(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】表面処理銅箔およびそれを含む回路基板
(51)【国際特許分類】
C25D 7/06 20060101AFI20231227BHJP
C25D 5/16 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C25D7/06 A
C25D5/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539165
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 KR2021018342
(87)【国際公開番号】W WO2022145779
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0187233
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16338 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ユ、イルファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】キョン、ミョンオク
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】オ、スンベ
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024AA02
4K024AA03
4K024AA05
4K024AA09
4K024AB02
4K024AB03
4K024AB09
4K024BA09
4K024BB11
4K024BC02
4K024CA01
4K024CA02
4K024CA04
4K024CA06
4K024DB04
4K024DB10
4K024GA12
4K024GA16
(57)【要約】
例示的な実施形態による表面処理銅箔は、銅箔層と、銅箔層の一方の面上に形成された突起層とを含む。突起層の内部、または銅箔層と前記突起層の境界の周辺には気孔が形成される。気孔により、突起の異常成長を防止し、絶縁層との接合力を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔層と、
前記銅箔層の一方の面上に形成された突起層とを含み、
前記突起層の内部、または前記銅箔層と前記突起層の境界の周辺に形成された気孔を含む、表面処理銅箔。
【請求項2】
前記気孔は、前記銅箔層と前記突起層の境界ラインに沿って配列された第1気孔を含む、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項3】
前記第1気孔の平均直径は0.01~0.05μmである、請求項2に記載の表面処理銅箔。
【請求項4】
隣接する前記第1気孔間の平均間隔は0.15~0.25μmである、請求項3に記載の表面処理銅箔。
【請求項5】
前記第1気孔は、前記銅箔層と前記突起層の厚さの合計に対して、突起層の最低点から1/3以内の高さ領域内に分布する、請求項2に記載の表面処理銅箔。
【請求項6】
前記気孔は、前記突起層の内部に形成された第2気孔をさらに含む、請求項2に記載の表面処理銅箔。
【請求項7】
前記第2気孔の数は、前記第1気孔の数よりも小さい、請求項6に記載の表面処理銅箔。
【請求項8】
前記突起層は複数の突起を含み、前記突起のうちの1つの突起の断面積における前記第2気孔の断面積の割合は0.001~20%である、請求項6に記載の表面処理銅箔。
【請求項9】
前記突起層は複数の突起を含み、前記突起のうちの1つの突起の断面積における前記第2気孔の断面積の割合は0.001~5%である、請求項6に記載の表面処理銅箔。
【請求項10】
絶縁層と、
前記絶縁層の表面上に形成され、銅箔層および前記銅箔層の一方の面上に形成された突起層を含む配線層とを含み、
前記配線層は、前記突起層の内部、または前記銅箔層と前記突起層の境界の周辺に形成された気孔を含む、回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の実施形態は、表面処理銅箔およびそれを含む回路基板に関し、より詳しくは、粗化面を含む表面処理銅箔およびそれを含む回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント回路基板の製造には銅箔積層板(Copper Clad Laminate:CCL)が利用され、前記銅箔積層板は回路形成のための銅箔の形の銅層を含む。
【0003】
前記銅箔は、樹脂層と接する表面における安定した結合力、接着力を確保するために粗化処理を施すことができる。これにより、前記銅箔の前記表面は相対的に高い粗度を有することができ、突起部を含むことができる。
【0004】
例えば、銅薄膜を形成するためのめっき工程の後、工程条件を変更して前記突起部を形成するためのめっき工程を行うことができる。突起部は銅箔の剥離強度を高めることができる。しかし、突起部が成長しすぎる場合または不規則に形成される場合には、むしろ剥離強度が低下し、プリント回路基板の高周波伝送特性も劣化することがある。
【0005】
そこで、銅箔の剥離力を向上させるとともに微細パターンの回路が形成可能な表面処理銅箔の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例示的な実施形態による課題は、向上した機械的・電気的な安定性を有する表面処理銅箔を提供することである。
【0007】
例示的な実施形態による課題は、向上した機械的・電気的な安定性を有する表面処理銅箔を含む回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な実施形態による表面処理銅箔は、銅箔層と、前記銅箔層の一方の面上に形成された突起層とを含み、前記突起層の内部、または前記銅箔層と前記突起層の境界の周辺に形成された気孔を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記気孔は、前記銅箔層と前記突起層の境界ラインに沿って配列された第1気孔を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記第1気孔の平均直径は0.01~0.05μmであってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、隣接する前記第1気孔間の平均間隔は0.15~0.25μmであってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記第1気孔は、前記銅箔層および前記突起層の厚さの合計に対して、突起層の最低点から1/3以内の高さ領域内に分布することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記気孔は、前記突起層の内部に形成された第2気孔をさらに含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記第2気孔の数は前記第1気孔の数よりも小さくてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記突起層は複数の突起を含み、前記突起のうちの1つの突起の断面積における前記第2気孔の断面積の割合は0.001~20%であってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記突起層は複数の突起を含み、前記突起のうちの1つの突起の断面積における前記第2気孔の断面積の割合は0.001~5%であってもよい。
【0017】
例示的な実施形態による回路基板は、絶縁層と、前記絶縁層の表面上に形成され、銅箔層および前記銅箔層の一方の面上に形成された突起層を含む配線層とを含む。前記配線層は、前記突起層の内部、または前記銅箔層と前記突起層の境界の周辺に形成された気孔を含む。
【発明の効果】
【0018】
前述の実施形態によると、銅箔層の一方の面上に突起層を形成し、銅箔層と突起層の境界の周辺にライン状に配列された気孔を形成することができる。前記気孔によって突起の成長が調節され、絶縁層との均一な接合力を確保することができる。
【0019】
前記気孔は所定の直径/間隔で形成され、銅箔層の抵抗増加を抑制するとともに十分な接合力および剥離強度を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態による表面処理銅箔を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態による表面処理銅箔を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、例示的な実施形態による回路基板を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示して本文に詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0022】
別に定義しない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。一般的に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0023】
図1及び
図2は、例示的な実施形態による表面処理銅箔を示す概略断面図である。
【0024】
図1に示すように、例示的な実施形態による表面処理銅箔100は、銅箔層110と、銅箔層110の表面上に形成された突起層120とを含むことができる。
【0025】
銅箔層110は、例えば電解銅めっき工程により形成することができる。銅箔層110の厚さは、約1~10μmであってもよい。銅箔層110は、例えば、エッチング/パターニング工程により、回路基板内に含まれる所定の線幅を有する回路配線に変換することができる。
【0026】
銅箔層110の底面または内面上には突起層120を形成することができる。突起層120は、銅箔層110の粗化層として提供することができる。
【0027】
突起層120は、銅箔層110の前記底面または内面上に銅を電析して形成することができる。例示的な実施形態によると、銅箔層110の前記底面または内面上に突起成長核を形成するために予備電解めっきを行った後、突起形成めっき(例えば、カプセルめっき)を行って突起層120を形成することができる。
【0028】
前記突起成長を形成するための前記予備電解めっきに使用される銅塩の濃度は、前記突起形成めっきに使用される銅塩の濃度よりも小さくてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、突起層120による実質的な粗面化の形成のために、突起形成めっきは、銅箔層110を形成するための電解めっきよりも低い電流密度で行うことができる。
【0030】
前述のように、突起層120をめっき工程により形成する場合、突起層120は銅箔層110と実質的に一体に接続または形成することができる。
【0031】
突起層120が提供されることにより、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂などの回路基板のコア層または絶縁層の表面と銅箔層110との接合力を強化することができる。
【0032】
図1に示すように、突起層120は、実質的にランダムな高さまたは幅をもって分布する複数の突起を含むことができる。突起がランダムに分布していることにより、銅箔層110の粗度が増加し、前記コア層または絶縁層との接合力をより高めることができる。
【0033】
突起層120または前記突起の厚さは、約0.5~1.5μmであってもよい。突起層120の厚さは、銅箔層110の厚さよりも小さくてもよい。
【0034】
例示的な実施形態による表面処理銅箔100は、銅箔層110及び/又は突起層120の内部に形成された気孔150を含むことができる。
【0035】
例示的な実施形態によると、気孔150は、銅箔層110と突起層120の境界の周辺に形成することができる。気孔150は、突起層120に含まれる突起の内部にも形成することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、気孔150は、第1気孔150aと、第2気孔150bとを含むことができる。第1気孔150aは、銅箔層110と突起層120の前記境界に沿って形成することができる。第2気孔150bは、前記突起内に形成することができる。
【0037】
前述のように、第1気孔150aは、銅箔層110と突起層120の実質的な境界ラインに沿って配列することができる。第1気孔150aは、突起の過度の異常(abnormal)成長を抑制するバリアとしての役割を果たすことができる。
【0038】
例えば、銅箔層110の底面からの局所的な突起の異常成長による先端部またはスパイクの形成を、ライン状に配列された第1気孔150aによって抑制することができる。これにより、前記異常成長した突起による絶縁層の破れによって絶縁抵抗特性が劣化することを防止することができる。
【0039】
また、前述のように、気孔150の配列により、突起の過度の異常成長を抑制しながら全体的なランダム特性を付与することができる。これにより、突起層120による接合力/剥離強度の向上を効果的に実現することができる。
【0040】
一実施形態では、第1気孔150aの平均直径は約0.01~0.05μmであってもよい。一実施形態では、隣接する第1気孔150a間の平均間隔は、約0.15~0.25μmであってもよい。
【0041】
前記直径及び/又は間隔の範囲内では、第1気孔150aにより突起の異常成長を十分に抑制しながら、突起による接合力/剥離力の増加を十分に実現することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1気孔150aは、銅箔層110および突起層120の厚さの合計に対して、突起層の最低点から1/3以内の高さ領域内に分布することができる。これにより、第1気孔150aによって実質的に配線層の電流通路で提供される銅箔層110部分における抵抗増加を防止することができる。
【0043】
第2気孔150bは、前述のように各突起内に形成することができる。第2気孔150bの数は、第1気孔150aの数よりも小さくてもよい。一実施形態では、表面処理銅箔100の全体において、第2気孔150bの数は第1気孔150aの数よりも小さくてもよい。一実施形態では、1つの突起に相当する幅内において、第2気孔150bの数は第1気孔150aの数よりも小さくてもよい。
【0044】
第2気孔150bによっても、突起層120の絶縁層への接着力を強化することができる。例えば、第2気孔150bによって突起成長のランダム性を高めることができる。これにより、突起層120による表面処理銅箔100の接合力/剥離力をより向上させることができる。
【0045】
一実施形態では、1つの突起の断面積における第2気孔150bの断面積の割合は、約0.001~20%、好ましくは0.001~10%、より好ましくは0.001~5%であってもよい。前記範囲内では、突起層120における過度の抵抗増加を防止しながら接合力の増加を十分に実現することができる。
【0046】
突起層120の表面には、突起コート層140を形成することができる。突起コート層140は、例えば、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及び/又はクロム(Cr)を用いた防錆処理によって形成することができる。
【0047】
一実施形態では、突起層120の表面にニッケルめっきおよび亜鉛めっき工程を行い、さらにクロメート処理を行うことができる。この場合には、突起層120の表面の防錆特性をより向上させることができる。
【0048】
一実施形態では、さらに突起層120の表面にシランカップリング剤を処理してもよい。例えば、シランカップリング剤が希釈されている組成物を突起層120または表面処理層140上に塗布し、乾燥して、シランカップリング剤層をさらに形成することができる。前記シランカップリング剤の例としては、4-グリシジルブチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-3-(4-(3-アミノプロポキシ)ブトキシ)プロピル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシランなどのオレフィン系シランカップリング剤、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリル系シランカップリング剤などが挙げられる。
【0049】
銅箔層110の上面上には、さらに表面処理層130を形成することができる。表面処理層130は、突起コート層140と実質的に同一または類似の材料および工程により形成することができる。例えば、表面処理層130は、例えばニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及び/又はクロム(Cr)を用いためっきまたは防錆処理によって形成することができる。
【0050】
図2に示すように、銅箔層110の上面上には、キャリアホイル90を貼り付けることもできる。キャリアホイル90は、剥離層80を介して表面処理銅箔100と接合することができる。キャリアホイル90は、表面処理銅箔100を絶縁層または基材と接合する際の支持部材として提供することができる。剥離層80により、表面処理銅箔100を貼り付けた後、キャリアホイル90を除去することができる。
【0051】
表面処理銅箔100の工程処理を容易にするために、十分な厚さの銅箔をキャリアホイル90として使用することができる。例えば、キャリアホイル90の厚さは15~50μmであってもよい。
【0052】
剥離層80は、Cr、Ni、Co、Zn、Fe、Mo、Ti、W、Pまたはこれらの合金を含有することができる。剥離層80上には、シランカップリング剤またはラバー(rubber)などの有機被膜を形成してもよい。
【0053】
キャリアホイル90の上面には、キャリア表面層70を形成することもできる。キャリア表面層70は、例えば、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及び/又はクロム(Cr)を用いためっきまたは防錆処理によって形成することができる。
【0054】
例示的な実施形態によると、前述の表面処理銅箔100が適用された回路基板が提供される。
【0055】
図3は、例示的な実施形態による回路基板を示す概略断面図である。説明の都合上、
図3では、表面処理銅箔100の突起、気孔などの詳細な構造を省略している。
【0056】
図3を参照すると、回路基板は、絶縁層200上に形成された配線層を含むことができる。
【0057】
絶縁層200は、エポキシ樹脂のような有機系の樹脂層を含み、前記樹脂層に含浸された無機粒子または無機繊維(例えば、ガラス繊維)をさらに含むことができる。例えば、絶縁層200はプリプレグ(prepreg)から製造することができる。
【0058】
前記配線層は、絶縁層200の上面および底面上にそれぞれ形成された上部配線層210および下部配線層220を含むことができる。上部配線層210および下部配線層220の少なくとも一つは、前述の例示的な実施形態による表面処理銅箔100から形成することができる。
【0059】
前述のように、表面処理銅箔100は突起および気孔を含み、絶縁層200の表面上に高信頼性、高接着性をもって貼り付けることができる。
【0060】
前記回路基板は、絶縁層200を貫通して上部配線層210と下部配線層220を互いに電気的に接続するビア(via)構造240をさらに含むことができる。例えば、上部配線層210および絶縁層200を貫通するビアホール230を形成することができる。その後、無電解めっき又は電解めっき工程により、ビアホール230を少なくとも部分的に充填し、ビア構造240を形成することができる。
【0061】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0062】
実施例1
(1)銅箔層の形成
表面粗度1.1μm、厚さ40μmの非処理電解銅箔をキャリアホイルとして用い、キャリアホイルの表面にクロム電気めっきを行うことにより、厚さ0.006μmのクロムめっき層(剥離層)を形成した。次いで、下記組成1に示す硫酸銅溶液を電解液として用いて、電流密度35A/dm2、電解液温度45℃の条件で電解めっきを行い、厚さ6μmの銅箔層を形成した。
【0063】
(電解液の組成)
硫酸銅(CuSO4・5H2O):250~350g/L
硫酸(H2SO4):80~120g/L
3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム:0.5~5ppm
酢酸酪酸セルロース(Cellulose acetate butyrate)(分子量1万2千以下、シグマアルドリッチ社製):1~10ppm
1,6-アンヒドロ-β-D-グルコース(1,6-Anhydro-β-D-glucose):1~10ppm
Cl:10~50ppm
【0064】
(2-1)粗化粒子(突起)の電析:予備電解めっき
極薄銅箔上に以下の条件下で直流による負極電解処理を行い、銅微細粗化粒子(突起成長核)を電析した。
【0065】
(a)電解液の組成
硫酸銅(CuSO4・5H2O):80~140g/L
硫酸(H2SO4):110~160g/L
5-メルカプト-1H-1,2,3-トリアゾールナトリウム(5-Mercapto-1H-1,2,3-triazole Sodium Salt):0.1~4g/L
硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O):1~15g/L
1,6-アンヒドロ-β-D-グルコース(1,6-Anhydro-β-D-glucose):1~10ppm
4-アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール(4-Amino-3-hydrazino-5-mercapto-1,2,4-triazole):1~10ppm
【0066】
(b)電解処理の条件
i)電解液の温度:35℃
i i)電流密度:36A/dm2
i i i)処理時間:10秒
【0067】
(2-2)カプセルめっき:突起形成めっき
以下の条件下でカプセルめっきを行い、突起層を形成した。
【0068】
(a)電解液の組成
硫酸銅(CuSO4・5H2O) 200~300g/L
硫酸(H2SO4)90~130g/L
【0069】
(b)電解処理の条件
i)電解液の温度:60℃
i i)電流密度:15A/dm2
i i i)処理時間:8秒
【0070】
(3)表面処理
突起層が形成された銅箔層の表面に、ニッケル-リンめっき(Ni=0.1mg/dm2)と亜鉛めっき(Zn=0.1mg/dm2)を行った。その後、クロメート処理(Cr=0.06mg/dm2)を行った後、エポキシ系シランカップリング剤処理(Si=0.004mg/dm2)を行い、表面処理層を形成した。
【0071】
実施例2
以下のように銅箔層電解液の組成を変更し、以下の条件下で粗化粒子(突起)を形成するためのめっきを行った。
【0072】
(1)銅箔層の形成
硫酸銅(CuSO4・5H2O) 250~350g/L
硫酸(H2SO4)80~120g/L
3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム:0.5~5ppm
【0073】
(2)粗化粒子の電析(突起層)の形成
(a)電解液の組成
硫酸銅(CuSO4・5H2O) 80~140g/L
硫酸(H2SO4)110~160g/L
モリブデン酸ナトリウム(Na2Mo4・2H2O) 0.05~3g/L
硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)1~15g/L
(b)電解液の温度:40℃
(c) 電流密度:45A/dm2
(d)処理時間:6秒
【0074】
比較例
気孔が形成されておらず、粗化処理面(粗度:2.5μm)を有する商用銅箔製品(銅箔層の厚さ:6μm)を購入して準備した。
【0075】
実施例1及び実施例2による銅箔断面のSEM画像から、気孔の直径、数および間隔を測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0076】
【0077】
剥離力の測定
実施例及び比較例の表面処理銅箔をそれぞれ縦250mm、横250mmのサイズに切断した後、表面処理銅箔の突起層または粗化面上に厚さ50μmのポリイミドシート(宇部興産株式会社製、UPILEX-VT)をロードし、積層体全体を2枚の平滑なステンレス鋼板の間に配置した。その後、20torrの真空プレスにより、温度330℃、圧力2kg/cm2で10分間熱圧着し、さらに温度330℃、50kg/cm2で5分間熱圧着した。
【0078】
前述のようにして製造した表面処理銅箔-ポリイミドフィルム積層体(銅張積層板)の剥離強度をJIS C6471に準拠して剥離角度180度で測定した。
【0079】
測定結果は下記表2に示す。
【0080】
【0081】
表2から、実施例の銅箔では剥離強度が向上していることを確認することができる。また、0.01~0.05μmの直径範囲の気孔が所定範囲の間隔で形成されている実施例1では剥離強度がより増加した。
【国際調査報告】