(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】新規なリゾプス・オリゴスポラス菌株及びそれを含む抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/14 20060101AFI20231227BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20231227BHJP
A23L 31/00 20160101ALI20231227BHJP
A23L 11/50 20210101ALI20231227BHJP
A61K 36/062 20060101ALI20231227BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231227BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20231227BHJP
【FI】
C12N1/14 A
C12N1/14 Z
A23L33/10
A23L31/00
A23L11/50
A61K36/062
A61P1/04
A61P31/04
A23K10/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538692
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 KR2021003829
(87)【国際公開番号】W WO2022158641
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0009548
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヘリム
(72)【発明者】
【氏名】リュ ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヒス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウンジョン
(72)【発明者】
【氏名】オ ジヨン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B020
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150AC20
4B018LB09
4B018LB10
4B018MD80
4B018ME09
4B018MF14
4B020LB13
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4B020LY10
4B065AA69X
4B065AC14
4B065AC20
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4B065BD50
4B065CA34
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC05
4C087CA09
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA68
4C087ZB35
(57)【要約】
本出願は、寄託番号KCCM12893Pとして寄託したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20(Rhizopus oligosporus CJCC02-20)菌株及びその利用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号KCCM12893Pとして寄託したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20(Rhizopus oligosporus CJCC02-20)菌株。
【請求項2】
前記菌株は、真菌、細菌又はそれらの組み合わせに対する抗菌活性を有するものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
前記真菌は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はそれらの組み合わせである、請求項2に記載の菌株。
【請求項4】
前記細菌は、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、大腸菌(Escherichia coli)又はそれらの組み合わせである、請求項2に記載の菌株。
【請求項5】
前記菌株は、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー又は大腸菌に対して特異的抗菌活性を有するものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株、前記菌株の胞子、前記菌株の培養物、それらの濃縮物及びそれらの乾燥物からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含む抗菌組成物。
【請求項7】
前記組成物は、真菌、細菌又はそれらの組み合わせに対する抗菌活性を有するものである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の抗菌組成物を含む食品組成物。
【請求項9】
前記食品は、テンペ又はテンペを含むソースである、請求項8に記載の食品組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の抗菌組成物を含む飼料組成物。
【請求項11】
請求項6に記載の抗菌組成物を含む、真菌、細菌又はそれらの組み合わせによる微生物感染疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項12】
前記微生物感染疾患は、食中毒、下痢、嘔吐、腸炎、胃腸管炎、便秘、腹痛及び腹部膨満からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項11に記載の薬学組成物。
【請求項13】
請求項6に記載の抗菌組成物を含む、真菌、細菌又はそれらの組み合わせによる微生物感染疾患の予防又は改善用機能性食品組成物。
【請求項14】
請求項6に記載の抗菌組成物を含む医薬部外品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、寄託番号KCCM12893Pとして寄託したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20(Rhizopus oligosporus CJCC02-20)菌株、前記菌株、前記菌株の胞子、前記菌株の培養物、それらの濃縮物及びそれらの乾燥物からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含む抗菌組成物、前記抗菌組成物を含む食品組成物、飼料組成物、医薬部外品組成物、機能性食品組成物、又は前記抗菌組成物を含む、真菌、細菌もしくはそれらの組み合わせによる微生物感染疾患の予防もしくは治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な方法で製造される発酵食品は、原料保管、製造及び流通過程において、常に真菌類や食中毒菌に対して脆弱である。真菌類及び食中毒誘発細菌は、熱処理後も生き残って食品の変敗、腐敗や食中毒を誘発することが知られている。
【0003】
変敗や食中毒菌の増殖を防止し、前記食品の品質を長期間維持するために、抗菌物質に関する研究が盛んに行われている。抗菌物質の中でも特に安全性と経済性に優れた天然保存剤に関する研究の必要性が高まっている現状である。
【0004】
代表的な天然保存剤であるバクテリオシンとは、微生物が産生する天然抗菌性タンパク質又はタンパク質系の物質の総称である。バクテリオシンは、タンパク質であり、人体で分解されるので、安全性が立証された物質である。これは、従来の抗生剤が二次代謝産物であり、人体に副作用をもたらすのと対照的であることから、バクテリオシンに関する研究の必要性が高まっている現状である。前記バクテリオシンに関連して、最近は乳酸菌由来のバクテリオシンに関する研究が盛んに行われている。乳酸菌由来のバクテリオシンは、GRASレベルであり、安全性が立証されているという利点があるが、抗菌活性の範囲がグラム陽性菌であり、特異的であるので、広く活用することができない。
【0005】
リゾプス・オリゴスポラスの抗菌性に関連して、リゾプス・オリゴスポラス培養液から生成された抗菌物質Antibiotic peptide(ABP)やLinoleic acidなどは、グラム陽性菌であるStraphyloccoccus属及びBascillus属を抑制することが知られている(Roubos-van den Hil et al., 2010)。しかし、グラム陽性である特定微生物に対する抗菌活性が報告されているにすぎず、変敗又は食中毒を誘発する様々な菌株に対する効果については報告されていない。また、リゾプス・オリゴスポラスは発酵食品に有用な細菌であるので、前記バクテリオシンを発酵食品に適用しても、変敗誘発真菌類及び食中毒細菌類に特定の活性を示すとは言えず、発酵食品を産業化して製造及び流通するには困難がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明者らは、人体に無害であり、かつ様々な真菌類及び細菌類を抑制する方法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、テンペ(tempe)から新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20が真菌に対する抗菌活性を有するだけでなく、食中毒細菌などの食品の主要危害微生物のみ特異的に抑制する抗菌活性があることを確認し、本出願を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、寄託番号KCCM12893Pとして寄託したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20(Rhizopus oligosporus CJCC02-20)菌株、前記菌株、前記菌株の胞子、前記菌株の培養物、それらの濃縮物及びそれらの乾燥物からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含む抗菌組成物、前記抗菌組成物を含む食品組成物、飼料組成物、医薬部外品組成物、機能性食品組成物、又は前記抗菌組成物を含む、真菌、細菌もしくはそれらの組み合わせによる微生物感染疾患の予防もしくは治療用薬学組成物に関する。
【0008】
本出願は、寄託番号KCCM12893Pとして寄託したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20(Rhizopus oligosporus CJCC02-20)菌株を提供することを目的とする。
【0009】
また、本出願は、前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株、前記菌株の胞子、前記菌株の培養物、それらの濃縮物及びそれらの乾燥物からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含む抗菌組成物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本出願は、前記抗菌組成物を含む食品組成物を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本出願は、前記抗菌組成物を含む飼料組成物を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本出願は、前記抗菌組成物を含む医薬部外品組成物を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本出願は、前記抗菌組成物を含む機能性食品組成物を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本出願は、前記抗菌組成物を含む、真菌、細菌又はそれらの組み合わせによる微生物感染疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0015】
本出願によるリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株を含む抗菌組成物は、真菌及び細菌に対して抗菌活性を示す特性を有するので食品、医薬品、医薬部外品、機能性食品などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】濾紙ディスク法(paper disk assay)を用いて、リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株のアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー及び大腸菌に対する抗菌活性を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本出願をより詳細に説明する。
【0018】
なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0019】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本出願の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本出願に含まれることが意図されている。
【0020】
前記目的を達成するための本出願の一態様は、寄託番号KCCM12893Pとして寄託したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20(Rhizopus oligosporus CJCC02-20)菌株を提供する。
【0021】
本発明者らは、発酵食品の品質低下及び汚染を誘発する真菌及び食中毒誘発細菌に対して優れた抗菌活性を有するリゾプス・オリゴスポラスに属する新規な菌株を次のように解明した。
【0022】
既存のテンペから多種のリゾプス・オリゴスポラスを分離し、カビ、酵母などの真菌類及び食中毒細菌類について検定することにより、抗菌活性に優れた菌株リゾプス・オリゴスポラスを選択し、選択した菌株を同定するために遺伝子塩基配列分析を行った。前記選択した菌株の18S rRNA塩基配列は配列番号1で表され、ABP(antibiotic peptide)遺伝子配列は配列番号2で表され、Chitinase(Chi2)遺伝子配列は配列番号3で表される。前記遺伝子分析に基づいて前記菌株をリゾプス・オリゴスポラス菌株と同定し、リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20と命名し、ブダペスト条約上の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に2020年12月9日付けで受託番号KCCM12893Pとして寄託した。
【0023】
本出願の一具体例によれば、前記新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20は、真菌及び食中毒誘発細菌に対する抗菌活性に優れ、様々な真菌類及び食中毒誘発細菌に同時に作用する抗菌活性を示す(実施例3)。
【0024】
前記真菌及び細菌は、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、エシェリキア(Escherichia)属であるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本出願の一具体例として、前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20は、真菌であるアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はそれらの組み合わせに対して抗菌活性を有するものであるが、前記真菌の種類に限定されるものではない。
【0026】
本出願の一具体例として、前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20は、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、大腸菌(Escherichia coli)又はそれらの組み合わせに対して抗菌活性を有するものであるが、前記細菌の種類に限定されるものではない。
【0027】
本出願の一具体例として、前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20は、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー又は大腸菌に対して特異的抗菌活性を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
前記アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガーは発酵食品の品質低下及び汚染誘発菌株として知られており、バチルス・セレウス及び大腸菌は食中毒の誘発菌として知られているので、それらに対して優れた抗菌活性を有するリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20は様々な用途に用いられる。
【0029】
前記目的を達成するための本出願の他の態様は、前記新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株、前記菌株の胞子、前記菌株の培養物、それらの濃縮物、それらの抽出物及びそれらの乾燥物からなる群から選択される少なくとも1つと、担体とを含む組成物を提供する。
【0030】
ここで、前記担体は、自然発生又は非自然発生(non-naturally occurring)の担体であってもよい。
【0031】
本出願の一具体例として、前記乾燥物は、凍結乾燥物であってもよい。
【0032】
また、前記組成物は、凍結保護剤をさらに含んでもよい。例えば、グリセリン、トレハロース、マルトデキストリン、脱脂粉乳及びデンプンからなる群から選択される少なくとも1つの凍結保護剤をさらに含んでもよい。本出願の凍結保護剤は、本出願の組成物の総重量に対して0.01重量%~20重量%、0.01重量%~10重量%含まれてもよく、具体的には、本出願のグリセリンは5重量%~20重量%、本出願のトレハロースは2重量%~10重量%、本出願のマルトデキストリンは2重量%~10重量%、本出願の脱脂粉乳は0.5重量%~2重量%、本出願のデンプンは0.1重量%~1重量%の割合で本出願の組成物に含まれてもよい。
【0033】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、前記新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株、前記菌株の胞子、前記菌株の培養物、それらの濃縮物、それらの抽出物及びそれらの乾燥物からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含む抗菌組成物を提供する。
【0034】
ここで、菌株の状態は、液相状態又は乾燥状態であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記抗菌組成物は、真菌、細菌又はそれらの組み合わせに対する抗菌活性を有するものであり、具体的にはアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー又は大腸菌に対して特異的抗菌活性を有するものであり、バチルス・セレウスに対して増強された抗菌活性能を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本出願における「胞子」とは、細菌などの生殖細胞を意味し、本出願の目的上、前記胞子はリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20の生殖細胞を意味する。
【0037】
本出願において、前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20の胞子は、真菌及び食中毒細菌に対する抗菌活性を示すので、抗菌活性を有する食品、飼料、医薬品、医薬部外品、機能性食品に含有させて用いることができる。
【0038】
本出願における「培養物」とは、前記菌株を培養して得られた産物を意味し、菌体を含む培養原液であってもよく、また、培養菌株、培養上清を除去した菌体や濃縮した菌体であってもよい。前記培養物の組成は、通常のリゾプス・オリゴスポラスの培養に必要な成分だけでなく、リゾプス・オリゴスポラスの生長に相乗的に作用する成分をさらに含んでもよく、それらの組成は当該技術分野における通常の技術を有する者が容易に選択することができる。
【0039】
本出願における「濃縮物」とは、前記培養物を濃縮したものを意味する。
【0040】
本出願における「抽出物」とは、前記培養物又はその濃縮物から抽出したものを意味し、本出願の真菌類及び細菌に特異的抗菌効果を示す抽出物であれば、これらに限定されるものではなく、抽出液、抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はそれらの粗製物もしくは精製物、それらを分画した分画物の全てが含まれる。
【0041】
本出願における「乾燥物」とは、前記培養物、その濃縮物、その抽出物及びその分画物を乾燥させたものを意味する。乾燥方法としては、通風乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥及び凍結乾燥が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本出願の新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20は、通常のリゾプス・オリゴスポラス菌株の培養方法により培養することができるが、これに限定されるものではない。培地としては、天然培地又は合成培地を用いることができる。培地の炭素源としては、例えば、グルコース、スクロース、デキストリン、グリセリン、スターチなどを用いることができ、窒素源としては、ペプトン、肉類抽出物、酵母抽出物、乾燥酵母、大豆、アンモニウム塩、ナイトレート、及びその他有機もしくは無機窒素含有化合物を用いることができるが、これらの成分に限定されるものではない。培地に含まれる無機塩としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、鉄、リンなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。前記炭素源、窒素源及び無機塩の成分以外に、アミノ酸、ビタミン、核酸及びそれに関する化合物が培地に添加されてもよい。
【0043】
前記抗菌組成物は、リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20を培養する過程で産生される他の副産物を共に含んでもよい。
【0044】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、前記抗菌組成物を含む食品組成物を提供する。
【0045】
前記食品の種類は特に限定されるものではなく、通常の意味での食品が全て含まれる。前記物質を添加できる食品としては、例えば醤類、塩辛類をはじめとする発酵食品、ソース類、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類をはじめとする乳製品、各種スープ、清涼飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記組成物を食品添加物として用いる場合は、前記組成物をそのまま添加してもよく、他の食品又は食品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いられる。
【0046】
前記食品組成物は、具体的には発酵食品であってもよく、より具体的には醤類、塩辛類であってもよく、さらに具体的にはテンペであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、前記食品組成物は、テンペを含むソース類であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記食品組成物は、食品学的に許容される担体を含んでもよい。
【0049】
前記担体の種類は特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられる担体であればいかなるものでも用いることができる。
【0050】
また、前記食品組成物は、食品組成物に常用されて香り、味、視覚などを向上させることのできる追加成分を含んでもよい。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、葉酸(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)などを含んでもよい。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)などのミネラルや、リシン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含んでもよい。
【0051】
さらに、前記食品組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(サラシ粉と高度サラシ粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、亜酢酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(グルタミン酸ナトリウム(MSG)など)、甘味料(ズルチン、チクロ、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、膨張剤(ミョウバン、D-酒石酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、被膜剤、ガムベース、泡抑制剤、溶剤、改良剤、分散剤などの食品添加物(food additives)を含んでもよい。前記添加物は、食品の種類に応じて選択して適切な量で用いられる。
【0052】
特に、本発明者らは、本出願の新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20が、醤類の発酵カビであるアスペルギルス・オリゼ、食品汚染源であるアスペルギルス・ニガー、食中毒細菌であるバチルス・セレウス、腸管病原性細菌である大腸菌を同時に抑制する効果を有することを確認した(実施例3,
図1)。また、前記抗菌組成物を発酵食品であるテンペに適用したところ、伝統的な風味を実現しながらも食中毒菌防除効果を維持できることが確認された(実施例4)。よって、これらは発酵食品をはじめとするあらゆる食品に直接用いることができる。
【0053】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、前記抗菌組成物を含む、微生物感染疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0054】
本出願における「予防」とは、本出願による微生物感染疾患の予防又は治療用組成物を個体に投与することにより微生物感染疾患の発症を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0055】
本出願における「治療」とは、本出願の前記組成物を微生物感染疾患発症の疑いのある個体に投与することにより微生物感染疾患の症状を好転又は有利に変化させるあらゆる行為を意味する。
【0056】
本出願における「改善」とは、治療される状態に関するパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させるあらゆる行為を意味する。
【0057】
本出願における「個体」とは、微生物感染疾患が発症したか、発症するリスクのある、ヒトを含むあらゆる動物を意味する。
【0058】
ここで、微生物感染疾患とは、微生物により感染して発生する疾患であり、真菌又は細菌により感染して発生する疾患であることが好ましい。
【0059】
本出願の一具体例として、前記真菌は、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本出願の一具体例として、前記細菌は、バチルス・セレウス、大腸菌又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0061】
また、本出願の一具体例として、前記微生物感染疾患は、食中毒、下痢、嘔吐、腸炎、胃腸管炎、便秘、腹痛及び腹部膨満からなる群から選択される少なくともいずれかであるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本出願の一実施例においては、食中毒を誘発する細菌であるバチルス・セレウスに対する増強された抗菌活性、及び腸管病原性大腸菌に対する特異的抗菌活性が確認され、カビ菌であるアスペルギルス・オリゼ及びアスペルギルス・ニガーに対する特異的抗真菌活性が確認されたので、本出願の抗菌組成物は、微生物感染疾患の予防又は治療用薬学組成物に有用である。
【0063】
本出願による微生物感染疾患の予防又は治療用組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよく、前記担体と共に製剤化して食品、機能性食品、医薬品、医薬部外品、飼料添加剤、飲料水添加剤などとして提供してもよい。
【0064】
本出願における「薬学的に許容される担体」とは、生物体を刺激することなく、投与される化合物の生物学的活性及び特性を損なわない担体又は希釈剤を意味する。
【0065】
本出願に使用される前記担体の種類は特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられて薬学的に許容される担体であれば、いかなるものでも用いることができる。前記担体としては、例えば食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、グルコース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセリン、エタノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
また、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加して用いてもよく、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、滑沢剤などをさらに添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤などに製剤化して用いてもよい。
【0067】
本出願による微生物感染疾患の予防又は治療用組成物の投与方法は特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いる方法を採用することができる。前記投与方法として、例えば組成物を経口投与又は非経口投与方法で投与することができるが、これらに限定されるものではない。本出願の前記微生物感染疾患の予防、改善又は治療用組成物は、目的とする投与方法に応じて様々な剤形に作製することができる。
【0068】
本出願の抗菌物質の薬学的投与形態は、これらの薬学的に許容される塩の形態で用いてもよい。また、単独で用いてもよく、他の薬学的活性化合物との結合又は好適な集合で用いてもよい。
【0069】
本出願のさらに他の態様は、前記微生物感染疾患の予防又は治療用組成物を個体に投与するステップを含む、微生物感染疾患の予防又は治療方法を提供する。本出願における「個体」とは、微生物感染疾患が発症したか、発症するリスクのある、ヒトを含むあらゆる動物を意味する。
【0070】
本出願の前記予防又は治療方法は、具体的には、微生物感染疾患が発症した個体や発症するリスクのある個体に前記組成物を薬学的に有効な量で投与するステップを含んでもよい。
【0071】
前記抽出物を含む組成物の好適な総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で担当医により決定され、1回又は数回に分けて投与することができる。しかし、本出願の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が用いられるか否か、具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食餌、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に又は同時に投与される薬物をはじめとする様々な因子や、医薬分野で周知の類似の因子に応じて異なる量であることが好ましい。
【0072】
本出願の抗菌物質は、ラット、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路で投与することができる。投与におけるあらゆる方法が可能であるが、例えば経口、直腸、又は静脈、筋肉、皮下、子宮内、硬膜もしくは脳血管内(intracerebroventricular)注射により投与することができる。
【0073】
本出願のさらに他の態様は、前記抗菌組成物を含む微生物感染疾患の予防又は改善用機能性食品を提供する。
【0074】
ここで、微生物感染疾患、予防及び改善については前述した通りである。
【0075】
本出願における「機能性食品(Health functional food又はnutraceutical)」とは、特定保健用食品、健康機能食品、健康食品と同義であり、栄養供給以外に生体調節機能を効率的に示すように加工された医学、医療的効果の高い食品を意味し、前記食品は微生物感染疾患の予防又は改善に有用な効果を得るために、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、丸剤などの様々な形態に製造することができる。
【0076】
前記機能性食品は、食品学的に許容される担体を含んでもよく、それについては前述した通りである。
【0077】
本出願の機能性食品は、当該技術分野で通常用いられる方法により製造することができ、その製造時には当該技術分野で通常添加する原料及び成分を添加して製造することができる。また、前記機能性食品の剤形も、機能性食品として認められる剤形であれば限定されるものではない。本出願の機能性食品は、様々な形態の剤形に製造することができ、一般薬品とは異なり、食品を原料とするので、薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがないという利点があり、携帯性に優れるので、本出願の機能性食品は、微生物感染疾患の予防又は改善効果を高める補助剤として摂取することができる。
【0078】
具体的には、前記食品とは、前記抗菌組成物を飲料、茶類、香辛料、ガム、菓子類などの食品素材に添加するか、カプセル、粉末、懸濁液などに製造した食品であり、例えば各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などが挙げられる。
【0079】
前記食品は、公知の製造方法により、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液状溶液、丸剤などの剤形に製造することができ、本出願による組成物の含有量は、剤形に応じて調節することができる。本出願による抗菌組成物を有効成分として含有する以外には、他の成分には特に制限がなく、通常の様々な香味剤や天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。
【0080】
本出願のさらに他の態様は、前記抗菌組成物を含む医薬部外品組成物を提供する。
【0081】
本出願における「医薬部外品」とは、ヒトや動物の疾病を治療、軽減、処置又は予防する目的で用いられる繊維、ゴム製品又はそれに類似するもの、人体に対する作用が弱いか、人体に直接作用せず、器具、機械でないものとそれに類似するもの、感染予防のために殺菌、殺虫及びそれに類似する用途で用いられる製剤のいずれかに該当する物品であって、ヒトや動物の疾病を診断、治療、軽減、処置又は予防する目的で用いる物品のうち器具、機械、装置でないもの、及びヒトや動物の構造と機能に薬理学的影響を与える目的で用いる物品のうち器具、機械、装置でないものを除く物品を意味する。また、前記医薬部外品には、皮膚外用剤や個人衛生用品が含まれる。消毒清潔剤、シャワーフォーム、うがい薬、ウェットティッシュ、洗剤、石鹸、ハンドウォッシュ又は軟膏剤が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0082】
前記医薬部外品組成物は、薬学的に許容される担体を含んでもよく、それについては前述した通りである。
【0083】
本発明者らは、新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20が前記真菌及び細菌に対する抗菌効果を有することを確認したので、前記新規な菌株を用いた抗菌組成物は、医薬部外品として有用である。
【0084】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、前記抗菌組成物を含む飼料組成物を提供する。
【0085】
本出願における「飼料」とは、動物が食べて摂取し、消化させるための、もしくはそれに適した任意の天然もしくは人工の規定食、一食など、又は前記一食の成分を意味する。
【0086】
前記飼料の種類は特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられる飼料を用いることができる。前記飼料用組成物は、飼料添加剤を含んでもよい。本出願の飼料添加剤は、飼料管理法上の補助飼料に該当し、生菌剤を含んでもよい。前記飼料としては、例えば穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、ミール類、穀物副産物類などの植物性飼料と、タンパク質類、無機物類、油脂類、ミネラル類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類、飲食物などの動物性飼料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
ここで、本出願の抗菌組成物を含む飼料組成物は、賦形剤、希釈剤、添加剤をさらに含んでもよい。
【0088】
本出願の新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20は、カビ菌であるアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー及び食中毒細菌であるバチルス・セレウス、大腸菌を同時に抑制する効果を有することが確認されたので、本出願は、抗菌及び抗真菌活性を有する飼料組成物を提供することにより、家畜の食中毒を含む微生物感染疾患を予防することができる。
【0089】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、前記新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20を培地で培養するステップを含む、抗菌組成物の製造方法を提供する。
【0090】
本出願における「培養」とは、本出願のリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20を適宜調節した環境条件で生育させることを意味する。本出願の培養過程は、当該技術分野で公知の好適な培地と培養条件で行うことができる。このような培養過程は、当業者であれば選択される菌株に応じて容易に調整して用いることができる。具体的には、前記培養は、回分、連続及び/又は流加培養であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0091】
本出願における「培地」とは、本出願のリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20を培養するために必要な栄養物質を主成分として混合した物質を意味し、生存及び発育に不可欠な水をはじめとする栄養物質や発育因子などを供給する。具体的には、本出願のリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20の培養に用いられる培地及び他の培養条件は、通常の微生物の培養に用いられるものであればいかなるものでもよく、好適な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有する通常の培地中で好気性条件下にて温度、pHなどを調節して本出願のリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20を培養することができる。
【0092】
本出願における前記炭素源としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マルトースなどの炭水化物、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などの有機酸、グルタミン酸、メチオニン、リシンなどのアミノ酸などが挙げられる。また、デンプン加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米糠、キャッサバ、バガス、トウモロコシ浸漬液などの天然の有機栄養源を用いることができ、具体的にはグルコースや殺菌した前処理糖蜜(すなわち、還元糖に変換した糖蜜)などの炭水化物を用いることができ、その他適量の炭素源であればいかなるものでも用いることができる。これらの炭素源は、単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
前記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源と、グルタミン酸、メチオニン、グルタミンなどのアミノ酸、ペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類又はその分解生成物、脱脂大豆ケーキ又はその分解生成物などの有機窒素源とを用いることができる。これらの窒素源は、単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
前記リン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム又はそれらに相当するナトリウム含有塩などが挙げられる。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどを用いることができ、それ以外に、アミノ酸、ビタミン及び/又は好適な前駆体などを用いることができる。これらの構成成分又は前駆体は、培地に回分式又は連続式で添加することができる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0095】
また、本出願のリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20の培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などの化合物を培地に好適な方法で添加することにより、培地のpHを調整することができる。さらに、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。さらに、培地の好気状態を維持するために、培地中に酸素又は酸素含有気体を注入してもよく、嫌気及び微好気状態を維持するために、気体を注入しなくてもよく、窒素、水素又は二酸化炭素ガスを注入してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0096】
本出願の培養は、培養温度を20~45℃、具体的には25~40℃に維持し、約10~160時間培養してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本出願の抗菌組成物の製造方法は、本出願のリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株を準備するステップ、前記菌株を培養するための培地を準備するステップ、又はそれらの組み合わせ(任意の順序,in any order)を、例えば前記培養するステップの前にさらに含んでもよい。
【0098】
本出願の抗菌組成物の製造方法は、前述したように培養した培地(培養培地)又は本出願のリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株から抗菌物質を回収するステップをさらに含んでもよい。前記回収するステップは、前記培養するステップの後にさらに含んでもよい。
【0099】
ここで、前記抗菌物質は、リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株が示す抗菌活性を有する物質であればいかなるものでもよく、一具体例として、抽出液(crude extracts)、化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
前記回収は、本出願の微生物の培養方法、例えば回分、連続、流加培養方法などに応じて、当該技術分野で公知の好適な方法を用いて目的とする抗菌物質を回収(collect)するものであってもよい。例えば、遠心分離、濾過、結晶化、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLC又はそれらの組み合わせが用いられ、当該分野で公知の好適な方法を用いて培地又は微生物から目的とする抗菌物質を回収することができる。
【0101】
また、本出願の抗菌組成物の製造方法は、精製ステップをさらに含んでもよい。前記精製は、当該技術分野で公知の好適な方法により行うことができる。例えば、本出願の抗菌組成物製造方法が回収ステップと精製ステップの両方を含む場合、前記回収ステップと前記精製ステップは、順序に関係なく異時的(又は連続的)に行ってもよく、同時に又は1つのステップとして統合して行ってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0102】
本出願のさらに他の態様は、前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株を培地で培養して発酵させるステップを含む、発酵物の製造方法を提供する。
【0103】
本出願のさらに他の態様は、前記方法により製造された発酵物を提供する。
【0104】
前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株については前述した通りであり、前記微生物を培地で培養するステップについても前述した通りである。
【0105】
本出願における「発酵物」とは、本出願の微生物を培養して得られた組成物を意味する。
【0106】
さらに、前記発酵物には、前記微生物を培養し、その後適切な後処理工程を経て得られた液体又は粉末状の組成物が含まれる。ここで、適切な後処理工程には、例えば前記微生物の培養工程、菌体除去工程、濃縮工程、濾過工程及び担体混合工程が含まれてもよく、乾燥工程がさらに含まれてもよい。場合によっては、前記後処理工程に精製工程が含まれなくてもよい。
【0107】
さらに、「前記発酵物」は、本出願の微生物を培養して得られた組成物を含むものであれば、非発酵工程で得られた物質及び/又は非天然工程で得られた他の物質をさらに混合したものを排除しない。
【0108】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、前記新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株又は前記菌株を用いた発酵物を含む食品組成物を提供する。
【0109】
前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20及び前記食品については前述した通りである。
【0110】
前記発酵物とは、食品の主原料を含有する培地にリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株を接種及び培養して得られた培地又は前記培地と共に培養した微生物を含む培養物を意味する。
【0111】
また、前記発酵物は、食品原料にリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株を接種及び培養して得られた培養物であってもよい。前記食品原料は穀物類であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0112】
本出願の一具体例として、前記穀物類は、米、麦、小麦、トウモロコシなどであり、具体的には小麦、小麦ふすま、米であるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
前記発酵物には、前記培地又は培養物の濾過液、希釈液、それらの濃縮液、それらの粗製物、精製物、乾燥物、粉砕物などが全て含まれるものと包括的に解釈されるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、前記新たに分離した菌株リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20を接種するステップを含む、食品の製造方法を提供する。
【0115】
前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20及び前記食品については前述した通りである。
【0116】
本出願の一具体例として、前記食品の製造方法は、前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20を穀物に接種及び培養するステップを含む、発酵食品の製造方法であってもよい。前記菌株を接種及び培養して得られた発酵食品は、具体的には醤類、塩辛類であり、より具体的にはテンペ又はテンペを含むソース類であるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、前記新たに分離した菌株リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20を含む飼料組成物を提供する。
【0118】
前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20及び前記飼料については前述した通りである。
【0119】
前記目的を達成するための本出願のさらに他の態様は、前記新たに分離した菌株リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20、前記菌株の胞子、前記菌株の培養物、発酵物、それらの濃縮物、それらの抽出物及びそれらの乾燥物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の抗菌用途を提供する。
【実施例】
【0120】
以下、実施例を挙げて本出願の構成及び効果をより詳細に説明するが、これらの実施例は本出願を例示するものにすぎず、本出願がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0121】
抗菌物質を産生する菌株の分離及び同定
抗菌活性を有する菌株の選択のために、既存のテンペをPDA(Potato Dextrose Agar)培地にて30℃で5日間培養し、その後リゾプス属の形態的特徴を用いて1次選択し、選択した菌株を5% Kanamycin 1,000ppm含有PDA培地にて30℃で5日間培養して分離した。
【0122】
前述した工程で選択した菌株の18S rRNA、ABP(ABP1)及びChitinase(Chi2)遺伝子の塩基配列を分析した。塩基配列の分析は、NCBIのBLASTを用いて、GenBankデータベースと選択した菌株のそれぞれの塩基配列(18S rRNA:配列番号1,ABP1:配列番号2,Chi2:配列番号3)を比較した。
【0123】
具体的には、ABP1遺伝子の塩基配列に基づいてプライマー配列番号4及び5を合成し、Chi2遺伝子の塩基配列に基づいてプライマー配列番号6及び7を合成し、PCRによりそれぞれの塩基配列を確認した。その結果、本菌株の塩基配列は、リゾプス・オリゴスポラス18S rRNAに対して100%の相同性を示し、ABP Geneに対して99.9%の相同性を示し、Chitinase Geneに対して100%の相同性を示した。
【0124】
これらの結果から、本出願により得られる菌株をリゾプス・オリゴスポラス菌株と同定してリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20と命名し、ブダペスト条約上の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に2020年12月9日付けで受託番号KCCM12893Pとして寄託した。
【実施例2】
【0125】
抗菌物質の分離及び精製
新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株が産生する抗菌物質を分離するために、前記菌株を10~15gの小麦ふすまに接種し、次いで30℃で5日間、35℃で1日間培養した。前記培養物を蒸留水で50重量倍に希釈し、その後30℃、150rpmの条件で60分間抽出した。抽出液(crude extracts)を珪藻土により5.0μm Filter paperで減圧濾過した。濾過液を-20℃で48時間凍結乾燥し、乾燥物として精製した。
【実施例3】
【0126】
真菌類及び食中毒誘発細菌に対する抗菌活性試験
新たに分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株が真菌類及び食中毒誘発細菌を抑制する効果を有するか否か確認するために、次の抗菌活性実験を行った。
【0127】
醤類の発酵カビであるアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)と食品汚染源であるアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)はPDA(Potato dextrose agar)培地で培養した。
【0128】
また、病原性酵母菌であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)と食品汚染源であるジゴサッカロマイセス・バイリ(Zygosaccharomyces bailii)はYPD培地(Yeast extract peptone dextrose agar)で培養した。
【0129】
さらに、食中毒誘発細菌であるバチルス・セレウス(Bacillus cereus)、腸管病原性大腸菌(Escherichia coli)、醤類の発酵細菌であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ベレゼンシス(Bacillus velezensis)はTSA(Tryptic soy agar)培地で培養した。
【0130】
実施例2で乾燥した抗菌物質を蒸留水に溶解し、その後前述した菌株を塗抹した平板培地上に直径8mmのペーパーディスクを置いて前記抗菌物質を30μlずつ一定に加え、30℃で24~48時間培養し、分離菌株が産生する抗菌物質による生育阻止円が形成されるか否かを観察した。その結果を表1及び
図1に示す。表1の「-」は生育を阻止できないことを示し、「+」は生育阻止円の直径が3mm~5mm以下であることを示し、「++」は生育阻止円の直径が6mm~10mmであることを示し、「+++」は生育阻止円の直径が10mm以上であることを示す。
【0131】
また、前記リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株以外に、既存のテンペ(インドネシア及びベトナムにおいて伝統的な方法で製造したテンペ)から分離した菌株であるリゾプス・オリゴスポラス菌株4種を比較例1~4とし、抗菌活性を比較した。
【0132】
【0133】
表1及び
図1から分かるように、リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株から得られた精製物質は、酵母には抗菌活性を示さないが、醤類又は一般食品において阻害することが困難なアスペルギルス・オリゼとアスペルギルス・ニガーのカビ菌を選択的に制御できる優れた抗真菌活性を示す。
【0134】
また、腸管病原性大腸菌に選択的抗菌活性を示し、他のリゾプス・オリゴスポラス菌株に比べて食中毒菌であるバチルス・セレウスに対する抗菌活性に優れることが確認された。
【実施例4】
【0135】
発酵製品テンペにおける食中毒菌防除効果の確認
実施例1で同定したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20の発酵製品における食中毒菌防除効果を確認するために、リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株を15~20gの玄麦に接種し、次いで30℃で6日間、40℃で1日間培養した。前記培養物を粉砕機で粉末にした。
【0136】
毎年変わる消費トレンドに合わせて多様な穀物の発酵製品を開発するために、蒸煮した大豆、蒸煮した大豆と米、蒸煮した大豆と小麦粉、蒸煮した小麦粉に、前記培養液の粉末と市販されているリゾプス・オリゴスポラス菌株(Ragi Tempe Raprima, Bandung社, Indonesia)4%を接種及び混合し、次いで湿度を60%に調節し、温度30℃で1~2日間培養して発酵製品であるテンペを作製した。
【0137】
培養したテンペと市販されている既存のテンペを、TSA(Tryptic soy agar)培地とPolymyxin B及びTrimethoprimを添加したBacillus cereus選択培地にて30℃で1日間培養した。実施例1で分離したリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株を接種したテンペにおいては、食中毒誘発細菌であるバチルス・セレウス(Bacillus cereus)と腸管病原性大腸菌(Escherichia coli)が検出されないのに対して、市販されている菌株を接種したテンペと既存のテンペにおいては、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)が検出されることが確認された(表2参照)。
【0138】
【0139】
これらの結果から、リゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株は、テンペ発酵菌株として伝統的な風味を実現しながらも食中毒菌を制御する効果に優れることが確認された。
【0140】
よって、本出願の新規なリゾプス・オリゴスポラスCJCC02-20菌株、前記菌株の胞子、前記菌株の培養物、それらの濃縮物、それらの乾燥物などを含む抗菌組成物は、真菌及び食中毒菌に対する抗菌効果に優れるので、それを含む食品、医薬部外品、医薬品などに有用である。
【0141】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【0142】
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM12893P
受託日:2020年12月9日
【0143】
【国際調査報告】