(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】調整可能表面を有する音響ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20231227BHJP
B60N 2/806 20180101ALI20231227BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20231227BHJP
A47C 7/72 20060101ALI20231227BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20231227BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B60N2/879
B60N2/806
A47C7/38
A47C7/72
H04R1/02 102B
H04R3/00 310
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538806
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 US2021064944
(87)【国際公開番号】W WO2022140597
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード・スバット
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ケー・レイド
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
3B084DB01
3B084DB08
3B084JA01
3B084JD02
3B087DC06
3B087DC07
3B087DE08
3B087DE09
5D017AE18
5D220AA05
(57)【要約】
ヘッドレストを通じて又はヘッドレストの近くでオーディオを提供するシステム及び方法が提供される。ヘッドレストは、使用時に乗員の頭部に近接するように位置決めされた調整可能表面を含み、音響開口部は、乗員の耳が占有すると予想される方向の範囲に音響トランスデューサから音響エネルギーを放出するように構成される。調整可能表面の位置は、乗員の耳の位置の何らかの指標を与え、様々なオーディオ信号(ドライバ信号)特性は、調整可能表面の位置に基づいて調整され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストであって、
使用時に乗員の頭部に近接するように配置された調整可能表面と、
前記乗員の耳が占有すると予想される方向の範囲に音響トランスデューサから音響エネルギーを放出するように構成された音響開口部と、を備える、ヘッドレスト。
【請求項2】
前記調整可能表面の位置に基づいて、前記音響トランスデューサに提供されるドライバ信号を調整するように構成されたプロセッサを更に備える、請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記調整可能表面の位置を検出するように構成されたセンサを更に備える、請求項2に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記ドライバ信号を調整して、前記音響開口部と前記耳との間の遮蔽領域を少なくとも部分的に補償するように構成され、前記遮蔽領域は、前記調整可能表面の位置と共に変化する、請求項2に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記調整可能表面は、水平寸法及び垂直寸法の少なくとも一方で調整可能である、請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項6】
前記調整可能表面の動きに関連して音響チャネルの形状を調整する音響導管を更に備える、請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項7】
前記調整可能表面の位置に基づいて前記音響トランスデューサに提供されるドライバ信号を調整して、前記調整可能表面の位置に基づいて前記音響導管の音響特性の変化を少なくとも部分的に補償するように構成されたプロセッサを更に備える、請求項6に記載のヘッドレスト。
【請求項8】
前記音響トランスデューサを更に備える、請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項9】
オーディオシステムであって、
使用時に乗員の頭部に近接するように位置決めされた調整可能表面と、前記乗員の耳が占有すると予想される方向の範囲に音響トランスデューサから音響エネルギーを放出するように構成された音響開口部とを有するヘッドレストと、
前記調整可能表面の位置に基づいて、前記音響トランスデューサに提供されるドライバ信号を調整するように構成されたプロセッサと、を備える、オーディオシステム。
【請求項10】
前記調整可能表面の位置を検出するように構成されたセンサを更に備える、請求項9に記載のオーディオシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記音響開口部と前記耳との間の遮蔽領域を少なくとも部分的に補償するために前記ドライバ信号を調整するように構成され、前記遮蔽領域は、前記調整可能表面の位置と共に変化する、請求項9に記載のオーディオシステム。
【請求項12】
前記調整可能表面は、水平寸法及び垂直寸法のうちの少なくとも1つで調整可能である、請求項9に記載のオーディオシステム。
【請求項13】
前記調整可能表面の移動に関連して音響チャネルの形状を調整する音響導管を更に備える、請求項9に記載のオーディオシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記ドライバ信号を調整して、前記調整可能表面の位置に基づいて前記音響導管の音響特性の変化を少なくとも部分的に補償するように構成されている、請求項13に記載のオーディオシステム。
【請求項15】
調整可能表面を有するオーディオヘッドレストのオーディオ出力を制御する方法であって、
前記ヘッドレストの前記調整可能表面の位置を検出することと、
前記調整可能表面の前記検出された位置に基づいて、音響トランスデューサに提供されるドライバ信号を調整することとを含む、方法。
【請求項16】
前記ドライバ信号を調整することは、音響開口部と耳との間の遮蔽領域を少なくとも部分的に補償し、前記遮蔽領域は、前記調整可能表面の前記位置と共に変化する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ドライバ信号を調整することは、前記調整可能表面の前記位置に基づいて、音響導管の音響特性の変化を少なくとも部分的に補償する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記調整可能表面は、水平寸法及び垂直寸法のうちの少なくとも1つで調整可能である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年12月23日に出願された「ACOUSTIC HEADREST WITH ADJUSTABLE SURFACE」と題する米国特許出願第63/130,211号の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
自動車、アミューズメント乗り物、列車などの様々な座席システムは、座席の乗員にオーディオ機能を提供するために、座席のヘッドレスト部分内に、又はヘッドレスト部分に近接して、オーディオシステム構成要素、例えば、スピーカを備えることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書で開示されるシステム及び方法は、少なくとも1つの音響トランスデューサを収容するように構成されたヘッドレスト(複数可)に関する。ヘッドレストは、ユーザ又は乗員の頭部に隣接し、例えば急加速の場合にユーザの頭部の動きを阻止又は抑制するように構成された表面を含む。表面は更に、典型的な座席位置又は配置に対して、前後及び上下など、少なくとも1次元、好ましくは2次元で調整可能、例えば、移動可能であるように構成される。
【0004】
ヘッドレストを通じて又はヘッドレストの近くでオーディオを提供するシステム及び方法が提供される。ヘッドレストは、使用時に乗員の頭部に近接するように位置決めされた調整可能表面を含み、音響開口部は、乗員の耳が占有すると予想される方向の範囲に音響トランスデューサから音響エネルギーを放出するように構成される。調整可能表面の位置は、乗員の耳の位置の何らかの指標を与え、様々なオーディオ信号(ドライバ信号)特性は、調整可能表面の位置に基づいて調整され得る。
【0005】
少なくとも1つの態様によれば、ヘッドレストは、使用時に乗員の頭部に近接するように位置決めされた調整可能表面と、乗員の耳が占有すると予想される方向の範囲に音響トランスデューサから音響エネルギーを放出するように構成される音響開口部とを備える。
【0006】
様々な例では、プロセッサは、調整可能表面の位置に基づいて、音響トランスデューサに提供されるドライバ信号を調整するように構成され得る。プロセッサは、他の場所に配置され、ヘッドレストに結合され得る。
【0007】
いくつかの例は、調整可能表面の位置を検出するように構成されたセンサを含む。
【0008】
特定の例では、プロセッサは、ドライバ信号を調整して、音響開口部と耳との間の遮蔽領域を少なくとも部分的に補償するように構成され、遮蔽領域は、調整可能表面の位置と共に変化する。
【0009】
様々な例によれば、調整可能表面は、水平寸法、垂直寸法、又はその両方で調整可能であり得る。
【0010】
様々な例は、調整可能表面の移動に関連して音響チャネルの形状を調整する音響導管を含み得る。プロセッサは、調整可能表面の位置に基づいて音響トランスデューサに提供されるドライバ信号を調整して、調整可能表面の位置に基づいて音響導管の音響特性の変化を少なくとも部分的に補償するように構成され得る。
【0011】
いくつかの例は、音響トランスデューサを含む。
【0012】
別の態様によれば、使用時に乗員の頭部に近接するように位置決めされた調整可能表面を有するヘッドレストと、乗員の耳が占有すると予想される方向の範囲に音響トランスデューサから音響エネルギーを放出するように構成された音響開口部と、調整可能表面の位置に基づいて音響トランスデューサに提供されるドライバ信号を調整するように構成されたプロセッサと、を含むオーディオシステムが提供される。
【0013】
様々な例は、調整可能表面の位置を検出するように構成されたセンサを含む。
【0014】
特定の例では、プロセッサは、ドライバ信号を調整して、音響開口部と耳との間の遮蔽領域を少なくとも部分的に補償するように構成され、遮蔽領域は、調整可能表面の位置と共に変化する。
【0015】
いくつかの例によれば、調整可能表面は、水平寸法、垂直寸法、又はその両方で調整可能である。
【0016】
特定の例は、調整可能表面の移動に関連して音響チャネルの形状を調整する音響導管を含み得る。そのような例では、プロセッサは、ドライバ信号を調整して、調整可能表面の位置に基づいて音響導管の音響特性の変化を少なくとも部分的に補償するように構成され得る。
【0017】
更に別の態様によれば、調整可能表面を有するオーディオヘッドレストのオーディオ出力を制御する方法が提供される。本方法は、ヘッドレストの調整可能表面の位置を検出することと、調整可能表面の検出された位置に基づいて音響トランスデューサに提供されるドライバ信号を調整することとを含む。
【0018】
いくつかの例では、ドライバ信号を調整することは、音響開口部と耳との間の遮蔽領域を少なくとも部分的に補償し、遮蔽領域は、調整可能表面の位置と共に変化する。
【0019】
様々な例では、ドライバ信号を調整することは、調整可能表面の位置に基づいて音響導管の音響特性の変化を少なくとも部分的に補償する。
【0020】
様々な例によれば、調整可能表面は、水平寸法、垂直寸法、又はその両方で調整可能であり得る。
【0021】
これらの例示的態様及び実施例に関する更なる他の態様、実施例、及び利点を、以下で詳細に考察する。本明細書で開示する例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと一致する任意の様式で、他の例と組み合わせることができ、更に、「一実施例(an example)」、「いくつかの実施例(some examples)」、「代替例(an alternate example)」、「様々な実施例(various examples)」、「一実施例(one example)」などへの言及は、必ずしも互いに独占的ではなく、説明される特定の特徴、構造、又は特性は、少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを示すように意図される。本明細書におけるこうした用語の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を示すわけではない。
【0022】
少なくとも1つの例の様々な態様を、添付図面を参照して、以下で考察するが、これらの図面は、縮尺通りに描かれることを意図しない。これらの図は、様々な態様と例の図示、及び更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、発明(複数可)を制約する境界であることを意図していない。図において、様々な図で図示される同一の、又はほとんど同一の構成要素は、同様の文字又は数字で表記され得る。明瞭にするために、全ての図において、全ての構成要素が、必ずしもラベル付けされていない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】開示された例によるヘッドレストを有する座席の斜視図である。
【
図3】
図1の座席のヘッドレスト部分の拡大斜視図である。
【
図4】公称位置に調整可能表面を有する例示的なヘッドレストの概略上面図である。
【
図5】調整可能表面が前方位置にある、
図4のヘッドレストの概略上面図である。
【
図6】調整可能表面が後方位置にある、
図4のヘッドレストの概略上面図である。
【
図7】調整可能表面が公称位置にある、
図4のヘッドレストの概略側面図である。
【
図8】調整可能表面が上昇位置にある、
図4のヘッドレストの概略側面図である。
【
図9】調整可能表面が下降位置にある、
図4のヘッドレストの概略側面図である。
【
図10】調整可能表面が公称位置にある、別の例示的なヘッドレストの概略側面図である。
【
図11】調整可能表面が前方位置にある、
図10のヘッドレストの概略側面図である。
【
図12】調整可能表面が後方位置にある、
図10のヘッドレストの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1~
図3には、座席が占有されているときに乗員の頭部に隣接するように位置決めされた調整可能表面110を有する例示的なヘッドレスト100を含む座席の斜視図、側面図、及び拡大斜視図がそれぞれ示されている。ヘッドレスト100はまた、音響信号を乗員に提供するために音響トランスデューサ(図示せず)に結合された少なくとも1つの音響開口部120を含む。様々な例において、ヘッドレスト100は、例えば、左右の信号、高-中-低周波数、又はこれらの組み合わせに対応する2つ以上の音響開口部120を有し得る。いくつかの例では、単一の音響開口部120のみが存在してもよい。
【0025】
様々な例は、各音響開口部120に結合された音響トランスデューサを含み得る。そのうち、様々な例では、様々なシステム要件及び/又は性能特性に対応するために、音響トランスデューサが複数の音響開口部120に結合されてもよく、及び/又は音響開口部120が複数の音響トランスデューサに結合されてもよい。様々な例は、音響トランスデューサから音響開口部120への導管を提供する音響チャネルを含み得る。特定の例では、音響開口部120は、音響開口部が調整可能表面110と共に移動するように、調整可能表面110と関連付けられ得る。そのような例では、音響導管は調整可能であってもよく、調整可能表面110の移動と共に拡張、収縮、又はシフトしてもよい。様々な例において、音響開口部120は、(図示されるように)シート又はヘッドレストの他の部分と関連付けられてもよく、調整可能表面110が移動されるときに固定されたままである。いくつかの例では、音響トランスデューサは、識別可能な音響導管なしで、音響開口部120に非常に近接して配置されてもよく、したがって、音響開口部120は、音響トランスデューサ自体と実質的に区別できなくてもよく、例えば、音響トランスデューサは、音響開口部120内に又は音響開口部に取り付けられてもよい。
【0026】
図2は、表面110が第1の軸112に沿って(例えば、水平又は前後に)、及び第2の軸114に沿って(例えば、垂直又は上下に)調整可能であることを更に示す。水平、垂直、前方、後方、上、下などへの言及は、運転者、乗客などがいる車両における典型的な配向などの公称配向におけるヘッドレストに対するものである。様々な例において、本明細書によるシート又はヘッドレストは、航空機、アミューズメント乗り物などにおいて、一時的又は永久的に異なる配向にされ得る。
【0027】
調整可能表面の配置又は位置は、音響開口部120と乗員の耳(複数可)との間で、調整可能表面110の縁部(複数可)の周りの遮蔽の程度を変化させることなどによって、音響開口部120から発する様々な音響信号に対する音響効果を有する。音響開口部120が調整可能表面110に関連付けられ、音響導管も調整可能である特定の例では、調整可能表面110の配置又は位置は、音響導管の形状を伸長、短縮、又は変形させることなどによって、音響導管の音響特性を変更し得る。
【0028】
様々な例は、調整可能表面110の位置を検出し、検出された位置に基づいてオーディオ又は音響処理を調整して、予想される耳の位置と音響開口部120との間の相対位置の変化、調整可能表面110と音響開口部120との間の相対位置の変化、音響導管の音響特性の変化、及び/又は音響性能に影響を及ぼし得る様々な他の相対変化を考慮に入れる。例えば、1つ以上のセンサは、調整可能表面110の位置を示すか又は検出することができ、プロセッサは、音響トランスデューサ(音響ドライバ、ラウドスピーカ)にドライバ信号を提供するように構成された信号処理を調整し得る。いくつかの例では、利得及び/又は等化処理は、調整可能表面110の検出された位置に応じて調整され得る。様々な例では、例えば、両耳間位相、両耳間タイミング、両耳間利得などを維持するように調整するために、追加的に又は代替的に、様々な位相及び/又はタイミング調整が適用され得る。
【0029】
いくつかの例では、ヘッドレストの物理的特性は、調整可能表面110の検出された位置に応じて調整され得る。例えば、音響トランスデューサは、例えば、移動、角度付け、傾斜、回転など物理的に調整されてもよく、及び/又は音響開口部120は、例えば、サイズ変更、角度付け、拡張、後退など物理的に調整されてもよい。いくつかの例では、このような物理的特性は、調整可能表面と、調整される他の構成要素との間の機械的結合によって実行され得る。いくつかの例では、コントローラ及びアクチュエータが、そのような機械的調整を実行し得る。
【0030】
図4は、例示的なヘッドレスト100の上面断面の概略図であり、水平軸112に対して公称位置にある調整可能表面110を示す。この例では、2つの音響トランスデューサ122が示されている(例えば、様々な例では、筐体内のヘッドレスト100の内側に取り付けられている)。乗員の頭部200が、乗員の耳220のおおよその位置と共に示されている。様々な例では、調整可能表面110の様々な位置において、音響エネルギーは、音響開口部120の各々から放出され、乗員の頭部200に向かって外向きに分配される。様々な例では、分配角度222は、前方から(例えば、音響開口部120の中心点又は他の基準点から)真っ直ぐ測定され、ヘッドレストの中心軸に向かって、音響エネルギーが調整可能表面110の構造によって干渉される方向まで延びる角度として表され得る。
【0031】
調整可能表面110のいくつかの位置において(及び所与の乗員の所与の位置に対して)、乗員の耳220は、分配角度222内に完全に入り得る。したがって、調整可能表面110のいかなる音響遮蔽も、音響開口部120のうちの所与の1つから乗員の耳220に到達する音響エネルギーに対して比較的小さい影響を及ぼし得る。しかしながら、
図4に示されるように、乗員の耳220は、調整可能表面110の構造によって少なくとも部分的に遮蔽され、したがって、遮蔽角度224を画定する。
【0032】
図5を参照すると、調整可能表面110が水平軸に対してより前方の位置にあることを除いて、
図4と同様の例示的なヘッドレスト100が示されている。したがって、距離112aは、調整可能表面110の前方の位置決め範囲を示し得る。調整可能表面110がこの前方位置にある状態で、調整可能表面110は、(調整可能表面110に対して)
図4に示されるものと同じ位置にある所与の乗員に対して、より大きい遮蔽角度224a及びそれに応じたより小さい分配角度222aを引き起こし得る。
【0033】
図6を参照すると、調整可能表面110が水平軸に対してより後方の位置にあることを除いて、
図4及び
図5と同様の例示的なヘッドレスト100が示されている。この場合も、(調整可能表面110に対して)同じ位置にいる所与の乗員に対して、分配角度222bは乗員の耳220を完全に覆い、したがって、遮蔽角度224bは負であり、例えば、乗員の耳220は遮蔽領域の外側にある)。
【0034】
調整可能表面110の様々な水平位置を示す
図4~
図6の全てを引き続き参照すると、
図4~
図6の各々は、音響開口部120から乗員の耳220への異なる音響伝達関数を有し得る。別の言い方をすれば、各々は、音響トランスデューサ122から乗員の耳220への異なる伝達関数を有してもよく、これは音響伝達関数であってもよく、又は音響トランスデューサ122の伝達関数、若しくは音響トランスデューサ122にドライバ信号を提供するオーディオシステムの他の信号伝達部分を含んでもよい。
【0035】
調整可能表面110に対して所与の位置にいる所与の乗員について、
図4~
図6の各々の伝達関数の差は、乗員の耳220までの距離と、調整可能表面110の位置とによって(少なくとも部分的に)生成されて、調整可能表面110の構造によって引き起こされる遮蔽領域を変化させる。
【0036】
様々な例では、オーディオシステム及び/又はプロセッサは、音響トランスデューサ122に提供されるドライバ信号(例えば、等化、利得、位相、タイミング、及び/又は同様のものを含む様々な「チューニング」変化)を調整して、調整可能表面110の位置に基づいて変化する伝達関数に適応する及び/又は少なくとも部分的に補償することができる。様々な例では、調整可能表面110の位置を検出するために様々なセンサが含まれてもよく、オーディオシステム又は他のプロセッサは、そのようなセンサから、検出された位置を表す信号(複数可)を受信し得る。
【0037】
図4~
図6の各々に示される様々な角度寸法は、所与の乗員の頭部位置に対するヘッドレスト100の一例を表すものに過ぎず、限定することを意図していない。
【0038】
図7は、例示的なヘッドレスト100の側面断面の概略図であり、垂直軸114に対して公称位置にある調整可能表面110を示す。動作中、音響エネルギーは、音響開口部120(例えば、図示される左側)から放出され、乗員の耳220は、音響開口部120の基準点に対して垂直な位置合わせ226を有し得る。例えば、音響開口部120の中心位置は、調整可能表面110の公称位置に対して乗員の耳220とほぼ又は実質的に水平に位置合わせされるように構成され得、これは、公称の乗員頭部200と適切に位置合わせされるように意図されてもよい。様々な例では、公称位置は、他の位置合わせ角度226を含み得る。
【0039】
異なる乗員は異なる身長を有する場合があり、したがって、調整可能表面110の垂直位置を調整する場合がある。
図8に示されるように、背の低い乗員200は、調整可能表面110を、例えば
図7に示す位置よりも低い位置に配置することができ、位置合わせ226aは、乗員の耳220が音響開口部120に対して公称位置よりも低い位置にあることを表す。
【0040】
更に、
図9を参照すると、背の高い乗員200は、調整可能表面110を、例えば
図7に示す位置よりも高い位置に位置決めすることができ、その結果、位置合わせ226bは、乗員の耳220が音響開口部120に対して公称位置よりも高い位置にあることを表す。
【0041】
調整可能表面110の様々な垂直位置を示す
図7~
図9の全てを引き続き参照すると、
図7~
図9の各々は、音響開口部120から乗員の耳220までの異なる音響伝達関数を有し得る。調整可能表面110の変化する水平位置と同様に、各々が、音響トランスデューサ122から乗員の耳220への異なる伝達関数を有してもよく、これは音響伝達関数であってもよく、又は音響トランスデューサ122の伝達関数、若しくは音響トランスデューサ122にドライバ信号を提供するオーディオシステムの他の信号伝達部分を含んでもよい。
図7~
図9の各々の間の伝達関数の差は、乗員の耳(複数可)220の位置及び調整可能表面110の変化する位置によって(少なくとも部分的に)引き起こされ、その各々は、音響開口部120から放出される音響エネルギーの放射パターンに対する変化を表し、また、乗員の耳220までの変化する距離も表し得る。更に、調整可能表面110は、例えば、調整可能表面110の構造によって生成されるように、変化する垂直位置において、
図4~
図6に関して説明したものと同様の変化する遮蔽領域を生じさせることができる。
【0042】
様々な例では、オーディオシステム及び/又はプロセッサは、音響トランスデューサ122に提供されるドライバ信号(例えば、等化、利得、位相、タイミング、及び/又は同様のものを含む様々な「チューニング」変化)を調整して、調整可能表面110の位置に基づいて変化する伝達関数に適応する及び/又は少なくとも部分的に補償することができる。例えば、軸外高周波損失(又は利得)を克服するために調整が行われ得る。様々な例では、調整可能表面110の位置を検出するために、
図4~
図6に関して前述したのと同じ又は同様のセンサであり得る様々なセンサが含まれてもよく、オーディオシステム又は他のプロセッサは、そのようなセンサから検出された位置を表す信号を受信し得る。
【0043】
様々な例では、調整可能表面110のいくつかの位置は、音響開口部120から耳220への様々な遮られていない音響経路を提供し得る。例えば、
図9を参照すると、音響開口部120の最下部は、耳220への遮られていない音響経路を有し得る。したがって、調整可能表面110の様々な位置は、プロセッサによって適応され得る大幅に異なる伝達関数を生成し、それに応答してドライバ信号を調整し得る。
【0044】
様々な例では、調整可能表面110の検出された垂直位置は、乗員の耳(複数可)220への水平方向の位置合わせ及び距離を表し得る。いくつかの例では、そのようなものはまた、自動車のルーフライナなどの他の表面までの距離を示し得、ドライバ信号は更に、他の表面までのそのような異なる距離(複数可)の変動する音響効果に適応するように、及び/又は部分的に補償するように調整され得る。
【0045】
各図に示された様々な角度位置合わせは、調整可能表面110に対する乗員の公称頭部位置に対するヘッドレスト100の一例を表すに過ぎず、限定することを意図していない。
【0046】
少なくとも1つの例では、ヘッドレスト100の代替形態が、
図10~
図12を参照して示される。
図10~
図12のヘッドレスト100は、
図1~
図9のヘッドレストと同様であってもよいが、調整可能表面110に関連付けられた音響開口部120を有する。
図10~
図12の例示的なヘッドレスト100では、音響トランスデューサ(図示せず)がヘッドレスト100の別の部分又は座席の別の部分(又は任意の適切な位置)に設置されてもよく、音響トランスデューサから音響開口部120に音響エネルギーを搬送又は伝達するために音響導管300が設けられてもよい。
【0047】
音響導管は、調整可能表面110の様々な位置に対応するように調整可能であり得る。例えば、
図10~
図12に示されるように、音響導管300は、音響導管が圧縮(短縮)又は伸長(延長)することを可能にするアコーディオンスタイルを有し得る。
図10は、公称(中程度の長さ)位置にある音響導管300を示し、
図11は、伸長(延長)位置にある音響導管300を示し、
図12は、圧縮(短縮)位置にある音響導管300を示す(音響導管300はこの例では見えない)。様々な例では、音響導管300は、調整可能表面110の上下及び前後の動きに対応するように、他の寸法で可撓性であってもよい。様々な例では、音響導管300は、伸縮式、可撓性、弾性であってもよく、及び/又は音響導管300が調整可能表面110の相対的位置決めに適応することを可能にする任意の他の機械的又は物理的特性を含んでもよい。
【0048】
図1~
図9に関して上述したように、様々な例は、
図10~
図12の調整可能表面110の位置を検出することができ、任意の信号処理及び/又は物理的/機械的調整を行って、乗員及び/又は他の特徴と様々に組み合わせて、音響トランスデューサ、音響導管300、調整可能表面110、及び音響開口部120を含むヘッドレストシステムの1つ以上の変化する音響特性に対応することができる。
図1~
図9の調整可能表面110の位置を検出し、それに応答して任意の調整を行うか又は任意の動作を行うことに関する先の説明のあらゆる態様は、
図10~
図12のヘッドレスト100の態様に等しく適用することができる。簡潔にするために、そのような詳細な説明は、本明細書において重複するものとして省略される。
【0049】
様々な図は、単に概略的なものであり、構成要素の相対位置を示し、それにより、例えば、調整可能表面110は、調整可能表面110を支持し得る物理的構造に関係なく、様々な相対位置で示される。様々な例では、そのような物理的支持構造は、機械的に調整可能な支持体を含むことができ、(ドライバ信号を調整する際に考慮に入れることができる)音響伝達関数の変動に寄与し得る。更に、そのような物理的支持構造は、ユーザによる手動操作によって、又は動力機構によって動作可能であり得、動力機構は更に、ユーザ入力によって、又はセンサ入力を受信する、例えば、乗員の頭部位置を感知するプロセッサによって、又は様々な手段によって制御され得る。
【0050】
本明細書で考察される方法と機器の実施例は、上記の説明に記載されるか、又は添付の図面で図示される構成の詳細、並びに、構成要素の配置に適用することに限定されない。本発明の方法及び機器は、他の実施例で実装可能であり、様々な方式で実施又は遂行可能である。具体的な実施例は、例示目的のみのために本明細書で提供され、限定を意図するものではない。具体的には、任意の1つ以上の実施例に関連して考察される機能、構成要素、要素、及び特徴は、任意の他の実施例において同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0051】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明目的のみを目的としており、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書において単数で言及されるシステム及び方法の実施例、構成要素、要素、行為、又は機能に対する任意の言及はまた、複数を含む実施形態を包含してもよく、本明細書における任意の例、構成要素、要素、動作、又は機能に対する複数での任意の言及もまた、単数形のみを含む実施例を包含してもよい。したがって、単数形又は複数形の参照は、本開示のシステム又は方法、それらの構成要素、行為、又は要素を制限することを意図するものではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、並びに、それらの変形形態の使用は、以下で列挙する項目とその等価物、並びに、他の項目を包含することを意味する。「又は(or)」への言及は、「又は(or)」で記載された全ての用語が、記載された用語の単一、複数、及び、全ての用語のいずれかを示せるよう、包括的であると解釈され得る。文脈が合理的にそうでないことを暗示している場合を除き、前後、左右、上下、上部と下部、及び縦横への言及は、説明の便宜のためであり、本システムと方法、あるいは、それらの構成要素を、何らかの1つの位置的か、又は空間的方向に限定するものではない。
【0052】
少なくとも1つの実施例に関するいくつかの態様について述べてきたが、当業者であれば、様々な変更、修正、並びに、改良が容易に思い付くことが、理解されるであろう。こうした変更、修正、及び改善は、本開示の一部であり、本発明の範囲内であることが意図される。したがって、前述の説明及び図面は、例に過ぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の適切な構成、並びに、それらの等価物から判定されるはずである。
【符号の説明】
【0053】
100 ヘッドレスト
110 調整可能表面
112 水平軸
114 垂直軸
120 音響開口部
122 音響トランスデューサ
200 乗員頭部
220 耳
222 分配角度
224 遮蔽角度
226 位置合わせ角度
300 音響導管
【国際調査報告】