IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン グラス フランスの特許一覧

<>
  • 特表-遮断グレージングのためのスペーサ 図1
  • 特表-遮断グレージングのためのスペーサ 図2a
  • 特表-遮断グレージングのためのスペーサ 図2b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】遮断グレージングのためのスペーサ
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/663 20060101AFI20231227BHJP
   C03C 27/06 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
E06B3/663 B
C03C27/06 101Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539114
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2022051425
(87)【国際公開番号】W WO2022161890
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】21153796.4
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ビアンカ ベルクス
(72)【発明者】
【氏名】バルター シュライバー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マルヤン
(72)【発明者】
【氏名】ピエリック フロラン
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA01
2E016BA06
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016EA00
2E016FA01
4G061AA01
4G061AA10
4G061BA01
4G061CB02
4G061CB06
4G061CD22
4G061CD27
(57)【要約】
ポリマー本体(5)を少なくとも有する、遮断グレージングのためのスペーサ(1)であって、このポリマー本体(5)は、少なくとも、第1ペイン接触表面(7.1)、第2ペイン接触表面(7.2)、グレージング内部表面(8)、外側表面(9)及び中空チャンバ(10)を有し、
前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)は、互いに反対向きに、かつ互いに平行に、延在しており、
前記グレージング内部表面(8)及び前記外側表面(9)は、前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)を介して互いに接続されており、
前記中空チャンバ(10)は、前記グレージング内部表面(8)、前記外側表面(9)、前記第1ペイン接触表面(7.1)、及び前記第2ペイン接触表面(7.2)によって囲まれており、
前記外側表面(9)は、前記第1ペイン接触表面(7.1)に隣接する第1傾斜部(9a)、及び前記第2ペイン接触表面(7.2)に隣接する第2傾斜部(9b)を有し、
前記第1傾斜部(9a)及び前記第2傾斜部(9b)は、それぞれ隣接する前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)に対して、それぞれ120°~150°の角度αを形成しており、前記本体(5)は、傾斜部(9a、9b)及びそれに隣接する前記ペイン接触表面(7.1、7.2)の領域において、中空チャンバ内側に、少なくとも1つのコーナーを有し、このコーナーは、0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められており、
前記本体(5)は、前記第1傾斜部(9a)及び前記第2傾斜部(9b)の領域において、前記中空チャンバ内側に、前記外側表面(9)との少なくとも1つのコーナーを有し、このコーナーは0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められており、
前記グレージング内部表面(8)は、前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)と、それぞれ87°~93°の角度βを形成しており、前記本体(5)は、前記グレージング内部表面(8)並びに前記第1ペイン接触表面(7.1)及び/又は前記第2ペイン接触表面(7.2)の領域において、前記中空チャンバ内側にコーナーを有し、このコーナーは、1.0mm~2.5mmの半径Rで丸められている、
スペーサ(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー本体(5)を少なくとも有する、遮断グレージングのためのスペーサ(1)であって、このポリマー本体(5)は、少なくとも、第1ペイン接触表面(7.1)、第2ペイン接触表面(7.2)、グレージング内部表面(8)、外側表面(9)及び中空チャンバ(10)を有し、
- 前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)は、互いに反対向きに、かつ互いに平行に、延在しており、
- 前記グレージング内部表面(8)及び前記外側表面(9)は、前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)を介して互いに接続されており、
- 前記中空チャンバ(10)は、前記グレージング内部表面(8)、前記外側表面(9)、前記第1ペイン接触表面(7.1)、及び前記第2ペイン接触表面(7.2)によって囲まれており、
- 前記外側表面(9)は、前記第1ペイン接触表面(7.1)に隣接する第1傾斜部(9a)、及び前記第2ペイン接触表面(7.2)に隣接する第2傾斜部(9b)を有し、
- 前記第1傾斜部(9a)及び前記第2傾斜部(9b)は、それぞれ隣接する前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)に対して、それぞれ120°~150°の角度αをとり、前記本体(5)は、傾斜部(9a、9b)及びそれに隣接する前記ペイン接触表面(7.1、7.2)の領域において、前記中空チャンバ内側に、少なくとも1つのコーナーを有し、このコーナーは、0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められており、
- 前記本体(5)は、前記第1傾斜部(9a)及び前記第2傾斜部(9b)の領域において、前記中空チャンバ内側に、前記外側表面(9)との少なくとも1つのコーナーを有し、このコーナーは、0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められており、
- 前記グレージング内部表面(8)は、前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)と、それぞれ87°~93°の角度βを形成しており、前記本体(5)は、前記グレージング内部表面(8)並びに前記第1ペイン接触表面(7.1)及び/又は前記第2ペイン接触表面(7.2)の領域において、前記中空チャンバ内側に、コーナーを有し、このコーナーは、1.0mm~2.5mmの半径Rで丸められている、
スペーサ(1)。
【請求項2】
前記第1傾斜部(9a)及び前記第2傾斜部(9b)は、それぞれの隣接する前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)に対して、それぞれ130°~140°の角度αを形成している、請求項1に記載のスペーサ(1)。
【請求項3】
傾斜部(9a、9b)の、隣接する前記ペイン接触表面(7.1、7.2)との前記中空チャンバ内側の各コーナーは、0.4mm~2.5mm、好ましくは0.6mm~2.5mm、特に好ましくは0.8mm~2.5mm、とりわけ1.5mm~2.5mm、の半径Rで丸められている、請求項1又は2に記載のスペーサ(1)。
【請求項4】
前記第1傾斜部(9a)及び前記第2傾斜部(9b)は、それぞれ、前記中空チャンバ内側に、前記外側表面(9)とのコーナーを有し、このコーナーは、0.4mm~2.5mm、好ましくは0.6mm~2.5mm、特に好ましくは0.8mm~2.5mm、とりわけ1.5mm~2.5mmの半径Rで丸められている、請求項1~3のいずれか一項に記載のスペーサ(1)。
【請求項5】
前記グレージング内部表面(8)は、前記第1ペイン接触表面(7.1)及び前記第2ペイン接触表面(7.2)と、それぞれ89.5°~90.5°の角度βを形成しており、前記グレージング内部表面(8)の、前記第1ペイン接触表面(7.1)との前記中空チャンバ内側の前記コーナー、及び前記グレージング内部表面(8)の、前記第2ペイン接触表面(7.2)との前記中空チャンバ内側の前記コーナーは、1.0mm~2.0mm、好ましくは1.3mm~1.7mmの半径Rで丸められている、請求項1~4のいずれか一項に記載のスペーサ(1)。
【請求項6】
前記本体(5)は、前記ペイン接触表面(7.1、7.2)と前記傾斜部(9a、9b)との間、かつ前記傾斜部(9a、9b)と前記外側表面(9)との間に、外側(19)のコーナーを有し、このコーナーは、0.125mm~0.7mm、好ましくは0.3mm~0.7mmの半径Rで丸められている、請求項1~5のいずれか一項に記載のスペーサ(1)。
【請求項7】
前記ペイン接触表面(7.1、7.2)の高さは、前記スペーサ(1)の全高の55%~80%、好ましくは60%~75%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のスペーサ(1)。
【請求項8】
前記本体(5)の壁厚は、0.5mm~1.5mm、好ましくは0.8mm~1.2mmである、請求項1~7のいずれか一項に記載のスペーサ(1)。
【請求項9】
穿孔溝(14)は、前記グレージング内部表面(8)において複数の開口部(12)を有し、前記グレージング内部表面(8)において前記ペイン接触表面(7.1、7.2)と実質的に平行に延在している、請求項1~8のいずれか一項に記載のスペーサ(1)。
【請求項10】
前記本体(5)は、基材として熱可塑性ポリマー、好ましくはスチレン系ポリマー、特に好ましくはスチレンアクリロニトリル(SAN)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のスペーサ(1)。
【請求項11】
前記ポリマー本体(5)は、発泡細孔構造を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のスペーサ(1)。
【請求項12】
前記ポリマー本体(5)は、発泡剤及びキャリア材料を含む起泡剤によって発泡され、前記起泡剤は、好ましくは前記ポリマー本体のポリマー混合物に、0.5質量%~4.0質量%、特に好ましくは0.5質量%~2.0質量%、特に0.8質量%~1.2質量%の量で添加される、請求項11に記載のスペーサ(1)。
【請求項13】
前記ポリマー本体(5)は、基材として熱可塑性ポリマーを30.0質量%~70.0質量%の割合で含有し、エラストマー添加剤として熱可塑性エラストマー及び/又はエラストマー成分を有する熱可塑性ターポリマーを合計で0.5質量%~20.0質量%の割合で含有し、かつ補強材を20.0質量%~45.0質量%の割合で含有する、請求項11又は12に記載のスペーサ(1)。
【請求項14】
気密性及び水密性バリアフィルムは、前記本体の少なくとも外側表面(9)及び前記傾斜部(9a、9b)に適用されている、請求項1~13のいずれか一項に記載のスペーサ(1)。
【請求項15】
請求項1~14までのいずれか一項に記載のスペーサ(1)、第1ペイン(15)及び、第2ペイン(16)を少なくとも有する遮断グレージング(2)であって、前記第1ペイン(15)は、前記スペーサー(1)の前記第1ペイン接触表面(7.1)に、封止剤(4)を介して取り付けられており、前記第2ペイン(16)は、前記スペーサー(1)の前記第2ペイン接触表面(7.2)に、封止剤(4)を介して取り付けられている、遮断グレージング(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断グレージングのためのスペーサ、そのようなスペーサを有する遮断グレージング、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遮断グレージング(絶縁グレージング)が、特にはますます厳格になっている環境保護規制の結果として、建設分野において不可欠になっている。これらのグレージングは、少なくとも1つの周縁スペーサを介して互いに接合している少なくとも2つのペインからできている。実施態様に応じて、グレージング内部として言及される、2つのペインの間の空間が、空気で充填されており、又はガスで充填されており、しかしながら、いずれの場合にも、湿分を有しない。グレージングペイン間空間における過剰な湿分含有量は、特には低い外部温度を伴って、ペイン間空間における水滴の凝集をもたらし、これは、絶対的に回避される必要がある。アセンブリの後で系内に残る残余湿分を吸収するために、乾燥剤で充填された中空体スペーサを使用することができる。
【0003】
独国特許出願公開第2929544号明細書は、遮断グレージングのコーナー領域における柔軟性を向上させた、遮断グレージングのための金属スペーサを開示している。
【0004】
ペイン間空間を湿気から密閉することに加えて、スペーサのもう1つの重要な役割は、遮断グレージングの片側における建物内部と、遮断グレージングの反対側における環境とを、熱的に切り離すことにある。スペーサの熱伝導率は、ペインの熱特性に対して無視できない影響を与える。既知の実施形態の1つにおいて、スペーサは軽金属、通常はアルミニウムでできている。これらは処理が簡単である;しかしながら、アルミニウムの熱伝導率は高いため、エッジ領域におけるグレージングの遮断効果は、大幅に低下する(「コールドエッジ(寒冷端部)」効果とも呼ばれる)。
【0005】
熱特性を改善するために、スペーサのためのいわゆる「ウォームエッジ(温暖端部)」解決が知られている。これらのスペーサは、特にはプラスチックでできているため、熱伝導率を大幅に低下させる。金属製のスペーサと比較すると、プラスチック製のスペーサは気密性が十分ではないが、スペーサの外側表面に遮断フィルムを適用することで、気密性を得ることができる。
【0006】
国際公開第2013/104507号は、ポリマー中空プロファイル本体及び遮断フィルムを備えたスペーサを開示している。その遮断フィルムは、ポリマーフィルム、及び少なくとも2つの金属層又はセラミック層を有し、これらは少なくとも1つのポリマー層と交互に配置される。
【0007】
国際公開第2021/008951号は、遮断フィルムを備える中空プロファイルスペーサを記載しており、その遮断フィルムは、少なくとも1つの発泡ポリマー層及び少なくとも1つのバリア層を有する。
【0008】
国際公開第2017/174333号は、スペーサフレームを介して互いに接合された第1ペインと第2ペインを有する、冷却装置用の遮断グレージングユニットを開示している。スペーサフレームは、5%~50%の強化繊維の割合を有する第1中空プロファイルスペーサ、及び0%~0.5%の強化繊維の割合を有する第2中空プロファイルスペーサを有し、第2中空プロファイルスペーサは、好ましくは透明である。
【0009】
ポリマースペーサの熱伝導率をさらに下げるために、スペーサを中空プロファイルとして実装するだけでなく、材料内の空気含有量を増やす努力も行われている。例えば、独国特許出願公開第19807454号明細書は、発泡プラスチックスペーサを記載している。このような発泡ポリマースペーサは、例えば、欧州特許第2930296号明細書に示されているように、起泡剤を添加することによって製造されうる。また、国際公開第2016/139180号は、起泡剤の添加によって生じた空隙を含有する発泡ポリマースペーサを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、スペーサ本体の発泡は、スペーサに作用する力の方向に応じて、スペーサの機械的特性に悪影響を与える。発泡スペーサは、多くの場合、優れた機械的強度を備えているが、弾性が不足しており、不十分な破壊挙動を有する。さらに、非発泡ポリマースペーサの破壊強度も改善する必要がある。
【0011】
本発明の目的は、熱伝導率が低く、同時に破壊強度が高いスペーサ、このスペーサを有する遮断グレージング、及びそのスペーサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、本発明によれば、独立請求項1及び15に従ってスペーサ及びスペーサを有する遮断グレージングによって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明によるスペーサの断面図の概略図である。
図2a図2aは、本発明によるスペーサを備えた遮断グレージングの断面図の概略図である。
図2b図2bは、図2aの遮断グレージングの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
遮断グレージングのための本発明によるスペーサは、少なくとも、2つのペイン接触表面、グレージング内部表面、外側表面、及び中空チャンバを含むポリマー本体を有する。スペーサの2つのペイン接触表面は、第1ペイン接触表面及び第2ペイン接触表面と呼ばれる。第1ペイン接触表面及び第2ペイン接触表面は、スペーサの側面であり、その上に、スペーサの設置の際、遮断グレージングの外側ペイン(第1ペイン及び第2ペイン)が据え付けられる。第1ペイン接触表面及び第2ペイン接触表面は、互いに反対側に位置し、互いに平行に延在する。グレージングの内部表面及び外側表面は、第1ペイン接触表面及び第2ペイン接触表面を介して互いに接続されている。ペイン接触表面、外側表面、及びグレージング内部表面によって囲まれた空間は、スペーサの中空チャンバである。グレージング内部表面及び外側表面は、少なくともいくつかの部分において互いに平行に延在している。スペーサの外側表面は、ペイン接触表面に隣接してそれぞれ角度が付けられており、その結果、本体の向上した安定性が得られる。外側表面は、第1ペイン接触表面に隣接する第1傾斜部、及び第2ペイン接触表面に隣接する第2傾斜部を有する。第1傾斜部は、隣接する第1ペイン接触表面に対して120°~150°の角度αをとり、第2傾斜部は、隣接する第2ペイン接触表面に対して120°~150°の角度αをとる。外側表面の2つの傾斜部の間に延在する外側表面は、グレージング内部表面と平行に延在し、第1ペイン接触表面及び第2ペイン接触表面に対して87°~93°の角度βで配置される。ここで、ペイン接触表面は互いに対して平行に延在する。従って、ペイン接触表面は、両方ともグレージング内部表面に対して90°の角度βをとるか、又は両方とも反対の符号で同じ量だけ90°から逸脱するかのいずれかである。このような場合、例えば、グレージング内部表面に対して、一方のペイン接触表面は89.5°の角度をとり、他方のペイン接触表面は90.5°の角度をとる。ペイン接触表面は、グレージング内部表面及び外側表面の傾斜部とコーナーを形成し、そこでペイン接触表面は、グレージング内部表面又は外側表面の傾斜部と当接する。同様に、外側表面の傾斜部とその間に位置する残りの外側表面との間にもコーナーが存在する。コーナーにおいて、いずれの場合も、コーナーが丸くなる半径が存在する。「中空チャンバの内側」と呼ばれる、中空チャンバ内に位置するコーナーと、中空チャンバの反対側を向いている外側のコーナーとを区別しなければならない。本発明によれば、外側表面の傾斜部とそれぞれの隣接するペイン接触表面との間に形成される、中空チャンバ内のコーナーの少なくとも1つは、0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められている。さらに、第1傾斜部と外側表面との間、かつ第2傾斜部と外側表面との間に形成される、中空チャンバ内のコーナーの少なくとも1つは、0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められている。グレージング内部表面と第1ペイン接触表面との間、及びグレージング内部表面と第2ペイン接触表面との間に形成される、中空チャンバ内のコーナーのうち、少なくとも1つのコーナーは、1.0mm~2.5mmの半径Rで丸められている。
【0015】
スペーサの本体は、本体に沿って延在する中空チャンバを有しており、すなわち、中空プロファイルスペーサとして設計されている。中空プロファイルスペーサの内側、すなわち、中空チャンバを画定するスペーサの内側表面において、本体壁のコーナーは、中空チャンバ内側のコーナーと呼ばれる。このようにして、スペーサ壁の勾配が変化する壁のすべての領域において、本体壁の隣接する部分はコーナーの形態で当接する。内側のコーナーは、中空チャンバ内側のコーナーとして表される;外側のコーナーは、外部環境に向いており、外側のコーナーとして表される。中空チャンバ内側の本体の少なくとも1つのコーナーは、傾斜部及びそれに隣接するペイン接触表面の領域に位置し、本発明に従って0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められている。好ましくは、傾斜部と隣接するペイン接触表面との間の、中空チャンバ内側の両方のコーナーがこの半径で丸められている。さらに、本発明によれば、外側表面と隣接する傾斜部との間の、中空チャンバ内側のコーナーの少なくとも1つも、0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められている。好ましくは、外側表面と傾斜部との間の中空チャンバ内側の両方のコーナーは、この半径の丸みを有する。グレージング内部表面及び隣接するペイン接触表面の領域における、中空チャンバ内側のコーナーもあり、これらは、本発明に従って少なくとも部分的に1.0mm~2.5mmの半径Rで丸められている。好ましくは、グレージング内部表面と隣接するペイン接触表面との間の領域における中空チャンバ内側の全てのコーナーは、対応して丸められている。
【0016】
中空チャンバ内側に丸いコーナーを有する本発明によるスペーサは、既知のスペーサと比較して、機械的安定性が著しく高く、破壊特性が改善されている。さらに、スペーサの幾何学的形状は、発泡基体材料に関して特によく適している。非発泡ポリマースペーサを用いた場合でも、安定性の向上が達成されうる。さらに、半径R、R、及び/又はRを大きくすることによって、コーナーの領域における材料の厚さが増加し、スペーサの溶接性の向上が保証される。
【0017】
発明者による試験は、半径Rがスペーサの機械的特性に最も大きな影響を与えることを示している。半径Rを1.0mm~2.5mmで選択するとき、スペーサの機械的特性の大幅な改善が既に観察されうる。これは、半径R及びRが、0.4mm~2.5mmのかなり広い範囲内で、Rとは独立して選択されるときにも当てはまり、比較的小さな半径をとることもできる。半径R及びRを調整する結果、グレージング内部側及びスペーサの外側における質量バランスが等しくなる。その結果、スペーサは、押出成形後の製造プロセスにおいて、上部及び底部で均一に冷却され、このようにして、収縮差を回避し、スペーサプロファイルの湾曲を引き起こす反り差を抑制する。しかしながら、記載された影響は、他の方法においても抑制されうるため、半径R及びRは、必ずしも半径Rと同じ程度に変更されなくてよい。
【0018】
グレージング内部表面は、スペーサを遮断グレージング内に設置した後、グレージングの内部の方向に面する、スペーサ本体の表面として定義される。グレージング内部表面は、第1ペインと第2ペインとの間に位置する。
【0019】
スペーサ本体の外側表面は、グレージング内部表面の反対側であり、これは、外側封止の方向において遮断グレージングの内部とは反対側を向いている。グレージング内部表面及び外側表面は、傾斜部を除いて、好ましくは、互いに実質的に平行である。
【0020】
第1ペイン接触表面及び第2ペイン接触表面は、遮断グレージングのペインを据え付けるために用いるスペーサの表面である。第1ペイン接触表面及び第2ペイン接触表面は、互いに実質的に平行である。
【0021】
本体の中空チャンバは、グレージング内部表面に隣接しており、グレージング内部表面は、中空チャンバの上に位置し、スペーサの外側表面は、中空チャンバの下に位置する。この文脈において、「上」は、スペーサが設置された状態において遮断グレージングの内側ペイン間空間に面するものとして定義され、「下」は、ペイン内部とは反対側の方向に面するものとして定義される。
【0022】
スペーサの中空チャンバにより、中実で形成されたスペーサと比較して重量が軽減され、追加の構成要素(例えば、乾燥剤など)を収容しうる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、第1傾斜部及び第2傾斜部は、それぞれの場合において、それぞれの隣接するペイン接触表面に対して130°~140°の角度αを有する。これは、スペーサの機械的安定性をさらに向上させるのに有利である。好ましくは、第1傾斜部とペイン接触表面との間の角度αは、第2傾斜部とペイン接触表面との間の角度αと同じ値をとる。このような対称的な設計により、安定性がさらに向上する。
【0024】
好ましくは、傾斜部と隣接するペイン接触表面との間に形成される、中空チャンバ内側の各コーナーは、0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められている。特に好ましくは、これらのコーナーのそれぞれは、0.6mm~2.5mm、特には0.8mm~2.5mm、例えば1.5mm~2.5mmの半径で丸められ、これによりさらに改善された結果が達成される。
【0025】
有利な実施形態において、中空チャンバ内側のコーナーは、第1傾斜部と外側表面との間、及び第2の傾斜部と外側表面との間に形成され、それぞれの場合において、0.4mm~2.5mmの半径Rで丸められている。好ましくは、0.6mm~2.5mm、特に好ましくは0.8mm~2.5mm、特には1.5mm~2.5mmの半径Rが選択される。これにより、スペーサのコーナーにおける強度が向上し、対応する半径の調整によって、より均一な冷却挙動が実現される。このようにして、スペーサの上部領域と下部領域における応力の差をさらに小さくすることができる。
【0026】
グレージング内部表面は、好ましくは、それぞれの場合において、第1ペイン接触表面及び第2ペイン接触表面に対して89.5°~90.5°の角度βをとる。特に、通常の生産変動を考慮すると、角度βは正確には90°である。グレージング内部表面及び第1ペイン接触表面の領域、並びにグレージング内部表面及び第2ペイン接触表面の領域における、中空チャンバ内側のコーナーは、好ましくは、それぞれの場合において、1.0mm~2.0mm、好ましくは1.3mm~1.7mmの半径Rで丸められている。これらの範囲において、特に有利な応力の最小化が起こる。
【0027】
スペーサ外側のコーナーを、随意に丸くしてもよい。スペーサの機械的安定性に対するこの影響は、中空チャンバ内側のコーナーの設計と比較して小さいが、それでもこの手段によって改善を達成しうる。また、外側のコーナーを丸くすることで、型(成形型)でのスペーサの製造が簡素化される。傾斜部と外側表面との間の領域、及び傾斜部とそれぞれの隣接するペイン接触表面との間の領域の外側コーナーは、好ましくは、0.125mm~0.7mm、好ましくは0.3mm~0.7mmの半径Rで丸められる。
【0028】
スペーサの機械的特性に対するさらなる影響が、ペイン接触表面の高さによってもたらされることが判明した。好ましい実施形態において、ペイン接触表面の高さは、スペーサの全高の55%~80%、好ましくは60%~75%である。既知の従来技術のスペーサと比較して、全高に対するこの比較的高い割合は、安定性及びペイン接触表面への遮断グレージングのペインの確実な接合の点で有利である。さらに、それによって、傾斜形状が存在する部分のスペーサの高さが減少する。その結果、スペーサの中空チャンバの容積が拡大されることで、乾燥剤を収容するために比較的大きいスペーサ容積を利用できるようになる。
【0029】
スペーサの高さは、グレージング内部表面と外側表面との間のスペーサの最大高さとして決定される。スペーサの高さは、好ましくは5.0mm~10.0mm、特に好ましくは6.0mm~8.0mm、とりわけ6.5mm~7.0mmである。これらの範囲内で、スペーサの良好な安定性及びペイン接触表面へのペインの確実な接合が達成される。
【0030】
スペーサの幅は、対向するペイン接触表面間のスペーサの最大範囲として定義される。スペーサの幅は、本質的に、製造される遮断グレージングの望ましいペイン間空間によって異なる。スペーサの幅は、典型的には4mm~30mm、好ましくは8mm~16mmである。
【0031】
好ましくは、本体の壁厚は、0.5mm~1.5mmであり、特に好ましくは0.8mm~1.2mmである。これらの範囲において、良好な安定性が得られる。同時に、材料の消費量は、可能な限り低く抑えられる。
【0032】
ペイン接触表面と実質的に平行に延在する穿孔溝が、好ましくは、グレージング内部表面内に導入される。穿孔溝は、グレージング内部表面におけるくぼみである。すなわち、穿孔溝は、グレージング内部表面から中空チャンバに向かって、穿孔溝の深さだけ後退(オフセット)している。穿孔溝の深さは、好ましくは、0.05mm~0.5mm、特に好ましくは0.07mm~0.25mm、例えば0.10mmである。穿孔溝は、好ましくは、0.20mm~0.50mm、特に好ましくは0.30mm~0.40mm、例えば0.36mmの半径Rで丸められている。穿孔溝のそのような平坦かつ丸みを帯びた幾何学的形状により、穿孔溝の領域における機械的応力が最小限に抑えられるという利点が得られる。
【0033】
穿孔溝内で、グレージング内部表面内に、複数の開口部が形成されており、開口部の領域において、中空チャンバとグレージング内部表面の上方の領域との間に直接通路が存在する。スペーサが遮断グレージング内に設置された状態において、開口部は、中空チャンバの内部をグレージングの内部に接続し、それらの間のガス交換を可能にする。これによって、中空チャンバ内に配置された乾燥剤による大気湿度の吸収が可能になり、こうしてペインの曇りが防止される。開口部は、好ましくはスリットとして実装され、特に好ましくは、0.1mm~0.3mmの幅、例えば0.2mmの幅、及び、1.5mm~3.5mmの長さ、例えば2mmの長さ、を有するスリットとして実装される。スリットにより、乾燥剤が中空チャンバから内部のペイン間空間内に侵入することなく、最適な空気交換が確保される。開口部の総数は、遮断グレージングのサイズによって異なる。
【0034】
ポリマー本体は、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、好ましくは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレンアクリルエステル(ASA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、PET/PC、PBT/PC、並びに/又はそれらのコポリマー若しくは混合物である。これらの材料を用いると、機械的安定性の点で良好な結果が得られる。
【0035】
スペーサの特に好ましい実施形態において、本体は熱可塑性ポリマーを含む。本体に適した熱可塑性ポリマーとして、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、又はそれらのコポリマー若しくは混合物が挙げられる。スチレンに基づいた熱可塑性ポリマーを基材として用いると、本体の機械的特性の点で特に有利であることが証明されている。特に適切な熱可塑性ポリマーは、スチレンアクリロニトリル(SAN)である。
【0036】
ポリマー本体は、好ましくは、細孔構造を有する発泡本体である。細孔構造とは、規則的な中空空間を有し、その中に空気が満たされている構造である。
【0037】
プラスチック溶融物(例えば、ポリマー本体の押出成形のためのポリマー溶融物など)の発泡について、様々なプロセスが知られており、これらは物理的、機械的、及び化学的プロセスとして分類されうる。物理的及び機械的プロセスにおいて、ガスは、物理的又は機械的方法のみによってポリマー溶融物内に組み込まれる。対照的に、化学発泡プロセスは、熱の供給による発泡剤の分解に基づいており、発泡剤の揮発性ガス成分の分離を引き起こす。溶融物中に生成される細かく分散したガス成分は、ポリマー溶融物の発泡を引き起こす。本発明によるスペーサを製造するために、好ましくは、直接発泡プロセスが用いられる。直接発泡プロセスとして、発泡押出が挙げられ、これは、好ましくは、本発明によるスペーサの製造に用いられ、このプロセスにおいて、発泡剤によって放出されるガスが、ノズルから出るときにプラスチックの膨張を引き起こす。押出成形の際の発泡の結果、中空プロファイルの壁は、中実材料として形成されなくなり、代わりに、気泡が侵入し、それゆえに細孔状の空隙が形成される。本体の発泡実装は、本体の熱特性の点で有利であり、かつ、同時に、重量の軽減にもつながる。軽量化に関して、本体を中実材として実装した場合と比較して、約10%~20%の重量が除かれる。熱特性は、空隙内に封入されたガスによって大幅に改善され、細孔内に存在するガスが断熱材として機能する。
【0038】
好ましくは、ポリマー本体は、起泡剤を添加した化学発泡によって発泡される。起泡剤を、好ましくは、キャリア材料及び発泡剤を有する顆粒の形態で用いる。熱が供給されると、発泡剤は吸熱反応において分解し、ガス状物質、好ましくはCO2が分離される。プラスチックを化学的に発泡させるための起泡剤は、当業者に知られており、市販されている。キャリア材料は通常、ポリマー顆粒であり、これは、例えば、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンブチルアクリレートコポリマー(EBA)、ポリエチレン(PE)、熱可塑性ポリスチレン(TPS)、又は熱可塑性ポリウレタン(TPU)に基づく。粒状起泡剤は、一般に、押出機内で溶融する前にポリマー混合物に添加される。
【0039】
起泡剤は、好ましくは、ポリマー本体のポリマー混合物に、0.5質量%~3.0質量%、特に好ましくは0.5質量%~2.0質量%、とりわけ0.8質量%~1.2質量%の量で添加される。これら少量は、本体の望ましい気孔率を得るのに十分である。
【0040】
ポリマー本体は、好ましくは、独立気泡細孔を含む。孔径は、好ましくは10μm~100μm、特に好ましくは20μm~80μm、とりわけ30μm~70μmである。これらの細孔サイズ内で、熱伝導率の有利な低減及び本体の良好な機械的安定性の両方を達成しうる。
【0041】
発泡ポリマー本体は、好ましくは基材としての熱可塑性ポリマーから製造され、特には、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、又はそれらのコポリマー若しくは混合物が有利である。
【0042】
ポリマー本体の混合物の個々の成分の割合は、質量パーセントで示され、合計すると100%となり、今述べた以外の成分も存在しうる。このような他の成分の例として、エラストマー添加剤、補強材、及び着色顔料が挙げられる。
【0043】
好ましい実施形態において、本体は、基材としての熱可塑性ポリマーから製造され、本体に補強材が添加され、及び/又は本体にエラストマー添加剤が配合される。
【0044】
ポリマー本体の基材としての熱可塑性ポリマーの割合は、30.0質量%~70.0質量%であり、補強剤の割合は20.0質量%~45.0質量%である。さらに、ポリマー本体は、随意にエラストマー添加剤を含み、スペーサの弾性特性の改善をもたらす。熱可塑性エラストマー、及び/又はエラストマー成分を有する熱可塑性ターポリマーが、エラストマー添加剤として添加される。エラストマー添加剤は、本体の総質量の合計のうち0.5質量%~20.0質量%の割合を有する。この程度の範囲内で、本体の弾性特性の大幅な改善が観察されうる。その結果、スペーサの機械的特性が向上する。本発明による幾何学的形状を有する本体は、中空チャンバの内側に丸いコーナーを有し、本体材料としての発泡熱可塑性ポリマー、少なくとも1つの補強剤、及び少なくとも1つのエラストマー添加剤と組み合わせたときに、スペーサの機械的特性にとって特に有利であることが判明している。
【0045】
好ましくは、熱可塑性エラストマー又はエラストマー成分を有する熱可塑性ターポリマーは、エラストマー添加剤として本体中に混合される。エラストマー添加剤としての熱可塑性エラストマーは、好ましくは、0.3質量%~5.0質量%、好ましくは0.3質量%~4.0質量%の割合で添加され、一方、エラストマー成分を有する熱可塑性ターポリマーは、3.0質量%~20.0質量%、好ましくは4.0質量%~14.0質量%の割合で用いられる。
【0046】
本発明によるスペーサの好ましい実施形態において、熱可塑性ポリウレタン(TPU)の群及び/又は熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)の群からの熱可塑性エラストマーが、エラストマー添加剤として用いられる。熱可塑性エラストマーTPU及びTPSの場合、0.3質量%~5.0質量%の割合は、弾性特性において望ましい改善をもたらすのに既に十分である。特に好ましくは、0.5質量%~4.0質量%、とりわけ1.5質量%~2.5質量%のTPU及び/又はTPSが添加される。これら少量は、十分な弾性を達成するのに既に十分であり、好ましい範囲内において、表面のより良好な外観及び本体の製造の際におけるポリマー溶融物のより良好な安定性が達成される。
【0047】
本発明によるスペーサの別の好ましい実施形態において、エラストマー添加剤は、エラストマー成分を有する熱可塑性ターポリマーである。熱可塑性ターポリマーは、複数のモノマー成分のコポリマーであり、少なくとも1つのモノマー成分は、エラストマー添加剤の弾性特性を提供する。他のモノマー成分は、例えば、スペーサの基材との良好な適合性が確保されるように選択されうる。
【0048】
エラストマー成分を有する熱可塑性ターポリマーは、好ましくは、3.0質量%~20.0質量%、好ましくは4.0質量%~20.0質量%、特に好ましくは4.0質量%~14.0質量%の割合で添加される。これらの範囲は、結果として生じる本体の弾性という点で特に有利であることが証明されている。特には、エラストマー添加剤として、ABS及び/又はASAは、この点で有利である。
【0049】
熱可塑性ターポリマーは、好ましくは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)として実現され、そのエラストマー成分は、コポリマーのブタジエン部分からなる。本体へのエラストマー添加剤として、ABSは、材料のより高い衝撃強度及び弾性をもたらす。
【0050】
ABSは、4.0質量%~20.0質量%、特に好ましくは4.5質量%~13.0質量%、とりわけ6.0質量%~12.0質量%の、本体におけるABSの割合で用いるとき、機械的特性及び弾性の点で特に効果的であることが証明されている。
【0051】
本発明の別の好ましい実施形態として、エラストマー成分を有する熱可塑性ターポリマーを含むスペーサが挙げられ、熱可塑性ターポリマーとしてアクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)が用いられる。アクリロニトリル-スチレン-アクリレートは、アクリレートゴムで修飾されたスチレン-アクリロニトリルコポリマーを指し、この場合、本発明の文脈において、エラストマー成分はアクリレートゴムである。ASAの特性は、基本的にABSの特性と似ており、同様の割合が特に有利であることが証明されている。ASAは、好ましくは、4.0質量%~20質量%、特に好ましくは4.5質量%~13.0質量%、とりわけ6.0質量%~12.0質量%の割合で添加される。
【0052】
スペーサの特に好ましい実施形態において、スチレンに基づいた熱可塑性ポリマーが基材として選択され、エラストマー添加剤は、少なくともポリプロピレンを含まず、好ましくはオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を含まない。スチレンに基づいた熱可塑性ポリマーと、エラストマー添加剤としてのプロピレンとの混合物は、押出成形プロセスにおける溶融物の安定性の問題を有することが判明している。他のオレフィン系熱可塑性エラストマーでも同様の効果が予想されるため、エラストマー添加剤を選択するとき、好ましくは、この群を完全に避けるべきである。
【0053】
繊維、粉末、又は小板の形態の多種多様な補強材は、ポリマー本体中の補強材として当業者に知られている。粉末及び/又は小板の補強材として、例えば雲母(マイカ)及び滑石(タルク)が挙げられる。特に好ましくは、機械的特性の点において、強化繊維として、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、セラミック繊維、又は天然繊維が挙げられる。これらの代替品として、粉砕ガラス繊維又はガラス中空球が挙げられる。これらの中空ガラス球は、10μm~20μmの直径を有し、ポリマー中空プロファイルの安定性が向上する。適切なガラス中空球は、「3M(商標)グラスバブルズ」という名前で市販されている。ありうる一実施形態において、ポリマー本体は、ガラス繊維及びガラス中空球の両方を含む。ガラス中空球を混合すると、中空プロファイルの熱特性がさらに向上する。
【0054】
特に好ましくは、ガラス繊維が補強材として用いられ、これらは25質量%~40質量%の割合で、特には30質量%~35質量%の割合で添加される。これらの範囲内で、本体の良好な機械的安定性及び強度が観察されうる。さらに、30重量%~35重量%のガラス繊維含有量は、好ましい実施形態においてスペーサの外側表面に適用される、交互のポリマー層及び金属層から構成される多層バリアフィルムと非常に良く適合する。ポリマー本体及びバリアフィルム又はバリアコーティングの熱膨張係数を調整することによって、異なる材料間の温度誘発応力及びバリアフィルム又はバリアコーティングの剥離が回避されうる。
【0055】
本体は、好ましくは、気密性及び蒸気気密性バリアフィルムを含み、これは本体の気密性を向上させるのに役立つ。好ましくは、これは、少なくともポリマー本体の外側表面、好ましくは外側表面及びペイン接触表面の一部に適用される。気密性及び蒸気気密性のバリアにより、ガスの損失及び湿気の侵入に対するスペーサの密閉性が向上する。好ましくは、バリアは、ペイン接触表面の約2分の1~約3分の2に適用されるが、比較的広い領域にわたって、又はペイン接触表面の高さ全体に沿って、取り付けることもできる。適切なバリアフィルムは、例えば国際公開第2013/104507号において開示されている。
【0056】
好ましい実施形態において、ポリマースペーサの外側表面上の気密性及び蒸気気密性のバリアは、フィルムとして実装される。このバリアフィルムは、少なくとも1つのポリマー層及び金属層又はセラミック層を含む。ポリマー層の層厚は5μm~80μmであり、一方、厚さ10nm~200nmの金属層及び/又はセラミック層が用いられる。上述の層厚内で、バリアフィルムの特に良好な密閉性が達成される。バリアフィルムは、例えば、接着によって、ポリマー本体上に適用しうる。代替的には、フィルムを本体と一緒に共押出成形しうる。
【0057】
バリアフィルムは、特に好ましくは、少なくとも1つのポリマー層と交互に配置された、少なくとも2つの金属層及び/又はセラミック層を含む。個々の層の層厚は、好ましくは、前の段落において説明したとおりである。好ましくは、外層は、金属層によって形成される。バリアフィルムの交互層を、多種多様な既知の従来技術の方法によって互いに接合又は適用しうる。金属層又はセラミック層を堆積する方法は、当業者によく知られている。交互層シーケンス(交互層配列)を備えたバリアフィルムの使用は、系の密閉性の点で特に有利である。いずれかの層に欠陥があっても、バリアフィルムの機能が失われることはない。それに比べて、単一層においては、小さな欠陥でさえ、完全な故障につながりうる。さらに、複数の薄い層を適用することは、1つの厚い層を適用する場合に比べて有利である。なぜなら、層の厚さが増すにつれて内部接着の問題が発生するリスクが高まるからである。また、より厚い層はより高い導電率を有するため、そのようなフィルムは熱力学的にあまり適切ではない。
【0058】
フィルムのポリマー層は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、アクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、及び/又はそれらのコポリマー若しくは混合物を含む。金属層は、好ましくは、鉄、アルミニウム、銀、銅、金、クロム、及び/又はそれらの合金若しくは酸化物を含む。フィルムのセラミック層は、好ましくは、酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素を含む。
【0059】
代替的な好ましい実施形態において、気密性及び蒸気気密性バリアは、好ましくは、コーティングとして実装される。コーティングは、アルミニウム、酸化アルミニウム、及び/又は酸化ケイ素を含有し、好ましくは、PVD法(物理蒸着)によって適用される。上記の材料でコーティングすると、密閉性の点で特に良好な結果が得られ、さらに、遮断グレージングに用いられる外側封止の材料に対して優れた接着特性を示す。
【0060】
特に好ましい実施形態において、気密性及び蒸気気密性バリアは、少なくとも1つの金属層又はセラミック層を有し、これはコーティングとして実装され、アルミニウム、酸化アルミニウム、及び/又は酸化ケイ素を含有し、好ましくはPVD法(物理蒸着)によって適用される。
【0061】
第1ペイン接触表面及び第2ペイン接触表面を含む記載のスペーサは、二重グレージング、三重グレージング、及び多重グレージングの両方に適している。複数のペインを収容するため、追加のスペーサ、又は複数のペインを収容するのに適した形状のスペーサ本体を用いうる。最初の場合、第1及び第2ペインを、スペーサのペイン接触表面に最初に取り付け、その後、ペインの、このスペーサとは反対側の表面の1つに、さらなるスペーサを取り付け、そのさらなるスペーサの露出したペイン接触表面に、さらにペインを追加する。これに代わる実施形態において、二重スペーサの形態であるスペーサを用いて、三重又は多重遮断グレージングを実装しうる。このような二重スペーサは、溝内に少なくとも1つの追加のペインを収容しうる。例えば、三重グレージング用のスペーサは、第1ペイン接触表面と第2ペイン接触表面との間のグレージング内部表面において溝を有し、その溝内に、第1ペインと第2ペインとの間で、第3ペインが挿入される。第1及び第2ペインは、スペーサの第1及び第2ペイン接触表面に取り付けられている。溝は、第1のグレージング内部表面と第2のグレージング内部表面との間に延在するので、溝はそれらを横方向で画定し、第1中空チャンバと第2中空チャンバとを互いに分離する。溝の側面は、第1中空チャンバ及び第2中空チャンバの壁によって形成されている。このような基本的なスペーサの形態は、とりわけ、国際公開第2014/198431号から知られている。
【0062】
本発明はさらに、本発明によるスペーサを有する遮断グレージングを含む。遮断グレージングは、少なくとも第1ペイン、第2ペイン、及びこれらのペインを取り囲む(これらのペインの周縁に延在する)本発明による周縁スペーサを含む。
【0063】
遮断グレージングのグレージング内部は、スペーサのグレージング内部表面に隣接して位置する。一方、スペーサの外側表面は、外側ペイン間空間に隣接している。第1ペインは、スペーサの第1ペイン接触表面に取り付けられる;第2ペインは、スペーサの第2ペイン接触表面に取り付けられる。
【0064】
第1及び第2ペインは、好ましくは、第1ペイン接触表面と第1ペイン、及び/又は第2ペイン接触表面と第2ペインとの間に適用される封止剤(シーラント)を介して、ペイン接触表面に取り付けられる。
【0065】
封止剤は、好ましくは、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリエチレンビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル、ポリオレフィンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、コポリマー、及び/又はそれらの混合物を含有する。
【0066】
封止剤は、好ましくは、0.1mm~0.8mm、特に好ましくは0.2mm~0.4mmの厚さでスペーサとペインとの間の隙間に導入される。
【0067】
遮断グレージングの外側ペイン間空間は、好ましくは、外側封止剤で充填される。この外側封止剤は、主に2つのペインを接着するために機能し、このようにして遮断グレージングの機械的安定性のために機能する。
【0068】
外側封止剤は、好ましくは、ポリスルフィド、シリコーン、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリアクリレート、コポリマー、及び/又はそれらの混合物を含む。このような材料は、ガラスへの非常に良好な接着力を有するため、外側封止は、ペインの確実な接着を確保する。外側封止剤の厚さは、好ましくは2mm~30mm、特に好ましくは5mm~10mmである。
【0069】
本発明の特に好ましい実施形態において、遮断グレージングは、少なくとも3つのペインを有し、第1ペイン及び/又は第2ペインに取り付けられる、さらなるスペーサフレームを有し、そのフレームに少なくとも第3ペインが取り付けられる。代替実施形態において、遮断グレージングは、溝を備えた二重スペーサを有し、その溝に第3ペインが挿入される。第1及び第2ペインは、ペイン接触表面に接して置かれる。
【0070】
遮断グレージングの第1ペイン、第2ペイン、及び/又は第3ペインは、好ましくは、ガラス、特に好ましくは石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、及び/又はそれらの混合物を含有する。遮断グレージングの第1及び/又は第2ペインは、熱可塑性ポリマーペインを含みうる。熱可塑性ポリマーペインは、好ましくは、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、並びに/又はそれらのコポリマー及び/若しくは混合物を含む。遮断グレージングの追加のペインは、第1、第2、及び第3ペインについて述べたのと同じ組成を有しうる。
【0071】
第1ペイン及び第2ペインは、2mm~50mm、好ましくは2mm~10mm、特に好ましくは4mm~6mmの厚さを有し、2つのペインは、異なる厚さを有していてもよい。
【0072】
第1ペイン、第2ペイン、及びその他のペインは、単一ペイン安全ガラス、熱若しくは化学強化ガラス、フロートガラス、超透明低鉄フロートガラス、着色ガラス、又は1つ以上のこれらの構成要素を含む積層安全ガラスでできていてよい。ペインは、他の構成要素又はコーティング(例えば、Low-E層若しくは他の日射遮蔽コーティングなど)を有しうる。
【0073】
第1ペイン、第2ペイン、及びスペーサの外側表面によって画定される外側ペイン間空間は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、外側封止剤で充填される。このようにして、縁(エッジ)の封止の非常に良好な機械的安定化が達成される。
【0074】
好ましくは、外側封止剤は、ポリマー又はシラン修飾ポリマー、特に好ましくは有機ポリスルフィド、シリコーン、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、過酸化物加硫シリコーンゴム、及び/若しくは、添加加硫シリコーンゴム、ポリウレタン、並びに/又はブチルゴムを含む。
【0075】
第1ペイン接触表面と第1ペインの間、又は第2ペイン接触表面と第2ペインの間の封止剤は、好ましくはポリイソブチレンを含有する。ポリイソブチレンは、架橋ポリイソブチレンであっても非架橋ポリイソブチレンであってもよい。
【0076】
遮断グレージングは、随意に保護ガス、好ましくは希ガス、好ましくはアルゴン又はクリプトンで充填され、これらは、遮断グレージングのペイン間空間における熱伝達値を低減する。
【0077】
原則として、遮断グレージングの多種多様な幾何学的形状は、例えば、長方形、台形、及び丸みを帯びた形状であってよい。丸い幾何学的形状を作り出すために、スペーサは、例えば、加熱された状態において曲げることができる。
【0078】
遮断グレージングのコーナーにおいて、スペーサは、例えば、コーナーコネクタを介して、互いに接続されている。このようなコーナーコネクタを、例えば、封止を備えた成形プラスチック部品として実装してよく、その中で2つのスペーサが隣接する。
【0079】
これの代替として、スペーサを、例えば、コーナー領域において互いに隣接するスペーサを溶接することによって、コーナーにおいて互いに直接接合しうる。例えば、スペーサを45°で留め、超音波溶接によって互いに接合する。
【0080】
別の好ましい実施形態において、スペーサをグレージングのコーナーにおいて分離せず、かつコーナーコネクタによって要求される角度で接続しないが、その代わりに、加熱しながら対応するコーナー幾何学的形状へと曲げる。
【0081】
本発明によるスペーサを製造するための好ましい方法は、以下のステップを含む:
(a) 本体を製造するためのポリマー混合物を提供すること、このポリマー混合物は、好ましくは基材として熱可塑性ポリマーを少なくとも含み、随意に少なくとも1つのエラストマー添加剤、1つの補強材、及び/又は1つの発泡剤も含む:
(b) 混合物を押出機内で200℃~240℃の温度で溶融すること:
(c) 随意に:温度の影響下で発泡剤を分解すること:
(d) 溶融物を押出機から型を通して押し出し、スペーサ本体を形成すること:
(e) スペーサを安定化させること:及び
(f) スペーサを冷却すること。
【0082】
ステップ(a)における混合物のポリマー成分は、好ましくは、顆粒の形態で提供される。これは、特に基材としての熱可塑性ポリマー及びエラストマー添加剤に当てはまる。その結果、これらをすぐに計量することができ、容易に取り扱うことができる。補強材は、繊維状又は球状であり、すなわち、計量も容易である。補強材はまた、熱可塑性ポリマーと一緒に提供されうる。規定の補強材含有量を有する、熱可塑性ポリマーのそのような混合物は市販されている。キャリア材料及び発泡剤を有する、顆粒の形態の適切な起泡剤は、市販されている。発泡剤は粒状キャリア材料の表面に適用されている。キャリア材料上の発泡剤の濃度は変えることができ、多くの場合、15質量%~30質量%、例えば20質量%~25質量%である。起泡剤を用いる場合、ステップ(c)において型を通して溶融物を押し出す際に溶融物の発泡が起こり、その結果、スペーサ内に細孔が形成される。
【0083】
好ましくは、ステップ(a)において提供される混合物は、着色顔料及び/又は添加剤、特に好ましくは、少なくとも着色顔料を含む。着色顔料は、ポリマー接合着色顔料の形態で提供され、この中において、顆粒の形態で用いられる熱可塑性基材とともに圧縮されている。これらの顆粒は、口語的に「カラーマスターバッチ」とも呼ばれ、着色顔料の計量性を向上し、技術的プロセスの信頼性を高める。ポリマー接合着色顔料は、望ましい着色に応じて、1.0質量%~4.0質量%の割合でステップ(a)の混合物内に随意に添加される。
【0084】
この方法の好ましい実施形態において、ステップ(a)においてスチレンアクリロニトリルが基材として用いられ、一方、エラストマー添加剤は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)の群及び/又は熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)の群からの熱可塑性エラストマーであり、0.3質量%~5質量%の割合で添加される。特に好ましくは、混合物は、30重量%~70重量%の割合での基材としての熱可塑性ポリマー、0.3重量%~5重量%の割合でのエラストマー添加剤、及び30質量%~40質量%の割合での補強剤としてのガラス繊維、から構成される。起泡剤は、0.5質量%~2質量%の割合で添加される。押出機内での溶融の際、この混合物は、相互の成分の良好な適合性及び良好なプロセス安定性を示す。
【0085】
この方法の別の実施形態において、ステップ(a)においてスチレンアクリロニトリルが基材として使用され、この場合、エラストマー添加剤は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)及び/又はアクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)であり、4.0質量%~20.0質量%の割合で添加される。好ましくは、SANの混合物を熱可塑性基材として、30質量%~70質量%の割合で用い、エラストマー添加剤を4.0質量%~20.0質量%の割合で用い、ガラス繊維を補強材として30質量%~40質量%の割合で用いる。起泡剤は、0.5重量%~2.0重量%の割合で添加される。
【0086】
好ましい実施形態は、混合物を押出機内において200℃~240℃、好ましくは215℃~220℃の温度で溶融する方法である。これらの溶融温度において、発泡スペーサの細孔構造の点で非常に良好な結果が得られる。
【0087】
好ましくは、溶融物は、温度の影響下で吸熱分解する起泡剤を用いて発泡され、COを放出する。
【0088】
本体を形成するには、溶融物は、好ましくは、溶融物ポンプを用いて型を通して中空プロファイルに成形される。本体は、真空校正器具(真空キャリブレーションツール)を用いて、まだ固化していない本体プロファイルに基づいて安定化される。これにより、本体の幾何学的形状が確保される。次に、好ましくは、本体を冷却浴に通し、ほぼ室温まで冷却する。
【0089】
好ましい実施形態において、気密性及び蒸気気密性バリアフィルムを、本体の外側に適用する。好ましくは、これは本体と共押出成形されるか、又は本体に接合され、特に好ましくは接合される。
【0090】
記載された方法によって製造されたスペーサは、遮断グレージングを製造するための方法において用いられうる。このような方法は、少なくとも以下のステップを含む。
(g) 本発明によるスペーサを提供すること:
(h) 本発明によるスペーサからスペーサフレームを組み立てること:
(i) 第1ペインを、封止剤を介してスペーサフレームの第1ペイン接触表面に取り付け、第2ペインを、封止剤を介してスペーサフレームの第2ペイン接触表面に取り付けること:
(j) 随意に:少なくとも1つのさらなるスペーサフレームを第1ペイン及び/又は第2ペインに取り付け、第3ペイン、及び随意にさらなるペインを、さらなるスペーサフレームに取り付けること:
(k) ペインアセンブリをプレス(押圧)すること:
(l) 外側封止剤を外側ペイン間空間に導入すること。
【0091】
ステップ(i)によるペイン接触表面へのペインの接合を、任意の順序で行うことができる。随意に、ペイン接触表面への2つのペインの接合を、同時に行うこともできる。
【0092】
ステップ(i)において、外側ペイン間空間を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、外側封止剤で充填する。外側封止剤を、好ましくは、例えば、プラスチック封止合成物の形態で、外側ペイン間空間に直接押し出す。
【0093】
好ましくは、アセンブリをプレスする前に、ペイン間のグレージング内部を、保護ガスで充填する(ステップ(k))。
【0094】
本発明によるスペーサの製造方法及び本発明による遮断グレージングの製造方法に関する。
【0095】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図面は、純粋に概略的な表現であり、縮尺通りではない。それらは、本発明を決して制限するものではない。それらは以下を描写している。
【0096】
図1図1は、本発明によるスペーサの断面図の概略図である。
図2a]図2aは、本発明によるスペーサを備えた遮断グレージングの断面図の概略図である。
図2b]図2bは、図2aの遮断グレージングの平面図である。
【0097】
図1は、2つのペイン接触表面7.1及び7.2、グレージング内部表面8、外側表面9、及び中空チャンバ10を備えた、ポリマー本体5を有する、本発明によるスペーサ1の概略図を示す。外側表面9は傾斜形状を有し、ペイン接触表面7.1及び7.2に隣接する外側表面の傾斜部9a、9bは、ペイン接触表面7.1及び7.2に対して角度α=45°で傾いている。これにより、本体5の安定性が向上する。ペイン接触表面7.1、7.2とグレージング内部表面8との間の角度は、いずれの場合もβ=90°である。水密性及び蒸気気密性のバリアフィルム(図示せず)は、遮断グレージングのグレージング内部内への、ポリマー本体5を通る熱伝達を低減し、外側表面9、外側表面の傾斜部9a、9bに適用され、随意に、スペーサ1のペイン接触表面7.1、7.2のサブ領域に適用される。水密性及び蒸気気密性のバリアフィルム(図示せず)は、遮断グレージングのグレージング内部内への、ポリマー本体5を通る熱伝達を低減し、スペーサ1の外側表面9に適用される。バリアフィルムは、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートの3つのポリマー層、及び厚さ50nmのアルミニウムの3つの金属層を有する。金属層及びポリマー層は、それぞれ交互に適用され、スペーサが設置された状態において、遮断グレージングの外側ペイン間空間に面しているバリアフィルムの層は、金属層である。バリアフィルムは本体5に接合される。中空チャンバ10は、乾燥剤を充填するのに適している。スペーサ1のグレージング内部表面8は、開口部12を有し、開口部12は、グレージング内部表面8に沿った穿孔溝14内に、周縁方向に規則的な間隔で形成されて、遮断グレージングの内部と中空チャンバ10との間のガス交換を可能にする。このようにして、内部に存在する任意の湿分は乾燥剤11によって吸収される。開口部12は、好ましくは、幅0.2mm及び長さ2mmのスリットとして実装される。本体5の壁の材厚(厚さ)は、周縁方向におおよそ同一であり、例えば、1mmである。本体の寸法は、例えば、高さ6.85mm及び幅15.30mmを有する。ペイン接触表面7.1、7.2は、4.313mmの高さを有し、このようにして、スペーサ1の全高の63%を構成する。
【0098】
混合物から図1の本体5が押出成形され、その混合物は、30質量%~35質量%の割合で熱可塑性基材としてのスチレンアクリロニトリル、ガラス繊維、1.0質量%の起泡剤、及び着色顔料を含む。本体5は、30μm~70μmの大きさの細孔を有する。本体5は、良好な機械的強度を有し、低減された熱伝導率を有し、軽量化されている。
【実施例
【0099】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を参照して、本発明を説明する。図1によるスペーサは、本発明による実施例として用いられる。本発明によらない比較例として、基本構造において図1のスペーサに対応し、30重量%~35重量%の割合で熱可塑性基材としてのスチレンアクリロニトリル、ガラス繊維及び着色顔料を含むスペーサを用いる;しかしながら、本発明による実施例とは対照的に、比較例は発泡していない。比較例のスペーサは、本発明によるスペーサの幾何学的形状と同様の幾何学的形状で製造され、表1は、本発明によるスペーサの幾何学的形状を実施例として、及び本発明によらないスペーサの幾何学的形状を比較例として、互いに比較して示す。寸法、角度α及びβ、並びに半径R、R及びR(中空チャンバ内側のコーナー18は、半径R、R及びRで丸められる)、又は半径R(穿孔溝は、半径Rで導入される)は、図1に示されるものに対応する。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例及び比較例によるスペーサは、側圧試験に供され、この場合、プレスの試験あご部が、反対に向くペイン接触表面7.1、7.2に押し付けられ、スペーサが圧縮される。半径R及びRの領域において、中空チャンバ内側のコーナーに発生する応力は、約27%減少した。穿孔溝14において、機械的負荷は47%減少した。さらに、実施例ごとの、本発明によるスペーサの側圧試験において、破壊が起こる前にさらに高い最大力にも達する。比較例による非発泡スペーサは、>1850Nの最大力に達した。比較例のこのスペーサが発泡スペーサとして実装された場合、>1500Nにしか達しない。比較すると、発泡スペーサとしての実施例の発明によるスペーサは、破壊が起こる前に>2500Nの力に耐える。同時に、本発明による実施例のスペーサにより、約14%の軽量化が達成される。さらに、本発明による実施例のスペーサ幾何学的形状により、図1のスペーサの中空チャンバ10内に2.2%多く乾燥剤を導入することが可能になる。
【0102】
図2a及び2bは、図1の発明によるスペーサ1を有する遮断グレージング2を示しており、気密性及び蒸気気密性バリアフィルムは詳細に示されていない。図2aは遮断グレージング2の断面図を示し、図2bは平面図である。図2bは、図2aの遮断グレージング2の全体図を示す。スペーサ1は、コーナーコネクタ17によって遮断グレージング2のコーナーで互いに接続される。本発明によるスペーサ1は、封止剤4を介して第1ペイン15と第2ペイン16との間に周縁方向に取り付けられる。封止剤4は、スペーサ1のペイン接触表面7.1及び7.2をペイン15及び16に接続する。中空チャンバ10は、乾燥剤11で充填されている。乾燥剤11としてはモレキュラーシーブが用いられる。スペーサ1のグレージング内部表面8に隣接するグレージング内部3は、ペイン15、16及びスペーサ1によって画定される空間として定義される。スペーサ1の外部表面9に隣接する外側ペイン間空間13は、グレージングのストリップ状の周縁部分であり、一方の側において2枚のペイン15、16のそれぞれによって境界が定められ、他方の側においてスペーサ1によって境界が定められ、外側ペイン間空間13の4番目の縁は開いている。グレージング内部3はアルゴンで充填されている。ペイン15、16とスペーサ1との間の隙間を封止する封止剤4は、いずれの場合も、一方のペイン接触表面7.1又は7.2と隣接するペイン15又は16との間に導入される。封止剤4は、ポリイソブチレンである。外側ペイン間空間13において、外側封止剤6は、第1ペイン19と第2ペイン20とを接着する役割を果たし、外側表面9に適用されている。外側封止剤6は、ポリサルファイドでできている。外側封止剤6は、第1ぺイン15及び第2ペイン16のペイン縁部と面一で終端している。
【符号の説明】
【0103】
1 スペーサ
2 遮断グレージング
3 グレージング内部
4 封止剤
5 ポリマー本体
6 外側封止剤
7 ペイン接触表面
7.1 第1ペイン接触表面
7.2 第2ペイン接触表面
8 グレージング内部表面
9 外側表面
10 中空チャンバ
11 乾燥剤
12 開口部
13 外側ペイン間空間
14 穿孔溝
15 第1ペイン
16 第2ペイン
17 コーナーコネクタ
18 中空チャンバ内側のコーナー
図1
図2a
図2b
【国際調査報告】