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特表2024-500883肉桂抽出物、前記抽出物の分画物または分離物、またはこれから分離された化合物を含む胃炎または消化性潰瘍の予防、改善または治療用組成物
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  • 特表-肉桂抽出物、前記抽出物の分画物または分離物、またはこれから分離された化合物を含む胃炎または消化性潰瘍の予防、改善または治療用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】肉桂抽出物、前記抽出物の分画物または分離物、またはこれから分離された化合物を含む胃炎または消化性潰瘍の予防、改善または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/54 20060101AFI20231227BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20231227BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20231227BHJP
【FI】
A61K36/54
A61P1/04
A61K31/192
A61K31/11
A23L33/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537980
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2021019777
(87)【国際公開番号】W WO2022139529
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0183904
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268819
【氏名又は名称】チョングンダン ファーマシューティカル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CHONG KUN DANG PHARMACEUTICAL CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】パク シンジョン
(72)【発明者】
【氏名】イム ユニョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョジュン
(72)【発明者】
【氏名】ホン ボヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ユンシク
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD10
4B018MD61
4B018ME11
4B018MF01
4C088AB33
4C088AC06
4C088BA08
4C088BA32
4C088CA05
4C088CA14
4C088MA16
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA68
4C206CB05
4C206CB09
4C206DA18
4C206DA21
4C206KA01
4C206KA18
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA68
(57)【要約】
本発明は、薬理学的効果を示す肉桂前処理された抽出物と分画物および分離精製物を含む薬学的または食品組成物である。肉桂抽出物内の生理活性を示す有効成分に関する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉桂抽出物、前記抽出物の分画物および前記分画物の分離物からなる群より選択される成分を含み、
前記抽出物、分画物または分離物は、化学式1~6で表される化合物からなる群より選択される1種以上の分離された有効成分を含むことを特徴とする、胃炎または消化性潰瘍の予防、改善または治療用薬学的組成物:
【請求項2】
化学式1~6で表される化合物からなる群より選択される1種以上の分離された有効成分またはその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする、胃炎または消化性潰瘍の予防、改善または治療用薬学的組成物:
【請求項3】
前記肉桂抽出物は、非極性溶媒前処理された肉桂の極性溶媒抽出物である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記非極性溶媒は、エチルアセテートであり、前記極性溶媒は、水である、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記分画物は、水、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサン、エチルアセテートおよびクロロホルムからなる群より選択される溶媒を用いて分画された分画物である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記肉桂抽出物の分画物は、エチルアセテート分画物である、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記分離物は、限外濾過膜またはクロマトグラフィーによって分離されたものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記クロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィーまたはC-18を用いるカラムクロマトグラフィーである、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記化学式1~6からなる群より選択される1種以上の有効成分は、前記分離物をPrep-HPLCで分離精製して得られたものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
薬学的に許容可能な担体をさらに含むものである、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
肉桂抽出物、前記抽出物の分画物および前記分画物の分離物からなる群より選択される成分を含み、
前記抽出物、分画物または分離物は、化学式1~6で表される化合物からなる群より選択される1種以上の分離された有効成分を含むことを特徴とする、胃炎または消化性潰瘍の予防または改善用食品組成物:
【請求項12】
化学式1~6で表される化合物からなる群より選択される1種以上の分離された有効成分またはその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする、胃炎または消化性潰瘍の予防または改善用食品組成物:
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉桂抽出物、前記抽出物の分画物、前記分画物の分離物またはこれから分離精製された化合物を含む向上した薬理学的または食品学的効果を示す、胃炎または胃潰瘍のような消化性潰瘍を予防、改善または治療できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
胃は消化管の一部であり、食道と小腸(十二指腸)との間にある袋のように膨らんだ部分で、食道を通して入ってきた飲食物を貯蔵し消化に容易となるように細かく砕いて、十二指腸に飲食物を送り出すことを調節することで、消化酵素の分泌とバランスをなして効率的な消化と吸収がされるようにする臓器である。ヒトの胃腸管系の機能に悪影響を及ぼす要因はその性質が極めて多様であり、上部胃腸管、下部胃腸管または2つの部分ともで発生することがあり、遺伝的、生理学的、環境的および精神的要因を含む広範囲な胃腸障害の要因がある。上部胃腸管の代表的な疾患には、胃炎(gastritis)および胃潰瘍(gastritis)、十二指腸潰瘍(duodenal ulcer)を通称する消化性潰瘍がある。胃炎は胃粘膜の損傷と炎症を示すものであり、胃潰瘍はこのような損傷が粘膜を突き抜けて粘膜下組織と筋肉層まで及んでいる時を意味する。また、十二指腸潰瘍は十二指腸に発生した潰瘍であり、胃潰瘍と十二指腸潰瘍を通称して消化性潰瘍という。このような胃炎および消化性潰瘍は、攻撃因子と呼ばれる胃酸、消炎剤、細菌感染と、防御因子と呼ばれる粘液、細胞再生、アルカリ分泌などの不均衡で発生することが知られている。
【0003】
胃炎および消化性潰瘍の治療方法は、過剰分泌された胃酸を中和させる制酸剤(antacid)、酸分泌抑制目的のヒスタミン拮抗剤(histamine antagonist)、プロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitor)、抗コリン剤、消化液に対する胃内膜の耐性を増加させ、回復を助ける胃粘膜保護剤などが主流をなしており、最近、ヘリコバクターピロリを除去すべく、胃の薬物と抗生剤とを複合して処方する薬物治療法などがある。制酸剤の特徴は速効性であり、胃内のpHを上昇させて胃酸を中和させることによって、胃酸による胃粘膜の損傷を防御する。しかし、無機物質の投与によって胃腸管平滑筋に影響を及ぼして便秘、下痢を起こしたり、アレルギー性拒絶反応を起こすことがある。
【0004】
消化性潰瘍に幅広く使用されるヒスタミン受容器遮断分泌抑制剤としては、シメチジン(cimetidine)が代表的であり、また、その誘導体として、ラニチジン(ranitidine)、ファモチジン(famotidine)、ロキサチジン(roxatidine)などがあるが、これらは胃粘膜内のヒスタミン受容器を遮断してヒスタミン分子が胃細胞による酸分泌ができないように作用する。臨床で優れた抗潰瘍効果を示しているが、治った再生粘膜と粘膜下組織が正常組織に比べて弱い構造を持っていて、薬物投与中止後に再び胃酸などの攻撃因子に損傷を受けやすいため、再発率が高いというデメリットがある。また、ラニチジンは、エタノールに起因した急性胃炎のような疾患には効果が大きくなくて胃粘膜保護能力が良くないというデメリットもある上に、最近、米国食品医薬局によれば、ラニチジンに含まれている亜硝酸塩とジメチルアミン基が時間の経過に伴って自ら分解および結合してNMDA(N-ニトロソジメチルという発癌性の物質が生成されて使用しなくなった。
【0005】
比較的最近開発されたプロトンポンプ阻害剤として、オメプラゾール(omeprazole)とランソプラゾール(lansoprazol)などがあり、胃壁細胞での酸分泌を最終段階で阻害して強力な酸分泌抑制効果を示すことが知られているが、再発率が高く、下痢、発熱、頭痛、疲労感などの副作用が報告されている。
【0006】
胃粘膜保護剤の場合は、一般に長期間治療を要し、服用量が多いというデメリットはあるが、攻撃因子抑制剤とは異なり、再生粘膜が正常類似の回復を示すことが知られている。
【0007】
消化性潰瘍再発の代表的な原因としては、胃内で生息する細菌の一種であるヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)が知られている。ヘリコバクターピロリは、胃粘膜上皮細胞間接合部で生息しながら慢性的な胃潰瘍を誘発するグラム陰性桿菌で、これを根絶しようとする治療が行われており、現在まで多くの成果を上げてはいるが、効用性、副作用および耐性菌株の出現などのような問題点を抱えており、安全で信頼できるような根絶方法は確立されていない状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、人体に副作用を誘発することなく優れて向上した薬理学的効果を示す胃炎および消化性潰瘍の予防、改善または治療に有用な物質を見出すべく鋭意努力した結果、肉桂抽出物、前記抽出物の分画物、前記分画物の分離物またはこれから分離精製された化合物が胃炎および消化性潰瘍の予防、改善または治療に有用に使用できることを確認して、本発明を完成した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、肉桂抽出物、前記抽出物の分画物、前記分画物の分離物、これから分離された有効成分またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む胃炎または消化性潰瘍の予防、改善または治療用薬学的または食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、肉桂抽出物、前記抽出物の分画物、前記分画物の分離物、これから分離された有効成分またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む胃炎または消化性潰瘍の予防、改善または治療用薬学的または食品組成物を提供する。
【0011】
一例として、前記肉桂抽出物、前記抽出物の分画物または前記分画物の分離物は、下記の化学式1~6で表される化合物からなる群より選択される1種以上の分離された有効成分を含むことができる。
【0012】
一例として、前記分離された有効成分は、下記の化学式1~6で表される化合物からなる群より選択されるものであってもよい。
【0013】
(化学式1) Ferulic acid(フェルラ酸)
【0014】
【化1】
【0015】
(化学式2) 4-Hydroxycinnamaldehyde
【0016】
【化2】
【0017】
(化学式3) 3-(2-Hydroxyphenyl)propanoic acid
【0018】
【化3】
【0019】
(化学式4) 3,4-Dihydroxybenzaldehyde
【0020】
【化4】
【0021】
(化学式5)Syringic acid
【0022】
【化5】
【0023】
(化学式6)Vanillic acid
【0024】
【化6】
【0025】
以上、本発明を詳細に説明する。
【0026】
一つの態様として、本発明は、肉桂抽出物、前記抽出物の分画物、前記分画物の分離物、これから分離精製された有効成分またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む胃炎または消化性潰瘍の予防、改善または治療用薬学的または食品組成物に関する。
【0027】
本発明において、「肉桂(Cinnamomum cassia、シナニッケイ)」という双子葉植物に属するキンポウゲ目クスノキ科の常緑広葉樹で、原産地は中国であり、スリランカ、インドシナ、韓国(済州)に分布し、産地で高さ約8mまで育つ肉桂木(桂皮木)の枝または皮を意味する。
【0028】
本発明において、用語、「肉桂抽出物」は、肉桂を抽出して得た抽出物を意味する。具体的な一例として、前記肉桂抽出物は、肉桂を従来知られた方法などにより乾燥したり抽出に適切な大きさに切断または粉砕し、適切な抽出溶媒を用いて抽出して製造したものであり、抽出前に前処理を経ることができる。
【0029】
抽出方法としては、熱水抽出、冷浸抽出、還流冷却抽出または超音波抽出などの公知の生薬抽出方法を用いて抽出することができるが、これに制限されるわけではない。また、前記抽出物は、抽出液自体だけでなく、抽出液の希釈液または濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物をすべて含むことができる。
【0030】
一態様において、本発明の肉桂抽出物は、肉桂を極性溶媒で抽出する前に前処理を経た抽出物(つまり、前処理された肉桂の極性溶媒抽出物)であってもよい。
【0031】
一態様において、前記前処理は、非極性溶媒で肉桂を処理するものであってもよい。
具体的な一例として、前記非極性溶媒は、エチルアセテートであってもよい。
前記非極性溶媒は、肉桂の重量(好ましくは、乾燥重量)対比0.5倍~5倍、0.7倍~4倍、または1倍~3倍の体積で使用できるが、これに制限されるわけではない。
具体的な一例として、前記エチルアセテートのような非極性溶媒に切断または粉砕された肉桂を10分~5時間、20分~4時間、または30分~3時間程度の時間、20~35℃、または室温の温度で浸漬、撹拌して前処理を行うことができる。
一態様において、前記前処理が完了した後、肉桂を極性溶媒で抽出する前に洗浄してもよい。
【0032】
さらに、本発明による前記肉桂抽出物は、前記のように前処理された肉桂の極性溶媒、好ましくは、水抽出物であってもよい。
抽出時に使用される極性溶媒は、肉桂の重量(好ましくは、乾燥重量)対比5倍~12倍、6倍~10倍または8倍の体積で使用できるが、これに制限されるわけではない。
具体的な一例として、前記非極性溶媒で前処理された肉桂を70~100℃、または80~100℃の温度で、1時間~7時間、2時間~6時間または5時間抽出してもよい。このような抽出は、1回~数回、1回~3回、または1回~2回行うことができ、抽出された前処理抽出物は、追加的にろ過、濃縮および/または乾燥してもよいし、この時、使用される方法は、通常抽出物の製造に使用されるろ過、濃縮、乾燥方法を制限なく使用可能である。
【0033】
本発明による一実施態様では、肉桂を乾燥および細切して、肉桂に対して2倍の体積のエチルアセテートを加えて、室温で1時間以上浸漬、撹拌し、エチルアセテートを除去した後、水で、前処理された肉桂生薬を洗い落とし、これに肉桂生薬の8倍数に相当する水を加えて、約90℃程度で5時間抽出し、これを2回繰り返した。これによって得られる抽出物をろ過、減圧濃縮、真空乾燥または噴霧乾燥して肉桂エチルアセテート前処理された水抽出物を製造した。
【0034】
本発明において、用語、「分画物」は、多様な構成成分を含む混合物から特定の成分または特定のグループを分離する分画方法によって得られた結果物を意味する。本発明の肉桂抽出物の分画物は、肉桂抽出物を、分画溶媒として、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどの極性溶媒、またはヘキサン、エチルアセテート、クロロホルムのような非極性溶媒を用いて分画することによって、極性溶媒分画物と非極性溶媒分画物をそれぞれ得ることができる。具体的な一例として、前記肉桂抽出物の分画物は、肉桂抽出物のエチルアセテート分画物であってもよい。
【0035】
一態様において、前記分画溶媒の使用量は、肉桂抽出物1kgに対して、1~5倍、1~10倍または1~20倍の体積の水、炭素数1(C1)~4(C4)のアルコール、クロロホルム、エチルアセテート、ヘキサン、ブタノールまたはこれらの混合溶媒のような極性または非極性溶媒を加えて、1回~10回、好ましくは2回~5回にわたって極性または非極性溶媒可溶層を抽出、分離して得ることができる。また、このような溶媒分画は、順次に行われてもよい。
【0036】
本発明の一実施例では、上記で得られたエチルアセテートで前処理された肉桂の水抽出物(1Kg)を、HO/n-ヘキサン、HO/クロロホルム、HO/エチルアセテート、HO/n-ブタノールをそれぞれ800mlずつ順次に溶媒分画した後、濃縮機と真空乾燥機で溶媒を除去して肉桂溶媒分画物(n-ヘキサン、クロロホルム、エチルアセテート、n-ブタノール分画物)を製造した。
【0037】
一実施例において、前記肉桂抽出物の分画物は、4%以上、7%以上、19%以上、50%以上または60%以上のNO阻害率を示す。好ましい態様において、前記分画物は、60%~70%、60~80%または65%~85%のNO阻害率を示す。
【0038】
本発明において、用語「分離物」は、前記分画物に追加的に通常の分離工程を行って得たものを意味する。
一例として、このような分離物は、本発明による肉桂抽出物の分画物を一定の分子量カット-オフ値を有する限外濾過膜を通過させて得た分離物、多様なクロマトグラフィー(サイズ、電荷、疎水性または親和性による分離のために作製されたもの)による分離などで追加的に実施された多様な精製方法により得られる。
【0039】
一態様において、このような分離物は、分画物からより高い生理活性などを有する分画を分離したものであり、活性分画または有効分画物ともいう。
【0040】
一態様において、前記クロマトグラフィーは、カラムクロマトグラフィー(column chromatography)、薄層クロマトグラフィー(thin layer chromatography、TLC)または高性能液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、HPLC)であってもよいが、これに制限されるわけではなく、当業界にて知られた多様なクロマトグラフィーを用いて行われる。前記カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル、セファデックス、LH-20、ODSゲル、C-18(RP-18)、ポリアミド、トヨパール(Toyopearl)およびXAD樹脂からなる群より選択された充填剤を用いるカラムクロマトグラフィーを行って化合物を分離および精製することができ、カラムクロマトグラフィーは、必要に応じて適切な充填剤を選択して数回実施することができるが、これに制限されるわけではない。前記クロマトグラフィーを用いるにあたり、溶出溶媒、溶出速度および溶出時間は、当業界にて一般に使用する溶媒、速度または時間を適用することができる。
【0041】
本発明の一実施例では、肉桂抽出物をエチルアセテートで分画したエチルアセテート溶媒分画物をシリカゲル(順相)を用いて、溶出溶媒としてクロロホルム:メタノールを用いて溶出させて分離された分離物を濃縮乾燥した。
【0042】
一実施例において、前記肉桂抽出物の分離物は、4%以上、7%以上、15%以上、20%以上、50%以上または60%以上のNO阻害率を示す。好ましい態様において、前記分画物は、60%~100%、70~100%または75%~100%のNO阻害率を示す。
【0043】
また、前記肉桂分離物から上記で言及されたクロマトグラフィーにより分離精製して具体的な有効成分を分離することができる。前記分離精製された有効成分は、生理活性を示す単一物質を意味する。
【0044】
一実施例において、本発明による分離精製された有効成分は、前記分離物を前記クロマトグラフィーおよび/またはPrep-HPLC(分取用高性能液体クロマトグラフィー)を用いて得られる。この時、HPLC用カラムとしては、C-8逆相カラムを用いることができ、溶出溶媒としては、アセトニトリルおよび水を使用してもよいが、これに制限されるわけではない。
【0045】
一実施例において、本発明による分離精製された有効成分は、下記の化学式1~6で表される化合物からなる群より選択されたものであってもよい。
【0046】
【化7】
【0047】
本発明による組成物に含まれる肉桂抽出物、前記抽出物の分画物、または前記分画物の分離物は、前記化学式1~6で表される化合物からなる群より選択される1種以上、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種、1種~2種、1種~3種、1種~4種、1種~5種、1種~6種、2種~3種、2種~4種、2種~5種、2種~6種、3種~4種、3種~5種、3種~6種、4種~5種、4種~6種、または5種~6種を含むことができる。
【0048】
また、本発明の組成物は、前記分離精製された有効成分の薬学的に許容可能な塩を含むことができる。前記塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が有用である。本発明の用語「薬学的に許容可能な塩」とは、患者に比較的非毒性で無害な有効作用を有する濃度であって、この塩に起因した副作用が本発明による化合物の有利な効能を低下させない前記化合物の任意のすべての有機または無機付加塩を意味する。
【0049】
酸付加塩は、通常の方法、例えば、化合物を過剰の酸水溶液に溶解させ、この塩を水混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを用いて沈殿させて製造する。同モル量の化合物および水中の酸またはアルコール(例、グリコールモノメチルエーテル)を加熱し、次いで、前記混合物を蒸発させて乾燥させたり、または析出した塩を吸引ろ過させることができる。
【0050】
この時、遊離酸としては、有機酸と無機酸を使用することができ、無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、酒石酸などを使用することができ、有機酸としては、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸(maleic acid)、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、タルタル酸、フマル酸(fumaric acid)、マンデル酸、プロピオン酸(propionic acid)、クエン酸(citric acid)、乳酸(lactic acid)、グリコール酸(glycollic acid)、グルコン酸(gluconic acid)、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸(glutaric acid)、グルクロン酸(glucuronic acid)、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カーボン酸、バニリン酸、ヨウ化水素酸(hydroiodic acid)などを使用することができ、これらに制限されない。
【0051】
また、塩基を用いて薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過剰のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解させ、非溶解化合物塩をろ過した後、濾液を蒸発、乾燥させて得る。この時、金属塩としては、特に、ナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩を製造することが製薬上適合するが、これらに制限されるわけではない。また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例、硝酸銀)と反応させて得ることができる。
【0052】
本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩は、他に指示されない限り、前記化学式1~6に記載の化合物に存在できる酸性または塩基性基の塩を含む。
【0053】
本発明の組成物は、このような化学式1~6からなる群より選択される有効成分自体、またはこのような有効成分を含む肉桂抽出物、前記抽出物の分画物または前記分画物の分離物を含むことによって、胃炎、または胃潰瘍、十二指腸潰瘍のような消化性潰瘍の予防、改善または治療に優れた効果を示す。
【0054】
一実施例において、本発明の組成物は、薬学的組成物であってもよい。
【0055】
本発明の薬学的組成物は、組成物の全体重量に対して、前記肉桂抽出物、前記抽出物の分画物または前記分画物の分離物を10~90重量%含むことができる。
【0056】
一方、前記薬学的組成物は、化学式1~6でそれぞれ表されるフェルラ酸(Ferulic acid)、4-ヒドロキシシンナムアルデヒド(4-Hydroxycinnamaldehyde)、3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(3-(2-Hydroxyphenyl)propanoic acid)、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(3,4-Dihydroxybenzaldehyde)、シリング酸(Syringic acid)およびバニリン酸(Vanillic acid)からなる群より選択される1種以上を有効成分として含むことができる。
【0057】
前記抽出物、分画物、分離物または有効成分の組成物中の含有量は、組成物が製剤化された場合、製剤の種類、投与経路などの必要に応じて増減できる。
【0058】
本発明の薬学的組成物は、経口または非経口投与が可能であり、一般的な医薬品製剤の形態で使用できる。好ましい薬剤学的製剤は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、硬質または軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤などのような経口投与用製剤があり、これらの薬剤学的製剤は、薬剤学的に許容可能な通常の担体、例えば、経口投与用製剤の場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、保存剤または増量剤などを用いて調製することができる。
【0059】
本発明の薬学的組成物の投与用量は、患者の状態、年齢、体重、疾患の進行程度などの多様な要因により専門家によって決定できるが、一般には、抽出物として1日9.7~2,919mgを1回~数回分けて投与することができ、好ましくは29.2~2,919mg、さらに好ましくは68.1~2,919mg投与することができる。しかし、長期間摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であってもよいし、有効成分は安全性の面で何ら問題がないため、前記範囲以上の量でも使用可能である。
【0060】
また、本発明の組成物は、食品組成物であってもよい。前記食品とは、健康補助食品、健康機能食品、機能性食品などであるが、これに制限されるわけではなく、天然食品、加工食品、一般的な食材料などに本発明の肉桂前処理抽出物を添加するものも含まれる。ここで、機能性とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節したり、生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。
【0061】
本発明の健康補助食品、健康機能食品または機能性食品は、当業界にて通常使用される方法によって製造可能であり、前記製造時には、当業界にて通常添加する原料および成分を添加して製造することができる。また、一般薬品とは異なり、現在摂食される生薬を原料として、薬品の長期服用時に発生しうる副作用などがないというメリットがあり、携帯性に優れて、本発明の健康機能食品は、胃炎または胃潰瘍の予防または改善効果を増進させるための補助剤として摂取が可能である。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)により好適に決定可能である。一般に、食品の製造時に、本発明による分画物または前記分画物の分離物を10~90重量%含むことができる。
【0062】
一方、前記食品組成物は、化学式1~6でそれぞれ表されるフェルラ酸(Ferulic acid)、4-ヒドロキシシンナムアルデヒド(4-Hydroxycinnamaldehyde)、3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(3-(2-Hydroxyphenyl)propanoic acid)、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(3,4-Dihydroxybenzaldehyde)、シリング酸(Syringic acid)およびバニリン酸(Vanillic acid)からなる群より選択される1種以上を有効成分として含むことができる。
【0063】
前記抽出物、分画物、分離物または有効成分の組成物中の含有量は、組成物が食品に製造された場合、食品の種類、投与経路などの必要に応じて増減できる。
【0064】
有効用量は、前記薬学的組成物の有効用量に準じて使用することができるが、胃炎または胃潰瘍の改善または維持のための長期間摂取の場合には、前記範囲以下であってもよいし、肉桂は、従来の食品にも使用されていることから、成分として安全性の面で何ら問題がないため、前記範囲以上の量でも使用可能である。
【0065】
前記食品の種類には特別な制限はない。前記肉桂抽出物、前記抽出物の分画物または前記分画物の分離物、または化学式1~6からなる群より選択される有効成分を含む食品組成物は、錠剤、硬質または軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤などのような経口投与用製剤の形態で用いられ、これらの製剤は、許容可能な通常の食品補助添加剤をさらに含むことができる。前記用語「食品補助添加剤」は、各剤形の健康機能食品を製造するのに添加されるものであって、当業者が適切に選択して使用可能である。食品補助添加剤の例としては、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および充填剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などが含まれるが、前記例によって本発明の食品補助添加剤の種類が制限されるわけではない。
【0066】
また、本発明の食品組成物は、前記組成物をそのまま添加したり、他の食品または食品組成物と共に使用可能であり、通常の方法により適切に使用可能である。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、改善または治療的処置)により好適に決定可能である。
【0067】
前記食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤、その他の栄養剤などが挙げられるが、これら種類の食品に制限されるわけではない。
【0068】
本発明の一実施例によれば、本発明による肉桂抽出物、前記抽出物の分画物、または前記分画物の分離物、そしてこれから分離精製された化学式1~6の有効成分は、NO生成量を減少させ、PGE2を抑制させて優れた抗炎症効果を示し、また、優れた胃潰瘍抑制効果を示す。
【発明の効果】
【0069】
本発明による肉桂抽出物、前記抽出物の分画物、または前記分画物の分離物、そしてこれから分離精製された化学式1~6の有効成分は、抗炎症および胃潰瘍抑制効果に優れていることから、胃炎または消化性潰瘍に対する予防、改善または治療剤、または機能性食品として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明による組成物に含まれる肉桂抽出物のHPLCデータを示すグラフである。
図2】本発明による組成物に含まれる肉桂溶媒分画物のNO阻害率を種類別に示すグラフである。
図3】本発明による組成物に含まれる分離物のNO阻害率を種類別(N1~N6)に示すグラフである。
図4】本発明による組成物に含まれる分離物のNO阻害率を種類別(N2-1~N2-6)に示すグラフである。
図5】本発明による組成物に含まれる分離物のNO阻害率を種類別(R2-1~R2-8)に示すグラフである。
図6】本発明による肉桂抽出物の分画および分離精製方法を図式化したグラフである。
図7】本発明による組成物に含まれる肉桂抽出物、分画物、および有効成分のフェルラ酸、p-クマルアルデヒドおよび3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドの胃潰瘍抑制率を艾葉抽出物およびレバミピドと比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであるので、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されない。
【0072】
実施例1.本発明による抽出物と溶媒分画物の製造
【0073】
1)肉桂前処理抽出物の製造
本発明による肉桂前処理抽出物を次のように製造した。具体的には、肉桂生薬にエチルアセテート2倍数を加えて、室温で1時間以上浸漬撹拌した。エチルアセテートを除去して水で肉桂生薬を洗い落とした後、水8倍数を加えて、約90℃付近で5時間抽出する(2回繰り返す)。抽出物をろ過、減圧濃縮、真空乾燥または噴霧乾燥して肉桂エチルアセテート前処理水抽出物を製造した(抽出物収得:16~26→1)。
【0074】
2)肉桂溶媒分画物の製造
本発明による肉桂溶媒分画物を次のように製造した。具体的には、実施例1の肉桂前処理抽出物1KgをHO/n-Hexane、HO/Chloroform、HO/Ethyl acetate、HO/n-Butanolをそれぞれ800mlずつ順次に溶媒分画した後、濃縮機と真空乾燥機で溶媒を除去して肉桂溶媒分画物を製造した。
【0075】
【表1】
【0076】
実施例2.本発明による生理活性物質の分離および精製1
【0077】
1)シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel colum chromatography)による生理活性物質の分離
【0078】
本発明によるシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel colum chromatography)による生理活性物質を次のように分離した。具体的には、実施例1-2の肉桂溶媒分画物中、Ethyl acetate溶媒分画物とOpen columnに用いたレジン(resin)はシリカゲル(silica gel、順相)を使用した。Ethyl acetate溶媒分画物はSilica gel column充填後、吸着性の性質によって分離された。溶出溶媒はChloroform:Methanol=5:1として溶出させて、TLC上でspotsの分離程度を確認し、濃縮、乾燥した。
【0079】
【表2】

【0080】
2)シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel colum chromatography)による生理活性物質の分離
【0081】
本発明によるシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel colum chromatography)による生理活性物質を次のように分離した。具体的には、実施例2-1のカラムクロマトグラフィー(Colum chromatography)中、分離物N2とOpen columnに使用したレジン(resin)はシリカゲル(silica gel、順相)を使用し、分離物N2はsilica gel column充填後、吸着性の性質によって分離された。溶出溶媒はHexane:Ethyl acetate=1:3として溶出させて、TLC上でspotsの分離程度を確認し、濃縮、乾燥した。
【0082】
【表3】

【0083】
3)Prep-HPLCによる生理活性単一物質の精製
【0084】
本発明によるPrep-HPLCによる生理活性物質を次のように分離した。具体的には、実施例2-2のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Silica gel colum chromatography)中、分離物N2-1とC18 columnが装着されているPrep-HPLCを使用し、N2-1はC18 columnの性質によってPH2-1-1とPH2-1-2とに分離された。溶出溶媒はAcetonitrile:HOとして溶出させて、TLC上でspotsの分離程度を確認し、濃縮、乾燥した。PH2-1-1はC18 columnの性質によってcompound Aに精製された。溶出溶媒はAcetonitrile:HOとして溶出させて、TLC上でspotsの分離程度を確認し、濃縮、乾燥した。PH2-1-2はC18 columnの性質によってcompound Bとcompound Cに精製された。溶出溶媒はAcetonitrile:HOとして溶出させて、TLC上でspotsの分離程度を確認し、濃縮、乾燥した。
【0085】
【表4】

【0086】
実施例3.本発明による生理活性物質の分離および精製2
【0087】
1)C18カラムクロマトグラフィー(C18 colum chromatography)による生理活性物質の分離
【0088】
本発明によるC18カラムクロマトグラフィー(C18 colum chromatography)による生理活性物質を次のように分離した。具体的には、実施例2-1のカラムクロマトグラフィー(Colum chromatography)中、分離物N2とOpen columnに使用したレジン(resin)はC18(逆相)を使用し、分離物N2はC18 column充填後、吸着性の性質によって分離された。溶出溶媒はMethanol:HO=1:1として溶出させて、TLC上でspotsの分離程度を確認し、濃縮、乾燥した。
【0089】
【表5】

【0090】
2)Prep-HPLCによる生理活性単一物質の精製
【0091】
本発明によるPrep-HPLCによる生理活性物質を次のように分離した。具体的には、実施例3-1のC18カラムクロマトグラフィー(C18 colum chromatography)中、分離物R2-2とC18 columnが装着されているPrep-HPLCを用い、分離物R2-2はC18 columnの性質によってPH2-2-1とPH2-2-2とに分離された。溶出溶媒はAcetonitrile:HOとして溶出させて、TLC上でspotsの分離程度を確認し、濃縮、乾燥した。PH2-2-1はC18 columnの性質によってcompound Dに精製された。溶出溶媒はAcetonitrile:HOとして溶出させて、TLC上でspotsの分離程度を確認し、濃縮、乾燥した。PH2-2-2はC18 columnの性質によってcompound Eとcompound Fに精製された。溶出溶媒はAcetonitrile:HOとして溶出させて、TLC上でspotsの分離程度を確認し、濃縮、乾燥した。
【0092】
【表6】

【0093】
実施例4.本発明による精製された化合物の物理および化学的性質による構造の同定
【0094】
核磁気共鳴分光器(Nuclear Magnetic Resonance;NMR)spectrumの測定
NMR spectrumは1H-NMR(400MHz)と13C-NMR(100MHz)を用いて純粋精製物10mgを各溶媒に溶解させて測定した。
【0095】
Mass spectrumの測定
分離精製後、乾燥した粉末個体試料1mgを減圧状態(10mmHg)でnegative ion FAB-mass spectrumを用いて化学的分析法によって測定した。この時、測定溶媒としてはthioglyceroを使用し、測定条件はemitter電流は22~28eVであり、イオン源の加速加圧が6~7KVで質量分析を行った。
【0096】
前記方法により精製物質の構造を同定した結果は次の通りである。
【0097】
1)Compound A
Compound Aを構造同定した結果、C10H10O4の分子構造を有しており、positive FAB-MS分子量が194.18と測定された。1H-NMR (CD3OD, 400 MHz) spectrumはδH 7.57 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.17 (1H, d, J= 2.0 Hz), 7.05 (1H, dd, J = 8.0, 2.0 Hz), 6.80 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.30 (1H, d, J = 16.0 Hz), 3.88 (3H, s) ppm, 13C-NMR (CD3OD, 100 MHz) spectrumはδC 170.2, 149.1, 148.0, 144.2, 128.0, 121.6, 116.6, 114.6, 110.3, 54.4 ppmで、compound AはFerulic acidで同定した。
【0098】
2)Compound B
Compound Bを構造同定した結果、C9H8O2の分子構造を有しており、positive FAB-MS分子量が148.16と測定された。1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) spectrumはδH 9.63 (1H, d, J = 7.8 Hz), 9.09 (1H, br s), 7.62 (2H, d, J = 8.7 Hz), 7.58 (1H, d, J = 15.8 Hz), 6.94 (2H, d, J = 8.6 Hz), 6.61 (1H, dd, J = 15.8, 7.7 Hz) ppm, 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) spectrumはδC 193.9, 161.3, 153.7, 131.6, 127.0, 126.8, 116.8 ppmで、compound Bは4-Hydroxycinnamaldehydeで同定した。
【0099】
3)Compound C
Compound Cを構造同定した結果、C9H8O3の分子構造を有しており、positive FAB-MS分子量が164.16と測定された。1H-NMR (DMSO-d6, 400 MHz) spectrumはδH 7.0 (4H, m), 2.78 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.50 (2H, t, J = 7.0 Hz) ppm, 13C-NMR (DMSO-d6, 100 MHz) spectrumはδC 174.6, 155.6, 130.1, 127.6, 127.3, 119.3, 115.3, 34.1, 25.9 ppmで、compound Cは3-(2-Hydroxyphenyl)propanoic acidで同定した。
【0100】
4)Compound D
Compound Dを構造同定した結果、C7H6O3の分子構造を有しており、positive FAB-MS分子量が138.12と測定された。1H-NMR (CD3OD, 400 MHz) spectrumはδH 9.68 (1H, s), 7.30 (1H, dd, J = 9.48, 1.70 Hz), 7.28 (1H, d, J = 1.41 Hz), 6.90 (1H, d, J = 8.1 Hz) ppm, 13C-NMR (CD3OD, 100 MHz) spectrumはδC 193.8, 154.5, 148.0, 131.6, 127.2, 117.0, 116.2 ppmで、compound Dは3,4-Dihydroxybenzaldehydeで同定した。
【0101】
5)Compound E
Compound Eを構造同定した結果、C9H10O5の分子構造を有しており、positive FAB-MS分子量が198.17と測定された。1H-NMR (CD3OD, 400 MHz) spectrumはδH 7.31 (2H, s), 3.87 (6H, s) ppm, 13C-NMR (CD3OD, 100 MHz) spectrumはδC 167.2, 147.4, 140.1, 120.6, 106.8, 55.9 ppmで、compound EはSyringic acidで同定した。
【0102】
6)Compound F
Compound Fを構造同定した結果、C8H8O4の分子構造を有しており、positive FAB-MS分子量が168.15と測定された。1H-NMR (CD3OD, 400 MHz) spectrumはδH 7.55 (2H, m), 6.84 (d, J=8.8 Hz), 3.89(3H, s) ppm, 13C-NMR (CD3OD, 100 MHz) spectrumはδC 170.1, 152.6, 148.7, 125.3, 123.2, 115.8, 113.9, 56.4 ppmで、compound FはVanillic acidで同定した。
【0103】
[Raw264.7細胞での抗炎症効果の測定]
実験例1.一酸化窒素(Nitric Oxide)生成阻害活性の確認
【0104】
一酸化窒素(Nitric Oxide、NO)の測定は、細胞の上澄液での一酸化窒素(nitric oxide、NO)の量を亜硝酸塩(nitrite)と硝酸塩(nitrate)として測定を行った。亜硝酸塩から硝酸塩へは酸化した後の安全な形態はグリース試薬(griess reagent;Sigma、USA)を用いて測定した。2well plateに3×10個の細胞を24時間培養した。24時間後、それぞれのwellに溶媒分画物、カラム分離物、Prep-HPLC精製物を濃度別に処理した。この時、normal群を除いたすべてのwellには100ng/ml Lipopolysaccharide(LPS)を入れて刺激させた。グリース試薬(griess reagent)と5分間反応させた後に、540nmにおける吸光度を測定した。検量線はsodium nitrite溶液を用いて作成し、吸光度によりnitriteの濃度を計算した。NO阻害率は次の数式1によりLPSのみを処理した群と比較する方法で評価した。その結果は次の表7、8、9、10、11および12と図2、3、4および5に示した。
【0105】
(数式1)
NO阻害率(%)=100-[(試料添加群*のNO生成量×100)/試料無添加群*のNO生成量]
*Lipopolysaccharide(LPS)処理群
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】

【0108】
【表9】

【0109】
【表10】

【0110】
【表11】
【0111】
【表12】
【0112】
[動物での胃潰瘍抑制効果の測定]
実験例2.胃潰瘍抑制率の確認
インドメタシン(Indomethacin)誘発動物モデルでの胃潰瘍指数評価
【0113】
試験動物は特定の病原体不在(SPF)ラット雄7週齢を、順応期間(7日)を経て、平均体重が最大限に均一に分布するように無作為法で1群あたり10匹ずつ分配した。投与経路は艾葉抽出物、レバミピドと肉桂のエチルアセテート前処理された水抽出物、分画物(N2-1)、3,4-Dihydroxybenzaldehyde、Ferulic acid、4-hydroxycinnamaldehydeをそれぞれ経口投与で単回投与し、投与液量は投与当日測定した体重を基準として10mL/Kgで算出して投与した。試験物質および対照薬物投与48時間前からすべての動物を絶食させた後、それぞれの試験物質および対照薬物を経口投与し、投与30分目に予め調製しておいたIndomethacinを80mg/kgの用量で経口投与した。Indomethacin投与5時間目にdiethyl etherで麻酔した後、胃を摘出して胃粘膜面をデジタルカメラで撮影した。損傷した部位の面積はImageJ software(NIH、Bethesda、MD)を用いて分析した。胃潰瘍指数は次の数式により測定した。その結果を表13および図7に示した。
【0114】
(数式2)
胃潰瘍指数(%)=(損傷面積/全体面積)×100
【0115】
【表13】
【0116】
図7および表13から分かるように、本発明による肉桂抽出物、分画物およびこれらから分離精製された3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、フェルラ酸および4-ヒドロキシシンナムアルデヒドは、従来市販の艾葉抽出物製剤のスチレンおよび市販の胃潰瘍治療剤のレバミピドに比べて優れた胃潰瘍抑制率を示すことを確認できた。特に、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、フェルラ酸およびp-クマルアルデヒドの場合、非常に少量にもかかわらず、非常に高い水準の胃潰瘍抑制率を示すことから、これらを有効成分として含む製剤は、胃炎および消化性潰瘍に非常に役立つことを確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】