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特表2024-500988副生成物の生成を抑制するクレゾールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】副生成物の生成を抑制するクレゾールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/86 20060101AFI20231227BHJP
   C07C 39/07 20060101ALI20231227BHJP
   C07C 37/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C07C37/86
C07C39/07
C07C37/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539054
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 KR2021019829
(87)【国際公開番号】W WO2022139546
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0183739
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】ソン キュホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジ ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ナムジン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006AD30
4H006BD34
4H006BD52
4H006BE10
4H006FC50
4H006FE13
(57)【要約】
本発明は、クレゾールの製造方法に関し、クレゾールの製造方法により生成される副生成物であるDTEを分離して反応ステップに再循環することで、DTEの発生を抑制するクレゾールの製造方法に関する。
本発明によるクレゾールの製造方法は、ハロトルエンおよび塩基性水溶液の反応によりクレゾールを製造する工程であって、前記工程の副生成物であるDTEを分離して、前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液の反応ステップに再投入するステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロトルエンおよび塩基性水溶液の反応によりクレゾールを製造する工程であって、
前記工程の副生成物であるDTEを分離して、前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液の反応ステップに再投入するステップを含む、クレゾールの製造方法。
【請求項2】
前記クレゾールの製造方法は、ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応器で反応させるステップと、
酸を添加する酸性化ステップと、
有機溶媒を添加して、水溶性層からクレゾールを抽出するステップと、
前記抽出された水溶層のクレゾールから副生成物を分離し、副生成物を反応ステップの反応器に再投入して反応させる反応ステップとを含む、請求項1に記載のクレゾールの製造方法。
【請求項3】
前記酸性化するステップは、pH-5~2.5の範囲で酸性化するように酸を添加するステップである、請求項2に記載のクレゾールの製造方法。
【請求項4】
前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応させるステップは、pH11以上の条件で行われる、請求項1に記載のクレゾールの製造方法。
【請求項5】
前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応させるステップは、100~450℃の温度および100~500atmの圧力下で行われる、請求項1に記載のクレゾールの製造方法。
【請求項6】
前記酸性化するステップは、pKa値が-2以下である酸を用いて行われる、請求項2に記載のクレゾールの製造方法。
【請求項7】
有機溶媒は、クレゾールが含まれた反応生成混合物100重量部に対して、10~200重量部使用される、請求項1に記載のクレゾールの製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒で抽出するステップを2回以上繰り返す、請求項2に記載のクレゾールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレゾールの製造方法に関し、より詳細には、二成分系反応において、副生成物として生成されるDTE(Ditolylether)の生成を抑制して、クレゾールの収率を増加させることができるクレゾールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレゾールは、局所麻酔剤や、消毒剤、燻蒸剤、工業用溶媒、除草剤および界面活性剤などとしても使用され、特に、半導体封止剤などの合成樹脂の製造、基礎石油化学製品、医薬品の製造など、様々な医薬および化学分野において、有機合成の基礎原料として多く使用されている。
【0003】
クレゾールは、各種の植物(木タール)や、原油、石炭タール(コールタール)などからタール酸の形態で発見されたり、自然有機物が土壌と水中の微生物によって分解されて生成されることもある。
【0004】
クレゾール類の化合物は、上記のように、天然に存在する混合物に含まれているものを蒸留または精製して得ることもでき、有機合成によって得ることもできる。
【0005】
しかし、石炭タールなど、天然混合物の中には、ピリジン、メチルピリジン、アニリン、キシレノールなど、クレゾールと類似する物理的化学的性質の物質が多く含まれており、蒸留が容易でなく、このような物質が精製された結果物の中にも残留し、高純度のクレゾールを得ることが簡単でなく、前記用途に使用するのに適しないため、有機合成によって製造することが多い。
【0006】
工業的には、フェノールのアルキル化反応が多く使用されており、アルキル化触媒として酸化マグネシウム系触媒や鉄-バナジウム系触媒が多く使用されているが、過酷な反応条件、触媒活性、寿命などの観点で問題があり、重金属を使用することに起因する、環境問題もある。
【0007】
特に、酸化マグネシウム系触媒は、反応工程が約350℃以上の高温で行われ、鉄-バナジウム系触媒は、酸化マグネシウム系触媒に比べて相対的に低い温度で反応を行うことが可能であるが、触媒が不活性化しやすい可能性がある。
【0008】
また、上記のようなアルキル化反応では、キシレノール、トリメチルフェノール、ポリ(アルキル)フェノール類の高分子物質などが副生成物(Byproduct)として生成され、反応を阻害させる可能性があり、上記のような副生成物は、クレゾールと沸点が類似しており、分離し難い問題があった。
【0009】
これを解決するための方法としては、ハロトルエンを出発物質として塩基性水溶液と反応させてクレゾールを製造する方法が、高い収率で製造可能であることから好ましいが、このようなクレゾールの製造方法は、副生成物としてDTE(ditolylether)が多量発生し、これを分離する費用が大きい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ハロトルエンから塩基性水溶液を反応器で反応してクレゾールを製造する際、副反応によって生成されるDTEの発生を抑制する新たな製造方法を提供することにより、クレゾールの収率を増加させる効果を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ハロトルエンおよび塩基性水溶液の反応によりクレゾールを製造する工程であって、前記工程の副生成物であるDTEを分離して、前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液の反応ステップに再投入するステップを含む。
【0012】
本発明の一実施形態によるクレゾールの製造方法において、クレゾールの製造方法は、ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応器で反応させるステップと、酸を添加する酸性化ステップと、有機溶媒を添加して、水溶性層からクレゾールを抽出するステップと、前記抽出された水溶層のクレゾールから副生成物を分離し、副生成物を反応ステップの反応器に再投入して反応させる反応ステップとを含むことができる。
【0013】
本発明の一実施形態によるクレゾールの製造方法において、酸性化ステップは、pH-5~2.5の範囲で酸性化するように酸を添加するステップである、クレゾールの製造方法。
【0014】
本発明の一実施形態によるクレゾールの製造方法において、前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応させるステップは、pH11以上の条件で行われることができる。
【0015】
本発明の一実施形態によるクレゾールの製造方法において、前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応させるステップは、100~450℃の温度および100~500atmの圧力下で行われることができる。
【0016】
本発明の一実施形態によるクレゾールの製造方法において、前記酸性化するステップは、pKa値が-2以下である酸を用いて行われることができる。
【0017】
本発明の一実施形態によるクレゾールの製造方法において、前記有機溶媒は、クレゾールが含まれた反応生成混合物100重量部に対して、10~200重量部使用されることができる。
【0018】
本発明の一実施形態によるクレゾールの製造方法において、前記有機溶媒で抽出するステップを2回以上繰り返すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のクレゾールの製造方法によると、クレゾールを高い収率で製造することができ、副反応によって生成されるDTEが化学平衡によりそれ以上生成されず、高収率でクレゾールを得ることができる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、ハロトルエンおよび塩基性水溶液の反応によりクレゾールを製造する工程であって、前記工程の副反応によって生成されるDTEを分離して、前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液の反応ステップに再投入して反応する反応ステップを有するクレゾールの製造方法を提供する。
【0021】
前記DTEは、ハロトルエンと塩基性水溶液の反応物であるクレゾールの生成時に副反応物として生成され、反応ステップにおいて、クレゾールの生成と平衡反応によって7~8モル%程度の一定量が生成されることを見出し、これらの平衡反応を用いてDTEの生成を抑制することでクレゾールの収率を向上させる。
【0022】
本発明者らは、前記平衡反応を抑制するために、反応媒質内に生成されたDTEを人為的に投入することで、平衡反応によりDTEの生成を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
前記DTEは、前記反応ステップから分離されたDTEを反応ステップに再循環させて投入することで本発明を完成した。
【0024】
本発明の前記反応ステップは、バッチ式、連続式またはプラグフロー(plug flow)反応器などの様々な形態の反応器を使用することができ、反応ステップで発生した副生成物であるDTEを後のステップで蒸留またはその他の方法によりクレゾールから分離し、反応ステップの反応器に再循環することができる。
【0025】
具体的には、本発明の製造方法は、ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応させるステップと、酸を添加して、酸性化するステップと、有機溶媒を添加して、水溶性層からクレゾールを抽出するステップと、抽出されたクレゾールからクレゾールとDTEを分離して、DTEを反応ステップに再循環するステップとを含む。
【0026】
発明の一実施形態によると、前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応させるステップは、pH11以上の条件で行われることが好ましい。
【0027】
また、この際、前記反応は、約200~約450℃の温度および約100~約500atmの圧力下で行われることが好ましい。
【0028】
本発明の他の一実施形態によると、前記酸性化するステップは、pKa値が-6以下である酸を用いて行われることができる。
【0029】
また、前記酸性化するステップは、pHを約2.5以下に調節することが好ましい。
【0030】
本発明の他の一実施形態によると、前記有機溶媒は、DI値が20以下であることが好ましい。
【0031】
また、前記有機溶媒は、クレゾールが含まれた反応生成混合物100重量部に対して約10重量部~約200重量部含まれることが好ましい。そして、前記有機溶媒で抽出するステップは、2回以上繰り返すことが好ましい。
【0032】
また、本発明において前記クレゾールとDTEの分離は、通常、蒸留して分離することができるが、分離手段を本発明で特定しない。
【0033】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味を有していない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素またはこれらの組み合わせが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせなどの存在または付加可能性を予め排除しないことを理解すべきである。
【0034】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができ、特定の実施形態を例示し、下記で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物もしくは代替物を含むものと理解すべきである。
【0035】
本明細書の全体にわたり、前記クレゾールとは、オルト(ortho)、メタ(meta)、およびパラ(para)クレゾールをいずれも包括する。
【0036】
また、ハロトルエンとは、トルエンからベンゼン環の水素のいずれか一つが、塩素、臭素、フルオロを含むハロゲン原子で置換された形態の化合物を意味し、また、オルト(ortho)、メタ(meta)、およびパラ(para)の形態をいずれも包括する。
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
先ず、ハロトルエンと塩基性水溶液の反応ステップについて説明する。
【0039】
本発明の前記反応ステップとして、前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応させるステップは、pH11以上の条件で行われることが好ましい。使用される水酸化イオンは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウムなど、金属水酸化物水溶液から由来したものが好ましいが、本発明が必ずしもこれに限定されるものではない。
【0040】
すなわち、反応のために加水分解反応を行う際、水酸化イオンをハロトルエンに比べて過量で添加することができ、反応終了の後、水溶層は、過量の水酸化イオンによって非常に強い塩基性を示すことができる。したがって、生成物であるクレゾールは、アニオンとして水溶性層に存在し、このような形態によって、全反応の平衡移動を反応物側に導くことができ、クレゾールの取得率を高めることができる。
【0041】
反応の一実施形態によると、前記ハロトルエンおよび塩基性水溶液を反応させるステップは、約200~約450℃の温度条件および約100~約500atmの圧力条件下で行われることが好ましい。
【0042】
加水分解反応の際、反応温度が低すぎる場合、ハロトルエンの転化率とクレゾールの選択度および収率が減少する問題が発生し得、温度が高すぎる場合、高温運転のための運転費用が高くなって、クレゾールの製造のための経済性が低下する問題が発生し得る。
【0043】
また、反応圧力が低すぎる場合、ハロトルエンの転化率とクレゾールの選択度および収率が減少し、圧力が高すぎる場合、高圧設備を備えることに伴い装置費用が増加する問題がある。
【0044】
本発明の加水分解反応の際、生成物は、クレゾールと化学平衡反応によって生成されるジトリルエーテル(Ditolylether;DTE)を7~8モル%含んで反応物が生成される。前記DTEは、平衡反応によって必ず生成されることを本発明者らが認識して、反応で生成されるDTEを加水分解反応ステップに原料とともに再投入する場合、投入する量が反応媒質に存在して、クレゾールでDTEとして生成される平衡をクレゾールに誘導することで、それ以上DTEが生成されないようにしてクレゾールの収率を向上させ、副生成物として廃棄する必要があるDTEの生成量を著しく低減することができ、経済的で環境にやさしい製造方法を提供することができる。
【0045】
一方、反応後の生成物であるクレゾール異性体のほとんどが、クレゾールアニオンの形態で水溶性層に存在する。クレゾールは水溶性層に溶解された状態では商品化が不可能であるため、これを水溶性層から抽出する必要がある。
【0046】
したがって、本発明では、前記置換反応の後、酸を添加して、酸性化するステップを含む。
【0047】
発明の一実施形態によると、前記酸性化するステップは、pKa値が約-6以下である強酸を用いることが好ましい。具体的には、例えば、塩酸、塩素酸、亜塩素酸、臭酸、硝酸、希硫酸などが挙げられるが、本発明が必ずしもこれに限定されるものではなく、クレゾールアニオン、またはクレゾールに十分な水素原子を提供して、油溶性層への溶解を容易にすることができる強酸は、特別に制限なく使用可能である。
【0048】
また、本発明の他の実施形態によると、前記酸性化するステップは、pHが約2.5以下、好ましくは約-5~約2.5、さらに好ましくは約-5~約1.5に調節されることができる。前記pHの範囲から逸脱する場合、生成されたクレゾール化合物のうち相当な量が水溶性層に残留し、反応廃棄物の処理時に環境問題を引き起こす可能性がある。
【0049】
上述のように、酸処理によって油溶性形態に変化したクレゾールと副生成物であるDTEは、有機溶媒を添加して水溶性層から抽出し、有機溶媒層に溶解された状態で得られる。
【0050】
ここで、使用可能な有機溶媒としては、水溶層内のクレゾールを分類することができる有機溶媒であれば使用可能であり、DI値が約20以下であるものを使用することが好ましい。
【0051】
具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、イソブチルアセテート(iBA)またはこれらの混合物を使用することができ、その他にも、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、またはキシレンなど、本発明が属する技術分野において一般的に使用される有機溶媒は、特に制限なく使用可能である。
【0052】
また、本発明の他の一例によると、前記有機溶媒は、クレゾールが含まれた反応生成混合物100重量部に対して、約10~約200重量部使用されることが好ましい。
【0053】
有機溶媒が、クレゾールが含まれた反応生成混合物に対して10重量部未満で使用される場合、水溶性層内のクレゾール分離が容易でなくて、水溶層内のクレゾールが過量含まれて環境問題が発生し得、クレゾール内の水酸化無機イオンが含まれてクレゾールの純度が低下する問題がある。
【0054】
また、有機溶媒が、クレゾールが含まれた反応生成混合物に対して200重量部を超えると、抽出工程後、クレゾール内の有機溶媒の含量が高くて、有機溶媒を分離する別の工程を必要とするため、経済性が低下する。
【0055】
また、発明の他の一実施形態によると、前記有機溶媒で抽出するステップは、2回以上、または、約2回~約5回繰り返すことが好ましい。
【0056】
クレゾールは、有毒な化合物であり、微量の場合にも、皮膚や粘膜などを介して吸収される可能性があり、血液や肝臓、脳、肺、腎臓などの器官に濃縮および分布し、人体毒性を示し得ることから、環境および安全の面で、水溶性層に残存するクレゾールをより確実に除去することが重要である。
【0057】
本発明の一例のように、有機溶媒で抽出するステップを、2回以上、または、約2回~約5回繰り返す場合、水溶性層内に存在するクレゾールを約500ppm以下、さらに好ましくは約100ppm以下、最も好ましくは液体クロマトグラフィーで検出可能な限界である約10ppm以下に低減することができ、環境的な面で非常に有利であることができる。
【0058】
次は、有機層に抽出したクレゾールとDTEを分離し、分離したDTEは反応ステップに再循環してDTEの生成を抑制するように、平衡をクレゾール側に移動させるステップである。再循環されるDTEの量が生成されるクレゾールの7~8モル%に逹するように再循環されるクレゾールの量を増加させる場合、反応物からそれ以上のDTE副生成物が生成されず、クレゾールのみが生成されるため、副反応であるDTEの生成とそれを廃棄する費用などにおいて大きな経済的効果を奏することができる。
【0059】
前記クレゾールとDTEは、蒸留によって分離可能であり、一具体例として、分離のための蒸留塔は、総段数が100段であることができ、上部温度(Top temperature)は140.7℃、上部圧力(Top pressure)は0.1barg、下部温度(Bottom temperature)は206.6℃、下部圧力(Bottom pressure)は0.14bargのDWC(Dividing wall column)に分類可能であるが、これに限定されない。
【0060】
以下、本発明の具体的な実施例により、本発明の作用および効果についてより詳細に述べる。ただし、このような実施例は、本発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められない。
【0061】
<実施例1>
連続式反応器内にNaOH(10wt%):クロロトルエン:DTEを、2.5:1:0.08のモル比で投入し、400℃、300atmの条件を30分間維持し、塩基性条件で反応を行った。
【0062】
前記反応の後、結果物100gに、塩酸28gを添加して、pHを1に調節した。
【0063】
下記表1のように、有機溶媒を添加し、30分の間撹拌して均一に混合した後、水溶性層から生成物であるクレゾールを分離し、相分離の後、水溶性層内クレゾールの含量を液体クロマトグラフィーを用いて分析した。結果、クレゾールとDTEの生成物が92モル%:8モル%であり、副反応生成物であるDTEが投入される量以外は、それ以上生成されないことが分かった。
【0064】
<比較例1>
連続式反応器内にNaOH(10wt%)およびクロロトルエン2.5:1モル比で投入し、400℃、300atmの条件を30分間維持し、塩基性条件で反応を行った以外は、実施例1と同様に実施した。製造した水溶層内のクレゾールとDTEの含量を測定した結果、92.3:7.7モル比であり、DTEが生成されたことが分かる。
【0065】
<実施例2>
実施例1で回収したDTEをクロロトルエンに対して4モル%投入した以外は、同様に実施した。結果、副生成物であるDTEの含量が7.8モル%生成されたことが分かり、投入された量より3.7モル%がさらに生成されたことが分かる。
【0066】
上記実施例および比較例から、再循環したDTEを反応ステップに投入することで、DTEがそれ以上生成されず、これにより、不要なDTEの生成を抑制することで、経済的で、環境にやさしいクレゾールの新たな製造方法を提供できることが分かる。
【国際調査報告】