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特表2024-500946糖タンパク質VIに対するナノボディ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】糖タンパク質VIに対するナノボディ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231227BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231227BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231227BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 31/616 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231227BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231227BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
A61P7/02
A61P9/10
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/36
A61K51/10 100
A61K38/19
A61K38/43
A61K31/616
A61K31/727
A61K31/37
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K39/395 C
A61K47/68
A61K47/64
A61K49/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538767
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021087129
(87)【国際公開番号】W WO2022136457
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2020602.5
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】305031567
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ バーミンガム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】スレイター、 アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ポールター、 ナタリー サラ
(72)【発明者】
【氏名】トマス、 マーク ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン、 スティーブ ポール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076AA95
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE41M
4C076EE59
4C076EE59M
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA12
4C084AA19
4C084BA44
4C084CA18
4C084DA01
4C084DC01
4C084DC21
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA541
4C084ZA542
4C084ZC192
4C084ZC202
4C084ZC412
4C084ZC422
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA25
4C085AA27
4C085BB44
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4C085HH01
4C085KA03
4C085KA04
4C085KB82
4C085LL07
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA19
4C086DA17
4C086EA27
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA36
4C086ZA54
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、配列番号1~54によって定義されるようなナノボディに関し、これは配列番号55~110によってコードされ得、糖タンパク質VI(GPVI)に特異的に結合することができる。治療的用途および/またはイメージング用途を含むそれらの使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPVIに特異的に結合することができるナノボディまたはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
Kd値が500nM未満、250nM未満、100nM未満、50nM未満、25nM未満、10nM未満、5nM未満、または1nM未満である、請求項1に記載のナノボディまたはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
以下のGPVI残基:R38、E40、R67、Q71、W76のうちの1つ以上(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ)に結合しない、請求項1または2に記載のナノボディまたはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
ヒトGPVIにおける以下の残基:E21、S45、R46、Y47、Q48、P56、A57およびS61のうちの1つ以上に結合する、先行請求項のいずれかに記載のナノボディまたはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
ヒトGPVIにおける以下の残基:S45、R46、Y47、Q48および/またはS61のうちの1つ以上に結合する、請求項4に記載のナノボディまたはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
以下の残基:S99、P100、Y102、T104、N105、E111、D112、D114、Y115のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つもしくはそれ以上、またはその保存的置換を含む、先行請求項のいずれかに記載のナノボディまたはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
配列番号1~54;配列番号1、2、5、18、21、22、25、33、35、44;配列番号2、21、22、25、35;または配列番号2、21、35と少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、または100%の同一性を有する、先行請求項のいずれかに記載のナノボディまたはその抗原結合フラグメント。。
【請求項8】
表1で強調表示されている少なくともCDR3配列を含み、任意でCDR1および/またはCDR3配列をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載のナノボディまたはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
先行請求項のいずれかに記載のナノボディまたはその抗原フラグメントと交差競合しGPVI上の同じエピトープに結合する、ナノボディまたはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
先行請求項のいずれかに記載のナノボディまたはその抗原結合フラグメントと、別の化学的部分とを含む、コンジュゲートまたは融合タンパク質。
【請求項11】
前記別の化学的部分は半減期延長部分である、請求項10に記載のコンジュゲートまたは融合タンパク質。
【請求項12】
前記半減期延長部分がFcドメイン、多量体化ドメイン、ヒト血清アルブミン(HAS)、またはウシ血清アルブミン(BSA)である、請求項11に記載のコンジュゲートまたは融合タンパク質。
【請求項13】
前記別の化学的部分は治療薬、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、または診断用分子もしくはタグである、請求項10に記載のコンジュゲートまたは融合タンパク質。
【請求項14】
先行請求項のいずれかに記載ナノボディもしくは抗原結合フラグメント、コンジュゲートまたは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載のナノボディもしくは抗原結合フラグメント、コンジュゲートまたは融合タンパク質を含み、任意でそれを薬学的に許容される賦形剤と共に含む、医薬製剤。
【請求項16】
血液の血小板凝集過程から生じる疾患、およびその他の関連する状態を治療および/または予防する方法に使用するための、請求項1~13のいずれかに記載のナノボディもしくは抗原結合フラグメント、コンジュゲートまたは融合タンパク質。
【請求項17】
血栓症の予防および/または治療の方法に使用するための、請求項1~13のいずれかに記載のナノボディもしくは抗原結合フラグメント、コンジュゲートまたは融合タンパク質。
【請求項18】
動脈内および/または静脈内血栓症に関連する急性および慢性の血管疾患、例えば、急性冠症候群/急性心筋梗塞、慢性冠症候群/安定冠動脈疾患、一過性脳虚血発作、脳卒中、末梢血管疾患、深部静脈血栓症、心房細動患者における血栓予防、最近医療的または外科的に入院した患者における血栓予防、肺塞栓症、敗血症関連凝固障害、COVID-19関連血栓症、心臓デバイスに関連する血栓症(例えば左心室補助装置、体外式膜型人工肺、機械式心臓弁)、左心室血栓症、心不全における血栓予防、血栓形成性疾患(例えば抗リン脂質症候群、第V因子ライデン)における血栓予防、および他の形態の炎症、感染症および癌誘導による血栓症の、治療および/または予防の方法に使用するための、請求項1~13のいずれかに記載のナノボディもしくは抗原結合フラグメント、コンジュゲートまたは融合タンパク質。
【請求項19】
アスピリン(および他のシクロオキシゲナーゼ阻害剤)、P2Y12受容体アンタゴニストおよびGPIIb/IIIa阻害剤を含む抗血小板薬、ならびにヘパリン、ワルファリンおよび第Xa因子およびトロンビンの直接阻害剤を含む抗凝固薬、ならびにレテプラーゼ、アルテプラーゼおよびストレプトキナーゼのような血栓溶解療剤などの、他の治療薬と組み合わされた、請求項1~13のいずれかに記載のナノボディもしくは抗原結合フラグメント、コンジュゲートまたは融合タンパク質または請求項16~18のいずれかに記載の方法に使用するためのナノボディもしくは抗原結合フラグメント、コンジュゲートまたは融合タンパク質。
【請求項20】
GPVIに結合してGPVIを可視化するためのイメージングツールとして使用するための、請求項1~13のいずれかに記載のナノボディ。
【請求項21】
前記ナノボディはコラーゲンへの結合についてGPVIと競合しない、請求項20に記載のナノボディ。
【請求項22】
前記ナノボディは、配列番号28に記載の配列を含み、任意で配列番号82によってコードされる、請求項21に記載のナノボディ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、糖タンパク質VI(GPVI)に対して作製されたナノボディおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板糖タンパク質VI(GPVI)は魅力的な抗血栓標的として同定されている{Andrews, 2014}。GPVIはコラーゲンのための主要な血小板シグナル伝達受容体であり{Nieswandt, 2003}、フィブリン{Mammadova-Bach, 2015 }を含む他のリガンドのための受容体でもある。GPVIは2つの免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(D1およびD2)、高度にO-グリコシル化およびシアル化されたストーク領域、1回膜貫通型ヘリックス、および短い細胞内尾部からなる{Moroi, 2004}。N末端のD1ドメインには1つのN-グリコシル化部位が存在する。GPVIシグナル伝達にはFcRγ鎖ホモ二量体が必要であり、FcRγ鎖ホモ二量体はGPVIの膜貫通領域における塩橋を介して会合する{Zheng, 2001}。リガンド結合はD1ドメインを介して行われ{Lecut, 2004}、FcRγ鎖上に存在する免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM:immunoreceptor tyrosine based activation motif)内に見出される2つの保存されたチロシンの、Srcファミリーキナーゼによるリン酸化をもたらす{Ezumi, 1998}。ITAMのリン酸化は、そのタンデムSH2ドメインを介したチロシンキナーゼSykの動員およびさらに下流のシグナル伝達を可能にする{Watson, 2005}。
【0003】
GPVIは膜中に単量体および二量体として存在すると提案されている{Jung, 2012}。MoroiとJungのグループは、細胞外ドメインがIgG由来の二量体Fcドメインに融合された組換え二量体GPVIはマイクロモラーの親和性でコラーゲンに結合するが単量体GPVIはしないことを報告した{Miura, 2002}。彼らは、この差次的な結合が、結合力の増加または二量体特異的エピトープの形成のいずれかによるものであると提案した。後者は、血小板活性化の際に発現増加を検出する二量体特異的抗体の発見によって支持された{Jung, 2012}。GPVIは血小板の細胞内ストアには存在しないため、このことは、結合の増加が、二量体化の結果としての構造変化によるものであることを示唆している。組み換えGPVI細胞外ドメインの結晶構造が、非結合型形態(PDB: 2GI7および5OU7)およびコラーゲン関連ペプチド(CRP)結合型形態(PDB: 5OU8および5OU9)の両方について解明されており、どちらの構造もD2ドメイン内に存在する背面同士二量体化インターフェースを明らかにしている。さらに、コラーゲンは血小板膜表面上にGPVI受容体をクラスター化することができ{Poulter, 2017}、従って高次のオリゴマーを生成することができる。GPVIシグナル伝達は二量体化を通じて起こり、さらなるクラスター化によって増加する。
【0004】
しかし、GPVIにおける二量体特異的エピトープの概念は、GPVIに結合したCRPの結晶構造によって支持されておらず、それはD1ドメインでの結合を示し、結合エピトープのde novo形成ではなく1:1の化学量論を示唆している。さらに、GPVIによる血小板活性化における二量体化の役割を完全に理解するためには、二量体特異的抗体の結合部位と、血小板活性化が二量体化の増加につながるメカニズムとが必要である。
【0005】
今日までに、異なる作用機序を有する2つのGPVI阻害剤が初期段階の臨床試験を受けている。リバセプトはGPVIのFc二量体であり、損傷部位でのコラーゲンや他のリガンドとの結合について血小板GPVIと競合する。リバセプトは、第I相安全性試験、および症候性頸動脈狭窄を有する患者 (NCT 01645306) または経皮的冠動脈介入を受けている患者 (NCT03312855) を対象とした2件の第II相試験を受けている。2件の第II相試験の結果はまだ報告されていない。ACT017は、第I相安全性試験が実施されたブロッキング性ヒト化Fabであり、現在、急性虚血性脳卒中患者を対象とした第II相試験 (NCT03803007) が実施されている。どちらの治療も、現在の標準治療に加えて行われる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、GPVIに対して作製された新規ナノボディの開発に部分的に基づいている。
【0007】
したがって、第一の側面において、GPVIに特異的に結合することができるナノボディまたはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0008】
本開示のナノボディは、500nM未満、例えば250nM未満、100nM未満、さらには50nM未満、25nM未満、例えば10nM未満、5nM未満または1nM未満のKd値 (表面プラズモン共鳴およびそれに続く速度論的分析によって決定される) でGPVIに結合し得る。
【0009】
本開示のナノボディは、GPVI分子のうちコラーゲンまたはCRPが結合する領域とは異なる領域に結合し得る。CRPが結合する残基は、結晶構造PDB: 5OU8および5OU9から決定されるところの残基R38、E40、R67、Q71、W76である。したがって、1つの教示において、本開示のナノボディは、次のGPVI残基の1つ以上(例えば2つ、3つ、4つ、または5つ)に結合しない: R38、E40、R67、Q71、W76。
【0010】
本開示のナノボディは、ヒトGPVIにおける以下の残基:E21、S45、R46、Y47、Q48、P56、A57およびS61(uniprotエントリーQ9HCN6による番号付けから、シグナルペプチドを構成していた最初の20アミノ酸を差し引いた)のうちの1つ以上に結合するか、もしくは近接(例えば、特定された残基のどちらかの側に1残基)していてもよく(ナノボディ2とGPVIを共結晶化することからの同定された結合残基)、または、残基S45、R46、Y47、Q48および/またはS61(uniprot Q9HCN6による番号付けからからシグナルペプチド(残基1~20)を差し引いた)、もしくは他の種の相同GPVI配列で同定された対応残基(これは配列アラインメント調査(クラスタルオメガを使用するものなど)を通じて当業者が容易に識別することができる)のうちの少なくとも1つ以上に結合するか、もしくは近接(例えば、特定された残基のどちらかの側に1残基)していてもよい。本開示のナノボディは、特定された残基のうちの2、3、4、5、6、7または8個に結合するかまたは近接し得る。
【0011】
本開示のナノボディまたは抗原結合フラグメントは、ナノボディまたはその抗原結合フラグメントのCDR3領域において以下の残基の少なくとも1、2、3、4、5、6個もしくはそれ以上、または保存的置換を含み得る:S99、P100、Y102、T104、N105、E111、D112、D114、Y115(本明細書で同定されるNb2に従った番号付け)。クラスタルオメガのような配列アラインメントソフトウェアの使用を通じて、当業者は、ナノボディが上記で特定されたNb2の残基に対応する位置に同一の残基または保存的置換を有するかどうかを容易に識別することができる。
【0012】
1つの教示では、ナノボディまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号(SEQ ID NO)1~54に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、または100%の同一性の配列を含む。
【0013】
1つの教示では、ナノボディまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号1、2、5、19、21、22、25、33、35、44に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、または100%の同一性の配列を含む。この選択の基準は、GPVIでトランスフェクトした細胞株のアッセイにおいて少なくとも40%のNFATシグナル阻害をもたらしたナノボディであった (図1a) 。
【0014】
1つの教示において、ナノボディまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、21、22、25、35に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、または100%の同一性である配列を含む。この選択の基準は、GPVIでトランスフェクトした細胞株のアッセイにおいて、少なくとも60%のNFATシグナル阻害を有するナノボディであった (図1a) 。
【0015】
1つの教示において、ナノボディ、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、21、および35に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、または100%の同一性である配列を含む。この選択の基準は、GPVIでトランスフェクトした細胞株のアッセイにおいて少なくとも80%のNFATシグナル阻害を有するナノボディであり(図1a)、また、ELISAアッセイにおいてGPVI-Fcに結合する上位5つのナノボディでもスコア付けされた (図1b) 。
【0016】
1つの教示では、ナノボディまたはその抗原結合フラグメントは、下の表に強調表示されている少なくともCDR3配列を含み、任意で、CDR1および/またはCDR3配列をさらに含む。
【0017】
【表1】

表1.CDR 1、2および3の配列を順番にハイライト表示/下線強調した、上位10個の阻害性ナノボディの配列アラインメント。
【0018】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMyers and Millerのアルゴリズム{Meyers and Miller 1998}を使用して、PAM120加重残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を用いて決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch{Needleman and Wunsch 1970}アルゴリズムを使用して、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのどちらかおよびギャップ加重16、14、12、10、8、6、または4と長さ加重1、2、3、4、5、または6を用いて決定することができる
【0019】
配列同一性への参照は、認識可能なナノボディ配列を指し、したがって、ナノボディ配列と融合する可能性のあるタンパク質またはペプチドのような、ナノボディのN末端またはC末端に追加される可能性のある追加的配列は含まないことが理解されるべきである。
【0020】
別の教示では、本開示は、本明細書に記載されるナノボディのいずれかと同じGPVI上エピトープに結合するナノボディ(すなわち、ヒトGPVIへの結合について本開示のナノボディのいずれかと交差競合(cross-complete)する能力を有する抗体)を提供する。特定の教示では、交差競合研究のための参照ナノボディは、本明細書に記載されているNb2、Nb21および/またはNb35ナノボディであり得る。このような交差競合ナノボディは、標準的なGPVI結合アッセイにおいて、本明細書に特定されたナノボディと交差競合する能力に基づいて特定することができる。例えば、組換えヒトGPVIタンパク質を基材に固定化し、ナノボディのうちの1つを蛍光標識し、非標識ナノボディが標識ナノボディの結合に対抗する能力が評価される、標準的なELISAアッセイを用いることができる。それに加えて、またはそれに代えて、BIAcore分析を用いて、ナノボディの交差競合能力を評価することもできる。
【0021】
ナノボディは現在、最も小さい抗体関連分子であり、分子量は通常の抗体の約1/10である。モノクローナル抗体の抗原反応性に加えて、ナノボディは以下の属性の1つ以上を含むいくつかのユニークな機能的特性を持っている:分子質量の小ささ、安定性の強さ;良好な溶解性;発現の容易さ;免疫原性の弱さ;浸透性の強さ;ターゲティングの強さ;ヒト化がシンプルであること;そしてより大きな抗体や断片に比べて安価に製造できること。
【0022】
本明細書で使用される「ナノボディ」および「単一ドメイン抗体(VHH)」という用語は、同じ意味を有し、単一の単量体可変抗体ドメインから成る抗体フラグメントを指すのと。通常、ナノボディは1つの重鎖可変領域のみからなる。本明細書で使用されるナノボディという用語は、単量体形態およびそのホモまたはヘテロ多量体(例えば、そのホモまたはヘテロ二量体および四量体)形態を指す。多量体形態は、例えば個々のナノボディドメイン間にリンカーを含めることによって生成され得る。適切なリンカーの例はGGGGSであり、それ自体も単量体または例えば三量体のような多量体形態であり得る。このようなナノボディはそれぞれ、500nM、250nM、100nM、50nM、25nM、10nM、5nM、または1nM未満のKd値でGPVIをブロックするアンタゴニストとしての使用を見出し得る。
【0023】
本明細書で使用される「可変」という用語は、ナノボディ内の可変領域の特定の部分の配列がナノボディごとに変化し、それが様々な特定のナノボディの特定の抗原への結合と特異性を形成することを意味する。しかし、可変性は一般にナノボディの可変領域全体にわたり均一には分布していない。それは軽鎖と重鎖の可変領域の相補性決定領域 (CDR) または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中していることが多い。可変領域のうち、より保存された部分はフレームワーク領域 (FR) と呼ばれる。天然の重鎖と軽鎖の可変領域はそれぞれ4つのFR領域を含んでおり、それらは実質的にβ-フォールド立体配置をとり、連結ループを形成し場合によっては部分的にβ-フォールド構造を形成し得る3つのCDRによって繋げられる。各鎖のCDRはFR領域によって他の鎖と密接に隣接しており、他の鎖のCDRと共にナノボディの抗原結合部位を形成する {Kabat et al., 1991参照}。
【0024】
本明細書で使用される「重鎖可変領域」および「VH」という用語は、互換的に使用され得る。本明細書で使用される「可変領域」および「相補性決定領域(CDR)」という用語は、互換的に使用され得る。
【0025】
別の好ましい教示では、前記ナノボディの重鎖可変領域は、CDR1、CDR2、およびCDR3という3つの相補性決定領域を含む。
【0026】
本開示のナノボディの重鎖の可変領域は、その可変領域の少なくとも一部が抗原の結合に関与するため、特に関心事項である。したがって、本開示は、そのCDR、特にCDR3が本明細書で同定されるCDRと同一である(または同定されたCDR配列に関して最大で1つまたは2つの置換を含む)ことを条件として、CDRを伴うナノボディ重鎖可変領域を有する分子を含む。
【0027】
本発明のナノボディは、当業者に知られる技術を使用してヒト化され得る(たとえば{Vincke et al. 2009}参照)。
【0028】
本教示には、無傷のナノボディだけでなく、免疫学的に活性なナノボディの抗原結合フラグメント(複数可)、または他の配列とナノボディから形成された融合タンパク質(複数可)も含まれる。したがって、本開示には、開示されたナノボディのフラグメント、誘導体およびアナログも含まれる。
【0029】
本明細書で使用される「フラグメント」、「誘導体」および「アナログ」という用語は、実質的に本発明のナノボディと同じ生物学的機能または活性を保持するポリペプチドを指す。本発明のポリペプチドフラグメント、誘導体またはアナログは、 (i) 1つ以上の保存的または非保存的アミノ酸残基置換がされたポリペプチドであってもよい。このような置換アミノ酸残基は、遺伝子コードによってコードされる場合とされない場合がある;または、 (ii) 1つ以上のアミノ酸残基に置換基を持つポリペプチド;または (iii) 成熟ポリペプチドと別の化合物(例えば、ポリエチレングリコールのように、ポリペプチドの半減期を増加させる化合物)を融合させることにより形成されるポリペプチド;または (iv) ポリペプチド配列に追加のアミノ酸配列を融合させることにより形成されるポリペプチド(例えば、リーダー配列もしくは分泌配列、またはこのポリペプチドまたはプロタンパク質配列を精製するために使用される配列、または6 Hisタグを伴って形成された融合タンパク質)。本明細書での教示によれば、これらのフラグメント、誘導体、およびアナログは当業者の技量の範囲内にある。
【0030】
本発明のナノボディは、GPVIタンパク質結合活性を有する上記CDR領域を含むポリペプチドを指す。この用語は、開示のナノボディと同じ機能を有する上記CDR領域を含むポリペプチドのバリアント形態も含む。これらのバリエーションには、1つまたは複数(通常は1-50、1-30、1-20、または1-10個)のアミノ酸の欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端における1つまたは複数(概して20未満、10未満、または5未満)のアミノ酸の付加が含まれるが、これらに限定されない。例えば、当技術分野では、類似または同様の特性を持つアミノ酸の置換は、通常、タンパク質の機能を変化させない。別の例として、C末端および/またはN末端に1つまたは複数のアミノ酸を追加しても、タンパク質の機能は変化しない可能性がある。この用語には、開示のナノボディの活性フラグメントおよび活性誘導体も含まれる。
【0031】
ポリペプチドのバリアント形態には、相同配列、保存的バリアント、対立遺伝子バリアント、天然変異体、誘導変異体、本発明のナノボディをコードするDNAと高ストリンジェンシーまたは低ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズすることができるDNAによってコードされるタンパク質、および本発明のナノボディに対する抗血清を使用して得られるポリペプチドまたはタンパク質が含まれる。
【0032】
本開示はまた、本開示のナノボディを含む他のタンパク質または融合発現産物も記載する。具体的には、本開示は、本開示のナノボディの、可変領域を含有する重鎖を有する任意のタンパク質またはタンパク質コンジュゲートおよび融合発現産物(すなわち、免疫コンジュゲートおよび融合発現産物)を含む。本明細書で使用されるところの「コンジュゲート」、「共役」、またはその文法的変形は、当技術分野で知られている任意の結合または連結方法によって2つ以上の化合物を一緒に結合または連結して別の化合物の形成をもたらすことを意味する。また、ペプチドリンカー/スペーサー配列を使用して、必要に応じて、各ポリペプチドがその二次および/または三次構造に確実に折りたたまれるのに十分な距離だけ、複数のポリペプチド成分を分離することもできる。このようなペプチドリンカー配列は、当技術分野でよく知られている標準的な技術を使用して融合ポリペプチドに組み込むことができる。
【0033】
1つの教示では、本発明のナノボディは、化学的部分(moiety)にそのようにコンジュゲートされていないナノボディの半減期と比較して、ナノボディの半減期を延長することができる化学的部分にコンジュゲートまたは融合され得る。いくつかの実施形態では、半減期は約1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、または6.0倍以上に延長される。いくつかの実施形態では、半減期延長部分を持たないナノボディと比較して、in vivo投与後、半減期は6時間以上、12時間以上、24時間以上、48時間以上、72時間以上、96時間以上、または1週間以上延長される。半減期とは、タンパク質がその濃度、量、または活性の半分を失うのにかかる時間を表す。半減期は、例えば、ELISA法や活性測定法を用いて決定することができる。半減期延長部分の例としては、Fcドメイン、多量体化結合ドメイン(例えばアルブミン結合ドメイン)、ヒト血清アルブミン (HSA) 、またはウシ血清アルブミン (BSA) が挙げられる。
【0034】
免疫グロブリン分子のFc(fragment crystallizable)領域またはドメイン(Fcポリペプチドとも呼ばれる)は、免疫グロブリン重鎖の定常領域にほぼ対応し、抗体のエフェクター機能(複数可)を含む様々な機能を担っている。Fcドメインは、免疫グロブリン分子のヒンジドメインの一部または全部と、CH2およびCH3ドメインを含む。Fcドメインは、1つ以上のジスルフィド結合により繋がれた2つのポリペプチド鎖の二量体を形成することができる。
【0035】
半減期延長部分は、ナノボディに直接融合もしくはコンジュゲートさせることもできるし、またはリンカーを使用することもできる。例えば、Fc領域のような半減期延長部分は、1つ以上のナノボディまたはその抗原結合フラグメントに間接的または直接的に連結され得る。本技術分野で様々なリンカーが知られており、任意で、Fc(または他の半減期延長部分)をナノボディに連結させてFc融合体を生成するために使用され得る。同種のFc融合体を二量体化してFc融合ホモ二量体を形成することも、非同一種を使用してFc融合体ヘテロ二量体を形成することもできる。
【0036】
当業者に知られているように、上記で特定されたものと同様に、免疫コンジュゲートおよび融合発現産物には、本発明のナノボディまたはその断片に、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、およびその他の診断用または治療用分子を結合することによって形成されるコンジュゲートが含まれる。
【0037】
本開示は、ナノボディまたはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質などの他のポリペプチドも提供する。ほぼ全長のポリペプチドに加えて、本発明は、本開示のナノボディのフラグメントも含む。典型的には、フラグメントは、本明細書に記載されているナノボディの少なくとも約50個の連続したアミノ酸を有し、例えば少なくとも約50個の連続したアミノ酸、少なくとも約80個の連続したアミノ酸、または少なくとも約100個の連続したアミノ酸を有する。フラグメントは、本明細書に記載されているナノボディの少なくともCDR3領域を含み得る。
【0038】
本教示において、「保存的置換(Conservative Substitutions)」とは、そのポリペプチドが由来するナノボディのアミノ酸配列と比較して、類似または同様の特性を持つアミノ酸によって置換されたアミノ酸が10個まで、8個まで、5個まで、または3個まで存在するポリペプチドを指す。これらの保存的バリアントポリペプチドは、以下のアミノ酸置換に従って生産され得る。
【0039】
本教示はまた、ナノボディまたはその抗原結合フラグメントもしくは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子を提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAの形態をとることができる。DNAの形態には、cDNA、ゲノムDNA、または合成DNAが含まれる。DNAは一本鎖または二本鎖であり得る。DNAはコード鎖または非コード鎖であり得る。配列番号1~54によるナノボディをコードするDNA配列が、対応する配列番号55~108に提供される。したがって、配列番号1によって定義されるナノボディは配列番号55によってコードされ、配列番号2によって定義されるナノボディは配列番号56によってコード化される等というようになる。
【0040】
本開示のナノボディをコードするポリヌクレオチドには、次のものが含まれる:ナノボディのみをコードするコード配列;およびナノボディのコード配列と様々な追加のコード配列;コード配列(および任意の追加的コード配列)。
【0041】
「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができ、追加のコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを含むこともできる。
【0042】
本開示のナノボディまたはその抗原結合フラグメントの全長ヌクレオチド配列は、一般にPCR増幅法、組換え法、または人工合成法によって得ることができる。1つの可能な方法は、特にフラグメント長が短い場合に、合成法を使用して関連する配列を合成することである。一般に、最初に複数の小さなフラグメントを合成し、次にそれらを接続することによって、長いフラグメントの配列を得ることができる。また、重鎖のコード配列と発現タグ(例えば6His)を融合させて融合タンパク質を形成することもできる。
【0043】
いったん目的の配列が得られれば、組換え法を用いて目的の配列を大規模に得ることができる。通常、目的のポリヌクレオチドをベクターにクローニングし、そのベクターを細胞に形質転換またはトランスフェクトした後、増殖した宿主細胞から通常の方法で配列を単離することによって、配列を取得することができる。本開示が関係する生体分子(核酸、タンパク質など)には、単離された形態で存在する生体分子が含まれる。
【0044】
本開示のナノボディ(若しくはその抗原結合フラグメント若しくはその誘導体)をコードする核酸配列は、完全に化学合成によって取得され得る。その後、DNA配列は、様々な既存のDNA分子(あるいは、例えばベクター)中に、および当技術分野で知られている細胞に導入され得る。さらに、化学合成によって、本開示のタンパク質配列に変異を導入することもできる。
【0045】
本開示はまた、上記の適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターに関する。これらのベクターを使用して、適切な宿主細胞を形質転換し、そのタンパク質を発現できるようにすることができる。
【0046】
宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞であることができる;または酵母細胞などの低位真核細胞であることができる;または哺乳類細胞などの高位真核細胞であることができる。代表的なものとしては、大腸菌、ストレプトマイセス、ネズミチフス菌などの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、ショウジョウバエS2やSf9の昆虫細胞、CHOの動物細胞、COST、293細胞などがある。
【0047】
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者にはよく知られた従来の技術を用いて行うことができる。宿主が大腸菌などの原核生物の場合は、DNAを吸収できる能力のあるコンピタント細胞を指数増殖期後に採取し、CaCl2法で処理することができる。用いられる手順は当業者にはよく知られている。MgCl2を用いる方法もある。必要であれば、エレクトロポレーションによって変換を行うこともできる。宿主が真核生物である場合は、リン酸カルシウム共沈法、マイクロインジェクションのような従来の機械的方法、エレクトロポレーション、リポソームパッケージング等を用いることができる。
【0048】
得られた形質転換体を従来の方法で培養して目的のポリペプチドを発現させることができる。使用する宿主細胞に応じて、培養に使用する培地は様々な従来の培地から選択され得る。培養は宿主細胞の増殖に適した条件下で行われる。宿主細胞を適切な細胞密度まで増殖させた後、選択されたプロモーターを適切な方法(温度シフトや化学的誘導など)で誘導し、細胞をさらなる時間インキュベートする。
【0049】
上記の方法における組換えポリペプチドは、細胞内に発現させることも、細胞膜上に発現させることも、細胞外に分泌させることもできる。必要に応じて、組換えタンパク質の物理的、化学的、その他の特性を利用して、様々な分離方法によってそれを単離および精製することができる。これらの方法は当業者にはよく知られている。これらの方法の例としては、通常の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理 (塩析法) 、遠心分離、浸透圧破壊、超処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー (ゲルろ過) 、吸着層分析、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 、その他の様々な液体クロマトグラフィー技術およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
開示のナノボディは、単独で使用され得、または、例えば検出可能なマーカ(診断目的)、治療剤、修飾部分、もしくはそれらの組合せと組み合わせてもしくはコンジュゲート化して使用され得る。
【0051】
診断目的のための検出可能なマーカーには、蛍光マーカーもしくは発光マーカー、放射性マーカー、MRI (磁気共鳴画像法) もしくはCT (コンピュータ断層撮影) 造影剤、または検出可能な産物を生成することができる酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本開示は、血液血小板凝集の過程から生じる疾患、およびその他の関連する状態を治療または予防する方法における、本明細書に記載されるナノボディ、抗原結合フラグメントおよび誘導体/融合体の使用にも関する。
【0053】
本明細書に記載されるナノボディ、抗原結合フラグメントおよび誘導体/融合体は、血栓症の予防および治療の方法で使用することができる。本開示は、活性血管内病変への血小板のGPVI媒介接着の阻害剤を同定するためのin vitroスクリーニング方法にも関連する。
【0054】
本明細書に記載されるナノボディ、抗原結合フラグメントおよび誘導体/融合体は、動脈内および/または静脈内血栓症に関連する急性および慢性の血管疾患、例えば、急性冠症候群/急性心筋梗塞、慢性冠症候群/安定冠動脈疾患、一過性脳虚血発作、脳卒中、末梢血管疾患、深部静脈血栓症、心房細動患者における血栓予防、最近医療的または外科的に入院した患者における血栓予防、肺塞栓症、敗血症関連凝固障害、COVID-19関連血栓症、心臓デバイスに関連する血栓症(例えば左心室補助装置、体外式膜型人工肺、機械式心臓弁)、左心室血栓症、心不全における血栓予防、血栓形成性疾患(例えば抗リン脂質症候群、第V因子ライデン)における血栓予防、および他の形態の炎症、感染症および癌誘導による血栓症の、治療および/または予防のための方法において使用され得る。
【0055】
血小板の活性化が阻害されると、血小板が凝集し、表面に付着し、顆粒内容物を放出し、トロンボキサンや他の脂質種を生成する能力の全般的な損失がもたらされる。
【0056】
さらに、本開示は、固有の抗体活性によってGPVI受容体を活性化せず、免疫血小板減少症を誘発しない、GPVI(特にはヒトGPVI)の阻害剤を提供することを目的としている。さらに、本開示は、血小板の放出機構および炎症誘発性応答の発現に対する阻害剤を提供することを目的としている。
【0057】
本開示のナノボディ、またはその抗原結合フラグメントもしくはバリアントは、アスピリン (および他のシクロオキシゲナーゼ阻害剤) 、P2Y12受容体アンタゴニストおよびGPIIb/IIIa阻害剤を含む抗血小板薬、ならびにヘパリン、ワルファリンおよび第Xa因子およびトロンビンの直接阻害剤を含む抗凝固薬、ならびにレテプラーゼ、アルテプラーゼおよびストレプトキナーゼのような血栓溶解療剤などの、他の治療薬と組み合わせて投与され得る。
【0058】
本開示のナノボディ、またはその抗原結合フラグメントもしくはバリアントが、1つ、2つ、3つ、4つもしくはそれ以上、好ましくは1つもしくは2つ、好ましくは1つの他の治療薬との併用療法で投与される場合、ナノボディおよび薬剤(複数可)は同時にまたは連続して投与することができる。連続して投与される場合、それらは密接に間隔を置いて(例えば、5~10分間の期間にわたって)、またはより長い間隔で(例えば、1時間、2時間、3時間、4時間もしくは必要ならそれ以上離して)投与することができ、正確な用量レジメンは治療薬(複数可)の特性に見合ったものとする。
【0059】
また、本発明のナノボディは、光線力学療法、遺伝子治療などの非活性薬剤治療、または手術と組み合わせても投与され得る。
【0060】
対象は典型的には人間である。
【0061】
ナノボディは一般的に治療的または予防的に有効な量で投与される。治療的または予防的に有効な量とは、望ましい反応を達成することができる量を意味し、通常は医療従事者によって判断される。必要とされる量は、少なくとも、関係する活性化合物(複数可)、患者、それが治療または予防することが望まれている状態、および、治療を受ける患者の体重1 kgあたり化合物1μgから1 gのオーダーの製剤、のうちの1つ以上に依存する。
【0062】
同様に、典型的には医療従事者の裁量で、異なる投薬レジメンを投与することができる。開示のナノボディは、日毎の投与によって提供され得るが、化合物(複数可)がより頻繁に投与されるもの、例えば、1日おき、週1回または2週間毎のレジメンも、本開示に包含される。
【0063】
本明細書でいう治療とは、患者が被った状態の少なくとも改善を意味する。治療は治癒的である(すなわち、状態の完治をもたらす)必要はない。同様に、本明細書での予防または予防への言及は、状態の完全な予防を示したり要したりするものではない;その症状が本開示による予防または予防を介して減少または遅延される場合もあり得る。
【0064】
本開示の化合物は、商業的供給者から購入するか、または当技術分野で容易に利用可能な試薬および技術を用いて調製することができる。
【0065】
医薬製剤には、経口、局所(皮膚、頬、舌下を含む)、直腸または非経口(皮下、皮内、筋肉内、および静脈内を含む)、経鼻および肺投与(例えば吸入による)に適した製剤が含まれる。製剤は、適切な場合には、個別の用量単位で簡便に提供され得、薬学の分野でよく知られている方法のいずれかによって調製することができる。通常、方法は、活性化合物を液体担体もしくは細かく分割された固体担体またはその両方と組み合わせ、その後、必要に応じて、目的の製剤に製品を成形するステップを含む。
【0066】
好ましくは、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊椎または表皮投与(例えば、注射や点滴による)に適したものである。投与経路に応じて、活性ナノボディを材料でコーティングし、それを不活性化する可能性のある酸の作用やその他の自然条件から保護することができる。本明細書で使用される「非経口投与」という語句は、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与モードを意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および注入を含むが、これらに限定されない。あるいは、本発明のナノボディは、局所、表皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下または局所などの非経口経路を介して投与され得る。
【0067】
本発明のナノボディは、薬学的に許容される塩の形態をとり得る。「薬学的に許容される塩」とは、親ナノボディの望ましい生物学的活性を保持し、望ましくない毒性学的影響を与えない塩を指す。このような塩の例としては、酸付加塩や塩基付加塩がある。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの無毒の無機酸に由来するものや、脂肪族モノ酸カルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの無毒の有機酸に由来するものがある。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属に由来するものや、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの無毒の有機アミンに由来するものがある。
【0068】
医薬組成物は、無菌の水溶液または分散液の形をとり得る。それらはまた、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序的構造で製剤化され得る。担体材料と組み合わせて単一剤形を製造することができる有効成分の量は、治療対象や具体的な投与態様によって異なり、一般的には、治療的効果を生じる組成物の量となる。一般的に、100%のうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わされた約0.01%から約99%の有効成分、好ましくは約0.1%から約70%、最も好ましくは約1%から約30%の有効成分の範囲である。
【0069】
最適な望ましい反応(例えば、治療反応)が得られるように投与計画が調整される。例えば、1回のボーラス投与が投与され得、数回の分割投与が経時的に投与され得、または、治療状況の緊急性によって示されるところにより用量が比例的に減量もしくは増量され得る。投与の容易さと投与量の均一性のために、非経口組成物を用量単位形態で製剤化することが特に有利である。ここで使用される用量単位形態とは、治療対象の患者のためのユニット用量として適した物理的に別個な単位を指す。各単位には、必要とされる医薬担体に付随して、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物が含まれる。あるいは、抗体を徐放性製剤として投与することもでき、その場合は必要な投与頻度がより少なくなる。
【0070】
ナノボディの投与のために、投与量は宿主体重のkgあたり約0.0001から100 mgの範囲、より一般的には0.01から5 mg/kgである。例えば、投与量は0.3 mg/kg体重、1 mg/kg体重、3 mg/kg体重、5 mg/kg体重、10 mg/kg体重、または1~10 mg/kgの範囲内で投与され得る。典型的な治療レジメンは、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヵ月に1回、3ヵ月に1回、または3~6ヵ月に1回の投与を伴う。本開示のナノボディの好ましい投与レジメンには、静脈内投与による1 mg/kg体重または3 mg/kg体重が含まれ、ナノボディは以下の投与スケジュールのいずれかを使用して投与される:(i) 6回の投与のために4週間ごと、その後3ヵ月ごと;(ii) 3週間ごと;(iii) 1回の3 mg/kg体重、その後3週間ごとに1 mg/kg体重。血漿中抗体濃度が約1~1000 mg/mlになるように投与量を調整する方法や、約25~300 mg/mlになるように投与量を調整する方法がある。
【0071】
いくつかの実施形態では、例えば配列番号82によってコードされる配列番号28に従ったナノボディのような、本発明によるナノボディは、GPVIへの結合に関して、Nb2やNb35のような他の記載されたナノボディと競合しない。このような抗体は、特に、本明細書に記載されている蛍光分子のようなタグ分子にコンジュゲート化された場合に、GPVIのイメージング研究において用途を見出し得る。
【0072】
詳細な説明
本開示は、以下の図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】ナノボディ結合およびGPVIシグナル伝達の阻害の試験。a) GPVIとFcRγでトランスフェクトされナノボディ (100 nM) の存在下でコラーゲン (10μg/ml) によって刺激されたDT40細胞のNFATレポーターアッセイ。結果は、コラーゲンのみの存在下での全シグナル伝達のパーセンテージとしてプロットされた。点線は100、60、20%のシグナル伝達レベルを表す。データは三回行われた三つの実験の平均値±標準偏差を表す。b) GPVI-Fcコーティング表面に結合する、各ファミリーの一つのナノボディ (100 nM) の表面結合アッセイ。全ての結合結果は、最も高い読み取り値を与えたNb35に対して標準化されている。各ナノボディのFcドメインコーティング表面への結合をテストし、GPVI-Fcの読み取り値から差し引いた。結合はHRPコンジュゲート抗His抗体を用いて検出された。全てのナノボディのBSAへの平均結合は非特異的結合コントロールを表す。データは3つの実験の平均値±標準偏差を表す。
図2】洗浄された血小板に結合するナノボディ2、21、35。a) フローサイトメトリーにより、200μMのPAR1の存在下または非存在下で、洗浄された血小板に結合するナノボディ2、21、および35(5μM)。ヒストグラムは、非染色の洗浄血小板(US)、抗his alexafluor647二次抗体による非特異的血小板染色(NS)、静止(resting)血小板へのナノボディ結合(R)、およびPAR1ペプチド活性化血小板へのナノボディ結合(A)を表す。b) PEコンジュゲート抗ヒトCD62P抗体または対応するアイソタイプ適合コントロール(IgG1 PE抗体)を用いた、PAR-1(200μM)活性化血小板 対 静止血小板の1万イベント/サンプルを示すフローサイトメトリーのデータ。i-ii) それぞれ、代表的な生蛍光強度ヒストグラムとドットブロット、およびヒストグラムのオーバーレイ。c) 静止、PAR-1活性化血小板におけるP-セレクチン(selectin)発現を比較したフローサイトメトリーのデータ。有意性は両側スチューデントt検定(P = ≦0.05)を用いて測定された。データは平均値±SEM (n=7) を表す。
図3】ナノボディ2、21、35はコラーゲン(Collagen)およびCRPに反応した凝集(Aggregation)を阻害する。増加する濃度のNb2、21、35の存在下で5μg/mlのコラーゲンまたは10μg/mlのCRPにより刺激された洗浄血小板凝集。生の凝集曲線a) と最大凝集プロットb) を示す。コラーゲンについては172、85、および115 nM、CRPについては1、22、および1 nMのNb2、21、および35のIC50値がそれぞれ決定された。多重比較のためにDunnettの補正を用いた双方向ANOVAを用いて、溶媒 (PBS) と比較したナノボディの異なる濃度の効果を決定した。
図4】ナノボディ2、21、35はコラーゲン結合を阻害し、Nb2はナノモーラーの親和性でGPVIと結合する。a) 増加する濃度のNb2、21、35の存在下でのコラーゲン表面からのGPVI-Fc (100 nM) の解離を示す固相結合アッセイであり、IC50値はそれぞれ18、62、39 nMであった。データは3つの平均値±標準偏差を表している。b-c) 表面に固定されたGPVI-Fc (b) およびGPVI (c) に結合する様々な濃度のNb2を示すSPRデータ。結合親和性は速度論的解析により決定され、計算されたKd値はGPVI-Fcについて0.7 nM±0.03 nM、GPVIについて0.58 nM±0.06 nMであった。
図5】全血マイクロ流体力学(microfluidics)における抗GPVIナノボディの効果。a) PBS、500nMナノボディ2、21または35のいずれかの存在下でHormコラーゲンI上で動脈せん断速度 (1000/s) で灌流された全血の代表的な画像。3.5分間の流動後に、付着した血小板および血小板凝集体を明視野(Brightfield)で画像化した。ホスファチジルセリン (PS) 露出(exposure)を評価するために血小板をアネキシンV AF568で標識した。すべての画像は、60x、1.42NA油対物レンズを使用してEVOS AMF4300で撮影された。データは、処理ごとに3人のドナー(Donor)の各2回の実験を代表している。スケールバー:50μm。画像の定量分析では、b) 血小板、c) 多層血栓、およびd) PSを露出する血小板で覆われた総表面積(surface area)のパーセンテージに対するナノボディの影響を評価した。データ点は、処理ごとに3人のドナー(異なる色で示されている)各々の個別の実験である(平均±SD)。統計的有意性の検定には、Mann Whitney補正を用いた非対t検定を採用した (**p<0.005) 。SAC=表面積カバー率。
図6】Nb2およびCRPに対するGPVIの相互作用部位。a) GPVIに結合するNb2の構造。(i) GPVI-Nb2構造の側面図;(ii) ドメインスワップヒンジ領域を示すトップダウン図。各図の下に模式的表現を示している。ドメインスワップされたD2ドメインは、N末端およびC末端のD2領域についてそれぞれD2aとD2bと標識されている。b) GPVI:Nb2結合インターフェイスの拡大図。破線はGPVIとNb2の残基の間に作られた極性接触を示し、Nb2からの残基はGPVIの残基と区別するために下線が引かれている。構造図の下に完全なCDR3ループ領域が提供されており、結合残基は太字で強調表示されている。c) CRP結合GPVI構造およびナノボディ結合構造のCRP結合グルーブの拡大図。結合グルーブの上の方の、主にCDR3ループを介したNb2の結合は、βC’シートのシフトをもたらし、CRP結合グルーブを少し歪ませる。d) GPVI上の既知のNb2およびCRP結合部位の位置。i) GPVI-CRP複合体構造(PDB: 5OU8)上にモデル化されたNb2の表面表現(surface representation)により、重複していないが密接に位置する2つの結合部位が明らかになっている。ii) GPVIの構造にマッピングされたNb2およびCRPの結合残基。
図7】Nb2は他のナノボディと重複する結合部位を共有している。A) 増加する濃度(concentration)の非タグ化Nb2存在下でGPVI-Fc (10 nM) 固定化表面に結合(binding)するHisタグ化ナノボディ (100 nM) 。ナノボディの大部分はNb2の存在下で排除され(上パネル)、ナノボディ6、11、14、および36では排除は検出されず(中央パネル)、そしてナノボディ2はナノボディ12と53の両方の結合を増加させた(下パネル)。 B) X線結晶学によって決定された、GPVI上に重ね合わされたNb2とNb35の結合部位。Nb2とNb35の結合部位は互いに直接オーバーラップしている。
図8】Nb2安定性アッセイ。4℃で72時間に渡る、そしてシリンジフィルタリングまたは凍結融解後のNb2の安定性。コラーゲン被覆表面へのGPVI-Fc (100 nM) 結合の排除能によって決定された。Nb2は0時間、24時間、48時間、および72時間の時点で試験された。
図9】4価のNb2(Nb2-4)は血小板の凝集(aggregation)を刺激する。(A) 健康なドナーから単離された2×108/mlの洗浄血小板を、(GGGGS)3リンカーを用いて4つのNb2を架橋することによって生成した4量体のNb2(Nb2-4)で刺激した。(B) 2×108/mlの洗浄血小板を、溶媒、PP2 (20μM) 、PRT-060318 (10μM) 、JAQ1 Fab1 (200 nM) またはNb2 (100 nM) と10分間インキュベートした後、16 nMのNb2-4で刺激した。LTAを5分間モニタリングした。(i) 3回の同一の凝集実験の代表的なトレース。(ii) アゴニスト刺激5分間後の平均±SD (%) 凝集。** (P<0.01) スチューデントのペアt検定を用いて算出。N=3人の別個のドナー。
図10】Nb2、21、35は動脈せん断速度でのアテローム性動脈硬化プラーク上の血栓形成を阻害する。血液を溶媒 (PBS) 、500 nMのNb2、Nb21、Nb35、またはNb53(陰性対照)のいずれかと10分間プレインキュベートした後、1000/sで3.5分間プラークホモジネート上で灌流した。明視野(Brightfield)画像は、血栓の大きさと形態に関する情報を提供する。P-セレクチン(Selectin)はα顆粒の分泌を評価するために、抗フィブリノゲン(Fibrinogen)はαIIbβ3活性化を示すために、そしてアネキシン(Annexin)VはPS露出による凝固促進活性を近似するために使用される。(a) Nb2または陰性対照Nb53の存在下で、プールされたプラークホモジネート(Plaque Homogenate)上に形成された血栓の代表的な画像。スケールバー=50μM. (b) 各処理およびパラメーターのスケール値から溶媒でのスケール値を差し引いてから有意性についてフィルターして生成された、すべてのNb処理のヒートマップ。Nb2、21、35は、試験したすべてのパラメーターを有意に阻害した。カラーコード:より明るい四角はより大きな有意性を示す。n=5~8、ノンパラメトリック一方向ANOVAでp<0.05で検定。
図11】Nb2はプラーク媒介GPVIシグナル伝達を強く阻害する。(a) Nb2またはNb53の存在下または非存在下において線維性コラーゲンIまたはプラークで180秒間の血小板刺激後の、総蛋白質および示されたGPVIシグナル伝達カスケード蛋白質ならびにローディングコントロールである総Sykのリン酸化状態のウェスタンブロット分析。(b) n=3実験からのリン酸化蛋白質の定量化は、Nb2によるGPVIシグナル伝達の強い阻害を示す。グラフ:平均値±SD、ノンパラメトリック一方向AVOVA、*P<0.05、**P<0.005。
図12】Nb28は流動下での凝集、接着、活性化に影響を与えず、Nb2結合と競合しない。a) 洗浄した血小板を、Nb28またはPBSコントロールの存在下、凝集計内で37℃、1200rpmでインキュベートした後、10μg/mlのHormコラーゲンで刺激し、凝集トレースを採った。Nb28は凝集に対して影響を有さなかった。b) トロンビン阻害全血を溶媒 (PBS) または500 nMの非標識Nb28とプレインキュベートした後、マーストリヒトフローチャンバーを利用して線維性コラーゲンI上に1000/sで流した。血栓形成または血小板活性化の五つの調べたパラメータはいずれもNb28によって影響されなかった。各データポイントは1のドナーを表し (n=4)、有意性検定には非対ノンパラメトリックt検定が利用された。Nb28とNb2の間の競合的結合を試験するために、洗浄された血小板を500 nMのNb2または溶媒 (PBS) と共に10分間プレインキュベートした後、100 nMのNb28-AF647で標識し、5万イベントをデータ取得するフローサイトメトリーによって蛍光を評価した。c) 代表的なフローサイトメトリー頻度プロット。d) 定量分析(平均+/- SD;n=3)は、500nMのNb2との10分間のプレインキュベーションが、洗浄血小板へのNb28-647の結合に影響しなかったことを示した(ノンパラメトリック双方向ANOVA、ns=有意でない;**** P<0.0001)。
図13】標識されたNb28の蛍光イメージングは、Nb2が流動下でコラーゲンに沿ったGPVIクラスター化を破壊することを明らかにする。a) 全血流アッセイ (1000 s-1) では、100nMのNb28-AF647で標識されたGPVIが、線維性コラーゲン (矢印) に沿って明確に視認できるクラスターを形成した。B) 血小板を500 nMのNb2とプレインキュベーションすると、クラスター形成が破壊された。矢印はコラーゲン線維が視認できる領域を示す。n=5~7、スケールバー=10μM。
【発明を実施するための形態】
【0074】
方法
【0075】
[材料]
以前に報告されたSigpIg+プラスミド中の組換えGPVI-Fcγ(GPVI残基22~203)の発現プラスミド{Onselaer, 2017}。ナノボディはVIBナノボディコア(VIB Nanobody Service Facility、ブリュッセル、https://corefacilities.vib.be/nsf)を通じてGPVIに対して作製され、DNA配列はPMECSベクター中に提供された。ヤギ抗ヒト免疫グロブリンG(IgG)およびウサギ抗6-His HRP抗体は、それぞれThermoFisher Scientific(英国グラスゴー)およびCambridge Bioscience(英国ケンブリッジ)から購入された。Nb標識用のAlexa Fluor-647ウサギ抗6-HisおよびAlexa Fluor-647色素は、ThermoFisher Scientific(英国ペイズリー)から購入された。コラーゲンはNicomedから購入され、コラーゲン関連ペプチド (CRP) は以前記述されたように調製された{Raynal, 2006}。CD62P-PEおよびアイソタイプIgG1κ-PEはBiolegend(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から得られた。CRP-XLはCAMBOL laboratories(英国ケンブリッジ)から購入した。PAR1活性化ペプチド (SFLLRN) はSevern Biotech(英国キッダーミンスター)から購入した。アテローム硬化性プラーク材料は、頸動脈内膜剥離術によって10人の患者から除去されたプラークをPBS中にホモジェナイズした材料をプールすることによって調製された。
【0076】
[PCR変異誘発]
GPVIに対して部位特異的変異誘発を行って、グリコシル化 (N72/Q) およびドメインスワップヒンジ欠失変異体、ならびにトロンビン切断可能なナノボディを作製した。すべての変異誘発は、提供されたプロトコルに従って、Q5部位特異的変異誘発キット (New England Biolabs) を使用して行われた。使用されたプライマーを以下に示す。
すべての変異誘発研究に使用されたプライマー配列とアニーリング温度 (Ta) 。
【0077】
[組換えGPVIの発現と精製]
GPVI-Fc (二量体) は、以前に記述されたようにSigpIg発現ベクターで発現および精製された{Onselaer, 2017}。このコンストラクトは、D1ドメインとD2ドメインの両方(残基1~183)から構成されるが、Revaceptを含む他のGPVI-Fcコンストラクトのようにストーク(stalk)を含まない。コンストラクトはD1ドメインとD2ドメインの両方(残基1~183)から構成されるが、ストークは含まない。単量体GPVIは、2.5 mMのCaCl2の存在下ヒト第Xa因子と室温で12~18時間インキュベートすることによる、Fcドメインの切断によって生成された(GPVI 250μgごとに1μgのFXa)。タンパク質Aクロマトグラフィーを使用して、切断されたFcとGPVIを分離した後、Superdex 75 26/60を使用してゲルろ過した。すべてのタンパク質を急速凍結し、-80℃で保存した。
【0078】
[GPVIナノボディの発現と精製]
すべてのナノボディは、100μg/mlアンピシリンを含む1 LのTB培地で増殖させた大腸菌wk6細胞で発現させた。細胞を180 rpmの振盪で37℃で増殖させ、ODが0.6~0.9 Auに達したら、細胞を1 mMのイソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシドで誘導した。細胞を28℃で18時間培養し、3,000 xgで20分間遠心分離することによって細胞ペレットを収集した。1 Lのペレットを12 mLのTE緩衝液(0.2 M Tris pH 8.0、0.5 mM EDTA、0.5 Mスクロース)に再懸濁し、4℃で1時間培養した。水で4倍に希釈されたさらなるTE 18 mLを加え、4℃で1時間培養した。再懸濁した細胞を8,800 xgで30分間遠心分離し、上清を1 mLのHis-pure Ni-NTA樹脂 (ThermoFisher) と共に室温で20分間インキュベートした。ビーズを20 mLのPBSで洗浄し、タグ化ナノボディを2 mLの500 mMイミダゾールで溶出させ、PBSに透析した。タグ切断可能なナノボディについては、10 Uのヒトα-トロンビンおよび2.5 mMのCaCl2と室温で18時間インキュベートすることによってタグを切断した。切断されたナノボディは、PBS中で平衡化されたSuperdex 75 26/60を用いてゲルろ過された。ナノボディは急速凍結され、-80℃で保存された。
【0079】
[二価および四価のNb2(Nb2-4)の生成
二価のNb2(Nb2-2)および四価のNb2(Nb2-4)は、個々のNb2ドメインを (GGGGS)3リンカーで連結することによって生成された。Nb2-2は2段階のプロセスで生成された。まず、次のプライマーと70℃のアニーリング温度を使用して、通常のNb2プラスミドのHAタグの直前にXmaIとSallの制限部位を挿入した。
F: GTCGACGCGGCCGCATACCCGTAC
R: CCCGGGTGAGGAGACGGTGACCTGG
第2段階では、5’ XmaI制限部位と3’ Sall制限部位を伴うNb2遺伝子全体を購入した。この遺伝子はTwistBiosciencesから購入した。両方のコンストラクトを制限消化してライゲーションすると、C末端HAとHisタグを持つ元のプラスミド中のNb2ダイマーが得られた。Nb2-4遺伝子はVIB NanobodyCoreによって合成され、他のナノボディと同じC末端タグを伴ってpHEN6c発現プラスミド中に供給された。これらの構築物の発現と精製は通常のナノボディのそれと同一とした。
【0080】
[固相結合アッセイ]
固相結合アッセイは、以前に記載された実験プロトコール{Onselaer, 2017}に従って実施された。ウェルをコラーゲン (4μg/ml) またはCRP (4μg/ml) でコーティングし、増加する濃度のナノボディの存在下でGPVI-Fc (100 nM) の結合を検出した。GPVI-Fc結合の検出にはHRPコンジュゲート化抗Fc抗体を使用した。
【0081】
[フローサイトメトリー]
洗浄した血小板 (2x108/ml) をPBSで希釈 (1:10) し、PAR1活性化ペプチド (200μM) または溶媒と共に室温で3分間インキュベートした。血小板P-セレクチン発現を測定するために、各条件のサンプルをCD62P-PEまたはアイソタイプIgG1κ-PE抗体と共に室温で20分間インキュベートした。非刺激および刺激血小板をナノボディ (5μM) と室温で30分間インキュベートした後、Alexa Fluor-647ウサギ抗6-His抗体の二次標識 (1:80) を行った。無染色および二次抗体染色のみの非刺激対照サンプルを作り分析した。以前に記述されたように{Nagy et al.2020}サンプルをAccuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences、米国)中でデータ取得(FL2および4)し分析した。FlowJo v10.0.7(オレゴン州ユージーン)においてヒストグラムを作成した。
【0082】
[フローサイトメトリー競合アッセイ]
洗浄した血小板を500 nM Nb2またはPBSビークル対照とともに10分間プレインキュベートした後、100nM Nb28-AF647を添加してすぐに固定した。Accuri C6フローサイトメーター (BD) で5万イベントをデータ取得してNb28-AF647シグナル (FL4) を測定し、BD Accuri C6 Softwareでデータを処理した。
【0083】
[血小板凝集アッセイ]
ヒト血小板を新たに調製し、以前に記述されたように凝集を測定した{Onselaer, 2017}。5μg/mLのコラーゲンまたは10μg/mLのCRP-XLで刺激する前に、血小板をナノボディと10分間インキュベートした。PBSと比較したナノボディの異なる濃度の影響は、多重比較のためにDunnettの補正を用いた双方向ANOVAを用いて決定された
【0084】
[全血マイクロ流体工学]
脱脂したガラスカバースリップを、一晩、100μg/mlのHormコラーゲンI(メーカー提供の希釈液で希釈)または500μg/mlのプールされたプラークホモジネートの0.5μlマイクロスポットでコーティングした後、HEPES緩衝液(10mM HEPES, 136mM NaCl, 2.7mM KCl, 2mM MgCl2, pH 7.45)中の1% BSAで30分間ブロックした。健康なドナーからの全血をクエン酸塩中に取り込み、トロンビンを阻害 (40μM PPACK) およびカルシウム再加 (3.75mM MgCl2および7.5mM CaCl2) した。血液をビークル (PBS) または500nMナノボディ2、21もしくは35のいずれかと共に10分間プレインキュベートした後、マーストリヒト流チャンバーを通して3.5分間灌流した。PS露出、AF647-抗CD62P mAb(CD62P発現について、BioLegend)、および抗フィブリノゲンFITC Ab(インテグリンαIIbβ3活性化について、DAKO)を評価するために、標識バッファー(HEPES緩衝液、2mM CaCl2、1 U/mLヘパリン、5.5mMグルコース、0.1% BSAおよびアネキシンV AF568(ThermoFisher))を流しながら2つのエンドポイント明視野画像を撮影した。未結合の標識をリンス緩衝液(HEPES緩衝液、2mM CaCl2、1 U/mLヘパリン、5.5mMグルコース、0.1% BSA)で洗い流し、EVOS AMF4300顕微鏡(Life Technologies)で3つのランダム視野の蛍光画像を取得した。明視野および蛍光画像は、特定の半自動化ImageJスクリプト{van Geffen et al.2019}によって表面積カバー率について定量化された。ドナー(n≧3)および処理ごとに2回の複製ランが実施された。Hormコラーゲンフロー実験では、生成されたすべてのデータがパラメータごとにドナーと治療の間で平均化され、Mann Whitney補正およびGraphPad Prism 7.00を用いた不対t検定を用いて統計的有意性がテストされた。アテローム硬化性プラークのデータについては、Rプログラムを用いて減算ヒートマップが作成された。すべてのドナーにわたりかつパラメータごとの生平均値が0~10のスケールで単変量正規化された。次に、コントロール値が処理値から差し引かれ、一方向ANOVAによって統計的に有意であった差 (P<0.05) がヒートマップにまとめられて、関連する効果のみが視覚化された。
【0085】
[表面プラズモン共鳴]
表面プラズモン共鳴実験はBiacore T200装置 (GE Healthcare) を用いて行われた。アミンカップリングを用いてGPVIがCM5チップ上に直接固定化された。参照表面は1MエタノールアミンpH 8を用いてブロックされた。示されたすべてのセンソグラムは二重参照減算され、少なくとも2つの複製がサイクルごとに注入されn=3の実験的複製も行われた。実験は25℃で、HBS-Pランニングバッファー(10 mM HEPS pH 7.4、0.15 M NaCl、0.005% v/v界面活性剤P20)中30μL/分の流速で行われた。Nb2の各濃度を以下のように走らせた;注入120秒、解離900秒。1:1結合モデルへのグローバルフィッティングを用い、Biacore T200 Evaluationソフトウェアを使用して速度論的分析を行った。
【0086】
[結晶化と構造決定]
GPVI-Nb2複合体の結晶化は、GPVI N72QバリアントとタグなしNb2を用いて行った。両タンパク質を75μMで混合し、20 mM Tris pH 7.4、140 mM NaCl中で平衡化したSuperdex 200増加10/300 GLゲルろ過カラムを用いて複合体を精製した。複合体の形成はSDS PAGEによって確認され、5 mg/mLにスピン濃縮した。結晶は0.2 M酢酸カルシウム、0, 1Mカコジル酸ナトリウム6.5、18% PEG8K中で生成され、回折データはDiamond Light Source i24ビームラインで収集された。
【0087】
構造決定にはCCP4ソフトウェアスイートが使用された。2GI7と5TP3をテンプレートとして用いてPHASERで分子置換を行った。その後、COOTでのモデル構築とREFMACでの複数回の精密化(refinement)が行われた。データ収集と精密化の統計を表2に示す。
【0088】
【表2】

表2:結晶学的データ収集と精密化の統計。
*括弧内の値は最高解像度のシェルについてのもの。
aRmerge = Σh Σi|<Ih> - Ih,i|/Σh Σi Ih,Iであり、ここでIは観測された強度、<Ih>は計算された対称性関連反射からの複数観測の平均強度である。
bRwork = Sum(h)||Fo|h - |Fc|h|/ Sum(h)|Fo|hであり、ここで、FoとFcはそれぞれ観測された構造因子と計算された構造因子である。RfreeはRworkと同様に計算されるが、(5%)ランダム選択された反射についてのみであり、これは精密化では省略され、REFMACを使用して計算された。
【0089】
Nb35もNb2と同じ方法を使用して共結晶化された。結晶は、6 mg/mlのタンパク質濃度を使用して、1.6 M硫酸マグネシウム水和物、0.1 M MES一水和物pH 6.5中で成長させた。この構造についての最大分解能は3.4Åであった。使用された最終モデルは、完全ではないが、Rworkが0.31、Rfreeが0.41であった。
【0090】
[核Nuclear factor of activated T-cell (NFAT) レポーターアッセイ]
Nuclear factor of activated T-cell (NFAT) レポーターアッセイは、Tomlinson et al.によって記載されたプロトコールに従って{Tomlinson, 2007}、GPVIシグナル伝達の検出のために使用された。DT-40細胞に2μgの完全長GPVI、FcR-γ鎖およびNFAT制御ルシフェラーゼレポーターコンストラクトをトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を100 nMの各ナノボディと共に15分間インキュベートし、続いて10μg/mlのコラーゲンを加えて刺激した。全ての読み出しは、コラーゲンのみからのシグナルに対するパーセンテージとして表された。HY101抗体で試料を細胞標識した後、抗マウスAlexa Fluor-647二次抗体染色を行い、フローサイトメトリーを行うことによって発現を確認した。サンプルをAccuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences、米国)でデータ取得し(FL1および4)分析した。
【0091】
[競合結合アッセイの詳細]
競合ELISA実験は、Maxisorb ELISAプレートを10 nMのGPVI-Fcでコーティングし、各ナノボディを100 nM結合させることによって行われた。次に、増加する濃度のタグなしNb2を添加し、タグ付きナノボディの結合を抗His HRPを用いて決定した。
【0092】
[ナノボディ2の安定性試験]
新しく作られたタグなしのナノボディ2(PBS中4.2 mg/ml)を4℃で72時間に亘り保存した。0時間、24時間、48時間、72時間の時点でサンプルを採取し、ELISAおよびナノドロップ分析を行った。また、1 mlのNb2をWhatman 0.2 umシリンジフィルターを用いてフィルター処理し、50μLを急速凍結および解凍して、ナノボディ機能に対するシリンジフィルター処理と凍結融解の両方の効果を決定した。凍結融解サンプルは、解凍後0~48時間の間にのみ試験された。「固相結合アッセイ」に記載されているように、各サンプルに対してELISA置換アッセイが行われた。ナノドロップND-1000分光光度計を使用して280 nmの吸光度を測定することによって、各時点でのNb2濃度を決定した。
【0093】
[シグナル伝達タンパク質のウェスタンブロット]
洗浄した血小板をPBSまたは500 nM Nb2もしくは非阻害性Nb53のいずれかと共にプレインキュベートした後、振とうプレートインキュベーター (Eppendorf) 上で10μg/mlの原線維Hormコラーゲンまたは500μg/mlのプールされたプラークホモジネートで刺激した。全細胞溶解物をNicolson et al. {Nicolson, 2018}に記載されているように処理した後、総ホスホ-チロシン(4G10、ミリポア、05-321)、ホスホ-PLCγ2(Y1217、Cell Signalling、3871S)、ホスホ-LAT(Y200、アブカム、ab68139)、ホスホ-Syk(Y525/526、Cell Signalling、2710S)、およびローディングコントロールとしての総Syk(4D10、St. Cruz、sc1240)について調べた。結果はフィルム上で可視化され、またImage studio lite v5.2と組み合わせされたOdyssey Fc System(LI-COR Biosciences)で定量化するために画像化された。
【0094】
[Nb28の標識化]
Nb28は、1:40の染料:タンパク質(V:V)比を使用し製造会社の指示に従って、AlexaFluor 647染料を用いた遊離アミノ基のN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) -エステル標識化を使用して蛍光標識された
【0095】
[流れの下でのGPVIクラスター化の可視化]
血液は上記のように流れのために用意された。溶媒または500 nMのNb2を10分間プレインキュベートし、次に100 nMのNb28-AF647を添加してGPVIを標識した後、上記のようにせん断速度1000/sで血液をフローチャンバーを通して灌流させた。GPVIのエンドポイント画像をEVOS AMF4300顕微鏡 (Life Technologies) で撮影した。
【0096】
[統計]
結果は±標準偏差で示す。ELISAアッセイはn=3で実施された一方、NFATアッセイはn=5で実施された。スチューデント両側t検定を用い、P<0.05を有意とした。
【0097】
結果
【0098】
[GPVIに対するナノボディの生成]
VIBナノボディコアによってナノボディが生成された。GPVI-Fcで免疫化が行われ、各陽性ナノボディクローンの完全なDNA配列がpMECS発現ベクター中に供給された。
【0099】
合計54個のナノボディが得られた。各ナノボディの配列は、配列番号1~54に開示されている。
【0100】
[ブロッキング剤としてのナノボディの評価]
Nuclear factor of activated T-cells (NFAT) レポーターアッセイを用いて、トランスフェクト細胞株におけるGPVIシグナル伝達を調べた(図1a)。このアッセイは、ルシフェラーゼレポーターのNFAT依存性発現をもたらすSrc非依存性ITAMシグナル伝達を利用している{Tomlinson, 2007}。コラーゲンは、NFAT活性の8.3±2.8倍の増加を刺激した。Nb2、21、35はその増加を80%超阻害し、Nb1、5、19、22、25、33、44はこれを40%超阻害した。いくつかのナノボディ、すなわちNb6、24、28~30、49はコラーゲンGPVIへの反応を増加させ、残りのものは、効果を有さないかまたは60%未満の阻害をもたらした。Nb2、21、35の顕著な効力は、GPVIへの結合についてのそれらの高い親和性と一致している(図1a)。
【0101】
[組換えGPVIに対するナノボディの試験]
免疫化と試験のために使用された組換えGPVIは、IgG由来のFcドメインと融合された細胞外D1およびD2ドメインから構成されていた。GPVI-Fcでの免疫化で54の異なるナノボディ配列が得られた。Fcドメインは、ナノボディがこの領域を認識するかどうかを試験するために使用された。54のナノボディは、リガンド特異性を与える領域である相補的決定ループ(CDR)3領域に基づいて、33の異なる結合クラスに分類された。各結合クラスからのナノボディ(1μM)が、組み換えGPVI-Fcコーティング表面を認識する能力について試験された(図1b)。ナノボディの結合の程度はクラス間で異なり、強い (>50%) 、中程度 (>20%) 、弱い結合剤 (<20%) に分類できた。強い結合剤にはNb2、21、35、52が含まれた。中程度の結合剤にはNb7、18、28、54が含まれた。他のすべてのナノボディは弱い結合剤と考えられた。
【0102】
[静止血小板および活性化血小板へのナノボディの結合]
組換えGPVIの二量体形態にのみ結合し、刺激された血小板上の受容体の数の増加を認識する試薬の生成は、受容体二量化の証拠として解釈されている{Jung et al.2012}。そのため、静止血小板とCRPで刺激された血小板に対するナノボディの結合を比較する研究が行われた。これらの研究では、各結合クラスからの33のナノボディに焦点を当てた。これには、静止または刺激された血小板における固有の立体配座を認識する場合に備えて、弱い結合を示すナノボディ(図1)を含ませた。
【0103】
血小板への結合は、フローサイトメトリーによって検出された。ナノボディは、CRPとPAR1による血小板活性化の際に、次の3つの異なる結合パターンを示した。(i) 19のナノボディは静止時と比較して変化を示さなかった(I型);(ii) 6つのナノボディは結合のわずかな増加を示した(CRPおよびPAR1についてそれぞれ1.2~19.7%および2.4~15.7%増加)、(iii) 8つのナノボディは結合のわずかな減少を示した(CRPおよびPAR1についてそれぞれ17.5~44%および2.0~16.8%減少)(図1bi~iii)。これらの結果は、どのナノボディも静止血小板と刺激血小板におけるGPVIの認識に顕著な違いを示さないことを示している。
【0104】
[GPVIに対するNb2、21、35の結合および血小板凝集阻害の濃度応答関係]
最も強力なナノボディであるNb2、21、35のGPVI機能阻害能をさらに調べた。まず、フローサイトメトリーを用いて血小板への結合を調べた。3つのナノボディはすべて、静止血小板およびPAR1活性化ペプチド (200μM) の存在下での活性化血小板に同様の結合を示したことから (図2) 、単量体と二量体の両方のGPVIを認識することが示唆された。以前、Jung et al. 2012は、トロンビンがGPVIの二量体化を刺激することを報告した。GPVIへの結合、および流動下での血小板凝集および接着の阻害についての濃度応答関係を調べるために、これらのナノボディに関してさらなる研究が行われた。Nb2、21および35は、コラーゲン(5μg/mL)およびCRP(10μg/ml)への血小板凝集を阻害し、IC50値はコラーゲンについてそれぞれ172、85および115 nMであり、CRPについてそれぞれ1、22および1 nMであった (図3) 。このIC50値の差は、コラーゲンが血小板上の第2の受容体であるインテグリンα2β1に結合することを反映している可能性が高い。
【0105】
固相結合アッセイでは、3つのナノボディすべてが、コラーゲン表面へのGPVI-Fc (100 nM) の結合をブロックし、Nb2、21、35についてのIC50値はそれぞれ18、61、39 nMであった (図4a) 。3つのナノボディのうち最も強力なNb2の、固定化GPVIおよびGPVI-Fcに対する結合親和性は、SPRによって決定され、計算された平衡解離定数 (KD) は、GPVI-FcおよびGPVIについてそれぞれ0.7 nM±0.03 nMおよび0.58 nM±0.06 nMであった (図4b-c) 。この結合親和性は、完全長阻害性GPVI抗体9O12 {Lebozec et al 2017} より約25倍高い。単量体と二量体のGPVIに対する同様の結合親和性は、Nb2の血小板への結合がトロンビン刺激によって変化しないという観察と一致する。最も強力な抗GPVIナノボディの、血小板活性化とその後の血栓形成に対する効果を評価するために、全血流接着アッセイが実施された。健康なドナーからの血液をPBSまたは500 nMのNb2、21もしくは35のいずれかと共に10分間プレインキュベートし、トロンビン阻害し、カルシウム再加した後、1000/sのせん断速度でコラーゲン上を流した。画像の定量的分析により、3つのNbはいずれも血流下での血小板接着に有意な影響を及ぼさないが (図5b) 、多層凝集体の形成を阻害することが示された (図5c) 。また、接着した血小板は、未処理の対照と比較してPS露出が抑制された (図5d) 。血流下での、接着ではなく凝集およびPS露出の消失は、GPVI欠損患者における結果と一致している{Nagy et al 2020}。
【0106】
[Nb2はCRP結合エピトープの近くに結合し、新しいドメインスワップ二量体GPVI構造を明らかにする]
最も強力なナノボディであるNb2の、組換え単量体GPVIを伴った結晶構造を解明するための研究が設計された。これらの研究のために、N72における単一のN-グリコシル化部位がグルタミンに変異された(GPVI NQ)。GPVI NQを75μM濃度でNb2と1:1の比率で混合し、ゲルろ過によって複合体として精製した。
【0107】
この複合体の結晶構造が2.2Åの分解能で解明された。該構造は新しいGPVI二量体配座を明らかにした (図3) 。二量体境界面はC-C’ループ領域の拡張を通じて形成された2つのドメイン交換(domain-swapped)D2ドメインから成っていた(ラベリングはHorii et al.に従う {Horii, 2006})。この拡張されたループは、外側に伸びて隣接するD2と折り重なるドメインスワップヒンジを形成する (図6a) 。これは、以前の結晶構造{Horii, 2006}で報告された背中合わせのD2ダイマーとは全く対照的である。
【0108】
Nb2結合部位は、CRP結合部位に隣接してD1内にマッピングされた。Nb2-GPVI結合インターフェースに関与する残基を図6bおよび下記に示す。一次的相互作用インターフェースはD1 C’βシートならびにβEおよびFストランドの間に見られる310ヘリックス内のCRP結合グルーブの上部に方に見いだされる。これが一次的結合ポケットを形成し、CDR3ループ内のナノボディ残基と、D1 C’βシート内に見出されるGPVI残基S45-Y47および短い310ヘリックス中に見出されるS61との間の極性接触を形成する。一次的結合部位内の追加的な接触は、Nb2 CDR1残基Y31とGPVI残基Q48の間で作られる。二次的相互作用ポケットは、GPVIのE21、P56およびA57と相互作用するNb2の残基Q1およびY115によって作られるCRP結合グルーブから離れた場所に位置する。GPVI結合部位は、Q1およびY31は別として、完全にNb2のCDR3ループ内に存在する。ここで特定されたナノボディのCDR3領域の配列アラインメントは、多くのナノボディが、特にアミノ酸99~102および/または112~115周辺の領域(下記に示すNb2ナノボディに従った番号付け)において、著しい配列同一性または保存的置換を示すことを示している。上位3つの阻害性ナノボディ(Nb21、Nb2およびNb35)のアラインメントは、GPVIへの結合に主に関与するCDR3領域において、著しい程度の配列同一性または類似性を示す (下記参照) 。この情報は、結合データ (後述) と相まって、多くのナノボディ、特にNb2、Nb21および/またはNb35が、GPVIにおいて同じ結合領域を共有している可能性を示唆している。Nb2結合部位は、CRP結合インターフェースに隣接し(図4b)、CDR2ループはCRP結合部位に向かって延びており、これは両方のリガンド間の立体的衝突を誘発するであろう。さらに、CRP結合グルーブの上部にあるD1の短いC’βシートへのCDR3ループの結合は、約1.5Åの小さなシフトを誘発し、グルーブの小さな歪みを引き起こす (図6c) 。Ca2+カチオンが、E6の側鎖カルボキシル基と2つのNb2サブユニットからのG119のペプチド主鎖カルボニルならびに2つの水分子との相互作用を通じて2つのNb2サブユニットを架橋し、八面体配置をもたらしていることを見出すことができる。
【0109】
Nb2と極性接触するGPVI残基 (太字で示されている) を以下に示す。
結合残基=E21, S45, R46, Y47, Q48, P56, A57, S61
【0110】
GPVIと極性接触するNb2残基 (太字で示されている) を以下に示す。
結合残基=Q1, Y31, S99, P100, Y102, T104, N105, E111, D112, D114, Y115
【0111】
上位3つの阻害性ナノボディのCDR3配列アラインメント
nb2に対して太字で示されているアミノ酸は、GPVIと極性接触することが示された残基である。
【0112】
【0113】
要約すると、Nb2-GPVI複合体の結晶化により、Nb2結合部位がCRP結合部位のすぐ近くにあり、D1のわずかな立体配座変化を誘発することが明らかになり、またD2ドメイン間のドメインスワップの新しい観察もなされた。
【0114】
ナノボディ2と他のナノボディとの競合的結合により、試験したナノボディの大部分(ナノボディ6、11、12、36、53を除く)が、GPVIと結合しているときにNb2によって取って代わられることが明らかになった (図7a) 。これは、競合するナノボディが類似/重複する結合部位に結合し、GPVI上の主要な結合残基を共有している可能性を示唆している。
【0115】
このことは、GPVIをNb35と共結晶化することによってさらに示された。回折データの最大分解能は3.4Åであった。Nb35結合部位はNb2の結合部位と直接重なり (図7b) 、競合データと一致している。結合部位は明確であるが、このデータセットから生成された現在のモデルは今のところ、Nb35の個々の結合残基をマッピングするためには十分な品質ではない。そうではあっても、GPVI上のナノボディ結合部位の全体的な位置付けは正確である。
【0116】
[Nb2の安定性試験]
4℃で0時間、24時間、48時間、72時間保存した後のnb2が、コラーゲン表面に結合するGPVI-Fcを排除する能力を比較することによって、Nb2の4℃での安定性を試験した (図8) 。Nb2は保存剤を添加せずにPBS中に保存された。さらに、凍結解凍されたnb2のサンプルと、フィルター処理された追加のサンプルもテストされた。すべての日数のすべてのサンプルにわたりIC50値は一貫しており (表3) 、nb2は4℃で72時間にわたって活性を失わず凍結解凍とフィルター処理も影響を有さないことが示唆された。ナノドロップによる濃度読み取りも、すべてのサンプルで一貫しており、Nb2の分解がないことを示唆した (表4) 。フィルター処理時に約3%のタンパク質濃度の低下が観察されたが、フィルター処理の際のタンパク質収率のわずかな損失は異常なことではない。これらの結果は、nb2を冷凍し、フィルター処理し、活性を失うことなく少なくとも72時間冷蔵庫に保管できることを示している。
【0117】
【表3】

表3.ナノボディ2による、コラーゲンに結合するGPVI-Fcの排除についてのIC50計算値。
【0118】
【表4】

表4.280 nmでの吸光度を測定することによりNb2濃度を計算した。
【0119】
[4価のNb2(Nb2-4)は血小板を活性化する]
洗浄された血小板で機能的研究を行った。2価のNb2であるNb2-,2は血小板を活性化できず、コラーゲンおよびCRPによる凝集を、1価のNb2の2~5倍の効力でブロックする (図9) 。この親和性の増加は2つのGPVI受容体に結合することによって説明され、したがって親和性とアビディティの正味の合計である。対照的に、低ナノモーラー濃度の4価Nb2(Nb2-4)は、血小板の強力な凝集を刺激し、これは高濃度の1価Nb2およびGPVIモノクローナル抗体JAQ1のFabによりブロックされる(図9)。凝集はまた、GPVIの活性化と一致するSrcおよびSykチロシンキナーゼの阻害剤によってもブロックされる。これらの結果は、Nb2-4がGPVIの新しいアゴニストであることを実証している。
【0120】
[Nb2、Nb21およびNb35は、アテローム性動脈硬化プラーク上の流動下での血栓形成と血小板活性化を効果的にブロックする]
プールされたアテローム性動脈硬化プラークは、コラーゲンに富む、血小板のための生理的リガンドとなる。Nb2、Nb21、およびNb35が流動下でプラーク誘導性血小板活性化および血栓形成を阻害する能力を、フロー接着アッセイで試験した (図10) 。精製コラーゲンI上の流動とは対照的に(図5)、3つのNbはすべて、流動下でのプラークへの血小板接着を有意に阻害した。それらは血栓形成も消失させ、血小板活性化マーカーであるp-セレクチン発現、インテグリン活性化、およびPS露出も阻害したことが、減算ヒートマップ中のより明るい灰色の四角で示されている (図10b) 。このことは、これら3つのNbがプラークによって誘発される血小板活性化ならびに血栓の開始および形成を効果的に阻害することを実証している。
【0121】
[Nb2はプラーク媒介GPVIシグナル伝達を強く阻害する]
ウェスタンブロット法を用いて、プラークまたはコラーゲンIによる刺激後の下流リン酸化を調べることにより、GPVIシグナル伝達に対するNb2の影響を調査した。コラーゲンIおよびプラークはどちらも、血小板において強いチロシンリン酸化を誘導した (図11a) 。血小板をNb2とプレインキュベーションすると、プラーク刺激に対する全体的な血小板チロシンリン酸化が目に見えて低下し、プラークおよびコラーゲンI刺激血小板の両方において、GPVI下流シグナル伝達タンパク質であるSyk Y525/526、LAT Y200、およびPLCγ2 Y1217のリン酸化が強く阻害された (図11a) 。非阻害性Nb53は効果がなかった。定量化 (図11b) では、プラークへの応答ではNb2によるリン酸化の強力かつ一貫した減少が明らかになった一方、コラーゲンIに対しては、より弱く、より可変的な反応が観察されたが、これはおそらく精製されたコラーゲンIへの血小板結合における他の受容体の関与を反映している。
【0122】
[非阻害性Nb28はGPVI結合に関してNb2と競合せず、GPVIのイメージングに使用できる]
血小板におけるGPVIの局在を可視化するために、イメージング研究に使用できる非阻害性抗GPVI Nbが必要であった。Nb28はGPVIに強く結合するが、GPVIとコラーゲンの相互作用は阻害しない (図1) 。画像研究でNb28を使用することの妥当性をさらに試験するため、コラーゲンに応答した血小板凝集 (図12a) やコラーゲンI上の流動下での血栓形成 (図12b) をNb28が阻害しないことを検証した。次に、Nb28をAlexaFluor647で蛍光標識し(Nb28-AF647)、血小板への結合を評価し、フローサイトメトリーを用いて阻害性Nb2とNb28-AF647の間の競合的結合を評価した(図12c、d)。Nb28-AF647のみで標識した血小板と、非標識Nb2でプレインキュベーションした血小板では、有意な差は認められなかった (図12d) 。これらの結果は、Nb28が血栓形成を妨げないため、流動条件下でのGPVIのイメージングに適していることを示している。さらに、Nb28はGPVI中の異なるエピトープに結合し、これはNb2を事前にGPVIに結合させてもブロックされないため、Nb28-AF647はNb2も存在する実験でのGPVIのイメージングに適している。
【0123】
[Nb28-AF647は、GPVIクラスター化に対するNb2の破壊的効果の可視化を可能にする]
流れの下で付着して血栓を形成する血小板上のGPVIの分布を調べるために、100nMのNb28-AF647と共に全血をプレインキュベートした後、コラーゲンIのマイクロスポットを灌流し、蛍光画像を撮影した。コラーゲンI上に付着して血栓を形成する血小板上では、GPVIの明るく長いクラスターが頻繁に見られ、明視野画像で見える大きなコラーゲン線維に対応していた(矢印;図13a)。GPVIの局在に対するNb2の影響を調べるために、流す前に血液をNb2およびNb28-AF647とプレインキュベートした。Nb2による前処理は、線維へのGPVI局在を破壊し、コラーゲンに沿って組織化されたクラスターは見られなかった(矢印)。これらの結果は、蛍光標識されたNb28が血小板におけるGPVIを可視化するための有用なツールであり、全血流アッセイに使用できることを示している。また、Nb2はコラーゲン上のGPVIクラスター化を効果的に破壊し、クラスター化が流れの下での血栓形成に重要となり得ることを示す証拠を提供する。
【0124】
[考察]
本研究では、二量体GPVIに対する一連のナノボディを開発し、様々なアッセイでそれらの特徴付けを行い、最も強力なものであるNb2の、GPVIへの結合部位をマッピングした。これらの研究は以下のことを示す:(i) 阻害的および非阻害的特性を持つ、GPVIに結合する一連のナノボディ;(ii) どのナノボディも静止血小板あるいは刺激された血小板に優先的には結合しない;(iii) これらの中で最も強力なNb2、21および35は、ナノモーラー親和性で結合し、コラーゲンおよびアテローム性動脈硬化プラーク物質上でのコラーゲン誘導NFAT活性化、血小板凝集および血栓形成をブロックする;(iv) Nb2およびNb35は共に、コラーゲン結合部位に隣接するGPVI上の部位に結合する;(v) Nb2は、GPVIの新しいドメイン構成で複合体を形成する;(vi) 蛍光タグ化された非ブロッキング性Nb28は、局在化実験のためにGPVIを標識するために使用することができる。合わせると、これらのナノボディは、血小板におけるGPVI機能をプローブするための薬剤のライブラリーを形成する。
【0125】
Nb2が結合したGPVIの結晶構造は、Nb2がCRP結合グルーブの上部と相互作用し、CRP結合部位と直接は重ならないが、コラーゲンへの結合を立体構造的に妨げるほど近くにあることを明らかにしている。Nb2によるコラーゲン結合の阻害は、近く配置された結合部位間の立体構造的な衝突と、図4cに示されているCRP結合グルーブの歪みとの組み合わせである可能性が高く、混合モードのアロステリック性および競合性阻害剤を示している。Nb2は、心血管疾患を治療するための抗血栓薬として使用できる新規の足場および薬剤を提供する。
【0126】
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図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
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図6-1】
図6-2】
図6-3】
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図7-2】
図8
図9A
図9B
図10-1】
図10-2】
【配列表】
2024500946000001.app
【国際調査報告】