(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】微細金属線のLIFT印刷
(51)【国際特許分類】
H05K 3/10 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H05K3/10 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539250
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 IB2021055475
(87)【国際公開番号】W WO2022144608
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501005438
【氏名又は名称】オルボテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーヘン シャローナ
(72)【発明者】
【氏名】フォゲル オフェル
(72)【発明者】
【氏名】コトラー ツビ
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343BB24
5E343BB52
5E343BB74
5E343DD69
5E343ER45
5E343GG06
(57)【要約】
回路製作のための方法は、回路基板上に形成される導電トレースの軌跡を画定することを含む。金属の溶融液滴が、レーザ誘起前方転写(LIFT)のプロセスによって、回路基板に近接するドナー基板から画定された軌跡上へ吐出され、これにより液滴が、画定された軌跡の長さに沿って回路基板に付着し硬化する。液滴が硬化した後に、レーザビームが、硬化した液滴内の金属を溶融させ画定された軌跡の長さに沿って延びるバルク層内へ合体させるために十分なエネルギーを有して、画定された軌跡の方へ指向させられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路製作のための方法であって、
回路基板上に形成される導電トレースの軌跡を画定することと、
レーザ誘起前方転写(LIFT)のプロセスによって、前記回路基板に近接するドナー基板から前記画定された軌跡上へ金属の溶融液滴を吐出することであり、これにより前記液滴が、前記画定された軌跡の長さに沿って前記回路基板に付着し硬化する、吐出することと、
前記液滴が硬化した後に、前記硬化した液滴内の前記金属を溶融させ前記画定された軌跡の前記長さに沿って延びるバルク層内へ合体させるために十分なエネルギーを有して、レーザビームを前記画定された軌跡の方へ指向させることと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ドナー基板は、透過性が高く、対向する第1の表面および第2の表面を有し、前記金属を含むドナーフィルムが、前記ドナーフィルムが前記画定された軌跡に近接するように前記第2の表面に配設され、
前記溶融液滴を吐出することは、前記金属の前記溶融液滴の前記ドナーフィルムから前記画定された軌跡上への吐出を誘起するために、レーザ放射のパルスを、前記ドナー基板の前記第1の表面を通過し前記ドナーフィルムに当たるように指向させることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記LIFTのプロセスにおいて前記レーザ放射のパルスを指向させること、および前記レーザビームを前記画定された軌跡の方へ指向させることは、前記溶融液滴を吐出することおよび前記硬化した液滴内の前記金属を溶融させることの両方のために、可変パルス持続時間を有する単一のレーザを使用することを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記ドナーフィルムは、第1の金属を含み、
第2の金属を含む付着フィルムが、前記ドナー基板上の前記ドナーフィルムを覆って配設され、前記第2の金属は、前記第1の金属の前記溶融液滴を覆う外層を形成し、前記外層は、前記回路基板への前記溶融液滴の衝突の際に前記回路基板に付着する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記第1の金属は、銅を含み、前記第2の金属は、チタン、スズ、ビスマス、およびそれらの合金からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶融液滴を吐出すること、および前記レーザビームを前記画定された軌跡の方へ指向させることは、
前記溶融液滴の第1の層を前記回路基板上に吐出して、前記導電トレースの下層を形成するために、前記第1の層内の前記硬化した液滴を溶融させるように前記レーザビームを指向させることと、
前記溶融液滴の少なくとも第2の層を前記下層上に吐出して、前記導電トレースを完成させるために、前記少なくとも第2の層内の前記硬化した液滴を溶融させるように前記レーザビームを指向させることと
を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記レーザビームを指向させることは、前記レーザビームを使用して、前記導電トレース内の前記硬化した液滴の全体積を溶融させるために十分なエネルギーを、前記硬化した液滴に印加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記レーザビームを指向させることは、前記レーザビームを使用して、前記画定された軌跡の前記長さに沿って、前記硬化した液滴の全体積を溶融させることなく前記硬化した液滴の外層のみを溶融させるために十分なエネルギーを、前記硬化した液滴に印加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記レーザビームを指向させることは、レーザエネルギーのパルスのシーケンスを、前記画定された軌跡の前記長さに沿って前記硬化した液滴に当たるように指向させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記パルスの各々は、10μs未満のパルス持続時間を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記1つ以上のパルスを指向させることは、前記パルスの各々が前記シーケンス内の先行パルスと所定の重複を有するように、前記レーザビームを前記軌跡に沿って走査させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶融液滴を吐出することは、前記画定された軌跡の前記長さに沿って延びる単一の列において、前記液滴を前記回路基板上に堆積させることを含み、これにより前記導電トレースが、前記単一の列を溶融させることによって形成され、
前記液滴の各々は、前記単一の列内の先行液滴と前記液滴の直径の50%以下だけ重複する
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記軌跡を画定することは、前記回路基板上の第1の端子と第2の端子との間の隙間を識別することを含み、
前記溶融液滴を吐出することは、前記隙間を充填するように前記溶融液滴を堆積させることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記第1の端子および前記第2の端子は、第1の金属を含み、前記液滴は、前記第1の金属とは異なる組成の第2の金属を含み、
前記レーザビームを指向させることは、前記第1の端子および前記第2の端子において異種金属接合を形成するように、前記第1の金属および前記第2の金属を溶融させることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、
前記隙間を識別することは、前記回路基板上に形成されている回路トレース内の欠陥を検出することを含み、
前記欠陥は、前記溶融液滴を堆積させ、次いで前記硬化した液滴を溶融させるために前記レーザビームを指向させることによって、修復される
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
回路基板上の導電トレースの製作のための装置であって、
レーザ誘起前方転写(LIFT)のプロセスによって、前記回路基板に近接するドナー基板から前記導電トレースの画定された軌跡上へ金属の溶融液滴を吐出するように構成される堆積モジュールであり、これにより前記液滴が、前記画定された軌跡の長さに沿って前記回路基板に付着し硬化する、堆積モジュールと、
前記硬化した液滴内の前記金属を溶融させ前記画定された軌跡の前記長さに沿って延びるバルク層内へ合体させるために十分なエネルギーを有して、レーザビームを前記画定された軌跡の方へ指向させるように構成されるレーザモジュールと
を備えることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、
前記ドナー基板は、透過性が高く、対向する第1の表面および第2の表面を有し、前記金属を含むドナーフィルムが、前記ドナーフィルムが前記画定された軌跡に近接するように前記第2の表面に配設され、
前記レーザモジュールは、前記金属の前記溶融液滴の前記ドナーフィルムから前記画定された軌跡上への吐出を誘起するために、レーザ放射のパルスを、前記ドナー基板の前記第1の表面を通過し前記ドナーフィルムに当たるように指向させるように構成される
ことを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置であって、前記レーザモジュールは、前記LIFTのプロセスにおいて前記レーザ放射のパルスを指向させること、および前記硬化した液滴内の前記金属を溶融させるために前記レーザビームを指向させることの両方のために、可変パルス持続時間を有する単一のレーザを備えることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項16に記載の装置であって、前記堆積モジュールおよび前記レーザモジュールは、前記溶融液滴の第1の層を前記回路基板上に吐出して、前記導電トレースの下層を形成するために、前記第1の層内の前記硬化した液滴を溶融させるように前記レーザビームを指向させることと、前記溶融液滴の少なくとも第2の層を前記下層上に吐出して、前記導電トレースを完成させるために、前記少なくとも第2の層内の前記硬化した液滴を溶融させるように前記レーザビームを指向させることとを行うように構成されることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項16に記載の装置であって、前記レーザモジュールは、前記レーザビームを使用して、前記導電トレース内の前記硬化した液滴の全体積を溶融させるために十分なエネルギーを、前記硬化した液滴に印加するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項16に記載の装置であって、前記レーザモジュールは、前記レーザビームを使用して、前記画定された軌跡の前記長さに沿って、前記硬化した液滴の全体積を溶融させることなく前記硬化した液滴の外層のみを溶融させるために十分なエネルギーを、前記硬化した液滴に印加するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項21に記載の装置であって、前記レーザモジュールは、レーザエネルギーのパルスのシーケンスを、前記画定された軌跡の前記長さに沿って前記硬化した液滴に当たるように指向させるように構成されることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置であって、前記パルスの各々は、10μs未満のパルス持続時間を有することを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項22に記載の装置であって、
前記レーザモジュールは、前記パルスの各々が前記シーケンス内の先行パルスと所定の重複を有するように、前記レーザビームを前記軌跡に沿って走査させるように構成され、
前記液滴の各々は、単一の列内の先行液滴と前記液滴の直径の50%以下だけ重複する
ことを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項16に記載の装置であって、前記堆積モジュールは、前記画定された軌跡の前記長さに沿って延びる単一の列において、前記液滴を前記回路基板上に堆積させるように構成され、これにより前記導電トレースが、前記単一の列から形成されることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項16に記載の装置であって、前記回路基板上の第1の端子と第2の端子との間の隙間を識別することと、前記隙間を充填するように前記溶融液滴を堆積させるように前記堆積モジュールを制御することとを行うように構成される制御回路を備えることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項26に記載の装置であって、
前記第1の端子および前記第2の端子は、第1の金属を含み、前記液滴は、前記第1の金属とは異なる組成の第2の金属を含み、
前記レーザモジュールは、前記第1の端子および前記第2の端子において異種金属接合を形成するように、前記第1の金属および前記第2の金属を溶融させるように前記レーザビームを指向させるように構成される
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電子デバイスの製作、ならびに詳細には、基板上に導電線を印刷するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年12月28日に出願され、米国特許出願第63/130854号が割り当てられた仮特許出願に対する優先権を主張するものであり、その開示の全体を本願に引用して援用する。
【0003】
レーザ直接書き込み(LDW:laser direct-write)技術において、レーザビームは、制御された材料アブレーションまたは堆積によって、空間的に分解された3次元構造を有するパターン化表面を作成するために使用される。レーザ誘起前方転写(LIFT:laser-induced forward transfer)は、表面上にマイクロパターンを堆積することに適用され得るLDW技術である。
【0004】
LIFTにおいて、レーザ光子は、ドナーフィルムからアクセプタ基板に向けて材料の小体積を射出するために駆動力を提供する。典型的には、レーザビームは、非吸収キャリア基板上にコーティングされたドナーフィルムの内側と相互作用する。言い換えると、入射レーザビームは、光子がフィルムの内面によって吸収される前に、透過性が高いキャリア基板を通って伝播する。特定のエネルギーしきい値を上回ると、材料が、ドナーフィルムからアクセプタ基板の表面に向けて吐出される。ドナーフィルムおよびレーザビームパルスパラメータの適切に選択することで、レーザパルスは、ドナー材料の溶融液滴をフィルムから吐出させ、次いでアクセプタ基板上に着地させ硬化させる。
【0005】
LIFTシステムは、電子回路製作の目的で導電性のある金属液滴およびトレースを印刷することに特に(排他的ではないが)有用である。この種のLIFTシステムは、例えば、米国特許第9,925,797号に説明されており、この開示を本願に引用して援用する。この特許は、対向する第1の表面および第2の表面を有し、ドナーフィルムをアクセプタ基板上の標的領域に近接して位置付けるように、第2の表面上に形成されるドナーフィルムを有する、透過性が高いドナー基板を提供するように構成される、ドナー供給アセンブリを含む印刷装置について説明する。光学アセンブリは、ドナーフィルムからアクセプタ基板上への材料の吐出を誘起してアクセプタ基板の標的領域上に所定のパターンを書き込むために、ドナー基板の第1の表面を通過しドナーフィルムに当たるように、レーザ放射の複数の出力ビームを同時に所定の空間パターンで指向させるように構成される。
【0006】
LIFT印刷はまた、印刷された回路トレース内の欠陥を修復するために使用され得る。この目的のためのシステムおよび方法は、例えば、韓国特許出願公開第20150070028号に説明されており、その開示を本願に引用して援用する。
【0007】
加えて、LIFTシステムは、基板上への埋め込み型抵抗器の直接印刷において使用され得る。例えば、PCT国際公開第2019/138404号は、指定の抵抗を有する抵抗器が軌跡の第1の端点と第2の端点との間に形成されることになる、回路基板上の軌跡を識別することを含む、電気デバイスの製作のための方法を説明しており、その開示を本願に引用して援用する。対向する第1の表面および第2の表面、ならびに第2の表面を覆って形成される抵抗材料を含むドナーフィルムを有する透過性が高いドナー基板は、第2の表面が回路基板の方を向いた状態で、回路基板上の識別された軌跡に近接して位置付けられる。レーザ放射のパルスは、第1の端点と第2の端点との間に指定の抵抗を有する回路トレースを形成するように選択された近傍位置間の分離を伴って、軌跡に沿ったそれぞれの近傍位置において、ドナーフィルムから回路基板上への抵抗材料の液滴の吐出を誘起するために、ドナーフィルムに当たるように指向させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/281243号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/035375号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
LIFTプロセスは、回路基板上の導電トレースおよび他の回路構成要素を高い精度および速度で印刷することができる。しかしながら、LIFTプロセスの性質に起因して、結果として生じるトレースは、基板上に吐出された硬化した液滴に相当する金属粒子の集合体で構成される。これらの粒子は、典型的には、薄い酸化層によって被覆および分離され、粒子間に散在される空所およびエアポケットが存在し得る。これらの現象は、より従来型の方法を使用して堆積される固体金属トレースと比較して、電気抵抗を増加させ、回路トレースの機械的完全性を損なう傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書において以下に説明される本発明の実施形態は、基板上の金属トレースのLIFTベースの製作のための新規の方法およびシステム、ならびにそのような方法によって生産される回路を提供する。
【0011】
したがって、本発明の実施形態によって、回路基板上に形成される導電トレースの軌跡を画定することを含む、回路製作のための方法が提供される。金属の液滴が、レーザ誘起前方転写(LIFT)のプロセスによって、回路基板に近接するドナー基板から画定された軌跡上へ吐出され、これにより液滴が、画定された軌跡の長さに沿って回路基板に付着し硬化する。液滴が硬化した後に、レーザビームが、硬化した液滴内の金属を溶融させ画定された軌跡の長さに沿って延びるバルク層内へ合体させるために十分なエネルギーを有して、画定された軌跡の方へ指向させられる。
【0012】
いくつかの実施形態において、ドナー基板は、透過性が高く、対向する第1の表面および第2の表面を有し、金属を含むドナーフィルムが、ドナーフィルムが画定された軌跡に近接するように第2の表面に配設され、溶融液滴を吐出することは、金属の溶融液滴のドナーフィルムから画定された軌跡上への吐出を誘起するために、レーザ放射のパルスを、ドナー基板の第1の表面を通過しドナーフィルムに当たるように指向させることを含む。
【0013】
1つの実施形態において、LIFTのプロセスにおいてレーザ放射のパルスを指向させること、およびレーザビームを画定された軌跡の方へ指向させることは、溶融液滴を吐出することおよび硬化した液滴内の金属を溶融させることの両方のために、可変パルス持続時間を有する単一のレーザを使用することを含む。
【0014】
代替的または追加的に、ドナーフィルムは、第1の金属を含み、第2の金属を含む付着フィルムが、ドナー基板上のドナーフィルムを覆って配設され、第2の金属は、第1の金属の溶融液滴を覆う外層を形成し、外層は、回路基板への溶融液滴の衝突の際に回路基板に付着する。開示された実施形態において、第1の金属は、銅を含み、第2の金属は、チタン、スズ、ビスマス、およびそれらの合金からなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態において、溶融液滴を吐出すること、およびレーザビームを画定された軌跡の方へ指向させることは、溶融液滴の第1の層を回路基板上に吐出して、導電トレースの下層を形成するために、第1の層内の硬化した液滴を溶融させるようにレーザビームを指向させることと、溶融液滴の少なくとも第2の層を下層上に吐出して、導電トレースを完成させるために、少なくとも第2の層内の硬化した液滴を溶融させるようにレーザビームを指向させることとを含む。
【0016】
1つの実施形態において、レーザビームを指向させることは、レーザビームを使用して、導電トレース内の硬化した液滴の全体積を溶融させるために十分なエネルギーを、硬化した液滴に印加することを含む。代替的に、レーザビームを指向させることは、レーザビームを使用して、画定された軌跡の長さに沿って、硬化した液滴の全体積を溶融させることなく硬化した液滴の外層のみを溶融させるために十分なエネルギーを、硬化した液滴に印加することを含む。典型的には、外層は、導電トレース内の硬化した液滴の体積を封入する保護表皮を形成する。
【0017】
開示された実施形態において、レーザビームを指向させることは、レーザエネルギーのパルスのシーケンスを、画定された軌跡の長さに沿って硬化した液滴に当たるように指向させることを含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、パルスの各々は、10μs未満であり、1μs以下であり得るパルス持続時間を有する。代替的または追加的に、1つ以上のパルスを指向させることは、パルスの各々がシーケンス内の先行パルスと所定の重複を有するように、レーザビームを軌跡に沿って走査させることを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、溶融液滴を吐出することは、画定された軌跡の長さに沿って延びる単一の列において、液滴を回路基板上に堆積させることを含み、これにより導電トレースが、単一の列を溶融させることによって形成される。1つのそのような実施形態において、液滴の各々は、単一の列内の先行液滴と液滴の直径の50%以下だけ重複する。
【0019】
さらなる実施形態において、軌跡を画定することは、回路基板上の第1の端子と第2の端子との間の隙間を識別することを含み、溶融液滴を吐出することは、隙間を充填するように溶融液滴を堆積させることを含む。1つの実施形態において、第1の端子および第2の端子は、第1の金属を含み、液滴は、第1の金属とは異なる組成の第2の金属を含み、レーザビームを指向させることは、第1の端子および第2の端子において異種金属接合を形成するように、第1の金属および第2の金属を溶融させることを含む。代替的に、隙間を識別することは、回路基板上に形成されている回路トレース内の欠陥を検出することを含み、欠陥は、溶融液滴を堆積させ、次いで硬化した液滴を溶融させるためにレーザビームを指向させることによって、修復される。
【0020】
開示された実施形態において、軌跡は、所定の幅を有し、レーザビームを指向させることは、軌跡の所定の幅内の回路基板上に堆積されている硬化した液滴のみを溶融させることを含み、本方法は、レーザビームを指向させた後に、軌跡の所定の幅の外側の回路基板上に堆積された硬化した液滴を除去するために、エッチングプロセスを適用することを含む。
【0021】
本発明の実施形態によって、回路基板上の導電トレースの製作のための装置も提供される。本装置は、レーザ誘起前方転写(LIFT)のプロセスによって、回路基板に近接するドナー基板から導電トレースの画定された軌跡上へ金属の溶融液滴を吐出するように構成される堆積モジュールを含み、これにより液滴が、画定された軌跡の長さに沿って回路基板に付着し硬化する。レーザモジュールが、硬化した液滴内の金属を溶融させ画定された軌跡の長さに沿って延びるバルク層内へ合体させるために十分なエネルギーを有して、レーザビームを画定された軌跡の方へ指向させるように構成される。
【0022】
本発明は、図面と併せて、本発明の実施形態の以下の詳細な説明からより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態による、基板上に導電トレースを印刷するためのシステムの概略側面図である。
【
図2A】本発明の実施形態による、基板上に印刷された金属液滴の線の顕微鏡写真を示す図である。
【
図2B】本発明の実施形態による、レーザ溶融後の
図2Aの線の顕微鏡写真を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による、レーザ照射下でのフィルムからの溶融液滴の吐出を例示する、ドナーフィルムの概略断面図である。
【
図4A】本発明の実施形態による、回路トレースを画定する、LIFTプロセスにおいて基板上に堆積された金属液滴の集合体の概略断面図である。
【
図4B】本発明の実施形態による、
図4Aの金属液滴の集合体の完全なレーザ溶融によって形成された回路トレースの概略断面図である。
【
図4C】本発明の代替の実施形態による、
図4Aの金属液滴の集合体の部分的なレーザ溶融によって形成された回路トレースの概略断面図である。
【
図5A】本発明の実施形態による、LIFTプロセスによって回路トレース内の隙間に堆積された金属液滴の集合体の概略断面図である。
【
図5B】本発明の実施形態による、集合体へのレーザ溶融プロセスの適用を例示する、
図5Aの集合体の概略断面図である。
【
図5C】本発明の実施形態による、
図5Bのレーザ溶融プロセスによって形成された回路トレースの概略断面図である。
【
図6A】本発明の実施形態による、LIFTプロセスによって回路トレース内の隙間に堆積された金属液滴の集合体へのレーザ溶融プロセスの適用を例示する概略断面図である。
【
図6B】本発明の実施形態による、
図6Aのレーザ溶融プロセスによって形成された部分的な回路トレースの概略断面図である。
【
図6C】本発明の実施形態による、LIFTプロセスによって
図6Bの部分的な回路トレースを覆って堆積された金属液滴の集合体へのレーザ溶融プロセスの適用を例示する概略断面図である。
【
図6D】本発明の実施形態による、
図6Cのレーザ溶融プロセスによって形成された完全な回路トレースの概略断面図である。
【
図7】本発明の実施形態による、LIFTプロセスによって印刷された異種回路トレースの概略断面図である。
【
図8A】本発明の代替の実施形態による、回路トレース内の隙間を修復するLIFTベースのプロセスにおける連続ステップを示す、対象物上の回路トレースの概略上面図である。
【
図8B】本発明の代替の実施形態による、回路トレース内の隙間を修復するLIFTベースのプロセスにおける連続ステップを示す、対象物上の回路トレースの概略上面図である。
【
図8C】本発明の代替の実施形態による、回路トレース内の隙間を修復するLIFTベースのプロセスにおける連続ステップを示す、対象物上の回路トレースの概略上面図である。
【
図8D】本発明の代替の実施形態による、回路トレース内の隙間を修復するLIFTベースのプロセスにおける連続ステップを示す、対象物上の回路トレースの概略上面図である。
【
図8E】本発明の代替の実施形態による、回路トレース内の隙間を修復するLIFTベースのプロセスにおける連続ステップを示す、対象物上の回路トレースの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
LIFTプロセスは、回路基板上の導電トレースおよび他の回路構成要素を高い精度および速度で印刷することができる。しかしながら、LIFTプロセスの性質に起因して、結果として生じるトレースは、基板上に吐出された硬化した液滴に相当する金属粒子の集合体で構成される。これらの粒子は、典型的には、薄い酸化層によって被覆および分離され、粒子間に散在される空所およびエアポケットが存在し得る。これらの現象は、より従来型の方法を使用して堆積される固体金属トレースと比較して、電気抵抗を増加させ、回路トレースの機械的完全性を損なう傾向がある。
【0025】
本明細書に説明される本発明の実施形態は、堆積プロセス内に制御されたレーザ溶融の段階を追加することによって、これらの問題を解決する。これらの実施形態において、回路基板上に形成される導電トレースの軌跡を画定した後に、LIFTプロセスが、回路基板に近接するドナー基板から画定された軌跡上に金属の溶融液滴を吐出するために適用される。(「軌跡」は、典型的には、2つの端点の間に延びる、例えば基板上の一対の金属端子の間の、指定の幅の線を含むが、他の形状の軌跡に沿って延びるトレースが、同様に画定および製作され得る。)液滴は、トレースの軌跡の長さに沿って回路基板に付着し硬化するが、この段階では、それらの別個の粒子構造を依然として保持する。
【0026】
したがって、液滴が硬化した後に、レーザビームが、硬化した液滴内の金属を溶融させ画定された軌跡の長さに沿って延びるバルク層内へ合体させるために十分なエネルギーを有して、トレースの軌跡の方へ指向させられる。用語「合体」および「バルク層」は、本説明の文脈および特許請求の範囲において、硬化した液滴の間の境界が、溶融の前の境界と比較してサイズおよび分布が認めうる程度に低減される層に言及するために使用される。例えば、いくつかの実施形態において、LIFT堆積後でレーザ溶融前の硬化した液滴の間に存在する境界の少なくとも50%は、レーザ溶融後の顕微鏡検査下ではもはや感知できない。
【0027】
開示された実施形態において、レーザビームは、パルス化され、レーザエネルギーのパルスのシーケンスが、軌跡の長さに沿って印加される。パルス放射の使用は、結果として生じる熱をトレースの金属内に局所的に集中させること、ならびにトレースから回路基板への熱の伝導によって熱損失および潜在的な損傷を最小限にすることにおいて有利である。トレースの厚さおよび幅に応じて、パルス持続時間は、10μs未満、または狭いトレースの場合は1μs未満のことさえある。例えば、1つの実施形態において、金属液滴は、液滴間に所定の重複を伴って、画定された軌跡の長さに沿って延びる単一の列において回路基板上に堆積され得る。次いで、短いレーザパルスが印加されて、硬化した液滴を溶融させ、10μsまたはそれより小さい幅を有する回路トレース内へ合体させる。
【0028】
本発明の実施形態によって提供される制御されたレーザ溶融プロセスは、トレース内の硬化した液滴の全体積に適用され得る(特に、上に説明される例にあるように、トレースが薄いとき)。代替的に、レーザ溶融は、硬化した液滴の外層にのみ適用され得、そして、トレースの残りの体積を封入する保護「表皮」を形成する。いずれの場合においても、制御されたレーザ溶融プロセスは、結果として生じるトレースの機械的完全性および電気的完全性の両方を向上させる。いくつかの場合において、溶融プロセスはまた、基板へのトレースの付着、およびその後のエッチングステップに耐えるトレースの能力を向上させる。本技術はまた、軌跡の端において適用され得、この場合、LIFT印刷回路トレースは、回路基板上の既存の端子と接触し、そしてトレースと端子との間の電気的および機械的接続を強化する。この種の制御されたレーザ溶融は、端子および液滴が異なる金属組成を含むときに異種金属接合を形成するために使用され得る。
【0029】
図1は、本発明の実施形態による、基板24上に導電トレース22を印刷するためのシステム20の概略側面図である。基板24は、当該技術分野において知られるような、半導体基板、セラミック基板、金属基板、有機基板、および他の誘電体基板など、当該技術分野において知られる任意の好適な種類の回路基板を含み得る。基板24は、剛性が高いか、または可撓性が高いか、のいずれかであり得、本明細書に説明される技術は、とりわけ、印刷回路製作において通常使用される熱および腐食性化学物質への耐性がない場合がある繊細な基板上の回路トレースおよび他の導電構造体の印刷によく適している。印刷プロセス中、基板24は、好適なマウント、例えば、並進移動ステージ50などの調節可能マウント上に保持される。
【0030】
システム20は、1つ以上のレーザおよび適切なレーザビーム(複数可)を基板24の方へ指向させるための好適な光学素子を含む、レーザモジュール26を備える。描写された実施形態において、レーザモジュール26は、LIFTレーザ28および溶融レーザ30の両方を含む。簡潔のため、これらのレーザの機能および特性は、レーザが別個のユニット(レーザモジュール26の1つの潜在的な実装形態である)であるかのようにここでは説明される。代替的に、可変パルス持続時間を有する短い高エネルギーパルスを発する単一のレーザが、LIFTレーザ28および溶融レーザ30の両方の機能を実施し得る。レーザ28および30は、以下の説明においてさらに詳述されるように、本明細書に説明される機能を実施するために、好適な波長で、ならびに好適な時間パルス長および焦点品質で、可視、紫外、および/または赤外領域内の光放射を発する。
【0031】
制御回路52は、レーザモジュール26の動作、およびシステム20の他の要素の動作を、自律的に、または人間のオペレータの制御下のいずれかで制御する。印刷プロセスの評価、および印刷プロセスの基板24上の特徴部とのアライメントの目的で、1つ以上の光センサを備える検査モジュール54が、基板の画像を撮像し、分析のために画像データを制御回路52に渡すために、システム20に組み込まれ得る。制御回路52は、典型的には、システム20の他の構成要素と通信し、これらを制御するための好適なインターフェースと一緒に、本明細書に説明される機能を実行するためにソフトウェアにおいてプログラムされる汎用コンピュータプロセッサを備える。代替的または追加的に、制御回路32の機能のうちの少なくともいくつかは、配線接続され得るか、またはプログラム可能であり得る、デジタル信号プロセッサ(DSP)またはハードウェア論理構成要素によって実行され得る。
【0032】
LIFTレーザ28は、短いパルスを、制御回路52の制御下でドナーアセンブリ36の方へ、典型的には1nsほどのパルス持続時間で発する。ドナーアセンブリ36は、LIFTレーザ28によって駆動されるLIFTプロセスによって導電トレース22の画定された軌跡上へ金属の溶融液滴42を吐出する堆積モジュールとして機能する。ドナーアセンブリ36は、透過性が高い材料の薄く可撓性のあるシートを典型的に含むドナー基板38を備え、ドナー基板38は、回路基板24に近接する側において指定の金属または金属の組み合わせを含むドナーフィルム40でコーティングされる。(ドナーフィルムは、
図3に関して本明細書において以下に説明されるように、付着フィルムなどの副層を含み得る。)代替的に、ドナー基板38は、剛性または半剛性を有する材料を含み得る。回転鏡および/または音響光学デバイスなどのビーム偏向器32、ならびに集束光学素子34が、制御回路52によって決定された空間パターンに従って、LIFTレーザ28からの放射のパルスを、ドナー基板38の上面を通過し、そして下面のドナーフィルム40に当たるように指向させる。
【0033】
各レーザパルスは、ドナーフィルム40から基板24上への金属の1つ以上の溶融液滴42の吐出を誘起する。レーザパルスの持続時間およびエネルギー(典型的には、ナノ秒範囲内のパルス持続時間を有する)、ならびにドナーフィルム40の厚さは、各レーザパルスが、単一の溶融液滴42を正確な方向性および高速でドナーフィルムから回路基板へ向けて吐出させるように選択され得る。この種のLIFT動作のさらなる詳細は、上記の米国特許第9,925,797号に説明される。液滴42は、基板に付着し硬化し、そして、描写された例において、硬化した液滴44の線を画定する。各液滴は、金属材料の特定の量を線に追加する。制御回路52は、線22の所望の厚さに応じて、堆積される液滴の数および連続液滴の間の間隔を設定する。故に、非常に薄い線を作成するには、液滴42は、線22の幅および高さが単一の液滴44の幅および高さにおよそ等しくなるように、連続液滴の間に部分的な重複のみを伴って堆積され得る。この手法を使用すると、ミクロン範囲まで減少した幅の、非常に微細な線を作成することが可能である。代替的に、液滴44のより厚い集合体が、より幅広でより深い線を作成するために使用され得る。
【0034】
液滴44の堆積後に、溶融レーザ30は、液滴が線22に沿ってバルク材料内へ一緒に融合するように金属を溶融させるために十分なエネルギーを有して、液滴の線を照射する。走査鏡および/または音響光学デバイスなどのビーム偏向器46、ならびに集束光学素子48は、溶融レーザ30からの放射を標的線に当たるように指向させる。溶融レーザ30のビームエネルギーおよび他のパラメータは、基板24および周囲の構造体への熱損傷を最小限にしながら液滴44内の金属を溶融させるように選択される。ビームは、線の全体積を溶融させるために、または体積の一部のみを溶融させるために(例えば、必ずしも全体積を溶融させることなく、液滴の厚い体積の外皮を融合させるために)十分なエネルギーのものであり得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、溶融レーザ30は、溶融ステップの熱影響が良好に局所化され、基板24および周囲の構造体に対する影響が最小であることを確実にするために、CWビームではなく、レーザエネルギーのパルスのシーケンスを発する。短いパルスの使用はまた、トレースが所望の形状を維持するように、金属液滴が合体して球になることを防ぐことにおいて有益である。光学素子48は、ビームを、近隣の構造体を溶融させないために十分に小さいビーム直径で標的線に当たるように集束させる。この目的のため、ビーム直径は、線幅未満であり得る。しかしながら、ビーム直径は、液滴44で被覆されているトレースの軌跡の全領域を溶融させるために十分に大きい。ビーム偏向器46は、パルスの各々がシーケンス内の先行パルスと所定の重複を有するように、トレース22の軌跡に沿って溶融レーザ30のビームを走査させる。走査速度は、適切な熱量が全トレースに沿って均一に適用されるように調節される。
【0036】
典型的には、溶融レーザ30によって出力されるパルスのパルス持続時間は、100μs未満であり、微細な特徴部を溶融させる場合は、パルスは、例えば10μs未満と、さらに短くなる。液滴の組成および所望の溶融深さに応じて、各パルスの持続時間は、1μs未満になることさえある。パルスエネルギーは、材料およびトレース寸法に応じて、典型的には、0.1μJ~最大100μJの範囲内にある。短く強力なレーザパルスの使用は、基板24への熱伝達を減少させること、および溶融プロセス中の金属の酸化を減少させることの両方において有益であり、本プロセスが周囲大気条件下で実行されることを可能にする。短いレーザパルスの使用はまた、液滴内の金属が別個の球へと合体してトレース22の所望の形状特徴を失う傾向を低減することにおいて有利である。シーケンス内のパルス間の時間は、熱蓄積が問題にならないように、以前のパルスからの熱が放散するために十分な長さであってもよい。
【0037】
異なるトレース寸法および溶融深さのためにパルス持続時間が調節されることを可能にするために、溶融レーザ30は、例えば、好適なファイバレーザまたは高出力ダイオードレーザを含み得る。レーザが、ナノ秒範囲まで減少した、パルス持続時間の十分に広い範囲の調節を有する場合、LIFTレーザ28としても機能し得る。
【0038】
添付の図面および付随する説明は、制御されたレーザ溶融と併せて金属トレースのLIFT印刷に適用され得るいくつかの技術を提示する。明確性および具体性のため、これらの技術は、システム20の要素に関して本明細書内の以下に説明される。しかしながら、これらの技術は、
図1に示される特定のシステム構成に限定されるものではなく、本発明の原則は、本説明を読後に当業者には明白であるように、必要な能力を有する他のシステムにおいて代替的に適用され得る。すべてのそのような代替の実装形態は、本発明の範囲内であると見なされる。
【0039】
異なる幅および厚さの金属線の印刷
図2Aは、本発明の実施形態による、LIFTレーザ28によって回路基板24上に印刷された金属液滴44の線の顕微鏡写真である。液滴44は、直径約1μmであり、シーケンス内の連続液滴の間に液滴直径の約50%の重複を伴って、トレース22の軌跡の長さに沿って延びる単一の列において印刷される。代替的に、連続液滴同士の重複は、非常に狭いトレースが所望されるときには、50%未満にさえなり得る。
【0040】
図2Bは、本発明の実施形態による、溶融レーザ30によるレーザ溶融の後のトレース22の顕微鏡写真である。重複するレーザパルスのシーケンスは、液滴44にわたって走査させられ、これらを、1μmほどの線幅で、この図に示される一元トレース22へと合体させる。この種の均一な金属トレースを達成するための最適なレーザパルスパラメータは、関係する材料および幾何学寸法に依存し、計算および経験的試行錯誤によってその都度最適化され得る。
【0041】
図3は、本発明の実施形態による、レーザ照射下でのドナーフィルム40からの溶融液滴42の吐出を例示する、ドナーアセンブリ36の概略断面図である。この実施形態は、非常に微細なトレースを印刷する際、およびガラスなどの滑らかな基板上に印刷する際に特に発生し得る、液滴44と基板24との付着不良の問題を解決することを目的とする。
【0042】
この問題を解決するために、ドナーフィルム40は、ドナー基板38上の一次金属ドナーフィルム60の上に重なる付着フィルム62を含む。例えば、フィルム60が、良好な導電体であるが誘電体基板に良好に付着しない場合がある銅を含むと仮定すると、付着フィルム62は、チタン、スズ、ビスマス、またはこれらの金属の合金など、銅よりも素早く酸化する別の金属を含み得る。任意選択的に、ドナー基板へのドナーフィルムの付着を強化し、基板/フィルム界面におけるレーザエネルギーの反射を低減するために、中間層64も、ドナー基板38と一次金属ドナーフィルム60との間に堆積される。本実施形態において、一次金属ドナーフィルムは、典型的には、50~700nm厚であるが、付着フィルムは、例えば、50~200nm厚と、より薄い。
【0043】
図3に示されるように、レーザパルスがドナーフィルム40に突き当たると、付着フィルム62内の金属は、液滴42を覆う外層を形成し、フィルム60からの一次金属を囲む。この外層は、回路基板への溶融液滴の衝突の際に回路基板24に付着する。ジェットプロセスの速度によって、外層は、液滴が空中にある間、液滴42の金属核内へと実質的に混合されない。しかしながら、この手法の代替として、ドナーフィルム40は、強化した付着特性を有する合金を含み得る。追加的または代替的に、基板の表面は、LIFTジェットの前に付着を向上させるために、粗くされるか、別途準備され得る。
【0044】
図4Aは、本発明の実施形態による、回路トレースを画定する、LIFTプロセスにおいて基板24上に堆積された金属液滴44の集合体の概略断面図である。この実施形態において、トレースは、
図2A/
図2Bに示される例よりも広く、深い。
【0045】
図4Bは、本発明の実施形態による、
図4Aに示される金属液滴44の集合体の完全なレーザ溶融によって形成された回路トレース70の概略断面図である。この場合、溶融レーザ30は、トレース70内の硬化した液滴の全体積を溶融させるために、硬化した液滴44に十分なエネルギーを印加する。この手法は、機械的完全性および熱伝導率を最大限にすること、ならびにトレースの電気抵抗を最小限にすることにおいて有益であるが、回路基板24および周囲の構造体への損傷を回避するために注意深く適用されなければならない。1つの実施形態において(図示せず)、ビーム偏向器46は、より均一な溶融を達成するために、溶融レーザ30からのビームを、入射角の範囲にわたって液滴44の体積に当たるように指向させる。
【0046】
図4Cは、本発明の代替の実施形態による、
図4Aに示される金属液滴44の集合体の部分的なレーザ溶融によって形成された回路トレースの概略断面図である。この場合、溶融レーザ30は、トレースの長さに沿って、硬化した液滴の全体積を溶融させることなく硬化した液滴の外層のみを溶融させるために十分なエネルギーを、硬化した液滴に印加する。この外層は、導電トレース内の硬化した液滴44の体積を封入する保護表皮72を形成する。表皮72は、トレースの機械的および電気的完全性、ならびにエッチングおよび腐食への耐性を強化する。この手法は、レーザエネルギーの必要な投資がはるかに小さくなり、故に、トレースの体積の完全な溶融に対して、基板24に対する損傷およびトレースの変形のリスクを低減しながらプロセススループットを増加させることができる。1つの実施形態において、溶融プロセスに使用されるレーザビームは、トレースの幅よりも小さいスポットサイズへ集束され、全領域が網羅されるまでトレースの表面にわたって走査させられる。
【0047】
以下の表は、様々な寸法のLIFT堆積金属トレースの制御されたレーザ溶融に使用され得るプロセスパラメータの例を列挙する。これらの例において、液滴44は、銅を含み、基板24上の液滴の集合体は、
図4Aに示される一般形態を有する。その都度トレースに沿った各場所に印加される溶融レーザパルスの数は、約1μm(
図4Cに示される)からトレースの全厚(
図4Bに示される)の範囲に及び得る所望の溶融深さに応じて選択され得る。
【表1】
【0048】
上の例は、特に、他の技術によって製作するのが困難または不可能である、安定した狭いトレースの形成における、本技術によって提供される制御可能なパラメータの幅広い適用性および範囲を例示する。パルス幅は、溶融の深さに応じて選択され得、厚いトレースの完全溶融が所望されるときは複数のLIFT/溶融サイクルを実施する可能性を伴う。パルスピッチおよび繰り返し率もまた、全体的な熱プロファイルに影響を及ぼし、故に溶融の深さに影響を与え得る。レーザスポットサイズは、概して、トレースの幅におよそ一致するように選択される。レーザ波長もまた、レーザエネルギーが、基板によってではなく、トレースによって良好に吸収され、以て、レーザスポットが、トレースよりも幅広い領域にわたって延びるときに基板に対する損傷を最小限にするように選択され得る。
【0049】
回路素子の製作および修復
図1に戻って参照すると、いくつかの実施形態において、トレース22が印刷される軌跡は、回路基板上の一対の端子の間に隙間を含む。例えば、制御回路52は、回路基板24の検査モジュール54によって撮像された画像を分析することによってそのような隙間を識別し得る。制御回路52は、次いで、隙間を充填するためにドナーフィルム40から基板24上に溶融液滴42を吐出するようにレーザモジュール26を指向させる。いくつかの実施形態において、こうして識別された隙間は、回路基板24上で検出される、誤形成されたトレースまたは開回路トレースなどの、欠陥に起因し得る。この場合、隙間を充填する前に、欠陥のあるトレースおよび下にある基板は、例えば、上記の韓国特許出願公開第20150070028号に説明されるようなレーザアブレーションを使用して、洗浄および準備され得る。この準備は、液滴42が付着することになる良好に画定された端子を形成するために、隙間に隣接する回路トレースの端部を成形することを含み得る。次いで、欠陥は、端子の間の隙間に溶融液滴42を堆積させ、次いで硬化した液滴44を溶融させるために溶融レーザ30のビームを指向させることによって、修復される。
【0050】
他の実施形態において、隙間を含む回路トレースは、例えば、フォトリソグラフィ技術によって、回路基板24上に意図的に形成される。これらの隙間は、次いで、LIFT印刷によって、回路トレースとは異なる材料、例えば、NiCrなどの抵抗材料を充填され得る。
図7に例示されるこのプロセスは、抵抗器およびひずみゲージなどの回路構成要素を生産するために使用され得る。
【0051】
図5A~
図5Cは、本発明の実施形態による、回路トレース内の隙間82を充填するプロセスにおける段階を示す概略断面図である。
図5Aは、LIFTプロセスによって回路トレース80内の隙間82に堆積された硬化した金属液滴44の集合体を示す。この場合、隙間82はトレース80の初期製作における欠陥に起因して作成されたものと考えられる。隙間82の縁は、隙間の縁における階段形状を含め、良好に画定された端子を作成するために四角にされている。この種の前処理は、隙間内の液滴44の均一な堆積、および液滴と端子との間の良好な電気接触を可能にする。この例では、液滴44は、隙間82の深さ全体を充填するために単一のLIFT堆積ステップにおいて堆積されている。
【0052】
図5Bは、液滴44の集合体へのレーザ溶融プロセスの適用を例示する。溶融レーザ30からのパルスビーム84は、集合した液滴の外面上において集束し、矢印86によって示されるように、隙間82を走査する。
【0053】
図5Cは、
図5Bのレーザ溶融プロセスによって形成された回路トレース80を示す。液滴44の上層88は、溶融してトレース80の金属に接合されており、下にある硬化した液滴44を被覆する表皮を形成する。層88の深さは、レーザビーム84の強度および走査パターンによって決定される。
【0054】
図6A~
図6Dは、本発明の別の実施形態による、回路トレース80内の隙間を充填するプロセスにおける段階を示す概略断面図である。
図6Aは、LIFTプロセスによって回路トレース80内の隙間に堆積された金属液滴90の集合体へのレーザ溶融プロセスの適用を例示する。この場合、液滴90が隙間の深さ全体を充填せず、回路基板上に第1の層を形成するように、層化手法が適用される。レーザビーム84は、この第1の層内の硬化した液滴を溶融させるために隙間にわたって走査させられる。
【0055】
図6Bは、
図6Aのレーザ溶融プロセスによって形成された部分的な回路トレースを示す。この例では、液滴90の深さ全体が、回路トレース80内の隙間の中に導電トレースの下層92を形成するように、レーザビーム84によって溶融している。
【0056】
図6Cは、ビーム84の走査による、金属液滴94のさらなる集合体へのレーザ溶融プロセスの適用を例示する。液滴94は、LIFTプロセスによって下層92を覆って堆積され、次いでレーザビーム84は、硬化した液滴を溶融させるために液滴94のこの追加された集合体にわたって走査させられる。
【0057】
図6Dは、
図6Cのレーザ溶融プロセスによって形成された完全な回路トレースを示す。
図6Cの制御されたレーザ溶融プロセスは、トレース80内の隙間を充填し、そしてトレースを完成させるように、下層92を覆って導電トレースの上層96を形成した。この多層化手法は、トレース80および基板24内への熱放散を低減しながら(そして潜在的な熱損傷を軽減する)、トレースが完全に溶融し、その深さ全体を通してバルク材料へと合体することを確実にするのに有用である。
図6A~
図6Dは、簡略性の目的のために2層プロセスのみを示すが、本技術の原則は、必要とされるトレース厚さに応じて、3つ以上の層を作成することにおいても同様に適用され得る。
【0058】
図7は、本発明の実施形態による、LIFTプロセスによって印刷された異種回路トレースの概略断面図である。この実施形態において、トレース80は、端子100を画定するためにエッチングまたはアブレーションされた第1の金属、例えば、銅、を含む。ドナーフィルム40は、第1の金属とは異なる組成の異なる金属、例えばNiCrを含む。LIFTレーザ28は、NiCrの液滴を端子100の間の隙間の中に堆積させるように操作される。溶融レーザ30は、次いで、NiCr液滴を溶融させてトレース102内へ合体させるだけでなく、端子において異種金属接合を形成するために端子100の少なくとも上層を溶融させるように動作する。これらの接合は、低い抵抗および高い機械的強度で金属対金属接触を作成するのに有用である。先に述べたように、トレース102は、例えば、埋め込み型の抵抗器またはひずみゲージとして機能し得る。
【0059】
同様の形式で、トレースおよび端子が同じ金属を含むときにさえ、溶融レーザ30の動作は、トレースと端子との間の同種金属接合を形成することに有用である。異種接合の場合のように、これらの金属接合は、エッチングおよび腐食に対する機械的強度および抵抗を強化し、電気抵抗を低減する。
【0060】
以下の表は、
図7に示されるような銅回路トレースと界面をとるLIFT堆積NiCrトレースの制御されたレーザ溶融に使用され得るプロセスパラメータの例を列挙する。
【表2】
【0061】
図8A~
図8Eは、本発明の代替の実施形態による、回路トレース内の隙間112を修復するLIFTベースのプロセスにおける連続ステップを示す、基板24上の回路トレース110の概略上面図である。
図8Aは、LIFTプロセスが開始される前の隙間112を示す。この場合、
図8Bに示されるように、液滴114が、LIFTプロセスによって隙間112よりも広い領域にわたって堆積される。この種の堆積パターンは、例えば、LIFTレーザ28が、例えばピコ秒範囲にある、より短いパルスをより高いピーク電力で発し、その結果として、各パルスが多くのサブミクロン液滴を基板24の方へ吐出させるときに、作成されることになる。この形態での動作は、硬化した液滴がより小さく、基板により良好に付着し得るという点で有利であり得るが、液滴吐出の方向性はあまり正確ではない。
【0062】
液滴114によって被覆される領域の幅を低減するために、溶融レーザ30は、トレースの軌跡の所定の幅内で基板24上に堆積されている硬化した液滴のみを溶融させるように印加される。故に、
図8Cに示されるように、トレース領域116は、溶融および合体して、回路トレース110に接合する固体トレースを形成する。LIFT堆積トレースの厚さを増加させるために、LIFTステップは、
図8Dに示されるように、隙間112の領域にわたって液滴118の1つ以上の追加の層を堆積させるために繰り返され得る。各々のそのようなステップの後で、
図8Cの制御されたレーザ溶融ステップは、トレース領域116内(その外側は含まない)の追加の液滴を溶融および合体させるために繰り返される。
【0063】
トレース領域116内の金属が所望の深さに到達すると、エッチングプロセスが、トレース領域116の外側の回路基板上に堆積された硬化した液滴を除去するために回路基板24に適用される。領域116の外側の別個の液滴はそれらの体積に対して大きな面積を有し、故にエッチングプロセスの影響をより受けやすいため、このステップは、例えば、当該技術分野において知られる化学エッチングまたはガルバニックエッチングの方法を使用して実行され得る。代替的に、硬化した液滴は、レーザアブレーションによって除去され得る。エッチングステップ後のきれいなトレースは、
図8Eに示される。
【0064】
上に説明される実施形態は、例として言及されること、および本発明は、本明細書において上に具体的に示され、説明されたものに限定されないということを理解されたい。むしろ、本発明の範囲は、本発明書において上に説明された様々な特徴の組み合わせおよび部分組み合わせの両方、ならびに前述の説明を読むことで当業者が想起する、および先行技術において開示されていない、それらの変形および修正を含む。
【国際調査報告】