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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】雷保護システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20231227BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F03D80/30
F03D1/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538807
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2021087468
(87)【国際公開番号】W WO2022136631
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216990.0
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519464522
【氏名又は名称】ポリテック・アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マス・キアケゴー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ベイカー
(72)【発明者】
【氏名】リサ・カルローニ
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178BB43
3H178CC02
(57)【要約】
本発明は、風力タービン羽根のための雷保護システムに関し、風力タービン羽根は、付根端部および先端部ならびに長手軸と、風力タービン羽根の外側面である圧力側および吸込側と、繊維強化ポリマー(FRP)で作られた桁または梁である、長手軸に沿って延在する構造要素と、を備え、雷保護システムは、-先端部から、先端部から所定の距離に配置された先端接続ブロックまで延在する、第1の引下げ導体であって、先端接続ブロックと電気的に接続されている、第1の引下げ導体と、-先端接続ブロックから構造要素と圧力側との間で構造要素および圧力側に沿って、付根端部に配置された付根接続ブロックに向かって延在する、第2の引下げ導体と、-先端接続ブロックから構造要素と吸込側との間で構造要素および吸込側に沿って、付根接続ブロックに向かって延在する、第3の引下げ導体と、を備え、- 第2の引下げ導体は、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュを備え、第3の引下げ導体は、第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュを備え、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュは、導電性材料で作られており、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュは、複数の導電性接続点を備え、導電性接続点は、先端接続ブロックおよび付根接続ブロックの近くに配置されており、かつ、先端接続ブロックおよび付根接続ブロックとそれぞれ電気的に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン羽根(101)のための雷保護システム(1)であって、前記風力タービン羽根(101)が、付根端部(102)および先端部(103)ならびに長手軸(106)と、前記風力タービン羽根の外側面である圧力側(110)および吸込側(111)と、繊維強化ポリマー(FRP)で作られた桁または梁である、前記長手軸に沿って延在する構造要素(112)と、を備え、
前記雷保護システムが、
前記先端部(103)から、前記先端部から所定の距離に配置された先端接続ブロック(3)まで延在する、第1の引下げ導体(2)であって、前記先端接続ブロックと電気的に接続されている、第1の引下げ導体(2)と、
前記先端接続ブロック(3)から前記構造要素(112)と前記圧力側(110)との間で前記構造要素(112)および前記圧力側(110)に沿って、前記付根端部(102)に配置された付根接続ブロック(5)に向かって延在する、第2の引下げ導体(4)と、
前記先端接続ブロック(3)から前記構造要素(112)と前記吸込側(111)との間で前記構造要素(112)および前記吸込側(111)に沿って、前記付根接続ブロック(5)に向かって延在する、第3の引下げ導体(7)と、
を備え、
前記第2の引下げ導体(4)が、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュを備え、前記第3の引下げ導体(7)が、第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュを備え、前記第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび前記第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュが、導電性材料で作られており、
前記第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび前記第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュが、複数の導電性接続点(6)を備え、前記導電性接続点(6)が、前記先端接続ブロック(3)および前記付根接続ブロック(5)の近くに配置されており、かつ、前記先端コネクタブロック(3)および前記付根コネクタブロック(5)とそれぞれ電気的に接続されている、雷保護システム(1)。
【請求項2】
前記構造要素(112)が、導電性の炭素繊維強化ポリマー(CFRP)で作られた桁または梁である、請求項1に記載の雷保護システム(1)。
【請求項3】
前記所定の距離が、前記先端部(103)からおよそ5メートルから25メートルである、請求項1または2に記載の雷保護システム(1)。
【請求項4】
前記第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび前記第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュが、前記構造要素(112)に対して両側に対称的に配置され、かつ、実質的に等しいサイズである、請求項1から3のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項5】
前記導電性接続点(6)が、金属もしくは他の導電性材料、またはそれらの組み合わせで作られる、請求項1から4のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項6】
前記導電性接続点(6)が、前記先端接続ブロック(3)および前記付根接続ブロック(5)と直接的にまたは間接的に接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項7】
各導電性接続点(6)が、3mmから200mmの間、好ましくは5mmから100mmの間の最小曲率半径を持つ外側の閉じられた湾曲部(8)を提する幾何形状を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項8】
前記導電性接続点(6)が、半長軸(9)および半短軸(10)を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項9】
前記半長軸(9)と前記半短軸(10)とが、異なっており、卵円形または楕円形の外周(11)を提供する、請求項8に記載の雷保護システム(1)。
【請求項10】
前記半長軸(9)が、前記風力タービン羽根の前記長手軸(106)に対して所定の角度に向けられる、請求項8または9に記載の雷保護システム(1)。
【請求項11】
前記所定の角度が、0度から90度の間である、請求項10に記載の雷保護システム(1)。
【請求項12】
前記導電性接続点(6)が、縁部または外周を有し、前記縁部または外周における電流密度が、1500A/mm以下である、請求項1から11のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項13】
前記導電性接続点(6)が、0.5mmよりも大きい厚さ、好ましくは1.0mmよりも大きい厚さを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項14】
前記導電性接続点(6)の前記厚さが、シートの厚さに対して両方向に広がる、請求項13に記載の雷保護システム(1)。
【請求項15】
レセプタボルトが、前記導電性接続点(6)を貫通して前記接続ブロックに螺入される、請求項1から14のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項16】
複数の中間導電性接続点(12)が、前記先端接続ブロック(3)から所定の中間距離において前記構造要素(112)の反対側に配置される、請求項1から15のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項17】
前記中間導電性接続点(12)が、前記構造要素(112)と接続される、請求項16に記載の雷保護システム(1)。
【請求項18】
前記所定の中間距離が、1500mm未満、好ましくは1500mmから500mmの間、より好ましくは500mmから100mmの間、最も好ましくは100mmから10mmの間である、請求項16または17に記載の雷保護システム(1)。
【請求項19】
前記第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび前記第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュの前記導電性材料が、アルミニウム、銅、鋼鉄、または関連する合金などの金属である、請求項1から18のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項20】
前記第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュが、前記圧力側(110)に面している前記構造要素(112)の第1の側を少なくとも完全に覆うように配置され、前記第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュが、前記吸込側(111)に面している前記構造要素(112)の第2の側を少なくとも完全に覆うように配置される、請求項1から19のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項21】
前記第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび前記第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュの長さが、前記構造要素(112)の長さ以上である、請求項20に記載の雷保護システム(1)。
【請求項22】
前記先端接続ブロック(3)が、前記導電性接続点(6)を介して前記第1の引下げ導体(2)を前記第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび前記第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュとそれぞれ電気的に接続する、請求項1から21のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項23】
前記先端接続ブロック(3)が、少なくとも1つの第1のレセプタベースおよび少なくとも1つの第2のレセプタベースを備え、前記第1のレセプタベースが、前記第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュの前記導電性接続点(6)を前記先端コネクタブロック(3)に接続するように構成され、前記第2のレセプタベースが、前記第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュの前記導電性接続点(6)を前記先端コネクタブロック(3)に接続するように構成される、請求項1から22のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項24】
前記付根コネクタブロック(5)が、前記第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュを単一の付根引下げ導体(24)と電気的に接続するように構成される、請求項1から23のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)。
【請求項25】
付根端部(102)および先端部(103)、ならびに長手軸(106)と、風力タービン羽根の外側面である圧力側(110)および吸込側(111)と、導電性の炭素繊維強化ポリマー(CFRP)で作られた桁または梁である、前記長手軸(106)に沿って延在する構造要素(112)と、請求項1から24のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)と、を備える、風力タービン羽根(101)。
【請求項26】
請求項1から24のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)を含む、1つまたは複数の風力タービン羽根(101)を有する、風力タービン(100)。
【請求項27】
請求項1から24のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)の導電性接続点(6)をエキスパンドフォイルまたはメッシュに設けるための方法であって、
導電性材料を溶融させるステップと、
前記溶融された導電性材料を液体状態において適用して、前記エキスパンドフォイルまたはメッシュを取り囲むステップと、
前記溶融された材料を硬化させて、前記導電性接続点と前記エキスパンドフォイルまたはメッシュとの間に機械的かつ導電性の接続を提供することを可能にするステップと、
を含む、方法。
【請求項28】
請求項1から24のいずれか一項に記載の雷保護システム(1)の導電性接続点(6)をエキスパンドフォイルまたはメッシュに設けるための方法であって、
導電性材料で作られた少なくとも2つのディスクを用意するステップと、
前記2つのディスクを前記エキスパンドフォイルまたはメッシュの両側に配置するステップと、
前記ディスクの間に前記エキスパンドフォイルまたはメッシュがある状態で前記ディスクを互いに固定して、前記ディスクの間に導電性の接続を提供するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン羽根のための雷保護システムに関し、風力タービン羽根は、付根端部および先端部ならびに長手軸と、風力タービン羽根の外側面である圧力側および吸込側と、繊維強化ポリマー(FRP)で作られた桁または梁である、長手軸に沿って延在する構造要素と、を備える。
【背景技術】
【0002】
風力タービン羽根のための最も知られた雷保護システムは、内部に配置される1つまたは複数の引下げ導体と、羽根の外部表面上に配置される複数の雷レセプタ(lightning receptor)と、を備える。
【0003】
そのようなシステムの良く知られた問題は、雷撃が、意図された位置、すなわち外部落雷点、いわゆる雷レセプタにおいて風力タービン羽根に落ちるだけでなく、羽根の構造を通じて直接的に雷保護システムの内部導電部を襲う可能性もあることである。そのような出来事は、典型的には雷撃に関連して放出される大量のエネルギーにより、風力タービン羽根に強度の構造上の損傷をもたらし得る。
【0004】
風力タービンのサイズが増大するので、風力タービン羽根のサイズも同様に増大する。したがって、風力タービン羽根の構造設計は、風力タービン羽根の強度を危うくすることなしに風力タービン羽根を可能な限り軽く設計したいという要望が常にあるので、ますます重要になっている。したがって、雷の衝撃によってもたらされる構造上の損傷に対して風力タービン羽根を全長にわたって保護することは、さらに重要になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の上記の不利益および欠点を全面的にまたは部分的に克服することである。より具体的には、繊維強化ポリマー(FRP)で作られた桁または梁である構造要素を有する風力タービン羽根のための改良された雷保護システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、以下の説明から明らかになる他の多くの目的、利点、および特徴とともに、風力タービン羽根のための雷保護システムによる本発明による解決策によって達成され、風力タービン羽根は、付根端部および先端部ならびに長手軸と、風力タービン羽根の外側面である圧力側および吸込側と、繊維強化ポリマー(FRP)で作られた桁または梁である、長手軸に沿って延在する構造要素と、を備え、雷保護システムは、
- 先端部から、先端部から所定の距離に配置された先端接続ブロックまで延在する、第1の引下げ導体であって、先端接続ブロックと電気的に接続されている、第1の引下げ導体と、
- 先端接続ブロックから構造要素と圧力側との間で構造要素および圧力側に沿って、付根端部に配置された付根接続ブロックに向かって延在する、第2の引下げ導体と、
- 先端接続ブロックから構造要素と吸込側との間で構造要素および吸込側に沿って、付根接続ブロックに向かって延在する、第3の引下げ導体と、
を備え、
- 第2の引下げ導体は、第1のシートを備え、第3の引下げ導体は、第2のシートを備え、第1のシートおよび第2のシートは、完全にまたは部分的に導電性材料で作られており、
第1のシートおよび第2のシートは、複数の導電性接続点を備え、導電性接続点は、先端接続ブロックおよび付根接続ブロックの近くに配置されており、かつ、先端コネクタブロックおよび付根コネクタブロックとそれぞれ電気的に接続されている。
【0007】
したがって、先端接続ブロックは、風力タービン羽根の先端から延在する第1の引下げ導体とFRP桁キャップの先端からの引下げ導体としての役割を果たす各羽根シェル内の2つのシートとの間のインターフェースとして機能する。さらに、圧力側引下げ導体と吸込側引下げ導体との間の結合または等電位化は、1つのユニットにおいて行われる。それと同時に、第2の引下げ導体および第3の引下げ導体は、シートの先端に落ちる雷撃に対するレセプタベースとしての役割を果たすことができる。この部品は、全雷電流に対処しかつその絶縁鋳造により遮断の失敗を回避するように、慎重に設計される。
【0008】
さらに、構造要素は、導電性の炭素繊維強化ポリマー(CFRP)で作られた桁または梁であってもよい。
【0009】
所定の距離は、風力タービン羽根の全長に応じて、風力タービン羽根の先端部から5メートルから25メートルであってよい。
【0010】
また、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュ、および第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュは、構造要素に対して両側に対称的に配置されてよく、かつ、実質的に等しいサイズであってよい。
【0011】
さらに、導電性接続点は、金属もしくは他の導電性材料、またはそれらの組み合わせで作られてよい。
【0012】
さらに、金属は、錫、アルミニウム、銅、黄銅、銀、金、またはそれらの任意の合金であってよい。
【0013】
さらに、導電性接続点は、第1の層および第2の層を備えることができる。
【0014】
第1の層は、第1の材料で作られてよく、第2の層は、第2の材料で作られてよい。第1の材料は、第2の材料とは異なる。
【0015】
また、導電性接続点は、接続ブロックと直接的にまたは間接的に接続されてよい。
【0016】
一実施形態では、各導電性接続点は、3mmから200mmの間、好ましくは5mmから100mmの間の最小曲率半径を持つ外側の閉じられた湾曲部を提示する幾何形状を有することができる。
【0017】
さらに、導電性接続点は、半長軸および半短軸を有することができる。
【0018】
半長軸および半短軸は、等しくて、円形の外周を提供してもよい。
【0019】
さらに、半長軸と半短軸とは、異なっており、卵円形または楕円形の外周を提供してもよい。
【0020】
さらに、半長軸は、風力タービン羽根の長手軸に対して所定の角度に向けられてよい。
【0021】
所定の角度は、0度から90度の間であってよい。
【0022】
また、導電性接続点は、部分的にまたは完全に円形もしくは卵円形であってよい。
【0023】
さらに、接続点は、非対称形状を有することができる。
【0024】
さらに、導電性接続点の外周は、曲線および直線によって画定されてよい。
【0025】
さらに、導電性接続点は、尖った隅部を伴わなくてよい。
【0026】
さらに、導電性接続点は、0.5mmよりも大きい厚さ、好ましくは1.0mmよりも大きい厚さを有してよい。
【0027】
また、導電性接続点の厚さは、シートの厚さに対して両方向に広がってよい。
【0028】
さらに、導電性接続点は、シートと機械的に接続されてよい。
【0029】
導電性接続点は、導電性接着剤によりシートに接着されてよい。
【0030】
さらに、レセプタボルトが、導電性接続点を貫通して接続ブロックに螺入されてよい。
【0031】
さらに、ねじ山が、導電性接続点内に設けられてよい。
【0032】
また、レセプタボルトが、導電性接続点内で終端されてよい。
【0033】
さらに、側方レセプタが、導電性接続点に接続されてよい。
【0034】
複数の中間導電性接続点が、先端接続ブロックから所定の中間距離において構造要素の反対側に配置されてよい。
【0035】
さらに、中間導電性接続点は、構造要素と接続されてよい。
【0036】
さらに、所定の中間距離は、1500mm未満、好ましくは1500mmから500mmの間、より好ましくは500mmから100mmの間、最も好ましくは100mmから10mmの間であってよい。
【0037】
また、導電性接続点は、液体状態の溶融材料がシートと接続され、それにより、材料が硬化したときに、導電性接続点とシートとの間に機械的かつ導電性の接続が提供されるように、材料を溶融することによって作られてもよい。
【0038】
材料の溶融は、電気誘導加熱または電気抵抗加熱によって行われてよい。
【0039】
さらに、導電性接続点は、その後ハンダ付けされるシート上に溶融金属を吹き付けることによって作られてもよい。
【0040】
導電性接続点は、シートの両側に配置された少なくとも2つのディスクを備え、その後、各ディスクを互いに機械的に固定することができる。
【0041】
さらに、導電性接続点は、少なくとも2つのディスクを備えることができ、2つのディスクは、シートの両側に配置された後で、塑性変形によりシートの周りで互いに圧迫される。
【0042】
また、導電性接続点は、少なくとも2つのディスクを備えることができ、2つのディスクは、シートの両側に配置された後で、互いにスポット溶接される。
【0043】
導電性接続点は、少なくとも2つのディスクを備えることができ、2つのディスクは、シートの両側に配置された後で、互いにパルス溶融される。
【0044】
さらに、導電性接続点は、少なくとも2つのディスクを備え、2つのディスクは、シートの両側に配置された後で、導電性接着剤によって互いに接着される。
【0045】
さらに、導電性接続点は、縁部または外周部を有し、縁部または外周部における電流密度は、1500A/mm以下であり得る。
【0046】
有利には、第1のシートおよび第2のシートは、エキスパンドフォイルまたはメッシュである。
【0047】
第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュの導電性材料は、アルミニウム、銅、鋼鉄、または関連する合金などの金属であってよい。
【0048】
また、シートまたはメッシュの導電性材料は、複合材または繊維などの非金属のものであってよい。
【0049】
第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュは、圧力側に面している構造要素の第1の側を少なくとも完全に覆うように配置されてよく、第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュは、吸込側に面している構造要素の第2の側を少なくとも完全に覆うように配置されてよい。
【0050】
さらに、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュの長さは、構造要素の長さ以上であってよい。
【0051】
さらに、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュは、第1の面積を有してよく、第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュは、第2の面積を有してよく、第1の面積および第2の面積は、実質的に等しい。
【0052】
エキスパンドフォイルは、モノリシックな統一体として作られてよい。
【0053】
また、メッシュは、導電糸を織ることによって提供されてよい。
【0054】
メッシュはまた、不織導電糸によって提供されてよい。
【0055】
さらに、先端接続ブロックは、導電性接続点を介して第1の引下げ導体を第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュのそれぞれと電気的に接続することができる。
【0056】
さらに、先端コネクタブロックは、少なくとも1つの第1のレセプタベースおよび少なくとも1つの第2のレセプタベースを備えることができ、第1のレセプタベースは、第1のエキスパンドフォイルの導電性接続点を先端コネクタブロックに接続するように構成され、第2のレセプタベースは、第2のエキスパンドフォイルの導電性接続点を先端コネクタブロックに接続するように構成される。
【0057】
さらに、レセプタボルトが、導電性接続点を貫通してレセプタベースに螺入されてよい。
【0058】
さらに、先端コネクタブロックは、少なくとも1つのレセプタベースの第1の対、および、少なくとも1つのレセプタベースの第2の対を備えることができ、第1の対は、第1のエキスパンドフォイルの導電性接続点を先端コネクタブロックに接続するように構成され、第2の対は、第2のエキスパンドフォイルの導電性接続点を先端コネクタブロックに接続するように構成される。
【0059】
さらに、等しい数のレセプタベースが、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュを先端接続ブロックに接続するために配置されてもよい。
【0060】
また、先端接続ブロックは、絶縁水準が十分であることを確実にすることにより遮断の失敗を回避するように構成されてよい。
【0061】
さらに、付根コネクタブロックは、第1のエキスパンドフォイルおよび第2のエキスパンドフォイルを単一の付根引下げ導体と電気的に接続するように構成されてよい。
【0062】
付根コネクタブロックは、Y字に形成されてよい。
【0063】
また、第1の中間接続ブロックが、第1のエキスパンドフォイルと付根接続ブロックとの間に配置されてよく、第1の中間接続ブロックは、第1のエキスパンドフォイルを付根接続ブロックと電気的に接続し、また、第2中間接続ブロックが、第2のエキスパンドフォイルと付根接続ブロックとの間に配置され、第2の中間接続ブロックは、第2のエキスパンドフォイルを付根接続ブロックと電気的に接続する。
【0064】
各中間接続ブロックは、少なくとも1つの第1のレセプタベースおよび少なくとも1つの第2のレセプタベースを備えることができ、第1のレセプタベースは、第1のエキスパンドフォイルの接続点を中間接続ブロックに接続するように構成され、第2のレセプタベースは、第2のエキスパンドフォイルの接続点を中間コネクタブロックに接続するように構成される。
【0065】
また、各中間接続ブロックは、少なくとも1つのレセプタベースの対を備えることができ、レセプタベースの対は、エキスパンドフォイルの導電性接続点を中間接続ブロックに接続するように構成される。
【0066】
さらに、レセプタボルトが、導電性接続点を貫通して中間接続ブロックのレセプタベースに螺入されてよい。
【0067】
さらに、第1のケーブルが、第1の中間接続ブロックと付根接続ブロックとの間に配置されてよく、第2のケーブルが、第2の中間接続ブロックと付根接続ブロックとの間に配置される。第1のケーブルおよび第2のケーブルは、引下げ導体として機能する。
【0068】
さらに、構造要素は、導電性であってよく、かつ、引抜き成形部品によって製造されてよい。引抜き成形部品は、予め含浸したガラス繊維シートを使用して、ドライファブリック積層、および真空支援樹脂注入プロセスにおいて作られてよい。
【0069】
さらに、構造要素は、例えば、
- いくつかの導電性の引抜き成形プロファイルを組み立てて積み重ねて、完全な構造要素に注入および加熱すること、
- 真空支援樹脂注入プロセスおよび加熱がその後に続く、ドライファブリック積層、または、
- 減圧および加熱がその後に続く、予め含浸された繊維プライの積層、
によって製造されてよい。
【0070】
本発明はまた、付根端部および先端部と、長手軸と、風力タービン羽根の外側面である圧力側および吸込側と、導電性の炭素繊維強化ポリマー(CFRP)で作られた桁または梁である、長手軸に沿って延在する構造要素と、上記の雷保護システムと、を備える、風力タービン羽根に関する。
【0071】
本発明はまた、上記の雷保護システムを含む1つまたは複数の風力タービン羽根を有する風力タービンに関する。
【0072】
本発明は、雷保護システムの導電性接続点をエキスパンドフォイルまたはメッシュなどのシートに設けるための方法であって、
- 導電性材料を溶融させるステップと、
- 溶融された導電性材料を液体状態において適用して、エキスパンドフォイルまたはメッシュを取り囲むステップと、
- 溶融材料を硬化させて、接続点とエキスパンドフォイルまたはメッシュとの間に機械的かつ導電性の接続を提供することを可能にするステップと、
を含む方法にさらに関する。
【0073】
材料を溶融させるステップは、電気誘導加熱または電気抵抗加熱によって行われてよい。
【0074】
溶融された導電性材料を適用するステップは、鋳込みによって行われる。
【0075】
本発明はまた、雷保護システムの導電性接続点をエキスパンドフォイルまたはメッシュなどのシートに設けるための方法であって、
- 成形導電性材料を用意するステップと、
- 成形導電性材料をエキスパンドフォイルまたはメッシュ上に適用するステップと、
- 成形導電性材料をハンダ付けして、接続点とエキスパンドフォイルまたはメッシュとの間に機械的かつ導電性の接続を提供するステップと、
を含む方法に関する。
【0076】
本発明は、雷保護システムの導電性接続点をエキスパンドフォイルまたはメッシュなどのシートに設けるための方法であって、
- 導電性材料で作られた少なくとも2つのディスクを用意するステップと、
- 2つのディスクをエキスパンドフォイルまたはメッシュの両側に配置するステップと、
- ディスクの間にエキスパンドフォイルまたはメッシュがある状態でディスクを互いに固定して、ディスクの間に導電性の接続を提供するステップと、
を含む方法にさらに関する。
【0077】
さらに、ディスクは、機械的接続によって互いに固定されてよい。
【0078】
また、ディスクは、塑性変形によりエキスパンドフォイルまたはメッシュの周りで2つのディスクを互いに圧迫することによって互いに固定されてよい。
【0079】
さらに、ディスクは、スポット溶接によって互いに固定されてよい。
【0080】
さらに、ディスクは、パルス溶融によって互いに固定されてよい。
【0081】
さらに、ディスクは、ディスクの間に導電性接着剤を適用して接着剤が硬化するまでディスクを所定の位置に維持することによって互いに固定されてよい。
【0082】
以下、例示の目的のために、いくつかの限定的ではない実施形態を示す、添付の概略的な図面を参照しながら、本発明およびその多くの利点をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】3つの風力タービン羽根を有する風力タービンを示す図である。
図2】風力タービン羽根の断面図である。
図3】雷の衝撃および雷撃が及ぼされる風力タービン羽根のゾーンを概略的に示す図である。
図4】雷の衝撃および雷撃が及ぼされる風力タービン羽根のゾーンを概略的に示す図である。
図5】雷の衝撃および雷撃が及ぼされる風力タービン羽根のゾーンを概略的に示す図である。
図6】雷の衝撃および雷撃が及ぼされる風力タービン羽根のゾーンを概略的に示す図である。
図7】本発明による雷保護システムを概略的に示す図である。
図8】本発明による別の雷保護システムを示す図である。
図9】導電性接続点の異なる形状を示す図である。
図10】導電性接続点の異なる形状を示す図である。
図11】導電性接続点の異なる形状を示す図である。
図12】導電性接続点の異なる形状を示す図である。
図13】シート間に配置された先端接続ブロックを示す図である。
図14】シート間に配置された先端接続ブロックを示す図である。
図15】先端接続ブロックの一実施形態を示す図である。
図16】先端接続ブロックの一実施形態を示す図である。
図17】中間接続ブロックの異なる実施形態を示す図である。
図18】中間接続ブロックの異なる実施形態を示す図である。
図19】シートおよび接続パッチに接続されている中間接続ブロックを示す図である。
図20】付根接続ブロックの異なる実施形態を示す図である。
図21】付根接続ブロックの異なる実施形態を示す図である。
図22】先端ユニットの一実施形態を示す図である。
図23】先端ユニットの一実施形態を示す図である。
図24】先端ユニットの一実施形態を示す図である。
図25】先端ユニットの一実施形態を示す図である。
図26】側方レセプタの異なる実施形態を示す図である。
図27】側方レセプタの異なる実施形態を示す図である。
図28】側方レセプタの異なる実施形態を示す図である。
図29】側方レセプタの異なる実施形態を示す図である。
図30】先端ユニットの別の実施形態を示す図である。
図31】導電性接続点への接続パッチの接続を示す図である。
図32】導電性接続点への接続パッチの接続を示す図である。
図33】導電性接続点への接続パッチの接続を示す図である。
図34】接続パッチの別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
全ての図は、非常に概略的なものであって必ずしも原寸に比例しておらず、また、全ての図は、本発明を明瞭にするために必要不可欠な部品のみを示し、他の部品は、省略されているか単に示唆されている。
【0085】
図1は、タワー107、ナセル108、および3つの風力タービン羽根101を有する風力タービン100を示す。各風力タービン羽根101は、ハブ109に接続される付根端部102、および先端部103を有する。風力タービン羽根101は、付根端部102から先端部103まで延在する長手軸106を有する。
【0086】
図2には、風力タービン羽根101の断面図が示されている。風力タービン羽根101は、圧力側111および吸込側110を有し、圧力側111および吸込側110は、風力タービン羽根101の外側面である。風力タービン羽根101はまた、前縁104および後縁105を有する。風力タービン羽根101は、長手軸に沿って延在する構造要素112を有し、構造要素112は、導電性の炭素繊維強化ポリマー(CFRP)で作られた桁または梁である。CFRPの桁または梁は、風力タービン羽根101の強度を高める。本実施形態は、構造要素112が風力タービン羽根101のシェル内に配置されることを示す。CFRP要素は、例えばCFRPとコア材料(PVCフォームまたはバルサ材)とのサンドイッチ構造として作られたウェブを介して接続され得る。
【0087】
本発明は、CFRPで作られることにより導電性である構造要素を有する風力タービン羽根101の雷保護を強化することを特に対象とする。
【0088】
長年にわたって、現場検査は、羽根先端が風力タービンの最も露出される部分であることを一貫して示しており(図3参照)、落雷過程を説明する数値モデルを裏付けている。その結果は、羽根のどの部分が最も露出されて雷電流振幅にさらされるかを説明する、風力タービン羽根のためのゾーニング概念の発展につながった。
【0089】
様々な電流振幅においてタービンに落ちる雷撃の分布を検査する数値シミュレーションが、長さ40m~80mの一般的な羽根に対して行われた。その結果は、下向きに始まる雷撃の場合には全ての雷撃の大部分が羽根先端に落ちること、および、より低い振幅の雷撃の場合には落雷は羽根上を内向きに移動して、風力タービンの他のあまり露出されていない部分(ハブ、ナセル、タワーなど)に落ち得ることを、明瞭に示した。
【0090】
ゾーニング概念は、羽根上の様々な領域に対する起こり得る雷撃振幅(strike amplitude)を説明するために使用され得る。IEC61400-24規格におけるLPL1要件のいくつかの解説では、例えば3kAから200kAの間の振幅を有する全ての雷撃が安全に遮断されて地面に向かって導かれなければならないが、これらの限度外の雷撃に対しては損傷が容認される。実際には、このことは、雷撃は羽根の内側セクションに対して生じる可能性が(非常に低確率ではあるが)あるので、羽根は予定外の運転の停止が回避されるようにそのような雷撃に耐えることができなければならないことを意味する。実際には、振幅の分布は、正規分布に従い、つまり、「わずかな」電流は、内側に入り込むことが可能であり、雷保護システムは、これに対処するように設計される。
【0091】
さらに、雷保護規格において説明されている確率密度関数を考慮することにより、そのような小さな振幅の雷撃が羽根に落ちる確率が考慮された場合、そのようなことは非常にまれにしか起こらないので、そのような低い振幅の雷撃に応じた保護は不必要であるという結論に達し得る。
【0092】
雷保護システムの設計は、むしろ、先端領域における意図された受雷部への落雷を確実にすることによる羽根のより露出された部分の保護に焦点を合わせるべきである。
【0093】
図3図5、および図6で見えるように、損傷の75%超は、先端部から最初の2メートルにおいて見舞われており、そのため、羽根のこれらのゾーンは、保護に不可欠である。雷撃の発生は先端部から10メートルでは大幅に低減するにしても、CFRPの桁または梁は、この位置から長手軸に沿って配置されることが多い。したがって、CFRPの桁または梁の適切な雷保護を確実にすることが、依然として非常に重要である。
【0094】
本発明による雷保護システム1は、図7に概略的に示されている。雷保護システム1は、先端部103から、先端部から所定の距離に配置された先端接続ブロック3まで延在する、第1の引下げ導体2を備え、第1の引下げ導体2は、先端接続ブロック3と電気的に接続されている。
【0095】
さらに、第2の引下げ導体4が、先端接続ブロック3から構造要素112と圧力側との間で構造要素112および圧力側に沿って、付根端部102に配置された付根接続ブロック5に向かって延在する。
【0096】
さらに、第3の引下げ導体(図7では図示せず)が、先端接続ブロックから構造要素と吸込み側との間で構造要素および吸込み側に沿って、付根接続ブロックに向かって延在する。
【0097】
第2の引下げ導体は、第1のシートを備え、第3の引下げ導体は、第2のシートを備え、第1のシートおよび第2のシートは、引下げ導体として機能するための導電性材料で作られている。
【0098】
第1のシートおよび第2のシートは、複数の導電性接続点6を備え、導電性接続点6は、先端接続ブロック3および付根接続ブロック5の近くに配置されており、かつ、先端コネクタブロックおよび付根コネクタブロックとそれぞれ電気的に接続されている。
【0099】
その結果、先端接続ブロック3は、風力タービン羽根101の先端からの第1の引下げ導体2と、CFRPの桁または梁の先端部分からの引下げ導体としての役割を果たす各羽根シェル内の第1のシートおよび第2のシートと、の間のインターフェースとして機能する。さらに、圧力側引下げ導体すなわち第1のシートと吸込側引下げ導体すなわち第2のシートとの間の結合または等電位化は、1つのユニットにおいて行われる。それと同時に、第2の引下げ導体および第3の引下げ導体は、シートの先端に落ちる雷撃に対するレセプタベースとしての役割を果たす。この部品は、全雷電流に対処しかつその絶縁鋳造により遮断の失敗を回避するように、慎重に設計される。
【0100】
図8には、本発明による雷保護システム1の一実施形態が示されている。雷保護システム1は、先端部103から、先端部から所定の距離に配置された先端接続ブロック3まで延在する、第1の引下げ導体2を備え、第1の引下げ導体2は、先端接続ブロック3と電気的に接続されている。
【0101】
第2の引下げ導体4は、先端接続ブロック3から構造要素(図8では図示せず)と圧力側との間で構造要素および圧力側に沿って、付根端部102に配置された付根接続ブロック5に向かって延在する。第3の引下げ導体7は、先端接続ブロック3から構造要素と吸込側との間で構造要素および吸込側に沿って、付根接続ブロック5に向かって延在する。
【0102】
第2の引下げ導体4は、第1のシート4を備え、第3の引下げ導体7は、第2のシート7を備え、第1のシート4および第2のシート7は、引下げ導体として機能するための導電性材料で作られている。
【0103】
図8で見えるように、第1のシート4および第2のシート7は、複数の導電性接続点6を備え、導電性接続点6は、先端接続ブロック3および付根接続ブロック5の近くに配置されており、かつ、先端コネクタブロック3および付根コネクタブロック5とそれぞれ電気的に接続されている。
【0104】
本実施形態では、2つの導電性接続点6が、第1のシート4を先端接続ブロック3と電気的に接続するために配置されており、また、2つの導電性接続点6が、第2のシート7を先端接続ブロック3と電気的に接続するために配置されている。他の実施形態では、1つの導電性接続点が、第1のシートを先端接続ブロックに接続し、また、1つの導電性接続点が、第2のシートを先端接続ブロックに接続するだけである。さらに、複数の接続点が、第1のシートを先端接続ブロックに接続してもよく、複数の接続点が、第2のシートを先端接続ブロックに接続してもよい。有利には、第1のシートを先端接続ブロックと接続する導電性接続点の数は、第2のシートを先端接続ブロックに接続する接続点の数と同一である。同じことが、付根接続ブロックに関しても当てはまる。
【0105】
図8に示されるように、第1のシート4および第2のシート7は、構造要素に対して両側に対称的に配置され、かつ、実質的に等しいサイズである。その結果、ファラデーケージ様の幾何形状に起因してCFRP構造要素が保護されることが実現され、また、CFRP構造要素における高密度電流の恐れ、ならびにCFRP構造要素の部品間での高電圧差および内部フラッシュオーバーの恐れが回避されることが実現される。
【0106】
導電性接続点は、金属もしくは他の導電性材料、またはそれらの組み合わせで作られることが好ましい。金属は、錫、アルミニウム、銅、黄銅、銀、金、またはそれらの任意の合金であってよい。
【0107】
また、導電性接続点は、第1の層および第2の層を備えることができる。第1の層は、第1の材料で作られてよく、第2の層は、第2の材料で作られてよい。第1の材料は、第2の材料とは異なってよい。
【0108】
図9には、導電性接続点6の一実施形態が示されている。各接続点6は、3mmから200mmの間、好ましくは5mmから100mmの間の最小曲率半径を持つ、外側の閉じられた湾曲部8を示す幾何形状を有することができる。
【0109】
さらに、接続点6は、図9に示されるように、半長軸9および半短軸10を有する。半長軸9および半短軸10の長さが等しい場合、図9に示されるように、導電性接続点の円形の外周が提供される。
【0110】
半長軸9および半短軸10が異なる場合、図10に示されるように、導電性接続点6の卵円形または楕円形の外周が提供される。さらに、半長軸9は、風力タービン羽根の長手軸106に対して所定の角度αに向けられてよい。所定の角度αは、0度から90度の間であってよい。
【0111】
したがって、接続点6は、部分的にまたは完全に円形もしくは卵円形であってよい。
【0112】
さらに、接続点は、非対称形状を有することができる。
【0113】
また、接続点6の外周11は、図11に示されるように、曲線および直線によって画定されてよい。
【0114】
接続点6は、尖った隅部を伴わないことが、目下好ましい。
【0115】
図12で見えるように、接続点6は、厚さtを有することができ、厚さtは、0.5mmよりも大きく、好ましくは1.0mmよりも大きい。接続点6の厚さtは、シートの厚さに対して両方向に広がってよい。
【0116】
第1のシート4および第2のシート7は、導電性材料で作られる。導電性材料は、アルミニウム、銅、鋼鉄、または関連する合金などの金属であってよい。
【0117】
他の実施形態では、導電性材料は、複合材または繊維などの非金属のものである。
【0118】
第1のシートおよび第2のシートの重量を最小限に抑えるために、第1のシートおよび第2のシートは、エキスパンドフォイルまたはメッシュとして提供されてよい。
【0119】
第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュは、圧力側に面している構造要素の第1の側を少なくとも完全に覆うように配置されてよく、第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュは、吸込側に面している構造要素の第2の側を少なくとも完全に覆うように配置される。
【0120】
さらに、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュおよび第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュの長さは、構造要素の長さ以上であってよい。
【0121】
さらに、第1のエキスパンドフォイルまたは第1のメッシュは、第1の面積を有してよく、第2のエキスパンドフォイルまたは第2のメッシュは、第2の面積を有してよく、第1の面積および第2の面積は、実質的に等しい。
【0122】
さらに、エキスパンドフォイルは、モノリシックな統一体として作られてよい。
【0123】
メッシュは、導電糸を織ることによって提供されてよい。
【0124】
別の実施形態では、メッシュは、不織導電糸によって提供され得る。
【0125】
導電性接続点6は、
- 導電性材料を溶融させ、
- 溶融された導電性材料を液体状態において適用して、エキスパンドフォイルまたはメッシュを取り囲み、
- 溶融材料を硬化させて、導電性接続点とエキスパンドフォイルまたはメッシュとの間に機械的かつ導電性の接続を提供することを可能にすること
により、エキスパンドフォイルまたはメッシュなどのシートに設けられてよい。
【0126】
材料の溶融は、電気誘導加熱または電気抵抗加熱によって行われてよい。
【0127】
溶融された導電性材料は、エキスパンドフォイルまたはメッシュと関連して配置された型に溶融された導電性材料を注ぎ込むことによって適用されてよい。型は、導電性接続点の外周を画定する。導電性材料は、錫などの金属であってよい。
【0128】
導電性接続点6はまた、
- 成形導電性材料を用意し、
- 成形導電性材料をエキスパンドフォイルまたはメッシュ上に適用し、
- 成形導電性材料をハンダ付けして、接続点とエキスパンドフォイルまたはメッシュとの間に機械的かつ導電性の接続を提供すること
により、エキスパンドフォイルまたはメッシュなどのシートに設けられてよい。
【0129】
さらに、導電性接続点6は、
- 導電性材料で作られた少なくとも2つのディスクを用意し、
- 2つのディスクをエキスパンドフォイルまたはメッシュの両側に配置し、
- ディスクの間にエキスパンドフォイルまたはメッシュがある状態でディスクを互いに固定して、ディスクの間に導電性の接続を提供すること
により、エキスパンドフォイルまたはメッシュなどのシートに設けられてよい。
【0130】
ディスクは、機械的接続によって互いに固定されてよい。
【0131】
別の実施形態では、ディスクは、塑性変形によりエキスパンドフォイルまたはメッシュの周りで2つのディスクを互いに圧迫することによって互いに固定されてよい。
【0132】
さらに、ディスクは、スポット溶接またはハンダ付けによって互いに固定されてよい。
【0133】
また、ディスクは、パルス溶融によって互いに固定されてよい。
【0134】
さらに、ディスクは、ディスクの間に導電性接着剤を適用して接着剤が硬化するまでディスクを所定の位置に維持することによって互いに固定されてよい。
【0135】
図13および図14には、第1のシート4および第2のシート7に接続された先端接続ブロック3の一実施形態が示されている。導電性接続点6は、第1のシート4および第2のシートのそれぞれにおいて所定の位置に配置されており、先端接続ブロック3は、導電性接続点6を先端接続ブロック3に電気的に接続することができるように配置されている。本実施形態では、接続ボルト16が、導電性接続点6を貫通して先端接続ブロック3に螺入されている。その結果、第1の引下げ導体2は、雷撃による雷電流が、第1の引下げ導体2から先端接続ブロック3を通り、導電性接続点6を介して第1のシート4および第2のシート7へ導かれ、それにより風力タービン羽根の付根端部に向かって下っていくことができるように、第1のシート4すなわち第2の引下げ導体および第2のシート7すなわち第3の引下げ導体と電気的に接続される。
【0136】
先端コネクタブロック3は、少なくとも1つの第1のブロックレセプタベース49および少なくとも1つの第2のブロックレセプタベース50を備え、第1のブロックレセプタベース49は、第1のシート4の導電性接続点6を先端コネクタブロック3に接続するように構成されており、第2のブロックレセプタベース50は、第2のシート7の接続点6を先端コネクタブロック3に接続するように構成されている。図13および図14に示された実施形態では、先端接続ブロック3は、2つの第1のブロックレセプタベース49、および2つの第2のブロックレセプタベース50を有する。
【0137】
上述のように、接続ボルト16またはレセプタボルトが、接続点6を貫通してブロックレセプタベース49、50に螺入される。したがって、この実施形態では、接続点は、接続ブロックと直接接続される。
【0138】
先端コネクタブロックは、少なくとも1つのブロックレセプタベースの第1の対、および、少なくとも1つのブロックレセプタベースの第2の対を備えることができ、第1の対は、第1のエキスパンドフォイルの接続点を先端コネクタブロックに接続するように構成され、第2の対は、第2のエキスパンドフォイルの接続点を先端コネクタブロックに接続するように構成される。
【0139】
等しい数のブロックレセプタベースが、第1のシートおよび第2のシートを先端接続ブロックに接続するために配置されてよい。
【0140】
図15および図16には、先端接続ブロック3の別の実施形態が示されている。先端接続ブロック3は、本実施形態では、中間部分51を介して接続された第1の部分17および第2の部分18を含んで設計される。第1の部分17は、第1の部分17を第2の部分18よりも前縁の近くに配置させて風力タービン羽根内に第1の部分17が配置され得るように、第2の部分よりもサイズが大きい。第1の部分17および第2の部分18のどちらも、片側に第1のブロックレセプタベース49を備え、反対側に第2のブロックレセプタベース50を備える。
【0141】
図16には、図15の先端接続ブロック3の断面図が示されている。先端接続ブロック3は、第1の部分17から中間部分51を介して第2の部分18まで延在する導電性材料のコア19を有し、その結果、全ての部分が電気的に接続される。コア19全体が、絶縁層20によって覆われている。第1の引下げ導体2は、この実施形態では、第2の部分18のコアと接続されている。さらに、接続ボルトが導電性接続点を貫通して先端接続ブロック3の導電性コアに螺入されて、電気的に接続を提供することが重要である。コア19の導電性材料は、アルミニウムまたは黄銅などの金属であってよい。
【0142】
先端接続ブロック3の設計および形状は、様々な風力タービン羽根の設計および羽根内で先端接続ブロック3が位置決めされる位置に起因して、異なる可能性がある。しかし、先端接続ブロックは、絶縁水準が十分であることを確実にすることにより遮断の失敗を回避するように構成される。さらに、先端接続ブロックは、雷電流を十分に伝えるように構成される。
【0143】
接続ボルトまたはレセプタボルトを導電性接続点に貫通させてねじ込む前に、導電性接続点にねじ山が設けられる。
【0144】
また、レセプタボルトが接続点内で終端され、また、第1のシートおよび第2のシートの反対側の側方レセプタを雷保護システムに設ける必要がある場合には、側方レセプタが接続点に接続されてよい。
【0145】
図8に戻り参照すると、雷保護システム1はまた、先端部103と先端接続ブロック3との間に配置された先端ユニット25および複数の側方レセプタ30を備える。先端ユニット25および側方レセプタ30は、第1の引下げ導体2を介して接続されている。図22から図23に関連して、先端ユニットの一実施形態を以下でさらに説明する。
【0146】
先端部における羽根シェル部品間の空間は、付根端部における空間と比較するとかなり限られている。したがって、付根接続ブロックは、第1のシート4および第2のシート7からより離されて配置されることが多い。雷保護システム1では、第1のシート4および第2のシート7の導電性接続点をそれぞれ電気的に接続するために、2つの中間接続ブロック13が配置される。各中間接続ブロック13は、中間接続ブロックを付根接続ブロック5と電気的に接続するケーブル14、15を有する。付根接続ブロック5は、風力タービンナセルおよびタワー(図示せず)を通じて地面に電気的に接続されている単一の付根引下げ導体24と電気的に接続される。
【0147】
さらに、第1のシート4および第2のシート7は、構造要素の反対側に配置された中間導電性接続点12を有することができる。先端部に最も近い中間導電性接続点は、先端接続ブロック3から所定の距離に配置され得る。所定の距離は、1500mm未満、好ましくは1500mmから500mmの間、より好ましくは500mmから100mmの間、最も好ましくは100mmから10mmの間である。
【0148】
羽根の構造要素はCFRPで作られているので、雷撃からの直接的に結合または誘発される雷電流は、構造要素を通じて導かれることになる。CFRPの梁または桁における雷電流の大きさは、雷電流の大部分が第1のシートおよび第2のシートを介して伝導されるように第1のシート4および第2のシート7をCFRPの桁または梁の範囲の外側かつ反対側に配置することによって最小限に抑えられる。なおもCFRPの梁または桁を流れるであろう残りの電流は、材料における電位差を等しくしてCFRPの梁または桁の間での意図的でない電気的なフラッシュオーバーを回避するために、制御されなければならない。
【0149】
したがって、中間接続点12は、必要な場合には構造要素と電気的に接続され、その結果、特定の電流が、第1のシートおよび第2のシートからCFRP構造要素に導かれ、それにより、材料における電位差が等しくされ、CFRP構造要素には有害な電流およびエネルギーが及ぼされない。したがって、CFRP構造要素の機能は、本発明による雷保護システム1によって維持される。
【0150】
必要に応じて、構造要素を流れる電流が中間導電性接続点12を介して第1のシート4および第2のシート7の外へ導かれてそこから付根接続ブロック5へ下ろされることを確実にするために、第1のシート4および第2のシート7の付根端部において、中間導電性接続点12が構造要素と電気的に接続されて配置される。
【0151】
図17には、中間接続ブロックの一実施形態が示されている。中間接続ブロック13は、先に説明された先端接続ブロックと同じように機能する。
【0152】
しかし、前述のように、第1の中間接続ブロックは、第1のシート4と付根接続ブロックとの間に配置され、第1のシートを付根接続ブロックと電気的に接続し、第2の中間接続ブロックは、第2のシートと付根接続ブロックとの間に配置され、第2のエキスパンドメタルフォイルを付根接続ブロックと電気的に接続する。
【0153】
各中間接続ブロック13は、シートの導電性接続点を中間接続ブロックに接続するように構成された少なくとも1つのレセプタベース49を備える。図17に示された実施形態では、中間接続ブロック13は、2つのレセプタベース49を有する。先端接続ブロックと同様に、接続ボルトまたはレセプタボルトが、導電性接続点を貫通して中間接続ブロック13のレセプタベース49に螺入される。第1のケーブル14が、第1の中間接続ブロック13と付根接続ブロックとの間に配置され、第2のケーブルが、第2の中間接続ブロックと付根接続ブロックとの間に配置される。
【0154】
図18には、中間接続ブロックの別の実施形態が示されている。この中間接続ブロックは、図17に示された中間接続ブロックに非常に似ているが、中間接続ブロック13は、図19に示されるように、CFRP構造要素に電気的に接続された中間ケーブル21を備える。
【0155】
図19に示されるように、接続パッチ22が、CFRP構造要素112に電気的に接続される。接続パッチ22は、この場合もやはり中間ケーブル21と接続されるケーブルコネクタ23を有し、中間ケーブル21は、中間接続ブロック13と接続される。その結果、CFRP構造要素112を流れる電流は、都合の良い態様で中間接続ブロック13に導かれ得る。中間接続ブロック13は、先に説明されたのと同じ態様で、導電性接続点6を介して第2のシート7に接続され得る。
【0156】
図20には、付根接続ブロック5の一実施形態が示されている。付根接続ブロックは、上記されたのと同じ態様で機能し、第1のケーブル14および第2のケーブル15からの雷電流は、付根接続ブロック5においてインターフェースされて、単一の付根引下げ導体24内へ導かれる。
【0157】
図21には、付根接続ブロック5の別の実施形態が示されている。本実施形態では、付根接続ブロック5は、Y字に形成されているが、図20に関連して説明されたのと同じ態様で機能する。Y字に形成された付根接続ブロック5を有することにより、接続ブロックの重量は、相当に最小限に抑えられる。
【0158】
前述のように、構造要素は、導電性であり、かつ、引抜き成形部品によって製造されてよい。引抜き成形部品は、予め含浸したガラス繊維シートを使用して、ドライファブリック積層、および真空支援樹脂注入プロセスにおいて作られる。
【0159】
例えば、構造要素は、
- いくつかの導電性の引抜き成形プロファイルを組み立てて積み重ねて、完全な構造要素に注入および加熱すること、
- 真空支援樹脂注入プロセスおよび加熱がその後に続く、ドライファブリック積層、または、
- 減圧および加熱がその後に続く、予め含浸された繊維プライの積層、
によって製造されてよい。
【0160】
図22は、風力タービン羽根101の先端部に配置された先端ユニット25を示す。先端ユニット25は、2成分エポキシ接着剤、高速硬化ポリウレタン接着剤、2成分ポリウレタン接着剤、2成分硬化アクリル酸系接着剤、または他のポリマー接着剤などの適切な接着剤により風力タービン羽根101に付着されることが好ましい。
【0161】
先端ユニット25は、先端26の外部部分27が風力タービン羽根101の先端を形成し、また、絶縁ケーブル28が風力タービン羽根101の長手軸に沿って先端接続ブロックに向かう方向に延在する第1の引下げ導体の最も外側の部分を形成するように、その長手軸を風力タービン羽根101の長手軸と少なくとも実質的に平行にして配置される。
【0162】
先端ユニット25は、4つの導電要素、すなわち先端26の外部部分27および内部部分32を備え、内部部分32は、内部先端ユニット導体を通じて側方レセプタベース31に電気的かつ機械的に接続される。内部先端ユニット導体は、一体化された接続要素により側方レセプタベース31に接続される。雷保護システムの第1の引下げ導体の最も外側の部分を形成する絶縁電気ケーブル28が、同じ接続要素により側方レセプタベース31に接続される。したがって、先端ユニット5の全ての導電性部分32、31、28が、互いに電気的かつ機械的に接続される。
【0163】
図23は、先端ユニット25の構成要素の周りに配置されている絶縁材料29を示す。したがって、先端ユニット25から内向きに先端接続ブロックおよび先端26の内部部分32の端部に向かう引下げ導体を形成している絶縁電気ケーブル28の部分を除いて、先端ユニット25の全ての導電性部分が、ポリマーナノ複合材料、熱可塑性材料、熱硬化性材料、絶縁フォーム、またはそれらの任意の組み合わせなどの電気絶縁材料29によって完全に覆われる。この絶縁材料29の厚さ、幾何形状、および材料特性は、環境条件(振動、温度、温度サイクル、湿度、など)ならびに雷暴露中および風力タービン羽根の通常運転中の電界に耐える寸法となされる。
【0164】
したがって、雷撃が先端ユニット25の内部部分に、したがって風力タービン羽根101のこの部分を貫通して延在している単一の引下げ導体の部分に到達し得る方法は、2つしかない。1つは、先端26の外部部分27によって形成された雷保護システムの先端レセプタを通じたものであり、外側部分27は、その端部を通じて先端26の内部部分32に機械的かつ電気的に接続されており、内部部分32は、電気絶縁材料29によって覆われていない。他方の方法は、側方レセプタ30を通じたものであり、側方レセプタ30は、シェルの外側表面上に配置されるか、または、風力タービン羽根101のシェル表面と同一平面とされるように配置され、かつ、先端ユニット25自体の一部分ではない。側方レセプタ30は、風力タービン羽根101の外側面および側方レセプタベース31を覆う電気絶縁材料29の貫通を通じて、側方レセプタベース31に機械的かつ電気的に接続される。雷撃は先端レセプタおよび風力タービン羽根101の外側面上に配置された側方レセプタ30を通じてのみ内部の雷保護システムに到達することができるという事実は、雷撃が風力タービン羽根101のこの部分の構造部品を通過しないことを意味する。したがって、風力タービン羽根101の先端の構造部品の損傷さらには破壊の恐れが排除されるかまたは少なくとも大幅に低減される。
【0165】
絶縁材料29は、側方レセプタベース31の周りの先端ユニット25の円筒形状部品の端部において、接着材料の設置のためにその表面に凹部を形成する。
【0166】
図24および図25は、それぞれ、図23に示された先端ユニット25の側面図と断面図である。
【0167】
図26は、側方レセプタ30を概略的に示す。側方レセプタ30は、好ましくは風力タービン羽根の外側面と位置合わせされて外側面内に取り付けられ、かつ、風力タービン羽根内に配置されて絶縁体によって覆われた側方レセプタベースと機械的かつ電気的に接続される。示されていない実施異形態では、側方レセプタ30は、ボルトとして形成されてよく、側方レセプタベースへの接続は、単純にねじ接続からなる。
【0168】
図26および図27aは、それぞれ、風力タービン羽根の外側面内に取り付けられた側方レセプタ30の形態のレセプタ組立体の斜視図と断面図である。レセプタシリンダ33が、側方レセプタ30の導電性部分を構成する。レセプタシリンダ33の上方円形端部は、側方レセプタ30が内部に取り付けられたときに風力タービン羽根の表面と実質的に位置合わせされる側方レセプタ30の外部部分を形成する。これは、雷撃より衝撃を受ける部分である。
【0169】
レセプタシリンダ33の反対側の端部は、接触表面34を形成し、雷電流は、側方レセプタ30から接触表面34を通って、側方レセプタ30が接続されている側方レセプタベース31に入る。レセプタシリンダ33は、取付けボルト35により側方レセプタベース31に機械的に接続され、取付けボルト35の頭部は、レセプタシリンダ33内に隠され、取付けボルト35のねじ部は、レセプタシリンダ33の接触表面34における中心穴を通って突出する。
【0170】
これらの図に示された実施形態では、接触表面34は、平面であり、かつ、レセプタシリンダ33の長手軸に対して垂直である。他の実施形態では、接触表面34または少なくともその一部分は、斜めであり得る。
【0171】
図27aは、絶縁体29が側方レセプタベース31およびそれに接続された側方レセプタ30をどのように覆うかを示す。これは、雷撃が風力タービン羽根の内側の側方レセプタベース31および引下げ導体への経路上で側方レセプタ30の隣の風力タービン羽根のシェルを貫通することにより側方レセプタ30を迂回するのではなく実際に側方レセプタ30を通過することを確実にするのに、非常に重要である。
【0172】
取付けボルト35を締め付けるために、取付けボルト35の頭部とレセプタシリンダ33の内部表面との間にワッシャが配置されてよい。
【0173】
示された実施形態では、側方レセプタ30は、雷撃が側方レセプタ30に衝撃を与えた後の過度の熱エネルギーにより風力タービン羽根の外側面が損傷するのを防ぐために、レセプタシリンダ33の周りに配置された耐熱材料の円形シートの形態をした任意選択の羽根表面保護物36を備える。有利には、この羽根表面保護物36は、風力タービン羽根内への側方レセプタ30の取付け中に風力タービン羽根の表面に付着される。
【0174】
シーラント37が、側方レセプタ30と風力タービン羽根の周囲の外側面との間の密な接続を確実にする。
【0175】
レセプタシリンダ33の開口端は、レセプタプラグ38によって閉塞され、このレセプタプラグ38は、固体の導電性材料もしくは絶縁材料から作られるか、または、耐熱ペーストで構成され得る。このレセプタプラグ38は、取付けボルト35の頭部を覆って、衝撃を及ぼす雷撃による損傷を防ぐ。レセプタプラグ38がペーストで構成されている場合、ねじキャップ39が、取付けボルト35のねじ溝を例えばそのようなペーストの侵入から保護する。
【0176】
さらに、側方レセプタ30のこの実施形態は、取付けボルト35とレセプタシリンダ33との間の電気的な絶縁を確実にするために、取付けボルト35の頭部の周りに配置されたボルト絶縁体40を備え、その結果、雷電流は、側方レセプタ30から側方レセプタベース31へのその経路上で取付けボルト35のねじ山を通過するのではなく、接触表面34を通過させられる。
【0177】
図27bには、側方レセプタ30の別の実施形態が示されている。この側方レセプタ30の設計は、実質的に図27aに示されかつ上記されたようなものである。図27bに示された実施形態では、レセプタシリンダ33は、絶縁部材60によって取り囲まれている。絶縁部材60は、絶縁材料で作られて、シーリング40に加えて電気的な絶縁を確実にする。
【0178】
図28は、先の2つの図の側方レセプタ30の拡大した断面図であり、図29は、別の実施形態による側方レセプタ30の形態をしたレセプタ組立体の断面図である。
【0179】
図28に示された実施形態との1つの違いは、図29に示された実施形態ではレセプタシリンダ33にレセプタシリンダ33の上方円形端部から外向きに延在するレセプタラフ(receptor ruff)が設けられていることである。そのようなレセプタラフは、側方レセプタ30と風力タービン羽根の周囲の外側面との間の緊密かつ耐候性の接続を確実にするのに有用であり、また、アークルート腐食(arc root erosion)したがって側方レセプタ30の自然の摩耗のための追加の材料を提供する。
【0180】
さらに、レセプタシリンダ33の縁部は、接触表面34の少なくとも一部分が斜めになるように、面取りされる。これは、接触表面34の面積を増大させ、したがって、側方レセプタベース31への電気的接続を向上させる。さらに、側方レセプタ30と側方レセプタベース31との間の接続のより良好な機械的安定性を確実にする。
【0181】
図30は、先端レセプタ組立体の形態をしたレセプタ組立体の断面図である。
【0182】
本発明のこの実施形態では、先端レセプタ27が、2つのねじ棒42により先端レセプタベース41に取り付けられる。これらのねじ棒42は、先端レセプタベース41内のねじ穴に螺入され、導電性ブッシング61が、ねじ棒42のそれぞれの周りに配置される。ねじ棒42の自由端は、先端レセプタベース41に面している先端レセプタ27の表面にある穴に入れられ、ナットが、先端レセプタ27の側面にある開口部を通して先端レセプタ27内でねじ棒42のそれら端部の周りに取り付けられて、締められる。示されていない別の実施形態では、先端レセプタは、単一のねじ棒またはボルトによって取り付けられ得る。先端レセプタを先端レセプタベースに位置合わせするために、位置合わせ部材が存在してよい。
【0183】
これは、先端レセプタ27が導電性ブッシング61の一方の端部と機械的かつ電気的に接触しており、先端レセプタベース41が導電性ブッシング61の他方の端部と機械的かつ電気的に接触していることを意味する。図は、先端レセプタベース41がどのようにして電気絶縁材料29の層によって覆われているかを示し、電気絶縁材料29の層を貫通する2つの開口部が、ねじ棒42および周囲のブッシング61が先端レセプタベース41と電気的かつ機械的に接触するための手段を提供する。
【0184】
雷電流は導体のより中心寄りの部分を通過するよりも導体の表面沿いを通過する傾向があるという事実は、レセプタ組立体が雷の衝撃にさらされたときに、雷電流の大部分が導電性ブッシング61を通過し、ごくわずかな部分のみがねじ棒42を通過し、したがってねじ棒42が損傷しないことを意味する。したがって、ねじ棒42およびナットは、無傷に保たれ、通常は先端レセプタ組立体またはその部品の交換の必要性が生じた場合に使用され得る。
【0185】
それを通してナットが取り付けられる開口部は、例えばシリコーンなどの耐熱ペーストで構成されるかまたは金属、プラスチック材料、ゴム、もしくはガラス繊維などの固体材料から作られるレセプタプラグ(図示せず)を用いて閉塞されてよい。
【0186】
図31には、接続パッチ22が示されている。接続パッチ22は、ケーブル43と電気的に接続されるケーブルコネクタ23を有する。ケーブル43は、ケーブルコネクタ23を接続点コネクタ44と電気的に接続する。接続点コネクタ44は、第1のシート4に配置された導電性接続点6と接続されている。その結果、柔軟な接続が得られる。
【0187】
図32および図33には、接続点コネクタ44がどのようにして導電性接続点6と接続されるかを示す。第1のコネクタディスク45が、導電性接続点6の片側に配置され、第2のコネクタディスク46が、導電性接続点の反対側に配置され、したがって、導電性接続点6を封入する。導電性接続点は、先に説明されたように第1のシートと電気的に接続される。本実施形態では、第1のコネクタディスクおよび第2のコネクタディスクは、図33で見えるようにコネクタボルト47によって接続される。
【0188】
図34には、接続パッチ22のケーブルコネクタ23が示されている。ケーブル43は、ボルト頭部48を介してケーブルコネクタに接続される。この実施形態は、いかなる製造公差もケーブル43によって克服され得ることを確実にするのに役立つ。
【0189】
本発明はまた、付根端部および先端部と、長手軸と、風力タービン羽根の外側面である圧力側および吸込側と、導電性の炭素繊維強化ポリマー(CFRP)で作られた桁または梁である、長手軸に沿って延在する構造要素と、上記の雷保護システムと、を備える、風力タービン羽根に関する。
【0190】
本発明はまた、付根端部および先端部と、長手軸と、風力タービン羽根の外側面である圧力側および吸込側と、ガラス繊維強化ポリマー(GFRP)で作られた桁または梁である、長手軸に沿って延在する構成要素と、上記の雷保護システムと、を備える、風力タービン羽根に関する。
【0191】
本発明は、本発明の好ましい実施形態に関連して上記で説明されてきたが、以下の特許請求の範囲によって定められる本発明から逸脱することなしにいくつかの修正が想定されることは、当業者には明白であろう。
【符号の説明】
【0192】
1 雷保護システム
2 第1の引下げ導体
3 先端接続ブロック
4 第2の引下げ導体、第1のシート
5 付根接続ブロック
6 導電性接続点
7 第3の引下げ導体、第2のシート
8 湾曲部
9 半長軸
10 半短軸
11 外周
12 中間導電性接続点
13 中間接続ブロック
14 ケーブル、第1のケーブル
15 ケーブル、第2のケーブル
16 接続ボルト
17 第1の部分
18 第2の部分
19 コア
20 絶縁層
21 中間ケーブル
22 接続パッチ
23 ケーブルコネクタ
24 付根引下げ導体
25 先端ユニット
26 先端
27 外部部分、先端レセプタ
28 絶縁ケーブル、絶縁電気ケーブル
29 絶縁材料、絶縁体
30 側方レセプタ
31 側方レセプタベース
32 内部部分
33 レセプタシリンダ
34 接触表面
35 取付けボルト
36 羽根表面保護物
37 シーラント
38 レセプタプラグ
39 ねじキャップ
40 ボルト絶縁体、シーリング
41 先端レセプタベース
42 ねじ棒
43 ケーブル
44 接続点コネクタ
45 第1のコネクタディスク
46 第2のコネクタディスク
47 コネクタボルト
48 ボルト頭部
49 第1のブロックレセプタベース
50 第2のブロックレセプタベース
51 中間部分
60 絶縁部材
61 導電性ブッシング
100 風力タービン
101 風力タービン羽根
102 付根端部
103 先端部
104 前縁
105 後縁
106 長手軸
107 タワー
108 ナセル
109 ハブ
110 吸込側
111 圧力側
112 構造要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27a
図27b
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
【国際調査報告】