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特表2024-500972太陽電池の製造方法及びそれから製造された太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法及びそれから製造された太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20231227BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20231227BHJP
   H10K 30/85 20230101ALI20231227BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20231227BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/85
H10K30/86
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538913
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2021019262
(87)【国際公開番号】W WO2022139342
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0183635
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,グァン ホ
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251DA15
5F251FA02
5F251GA03
5F251XA32
5F251XA54
5F251XA55
(57)【要約】
本発明は、太陽電池の製造方法及びそれから製造された太陽電池に関し、より詳細には、第1電極層、正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)、光活性層、電子輸送層及び第2電極層を順次積層させた積層物を製造する段階を含み、前記正孔輸送層又は前記電子輸送層は、カルボン酸(R-COOH)で表面改質された金属酸化物、分散溶媒及び水酸化物を含む分散液が塗布及び乾燥されて形成された太陽電池の製造方法及びそれから製造された太陽電池に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)、光活性層、電子輸送層及び第2電極層を順次積層させた積層物を製造する段階を含み、
前記正孔輸送層又は前記電子輸送層は、カルボン酸(R-COOH)で表面改質された金属酸化物、分散溶媒及び水酸化物を含む分散液が塗布及び乾燥されて形成された太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記分散液の水素イオン濃度はpH8乃至pH13である、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記水酸化物は、NHOH、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、TMAH(Tetramethylammonium hydroxide)及びTBMH(Tetrabutylammonium hydroxide)からなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上の混合物である、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物はスズ酸化物である、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記スズ酸化物はSnOである、請求項4に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記カルボン酸は、酢酸又はトリフルオロ酢酸である、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記分散溶媒は、イソプロピルアルコール(IPA)、脱イオン水(DI water)及びエタノールからなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上である、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記積層物は、前記第1電極層の下部面に基板層をさらに含むものである、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記光活性層はペロブスカイト層である、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
基板層、第1電極層、正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)、光活性層、電子輸送層及び第2電極層が順次積層されたものであって、
前記正孔輸送層又は前記電子輸送層は金属酸化物層を含み、
前記金属酸化物層は、カルボキシ基(-COOH)を含む化合物が表面に付着し、表面改質された金属酸化物が均一に薄膜で形成されたものである太陽電池。
【請求項11】
前記金属酸化物はスズ酸化物である、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記スズ酸化物はSnOである、請求項11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第1電極層及び前記第2電極層は、互いに独立的にITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)及びZnOからなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含む、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記電子輸送層は、Ti酸化物、Zn酸化物、In酸化物、Sn酸化物、W酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Sr酸化物、Yr酸化物、La酸化物、V酸化物、Al酸化物、Y酸化物、Sc酸化物、Sm酸化物、Ga酸化物及びSrTi酸化物からなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含む、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記正孔輸送層は、タングステンオキシド(WO)、モリブデンオキシド(MoO)、バナジウムオキシド(V)及びニッケルオキシド(NiO)からなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含む、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記基板層は、シリコンオキシド、アルミニウムオキシド、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、ガラス、石英、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及びポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含む、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項17】
前記光活性層はペロブスカイト層である、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項18】
前記ペロブスカイト層は、CHNHPbI、CHNHPbICl3-x、MAPbI、CHNHPbIBr3-x、CHNHPbClBr3-x、HC(NHPbI、HC(NHPbICl3-x、HC(NHPbIBr3-x、HC(NHPbClBr3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbI、(CHNH)(HC(NH1-yPbICl3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbIBr3-x及び(CHNH)(HC(NH1-yPbClBr3-xからなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含む、請求項17に記載の太陽電池。
【請求項19】
前記太陽電池は、前記ペロブスカイト層が第1ペロブスカイト層、及び前記第1ペロブスカイト層上に積層された第2ペロブスカイト層を含むペロブスカイト-ペロブスカイトタンデム構造である、請求項17に記載の太陽電池。
【請求項20】
前記太陽電池は、前記基板層がシリコン太陽電池を含むシリコン-ペロブスカイトタンデム構造である、請求項17に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の製造方法及びそれから製造された太陽電池に関し、より詳細には、均一な金属酸化物薄膜層を形成できるペロブスカイト太陽電池の製造方法及びそれから製造されたペロブスカイト太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池(Solar Cell)は、太陽光を電気に直接変換させる太陽光発電の核心素子であって、現在、家庭はもちろん、宇宙に至るまで電源供給用として広範囲に活用されている。近年、太陽電池は、航空、気象、通信分野に至るまで使用されており、太陽光自動車、太陽光エアコンなども注目されている。
【0003】
このような太陽電池は、主にシリコン半導体を用いているが、高純度シリコン半導体の原資材の価格及びこれを用いた太陽電池セル製造工程の複雑性により、発電単価が高いという問題を有する。すなわち、太陽電池は、従来の化石燃料による発電単価よりも3倍~10倍高い単価を有するので、各国政府の補助によって市場が成長しているという限界を有している。このような理由により、シリコンを使用しない太陽電池の研究開発が活性化されており、1990年代からは、有機半導体素材である染料を用いた染料感応型太陽電池(Dye-Sensitized Solar Cell;DSSC)及び伝導性高分子を用いた高分子太陽電池(Polymer Solar Cell)が本格的に研究されはじめた。このようなDSSC及び高分子太陽電池などの有機半導体ベースの太陽電池は、学界及び産業界の多くの努力にもかかわらず、事業化段階にまで至っていないが、近年、DSSCと高分子太陽電池の長所を融合したペロブスカイト太陽電池(perovskite solar cell、PSC)の出現により、次世代の太陽電池に対する期待感が一層高まっている状況である。
【0004】
ペロブスカイト太陽電池は、従来のDSSCと高分子太陽電池の融合型太陽電池であって、DSSCのように液体電解質を使用しないので信頼性が改善され、ペロブスカイトの光学的優秀性によって高効率が可能な太陽電池であって、近年、工程の改善、素材の改善及び構造の改善を通じて持続的に効率が向上している。
【0005】
図1は、太陽電池を示す図である。図1を参照すると、太陽電池100は、基板層10、第1電極層20、正孔輸送層30、光活性層40、電子輸送層50及び第2電極層60で構成される。
【0006】
前記太陽電池100の正孔輸送層30又は電子輸送層50は、金属酸化物薄膜を含み得るが、正孔輸送層30として金属酸化物薄膜が適用される場合、金属酸化物は非常に安定的であり、ほとんどの正孔伝導度も高いという長所を有する。
【0007】
金属酸化物薄膜を均一に形成するためには、酢酸(Acetic acid、AA)又はトリフルオロ酢酸(Trifluoroaceticacid、TFA)などの酸官能基を用いて金属酸化物の表面を改質することによって、分散溶媒内での金属酸化物の分散を容易にする。
【0008】
しかし、上記のように金属酸化物の表面を改質した場合にも、イソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol、IPA)などの非極性溶媒でのみ分散性が向上するだけで、脱イオン水(DI water)やエタノールなどの極性溶媒では依然として分散性が低いので、結局、極性溶媒に分散された金属酸化物を含む分散液を用いたときには金属酸化物薄膜を形成しにくいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、非極性溶媒のみならず、極性溶媒でも表面改質された金属酸化物がうまく分散されるようにし、均一な金属酸化物薄膜を形成できる太陽電池の製造方法を提供することにある。
【0010】
そして、本発明が解決しようとする課題は、前記太陽電池の製造方法によって製造された太陽電池を提供することにある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されなく、言及していない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るだろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の一側面に係る太陽電池の製造方法は、第1電極層、正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)、光活性層、電子輸送層及び第2電極層を順次積層させた積層物を製造する段階を含み、前記正孔輸送層又は前記電子輸送層は、カルボン酸(R-COOH)で表面改質された金属酸化物、分散溶媒及び水酸化物を含む分散液が塗布及び乾燥されて形成されたことを特徴とする。
【0013】
ここで、前記分散液の水素イオン濃度は、pH8乃至pH13であってもよい。
【0014】
一方、前記水酸化物は、NHOH、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、TMAH(Tetramethylammonium hydroxide)及びTBMH(Tetrabutylammonium hydroxide)からなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上の混合物であってもよい。
【0015】
そして、前記金属酸化物はスズ酸化物であってもよく、前記スズ酸化物はSnOであってもよい。
【0016】
また、前記カルボン酸は、酢酸又はトリフルオロ酢酸であってもよい。
【0017】
そして、前記分散溶媒は、イソプロピルアルコール(IPA)、脱イオン水(DI water)及びエタノールからなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上であってもよい。
【0018】
また、前記積層物は、前記第1電極層の下部面に基板層をさらに含むものであってもよい。
【0019】
そして、前記光活性層は、ペロブスカイト層であってもよい。
【0020】
一方、本発明の他の側面に係る太陽電池は、基板層、第1電極層、正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)、光活性層、電子輸送層及び第2電極層が順次積層されたものであって、前記正孔輸送層又は前記電子輸送層は金属酸化物層を含み、前記金属酸化物層は、カルボキシ基(-COOH)を含む化合物が表面に付着し、表面改質された金属酸化物が均一に薄膜で形成されたことを特徴とする。
【0021】
ここで、前記第1電極層及び前記第2電極層は、互いに独立的にITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)及びZnOからなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含むものであってもよい。
【0022】
そして、前記電子輸送層は、Ti酸化物、Zn酸化物、In酸化物、Sn酸化物、W酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Sr酸化物、Yr酸化物、La酸化物、V酸化物、Al酸化物、Y酸化物、Sc酸化物、Sm酸化物、Ga酸化物及びSrTi酸化物からなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含むものであってもよい。
【0023】
また、前記正孔輸送層は、タングステンオキシド(WO)、モリブデンオキシド(MoO)、バナジウムオキシド(V)及びニッケルオキシド(NiO)からなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含むことができる。
【0024】
そして、前記基板層は、シリコンオキシド、アルミニウムオキシド、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、ガラス、石英、ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及びポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含むものであってもよい。
【0025】
一方、前記光活性層は、ペロブスカイト層であってもよく、このとき、前記ペロブスカイト層は、CHNHPbI、CHNHPbICl3-x、MAPbI、CHNHPbIBr3-x、CHNHPbClBr3-x、HC(NHPbI、HC(NHPbICl3-x、HC(NHPbIBr3-x、HC(NHPbClBr3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbI、(CHNH)(HC(NH1-yPbICl3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbIBr3-x及び(CHNH)(HC(NH1-yPbClBr3-xからなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上を含むものであってもよい。
【0026】
そして、前記太陽電池は、前記ペロブスカイト層が第1ペロブスカイト層、及び前記第1ペロブスカイト層上に積層された第2ペロブスカイト層を含むペロブスカイト-ペロブスカイトタンデム構造であってもよい。
【0027】
また、前記太陽電池は、前記基板層がシリコン太陽電池を含むシリコン-ペロブスカイトタンデム構造であってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、表面改質された金属酸化物を含む分散液に水酸化物をさらに追加し、表面改質された金属酸化物が極性溶媒内でもうまく分散されるようにし、その結果、均一な金属酸化物薄膜を含む正孔輸送層又は電子輸送層を形成することができる。
【0029】
このように、正孔輸送層又は電子輸送層が、均一に形成された金属酸化物薄膜を含むようになると、最終的に太陽電池の性能向上に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本明細書に添付される次の各図面は、本発明の好適な実施例を例示するものであって、後述する発明の詳細な説明と共に、本発明の技術思想をさらに理解させる役割をするものであるので、本発明は、そのような図面に記載の事項にのみ限定して解釈してはならない。
【0031】
図1】ペロブスカイト太陽電池を示す側面図である。
【0032】
図2】本発明の他の実施例に係るペロブスカイト太陽電池を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の各図面を参照して本発明の各実施例を詳細に説明する。
【0034】
以下で説明する本発明の各実施例は、当該技術分野で通常の知識を有する者に本発明をさらに明確に説明するために提供されるものであって、本発明の範囲が下記実施例によって限定されることはなく、下記実施例は、多くの他の形態に変形可能である。
【0035】
本明細書で使用された用語は、特定の実施例を説明するためのものであって、本発明を制限するためのものではない。本明細書で使用される単数形態の用語は、文脈上、異なる場合を明らかに指摘するものでない限り、複数の形態を含み得る。また、本明細書で使用される「含む(comprise)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、言及した形状、段階、数字、動作、部材、要素及び/又はこれらのグループの存在を特定するものであって、一つ以上の他の形状、段階、数字、動作、部材、要素及び/又はこれらグループの存在又は付加を排除するものではない。また、本明細書で使用された「連結」という用語は、いずれかの各部材が直接連結されたことを意味するだけでなく、各部材の間に他の部材がさらに介在して間接的に連結されたことまで含む概念である。
【0036】
併せて、本明細書で一つの部材が他の部材「上に」位置しているとしたとき、これは、一つの部材が他の部材に接している場合のみならず、二つの部材の間に更に他の部材が存在する場合も含む。本明細書で使用された用語である「及び/又は」は、該当の列挙した項目のうちいずれか一つ及び一つ以上の全ての組み合わせを含む。また、本明細書において、「約」、「実質的に」などの程度の用語は、固有の製造及び物質許容誤差を勘案した上で、その数値や程度の範疇又はこれに近接した意味で使用され、本願の理解を促進するために提供された正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0037】
以下、本発明の各実施例に対して詳細に説明する。添付の図面に示した領域やパーツのサイズや厚さは、明細書の明確性及び説明の便宜性のために多少誇張する場合がある。詳細な説明全体にわたって同一の参照番号は、同一の構成要素を示す。
【0038】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、第1電極層、正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)、光活性層、電子輸送層及び第2電極層を順次積層させた積層物を製造する段階を含み、前記正孔輸送層又は前記電子輸送層は、カルボン酸(R-COOH)で表面改質された金属酸化物、分散溶媒及び水酸化物を含む分散液が塗布及び乾燥されて形成されたことを特徴とする。
【0039】
従来は、金属酸化物の表面を改質した場合にも、イソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol、IPA)などの非極性溶媒でのみ分散性が向上するだけで、脱イオン水(DI water)やエタノールなどの極性溶媒では分散性が低いので、結局、極性溶媒に分散された金属酸化物を含む分散液を用いたときには金属酸化物薄膜を形成しにくいという問題があった。
【0040】
しかし、本発明によると、表面改質された金属酸化物を含む分散液に水酸化物をさらに追加し、分散液のpHを適宜調節することによって、極性溶媒内でも表面改質された金属酸化物がうまく分散されるようにし、均一な金属酸化物薄膜を含む正孔輸送層又は電子輸送層を形成することができる。
【0041】
したがって、このような正孔輸送層又は電子輸送層を含むようになると、最終的に太陽電池の性能が向上する。
【0042】
このとき、前記分散液は、塩基性を示すことができ、前記分散液の水素イオン濃度は、pH8乃至pH13であってもよい。このような条件を満足することによって、表面改質された金属酸化物が前記分散液内で最大限均一に分散され得る。
【0043】
一方、前記水酸化物は、水酸化基(-OH基)を含むものであれば大きく制限されないが、さらに具体的には、NHOH、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOHなどからなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上の混合物であってもよい。
【0044】
さらに、前記水酸化物は、アミン基を含むものであってもよく、その具体的な例としては、TMAH(Tetramethylammonium hydroxide)、TBMH(Tetrabutylammonium hydroxide)などが可能であるが、これにのみ制限されるものではない。
【0045】
そして、前記金属酸化物はスズ酸化物であってもよく、さらに具体的には、前記スズ酸化物はSnOであってもよい。
【0046】
また、前記カルボン酸は、酢酸又はトリフルオロ酢酸であってもよいが、これにのみ制限されるものではない。
【0047】
そして、前記分散溶媒は、イソプロピルアルコール(IPA)などの非極性溶媒であってもよく、脱イオン水(DI water)及びエタノールなどの極性溶媒であってもよいが、これにのみ限定されるものではなく、前記各溶媒からなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上が使用されてもよく、本発明の目的を達成できる範囲内の多様な溶媒が使用され得る。
【0048】
また、前記積層物は、前記第1電極層の下部面に基板層をさらに含むものであってもよく、前記光活性層はペロブスカイト層であることがさらに好ましい。太陽電池の各構成に対しては、後で詳細に説明する。
【0049】
一方、本発明の他の側面に係る太陽電池は、図1を参照して説明すると、基板層10、第1電極層20、正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)30、光活性層40、電子輸送層50及び第2電極層60が順次積層されたものであって、前記正孔輸送層30又は前記電子輸送層50は、金属酸化物層を含み、前記金属酸化物層は、カルボキシ基(-COOH)を含む化合物が表面に付着し、表面改質された金属酸化物が均一に薄膜で形成されたことを特徴とする。
【0050】
本発明のように、表面改質された金属酸化物が均一に薄膜で形成された正孔輸送層30又は電子輸送層50を含む太陽電池100は、その素子性能が大きく向上し得る。
【0051】
このとき、前記金属酸化物はスズ酸化物であってもよく、さらに具体的には、前記スズ酸化物はSnOであってもよい。
【0052】
一方、前記基板層10は、光を通過させる透明な物質を含むことができる。また、前記基板層10は、所望の波長の光を選別的に通過させる物質を含むことができる。前記基板層10は、例えば、シリコンオキシド、アルミニウムオキシド、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)などのTCO(Transparent Conductive Oxide)、ガラス、石英、又はポリマーを含むことができ、例えば、前記ポリマーは、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及びポリジメチルシロキサン(PDMS)のうち少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0053】
前記基板層10は、例えば、100μm乃至150μmの範囲の厚さを有することができ、例えば、125μmの厚さを有することができる。しかし、前記基板層10の材質及び厚さは、前記記載の内容にのみ限定されるものではなく、本発明の技術的思想によって適宜選択され得る。
【0054】
また、前記基板層10としては、上述したもの以外にも、シリコン太陽電池自体が使用されてもよいが、これに対しては、後で詳細に説明する。
【0055】
そして、前記第1電極層20は、透光性を有する導電性素材で形成されてもよい。透光性を有する導電性素材は、例えば、透明伝導性酸化物、炭素質伝導性素材及び金属性素材などを含むことができる。透明伝導性酸化物としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、ZnOなどが使用されてもよい。炭素質伝導性素材としては、例えば、グラフェン又はカーボンナノチューブなどが使用されてもよく、金属性素材としては、例えば、金属(Ag)ナノワイヤ、Au/Ag/Cu/Mg/Mo/Tiなどの多層構造の金属薄膜が使用されてもよい。本明細書において、「透明」という用語は、光を一定程度以上透過できることを言い、必ずしも完全な透明を意味するものと解釈されるのではない。以上で説明した各物質は、必ずしも上で説明した各実施例に限定されるものではなく、多様な材質で形成可能であり、その構造も、単層又は多層などのように多様に変形可能である。
【0056】
このとき、前記第1電極層20は、前記基板層10上に積層されて形成されてもよく、前記基板層10と一体で形成されてもよい。
【0057】
そして、前記第1電極層20上には正孔輸送層30が積層されてもよいが、これは、光活性層40で生成される正孔(hole)を第1電極層20に伝達する役割をする。
【0058】
前記正孔輸送層30は、上述したように、表面改質された金属酸化物が均一に薄膜で形成された金属酸化物層を含むことができ、又は、タングステンオキシド(WO)、モリブデンオキシド(MoO)、バナジウムオキシド(V)、ニッケルオキシド(NiO)及びこれらの混合物から選ばれる金属酸化物のうち少なくともいずれか一つを含むことができる。また、単分子正孔輸送物質及び高分子正孔輸送物質からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つを含み得るが、これに限定されなく、当該業界で使用される物質であれば限定なく使用可能である。例えば、前記単分子正孔輸送物質としてspiro-MeOTAD[2,2’,7,7’-tetrakis(N,N-p-dimethoxy-phenylamino)-9,9’-spirobifluorene]を使用することができ、前記高分子正孔輸送物質としてP3HT[poly(3-hexylthiophene)]、PTAA(polytriarylamine)、又はpoly(3,4-ethylenedioxythiophene)-polystyrene sulfonate(PEDOT:PSS)を使用できるが、これに制限されない。
【0059】
また、前記正孔輸送層30にはドーピング物質がさらに含まれてもよく、前記ドーピング物質としては、Li系列ドーパント、Co系列ドーパント、Cu系列ドーパント、Cs系列ドーパント及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるドーパントを使用できるが、これに制限されない。
【0060】
前記正孔輸送層30は、第1電極層20上に正孔輸送層用前駆体溶液を塗布し、乾燥して形成されてもよく、前記前駆体溶液を塗布する前に、第1電極層20にUV-オゾン処理を行うことによって第1電極層20の仕事関数を低下させ、表面の不純物を除去し、親水性処理を行うことができる。前駆体溶液の塗布時には、スピンコーティングなどの方法を使用できるが、これに限定されるものではない。形成された正孔輸送層30の厚さは、10nm乃至500nmであってもよい。
【0061】
一方、前記光活性層40は、好ましくは、ペロブスカイト化合物を含むペロブスカイト層であってもよい。
【0062】
本発明に係る太陽電池100では、太陽光を吸収し、光電子-光正孔対を生成する光活性物質としてペロブスカイト化合物を採択できるが、ペロブスカイトは、直接型バンドギャップ(direct band gap)を有しながら、光吸収係数が550nmで1.5×10cm-1程度に高く、電荷移動特性に優れ、欠陥に対する耐性に優れるという長所を有する。
【0063】
また、ペロブスカイト化合物は、溶液の塗布及び乾燥という極めて簡単で且つ容易であり、低価の単純な工程を通じて光活性層をなす光吸収体を形成できるという長所を有し、塗布された溶液の乾燥によって自発的に結晶化が行われ、粗大結晶粒の光吸収体を形成可能であり、特に、電子と正孔の全てに対する伝導度に優れる。
【0064】
このようなペロブスカイト化合物は、下記の化学式1の構造で表され得る。
【0065】
【化1】
【0066】
(ここで、Aは、1価の有機アンモニウム陽イオン又は金属陽イオンを意味し、Bは、2価の金属陽イオンを意味し、Xは、ハロゲン陰イオンを意味する。)
【0067】
ペロブスカイト化合物としては、例えば、CHNHPbI、CHNHPbICl3-x、MAPbI、CHNHPbIBr3-x、CHNHPbClBr3-x、HC(NHPbI、HC(NHPbICl3-x、HC(NHPbIBr3-x、HC(NHPbClBr3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbI、(CHNH)(HC(NH1-yPbICl3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbIBr3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbClBr3-xなどが使用されてもよい(0≦x、y≦1)。また、ABXのAにCsが一部ドーピングされた化合物も使用され得る。
【0068】
そして、前記電子輸送層50は、前記光活性層40上に位置し、光活性層40で生成された電子が第2電極層60に容易に伝達されるように機能することができる。
【0069】
前記電子輸送層50は、上述したように、表面改質された金属酸化物が均一に薄膜で形成された金属酸化物層を含むことができ、又は一般的な金属酸化物を含むこともできる。前記電子輸送層50としては、例えば、Ti酸化物、Zn酸化物、In酸化物、Sn酸化物、W酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Sr酸化物、Yr酸化物、La酸化物、V酸化物、Al酸化物、Y酸化物、Sc酸化物、Sm酸化物、Ga酸化物、SrTi酸化物などが使用されてもよい。本発明に係る電子輸送層50は、コンパクトな構造のTiO、SnO、WO又はTiSrOなどを含むこともできる。このような電子輸送層50は、必要によってn型又はp型ドーパントをさらに含むことができる。
【0070】
上記のような正孔輸送層30/光活性層40/電子輸送層50には、上述した層間構造及び/又は物質以外にも、太陽電池100を構成する多様な層構造及び物質が適用可能であり、前記正孔輸送層30と前記電子輸送層50は、互いに位置が変わって形成されてもよい。
【0071】
そして、前記第2電極層60は、透光性を有する導電性素材で形成されてもよい。透光性を有する導電性素材は、例えば、透明伝導性酸化物、炭素質伝導性素材及び金属性素材などを含むことができる。透明伝導性酸化物としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、ZnOなどが使用されてもよい。炭素質伝導性素材としては、例えば、グラフェン又はカーボンナノチューブなどが使用されてもよく、金属性素材としては、例えば、金属(Ag)ナノワイヤ、Au/Ag/Cu/Mg/Mo/Tiなどの多層構造の金属薄膜が使用されてもよい。本明細書において、「透明」という用語は、光を一定程度以上透過できることを言い、必ずしも完全な透明を意味するものと解釈されるのではない。以上で説明した各物質は、必ずしも上で説明した各実施例に限定されるものではなく、多様な材質で形成可能であり、その構造も、単層又は多層などに多様に変形可能である。
【0072】
一方、図示してはいないが、第2電極層60上には、第2電極層60の抵抗を低下させ、電荷の伝達をさらに容易にするためにバス電極(図示せず)がさらに配置されてもよい。前記バス電極は、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr及び/又はこれらの化合物などで形成されてもよい。
【0073】
図2は、本発明の他の実施例に係るペロブスカイト太陽電池を示す側面図である。
【0074】
図2を参照すると、本発明に係る太陽電池100は、前記ペロブスカイト層が第1ペロブスカイト層40a、及び前記第1ペロブスカイト層40a上に積層された第2ペロブスカイト層40bを含むペロブスカイト-ペロブスカイトタンデム構造である太陽電池であってもよい。
【0075】
このとき、前記第1ペロブスカイト層40aと前記第2ペロブスカイト層40bは、互いに異なるエネルギーバンドギャップを有することができる。このように多様なエネルギーバンドギャップを有する各材料を用いることによって、広いスペクトル領域の光エネルギーを効果的に用いることができる。
【0076】
一例として、タンデム構造の太陽電池では、相対的に大きいバンドギャップを有する吸収層を含む単一接合太陽電池が受光面に位置し、相対的に小さいバンドギャップを有する吸収層を含む単一接合太陽電池が受光面の反対面に位置し得る。これによって、タンデム構造の太陽電池は、前面で短波長領域の光を吸収し、後面で長波長領域の光を吸収することによって、限界波長(threshold wavelength)を長波長側に移動させることができる。結果的に、タンデム構造の太陽電池は、全体の吸収波長領域を広く利用できるという利点を有する。
【0077】
また、前記太陽電池100は、シリコン-ペロブスカイトタンデム構造である太陽電池であってもよい。
【0078】
このとき、前記基板層10は、シリコン太陽電池自体であったり、シリコン太陽電池を含むものであってもよい。
【0079】
ここで、前記シリコン太陽電池は、一般的な公知のシリコン太陽電池であってもよく、その構造や形態は制限されず、本発明の目的を達成できるものであれば自由に適用可能である。
【0080】
一方、上記のような 正孔輸送層30/光活性層40/電子輸送層50には、上述した層間構造及び/又は物質以外にも、太陽電池100を構成する多様な層構造及び物質が適用され得る。
【0081】
本明細書では、本発明の好適な実施例に対して開示しており、特定の用語が使用されたが、これは、本発明の技術内容を容易に説明し、発明の理解を促進するための一般的な意味で使用されたものに過ぎなく、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示した実施例以外にも、本発明の技術的思想に基づいた他の変形例が実施可能であることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。例えば、該当の技術分野で通常の知識を有する者であれば、図1を参照して説明した実施例に係る太陽電池の製造方法及びそれから製造された太陽電池は、多様に変形可能であることを理解できるだろう。よって、発明の範囲は、説明した実施例によって定められるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想によって定められなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、ペロブスカイト太陽電池の製造分野に利用可能である。
図1
図2
【国際調査報告】