法。
【請求項88】
前記化合物は、毒素である、請求項75~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記化合物は、チオアセトアミド、ツニカマイシン、PhenolaTi、ゼアラレノン、志賀毒素2型、四塩化炭素(CCl4)、及びアセトアミノフェンからなる群から選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記化合物は、化学療法剤である、請求項75に記載の方法。
【請求項91】
前記化合物は、鉄依存性細胞分解を誘導する化合物ではない、請求項75~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記標的細胞は、肝細胞であり、前記組織は、肝組織である;前記標的細胞は、腎臓細胞であり、前記組織は、腎臓組織である;前記標的細胞は、肺細胞であり、前記組織は、肺組織である;前記標的細胞は、筋細胞であり、前記組織は、筋組織である;前記標的細胞は、骨細胞であり、前記組織は、骨組織である;前記標的細胞は、膵臓細胞であり、前記組織は、膵臓組織である;前記標的細胞は、心臓細胞であり、前記組織は、心臓組織である;前記標的細胞は、腸内壁の細胞であり、前記組織は、腸の内壁である;前記標的細胞は、皮膚細胞であり、前記組織は、皮膚組織である;前記標的細胞は、CNSの細胞であり、前記組織は、CNS組織である;前記標的細胞は、上皮細胞であり、前記組織は、上皮である;又は前記標的細胞は、内皮細胞であり、前記組織は、内皮である、請求項75~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記標的細胞は、組織再生を増加させる前記器官又は組織中のものである、請求項75~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記標的細胞は、組織再生を増加させる前記器官又は組織に隣接する組織中のものである、請求項75~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記標的細胞は、上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、及び免疫細胞からなる群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項96】
前記免疫細胞は、単球又はマクロファージである、請求項95に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年12月21日に提出された米国仮特許出願第63/128,530号に対する優先権を主張し、この全内容は、参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多細胞生物では、細胞死は、組織の恒常性を維持し且つ潜在的に有害な細胞を排除すると考えられている重要で活発なプロセスである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
特定の態様では、本開示は、哺乳動物対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、組織の再生を増加させるのに十分な量で及び時間、組成物を対象に投与することを含み、組成物は、(a)哺乳動物細胞をストレス条件に曝露すること及び(b)組成物を産生するために曝露した細胞又は曝露した細胞由来の馴化培地を収集することによって作製される方法に関する。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、小胞体ストレスを誘導する化合物である。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、チオアセトアミド、ツニカマイシン、PhenolaTi、ゼアラレノン、志賀毒素2型、四塩化炭素(CCl4)、及びアセトアミノフェンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、チオアセトアミドである。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される哺乳動物細胞は、組織又は器官中に存在するタイプのものである。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される哺乳動物細胞は、肝細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、筋細胞、骨細胞、腸内壁の細胞、心臓細胞、肺細胞、皮膚細胞、神経細胞、中枢神経系(CNS)の細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及び免疫細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される哺乳動物細胞は、肝細胞であり、器官は、肝臓である。いくつかの実施形態では、細胞又は馴化培地は、組成物を産生するためにさらに分画される。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される哺乳動物細胞は、対象にとって自家である。いくつかの実施形態では、哺乳動物対象は、ヒトである。
【0004】
特定の態様では、本開示は、対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を対象に投与することを含み、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織の再生を増加させるのに十分な量で対象に投与される方法に関する。特定の態様では、本開示は、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を組織再生の増加を必要とする対象に送達するための方法であって、組成物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、組織は、肝組織であり、対象は、慢性肝損傷、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、薬剤性肝傷害、劇症及び遅発性肝不全(LOHF)、劇症肝炎(FH)、肝硬変、肝線維症、劇症肝不全(FHF)、B型肝炎、並びにC型肝炎からなる群から選択される障害を有する。いくつかの実施形態では、組織は、腎臓組織であり、対象は、真性糖尿病、関節リウマチ、腎炎症候群、ネフローゼ症候群、高血圧腎症、多発性嚢胞腎疾患、進行性慢性腎疾患、慢性腎不全、ファブリ病、シスチン症、ネフロン癆、アルポート症候群、再灌流傷害、急性腎障害、腎線維症、及び腎移植からなる群から選択される障害又は状態を有する。いくつかの実施形態では、組織は、膵臓組織であり、対象は、膵臓癌、真性糖尿病、インスリン抵抗性、低血糖症、高血糖症、リパーゼ欠損症、コレシストキニン(CCK)欠損症、急性膵炎、慢性膵炎、及び遺伝性膵炎からなる群から選択される障害を有する。いくつかの実施形態では、組織は、腸内壁組織であり、対象は、炎症性胃腸障害、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、憩室炎、寄生虫感染、細菌感染、機能性胃腸障害、潰瘍性大腸炎(UC)、及び腸の外科的切除からなる群から選択される障害又は状態を有する。いくつかの実施形態では、組織は、心臓組織であり、対象は、心筋梗塞、心不全、心不全虚血性事象による心臓傷害、及び非虚血性事象による心臓傷害からなる群から選択される心血管疾患を有する。いくつかの実施形態では、組織は、肺組織であり、対象は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺癌、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)、中皮腫、嚢胞性線維症、喘息、特発性肺線維症、加齢による肺不全、肺線維症、間質性肺疾患(ILD)、肺動脈高血圧症、及びα1-アンチトリプシン障害からなる群から選択される障害又は状態を有する。いくつかの実施形態では、組織は、筋組織であり、対象は、筋炎、自己免疫疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、サルコペニア、小児シャルコー・マリー・トゥース病、加齢による筋肉損失、傷害からの肉離れ、筋萎縮症、筋ジストロフィー、皮膚筋炎、ギヤン-バレー症候群、多発性硬化症、ポリオ、及び多発性筋炎からなる群から選択される障害又は状態を有する。
【0006】
いくつかの実施形態では、組成物は、組織再生を増加させる器官を標的にするために製剤される。いくつかの実施形態では、組成物は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、腸内壁、心臓、又は肺を標的にするために製剤される。いくつかの実施形態では、組成物は、肝臓を標的にするために製剤される。いくつかの実施形態では、組成物は、腎臓を標的にするために製剤される。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織再生を増加させる組織において壊死を減少させるのに十分な量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織再生を増加させる組織において脂肪症を減少させるのに十分な量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織再生を増加させる器官の重量を増加させるのに十分な量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織における1つ又は複数の細胞増殖マーカータンパク質の発現を増加させるのに十分な量で対象に投与される。
【0007】
特定の態様では、本開示は、移植器官又は組織において組織再生を増加させるための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりエクスビボで器官又は組織を処置することを含み、器官又は組織は、組成物により処置されない器官又は組織と比較して、対象への移植後に器官又は組織において組織再生を増加させるのに十分な量で組成物により処置される方法に関する。
【0008】
特定の態様では、本開示は、組織、器官、小器官、又は器官培養物を処置するための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物とインビトロで組織、器官、小器官、又は器官培養物を接触させることを含む方法に関する。
【0009】
特定の態様では、本開示は、対象への移植のための器官又は組織を調製するための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりエクスビボで器官又は組織を処置することを含む方法に関する。
【0010】
いくつかの実施形態では、器官又は組織は、組成物により処置されない器官又は組織と比較して、対象への移植後に器官又は組織における組織再生を増加させるのに十分な量で組成物により処置される。いくつかの実施形態では、器官又は組織は、組成物により処置されていない器官又は組織を移植される対象と比較して、対象への器官又は組織の移植後に対象の生存を増加させるのに十分な量で組成物により処置される。いくつかの実施形態では、器官又は組織は、組成物により処置されない器官又は組織と比較して、対象への移植後に器官又は組織の生着を改善するのに十分な量で組成物により処置される。いくつかの実施形態では、器官又は組織は、組成物により処置されない器官又は組織と比較して、対象への移植前に、器官又は組織の生存率を延長するのに十分な量で組成物により処置される。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、非生物的ストレス、生物ストレス、及び/又は化学的ストレスを含む。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、非生物的ストレスを含む。いくつかの実施形態では、非生物的ストレスは、栄養素の欠乏、熱、冷たさ、放射線、低酸素、浸透圧、及びpHストレスからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、生物ストレスを含む。いくつかの実施形態では、生物ストレスは、自然に生じるウイルスによるウイルス感染、細菌感染、及び真菌感染からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、アポトーシスを受けるように細胞を誘導する。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、化学的ストレスを含む。いくつかの実施形態では、化学的ストレスは、細胞による細胞代謝回転因子の産生を促進する化合物と細胞を接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、対象にとって同種異系である。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、対象にとって自家である。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、肝細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、筋細胞、骨細胞、腸内壁の細胞、心臓細胞、肺細胞、皮膚細胞、神経細胞、中枢神経系(CNS)の細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及び免疫細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、又は免疫細胞は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、骨、腸内壁、心臓、肺、皮膚、又は中枢神経系に由来する。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、組織再生が生じる同じタイプの組織に由来する。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、肝細胞であり、組織再生が生じる組織は、肝組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、腎臓細胞であり、組織再生が生じる組織は、腎臓組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、肺細胞であり、組織再生が生じる組織は、肺組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、筋細胞であり、組織再生が生じる組織は、筋組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、骨細胞であり、組織再生が生じる組織は、骨組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、膵臓細胞であり、組織再生が生じる組織は、膵臓組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、心臓細胞であり、組織再生が生じる組織は、心臓組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、腸内壁の細胞であり、組織再生が生じる組織は、腸の内壁である;ストレス条件に曝露される細胞は、皮膚細胞であり、組織再生が生じる組織は、皮膚組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、CNSの細胞であり、組織再生が生じる組織は、CNS組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、上皮細胞であり、組織再生が生じる組織は、上皮である;又はストレス条件に曝露される細胞は、内皮細胞であり、組織再生が生じる組織は、内皮である。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、組織再生が生じる同じタイプの組織に由来しない。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、不死化される。いくつかの実施形態では、癌細胞は、対象から単離される初代細胞である。いくつかの実施形態では、組成物は、インタクトな細胞を含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、ストレス条件に曝露された細胞から調製される無細胞抽出物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ストレス条件に曝露された細胞由来の馴化培地を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、馴化培地の機能的な画分を含む。いくつかの実施形態では、機能的な画分は、馴化培地から分子量に基づいて分子を単離することによって調製される。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞から単離される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子は、精製される又は部分的に精製される。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも10種の細胞代謝回転因子を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも2種の細胞代謝回転因子を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1種の細胞代謝回転因子しか含まない。いくつかの実施形態では、器官は、実質器官である。いくつかの実施形態では、器官は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、腸内壁、心臓、及び肺から選択される。いくつかの実施形態では、器官は、傷害を有する。いくつかの実施形態では、傷害は、薬物、毒素、ウイルス感染、又は器官に対する外科手術によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、組成物は、器官傷害後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、器官に対する外科手術を必要とする。いくつかの実施形態では、組成物は、器官に対する外科手術前に対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、器官に対する外科手術後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、外科手術は、器官に関わる癌切除を含む。いくつかの実施形態では、組織は、肝組織、腎臓組織、膵臓組織、筋組織、腸内壁、心臓組織、及び肺組織からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、方法は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を調製するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物を調製するステップは、細胞をストレス条件に曝露することを含む。
【0011】
特定の態様では、本開示は、対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、対象において標的細胞の細胞代謝回転を誘導する化合物を含む組成物を対象に投与することを含み、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織の再生を増加させるのに十分な量で投与される方法に関する。いくつかの実施形態では、化合物は、標的細胞において小胞体(ER)ストレスを誘導する。いくつかの実施形態では、ERストレスは、アンフォールドタンパク質応答を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、標的細胞においてアポトーシスを誘導する。いくつかの実施形態では、化合物は、標的細胞において活性酸素種(ROS)の産生を誘導する。いくつかの実施形態では、標的細胞におけるROSの産生は、標的細胞の死を誘導するのに十分なレベルである。いくつかの実施形態では、化合物は、小分子である。いくつかの実施形態では、化合物は、タンパク質である。いくつかの実施形態では、化合物は、組織再生を増加させる器官を標的にする。いくつかの実施形態では、化合物は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、骨、腸内壁、心臓、又は肺を標的にする。いくつかの実施形態では、化合物は、組織再生を増加させる器官を標的にする抗体にコンジュゲートされる。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体は、組織再生を増加させる器官の組織特異抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、肝臓を標的にする。いくつかの実施形態では、化合物は、毒素である。いくつかの実施形態では、化合物は、チオアセトアミド、ツニカマイシン、PhenolaTi、ゼアラレノン、志賀毒素2型、四塩化炭素(CCl4)、及びアセトアミノフェンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、化合物は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、化合物は、鉄依存性細胞分解を誘導する化合物ではない。いくつかの実施形態では、標的細胞は、肝細胞であり、組織は、肝組織である;標的細胞は、腎臓細胞であり、組織は、腎臓組織である;標的細胞は、肺細胞であり、組織は、肺組織である;標的細胞は、筋細胞であり、組織は、筋組織である;標的細胞は、骨細胞であり、組織は、骨組織である;標的細胞は、膵臓細胞であり、組織は、膵臓組織である;標的細胞は、心臓細胞であり、組織は、心臓組織である;標的細胞は、腸内壁の細胞であり、組織は、腸の内壁である;標的細胞は、皮膚細胞であり、組織は、皮膚組織である;標的細胞は、CNSの細胞であり、組織は、CNS組織である;標的細胞は、上皮細胞であり、組織は、上皮である;又は標的細胞は、内皮細胞であり、組織は、内皮である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、組織再生を増加させる器官又は組織中のものである。いくつかの実施形態では、標的細胞は、組織再生を増加させる器官又は組織に隣接する組織中のものである。いくつかの実施形態では、標的細胞は、上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、及び免疫細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、単球又はマクロファージである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1において記載されるマウス部分的肝切除肝再生試験についての投薬及びサンプル収集のスケジュールを示す図である。
図2図2A及び2Bは、シャムマウス又は馴化培地(CM)若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスのそれぞれ2日目及び4日目の肝臓重量を示す図である。棒は、左から右に、シャム、CM0、HGFプラスミド、CM1、CM2、CM3、CM5、CM6、及びCM7である。
図3図3A及び3Bは、シャムマウス又は馴化培地(CM)若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスのそれぞれ2日目及び4日目の肝臓指数を示す図である。棒は、左から右に、シャム、CM0、HGFプラスミド、CM1、CM2、CM3、CM5、CM6、及びCM7である。
図4図4は、シャムマウス又はCM0若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスの血漿中のHGF濃度を示す図である。棒は、左から右に、日ごとに、シャム、CM0、及びHGFプラスミドである。
図5図5は、シャムマウス又はCM若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスの2日目の脂肪症スコアを示す図である。棒は、左から右に、シャム、CM0、HGFプラスミド、CM1、CM2、CM3、CM5、CM6、及びCM7である。
図6図6A及び6Bは、シャムマウス又はCM若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスのそれぞれ2日目及び4日目の壊死スコアを示す図である。棒は、左から右に、シャム、CM0、HGFプラスミド、CM1、CM2、CM3、CM5、CM6、及びCM7である。
図7-1】図7は、シャムマウス又はCM若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスのH&E染色の代表画像を示す図である。
図7-2】図7-1の続き。
図7-3】図7-1の続き。
図7-4】図7-1の続き。
図8図8A及び8Bは、シャムマウス又はCM若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスのそれぞれ2日目及び4日目のPCNAを示す図である。棒は、左から右に、シャム、CM0、HGFプラスミド、CM1、CM2、CM3、CM5、CM6、及びCM7である。
図9-1】図9は、シャムマウス又はCM若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスのPCNA染色の代表画像を示す図である。矢印は、ポジティブ細胞を示す。
図9-2】図9-1の続き。
図9-3】図9-1の続き。
図9-4】図9-1の続き。
図10図10A及び10Bは、シャムマウス又はCM若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスのそれぞれ2日目及び4日目のKi67レベルを示す図である。棒は、左から右に、シャム、CM0、HGFプラスミド、CM1、CM2、CM3、CM5、CM6、及びCM7である。
図11-1】図11は、シャムマウス又はCM若しくはHGFプラスミドにより処置したマウスのPCNA染色の代表画像を示す図である。矢印は、ポジティブ細胞を示す。
図11-2】図11-1の続き。
図11-3】図11-1の続き。
図11-4】図11-1の続き。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を対象に投与することを含み、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織の再生を増加させるのに十分な量で対象に投与される方法に関する。本開示はまた、組織、器官、小器官、又は器官培養物を処置するための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりインビトロで組織、器官(例えば、移植のための器官)、小器官、又は器官培養物を処置することを含む方法にも関する。
【0015】
出願人らは、驚くべきことに、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される細胞代謝回転因子が、肝傷害のマウスモデルにおいて組織再生を増加させることを示した。従って、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される細胞代謝回転因子の投与は、組織再生の増加から利益を得るであろう障害を処置するために使用されてもよい。
【0016】
I.定義
本明細書において使用される用語「非生物的ストレス条件」は、ウイルス、細菌、真菌、又は他の生物と細胞を接触させることを含まない任意のストレス条件を指す。適した非生物的ストレス条件は、本明細書において定義されるように、環境ストレス条件及び化学的ストレス条件を含むが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書において使用される用語「生物ストレス条件」は、ウイルス、細菌、真菌、又は他の生物と細胞を接触させること含むストレス条件を指す。いくつかの実施形態では、生物ストレス条件は、ウイルス、細菌、真菌、又は他の生物により細胞を感染させることを含む。
【0018】
本明細書において使用される用語「化学的ストレス条件」は、細胞による細胞代謝回転因子の産生を誘導する化合物と細胞を接触させることを含むストレス条件を指す。適した化合物は、小分子、核酸、及びタンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において使用される用語「環境ストレス条件」は、細胞による細胞代謝回転因子の産生を誘導する環境に細胞を曝露することを含むストレス条件を指す。適した環境ストレス条件は、栄養素の欠乏、熱、冷たさ、放射線、低酸素、浸透圧、及びpHストレスを含むが、これらに限定されない。
【0020】
「投与する(administer)」、「投与(administering)」、又は「投与(administration)」という用語は、医薬組成物又は薬剤を対象の系に、又は対象の内部若しくは外部の特定の領域に送達するあらゆる方法を含む。
【0021】
本明細書で使用される「併用投与」、「同時投与」、若しくは「併用療法」は、別個の製剤若しくは単一の医薬製剤を使用する2つ以上の活性剤の投与、又は両方(若しくはすべて)の活性剤がそれらの生物学的活性を発揮する期間が重複するような任意の順序での連続投与として理解される。本明細書において、ある活性剤(例えば、細胞代謝回転因子)が、第2の治療剤の活性を改善することができること、例えば、第2の治療剤の活性に対して標的細胞を感作することができること又は第2の治療剤と相乗効果を有することができることが企図される。「併用投与」は、薬剤が同時に、同じ頻度で、又は同じ投与経路によって投与されることを必要としない。本明細書において使用されるように、「併用投与」、「同時投与」、又は「併用療法」は、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の、1つ又は複数の追加の治療剤との投与を含む。
【0022】
本明細書において使用される「細胞代謝回転」は、新たに指示をし直して(reorder)、細胞内の物質をまき散らす動的プロセスを指し、最終的に細胞死をもたらし得る。細胞代謝回転は、細胞代謝回転因子の産生及び細胞からの放出を含む。
【0023】
本明細書において使用される「細胞代謝回転因子」は、最終的に細胞から放出され、他の細胞の生物学的活性に影響を与える、細胞代謝回転を受けている細胞によって産生される分子及び細胞断片である。細胞代謝回転因子は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、核酸、小分子、並びに細胞断片(例えば、小胞及び細胞膜断片)を含むことができる。
【0024】
本明細書において使用される「細胞代謝回転経路遺伝子」は、細胞代謝回転経路を促進する、誘導する、又は他の方法でそれに寄与するポリペプチドをコードする遺伝子を指す。
【0025】
「サノトランスミッション」は、本明細書中で使用される場合、標的シグナル伝達細胞における細胞回転経路の活性化の結果である細胞間での情報交換であり、これは応答する細胞にシグナルを伝達して、生物学的応答を起こす。例えば、このような経路を促進する遺伝子の標的シグナル伝達細胞への、ウイルス又は他の遺伝子治療送達を通じた、前記細胞における細胞回転経路遺伝子の調整によって、サノトランスミッションが標的シグナル伝達細胞において誘導され得る。細胞回転経路がこのように活性化されている標的シグナル伝達細胞は、シグナル伝達細胞により能動的に放出される因子を通じて、又はシグナル伝達細胞の細胞回転(例えば細胞死)中に応答細胞に曝露されるようになるシグナル伝達細胞の細胞内因子を通じて、応答細胞にシグナルを伝達し得る。
【0026】
本明細書において使用されるように、用語「増加させる」(又は「活性化する」)及び「減少させる」は、それぞれ、参照と比較して、パラメータのより大きな又はより小さな量、機能、又は活性をもたらす調節を指す。例えば、本明細書において記載される調製物の投与の後に、パラメータ(例えば、組織再生、細胞増殖)は、投与前のパラメータの量と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは98%又はそれ以上、対象において増加してもよい又は減少してもよい。一般に、測定基準は、投与後に、投与が詳述される効果を有した時点で、例えば、治療計画が開始されてから少なくとも1日後、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後に測定される。同様に、前臨床パラメータ(本明細書において記載される調製物による試験哺乳動物における組織再生など)は、投与前のパラメータの量と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは98%又はそれ以上、増加してもよい又は減少してもよい。
【0027】
本明細書において使用されるように、「小分子」は、1000Da未満の分子量を有する分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、900、800、700、600、又は500Da未満の分子量を有する。特定の実施形態では、小分子は、核酸分子を含まない。特定の実施形態では、小分子は、3アミノ酸長を超えるペプチドを含まない。
【0028】
本発明の方法によって処置される「対象」は、ヒト又は非ヒト動物のいずれか、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを意味することができる。特定の実施形態では、対象は、本発明の方法を使用する処置の開始前に、検出可能な又は診断された障害を有する。実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物である。実施形態では、対象は、非ヒト霊長類(例えば、サル、類人猿)、有蹄類(例えば、ウシ、バッファロー、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ラクダ、ラマ、アルパカ、シカ、ウマ、ロバ)、食肉類(例えば、イヌ、ネコ)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス)、又はウサギ目の動物(例えば、ウサギ)などの非ヒト哺乳動物である。
【0029】
「治療有効量」とは、障害を処置するために患者に投与されると、その障害のそのような処置を有効にするのに十分な化合物の量を意味する。障害を予防するために投与される場合、その量は、障害の発症を回避又は遅らせるのに十分である。「治療有効量」は、化合物、障害及びその重症度、並びに処置される患者の年齢、体重などによって異なる。治療有効量は治癒的である必要はない。治療有効量は、障害又は状態の発生を防ぐ必要はない。代わりに治療有効量は、疾患又は状態の発症、重症度、又は進行を少なくとも遅延又は軽減する量である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」、「処置(treating)」、及びその同源語は、疾患、病的状態、又は障害を改善する、和らげる、安定化させる、予防する、又は治癒することを目的とした対象の医学的管理を指す。この用語には、積極的処置(疾患、病的状態、又は障害を改善することを目的とした処置)、原因処置(関連する疾患、病的状態、又は障害の原因を対象とした処置)、緩和処置(症状を軽減するように設計された処置)、予防的処置(関連する疾患、病的状態、又は障害の発症を最小限に抑えるか、又は部分的若しくは完全に阻害することを目的とした処置);及び支援処置(別の療法を補完するために使用される処置)が含まれる。
【0031】
II.細胞代謝回転及び細胞代謝回転因子の産生
細胞代謝回転は、新たに指示をし直して(re-order)、細胞内の物質をまき散らす動的プロセスであり、これは、他の細胞の生物学的活性に対して大きな効果を有することができる細胞代謝回転因子の産生及び放出をもたらす。細胞代謝回転は、制御された細胞死のプロセスの間に生じてもよく、複数の分子メカニズムによってコントロールされる。異なるタイプの細胞代謝回転は、異なる細胞代謝回転因子の産生をもたらし、それによって、異なる生物学的効果、例えば組織再生を媒介する。例えば、出願人らは、驚いたことに、ストレス条件(例えばチオアセトアミドによる処置)への細胞の曝露が、インビボで組織再生を増加させる細胞代謝回転因子の産生をもたらすことができることを示した。
【0032】
組織再生を増加させる細胞代謝回転因子の産生及び放出をもたらしてもよい細胞代謝回転経路は、下記に記載されるように、ネクロトーシス(例えば、ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)駆動型のネクロトーシス)、アポトーシス(例えば、外因性アポトーシス又は内因性アポトーシス)、フェロトーシス、ピロトーシス、NETotic細胞死、ETotic細胞死、エントーシス(Entotic)細胞死、パータナトス(parthanotos)、炎症性細胞死、オートファジー性細胞死、リソソーム性細胞死、及びオキセイトーシス(oxeiptosis)並びにその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0033】
ネクロトーシス
特定の実施形態では、ストレス条件への細胞の曝露は、細胞においてネクロトーシス(例えば、MPT駆動型のネクロトーシス)を誘導する。本明細書において使用される用語「ネクロトーシス」は、受容体相互作用タンパク質キナーゼ3(RIP1-及び/又はRIPK3)/混合系統キナーゼ様(MLKL)依存性の壊死を指す。いくつかの傷害により、ミトコンドリア内膜は、急激に浸透圧恒常性を失い、ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)駆動型のネクロトーシスとして知られている制御された異なるかたちのネクロトーシスを開始する。アルキル化DNA損傷、興奮毒及びデスレセプターの連結を含め、いくつかのトリガーがネクロトーシスを誘導し得る。例えば、カスパーゼ(及び特にカスパーゼ-8又はカスパーゼ-10)が、遺伝子操作により(例えば遺伝子ノックアウト又はRNA干渉、RNAiにより)阻害されるか又は薬理学的な物質(例えば化学的なカスパーゼ阻害剤)により遮断される場合、RIPK3は、MLKLをリン酸化し、これが膜孔へのMLKL集合につながり、最終的に壊死性細胞死の実行を活性化する。その全体において参照により本明細書中に組み込まれるGalluzzi et al.,2018,Cell Death Differ.Mar;25(3):486-541を参照。
【0034】
当技術分野でいくつかの方法が知られており、特定のマーカーの検出を通じて、ネクロトーシスを起こした細胞を同定し、他のタイプの細胞代謝回転及び/又は細胞死と区別するために使用され得る。これらは、一般的には細胞の免疫ブロット又は免疫染色によって、これらの翻訳後修飾を検出する抗体により、RIPK1、RIPK3及びMLKLのリン酸化を含む。ネクロトーシスは、カスパーゼ活性化がないこと、急速な膜の易透化、膜へのMLKL再局在化、界面活性剤不溶性分画へのRIPK3及びMLKLの蓄積、RIPK3/MLKL複合体形成及びMLKLオリゴマー化によって、アポトーシス及びピロトーシスと区別され得る。ネクロトーシスは、RIPK3及びMLKLの両方の必要性並びにそれらの活性化によって遺伝学的に及び薬理学的に定義され得る。
【0035】
アポトーシス
特定の実施形態では、ストレス条件への細胞の曝露は、細胞においてアポトーシスを誘導する。アポトーシスは、DNA断片化、細胞骨格及び核タンパク質の分解、タンパク質の架橋、アポトーシス小体の形成、食細胞受容体に対するリガンドの発現、並びに食細胞による取り込みをもたらすプログラム細胞死のカスパーゼ駆動型のプロセスである。
【0036】
特定の実施形態では、ストレス条件への細胞の曝露は、細胞において外因性アポトーシスを誘導する。「外因性アポトーシス」という用語は、本明細書中で使用される場合、特異的な膜貫通受容体により感知され、伝播される、細胞外ストレスシグナルにより誘導されるアポトーシス性細胞死の例を指す。外因性アポトーシスは、リガンド、例えばFAS/CD95リガンド(FASL/CD95L)、腫瘍壊死因子α(TNFα)及びTNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10(TNFSF10、TNF-関連アポトーシス誘導リガンド、TRAILとして最もよく知られる)などの、様々なデスレセプター(即ち、それぞれ、FAS/CD95、TNFα受容体1(TNFR1)及びTRAIL受容体(TRAILR)1-2)への結合により開始され得る。或いは、外因性アポトーシス促進性シグナルは、所謂、ネトリン受容体(例えばUNC5A-D及び結直腸癌で欠失、DCC)を含む、「依存受容体」により送り出され得、これは、それらの特異的なリガンドの濃度が臨界の閾値レベル未満に低下した場合のみ致死性の機能を発揮する(その全体において参照により本明細書に組み込まれる、Galluzzi et al.,2018,Cell Death Differ.Mar;25(3):486-541を参照)。
【0037】
いくつかの方法が当技術分野で公知であり、特定のマーカーの検出を通じて、アポトーシスを起こした細胞を同定し、他のタイプの細胞代謝回転及び/又は細胞死と区別するために使用され得る。アポトーシスは、カスパーゼ活性化を必要とし、カスパーゼ活性化の阻害剤及び/又はカスパーゼ-8又はカスパーゼ-9などのカスパーゼがないことによる死滅の阻止により抑制され得る。カスパーゼ活性化は、系統的に、PARP及びDFF45などの特異的な基質並びに600を超えるさらなるタンパク質の切断により細胞を破壊する。アポトーシス細胞膜は最初、インタクトなままであり、ホスホチジル(phosphotidyl)-セリンの外在化及び同時に起こる膜ブレビングを伴う。ミトコンドリアの外膜は、一般的には、破壊され、CytoC及びHTRA2などのタンパク質をサイトゾルに放出する。核DNAは、当技術分野で公知のアッセイにより検出され得る別々の断片に切断される。
【0038】
フェロトーシス
特定の実施形態では、ストレス条件への細胞の曝露は、細胞においてフェロトーシスを誘導する。「フェロトーシス」という用語は、本明細書中で使用される場合、鉄依存性であり、再活性酸素種の産生を含む、制御された細胞死の過程を指す。いくつかの実施形態では、フェロトーシスは、致死レベルまでの脂質ヒドロペルオキシドの鉄依存性蓄積を伴う。フェロトーシスに対する感受性は、アミノ酸、鉄及び多価不飽和脂肪酸の代謝を含む多くの生物学的な過程、並びにグルタチオン、リン脂質、NADPH及びコエンザイムQ10の生合成に密接に関連している。フェロトーシスは、ミトコンドリアとは無関係であるが、いくつかの細胞環境においてNADPHオキシダーゼに依存する、細胞質及び脂質ROSの両方の産生をもたらす代謝機能障害を伴う(例えば、その全体において参照により本明細書中に組み込まれるDixon et al.,2012,Cell 149(5):1060-72を参照)。
【0039】
いくつかの方法が当技術分野で公知であり、フェロトーシスを起こした細胞を同定し、特定のマーカーの検出を通じて他のタイプの細胞代謝回転及び/又は細胞死と区別するために使用され得る(例えば、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる、Stockwell et al.,2017,Cell 171:273-285を参照)。例えば、フェロトーシスは、致死的な脂質過酸化から起こり得るので、脂質過酸化の測定は、鉄依存性の細胞分解を起こした細胞を特定する一方法を提供する。C11-BODIPY及びLiperfluoは、脂質ROSを検出するための迅速で間接的な手段を提供する親油性ROSセンサーである(Dixon et al.,2012,Cell 149:1060-1072)。特異的な酸化された脂質を直接検出するために、液体クロマトグラフィー(LC)/タンデム質量分析(MS)による分析も使用され得る(Friedmann Angeli et al.,2014,Nat.Cell Biol.16:1180-1191;Kagan et al.,2017,Nat.Chem.Biol.13:81-90)。脂質過酸化を測定するために、イソプロスタン及びマロンジアルデヒド(MDA)も使用され得る(Milne et al.,2007,Nat.Protoc.2:221-226;Wang et al.,2017,Hepatology 66(2):449-465)。MDAを測定するためのキットが市販されている(Beyotime,Haimen,China)。
【0040】
フェロトーシスを研究するための他の有用なアッセイには、鉄の存在量及びGPX4活性を測定することが含まれる。鉄の存在量は、誘導結合プラズマ-MS又はカルセインAM消光並びに他の特異的な鉄プローブを使用して測定され得(Hirayama and Nagasawa,2017,J.Clin.Biochem.Nutr.60:39-48;Spangler et al.,2016,Nat.Chem.Biol.12:680-685)、一方でGPX4活性は、LC-MSを用いて、細胞溶解液中でホスファチジルコリンヒドロペルオキシド還元を使用して検出され得る(Yang et al.,2014,Cell 156:317-331)。さらに、フェロトーシスは、グルタチオン(GSH)含量を測定することによって評価され得る。GSHは、例えば市販のGSH-Gloグルタチオンアッセイを使用することによって測定され得る(Promega,Madison,WI)。
【0041】
フェロトーシスは、1つ以上のマーカータンパク質の発現を測定することによっても評価され得る。適切なマーカータンパク質としては、グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)、プロスタグランジン-エンドペルオキシドシンターゼ2(PTGS2)及びシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)が挙げられるが限定されない。マーカータンパク質又はマーカータンパク質をコードする核酸の発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、定量的リアルタイムPCR、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二重鎖分析、ノーザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、インサイチューハイブリッド形成、アレイ分析、デオキシリボ核酸シーケンシング、制限断片長多型分析及びそれらの組み合わせ又は部分的な組み合わせを含むが限定されない当技術分野で公知の適切な技術を使用して決定され得る。
【0042】
ピロトーシス
特定の実施形態では、ストレス条件への細胞の曝露は、細胞においてピロトーシスを誘導する。本明細書において使用される「ピロトーシス」は、カスパーゼ1、カスパーゼ4、又はカスパーゼ5依存性プログラム細胞死の本質的に炎症性のプロセスを指す。ピロトーシスの最も特有の生化学的特性は、カスパーゼ-1の早期の誘導性近接媒介(proximity-mediated)活性化である。カスパーゼ-1、4、又は5のピロトーシス性の活性化は、インフラマソームとして知られる多タンパク質プラットフォームの状況で生じ得、これには、カスパーゼ-1活性化を促進するアダプタータンパク質ASCを動員するNOD様受容体(NLR)又はサイトゾルDNAセンサーであるアブセント・イン・メラノーマ(absent in melanoma)2(AIM2)などの他のセンサーが含まれる。カスパーゼ-4/5は、LPSにより直接活性化されてもよい。両方の場合において、活性カスパーゼ-1は、発熱性のインターロイキン-1β(IL-1β)及びIL-18のタンパク質分解性の成熟及び放出を触媒する。さらに、いくつかの(すべてではないが)例において、カスパーゼ活性化は、GSDM-Dを標的にし、膜破裂及び細胞死を推進する。Galluzzi et al.,2018,Cell Death Differ.Mar;25(3):486-541を参照されたい。
【0043】
いくつかの方法は、当技術分野において知られており、特定のマーカーの検出を通じて、ピロトーシスを受けている細胞を同定し、他のタイプの細胞代謝回転及び/又は細胞死と区別するために使用されてもよい。ピロトーシスは、カスパーゼ-1、カスパーゼ-4、又はカスパーゼ-5活性を必要とし、通常は、プロ-IL-1b及び/又はプロ-IL-18のプロセシング、これらの成熟サイトカインの放出、及びGSDM-Dのカスパーゼ-1/4/5切断断片による膜の易透化が伴う。
【0044】
追加の細胞代謝回転経路
組織再生を増加させる細胞代謝回転因子の産生及び放出をもたらしてもよい追加の細胞代謝回転経路は、NETotic細胞死、ETotic細胞死、エントーシス細胞死、パータナトス、炎症性細胞死、オートファジー性細胞死、リソソーム性細胞死、及びオキセイトーシスを含む。
【0045】
「NETotic細胞死」又は「NETosis」は、様々な細菌、真菌、及び原生動物の病原体を捕らえて死滅させることができる抗菌分子を載せたクロマチン構造である好中球細胞外トラップ(NET)の放出を伴う細胞死の形態である。NET放出は、インビボでの病原体に対する防御の最前線の1つである。Remijsen et al.,2011,Cell Death&Differentiation 18:581-588を参照されたい。
【0046】
「ETotic細胞死」又は「ETosis」は、好中球及び肥満細胞による細胞外トラップ(ET)の形成を伴う細胞死経路であり、自然免疫反応において重要なメカニズムである。ETは、微生物を捕らえて死滅させる抗菌ペプチド及び酵素が付加したクロマチン-DNA骨格からなる。Wartha et al.,2008,Science Signaling Vol.1,Issue 21,pp.pe25を参照されたい。
【0047】
「Entotic細胞死」又は「Entosis」は、生細胞の別の細胞の細胞質への侵入を伴う細胞死経路である。Overholtzer et al.,2007,Cell 131(5):966-979を参照されたい。
【0048】
「パータナトス」は、ポリ(ADPリボース)(PAR)の蓄積及びミトコンドリアからのアポトーシス誘導因子(AIF)の核移行によって引き起こされるプログラム細胞死の形態である。David et al.,2009,Front Biosci(Landmark Ed).2009;14:1116-1128を参照されたい。
【0049】
「オキセイトーシス」は、KEAP1の活性酸素種(ROS)感知能力を、PGAM5及びAIFM1を伴う細胞死経路と関連づけるカスパーゼ非依存性の細胞死経路である。オキセイトーシスは、細胞内ROSレベルの増加によって活性される場合及び病原体との遭遇により、抗炎症性となる。Scaturro et al.,2019,Current Opinion in Immunology,Volume 56,February 2019,Pages37-43を参照されたい。
【0050】
ストレス条件による細胞代謝回転の誘導及び細胞代謝回転因子の産生
本明細書において提供される方法は、細胞代謝回転及び細胞代謝回転因子の産生を誘導するストレス条件に細胞を曝露することによって生成される組成物を投与することを伴ってもよい。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、非生物的ストレス条件、例えば環境ストレス条件又は化学的ストレス条件を含む。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、例えば、ウイルス、細菌、真菌、又は他の生物と細胞を接触させる生物ストレス条件を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、非生物的ストレス条件は、環境ストレス条件を含む又はそれからなる。本発明の方法を行うのに適した環境ストレス条件は、栄養素の欠乏、熱、冷たさ、放射線、低酸素、浸透圧、及びpHストレスを含むが、これらに限定されない。
【0052】
細胞代謝回転を誘導し、細胞代謝回転因子を生成するのに適した栄養素の欠乏は、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの、細胞成長の持続に十分な栄養素を欠く培地において細胞を培養することを含んでいてもよい。一実施形態では、栄養素の欠乏は、セレン欠乏を含む又はそれからなる。
【0053】
細胞代謝回転を誘導し、細胞代謝回転因子を生成するのに適した熱ストレス条件は、細胞にとって最適な培養温度、例えば37℃よりも少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、10、20、30、40、又は50℃高い温度に細胞を曝露することを含んでいてもよい。細胞代謝回転を誘導し、細胞代謝回転因子を生成するのに適した冷ストレス条件は、細胞にとって最適な培養温度、例えば37℃よりも少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、10、20、30、40、又は50℃低い温度に細胞を曝露することを含んでいてもよい。
【0054】
細胞代謝回転を誘導し、細胞代謝回転因子を生成するのに適した放射線ストレス条件は、例えば、紫外線、ガンマ放射線、X線、赤外線、又はマイクロ波を含んでいてもよい。放射線により細胞を処置する方法は、当技術分野において知られており、例えば、米国特許出願公開第2012/0045418号明細書において記載され、これは、その全体が本明細書に参照によって組み込まれる。細胞は、細胞分解を誘導するために、例えば、少なくとも10、20、30、40、又は50Gyで照射されてもよい。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、放射線を含まない。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、1つ又は複数の紫外線、ガンマ放射線、X線、赤外線、又はマイクロ波を含まない。
【0055】
低酸素は、細胞が適切な酸素供給を奪われる状態である。細胞代謝回転を誘導し、細胞代謝回転因子を生成するのに適した低酸素ストレス条件は、細胞にとって最適な酸素濃度よりも少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%低い酸素濃度に細胞を曝露することを含んでいてもよい。
【0056】
浸透圧ストレスは、細胞の培養基への塩(例えばNaCl)の追加によって増加させてもよい。細胞代謝回転を誘導し、細胞代謝回転因子を生成するのに適した浸透圧ストレス条件は、細胞にとって最適な浸透圧よりも少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、又は500%高い浸透圧に細胞を曝露することを含んでいてもよい。
【0057】
細胞代謝回転及び細胞代謝回転因子の産生はまた、細胞にとって最適なpHよりも高い又は低いpHに細胞を曝露することによって、細胞において誘導されてもよい。細胞のための培養基のpHは、酸又は塩基を培養基に追加することによって調整されてもよい。いくつかの実施形態では、細胞のための培養基のpHは、少なくとも5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.2、7.5、又は8.0である。いくつかの実施形態では、細胞のための培養基のpHは、8.0、7.5、7.2、7.0、6.5、6.0、5.5、又は6.0未満である。これらの値のいずれも、培養基のpHの範囲を定めるために使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、培養基のpHは、6.5~7.2、7.5~8.0、又は6.0~6.5である。
【0058】
いくつかの実施形態では、非生物的ストレス条件は、化学的ストレス条件を含む又はそれからなる。化学的ストレス条件は、細胞代謝回転を誘導し、細胞による細胞代謝回転因子の産生を促進する化合物と細胞を接触させることを含む。
【0059】
細胞代謝回転を誘導し、細胞代謝回転因子を生成する化合物は、小分子、核酸、又はタンパク質を含んでいてもよい。本明細書において使用されるように、「小分子」は、1000Da未満の分子量を有する分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、900、800、700、600、又は500Da未満の分子量を有する。特定の実施形態では、小分子は、核酸分子を含まない。特定の実施形態では、小分子は、3アミノ酸長を超えるペプチドを含まない。
【0060】
細胞代謝回転を誘導する核酸は、アンチセンスDNA分子、アンチセンスRNA分子、二本鎖RNA、siRNA、cDNA、又はクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)系ガイドRNAを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、核酸は、細胞において発現された場合に、細胞代謝回転及び細胞代謝回転因子の放出を誘導するタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、細胞において1つ又は複数の遺伝子の発現を阻害することによって、細胞代謝回転及び細胞代謝回転因子の放出を誘導する。
【0061】
細胞代謝回転を誘導する核酸には、細胞内の標的配列に相補的な一本鎖及び二本鎖(即ち、少なくとも15ヌクレオチド長の相補的領域を有する核酸治療薬)核酸の両方が含まれる。アンチセンス核酸治療剤は、典型的には約16~30ヌクレオチド長の一本鎖核酸治療薬であり、細胞中の標的核酸配列に相補的である。
【0062】
いくつかの実施形態では、細胞代謝回転を誘導する核酸は、一本鎖アンチセンスRNA分子である。アンチセンスRNA分子は、標的mRNA内の配列に相補的である。アンチセンスRNAは、mRNAと塩基対を形成し、翻訳機構を物理的に妨害することによって化学量論的に翻訳を阻害することができる。Dias,N.et al.,(2002)Mol Cancer Ther 1:347-355を参照されたい。アンチセンスRNA分子は、標的mRNAに相補的な約15~30ヌクレオチドを有していてもよい。アンチセンス核酸、化学修飾、及び治療用途に関する特許には、例えば、化学修飾されたRNA含有治療化合物に関する米国特許第5,898,031号明細書;これらの化合物を治療剤として使用する方法に関する米国特許第6,107,094号明細書;一本鎖の化学的に修飾されたRNA様化合物を投与することによって患者を処置する方法に関する米国特許第7,432,250号明細書;及び一本鎖の化学的に修飾されたRNA様化合物を含む医薬組成物に関する米国特許第7,432,249号明細書が含まれる。米国特許第7,629,321号明細書は、複数のRNAヌクレオシド及び少なくとも1つの化学修飾を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを使用して標的mRNAを切断する方法に関する。この段落に列挙される特許のそれぞれの全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0063】
細胞代謝回転を誘導する核酸はまた、二本鎖核酸治療薬も含む。本明細書において区別なく使用される「dsRNA剤」、「dsRNA」、「siRNA」、「iRNA剤」とも呼ばれる「RNAi剤」、「二本鎖RNAi剤」、二本鎖RNA(dsRNA)分子は、下記に定義されるように2つの逆平行の実質的に相補的な核酸鎖を含む二重鎖構造を有するリボ核酸分子の複合体を指す。本明細書において使用されるように、RNAi剤はまた、dsiRNAも含むことができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20070104688号明細書を参照されたい)。一般に、各鎖のヌクレオチドの大部分はリボヌクレオチドであるが、本明細書に記載されるように、各鎖又は両鎖はまた、1つ又は複数の非リボヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドを含むことができる。加えて、本明細書において使用されるように、「RNAi剤」は、化学修飾を有するリボヌクレオチドを含んでいてもよく、RNAi剤は、複数のヌクレオチドに実質的な修飾を含んでいてもよい。そのような修飾は、本明細書において開示される又は当技術分野において知られているあらゆるタイプの修飾を含んでいてもよい。siRNA型の分子において使用されるいずれのそのような修飾も、本明細書及び特許請求の範囲のために「RNAi剤」に含まれる。本発明の方法において使用されるRNAi剤は、例えば、それぞれその全内容が参照によって本明細書に組み込まれる、国際公開第/2012/037254号パンフレット及び国際公開第2009/073809号パンフレットにおいて開示されるような化学修飾を有する薬剤を含む。
【0064】
細胞代謝回転を誘導するタンパク質は、細胞において1つ又は複数のタンパク質の活性を阻害するタンパク質、例えば、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を含んでいてもよい。本明細書で使用される「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖から構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子、又は任意の機能的断片、突然変異体、変異体、若しくはそれらの誘導体を指す。そのような突然変異体、変異体、又は誘導体の抗体型は当技術分野で公知である。完全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインから構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域から構成されている。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成されている。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する。各VH及びVLは、3つのCDRと4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであり得る。いくつかの実施形態では、抗体は完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はマウス抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト化抗体である。他の実施形態では、抗体はキメラ抗体である。キメラ及びヒト化抗体は、CDRグラフト化アプローチ(例えば、米国特許第5,843,708号明細書;同第6,180,370号明細書;同第5,693,762号明細書;同第5,585,089号明細書;及び同第5,530,101号明細書を参照)、チェーンシャッフリング戦略(例えば、米国特許第5,565,332号明細書;Rader et al.(1998)PROC.NAT’L.ACAD.SCI.USA 95:8910-8915を参照)、及び分子モデリング戦略(米国特許第5,639,641号明細書)などを含む当業者に周知の方法によって調製することができる。
【0065】
本明細書で使用される抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。そのような抗体の実施形態はまた、二重特異性(bispecific)、二重特異性(dual specific)、又は多重特異性の形態であり得;2つ以上の異なる抗原に特異的に結合する。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例としては、(i)Fab断片、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)単一可変ドメインを含むdAb断片(その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Ward et al.(1989)NATURE 341:544-546;及び国際公開第90/05144 A1号パンフレット);並びに(vi)分離した相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLとVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、VL及びVH領域が対になって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてこれらを作製できる合成リンカーによって、組換え法を使用して結合することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.(1988)SCIENCE 242:423-426;and Huston et al.(1988)PROC.NAT’L.ACAD.SCI.USA 85:5879-5883を参照)。このような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれることを意図している。ダイアボディなどの他の形態の一本鎖抗体も含まれる。抗原結合部分はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びbis-scFvに組み込むことができる(例えば、Hollinger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136,2005を参照)。
【0066】
本明細書で使用される「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の各可変領域には3つのCDRがあり、これらは、可変領域ごとにCDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれる。本明細書で使用される「CDRセット」という用語は、抗原に結合することができる単一可変領域に存在する3つのCDR群を指す。これらのCDRの正確な境界は、方式によって定義が異なっている。Kabat(Kabat et al.,SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)and(1991))によって記述された方式は、抗体の任意の可変領域に適用可能な明確な残基付番方式を提供するだけではなく、3つのCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと呼ばれることもある。Chothia及び同僚らは、アミノ酸配列のレベルで大きな多様性があるにもかかわらず、Kabat CDR内の特定の小部分がほぼ同一のペプチド骨格構造を採用していることを見出した(Chothia et al.(1987)J.MOL.BIOL.196:901-917、及びChothia et al.(1989)NATURE 342:877-883)。これらの小部分は、L1、L2、及びL3又はH1、H2、及びH3として指定され、「L」及び「H」はそれぞれ、軽鎖領域及び重鎖領域を示す。これらの領域は、Chothia CDRと呼ばれることがあり、Kabat CDRと重複する境界を有する。Kabat CDRと重複するCDRを定義する他の境界は、Padlan et al.(1995)FASEB J.9:133-139、及びMacCallum et al.(1996)J.MOL.BIOL.262(5):732-45に記載されている。さらに他のCDR境界定義は、上記の方式の1つに厳密には従わない場合もあるが、それでもKabat CDRと重複する。ただし、Kabat CDRは、特定の残基又は残基群、又はCDR全体でさえも抗原結合に大きな影響を与えないという予測又は実験結果に照らして短縮又は延長することができる。本明細書で使用される方法は、これらの方式のいずれかに従って定義されるCDRを利用できるが、好ましい実施形態は、Kabat又はChothia方式で定義されたCDRを使用する。
【0067】
いくつかの実施形態では、細胞代謝回転を誘導する化合物は、免疫コンジュゲート又は抗体薬物コンジュゲートである。本明細書で使用される「免疫コンジュゲート」又は「抗体薬物コンジュゲート」という用語は、抗体又はその抗原結合断片と、化学療法剤、毒素、免疫療法剤、及びイメージングプローブなどの別の薬剤との結合を指す。結合は、共有結合、又は静電力などによる非共有相互作用であり得る。免疫コンジュゲートを形成するために、当技術分野で知られている様々なリンカーを使用することができる。加えて、免疫コンジュゲートは、免疫コンジュゲートをコードするポリヌクレオチドから発現され得る融合タンパク質の形態で提供することができる。本明細書において使用されるように、「融合タンパク質」は、元々は別個のタンパク質(ペプチド及びポリペプチドを含む)をコードする2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片の結合によって産生されるタンパク質を指す。融合遺伝子の翻訳により、元のタンパク質のそれぞれに由来する機能特性を有する単一のタンパク質がもたらされる。
【0068】
Fab(抗原結合断片)抗体断片は、重鎖可変領域(V)及び重鎖定常領域1(CH1)部分からなるポリペプチドと、軽鎖可変(V)及び軽鎖定数(C)部分かなるポリペプチドとから構成される抗体の一価抗原結合ドメインを含む免疫反応性ポリペプチドであり、C及びCH1部分は、好ましくはCys残基間のジスルフィド結合によって1つに結合される。
【0069】
いくつかの実施形態では、細胞代謝回転を誘導する化合物は、抗腫瘍剤である。本明細書に開示される方法での使用に適した抗腫瘍剤には、限定されるものではないが、化学療法剤(例えば、アルトレタミン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ロムスチン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロミド、チオテパなどのアルキル化剤;5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)などの代謝拮抗剤;カペシタビン(Xeloda(登録商標))、シタラビン(Ara-C(登録商標))、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ペメトレキセド(Alimta(登録商標));アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))、エピルビシン、イダルビシン)、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、マイトマイシン-C、ミトキサントロン(トポイソメラーゼII阻害剤としても機能する)などの抗腫瘍抗生物質;トポテカン、イリノテカン(CPT-11)、エトポシド(VP-16)、テニポシド、ミトキサントロン(抗腫瘍抗生物質としても機能する)などのトポイソメラーゼ阻害剤;ドセタキセル、エストラムスチン、イクサベピロン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビンなどの有糸分裂阻害剤;プレドニゾン、メチルプレドニゾロン(Solumedrol(登録商標))、デキサメタゾン(Decadron(登録商標))などのコルチコステロイド;L-アスパラギナーゼ及びボルテゾミブ(Velcade(登録商標))などの酵素が含まれる。抗腫瘍剤にはまた、生物学的抗癌剤、例えば、抗TNF抗体、例えば、アダリムマブ又はインフリキシマブ;リツキシマブなどの抗CD20抗体、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体;トラスツズマブなどの抗HER2抗体;パリビズマブなどの抗RSVが含まれる。
【0070】
いくつかの実施形態では、細胞代謝回転を誘導する化合物は、毒素、例えば、ERストレス及び/又はアンフォールドタンパク質応答を誘導する毒素である。ERストレス及び/又はアンフォールドタンパク質応答を誘導する毒素は、当技術分野において知られており、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、細胞代謝回転を誘導する化合物は、鉄依存性細胞代謝回転、例えばフェロトーシスを誘導する薬剤ではない。
【0071】
いくつかの実施形態では、ストレス条件は、生物ストレス条件を含む。いくつかの実施形態では、生物ストレス条件は、ウイルス感染(例えば、自然に生じるウイルスによる)、細菌感染、及び真菌感染から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヒトヘルペスウイルス1(HHV-1)、HHV-2、HHV-3、HHV-4、HHV-5、HHV-6、HHV-7、HHV-8、ヒトパピローマウイルス(HPV)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、HIV、SAR-CoV-2、デングウイルス、チクングニヤウイルス、ジカウイルス、ノーウォークウイルス、及び西ナイルウイルスからなる群から選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、細菌は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(例えば多剤耐性結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(MDR-TB))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA))、及び細菌性髄膜炎を引き起こす細菌からなる群から選択される。細菌性髄膜炎を引き起こす細菌は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、及びリステリア菌(Listeria monocytogenes)を含むが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書において記載されるストレス条件は、細胞代謝回転因子を生成するように細胞を誘導する細胞に対する様々な効果を有していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ストレス条件は、本明細書において記載される細胞代謝回転経路、例えば、ネクロトーシス、アポトーシス、フェロトーシス、ピロトーシス、及びその組み合わせのいずれかを受けるように細胞を誘導する。特定の実施形態では、ストレス条件は、アポトーシス(例えば外因性アポトーシス)を受けるように細胞を誘導する。
【0075】
いくつかの実施形態では、ストレス条件(例えば、本明細書において記載される細胞代謝回転を誘導する化合物)は、細胞代謝回転を受けている細胞において、小胞体(ER)ストレスを誘導する。ERは、真核生物におけるタンパク質フォールディング及び成熟のための重要な部位である。ER内でタンパク質を合成する細胞の必要条件は、そのフォールディング能力と言ってもいい。しかしながら、フォールディングにおける生理学的な要求又は異常は、「ERストレス」としても知られているミスフォールドタンパク質の蓄積に至り得る不均衡をもたらし得る。ERストレスは、慢性及び急性肝疾患の進行において、とりわけ、肝線維症の進行及び修復において、重要なメカニズムである。過剰な長期のERストレスは、アポトーシスを誘導し、これは、肝線維症の発生において重要な経路であると見なされている。
【0076】
ERストレスは、アンフォールドタンパク質応答を含んでいてもよい。アンフォールドタンパク質応答(UPR)は、ERストレスを受けている細胞においてタンパク質恒常性を回復させるためにERフォールディング能力を再調整する細胞シグナル伝達系である。Adams et al.,2019,Mol.Biosci.6(11):1-12を参照されたい。いくつかの実施形態では、ストレス条件(例えば、本明細書において記載される細胞代謝回転を誘導する化合物)は、細胞代謝回転を受けている細胞において、アンフォールドタンパク質応答を誘導する。
【0077】
いくつかの実施形態では、ストレス条件は、細胞代謝回転を受けている細胞において活性酸素種(ROS)の産生を誘導する。いくつかの実施形態では、標的細胞におけるROSの産生は、細胞代謝回転を受けている細胞の死を誘導するのに十分なレベルである。
【0078】
ERストレス及び/又はアンフォールドタンパク質応答を誘導する化合物は、チオアセトアミド、ツニカマイシン、PhenolaTi、ゼアラレノン、志賀毒素2型、四塩化炭素(CCl4)、及びアセトアミノフェンを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、細胞代謝回転を誘導する治療剤は、チオアセトアミドである。
【0079】
チオアセトアミドは、マウスモデルにおいて肝硬変症及びERストレスを誘導する有機硫黄化合物(CNS)である。Su et al.,2020,World J Gastroenterol.Jul 28;26(28):4094-4107を参照されたい。
【0080】
ツニカマイシンは、UDP-HexNAc:ポリプレノール-P HexNAc-1-Pファミリーの酵素を阻害する同族ヌクレオシド抗生物質の混合物である。真核生物において、これは、酵素GlcNAcホスホトランスフェラーゼ(GPT)を含み、これは、糖タンパク質合成の第1のステップにおいて、UDP-N-アセチルグルコサミンからのN-アセチルグルコサミン-1-リン酸のドリコールリン酸への転移を触媒する。ツニカマイシンは、N結合型グリコシル化(N-グリカン)をブロックし、ツニカマイシンによる培養ヒト細胞の処置は、G1期において細胞周期停止を引き起こす。それはまた、アンフォールドタンパク質応答を誘導することも示された。Chan et al.,2005,FASEB journal,Volume19,Issue11:1510-1512を参照されたい。
【0081】
PhenolaTiは、非毒性抗癌薬として使用されるチタン(IV)ベースの化合物(ビス(フェノラト)ビス(アルコキソ)Ti(IV))である。PhenolaTiは、MCF7乳癌細胞においてアポトーシス及びG2/M期での細胞周期停止を誘導し、遺伝子発現試験は、PhenolaTiについての推定上の細胞標的としてERを支持する。Miller et all.,2020,iScience 23(7):101262を参照されたい。PhenolaTiは、以下の構造を有する。
【化1】
【0082】
セレン欠乏は、より攻撃的なERストレスを開始することによって、ラット心筋細胞の毒素誘導傷害を悪化させることを示した。Xu et al.,2018,Chem Biol Interact.285:96-105を参照されたい。
【0083】
ゼアラレノン(ZEA)は、多くの食料品において一般的に見つけられるフザリウム種由来のマイコトキシンであり、生殖機能障害を引き起こし得るエストロゲン様の活性を及ぼすことが知られている。ゼアラレノンは、マウスにおいてERストレス-オートファジー-酸化ストレス経路を介して細胞骨格構造を変化させることが示された。訂正の公開がSci Rep.2020 Jun 25;10(1):10658において掲載されているZheng et al.,2020,Sci Rep.8(1):3320を参照されたい。
【0084】
志賀毒素2型は、腸管出血性大腸菌(Escherichia coli)によって生成され、ERストレス及び腎障害の誘導の原因となる。毒素のAサブユニットは、真核生物のリボソームを傷つけ、標的細胞においてタンパク質合成を止める。小胞体(ER)ストレス応答は、器官傷害の一因となっているアポトーシスを誘導することが仮定される。Parello et al.,2015,Toxins 7(1):170-186を参照されたい。
【0085】
四塩化炭素(CCl)は、毒素媒介肝線維症を誘導する。この毒素は、チトクロムP450系によって肝臓において代謝され、これによりトリクロロメチルラジカル(CCl*)が形成される。この攻撃的なラジカルは、核酸、タンパク質、及び脂質を化学的に攻撃し、脂質代謝及び恒常性に干渉し、脂肪肝を起こす。CCl4はまた、ERストレスを誘導することも示された。Borkham-Kamphorst et al.,2020,International Journal of Molecular Sciences 21(15):5230を参照されたい。
【0086】
アセトアミノフェンの過剰投与は、米国において薬剤性肝不全の主要な原因となっている。アセトアミノフェンの肝毒性は、チトクロムP450によって生成される活性代謝物であるN-アセチルベンゾキノンイミンによって開始されると知られている。試験により、アセトアミノフェン誘導肝毒性におけるERストレスの役割が実証された。Chen et al.,2014,J Environ Sci Health C Environ Carcinog Ecotoxicol Rev.32(1):83-104を参照されたい。
【0087】
そのようなストレス条件は、十分な量又は強度で十分な期間存在する場合、細胞代謝回転のプロセスを誘導することができる。特定の実施形態では、細胞代謝回転を誘導するストレス条件は、細胞代謝回転因子(例えば、組織再生を促進する細胞代謝回転因子)の産生を誘導するが、細胞死をもたらさない。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、一部の細胞集団、例えば、集団の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はそれ以上の細胞において、細胞代謝回転を誘導し、細胞代謝回転因子(例えば、組織再生を促進する細胞代謝回転因子)は、細胞集団における細胞の一部によって生成される。細胞死は、細胞集団における細胞の一部のすべて又はごく一部で生じてもよい。
【0088】
本発明の方法によれば、細胞は、細胞代謝回転因子の産生を誘導するのに十分な時間、ストレス条件に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、又は60分間、ストレス条件に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、60、又は72時間、ストレス条件に曝露される。
【0089】
任意のタイプの細胞は、細胞代謝回転因子の産生のために本明細書において記載されるストレス条件に曝露されてもよい。適した細胞は、肝細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、筋細胞、骨細胞、腸内壁の細胞、心臓細胞、肺細胞、皮膚細胞、神経細胞、中枢神経系(CNS)の細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及び免疫細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、又は免疫細胞は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、骨、腸内壁、心臓、肺、皮膚、又は中枢神経系に由来する。いくつかの実施形態では、肝細胞は、肝実質細胞、肝星細胞、クッパー細胞、又は肝類洞壁内皮細胞である。いくつかの実施形態では、肝細胞は、1つ又は複数の肝実質細胞、肝星細胞、クッパー細胞、又は肝類洞壁内皮細胞を含む。いくつかの実施形態では、肝細胞は、肝実質細胞を含む。いくつかの実施形態では、肝細胞は、肝実質細胞である。
【0090】
いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、組織再生が生じる同じタイプの組織に由来する。例えば、いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、肝細胞であり、組織再生が生じる組織は、肝組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、腎臓細胞であり、組織再生が生じる組織は、腎臓組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、肺細胞であり、組織再生が生じる組織は、肺組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、筋細胞であり、組織再生が生じる組織は、筋組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、骨細胞であり、組織再生が生じる組織は、骨組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、膵臓細胞であり、組織再生が生じる組織は、膵臓組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、心臓細胞であり、組織再生が生じる組織は、心臓組織である;又はストレス条件に曝露される細胞は、腸内壁の細胞であり、組織再生が生じる組織は、腸の内壁である;ストレス条件に曝露される細胞は、皮膚細胞であり、組織再生が生じる組織は、皮膚組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、CNSの細胞であり、組織再生が生じる組織は、CNS組織である;ストレス条件に曝露される細胞は、上皮細胞であり、組織再生が生じる組織は、上皮である;又はストレス条件に曝露される細胞は、内皮細胞であり、組織再生が生じる組織は、内皮である。
【0091】
他の実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、組織再生が生じる同じタイプの組織に由来しない。
【0092】
いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、癌細胞、例えば、肉腫、黒色腫、癌腫、白血病、又はリンパ腫の細胞である。
【0093】
「肉腫」という用語は、一般に胚性結合組織のような物質からなり、且つ一般に線維状又は均質な物質に埋め込まれた密集した細胞から構成される腫瘍を指す。ストレス条件に曝露されてもよい肉腫細胞の例は、例えば、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アベメシ肉腫(Abemethy’s sarcoma)、脂肪性肉腫、脂肪肉腫、肺巣状軟部肉腫、エナメル上皮線維肉腫、ブドウ状肉腫、緑色肉腫(chloroma sarcoma)、絨毛膜癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫、傍骨性肉腫、細網肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢肉腫(serocystic sarcoma)、滑膜肉腫、子宮肉腫、粘液性脂肪肉腫、平滑筋肉腫、紡錘細胞肉腫、線維形成性肉腫(desmoplastic sarcoma)、及び毛細血管拡張性肉腫由来の細胞を含む。
【0094】
「黒色腫」という用語は、皮膚及び他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味すると解釈される。ストレス条件に曝露することができる黒色腫細胞は、例えば、末端黒子型黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング-パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫、及び表在拡大型黒色腫由来の細胞を含む。
【0095】
「癌腫」という用語は、周囲の組織に浸潤して転移を引き起こす傾向がある上皮細胞からなる悪性新生物を指す。本明細書において記載されるようにストレス条件に曝露されてもよい癌腫細胞は、例えば、腺房癌、腺房細胞癌、腺嚢胞癌、腺様嚢胞癌、腺腫様癌(carcinoma adenomatosum)、副腎皮質癌、肺胞上皮癌、肺胞細胞癌、基底細胞癌(basal cell carcinoma)、基底細胞癌(carcinoma basocellulare)、肺類基底細胞癌(basaloid carcinoma)、基底扁平上皮癌(basosquamous cell carcinoma)、気管支肺胞上皮癌(bronchioalveolar carcinoma)、気管支癌、気管支原性癌、大脳様癌、胆管細胞癌、絨毛膜癌、膠様癌、結腸の結腸腺癌、面皰癌、子宮体癌(corpus carcinoma)、篩状癌(cribriform carcinoma)、鎧状癌(carcinoma en cuirasse)、皮膚癌、円柱状癌(cylindrical carcinoma)、円柱状細胞癌(cylindrical cell carcinoma)、腺管癌、硬膜癌(carcinoma durum)、胎児性癌(embryonal carcinoma)、脳様癌(encephaloid carcinoma)、類表皮癌(epiermoid carcinoma)、上皮性腺様癌(carcinoma epitheliale adenoides)、外向発育癌(exophytic carcinoma)、潰瘍癌、線維性癌(carcinoma fibrosum)、膠様癌、コロイド線癌(gelatinous carcinoma)、巨細胞癌(giant cell carcinoma)、巨細胞癌(carcinoma gigantocellulare)、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母癌、血様癌(hematoid carcinoma)、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、肺硝子癌(hyaline carcinoma)、副腎様癌(hypemephroid carcinoma)、小児胎児性癌(infantile embryonal carcinoma)、上皮内癌(carcinoma in situ)、表皮内癌、上皮内癌(intraepithelial carcinoma)、クロムペッヘル癌(Krompecher’s carcinoma)、クルチツキー細胞癌(Kulchitzky-cell carcinoma)、大細胞癌、レンズ状癌(lenticular carcinoma)、レンズ状癌(carcinoma lenticulare)、脂肪腫性癌(lipomatous carcinoma)、リンパ上皮癌、髄様癌(carcinoma medullare)、髄様癌(medullary carcinoma)、黒色癌、軟性癌(carcinoma molle)、メルケル細胞癌、粘液性癌(mucinous carcinoma)、粘液性癌(carcinoma muciparum)、粘液細胞癌(carcinoma mucocellulare)、粘膜表皮癌、粘液癌(carcinoma mucosum)、粘膜癌、粘液腫様癌(carcinoma myxomatodes)、鼻咽腔癌、燕麦細胞癌、骨化性癌、類骨癌、乳頭癌、門脈周囲性癌種(periportal carcinoma)、前浸潤癌、棘細胞癌、粥状癌種(pultaceous carcinoma)、腎臓の腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫性癌(carcinoma sarcomatodes)、シュナイダー癌、硬性癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド癌、球状細胞精巣癌、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平上皮癌(squamous carcinoma)、扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、紐様癌(string carcinoma)、毛細血管拡張性癌(carcinoma telangiectaticum)、毛細血管拡張性癌(carcinoma telangiectodes)、移行上皮癌、結節癌(carcinoma tuberosum)、結節癌(tuberous carcinoma)、疣贅性癌(verrucous carcinoma)、子宮頸部扁平上皮癌、扁桃扁平上皮細胞癌(tonsil squamous cell carcinoma)、及び絨毛癌由来の細胞を含む。
【0096】
「白血病」という用語は、「芽球」と呼ばれる未熟な白血球の異常な増加を特徴とする血液又は骨髄の癌の一種を指す。白血病は、様々な疾患を網羅する広義の用語である。次に、白血病は、血液、骨髄、及びリンパ系に影響を与えるさらに広範な疾患群の一部であり、これらはすべて血液新生物として知られている。白血病は、急性リンパ性(又はリンパ芽球性)白血病(ALL)、急性骨髄性(又は骨髄性又は非リンパ性)白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、及び慢性骨髄性白血病(CML)の4つの主要な区分に分類することができる。白血病のさらなるタイプには、有毛細胞白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、及び成人T細胞白血病が含まれる。特定の実施形態では、白血病は、急性白血病を含む。特定の実施形態では、白血病は、慢性白血病を含む。
【0097】
「リンパ腫」という用語は、リンパ細胞に由来する血球腫瘍群を指す。リンパ腫の2つの主な種類は、ホジキンリンパ腫(HL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)である。リンパ腫には、リンパ組織のあらゆる新生物が含まれる。主なクラスは、リンパ液及び血液の両方に属し、両方に広がる白血球の一種であるリンパ球の癌である。
【0098】
いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、様々なタイプの固形腫瘍、例えば、乳癌(例えば、三重陰性乳癌)、膀胱癌、泌尿生殖器癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓(腎細胞)癌、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌(例えば、甲状腺乳頭癌)、皮膚癌、骨癌、脳腫瘍、子宮頸癌、肝臓癌、胃癌、口腔癌(mouth and oral cancer)、食道癌、腺様嚢胞癌、神経芽細胞腫、精巣癌、子宮癌、甲状腺癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、卵巣癌、肉腫、胃癌、子宮癌、子宮頸癌、髄芽細胞腫、及び外陰癌に由来する。特定の実施形態では、皮膚癌には、黒色腫、扁平上皮癌、及び皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)が含まれる。
【0099】
一実施形態では、癌細胞は、不死化される。一実施形態では、癌細胞は、対象から単離される初代細胞である。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、癌細胞を含まない。
【0100】
いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、任意の1つ又は複数の肥満細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、好酸球、リンパ球(例えばBリンパ球(B細胞))及びTリンパ球(T細胞))を含むが、これらに限定されない免疫細胞である。他の実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、免疫細胞を含まない。
【0101】
いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、血球、例えば、赤血球、白血球(例えば、末梢血単核細胞(PBMC))、又は血小板である。他の実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、血球を含まない。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、白血球を含まない。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)を含まない。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、T細胞を含まない。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、悪性T細胞を含まない。
【0102】
ストレス条件に曝露される細胞の供給源は、限定されず、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物が投与される標的組織、器官、又は対象から単離される細胞を含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物が投与される組織、器官、又は対象にとって自家である。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物が投与される組織、器官、又は対象にとって同種異系である。
【0103】
細胞代謝回転因子を含む組成物
本明細書に提供される方法によれば、ストレス条件に曝露される細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、例えば、組成物を調製する方法に依存して、1つ又は複数の細胞代謝回転因子に加えて、様々な成分を含有してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、これらの細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子に加えて、ストレス条件に曝露される細胞を含み、例えば、細胞は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む。他の実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、組成物を調製するために、1つ又は複数の細胞代謝回転因子から分離されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、ストレス条件に曝露される細胞から調製される無細胞抽出物を含み、例えば、無細胞抽出物は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む。無細胞抽出物は、例えば、培養基中に懸濁された細胞を遠心分離し、上清を収集することによって調製されてもよい。一実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、ストレス条件に曝露された細胞を含まない。一実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、インタクトな細胞を含まない。
【0104】
1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、培養基中で細胞を培養し、細胞を本明細書において記載されるストレス条件に曝露することによって、調製されてもよい。一実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含有する馴化培地は、ストレス条件への曝露後に細胞培養物から収集される。細胞は、追加の細胞代謝回転因子の放出を可能にするために、ストレス条件への曝露後にさらに培養されてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、ストレス条件への曝露後、少なくとも5、10、15、20、30、45、若しくは60分間又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、若しくは72時間培養される。一実施形態では、組成物は、ストレス条件に曝露される細胞由来の馴化培地を含む。一実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子は、ストレス条件に曝露される細胞から単離され、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、インタクトな細胞を含有しない。
【0105】
1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、組織再生活性を有する1つ又は複数の細胞代謝回転因子を単離する又は濃縮するために、分画されてもよい。例えば、一実施形態では、組成物は、ストレス条件に曝露される細胞由来の馴化培地の機能的な画分を含む。いくつかの実施形態では、機能的な画分は、馴化培地中の化合物の特定のクラス(例えば、タンパク質)を分解し且つ他の分子(例えば、小分子及び核酸)の相対存在量を増加させるために、酵素(例えば、プロテアーゼ)により馴化培地を処置することによって調製される。適した酵素は、プロテアーゼ及びヌクレアーゼ(例えば、RNアーゼ又はDNアーゼ)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む機能的な画分は、プロテアーゼ消化又はヌクレアーゼ消化(例えば、RNアーゼ消化若しくはDNアーゼ消化)に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子は、プロテアーゼ消化又はヌクレアーゼ消化(例えば、RNアーゼ消化又はDNアーゼ消化)に対して抵抗性である。
【0106】
馴化培地の機能的な画分はまた、それらの分子量に基づいて分子を単離することによって、調製されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0.5未満の分子量を有する細胞代謝回転因子は、馴化培地から単離される。いくつかの実施形態では、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0.5kDa未満の分子量を有する細胞代謝回転因子は、馴化培地から単離される。これらの値のいずれも、組成物中の1つ又は複数の細胞代謝回転因子のサイズの範囲を定めるために使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、組成物中の1つ又は複数の細胞代謝回転因子は、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0.5kDa未満の分子量を有する。いくつかの実施形態では、組成物中の1つ又は複数の細胞代謝回転因子は、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0.5kDaを超える分子量を有する。いくつかの実施形態では、組成物中の1つ又は複数の細胞代謝回転因子は、0.5~50kDa、0.5~25kDa、25~50kDa、10~20kDa、20~30kDa、30~40kDa、又は40~50kDaの分子量を有する。特定の分子量の化合物を単離する方法は、当技術分野において知られている。例えば、いくつかの実施形態では、馴化培地は、有機溶媒で抽出され、続いてHPLC分画される。他の実施形態では、馴化培地は、サイズ排除クロマトグラフィーにかけられ、様々な画分が収集される。例えば、馴化培地をサイズ排除カラムに通し、FPLCで分画されてもよい。
【0107】
馴化培地の機能的な画分は、特定の活性、例えば組織再生活性を有する画分を特定するために評価されてもよい。例えば、BrdU及びMTTアッセイなどの細胞増殖アッセイは、組織再生活性を有する馴化培地の画分を特定するために使用することができ得る。
【0108】
BrdU細胞増殖アッセイは、抗BrdU抗体を使用して、細胞増殖の間に細胞DNAの中に組み込まれる5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)を検出する。細胞がBrdUを含有する標識培地により培養される場合、このピリミジン類似体は、増殖中の細胞の新しく合成されたDNAの中にチミジンの代わりに組み込まれる。標識培地を除去した後、細胞を固定し、DNAを発明者らの固定/変性溶液により変性させる。次に、BrdUマウスmAbは、組み込まれたBrdUを検出するために追加される。DNAを変性させることは、組み込まれたBrdUの検出用抗体への到達性を改善するのに必要である。抗マウスIgG、HRP連結抗体は、次に、結合した検出用抗体を認識するために使用される。HRP基質TMBは、色を発生させるために追加される。発生した色の吸光度の大きさは、細胞の中に組み込まれたBrdUの量に比例し、これは、細胞増殖の直接的な指標となる。
【0109】
MTTアッセイは、細胞生存率、増殖、及び細胞毒性の尺度として細胞代謝活性を測定するために使用される。この比色アッセイは、代謝活性のある細胞による黄色のテトラゾリウム塩(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド又はMTT)の紫色のホルマザン結晶への還元に基づく。生細胞は、MTTをホルマザンに還元するNAD(P)H依存性オキシドレダクターゼ酵素を含有する。不溶性ホルマザン結晶は、可溶化溶液を使用して溶解され、結果として生じる有色の溶液は、マルチウェル分光光度計を使用して500~600ナノメートルで吸光度を測定することによって定量される。溶液が濃いほど、代謝活性のある生存細胞の数は多くなる。
【0110】
組織再生活性を有する馴化培地の画分を特定するための追加の方法は、創傷治癒アッセイ、マトリックス出芽(matrix sprouting)、transwell遊走アッセイ、内皮細胞管腔形成アッセイ、及び酵素前駆体アッセイ-マトリックス分解を含むが、これらに限定されない。マトリックス出芽において、内皮細胞が培養され、次に、コラーゲンマトリックスの中に埋め込まれ、管腔形成が分析される。Tetzlaff et al.,2018,Bio-Protocol 8(17):e2995を参照されたい。transwell細胞遊走アッセイは、化学誘引物質に向かう細胞の走化性能力に対する化合物又は組成物の効果を測定するために使用されてもよい。細胞遊走の機序及び三次元マトリックスの中に侵入する細胞の能力に対する化合物又は組成物の効果もまた、決定されてもよい。Justus et al.,2014,J Vis Exp.(88):51046を参照されたい。
【0111】
当業者は、馴化培地の機能的な画分の有用性に加えて、機能的な画分が、例えば、組織再生活性を有する単一の細胞代謝回転因子を特定するために、さらに分析されてもよいことを認識する。いくつかの実施形態では、組成物は、ストレス条件に曝露された細胞から単離され、組織再生活性を有する細胞代謝回転因子を1つだけ含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ストレス条件に曝露された細胞から単離され、組織再生活性を有する2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の細胞代謝回転因子を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも10種の細胞代謝回転因子、例えば、組織再生活性を有する少なくとも10種の細胞代謝回転因子を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも2種の細胞代謝回転因子、例えば、組織再生活性を有する少なくとも2種の細胞代謝回転因子を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞代謝回転因子を1つだけ、例えば、再生活性を有する細胞代謝回転因子を1つだけ含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、組成物は、組織再生を増加させる器官を標的にするために製剤される。いくつかの実施形態では、組成物は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、腸内壁、心臓、又は肺を標的にするために製剤される。いくつかの実施形態では、組成物は、肝臓を標的にするために製剤される。いくつかの実施形態では、組成物は、腎臓を標的にするために製剤される。
【0113】
III.組織再生を増加させるための方法
A.1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与
本明細書において記載される細胞代謝回転因子は、対象、例えば、組織再生の増加から利益を得るであろう対象の組織又は器官において組織再生を増加させるために使用されてもよい。従って、いくつかの態様では、本開示は、哺乳動物対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、組織の再生を増加させるのに十分な量で及び時間、組成物を対象に投与することを含み、組成物は、(a)哺乳動物細胞をストレス条件に曝露すること及び(b)組成物を産生するために曝露した細胞又は曝露した細胞由来の馴化培地を収集することによって作製される方法に関する。いくつかの実施形態では、ストレス条件は、チオアセトアミドである。
【0114】
いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される哺乳動物細胞は、肝細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、筋細胞、骨細胞、腸内壁の細胞、心臓細胞、肺細胞、皮膚細胞、神経細胞、中枢神経系の細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及び免疫細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ストレス条件に曝露される哺乳動物細胞は、肝細胞(例えば、肝実質細胞)である。いくつかの実施形態では、組織再生が生じる器官は、肝臓である。いくつかの実施形態では、肝臓は、傷害を有する。いくつかの実施形態では、対象は、慢性肝損傷、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、薬剤性肝傷害、劇症及び遅発性肝不全(LOHF)、劇症肝炎(FH)、肝硬変、肝線維症、劇症肝不全(FHF)、B型肝炎、並びにC型肝炎からなる群から選択される肝障害を有する。特定の実施形態では、ストレス条件に曝露される細胞は、肝細胞(例えば、肝実質細胞)であり、組織再生が生じる器官は、肝臓である。特定の実施形態では、ストレス条件は、チオアセトアミドであり、ストレス条件に曝露される細胞は、肝細胞(例えば、肝実質細胞)であり、組織再生が生じる器官は、肝臓である。
【0115】
特定の態様では、本開示はまた、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を組織再生の増加を必要とする対象に送達するための方法であって、組成物を対象に投与することを含む方法にも関する。本開示は、対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を対象に投与することを含み、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織の再生を増加させるのに十分な量で対象に投与される方法にさらに関する。
【0116】
他の実施形態では、組織又は器官は、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりインビトロで処置され、処置された組織又は臓器は、次に、対象に移植される。例えば、いくつかの態様では、本開示は、組織、器官、小器官、又は器官培養物を処置するための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりインビトロで組織、器官、小器官、又は器官器内培養を処置することを含む方法に関する。本開示はまた、対象への移植のための器官又は組織を調製するための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりエクスビボで器官又は組織を処置することを含む方法にも関する。本開示は、移植器官又は組織において組織再生を増加させるための方法であって、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりエクスビボで器官又は組織を処置することを含み、器官又は組織は、組成物により処置されない器官又は組織と比較して、対象への移植後に器官又は組織において組織再生を増加させるのに十分な量で組成物により処置される方法にさらに関する。
【0117】
ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によるインビトロでの組織又は器官の処置はまた、本明細書において記載されるように、組成物の対象への投与と組み合わせられてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、組織又は器官は、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物によりインビトロで処置され、組織又は臓器は、対象に移植される。移植組織又は器官を受けている対象は、例えば、移植組織又は器官において組織再生をさらに増加させるために、移植後、ストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物をさらに投与されてもよい。いくつかの実施形態では、インビトロで組織又は器官を処置するために使用されるストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、移植後に対象に投与される同じ組成物である。他の実施形態では、インビトロで組織又は器官を処置するために使用されるストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、移植後に対象に投与されるストレス条件に曝露された細胞によって生成される1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物と異なる。
【0118】
1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、組織再生に対する所望の効果を達成するのに十分な量で投与されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、器官又は組織は、組成物により処置されない器官又は組織と比較して、対象への移植後に器官又は組織における組織再生を増加させるのに十分な量で組成物により処置される。いくつかの実施形態では、器官又は組織は、組成物により処置されていない器官又は組織を移植される対象と比較して、対象への器官又は組織の移植後に対象の生存を増加させるのに十分な量で組成物により処置される。いくつかの実施形態では、器官又は組織は、組成物により処置されない器官又は組織と比較して、対象への移植後に器官又は組織の生着を改善するのに十分な量で組成物により処置される。いくつかの実施形態では、器官又は組織は、組成物により処置されない器官又は組織と比較して、対象への移植前に、器官又は組織の生存率を延長するのに十分な量で組成物により処置される。
【0119】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織再生を増加させる組織において壊死を減少させるのに十分な量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織再生を増加させる組織において脂肪症を減少させるのに十分な量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織再生を増加させる器官の重量を増加させるのに十分な量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織における1つ又は複数の細胞増殖マーカータンパク質の発現を増加させるのに十分な量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の細胞増殖マーカータンパク質は、増殖細胞核抗原(PCNA)及びKi67からなる群から選択される。
【0120】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を投与されない対応するコントロール対象と比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、又は500%、組織再生を増加させる、生存を増加させる、生着を改善する、生存率を延長する、組織再生を増加させる器官の重量を増加させる、又は1つ若しくは複数の細胞増殖マーカータンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与は、組織再生を増加させる組織において又は1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を投与されない対応するコントロール対象と比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくは100%、壊死及び/又は脂肪症を減少させる。
【0121】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を投与されない対応するコントロール対象の集団と比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、又は500%、そのような処置を必要とする対象の集団において、組織再生を増加させる、生存を増加させる、生着を改善する、生存率を延長する、組織再生を増加させる器官の重量を増加させる、又は1つ若しくは複数の細胞増殖マーカータンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を投与されない対応するコントロール対象の集団と比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%、そのような処置を必要とする対象の集団において、組織再生を増加させる組織において壊死及び/又は脂肪症を減少させる。
【0122】
いくつかの実施形態では、器官(例えば、肝臓、肺、膵臓、腎臓、心臓、筋肉、皮膚、並びに胃腸管(例えば、口、食道、胃、小腸、大腸、及び肛門)の器官)における組織再生は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与の前及び後に器官機能を測定することによって決定される。組織再生を決定する手段としての器官機能を測定するための例示的な方法は、下記に記載される。
【0123】
肝臓
肝機能は、対象から得られるサンプル中の肝機能と関連する1つ又は複数の化合物(例えば、タンパク質)のレベルを決定することによって、対象において測定されてもよい。例えば、肝機能と関連する1つ又は複数の化合物のレベルは、肝機能に対する組成物の効果を測定するために、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与の前及び後に決定されてもよい。適したサンプルは、固形組織(例えば肝組織)、細胞(例えば肝細胞)、全血、血清、血漿、唾液、尿、及び便を含むが、これらに限定されない。肝機能と関連する適した化合物は、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、アルブミン、ビリルビン、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、及びL-乳酸脱水素酵素(LD)を含むが、これらに限定されない。
【0124】
いくつかの実施形態では、肝機能と関連する化合物のレベルの上昇は、肝損傷を示し、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物による処置後の化合物のレベルにおける減少は、肝機能及び肝組織再生の改善を示す。例えば、ALTは、タンパク質を肝細胞のためのエネルギーに変換するのを助ける肝臓において見つけられる酵素である。肝臓が損傷を受けると、ALTは血流に放出され、レベルは増加する。ASTは、アミノ酸を代謝するのを助ける酵素である。ALTの様に、ASTは、通常、低レベルで血液中に存在する。ASTレベルにおける増加は、肝損傷、疾患、又は筋損傷を示してもよい。ALPは、肝臓及び骨において見つけられる酵素であり、タンパク質を破壊するのに重要である。ALPの正常以上のレベルは、胆管閉塞などの肝損傷若しくは疾患又は特定の骨疾患を示してもよい。ビリルビンは、赤血球の正常な破壊の間に生成される物質である。ビリルビンは、肝臓を通過し、便中に排出される。ビリルビンのレベルの上昇(黄疸)は、肝損傷若しくは疾患又は特定のタイプの貧血を示し得る。GGTは、血液中の酵素である。正常以上のレベルは、肝損傷又は胆管損傷を示してもよい。LDは、肝臓において見つけられる酵素である。LDのレベルの上昇は、肝損傷を示してもよい。ALT、AST、ALP、ビリルビン、GGT、及びLDのレベルの上昇が肝損傷を示すので、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物による処置後のこれらの化合物のレベルにおける減少は、肝機能及び肝組織再生の改善を示す。
【0125】
いくつかの実施形態では、肝機能と関連する化合物のレベルの低下は、肝損傷を示し、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物による処置後の化合物のレベルにおける増加は、肝機能及び肝組織再生の改善を示す。例えば、アルブミンは、感染症と戦うために及び他の機能を実行するために必要である、肝臓において作製されるいくつかのタンパク質のうちの1つである。アルブミンの正常より低いレベルは、肝損傷又は疾患を示してもよい。従って、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与後のアルブミンのレベルの増加は、肝機能及び肝組織再生の改善を示す。
【0126】
肝機能は、血液中の総タンパク質レベル又はプロトロンビン時間(PT)を決定することによって測定されてもよい。血液中の総タンパク質レベルの低下は、肝機能の低下を示してもよい。従って、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与後の総タンパク質のレベルの増加は、肝機能及び肝組織再生の改善を示す。
【0127】
プロトロンビン時間(PT)もまた、肝機能を測定するために使用されてもよい。PTは、血液が凝固するのにかかる時間である。PTの増加は、肝損傷を示してもよいが、ワルファリンなどの特定の抗凝血薬によって上昇してもよい。従って、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物の投与後のPTの減少は、肝機能及び肝組織再生の改善を示す。
【0128】

対象における肺組織再生を検出するための手段としての肺機能を測定するための方法は、肺活量測定、肺気量試験、肺拡散能試験、パルスオキシメトリー、動脈血ガス試験、及び呼気一酸化窒素試験を含むが、これらに限定されない。1つ又は複数のこれらの試験は、肺組織再生を検出するために1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を投与する前及び後に行われてもよい。
【0129】
肺活量測定は、気流の速度を測定し、肺のサイズを推定する。この試験のために、コンピューターに接続されたチューブを通して、普通及び最大の努力で複数回呼吸する。対象の中に、必要とされる呼吸努力によりふらつき又は疲れを感じる人がいてもよい。
【0130】
肺気量試験は、肺がどれくらいの空気を保持することができるかを測定するための最も正確な方法である。手順は、対象が透明な壁を有する小さな部屋にいることを除いて、肺活量測定と同様である。対象の中に、必要とされる呼吸努力によりふらつき又は疲れを感じる人がいてもよい。
【0131】
肺拡散能は、呼吸した空気からどの程度血液の中に酸素が入るかを評価する。この試験のために、対象は、強く呼吸することなく、数分間、チューブを通して息を吸ったり吐いたりする。対象は、血液中のヘモグロビンのレベルを測定するために血液を採血されてもよい。
【0132】
パルスオキシメトリーは、血液中の酸素レベルを推定する。この試験のために、プローブを、指又は耳などの別の皮膚表面の上に置く。試験によって痛みが引き起こされることはなく、ほとんどリスクがない。
【0133】
動脈血ガス試験は、血液中の酸素及び二酸化炭素などのガスのレベルを直接測定する。動脈血ガス試験は、通常は、病院で実行されるが、診療室において行われてもよい。この試験のために、通常は、脈拍を測定する手首における動脈から、血液がとられ、血液中のガスのレベルが、決定される。
【0134】
呼気一酸化窒素試験は、どれくらいの一酸化窒素が吐き出される空気中にあるかを測定する。この試験のために、対象は、一酸化窒素レベルを測定するポータブルデバイスに接続されたチューブの中に息を吐き出す。この試験は、安定しているが強くない呼吸を必要とする。試験にはほとんどリスクがない。
【0135】
膵臓
対象における膵臓組織再生を検出するための手段としての膵臓機能を測定するための方法は、セクレチン膵機能試験及び糞便エラスターゼ試験を含むが、これらに限定されない。膵臓組織の再生は、造影剤ありのコンピューター断層撮影(CT)スキャン、腹部超音波、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)、超音波内視鏡検査、及び磁気共鳴胆道膵管撮影を含むが、これらに限定されない画像診断法によって検出されてもよい。1つ又は複数のこれらの試験は、膵臓組織再生を検出するために1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を投与する前及び後に行われてもよい。
【0136】
セクレチン膵機能試験は、ホルモンであるセクレチンに応答する膵臓の能力を測定する。小腸は、部分的に消化された食物の存在下においてセクレチンを生成する。通常、セクレチンは、高濃度の炭酸水素イオンを有する体液を分泌するように膵臓を刺激する。この体液は、胃酸を中和し、多くの酵素が食物の破壊及び吸収において機能するのを可能にするのに必要である。膵臓に関わる疾患(例えば、慢性膵炎、嚢胞性線維症、又は膵臓癌)を有する人々は、異常な膵臓機能を有し得る。セクレチン膵機能試験の実行において、医療従事者は、のどを下って胃の中に、次に十二指腸(小腸の上部)の中にチューブを置く。セクレチンを入れ、十二指腸分泌物の内容物を約1時間、吸い出し(吸引により取り出す)、分析する。
【0137】
糞便エラスターゼ試験は、膵臓によって生成される体液において見つけられる酵素であるエラスターゼを測定する。エラスターゼは、様々な種類のタンパク質を消化し、分解する。この試験の間に、患者の便サンプルを、エラスターゼの存在について分析する。
【0138】
造影剤ありのコンピューター断層撮影(CT)スキャンは、腹痛の他の原因を除外するのを助け、膵臓において又はその周辺に炎症(腫脹)、瘢痕、又は体液の集中があるかどうかを決定することもできる。
【0139】
腹部超音波は、胆石及び腹部における炎症による体液(腹水)を検出することができる。腹部超音波はまた、拡張した総胆管、膿瘍、又は偽性嚢胞を示すこともできる。
【0140】
内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)の間に、医療従事者は、のどを下って胃の中に、次に小腸の中にチューブを置く。小さなカテーテルを、膵臓及び胆管の中に通し、医師がX線で総胆管、他の胆管、及び膵管の構造を見るのを助けるために造影薬を注入する。
【0141】
超音波内視鏡検査の間に、光源付きスコープに取り付けられたプローブを、のどを下って、胃の中に置く。音波により、腹部における器官の画像を示す。超音波内視鏡検査は、胆石を明らかにし得、ERCPなどの侵襲性の試験が状態をより悪くし得る場合に、重度の膵炎を診断することにおいて助けになることができる。
【0142】
磁気共鳴胆道膵管撮影は、胆管及び膵管を見るために使用することができる磁気共鳴画像診断(MRI)の一種である。MRI/MRCPは、膵臓の非常に優れた画像診断をし、放射線を使用しない。
【0143】
腎臓
対象における腎臓組織再生を検出するための手段としての腎臓機能を測定するための方法は、血清クレアチニン、糸球体濾過率(GFR)、血中尿素窒素(BUN)などの血液検査;並びに超音波及びCTスキャンなどの画像検査を含む。
【0144】
クレアチニンは、体の筋肉での正常な疲労から来る老廃物である。血液中のクレアチニンレベルは、年齢、人種、及び体のサイズに依存して変動することができる。女性については1.2を超える及び男性については1.4を超えるクレアチニンレベルは、腎臓が適切に働いていない初期の徴候であってもよい。腎臓疾患が進行するにつれて、血液中のクレアチニンのレベルは上がる。
【0145】
糸球体濾過率(GFR)試験(Modification of Diet in Renal Disease(MDRD)を使用する数式又はChronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration(CKD-EPI)式によって計算される)は、腎臓がどの程度血液から廃棄物及び過剰な体液を除去しているかを測定する。糸球体濾過率は、アフリカ系アメリカ人の人たちについて調整した年齢及び性別を使用して血清クレアチニンレベルから計算される。正常なGFRは、年齢に従って変動し得る(対象が年をとるにつれて、それは減少し得る)。GFRについての正常値は、90以上である。60未満のGFRは、腎臓が適切に働いていない徴候である。一旦GFRが15未満に減少すると、透析又は腎移植などの腎不全のための処置が必要になるリスクが高くなる。
【0146】
血中尿素窒素(BUN)。尿素窒素は、食物中のタンパク質の破壊から来る。正常なBUNレベルは、7~20である。腎臓機能が減少するにつれて、BUNレベルは上がる。
【0147】
超音波は、腎臓を画像化するために音波を使用する。超音波は、腎臓のサイズ若しくは位置における異常又は結石若しくは腫瘍などの障害物を探すために使用されてもよい。
【0148】
CTスキャンは、腎臓を画像化するためにX線を使用する。CTスキャンは、構造的異常及び障害物の存在を探すために使用されてもよい。この試験は、腎臓疾患を有する人たちにとって懸念となり得る静脈内造影剤の使用を必要としてもよい。
【0149】
腎臓組織はまた、腎生検を通して並びに/又は尿分析、尿蛋白試験、ミクロアルブミン尿症、及びクレアチニンクリアランスなどの尿検査によって評価されてもよい。
【0150】
生検は、1つ又は複数の以下の理由で時々行われてもよい:特異的な疾患プロセスを特定し、それが処置に応答するかどうかを決定するため;腎臓において生じた損傷の量を評価するため;及び/又は腎移植が経過良好でないかもしれない理由を知るため。腎生検は、顕微鏡下での検査のための腎臓組織の小片を切り取るために鋭い刃を有する細い針を使用することによって実行される。
【0151】
いくつかの尿検査は、ほんの大さじ数杯の尿しか必要としない。他の試験は、まる24時間で生成されるすべての尿の収集を必要とする。24時間の尿検査は、腎臓がどれくらいの尿を生成するかを示し、腎臓がどの程度働いているか及びどれくらいのタンパク質が1日で腎臓から尿の中に漏れるかについてより正確な測定をすることができる。
【0152】
尿分析は、尿サンプルの顕微鏡検査及び尿試験紙による試験を含む。尿試験紙は、化学的に処置されたストリップであり、これを尿サンプルの中に浸す。ストリップは、過剰な量のタンパク質、血液、膿、細菌、及び糖などの異常の存在下において、色を変化させる。尿分析は、慢性腎疾患、糖尿病、膀胱感染、及び腎結石を含む様々な腎臓障害及び尿路障害を検出するのを助けることができる。
【0153】
尿蛋白試験は、尿分析の一部として又は別個の尿試験紙試験によって行われてもよい。尿中の過剰な量のタンパク質は、タンパク尿と呼ばれる。陽性の尿試験紙試験(1+以上)は、アルブミン特異的尿試験紙などのより特異的な尿試験紙試験又はアルブミン対クレアチニン比などの定量的測定を使用して確認されなければならない。
【0154】
ミクロアルブミン尿症は、尿中のアルブミンと呼ばれるわずかな量のタンパク質を検出することができるより感度が高い尿試験紙試験である。糖尿病又は高血圧を有する人たちなどの、腎臓疾患を発症するリスクが増加している人々は、タンパク尿についての標準の尿試験紙試験が陰性である場合、この試験又はアルブミン対クレアチニン比を受けなければならない。
【0155】
クレアチニンは、体の筋肉での正常な疲労から来る老廃物である。クレアチニンクリアランス試験は、腎臓がどれくらいの老廃物を1分間で濾過しているかを示すために、血液中のクレアチニンレベルと尿の24時間サンプル中のクレアチニンを比較する。
【0156】
心臓
対象における心臓組織再生を検出するための手段としての心機能を測定するための方法は、心エコー図、経食道心エコー(TEE)、心電図(ECG又はEKG)、磁気共鳴画像診断(MRI)、CTスキャン、運動心臓負荷試験、薬理学的負荷試験、傾斜試験、携帯型リズムモニタリング試験、ホルター心電図、モバイル心電図テレメトリー(MCT)、及び冠血管造影図を含むが、これらに限定されない。
【0157】
心エコー図は、心臓の画像を生成するために音波を使用する。この一般的な試験によって、医師は、心臓がどのように鼓動しているか及び血液がどのように心臓を移動しているかを見ることができる。心エコー図からの画像は、心筋及び弁において様々な異常を特定するために使用される。この試験は、安静時及び心拍数を上昇させるために運動時に行うことができる(下記の運動心臓負荷試験を参照されたい)。
【0158】
経食道心エコー(TEE)は、周波の高い音波(超音波)を使用し、心臓及び心臓に出入りする動脈の詳細な像を作製する。TEEのための音波を生成するエコートランスデューサーは、口を通過し、のどを下って、心臓の上部の部屋に非常に近い食道に入る細いチューブに取り付けられる。
【0159】
心電図(ECG又はEKG)は、心拍の電気的活動を測定し、2種類の情報を提供する。第1に、ECGで時間的間隔を測定することによって、医師は、電波が心臓を通過するのにどれくらいかかるかを決定することができる。波が心臓のある部分から次の部分に伝わるのにどれくらいかかるかを知ることは、電気的活動が正常であるか、遅いか、速いか、又は不規則であるかどうかを示す。第2に、心筋を通過する電気的活動の量を測定することによって、心臓病専門医は、心臓の一部分が大きすぎる又は過度に働いているかどうかを知ることができてもよい。
【0160】
磁気共鳴画像診断(MRI)は、磁場及び高周波を使用し、体内の器官及び構造の詳細な像を産生する。磁気共鳴画像診断は、心臓及び血管を検査するために並びに脳卒中によって冒された脳のエリアを特定するために使用することができる。
【0161】
CTスキャンは、コンピューターを使用して、心臓の断面画像を生成するX線画像診断技術である。心臓コンピューター断層撮影、コンピューター体軸断層撮影、又はCATスキャンとも呼ばれるが、CTスキャンは、問題の心臓及び血管を検査するために使用することができる。CTスキャンはまた、脳中の血管が脳卒中によって冒されたかどうかを特定するためにも使用される。
【0162】
運動心臓負荷試験は、運動耐性試験(ETT)とも呼ばれるが、心臓の血液供給が十分であるかどうか及び心リズムがトレッドミル又は室内固定自転車での運動の間に正常であるかどうかを示す。試験により、運動時の疲れ、心拍数、呼吸、血圧、及び心臓活動のレベルをモニターする。この試験は、核画像診断又は心エコーと組み合わせて行われてもよい。
【0163】
薬理学的負荷試験:医薬品が、動脈を拡張するために腕のIVラインを通して与えられ、これにより、運動の効果と同様に心拍数及び血流を増加させる。この試験は、核画像診断、心エコー、又はMRIと組み合わせて行われてもよい。
【0164】
傾斜試験:多くの場合、患者がめまい又はふらつきを感じる理由を決定するために使用される。試験の間に、患者は、徐々に上方に傾斜する台に横たわる。試験は、血圧及び心拍数が重力に対してどれくらい応答するかを測定する。看護師又は技師は、それらが試験の間にどのように変化するかを見るために血圧及び心拍数(脈)の記録を取る。
【0165】
携帯型リズムモニタリング試験:ホルター心電図、事象記録装置、及びモバイル心電図テレメトリー(MCT)は、外来で長期期間、心リズムを調べるために行われる携帯型モニタリング試験である。
【0166】
冠血管造影図:心臓に血液を供給する冠状動脈を検査するために使用されるX線の一種。カテーテルを、腕又は鼠径部における血管の中に挿入し、心臓及び冠状動脈に送り込む。次に、特殊な造影薬をカテーテルを通して注入し、画像を撮る。
【0167】
筋肉
対象における筋組織再生を検出するための手段としての筋肉機能を測定するための方法は、握力の試験、上肢及び下肢の筋力、最大筋力、レッグプレス及び膝伸展、歩行速度試験、椅子立ち上がり試験(CST)、簡易身体能力バッテリー(SPPB)、並びにtimed-get-up-and-go(TUG)試験を含むが、これらに限定されない。これらの試験は、例えば、Beaudart,et al.2019,Calcif Tissue Int 105,1-14において記載される。
【0168】
最大筋力は、1RM(1反復最大抵抗(repetition maximum resistance))を通して定量され、評価は、対象が1回運動を完了することができる最も高い抵抗で行われる。1RMを知るために、運動は、1回の反復を完了するのを失敗するまで、抵抗を増加させて、数回反復させる。
【0169】
歩行速度試験-2つの主なタイプの歩行速力試験がある;短距離歩行試験(2.4mの距離、4mの距離、6mの距離、及び10mの距離)並びに長距離歩行試験(400m歩行試験及び6分間歩行試験)。
【0170】
胃腸(GI)管
上部GI管は、通常、口、食道、胃、及び小腸の最初の部分(十二指腸)であると見なされる。下部GI管は、小腸から大腸(結腸)、肛門まで続く。対象における上部GI組織再生を検出するための手段としての上部GI管機能を測定するための方法は、上部消化管造影(バリウム飲み込み又はバリウム食事)、胃内視鏡検査、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)、超音波内視鏡検査、pHモニタリング、及び食道/胃内圧検査を含むが、これらに限定されない。下部GI組織再生を検出するための手段としての下部GI管機能を測定するための方法は、大腸内視鏡検査、バリウム注腸、軟性S状結腸鏡検査、仮想大腸内視鏡、カプセル内視鏡、及び肛門直腸内圧検査を含むが、これらに限定されない。対象におけるGI組織再生を検出するための手段としてのGI管機能を測定するための追加の方法は、糞便カルプロテクチン試験、糞便潜血試験、糞便免疫化学的試験(FIT)、水素呼気試験、乳糖耐性試験、便酸性度試験、肝生検、FibroScan(登録商標)、磁気共鳴画像診断、及び超音波を含むが、これらに限定されない。
【0171】
皮膚
皮膚組織再生は、目視評価を通して、例えば、ケロイドスコアを決定することによって、決定されてもよい。ケロイドは、皮膚傷害の部位で生じる瘢痕組織の隆起した過形成である。ケロイドスコアは、例えば、Patient and Observer Scar Assessment Scale(POSAS)によって決定されてもよい。Draaijers et al.,2004,Plast Reconstr Surg 113:1960-1965を参照されたい。瘢痕は、Observer Scaleの6項目:血管分布、色素沈着、厚さ、盛り上がり、柔軟性、及び表面積について患者及び医師の両者によって10段階のスケールで数的に判定される。Patient Scaleは、瘢痕の痛み、かゆみ、色、こわばり、厚さ、及びむらからなる。
【0172】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載される組成物により処置される器官は、実質器官である。本明細書において使用される用語「実質器官」は、組織統一性がしっかりしており、中空でもなく(胃腸管の器官など)、液体でもない(血液など)内臓を指す。実質器官は、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、心臓、及び肺を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、器官は、胃腸管の器官である。胃腸管の器官は、食道、胃、小腸、及び大腸を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載される組成物により処置される器官は、傷害、例えば、薬物、毒素、ウイルス感染、又は器官に対する外科手術によって引き起こされる傷害を有する。組成物は、例えば、器官における組織再生を改善する及び/又は対象の生存を改善するために、器官傷害後に対象に投与されてもよい。
【0174】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物は、器官に対する外科手術を必要とする対象に投与される。組成物は、器官に対する外科手術の前に及び/又は器官に対する外科手術の後に対象に投与されてもよい。外科手術は、器官に関わる癌切除を含んでいてもよい。
【0175】
再生が可能ないかなる組織も、本明細書において記載される組成物により処置されてもよい。いくつかの実施形態では、組織は、肝組織、腎臓組織、膵臓組織、筋組織、腸内壁、心臓組織、及び肺組織からなる群から選択される。
【0176】
対象は、再生されることになる組織又は器官と関連する特定の障害を有していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、再生されることになる組織は、肝組織であり、対象は、慢性肝損傷、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、薬剤性肝傷害、劇症及び遅発性肝不全(LOHF)、劇症肝炎(FH)、肝硬変、肝線維症、劇症肝不全(FHF)、B型肝炎、並びにC型肝炎からなる群から選択される障害を有する。
【0177】
いくつかの実施形態では、再生されることになる組織は、腎臓組織であり、対象は、真性糖尿病、関節リウマチ、腎炎症候群、ネフローゼ症候群、高血圧腎症、多発性嚢胞腎疾患、進行性慢性腎疾患、慢性腎不全、ファブリ病、シスチン症、ネフロン癆、アルポート症候群、再灌流傷害、急性腎障害、腎線維症、及び腎移植からなる群から選択される障害又は状態を有する。
【0178】
いくつかの実施形態では、再生されることになる組織は、膵臓組織であり、対象は、膵臓癌、真性糖尿病、インスリン抵抗性、低血糖症、高血糖症、リパーゼ欠損症、コレシストキニン(CCK)欠損症、急性膵炎、慢性膵炎、及び遺伝性膵炎からなる群から選択される障害を有する。
【0179】
いくつかの実施形態では、再生されることになる組織は、腸内壁組織であり、対象は、炎症性胃腸障害、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、憩室炎、寄生虫感染及び細菌感染、機能性胃腸障害、潰瘍性大腸炎(UC)、並びに腸の外科的切除からなる群から選択される障害又は状態を有する。
【0180】
いくつかの実施形態では、再生されることになる組織は、心臓組織であり、対象は、心血管疾患を有する。本明細書において記載される方法によって処置されてもよい心血管疾患は、心筋梗塞、心不全、虚血性事象による心臓傷害、及び非虚血性事象による心臓傷害を含むが、これらに限定されない。
【0181】
いくつかの実施形態では、再生されることになる組織は、肺組織であり、対象は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺癌、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)、中皮腫、及び嚢胞性線維症、喘息、特発性肺線維症、加齢による肺不全、肺線維症、間質性肺疾患(ILD)、肺動脈高血圧症、並びにα1-アンチトリプシン障害からなる群から選択される障害又は状態を有する。
【0182】
いくつかの実施形態では、再生されることになる組織は、筋組織であり、対象は、筋炎、自己免疫疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、サルコペニア、小児シャルコー・マリー・トゥース病、加齢による筋肉損失、傷害からの肉離れ、筋萎縮症、筋ジストロフィー、皮膚筋炎、ギヤン-バレー症候群、多発性硬化症、ポリオ、及び多発性筋炎からなる群から選択される障害又は状態を有する。いくつかの実施形態では、傷害は、スポーツ傷害である。いくつかの実施形態では、筋萎縮症は、脊髄筋萎縮症(SMA)である。いくつかの実施形態において、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー(シュタイネルト病又は筋強直性ジストロフィーとしても知られている)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)、肢帯筋ジストロフィー、眼球咽頭筋ジストロフィー(OPMD)、遠位型筋ジストロフィー(遠位型ミオパチーとしても知られている)、及びエメリ-ドレフュス型筋ジストロフィーからなる群から選択される。
【0183】
本明細書において記載される方法は、1つ又は複数の細胞代謝回転因子を含む組成物を調製するステップをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、組成物を調製するステップは、細胞をストレス条件に曝露することを含む。
【0184】
B.細胞代謝回転を誘導する化合物の投与
本開示はまた、対象、器官、又は組織に化合物を直接投与することによって組織発生を増加させるための、細胞代謝回転を誘導する化合物の使用にも関する。化合物による細胞代謝回転の誘導は、対象、器官、又は組織における組織再生を促進する組織又は対象の標的細胞における細胞代謝回転因子の産生をもたらす。例えば、特定の態様では、本開示は、対象の器官における組織の再生を増加させるための方法であって、対象において標的細胞の細胞代謝回転を誘導する化合物を含む組成物を対象に投与することを含み、組成物は、組成物により処置されない対象と比較して、組織の再生を増加させるのに十分な量で投与される方法に関する。
【0185】
本明細書において記載される細胞代謝回転を誘導する化合物のいずれも(例えば、細胞代謝回転を誘導する小分子、核酸、及びタンパク質)、組織の再生を増加させるために組織、器官、又は対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、組織の再生を増加させるために組織又は対象に投与される化合物は、毒素である。例えば、毒素は、細胞代謝回転及び細胞代謝回転因子の産生を誘導するのに十分であるが、組織に対して重度の損傷を引き起こす用量よりも低い用量で対象又は組織に投与されてもよい。
【0186】
いくつかの実施形態では、組織の再生を増加させるために組織又は対象に投与される化合物は、ERストレス及び/又はアンフォールドタンパク質応答を誘導する。ERストレス及び/又はアンフォールドタンパク質応答を誘導する化合物は、本明細書において記載され、チオアセトアミド、ツニカマイシン、PhenolaTi、ゼアラレノン、志賀毒素2型、四塩化炭素(CCl4)、及びアセトアミノフェンを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、組織の再生を増加させるために組織又は対象に投与される化合物は、抗腫瘍剤、例えば、本明細書において記載される抗腫瘍剤のうちの1つである。いくつかの実施形態では、組織の再生を増加させるために組織又は対象に投与される化合物は、鉄依存性細胞代謝回転、例えばフェロトーシスを誘導する化合物ではない。
【0187】
細胞代謝回転を誘導する化合物は、組織再生を促進する標的細胞による細胞代謝回転因子の産生を誘導するために、特定の細胞、組織、又は器官を標的にしてもよい。当技術分野において知られている様々な方法は、化合物が標的細胞、組織、又は器官を標的にするように使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、細胞代謝回転を誘導する化合物は、標的細胞、組織、又は器官に対して特異的な抗体へのコンジュゲーションによって特定の細胞、組織、又は器官を標的にする。例えば、いくつかの実施形態では、細胞代謝回転を誘導する化合物は、抗体-薬物コンジュゲートである。抗体は、組織再生を増加させる組織又は器官を標的にしてもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、組織再生を増加させる器官の組織特異抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、肝臓を標的にする。いくつかの実施形態では、抗体は、腎臓を標的にする。
【0188】
いくつかの実施形態では、化合物(例えば毒素)は、特定の製剤又はカプセル化方法の使用を通して特定の器官又は組織を標的にする。例えば、いくつかの実施形態では、製剤又はカプセル化方法により、化合物は肝臓を標的にする。いくつかの実施形態では、製剤又はカプセル化方法により、化合物は腎臓を標的にする。化合物が肝臓又は腎臓を標的にする製剤及びカプセル化方法の例は、下記の表1において提供される。
【0189】
【表1】
【0190】
【表2】
【0191】
【表3】
【0192】
1.Poelstra K,Prakash J,Beljaars L.Drug targeting to the diseased liver.J Control Release.2012;161(2):188-197.doi:10.1016/j.jconrel.2012.02.011
2.Cuestas ML,Mathet VL,Oubina JR,Sosnik A.Drug delivery systems and liver targeting for the improved pharmacotherapy of the hepatitis B virus(HBV)infection.Pharm Res.2010;27(7):1184-1202.doi:10.1007/s11095-010-0112-z
3.Singh L,Indermun S,Govender M,et al.Drug Delivery Strategies for Antivirals against Hepatitis B Virus.Viruses.2018;10(5):267.Published 2018 May 17.doi:10.3390/v10050267
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【0193】
いくつかの実施形態では、細胞代謝回転を誘導する化合物は、組織再生を増加させる器官における細胞を標的にする。例えば、いくつかの実施形態では、標的細胞は、肝細胞であり、再生される組織は、肝組織である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、腎臓細胞であり、再生される組織は、腎臓組織である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、肺細胞であり、再生される組織は、肺組織である;標的細胞は、筋細胞であり、再生される組織は、筋組織である;標的細胞は、骨細胞であり、再生される組織は、骨組織である;標的細胞は、膵臓細胞であり、再生される組織は、膵臓組織である;標的細胞は、心臓細胞であり、再生される組織は、心臓組織である;標的細胞は、腸内壁の細胞であり、再生される組織は、腸の内壁である;標的細胞は、皮膚細胞であり、再生される組織は、皮膚組織である;標的細胞は、CNSの細胞であり、再生される組織は、CNS組織である;標的細胞は、上皮細胞であり、再生される組織は、上皮である;又は標的細胞は、内皮細胞であり、再生される組織は、内皮である。
【0194】
標的細胞はまた、組織再生を増加させる器官又は組織に隣接する組織中のものであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、標的細胞は、組織再生を増加させる器官又は組織の50μm、100μm、500μm、1mm、又は2mmの範囲内にある。
【0195】
いくつかの実施形態では、細胞代謝回転を誘導する化合物の標的細胞は、再生される組織に内在するが、再生される細胞のタイプと異なる。例えば、いくつかの実施形態では、標的細胞は、肝臓中に内在する上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、又は免疫細胞であり、標的細胞によって生成される細胞代謝回転因子は、肝組織の再生を誘導する。いくつかの実施形態では、標的細胞は、腎臓中に内在する上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、又は免疫細胞であり、標的細胞によって生成される細胞代謝回転因子は、腎臓組織の再生を誘導する。いくつかの実施形態では、標的細胞は、肺中に内在する上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、若しくは免疫細胞であり、標的細胞によって生成される細胞代謝回転因子は、肺組織の再生を誘導する;標的細胞は、骨中に内在する上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、若しくは免疫細胞であり、標的細胞によって生成される細胞代謝回転因子は、骨組織の再生を誘導する;標的細胞は、筋肉中に内在する上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、若しくは免疫細胞であり、標的細胞によって生成される細胞代謝回転因子は、筋組織の再生を誘導する;標的細胞は、膵臓中に内在する上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、若しくは免疫細胞であり、標的細胞によって生成される細胞代謝回転因子は、膵臓組織の再生を誘導する、標的細胞は、心臓中に内在する上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、若しくは免疫細胞であり、標的細胞によって生成される細胞代謝回転因子は、心臓組織の再生を誘導する;標的細胞は、腸内壁中に内在する上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、若しくは免疫細胞であり、標的細胞によって生成される細胞代謝回転因子は、腸内壁組織の再生を誘導する;又は標的細胞は、CNS中に内在する上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、若しくは免疫細胞であり、標的細胞によって生成される細胞代謝回転因子は、CNS組織の再生を誘導する。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、単球又はマクロファージである。
【0196】
V.医薬組成物及び投与方式
本明細書において記載される医薬組成物は、任意の適切な製剤で対象に投与されてもよい。製剤には、例えば、液体、半固体、及び固体の剤形が含まれる。好ましい形態は、意図される投与方式及び治療用途によって決まる。
【0197】
特定の実施形態では、組成物は経口投与に適している。特定の実施形態では、製剤は、局所投与並びに静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、及び皮下注射を含む非経口投与に適している。特定の実施形態では、組成物は、静脈内投与に適している。
【0198】
非経口投与用の医薬組成物には、水溶性形態の活性化合物の水溶液が含まれる。静脈内投与の場合、製剤は水溶液であり得る。水溶液には、ハンクス液、リンゲル液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水緩衝液、又は非経口的に送達される製剤の適切なpH及び浸透圧を達成する他の適切な塩又は組み合わせが含まれ得る。水溶液を使用して、投与用の製剤を所望の濃度に希釈することができる。水溶液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの、溶液の粘度を増加させる物質を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、及び注射用水を含むリン酸緩衝生理食塩水を含む。
【0199】
局所投与に適した製剤には、塗布剤、ローション、クリーム、軟膏、又はペーストなどの皮膚への浸透に適した液体又は半液体の製剤、及び目、耳、又は鼻への投与に適した点滴剤が含まれる。経口投与に適した製剤には、不活性希釈剤又は同化可能な食用担体を含む製剤が含まれる。経口投与用の製剤は、ハードシェル又はソフトシェルのゼラチンカプセルに封入してもよいし、又は錠剤に圧縮してもよいし、又は飲食物の食品に直接含めてもよい。単位剤形がカプセルである場合、単位剤形は、上記のタイプの材料に加えて、液体担体を含み得る。様々な他の材料が、コーティングとして又は他の方法で投与単位の物理的形態を変更するために存在し得る。本発明での使用に適した医薬組成物には、その意図された目的を達成するために活性成分が有効量で含まれている組成物が含まれる。有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示を考慮すると、当業者の能力の十分に範囲内である。活性成分に加えて、これらの医薬組成物には、薬学的に使用できる調製物への活性化合物の処理を容易にする賦形剤及び助剤を含む適切な薬学的に許容される担体が含まれ得る。
【0200】
当業者には容易に明らかであるように、投与される有用なインビボ投与量及び特定の投与方式は、年齢、体重、苦痛の重症度、及び処置される哺乳動物種、利用される特定の化合物、及びこれらの化合物が利用される特定の用途に応じて異なる。有効な投与量レベル、即ち、所望の結果を達成するために必要な投与量レベルの決定は、例えば、ヒト臨床試験、動物モデル、及びインビトロ試験などの日常的な方法を使用して当業者が行うことができる。
【0201】
特定の実施形態では、組成物は経口的に送達される。特定の実施形態では、組成物は非経口的に投与される。特定の実施形態では、組成物は、注射又は注入によって送達される。特定の実施形態では、組成物は、経粘膜を含めて局所的に送達される。特定の実施形態では、組成物は、吸入によって送達される。一実施形態では、本明細書で提供される組成物は、腫瘍に直接注射することによって投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内注射又は静脈内注入によって投与することができる。特定の実施形態では、投与は全身性である。特定の実施形態では、投与は局所的である。
【実施例
【0202】
実施例1:ストレス条件に曝露されたAML-12マウス肝実質細胞由来の細胞代謝回転因子により処置されるマウス部分的肝切除肝再生モデルの評価
方法
馴化培地の調製
AML-12マウス肝実質細胞を、プレート当たり5.5百万個細胞で10cmのプレートにおいて平板培養した。この細胞株の基本培地は、DMEM:F12培地とする。完全な成長培地を作製するために、以下の成分を、500mLの基本培地に追加した:以下を補足した:10%ウシ胎児血清、10μg/mlインスリン、0.5μg/mlトランスフェリン、5ng/mlセレニウム、及び40ng/mlデキサメタゾン。細胞を、一晩、少なくとも70%の集密度まで成長させた。細胞は、PBS 2X;ITSサプリメントを有しておりデキサメタゾンを有していない7mlの無血清培地により洗浄し、次に、化合物により処置した。馴化培地をプロセシングのために収集する前に、細胞を48時間処置した。
【0203】
細胞を、ピペッティングによって培養基と共に収集し、培地+細胞を、50mLコニカルチューブ中に収集した。100uLの各サンプルを、CTGと共に生存率について試験するために等分した(100uLの混合細胞/培地を96ウェルプレート+100uLのCTGに追加する)。残りのサンプルを、遠心沈殿させた(5分間@300g)。上清を、0.45uMフィルターにより濾過し、フロースルーを、3kDaカットオフAmicon濾過ユニットに移し、30~45分間、回転させた@4000g。カラムを、5~10ml PBSにより洗浄した。カラムを、合計3x洗浄した。それぞれの条件のすべての>3kDaの上清画分を、収集した。1XPBSを、それぞれのプールしたサンプルに追加し、12ml/条件の全容量を得た。1mlを、タンパク質定量化及びプロテオミクスのために別個のチューブに分注した。残っている11mlを、それぞれ5.5mlの2本のチューブに分割した(0日目及び1日目に投薬)。サンプルを-80℃に置き、インビボ試験において使用した。
【0204】
【表4】
【0205】
マウス肝再生モデルの評価
発明者らは、部分的肝切除によって誘導したマウス肝再生モデルにおいて、試験組成物CM0、CM1、CM2、CM3、CM4、CM5、CM6、及びCM7の有効性を評価した。肝細胞成長因子(HGF)-プラスミドは、ポジティブコントロールとして使用した。HGF-プラスミドは、10.5μg/mlの濃度まで生理食塩水により希釈した。試験薬CM0、CM1、CM2、CM3、CM4、CM5、CM6、及びCM7もまた、生理食塩水により希釈した(試験薬:生理食塩水=1:4)。
【0206】
C57BL/6マウス(処置群当たり10匹)は、ハイドロダイナミック尾静脈(hydrodynamic tail vein)(HTV)注入を介して、外科手術の2時間前に試験薬を受け、外科手術の24時間後に2回目の用量を受けた。注入容量は、体重の8%とした。外科手術のために、マウスを、イソフルオレン(isofluorene)(1~2.5%)により麻酔した。肝臓を、2~3cmの上腹部正中切開によって露出させた。肝臓の外側左葉及び中葉の上側を、4-0絹縫合糸により結紮し、葉の根元にできるだけ近いところに結び目を置いた。縛った葉を、縫合したところあたりで取り除いた。筋肉及び皮膚を、5-0絹により別々に縫合した。シャム手術の動物については、外科手術の手順は、肝臓を結紮しなかった又は切除しなかったことを除いて、同じとした。
【0207】
血漿を、1、2、3、及び4日目に収集した。動物を、2日目及び4日目に肝臓収集のために安楽死させた。図1は、投薬及びサンプル収集のスケジュールを示す。全血サンプルを、EDTA抗凝固チューブの中に収集し、処理して血漿にした。
【0208】
肝臓サンプルを、実験の終了時に収集した。肝臓重量を、記録した。外側右葉由来の肝組織を、取り出し、病理評価のために10%NBFを含有するチューブ中で保管し、24時間固定した。サンプルを、パラフィン中に包埋し、ヘマトキシン-エオシンによる染色のための4μm切片を得るために処理した。壊死及び脂肪症の重症度は、予め定められたスコアシステムを使用して、半定量的に評価した(表3)。
【0209】
【表5】
【0210】
免疫組織化学染色のために、4μm厚切片を、スライドに置き、一晩乾燥後、パラフィンを、キシレンによって除去した。次に、切片を、段階的エタノール系列中に置き、蒸留水中に浸漬した。熱誘導クエン酸抗原(pH6.0)賦活化後に、切片は、5分間、3%過酸化水素溶液中に浸漬した。非特異的染色を回避するために、切片は、次いで、室温で15分間、ブロッキング血清(DAKO#X0909)中でインキューベートし、その後、1時間、1:600又は1:1500に希釈した一次ウサギポリクローナル抗PCNA抗体(Abcam、#ab92552)又は抗Ki67抗体(Abcam、#ab15580)を使用した。次に、HRPにコンジュゲートされた二次ヤギポリクローナル抗体(DAKO、#K4003)を、追加した。ポジティブな細胞の画像分析のために、PCNA/Ki67で染色した切片を使用し、Aperio CS2 Scan機によってスキャンした。HALO v2.3ワークステーション「IHC Nuclear v1」モジュールを使用した。
【0211】
インビボ動物データを、平均値±SEMとして表現した。統計解析は、One Way ANOVA、その後、ダネットの多重比較又はTwo Way ANOVA、その後、ボンフェローニの多重比較を使用して実行した。Nが小さすぎた又はデータがガウス分布に従わなかった場合、マン-ホイットニーなどのようなノンパラメトリック検定を使用した。差は、p<0.05である場合、有意であると見なされた。
【0212】
結果
肝臓重量及び体重は、2及び4日目に記録した。肝臓指数は、肝臓重量を体重で割ることによって計算した。外科手術は、肝臓重量及び肝臓指数を有意に減少させた。CM0群と比較して、HGFプラスミド、CM1、CM2、CM3、CM5、CM6、及びCM7による処置では、2及び4日目の肝臓重量について有意な差は認められなかった(図2A及び2B)。CM0群と比較して、HGFプラスミド及びCM5による処置は、2日目の肝臓指数を有意に増加させた。CM1、CM2、CM3、CM6、及びCM7では、2及び4日目の肝臓指数において有意な差は認められなかった(図3A及び3B)。
【0213】
部分的肝切除処置(CM0及びHGF群)は、1及び2日目に内因性血漿HGF発現レベルを有意に増加させた。HGF HTV注入は、HGFの外因性発現を通してHGF発現をさらに増加させた。内因性HGF発現の増加は、減少し、CM0群について3日目に検出することができない。CM0群と比較して、HGFプラスミド処置群は、3日目に血漿HGFレベルを有意に増加させた。血漿HGFは、ELISAを介して、4日目に、シャム、CM0、及びHGFプラスミド群において検出されなかった(図4)。
【0214】
CM0群と比較して、CM1、CM2、CM3、及びCM6処置は、2日目に肝臓の脂肪症を有意に増加させた。HGF、CM5、及びCM7は、2日目に肝臓脂肪症を増加させる傾向があった。肝臓脂肪症は、4日目に観察されなかった(図5)。シャム群と比較して、部分的肝切除処置群は、肝壊死を有意に増加させた。CM0群と比較して、CM1、CM2、CM3、CM6、及びCM7処置では、2及び4日目に肝壊死についての差が認められなかったが、HGFプラスミド及びCM5処置は、2日目に肝壊死を減少させる傾向があった(図6A、6B、及び7)。
【0215】
細胞増殖マーカーである増殖細胞核抗原(PCNA)及びKi67は、部分的肝切除処置後の肝組織において観察された(図8A、8B、9、10A、10B、及び11)。シャム群と比較して、部分的肝切除処置は、2日目にPCNA発現を増加させる傾向があり、4日目にPCNA発現を有意に増加させた。CM0群と比較して、CM5処置は、2日目にPCNA発現を有意に増加させたが、HGFプラスミド、CM1、CM2、CM3、CM6、及びCM7処置では、2及び4日目のPCNA発現について差が認められなかった。これらの結果は、CM5処置が肝細胞の増殖を増加させたことを示す。シャム群と比較して、部分的肝切除処置は、2及び4日目にKi67発現を有意に増加させた。CM0群と比較して、CM1及びCM5処置は、2日目にKi67発現を増加させる傾向があったが、HGFプラスミド、CM2、CM3、CM6、及びCM7処置では、2及び4日目のKi67発現について差が認められなかった。
【0216】
結論
ストレス条件に曝露された(即ち、チオアセトアミドにより処置された)肝細胞由来の細胞代謝回転因子による肝臓の処置は、処置したマウス部分的肝切除肝再生モデルにおいて、肝組織再生及びより低いレベルのネクロトーシスを誘導した。
【0217】
CM0、CM1、CM2、CM3、CM4、CM6、CM7(それぞれ、処置なし、ドキソルビシン、ツニカマイシン、ベネトクラクス、凍結解凍、TNF-アルファとカスパーゼ阻害剤とビリナパント、及びRSL3)は、再生効果を示さなかった。CM5処置は、2日目に肝臓指数及び肝細胞PCNA発現を有意に増加させ、CM5処置が肝細胞再生を増加させたことを示した。加えて、CM5処置は、2日目に、肝細胞Ki67発現を増加させ、肝壊死を減少させる傾向があり、肝細胞再生を増加させることにおけるCM5処置の役割をさらに支持した。
【0218】
等価物
当業者らは、本明細書において記載される特定の実施形態及び方法の多くの等価物を認識する又は日常的な実験のみを使用して確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0219】
参照による組み込み
本出願で言及される各参考文献、特許、及び特許出願は、あたかも各参考文献が個別に組み込まれると述べられたかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
【国際調査報告】