(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/587 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
C04B35/587
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538154
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2021141240
(87)【国際公開番号】W WO2022135571
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011559771.6
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519228382
【氏名又は名称】中材高新▲タン▼化物陶瓷有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】張偉儒
(72)【発明者】
【氏名】孫峰
(72)【発明者】
【氏名】董廷霞
(72)【発明者】
【氏名】呂沛遠
(72)【発明者】
【氏名】徐学敏
(72)【発明者】
【氏名】徐金夢
(72)【発明者】
【氏名】梁パンパン
(72)【発明者】
【氏名】荊赫
(72)【発明者】
【氏名】魏文ヂァォ
(72)【発明者】
【氏名】丁智傑
(72)【発明者】
【氏名】何霄
(57)【要約】
本発明は高伝熱窒化ケイ素セラミックス絶縁板及びその製造方法を提供し、セラミックス基板技術分野に属する。本発明は酸化マグネシウムを第1焼結助剤とし、焼結において、酸化マグネシウムと原料の窒化ケイ素粉体とが反応して液相を生成し、焼結温度を下げ、生産コストを節約する同時に、窒化ケイ素セラミックス絶縁板の密度と曲げ強度を高めることができ、本発明は酸化ハフニウムを第2の焼結助剤とし、酸素との比較的に強力の結合能力を利用して、焼結において原料の窒化ケイ素粉体中の不純物酸素と結合し、格子酸素含有量を除去し、窒化ケイ素セラミックス絶縁板の熱伝導率を高め、本発明の第3の焼結助剤は、焼結において液相反応を促進し、窒化ケイ素粉体と反応して固溶体を形成し、粒界におけるアモルファス相を減少させ、高い熱伝導率を保証すると同時に製品の曲げ強度を高めることができる。また、本発明は従来技術において超薄型大型基板の製造が困難であるという難題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ケイ素粉末86~96%、第1の焼結助剤1~5%、第2の焼結助剤2.5~8%、及び第3の焼結助剤0.5~1%の製造原料を含み、
前記第1の焼結助剤は酸化マグネシウムであり、
前記第2の焼結助剤は酸化ハフニウムであり、
前記第3の焼結助剤は、酸化ホウ素、三酸化二鉄、酸化カルシウム及び二酸化チタンのうちの1種以上であることを特徴とする高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項2】
前記窒化ケイ素粉末のD50<1μm、α相含有量は90%超であり、比表面積<15m
2/g、酸素含有量<1wt.%、Fe<0.0005wt.%、Al<0.001wt.%、Ca<0.0001wt.%であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項3】
前記第1の焼結助剤、第2の焼結助剤及び第3の焼結助剤のD50は、独立して<1μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項4】
前記高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の曲げ強度≧600MPaであることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項5】
前記高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の熱伝導率≧100W・m
-1・k
-1であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項6】
前記高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の誘電率は7~9であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項7】
前記高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の寸法は190mm×138mm×0.25mmであることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項8】
前記高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板は、各調製原料を、造粒粉体にした後、プレス成形、冷間等方圧加圧、脱脂、及び焼結を順次に行って得られることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の製造方法であって、
窒化ケイ素粉末、第1の焼結助剤、第2の焼結助剤、第3の焼結助剤、溶媒及び接着剤を混合し、混合スラリーを得るステップ、
前記混合スラリーを造粒して、造粒粉体を得るステップ、
前記造粒粉体をプレスで成形してセラミックスビスキュイを得るステップ、
前記セラミックスビスキュイを冷間等方圧加圧して緻密ビスキュイを得るステップ、
前記緻密ビスキュイを順に脱脂と焼結し、冷却後に高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板を得るステップを含み、
前記焼結の温度は1800~1950℃であり、前記冷却の速度は30℃/min以下である高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の製造方法。
【請求項10】
前記混合は、前記窒化ケイ素粉末、第1の焼結助剤、第2の焼結助剤、第3の焼結助剤及び溶媒を第1の攪拌ミルして、中間スラリーを得、
前記中間スラリーに接着剤を加えて第2の攪拌ミルを行い、混合スラリーを得ることであることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記溶媒はエタノールを含み、前記エタノールの使用量は、中間スラリーの固形分含有量が40~70%であることを満たすことを基準とし、前記接着剤は、ポリビニルブチラールを含み、前記接着剤の使用量は、前記中間スラリーの3~5wt.%であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記プレス成形の圧力は10~15Tであり、圧力保持時間は15~20sであることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記冷間等方圧加圧の圧力は300~350MPaであり、圧力保持時間は20minであることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項14】
前記脱脂の温度は400~600℃、温度保持時間は6~12hであることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項15】
前記焼結の温度保持時間は12~24hであることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項16】
前記造粒の方式は噴霧造粒であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項17】
前記噴霧造粒の条件は、フィードポンプ圧力が0.6~0.8MPa、入口温度が150~180℃、出口温度が50~70℃、サイクロン圧力差が0.8~1KPaであることを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記造粒粉体の粒度は100メッシュ未満であり、見掛密度は0.8~1g/m3であり、流動時は55.68~58.07sであることを特徴とする請求項9、16または17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記冷間等方圧加圧は、セラミックビスキュイを真空バッグに入れ、真空バッグに鋼板を基板として入れ、その後、真空引きして冷間等方圧加圧機のキャビティ内に入れて冷間等方圧加圧を行うことを含むことを特徴とする請求項9または13に記載の製造方法。
【請求項20】
前記脱脂と焼結の前に、前記緻密ビスキュイを積層するように坩堝に入れ、積層した緻密ビスキュイを最表面に黒鉛板を置いた後、多機能気圧焼結炉に入れて脱脂と焼結を行うことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項21】
前記黒鉛板の重量は緻密ビスキュイの重量の1~2倍であることを特徴とする請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記脱脂の温度まで昇温する昇温速度は10℃/minを超えないことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項23】
前記焼結は、脱脂温度に基づいて焼結の温度まで昇温して焼結を行い、前記焼結の温度まで昇温する昇温速度は10℃/minを超えないことを特徴とする請求項9または14に記載の製造方法。
【請求項24】
前記脱脂及び焼結は多機能気圧焼結炉で行うことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年12月25日に中国特許局に提出され、出願番号は202011559771.6、発明名は「高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板及びその製造方法」である中国特許出願の優先権を要求し、そのすべての内容は援用によって本願に結合される。
【0002】
本発明はセラミックス基板技術分野、特に高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
チップの特徴サイズが縮小し、集積度の増大につれて、チップは超大規模集積回路時代に入った。高集積度はデバイスの負荷電力が大きくなり、発熱量が増加することを意味するため、高集積回路は極めて大きな放熱問題を抱えており、耐熱性で熱伝導率の高い基板材料の開発は集積回路のさらなる発展に重要な意義を持っている。現在、一般的に使用されているセラミックス基板材料はアルミナ(Al2O3)と窒化アルミニウム(AlN)であるが、いずれもいくつかの欠点があり、アルミナ基板の熱伝導率は低すぎ(~20 W・m-1・k-1)、窒化アルミニウム基板の熱伝導率は相対的に高い(~120 W・m-1・k-1)が、曲げ強度は非常に悪い(~300 MPa)、この2つの材料はいずれも高集積回路の放熱と負荷の需要を満たすことができない。
【0004】
窒化ケイ素セラミックスは、その高強度、高靭性、高温性能、高い理論熱伝導率など一連の優れた性能のため、広く注目されており、理想的な基板材料である。しかし、窒化ケイ素セラミックスは高温で分解しやすく(1870℃前後)、生産コストが高く、曲げ強度と熱伝導率を両立できないなどの問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高曲げ強度と高熱伝導率を両立し、かつ比較的低い焼結温度を有する高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
上記発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を提供する。
【0007】
本発明は、窒化ケイ素粉末86~96%、第1の焼結助剤1~5%、第2の焼結助剤2.5~8%、及び第3の焼結助剤0.5~1%の製造原料を含み、前記第1の焼結助剤は酸化マグネシウムであり、前記第2の焼結助剤は酸化ハフニウムであり、前記第3の焼結助剤は、酸化ホウ素、三酸化二鉄、酸化カルシウム及び二酸化チタンのうちの1種以上である高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板を提供する。
【0008】
好ましくは、前記窒化ケイ素粉末のD 50<1μm、α相含有量は90%超であり、比表面積<15m2/g、酸素含有量<1wt.%、Fe<0.0005wt.%、Al<0.001wt.%、Ca<0.0001wt.%である。
【0009】
好ましくは、前記第1の焼結助剤、第2の焼結助剤及び第3の焼結助剤のD50は、独立して<1μm未満である。
【0010】
本発明は窒化ケイ素粉末、第1の焼結助剤、第2の焼結助剤、第3の焼結助剤、溶媒及び接着剤を混合し、混合スラリーを得るステップ、
前記混合スラリーを造粒して、造粒粉体を得るステップ、
前記造粒粉体をプレスで成形してセラミックスビスキュイを得るステップ、
前記セラミックスビスキュイを冷間等方圧加圧して緻密ビスキュイを得るステップ、
前記緻密ビスキュイを順に脱脂と焼結し、冷却後に高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板を得るステップを含み、
前記焼結の温度は1800~1950℃であり、前記冷却の速度は30℃/min以下である前記技術案に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の製造方法を提供する。
【0011】
好ましくは、前記混合は、前記窒化ケイ素粉末、第1の焼結助剤、第2の焼結助剤、第3の焼結助剤及び溶媒を第1の攪拌ミルして、中間スラリーを得、
前記中間スラリーに接着剤を加えて第2の攪拌ミルを行い、混合スラリーを得ることである。
【0012】
好ましくは、前記溶媒はエタノールを含み、前記エタノールの使用量は、中間スラリーの固形分含有量が40~70%であることを満たすことを基準とし、前記接着剤は、ポリビニルブチラールを含み、前記接着剤の使用量は、前記中間スラリーの3~5wt.%である。
【0013】
好ましくは、前記プレス成形の圧力は10~15Tであり、圧力保持時間は15~20sである。
【0014】
好ましくは、前記冷間等方圧加圧の圧力は300~350MPaであり、圧力保持時間は20minである。
【0015】
好ましくは、前記脱脂の温度は400~600℃、温度保持時間は6~12hである。
【0016】
好ましくは、前記焼結の温度保持時間は12~24hである。
【0017】
本発明は、窒化ケイ素粉末86~96%、第1の焼結助剤1~5%、第2の焼結助剤2.5~8%、及び第3の焼結助剤0.5~1%の製造原料を含み、前記第1の焼結助剤は酸化マグネシウムであり、前記第2の焼結助剤は酸化ハフニウムであり、前記第3の焼結助剤は、酸化ホウ素、三酸化二鉄、酸化カルシウム及び二酸化チタンのうちの1種以上である高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板を提供する。
【0018】
本発明は酸化マグネシウムを第1の焼結助剤とし、焼結過程中に酸化マグネシウムと原料の窒化ケイ素粉体が反応して液相を生成し、焼結温度を下げ、生産コストを節約する同時に、窒化ケイ素セラミックス絶縁板の密度と曲げ強度を高めることができ、本発明は酸化ハフニウムを第2の焼結助剤とし、酸素との比較的に強力の結合能力を利用して、焼結において原料の窒化ケイ素粉体中の不純物酸素と結合し、格子酸素含有量を除去し、窒化ケイ素セラミックス絶縁板の熱伝導率を高め、本発明の第3の焼結助剤は、焼結において液相反応を促進し、窒化ケイ素粉体と反応して固溶体を形成し、粒界におけるアモルファス相を減少させ、高い熱伝導率を保証すると同時に製品の曲げ強度を高めることができる。
【0019】
また、本発明は、従来技術に対して超薄型大型セラミックス基板を製造し、生産コストを節約することもできる。従来技術で製造された大型セラミックス基板は、厚い基板から研磨加工され、多くの原料を浪費したり、レーザー切断によって薄板を切り出したりすることが多く、生産コストが高く、直接に薄い基板をプレスすることができなかった。これは、大型基板が薄すぎると焼結過程で曲げ割れが発生するためである。従来技術では曲げ割れを防止するために、セラミックス基板の曲げ強度を高める必要があったが、曲げ強度が高くなると熱伝導率が犠牲になるため、熱伝導率と曲げ強度の両方が高い超薄型大型基板の入手が困難になる。本発明は上述の処方を採用して高熱伝導率と曲げ強度を両立でき、曲げ強度の向上により、焼結において、クラックと曲げが発生しないようにし、従来技術において直接プレスによる超薄型大型基板の製造が困難な難題を解決した。本発明で製造した高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板は、サイズが190mm×138mm×0.25mmに達する。
【0020】
本発明はまた上述の方案の前記高熱伝導性熱窒化ケイ素セラミックス絶縁板の製造方法を提供し、焼結の温度と冷却の速度を制御することによって、窒化ケイ素セラミックス結晶粒の十分な成長に有利であり、結晶粒界を減少し、さらに熱伝導率を高める。
【0021】
実施例の結果、本発明で製造された高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の曲げ強度≧600MPa、熱伝導率≧100W・m-1・k-1、誘電率7~9を示した。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以下、本発明は実施例及び図面を参照して、さらに説明される。
【0023】
本発明は、窒化ケイ素粉末86~96%、第1の焼結助剤1~5%、第2の焼結助剤2.5~8%、及び第3の焼結助剤0.5~1%の製造原料を含み、
前記第1の焼結助剤は酸化マグネシウムであり、
前記第2の焼結助剤は酸化ハフニウムであり、
前記第3の焼結助剤は、酸化ホウ素、三酸化二鉄、酸化カルシウム及び二酸化チタンのうちの1種以上である高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板を提供する。
【0024】
本発明において、使用される原料は、特に説明がないかぎり、いずれも当技術分野で周知の市販品である。
【0025】
本発明により提供する高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板は、重量パーセントで、窒化ケイ素粉末86~96%、好ましくは87~95%を含む。本発明において、前記窒化ケイ素粉末のD50<1μmであることが好ましい、α相含有量は90%超であることが好ましい、比表面積は15m2/gであることが好ましい、酸素含有量<1wt.%であることが好ましい、Fe含有量<0.0005wt.%であることが好ましい、Al含有量<0.001wt.%であることが好ましい、Ca含有量<0.0001wt.%であることが好ましい。
【0026】
本発明により提供する高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板は、重量パーセントで、第1の焼結助剤が1~5%、より好ましくは2~4%を含む。本発明において、前記第1の焼結助剤は酸化マグネシウムであり、前記酸化マグネシウムのD50<1μmであることが好ましい。本発明において、前記酸化マグネシウムは焼結において、原料の窒化ケイ素粉体と反応して液相を生成し、焼結温度を下げ、生産コストを節約するとともに、窒化ケイ素セラミックス絶縁板の密度と曲げ強度を高めることができる。
【0027】
本発明により提供する高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板は、重量パーセントで、第2の焼結助剤2.5~8%、好ましくは4~6%を含む。本発明において、前記第2の焼結助剤は酸化ハフニウムであり、前記第2の焼結助剤のD50<1μmであることが好ましい。本発明は酸化ハフニウムと酸素結合能力が比較的に強い特徴を利用し、焼結において酸化ハフニウムと原料の窒化ケイ素粉体中の不純物酸素と結合し、格子酸素含有量を除去し、窒化ケイ素セラミックス絶縁板の熱伝導率を高めることができる。酸化ハフニウムの使用量が上記範囲を超えると、窒化ケイ素の焼結に不利になり、セラミック絶縁板の熱伝導率が低下する。
【0028】
本発明により提供する高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板は、重量パーセントで、第3の焼結助剤0.5~1%、好ましくは0.6~0.8%を含む。本発明において、前記第3の焼結助剤は、酸化ホウ素、三酸化二鉄、酸化カルシウム及び二酸化チタンのうちの1種又は複数種であり、より好ましくはそのうちの1種である。前記第3の焼結助剤が前記物質中の複数種である場合、本発明は各助剤の配合比に対して特に要求されず、任意の配合比でもよい。本発明の第3の焼結助剤は焼結において液相反応を促進し、窒化ケイ素粉体と反応して固溶体を形成し、粒界におけるアモルファス相を減少させ、高い熱伝導率を保証すると同時に製品の曲げ強度を高めることができる。前記第3の焼結助剤の使用量が前記範囲を超えると、焼結の進行に不利になり、セラミック絶縁板の熱伝導率が低下する。
【0029】
本発明は窒化ケイ素粉末、第1の焼結助剤、第2の焼結助剤、第3の焼結助剤、溶媒及び接着剤を混合し、混合スラリーを得るステップ、
前記混合スラリーを造粒して造粒粉体を得るステップ、
前記造粒粉体をプレスで成形してセラミックスビスキュイを得るステップ、
前記セラミックスビスキュイを冷間等方圧加圧して緻密ビスキュイを得るステップ、
前記緻密ビスキュイを順に脱脂と焼結し、冷却後に高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板を得るステップを含み、
前記焼結の温度は1800~1950℃であり、前記冷却の速度は30℃/min以下である前記技術案に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の製造方法を提供する。
【0030】
本発明は窒化ケイ素粉末、第1の焼結助剤、第2の焼結助剤、第3の焼結助剤、溶媒及び接着剤を混合し、混合スラリーを得る。
【0031】
本発明において、前記混合は、好ましくは、前記窒化ケイ素粉末、第1の焼結助剤、第2の焼結助剤、第3の焼結助剤及び溶媒を第1の攪拌研磨して中間スラリーを得、前記中間スラリーに接着剤を加えて第2の攪拌ミルを行い、混合スラリーを得ることである。
【0032】
本発明において、溶媒は、好ましくはエタノールを含む。前記エタノールの使用量は、中間スラリーの固形分含有量が40~70%であることを満たすことを基準とすることが好ましく、45~65%であることがより好ましく、50~60%であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明において、前記接着剤は、好ましいは、ポリビニルブチラールを含み、前記接着剤の使用量は、好ましいは、前記中間スラリーの3~5wt.%、より好ましくは4wt.%である。本発明は接着剤を用いて原料を凝集させ、次の造粒に有利である。
【0034】
本発明において、前記第1の攪拌研磨及び第2の攪拌研磨は、研磨媒体として窒化ケイ素球を用いることが好ましい。好ましくは1:1の研磨媒体と被研磨材料との質量比を有する。
【0035】
本発明において、前記第1の攪拌ミルの時間は24~36hであることが好ましく、第2の攪拌ミルの時間は24~48hであることが好ましい。前記第1の攪拌ミル及び第2の攪拌ミルの回転数は、独立して、好ましくは25~35回転/分、より好ましくは30回転/分である。
【0036】
混合スラリーを得た後、本発明は前記混合スラリーを造粒し、造粒粉体を得る。
【0037】
本発明において、前記造粒の方式は噴霧造粒であることが好ましい。本発明において、前記噴霧造粒の条件は、フィードポンプ圧力が0.6~0.8MPaであり、入口温度が150~180℃、出口温度が50~70℃、サイクロン圧力差が0.8~1KPaであることが好ましい。さらに好ましい態様として、前記噴霧造粒の条件は、フィードポンプ圧力が0.65~0.75MPa、入口温度が160~170℃、出口温度が55~65℃、サイクロン圧力差が0.85~0.95KPaである。
【0038】
本発明は、噴霧乾燥後、さらに100メッシュ篩にかけ、篩下物を造粒粉体として取ることが好ましい。本発明は噴霧造粒の方式を利用して流動性が良く、プレス成形に適した造粒粉体を得ることに有利である。本発明において、前記造粒粉体の性能は、見掛密度が0.8~1g/m3であり、流動時間が55.68~58.07sであることを満たす。
【0039】
本発明は、造粒粉体を得た後、前記造粒粉体をプレス成形し、セラミックスビスキュイを得る。本発明は造粒粉体を乾燥粉プレス金型に通入し、次に圧子プレス成形を採用することが好ましい。本発明において、前記プレス成形の圧力は、好ましくは10~15T、より好ましくは11~14Tであり、圧力保持時間は好ましくは15~20s、より好ましくは16~18sである。本発明は前記乾燥粉末プレス金型の寸法に対して特に制限しておらず、目標セラミック絶縁板の寸法によって決定する。本発明では、対象とするセラミック絶縁板の寸法を190mm×138mm×0.25mmとする場合、前記乾燥粉末プレス金型の寸法は272mm×198mmであり、前記乾燥粉末プレス金型の高さは0.5mm超であることが好ましい。
【0040】
本発明はプレス成形を採用し、大きいサイズのセラミックビスキュイを得ることができ、窒化ケイ素セラミック絶縁板の配合により、大きいサイズの高熱伝導窒化ケイ素セラミック絶縁板を得ることが可能になる。
【0041】
本発明はセラミックビスキュイを得た後、前記セラミックビスキュイを冷間等方圧加圧し、緻密ビスキュイを得る。
【0042】
本発明はセラミックビスキュイを真空袋に入れ、真空袋に鋼板を基板として入れ、その後真空引きして冷間等方圧加圧機のキャビティ内に入れて冷間等方圧加圧を行うことが好ましい。本発明において、前記真空引きの真空度は、-0.1MPaであることが好ましい。前記鋼板の寸法は、前記セラミックスビスキュイの寸法と同じであることが好ましい。
【0043】
本発明は鋼板を基板として採用することにより、セラミックビスキュイの冷間等方圧加圧の間に、変形と破断を防止することができる。
【0044】
本発明において、前記冷間等方圧加圧の圧力は、好ましくは300~350MPa、より好ましくは310~340MPa、圧力保持時間は20minであることが好ましい。本発明は冷間等方圧加圧の条件を上記範囲に制御し、セラミックビスキュイの緻密性を増加させることができ、後続の焼結成形に役立つ。
【0045】
緻密ビスキュイを得た後、本発明は前記緻密ビスキュイを脱脂と焼結を順に行い、冷却後に高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板を得る。
【0046】
本発明は前記緻密ビスキュイを積層して坩堝に入れ、積層した緻密ビスキュイを最表面に黒鉛板を置いた後、多機能気圧焼結炉に入れて脱脂と焼結を行うことが好ましい。
【0047】
本発明において、前記黒鉛板の重量は、緻密ビスキュイ重量の1~2倍であることが好ましく、1.2~1.8倍であることがより好ましい。本発明は黒鉛板を置くことによって、緻密なビスキュイが脱脂と焼結の過程で亀裂と変形が発生することを防止することができる。
【0048】
本発明において、前記脱脂の温度は400~600℃が好ましく、450~550℃がより好ましい、温度保持時間は6~12hが好ましく、8~10hがより好ましい。本発明の脱脂温度までの昇温速度は10℃/minを超えないことが好ましい。昇温速度が10℃/minより大きくなった後、緻密ビスキュイは割れやすくなる。
【0049】
本発明において、前記脱脂は空気雰囲気下で行うことが好ましい。本発明の前記脱脂において、緻密ビスキュイ中の有機物は排出される。
【0050】
前記脱脂が完成した後、本発明は脱脂温度から焼結温度まで直接に上昇させ、焼結を行う。
【0051】
本発明において、前記焼結の温度まで昇温する昇温速度は10℃/minを超えないことが好ましい。昇温速度が10℃/minより大きくなった場合、ブランクは割れやすくなる。
【0052】
本発明において、前記焼結の温度は1800~1950℃、好ましくは1850~1900℃、温度保持時間は6~12hが好ましく、6~10hがより好ましい。本発明は、空気雰囲気下で焼結することが好ましい。本発明は前記焼結過程の初期段階において、第1の焼結助剤と第3の焼結助剤と窒化ケイ素粉体表面のSixOyが反応するため、反応生成物の融点は低く、液相を形成し、反応の進行に伴い、液相が流動し、粒子間の空隙を充填し、さらに材料の焼結緻密化を促進し、製品の曲げ強度を向上させ、以上の過程に伴いα相の窒化ケイ素からβ相の窒化ケイ素への転移は、さらに熱伝導率を高める。
【0053】
本発明は前記焼結が完了した後、焼結後の生成物を冷却し、前記冷却の速度は30℃/min以下、好ましくは10~30℃/minである。本発明は冷却速度を上記範囲に制御し、窒化ケイ素セラミックス結晶粒の十分な成長に有利であり、結晶粒界を減少し、さらに熱伝導率を高める。
【0054】
本発明は、冷却後、得られたセラミックスブランクを後加工し、高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板を得ることをさらに含むことが好ましい。本発明は前記後加工の方式に対して特に制限がない、当技術分野でよく知られている後加工方式を採用して、高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板が厚さと表面粗さの面で希望の精度を達成することを保証できればよく、具体的には研磨であることができる。本発明において、好ましくは、前記高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の粗さ<5μmである。
【0055】
以下、本発明により提供する高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板及びその製造方法について、実施例を参照して詳細に説明するが、本発明の保護範囲を限定するものと理解することはできない。
【0056】
以下の実施例に用いる窒化ケイ素粉末のD50<1μmであり、α相含有量は90%超であり、比表面積<15m2/g、酸素含有量<1wt.%、Fe<0.0005wt.%、Al<0.001wt.%、Ca<0.0001wt.%であり;使用する酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ホウ素、三酸化二鉄、酸化カルシウム、二酸化チタンのD50は、いずれも<1μmである。
実施例1~16及び比較例1~5
【0057】
表1に示す原料配合比率と種類に従って、窒化ケイ素粉末と焼結助剤を攪拌ミルに添加し、アルコールを溶媒媒体とし、窒化ケイ素球を研磨媒体(研磨媒体と被研磨材料との質量比1:1)とし、30h研磨し、中間スラリー(固相含有量60%)、更に前記中間スラリーに4wt.%ポリビニルブチラール(PVB)を添加し、48h研磨し、混合スラリーを得た。前記混合スラリーを噴霧造粒プロセス(フィードポンプ圧力0.7MPa、入口温度170℃、出口温度60℃、サイクロン圧力差0.9KPa)により、100メッシュ篩にかけて、プレス成形に適した造粒粉体(見掛密度0.8~1g/m3、流動時間55.68~58.07s)を調製した。前記造粒粉体を乾燥粉プレス金型に通粒し、プレス成形を行い、乾燥粉プレス金型の寸法は272mm×198mm×0.8mmであり、プレス圧力10T、圧力保持時間20sで、セラミックビスキュイを得た。前記セラミックビスキュイと鋼板を真空袋に入れて真空引きした後、冷間等方圧加圧を行い、等静圧圧力は300MPaで、圧力保持時間は20minで、緻密ビスキュイを得た。前記緻密ビスキュイを坩堝の上に積層し、最表面に黒鉛板を置いた後、多機能気圧焼結炉に入れ、まず10℃/minで600℃に昇温し12h温度保持して脱脂を行い、その後引き続き焼結温度まで昇温し、24h温度保持し、焼結完了後に冷却し、冷却速度を30℃/min以下に制御し、セラミックスビスキュイを得た。セラミックブランクを研磨プロセスにより加工し、最終的に190mm×138mm×0.25mmの寸法、粗さ<5μmの高熱伝導窒化ケイ素セラミックス絶縁板を得た。具体的な焼結温度と冷却速度及び性能指標を表1に示す。
【0058】
【0059】
表1の結果から、本発明により製造された高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の曲げ強度≧600MPa、熱伝導率≧100W・m-1・k-1であることが分かった。比較例1は本発明の実施例に比べて、冷却速度が大きすぎるため、製品の熱伝導率が高くない、比較例2焼結温度が低すぎるため、製品の熱伝導率が低い、比較例3は第2の焼結助剤の酸化ハフニウム含有量が高すぎて、製品の焼結に不利で、製品の熱伝導率が低い、比較例4は、第3の焼結助剤の酸化カルシウム含有量が高すぎ、冷却速度が大きく、製品の3点曲げ強度が高いが、熱伝導率が低すぎ、比較例5第3の焼結助剤の酸化カルシウム含有量が高すぎるため、製品の熱伝導率が低い。
【0060】
以上の実施例の説明は、本発明の方法及びその核心的思想の理解を支援するためのものにすぎない。当業者にとって、本発明の原理を逸脱することなく、本発明をいくつかの改良及び修飾することもでき、これらの改良及び修飾も本発明の請求項の保護範囲内に入ることを指摘すべきである。これらの実施形態の様々な変更は、本明細書で定義される一般的な原理が、本発明の精神または範囲を逸脱することなく他の実施形態において実施され得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、本発明は、本明細書に示されるこれらの実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示される原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲に適合するものである。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
好ましくは、前記第1の焼結助剤、第2の焼結助剤及び第3の焼結助剤のD50は、独立して1μm未満である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ケイ素粉末86~96%、第1の焼結助剤1~5%、第2の焼結助剤2.5~8%、及び第3の焼結助剤0.5~1%の製造原料を含み、
前記第1の焼結助剤は酸化マグネシウムであり、
前記第2の焼結助剤は酸化ハフニウムであり、
前記第3の焼結助剤は、酸化ホウ素、三酸化二鉄、酸化カルシウム及び二酸化チタンのうちの1種以上であることを特徴とする高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項2】
前記窒化ケイ素粉末のD50<1μm、α相含有量は90%超であり、比表面積<15m
2/g、酸素含有量<1wt.%、Fe<0.0005wt.%、Al<0.001wt.%、Ca<0.0001wt.%であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項3】
前記第1の焼結助剤、第2の焼結助剤及び第3の焼結助剤のD50は、独立して1μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の製造方法であって、
窒化ケイ素粉末、第1の焼結助剤、第2の焼結助剤、第3の焼結助剤、溶媒及び接着剤を混合し、混合スラリーを得るステップ、
前記混合スラリーを造粒して、造粒粉体を得るステップ、
前記造粒粉体をプレスで成形してセラミックスビスキュイを得るステップ、
前記セラミックスビスキュイを冷間等方圧加圧して緻密ビスキュイを得るステップ、
前記緻密ビスキュイを順に脱脂と焼結し、冷却後に高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板を得るステップを含み、
前記焼結の温度は1800~1950℃であり、前記冷却の速度は30℃/min以下である高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス絶縁板の製造方法。
【請求項5】
前記混合は、前記窒化ケイ素粉末、第1の焼結助剤、第2の焼結助剤、第3の焼結助剤及び溶媒を第1の攪拌ミルして、中間スラリーを得、
前記中間スラリーに接着剤を加えて第2の攪拌ミルを行い、混合スラリーを得ることであることを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記溶媒はエタノールを含み、前記エタノールの使用量は、中間スラリーの固形分含有量が40~70%であることを満たすことを基準とし、前記接着剤は、ポリビニルブチラールを含み、前記接着剤の使用量は、前記中間スラリーの3~5wt.%であることを特徴とする請求項
5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記プレス成形の圧力は10~15Tであり、圧力保持時間は15~20sであることを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記冷間等方圧加圧の圧力は300~350MPaであり、圧力保持時間は20minであることを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項9】
前記脱脂の温度は400~600℃、温度保持時間は6~12hであることを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項10】
前記焼結の温度保持時間は12~24hであることを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【国際調査報告】