(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】臍帯由来間葉系幹細胞培養液を有効成分として含む皮膚改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/96 20060101AFI20231227BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20231227BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231227BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20231227BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20231227BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20231227BHJP
A61K 35/51 20150101ALI20231227BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
A61K8/96
C12N5/0775 ZNA
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K8/64
A61P17/00
A61P17/02
A61K35/51
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538914
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2021016007
(87)【国際公開番号】W WO2022139166
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0180918
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520221512
【氏名又は名称】ハンス ファーマ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANS PHARMA CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ、ナウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョンテ
(72)【発明者】
【氏名】キム、グニョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドンウク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ロウン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BB19
4B065CA44
4C083AA071
4C083AA072
4C083AD411
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB59
4C087BB64
4C087MA63
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB11
(57)【要約】
本発明は、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を有効成分として含む皮膚改善用組成物及び炎症性皮膚疾患予防又は治療用医薬組成物に関するものであり、傷の緩和、シワの改善、再生、弾力の増加、保湿、障壁の強化、抗炎症又は抗酸化効果を示すので、皮膚改善用化粧料組成物又は炎症性皮膚疾患予防又は治療用医薬組成物として有用に使用されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯由来間葉系幹細胞培養液を有効成分として含む皮膚改善用化粧料組成物。
【請求項2】
前記皮膚改善は、傷の緩和、シワの改善、再生、弾力の増加、保湿、障壁の強化、抗炎症又は抗酸化である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記臍帯由来間葉系幹細胞培養液は、6Ckine、アディポネクチン/Acrp30、アンジオゲニン、ANGPT-1、ANGPT-2、ANGPTL-1、ANGPTL-2、アンジオスタチン、APRIL、アルテミン、BD-1、BAX、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMPR-IA/ALK-3、CCR1、CCR2、CCR4、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40リガンド/TNFSF5/CD154、Csk、CLC、CRTH-2、CTACK/CCL27、CXCR1/IL-8 RA、CXCR2/IL-8 RB、CXCR5/BLR-1、EDA-A2、EDG-1、EG-VEGF/PK1、エンドスタチン、ErbB4、Fasリガンド、FGF Basic、FGF R4、FGF-9、FGF-10/KGF-2、FGF-11、IL-13 1B、GDF3、GDF5、GDF9、GDF11、GDF-15、GRO-a、HB-EGF、HCR(CRAM-A/B)、HRG1-α/NRG1-α、IGFBP-3、IGFBP-6、IGFBP-rp1/IGFBP-7、リンホトキシン-β/TNFSF3、M-CSF、MDC、MIP-1a、MIP-1b、MIP 2、NAP-2、PF4/CXCL4、PLUNC、トロンボスポンジン-1、TIMP-1、TIMP-2、TMEFF1/Tomoregulin-1及びTRADDからなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含む、請求項1に記載の皮膚改善用化粧料組成物。
【請求項4】
前記臍帯由来間葉系幹細胞培養液は、アディポネクチン/Acrp30、ANGPT-1、ANGPT-2、アンジオスタチン、APRIL、CCR7、CCR8、CCR9、CRTH-2、CTACK/CCL27、CXCR1/IL-8 RA、FGF-9、GDF-15、HB-EGF、IGFBP-rp1/IGFBP-7、MIP-1a及びTMEFF1/Tomoregulin-1からなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含む、請求項1に記載の皮膚改善用化粧料組成物。
【請求項5】
前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は、6Ckine、ANGPT-2、ANGPTL-1、ANGPTL-2、アンジオスタチン、APRIL、アルテミン、BD-1、BAX、BMP-3、BMPR-IA/ALK-3、CCR1、CCR2、CCR4、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40リガンド/TNFSF5/CD154、Csk、CLC、CRTH-2、CTACK/CCL27、CXCR1/IL-8 RA、 CXCR2/IL-8 RB、CXCR5/BLR-1、EDA-A2、EDG-1、EG-VEGF/PK1、ErbB4、Fasリガンド、FGF R4、FGF-9、FGF-10/KGF-2、FGF-11、GDF3、GDF5、GDF9、GRO-a、HCR(CRAM-A/B)、HRG1-α/NRG1-α、IGFBP-rp1/IGFBP-7、リンホトキシン-β/TNFSF3、M-CSF、MDC、MIP-1a、MIP-1b、MIP 2、NAP-2、PF4/CXCL4、PLUNC、TMEFF1/Tomoregulin-1及びTRADDからなる群から選択される1つ以上のタンパク質、及び
6Ckine、アディポネクチン/Acrp30、アンジオゲニン、ANGPT-1、ANGPT-2、ANGPTL-1、ANGPTL-2、アンジオスタチン、APRIL、アルテミン、BD-1、BAX、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMPR-IA/ALK-3、CCR1、CCR2、CCR4、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40リガンド/TNFSF5/CD154、Csk、CLC、CRTH-2、CTACK/CCL27、CXCR1/IL-8 RA、CXCR2/IL-8 RB、CXCR5/BLR-1、EDG-1、EG-VEGF/PK1、ErbB4、Fasリガンド、FGF R4、FGF-9、FGF-10/KGF-2、FGF-11、IL-13 1B、GDF11、HCR(CRAM-A/B)、HRG1-α/NRG1-α、IGFBP-rp1/IGFBP-7、リンホトキシン-β/TNFSF3、M-CSF、MDC、MIP-1a、MIP-1b、MIP 2、NAP-2、PF4/CXCL4、PLUNC、TIMP-2、TMEFF1/Tomoregulin-1及びTRADDからなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含む、請求項1に記載の皮膚改善用化粧料組成物。
【請求項6】
皮膚細胞のコラーゲン合成を促進する、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
アクアポリン又はヒアルロン酸の合成を促進する、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
皮膚細胞の活性酸素種(Reactive Oxygen Species;ROS)の産生を抑制する、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
皮膚細胞の炎症性サイトカインの産生を抑制する、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
前記炎症性サイトカインはTNF-αである、請求項9に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
前記臍帯由来間葉系幹細胞は、
i)CD44、CD73、CD105及びCD90からなる群から選択される1つ以上の表面抗原に対して陽性を示し、
ii)CD14、CD19、CD45及びCD34からなる群から選択される1つ以上の表面抗原に対して陰性を示す、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項12】
前記臍帯由来間葉系幹細胞培養液は、以下のステップを含む方法により製造される、請求項1に記載の化粧料組成物:
a)血管を除去した臍帯から間葉系幹細胞を分離するステップ、
b)前記分離された間葉系幹細胞を無血清細胞培養培地で1回~10回継代培養するステップ、及び
c)前記継代培養の過程で培養液を得た後、濾過するステップ。
【請求項13】
臍帯由来間葉系幹細胞の培養液を有効成分として含む炎症性皮膚疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を有効成分として含む皮膚改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、人体内での血管新生促進、抗炎症作用、免疫調節作用など、損傷組織の微小環境(micro-environment)調節による生体作用に関与することが知られている。これらの生体作用は、損傷組織の保護及び再生を促進する様々な増殖因子(growth factor)、サイトカイン(cytokine)、細胞外マトリックス(extracellular matrix)、及び抗酸化タンパク質が間葉系幹細胞から分泌されて生じる。これをパラクライン効果(paracrine effect)と呼ぶ。
【0003】
間葉系幹細胞から分泌された成分は、幹細胞培養液にも多く含まれる可能性があるため、化粧品及び医薬業界では、これらの幹細胞培養液因子を用いた化粧品及び医薬品の開発に努力を傾けている。
【0004】
一方、大韓民国公開特許公報第10-2009-0116659号には臍帯血由来の成体幹細胞培養液を含む美白化粧料組成物について開示されているが、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の傷の緩和、シワの改善、再生、弾力の増加、保湿、障壁の強化、抗炎症又は抗酸化による皮膚改善効果については知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、傷の緩和、シワの改善、再生、弾力の増加、保湿、障壁の強化、抗炎症又は抗酸化による皮膚改善効果を示す皮膚改善用化粧料組成物を提供することにある。
【0006】
他の目的は、炎症性皮膚疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を有効成分として含む皮膚改善用化粧料組成物を提供する。
【0008】
前記皮膚の改善は、傷の緩和、しわの改善、再生、弾力の増加、保湿、障壁の強化、抗炎症又は抗酸化であり得る。
【0009】
本明細書において、「臍帯(umbilical cord)」という用語は、哺乳類の胎児が胎盤で成長するように母体と胚をつなぐ緒を意味してもよく、一般にワルトンゼリー(Wharton's jelly)によって囲まれた3つの血管、すなわち、2つのへそ動脈と1つのへそ静脈からなる組織を意味してもよい、本明細書では臍帯と呼ばれるものである。
【0010】
本明細書において、「間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem cells)」という用語は、受精卵が分裂して生じた中胚葉から分化した軟骨、骨組織、脂肪組織、骨髄の間質(stroma)などに存在する幹細胞を意味し得る。間葉系幹細胞は、幹細胞性(stemness)と自己複製能(self-renewal)を保持し、軟骨細胞、骨芽細胞、筋肉細胞、脂肪細胞を含む様々な細胞に分化する能力を有し、骨髄(bone marrow)、脂肪組織(adipose tissue)、臍帯血(umbilical cord blood)、滑膜(synovial membrane)、海綿骨(trabecular bone)、筋肉、膝蓋下脂肪体(infrapatellar fat pad)などから抽出することができる。間葉系幹細胞は、Tリンパ球、Bリンパ球の活性、増殖を抑制し、ナチュラルキラー細胞(natural killer cell、NK cell)の活性を抑制し、樹状細胞(dendritic cell)とマクロファージ(macrophage)の機能を調節する免疫調節能力を有するので、同種移植(allotransplantation)と異種移植(xenotransplantation)が可能な細胞である。
【0011】
したがって、本明細書において「臍帯由来間葉系幹細胞(Umbilical Cord Derived Mesenchymal Stem cells)」とは、臍帯又は臍帯のワルトンゼリー組織から由来し、様々な組織細胞に分化することができる能力を有する細胞を意味し得る。
【0012】
前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は、6Ckine、アディポネクチン(Adiponectin)/Acrp30、アンジオゲニン(Angiogenin)、アンジオポエチン(Angiopoietin)-1(ANGPT-1)、ANGPT-2、アンジオポエチン様1(Angiopoietin-like 1)(ANGPTL-1)、ANGPTL-2、アンジオスタチン(Angiostatin)、APRIL、アルテミン(Artemin)、BD-1、BAX、骨形成タンパク質(Bone Morphogenetic Protein;BMP)-2、BMP-3、BMP-4、骨形成タンパク質受容体(Bone Morphogenetic Protein Receptor;BMPR-IA)/ALK(Anaplastic lymphoma kinase;未分化リンパ腫キナーゼ)-3、CCR(C-C chemokine receptor;CCケモカイン受容体)1、CCR2、CCR4、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD30リガンド(Ligand)/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40リガンド/TNFSF5/CD154、Csk、CLC、CRTH-2、CTACK/CCL27(C-C motif chemokine ligand 27;CCモチーフケモカインリガンド27)、CXCR1/IL-8 RA(Interleukin 8 receptor alpha;インターロイキン8受容体アルファ)、CXCR2/IL-8 RB(Interleukin 8 receptor beta;インターロイキン8受容体ベータ)、CXCR5/BLR-1、EDA-A2、EDG-1、EG-VEGF(endocrine-gland-derived vascular endothelial growth factor;内分泌腺由来血管内皮細胞増殖因子)/PK1、エンドスタチン(Endostatin)、ErbB4、Fasリガンド、FGF Basic(basic fibroblast growth factor;塩基性線維芽細胞増殖因子)、FGF R4、FGF-9、FGF-10/KGF-2、FGF-11、IL-13 1B、GDF(Growth Differentiation Factor;増殖分化因子)3、GDF5、GDF9、GDF11、GDF-15、GRO-a、HB-EGF(Heparin-binding EGF;ヘパリン結合性EGF)、HCR(heme-controlled repressor;ヘム制御リプレッサー)(CRAM-A/B)、HRG1-α/NRG1-α、IGFBP(Insulin-like growth factor-binding protein;インスリン様増殖因子結合タンパク質)-3、IGFBP-6、IGFBP-rp(IGFBP-related protein;IGFBP-関連タンパク質)1/IGFBP-7、リンホトキシン(Lymphotoxin)-β/TNFSF3、M-CSF(Macrophage colony-stimulating factor;マクロファージコロニー刺激因子)、MDC、MIP(Macrophage Inflammatory Proteins;マクロファージ炎症性タンパク質)-1a、MIP-1b、MIP2、NAP(neutrophil activating protein;好中球活性化タンパク質)-2、PF4/CXCL4、PLUNC(Palate、lung and nasal epithelium clone protein;口蓋、肺及び鼻咽頭上皮のクローンタンパク質)、トロンボスポンジン(Thrombospondin)-1、TIMP-1、TIMP-2、TMEFF1/Tomoregulin-1、TRADD(Tumor necrosis factor receptor type 1-associated DEATH domain protein;腫瘍壊死因子受容体タイプ1-関連デスドメインタンパク質)、又はそれらの組み合わせのタンパク質を含み得る。例えば、前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は、前記71種のタンパク質のうち、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、又は全てのタンパク質を含むことができる。
【0013】
一実施形態では、前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の成分をiBright Analysis Softwareを用いて測定した結果、下記表1に記載のような信号強度を有し得る。
【0014】
【表1】
前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は、アディポネクチン/Acrp30、ANGPT-1、ANGPT-2、アンジオスタチン、APRIL、CCR7、CCR8、CCR9、CRTH-2、CTACK/CCL27、CXCR1/IL-8 RA、FGF-9、GDF-15、HB-EGF、IGFBP-rp1/IGFBP-7、MIP-1a及びTMEFF1/Tomoregulin-1からなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含み得る。
【0015】
前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は、カンステムバイオテック(ソウル、大韓民国)の臍帯血由来間葉系幹細胞培養液に含まれていない、6Ckine、ANGPT-2、ANGPTL-1、ANGPTL-2、アンジオスタチン、APRIL、アルテミン、BD-1、BAX、BMP-3、BMPR-IA/ALK-3、CCR1、CCR2、CCR4、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40リガンド/TNFSF5/CD154、Csk、CLC、CRTH-2、CTACK/CCL27、CXCR1/IL-8 RA、CXCR2/IL-8 RB、CXCR5/BLR-1、EDA-A2、EDG-1、EG-VEGF/PK1、ErbB4、Fasリガンド、FGF R4、FGF-9、FGF-10/KGF-2、FGF-11、GDF3、GDF5、GDF9、GRO-a、HCR(CRAM-A/B)、HRG1-α/NRG1-α、IGFBP-rp1/IGFBP-7、リンホトキシン-β/TNFSF3、M-CSF、MDC、MIP-1a、MIP-1b、MIP 2、NAP-2、PF4/CXCL4、PLUNC、TMEFF1/Tomoregulin-1及びTRADDからなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含み得る。
【0016】
前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は、大韓民国登録特許第10-2172344号に開示された方法で製造した神経幹細胞培養液に含まれない、6Ckine、アディポネクチン/Acrp30、アンジオゲニン、ANGPT-1、ANGPT-2、ANGPTL-1、ANGPTL-2、アンジオスタチン、APRIL、アルテミン、BD-1、BAX、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMPR-IA/ALK-3、CCR1、CCR2、CCR4、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40リガンド/TNFSF5/CD154、Csk、CLC、CRTH-2、CTACK/CCL27、CXCR1/IL-8 RA、CXCR2/IL-8 RB、CXCR5/BLR-1、EDG-1、EG-VEGF/PK1、ErbB4、Fasリガンド、FGF R4、FGF-9、FGF-10/KGF-2、FGF-11、IL-13 1B、GDF11、HCR(CRAM-A/B)、HRG1-α/NRG1-α、IGFBP-rp1/IGFBP-7、リンホトキシン-β/TNFSF3、M-CSF、MDC、MIP-1a、MIP-1b、MIP 2、NAP-2、PF4/CXCL4、PLUNC、TIMP-2、TMEFF1/Tomoregulin-1及びTRADDからなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含み得る。
【0017】
前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は、6Ckine、ANGPT-2、ANGPTL-1、ANGPTL-2、アンジオスタチン、APRIL、アルテミン、BD-1、BAX、BMP-3、BMPR-IA/ALK-3、CCR1、CCR2、CCR4、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40リガンド/TNFSF5/CD154、Csk、CLC、CRTH-2、CTACK/CCL27、CXCR1/IL-8 RA、CXCR2/IL-8 RB、CXCR5/BLR-1、EDA-A2、EDG-1、EG-VEGF/PK1、ErbB4、Fasリガンド、FGF R4、FGF-9、FGF-10/KGF-2、FGF-11、GDF3、GDF5、GDF9、GRO-a、HCR(CRAM-A/B)、HRG1-α/NRG1-α、IGFBP-rp1/IGFBP-7、リンホトキシン-β/TNFSF3、M-CSF、MDC、MIP-1a、MIP-1b、MIP 2、NAP-2、PF4/CXCL4、PLUNC、TMEFF1/Tomoregulin-1及びTRADDからなる群から選択される1つ以上のタンパク質、及び6Ckine、アディポネクチン/Acrp30、アンジオゲニン、ANGPT-1、ANGPT-2、ANGPTL-1、ANGPTL-2、アンジオスタチン、APRIL、アルテミン、BD-1、BAX、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMPR-IA/ALK-3、CCR1、CCR2、CCR4、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40リガンド/TNFSF5/CD154、Csk、CLC、CRTH-2、CTACK/CCL27、CXCR1/IL-8 RA、CXCR2/IL-8 RB、CXCR5/BLR-1、EDG-1、EG-VEGF/PK1、ErbB4、Fasリガンド、FGF R4、FGF-9、FGF-10/KGF-2、FGF-11、IL-13 1B、GDF11、HCR(CRAM-A/B)、HRG1-α/NRG1-α、IGFBP-rp1/IGFBP-7、リンホトキシン-β/TNFSF3、M-CSF、MDC、MIP-1a、MIP-1b、MIP2、NAP-2、PF4/CXCL4、PLUNC、TIMP-2、TMEFF1/Tomoregulin-1及びTRADDからなる群から選択される1つ以上のタンパク質とを含み得る。
【0018】
前記化粧料組成物は、皮膚細胞の傷を回復することによって傷跡をケアすることができる。
【0019】
前記化粧料組成物は、皮膚細胞のコラーゲン合成を促進することによって、皮膚のシワの改善、再生又は弾力の増加の効果を示すことができる。
【0020】
前記化粧料組成物は、アクアポリン又はヒアルロン酸の合成を促進することによって皮膚保湿又は障壁の強化の効果を示すことができる。
【0021】
本明細書において、「アクアポリン(aquaporin;AQP)」という用語は、細胞膜内にチャネルを形成して水分子の受動輸送を誘導する内在性膜タンパク質であり、他の物質の移動は制限しながら水分子のみを選択的に通過させるタンパク質を意味する。
【0022】
本明細書において、「ヒアルロン酸(hyaluronic acid;HA)」という用語は、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸からなる高分子化合物として皮膚の保湿に役立つ因子を意味する。
【0023】
前記化粧料組成物は、皮膚細胞の活性酸素種(Reactive Oxygen Species;ROS)の生成を抑制することによって抗酸化効果を示すことができる。
【0024】
前記化粧料組成物は、皮膚細胞の炎症性サイトカインの産生を抑制することによって抗炎症効果を示すことができる。
【0025】
前記炎症性サイトカインは、TNF-α、TNF-β、IFN-γ、IL-6又はIL-12であり得るが、これらに限定されない。具体的には、前記炎症性サイトカインはTNF-αであり得る。
【0026】
前記臍帯由来間葉系幹細胞は、i)CD44、CD73、CD105及びCD90からなる群から選択される1つ以上の表面抗原に対して陽性を示し、ii)CD14、CD19、CD45及びCD34からなる群から選択される1つ以上表面抗原に対して陰性を示すことができる。
【0027】
本明細書において、「陽性」という用語は、幹細胞表面マーカーに関して、その表面マーカーが基準となる他の非幹細胞と比較した場合、より多い量又はより高い濃度で存在することを意味し得る。すなわち、細胞は、ある表面マーカーが細胞表面に存在するため、そのマーカーを用いてその細胞を1つ以上の他の細胞タイプと区別することができれば、そのマーカーに対して陽性となる。また、細胞がバックグラウンド値よりも大きい値で信号、例えば細胞分析装置が測定できるだけの信号の量でそのマーカーを発現していることを意味し得る。例えば、細胞を幹細胞特異的表面抗原であるCD44に特異的な抗体で検出可能であり、この抗体からの信号が対照群(例えば、バックグラウンド値)よりも検出可能に大きい場合、その細胞は「CD44+」である。
【0028】
本明細書において、「陰性」という用語は、特定の細胞表面マーカーに特異的な抗体を使用しても、バックグラウンド値と比較してそのマーカーを検出できないことを意味する。例えば、CD14に特異的な抗体で細胞を検出可能に標識できない場合、その細胞は「CD14-」である。
【0029】
前記免疫学的特性は、本発明が属する技術分野で知られている通常の方法によって決定することができる。例えば、フローサイトメトリー、免疫細胞化学染色、又はRT-PCRなどの様々な方法が用いられることができる。
【0030】
前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は、a)血管を除去した臍帯から間葉系幹細胞を分離するステップ、b)前記単離された間葉系幹細胞を無血清の細胞培養培地で1~10回継代培養するステップ、及びc)前記継代培養の過程で培養液を得た後、濾過するステップを含む方法によって製造することができる。
【0031】
前記臍帯は、健康な産婦(例えば、HIV、HCV、HBV陰性の妊婦)から出産後に分離された胎盤を使用することができる。すなわち、前記「分離された臍帯」とは、産婦の母体から出産後に分離される臍帯を意味し得る。前記分離された臍帯は、分離された後に迅速に滅菌された容器及び氷に入れて保管することができる。
【0032】
前記臍帯を胎盤から分離して得る方法は、例えば、分離された胎盤から臍帯を分離するステップ、前記分離された臍帯の外部の血液を除去するステップ、前記血液が除去された臍帯の動脈と静脈を除去するステップ、及び/又は前記動脈と静脈が除去された 臍帯(へその緒) を一定のサイズ(例えば、1~20mm)に細切するステップを含み得る。前記血液の除去は、例えば、Ca/Mg free DPBS、又はゲンタマイシン含有Ca/Mg free DPBSを用いることができる。
【0033】
次に、分離酵素を処理して、細断された臍帯(例えば単離された臍帯)から間葉系幹細胞を分離することができる。前記分離酵素は、コラゲナーゼ(collagenase)、トリプシン(trypsin)、及び/又はディスパーゼ(Dispase)を含むことができる。
【0034】
次に、前記分離された臍帯由来間葉系幹細胞をP0として1回~10回継代培養するステップを含むことができる。具体的には、3回又は4回継代培養してもよい。
【0035】
前記継代培養の過程で培養液を得た後、濾過するステップを通じて、本発明による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を得ることができる。
【0036】
前記化粧料組成物は、必要に応じて、当業界における通常の製造される化粧料剤形に製剤化することができる。
【0037】
前記化粧料組成物は、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化されることができるが、これに限定されない。具体的には、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー又はパウダーの剤形に製剤化することができる。また、前記化粧料組成物の剤形がペースト、クリーム又はゲルである場合には、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される担体成分を含むことができる。
【0038】
また、前記化粧料組成物の剤形が溶液又は乳濁液である場合には、溶媒、溶媒和剤、乳濁化剤及びそれらの混合物からなる群から選択される担体成分を含むことができる。その例としては、水、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0039】
また、前記化粧料組成物の剤形が懸濁液である場合には、水、エタノール、又はプロピレングリコール等の液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル等の懸濁剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガ、トラガカント及びそれらの混合物からなる群から選択される担体成分を含み得る。
【0040】
前記担体成分は、化粧料組成物の総重量に基準にして約1~約99.99重量%、好ましくは約80重量%~約90重量%で含んでもよい。
【0041】
本発明の他の態様は、臍帯由来間葉系幹細胞の培養液を有効成分として含む炎症性皮膚疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0042】
前記臍帯由来間葉系幹細胞の培養液については上記の通りである。
【0043】
前記炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、ニキビ、脂漏性皮膚炎、汗疹、蕁麻疹、乾癬、皮膚硬化症、湿疹、白斑症、ループス、及び円形脱毛症からなる群から選択される1つ以上の疾患であり得るが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記医薬組成物は、有効成分として、前記臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を組成物の総重量を基準にして約0.1重量%~約90重量%、具体的には約0.5重量%~約75重量%、より具体的には、約1重量%~約50重量%で含有してもよい。
【0045】
前記医薬組成物は、通常の方法に従って製剤に配合される通常の非毒性の薬学的に許容可能な添加剤を含み得る。例えば、前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含み得る。
【0046】
前記医薬組成物は皮膚に塗布してもよい。前記医薬組成物の剤形は皮膚外用剤の剤形であり得る。前記皮膚外用剤は特にこれに限定されないが、例えば軟膏剤、ローション剤、スプレー剤、パッチ剤、クリーム剤、散剤、懸濁剤、湿布剤(しめふざい)又はゲル剤の形態で製造して使用することができる。
【0047】
重複する内容は、本明細書の複雑さを考慮して省略され、本明細書で他に定義されていない用語は、本発明が属する技術分野で通常使用される意味を有するものである。
【0048】
【発明の効果】
【0049】
本発明の一態様による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を含む化粧料組成物は、傷の緩和、シワの改善、再生、弾力の増加、保湿、障壁の強化、抗炎症又は抗酸化効果を示すため、皮膚改善用化粧料組成物に有用に使用し得る。
【0050】
他の態様による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を有効成分として含む医薬組成物は、炎症性サイトカインの産生を抑制する効果があるため、炎症性皮膚疾患の予防又は治療用組成物として広く活用されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞のX40倍率顕微鏡の写真である。
【
図2】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞のX100倍率顕微鏡の写真である。
【
図3】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の骨細胞への分化能を確認した結果である。
【
図4】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化能を確認した結果である。
【
図5】フローサイトメトリーであるFACS分析により、一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の幹細胞特異的表面マーカー発現の有無を確認した結果である。
【
図6】免疫細胞蛍光染色法により、一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の幹細胞特異的表面マーカー発現の有無を確認した結果である。
【
図7】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液に含まれるタンパク質成分を分析した結果である。
【
図8】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液から分泌されるタンパク質の発現強度を測定したグラフである。
【
図9】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の処理濃度によるヒト表皮細胞(HaCaT)の細胞生存率を測定した結果である。
【
図10】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の処理濃度によるヒト真皮線維芽細胞(HS68)の細胞生存率を測定した結果である。
【
図11】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液及び脂肪由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞培養液の処理によるヒト表皮細胞(HaCaT)の細胞形態を観察した結果である。ここで、ADは脂肪を、BMは骨髄を、UCは臍帯を意味する。
【
図12】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液及び脂肪由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞培養液の処理によるヒト表皮細胞(HaCaT)の細胞生存率を測定した結果である。ここで、ADは脂肪を、BMは骨髄を、UCは臍帯を意味する。
【
図13】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の処理濃度によるヒト表皮細胞(HaCaT)で傷跡回復効果を示す顕微鏡写真及び傷跡回復率を測定した結果である。
【
図14】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の処理濃度によるヒト真皮線維芽細胞(HS68)で傷跡回復効果を示す顕微鏡写真及び傷跡回復率を測定した結果である。
【
図15】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液(UC-MSC)と脂肪由来間葉系幹細胞(AD-MSC)、骨髄由来間葉系幹細胞培養液(BM-MSC)の処理によるヒト表皮細胞(HaCaT)の傷跡回復を示す顕微鏡写真及び傷跡回復率を測定した結果である。
【
図16】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の濃度を異にしてヒト真皮線維芽細胞(HS68)に処理した後、COL1A1の発現の有無を確認した電気泳動写真とCOL1A1の発現量とを比較したグラフである。
【
図17】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の濃度を異にしてヒト真皮線維芽細胞(HS68)に処理した後、COL3A1の発現の有無を確認した電気泳動写真とCOL3A1の発現量とを比較したグラフである。
【
図18】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の処理濃度によるヒト真皮線維芽細胞(HS68)におけるPICP発現量を比較したグラフである。
【
図19】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の処理濃度によるヒト表皮細胞(HaCaT)におけるAQP3、HAS2及びHAS3の発現の有無を確認した電気泳動写真とそれぞれの発現量とを比較したグラフである。
【
図20】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液(UC)と脂肪由来間葉系幹細胞(AD)、骨髄由来間葉系幹細胞培養液(BM)の処理によるヒト表皮細胞(HaCaT)におけるAQP3、HAS2及びHAS3の発現の有無を確認した電気泳動写真とそれぞれの発現量とを比較したグラフである。
【
図21】マウスマクロファージ(Raw264.7)にリポ多糖(Lipopolysaccharide;LPS)を処理して炎症反応を誘導し、一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の濃度を異にして処理した後、TNF-αの発現の有無を示す電気泳動写真とTNF-αの発現量とを比較したグラフである。
【
図22】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の処理濃度によるヒト真皮線維芽細胞(HS68)におけるTrolox当量抗酸化能力を比較した結果(左)及び臍帯(へその緒)由来中間葉系幹細胞培養液(UC)、脂肪由来間葉系幹細胞培養液(AD)、骨髄由来間葉系幹細胞培養液(BM)の処理によるヒト真皮線維芽細胞(HS68)におけるTrolox当量の抗酸化能力を比較した結果(右)である。
【
図23】一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の処理濃度によるヒト真皮線維芽細胞(HS68)における細胞内活性酸素種(ROS)の濃度変化を測定した結果及びDCF-DA蛍光値を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0053】
製造例1.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞及び臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の製造
健康な妊婦の分娩過程で供与された臍帯を、クリーンベンチ(Clean Bench)又はバイオハザード対策用キャビネット(Biological Safety Cabinet;BSC)の氷上に細胞培養皿を置き、リン酸緩衝食塩水(Phosphate Buffered Saline、PBS)で洗浄した。滅菌したハサミで臍帯の血管を先に除去し、3mm~5mm程度の大きさに細切した。細切した臍帯組織を細胞培養フラスコに移した後、トリプシン(Trypsin)酵素を処理し、30分間37℃で反応させ、5%HPL(Human Platelet Lysate;ヒト血小板溶解物、Helios UltraGRO)、1%P/S(Penicillin/Streptomycin;ペニシリン/ストレプトマイシン、GIBCO)を含むMEM-alpha(GIBCO)培地を添加して37℃のインキュベーターで培養して、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞を得た。
【0054】
得られた間葉系幹細胞を3回又は4回継代培養した後に細胞の培養密度(confluency)が70~80%になると、培養培地を5% HPL及び1% P/Sを含むphenol-red free MEM-alphaと交換して48時間培養する過程で培養液を分離した。分離した培養液を0.22μmフィルターで濾過して臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を得た。
【0055】
比較例1.脂肪由来間葉系幹細胞培養液及び骨髄由来間葉系幹細胞培養液の製造
Promocellから購入した脂肪由来間葉系幹細胞(Cat#C-12978)及びLonZaから購入した骨髄由来間葉系幹細胞(Cat#PT-2501)を3回又は4回継代培養した後、5%HPL及び1%P/Sを含むMEM-アルファ培地を添加してさらに培養した。細胞の培養密度(confluency)が70~80%になると、培養培地をphenol-red free MEM-alphaと交換して48時間培養する過程で脂肪由来間葉系幹細胞及び骨髄由来間葉系幹細胞培養液を得た。
【0056】
実験例1.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の特性解析
【0057】
実験例1.1.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の細胞形態観察
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の形態を顕微鏡で観察した。
図1は、X40倍率顕微鏡で観察した写真であり、
図2は、X100倍率顕微鏡で観察した写真である。
【0058】
実験例1.2.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の分化能解析
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の骨細胞及び脂肪細胞への分化能を解析するために、以下の実験を行った。
【0059】
まず、骨細胞への分化能を解析するために、6ウェルプレートに臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞をウェルあたり2.5×10
5細胞に分注(seeding)した後、低グルコースDMEM培地(10%ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum、FBS)及び1%P/Sを含む)で24時間培養した。次いで、0.1μMのデキサメタゾン(Dexamethasone)(Sigma D4902)、10μMのβ-グリセロールリン酸(Glycerol phosphate)(Sigma G9891)及び0.25mMのアスコルビン酸(Ascorbic acid;AA)(Sigma A4544)を含む完全な分化培地に交換後21日間培養した。培養終了後、アリザリンレッドS染色(Alizarin Red S Staining)を行い、骨細胞形成の有無を確認した。その結果、ほとんどの細胞が赤色に染色されたことにより、臍帯(へその緒)由来幹細胞が骨細胞に分化したことを確認した(
図3)。
【0060】
次に、脂肪細胞への分化能を解析するために、6ウェルプレートに臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞をウェルあたり1×10
5に分注した後、低グルコースDMEM培地(10%FBS及び1%AAを含む)で24時間培養した。次いで、0.5mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(3-isobutyl-1-methylxanthine;IBMX、Sigma I7018)、1μMヒドロコルチゾン(hydrocortisone、Sigma H0888)及び0.1mMインドメタシン(Indomethacin、Sigma I7378)を完全な分化培地に交換後、21日間培養し、培地を2~3日ごとに交換した。培養が完了した後、オイルレッドO(Oil Red O、Sigma)染色を行い、脂質液滴の形成を確認した。その結果、水滴のように見える大小の物質(脂肪)が赤色に染色されたことにより、臍帯(へその緒)由来幹細胞が脂肪細胞に分化したことを確認した(
図4)。
【0061】
これにより、本発明の一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞が骨細胞及び脂肪細胞への分化能を有していることが分かった。
【0062】
実験例1.3.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の表面マーカー発現分析
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞が幹細胞表面マーカーに対する発現の有無を解析するために、以下の実験を行った。
【0063】
実験例1.3.1.フローサイトメトリーによる解析
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の培養密度が80~90%になったとき、培養培地を除去し、PBSで洗浄した。次いで、トリプシンを添加して細胞を解離した後、PBSでさらに洗浄した。細胞数を数え、蛍光励起セルソーター(fluorescence-activated cell sorter;FACS)緩衝液(PBS+2%FBS)を添加して1×10
6cells/mLとなした後、細胞に陽性マーカー(positive marker)であるCD44(PE)、CD73(FITC)、CD105(APC)、CD90(PE-Cy7)と陰性マーカー(negative marker)であるCD14(PE)、CD19(FITC)、CD45(APC)、CD34(PE-cy7)抗体を反応させた後FACSを用いて臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞の特異的発現マーカーを確認した。その結果、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞は、CD44、CD73、CD105、CD90に対して選択的に陽性を示し、CD14、CD19、CD45、CD34に対して選択的に陰性を示す細胞であることを確認した(
図5)。
【0064】
実験例1.3.2.免疫細胞化学染色による解析
4ウェルチャンバースライド(chamber slide)に保持していた製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞を4%p-ホルムアルデヒドを用いて37℃で20分間固定した後、カルシウムイオン過マグネシウムイオンを含むPBSで2回洗浄した。次いで、PBSに界面活性剤であるToriton X-100を0.1%に希釈して10分間処理した後、PBSで再び洗浄した。非特異的抗体が付着して検出されるのを防ぐために、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin;BSA)を0.1%Triton X-100/PBSで5%に希釈した後、添加する試料に1時間反応させた。
【0065】
抗体は細胞によって付着する抗体の種類が異なり、タンパク質による標的抗体及び希釈率を下記表2に示す。希釈した抗体溶液と共に4℃のシェーカー(shaker)で16時間反応させた。さらに、DAPI(abcam、cat.no.ab104139、1,000倍希釈)を用いて核を染色した。染色が完了した試料は蛍光顕微鏡を用いて画像を得た。その結果、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞は、幹細胞の表面陽性マーカーであるCD44(緑色)を発現し、表面陰性マーカーであるCD34(赤色)は発現しないことを確認した(
図6)。
【0066】
【表2】
これにより、本発明の一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞が幹細胞特異的特性を示すことが分かった。
【0067】
実験例2.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液のセクレトーム解析
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液のセクレトーム(secretome)を解析するために、RayBio Human Cytokine/Growth Factor Antibody(RayBiotech, Noncross, GA, USA)を用いて血清がない状態での臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の成分を確認した。
【0068】
アレイ膜(Array membrane)を室温で30分間ブロッキングバッファでインキュベーションした後、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液2mlを1時間処理した。膜を5回洗浄した後、ビオチン結合(biotin-conjugated)抗体を室温で1~2時間処理し、基質であるHRP結合ストレプトアビジン(Streptavidin)2mlを添加した。2時間経過後、検出バッファ(detection buffer)を2分間処理し、iBright(CL1000 Imaging system、Thermo Scientific)で臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の成分を確認し、その信号強度をiBright Analysis Softwareを用いて測定し、下記表3に示す。
【0069】
【表3】
その結果、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液が様々な増殖因子、サイトカインなどを多数含んでいることを確認した(
図7及び
図8)。具体的には、皮膚再生及び皮膚老化防止に関与するタンパク質であるアディポネクチン(Adiponectin)/Acrp30、血管新生誘導因子(Angiogenin)、アンジオポエチン(Angiopoietin)-1、Angiopoietin-2、Angiopoietin-like 1、Angiopoietin-like 2、アンジオスタチン(Angiostatin)、BMP(Bone Morphogenetic Protein)-2、BMP-3、BMP-4、BMPR(bone morphogenetic protein receptor)-IA/ALK(Anaplastic lymphoma kinase)-3、Csk、CTACK/CCL27(C-C motif chemokine ligand 27)、CXCR2/IL-8 RB(Interleukin 8 receptor, beta)、EDA-A2、EDG-1、EG-VEGF(endocrine-gland-derived vascular endothelial growth factor)/PK1、エンドスタチン(Endostatin)、ErbB4、FGF Basic(basic fibroblast growth factor)、FGF R4、FGF-9、FGF-10/KGF-2、FGF-11、GDF(Growth Differentiation Factor)3、GDF5、GDF9、GDF11、GDF15、GRO-a、HB-EGF(Heparin-binding EGF-like growth factor;ヘパリン結合性EGF様増殖因子)、トロンボスポンジン(Thrombospondin)-1、TIMP(チオイノシンモノホスフェート)-1、TIMP-2及びTMEFF1/Tomoregulin-1を含有していることを確認した。
【0070】
さらに、抗炎症効果及び自己免疫疾患の予防に必要なタンパク質であるCXCR1/IL-8 RA、CXCR5(C-X-C chemokine receptor type 5)/BLR-1、EDG(endothelial diferentiation gene)-1、Fas Ligand、IL-13 1B、HCR(heme-controlled repressor)(CRAM-A/B)、M-CSF(macrophage colony stimulating factor)、MDC、MIP(Macrophage Inflammatory Proteins)-1a、MIP-1b、MIP-2、NAP(neutrophil activating protein)-2、PF(Platelet factor)4/CXCL4、PLUNC(Palate, lung, and nasal epithelium clone protein)、TRADD(Tumor necrosis factor receptor type 1-associated DEATH domain protein)等を含有していることを確認した。
【0071】
実験例3.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の細胞毒性及び細胞増殖効果の評価
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の細胞毒性及び細胞増殖効果を評価するために、ヒト表皮細胞(HaCaT)及びヒト真皮線維芽細胞(HS68)を用いて以下の実験を行った。
【0072】
96ウェルプレートにHaCaT及びHS68をそれぞれウェルあたり1×10
3cells/100μlずつ分注して24時間培養した後、陰性対照群(NC;無処理群)及び実験群として濃度5%、10%、25%、50%、100%の臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液をそれぞれ処理した。各濃度の培養液処理後、3日間毎日同じ時間にCCK-8(Dojindo、CK04-13)試薬を用いて450nmで吸光度を測定することにより細胞活性の変化を観察した。その結果、処理した臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液に濃度依存的にHaCaT(
図9)及びHS68(
図10)の生存率が増加することを確認した。
【0073】
また、96ウェルプレートにHaCaTをそれぞれウェルあたり1×10
3cells/100μlで分注して24時間培養した後、陰性対照群(NC)、比較対照群として比較例1で得られた脂肪由来間葉系幹細胞培養液及び骨髄由来間葉系幹細胞、実験群として臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を100%濃度でそれぞれ処理し、3日後に、細胞の形態を顕微鏡で観察し(
図11)、CCK-8試薬を用いて細胞活性の変化を観察した。その結果、脂肪由来間葉系幹細胞培養液及び骨髄由来間葉系幹細胞培養液を処理した細胞と比較して臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を処理した細胞で生存率が著しく増加したことを確認した(
図12)。
【0074】
これにより、本発明の一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は細胞毒性がなく、細胞増殖を誘導することが分かった。
【0075】
実験例4.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の皮膚傷跡回復効果の確認
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の細胞毒性及び細胞増殖効果を評価するために、ヒト表皮細胞(HaCaT)及びヒト真皮線維芽細胞(HS68)を用いて以下の実験を行った。
【0076】
24ウェルプレートにHaCaTを1ウェルあたり3×10
5cells、HS68を1ウェルあたり2×10
5cellsに分注し、培養密度100%となるように培養した。1000P white tipを用いてウェルの真ん中を掻き、細胞に傷(wound)をつけた後、陰性対照群(NC)及び実験群として濃度5%、10%、25%、50%、100%の臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液をそれぞれ処理した。HaCaT及びHS68それぞれに対して培養液処理直後及び24時間経過後、傷の面積を測定して修復率を確認した。この時点で培養液を処理し、24時間経過後に細胞をクリスタルバイオレット(crystal violet)試薬で染色し、顕微鏡で観察した。その結果、HaCaT(
図13)及びHS68(
図14)に濃度10%以上の臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を処理した場合に傷修復率が統計的に有意に増加することを確認した。
【0077】
また、24ウェルプレートにHaCaTをウェルあたり3×10
5cellsで分注して培養密度100%となるように培養し、前記の方法と同様に傷をつけた後、陰性対照群(NC;無処理群)、比較対照群として比較例1で得られた脂肪由来間葉系幹細胞培養液及び骨髄由来間葉系幹細胞、実験群として臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を100%濃度でそれぞれ処理した。培養液処理直後及び24時間経過後、傷の面積を測定して修復率を確認し、細胞をクリスタルバイオレット試薬で染色し、顕微鏡で観察した。その結果、脂肪由来間葉系幹細胞培養液及び骨髄由来間葉系幹細胞培養液を処理した細胞と比較して臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を処理した細胞の生存率が著しく増加したことを確認した(
図15)。
【0078】
これにより、本発明の一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は細胞の傷修復効果があることが分かった。
【0079】
実験例5.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液のコラーゲン合成効果の確認
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液のコラーゲン合成効果を評価するために、ヒト表皮細胞(HaCaT)及びヒト真皮線維芽細胞(HS68)を用いて以下の実験を行った。
【0080】
実験例5.1.RT-PCRを用いたコラーゲン遺伝子の発現量解析
6ウェルプレートに1ウェルあたりHS68を1.0×105cellsで分注し、24時間培養した。陰性対照群(NC)及び実験群として濃度5%、10%、25%、50%、100%の臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液をそれぞれ処理し、24時間培養した後、コラーゲン合成遺伝子発現量を解析するために、以下のようにリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法(qPCR)を用いた。
【0081】
具体的には、フェノール/クロロホルムを用いてRNAを抽出した。抽出したRNAを逆転写してcDNAを合成した。cDNAの発現の程度は、Applide Biosystems 700 sequence detection system(foster City、CA、USA)上でqPCRを用い解析した。このとき、使用したプライマーは下記表4に記載の通りである。
【0082】
【表4】
qPCRは、95℃で10分、95℃で15秒、及び56℃で1分のサイクルで、25回繰り返した。mRNAレベルをβ-アクチン(β-actin)レベルで正規化して比較した。その結果、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を処理した場合、陰性対照群を処理した場合と比較して、コラーゲン遺伝子COL1A1(
図16)及びCOL3A1(
図17)の発現量が大きく増加したことを確認した。
【0083】
実験例5.2.ELISAを用いたコラーゲン合成促進能の評価
6ウェルプレートに1ウェルあたりHS68を1.0×10
5cellsで分注し、24時間培養した。陰性対照群(NC)、陽性対照群として10ng/mlのTGF-β及び実験群として濃度5%、10%、25%、50%、100%の臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液をそれぞれ処理し、24時間培養した後、培養した培地を遠心分離して上清を得た。Procollagen Type I C-peptide(PICP)ELISA Kit(Takara, Cat.#MK101)を用いてプロコラーゲン合成の程度を解析することにより、コラーゲン合成促進能を確認した。その結果、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞を処理した場合にPICP発現量が著しく増加し、既存にコラーゲン合成促進能があることが知られているTGF-βと比較してもPICP発現量が類似又は増加したことを確認した(
図18)。
【0084】
これにより、本発明の一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液が皮膚シワの改善及び皮膚弾力の増加に効果があることが分かった。
【0085】
実験例6.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の皮膚保湿及び障壁強化効果の確認
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の皮膚保湿及び障壁強化効果を評価するために、ヒト表皮細胞(HaCaT)を用いて以下の実験を行った。
【0086】
6ウェルプレートに1ウェルあたりHaCaTをそれぞれ1.0×106cellsで分注して培養した後、血清を含まない培地に交換した。24時間経過後、陰性対照群(NC)、陽性対照群として1mMのレチノール酸(Retinoic acid;RA、Sigma-aldrich、R2625)及び実験群として濃度5%、10%、25%、50%、100%の臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液をそれぞれ処理した。24時間後、細胞からRNAを分離してcDNAを合成し、実験例5.1に記載した方法と同様の方法でqRT-PCRを行い保湿因子であるAQP3(aquaporin3)、ヒアルロン酸合成酵素(Hyaluronic acid synthase;HAS)-2、HAS-3の発現量を解析した。このとき、使用したプライマーは下記表5に記載の通りである。
【0087】
【表5】
その結果、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を処理した場合に、AQP3、HAS-2、HAS-3の発現量が増加することを確認した(
図19)。さらに、6ウェルプレートに1ウェルあたりHaCaTをそれぞれ1.0×10
6cellssで分注して培養した後、血清を含まない培地に交換した。24時間経過後、陰性対照群(NC)、比較対照群として比較例1で得られた脂肪由来間葉系幹細胞培養液及び骨髄由来間葉系幹細胞、実験群として臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を100%濃度でそれぞれ処理して24時間後、細胞からRNAを分離してcDNAを合成し、前記の方法と同様の方法でqRT-PCRを行い、保湿因子であるAQP3、HAS-2及びHAS-3の発現量を解析した。その結果、脂肪由来間葉系幹細胞培養液及び骨髄由来間葉系幹細胞培養液を処理した細胞と比較して臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を処理した場合に、AQP3、HAS-2、HAS-3の発現量が増加することを確認した(
図20)。
【0088】
皮膚は、ヒアルロン酸などの様々な保湿因子によって障壁機能を果たし、ヒアルロン酸は主にケラチン形成細胞及び線維芽細胞のHASによって合成され、細胞外マトリックスに蓄積する。
【0089】
これにより、本発明の一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は、皮膚保湿効果及びこれを介した皮膚障壁強化効果があることが分かった。
【0090】
実験例7.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の抗炎症効果の確認
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の抗炎症効果を確認するために、マウスマクロファージ(Raw 264.7、ATCC(登録商標)、TIB-71(商品名))を用いて以下の実験を行った。
【0091】
6ウェルプレートに1ウェルあたりRaw 264.7を2.5×105cellsで分注して培養密度が80%になるように培養した後、血清を含まない培地に交換した。24時間経過後、炎症反応を引き起こすために、20μg/mLのリポ多糖体(lipopolysaccharide;LPS)を処理し、陰性対照群(NC)及び実験群として濃度5%、10%、25%、50%、100%の臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液をそれぞれ処理した。
【0092】
24時間後、細胞からRNAを分離してcDNAを合成し、実験例5.1に記載した方法と同様の方法でqRT-PCRを行い、炎症性サイトカインであるTNF-αの発現量を解析した。このとき、使用したプライマーは下記表6に記載の通りである。
【0093】
【表6】
その結果、炎症反応が誘発された細胞に臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を処理した場合に濃度依存的にTNF-α発現量が減少することを確認した(
図21)。これにより、本発明の一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は皮膚炎症反応を抑制する効果があることが分かった。
【0094】
実験例8.臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の抗酸化効果の確認
【0095】
実験例8.1。総抗酸化効果の測定
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液の総抗酸化能(Total antioxidant status)を測定するために陰性対照群(NC)、比較対照群として比較例1で取得した100%濃度の脂肪由来間葉系幹細胞培養液及び100%濃度の骨髄由来間葉系幹細胞培養液、実験群として濃度5%、10%、25%、50%、100%の臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液に対して以下のように、Trolox equivalent antioxidant capacity法を実施してTACを測定した。
【0096】
抗酸化剤には、酵素系(GSH還元酵素、カタラーゼ、ペルオキシダーゼなど)、低分子(アスコルベート、尿酸、GSH、ビタミンEなど)及びタンパク質(アルブミン、トランスフェリンなど)の3種類がある。Troloxは酸化防止剤を標準化するために使用され、他のすべての酸化防止剤はTrolox等価物として測定される。低分子抗酸化剤とタンパク質又は低分子単独の組み合わせを測定することができるTotal Antioxidant Capacity Assay Kitを用いて測定し、Cu2+イオンは低分子及びタンパク質の両方によってCu+に変換される。Protein Maskは、タンパク質によるCu2+の減少を防ぎ、低分子抗酸化剤のみを解析することができる。還元されたCu+イオンは比色プローブ(probe)であり、キレート化されて全酸化防止剤の容量に比例して約570nmの広い吸光ピークを提供する。酸性pHで無色の還元型2,2′アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(2,2′-azinobis(3-ethylbenzothiazo-thiazoline-6-sulfonate;ABTS))は過酸化水素によってターコイズ色のABTSに酸化される。試料中に抗酸化物質が存在する場合、これらの濃度に比例してABTSは脱色され、この色変化反応の結果は570nmでの吸光度で照射して測定される。試料の物質のTAC測定のために、Troloxを標準試薬として使用して標準曲線を作成した。Troloxは総抗酸化能測定に広く使用されている典型的な標準試薬であり、TAC活性はTrolox equivalentと表記した。
【0097】
96ウェルプレートにCu2+ Reagent、試料及びProtein maskを混ぜて200μlになるように入れ、90分間暗条件でオービタルシェーカー(Orbital shaker)で反応させた後、570nmで吸光度で照射して測定した。
【0098】
その結果、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を処理した場合に濃度依存的にABTSラジカル(radical)の消去活性が増加し、脂肪由来間葉系幹細胞培養液及び骨髄由来間葉系幹細胞培養液を処理した細胞と比較して著しく抗酸化物質が増加したことを確認した(
図22)。
【0099】
実験例8.2.細胞内活性酸素種(ROS)消去効果
製造例1で得られた臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液が細胞内活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)産生に及ぼす効果を調べるために、カルボキシ-H2DCFDAを含むROS検出キット(Abcam)を使用して以下のように実験した。
【0100】
DCFH-DA(Dichlorodihydrofluorescin diacetate)は容易に細胞膜を貫通し、細胞内に拡散して細胞内のエステラーゼによって蛍光を失ったDCFHに加水分解され、その後ROSが存在する環境で高い蛍光を発するDCFに速やかに酸化される。したがって、DCFの蛍光強度は細胞内のROSの量に比例する。
【0101】
ヒト真皮線維芽細胞(HS68)を24ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり2.5×104cellsに分注し、10%のFBSを含む培地及び37℃、5%のCO2条件のインキュベーターで24時間培養した。次いで、陰性対照群(NC)、陽性対照群として250μMのアスコルビン酸(Vit.C)、比較対照群として過酸化水素及び実験群として濃度5%、10%、25%、50%、100%の臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液をそれぞれ添加し、24時間培養した。
【0102】
24時間後、25μMのDCFH-DAを同時に添加し、37℃で45分間反応させた後、50μM TBHP(Tert-Butyl Hydrogen Peroxide)溶液を処理し、37℃で1分~5分間反応させた。1×PBSで1回洗浄した後、各ウェルに1×PBSを100μlで添加し、蛍光顕微鏡写真を撮影し、蛍光プレートリーダーを用いて励起(excitation)波長485nm及び発光(emission)波長528nmで蛍光値を測定した。
【0103】
その結果、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を添加した場合には、過酸化水素によりROSレベルが増加した酸化損傷誘導群に比べてROSレベルが有意に低いことを確認した(
図23)。これは、臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液を予め添加することによって、ヒト真皮線維芽細胞内の抗酸化システム活性の増加により、同じ濃度の過酸化水素にさらされても低レベルのROSをほうし保持することができることを意味する。
【0104】
これにより、本発明の一実施形態による臍帯(へその緒)由来間葉系幹細胞培養液は皮膚抗酸化効果があることが分かった。
【配列表】
【国際調査報告】