(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】干渉物質信号が低減された検体センサ及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1486 20060101AFI20231227BHJP
A61B 5/1473 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61B5/1486
A61B5/1473
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538933
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021037322
(87)【国際公開番号】W WO2022139876
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ホス ウード
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン ティエンメイ
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン ベンジャミン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】チアン スーユエ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL02
4C038KL09
4C038KY06
4C038KY08
4C038KY11
(57)【要約】
検体センサは、近位端と遠位端とを備える細長本体を有する電極層を備える。電極層は、第1の活性作動電極区域と、第2の電極部分と、第1の活性作動電極部分及び第2の電極部分を電気的に分離する少なくとも1つのギャップとを含む。第1の活性作動電極区域は、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポットを備える。追加の検体センサを開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体センサであって、
近位端と遠位端とを備える細長本体を有する電極層であって、第1の活性作動電極区域と、第2の電極部分と、該第1の活性作動電極部分及び該第2の電極部分を電気的に分離する少なくとも1つのギャップとを含む前記電極層、
を備え、
前記第1の活性作動電極区域は、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポットを備える、
ことを特徴とする検体センサ。
【請求項2】
前記第1の活性作動電極区域は、複数の感知スポットを備えることを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項3】
前記第1の活性作動電極区域の前記少なくとも1つの感知スポット上に配置される前記少なくとも1つの検体反応酵素は、グルコース反応酵素であることを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項4】
前記電極層内の前記少なくとも1つのギャップは、U字形であり、かつ前記第1の活性作動電極区域の第1の側で前記細長本体の前記近位端から該電極層の該細長本体の遠位端の近くまで延び、かつ該第1の活性作動電極区域の第2の側で該細長本体の該近位端まで戻るように延びることを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのギャップは、前記第1の活性作動電極区域の両側で前記電極層の前記細長本体の前記近位端から該電極層の該細長本体の前記遠位端まで延びる2つの横方向に離間したギャップを備えることを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項6】
前記電極層内の前記少なくとも1つのギャップは、波形パターン、巻きパターン、曲線パターン、起伏パターン、又はしわパターンを備えることを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項7】
前記電極層内の前記少なくとも1つのギャップは、約1μmから約100μmの幅を有することを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのギャップは、前記電極層の製作中に該電極層に形成されることを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのギャップは、前記電極層内にレーザ切断されることを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項10】
前記第1の活性作動電極区域は、第1のセンサ電流導電トレースに接続され、前記電極層の前記第2の電極部分は、センサ電流導電トレースに接続されないことを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項11】
前記第1の活性作動電極区域は、第1のセンサ電流導電トレースに接続され、前記電極層の前記第2の電極部分は、第2のセンサ電流導電トレースに接続されることを特徴とする請求項1に記載の検体センサ。
【請求項12】
前記第2の電極部分は、1又は2以上の干渉物質を酸化するように構成されたスクラブ電極であることを特徴とする請求項11に記載の検体センサ。
【請求項13】
前記干渉物質は、アスコルビン酸、グルタチオン、尿酸、アセトアミノフェン、イソニアジド、サリチラート、及びその組合せから構成される群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の検体センサ。
【請求項14】
前記干渉物質は、アスコルビン酸であることを特徴とする請求項13に記載の検体センサ。
【請求項15】
検体センサであって、
近位端と遠位端とを備える細長本体を有する電極層であって、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された複数の感知スポットを有する第1の活性作動電極区域を含む前記電極層、
を備え、
前記第1の活性作動電極区域内の第1及び第2の隣接する感知スポットが、重複する構成にある、
ことを特徴とする検体センサ。
【請求項16】
前記第1の活性作動電極区域内の第3及び第4の隣接する感知スポットが、重複する構成にあることを特徴とする請求項15に記載の検体センサ。
【請求項17】
前記第1の活性作動電極区域内の全ての前記複数の感知スポットは、重複する構成にあることを特徴とする請求項15に記載の検体センサ。
【請求項18】
前記複数の感知スポットのうちの各々の形状が、実質的に球形、円形、正方形、矩形、三角形、円錐形、又は楕円形、又はその組合せであることを特徴とする請求項15に記載の検体センサ。
【請求項19】
前記第1の活性作動電極区域内の第1、第2、及び第3の感知スポットが、重複する構成にあることを特徴とする請求項15に記載の検体センサ。
【請求項20】
前記第1の活性作動電極区域内の前記複数の感知スポットは、線形構成にあることを特徴とする請求項15に記載の検体センサ。
【請求項21】
前記第1の活性作動電極区域内の前記複数の感知スポットは、非線形構成にあることを特徴とする請求項15に記載の検体センサ。
【請求項22】
前記第1の活性作動電極区域内の前記複数の感知スポットは、格子構成にあることを特徴とする請求項15に記載の検体センサ。
【請求項23】
前記第1の活性作動電極区域の前記複数の感知スポットの上に配置される前記少なくとも1つの検体反応酵素は、グルコース反応酵素であることを特徴とする請求項15に記載の検体センサ。
【請求項24】
第1の部分と第2の露出部分とを備える上面を有する基板と、
前記基板の前記上面の前記第1の部分の上に配置された電極層であって、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポットを備える第1の活性作動電極区域を含む前記電極層と、
前記電極層の少なくとも一部分と前記基板の前記上面の前記第2の露出部分とを覆う膜と、
を備えることを特徴とする検体センサ。
【請求項25】
前記基板は、ポリエステル又はポリイミドから選択されるポリマー材料を備えることを特徴とする請求項24に記載の検体センサ。
【請求項26】
前記ポリマー材料は、ポリエステルであることを特徴とする請求項25に記載の検体センサ。
【請求項27】
前記基板の前記上面の前記第2の露出部分の少なくとも一部分が粗面化されることを特徴とする請求項24に記載の検体センサ。
【請求項28】
前記膜は、ポリマー材料、架橋剤、及びその組合せから選択される材料を備えることを特徴とする請求項24に記載の検体センサ。
【請求項29】
前記ポリマー材料は、ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを備えることを特徴とする請求項28に記載の検体センサ。
【請求項30】
前記第1の活性作動電極区域の前記感知スポットの上に配置される前記少なくとも1つの検体反応酵素は、グルコース反応酵素であることを特徴とする請求項24に記載の検体センサ。
【請求項31】
検体センサであって、
基板と、
前記基板上に配置された電極層であって、該電極層が、近位端と遠位端とを備える細長本体を有し、第1の活性作動区域を含む該電極層が、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポットを備え、該第1の活性作動電極区域が、センサ電流導電トレースに接続される前記電極層と、
センサの少なくとも一部分の上に配置され、かつスルホン化テトラフルオロエチレベースのフルオロポリマーを備える干渉物質障壁膜層であって、干渉物質障壁膜が、少なくとも1つの干渉物質の干渉物質信号を低減するように構成される前記干渉物質障壁膜層と、
を備えることを特徴とする検体センサ。
【請求項32】
前記電極層の上に配置された第2の膜層、
を更に備え、
前記干渉物質障壁膜層は、前記第2の膜層の上に配置される、
ことを特徴とする請求項31に記載の検体センサ。
【請求項33】
前記第2の膜層は、ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを備えることを特徴とする請求項32に記載の検体センサ。
【請求項34】
前記干渉物質障壁膜層は、前記第2の膜層上に被覆されることを特徴とする請求項32に記載の検体センサ。
【請求項35】
前記少なくとも1つの干渉物質は、アスコルビン酸、グルタチオン、尿酸、アセトアミノフェン、イソニアジド、サリチラート、及びその組合せから構成される群から選択されることを特徴とする請求項33に記載の検体センサ。
【請求項36】
前記干渉物質は、アスコルビン酸であることを特徴とする請求項35に記載の検体センサ。
【請求項37】
前記干渉物質信号は、電極電位が約-100mVから約+100mVの範囲にある時に全体信号の約5%未満まで低減されることを特徴とする請求項36に記載の検体センサ。
【請求項38】
前記干渉物質信号は、電極電位が約-80mVから約+80mVの範囲にある時に全体信号の約3%又はそれ未満まで低減されることを特徴とする請求項36に記載の検体センサ。
【請求項39】
前記第1の活性作動電極区域の前記少なくとも1つの感知スポット上に配置される前記少なくとも1つの検体反応酵素は、グルコース反応酵素であることを特徴とする請求項37に記載の検体センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
この出願は、引用によって本明細書にその全体が組み込まれている2020年12月23日出願の米国仮特許出願第63/129,874号に対する優先権及びその利益を主張するものである。
【0002】
本明細書に説明する主題は、一般的に、検体レベルの生体内モニタのためのシステム、デバイス、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
個体内の様々な検体の検出は、彼らの健康状態をモニタするのに時に不可欠である可能性がある。正常検体レベルからの偏差は、多くの場合にいくつかの生理学的条件を示す可能性がある。例えば、グルコースレベルは、糖尿病個人での検出及びモニタに特に重要とすることができる。グルコースレベルを十分に定期的にモニタすることにより、糖尿病個人は、有意な生理学的障害が発生する前に是正アクションを取ることができる場合がある(例えば、インスリンを注射してグルコースレベルを低下させることにより、又は摂食してグルコースレベルを上昇させることにより)。他の検体のモニタは、他の様々な生理学的条件に対して望ましい場合がある。複数の検体のモニタも、一部の事例では、特に2又は3以上の検体の互いとの組合せでの同時調節障害をもたらす共存症条件に関して望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第2011/0213225号明細書
【特許文献2】米国特許第8,983,568号明細書
【特許文献3】米国特許第6,605,200号明細書
【特許文献4】米国特許第8,268,143号明細書
【特許文献5】米国特許出願第2020/0237275号明細書
【特許文献6】米国特許出願第16/774,835号明細書
【特許文献7】米国特許出願第20190320947号明細書
【特許文献8】米国特許出願第20200060592号明細書
【特許文献9】米国特許第6,134,461号明細書
【特許文献10】米国特許第6,736,957号明細書
【特許文献11】米国特許第7,501,053号明細書
【特許文献12】米国特許第7,754,093号明細書
【特許文献13】米国特許第8,444,834号明細書
【特許文献14】米国特許第6,605,201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの検体は、適切な検出化学作用を識別することができるという前提で生理学的分析に対して興味深いターゲットを表すものである。この目的に対して、様々な生理学的検体を検定するように構成された生体内検体センサが開発されて近年にかけて改善されており、その多くは、検出特異性を促進させるために酵素ベースの検出戦略を利用している。実際に、血中グルコースレベルをモニタするためにグルコース反応酵素を利用する生体内検体センサは、糖尿病個人の間で今日一般的に使用されている。複数の検体をモニタすることができる生体内検体センサを含む他の検体のための生体内検体センサは、開発の様々なステージにある。一部の検体センサに対する不十分な感度は、特に作動電極又は他の検体感知化学成分との干渉物質の相互作用から生じる背景信号に起因して問題である場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開示の主題の目的及び利点は、以下の説明に列挙され、かつそこから明らかであり、並びに本発明の開示の主題の実施によって知得されるであろう。本発明の開示の主題の追加の利点は、本文書及びその特許請求の範囲に具体的に指摘する方法及びシステムにより、並びに添付図面から認識され、かつ取得されるであろう。
【0007】
これら及び他の利点を達成するためにかつ本発明の開示の主題の目的に従って、実施されるようにかつ広義に説明するように、本発明の開示の主題は、近位端と遠位端とを備える細長本体を有する電極層を含む検体センサに関する。電極層は、第1の活性作動電極区域と、第2の電極部分と、第1の活性作動電極部分及び第2の電極部分を電気的に分離する少なくとも1つのギャップとを含む。第1の活性作動電極区域は、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポットを備える。
【0008】
一部の実施形態では、第1の活性作動電極区域は、複数の感知スポットを含むことができる。第1の活性作動電極区域の少なくとも1つの感知スポット上に配置される少なくとも1つの検体反応酵素は、グルコース反応酵素とすることができる。
【0009】
一部の実施形態では、電極層内の少なくとも1つのギャップはU字形であり、第1の活性作動電極区域の第1の側で細長本体の近位端から電極層の細長本体の遠位端の近くまで延び、かつ第1の活性作動電極区域の第2の側で細長本体の近位端まで戻るように延びる。これに加えて又はこれに代えて、少なくとも1つのギャップは、第1の活性作動電極区域の両側で電極層の細長本体の近位端から電極層の細長本体の遠位端まで延びる2つの横方向に離間したギャップを含むことができる。電極層内の少なくとも1つのギャップは、波形パターン、巻きパターン、曲線パターン、起伏パターン、又はしわパターンを含むことができる。電極層内の少なくとも1つのギャップは、約1μmから約100μmの幅を有することができる。
【0010】
一部の実施形態では、少なくとも1つのギャップは、電極層の製作中に電極層に形成することができる。例えば、少なくとも1つのギャップは、電極層にレーザ切断することができる。
【0011】
一部の実施形態では、第1の活性作動電極区域は、第1のセンサ電流導電トレースに接続することができ、電極層の第2の電極部分は、センサ電流導電トレースに接続されない。これに代えて、第1の活性作動電極区域は、第1のセンサ電流導電トレースに接続することができ、電極層の第2の電極部分は、第2のセンサ電流導電トレースに接続することができる。第2の電極部分は、1又は2以上の干渉物質を酸化するように構成されたスクラブ電極とすることができる。
【0012】
一部の実施形態では、干渉物質は、アスコルビン酸、グルタチオン、尿酸、アセトアミノフェン、イソニアジド、サリチラート、及びその組合せから構成される群から選択することができる。例えば、干渉物質は、アスコルビン酸とすることができる。
【0013】
本発明の開示の主題はまた、近位端と遠位端とを備える細長本体を有する電極層を含む検体センサに関する。電極層は、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された複数の感知スポットを有する第1の活性作動電極区域を含む。第1の活性作動電極区域内の第1及び第2の隣接する感知スポットは、重複構成にある。検体センサは、上記の検体センサに関して説明した特徴のいずれかを含むことができる。
【0014】
一部の実施形態では、第1の活性作動電極区域内の第3及び第4の隣接する感知スポットは、重複構成にあるとすることができる。これに加えて、第1の活性作動電極区域内の全ての複数の感知スポットは、重複構成にあるとすることができる。
【0015】
一部の実施形態では、複数の感知スポットの各々の形状は、実質的に球形、円形、正方形、矩形、三角形、円錐形、又は楕円形、又はその組合せとすることができる。第1の活性作動電極区域内の第1、第2、及び第3の感知スポットは、重複構成にあるとすることができる。
【0016】
一部の実施形態では、第1の活性作動電極区域内の複数の感知スポットは、線形構成にあるとすることができる。これに代えて、第1の活性作動電極区域内の複数の感知スポットは、非線形構成にあるとすることができる。第1の活性作動電極区域内の複数の感知スポットは、格子構成にあるとすることができる。
【0017】
一部の実施形態では、第1の活性作動電極区域の複数の感知スポットの上に配置される少なくとも1つの検体反応酵素は、グルコース反応酵素とすることができる。
【0018】
本発明の開示の主題はまた、第1の部分と第2の露出部分とを備える上面を有する基板と、基板の上面の第1の部分の上に配置された電極層と、電極層の少なくとも一部分及び基板の上面の第2の露出部分を覆う膜とを含む検体センサに関する。電極層は、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポットを備える第1の活性作動電極区域を含む。検体センサは、上記で検体センサに関して説明した特徴のいずれかを含むことができる。
【0019】
一部の実施形態では、基板は、ポリエステル及びポリイミドから選択されるポリマー材料を含むことができる。例えば、ポリマー材料は、ポリエステルとすることができる。
【0020】
一部の実施形態では、基板の上面の第2の露出部分の少なくとも一部分は、粗面化することができる。基板の上面の第2の露出部分は、いずれかの適切な粗度値を有することができる。
【0021】
一部の実施形態では、膜は、ポリマー材料、架橋剤、及びその組合せから選択される材料を含むことができる。例えば、ポリマー材料は、ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含むことができる。第1の活性作動電極区域の感知スポットの上に配置される少なくとも1つの検体反応酵素は、グルコース反応酵素とすることができる。
【0022】
本発明の開示の主題はまた、基板と、基板上に配置された電極層であって、近位端と遠位端とを備える細長本体を有する上記電極層と、センサの少なくとも一部分の上に配置され、かつスルホン化テトラフルオロエチレベースのフルオロポリマーを備える干渉物質障壁膜層とを含む検体センサに関する。電極層は、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポットを備える第1の活性電極区域を含む。第1の活性作動電極区域は、センサ電流導電トレースに接続される。干渉物質障壁膜は、少なくとも1つの干渉物質の干渉物質信号を低減するように構成される。
【0023】
一部の実施形態では、検体センサはまた、電極層の上に配置された第2の膜層を含むことができ、干渉物質障壁膜層は、第2の膜層の上に配置される。第2の膜層は、ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含むことができる。干渉物質障壁膜層は、第2の膜層上に被覆することができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの干渉物質は、アスコルビン酸、グルタチオン、尿酸、アセトアミノフェン、イソニアジド、サリチラート、及びその組合せから構成される群から選択することができる。例えば、干渉物質は、アスコルビン酸とすることができる。干渉物質信号は、電極電位が約-100mVから約+100mVの範囲にある時に全体信号の約5%未満まで低減することができる。例えば、干渉物質信号は、電極電位が約-80mVから約+80mVの範囲にある時に全体信号の約3%又はそれ未満まで低減することができる。第1の活性作動電極区域の少なくとも1つの感知スポット上に配置される少なくとも1つの検体反応酵素は、グルコース、アセチルコリン、アミラーゼ、ビリルビン、コレステロール、絨毛性ゴナドトロピン、クレアチンキナーゼ(例えば、CK-MB)、クレアチン、DNA、フルクトサミン、グルコース、グルタミン、成長ホルモン、ホルモン、ケトン(例えば、ケトン体)、ラクタート、酸素、過酸化物、前立腺特異抗原、プロトロンビン、RNA、甲状腺刺激ホルモン、トロポニン、アルコール、アスパルタート、アスパラギン、及びカリウム、又はクレアチニン反応酵素とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の開示のある一定の態様を示すために以下の図を含めるが、これらの図を限定的な実施形態と捉えるべきではない。開示する主題は、本発明の開示の範囲から逸脱することなく形態及び機能のかなりの修正、変更、組合せ、及び均等物を受け入れる余地がある。
【0025】
【
図1】本発明の開示の検体センサを組み込む場合がある例示的感知システムの図である。
【
図2A】単一活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図2B】単一活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図2C】単一活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図3A】2つの活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図3B】2つの活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図3C】2つの活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図4】各々がその上に存在する活性区域を有する2つの作動電極を備える検体センサの断面図である。
【
図5】その上に活性区域を有する従来の炭素作動電極の上面図である。
【
図6A】その上に膜が配置されていない作動電極の上面視の写真である。
【
図7A】膜がその上に配置された作動電極の上面視の写真である。
【
図8】本発明の開示の1又は2以上の態様によるレーザ平坦化された作動電極の3D表示を示す写真である。
【
図9A】干渉物質-反応種を組み込んでいない従来のセンサの図である。
【
図9B】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質-反応種を組み込んだ
図9Bのセンサの図である。
【
図10】本発明の開示の1又は2以上の態様によるスクラブ電極を備えるセンサ電極構成の図である。
【
図11】本発明の開示の1又は2以上の態様による透過性スクラブ電極を備えるセンサ電極構成の図である。
【
図12】本発明の開示の1又は2以上の態様による不透過性スクラブ電極と透過性スクラブ電極とを備えるセンサ電極構成の図である。
【
図13A】膜及び活性区域がその上に配置されていない作動電極の上面視の写真である。
【
図13C】本発明の開示の1又は2以上の態様によるレーザ平坦化後の
図13Aの作動電極の上面視の写真である。
【
図14A】本発明の開示の1又は2以上の態様によるレーザ平坦化の後の膜及び活性区域がその上に配置されていない作動電極の上面視の写真である。
【
図15】干渉物質であるアスコルビン酸に反応して活性区域を有するか又はそれを欠くかのいずれかの平坦化された作動電極と非平坦化作動電極とを比較する対合差異試験のグラフである。
【
図16A】レーザ平坦化されていない作動電極の写真である。
【
図16B】本発明の開示の1又は2以上の態様に従ってレーザ平坦化された作動電極の写真である。
【
図16C】レーザ平坦化されていない作動電極の写真である。
【
図16D】本発明の開示の1又は2以上の態様に従ってレーザ平坦化された作動電極の写真である。
【
図16E】本発明の開示の1又は2以上の態様に従ってレーザ平坦化された作動電極の写真である。
【
図17】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質-反応種層の包含のためのセンサ構成の図である。
【
図18】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質-反応種層を備える
図17の検体センサに関するアスコルビン酸較正曲線の図である。
【
図19】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質-反応種層を備える
図17の検体センサのグルコース較正曲線の図である。
【
図20】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質-反応種層の包含のためのセンサ構成の図である。
【
図21】本発明の開示の1又は2以上の態様によるスクラブ電極を備えるセンサのセンサ電流トレースである。
【
図22】本発明の開示の1又は2以上の態様によるスクラブ電極を備えるセンサのセンサ電流トレースである。
【
図23】本発明の開示の1又は2以上の態様によるスクラブ電極を備えるセンサのセンサ電流トレースである。
【
図24】本発明の開示の1又は2以上の態様によるスクラブ電極を備えるセンサのセンサ電流トレースである。
【
図25】本発明の開示の1又は2以上の態様による透過性スクラブ電極の包含のためのセンサ構成の図である。
【
図26】本発明の開示の1又は2以上の態様による
図25のセンサのセンサ電流トレースである。
【
図27A】本発明の開示の1又は2以上の態様によるU字形ギャップをその上に有する電極層の上面図である。
【
図27B】本発明の開示の1又は2以上の態様による波形U字形ギャップをその上に有する電極層の上面図である。
【
図27C】本発明の開示の1又は2以上の態様による横方向離間ギャップをその上に有する電極層の上面図である。
【
図28】本発明の開示の1又は2以上の態様による第2のスクラブ電極トレースに接続された第2の電極部分を有する電極層の上面図である。
【
図29A】本発明の開示の検体センサに使用するのに適する炭素作動電極の活性区域格子構成の断面図である。
【
図30A】活性区域をその上に有する作動電極の上面図である。
【
図30B】干渉物質信号を低減するように炭素作動電極及びその上の活性区域を強化することを可能にする処理を示す図である。
【
図30C】干渉物質信号を低減するように炭素作動電極及びその上の活性区域を強化することを可能にする処理を示す図である。
【
図30D】干渉物質信号を低減するように炭素作動電極及びその上の活性区域を強化することを可能にする処理を示す図である。
【
図30E】干渉物質信号を低減するように炭素作動電極及びその上の活性区域を強化することを可能にする処理を示す図である。
【
図30F】干渉物質信号を低減するように炭素作動電極及びその上の活性区域を強化することを可能にする処理を示す図である。
【
図31A】重複構成にある第1及び第2の隣接感知スポットを含む活性区域をその上に有する作動電極の上面図である。
【
図31B】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある第1及び第2の隣接感知スポットの構成を含む例示的実施形態の上面図である。
【
図31C】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある第1及び第2の隣接感知スポットの構成を含む例示的実施形態の上面図である。
【
図31D】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある第1及び第2の隣接感知スポットの構成を含む例示的実施形態の上面図である。
【
図31E】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある第1及び第2の隣接感知スポットの構成を含む例示的実施形態の上面図である。
【
図31F】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある第1及び第2の隣接感知スポットの構成を含む例示的実施形態の上面図である。
【
図32A】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある少なくとも2つの隣接感知スポットの構成を含む例示的実施形態の上面図である。
【
図32B】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある少なくとも2つの隣接感知スポットの構成を含む例示的実施形態の上面図である。
【
図32C】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある少なくとも2つの隣接感知スポットの構成を含む例示的実施形態の上面図である。
【
図32D】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある少なくとも2つの隣接感知スポットの構成を含む例示的実施形態の上面図である。
【
図33】本発明の開示の1又は2以上の態様による重複構成にある少なくとも3つの隣接感知スポットを備える例示的実施形態の上面図である。
【
図34A】本発明の開示の1又は2以上の態様による従来の作動電極とその上に配置された膜とを有する基板を有する例示的実施形態の断面図である。
【
図34B】粗い第2の露出部分を有する基板を示す
図34Aの実施形態の上面図である。
【
図35A】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質障壁膜層を備えるセンサ構成の図である。
【
図35B】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質障壁膜層を備えるセンサ構成の図である。
【
図36A】本発明の開示の1又は2以上の態様による検体センサと対照検体センサとに関する信号対時間のグラフである。
【
図36B】本発明の開示の1又は2以上の態様による検体センサと対照検体センサとに関する信号対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の開示は、一般的に生体内使用のための検体センサを説明し、より具体的には、検出感度の改善を促進するために干渉物質種を示す信号を低減するか又は排除するための1又は2以上の強化を特徴とする検体センサ及びその製造方法及び使用方法を説明する。
【0027】
そのような強化は、センサテール(センサのうちで組織内への挿入のための部分)の上で干渉物質が反応して検体に関係のない信号に寄与する可能性がある作動電極面の利用可能性、特に、センサテール上の炭素作動電極の利用可能性を低減することを含むことができる。検体センサの他の構成要素が干渉物質と反応して炭素作動電極での信号に寄与する可能性もある。本発明の開示の態様は、炭素作動電極との干渉物質の相互作用を防止するために干渉物質と反応する化合物を含む凹凸を炭素作動電極から平坦化する段階、及び/又は炭素作動電極との干渉物質の相互作用を防止するために干渉物質と反応するスクラブ電極の追加を単独で又は組合せで含む。1又は2以上の態様では、この出願で説明する強化は、干渉物質に対するセンサの感度を低減すること(例えば、作動電極で干渉物質が信号を発生させることを抑制するか又は低減することにより、例えば、感知化学作用及び/又は膜を用いて余剰炭素電極面を排除することにより)、及び/又は作動電極で干渉物質の局所濃度を低減することができる(例えば、干渉物質が作動電極に到達しないか又は実質的に到達しないように干渉物質を「事前反応させる」ことにより)。必要ではないが、着目検体の信号が損なわれない時に、この出願で説明する強化のうちの1つ又は全てを着目干渉物質の酸化電位よりも下の低い作用電位を有する作動電極との組合せで使用することができる。一部の事例では、低電位作動電極を組み込む検体センサは、そのような低作用電位の着目検体信号の検出を強化するために低電位酸化還元媒介剤を更に組み込む場合がある。更に、本発明の開示の態様は、作動電極の下方で膜を基板に確実に付着させるための基板層の処理を単独で又は組合せで含む。
【0028】
この出願で説明する検体センサは、少なくとも1つの作動電極、特に炭素作動電極とその上に配置された活性区域とを含むセンサテールを含む。更に、炭素作動電極上に質量輸送制限膜が配置される(すなわち、センサテールを形成する活性区域とそれを欠くいずれかの外来炭素作動電極との両方の上に配置される)。本発明の開示の態様は、上面と第2の露出面とを有する基板を含む本明細書に説明する検体センサを含む。特に、基板は、その上面の第1の部分の上に配置された少なくとも1つの炭素電極を備える。本発明の開示の態様は、炭素作動電極と基板の第2の露出面の少なくとも一部分との上に配置された膜を単独で又は組合せで含む。
【0029】
炭素作動電極の縁部に沿って様々な炭素電極凹凸が存在する場合があり、その場合に、これらの凹凸は、質量輸送制限膜で不十分にしか被覆されず又は全く被覆されず、それによって干渉物質が反応を受けて作動電極での測定信号に寄与する原因になる炭素面を与える場合がある。この出願に使用する場合に「凹凸」という用語及びその文法的変形は、面に沿う(例えば、作動電極に沿う)粗い縁部を意味する。凹凸は、作動電極の縁部に沿うリッジの形態にあり、それによってこの場所で質量輸送制限膜の不十分なコーティングを招く可能性がある。そのような干渉物質信号を低減するか又は排除するために、本発明の開示は、炭素凹凸を除去するための炭素作動電極の1又は2以上の縁部の平坦化を可能にし、それによって作動電極面のより均一なプロファイルを与える。そのような凹凸は、作動電極が炭素以外の材料から形成される場合にも、特定の作動電極の組成中に同じく存在する場合がある(「電極凹凸」)。
【0030】
炭素凹凸を除去するために炭素作動電極の1又は2以上の縁部を平坦化することとは別々に又はそれとの組合せで、本発明の開示は、作動電極への干渉物質の接近を防止するか又は低減するための1又は2以上の手段を含む検体センサを更に提供する。特に、着目干渉物質と反応してそれが作動電極での測定信号に寄与することができないように当該干渉物質を不活性にする1又は2以上の酵素化合物又は化学化合物を検体センサの中に組み込むことができる。これに代えて又はここでもまた組合せで、着目干渉物質と反応してそれが作動電極での測定信号に寄与することができないように当該干渉物質を不活性にするスクラブ電極を検体センサの中に組み込むことができる。
【0031】
これに加えて、電極層の非活性部分が着目干渉物質と事前反応してそれが活性作動電極区域での測定信号に寄与することができないように当該干渉物質を不活性にする1又は2以上のギャップのような1又は2以上の物理的特徴部を別々に又は組合せで検体センサの中に組み込むことができる。更に、本発明の開示は、センサテール(センサのうちで組織内への挿入のための部分)上の活性作動電極面のうちで干渉物質が反応して検体と無関係な信号に寄与する場合がある利用可能な面積、特に炭素作動電極の利用可能性を下記で説明する作動電極の構成を設けることによって低減した検体センサを別々に又は組合せで提供する。
【0032】
本明細書では、各タイプの強化の具体的な詳細及び更に別の利点をより詳細に説明する。本発明の開示の検体センサは、特定の必要性に依存して1つの検体を検出するか又は複数の検体を同時又はほぼ同時に検出するように構成することができる。
【0033】
グルコースのような単一検体を検定する場合に、特定の基質又は基質部類に対する酵素の高頻度の特異性に起因して酵素利用検出を使用する検体センサが一般的に使用される。この目的で、単一酵素と、協働的に作用する複数の酵素を備える酵素システムとの両方を使用する検体センサを使用することができる。本明細書に使用する場合に「協働的」という用語及びその文法的変形は、第1の酵素反応の生成物が第2の酵素反応に対する基質になり、第2の酵素反応又はその後の酵素反応が検体の濃度を測定するためのベースとして働きをする共役酵素反応を意味する。更に、1よりも多いタイプの検体を検出するために酵素及び/又は酵素システムの組合せを使用することができる。検出を促進するための酵素又は酵素システムを特徴とする検体センサを使用することは、検体をモニタするのに他に必要とされる可能性がある体液の頻繁な抜き取りを回避することで特に有利である可能性がある。
【0034】
生体内検体センサは、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、又は羊水などのような着目生体液中の1又は2以上の検体をモニタする。そのような流体は、検体センサの作動電極と作動電極(例えば、炭素作動電極)自体の上で直接に又は電極上に配置された1又は2以上の感知化学成分(例えば、下記で説明する酸化還元ポリマー)とのいずれかで反応することができる1又は2以上の干渉物質を備える場合がある。本明細書に使用する場合に「干渉物質」という用語及びその文法的変形は、体液(例えば、間質液など)中にある着目検体ではないいずれかの存在電気活性種(例えば、着目検体ではない生体内電気活性種)を意味する。その例は、アスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオン、尿酸、パラセタモール(アセトアミノフェン)、イソニアジド、及びサリチラートなど、及びこれらのあらゆる組合せを含むがそれらに限定されない。これらの干渉物質と作動電極との反応は、着目検体から発する信号から分離不能又は簡単には分離することができない電気化学信号を発生させる可能性があり、これは、そのような検体、特に低含量(例えば、低濃度からミリモル以下の濃度まで)のものの正確な検出が複雑になる可能性がある。干渉物質が発生させる電気化学信号は、干渉物質からの信号の強度がターゲット検体からの信号のものに近くなる時に特に問題になる可能性がある。この問題は、例えば、干渉物質の濃度が着目検体の濃度に近づく又はそれよりも高い時に発生する場合がある。いくつかの干渉物質は生体内に遍在し、簡単には避けられない。従って、生体内検定中にこれらの干渉物質の影響を最小にする技術は非常に望ましいとすることができる。
【0035】
本発明の開示は、下記でより詳細に説明するように単一検体と互いの組合せでの複数の検体との両方に対する検出感度を単独又は組合せのいずれかで改善することができる検体センサの複数の強化を提供する。すなわち、本発明の開示は、生体内干渉物質からもたらされる背景信号の低下を提供することができる少ない炭素作動電極縁部凹凸及び/又は組み込み化合物又はスクラブ電極を有する検体センサを提供する。本発明の開示のある一定の態様は、炭素作動電極の強化に関するが、本明細書の開示に従って他のタイプの電極を同じく強化することができることは認められるものとする。本明細書の開示の使用によって強化することができる電極のタイプは、金、プラチナ、及びPEDOTなどを更に含む。
【0036】
本発明の開示の検体センサ及びその強化をより詳細に説明する前に、本発明の開示の実施形態をより良く理解することができるように、最初に適切な生体内検体センサ構成及びこれらの検体センサを使用するセンサシステムの簡単な概要を提供する。
図1は、本発明の開示の検体センサを組み込むことができる例示的感知システムの図を示している。図示のように、感知システム100は、有線又は無線、一方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化とすることができるローカル通信経路又はリンク140を通して互いに通信するように構成されたセンサ制御デバイス102と読取器デバイス120とを含む。一部の実施形態により、読取器デバイス120は、センサ104又はそれに関連付けられたプロセッサによって決定された検体濃度及び警告又は通知を見るための出力媒体を含み、更に、1又は2以上のユーザ入力を可能にすることができる。読取器デバイス120は、多目的スマート電話又は専用電子読取計器とすることができる。1つの読取器デバイス120しか示していないが、ある一定の事例では、複数の読取器デバイス120が存在する場合がある。
【0037】
読取器デバイス120はまた、有線又は無線、一方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化とすることができる通信経路/リンク141及び/又は142をそれぞれ通じてリモート端末170及び/又は高信頼性コンピュータシステム180と通信することができる。読取器デバイス120は、同じく又はこれに代えて、通信経路/リンク151を通してネットワーク150(例えば、携帯電話ネットワーク、インターネット、又はクラウドサーバ)と通信することができる。ネットワーク150は、更に通信経路/リンク152を通してリモート端末170に及び/又は通信経路/リンク153を通して高信頼性コンピュータシステム180に通信的に結合することができる。これに代えて、センサ104は、介在読取器デバイス120が存在することなくリモート端末170及び/又は高信頼性コンピュータシステム180と直接に通信することができる。例えば、一部の実施形態により、センサ104は、全内容が引用によって本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に説明されているように、ネットワーク150への直接に通信リンクを通してリモート端末170及び/又は高信頼性コンピュータシステム180と通信することができる。
【0038】
通信経路又はリンクの各々に対して近距離無線通信(NFC)プロトコル、無線周波数識別(RFID)プロトコル、BLUETOOTH(登録商標)プロトコル又はBLUETOOTH(登録商標)低エネルギプロトコル、又はWiFiなどのようなあらゆる適切な電子通信プロトコルを使用することができる。一部の実施形態により、リモート端末170及び/又は高信頼性コンピュータシステム180は、ユーザの検体レベルに着目する1次ユーザ以外の個人によってアクセス可能である場合がある。読取器デバイス120は、ディスプレイ122と、任意的な入力構成要素121とを含むことができる。一部の実施形態により、ディスプレイ122は、タッチ画面インタフェースを含むことができる。
【0039】
センサ制御デバイス102は、センサ104を作動させるための回路及び電源を格納することができるセンサハウジング103を含む。任意的に、電源及び/又は能動回路は除外することができる。センサ104にはプロセッサ(図示せず)を通信的に結合することができ、プロセッサは、センサハウジング103又は読取器デバイス120の中に物理的に位置付けられる。一部の実施形態により、センサ104はセンサハウジング103の下面から突出し、センサハウジング103を皮膚のような組織面に接着させるように構成された接着層105を通って延びる。
【0040】
センサ104は、皮膚の真皮層又は皮下層内のような着目組織の中に少なくとも部分的に挿入されるようになっている。これに代えて、センサ104は、表皮を貫通するように適応させることができる。更にこれに代えて、センサ104は、皮膚上の汗内の1又は2以上の検体を検定する時などに面上に配置され、組織を貫通しない場合がある。センサ104は、所与の組織内の望ましい深さまでの挿入に十分な長さのセンサテールを含むことができる。センサテールは、1又は2以上の着目検体を検定するように構成された少なくとも1つの作動電極と酵素又は酵素システムを含む活性区域とを含むことができる。
【0041】
少なくとも1つの作動電極との組合せで、任意的に基準電極との更に別の組合せで対電極が存在する場合がある。センサテール上での特定の電極構成に対しては、下記で
図2A~
図4を参照してより詳細に説明する。様々な実施形態により、活性区域内の1又は2以上の酵素は、活性区域を含むポリマーに共有結合させることができる。これに代えて、酵素は、活性区域の中にカプセル封入又は物理的同伴などによって非共有的に会合させることができる。真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、又は羊水などのような着目生体液中で1又は2以上の検体をモニタすることができる。特定の実施形態では、本発明の開示の検体センサは、生体内の検体濃度を決定するために真皮液又は間質液を検定することに適応させることができる。しかし、本発明の開示の範囲から逸脱することなく、センサ制御デバイス102の全体が、1又は2以上の着目検体を検定するために組織の下及び1又は2以上の体液内への完全埋め込みを可能にする1又は2以上の様々な構成を有することができることは認められるものとする。
【0042】
再度
図1を参照すると、センサ104は、読取器デバイス120にデータを自動的に伝達することができる。例えば、検体濃度データは、自動的かつ定期的に、例えば、データが得られた時又はデータを伝達するまでメモリに格納し、予め決められた期間が経過した後に予め決められた頻度(例えば、1分毎、5分毎、又は他の予め決められた期間)でBLUETOOTH(登録商標)プロトコル又はBLUETOOTH(登録商標)低エネルギプロトコルなどによって通信することができる。様々な検体に関するデータを同じ頻度又は異なる頻度で及び/又は同じか又は異なる通信プロトコルを用いて伝達することができる。他の実施形態では、センサ104は、読取器デバイス120と非自動方式かつ設定スケジュールに従うことなく通信することができる。例えば、データは、センサ電子機器が読取器デバイス120の通信距離の中に入れられた時にRFID技術を用いてセンサ104から通信することができる。読取器デバイス120に通信されるまで、データは、センサ104のメモリに格納されたままに留まることができる。従って、ユーザは、常時読取器デバイス120との至近距離を維持する必要はなく、代わりに都合の良い時間に自動的又は非自動的にデータをアップロードすることができる。更に他の実施形態では、自動データ伝達と非自動データ伝達との組合せを実施することができる。例えば、データ伝達は、読取器デバイス120がもはやセンサ104の通信距離に存在しなくなるまで自動ベースで継続することができる。
【0043】
組織内へのセンサ104の導入を促進するために一時的に導入器が存在する場合がある。例示的実施形態では、導入器は、針又は類似の尖頭体又はその組合せを含むことができる。代替実施形態では、シース又はブレードのような他のタイプの導入器が存在する場合があることは認識されるものとする。より具体的には、針又は他の導入器は、組織挿入の前にセンサ104の近くに一時的に存在する場合があり、その後にそれを引き抜くことができる。存在している間は、これらの針又は他の導入器は、センサ104が辿るためのアクセス経路を開くことによって組織内へのセンサ104の挿入を促進することができる。例えば、1又は2以上の実施形態により、針は、センサ104の埋め込みを行うことを可能にするための真皮に至るまでのアクセス経路として表皮の貫通を促進することができる。アクセス経路を開いた後に、針又は他の導入器が尖傷を示すことのないようにこれらを引き抜くことができる。例示的実施形態では、適切な針は、中実又は中空、ベベル又は非ベベル、及び/又は円形断面又は非円形断面とすることができる。より具体的な実施形態では、適切な針は、約250ミクロンの断面直径を有することができる鍼灸針と断面直径及び/又は先端設計が均等とすることができる。しかし、適切な針は、特定の用途に合わせて必要に応じてより大きい又はより小さい断面直径を有することができることは認識されるものとする。例えば、約300ミクロンから約400ミクロンの範囲にわたる断面直径を有する針を使用することができる。
【0044】
一部の実施形態では、最初に針が組織を貫通してセンサ104のためのアクセス経路を開くように、針の先端を(それが存在する間に)センサ104の終端の上に傾斜させることができる。他の例示的実施形態では、センサ104は、針の管腔又は溝の中に存在する場合があり、針は、同じくセンサ104のためのアクセス経路を開く。いずれの場合にも、針は、センサの挿入を容易にした後に引き抜くことができる。
【0045】
対応する単一検体の検出に対して構成された単一活性区域を特徴とするセンサ構成は、
図2A~
図2Cを参照して本明細書で更に説明するように二電極又は三電極の検出モチーフを使用することができる。次に、別々の作動電極又は同じ作動電極のいずれかの上での別々の検体の検出のための2つの異なる活性区域を特徴とするセンサ構成を、
図3A~
図4を参照して別々に説明する。複数の作動電極を有するセンサ構成は、各活性区域からの信号寄与を各作動電極の別々の評価によってより容易に決定することができるので、同じセンサテールの中に2つの異なる活性区域を組み込むのに特に有利とすることができる。各活性区域は、同じか又は異なる組成の質量輸送制限膜でオーバーコートすることができる。
【0046】
検体センサ内に単一作動電極が存在する時は、三電極センサ構成は、作動電極と対電極と基準電極とを備えることができる。関連の二電極センサ構成は、作動電極と第2の電極とを備えることができ、この場合に、第2の電極は、対電極と基準電極の両方として作用することができる(すなわち、対/基準電極)。様々な電極をセンサテール上で少なくとも部分的に上下に積み重ねる(積層する)及び/又は横方向に互いに離間させることができる。本明細書に開示するセンサ構成のいずれでも、様々な電極を誘電体又は類似の絶縁体によって互いに電気的に分離することができる。
【0047】
複数の作動電極を特徴とする検体センサもまた、少なくとも1つの追加電極を備えることができる。1つの追加電極が存在する時は、この電極は、複数の作動電極の各々に対する対/基準電極として作用することができる。2つの追加電極が存在する時は、追加電極の一方は、複数の作動電極の各々に対する対電極として作用することができ、追加電極のうちの他方は、複数の作動電極の各々に対する基準電極として作用することができる。
【0048】
以下で説明する作動電極構成のうちのいずれも、センサテール上の作動電極の縁部凸凹の利用可能性を低減することに関する下記の更に別の開示から利益を得ることができる。
【0049】
図2Aは、本明細書の開示での使用に適合する例示的二電極検体センサ構成の図を示している。図示のように、検体センサ200は、作動電極214と対/基準電極216との間に配置された基板212を含む。これに代えて、作動電極214及び対/基準電極216は、基板212の同じ面上に位置付けることができ、これらの電極の間に誘電体が挟み込まれる(構成を示していない)。活性区域218は、作動電極214の少なくとも一部分の上に少なくとも1つの層として配置される。活性区域218は、本明細書で更に議論するように検体の検出に対して構成された複数のスポット又は単一スポットを含むことができる。
【0050】
引き続き
図2Aを参照すると、一部の実施形態により、膜220は、少なくとも活性区域218をオーバーコートし、任意的に作動電極214及び/又は対/基準電極216の一部又は全て又は検体センサ200の全体をオーバーコートすることができる。検体センサ200の一方又は両方の面は、膜220でオーバーコートすることができる。膜220は、活性区域218への検体流束を制限する機能を有する1又は2以上のポリマー膜材料を含むことができる(すなわち、膜220は、着目検体に対してある程度の透過性を有する質量輸送制限膜である)。膜220の組成及び厚みは、活性区域218への望ましい検体流束を容易にし、それによって信号の望ましい強度及び安定性を与えるように変更することができる。検体センサ200は、電量測定、電流測定、電圧測定、又は電位差測定の電気化学検出技術のうちのいずれかによって検体を検定するように作動可能である場合がある。
【0051】
図2B及び
図2Cは、本明細書の開示での使用に同じく適合する例示的三電極検体センサ構成の図を示している。三電極検体センサ構成は、検体センサ201及び202(
図2B及び
図2C)内への追加電極217の包含を除いて
図2Aの検体センサ200に関して示したものと同様とすることができる。この場合に、追加電極217を使用することにより、対/基準電極216は、対電極又は基準電極のいずれかとして作用することができ、追加電極217は、他に埋められない他方の電極に作用する。作動電極214は、その元来の作用を続ける。追加電極217は、誘電体の分離層がその間にある状態で作動電極214又は電極216のいずれかの上に配置することができる。例えば、
図2Bに示すように、誘電体層219a219b及び219cは、電極214216及び217を互いに分離し、電気的分離を提供する。これに代えて、
図2Cに示すように、電極214216及び217のうちの少なくとも一方を基板212の対向する面の上に位置付けることができる。従って、一部の実施形態では、電極217(基準電極)が電極214又は216の一方の上に位置付けられ、誘電体によってこれらの電極から離間した状態で、電極214(作動電極)と電極216(対電極)とを基板212の対向する面の上に位置付けることができる。電極217の上には基準材料層230(例えば、Ag/AgCl)が存在する場合があり、基準材料層230の場所は、
図2B及び
図2Cに示すものに限定されない。
図2Aに示すセンサ200の場合と同様に、検体センサ201及び202内の活性区域218は、複数のスポット又は単一スポットを含むことができる。更に、検体センサ201及び202もまた、電量測定、電流測定、電圧測定、又は電位差測定の電気化学検出技術のうちのいずれかによって検体を検定するように作動可能である場合がある。
【0052】
検体センサ200と同様に、膜220は、検体センサ201及び202内の活性区域218、並びに他のセンサ構成要素をオーバーコートすることができ、それによって質量輸送制限膜として作用する。一部の実施形態では、追加電極217を膜220でオーバーコートすることができる。膜220は、ここでもまた浸漬コーティング又は原位置光重合によって生成することができ、様々な場所で組成が異なるか又は同じとすることができる。
図2B及び
図2Cは、電極214216及び217の全てが膜220でオーバーコートされるものとして示すが、一部の実施形態では、作動電極214又は活性区域218のみをオーバーコートすることができることは認識されるものとする。更に、電極214216及び217の各々での膜220の厚みは、同じか又は異なるとすることができる。二電極検体センサ構成(
図2A)の場合と同様に、
図2B及び
図2Cのセンサ構成でも、検体センサ201及び202の一方又は両方の面を膜220でオーバーコートすることができ、又は検体センサ201及び202の全体をオーバーコートすることができる。従って、
図2B及び
図2Cに示す三電極センサ構成は、本明細書に開示する実施形態に限定されないものとして理解しなければならず、代わりの電極構成及び/又は層構成は、依然として本発明の開示内に存する。
【0053】
図3Aは、単一作動電極を有し、その上に2つの異なる活性区域が配置されたセンサ203に関する例示的構成を示している。
図3Aは、作動電極214上の2つの活性区域、すなわち、異なる検体に反応し、作動電極214の面上で互いに横方向に離間した第1の活性区域218aと第2の活性区域218bとの存在を除いて
図2Aと同様である。活性区域218a及び218bは、各検体の検出に対して構成された複数のスポット又は単一スポットを含むことができる。膜220の組成は、活性区域218a及び218bで異なるか又は同じとすることができる。下記で更に議論するように、第1の活性区域218aと第2の活性区域218bとは、その対応する検体を互いに異なる作動電極電位で検出するように構成することができる。
【0054】
図3B及び
図3Cは、それぞれ、第1の活性区域218a及び第2の活性区域218bがその上に配置された単一作動電極を各々が特徴とするセンサ204及び205に関する例示的三電極センサ構成の断面図を示している。
図3B及び
図3Cは、
図2B及び
図2Cと他は同様であり、これらの図の引用によってより良く理解することができるであろう。
図3Aの場合と同様に、膜220の組成は、活性区域218a及び218bで異なるか又は同じとすることができる。
【0055】
図4は、本明細書の開示での使用に適合する2つの作動電極と、基準電極と、対電極とを有する例示的検体センサ構成の断面図を示している。図示のように、検体センサ400は、基板402の対向する面の上に配置された作動電極404と406を含む。第1の活性区域410aは、作動電極404の面上に配置され、第2の活性区域410bは、作動電極406の面上に配置される。対電極420は、作動電極404から誘電体層422によって電気的に分離され、基準電極431は、作動電極406から誘電体層423によって電気的に分離される。基準電極431及び対電極420の上には外側誘電体層430及び432がそれぞれ配置される。様々な実施形態により、膜440は、少なくとも活性区域410a及び410bをオーバーコートすることができ、任意的に検体センサ400の他の構成要素又は検体センサ400の全体も同じく膜440でオーバーコートされる。ここでもまた、膜440は、活性区域410a及び410bで各場所での検体流束を差別的に調整するための透過性値を与えるために必要に応じて組成が異なるとすることができる。
【0056】
複数の作動電極を有して
図4に示す構成と異なる代替的センサ構成は、別々の対電極420と基準電極421との代わりに対/基準電極を特徴とし、及び/又は指定しているものとは異なる層配置及び/又は膜配置を特徴とすることができる。例えば、対電極420の配置と基準電極421の配置は、
図4に示すものと逆にすることができる。更に、作動電極404と406は、必ずしも
図4に示す方式で基板302の対向する面の上に存在する必要はない。
【0057】
炭素作動電極は、本明細書に開示する検体センサのうちのいずれかでの作動電極を適切に構成することができる。炭素作動電極は電気化学検出で非常に一般的に使用されるが、電気化学感知でのその使用は、困難を伴わないわけではない。特に、活性区域が検体と相互作用し、炭素作動電極のうちで活性区域に隣接する部分に電子を伝達した時にのみ、着目検体に関する電流がもたらされる。着目検体を含有する体液は、活性区域でオーバーコートされていない炭素作動電極の炭素面と同じく相互作用するが、これらの場所には検体から作動電極への電子伝達を促進する酵素又は酵素システムが存在しないことで検体信号には寄与しない。しかし、干渉物質は、活性区域を欠く作動電極の部分で酸化を受け、全体信号に背景で寄与する場合がある。従って、電極面上に外来(又は「露出」)炭素区域を有する炭素作動電極は、検体信号に有意には寄与せず、一部の場合に背景信号への寄与を招く場合がある。着目検体を直接検出しない余分な面区域を有する他の電極も、類似の背景信号を受ける場合があり、本明細書の開示の修正を通して強化される場合がある。
【0058】
様々な干渉物質が、本明細書で説明する検体センサの作動電極と相互作用する可能性があるが、アスコルビン酸は、生体液中に一般的に存在し、炭素作動電極で背景信号を発生させる可能性がある干渉物質の一例である。例えば、アスコルビン酸は、作動電極で酸化してデヒドロアスコルビン酸を生成する。本明細書では、本発明の開示の様々な実施形態をアスコルビン酸である干渉物質に関して以下に説明するが、本明細書で説明する実施形態及び検体センサ構成は、他の干渉物質(着目検体を有する体液中にある電気活性種)に等しく当て嵌めることができることは理解されるものとする。
【0059】
上記で提示したように、本明細書に説明する活性区域は、単一感知層又は複数の感知スポットを有する感知層とすることができる。次に、
図5を参照すると、複数の感知スポット518を含む活性区域504がその上に配置された従来の炭素作動電極500の上面図を示している。検体が活性区域504と相互作用した時に、炭素作動電極500のうちで感知スポット518を含む部分のみが、着目検体に関する信号に寄与する。炭素作動電極500は、活性区域504の中に6つの感知スポット518を示すが、本発明の開示の範囲から逸脱することなく6よりも少ないか又は多い感知スポット518を炭素作動電極500上に含めることができることは理解されるものとする。外来炭素区域510には感知スポット518が直接重ねられず、この区域は、検体に関する信号に寄与しないが、1又は2以上の干渉物質に関する背景信号を発生させる可能性がある。従って、炭素作動電極500での干渉物質の酸化は、外来炭素区域510のうちで干渉物質との相互作用に使用される可能性がある面積に比例する。実際に、炭素作動電極500でのアスコルビン酸の酸化は、使用される可能性がある外来炭素区域510の面積と共にほぼ線形に強弱する。
【0060】
図示のように、活性区域504は不連続であり、複数の感知スポット518の形態にある。本明細書で定める場合に「不連続」という用語及びその文法的変形は、いずれの単一スポット(感知要素)も隣接スポットと縁部又は境界を共有しない(例えば、接触しない)ことを意味する。
【0061】
本発明の開示で説明する炭素作動電極500を含むセンサテールは、テンプレート基板材料(
図2A~
図2B、
図3A~
図3C、
図4)の上でセンサテールの追加の層状要素(例えば、誘電体及び他の電極など)と共に前処理することができる。その後に、センサの製作中に、炭素作動電極500を含むセンサテールは、1又は2以上の手段によってダイスカットされる。ダイスカットは、レーザダイスカット、スリット製作、剪断、及び押し抜きなどを含むがこれらに限定されない1又は2以上の切断又は分離プロトコルによって達成することができる。センサテールのダイスカットは、センサテールの遠位先端の近く(すなわち、センサテールのうちで組織の中に最も深く挿入されることになる部分)の炭素作動電極500上への活性区域の付加の前又は後に実施することができる。本明細書に使用する場合にセンサテールの「先端」は、センサテールの最も遠位の縁部又は組織の中に最も深く挿入される部分を意味する。
【0062】
センサテールの1又は2以上の部分には、センサテールを望ましい形状に切断するために一般的に複数回の通過を必要とするレーザダイスカットが施される。センサテールの先端は、作動電極の少なくとも一部分と活性区域とを含む。一般的に、レーザ単体化センサテールは、約100μmから約500μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲の幅と、約3mmから約10mmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する長さとを有する。一般的に、センサテールの遠位部分は、約0.5mmから約5mmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する遠位長さを占める。レーザダイスカットの後に、活性区域を含む少なくとも1つのセンサ先端上に質量輸送制限膜が堆積される。
【0063】
本発明の開示の1又は2以上の態様では、質量輸送制限膜を配置する前に、レーザダイスカット処理に起因して炭素電極の縁部に沿って炭素凹凸が存在する可能性がある。これらの炭素凹凸は、干渉物質が反応して検体センサに背景信号に寄与する可能性がある面を与える場合がある。
【0064】
炭素作動電極のレーザダイスカットは、約50μm又はそれ未満、例えば、約5μmから約50μm、又は約10μmから約30μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にある幅を有する炭素凹凸の形成を提供する可能性がある。更に、これらの炭素凹凸は、下記でより詳細に説明するように、約20μm又はそれ未満、例えば、約1μmから約20μm、又は約2μmから約10μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲の高さを有する可能性がある。従って、これらの炭素凹凸は、干渉物質が相互作用する可能性がある実質的な面積を与える場合がある。更に、凹凸は、質量輸送制限膜の不定のカバレージ(厚み)に寄与する可能性がある。これらの炭素凹凸は、下記で説明するように1又は2以上のレーザ平坦化法によって低減するか又は除去することができる。
【0065】
最初に
図6Aを参照すると、本発明の開示に従って炭素凹凸を低減するか又は除去するためのいずれかのレーザ平坦化の前のセンサテールの少なくとも一部分として使用するためのレーザ単体化炭素作動電極であって、その上に質量輸送制限膜が堆積されていない上記炭素作動電極の例の拡大図を示している。他の手段によって望ましい形状に切断された電極も、類似の外見及びサイズの凹凸を有することができる。炭素凹凸は、干渉物質が反応する可能性がある作動電極の縁部に沿って明らかである。
図6Bは、
図6Aに示す線に沿って識別された430.71μmの深さプロファイルに沿って評価した深さプロファイルを示している。この3D光学プロファイルは、ZEGAGE(登録商標)3D光学プロファイル測定器、ZYGOO(登録商標)Corporation(米国コネチカット州ミドルフィールド)を用いて取得したものである。
図6Bに示すように、例示的単体化センサテールのダイスカット(融除)縁部に沿う炭素凹凸は、最大で約30μm幅かつ最大で約10μm高である。
【0066】
質量輸送制限膜は、外来炭素区域(例えば、
図5の外来炭素区域510)への干渉物質の接近を低減するか又は防止することができる。レーザ単体化炭素作動電極(及びその上の活性区域)の上に配置された時に、膜の厚みは、特に有意な凹凸が存在する場合は作動電極の幅にわたって変化する。一般的に、膜は、炭素凹凸が位置する場所でもある電極縁部に沿って最も薄い。従って、膜が存在する時であっても、炭素凹凸は、それとの干渉物質の相互作用を十分に低減するか又は防止するほど十分には膜によって被覆されない可能性がある。
【0067】
図7Aを参照すると、本発明の開示の1又は2以上の態様に従って炭素凹凸を低減するか又は除去するためのいずれかのレーザ平坦化の前の質量輸送制限膜が配置された例示的レーザ単体化炭素作動電極の拡大図を示している。
図7Bは、
図7Aに示す線に沿って識別された345.53μmの深さプロファイルに沿って評価した深さプロファイルを示している。この3D光学プロファイルは、ZEGAGE(登録商標)3D光学プロファイル測定器、ZYGOO(登録商標)Corporation(米国コネチカット州ミドルフィールド)を用いて取得したものである。
図7Bに示すように、膜は、炭素作動電極のダイスカットリッジに沿ってかなり薄めである。
【0068】
様々な態様では、本発明の開示は、センサテールを形成するのに使用するための炭素作動電極を1又は2以上の1回通過又は複数回通過のレーザ平坦化切断によって平坦化する方法及びそのように構成された検体センサを提供する。一部の実施形態では、レーザ深さを作動電極の厚みよりも浅く設定する1回通過レーザ平坦化法が使用される。例えば、レーザ平坦化は、炭素層の上部分、例えば、炭素層の上部50%を除去することができる。炭素層は、一般的に、10μm以内にあり(凹凸を除いて)、一部の実施形態では、そこから約5μm(又は約50%)を除去することができる(例えば、
図9Cを参照されたい)。本明細書の開示によるレーザ平坦化は、凹凸の突出部を除去するか又は低減することができる。
【0069】
一部の実施形態では、炭素凹凸を低減するか又は排除するために、各々が作動電極の中線長さに段階的に近づく1よりも多い、例えば、約10個よりも少ない1回通過レーザ平坦化切断を行うことができる。そのような手法で、最初のレーザ平坦化切断は、いずれか単一炭素凹凸の最も外側の場所で行うことができ、次に、複数のレーザ平坦化切断を作動電極の中線長さの場所に向けて行って圧延縁部を生成することができ、この圧延縁部は、約90°の段階状縁部とするか又は例えば電極の中線に最も近いレーザ平坦化切断が真の90°角度をもたらさない場合は斜角縁部(すなわち、電極の面に対して垂直ではない縁部)とすることができる(レーザ平坦化切断(縁部)810を剪断90°角度縁部ではなく傾斜縁部として示す
図8を参照されたい)。例えば、一実施形態では、各々が、約1μmから約100μmの間であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する離間距離を有する約2個から約10個までの1回通過レーザ平坦化切断を行うことができる。特定のレーザ平坦化通過回数及びその離間距離の選択は、炭素凹凸の形状及びサイズ、作動電極の長さ及び幅、及び作動電極の上に配置されたいずれかの膜のカバレージプロファイルなど、及びこれらのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されないいくつかの要因に基づく場合がある。
【0070】
レーザ平坦化は、炭素作動電極を備える単体化センサテールから全炭素凹凸面積のうちの少なくとも約5%から最大で約95%であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する面積を除去するのに支配的に使用することができる。一部の実施形態では、炭素凹凸のうちの最大で100%、又は約5%から約50%であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含するパーセントが排除される。好ましい実施形態では、炭素凹凸のうちの少なくとも約50%が除去される。特定の炭素凹凸除去量は、炭素凹凸の密度、形状、及びサイズ、及び検定中の体液内で関与する可能性がある干渉物質の濃度と比較した着目検体の濃度など、及びこれらのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されないいくつかの要因に基づく場合がある。
【0071】
図8は、本発明の開示の1又は2以上の実施形態によるレーザダイスカット切断部(リッジ)805と、炭素作動電極の縁部の一部分(炭素層又は電極層)を除去することでセンサテールの縁部から陥入したレーザ平坦化切断(縁部)810とを示すセンサテール800の縁部の写真を示している。すなわち、レーザ平坦化切断810は、作動電極の薄めの部分が外周に沿って(かつ活性区域を含まない電極の反対部分で)残ったまま炭素電極の上側部分又は上部分(活性区域が存在する場所)に沿って炭素凹凸を低減することに関する。
【0072】
本発明の開示の1又は2以上の態様では、干渉物質に関する検体センサ信号を低減するか又は排除するために単独で又はいずれかの他の強化との組合せで干渉物質-反応種を含む検体センサを提供する。本明細書に使用する場合に「干渉物質-反応種」という用語及びその文法的変形は、生物学的又は非生物学的のいずれであるかに関わらず、干渉物質と反応してそれが作動電極での測定信号に寄与することができないように当該干渉物質を不活性にする機能を有するいずれかの化合物を意味する。すなわち、干渉物質-反応種は、干渉物質が検体センサの作動電極上で反応する(それに接触する)ことができる前に干渉物質を「事前反応」させるために検体センサの一部として含めることができる。従って、干渉物質-反応種は、作動電極に存在するか又はそれに接近可能な干渉物質の局所濃度を排除し又は低減し、それによって干渉物質は作動電極の余剰区域に決して到達しないことでそのような干渉物質に起因する信号を排除するか又は低減することができる。
【0073】
干渉物質-反応種を組み込む方法及びそれを組み入れた検体センサの様々な態様をアスコルビン酸の排除又は除去のための干渉物質-反応種に関して説明するが、本明細書で説明する強化は、限定することなく他の潜在的干渉物質のためのものであることは引き続き認められるものとする。そのような干渉物質は、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオン、尿酸、パラセタモール(アセトアミノフェン)、イソニアジド、及びサリチラートなど、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができる。非限定例では、本発明の開示の干渉物質-反応種は、アスコルビン酸オキシダーゼ酵素(アスコルビン酸と反応するための)、グルタチオンペルオキシダーゼ酵素(グルタチオンと反応するための)、キサンチンオキシダーゼ酵素(尿酸と反応するための)、尿酸オキシダーゼ酵素(尿酸と反応するための)、チトクロムP450酵素(パラセタモールと反応するための)、好酸球ペルオキシダーゼ酵素(イソニアジドと反応するための)、サリチル酸酸化酵素(サリチル酸と反応するための)、着目干渉物質を酸化、還元、他に反応させて分解することができる他の酵素、及びこれらのあらゆる組合せとすることができる。代替実施形態又は組合せ実施形態では、干渉物質-反応種は、非酵素とすることができる。例えば、酸化マンガン(MnO2)又は酸化鉄(Fe2CO3)のような様々な金属酸化物は、アスコルビン酸を酸化又は他に反応させて本発明の開示の1又は2以上の干渉物質-反応種として使用することができる。
【0074】
図9Aを参照すると、アスコルビン酸に起因可能である信号を生成するアスコルビン酸と余剰作動電極、潜在的にアスコルビン酸と感知化学作用との潜在的な干渉物質反応を例証する従来のセンサの図を示している。
図9Aのセンサには、干渉物質-反応種が組み込まれていない。図示のように、アスコルビン酸干渉物質は、間質液からセンサ作動電極に向けて拡散し、作動電極で少なくとも余剰作動電極上で及び/又はこれに加えて感知化学作用で酸化される可能性がある。
【0075】
図9Bは、本発明の開示の様々な態様による干渉物質-反応種、特にアスコルビン酸オキシダーゼ(AOx)である干渉物質-反応種を組み込んだ
図9Aのセンサの図を示している。図示のように、アスコルビン酸オキシダーゼは、アスコルビン酸が作動電極又は感知化学作用に接触する前にアスコルビン酸と反応し、これは、反応したアスコルビン酸が検体信号に寄与することを防止する。
図9Bに示すセンサは、本明細書で説明するセンサのいずれかの構成及び/又は構成要素を限定することなく有することができることに注意されるものとする。
【0076】
本発明の開示の検体センサ内への組み込みのための1又は2以上の干渉物質-反応種の特定の場所は、特定的に限定されるとは考えられない。例えば、干渉物質-反応種は、検体感知活性区域の一部、検体感知活性区域を被覆する膜として設けられ、作動電極、検体感知活性区域、及び/又は膜コーティングのうちのいずれかの上に被さる独自の層など、及びこれらのあらゆる組合せとして設けられる。活性層の一部、膜、又は独自の層として設けられる時に、干渉物質-反応種は、ポリマー基質中で浮動性のもの又は他に不動化(例えば、共有結合又は非共有結合)されたものとすることができる。検体センサの中に(いずれか1又は2以上の場所に)組み込まれた干渉物質-反応種の特定の濃度は、特定の着目検体、特定の着目干渉物質、及び検体センサの生体内の場所など、及びこれらのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存する場合がある。一部の事例では、干渉物質-反応種が酵素である時に、干渉物質-反応種の全量は、センサ毎の活量で約0.01単位から約100単位であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にあるとすることができる。例えば、アスコルビン酸オキシダーゼである干渉物質-反応種を有するセンサは、センサ毎の活量で約0.5単位を有することができる。他の事例では、干渉物質-反応種が金属酸化物のような非酵素化合物である時に、干渉物質-反応種の全量は、センサ毎に約0.1μgから約100μgであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にあるとすることができる。例えば、MnO2である干渉物質-反応種を有するセンサは、センサ毎に約1μgの量で存在する場合がある。
【0077】
上述のように、本明細書で説明する干渉物質-反応種は、それ自体が層として存在しているか、膜の中に存在しているか、又は活性区域の中に存在しているかに関わらず、可動状態又は不動状態のいずれかでポリマー基質の中に存在することになる。このポリマー基質は、検体センサでの使用のためのように選択される感知化学作用を妨害しない干渉物質-反応種に適合するいずれかのポリマー、架橋剤、及び/又は添加剤を含むことができる。これらのポリマー、架橋剤、及び/又は添加剤の各々は、本明細書で説明するもののうちのいずれかから限定されることなく選択することができる。例えば、そのようなポリマーの非限定例は、ポリ(4-ビニルピリジン)及びポリ(N-ビニルイミダゾール)(PVI)又はこれらのコポリマー、スルホン化テトラフルオロエチレベースのフルオロポリマー-コポリマー(例えば、NAFION(登録商標)、The Chemours Company、米国デラウェア州ウィルミントン)、ポリビニルアルコール、及びこれらのあらゆる組合せを含み、架橋剤の非限定例は、トリグリシジルグリセロールエーテル(gly3)、PEDGE、及び/又はポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)を含み、添加剤の非限定例は、アルブミンのような安定剤及び/又は本明細書で説明するいずれかの他の安定剤を含む。
【0078】
本発明の開示の1又は2以上の態様では、干渉物質に関する検体センサ信号を低減するか又は排除するために単独で又はいずれかの他の強化との組合せでスクラブ電極を備える(例えば、干渉物質-反応種及び/又は凹凸平坦化の組み入れを用いて又は伴わずに)検体センサを提供する。本明細書で説明する場合に「スクラブ電極」という用語及びその文法的変形は、干渉物質と反応してそれが作動電極での測定信号に寄与することができないようにする機能を有する電極を意味する。すなわち、スクラブ電極は、干渉物質が検体センサの作動電極上で反応することができる前に干渉物質を「事前反応」させるために検体センサの一部として含めることができる。従って、干渉物質-反応種の存在と同様に、スクラブ電極は、作動電極に存在するか又はそれに接近可能な干渉物質の局所濃度を排除し又は低減し、それによって干渉物質は作動電極の余剰区域に決して到達しないことでそのような干渉物質に起因する信号を排除するか又は低減することができる。
【0079】
1又は2以上の態様では、スクラブ電極は、作動電極との対面関係でそこから空間的にオフセットされた状態で配置することができる。すなわち、作動電極の活性区域と、基板上に配置される又はされない場合があるスクラブ電極の活性区域とは、互いに対面し、ギャップによって分離される。好ましくは、ギャップは、着目検体を含む体液が間を通過し、間に着目検体及びいずれかの干渉物質を含む2つの電極の間である薄層である。望ましくは、作動電極に対するスクラブ電極の構成は、体液が作動電極に到達するまでにいずれかの干渉物質に対して反応するほど十分な時間にわたって体液がスクラブ電極との接触状態になるようなものである。スクラブ電極は、いずれの感知化学作用も含まず、従って、着目検体はスクラブ電極と反応しない。そのような方式で、体液から干渉物質が取り除かれる又は実質的に取り除かれ、作動電極で得られる信号は、全体的又は主として着目検体に起因可能である。
【0080】
体液が作動電極の前にスクラブ電極に接触することを保証するために様々な電極構成を使用することができる。1つのそのような非限定的構成を
図10に示している。図示のように、スクラブ電極と作動電極とが対面関係にあり、スクラブ電極と比較して作動電極は陥入しているか又は他に狭めの幅のものである。
図10に示す作動電極とスクラブ電極との特定の構成は矩形の形状にあるが、本明細書で説明する実施形態には、正方形、丸形、又は螺旋形などのような他の構成を同じく適用可能とすることができる。一般的に、作動電極及びスクラブ電極は、幅よりも大きい長さを有することができる。
【0081】
1又は2以上の態様では、作動電極に対するスクラブ電極の幅は、約2:1から約50:1であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にあるとすることができる。例えば、一部の事例では、スクラブ電極は、約300μmから約5000μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にある幅を有することができ、作動電極は、約100μmから約1000μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にある幅を有することができる。これらの寸法は、スクラブ電極のサイズと作動電極のサイズの間の比を実際の生体内使用(挿入)に向けてセンサテールを過度に幅広にすることなく増大させるために、薄層がセンサテールの長さに沿って線形又は非線形の形状を有しながら延びることができる向きを組み込んでいる。
【0082】
薄層は、スクラブ電極と作動電極の間に形成される。この薄層は、約10μmから約100μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にあるとすることができる。一部の事例では、薄層は、約50μmとすることができる。一般的に、薄層は、体液が作動電極の前にスクラブ電極に到達することを保証するように制御される方式で密封されていない薄層空間の空間に進入することができるようにスクラブ電極の対向する2つの縁部に沿う流体通路(例えば、薄層「セル」)を密封することによって形成される。一般的に、溶質(例えば、干渉物質)がスクラブ電極と相互作用する機会を最大に高めるために、薄層体積に対するスクラブ電極の面積のより大きい比を好ましいとすることができる。例えば、
図10を参照すると、スクラブ電極と作動電極の間である薄層は、これらの電極の幅縁部に沿って接着剤、スペーサ、又は他の非限定的分離手段を付加することによって形成することができる。従って、体液は、長さに沿う縁部を通して誘導される。従って、干渉物質と着目検体とを含む体液が薄層を通って拡散する時に、作動電極に到達するまでにスクラブ電極との十分以上の相互作用がある。従って、そのようなスクラブ電極を備える検体センサは、作動電極との干渉物質相互作用を制限するのに膜に頼ることができるもののそれを必要とせず、それによって製造の利点及びコストの利点を提供することができる。
【0083】
様々な実施形態では、生体適合性を促進するために、殺菌性品質及び抗菌性品質を与えるために、及び類似の目的、及びこれらの目的のあらゆる組合せで体液を薄層の中に流通させることを助ける界面活性剤、ヒドロゲル、膜、又は他の材料を用いて薄層を修飾することができる。
【0084】
1又は2以上の態様では、特定の干渉物質とのスクラブ電極の反応有効性を微調整するために、スクラブ電極電位を調節することなどによってスクラブ電極を独立に制御することができる。一般的に、干渉物質と反応することへのスクラブ電極の有効性は、電位が高くなる時に増大することになる。スクラブ電極電位は、約-1000mVから約+1000mVであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にあるとすることができる。一般的に、スクラブ電極電位は、水の電位窓内にあるいずれかの作用電位、すなわち、体液に関する溶媒である水自体が酸化又は還元を受けない電位とすることができる。スクラブ電極電位は、一部の実施形態ではスクラブ電極と作動電極の両方が共有することができる包含基準電極(例えば、Ag/AgCl基準電極)に対するものとすることができる。更に、スクラブ電極をほぼ負の電位で作動させることにより、酸素のような酸化剤の追加の除去を可能にすることができる。すなわち、スクラブ電極を用いて不要な酸素を除去し、検体信号への酸素の寄与を低減することができる。
【0085】
スクラブ電極の組成は、特定的に限定されるとは考えられず、公知の電極材料で調製することができ、作動電極と同じか又は異なる組成とすることができる。適切な材料の例は、炭素、金、プラチナ、及びPEDOTなどを含むがこれらに限定されない。一部の事例では、スクラブ電極の組成は、着目干渉物質との反応に特異的な材料又は利点内でも取りわけスクラブ電極の面積を増大させるための材料で修飾又はそれを追加することができる。作動電極に到達する干渉物質の排除又は低減を更に強化するために干渉物質-反応種を上述したいずれかの方式でスクラブ電極上に被覆することができることは更に認められるものとする。
【0086】
一部の実施形態では、スクラブ電極の組み込みのための薄層構成を有する代わりに、スクラブ電極組成を着目検体に対して透過性を有するように選択することができる。そのような方式で、スクラブ電極を作動電極の上方に積層することができ、スクラブ電極は、検体透過性膜又はセンサの短絡を回避するための誘電体層をこれらの電極の間に有し、薄層を持たない。すなわち、自体が着目検体に対して透過性を有する絶縁材料が、透過性スクラブ電極と、検体感知材料を含む作動電極の間に配置される。そのような方式で、上述した薄層スクラブ電極構成と同じ理論的根拠に基づいて、着目検体と干渉物質の両方を含む体液が透過性スクラブ電極との接触状態になり、そこで干渉物質が反応して排除され、又は他にその濃度が低減され、その後に、体液(着目検体を含み、干渉物質を全く又はそれほど含まない)が作動電極との接触状態になる。従って、スクラブ電極は、作動電極に存在するか又はそれに接近可能な干渉物質の局所濃度を排除し又は低減し、それによって干渉物質は作動電極の余剰区域に決して到達しないことでそのような干渉物質に起因する信号を排除するか又は低減することができる。
【0087】
透過性スクラブ電極を備える検体センサの1つのそのような非限定的構成を
図11に示している。図示のように、作動電極は、その上に配置されて活性区域を形成する(単一区域として又は複数の不連続スポットを備えるものとして)感知化学作用を含む。活性区域の上には、着目検体が通って拡散することができるという条件の下に本明細書で説明するポリマーのうちのいずれかのような検体透過性絶縁材料が存在する。例えば、検体透過性遮断層は、拡散制限膜とすることができる。検体透過性スクラブ電極は、検体透過性遮断層上に配置される。検体透過性スクラブ電極はベース作動電極と同じ寸法とする必要があるが、好ましい実施形態では、遮断層又は作動電極のいずれの前にも体液に接触する形状及びサイズを有する。更に別の拡散制限性品質、生体適合性品質、殺菌性品質又は抗菌性品質、及び透過性スクラブ電極の保護など、及びこれらのあらゆる組合せを与えるために外側膜を含めることができる。
図11に示すように、干渉物質は、外側膜を通って透過性スクラブ電極まで拡散することができ、そこで反応して不活性になり、それによって作動電極での測定信号に寄与することができない。それとは異なり、着目検体は、スクラブ電極(検体感知化学作用を持たない)との反応性を持たず、外側膜、スクラブ電極、及び遮断層を通って作動電極の上の感知層まで拡散する。下記で議論する
図25に示す別の非限定的構成は、検体透過性スクラブ電極を有する「井戸」構造を使用することができる。
【0088】
透過性スクラブ電極を備える検体センサの別の非限定的構成を
図12に示している。この構成では、透過性スクラブ電極は、それに電位を印加することができるように電気接触を提供するための不透過性スクラブ電極トレースと組み合わせて設けられる。不透過性スクラブ電極は、作動電極の露出部分の上に分注された誘電体及び感知化学作用の上に這わせることができる。センサAのこの部分を製造し、ダイスカットすることができる。その後に、内側ポリマー膜を付加するためにこの部分を浸漬被覆して硬化させ、次に、透過性除去膜を付加するために浸漬被覆して硬化させ、最後に外側ポリマー膜を付加するために浸漬被覆することができる。この構成は、製造及びコスト利益を提供することができる。
【0089】
図27Aは、
図5の検体センサの別の非限定的構成を示している。この例示的実施形態では、電極層2700は、近位端2701と遠位端2702とを備える細長本体を含む。電極層2700は、その上に配置された第1の活性作動電極区域2704を有することができ、この区域は、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポット2718を含む。検体が活性区域2704と相互作用する時に、感知スポット2718を含む電極層2700の一部分しか着目検体に関する信号に寄与しない。電極層2700は、活性区域2704内に6つの感知スポット2718を示すが、本発明の開示の範囲から逸脱することなく電極層2700の上に6よりも少ないか又は多い感知スポット2718を含めることができる。実際に、感知スポット2718は、本明細書で説明するいずれかの構成を限定することなく有することができる。
【0090】
電極層2700は、第2の電極部分2710と、活性区域2704を第2の電極部分2710から分離する少なくとも1つのギャップ2719とを更に含む。図示の実施形態では、U字形のギャップ2719が、第1の活性作動電極区域の第1の側で細長本体の近位端2701から電極層の細長本体の遠位端2701の近くまで延び、更に第1の活性作動電極区域2704の第2の側で細長本体の近位端まで延びて戻る。ギャップ2719及び第2の電極部分2710は、いずれの感知化学作用も含まず、従って、着目検体は、これらと反応しない。更に、ギャップ2719は、活性区域2704を第2の電極部分2710から電気的に分離するので、第2の電極部分2710との接触状態になる体液中にあるアスコルビン酸のようないずれかの干渉物質がセンサへの干渉物質信号を発生させることはない。従って、潜在的な干渉物質に露出される有効電極面積が低減し、それによってセンサ信号への全体的な干渉が低減する。一部の実施形態では、第2の電極部分2710は、センサ電流導電トレースに接続されない。これに代えて、第2の電極部分2710は、下記で更に詳しく説明するように導電トレースに接続することができる。
【0091】
本発明の開示の主題により、
図27Aの電極層2700のU字形ギャップ2719又は本明細書に開示するギャップのうちのいずれも、線形構成又は非線形構成を有することができる。限定ではなく例示の目的で、
図27Bは、
図27Aと類似の電極層の上面図を示しており、この場合に、ギャップ2720は、非線形構成を有する。図示のように、ギャップは、波形パターンを含み、一部の実施形態では、波形パターンは、感知スポットを密接に取り囲むように設計することができ、それによって活性区域2704の量を更に低減してセンサ干渉の量を低減することができる。他の非線形構成の非限定例は、巻きパターン、曲線パターン、起伏パターン、又はしわパターンなどを含む。本明細書に使用する場合に、「U字形」という用語は、丸形又は非丸形とするか又は矩形などのようなあらゆる適切な形状を有することができる端部を包含する。
【0092】
図27A及び
図27BのU字形実施形態に対する1つの適切な代替物として
図27Cは、横方向に離間した少なくとも2つのギャップ2721aと2721bとを含む電極層2700の上面図を示す例示的実施形態を描いている。これらのギャップは、第1の活性作動電極区域の両側で電極層の細長本体の近位端から電極層の細長本体の遠位端まで延びる。
図27Cのギャップは、電極区域の活性区域を第2の電極部分から電気的に分離することを含む
図27Aに関して上述したものと同じ機能を提供し、従って、潜在的な干渉に露出される作動電極区域の有効サイズを低減して信号干渉を低減する。
【0093】
本明細書に使用する場合に「ギャップ」という用語及びその文法的変形は、区画を電気絶縁するために電極層の除去によって電極層内に形成されたチャネル又は井戸を意味する。更に、少なくとも1つのギャップは、電極層の製作中に又はその後に様々な非限定的技術、例えば、フォトリソグラフィ又はスクリーン印刷によって形成することができる。電極層内の少なくとも1つのギャップは、約1μmから約100μmの幅を有する。
【0094】
本発明の開示の主題の別の非限定的構成は、
図28に示すようにスクラブ電極センサ電流導電トレースに接続することができるスクラブ電極を備える。特に、限定ではなく例示の目的で、
図28は、第1の活性作動電極区域2804がその上に配置された電極層2800の上面図を示す実施形態であり、第1の活性作動電極区域は、第1のセンサ電流導電トレース2805に接続することができる。他の点では
図27Aの実施形態と同様であるが、この構成では、作動電極区域からギャップを通して分離された第2の電極部分2810をスクラブ電極として構成することができ、スクラブ電極に電位を印加することができるように第2のセンサ電流導電トレース2806に接続することができる。従って、スクラブ電極2810は、アスコルビン酸等であるがこれに限定されない1又は2以上の干渉物質が検体センサの活性作動電極区域上で反応することができる前にこれらの干渉物質を酸化させるか又はそれと事前に反応してように構成することができる。従って、スクラブ電極は、活性作動電極区域に存在するか又はそこに接近可能な干渉物質の局所濃度を排除し又は低減し、それによって干渉物質は作動電極の活性区域に決して到達しないので、そのような干渉物質を原因とする信号を排除するか又は低減することができる。
【0095】
1又は2以上の態様では、スクラブ電極2810は、特定の干渉物質とのスクラブ電極の反応効果を微調整するためにスクラブ電極電位を調節することなどによって独立に制御することができる。一般的に、干渉物質と反応するスクラブ電極2810の効果は、電位が高いほど高まることになる。スクラブ電極電位は、約-1000mVから約+1000mVであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にあるとすることができる。一般的に、スクラブ電極電位は、水の電位窓内にあるいずれかの作用電位、すなわち、体液に関する溶媒である水がそれ自体酸化又は還元されない電位とすることができる。スクラブ電極電位は、一部の実施形態ではスクラブ電極と作動電極の両方が共有することができる包含基準電極(例えば、Ag/AgCl基準電極)に対するものである場合がある。更に、スクラブ電極をほぼ負の電位で作動させることにより、酸素のような酸化剤の更に別の除去を可能にすることができ、この除去は、着目検体に基づいて有利である可能性がある。すなわち、スクラブ電極を用いて酸素を捕捉し、検体信号への酸素の寄与を低減することができる。
【0096】
追加の非限定的構成では、本発明の開示は、着目検体に関する信号を生成するための機能性を変わらずに保持しながら、
図5に示す外来炭素区域510を炭素作動電極500内でどのように低減し、干渉物質信号を最小にするか又は排除することができることを明らかにしている。特に、従来の炭素作動電極500の不連続感知スポット518のピッチ及び直径、並びに不連続感知スポット518の互いに対する構成を縮小して外来炭素区域510の面積を低減することができる。本明細書に使用する場合に「格子」という用語及びその文法的変形は、作動電極の幅に対する作動電極の長さ(センサハウジング103から体液の中に延びるセンサテール104(
図1)の軸に沿う長さ)に沿う活性区域の2D配置を意味する。
【0097】
様々な格子構成の例示目的で、本発明の開示の活性区域は、nが1よりも大きく、例えば、2から約20まで又は2から約10であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にある整数である時に1×n格子の形態にあるとすることができる。一部の実施形態では、活性区域は、例えば、
図5に示すように1×6格子の形態にある不連続感知スポットを含むことができる。本明細書で説明する実施形態では、
図5を参照することで最も明快に理解することができる活性区域の他の格子構成、例えば、
図29Aから
図29Bまでに示すもことを使用することができ、これらの図では類似の要素が類似のラベル付けを保持している。例えば、一部の実施形態では、活性区域は、nが2から約10まで又は2から約5であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する整数である時に2×n格子の形態にある不連続感知スポットを含むことができる。
図29Aは、2×3格子の感知スポット518と外来炭素区域510とを有する炭素作動電極600を描いている。更に他の実施形態では、活性区域は、nが2から約6まで又は2から約3であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する整数である時に3×n格子の形態にある不連続感知スポットを含むことができる。
図29Bは、3×2格子の感知スポット518と外来炭素区域510とを有する炭素作動電極610を描いている。取りわけ、
図5、
図29A、及び
図29Bの各々は、本明細書で説明する実施形態に使用するのに適する様々な異なる格子構成を示すが、これらの図では炭素電極500、600、及び610の面積が依然として低減されていないので、各図は、同じ面積の外来炭素区域510を保持している。明らかなように、
図29A及び
図29Bの格子構成は、
図5の格子構成よりも短い長手方向距離にわたってしか配置されず、これは、作動電極を露出させていたセンサ面積を低減する可能性を提供する。
【0098】
本発明の開示の実施形態は、様々な活性区域構成を有する炭素電極の上面
図30Aから
図30Eまでに示すように外来炭素面積を最小にし、それによって干渉物質に関する信号を最小にする格子構成、ピッチ距離、活性区域及び/又は感知スポットのサイズ低減、及びセンサテール上の活性区域場所を利用する。
図30Aは、
図5に示すものと類似の対照(又は従来)の1×6活性区域構成を表している。
図30Aの外来炭素区域を活性区域が不在の網掛け表示の作動電極面として表している。
図30Bから
図30Fまでの各々は、
図30Aを基準として作図したものであり、本発明の開示の実施形態を明らかにしている。
【0099】
図30Bから
図30Fの各々は、外来炭素区域を縮小し、一部の実施形態では各感知スポットがもはや不連続ではないように互いに合体させる短縮感知スポットピッチを各々利用する。更に、
図30Bは、感知スポットが不在の網掛け表示の作動電極面を表す(二重線の下方に)外来炭素区域の縮小を可能にする隣接感知スポット間ピッチの短縮を更に例示している。
図30Cは、感知スポットが不在の網掛け表示の作動電極面を表す(二重線の下方に)外来炭素区域のより一層の縮小を可能にするセンサテールの先端に向けた活性区域のシフトと組み合わせた
図30Bのピッチの短縮を示している。
図30Dは、感知スポットが不在の網掛け表示の作動電極面を表す(二重線の下方に)外来炭素区域のより一層の縮小を可能にする
図30Cと比較して更に別のピッチの短縮を表している。
図30Eは、感知スポットが不在の網掛け表示の作動電極面を表す(二重線の下方に)外来炭素区域のより一層の縮小を可能にする2×3活性区域格子構成と組み合わせた
図30Dのピッチの短縮及び
図30Cのセンサテールシフトを表している。
図30Fは、感知スポットが不在の網掛け表示の作動電極面を表す(二重線の下方に)外来炭素区域のより一層の縮小を可能にする3×3活性区域格子構成と組み合わせた
図30Dのピッチの短縮及び
図30Cのセンサテールシフトを表している。
図30Dから
図30Fまでは、ピッチの短縮が有意になるほど、感知スポットがより区別し難くなり、一部の実施形態では不連続感知スポットを欠く単一活性区域として表すことができることを示している。
【0100】
例示目的で、表1は、
図30Aと
図30Bと
図30Dから
図30Fまでとを外来炭素の低減百分率に基づいて比較し、干渉物質(例えば、アスコルビン酸)信号の低減を推定(Est.)する。干渉は、試験した検体濃度と既知の干渉物質濃度とに基づいて信号強度に対して測定したものである。
【0101】
【0102】
図1に示すように、外来炭素区域が縮小すると干渉物質信号もほぼ線形に低減する。
【0103】
本発明の開示の実施形態は、少なくとも、約20%よりも大きい範囲、例えば、約20%から約60%又はそれよりも大きい、好ましくは、少なくとも約40%超、少なくとも約45%超、又は少なくとも約50%であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲でアスコルビン酸のような干渉物質信号の低減を可能にする。
【0104】
本発明の開示は、1又は2以上の活性区域がその上に配置された小面積の作動電極(例えば、炭素電極)を提供する。一部の実施形態では、複数の不連続活性区域が作動電極上に配置される。一般的に、本発明の開示の不連続活性区域は、約50μmから約300μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にある幅(直径)を有する。非丸形活性区域(図示せず)は、上述の幅(直径)を有する円形特徴部のものに等しい面積範囲を有することができる。各不連続活性区域の間のピッチ(隣接活性区域間の距離)は、約50μmから約500μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含することができる。一般的に、最遠位活性区域は、体液中で最も遠位に位置付けることになる作動電極の先端(センサテールの先端に等しくすることができる)から約50μmから約500μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲を含む少なくとも約200μmである距離に位置付けられる。
【0105】
全体的に、活性区域(単一活性区域又は複数の不連続活性区域)を備える作動電極は、約0.1mm2から約2mm2であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にある面積を有することができる。全体的に外来作動電極面積(いずれの活性区域よりも小さい)は、約0.01mm2から約1.8mm2であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にあるとすることができる。
【0106】
検体又は着目検体に対する感度を維持しながら干渉物質信号を低減するための外来作動電極の低減を達成するために、活性区域の面積に対する外来作動電極の面積は、約1:10から約10:1であり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にあるとすることができる。この比は、本明細書で説明する検体センサの格子構成又はピッチ距離に関係なく維持され、すなわち、活性区域の面積に対する外来作動電極の面積の比の範囲は、本明細書で説明する望ましい利点を達成するために常に上述の範囲にある。
【0107】
従って、本発明の開示の検体センサは、感知部分と露出電極部分とを有する作動電極であって、感知部分が、その上に検体反応酵素が配置された活性区域を含み、露出電極部分が活性区域を含まず、感知部分に対する露出電極部分の比が約1:10から約10:1の範囲にある上記作動電極を備えることができる。作動電極は、炭素電極とすることができる。少なくとも感知部分は、その上にオーバーコートされた質量輸送制限膜を有することができる。
【0108】
更に、本発明の開示の方法は、感知部分と露出電極部分とを有する作動電極であって、感知部分が、その上に検体反応酵素が配置された活性区域を含み、露出電極部分が活性区域を含まず、感知部分に対する露出電極部分の比が約1:10から約10:1の範囲にある上記作動電極を備える検体センサを体液に露出する段階を含むことができる。作動電極は、炭素電極とすることができる。少なくとも感知部分は、その上にオーバーコートされた質量輸送制限膜を有することができる。
【0109】
従って、本発明の開示の検体センサは、感知部分と露出電極部分とを有する作動電極であって、感知部分が、その上に検体反応酵素が配置された活性区域を含み、露出電極部分が活性区域を含まず、感知部分に対する露出電極部分の比が、約1:10から約10:1の範囲にある上記作動電極を備えることができる。作動電極は、炭素電極とすることができる。少なくとも感知部分は、その上にオーバーコートされた質量輸送制限膜を有することができる。
【0110】
更に、本発明の開示の方法は、感知部分と露出電極部分とを有する作動電極であって、感知部分が、その上に検体反応酵素が配置された活性区域を含み、露出電極部分が活性区域を含まず、感知部分に対する露出電極部分の比が約1:10から約10:1の範囲にある上記作動電極を備える検体センサを体液に露出する段階を含むことができる。作動電極は、炭素電極とすることができる。少なくとも感知部分は、その上にオーバーコートされた質量輸送制限膜を有することができる。
【0111】
本発明の開示の追加の非限定的構成は、着目検体に関する信号を生成し、干渉物質信号を最小にするか又は排除するための機能を変わらずに保持しながら、
図5に示す外来炭素区域510を炭素作動電極500内でどのように低減することができるかを明らかにしている。特に、外来炭素区域510の面積を低減するために、炭素作動電極500の感知スポット518のピッチ及び/又は直径、並びに感知スポット518の互いに対する構成を縮小することができる。
【0112】
例えば、検体センサは、近位端と遠位端とを備える細長本体を有する電極層を含む。電極層は、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された複数の感知スポットを有する第1の活性作動電極区域を含む。
図31Aから
図31Fに示すように、第1の活性作動電極区域内で隣接する第1の感知スポットと第2の感知スポットとが重複構成にある。図示のように、各実施形態は、重複構成になるように少なくとも隣接する第1の感知スポットと第2の感知スポットとを互いに融合することによって隣接感知スポットピッチを低減して外来炭素区域を縮小することを利用する。本明細書で定めるように「重複」は、少なくとも2つの隣接感知スポットの境界間が少なくとも互いに接触し、それによって隣接感知スポットがもはや不連続ではないことを意味する。例えば、
図31Aは、第1の感知スポットと第2の感知スポットとを重複構成にし、これは、例えば、感知スポットを備えるのに必要とされる電極の長さを短縮することで電極層の外来炭素区域の縮小を可能にすることができるような隣接する第1の感知スポットと第2の感知スポットの間のピッチの短縮を示している。
図31Bは、隣接する第1の感知スポットと第2の感知スポットとを重複構成にあるとすることができるような3×2格子構成で配置された隣接する第1の感知スポットと第2の感知スポットの間のピッチの短縮を示している。
図31Cは、隣接する第1の感知スポットと第2の感知スポットとを重複構成にあるとすることができるような2×3格子構成で配置された隣接する第1の感知スポットと第2の感知スポットの間のピッチの短縮を示している。
図31Dから
図31Fまでは、隣接する第1の感知スポットと第2の感知スポットとを重複構成にあるとすることができるような非線形構成で配置された隣接する第1の感知スポットと第2の感知スポットの間のピッチの短縮を更に例示している。重複感知スポットを利用する他の適切な構成を見込んでおり、これらの構成は本発明の開示の主題内である。
【0113】
一部の実施形態では、第1の活性作動電極区域内の第3及び第4の隣接する感知スポットも同じく重複構成にある。例えば、
図32Aは、電極層の外来炭素区域の縮小を可能にし、第3の感知スポットと第4の感知スポットとを重複構成にあるとすることができる線形構成にある隣接する第3の感知スポットと第4の感知スポットの間のピッチの短縮の例示的実施形態を示している。
【0114】
一部の実施形態では、第1の活性作動電極区域内で隣接する第5の感知スポットと第6の感知スポットも同じく重複構成にある。例えば、
図32Bは、電極層の外来炭素区域の縮小を可能にし、各対の隣接感知スポット間を重複構成にあるとすることができる線形構成にある3つの対の隣接スポット間のピッチの短縮の例示的実施形態を示している。更に、
図32Cは、格子構成にあり、各ペアの隣接感知スポット間が重複構成にある3つのペアの隣接スポット間のピッチの短縮の例示的実施形態を示している。一部の実施形態では、第1の活性作動電極区域内の全ての複数の感知スポットは、重複構成にあるとすることができる。
【0115】
図32Dは、配置の長さに沿って単一スポットと二重スポットとが交替する状態で感知スポットが非線形構成で配置された少なくとも2つの隣接感知スポットの間のピッチの短縮の例示的実施形態を示している。
【0116】
図33は、電極層の外来炭素区域の縮小を可能にし、感知スポットを線形構成にあるとすることができ、少なくとも3つの隣接感知スポット間が重複構成にある少なくとも3つの隣接感知スポットの間のピッチの短縮の例示的実施形態を示している。少なくとも3つの感知スポットは、本明細書で説明するいずれかの構成を限定されることなく有することができることに注意されるものとする。
【0117】
図32A~
図32D及び
図33では、感知スポットの形状を丸形で示すが、実質的に球形、円形、正方形、矩形、三角形、円錐形、又は楕円形、又はその組合せを含むいずれかの他の適切な形状を使用することができると考えられる。
【0118】
別の非限定例示的実施形態を
図34Aに示している。特に、検体センサ3400は、第1の部分3413と第2の露出部分3414とを備える上面を有する基板3412を含む。基板の第2の露出部分が電極層によって覆われないように、作動電極層3416を基板の上面の第1の部分3413上にのみ配置することができる。作動電極は、下記でより詳しく議論するように、検体を検出するように構成された1つ又は複数の感知スポット3417がその上に配置された第1の活性電極区域を有することができる。電極層3416の少なくとも一部分と基板3414の第2の露出部分とを膜3420が覆うことができる。膜は、電極層と基板の第2の露出部分の両方を直接覆ってそれらに接触することができる。従って、膜3420は、基板3414の第2の露出部分に取り付けられる。
【0119】
図34Bに示すように、一部の実施形態では、基板3414の第2の露出部分の面は、基板3414への第2の露出部分への膜3420の確実な付着を促進するための粗面を有することができる。本明細書に使用する場合に、粗面は、膜3420の付着に向けて大きい面積を与える凹凸を有する面を意味する。本発明の開示の1又は2以上の態様では、基板の第2の露出部分は、物理的又は化学的な処理技術を用いて粗面化することができる。非限定例では、基板の面は、それにエッチングを付加すること、基板の面にイオンを照射すること、基板の面をエンボス製作することができ、又はレーザを使用することによって粗面化することができる。粗面化された基板の第2の露出部分は、あらゆる適切な粗度値を有することができる。
【0120】
本発明の開示の1又は2以上の態様では、基板は、作動電極の材料に適合する材料を含むことができる。非限定例では、基板は、ポリエステル、ポリイミド、及びその組合せのようなポリマー材料を含むことができる。膜は、基板3412の材料に適合する材料を含むことができる。本発明の開示の特定の実施形態では、1又は2以上の活性区域を覆う膜は、架橋ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含むことができる。ある一定の実施形態では、上記で議論した質量輸送制限膜は、ポリビニルピリジン及びポリビニルイミダゾールのポリマーのような複素環窒素基を含有する架橋ポリマーを含む膜である。同様に、実施形態は、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、又はこれらに化学的に関する材料で調製された膜、又はシリコーンで調製された膜などを含む。更に、膜は、緩衝溶液(例えば、アルコール緩衝溶液)中で上記で議論したものを含むポリマーを双性イオン部分、非ピリジンコポリマー成分、並びに任意的に親水性又は疎水性のいずれかを有する及び/又は他の望ましい特性を有する別の部分で修飾したものを原位置架橋することによって形成することができる。修飾ポリマーは、複素環窒素基を含有する前駆体ポリマーから調製することができる。例えば、前駆体ポリマーは、ポリビニルピリジン又はポリビニルイミダゾールとすることができる。任意的に、親水性又は疎水性の修飾剤を用いて、得られる膜の着目検体に対する透過性を「微調整」することができる。ポリ(エチレングリコール)修飾剤、ヒドロキシル修飾剤、又はポリヒドロキシル修飾剤、及び類似の修飾剤、及びこれらのあらゆる組合せのような任意的な親水性修飾剤を用いてポリマー又は得られる膜の生体適合性を強化することができる。更に、膜は、ポリ(スチレン-コ-マレイン酸アンヒドリド)、ドデシルアミン、及びポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)(2-アミノプロピルエーテル)をポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)とのコポリマー、ポリビニルピリジン、ポリビニルピリジン誘導体、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルイミダゾール誘導体、及びポリビニルピロリドン(PVP)など、及びこれらのあらゆる組合せと架橋したものを含むがそれらに限定されない化合物を含むことができる。一部の実施形態では、膜は、ピリジン窒素原子の一部分が非架橋ポリ(エチレングリコール)テールによって官能化され、ピリジン窒素原子の一部分がアルキルスルホン酸基によって官能化されたポリビニルピリジン-コ-スチレンポリマーを含むことができる。他の膜化合物は、単独で又は上述のいずれかの膜化合物との組合せで4-ビニルピリジンとスチレンとアミン非含有ポリエーテルアームとの適切なコポリマーを含むことができる。
【0121】
本明細書で説明する膜化合物は、本明細書で説明する酵素に関して本明細書に列挙するものを含む1又は2以上の架橋剤を用いて更に架橋することができる。例えば、適切な架橋剤は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)、グリセロールトリグリシジルエーテル(Gly3)、ポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)、又は他のポリエポキシド、シアヌル酸クロリド、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、又はこれらの誘導変異体、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができるがそれらに限定されない。類似の末端化学作用を有する分岐バージョンも本発明の開示に適切である。例えば、一部の実施形態では、架橋剤は、トリグリシジルグリセロールエーテル、PEDGE、及び/又はポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)とすることができる。
【0122】
一部の実施形態では、本発明の開示の質量輸送制限層として使用するのに適する膜組成は、レベリング剤として使用するのに適する(例えば、膜組成又は活性区域組成の接触角を低減するための)ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)、及びアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンなど、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができる。類似の末端化学作用を有する分岐バージョンも本発明の開示に適切である。例えば、開示の全内容が引用によって本明細書に組み込まれている米国特許第8,983,568号明細書に見出されるようなある一定のレベリング剤を補助的に含めることができる。
【0123】
少なくとも1つの干渉物質の干渉物質信号を実質的に低減するか又は排除するための干渉物質障壁膜層を備える検体センサの追加の非限定的構成を
図35A及び
図35Bに示している。図示のように、基板(図示せず)上に電極層が配置され、上記で議論したように、電極層は、近位端と、遠位端と、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポットを有する電極の第1の活性作用区域とを含む細長本体を有することができる。電極の第1の活性作用区域は、センサ電流導電トレースに接続される。第1の活性作動電極区域の少なくとも1つの感知スポットの上に配置される検体反応酵素は、グルコース、アセチルコリン、アミラーゼ、ビリルビン、コレステロール、絨毛性ゴナドトロピン、クレアチンキナーゼ(例えば、CK-MB)、クレアチン、DNA、フルクトサミン、グルコース、グルタミン、成長ホルモン、ホルモン、ケトン(例えば、ケトン体)、ラクタート、酸素、過酸化物、前立腺特異抗原、プロトロンビン、RNA、甲状腺刺激ホルモン、トロポニン、アルコール、アスパルタート、アスパラギン、及びカリウム、又はクレアチニン反応酵素とすることができる。
【0124】
図35Aの実施形態では、活性区域を覆うものは、干渉物質障壁膜層である。一部の実施形態では、干渉物質障壁層は、電極の第1の活性作用区域しか覆わない可能性がある。更に別の実施形態では、干渉物質障壁層は、作動電極全体、すなわち、電極の第1の活性作用区域と第2の電極部分とを覆うことができる。干渉物質障壁膜層は、シート又はフィルムの形態にあるとすることができ、着目検体が通って拡散することができるという条件の下で1又は2以上の干渉物質に対する障壁を設ける材料で調製することができる。干渉物質障壁膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)骨格から構成される過フッ素化スルホン酸ポリマーから選択されるイオン交換膜等であるがこれに限定されない適切なポリマーから調製することができる。特に、干渉物質障壁膜は、1又は2以上のスルホン化テトラフルオロエチレベースのフルオロポリマー-コポリマー(例えば、米国デラウェア州ウィルミントンのChemours CompanyのNAFION(登録商標))を含むことができる。これに代えて、スルホン化テトラフルオロエチレベースのフルオロポリマー-コポリマーは、Flemion(登録商標)(Asahi Glass Company)、Aciplex-S(登録商標)(Asahi Chemicals)、Fumion(登録商標)(Fumatech)、Aquivion(登録商標)(Solvay Solexis)、又はFumapem(登録商標)FS(Fumatech)、又はその組合せを含むことができる。干渉物質障壁膜内では、これらのポリマーのうちの1又は2以上をNafion(登録商標)との組合せに使用することができる。一部の実施形態では、Nafion(登録商標)を含有する過フッ素化樹脂の低脂肪族アルコール水溶液(Sigma-Aldrichから市販、274704)を使用することができる。過フッ素化樹脂溶液は、1重量%から10重量%のNafion(登録商標)を含有することができる。干渉物質障壁膜層の厚みは、約5μmから約30μmの範囲にあるとすることができる。
【0125】
一部の実施形態では、検体センサは、干渉物質障壁膜層に加えて1又は2以上の膜層を有することができる。一部の実施形態では、例えば、拡散制限膜のような膜を含めることができる。例示目的で
図35Bに示すように、センサは、電極層の上に配置された第2の膜層(例えば、拡散制限膜)を含み、干渉物質障壁膜層は、この第2の膜層上に配置(例えば、被覆)される。代替実施形態では、第2の膜は、干渉物質障壁層上に配置することができる。干渉物質障壁層は、
図35Aに関して上述したものと同じ材料で調製することができる。拡散制限膜は、着目検体がそれを通って拡散することができるという条件の下で本明細書で説明するポリマーのうちのいずれかのようないずれかの材料で調製することができる。例えば、拡散制限膜は、ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含むことができる。
【0126】
図35A及び
図35Bに示すように、干渉物質(右の矢印)は、干渉物質障壁膜層を通って拡散することができず、この層で反応して不活性になり、従って、作動電極での測定信号に寄与することができない。それとは対照的に、着目検体(左の矢印)は、干渉物質障壁膜層との反応性を持たず、干渉物質障壁膜層を通って作動電極上に配置された感知層(すなわち、第1の活性作用区域)まで拡散する。干渉物質は、アスコルビン酸、グルタチオン、尿酸、アセトアミノフェン、イソニアジド、サリチラート、及びその組合せのような上述したもののうちのいずれかとすることができる。干渉物質障壁膜は、電極電位が約-100mVから約+100mVの範囲にある時に干渉物質信号を全体信号の約10%、5%、2.5%、又は1%未満まで低減することができる。
【0127】
本明細書で説明する共通の層及び要素の様々な組成の各々は、検体透過性スクラブ電極を備える実施形態内に同じく含めることができる。検体透過性スクラブ電極の組成は、それが導電性を有し、干渉物質と反応する(例えば、アスコルビン酸を酸化する)ことができ、特定の着目検体に対して透過性を有する限り、特定的に限定されるとは考えられない。一部の事例では、透過性電極は、カーボンナノチューブ材料を含むことができる。他の構成組成は、導電性ナノ粒子、導電性ナノワイヤ、及び類似のもの、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができるがこれらに限定されない。透過性スクラブ電極は、導電性を強化するために、透過性を強化するために、透過性電極の物理特性を強化するために、及び類似の目的及びこれらの目的のあらゆる組合せで他の導電性インク又は導電性ポリマーを更に追加することができる。例えば、PEDOT:PSSには、その粘性を増大させて浸漬コーティングを強化するためにカーボンナノチューブ透過性スクラブ電極接組成を組み込む又は含浸させることができる。1又は2以上の態様では、干渉物質除去効率を強化するために、検体透過性スクラブ電極の多孔質構造の中に本明細書で説明するような電子伝達剤を組み込む又は他に含浸させることができる。
【0128】
検体透過性電極の厚みは、特定的に限定されるとは考えられず、約1μmから約50μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にあるとすることができる。理論はさておき、透過性スクラブ電極の厚みは、除去効率を強化するために増大させることができ、なぜならば、この厚みが着目検体の拡散を不利に妨げることがない限り、干渉物質がより大きい面積のスクラブ電極に露出されると考えられるからである。
【0129】
理論はさておき、一部の実施形態では、スクラブ電極(透過性を有するか否かに関わらず)は、更に、検体検出システムの製品を再生させ、それによって検体の濃度を増大させ、検体信号を実質的に増幅するのに使用することができる。
【0130】
本明細書で説明する検体センサの上述の構成要素のうちのいずれかのものの様々な層は、自動分注又は浸漬コーティング等であるがこれらに限定されないあらゆる適切な手段によって堆積させることができる。電極は、例えば、スクリーン印刷し、適切な電気接続を確立するためにトレースを設けることができる。
【0131】
本明細書に開示する検体センサのうちのいずれかの内部の活性区域は、単独で機能するか又は酵素システム内で共同的に機能するかのいずれかである1又は2以上の検体反応酵素を備えることができる。1又は2以上の酵素は、活性区域の中に位置付けられる1又は2以上の電子伝達剤と同様に、活性区域を含むポリマーに共有結合させることができる。
【0132】
各活性区域内の適切なポリマーの例は、例えば、四級化ピリジン及びイミダゾール基が電子伝達剤又は電子伝達酵素に対する取付点として作用するポリ(4-ビニルピリジン)及びポリ(N-ビニルイミダゾール)又はこれらのコポリマーを含むことができる。活性区域に存在する場合がある他の適切なポリマーは、全内容が引用によって本明細書に組み込まれている米国特許第6,605,200号明細書に説明されているもの、例えば、ポリ(アクリル酸)、スチレン/マレイン酸無水物コポリマー、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物コポリマー(GANTREZポリマー)、ポリ(ビニルベンジルクロリド)、ポリ(アリルアミン)、ポリリジン、カルボキシペンチル基によって四級化されたポリ(4-ビニルピリジン)、及びポリ(ナトリウム4-スチレンスルホナート)を含むがこれらに限定されない。
【0133】
活性区域内でポリマーに共有結合されて検体の検出を促進する機能を有する酵素は、特定的に限定されるとは考えられない。適切な酵素は、グルコース、ラクタート、ケトン、又はクレアチニンなどを検出する機能を有するものを含むことができる。これらの検体のいずれも、複数の検体を検出する機能を有する検体センサ内で互いの組合せで検出することができる。これらの検体を検出するのに適切な酵素及び酵素システムを以下で説明する。
【0134】
一部の実施形態では、検体センサは、センサテール上に配置されたグルコース反応酵素を備えるグルコース反応性活性区域を含むことができる。適切なグルコース反応酵素は、例えば、グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼ(例えば、ピロロキノリンキノン(PQQ)又は補因子依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ)を含むことができる。グルコースオキシダーゼとグルコースデヒドロゲナーゼは、グルコースを酸化する時に酸素を電子受容体として利用する機能によって区別され、グルコースオキシダーゼは、酸素を電子受容体として利用することができ、それに対してグルコースデヒドロゲナーゼは、天然又は人工の電子受容体、例えば、酵素補因子に電子を伝達する。グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼは、検出を促進するのに使用することができる。グルコースオキシダーゼとグルコースデヒドロゲナーゼの両方をグルコース反応性活性区域を含むポリマーに共有結合させることができ、これら両方が、同じくポリマーに共有結合させることができる電子伝達剤(例えば、オスミウム(Os)複合体又は類似の遷移金属複合体)と電子を交換することができる。適切な電子伝達剤に対しては、下記でより詳細に説明する。グルコースオキシダーゼは、電子伝達剤と電子を直接交換することができ、それに対してグルコースデヒドロゲナーゼは、補因子を利用して電子伝達剤との電子交換を促進することができる。FAD補因子は、電子伝達剤と電子を直接交換することができる。それとは対照的に、NAD補因子は、ジアホラーゼを利用して補因子から電子伝達剤への電子伝達を促進することができる。グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼを組み込んだグルコース反応性活性区域、並びにそれを用いたグルコース検出に関する追加の詳細は、例えば本出願人が所有する米国特許第8,268,143号明細書に見出すことができる。
【0135】
一部の実施形態では、本発明の開示の活性区域は、ケトンを検出することに対して構成することができる。ケトンに対して反応性を有する酵素システムに関する追加の詳細は、2020年1月28日に出願され、米国特許出願公開第2020/0237275号明細書として公開された「Analyte Sensors an◇d Sensing Methods Featuring Dual Detection of Glucose an◇d Ketones(グルコースとケトンとの二重検出を特徴とする検体センサ及び感知法)」という名称の本出願人が所有する米国特許出願第16/774,835号明細書に見出すことができ、これらの文献の全内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。そのようなシステムでは、β-ヒドロキシブチラートが、生体内で形成されるケトンに対する代用物として作用し、本明細書で更に説明するように、少なくとも1つの作動電極の面上に配置されたケトン反応性活性区域内のケトンの検出を促進するβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(HBDH)及びジアホラーゼを含む酵素システムとの反応を受ける。ケトン反応性活性区域内では、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼは、β-ヒドロキシブチラート及び酸化ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)をそれぞれアセトアセタート及び還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に変換することができる。「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)」という用語は、上述の酵素補因子のホスファート結合形態を含むことは理解されるものとする。すなわち、本明細書での「NAD」という用語の使用は、NAD+ホスファートとNADHホスファートの両方、特に、一方がアデニン核酸塩基を含有し、他方がニコチンアミド核酸塩基を含有する2つのヌクレオチドを結合するジホスファートを意味する。NAD+/NADH酵素補因子は、本明細書に開示する協働的酵素反応を促進することを助ける。形成された状態で、NADHは、ジアホラーゼ媒介の下で酸化を受けることができ、この処理中に電子が伝達されて作動電極でのケトン検出の基礎が与えられる。この場合に、作動電極に伝達される電子の量と変換されるβ-ヒドロキシブチラートの量との間には、1:1のモル対応がある。作動電極への電子の伝達は、下記でより詳細に説明するように、オスミウム(Os)化合物又は類似の遷移金属複合体のような電子伝達剤の更に別の媒介の下で発生することができる。活性区域の中にはアルブミンが安定剤として更に存在する場合がある。β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼは、ケトン反応性活性区域を含むポリマーに共有結合させることができる。NAD+は、ポリマーに共有結合させる又はさせない場合があるが、共有結合させない場合は、ケトン反応性活性区域の中に物理的に保持することができ、例えば、ケトンに対して同じく透過性を有する質量輸送制限膜がケトン反応性活性区域をオーバーコートする。
【0136】
ケトンを酵素的に検出するための他の適切な化学作用を本発明の開示の実施形態に従って利用することができる。例えば、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(HBDH)は、ここでもまたβ-ヒドロキシブチラート及びNAD+をそれぞれアセトアセタート及びNADHに変換することができる。作動電極への電子伝達をジアホラーゼ及び適切な酸化還元媒介剤によって完了させる代わりに、還元型のNADHオキシダーゼ(NADHOx(Red))が、反応を受けて対応する酸化型(NADHOx(Ox))を形成する。次に、NADHOx(Red)は、分子酸素との反応によって再形成されてスーパーオキシドを生成することができ、スーパーオキシドは、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)媒介下でその後の過酸化水素への変換を受けることができる。次に、過酸化水素は、作動電極では酸化を受けて、最初に存在していたケトンの量に相関させることができる信号を供給することができる。様々な実施形態により、SODは、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させることができる。β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ及びNADHオキシダーゼは、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させることができ、NAD+は、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させる又はさせない場合がある。NAD+は、共有結合されない場合にケトン反応性活性区域の中に物理的に保持することができ、膜ポリマーが、ケトン反応性活性区域内のNAD+の保持を促進する。ここでもまた、作動電極に伝達される電子の量と変換されるβ-ヒドロキシブチラートの量との間に1:1のモル対応があり、それによってケトン検出の基礎が与えられる。
【0137】
ケトンに対する別の酵素検出化学作用は、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(HBDH)を利用してβ-ヒドロキシブチラート及びNAD+をそれぞれアセトアセタート及びNADHに変換することができる。この場合の電子伝達サイクルは、NAD+を再形成する1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンによるNADHの酸化によって完了し、その後に、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンは、電子を作動電極に伝達する。1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンは、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させる又はさせない場合がある。β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼは、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させることができ、NAD+は、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させる又はさせない場合がある。活性区域内へのアルブミンの包含は、反応安定性の驚くべき改善を提供することができる。適切な膜ポリマーは、ケトン反応性活性区域内のNAD+の保持を促進することができる。ここでもまた作動電極に伝達される電子の量と変換されるβ-ヒドロキシブチラートの量との間に1:1のモル対応があり、それによってケトン検出の基礎が与えられる。
【0138】
一部の実施形態では、検体センサは、協働的に作動してクレアチニンの検出を促進する酵素システムを備えるクレアチニン反応性活性区域を更に含むことができる。クレアチニンは、クレアチニンアミドヒドラーゼ(CNH)の存在下で可逆的かつ加水分解的に反応してクレアチンを形成することができる。更に、クレアチンは、クレアチンアミドヒドラーゼ(CRH)の存在下で触媒加水分解を受けてサルコシンを形成することができる。これらの反応のいずれも、クレアチニンの電気化学検出の基礎を与える電子流(例えば、酸化又は還元)を生成しない。クレアチンの加水分解によって生成されたサルコシンは、酸化型のサルコシンオキシダーゼ(SOX-ox)の存在下で酸化を受けてグリシン及びホルムアルデヒドを形成し、それによってこの処理では還元型のサルコシンオキシダーゼ(SOX-red)を発生させることができる。酸素の存在下では、過酸化水素が発生する可能性もある。次に、還元型のサルコシンオキシダーゼは、酸化型の電子伝達剤(例えば、Os(III)複合体)の存在下で再酸化を受け、それによって対応する還元型の電子伝達剤(例えば、Os(II)複合体)を生成し、電子流を作動電極に送出することができる。
【0139】
酸素は、以上の開示に従ってクレアチニンを検出するのに使用される協働的反応シーケンスを妨げる場合がある。特に、還元型のサルコシンオキシダーゼは、酸素との反応を受けてこの酵素の対応する酸化型を再形成するが、電子伝達剤と電子を交換することなく再形成する場合がある。酵素は、酸素との反応が発生する時に全て活性状態に留まるが、いずれの電子も作動電極に流れない。理論又は機構はさておき、動力学効果から酸素との競争反応がもたらされると考えられる。すなわち、酸素による還元型のサルコシンオキシダーゼの酸化は、電子伝達剤によって容易にされる酸化よりも高速に発生すると考えられる。酸素の存在下では過酸化水素も形成される。
【0140】
クレアチニンの検出を促進するのに望ましい反応経路は、酵素システムの周りに脱酸素剤を含めることによって促進することができる。グルコースオキシダーゼのようなオキシダーゼ酵素を備える様々な脱酸素剤及びその配置を適切とすることができる。低分子の脱酸素剤が適切である場合もあるが、これらの脱酸素剤は、センサ寿命が他に完全に尽きる前に完全に消費される場合がある。それとは対照的に、酵素は、可逆的な酸化及び還元を受け、それによってより長いセンサ寿命を提供することができる。酸素による還元型のサルコシンオキシダーゼの酸化を消勢することにより、電子伝達剤との緩慢な電子交換反応を発生させ、それによって作動電極での電流生成を可能にすることができる。生成される電流の強度は、最初に反応したクレアチニンの量に比例する。
【0141】
本発明の開示のいずれの実施形態でも、望ましい反応を促進するのに使用される脱酸素剤は、オキシダーゼ酵素とすることができる。酵素のための基質も存在し、それによってオキシダーゼ酵素の存在下で酸素と反応するための試薬が供給されるという条件下で、いずれかのオキシダーゼ酵素を用いて酵素システムの周りでの脱酸素を促進することができる。本発明の開示では脱酸素に適切とすることができるオキシダーゼ酵素は、グルコースオキシダーゼ、ラクタートオキシダーゼ、及びキサンチンオキシダーゼなどを含むがこれらに限定されない。グルコースオキシダーゼは、様々な体液中のグルコースの容易な利用可能性に起因して脱酸素を促進するのに特に望ましいオキシダーゼ酵素とすることができる。下記の反応1は、酸素の除去を提供するためにグルコースオキシダーゼによって容易にされる酵素反応を示している。
β-D-グルコース+O2――→D-グルコノ-1,5-ラクトン+H2O2
反応1
【0142】
生体内で利用可能なラクタートの濃度は、グルコースの濃度よりも低いが、脱酸素を促進するのに依然として十分である。
【0143】
グルコースオキシダーゼのようなオキシダーゼ酵素は、本明細書に開示する検体センサ内で脱酸素を促進するのに適切ないずれかの場所に配置することができる。グルコースオキシダーゼは、例えば、グルコース検出を促進するのに機能的及び/又は非機能的であるようにセンサテール上に配置することができる。グルコース検出を促進するのに非機能的である時に、グルコースオキシダーゼは、それを作動電極から電気的に分離することなどにより、グルコース酸化中に生成される電子が作動電極に到達することが不可能であるようにセンサテール上に配置することができる。
【0144】
クレアチニンに対して反応性を有する酵素システムに関する追加の詳細は、2019年9月25日に出願され、米国特許出願公開第2020/0237275号明細書として公開された「Analyte Sensors an◇d Sensing Methods for Detecting Creatinine(クレアチニンを検出するための検体センサ及び感知法)」という名称の本出願人が所有する米国特許出願第16/774,835号明細書に見出すことができ、これらの文献の全内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0145】
一部の実施形態では、検体センサは、ラクタート反応酵素を備えてセンサテール上に配置されたラクタート反応性活性区域を含むことができる。適切なラクタート反応酵素は、例えば、ラクタートオキシダーゼを含むことができる。ラクタートオキシダーゼ又は他のラクタート反応酵素は、ラクタート反応性活性区域を含むポリマーに共有結合させることができ、同じくポリマーに共有結合させることができる電子伝達剤(例えば、オスミウム(Os)複合体又は類似の遷移金属複合体)と電子を交換することができる。適切な電子伝達剤に関して下記でより詳細に説明する。全内容が引用によって本明細書に組み込まれている本出願人が所有する米国特許出願公開第20190320947号明細書により詳細に説明するように、センサ反応性を安定化するためにヒト血清アルブミンのようなアルブミンが、ラクタート反応性活性区域に存在する場合がある。ラクタートレベルは、例えば、摂食、ストレス、運動、敗血症又は敗血症性ショック、感染、低酸素、又は癌性組織の存在などを含む数々の環境要因又は生理学的要因に反応して変化する場合がある。
【0146】
一部の実施形態では、検体センサは、pHに対して反応性を有する活性区域を含むことができる。pHを決定するのに対して構成された適切な検体センサは、本出願人が所有する米国特許出願公開第20200060592号明細書に説明しており、この文献の全内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。そのような検体センサは、第1の作動電極と第2の作動電極とを備えるセンサテールを含むことができ、第1の作動電極上に位置付けられた第1の活性区域は、pH依存性酸化還元化学作用を有する基質を含み、第2の作動電極上に位置付けられた第2の活性区域は、pHと共に変化することが実質的にない酸化還元化学作用を有する基質を含む。第1の信号と第2の信号の間の差を取得することにより、この差は、検体センサが露出される流体のpHに相関させることができる。
【0147】
2つの異なるタイプの活性区域を上記で議論した炭素作動電極のような単一作動電極上に位置付けし、互いに離間させることができる。各活性区域は、酸化還元電位を有することができ、活性区域の一方からの信号の独立した生成を可能にするために、第1の活性区域の酸化還元電位は、第2の活性区域の酸化還元電位から十分に分離される。非限定例としてこれらの酸化還元電位は、少なくとも約100mVだけ、少なくとも約150mVだけ、又は少なくとも約200mVだけ異なることができる。これらの酸化還元電位間の分離の上限は、生体内作用電気化学窓に依存する。強度が互いに十分に分離された2つの活性区域の酸化還元電位を有することにより、2つの活性区域の一方で(すなわち、第1の活性区域又は第2の活性区域内で)、他方の活性区域の中に電気化学反応を実質的に誘起することなく電気化学反応が発生することができる。従って、第1の活性区域又は第2の活性区域のうちの一方からの信号は、その対応する酸化還元電位(下位の酸化還元電位)又はそれよりも高いが、他方の活性区域の酸化還元電位よりも低い電位で独立に生成することができる。異なる信号は、各検体からの信号寄与を分解することを可能にすることができる。
【0148】
本明細書に開示する検体センサの一部又は全ての実施形態は、少なくとも1つの作動電極の面上に位置付けられて同じか又は異なる検体を検出する1又は2以上の活性区域を特徴とすることができる。膜は、少なくとも活性区域(検体反応酵素を備える)をオーバーコートすることができ、更に作動電極の全て又はそのうちで活性区域を欠く部分(作動電極の露出部分又は外来部分)をオーバーコートすることができる。膜は、質量輸送制限膜とすることができ、膜の単層、2つの異なる膜ポリマーの二重層、又は2つの異なる膜ポリマーの混成物とすることができる。
【0149】
本明細書に開示する活性区域のうちのいずれかの中に電子伝達剤が存在する場合がある。適切な電子伝達剤は、1又は2以上の検体が対応する活性区域内で酵素酸化還元反応を受けた後の隣接作動電極への電子の輸送を容易にし、それによって特定の検体の存在を示す電子流を発生させることができる。発生する電流の量は、存在する検体の数量に比例する。活性区域内で異なる検体に対して反応性を有する電子伝達剤は、使用されるセンサ構成に依存して同じか又は異なるとすることができる。例えば、2つの異なる活性区域が同じ作動電極上に配置される時に、各活性区域内の電子伝達剤を異なる(例えば、これらの電子伝達剤が異なる酸化還元電位を示すように化学的に異なる)とすることができる。複数の作動電極が存在する時は、各作動電極を別々に精査することができるので、各活性区域内の電子伝達剤は同じか又は異なるとすることができる。
【0150】
適切な電子伝達剤は、標準カロメル電極(SCE)の酸化還元電位を数百ミリボルト超えるか又は下回る酸化還元電位を有する電気還元性及び電気酸化性のイオン、複合体、又は分子(例えば、キノン類)を含むことができる。一部の実施形態により、適切な電子伝達剤は、全内容が引用によって本明細書に組み込まれている米国特許第6,134,461号明細書及び第6,605,200号明細書に説明されているような低電位オスミウム複合体を含むことができる。適切な電子伝達剤の追加の例は、米国特許第6,736,957号明細書、第7,501,053号明細書、及び第7,754,093号明細書に説明されているものを含み、これらの文献の各々の開示の全内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。他の適切な電子伝達剤は、例えば、ルテニウム、オスミウム、鉄、又はコバルトの金属化合物又は金属複合体(例えば、鉄のポリビニルフェロセン又はヘキサシアノフェラート)にこれらのメタロセン化合物を含めたことを含むことができる。金属複合体に適切な配位子は、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、又はピリジル(イミダゾール)のような例えば二座又はそれよりも高い座数の配位子を含むことができる。他の適切な二座配位子は、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、又はo-ジアミノアレイーンを含むことができる。金属複合体内には、最大の配位圏を達成するように単座、二座、三座、四座、又はそれよりも高い座数の配位子のあらゆる組合せが存在する場合がある。
【0151】
本明細書に開示する検体のうちのいずれかを検出するのに適切な活性区域は、電子伝達剤が共有結合されるポリマーを含むことができる。本明細書に開示する電子伝達剤のいずれも、活性区域内のポリマーへの共有結合を促進するのに適切な官能基を含むことができる。ポリマー結合電子伝達剤の適切な例は、米国特許第8,444,834号明細書、第8,268,143号明細書、及び第6,605,201号明細書に説明されているものを含むことができ、これらの文献の開示の全内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。活性区域内への包含のためのポリマーは、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4-ビニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、又はこれらのいずれかのコポリマーを含むことができるがこれらに限定されない。活性区域内への包含に適切とすることができる例示的コポリマーは、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はアクリロニトリルのようなモノマー単位を含有するものを含む。2又は3以上の異なる活性区域が存在する時は、各活性区域内のポリマーは同じか又は異なるとすることができる。
【0152】
活性区域内のポリマーへの電子伝達剤の共有結合は、共有結合された電子伝達剤を担持するモノマー単位を重合することによって発生させることができ、又はポリマーが予め合成された後に電子伝達剤をポリマーと別々に反応させることができる。二官能性スペーサは、電子伝達剤を活性区域内のポリマーに共有結合させることができ、この場合に、第1の官能基は、ポリマーとの反応性を有し(例えば、ピリジン窒素原子又はイミダゾール窒素原子を四級化する機能を有する官能基)、第2の官能基は、電子伝達剤との反応性を有する(例えば、金属イオンを配位する配位子との反応性を有する官能基)。
【0153】
同様に、活性区域内の酵素のうちの1又は2以上は、活性区域を含むポリマーに共有結合させることができる。所与の活性区域内に複数の酵素を備える酵素システムが存在する時は、一部の実施形態では複数の酵素の全てをポリマーに共有結合させることができ、他の実施形態では複数の酵素の一部分のみをポリマーに共有結合させることができる。例えば、酵素システムを含む1又は2以上の酵素は、ポリマーに共有結合させることができ、このポリマーの中に非共有結合酵素が物理的に同伴されるように少なくとも1つの酵素をポリマーと非共有会合させることができる。所与の活性区域内のポリマーへの酵素の共有結合は、適切な架橋剤を用いて導入された架橋剤を通して発生させることができる。酵素中の遊離アミノ基との(例えば、リジン中にある遊離側鎖アミンとの)反応のための架橋剤は、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)又は他のポリエポキシド、シアヌル酸クロリド、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル類、エピクロロヒドリン、又はこれらの誘導変異体のような架橋剤を含むことができる。酵素中にある遊離カルボン酸基との反応のための架橋剤は、例えば、カルボジイミドを含むことができる。ポリマーへの酵素の架橋は、一般的に分子間のものであるが、一部の実施形態では分子内とすることができる。特定の実施形態では、所与の活性区域内の酵素の全てをポリマーに共有結合させることができる。
【0154】
電子伝達剤及び/又は酵素は、活性区域内のポリマーと共有結合以外の手段によって会合させることができる。一部の実施形態では、電子伝達剤及び/又は酵素は、ポリマーとイオン会合又は配位会合させることができる。例えば、荷電ポリマーを逆荷電の電子伝達剤又は酵素とイオン会合させることができる。更に他の実施形態では、電子伝達剤及び/又は酵素は、ポリマーに結合させることなくその中に物理的に同伴させることができる。物理的に同伴された電子伝達剤及び/又は酵素は、活性区域から実質的に浸出することなく依然として流体と適切に相互作用して検体の検出を促進することができる。
【0155】
活性区域内のポリマーは、それに共有結合されていないNAD+又は別の補因子の外方拡散が制限されるように選択することができる。補因子の外方拡散の制限は、十分な内方検体拡散を可能にして検出を容易にしながらも、ある程度のセンサ寿命を増大することができる(数日から数週)。
【0156】
一部の実施形態では、センサの機能を改善して望ましい感度及び安定性を達成するために、本明細書で説明する検体センサの活性区域の中に安定剤を組み込むことができる。そのような安定剤は、例えば、酵素を安定化する抗酸化剤及び/又は同伴蛋白質を含むことができる。適切な安定剤の例は、血清アルブミン(例えば、ヒト又はウシの血清アルブミン、又は他の適合するアルブミン)、カタラーゼ、及び他の酵素抗酸化剤など、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができるがそれらに限定されない。安定剤は、共役又は非共役とすることができる。
【0157】
本発明の開示の特定の実施形態では、1又は2以上の活性区域をオーバーコートする質量輸送制限膜は、架橋ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含むことができる。質量輸送制限膜の組成は、この膜が様々なタイプの活性区域をオーバーコートする場合に同じか又は異なるとすることができる。膜組成が2つの異なる場所では異なる時に、膜は、2つの異なる膜ポリマーの二重層膜又は均一な混成物を含むことができ、これらの膜ポリマーの一方は、架橋ポリビニルピリジン又は架橋ポリビニルイミダゾールのホモポリマー又はコポリマーとすることができる。活性区域上に質量輸送制限膜を堆積させるための技術は、例えば、スプレーコーティング、塗布、インクジェット印刷、スクリーン印刷、刷り込み、ローラーコーティング、浸漬コーティング、類似のもの、及びその組合せを含むことができる。ポリビニルピリジン及びポリビニルイミダゾールのポリマー及びコポリマーでは、浸漬コーティング技術を特に望ましいとすることができる。
【0158】
ある一定の実施形態では、上記で議論した質量輸送制限膜は、ポリビニルピリジン及びポリビニルイミダゾールのポリマーのような複素環窒素基を含有する架橋ポリマーを含む膜である。実施形態は、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、又はこれらに化学的に関する材料で調製された膜又はシリコーンで調製された膜などを更に含む。
【0159】
一部の実施形態では、膜は、緩衝溶液(例えば、アルコール緩衝溶液)中で上記で議論したものを含むポリマーを双性イオン部分、非ピリジンコポリマー成分、並びに任意的に親水性又は疎水性のいずれかを有する及び/又は他の望ましい特性を有する別の部分で修飾したものを原位置架橋することによって形成することができる。修飾されるポリマーは、複素環窒素基を含有する前駆体ポリマーから調製することができる。例えば、前駆体ポリマーは、ポリビニルピリジン又はポリビニルイミダゾールとすることができる。任意的に、親水性又は疎水性の修飾剤を用いて、得られる膜の着目検体に対する透過性を「微調整」することができる。ポリ(エチレングリコール)修飾剤、ヒドロキシル修飾剤、又はポリヒドロキシル修飾剤、及び類似の修飾剤、及びこれらのあらゆる組合せのような任意的親水性修飾剤を用いて、ポリマー又は得られる膜の生体適合性を強化することができる。
【0160】
一部の実施形態では、膜は、ポリ(スチレン-コ-マレイン酸アンヒドリド)、ドデシルアミン、及びポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)(2-アミノプロピルエーテル)をポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)とのコポリマー、ポリビニルピリジン、ポリビニルピリジン誘導体、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルイミダゾール誘導体、及びポリビニルピロリドン(PVP)など、及びこれらのあらゆる組合せと架橋したものを含むがそれらに限定されない化合物を備える場合がある。一部の実施形態では、膜は、ピリジン窒素原子の一部分が非架橋ポリ(エチレングリコール)テールによって官能化され、ピリジン窒素原子の一部分がアルキルスルホン酸基によって官能化されたポリビニルピリジン-コ-スチレンポリマーで構成される場合がある。他の膜化合物は、単独で又は上述のいずれかの膜化合物との組合せで4-ビニルピリジンとスチレンとアミン非含有ポリエーテルアームとの適切なコポリマーを備える場合がある。
【0161】
本明細書で説明する膜化合物は、本明細書で説明する酵素に関して上記で列挙したものを含む1又は2以上の架橋剤と更に架橋することができる。例えば、適切な架橋剤は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)、グリセロールトリグリシジルエーテル(Gly3)、ポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)、又は他のポリエポキシド、シアヌル酸クロリド、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、又はこれらの誘導変異体、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができるがそれらに限定されない。類似の末端化学作用を有する分岐バージョンも本発明の開示に適している。例えば、一部の実施形態では、架橋剤は、トリグリシジルグリセロールエーテル、PEDGE、及び/又はポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)とすることができる。
【0162】
膜は、活性区域及びそこに含まれるいずれかの追加の化合物(例えば、電子伝達剤)の上に架橋剤と修飾ポリマーとのアルコール緩衝溶液を付加し、この溶液を約1日間から2日間又は他の適切な期間にわたって硬化させることによって原位置形成することができる。架橋剤-ポリマー溶液は、膜溶液の1又は複数の小滴をセンサテールの少なくともセンサ要素の上に配置すること、センサテールを膜溶液の中に浸漬すること、膜溶液をセンサ上にスプレーすること、いずれかのサイズの層(個別又は全包含のもの)内にダイスカット、膜の蒸着、及び膜の粉末コーティングなどの前又は後のいずれかに膜を熱プレス又は溶着すること、及びこれらのあらゆる組合せによって活性区域の上に付加することができる。センサの遠位縁部及び側縁を被覆するために、センサ電子前駆体(例えば、電極)の付加(例えば、ダイスカット)に続いて膜材料を付加することができる。一部の実施形態では、電子前駆体の付加に続いて1又は2以上の膜を付加するために検体センサは浸漬被覆される。これに代えて、検体センサは、スロットダイ被覆することができると考えられ、検体センサの各側が別々に被覆される。上述の方式で付加される膜は、質量輸送制限(すなわち、活性区域に到達する1又は2以上の検体及び/又は化合物の流束の低減又は排除)、生体適合性の強化、及び干渉物質の低減など、及びこれらのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されない様々な機能のうちのいずれかを有することができる。
【0163】
一般的に、膜の厚みは、膜溶液の濃度、付加される膜溶液の小滴の個数、センサが膜溶液中に浸漬される回数、及びセンサ上にスプレーされる膜溶液の体積など、及びこれらの要因のあらゆる組合せによって制御される。一部の実施形態では、本明細書で説明する膜は、約0.1マイクロメートル(μm)から約1000μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にわたる厚みを有することができる。上述のように、膜は、1又は2以上の活性区域の上に重なることができ、一部の実施形態では、活性区域は、約0.1μmから約50μmであり、これらの値の間であるいずれの値及び部分集合も包含する範囲にある厚みを有することができる。一部の実施形態では、望ましい厚みの活性区域及び/又は膜を達成するために、一連の小滴をそれらの直径を実質的に増大させることなく(すなわち、望ましい直径又はその範囲を維持しながら)互いの上に被さるように付加することができる。例えば、各単一小滴を付加し、次に、それを放置して冷却し又は乾燥させ、それに1又は2以上の追加の小滴を続けることができる。活性区域及び膜は、全体を通して同じ厚み又は組成とすることができるが、そうである必要はない。
【0164】
一部の実施形態では、本発明の開示の質量輸送制限層として使用するのに適する膜組成は、レベリング剤として使用するのに適する(例えば、膜組成又は活性区域組成の接触角を低減するのに適切する)ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)及びアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンなど、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができる。類似の末端化学作用を有する分岐バージョンも本発明の開示に適している。例えば、全開示が引用によって本明細書に組み込まれている米国特許第8,983,568号明細書に見出されるようなある一定のレベリング剤を含めることができる。
【0165】
一部の事例では、膜は、活性区域と1又は2以上の結合を形成することができる。本明細書に使用する時に「結合」という用語及びその文法的変形は、化学化合物間が互いの会合を形成することを可能にする共有結合、イオン結合、双極-双極相互作用、水素結合、及びロンドン分散力など、及びこれらのあらゆる組合せ等であるがそれらに限定されない原子又は分子間のいずれかのタイプの相互作用を意味する。例えば、膜の原位置重合は、膜のポリマーと活性区域内のポリマーの間の架橋を形成することができる。一部の実施形態では、活性区域への膜の架橋は、センサからの膜の剥離の発生の低減を促進する。
【0166】
本明細書に開示する実施形態は、以下の実施形態を含む。
【0167】
検体センサは、近位端と遠位端とを備える細長本体を有する電極層を備える。電極層は、第1の活性作動電極区域と、第2の電極部分と、第1の活性作動電極部分及び第2の電極部分を電気的に分離する少なくとも1つのギャップとを含む。第1の活性作動電極区域は、少なくとも1つの検体反応酵素がその上に配置された少なくとも1つの感知スポットを備える。更に別の検体センサを開示している。
【0168】
本発明の態様を独立請求項1、15、及び31に列挙し、好ましい特徴及び任意的な特徴をこれらの独立請求項に従属する請求項に列挙する。これらの好ましい特徴及び任意的な特徴は、単一検体センサの中に組合せで提供することができる。更に、独立請求項1、15、及び31の特徴と従属請求項の特徴のうちのいずれかとを互いに組み合わせる検体センサを提供することができる。
【0169】
A.作動電極であって、その上に配置された活性区域と電極凹凸とを含み、活性区域が検体反応酵素を備える上記作動電極をレーザダイスカットする段階と、電極凹凸の少なくとも一部分を除去するために当該部分をレーザ平坦化してレーザ平坦化部を作動電極の縁部から陥入させる段階とを備える方法。
【0170】
B.電流測定センサの一部として作動電極であって、その上に配置された活性区域と電極凹凸とを含み、活性区域が検体反応酵素を含み、最初にレーザダイスカットされ、その後に作動電極から電極凹凸の少なくとも一部分を除去するためにレーザ平坦化され、更にその後に、レーザ平坦化部が作動電極の縁部から陥入される上記作動電極。
【0171】
C.作動電極であって、その上に配置された活性区域と電極凹凸とを含み、活性区域が検体反応酵素を備える上記作動電極をレーザダイスカットする段階と、作動電極のうちで少なくとも活性区域を含む部分の上に膜を配置する段階と、電極凹凸の少なくとも一部分を除去するために当該部分をレーザ平坦化してレーザ平坦化部を作動電極の縁部から陥入させる段階とを備える方法。
【0172】
D.作動電極であって、その上に配置された活性区域を含み、電極凹凸が上記作動電極からレーザ平坦化され、活性区域が検体反応酵素を備える上記作動電極を備える検体センサ。
【0173】
E.作動電極であって、その上に配置された活性区域を含み、電極凹凸が上記作動電極からレーザ平坦化され、活性区域が検体反応酵素を備える上記作動電極を備える検体センサを体液に露出する段階を備える方法。
【0174】
F.検体反応酵素がその上に配置された活性区域を備える作動電極と、作動電極のうちで少なくとも活性区域を含む部分の上に配置された膜と、その上に組み込まれた干渉物質-反応種とを備える検体センサ。
【0175】
G.検体反応酵素がその上に配置された活性区域を備える作動電極と、作動電極のうちで少なくとも活性区域を含む部分の上に配置された膜と、その上に組み込まれた干渉物質-反応種とを備える検体センサを体液に露出する段階を備える方法。
【0176】
H.検体反応酵素がその上に配置された活性区域を備える作動電極と、作動電極との対面関係で配置されたスクラブ電極とを含み、作動電極とスクラブ電極とが空間的にオフセットされる検体センサ。
【0177】
I.検体反応酵素がその上に配置された活性区域を備える作動電極と、作動電極との対面関係で配置されたスクラブ電極とを含み、作動電極とスクラブ電極とが空間的にオフセットされる検体センサを体液に露出する段階を備える方法。
【0178】
J.検体反応酵素がその上に配置された活性区域を備える作動電極と、作動電極の上方に配置された透過性スクラブ電極とを含み、透過性スクラブ電極が、検体反応酵素に達する着目検体の拡散のための着目検体に対する透過性を有する検体センサ。
【0179】
K.検体反応酵素がその上に配置された活性区域を備える作動電極と、作動電極の上方に配置された透過性スクラブ電極とを含み、透過性スクラブ電極が、検体反応酵素に達する着目検体の拡散のための着目検体に対する透過性を有する検体センサを体液に露出する段階を備える方法。
【0180】
L.感知部分と露出電極部分とを有する作動電極を含み、感知部分が、その上に検体反応酵素が配置された活性区域を含み、露出電極部分が活性区域を含まず、感知部分に対する露出電極部分の比が約1:10から約10:1の範囲にある検体センサ。
【0181】
M.感知部分と露出電極部分とを有する作動電極を含み、感知部分がその上に検体反応酵素が配置された活性区域を含み、露出電極部分が活性区域を含まず、感知部分に対する露出電極部分の比が約1:10から約10:1の範囲にある検体センサを体液に露出する段階を備える方法。
【0182】
実施形態L及びMの各々は、以下の追加の要素のうちの1又は2以上をあらゆる組合せで有する場合がある。
【0183】
要素1:作動電極が、炭素作動電極である。
【0184】
要素2:露出電極部分の面積が、約0.1mm2から約2mm2の範囲にある。
【0185】
要素3:感知部分の面積が、約0.01mm2から約1.8mm2の範囲にある。
【0186】
要素4:活性区域が、複数の不連続活性区域から構成される。
【0187】
要素5:活性区域が、複数の不連続活性区域を含み、各不連続活性区域が、約0.01μmから約1.8μmの範囲の直径を有する。
【0188】
要素6:活性区域が、約50μmから約500μmの範囲にある距離を有するピッチによって分離された不連続活性区域から構成される。
【0189】
要素7:nが2から約20の範囲にある整数である時に、感知部分が、1×nの格子構成で配置された複数の不連続活性区域から構成される。
【0190】
要素8:nが3から約10の範囲にある整数である時に、感知部分が、2×nの格子構成で配置された複数の不連続活性区域から構成される。
【0191】
要素9:nが2から約6の範囲にある整数である時に、感知部分が、3×nの格子構成で配置された複数の不連続活性区域から構成される。
【0192】
要素10:少なくとも感知部分の上に質量輸送制限膜が配置される。
【0193】
要素11:検体反応酵素が、グルコース反応酵素である。
【0194】
本明細書に説明する実施形態のより明快な理解を容易にするために、以下の様々な代表的な実施形態の例を提供する。以下の例は、本発明の範囲を限定又は定めるものと読解すべきでは決してない。
【実施例1】
【0195】
この実施例では、
図13Aに示すように、例示的レーザ単体化作動電極に対してレーザ平坦化を実施した。
図13Aは、その上に配置された活性区域を含まない。
図13Bは、識別された深さプロファイルに沿って評価した
図13Aの単体化作動電極の一部分の3D光学プロファイルを示している。この3D光学プロファイルは、ZEGAGE(登録商標)3D光学プロファイル測定器、ZYGOO(登録商標)Corporation(米国コネチカット州ミドルフィールド)を用いて取得したものである。
図13Bに示すように、単体化センサテールの縁部にある電極凹凸は、約5μmの高さを示している。
【0196】
炭素凹凸の縁部に配置され、電極の中線に向けて10μm毎に段階的に離間した10%レーザパワーの3本の1回通過レーザ線を用いてレーザ平坦化を実施した。本明細書に説明する例では、UVレーザを用いたが、レーザ平坦化を実施するのに本発明の開示の範囲から逸脱することなくいずれかのレーザを使用することができることは理解されるものとする。
図13Cは、センサテールの作動電極の斜角縁部を示す平坦化されたセンサテールの写真である。
図13Dは、電極凹凸が除去されたことを示す識別されたプロファイル線に沿う3D光学プロファイル(上述のように取得した)である。
【実施例2】
【0197】
図14Aを参照すると、この実施例では、その上に分注された活性区域1010を含むレーザ平坦化された炭素作動電極1000を「実施例1」に従って与えた。活性区域1010を含む未平坦化炭素電極を示していないが、「未平坦化分注」電極と以下で呼ぶ。
図14Bは、平坦化の結果として僅かな電極凹凸しか示さず、識別されたプロファイル線に沿う3D光学プロファイル(上述のように取得した)である。
【実施例3】
【0198】
対合差異試験を実施した。
図13Aの未平坦化電極と、活性区域を持たない
図13Cの平坦化された電極と(それぞれ「平坦化なし分注なし」と「平坦化された分注なし」)を実施例2の「未平坦化分注」電極と共に精査し、複数の感知スポットを有する
図14Aの平坦化された電極を37℃では100mMのPBS中で50mg/dLグルコースと2mg/dLアスコルビン酸とで別々に評価した。結果を下記の表1に提示しており、
図15にグラフ表示する。
【0199】
(表1)
*背景補正されたもの、
**対照と比較したレーザ平坦化されたもの
【0200】
図示のように、この対合差異試験は、レーザ平坦化された電極が、未平坦化対応物と比較して約24%から約29%の2mg/dLアスコルビン酸の低減を見せることを例証した。
【実施例4】
【0201】
以下の調製されたレーザ単体化作動電極に対して対合差異試験を実施した。未平坦化「対照」作動電極は、複数の感知スポットの活性区域を含むものであった。「圧縮された」として説明する電極は、同じ凝集度の活性区域を含むが、複数の感知スポットが互いに近い及び/又は電極の先端に近い。圧縮されたか否かに関わらず、全てのサンプルに対する全ての検体反応酵素が同じであった。レーザ平坦化を各々が最初の未平坦化電極の縁部からの特定の距離にある3つの別々の1回通過レーザ線(「平坦化方式」)に関して説明する。例えば、「20-40-60」は、第1の1回通過レーザ線が未平坦化電極の縁部から20μmの場所にあり、第2の1回通過レーザ線が未平坦化電極の縁部から40μmの場所にあり、第3の1回通過レーザ線が未平坦化電極の縁部から60μmの場所にあることを意味する。
【0202】
【0203】
一部の事例では、表2の電極16A~16Eを下記の表3に示す厚みを有する質量輸送制限膜で被覆した対合差異試験(平均でn=6/条件)を37℃で100mMのPBS中で50mg/dLグルコースと2mg/dLアスコルビン酸とで別々に実施した。結果を下記の表3に提供する。
【0204】
【0205】
表3に示すように、この対合差異試験は、レーザ平坦化された電極が、未平坦化対応物と比較して約30%から約65%の2mg/dLアスコルビン酸の低減を見せることを例証した。平坦化されたものの電極中線までの40μm距離と60μm距離の間の差は、干渉物質信号に対する耐性に判別可能な差を提供するようには見えず、比較的少量のレーザ平坦化でも有効な可能性があることを示している。
【実施例5】
【0206】
この実施例では、作動電極での干渉物質信号を排除するか又は低減するために検体センサの中に酵素干渉物質-反応種を組み込む効果を評価した。アスコルビン酸と反応させるための干渉物質反応層を有するグルコースセンサを
図17に示すように与えた。6つの不連続感知スポットの形態にあり、グルコースオキシダーゼ感知化学作用を含む炭素作動電極上にグルコース活性区域感知層が被覆されている。全体の作動電極の上に架橋ポリビニルピリジン-コ-スチレンポリマー(「10Q5」と呼ぶ)を含む拡散制限膜を被覆して感知スポットの各々を覆った。拡散制限膜の上に50nLの干渉物質-反応種層を被覆して感知層と余剰(露出)炭素作動電極とを覆った。干渉物質-反応種層は、PVIポリマー(9.2mg/ml)と、PEDGE-400架橋剤(6.2mg/ml)と、アルブミン安定剤(24.6mg/ml)とで構成される基質中にアスコルビン酸オキシダーゼ(24.6mg/ml)を含むものであった(これらの溶液をpH5.5の10mMのMES緩衝液中で調製した)。各々が日本国大阪市に本社を置くTOYOBOから入手可能なASO-301及びASO-311という2タイプのアスコルビン酸オキシダーゼを評価した。PEGDGE400と架橋されたPVPを含む膜の薄い外層が干渉物質-反応種層全体の上に被覆されている。これらのセンサは、用いたアスコルビン酸オキシダーゼに依存して「GOx/10Q5+AscOx301/PVP」及び「GOx/10Q5+AscOx311/PVP」と呼ぶ。
【0207】
これらのセンサは、33℃の温度、7.4のpH、及び+40mVの作用電位で2つの対照と共に4通りにアスコルビン酸とグルコースとで別々に試験した。第1の対照(「Gox/10Q5 Control」)は、上述した炭素作動電極と、感知スポットと、感知膜とを含むもの(干渉物質-反応種層及び外層が不在の)であった。第2の対照(「Gox/10Q5+PVP Control」)は、炭素作動電極と、感知スポットと、感知膜と、これらの上に被覆された外層とを含むものであった。これらのセンサを
図18に示すようにアスコルビン酸中で較正し、更に
図19に示すように30mMグルコース中で較正した。
【0208】
図20に示すように、干渉物質反応層を有する(アスコルビン酸オキシダーゼを含む)センサは、PVP膜を有するものと持たないものとの両方の対照センサと比較してアスコルビン酸の添加に対して非常に僅かな反応しか示さなかった。更に、干渉物質反応層を備えることは、PVP膜を有するものと持たないものの両方の対照センサと比較してグルコースに対する反応に判別可能な影響を持たなかった。更に、干渉物質反応層がグルコース感知に影響を及ぼした場合であっても、グルコースに関する線形性及び安定性が保持される限り、いずれのそのような影響も容易を考慮することができた。従って、酵素干渉物質-反応種層の組み込みは、作動電極では干渉物質に帰することができる信号を排除するか又は低減するために実用可能な方法である。
【実施例6】
【0209】
この例では、作動電極での干渉物質信号を排除するか又は低減するために検体センサの中に金属酸化物干渉物質-反応種を組み込む効果を評価した。アスコルビン酸と反応させるための干渉物質反応層を有するグルコースセンサを
図20に示すように与えた。基板上に配置した炭素作動電極上にグルコース活性区域感知層を被覆した。活性区域感知層は、グルコースオキシダーゼ感知化学作用を含む6つの不連続感知スポットの形態にあるものであった。活性区域は、0.1mm
2の全面積を有するものであった。感知スポットを備える作動電極を対照組成又は実験組成のいずれかを含む拡散制限膜中に浸漬した。対照拡散制限膜は、80%のエタノールと20%の10mMのHEPES緩衝液とで構成されるpH=8.1の溶媒中に140mg/mlの10Q5を4ml含み、更に100mg/mlのgly3を0.4ml含むものであった。実験拡散制限膜は、10mg/mlのMnO2(米国ミズーリ州セントルイスに本社を置くSIGMA-ALDRICHから入手可能なカタログ番号217646)を更に備えて対照と同等であった。対照拡散制限膜及び実験拡散制限膜を放置して硬化させた。
【0210】
これらのセンサをビーカー内で33℃の温度で100mMのPBS中で2つの対照と共に4通りに1mg/mlアスコルビン酸と5mMグルコースとで別々に試験した。センサ電流の結果を表5に示している。
【0211】
【0212】
この表に示すように、拡散制限膜の中に干渉物質-反応種を含む実験センサは、低いアスコルビン酸干渉を示している。従って、金属酸化物干渉物質-反応種の組み込みは、作動電極では干渉物質に帰することができる信号を排除するか又は低減するために実用可能な方法である。
【実施例7】
【0213】
この例では、作動電極での干渉物質信号を排除するか又は低減するために検体センサの中にスクラブ電極を組み込む効果を評価した。グルコースオキシダーゼ化学作用のグルコース感知活性区域を作動電極に付加することによってグルコースセンサを与えた。作動電極は、幅が約170μmであった。接着層を付加して約50μmの薄層を生成することによってスクラブ電極を組み込んだ。スクラブ電極は、幅が約2500μmであった。このセンサの中には拡散制限膜を組み込まなかった。
【0214】
このセンサをビーカー内で33℃の温度で100mMのPBS中で1mMのグルコースで試験した。
図20は、作動電極とスクラブ電極の両方に関する電流を示している。図示のように、2週間以上にわたって、作動電極は、実質的に安定したグルコース反応を維持し、スクラブ電極は、グルコース感知化学作用を含まないことに起因して予想通りにグルコースに対する反応を示さなかった。従って、スクラブ電極を用いて膜の拡散制限作用することができる。
【実施例8】
【0215】
この実施例では、作動電極での干渉物質信号を排除するか又は低減するために検体センサの中にスクラブ電極を組み込む効果を評価した。「実施例7」のスクラブ電極を備えるグルコースセンサをグルコース及びアスコルビン酸の存在下で電位をスクラブ電極に印加する又はスクラブ電極から除去することによって試験した。電位を作動電極又はスクラブ電極のいずれに印加した時にも、電位は+40mVであった、
図22に示すように、センサをビーカー内で33℃の温度で100mMのPBS中で試験した。約24時間後に、250μMのグルコースを添加し、作動電極及びスクラブ電極を観察した。図示のように、作動電極は、グルコースを検出した時にピークに達して定常状態になり、スクラブ電極は、実質的に影響を受けないままに留まった。約25時間後に、2mg/dL(114μM)のアスコルビン酸を添加し、図示のように、作動電極反応は、定常のままに留まり(グルコースを検出しながら)、スクラブ電極反応電流は、瞬時に増大した(アスコルビン酸を検出して)。その後に、スクラブ電極の電位を停止し、再度印加し戻した。これらの操作の間のグルコース信号の比較的の増大は、アスコルビン酸に帰することができる。
図23は、約18日後のセンサを示し、少なくともこの期間にわたるセンサの安定性を明らかにしている。従って、アスコルビン酸が作動電極に接近することを排除するのにスクラブ電極が有効であることは明らかである。
【実施例9】
【0216】
この実施例では、作動電極での干渉物質信号を排除するか又は低減するために検体センサの中にスクラブ電極を組み込む効果を評価した。スクラブ電極を含み、各々が異なるカーボンインクタイプ及び異なるスクリーン印刷場所を有する2つのグルコースセンサを「実施例7」に従って与えた。これらのスクラブ電極は、Steven Label Corporation(米国カリフォルニア州サンタフェバネス)が提供したもの(
図24で「C1」とラベル付けした黒色の線)及び内製したもの(
図24で「C2」とラベル付けした灰色の線)であった。カーボンインクの市販組成は異なるが(例えば、異なる炭素粒子、異なる結合剤、及び/又は異なる炭素対結合剤比)、正確な組成は公知ではない。更に、スクリーン印刷の場所も、可能性として独自の印刷処理、温度、及び硬化時間などに起因して異なる。これら2つの異なるセンサをビーカー内で33℃の温度で100mMのPBS中で2.1mg/dLアスコルビン酸で試験した。これらのスクラブ電極の各々のセンサ電流を
図24に示しており、スクラブ電極の組成材料、場所、及びスクラブ電極に印加される電位が、除去効率に影響を及ぼす可能性があることが明らかである。従って、着目干渉物質及び/又は体液中でのその濃度など、及びこれらのあらゆる組合せに鑑みてスクラブ電極を最適化することができる。
【実施例10】
【0217】
この実施例では、作動電極での干渉物質信号を排除するか又は低減するために検体センサの中に検体透過性スクラブ電極を組み込む効果を評価した。カーボンナノチューブ検体透過性電極を備えるグルコースセンサを
図25に示すように与えた。センサの更に別の成分の貯留溶液を検査することを可能にするために取り囲まれた井戸を有するプラスチック基板上に作動電極をスクリーン印刷した。この井戸を
図25の「井戸境界」部分として表している。この井戸構成及びその変形は、上述した本発明の開示の実施形態では使用することができる。ケトン感知化学作用の活性区域をこの井戸の中かつ作動電極の上に自動液体分注した。感知化学作用が作動電極の一部分を覆ったが、余剰(露出)作動電極は、露出したままであった。その後に、最初の10Q5拡散制限膜を井戸内の感知化学作用及び余剰作動電極部分の上に手動で堆積させた。この井戸内の最初の10Q5膜の上にカーボンナノチューブ検体透過性スクラブ電極を堆積させ、それに10Q5の第2のコーティングで全体のセンサの浸漬コーティングを続けた。
【0218】
図26に示すように、
図25に示すカーボンナノチューブ検体透過性スクラブ電極を備えるグルコースセンサをビーカー内で100mMのPBS中で試験した。約1時間後に、5mg/dLのアスコルビン酸を添加し、作動電極(「ベース電極」とラベル付けした)及びスクラブ電極(「CNT電極」とラベル付けした)を観察した。図示のように、アスコルビン酸の添加は、作動電極からの干渉物質信号をもたらしている。スクラブ電極に+40mVの電位を印加した後に、作動電極の干渉物質信号は、~85%だけ低下した。スクラブ電極を接断すると、ベース電極上の干渉物質信号は、以前のレベルに戻った。再度、スクラブ電極を接続して印加電位を+40mV、+200mV、及び+600mVに調節すると、より高い電位では除去効率の適度な改善が見られた。図示していないが、グルコース及びベータヒドロキシブチラートを含む様々な着目検体が、スクラブ電極を通って容易に拡散し、下層の作動電極では信号を発生することを観察した。
【実施例11】
【0219】
この実施例では、作動電極での干渉物質信号を排除するか又は低減するために検体センサの中にスルホン化テトラフルオロエチレベースのフルオロポリマー-コポリマー、すなわち、Nafion(登録商標)を含む干渉物質障壁膜層を組み込む効果を評価した。アスコルビン酸と反応させるためのNafion(登録商標)を含む干渉物質障壁膜層を有するグルコースセンサを
図35Bに示すように与えた。グルコースオキシダーゼ系感知化学作用を含む6つの個別スポットを電極上に分注することによってグルコース感知層を炭素電極上に生成した。質量輸送制限膜を生成するためにグルコース感知層及び電極の上にポリビニルピリジンと架橋剤とを含む組成を堆積させた。次に、Nafion(登録商標)を含有する過フッ素化樹脂の低級脂肪族アルコール水溶液(Sigma-Aldrichから市販、274704)を用いてこのセンサを浸漬被覆した。この実験干渉物質障壁膜層を放置して硬化させた。同じ方式であるが、浸漬コーティング干渉物質障壁膜層を用いずに対照センサを与えた。
【0220】
Nafion(登録商標)を含む干渉物質障壁膜層を有するセンサ及び持たないセンサを37℃で100mMのPBS緩衝液中で5mMグルコース、1mg/dLのアスコルビン酸を用いて試験した。この実験を
図36Aに示す+80mV電位と
図36Bに示す-80mV電位とを用いて別々に実施した。
図36A及び
図36Bを参照すると、約20分後に5mMのグルコースを添加した。図示のように、グルコースの添加は、作動電極からの検体信号をもたらしている。次に、35分と55分の間に1mg/dLのアスコルビン酸を添加した。図示のように、アスコルビン酸の添加は、Nafion(登録商標)含有干渉物質障壁膜層を備えるセンサと対照センサの両方ではい干渉物質信号をもたらしている。しかし、これらの図に見られるように、干渉物質信号は、干渉物質障壁膜層を備えるセンサでは対照と比較して有意に低い。1mg/dLのアスコルビン酸を添加した後のパーセント変化を示すセンサ電流の結果を表6に示している。
【0221】
【0222】
この表に示すように、+80mVの電位では、信号中の干渉量は、全体信号の16%から僅か3%まで低減した。同様に、-80mVの電位では、信号中の干渉量は、全体信号の13%から僅か3%まで低減した。従って、スルホン化テトラフルオロエチレベースのフルオロポリマー-コポリマー(例えば、Nafion(登録商標))干渉物質障壁膜の組み込みは、作動電極での干渉物質信号を有意に低減することができる。
【0223】
他に示さない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲内で数量などを表す全ての数字は、全ての事例では「約」という用語によって修飾されるものと理解しなければならない。従って、反意を示さない限り、本明細書及び請求項に言及する数値パラメータは、本発明の実施形態によって取得することが追求される望ましい特性に依存して異なる場合がある近似値である。最低限でもかつ特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定しようとする試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、公開する有意桁の数字を踏まえて通常の丸め技術を適用することによって解釈しなければならない。
【0224】
本明細書では、様々な特徴を組み込む1又は2以上の例示的実施形態を提供する。本明細書では、明瞭化の目的で、物理的実施の全ての特徴を説明又は図示するわけではない。本発明の実施形態を組み込む物理的な実施形態の開発では、実施毎にかつ時々に異なるシステム関連、商取引関連、政府関連、及び他の制約条件の遵守のような開発者の目標を提供するために、数々の実施独特の決定を行わなければならないことは理解されるものとする。開発者の手法は時間を消費する場合があると考えられるが、それにも関わらず、そのような手法は、本発明の開示の利益を有する当業者にとっては通常の作業であると考えられる。
【0225】
本明細書では様々なシステム、ツール、及び方法を様々な構成要素又は段階を「備える」という用語で説明するが、システム、ツール、及び方法は、様々な構成要素及び段階を「基本的に構成する」又は「構成する」ことができる。
【0226】
本明細書に使用する場合に、一連の項目に続く「のうちの少なくとも1つ」という句は、これらの項目のうちのいずれかを分離するための「及び」又は「又は」という用語と共に、列挙事項の各構成単位(すなわち、各項目)ではなく列挙事項を全体的に修飾する。「のうちの少なくとも1つ」という句は、項目のうちのいずれかのもののうちの少なくとも1つ、項目のあらゆる組合せのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目の各々のうちの少なくとも1つを含む意味を許容する。一例として、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という句の各々は、Aのみ、Bのみ、又はCのみ、AとBとCとのあらゆる組合せ、及び/又はA、B、及びCの各々のうちの少なくとも1つを意味する。
【0227】
すなわち、本発明の開示のシステム、ツール、及び方法は、言及した目的及び利点、及びこれらのシステム、ツール、及び方法に内在する目的及び利点を獲得するように十分に適合される。本発明の開示の教示は、その利益を有する当業者にとって明らかである異なるが均等な方式で修正及び実施することができるので、上記に開示した特定の実施形態は例示的に過ぎない。更に、下記の特許請求の範囲に説明するもの以外は、本明細書に示す構造又は設計の詳細へのいずれの限定も意図していない。従って、上記に開示した特定の例示的実施形態を変更すること、組み合わせること、又は修正することができ、全てのそのような変形は、本発明の開示の範囲にあると見なされることは明らかである。本明細書で例示的に開示するシステム、ツール、及び方法は、本明細書で具体的に開示しないいずれかの要素及び/又は本明細書に開示するいずれかの任意的な要素なしで適切に実施することができる。システム、ツール、及び方法を様々な構成要素又は段階を「備える」、「含有する」、又は「含む」という用語で説明するが、システム、ツール、及び方法は、様々な構成要素及び段階を「基本的に構成する」又は「構成する」ことができる。上記に開示した全ての数字及び範囲は、何らかの量だけ異なる場合がある。下限と上限とを有する数値範囲を開示する時は必ず、当該範囲に収まるあらゆる数字及び含まれるあらゆる範囲を具体的に開示している。特に、本明細書に開示する全ての値範囲(「約aから約bまで」又は均等に「ほぼaからbまで」又は均等に「ほぼa~b」の形態)は、広い当該値範囲の中に包含される全ての数字及び範囲を説明しているものと理解しなければならない。同様に、特許請求の範囲での用語は、本特許権者が他に明示的かつ明確に定めない限り、当該用語の容易な通常の意味を有する。更に、本明細書では、特許請求の範囲に使用する冠詞「a」又は「an」は、特許請求の範囲が導入する1又は1よりも多い要素を意味するものとして定める。本明細書での言葉又は用語の使用と、引用によって本明細書に組み込まれる場合がある1又は2以上の特許文献又は他の文献での言葉又は用語の使用とでいずれかの矛盾がある場合に、本明細書と合致する定義を採用するものとする。
【符号の説明】
【0228】
100 感知システム
104 センサ
105 接着層
120 読取器デバイス
140 ローカル通信経路又はリンク
【国際調査報告】