(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】検査対象物のシーリングの検査方法及び漏洩検知装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
G01M3/20 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538691
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2021086064
(87)【国際公開番号】W WO2022136081
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローラン デュシメティエール
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067BB06
2G067BB12
2G067BB26
2G067CC13
2G067DD17
2G067EE08
2G067EE11
(57)【要約】
【課題】漏洩検出装置のプローブを使用して、トレーサガスによって検査される対象物のシーリングを検査する方法において、漏洩検出装置の表示画面が、漏洩検出装置のプローブの検査ゾーンから離れて配置されるため、オペレータは、表示画面とプローブとの間で頻繁に頭を回転させる必要がある。
【解決手段】
プローブを使用して前記対象物(11)の外表面を走査し、前記漏洩検出装置(1)の処理モジュール(7)に、測定されたトレーサガス漏洩率を表す幾つかの値を連続的に記録する走査ステップであって、前記測定されたトレーサガス漏洩率を表す各値は、前記プローブ(3)の位置を表す値に関連付けられているステップと、前記対象物(11)の前記外表面の走査中に記録された関連する値を表示画面(9)上にグラフィック表示する表示ステップを含む対象物のシーリングの検査方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査の対象物(11)に噴霧することを目的としたトレーサガス噴霧ブロワーを形成するプローブ(3)を使用して、漏洩検出装置(1)に接続された前記対象物(11)のシーリングをトレーサガスによって検査する方法であって、
前記プローブ(3)を使用して前記対象物(11)の外表面を走査し、前記漏洩検出装置(1)の処理モジュール(7)に、測定されたトレーサガス漏洩率を表す幾つかの値を連続的に記録する走査ステップであって、前記測定されたトレーサガス漏洩率を表す各値は、前記プローブ(3)の位置を表す値に関連付けられているステップと、
前記対象物(11)の前記外表面の走査中に記録された関連する値を表示画面(9)上にグラフィック表示する表示ステップを含む、対象物のシーリングの検査方法。
【請求項2】
漏洩検出装置(1)に接続されたスニッファープローブを構成するプローブ(3)を使用して、トレーサガスが充填された検査の対象物(11)のシーリングをトレーサガスによって検査する方法であって、
前記プローブ(3)を使用して前記対象物(11)の外表面を走査し、前記漏洩検出装置(1)の処理モジュール(7)に、前記測定されたトレーサガス漏洩率を表す幾つかの値を連続的に記録する走査ステップであって、前記測定されたトレーサガス漏洩率を表す各値は、前記プローブ(3)の位置を表す値に関連付けられているステップと、
前記対象物(11)の前記外表面の走査中に記録された関連する値を表示画面(9)上にグラフィック表示する表示ステップを含む、対象物のシーリングの検査方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記走査ステップにおいて、前記漏洩検出装置(1)による前記トレーサガス漏洩率を表す値の測定を実行するのに適した所定の時間の間、前記プローブ(3)が静止するたびに、前記プローブ(3)の位置を表す値に関連付けられた前記測定されたトレーサガス漏洩率を表す値が記録される、対象物のシーリングの検査方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記走査ステップ中に、前記プローブ(3)の位置を表す値が、前記プローブ(3)に取り付けられた位置特定システム(13)によって取得される、対象物のシーリングの検査方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記表示ステップ中に、前記対象物(11)の前記外表面が、前記プローブ(3)の位置を表す各値の座標に従って二次元で表示され、
前記対象物(11)の表示された前記外表面は、前記漏洩検出装置(1)によって測定された前記トレーサガス漏洩率を表す値の識別情報を含む、対象物のシーリングの検査方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記表示ステップ中に、前記対象物(11)の前記外表面が、前記プローブ(3)の位置を表す各値の座標に従って3次元で表示され、
表示された前記対象物(11)の前記外表面は、前記漏洩検出装置(1)によって測定された前記トレーサガス漏洩率を表す値の識別情報を含む、対象物のシーリングの検査方法。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記表示ステップ中、前記漏洩検出装置(1)によって測定された前記トレーサガス漏洩率を表す前記識別情報は、前記漏洩検出装置(1)によって測定された前記トレーサガス漏洩速度を表す値の大きさの関数として、表示された前記対象物(11)の前記外表面の局所的な変形によって実行される、対象物のシーリングの検査方法。
【請求項8】
請求項5または6において、
前記表示ステップ中、前記漏洩検出装置(1)によって測定された前記トレーサガス漏洩率を表す値の前記識別情報が、前記漏洩検出装置(1)によって測定された前記トレーサガス漏洩速度を表す値の大きさの関数として、表示された前記対象物(11)の前記外表面の色付けによって実行される、対象物のシーリングの検査方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項において、
前記シーリングのずれを識別するために、前記グラフィック表示が、以前に取得された同じ前記対象物(11)または以前に取得された同じタイプの前記対象物(11)と比較される、対象物のシーリングの検査方法。
【請求項10】
プローブ(3)、検出モジュール(5)、処理モジュール(7)及び表示画面(9)を備えた漏洩検出装置(1)であって、
前記漏洩検出装置(1)が、前記プローブ(3)の位置がリアルタイムで前記処理モジュール(7)に送信されることを可能にする位置特定システム(13)であり、
前記処理モジュール(7)が請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、位置特定システム(13)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーサガスにより検査の対象物のシーリングを検査する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物のシーリング(気密性)を検査するために、いわゆるトレーサガス「スニッファー」(吸込み法)検査、及びいわゆるトレーサガス「吹付け」検査が知られている。これらの検査方法では、検査の対象物の漏洩の可能性によるトレーサガスの通過を検出し、メンテナンスが必要かどうかを検査する。
スニッファーモードでは、スニッファープローブに接続された漏洩検知器を使用して、通常は加圧されたトレーサガスが充填された、検査の対象物の周囲にトレーサガスが存在する可能性を検索する。吹付けモードでは、スプレーガンまたはブロワーを使用して検査の対象物にトレーサガスを吹付ける。検査の対象物の内部容積は、漏洩検出器に接続されている。
【0003】
漏洩の検索は一般に、スニッファープローブまたはスプレーガンを検査の対象物の個別の点、特に密封、溶接、カップリングなどのシーリングの弱点が見られる可能性のある点に移動させることによって実行される。トレーサガス濃度の測定値が増加すると、プローブまたはスプレーガンの先端が配置されている箇所における漏洩の存在が明らかになる。従って、オペレータは、プローブまたはスプレーガンと、漏洩検出装置の表示画面の両方を監視する必要がある。このステップは簡単ではない。なぜなら、前記表示画面(一般的にスクリーン、例えば液晶ディスプレイ)が通常は検査ゾーンから離れて配置されているため、オペレータは、漏洩検出装置の表示画面と漏洩検出装置のプローブとの間で頻繁に頭を回転させる必要がある。
【0004】
トレーサガス検査方法は反応性が高いため、これが検出の品質に悪影響を与える可能性がある。実際、オペレータが画面から目をそらしている間に漏洩の検出を見逃してしまう危険性がある。さらに、特に生産中に、オペレータが頭を繰り返し回転させることは、このオペレータにとってシーリングの検査が不快になる可能性がある。さらに、プローブが検査ゾーンから比較的離れている場合、シーリングの検査はさらに困難になる可能性がある。
【0005】
もう1つの問題は、検査が製造プロセスの最後に連続して実行されるため、オペレータにとって、一方ではすでに検査された対象物のゾーンを覚えておき、他方では漏洩があると特定されたゾーンを覚えておくことが、困難なことである。実際、部品上には、検出された漏洩を記録できる目に見えるマーカーはなく、実際に検査されたゾーンのマーカーもない。これは品質検査のパフォーマンスに悪影響を与える可能性がある。
【0006】
さらに、例えば、顧客が検査する必要があるすべてのゾーンでその部品が実際に検査されたことを後から証明することは困難な場合がある。また、これにより、ユーザは、検査対象の複数の部品間で再発する問題を検出できなくなり、特に、製造時に、部品の新たな弱点を特定することができなくなる。もう1つの問題は、後で処理できるほど正確に漏れやすいゾーンの配置を記述することであり、特に検査の対象物の寸法が非常に大きい場合に、その必要性が大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特に、あらゆる種類の検査の対象物、特にあらゆるサイズまたは形状の漏洩の位置の特定、及び定量化を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、漏洩検出装置のプローブを使用して、トレーサガスによって検査の対象物のシーリングを検査する方法であって、
漏洩検出装置の処理モジュールに、この漏洩検出装置によって測定されたトレーサガスの漏洩率を表す幾つかの値を連続的に記録するために、プローブを使用して対象物の外表面を走査するステップであって、測定されたトレーサガスの漏洩率を表す各値は、プローブの位置を表す値に関連付けられているステップと、
対象物の外表面の走査中に記録された関連する値を、表示画面上にグラフィック表示するステップを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の方法では、通常の検査方法による離散点でのシーリング測定検査とは対照的に、プローブ走査、すなわち、必ずしも所定の経路を必要とせずに検査の対象物の周囲でプローブを移動させることにより、グラフィック表示を取得できるという利点があり、検査の終了時または検査の進行に応じて、トレーサガスの漏洩率の測定値、特に、検出されたトレーサガス濃度または分圧を代表するものと、検査の対象物に対するプローブの空間位置とを相関させることができる。つまり、検査の対象物に対するプローブの空間位置と共に、検出されたトレーサガスの濃度または分圧を表示する。
【0010】
従って、ユーザは完全な概要を把握できる。ユーザは、プローブの先端を正確にガイドして、検査の対象物の形状等の複雑さに応じて対象物の外表面の全体または一部を走査することに集中できる。本発明によれば、ユーザの走査は、自動的に位置が特定され、得られた測定値と連続的に関連付けられるため、記録された2種類の値をマップ(「データマッピング」という用語でよく知られている)形式で関連付けたグラフィック表示が可能になるという利点がある。
【0011】
特に、ユーザが、走査開始ゾーンに応じて、検査すべきゾーンを、場合によってはより詳細にグラフィカルに決定できることが理解されるべきである。さらに、ユーザは、走査したゾーンの一部が忘れられているかどうかをすぐに識別できる。そのため、既に実行された値に対して互いに離れていない追加の値を追加したり、以前の走査で忘れられたゾーンの走査を完了したりすることができる。
【0012】
本発明はまた、以下の任意の特徴の1つ以上を単独でまたは組み合わせて備えることもできる。
【0013】
プローブは、漏洩検出装置(トレーサガスで満たされている対象物)に接続されたトレーサガススニッファープローブでもよく、またはトレーサガス噴霧ブロワー(漏洩検出装置に接続された対象物)でもよい。
【0014】
走査ステップは、プローブに取り付けられた作動要素によってアクティブ化及び/または非アクティブ化することができる。非限定的な例として、作動要素は、機械式または容量性タイプのスイッチ、遮断器、またはボタンでもよい。これにより、特に、プローブの先端が走査ステップを開始するための所望の位置にあるときに、ユーザが各検査を開始できるようになる。
【0015】
走査ステップ中、プローブの位置を表す値に関連付けられ測定されたトレーサガス漏洩率を表す値は、プローブが、漏洩検出装置によるトレーサガス漏洩率を表す値の測定を実行するのに適した所定時間だけ静止するたびに、優先的に記録される。通常、所定の時間は漏洩検出装置の関数であり、通常は1秒から10秒の間、すなわち、例えば、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒である。
【0016】
言うまでもなく、代替的または追加的に、プローブの位置を表す値に関連付けられた、測定されたトレーサガスの漏洩率を表す少なくとも1つの値は、例えばプローブ上に存在し、要求に応じて、記録することもできる。特に、プローブの位置を表す多数の値を必要とする多くのレリーフを含む特定のゾーンでの走査ステップ中に、関連する値の記録の頻度を選択的に増加させるために、ユーザが操作できる手動制御要素によって記録することもできる。さらに、漏洩検出装置の反応性が低い、つまり、測定の実行時間が6秒を超えると仮定すると、漏洩検出装置の応答及び/または測定時間に関する遅延を考慮して、プローブの位置の関数としての漏れ速度の相関関係の補正をイメージすることも可能である。
【0017】
走査ステップ中、プローブの位置を表す値は、例えば、地理位置情報装置、及び/または慣性測定装置、及び/または動き検出装置を備えることができるプローブに取り付けられた、位置特定システムによって取得することができる。地理位置情報装置は、例えばGPSや全球測位衛星システム「ガリレオ」を使用する地上タイプのもの、または、例えばユーザによって一時的にインストールされた専用ネットワークでもよく、または、ネットワーク内のプローブの位置の変化を追跡するための、ワイヤレス ローカル エリア ネットワーク(たとえば、WIFIネットワークやGSMネットワーク)などの検査に使用される対象物の周囲に存在するネットワークでもよい。慣性測定装置は、走査ステップの開始の基準点に対するプローブの動きを決定することを可能にする、少なくとも1つの加速度計及び/または慣性ユニット及び/またはジャイロメータを備えることができる。最後に、動き検出装置は、走査ステップの開始時に基準点に対するプローブの動きを決定することを可能にする、例えばビデオタイプまたは超音波タイプの検出器を備えることができる。言うまでもなく、本発明の範囲から逸脱することなく、プローブの位置の変化を別の方法で得ることができる。一例として、携帯電話端末は、上記の装置の幾つかが組み合わされている。
【0018】
表示ステップ中、検査の対象物の外表面は、プローブの位置を表す各値の座標の関数として二次元で表示することができる。つまり、対象物の外表面は実質的に平坦に表示される。この実質的に平坦な表面は、漏洩検出装置によって測定されたトレーサガス漏洩率を表す値の識別情報と共に表示される。この表示により、外表面を正確かつシンプルに表現でき、迅速な診断分析が可能になる。
【0019】
別の変形例によれば、対象物の外表面は三次元で表示することができる。つまり、対象物の外表面は実質的に体積として表示される。この3次元表面は、漏洩検出装置によって測定されたトレーサガス漏洩率を表す値の識別情報と共に表示される。この表示により、外表面の幾何学的形状をより忠実に表示でき、より迅速な診断分析が可能になる。
【0020】
対象物の外表面の多様な表示が何であれ、表示ステップ中に、漏洩検出装置によって測定されたトレーサガス漏れ速度を表す値の大きさの関数として、漏洩検出装置によって測定されたトレーサガス漏れ量を表す識別情報は、数値の挿入、表示された対象物の外表面の局所的な変形、または局所的な色付けによって行うことができる。従って、この識別情報により、対象物の外表面の欠陥を即座に特定し、定量化できるようになる。
【0021】
グラフィック表現は、シーリングのずれを識別するために、同じ対象物または同じタイプの対象物について、以前に得られたものと比較することができる利点がある。従って、取得されたグラフィック表現は、同じ対象物について以前に取得されたグラフィック表現と比較できる。これにより、他よりも早く劣化している箇所を簡単かつ迅速に診断し、是正な措置を講じることが可能となる。
別の応用例によれば、得られたグラフィック表現は、以前に得られた同じ種類の対象物、通常は1つの製造ライン上の対象物のグラフィック表現と比較することができる。これにより、製造ラインの是正措置を講じるために、製造上のエラーを簡単かつ迅速に診断することが可能になる。
さらに別の応用例によれば、製造ラインの生産品質の維持を追跡するために、取得されたグラフィック表現を、特定の規格に準拠していることが証明され、検査された対象物も特定の規格に準拠していると認定された、同じ種類の対象物のグラフィック表現と比較できる。
【0022】
本発明はまた、プローブ、検出モジュール、処理モジュール及び表示画面を備える漏洩検出装置であって、この検出装置が、時間と、処理モジュールが上記の方法を実行するように構成されているという点で、プローブの位置を実際に処理モジュールに送信できる位置特定システムを備えているものでも良い。従って、通常、処理モジュールは、漏洩検出装置の検出モジュールによって測定されたトレーサガス漏洩率を表す幾つかの値を連続的に記録することを可能にし、測定されたトレーサガス漏洩率を表す各値は、位置特定システムによって測定されたプローブの位置を表す値に関連付けられる。処理モジュールはさらに、検査の対象物のシーリングの検査結果に関する情報を表示画面上に表示することができる。
【0023】
本発明の他の特定の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、例示的かつ非限定的な方法で行われる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例になる、スニッファー漏洩検出装置の概略図である。
【
図2】前記漏洩検出装置のプローブに焦点を当てた、
図1の部分拡大図である。
【
図3】本発明の方法に従って取得され、二次元で表示された情報の一例である。
【
図4】本発明の方法に従って取得され、三次元で表示された情報の例である。
【
図5】本発明の方法を使用して検査される対象物を示す図である。
【
図6】本発明の方法に従って取得された、
図5の対象物の三次元で表示された情報の例である。
【
図7】本発明の他の実施例になる、噴霧漏洩検出装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の各図において、同一または類似の要素には同じ参照番号が付けられており、場合によってはインデックスが付けられている。従って、それらの構造と機能の説明は体系的に繰り返さない。
【0026】
以下の説明において、向きは図の向きである。特に、「頂」、「底」、「左」、「右」、「上のほうに」、「下のほうに」、「前に向かって」、「後ろに向かって」という用語は、一般に、図の表現の方向に関して理解される。
【0027】
「検査の対象物11」とは、シーリングを検査したい、あらゆる対象物または設備を意味する。
【0028】
「漏洩検出装置1」とは、検査の対象物11のシーリング欠陥を特定するために、水素またはヘリウムなどの所定のトレーサガスの漏洩率、濃度または分圧を測定できる、あらゆる種類の装置を意味する。これらのタイプの装置は通常、プローブ3、ポンピング モジュール(例えば、一次真空ポンプ、二次真空ポンプなどを具備)、トレーサガス検出モジュール5(例えば、質量分析計などを具備)、処理モジュール7、及び、優先的に、表示画面9を備えている。通常、漏洩検出装置1のすべての部材(プローブ3を除く)は、プローブ3に結合された検出ユニット4に組み合わされている。
【0029】
「プローブ3」は、検査の対象物を局所的に検査するために漏洩検出装置1によって使用されるあらゆるタイプの装置を意味する。従って、プローブ3は、ユーザ6によって検査の対象物11に近づけられる。従って、本発明の実施例によれば、プローブ3は、トレーサガススニッファープローブまたは噴霧ブロワーである。
【0030】
図1に示される例では、プローブ3はスニッファープローブであり、ユーザ6による操作を可能にするグリップ要素を有している。スニッファープローブ3は、可撓性パイプ2によって検出ユニット4に接続されており、トレーサガスが充填された検査の対象物11の周囲のガスを吸引することができる。ポンピングモジュール(図示せず)によって吸い込まれたガスの一部は、ガス検出モジュール5によって分析され、トレーサガス漏洩率の情報を処理モジュール7へ供給する。通常、漏洩率は、例えば、mbar・l・S
-1、または、Pa・m
3・S
-1で測定できる。
【0031】
図7に示す例では、プローブ3は、漏洩検出装置1の吹付けブロワーまたはスプレーガンであり、ユーザによる操作を可能にするグリップ要素を有している。プローブ3は、パイプ2aによってトレーサガス源に接続されており、制御装置16の作動によってトレーサガスが放出されることを可能にする。漏れ検出システム1の検出ユニット4は、ライン2bによって検査の対象物11に接続されている。これにより、検査の対象物11の内部に真空を生成し、プローブ3により吹き付けられ、検査の対象物11の漏洩部から侵入するトレーサガスを吸い込む。ポンピングモジュールによって吸い込まれたガスに逆流する分子の一部(通常はトレーサガス)は、ガス検出モジュール5によって分析され、トレーサガス漏洩率の情報が処理モジュール7に供給される。通常、漏洩率は、例えば、mbar・l・S
-1、または、Pa・m
3・S
-1で測定できる。
【0032】
通常、トレーサガスの最大閾値は処理モジュール7によって監視され、これを超過した場合、これは漏洩の存在、すなわち検査の対象物11のシーリング欠陥とみなされる。ヘリウムまたは水素は、分子のサイズが小さく、移動速度が速いため、他のガスよりも小さな漏洩箇所を容易に通過するため、一般にトレーサガスとして使用される。処理モジュール7はさらに、漏洩検出装置1による検査の対象物11のシーリングの検査結果に関する情報15を、漏洩検出装置1に優先的に属する表示画面9上に表示するように構成されている。
【0033】
漏洩の有無の探索は、一般に、スニッファープローブ3または吹付けプローブ3を検査の対象物11上の離散点、特に密封、溶接部、及び結合部などのシーリングの弱点を示す可能性のある点に移動させることによって実行される。従って、オペレータ6は、通常、プローブ3と漏洩検出装置1の表示画面9の両方を監視しなければならないが、検査の対象物11のサイズによっては、監視するのが容易ではない。
【0034】
本発明の目的は、特にあらゆる種類の検査の対象物11、特にあらゆるサイズまたは形状の対象物の漏洩の位置特定及び定量化を容易にすることである。
【0035】
この目的のために、本発明は、漏洩検出装置1のプローブ3を使用して、トレーサガスによって検査される対象物11のシーリングを検査する方法に関する。この方法は、プローブ3を使用して対象物11の外表面を走査することを意図したステップを含む。本発明による方法は、離散点におけるプローブ3の走査が、通常のシーリング測定検査とは対照的であり、必ずしも事前に定義された経路ではなく、検査の対象物の周りをプローブ3が自在に変位しうる利点がある。
【0036】
従って、走査ステップにより、検出装置1の検出モジュール5によって測定されたトレーサガス漏洩率を表す幾つかの値を、漏洩検出装置1の処理モジュール7に連続的に記録することが可能になる。本発明によれば、測定されたトレーサガス漏洩率を表す各値は、プローブ3の位置を表す値に関連付けられる利点がある。
【0037】
従って、プローブ3は、その位置を有線送信(可撓性パイプ2に結合)または非有線(無線送信)によって処理モジュール7にリアルタイムで送信できる位置特定システム13を備えている。従って、プローブ3の位置を表す値を決定するために、位置特定システム13は、地理位置情報装置及び/または慣性測定装置及び/または動き検出装置を備えている。
【0038】
地理位置情報装置は、例えば、GPSまたは全球測位衛星システム「ガリレオ」14を使用するような地上型のものであってもよいし、次のようなローカル型のものであってもよい。例えば、ユーザ6によって一時的に設置された専用ネットワーク14、またはネットワーク14内でのプローブ3の位置の変化を追跡するための無線ローカルエリアネットワーク(例えば、WIFIネットワークまたはGSMネットワーク)などの検査に使用される対象物11の周囲の既存のネットワーク14等である。
【0039】
慣性測定装置は、少なくとも1つの加速度計及び/または慣性ユニット及び/またはジャイロメータを備えることができ、走査ステップの開始の基準点に対するプローブ3の動きを決定することができる。最後に、動き検出装置は、走査ステップの開始の基準点に対するプローブ3の動きを決定することを可能にする、例えばビデオタイプまたは超音波タイプの検出器を備えることができる。言うまでもなく、位置特定システム13によるプローブ3の位置の移動は、本発明の範囲から逸脱することなく、別の方法で取得することができる。一例として、携帯電話端末は、上記の装置の幾つかと組み合わされる。
【0040】
従って、本発明によれば、位置特定システム13によって、走査は自動的に位置が特定され、処理モジュール7により、検出モジュール5によって得られた測定値と連続的に関連付けられ、マッピング(「データ マッピング」とも呼ばれる)の方法で記録された2つのタイプの値を相関させるグラフィック表示が可能になる利点がある。
【0041】
走査ステップは、プローブ3に取り付けられた作動要素8によって作動開始及び/または停止することができる。非限定的な例として、作動要素8は、機械式または容量性タイプのスイッチ、遮断器、またはボタンでもよい。これにより、特に、プローブ3の先端が走査ステップの開始のために望ましい位置にあるときに、ユーザ6が各検査を開始できるようになる。
【0042】
走査ステップ中、検出装置1による測定されプローブの位置を表す値に関連付けられたトレーサガス漏洩率を表す値は、プローブ3がトレーサガス漏洩率を表す値の測定を実行するのに適した所定の時間だけ静止するたびに、優先的に記録される。通常、この所定時間は、漏洩検出装置1の関数であり、一般に1秒と10秒の間である。例えば1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒とすることができる。
【0043】
言うまでもなく、プローブの位置を表す値に関連付けられた、測定されたトレーサガス漏洩率を表す少なくとも1つの値は、例えばプローブ3上に存在する手動制御要素10により、要求に応じて記録することもできる。例えば、プローブ3の位置を表す大幅に多くの値を必要とする、多数のレリーフを含む特定のゾーンにおける走査ステップ中には、関連する値の記録の頻度を特に選択的に増加させるために、ユーザ6によって作動させることができる。
さらに、検出装置1の反応性が低い、つまり、例えば測定を実行するのに6秒以上の時間がかかると仮定すると、検出装置1の応答及び/または測定時間に関連する遅延を考慮することにより、プローブ3の位置の関数としての漏洩速度の相関関係の補正を想像することも可能である。
【0044】
この方法は、走査ステップと同時に及び/またはその後に、検査の対象物11の外表面の走査中に記録された関連値を、漏れ検出装置1の表示画面9および/または外部表示画面9(図示せず)上にグラフィック表示することを意図したステップを含んでいる。
【0045】
本発明によれば、離散点での通常のシーリング測定検査とは対照的に、プローブ3の走査により、検査の終了時及び/または検査の進行中に、トレーサガス漏洩速度の測定値と、検査の対象物11に対するプローブ3の空間的位置とを相関させるグラフ表示が得られるという利点がある。
【0046】
従って、ユーザ6は完全な概要を得ることができる。従って、ユーザは、プローブの先端を正確にガイドすることによって、その複雑さに応じて検査の対象物11の外表面の全部または一部の走査に集中することができる。
【0047】
特に、ユーザ6は、走査開始ゾーンに応じて、おそらくより詳細に検査すべきゾーンをグラフィカルに決定できることが理解される。さらに、ユーザ6は、走査されたゾーンの一部が忘れられているかどうかを即座に識別することができる。ユーザは、その後、すでに走査が実行された値に対して互いにあまり離れていない追加の値を追加したり、前の走査中に忘れられていたゾーンの走査を完了したりできる。
【0048】
図3に示す例によれば、表示ステップ中に、対象物11の外表面を、プローブ3の位置を表す各値の座標の関数として二次元の情報15として表示することができる。これは、対象物11の外表面が実質的に平坦に表示されることを意味する。この実質的に平坦な表面は、検出装置1の検出モジュール5によって測定されたトレーサガス漏洩率を表す値の識別情報と共に表示される。この表示により、対象物の外表面を忠実かつシンプルに表現できるため、迅速な診断分析が可能になる。
【0049】
図4に示す別の変形例によれば、対象物11の外表面は3次元の情報15として表示することができる。つまり、対象物11の外表面は実質的に体積として表示される。この三次元表面は、検出装置1の検出モジュール5によって測定されたトレーサガス漏洩率を表す値の識別情報と共に表示される。この表示により、対象物の外表面の幾何学的形状をより忠実に表現できるため、より迅速な診断分析が可能になる。
【0050】
対象物11の外表面の表示がどのようなものであっても、検出装置1の検出モジュール5によって測定されたトレーサガス漏洩率を表す値の識別情報は、検出装置1の検出モジュール5によって測定されたトレーサガス漏れ速度を表す値の大きさの関数として、数値の挿入(例えば:リーク率、濃度、またはトレーサガスの分圧の数値)、局所的な変形(例えば:円錐またはピラミッドの形)、対象物11の表示された外表面の局所的な色付け(例えば、明るさが異なる単一の色に従って色付けされたゾーン、または異なる色に従って色付けされたゾーン)によってなされる。従って、この識別情報により、検査の対象物11の外表面の欠陥を即座に特定し、定量化することができるようになる。
図3及び
図4の例では、この識別情報は、表示画面9上に表示される外表面の局所的な色付けによって提供される。
【0051】
最後に、本発明による方法は、シーリングのずれを識別するために、グラフィック表現を、処理モジュール7によって以前に取得された同じ対象物または同じタイプの対象物のグラフィック表現と比較できるステップを提供することもできる利点がある。
【0052】
従って、得られた情報15は、同じ対象物について以前に取得された情報と比較することができる。これにより、他よりも早く劣化している箇所を簡単かつ迅速に診断し、是正措置を講じることが可能となる。
【0053】
本発明の別の応用例によれば、得られた情報15は、同じ種類の対象物、通常は1つの製造ラインに関して以前に得られた情報と比較することができる。これにより、製造ライン上で是正措置を講じるために、同種の対象物11の製造の偏差を簡単かつ迅速に診断することが可能となる。
【0054】
さらに本発明の別の応用例によれば、製造ラインの生産品質の維持を追跡するために、得られた情報15を、特定の規格に準拠していることが証明された同じタイプの対象物の情報と比較することにより、検査された対象物は、特定の規格に準拠していると認定することもできる。
【0055】
本発明は、提示された実施形態及び変形例に限定されず、他の実施形態及び変形例が可能なことは当業者には明らかであろう。従って、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態及び変形例を互いに組み合わせることができる。さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、本説明で提供されるもの以外のタイプの応用例を想定することが可能である。非限定的な例として、本発明の範囲から逸脱することなく、表示画面9を漏れ検出装置1に含めることはできない。この表示画面9は、例えば、検出装置1をコンピュータまたはスマートフォンなどの別の装置に接続することによって、外部化された表示を可能にする。
【0056】
さらに、情報15が、以上で説明した方法のステップ中に得られた関連値で補完される、事前に記録された形式を有することを想定することが可能である。より具体的には、検査対象の対象物11またはこの対象物11の種類が事前に識別されている場合、外側エンベロープは処理モジュール7によって満たされており、その後、この外側エンベロープは、走査ステップにおいて、検査中に表示される外面情報15で満たされる。すなわち、外側エンベロープは、グラフィック表示ステップ中に表示された外表面情報15で満たされ、検査された対象物11のシーリングの即時グラフィック表示を可能にする。
この情報15のそのような表示の例が
図6に示されている。
図5に示されている対象物11は真空タンクである。この対象物11の識別から、外側のエンベロープは処理モジュール7によって埋められている。次に、ユーザ6は、本発明による方法の走査ステップを実行し、この走査ステップが進行するにつれて、及び/またはこの走査ステップの終了時に、前記外側エンベロープが、グラフィック表示ステップ中に表示される外表面情報15で満たされるようにする。
図6に示すように、本発明によれば、グラフィック表示により、検査の対象物11のシーリングを簡単かつ迅速に判定することができるという利点がある。
【0057】
さらに本発明の別の可能性によれば、検査される対象物11または対象物11のタイプが事前に識別されている場合、以前に取得された関連値、または取得されるべき関連値を含む外側包絡線を処理モジュール7によって表示することができる。次に、走査ステップを使用して、外側エンベロープは、グラフィック表示ステップ中に表示された外表面の情報15と、以前に取得された関連値を有する情報15、または、この方法による2つの検査の結果間のずれを即座にグラフィック表示することができる。
【0058】
最後に、位置特定システム13がプローブ3内に取り付けられるのではなく、プローブ3の外部に取り付けられることを想定することが可能である。この位置特定システム13は、例えば、ビデオタイプまたは超音波タイプなどの、検査の対象物11の近くに取り付けられた少なくとも1つの検出器を備え、走査ステップの開始の基準点に対するプローブ3の動きを決定することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 漏洩検出装置
2 可撓性パイプ
3 スニッファープローブ
4 検出ユニット
5 ガス検出モジュール
6 ユーザ
7 処理モジュール
8 作動要素
9 表示画面
10 手動制御要素
11 検査の対象物
13 位置特定システム
14 ネットワーク
15 情報
16 制御装置
【国際調査報告】