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特表2024-500931単極性及び双極性エレクトロポレーションカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】単極性及び双極性エレクトロポレーションカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538701
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2021087144
(87)【国際公開番号】W WO2022136468
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2014047
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516324917
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニベルシテール・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】519399604
【氏名又は名称】フォンダシオン・ユニベルシテ・ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ヤイス ピエール
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ レミ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK17
4C160KK36
4C160KK37
4C160KK39
4C160MM38
(57)【要約】
本発明は、第1管腔(24)内で縦方向に放出する本体(22)を含む可動遠位部(20)と、複数の分岐部(30)とを含むカテーテル(10)を備える医療装置に関する。各分岐部(30)の遠位端(36)は、電気的活性域(34)を含み、格納位置と展開位置の間で移動可能である。医療装置は、展開位置において第1の電極セットに第1量の電気エネルギを供給し、格納位置において第2の電極セットに第2量の電気エネルギを供給するように電気的に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管腔(24)内で縦方向に移動する本体(22)を含む可動遠位部(20)と、複数の分岐部(30)とを含むカテーテル(10)を備え、
前記分岐部(30)の各々の遠位端(36)は、前記本体(22)の外周に沿って固定されており、近位端(37)は、前記第1管腔(24)の外周に沿って固定されており、
前記分岐部(30)の各々は、電極を形成する少なくとも1つの電気的活性域(34)を有する面(32)を備え、
前記複数の分岐部(30)は、少なくとも2つの位置:
前記複数の分岐部(30)の各々が前記本体(22)の縦軸(AL)に平行な軸に沿って配置される格納位置と、
円弧を形成する前記複数の分岐部(30)の各々が前記本体(22)の前記縦軸(AL)が属する面内に延伸する展開位置と、
の間で移動可能であり、
前記医療装置は、前記展開位置において第1の電極セットに第1量の電気エネルギを供給し、前記格納位置において少なくとも1つの電極に第2量の電気エネルギを供給するように電気的に構成される、
医療装置。
【請求項2】
前記遠位部(20)の前記本体は、前記カテーテル(10)を案内する装置(40)を受け入れるように構成される第2管腔を備える、
請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記医療装置は、少なくとも1つの前記分岐部(30)における電気パルス列に応じて、前記第1量の電気エネルギ又は前記第2量の電気エネルギを供給し、結果として、2つの電極間に電圧を生成するように構成される、
請求項1又は2に記載の医療装置。
【請求項4】
第1電極は、少なくとも1つの第1分岐部(30)であり、第2電極は、少なくとも1つの第2分岐部(30)である、
請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記第1量の電気エネルギは、複数の電極対への連続した供給からなるシーケンスに従って供給される、
請求項4に記載の医療装置。
【請求項6】
第1電極は、少なくとも1つの分岐部(30)であり、第2電極は、前記カテーテル(10)外部の電極である、
請求項3に記載の医療装置。
【請求項7】
前記分岐部(30)の各々は、開口部を含む電気絶縁シースにより囲まれた導電性材料から作られたコアを備え、前記電気的活性域(34)は、前記開口部を介して前記本体(22)の前記縦軸(AL)の反対側の面(32)上に配置される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項8】
前記分岐部(30)は、形状記憶材料から作られる、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項9】
導電性材料は、ニチノールであり、好ましくは、導電性金属と組み合わされたニチノールである、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項10】
前記分岐部(30)の少なくとも1つの電極は、該分岐部(30)の外層上に印刷された回路を備える、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項11】
少なくとも1つの前記分岐部(30)は、電気的心臓活動を記録することができる測定電極を含む、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項12】
少なくとも1つの前記分岐部(30)は、いくつかの別個の電気的活性域(34)を備え、各電気的活性域(34)は、電極を形成し、前記複数の分岐部(30)の電極セットは、ある量のエネルギを供給するように、及び/又は、電気的活動を記録するように構成可能である、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項13】
前記分岐部(30)の各々は、それぞれが前記医療装置の電気回路の導電部分を形成する少なくとも2つの電気的活性域(34)を備え、測定した電流と生成した電流をそれぞれ伝播するために、前記電気回路の一方は、他方から独立している、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項14】
前記分岐部(30)の各々は、測定した電流又は生成した電流を伝播するために、前記医療装置の単一の電気回路の導電部分を形成する少なくとも1つの電気的活性域(34)を備える、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項15】
前記カテーテルの前記遠位部(20)の前記本体(22)は、好ましくは、前記複数の分岐部(30)のうちの1つの電極と連帯して電気的活動を記録することができる測定電極を備える、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項16】
前記分岐部(30)の各々は、2つの側端(35)を含み、各側端(35)は、後者の近傍に位置する分岐部(30)から該分岐部(30)を電気的に絶縁する電気絶縁体を備える、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項17】
各分岐部の各電気的活性域(34)は、その遠位端及びその近位端(36)から離れた部分に位置し、該電気的活性域(34)は、好ましくは、前記遠位端(36)から少なくとも7mm離れている、
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項18】
前記分岐部(30)の前記遠位端(36)の電気的活性域(34)は、前記第1管腔の前記外周の連続する前記分岐部の前記遠位端(36)の電気的活性域(34)から縦方向にオフセットされる、
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項19】
前記複数の分岐部(30)は、一般的なリボン形状を有する、
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項20】
前記第1管腔の前記外周に沿った前記複数の分岐部(30)の固定は、前記近位端(37)が固定された固定リングにより行われ、前記固定リング自体は、前記第1管腔の前記外周に連結される、
請求項1に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、心房細動治療専用のカテーテルの分野に関する。特に、本発明の技術分野は、1以上の電極を備えるカテーテルを用いて実施されるエレクトロポレーション(電気穿孔法)による肺静脈の隔離によって、この病状を治療する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、心房細動は、非常に一般的な心疾患である。心房細動(AF:Atrial fibrillation)は、心房の無秩序な活性化により定義される不整脈である。それは、複数の可変なリエントリを開始する心房性期外収縮により引き起こされる。期外収縮の源であり、リエントリの基質である肺静脈は、心房細動を開始し維持するための基本的な構造として認識されている。そのため、それらは、発作性心房細動の治療におけるアブレーションの主なターゲットである。不整脈がより進行した段階に達すると、細動は持続し、肺静脈の治療に加えて、線状病変も供給する必要がある場合がある。
【0003】
特に、肺静脈PVI(肺静脈隔離)のアブレーションは、エレクトロポレーション法を用いて行われてもよい。パルス電解エレクトロポレーション(PFE:Pulsed Field Electroporation)は、強力なパルス電界を印加して、心細胞の膜に孔を作る方法である。これらの孔は、これらのターゲット細胞を死に至らしめ(不可逆的なエレクトロポレーション)、心房の無秩序な活性化を停止させる。この方法の利点は、ターゲット組織や隣接組織において、摂氏1度程度の熱上昇又は非常に低い熱上昇をもたらさないことである。また、この方法には、ある程度の組織選択性もある。これは、心細胞が隣接する構造よりもはるかに感受性が高いためである。
【0004】
エレクトロポレーションの供給には、双極性と単極性の2つの主なモードがある。
【0005】
双極性エレクトロポレーションのアブレーションでは、複数の電極を有するカテーテルを用いて、該カテーテルを肺静脈に挿入する。このカテーテルは、2つのカテーテル電極間に電圧を発生させ、結果として電界を生じさせる発電機に接続される。この電界によって、肺静脈の組織を構成する細胞に複数の孔が形成される。特に、米国特許公開第20180085160号で知られているのは、それぞれ4つの電極を持つ5個の分岐部を含むバスケット状のカテーテルである。カテーテルを展開すると、複数の分岐部は、互いに離れていき、電極は、治療すべき静脈の壁に近づいていく。展開位置では、肺静脈全体の治療が行われ、格納位置では、カテーテルを心房に進め、その後肺静脈に進めることができる。
【0006】
また、特に持続性心房細動を持つ患者では、心房に線状病変を行うことも有用である。この場合、大口径のバスケット式エレクトロポレーションカテーテルを除去した後、新しい小径のエレクトロポレーションカテーテルを導入して、心房壁に線状病変を達成する。それは、肺静脈専用のカテーテルよりも小さな病変を作るバスケット状のカテーテルである。それらを順次展開して合体することにより、線状病変を形成したり、焦点となるターゲットを治療したりすればよい。
【0007】
エレクトロポレーションは、単極モードで供給されてもよい。これは、2つの電極間にパルス電界を印加することを含み、一方の電極は、心臓ターゲットと接触するカテーテル上に位置し、もう一方のより大きい電極は、患者の体外に位置し、ほとんどの場合胸部に取り付けられる。単極モードと双極モードの両方が、肺静脈の分離又は線状病変に用いられてもよい。それぞれが利点と欠点を有する。
【0008】
肺静脈の隔離と線状病変の完成を必要とする患者を治療する際のエレクトロポレーションのこれらのモードの適用の1つの欠点は、2つのアブレーションカテーテルを使用する必要があることである。手技の最初の部分は、肺静脈の心門の周囲に円形病変を実施し、その後、別のカテーテルで1以上の線状病変を実施することを含む。これら2つの手技を行うために、通常、肺静脈専用のエレクトロポレーションカテーテルを取り外し、その後、線状エレクトロポレーションの実施に適した新しいカテーテルを患者の体内に挿入する必要がある。このようなカテーテル挿入の連続は、いくつかの問題を引き起こす。第一に、新しいカテーテルを導入する患者のリスク、第二に、新しいカテーテルの取り外しと挿入に伴う処置の期間、そして何よりもこれらの各カテーテルの非常に高い追加コストである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開第20180085160号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明にかかる医療装置により、上記の課題を克服することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様によれば、本発明は、第1管腔縦方向に放出する本体を含む可動遠位部と、複数の分岐部とを含むカテーテルを備える医療装置に関する。各分岐部の遠位端は、本体の外周に沿って固定されており、近位端は、第1管腔の外周に沿って固定されている。各分岐部は、電極を形成する少なくとも1つの電気的活性域を有する面を備える。複数の分岐部は、以下の少なくとも2つの位置の間で移動可能である:
複数の分岐部の各々が本体の縦軸に平行な軸に沿って配置される格納位置、及び
前記複数の分岐部の各々が円弧を形成し、各円弧が本体の縦軸が属する面内に延伸する展開位置。
【0012】
医療装置は、展開位置において第1の電極セットに第1量の電気エネルギを供給し、格納位置において第2の電極セットに第2量の電気エネルギを供給するように電気的に構成される。
【0013】
本発明にかかる医療装置は、同じカテーテルにより、肺静脈の周囲に円形病変を展開モードで行うことができ、同じカテーテルで、カテーテルの格納位置で線状病変を行うことができる。
【0014】
この配置により、同様に線状病変を必要とする肺静脈隔離術中に同じカテーテルを用いることができ、したがって、手技中の時間を節約し、患者の合併症のリスクを軽減し、最終的には、カテーテルの単価が非常に高いため、手技の材料費を大幅に削減する。もちろん、この配置により、必要に応じて肺静脈のみを治療することができる。
【0015】
一態様によれば、遠位部の本体は、カテーテル案内装置を収容するように設計された第2管腔を備える。この特徴により、患者の血管内にカテーテルを案内し、遠位部を肺静脈内に配置することができる。
【0016】
一態様によれば、医療装置は、2つの電極間に電圧を発生させる少なくとも1つの分岐部内で生成された一連の電気パルスに従って、第1量の電気エネルギ又は第2量の電気エネルギを供給するように構成される。この特徴により、電気パルス列のおかげで効率的なエレクトロポレーションを可能にする。
【0017】
一態様によれば、医療装置の第1電極は、少なくとも1つの第1分岐部であり、第2電極は、少なくとも1つの第2分岐部である。この配置により、医療装置には、複数の分岐部のうちの2つの分岐部の間に電圧を印加して双極性エレクトロポレーションを行うことができるという利点がある。
【0018】
一態様によれば、第1量の電気エネルギは、電極対の一連の電源を含むシーケンスに従って供給される。この特徴の利点は、肺静脈の全外周のエレクトロポレーションを効果的に可能にするために、異なる電極対を連続的に求めることである。
【0019】
一態様によれば、第1電極は、少なくとも1つの分岐部であり、第2電極は、カテーテル外部の電極である。この配置により、患者の体に外部電極を配置して単極モードでエレクトロポレーションを行うことができ、線状病変を行ったり、肺静脈を治療したりすることができる。
【0020】
一態様によれば、第1電極は、いくつかの分岐部により形成され、第2電極は、カテーテル外部の電極である。この配置により、いくつかの分岐部により形成されるいくつかの電極を第1の電極として用いて、単極モードでのエレクトロポレーションが可能になる。
【0021】
一態様によれば、各分岐部は、開口部を含む電気絶縁シースにより囲まれた導電性材料のコアを備え、活性域は、開口部を介して本体の縦軸の反対側の面上に配置される。この配置は、活性域から分岐部の電気絶縁を可能にする、実装が容易な分岐アーキテクチャを提供する。
【0022】
一態様によれば、分岐部は、形状記憶材料から作られる。この特徴により、塑性変形の領域に入ることなく、格納位置から展開位置(又はその逆)に移動したときに変形する可能性のある超弾性特性を持つ分岐部を有することができる。「超弾性」とは、材料が強く変形し、元の位置に可逆的に戻る能力を意味する。
【0023】
一態様によれば、導電性材料は、ニチノールである。ニチノールは、超弾性特性を持つ記憶合金である。
【0024】
一態様によれば、分岐部の少なくとも1つの電極は、分岐部の外層上にプリント回路を備える。この配置により、プリント基板によって作成された電極を分岐部の所望の場所に配置することができる。
【0025】
一態様によれば、少なくとも1つの分岐部は、電気的活動を記録することができる少なくとも1つの測定電極を備える。この配置により、測定電極から電気計測を行うことができ、例えば、肺静脈内のカテーテルの適切な配置を容易にしてそれを監視したり、その隔離を監視したりすることができる。
【0026】
一態様によれば、各電気的活性域は、あるエネルギ量を供給し、電気的活動を記録することができるように構成可能な電極を形成する。この特徴によれば、活性域により形成される電極は、エネルギを供給することにより、エレクトロポレーションを行うために用いられ、電気的活動を測定する測定電極として機能する。
【0027】
一態様によれば、少なくとも1つの分岐部は、いくつかの異なる電気的活性域を備え、各電気的活性域は、電極を形成し、複数の分岐部のすべての電極は、あるエネルギ量を供給したり、電気的活動を記録することができたりするように構成可能である。このように、電気的活性域により形成された電極は、エネルギを供給することによりエレクトロポレーションを行うために用いられ、同時に電気的活動を測定するための測定電極として機能する。
【0028】
一態様によれば、各分岐部は、それぞれが医療機器の電気回路の導電部分を形成する少なくとも2つの電気的活性域を備え、各電気回路は、測定した電流と生成した電流をそれぞれ伝播するために、互いに独立している。
【0029】
一態様によれば、各分岐部は、測定した電流又は生成した電流を伝播するために、医療機器の単一の電気回路の導電部分を形成する少なくとも1つの電気的活性域を備える。
【0030】
一態様によれば、カテーテルの遠位部の本体は、電気的活動を記録することができ、好ましくは、複数の分岐部のうちの1つの電極と併用する測定電極を備える。この特徴により、分岐部と遠位部の本体の間の電圧を測定することができる。
【0031】
一態様によれば、各分岐部は、2つの側端を含み、各側端は、後者の近傍に位置する分岐部から前記分岐部を電気的に絶縁する電気絶縁体を備える。この配置は、後者の間で電気的接触の形成を回避するために、後者の近くにある複数の分岐部のうちの1つの分岐部を電気的に確実に絶縁する利点を提供し、したがって、2つの分岐部間の短絡の可能性を防ぐ。また、この配置により、カテーテルが格納位置にあるときに、後者の近くにある複数の分岐部のうちの1つの分岐部を電気的に絶縁することができる。
【0032】
一態様によれば、各分岐部の各活性域は、その遠位端とその近位端の離れた部分に位置し、好ましくは、活性域は、遠位端から少なくとも7mm離れている。
【0033】
一態様によれば、分岐部の遠位端の活性域は、第1管腔の外周上の連続する分岐部の遠位端の活性域から縦方向にオフセットされる。この特徴は、展開位置において、カテーテルが肺静脈内でわずかに歪んでいるときでさえ、後者のエレクトロポレーション隔離を実行可能にするために、肺静脈の外周に沿って活性域の良好な分布を可能にするという利点を与える。
【0034】
一態様によれば、複数の分岐部は、一般的なリボン形状を有する。リボン形状は、カテーテルが展開位置にあり、面が肺静脈の壁又は肺静脈の心門を圧迫しているとき、分岐部の良好な安定性を可能にする。この特徴により、複数の分岐部の不要なねじれを制限することができる。格納位置では、リボン形状により、本体の周りに複数の分岐部を列状に配置することができ、これは、カテーテルが格納位置にあるとき、線形エレクトロポレーションを容易にする。
【0035】
一態様によれば、第1管腔の外周に沿った複数の分岐部の固定は、近位端が固定された固定リングを介して行われ、固定リング自体は、第1管腔の外周に連結される。この特徴により、肺静脈の大きさに最適となるように、格納位置と展開位置の間で移動量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことにより、より明らかになるであろう。
図1】展開位置における本発明にかかる医療装置の側面図である。
図2】格納位置における図1の医療装置の側面図である。
図3】展開位置における図1の医療装置の上面図である。
図4】格納位置における図1の医療装置の上面図である。
図5】本発明の実施の形態2にかかる医療装置の側面図である。
図6】本発明にかかるカテーテルの分岐部の断面図である。
図7】プリント回路を備えるカテーテルの分岐部の断面図である。
図8】本発明の実施の形態3にかかる医療装置の2つの連続する分岐部の正面図である。
図9】本発明の一実施の形態にかかる2つの連続する分岐部を有する図8の医療装置の遠位部の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明にかかる医療装置の一実施の形態を側面図で示す。医療装置は、遠位部20を備えるカテーテル10を含む。
【0038】
カテーテル
遠位部20は、カテーテル10の遠位端に位置する部分、すなわち、患者の身体に最初に導入される部分であるカテーテル10の前部に位置する予定の端部と定義される。
【0039】
遠位部20は、カテーテル10に可動本体22を備える。本体22は、カテーテルの縦方向に移動可能である。この方向は、本体22の縦軸ALにより与えられる。本体22の移動は、カテーテル10の第1管腔24を通して起こればよい。「第1管腔」24は、カテーテル内の遠位部20付近に配置される空洞であって、カテーテル内の円筒形のボアの形状を有する空洞を意味する。このように、遠位部20の本体22は、この管腔24内に部分的に延伸しており、縦方向の動きでその内部をスライドしてもよい。言い換えれば、格納位置において、遠位部20の本体22は、そのほぼ全体が管腔24から出ており(図2に示すように)、展開位置において、そのほぼ全体が管腔24内にあり、その遠位端のみが管腔24と面一になってもよい。
【0040】
図3及び図4は、展開位置と格納位置のそれぞれにおけるカテーテル10を上面図で示す。すなわち、各図では、カテーテル10の遠位部20が前景に示され、カテーテル10の残りの部分が背景に示される。
【0041】
カテーテルの遠位部20は、当該部分に固定された複数の分岐部(ブランチ)30を備える。各分岐部30は、本体22に固定された遠位端36を含む。より正確には、各分岐部30の遠位端36は、本体22の外周、すなわち、本体22の外表面上に固定される。各分岐部30は、第1管腔24の外周に沿ってカテーテルに固定される近位端37を含む。近位端37は、本体22のすぐ近くで、第1管腔24の貫通部の外周に直接固定されてもよい。また、近位端37は、カテーテル10の外表面上で第1管腔34の外周に固定されてもよい。
【0042】
図1のカテーテル10は、8個の分岐部30を備える。そのうち、図1では、前景側に位置する4個のみを見ることができる。しかしながら、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、又は9個のように、種々の数の分岐部30を考慮してもよい。最大15個又はそれ以上の多くの分岐部を考慮してもよい。
【0043】
有利には、複数の分岐部30は、本体22の外周に沿って均一に配置される。言い換えれば、複数の分岐部30は、本体22の周囲に規則的な角度配置を持つ。この特徴により、各分岐部間の距離が等しいため、必要なエネルギ量を供給しやすくなる。
【0044】
各分岐部は、電極を形成する少なくとも1つの電気的活性域34を含む面32を備える。分岐部30の表面上に位置するこの電気的活性域34は、理想的には、導電性材料からなり、電極として適している。
【0045】
腕部30は、展開位置と格納位置の間で移動可能である。
【0046】
図2に示す格納位置では、複数の分岐部30は、真っすぐであり、本体22に沿ってその外周上に配置される。各分岐部30は、本体22の縦軸ALと平行な軸に沿って配置される。このように、格納位置では、複数の分岐部は、遠位部20の本体22の周りにカテーテル10と連続して延伸している。
【0047】
展開位置では、各分岐部30は、その遠位端36と近位端37の間に延びる円弧を形成する。各分岐部30により形成される円弧は、本体22の縦軸ALが属する平面に沿って延伸する。言い換えれば、展開位置では、各分岐部30は、遠位部20の本体22の縦軸ALが属する平面に沿って延伸する。この配置は、展開時の複数の分岐部30の安定性を増加させる。実際に、別の平面への展開では、複数の分岐部30のねじれが必要となる。これは、展開時の不安定性を増加させる。このように、本発明により、通常の展開位置において、複数の分岐部の配置を得ることができる。
【0048】
本発明にかかる医療装置は、展開位置において、第1の電極セットに第1量の電気エネルギを電気的に供給するように構成可能である。このように、カテーテルが展開位置にいるとき、2つの異なる分岐部30の活性域34の2つの電極間に電圧を印可するように構成される。
【0049】
また、本発明にかかる医療装置は、格納位置において、第2の電極セットに第2量の電気エネルギを電気的に供給するように構成可能である。このように、カテーテルが格納位置にあるとき、第2量の電気エネルギを供給するために、電極の少なくとも1つに電位を与えることができる。
【0050】
本発明にかかる医療装置のこの構成により、カテーテル10が展開位置にあるときと格納位置にあるときの両方で、ある量の電気エネルギを供給することができる。
【0051】
したがって、この配置は、展開位置のとき、カテーテル10を用いて、エレクトロポレーション(単極又は双極)による肺静脈隔離を行うことができ、同じカテーテルで、カテーテル10が格納位置にあるとき、おそらく単極モードで線状病変を行うことができるという利点を有する。
【0052】
したがって、本発明にかかる医療装置により、円形病変と線状病変を行うために、2つの異なるカテーテルを使用することを回避することができ、これにより、肺静脈隔離を行うことができる第1カテーテルを取り除いた後、線形エレクトロポレーションを行うことができる第2カテーテルを挿入する必要性を回避することにより、心房細動治療手順を容易にすることができる。これにより、患者にとって手技が迅速かつ低リスクとなる。また、本発明により、非常にコストのかかるカテーテルの使用数を減らすことにより、このような手術のコストを削減することができる。
【0053】
格納位置から展開位置へカテーテル10を通過させるために、本体22は、その遠位端からカテーテル10の本体への方向に管腔24内でスライドされる。このように、カテーテル10の遠位部20の本体22は、少なくとも部分的に第1管腔24内に挿入される。複数の分岐部30の遠位端36が固定される本体22の外周と、複数の分岐部30の近位端37が固定される第1管腔24の外周との間の長さを短くすると、結果として複数の分岐部30が円弧形状に配置される。格納位置から展開位置にカテーテル10を移動させるために、本体22は、上述とは反対方向に遠位部20からスライドされる。これにより、それぞれが本体22の縦軸ALと実質的に平行な軸に沿って、本体22に沿って複数の分岐部30を配置させる。
【0054】
分岐部の構造
ここでは、本発明にかかる医療装置の分岐部30の断面図である図6を参照する。分岐部30は、電気絶縁シース39で囲まれた導電性材料からなるコア38を備える。電気絶縁シース39は、コア38の外表面を覆う。このように、分岐部は、電流を流すことができ、その導電部分は、接触する他の物体から電気的に絶縁される。電気絶縁シース39は、本体22の縦軸ALと反対側の分岐部30の面32に作られた開口部391を備える。この特徴は、図3で特に見ることができる。電極を形成する分岐部30の電気的活性域34は、開口部391の反対側に位置する。この電気的活性域は、開口部391の反対側の分岐部30のコア38の一部により形成される。
【0055】
分岐部30のこの配置により、第1量及び第2量のエネルギの供給に必要な電気伝導を確保しつつ、コアが分岐部30の機械的強度を確保するという単純なアーキテクチャを持つことができる。一方、電気絶縁シース39により、その分岐部30に近い物体、特に、近傍の別の分岐部30の導電性コア38を電気的に絶縁することができる。本実施の形態によれば、所望のゾーンの開口部を切断することにより、電気的活性域34を所望の位置に配置することも容易である。また、電気絶縁シース39の開口部391を大きく又は小さく作ることにより、電気的活性域34の電極面積を選択することもできる。
【0056】
有利には、開口部391は、電気絶縁シース39をレーザ切断することにより作られる。この配置により、迅速、安価かつ容易に再現可能な工業的実装が可能になる。
【0057】
有利には、導電性コア38は、カテーテル10が展開位置から格納位置に移動したり、その逆に移動したりしても、変形の弾性範囲内に留まることができる柔軟な材料で作られる。この配置は、位置が変化したとき、カテーテル10の複数の分岐部30に最初に望まれる一般的な形状を維持する。実際、格納位置から展開位置に移動するとき、コア38の導体材料が弾性領域から出てきたならば、これは、最初に計画されたのと同じ配置で、後者が最初に格納された位置に戻るのを干渉する可能性がある。
【0058】
分岐部30の導電性コア38の材料は、形状記憶材料にすることができる。この配置により、形状記憶材料の超弾性特性を用いて、格納位置から展開位置へ移動したり、その逆に移動したりするとき、複数の分岐部30を変形させることができる。
【0059】
導電性コア38を構成する材料は、ニチノールとすることができる。ニチノールは、ニッケルとチタンをほぼ等しい割合で含む金属合金である。ニチノールは、超弾性特性を持つ形状記憶合金である。このニチノールは、他の金属(プラチナ、金等)と組み合わせて、その導電性を向上させることができる。
【0060】
その代わりに、又は、電気絶縁シース39の開口部391により作られる電気的活性域34と組み合わせて、1以上の分岐部30は、分岐部30の外層上にプリント回路393を備えてもよい。プリント回路393は、電気絶縁シース39上に取り付けることができる。また、それは、電気絶縁シース39上に直接印刷することもできる。このプリント回路393は、分岐部30のコア38から絶縁された電極を形成する。プリント回路393を備える分岐部30の断面図である図7は、この場合を示す。
【0061】
1以上の分岐部30は、いくつかの電極を備えてもよい。例えば、分岐部は、分岐部30上にいくつかの電気的活性域34を形成するように、電気絶縁シース39にいくつかの開口部391を備えてもよい。同様に、分岐部は、それぞれが電極を形成するいくつかのプリント回路393を備えてもよい。また、それは、電極を形成する1以上のプリント回路393と同様に、電極を形成する同じ分岐部に1以上の開口部391を有してもよい。上記の電極はすべて、第1量の電気エネルギ又は第2量の電気エネルギを供給することができる。
【0062】
測定電極
電気的活性域34又はプリント回路393により形成された電極は、電気的活動を記録することができる。このように、これらの電極は、例えば、該電極の近傍に位置する組織の電気的特性を測定するための測定電極としての使用に適している。これにより、治療すべき組織を検出することにより、特に、エレクトロポレーションを行う前に、肺静脈内にカテーテル10を配置させることを容易にすることができる。また、これは、アブレーション後に肺静脈の隔離を正しく行われたことを確認するためにも用いられる。
【0063】
さらに、電気的活性域34又はプリント回路393により形成される電極に加えて、少なくとも1つの分岐部30は、1以上の測定電極を備えてもよい。好ましくは、これらの測定電極は、分岐部30の外表面上に配置される。この配置は、測定を行うために特別に設計された電極を用いて、より高い精度で測定を行うことができるという利点を有する。
【0064】
有利には、各分岐部30は、少なくとも2つの異なる電気的活性域34を備え、これら電気的活性域の各々は、医療装置の電気回路の導電部分を形成する。各回路は、他の回路から独立しており、測定した心臓電流と発生した電流をそれぞれ伝播することができる。「測定した電流」は、後者を測定電極として用いるとき、電極により収集される心臓電流を意味する。そして、この電流は、電気生理学ベイアンプ、マルチメータ、オシロスコープ等のカテーテル外部の測定装置によって回収され、この装置は、電気データを表示することができる。「生成した電流」は、カテーテル10に接続された発電機からの電流を意味し、電気回路を流れ、回路に接続された電極を活性化してある量のエネルギを供給する。このように、同じ分岐部には、第1量の電気エネルギ及び/又は第2量の電気エネルギの供給を可能にする電気回路と、測定電極からの電気データの測定のためにそれに適合する電気回路とがある。
【0065】
有利には、所定の構成に応じて、アブレーション発電機は、分岐部のエレクトロポレーションを行うために電極で生成された電流を生成し、同時に、測定装置は、同じ分岐部30又は別の分岐部の少なくとも1つの測定電極のエネルギ量又は電気レベルを記録する。測定装置により測定されたこのエネルギ又は電圧や電流のこのレベルは、電気伝導率又はエネルギ吸収パラメータを導き出すために、発電機により実際に供給されるエネルギの測定と比較することができる。この最後の測定は、エネルギ又は供給した電圧や電流のレベルを測定する手段を備え得るアブレーション発電機を用いて取得することができる。
【0066】
有利には、分岐部30は、医療装置の単一の電気回路の導電部分を形成する少なくとも1つの電気的活性域34を備える。医療装置の電気回路は、測定した電流と生成した電流を伝播するように設計される。この配置により、エレクトロポレーション用の電極及び測定電極として、単一の電気的活性域34を用いることができる。有利には、分岐部30は、電気回路の導電部分を形成する1つの活性域34のみを備える。
【0067】
カテーテル10の遠位部20の本体22は、測定電極28を備えてもよい。この測定電極28は、電気的活動を記録することができる。有利には、それは、分岐部30の活性域34の電極とともに、電気的活動を記録する。したがって、分岐部と電極の遠位部の本体22との間の電圧を測定することができる。より有利には、この電極は、基準電極である。これにより、分岐部30の活性域34により運ばれる電極での電位を測定することができる。
【0068】
これらの規定により、特にエレクトロポレーションを行う前に、カテーテル配置を改善するために、肺静脈を隔離する行為の間正確な測定を行うことができ、又はエレクトロポレーションの成功を監視することができる。
【0069】
分岐部の絶縁
カテーテル10の複数の分岐部30は、それぞれ、2つの側端35を備えてもよく、各側端35は、電気絶縁を構成する。有利には、各側端35は、電気絶縁材料で作ることができる。この電気絶縁は、第1分岐部30近くに位置する分岐部30から分岐部30を電気的に絶縁する。この配置により、2つの異なる分岐部30上に位置する2つの電極間の接触を避けることができる。このように、治療を受けた患者の心房の壁によりカテーテル10に加えられたストレスにより2つの分岐部が接近した場合でも、双極性エレクトロポレーションを行うことができる。同様に、カテーテル10が格納位置にあるとき、分岐部30の活性域34は、このように、後者のすぐ近傍の複数の分岐部の活性域34から電気的に絶縁される。このように、このモードの唯一の活性化電極がカテーテル10の他の電極から絶縁されるので、単極性エレクトロポレーションが容易になる。したがって、制御された電極表面が維持され、いくつかの電極間の不要な電気的接触による可能性のある短絡が回避される。
【0070】
有利には、開口部が本体22の縦軸ALの反対側の面にのみ設けられている場合には、この絶縁は、分岐部30の絶縁シース39内に直接作られる。この構成では、分岐部30の各側端35は、絶縁シース39により覆われる。この配置により、分岐部30の側端35を絶縁シース39で直接絶縁することができる。これは、複数の分岐部に絶縁素子を追加する必要がなく、製造が容易で安価になることを意味する。
【0071】
また、遠位部20の本体22の縦軸ALとは反対側の分岐部30の面に位置する絶縁バッファゾーン351により、複数の分岐部の活性域34を側端35から分離することもできる。絶縁材料で覆われたこの絶縁バッファゾーン351は、例えば、絶縁シース39から取ることもできるし、分岐部20に固定された追加の要素から取ることもできる。例えば、分岐部30がねじれているならば、このバッファゾーンにより、ある分岐部の電気的活性域34が近傍の別の分岐部の別の活性域と接触しないことを確保することができる。有利には、この絶縁バッファゾーン351は、分岐部30の幅を有する。
【0072】
また、側端35を覆う絶縁材料で作られた絶縁要素を追加することにより、側端35の絶縁を達成することができ、これにより、複数の分岐部30の互いに対する良好な電気絶縁を可能にする。
【0073】
その代わりに又はそれに加えて、本体22上にスプラインのセットを提供することができる。これらのスプラインは、本体22の縦軸に平行な縦方向に、本体22の外表面上を延伸する。これらのスプラインは、カテーテルが格納位置にあるときに形成される溝に複数の分岐部20を収容するように設計される。このように、格納位置では、各分岐部20は、スプラインの本体22の縦軸ALから最も遠い部分によって、後者の近傍の2つの分岐部20から分離される。好ましくは、スプラインのこの部分は、電気絶縁材料で作られる。この配置の利点は、カテーテル10が格納位置にあるとき、異なる複数の分岐部20を電気的に絶縁することができることである。このように、カテーテル10が第2量の電気エネルギを供給するとき、この第2量の電気エネルギを供給するのに用いられる電気的活性域34は、スプラインにより、他の分岐部20(したがって、他の活性域34)から電気的に絶縁される。したがって、使用される電極の表面は、正確に制御され、実行される単極性エレクトロポレーションの品質を低下させる可能性のある短絡は、回避される。
【0074】
活性域の配置
各分岐部30の各活性域34は、該分岐部30の遠位端36から離れている。さらに、分岐部30の各活性域34は、該分岐部30の近位端から離れている。この配置により、カテーテル10が展開位置にあるときに双極性エレクトロポレーションを行う電界を作るために、活性域の適切な配置が可能になる。
【0075】
一実施の形態によれば、カテーテル10の遠位部20は、本体22の縦軸ALに垂直な赤道面PEを備える。赤道面PEは、近位端37及び遠位端36から等距離の複数の分岐部30を切断する。複数の分岐部30の各活性域34は、赤道面PEの中心にある。この配置により、カテーテルが展開位置にあるときに、本体22の縦軸ALから最も遠い分岐部30の部分に活性域34を有することができる。このように、活性域34は、肺静脈及び心門の壁にできるだけ近く、したがって、効果的にエレクトロポレーションの電界を作り出すことができる。
【0076】
一実施の形態によれば、電気的活性域34は、赤道面PEに対して分岐部30の遠位端36の方向にオフセットされる。この特徴により、カテーテル10が展開時に肺静脈に「真っすぐ」でない場合、すなわち、赤道面PEのレベルにおいて、本体22の縦軸ALが肺静脈の縦軸に局所的に実質的に平行でない場合に、活性域34のより良い配置を可能にする。この有利な配置により、カテーテル10が最適に展開されていない場合でも、展開位置における効果的なエレクトロポレーションが可能となる。有利には、分岐部30の電気的活性域34は、分岐部30の近位端36から少なくとも7mmだけオフセットされる。電気的活性域34の考慮されるオフセットは、9mmであるが、他のオフセット値を考慮してもよい。
【0077】
有利には、電気的活性域34は、赤道面PEに対して分岐部30の近位端37の方向にオフセットされる。この特徴により、カテーテル10が展開時に肺静脈に「真っすぐ」でない場合、すなわち、赤道面PEのレベルにおいて、本体22の縦軸ALが肺静脈の縦軸に局所的に実質的に平行でない場合に、活性域34のより良い配置を可能にする。この有利な配置により、カテーテル10が最適に展開されていない場合でも、展開位置における効果的なエレクトロポレーションを可能にする。
【0078】
一実施の形態によれば、各分岐部30は、カテーテル10の他の分岐部30の配置と同様に、その活性域34の配置を含む。
【0079】
本発明の一実施の形態によれば、分岐部30は、該分岐部30に直接隣接して位置する分岐部又は複数の分岐部30の電気的活性域34の配置とは異なる電気的活性域34の配置を含む。この配置により、1の分岐部30から他方への異なる活性域34のレイアウトを有することができる。特に、これは、カテーテル10が展開時に肺静脈に「真っすぐ」でない場合、すなわち、赤道面PEのレベルにおいて、本体22の縦軸ALが肺静脈の縦軸に局所的に実質的に平行でない場合に有利である。この有利な配置により、カテーテル10が展開されていない場合でも、展開位置における効果的なエレクトロポレーションが可能になる。
【0080】
図8は、カテーテル10上の連続する分岐部30を示し、それらの活性域34は、互いに縦方向にオフセットされる。図9は、カテーテル10の遠位部20の本体22上の2つの分岐部30の配置を示す。
【0081】
有利には、分岐部30の電気的活性域34は、後者のすぐ近傍に位置する分岐部の活性域に対して縦方向にオフセットされる。
【0082】
有利には、分岐部30の電気的活性域34は、上述の第1分岐部30のすぐ近傍に位置する分岐部30の電気的活性域34に対して近位端37の方向に縦方向に2mmだけオフセットされる。この配置により、本体22の外周に沿って、2つの連続する分岐部30の間の電界を良好に作り出すことができる。また、この配置は、カテーテル10が肺静脈に「真っすぐ」展開していない場合にも有利である。縦方向にオフセットされた活性域34は、遠位端36に近い一端でのみオフセットされてもよく、電気的活性域34の他端、すなわち、近位端37に近い端部は、後者のすぐ近傍に位置する分岐部30の電気的活性域34と同じレベルである。言い換えれば、分岐部30の電気的活性域34は、すぐ近傍に位置する分岐部30よりも長く、分岐部30の遠位端36に近く、同時に、すぐ近傍に位置する分岐部30の電気的活性域34と分岐部の近位端37から同じ距離であってもよい。
【0083】
本発明の一実施の形態によれば、分岐部30の活性域は、該分岐部30の遠位端36から7mmの距離に位置し、後者のすぐ近傍の分岐部30の電気的活性域34は、第1分岐部30に対して近位端に向かって縦方向に2mmだけオフセットされる。
【0084】
分岐部及び固定
複数の分岐部30は、一般的なリボン形状を有する。「リボン形状」は、複数の分岐部30が実質的に長方形の断面を含むことを意味する。このように、本体22の縦軸ALとは反対側の複数の分岐部30の複数の面32は、実質的に平坦であり、後者の側端35よりも広い。リボン形状により、面32が肺静脈の壁を圧迫するので、カテーテル10が展開位置にあるとき、分岐部の良好な安定性を可能にする。この特徴は、複数の分岐部30の不要なねじれを減少させる。格納位置では、リボン形状により、本体22の周りに複数の分岐部30の列を配置することができ、これは、カテーテル10が格納位置にあるときに単極性エレクトロポレーションを容易にする。具体的には、展開中の小枝30のリボン形状により、互いに関連する小枝30の配置の規則的な配置を維持することができる。この形状は、展開中にねじれないように、各分岐部30に十分な剛性を提供する。これは、この特徴により、一度展開した特定の分岐部が縦軸ALの周りに均等に配置されないことを防止するためである。このような誤った配置は、各分岐部間の距離が必ずしも同じではないことを意味する。このように、分岐部がすぐ近傍の分岐部に近すぎる可能性があり、これは、エレクトロポレーション中に2つの分岐部の間でアークが発生する危険性がある。同様に、分岐部は、縦軸ALについて次の分岐部から遠すぎる可能性がある。この場合、過度の距離は、分離すべき静脈の外周上で不完全になるエレクトロポレーションの欠陥につながる可能性がある。したがって、複数の分岐部30のリボン形状により、展開中に複数の分岐部30を均等かつ対称的にしておくことができる。
【0085】
図5に示す一実施の形態によれば、第1管腔24の外周への複数の分岐部30の近位端37の固定は、固定リング29を介して行われる。この固定リング29は、カテーテル10の遠位部20から少し上流のカテーテル10の外表面をつかむ。有利には、カテーテル10上の固定リング29の位置を調整することができる。この調整は、治療される肺静脈の大きさに最適に適応するために、展開中に複数の分岐部30が移動する半径方向の距離を調整するために用いられる。
【0086】
カテーテルの案内(ガイド)
患者を治療するために、可能性に応じて、カテーテル10は、心房までの血管に挿入された導入器自体に挿入される。カテーテルは、左心房を通って肺静脈に向かい、肺静脈を分離する。このため、遠位部20の本体22内に、図1に示すような案内装置を受け入れるように構成される第2管腔(図示せず)を提供することができる。この例では、案内装置40は、血管又は臓器の壁に穴をあけるのを回避するために、丸みを帯びた又は湾曲した遠位端を備える。本体22の第2管腔を通過する前に、案内装置40は、カテーテル10の第1管腔24に収容される。
【0087】
有利には、第1及び/又は第2管腔は、案内装置を受け入れるように構成される直径を有する。
【0088】
有利には、第2管腔は、本体22の遠位端上に開口する。
【0089】
有利には、案内装置40は、案内カテーテルであればよい。
【0090】
有利には、案内装置は、ガイドワイヤであればよい。「ガイドワイヤ」は、金属ガイドを意味する。
【0091】
その代わりに又はそれに加えて、案内装置は、カテーテル10と一体化された内部機構を備えてもよい。内部機構は、カテーテル10の遠位部20の方向付けを可能にする。この内部機構は、例えば、遠位部20を曲げたり、角度付けしたりすることができる1以上のロッドを備えてもよい。この内部機構は、カテーテルのハンドル又は近位制御装置から作動させたり、制御したりすることができる。
【0092】
案内装置は、血管内に遠位部20を駆動させる手段を備えてもよい。ある場合では、第1管腔24に挿入するとき、案内装置は、カテーテル10から本体22を縦方向に引き出してもよい。この駆動は、例えば、本体22の一部に接触する案内装置40の肩又は円周留め具により提供されればよい。有利には、それは、カテーテル10の遠位部20に案内装置40を固定する固定手段を備えてもよい。
【0093】
一実施の形態によれば、本体22に固定した複数の分岐部30の展開は、バルーンを膨らませることにより確保される。この変形により、バルーンの表面を電極の支持体として用いることができる。本実施の形態により、複数の分岐部が変形したとき、該分岐部の適切な位置決めを安定して確保することができる。別の例によれば、バルーンは、格子メッシュ等の変形可能なメッシュに置き換えたり、それと組み合わせたりしてもよい。例えば、3次元で展開したメッシュの安定した形状をもたらすために、形状記憶材料を用いることができる。
【0094】
案内装置は、血管内及び心臓内でカテーテル10を案内するための多関節ヘッドを備えてもよく、これにより、血管内及び心臓内での旋回に従うことができる。
【0095】
また、案内装置は、第2管腔から多関節ヘッドでカテーテル10を案内してもよい。多関節ヘッドは、シャフト22の遠位端を通って第2管腔から出る。
【0096】
エレクトロポレーション方法
一実施の形態によれば、医療装置は、カテーテル10に加えて、複数の分岐部30の活性域34に電気エネルギを供給するように構成される発電機を備える。
【0097】
有利には、カテーテル10が展開位置にあるとき、第1量の電気エネルギは、少なくとも2つの分岐部30内に生成される一連の電気パルスに応じて供給される。これらの電気パルスは、2つの分岐部30の2つの活性域34間に電圧パルスを生成する。パルスは、約1又は数マイクロ秒の持続時間を有する。この配置は、双極モードでエレクトロポレーションを実施するのに有利である。
【0098】
なお、パルスシーケンスは、分岐部30の対のいくつかの電極対に連続的に供給することによって実行すればよい。選択した分岐部30の各対では、2つの分岐部30は、本体22の外周上の2つの連続する分岐部であればよい。
【0099】
有利には、カテーテル10が格納位置にあるとき、第2量の電気エネルギは、少なくとも1つの分岐部30内に生成される一連の電気パルスに応じて供給される。これらの電気パルスは、分岐部30の電気的活性域34と、患者の皮膚に置かれた外部電極との間、又は2つの分岐部30の2つの活性域34の間に電圧パルスを生成する。パルスは、約1マイクロ秒の持続時間を有する。この配置は、単極モード又は双極モードでエレクトロポレーションを実施するのに有利である。
【符号の説明】
【0100】
10:カテーテル
20:カテーテルの遠位部
22:遠位部の本体
24:第1管腔
28:本体測定電極
29:固定リング
30:分岐部
32:分岐部の面
34:電気的活性域
35:分岐部の側端
351:絶縁バッファゾーン
36:分岐部の遠位端
37:分岐部の近位端
38:分岐部のコア
39:分岐部の絶縁シース
391:絶縁シース内の開口部
393:プリント回路
40:案内装置
AL:本体の縦軸
PE:遠位部の赤道面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】