(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】腫瘍の治療用のナノ構造送達システム
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20231227BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231227BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231227BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20231227BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231227BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231227BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20231227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231227BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20231227BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231227BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 5/44 20060101ALI20231227BHJP
A61P 5/40 20060101ALI20231227BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/22
A61K45/00
A61K38/00
A61K31/7088
A61K39/395 D
A61K38/21
A61P35/00
A61P1/04
A61P11/00
A61P13/08
A61P15/00
A61P43/00 105
A61P3/00
A61P37/02
A61P43/00 111
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P29/00
A61P5/44
A61P5/40
A61K9/12 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538796
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2021086860
(87)【国際公開番号】W WO2022136303
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515019397
【氏名又は名称】ユニヴェルシテッツクリニクム イエーナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホッホハウス, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】エンツェンスペルガー, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】バウアー, ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA31
4C076BB21
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4C076CC07
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4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのポリマーおよび/または少なくとも1つの脂質と、少なくとも1つのポリメチン色素とを含む、1つまたは複数のSLCO遺伝子の遺伝子発現変化を有する腺癌細胞を含む腺癌に罹患している対象を治療するのに使用するためのナノ構造送達システムに関する。その中で、少なくとも1つのポリメチン色素は、前記腺癌細胞へのナノ構造送達システムの標的化された輸送を媒介する。本発明はさらに、ナノ構造送達システムを含む薬学的組成物に関する。本発明は、ナノ構造送達システムを使用した新生物組織への標的化された輸送のための方法、および新生物組織または細胞における該システムまたは組成物の蓄積に基づく蛍光による検出のためのナノ構造送達システムまたは本発明の薬学的組成物の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーおよび/または少なくとも1つの脂質と、少なくとも1つのポリメチン色素とを含む、1つまたは複数のSLCO遺伝子の遺伝子発現変化を有する腺癌細胞を含む腺癌に罹患している対象を治療するのに使用するためのナノ構造送達システムであって、少なくとも1つのポリメチン色素が、前記腫瘍性細胞へのナノ構造送達システムの標的化された輸送を媒介する、ナノ構造送達システム。
【請求項2】
少なくとも1つのポリメチン色素が、1つまたは複数のSLCO遺伝子の発現産物を介した前記腺癌細胞へのナノ構造送達システムの標的化された輸送を媒介する、請求項1に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項3】
腺癌が、前記遺伝子発現変化がSLCO1遺伝子に影響を及ぼす腺癌細胞を含む、請求項1または2に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項4】
腺癌が、前記遺伝子発現変化がSCLO1B3遺伝子に影響を及ぼす腺癌細胞を含む、請求項3に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項5】
腺癌が、胃腸がん、肺がん、前立腺がん、乳がんを含む群から選択されるがんである、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項6】
少なくとも1つのポリメチン色素が、腺癌幹細胞へのナノ構造送達システムの標的化された輸送を媒介する、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項7】
腺癌(theadenocarcinomatous)のがんが、前立腺がんまたは結腸がんである、請求項5に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項8】
少なくとも1つのポリメチン色素が、一般構造体
I
IA
II
IIA
III
IIIA
(a.nは、数値1、2または3を表す;
b.R1~R19は同じであっても異なっていてもよく、水素または重水素、1つ以上のアルキル、tert-アルキル、シクロアルキル(「アルキル」および「シクロアルキル」ラジカルはまた、オレフィン構造を含む)またはアリール、カルボキシアリール、ジカルボキシアリール、ヘテロアリールまたはヘテロ脂環式ラジカル、アルキルオキシ、アシルオキシ、アルキルメルカプト、アリールオキシ、アリールメルカプト、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールメルカプト基、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、アミノアルキル、アミノアリール、アミノアシル、ハロゲン化アルキル、ホルミル、アジド、チオ(イソ)シアナト、(イソ)シアナト、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオウレア、グアニジン、スルホンアミドまたはシアノ基、アルキル置換または環状アミン官能基および/または2つのオルト位ラジカルが一緒になって、さらなる芳香族、ヘテロ芳香族、脂肪族またはヘテロ脂肪族環を形成し得、
c.R1~R19置換基の少なくとも1つは、SO
3-、(-SO
3H)、PO
3
2-、COOH、OHまたはNR
3+、シクロデキストリンまたは糖などの可溶化および/またはイオン化可能なまたはイオン化された置換基を有し、これらのポリメチン色素の親水性特性を決定し、この置換基はまた、スペーサ基によってポリメチン色素に結合されてもよく、
d.R1~R19置換基の少なくとも1つは、イソシアネート、イソチオシアネート、ヒドラジン、アミン、モノ-およびジクロロ-またはモノ-およびジブロモトリアジン、アジリジン、エポキシド、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物、N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル、イミドエステル、カルボン酸、グリオキサール、アルデヒド、マレイミドまたはヨードアセトアミドおよびホスホラミダイト誘導体またはアジド、アルキンまたはオレフィンなどの反応性基(リンカー)を有し、この置換基はまた、スペーサ基によってポリメチン色素に結合されていてもよく、
e.芳香族、ヘテロ芳香族、脂肪族またはヘテロ脂肪族スペーサ基は、[(CH
2)
a-Y-(CH
2)
b]
cまたは[(C
6H
4)
a-Y-(C
6H
4)
b]
cなどの構造要素からなり、Yは同じであっても異なっていてもよく、CR
2-、O-、S-、-SO
2、SO
2NH-、NR-、COO-またはCONR官能基を含み、R1~R19置換基の1つに結合しており、a.)およびb.)は、同じであっても異なっていてもよく、0~18の数値および0~18のcの数値を有してもよく、
f.R7、R8およびR9置換基ならびに/またはR17およびR18はまた、2回、3回、4回または5回存在してもよく、これらは同じであっても異なっていてもよく、
g.R15およびR16ならびに/またはR5およびR6は、さらなる脂環式または複素環式環系を形成し得る)
の対称または非対称のポリメチンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項9】
少なくとも1つのポリメチン色素が、トポロジカル極性表面積、logP値、原子の数、分子量、酸素および窒素原子の数、OHおよびNH(H結合供与体)の数、pH7.4で負電荷に寄与する硫酸塩残留物または他の官能基の数、回転可能な結合の数、分子体積を含む群から選択される少なくとも1つの分子記述子によってpH7.4で特徴付けられ、トポロジカル極性表面積が50~200Å
2であり、logP値が-3~7であり、原子の数が30~70であり、分子量が400~1100g/molであり、酸素および窒素原子の数が4~20であり、OHおよびNH(H結合供与体)の数が1~8であり、pH7.4で負電荷に寄与する硫酸塩残留物または他の官能基の数が0~5の間であり、回転可能な結合の数は5~30であり、分子体積は500~1100Å
3である、請求項8に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項10】
少なくとも1つのポリメチン色素が、DY635、DY780、DY730、DY750、DY736、DY615、DY636、DY731、DY647P1、DY648P1、CY-E10誘導体、CY5.5誘導体、DY630、IRDye800;DY778からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項11】
ナノ構造送達システムが、少なくとも1つの医薬品有効成分をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項12】
少なくとも1つの医薬品有効成分が、核酸、タンパク質、コルチコステロイド、細胞分裂停止剤、代謝拮抗剤、挿入物質、抗体、インターフェロン、造影剤、プロテインキナーゼ阻害剤、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症薬、グルココルチコイド、細胞増殖阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、タンパク質生合成阻害剤、エネルギー代謝の阻害剤、呼吸鎖阻害剤、増殖因子阻害剤を含む群から選択される、請求項11に記載の使用のためのナノ構造送達システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のナノ構造送達システムならびに適切な賦形剤および添加剤を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
吸入に特に適合している、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
腺癌組織および/または腺癌細胞(adenocarcinomacell)への標的化された輸送のための方法であって、腺癌組織(adenocarcinomatissue)および/または腺癌細胞を請求項1から12のいずれか一項に記載のナノ構造送達システムとin vitroで接触させることを含む、方法。
【請求項16】
腺癌組織が前立腺組織である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ナノ構造送達システムおよび/またはその成分の蓄積は、少なくとも1つのポリメチン色素の蛍光特性によって、腺癌組織および/または腺癌細胞で検出可能である、請求項1から12のいずれか一項に記載のナノ構造送達システムの使用または請求項13に記載の薬学的組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポリマーおよび/または少なくとも1つの脂質と、少なくとも1つのポリメチン色素とを含む、1つまたは複数のSLCO遺伝子の遺伝子発現変化を有する腺癌細胞を含む腺癌に罹患している対象を治療するのに使用するためのナノ構造送達システムに関し、それにおいて、少なくとも1つのポリメチン色素が、該腺癌細胞へのナノ構造送達システムの標的化された輸送を媒介する。本発明はさらに、ナノ構造送達システムを含む薬学的組成物、ナノ構造送達システムを使用した新生物組織への標的化された輸送のための方法、および新生物組織または細胞における該システムまたは組成物の蓄積に基づく蛍光による検出のためのナノ構造送達システムまたは本発明の薬学的組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物有効性を最適化する方法としての器官特異的薬物送達の重要性の認識が高まっている。がん治療の場合、特定の器官または組織を標的とし得ることは、抗がん剤の有効性の増強および非特異的副作用の減少を可能にする。さらに、標的化された薬物送達では、そのような薬物の薬物動態プロファイルの著しい変動として顕在化する薬物配置経路の発現および活性の対象間の変動が回避され得る。有効成分を標的化された様式で特定の組織に輸送するナノ粒子を使用することは、先行技術において公知である(C.Sheridan,Proof of concept for next-generation nanoparticle drugs in humans.Nat Biotechnol,2012 30(6):pp.471-3;S.E.Gratton et al.,The effect of particle design on cellular internalization pathways.Proc Natl Acad Sci USA,2008 105(33):pp.11613-8)。これらのナノ粒子は、腫瘍の治療に使用され、以下の機構に従って機能する:ナノ粒子は、シェル層または抗体のいずれかを備える。水性シェル層でコーティングされている場合、ナノ粒子は、免疫系が識別できないものにされる。そのようなナノ粒子が注射され、免疫系によって攻撃されない場合、それは、有窓性血管、つまり正常血管と比較して著しく大きい、腫瘍組織における開口(開窓)を有するもの、を通って拡散する。次いで、ナノ粒子は、健常な細胞と比較して透過性の増加をも特徴とする周囲の細胞によって、吸収される。上記のナノ粒子、リポソームまたは高分子の受動的豊富化のプロセスは、EPR効果(「増強された透過性および保持」)と呼ばれ、したがって受動的な薬物の標的化を指す。したがって、腫瘍細胞がナノ粒子を取り込むだけでなく、ナノ粒子が血管を介して非特異的に輸送される健康な細胞も取り込むという事実に、欠点がある。これは重大な有害作用をもたらす可能性がある。ナノ粒子が合成された後にその表面の抗体で装飾される場合、これらの抗体が結合する表面抗原を発現している細胞が、標的化される。この輸送機構はまた、受動的で非選択的である。
【0003】
腺癌は、腺が起源である、および/または腺の特性を有する上皮組織の新生物である。がんの最も一般的な形態のいくつかは、腺癌であり、乳房、肺、前立腺および胃腸管(結腸、直腸、膵臓、胃、食道)などの一般的な部位に局在している。腺癌は、光学顕微鏡を使用して組織学的に診断することができ、それにおいて診断は通常、腺構造の特定に基づく。低分化の腺癌では、光学顕微鏡の下で最小限の腺の形成のみ観察されるか、または腺の形成が観察されない場合、免疫組織化学(IHC)が、腺癌のタイプを診断するのに重要である。診断IHC(例えば、Dabbs(ed):Diagnostic Immunohistochemistryを参照)は、腺癌の鑑別診断における周知の手段であり、例えば、サイトケラチンに対する抗体は、肺の腺癌を診断するときに、サイトケラチン7(CK-7)などの癌腫の特定に使用され得る。これらの腺癌は、頻繁に、上皮成長因子受容体(EGFR)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、およびc-ROS癌遺伝子1(ROS-1)における変異を表している。PD-L1(プログラム細胞死1リガンド1)IHCアッセイが、進行性肺がんにおいて行われている。例えば、CK-7、GATA結合タンパク質3(GATA-3)および巨大嚢胞性液状タンパク質15での陽性IHC染色は、乳腺腺癌を示唆している。例えば、前立腺特異抗原(PSA)に対する陽性IHC染色は、前立腺の腺癌に特異的であり、一方で核基底タンパク質P63は、正常な前立腺組織を前立腺の腺癌から分化させるために使用される。例えば、陰性CK-7染色と併用させた尾側型ホメオボックス2(CDX-2)またはサイトケラチン-20(CK-20)の陽性IHC染色は、結腸直腸腺癌を示唆する。例えば、CK-7、ペアのボックスタンパク質8(PAX8)およびウィルムス腫瘍タンパク質1(WT-1)に対する陽性IHC染色は、卵巣腺癌を示唆している。例えば、サイログロブリンおよび甲状腺転写因子-1(TTF-1)についての陽性IHC染色は、甲状腺腺癌を示唆する。
【0004】
外因性物質および内因性の物質の両方の代謝が、多くのがん組織に特徴的な増殖長に影響を及ぼすことを示す広範な証拠がある。これらの代謝的変化は、関与する代謝的変化、すなわちグルコース、アミノ酸および脂質のプロセシング経路における変化に応じて分類され得る。グルコース輸送体およびアミノ酸輸送体などの栄養輸送体は、転写および翻訳後のレベルでがん細胞において差次的に調節されることが多く、細胞の高い増殖レベルおよび病理学的成長を補助し(Zhangら、2018、SLCO遺伝子(有機アニオン輸送サブファミリーの溶質担体)は、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)をコードし、これは近年、がんの発生ならびにがん治療において役割を果たすよう関与している(Obaidatら、2012年)。特に、OATPの発現は、異なるタイプのがんにおいて変化し得ることが見出された。結果として、OATP発現は、がんの発症および進行ならびに抗がん剤の動態において潜在的な役割を果たし得るという仮説が立てられている。
【0005】
先行技術から知られている有効成分を輸送し、異なるクラスに分類されているナノ粒子:ミセル、ナノエマルジョン、ナノリポソーム、固体脂質微小粒子、ポリマーおよびヒドロゲル粒子などの単純な送達システム、ならびに単純な送達システムの特性および機能性を改変するために構造設計原理を適用することによって作製される複雑なシステム。そのような複合ナノ粒子は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などの柔軟な親水性ポリマーからなる保護的な親水性層を担持するリポソームである。そのようなコーティングを設けることにより、細網内皮系(RES)からの複合ナノ粒子のクリアランスが減少し、その結果、これらのナノ粒子は、循環時間の延長、および薬物動態プロファイルの改善を伴う。複合ナノ粒子の別の例は、リポソームやミセルなどの他のナノキャリアと比較して、改善された安定性、高負荷容量、薬物徐放性、非免疫原性特性、薬物毒性の低減、改善されたバイオアベイラビリティ、生体適合性、生分解性、捕捉薬物の治療の有効性の向上、および汎用的な表面修飾という利点を備えるポリ(乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)ベースのポリマーナノ粒子である。PLGAベースのナノ粒子は、例えば、吸着トランスサイトーシスによる固形組織または腫瘍への取り込みを改善するために、界面活性剤および/または所望の表面特性(すなわち、ゼータ電位および親水性)を付与する他の表面修飾を使用して、表面修飾され得る。Pressらは、ポリメチン色素で官能化されたPLGAナノ粒子が、膜貫通キャリアタンパク質に対するそれらの親和性のために、クラスリン媒介エンドサイトーシスを介して肝臓および腎臓によって選択的に取り込まれる能力を有することを実証した。
【0006】
腫瘍の治療という状況では、薬学的有効成分が同時に組織内に輸送され得るように、活性の輸送が特定の標的化ユニットによって腫瘍組織内に選択的に行われる、活性および選択的な輸送および/または送達システムが必要とされている。本発明は、1つまたは複数のSLCO遺伝子の発現の変化を特徴とする、腺癌のがん組織への選択的輸送および/または送達システムなどを提供する。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つのポリマーおよび/または少なくとも1つの脂質と、少なくとも1つのポリメチン色素とを含む、1つまたは複数のSLCO遺伝子の遺伝子発現変化を有する腺癌細胞を含む腺癌に罹患している対象を治療するのに使用するためのナノ構造送達システムに関し、それにおいて、少なくとも1つのポリメチン色素が、該腺癌細胞へのナノ構造送達システムの標的化された輸送を媒介する。
【0008】
本発明で使用される場合、「ナノ構造送達システム」は、少なくとも1つ以上のポリマーおよび/または脂質を含むシステムを指す。それが1つ以上のポリマーを含む場合、それは本明細書では「ナノ粒子」と呼ばれる。それが1つ以上の脂質を含む場合、本明細書では「リポソーム」と呼ばれる。本発明によるナノ構造送達システムがポリマーと脂質の両方を含む場合、それは本明細書では「ナノ粒子」または「リポソーム」と呼ばれる。したがって、「ナノ粒子」および「リポソーム」という用語は、本発明により同義的に使用され、ポリマーと脂質の両方を含むナノ構造送達システムにも関する。ナノ粒子は、1μmより小さいサイズの構造であり、複数の分子から構成され得る。一般に、それらは高い表面積対体積比を特徴とし、したがって大きな化学反応性をもたらす。これらのナノ粒子は、特定の単位(モノマー)が反復単位であるという事実を特徴とするポリマーからなり得る。ポリマーは、これらのモノマーの化学反応(重合)によって互いに共有結合される。これらのポリマーのいくつかが疎水性を有する場合、それらは水性環境でナノスケール構造(例えば、ナノ粒子、ミセル、ベシクル)を形成し得る。それらの疎水性のために、脂質を使用してナノ粒子(ミセル、リポソーム)を形成することもできる。
【0009】
本発明によれば、「腺癌」という用語は、腺の起源である、および/または腺の特性を有する上皮組織の新生物を意味する。本明細書では、腺癌に罹患している対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0010】
本発明によれば、「遺伝子発現」という用語は、遺伝子からの情報が機能的遺伝子産物の合成に使用されるプロセスを指し、遺伝子産物は、ペプチド、タンパク質、または任意の種類のRNAであり得る。本発明の文脈において、遺伝子発現の過程から生じる遺伝子産物は、機能性タンパク質である。「遺伝子発現変化」という用語は、組織の腫瘍性細胞に存在するが、該組織の正常な非腫瘍性細胞には存在しない、または同程度ではない、それぞれの遺伝子のタンパク質合成の変化を指す。そのような遺伝子発現変化の例は、新生物組織におけるタンパク質の上方制御または下方制御であり、それにおいて、発現レベルは正常組織と比較して増大または減少する。変化した遺伝子発現のさらなる例は、腫瘍性細胞におけるタンパク質の示差的な細胞分布、例えば、腫瘍性細胞における細胞膜での一定の局在性から、細胞のコンパートメントへとシフトすることに関する。さらなる例は、機能が増強された(増加した)または減弱した(低下した)タンパク質をもたらす遺伝子機能に影響を及ぼす変化に関する。
【0011】
上述のように、SLCO遺伝子(有機アニオン輸送サブファミリーの溶質担体)は、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)をコードする。現在までに、アミノ酸配列同一性に基づいて6つのファミリーに分けられた11個の既知のヒトOATPが存在する(SLCO1A2、SLCO1B1、SLCO1B3、SLCO1C1;SLCO2A1、SLCO2B1;SLCO3A1;SLCO4A1、SLCO4C1;SLCO5A1;およびSLCO6A1)。すべてのOATPは、それぞれのアミノ末端およびカルボキシ末端が細胞内空間に面する12個の膜貫通ドメインを有する。OATPは、細胞外OATP基質の流入が重炭酸塩などの細胞内アニオンの流出を伴う電気的に中性のプロセスを介して、それらの基質の輸送を媒介する。
【0012】
上述のように、有効成分を、標的化された様式で特定の組織に輸送するナノ粒子の使用(「標的化された輸送」)は、先行技術から知られている。「標的化された輸送」(または細胞特異的輸送)は、所望の作用部位でのビヒクルの標的化および選択的蓄積を指すと理解される。実際には、標的化された輸送は、有効成分が所望の作用部位で放出されるように、有効成分を特定の組織/細胞集団に輸送するために使用され(「標的化薬物送達」)、それにより、有効成分の作用の有効性が増加し、その全身性副作用が減少する。輸送される有効成分には、抗体、ペプチドまたは小分子、例えばオリゴヌクレオチドまたは核酸が含まれることが多い。
【0013】
好ましい実施形態では、ナノ構造送達システムに含まれる少なくとも1つのポリメチン色素は、1つまたは複数のSLCO遺伝子の発現産物を介して、該腺癌細胞へのナノ構造送達システムの標的化された輸送を媒介し得る。さらに好ましい実施形態では、腺癌は、該遺伝子発現変化がSLCO1遺伝子に影響を及ぼす腺癌細胞を含み得る。腺癌が、該遺伝子発現変化がSLCO1B1遺伝子またはSCLO1B3遺伝子のいずれかに影響を及ぼす腺癌細胞を含み得る場合が最も好ましい。すべてのOATPの中でも、正常組織におけるOATP1A2、OATP1B1、OATP1B3、およびOATP2B1のそれぞれの役割、特に薬理的物質の取り込みにおけるそれらの役割は、最も広く特徴付けられている。これらの組織では、OATP1B1およびOATP1B3は、静脈周囲から門脈周囲への発現勾配を備えて類洞肝細胞の基底外膜で発現されるが、OATP1A2は、主に、血液脳関門および十二指腸腸細胞で発現される。
【0014】
さらに好ましい実施形態では、本発明のナノ構造送達システムを使用することによって治療される腺癌は、胃腸がん、肺がん、前立腺がん、乳がんを含む群から選択されるがんであり得る。本発明で使用される場合、「胃腸がん」という用語は、胃腸管の腫瘍性細胞に由来するがん、例えば胃がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、膵臓がん、胆嚢がん、肝臓がんを指す。
【0015】
さらに好ましい実施形態では、ナノ構造送達システムに含まれる少なくとも1つのポリメチン色素は、腺癌幹細胞へのナノ構造送達システムの標的化された輸送を媒介し得る。本発明で使用される場合、「腺癌幹細胞」という用語は、正常な幹細胞または突然変異を受けた前駆細胞に由来する細胞を指す。1つまたは複数の突然変異は、幹細胞から前駆細胞を経て成熟細胞に至る正常な発達が進む間の任意の時点で起こり得る。それにより、変異細胞は、機能的に定義される実体、すなわち腺癌幹細胞を生じさせる:幹細胞は、その欠損を有するそれぞれの腺癌系統の任意の細胞に分化し得、そのような幹細胞は、肺がん、胃腸がんおよび前立腺がんとの関連で記載されている。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明のナノ構造送達システムを使用することによって治療される腺癌のがんは、前立腺がんまたは結腸がんであり得る。
【0017】
好ましい実施形態では、ナノ構造送達システムは、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のためのものであってもよく、少なくとも1つのポリメチン色素は、一般構造体
I
IA
II
IIA
III
IIIA
(a.nは、数値1、2または3を表す;
b.R1~R19は同じであっても異なっていてもよく、水素または重水素、1つ以上のアルキル、tert-アルキル、シクロアルキル(「アルキル」および「シクロアルキル」ラジカルはまた、オレフィン構造を含む)またはアリール、カルボキシアリール、ジカルボキシアリール、ヘテロアリールまたはヘテロ脂環式ラジカル、アルキルオキシ、アシルオキシ、アルキルメルカプト、アリールオキシ、アリールメルカプト、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールメルカプト基、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、アミノアルキル、アミノアリール、アミノアシル、ハロゲン化アルキル、ホルミル、アジド、チオ(イソ)シアナト、(イソ)シアナト、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオウレア、グアニジン、スルホンアミドまたはシアノ基、アルキル置換または環状アミン官能基および/または2つのオルト位ラジカル、例えば、R3とR4、R13とR14および/またはR1とR2およびR11とR12および/またはR7とR9が一緒になって、さらなる芳香族、ヘテロ芳香族、脂肪族またはヘテロ脂肪族環を形成し得、
c.R1~R19置換基の少なくとも1つは、SO
3
-、(-SO
3H)、PO
3
2-、COOH、OHまたはNR
3
+、シクロデキストリンまたは糖などの可溶化および/またはイオン化可能なまたはイオン化された置換基を有し、これらのポリメチン色素の親水性特性を決定し、この置換基はまた、スペーサ基によってポリメチン色素に結合されてもよく、
d.R1~R19置換基の少なくとも1つは、イソシアネート、イソチオシアネート、ヒドラジン、アミン、モノ-およびジクロロ-またはモノ-およびジブロモトリアジン、アジリジン、エポキシド、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物、N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル、イミドエステル、カルボン酸、グリオキサール、アルデヒド、マレイミドまたはヨードアセトアミドおよびホスホラミダイト誘導体またはアジド、アルキンまたはオレフィンなどの反応性基(リンカー)を有し、この置換基はまた、スペーサ基によってポリメチン色素に結合されていてもよく、
e.芳香族、ヘテロ芳香族、脂肪族またはヘテロ脂肪族スペーサ基は、[(CH
2)
a-Y-(CH
2)
b]
cまたは[(C
6H
4)
a-Y-(C
6H
4)
b]
cなどの構造要素からなり、Yは同じであっても異なっていてもよく、CR
2-、O-、S-、-SO
2、SO
2NH-、NR-、COO-またはCONR官能基を含み、R1~R19置換基の1つに結合しており、a.)およびb.)は、同じであっても異なっていてもよく、0~18の数値および0~18のcの数値を有してもよく、
f.R7、R8およびR9置換基ならびに/またはR17およびR18はまた、2回、3回、4回または5回存在してもよく、これらは同じであっても異なっていてもよく、
g.R15およびR16ならびに/またはR5およびR6は、さらなる脂環式または複素環式環系を形成し得る)
の対称または非対称のポリメチンであってよい。
【0018】
R1~R19置換基の少なくとも1つが、可溶化および/またはイオン化可能なもしくはイオン化された置換基、例えば、SO3
-、(-SO3H)、PO3
2-、COOH、OH、シクロデキストリンまたは糖を有することが特に好ましく、それは、これらのポリメチン色素の親水特性を決定するものであり、この置換基はまた、スペーサ基によってポリメチン色素に結合し得る。さらに、芳香族、ヘテロ芳香族、脂肪族またはヘテロ脂肪族スペーサ基が、[(CH2)a-Y-(CH2)b]cまたは[(C6H4)a-Y-(C6H4)b]cなどの構造要素からなり、Yが同じであっても異なっていてもよく、CH2-、O-、S-、-SO2、SO2NH-、NH-、COO-、もしくはCONHまたはアルキル化アナログを含み、H原子がアルキル鎖C-alk2,O-、S-、-SO2、SO2Nalk、N-alk、COO-もしくはCON-alk官能基によって置換されており、R1~R19置換基のうちの1つに結合し、a.)およびb.)は、同じであっても異なっていてもよく、0~18の数値および0~18のcの数値を有する場合、特に好ましい。
【0019】
好ましい実施形態では、ナノ構造送達システムに含まれる少なくとも1つのポリメチン色素は、少なくとも1つの分子記述子によって特徴付けられ得る。「分子記述子」(または「分子予測因子」)は、目的の分子の定義された特性に関する値または係数を指し、値は該分子の記号の表現から判定される。したがって、分子記述子は、コンピュータが解釈可能な数のベクトルにおける分子の化学的情報の表現を可能にする。対照的に、所与の分子の実際の物理化学的な特性は、実験的測定から導出される。本発明の文脈において、少なくとも1つの分子記述子は、トポロジカル極性表面積、logP値、原子の数、分子量、酸素および窒素原子の数、OHおよびNH(H結合供与体)の数、スルホニル残留物またはpH7.4で負電荷に寄与する他の官能基の数、回転可能な結合の数、分子体積を含む群から選択され得る。好ましくは、すべての極性原子または分子、主に酸素および窒素(それらに結合した水素原子も含む)にわたる表面和として定義されるトポロジカル極性表面積は、50~200Å2、好ましくは100~150Å2、さらにより好ましくは約130Å2であり得る。logP係数は、化合物の親油性を推定する(その薬物動態特性を判定する)ための主要なパラメータの1つとして周知であり、-3~7、好ましくは4~6.5であり得る。原子の数は、30~70、好ましくは40~60であり得る。分子量は、400~1100g/mol、好ましくは500~800、最も適切には650~750g/molの範囲であり得る。酸素および窒素原子の数は、4~20、好ましくは7~12であってもよく、OHおよびNH(H結合供与体)の数は、2~8、好ましくは3~6であってもよい。pH7.4で負電荷に寄与する硫酸塩残留物または他の官能基の数は、0~5、好ましくは0~3、最も好ましくは1~2であり得る。回転可能な結合の数は、それ自体の周りの自由な回転を可能にする結合の数(非末端重原子に結合した、環にはない任意の単結合として定義される)であり、5~30、好ましくは10~20であり得る。所与の温度および圧力(モル質量、Mに等しい、質量密度、ρで除算)で1モルの物質(化学元素または化合物)が占める体積である分子体積は、500~1100Å3、好ましくは600~800Å3であり得る。
【0020】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスII色素であり、R1、R2およびR3は、オクタヒドロ-2H-キノリジンと縮合して2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ(ij)キノリジン(別名Julolidine)部分を形成するヘテロキシクリック(heteroxyclic)であり、R6はtert-ブチルであり、R15およびR16はメチルであり、R10はヘキサン酸残留物であり、R13はスルホン酸残留物である。DY635:
【0021】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスII色素であり、R1、R2およびR3は、オクタヒドロ-2H-キノリジンと縮合して2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ(ij)キノリジン(別名Julolidine)部分を形成するヘテロキシクリックであり、R6はtert-ブチルであり、R15はメチルおよびR16ブタン酸残留物であり、R10はプロパン-1-スルホン酸であり、R13はスルホン酸残留物である。636
【0022】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスII色素であり、R2はNH2であり、R6はtert-ブチルであり、R15およびR16はメチルであり、R10はヘキサン酸残留物であり、R13はスルホン酸残留物である。615
【0023】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスIA色素であり、R3はジエチルアミノであり、R6はtert-ブチルであり、R15およびR16はメチルであり、R10はヘキサン酸残留物であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0024】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスI色素であり、R2はジエチルアミノであり、R6はtert-ブチルであり、R15およびR16はメチルであり、R10はヘキサン酸残留物であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0025】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスII色素であり、R2およびR3は、3-[2,2-ジメチル-4-(スルホメチル)ピリジン-1(2H)-イル]プロパン-1-スルホン酸と融合して3-[2,2-ジメチル-4-(スルホメチル)キノリン-1(2H)-イル]プロパン-1-スルホン酸部分を形成するヘテロキシクリックであり、R6はフェニルであり、R15はメチルおよびR16ブタン酸残留物であり、R10はプロパン-1-スルホン酸であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0026】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスIIa色素であり、R2はジエチルアミノであり、R6はtert-ブチルであり、R15およびR16はメチルであり、R10はヘキサン酸残留物であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0027】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスIIa色素であり、R2およびR3は、1-エチル-2,2,4トリメチル-1,2-ジヒドロピリジンと縮合して1-エチル-2,2,4トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン部分を形成するヘテロキシクリックであり、R15およびR16はメチルであり、R6はtert-ブチルであり、R10はヘキサン酸残留物であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0028】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスIIa色素であり、R1、R2およびR3は、オクタヒドロ-2H-キノリジンと縮合して2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ(ij)キノリジン(別名Julolidine)部分を形成するヘテロキシクリックであり、R6はtert-ブチルであり、R15はメチルであり、R16はブタン酸であり、R10はプロパン-1-スルホン酸であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0029】
好ましい形態では、ポリメチン色素はクラスII色素であり、式R2はジエチルアミノであり、R6はtert-ブチルであり、R15はメチルであり、R10はヘキサン酸であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0030】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスII色素であり、R2はジエチルアミノであり、R6はtert-ブチルであり、R15はメチルであり、R16はブタン酸であり、R10はプロパン-1-スルホン酸であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0031】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスIIIa色素であり、R3およびR13はスルホン酸残留物であり、R5、R6、R15およびR16はメチル基であり、R10は2-メトキシエチル残留物であり、R17はヘキサン酸である。
【0032】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスIIIa色素であり、R3およびR13はスルホン酸残留物であり、R5、R6、R15はメチル基であり、R16はプロパン-1-スルホン酸であり、R10は2-メトキシエチル残留物であり、R17はヘキサン酸である。
【0033】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスIIIa色素であり、R5、R6、R15およびR16はメチル基であり、R10は2-メトキシエチル残留物であり、R17はヘキサン酸であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0034】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスIIIa色素であり、R3、R4およびR13、R14はベンゾ縮合しており、R5、R6、R15、R16およびR10はメチル基であり、R17はヘキサン酸である。
【0035】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=2のクラスIIIa色素であり、R7およびR9はシクロヘキセン部分に縮合しており、R8はフェノキシであり、R3およびR4はベンゾ縮合しており、R15およびR16はメチルであり、R10はヘキサン酸であり、R17はブタン-1-スルホン酸である。
【0036】
好ましい形態では、ポリメチン色素は、n=1のクラスIIa色素であり、R2およびR3は、3-[2,2-ジメチル-4-(スルホメチル)ピリジン-1(2H)-イル]プロパン-1-スルホン酸と融合して3-[2,2-ジメチル-4-(スルホメチル)キノリン-1(2H)-イル]プロパン-1-スルホン酸部分を形成するヘテロキシクリックであり、R6はフェニルであり、R15はメチルおよびR16ブタン酸残留物であり、R10はプロパン-1-スルホン酸であり、R13はスルホン酸残留物である。
【0037】
さらなる実施形態では、本発明のナノ構造送達システムにおける少なくとも1つのポリメチン色素は、DY635、DY780、DY730、DY750、DY736、DY615、DY636、DY731、DY647P1、DY648P1、CY-E10誘導体、CY5.5誘導体、DY630、IRDye800;DY778からなる群から選択され得る。
【0038】
好ましい実施形態では、ナノ構造送達システムは、少なくとも1つの医薬品有効成分をさらに含んでもよい。特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの医薬品有効成分は、核酸、例えばmiRNA、siRNAなどの低分子RNA、またはプラスミド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、DNAザイムなどのDNA;タンパク質;プロタック(キメラを標的とするタンパク質分解)、コルチコステロイド;細胞分裂停止剤、代謝拮抗剤;挿入物質;抗体;インターフェロン;造影剤;チロシンキナーゼ阻害剤またはホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ阻害剤などのプロテインキナーゼ阻害剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗炎症薬、例えばCOX阻害剤;グルココルチコイド;細胞増殖阻害剤;ミトコンドリア脱共役剤;タンパク質生合成阻害剤;エネルギー代謝の阻害剤;呼吸鎖阻害剤;増殖因子阻害剤を含む群から選択され得る。
【0039】
第2の態様では、本発明は、上記のナノ構造送達システムならびに適切な賦形剤および添加剤を含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物の好ましい実施形態では、組成物は吸入に特に適合させることができる。
【0040】
第3の態様では、本発明は、腺癌組織および/または腺癌細胞への標的化された輸送のための方法であって、腺癌組織および/または腺癌細胞を前述のナノ構造送達システムとin vitroで接触させることを含む方法に関する。本発明の方法の好ましい実施形態では、新生物組織は前立腺組織であり得る。
【0041】
第4の態様では、本発明は、上記のナノ構造送達システムの使用または上記の薬学的組成物の使用に関し、ナノ構造送達システムおよび/またはその成分の蓄積は、少なくとも1つのポリメチン色素の蛍光特性によって、腺癌組織および/または腺癌細胞で検出可能であり得る。
【0042】
本発明の特定の好ましい実施形態は、特定の好ましい実施形態および特許請求の範囲の、続くより詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1-1】それらの構造およびそれらの物理化学的特性の概要により異なるクラスにグループ化されたポリメチン色素の概観。
【
図1-2】それらの構造およびそれらの物理化学的特性の概要により異なるクラスにグループ化されたポリメチン色素の概観。
【
図1-3】それらの構造およびそれらの物理化学的特性の概要により異なるクラスにグループ化されたポリメチン色素の概観。
【
図2】
図1のポリメチン色素アミンの選択された分子記述子。分子記述子を、スルホン酸残留物が脱プロトン化され、第一級脂肪族アミンがプロトン化されたpH=7.4で決定した。対イオンは無視した)
【
図3】実施例2に記載の手順を使用して、異なる色素をPLGaに結合させることができる。特に、ポリマーは、その活性カルボン酸基に基づいて、アミン官能化色素に共有結合していてもよい。2つのクラスI色素(DY680、DY780)および4つのクラスII色素(DY630、DY635、DY654、DY778)が例として挙げられる。各々の色素部分のカップリングを、UVおよび反射指数(RI)検出を利用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってモニターした。
【
図4】それぞれのポリメチン色素コンジュゲートPLGA(例えば、DY635-PLGA)のナノ粒子を、一定のパラメータを用いて製造し、合成された粒子の例えばサイズ、電荷などに対処する異なるエッセイを利用して特徴付けた。サイズの判定には、動的光散乱を使用した。表面電荷(ゼータ電位)の判定のために、電荷判定アッセイにおいて電気泳動シグナルを判定するために、Zeta-Sizerを利用した。
【
図5】4つの接着性腫瘍細胞株DLD-1、HCC-78、DU-145、およびMKN-45、ならびに陰性対照としての293T細胞を使用した(a)。OATP1B3 mRNAの発現ならびにタンパク質レベルを、それぞれRT-qPCRおよびウエスタンブロットによって検出した(b、c)。細胞をトリプシン処理し、PBS/1%FCSで2回洗浄した。NPストックをPBS/1%FCSで50μg/mLに希釈した。細胞とNPの両方を37℃で少なくとも10分間予熱した。次いで、5×10
5個の細胞を200μLの総体積のNPで、37℃で5分間インキュベートし、次いで、4%パラホルムアルデヒドで固定し、PBSで2回洗浄した。その後、細胞をBD LSRFortessaで測定した。NP取り込みを、非官能化NP(NP[FAM])に対するNPのカーゴ色素5(6)カルボキシフルオレセイン(FAM)の放出によって判定した(d、e、f)。色素インキュベーションを、100nMの色素濃度のNPプロトコールと等しく行い、その後、BD LSRFortessaで測定した(e、g)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本明細書に示されている詳細は、例としてのものであり、本発明の好ましい実施形態の例示的な説明のためのものにすぎず、本発明の様々な実施形態の原理および概念的態様の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されている。これに関連して、本発明の基本的な理解のために必要なものよりも詳細に本発明の構造的詳細を示す試みはなされておらず、図面および/または実施例を用いてなされた説明は、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具現化され得るかを、当業者に明らかにする。
【0045】
以下の定義および説明は、以下の実施例において明確かつ明白に変更されない限り、または意味の適用がいずれかの構成を無意味または本質的に無意味にする場合、未来のいずれかの構成において制御することを意味および意図している。用語の構成がそれを無意味または本質的に無意味にする場合、定義は、Webster’s Dictionary,3rd Editionまたは当業者に公知の辞書、例えばOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Ed.Anthony Smith,Oxford University Press,Oxford,2004)から解釈されるべきである。
【実施例】
【0046】
実施例1:官能化ポリマーの合成
合成されたナノ粒子は、生体適合性および生分解性である疎水性ポリマーポリ(乳酸コ-グリコール酸)(PLGA)に基づく。このポリマーは、以前に記載されているように(EP2848262A1)、アミン官能化色素に共有結合していてもよい。手短に言えば、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)などの色素分子カップリング試薬の酸末端基のために使用することができる。ここで、ポリメチン色素DY635、DY630、DY615、DY736を、ほとんどの実験に使用した(
図1を参照されたい)。100番目毎にポリマー鎖を官能化した。特定のポリメチン色素を所定の分子記述子に従って選択した。
図2に、
図1のポリメチン色素アミンの分子記述子を示す。分子記述子を、スルホン酸残留物が脱プロトン化され、第一級脂肪族アミンがプロトン化されたpH=7.4で決定した。対イオンは無視した。logP値、トポロジカル極性表面積、原子の数、分子量、酸素および窒素原子の数、OHおよびNH(H結合供与体)の数、pH7.4で負電荷に寄与する硫酸塩残留物または他の官能基の数、回転可能な結合の数、分子体積を含む群から選択される分子記述子。その中で、トポロジカル極性表面積は、すべての極性原子または分子、主に酸素および窒素(それらに結合した水素原子も含む)にわたる表面の合計として定義される。logP係数は、化合物の親油性の推定(薬物動態特性の決定)のための主要なパラメータの1つとして周知である。回転可能な結合の数は、それ自体の周りの自由な回転を可能にする結合の数である(非末端重原子に結合した、環にはない、任意の単結合として定義される)。分子体積は、所与の温度および圧力において1モルの物質(元素または化合物)が占める体積である(モル質量に等しい、M、質量密度で除算、ρ)。
【0047】
実施例2:ナノ粒子の製造
ポリマーの官能化後、以前に記載されているように(EP 2848262A1)、ナノ粒子を単純(A)および二重(B)エマルジョンによって調製した。手短に言えば、表面活性物質(界面活性剤)の存在下でナノスケール粒子を形成するために、高周波超音波を使用した。疎水性ポリマーを酢酸エチルに溶解した。ポリマー懸濁液を界面活性剤と共に水に添加し、ナノ粒子を超音波(A)によって形成した。親水性物質を含める場合、親水性物質を水に溶解し、酢酸エチルのポリマーに添加し、超音波処理した。続いて、界面活性剤と混合した水を添加し、ナノ粒子を超音波によって形成した(B)。次いで、このようにして得られたナノ粒子を、すべての有機溶媒(酢酸エチル)がエバポレートして粒子が水中で安定するまで空気の流れの下で撹拌した。過剰な界面活性剤を除去するために、ナノ粒子を超純水で少なくとも2回、十分に洗浄した。最後に、粒子を凍結乾燥し、それらの質量を判定した。
【0048】
実施例3:ナノ粒子の特徴付け
様々なDYコンジュゲートPLGA粒子のナノ粒子を調製した。例えば、DY635-コンジュゲートPLGA(DY635-PLGA-NP)、DY654-コンジュゲートPLGA(DY654-PLGA-NP)、DY678-コンジュゲートPLGA(DY678-PLGA-NP)、DY680-コンジュゲートPLGA(DY680-PLGA-NP)、DY778-コンジュゲートPLGA(DY778-PLGA-NP)、およびDY780-コンジュゲートPLGA(DY780-PLGA-NP)、Cy5-コンジュゲートPLGA(Cy5-PLGA-NP)、CyE10-コンジュゲートPLGA(CyE10-PLGA-NP)、およびDY647P1-コンジュゲートPLGA(DY647P1-PLGA-NP)を調製し、一定のパラメータで再現した。使用したアッセイを以下に列挙する。
サイズ:動的光散乱(例えば、Zetasizer(Malvern Instruments GmbH))または電子顕微鏡写真(
図4を参照されたい)による、脱イオン水に溶解した様々なナノ構造の担体の系のサイズの測定。あるいは、サイズは、UVおよび反射指数(RI)検出を組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に依存して判定された。上記の例示的な色素のSEC溶出図を
図3に示す。
形状:電子顕微鏡写真による形状の判定。
電荷:電気泳動シグナル(ζ電位、表面電荷)の判定による、Zetasizer(Malvern Instruments GmbH)での脱イオン水に溶解した様々なナノ構造の担体の系の測定、
図4を参照されたい。
エンドトキシン:LAL色素原アッセイ(Guilfoyle,DE et al.,Evaluation of a chromogenic procedure for use with the Limulus lysate assay of bacterial endotoxin in drug products.J Parenter Sci Technol,1985.39(6):pp.233-6)によるエンドトキシン測定。
溶血:生理的バッファーで粒子と1時間インキュベートした赤血球のヘモグロビン濃度の測定。赤血球膜が損傷すると、上清の測定可能なヘモグロビン濃度が上昇する。
凝集:生理的バッファーでポリマーとインキュベートした赤血球の吸収の測定。細胞凝集試料は、均一に分配した非凝集細胞よりも低い吸収を示す。
【0049】
実施例4:RNA単離
InnuPREP RNA Mini Kit(Analytik Jena AG、Jena、ドイツ)を使用して、培養細胞株からRNAを単離した。製造者の説明書と類似するように、手順を実施した。簡単に説明すると、培養フラスコから取り出した後、細胞を10mlのD-PBSで1回洗浄し、次いで、室温で5分間、1000rpmで遠心分離した。最大5×106個の細胞のペレットを、グアニジニウムチオシアネートを含有する450μlの溶解溶液RLで溶解した。次いで、溶解物を2mlレシーバチューブに入れたスピンフィルタDの上にピペットで移し、室温で2分間、12,000rpmで遠心分離し、それによってgDNAの選択的除去を行った。400μlの70%エタノールをホモジネートに添加し、反復ピペッティングによって十分に混合した。以下では、2mlレシーバチューブに入れたスピンフィルタRに体積全体を配し、室温で12,000rpmで2分間遠心分離し、それによってRNAの選択的結合を、フィルタにおいて行った。チューブを廃棄し、スピンフィルタRを新しい2mlのレシーバチューブに置いた。次いで、500μlの洗浄液HSをフィルタに添加し、室温で12,000rpmで、1分間遠心分離した。次いで、スピンフィルタRを新しい2mlのレシーバチューブに再び置き、700μlの洗浄液LSをフィルタに添加し、室温で12000rpmで、3分間遠心分離した。次いで、RNeasyスピンカラムを蓋付きの1.5mlの溶出管に配置した。溶出のために、30μlのRNase非含有水をスピンフィルタRの上にピペットで移し、室温で1分間インキュベートし、8,000rpmで1分間遠心分離した。次いで、溶出液のRNA濃度をNanoDropで判定し、その後、cDNA合成を直接行った。
【0050】
実施例5:cDNAの合成
効率的なcDNAの合成のために、RNAseフリー水(Analytik Jena AG)によって使用されるRNAを希釈することによって、500ng μL
-1 RNAの濃度を最初に調製した。それぞれの場合に1.5mLのEppendorfチューブで、7.7μLのRNA溶出液を4μLのdNTPミックス(Fermentas)および1μLのランダムヘキサマープライマー(Thermo Scientific)と上下にピペッティングすることによって混合し、次いでサーモサイクラー(Eppendorf、サーモミキサーの快適性)において、65℃で5分間インキュベートした。その後、4μLの反応バッファー(5×First Strand Buffer、Invitrogen)、2μLの0.1M DTT(Invitrogen)、および0.5μLのRNaseOut(商標)Recombinant(40 Uml
-1リボヌクレアーゼ阻害剤)を上下にピペッティングすることによって、試料に添加し、試料をサーモサイクラーにおいて、37℃で2分間インキュベートした。次いで、反応物に0.8μLのM-MLV逆転写酵素(200 UμL
-1、Invitrogen)を補充し、ボルテックスによって十分に混合し、短時間遠心分離した(テーブル遠心分離機、Eppendorf 5415 D)。続いて、サーモミキサー(Eppendorf)においてcDNAの合成を行った。アニーリングを最初に25℃で10分間行い、続いて37℃で60分間伸長し、逆転写酵素を70℃で15分間不活性化した。次いで、得られたcDNAを-20℃で保存した。
【0051】
実施例6:定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)
遺伝子発現変化の確実な検出のために、以下に記載されるように、qRT-PCR法が使用され得る。
図5bに示されるような密度のプロットを使用してキャリアタンパク質の発現分析をするために、すべての操作を紫外線殺菌PCRワークステーション(Peqlab、Biotechnology GmbH)の下で行った。総体積20μLの反応溶液(10μLのLightCycler(登録商標)480 SYBRGreen I Master Mix(Roche Diagnostics)+8μLの滅菌PCR水+1μLの1:10の希釈プライマーミックス+1μLのcDNA)を、96ウェルプレート(twin.tec PCR Plate 96、semi-skirted、blue、Eppendorf)に添加した。次いで、ウェルを平らなキャップストリップ(Eppendorf)で閉じ、96ウェルプレートを短時間遠心分離した(遠心分離機5810 R、Eppendorf)。PCRを、Mastercycler(登録商標)ep勾配S realplex 4(Eppendorf AG、ハンブルグ、ドイツ)で行った。最終的な伸長と冷却の間に、融解曲線を用いてPCR産物の品質を評価するために、産物はゆっくりと95℃まで融解した。試料を96ウェルプレートで3重で泳動し、ハウスキーピング遺伝子β-グルクロニダーゼ(β-GUS)に対するΔC
t法を用いて、遺伝子発現を正規化した。懸濁細胞株の遺伝子発現レベルを、2
-ΔΔCt法を使用して、HepaRG細胞のものと比較した。
【0052】
実施例7:色素およびナノ粒子実験
4つの接着性腫瘍細胞株DLD-1、HCC-78、DU-145、およびMKN-45、ならびに陰性対照としての293T細胞を使用した。各色素のうち、100nMの希釈物を、ストック溶液をD-PBSで希釈することによって調製した。続いて、それらからの5×105の細胞をトリプシン処理し、1.5mlのチューブにおいて100μlでピペットで分注し、サーモサイクラー(Thermomixer comfort、Eppendorf)において37℃および氷上4℃の両方で少なくとも10分間保存した。次いで、細胞を暗所で100μlの異なる色素濃度で37℃および4℃で5分間同時にインキュベートし、次いで4%パラホルムアルデヒドで、15を固定した。試料を1000rpmで5分間遠心分離し(Eppendorf Centrifuge 5415 C)、上清を廃棄した後、1mlのD-PBS+1% BSAで2回洗浄した。次いで、ペレットを500μlのD-PBS+1% BSAに再懸濁し、FACSチューブに移し、BD LSRFortessaで短時間ボルテックスした後に測定した。ナノ粒子(NP)実験のために、100μlあたり5×105個の細胞を予熱RPMI+10% FCSとセットし、ナノ粒子インキュベーションを4℃および37℃で実行できるように、ウェルあたり100μlを、2枚の24ウェルプレートに蒔いた。100μg/ml-1のMilliQ水希釈物をNPストック(それぞれ10mg/ml-1)から調製することにより、ウェルあたり1つの細胞懸濁液に100μlを適用した後、50μg/ml-1のインキュベーション濃度を達成することができた。細胞を氷上で4℃およびサーモミキサーで37℃で暗所で5分間インキュベートし、続いて250μlのD-PBSの体積のFACSチューブに移し、直ちにBD LSRFortessaで測定した。
【配列表】
【国際調査報告】