IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エコラボ ユーエスエー インコーポレイティドの特許一覧

特表2024-501014原油の生産及び処理において使用するための防汚組成物
<>
  • 特表-原油の生産及び処理において使用するための防汚組成物 図1
  • 特表-原油の生産及び処理において使用するための防汚組成物 図2
  • 特表-原油の生産及び処理において使用するための防汚組成物 図3
  • 特表-原油の生産及び処理において使用するための防汚組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】原油の生産及び処理において使用するための防汚組成物
(51)【国際特許分類】
   C10G 75/04 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
C10G75/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539263
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021065398
(87)【国際公開番号】W WO2022147046
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/131,272
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】オマー グール
(72)【発明者】
【氏名】アブザール サイド
(72)【発明者】
【氏名】ラーネジア コールフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン エム.ガルシア ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ジャネル エル.ペニントン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129CA01
4H129CA03
4H129CA08
4H129CA12
4H129HA18
4H129HA21
4H129HA22
4H129HB06
4H129NA40
(57)【要約】
【課題】炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を抑制するための防汚組成物及び方法等の提供。
【解決手段】石油精製システムの構造部分の汚染を有利に低減する防汚組成物が開発された。これには、コークス化反応の低減や、原油の生産及び処理に使用される装置やラインでの固形物の堆積の抑制が含まれる。防汚組成物は、アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む樹脂と、ポリアルキレンエステル、ポリオレフィンアミドアルケンアミン、ポリエチレンポリアミン、ポリアルキレンイミン、又はこれらの組み合わせを含むポリオレフィンと、任意選択的に、ポリアルキレンイミド、アミン置換ポリアルキレンイミド、又はこれらの組み合わせと、任意選択的に、N,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミンと、を含有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を抑制するための防汚組成物であって、前記防汚組成物は、
アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む、有効量の樹脂と、
ポリアルキレンエステル、ポリオレフィンアミドアルケンアミン、ポリエチレンポリアミン、ポリアルキレンイミン、又はこれらの組み合わせを含む、有効量のポリオレフィンと、を含む、防汚組成物。
【請求項2】
有効量の、ポリアルキレンイミド、アミン置換ポリアルキレンイミド、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の防汚組成物。
【請求項3】
N,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミンを含む、有効量のキレート化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の防汚組成物。
【請求項4】
前記アルキルフェノール-アルデヒド樹脂が、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項5】
前記アルキルフェノール-アルデヒド樹脂が、C~C20アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項6】
前記アルキルフェノール-アルデヒド樹脂が、C~C16アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む、請求項5に記載の防汚組成物。
【請求項7】
前記アルキルフェノール-アルデヒド樹脂が、C~C12アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む、請求項5に記載の防汚組成物。
【請求項8】
前記アルキルフェノール-アルデヒド樹脂が、C~C12アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む、請求項5に記載の防汚組成物。
【請求項9】
前記アルキルフェノール-アルデヒド樹脂が、C~C12アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む、請求項5に記載の防汚組成物。
【請求項10】
前記アルキルフェノール-アルデヒド樹脂が、ノニルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を含む、請求項5に記載の防汚組成物。
【請求項11】
前記ポリアルキレンエステルを含み、前記ポリアルキレンエステルが、ポリアルキレンコハク酸エステル、ポリアルキレンコハク酸無水物、ポリアルキレンコハク酸、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項12】
前記ポリアルキレンエステルが、ポリエチレンコハク酸エステル、ポリエチレンコハク酸無水物、ポリエチレンコハク酸、ポリプロピレンコハク酸エステル、ポリプロピレンコハク酸無水物、ポリプロピレンコハク酸、ポリイソブチレンコハク酸エステル、ポリイソブチレンコハク酸無水物、ポリイソブチレンコハク酸、又はこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の防汚組成物。
【請求項13】
前記ポリアルキレンエステルが、ポリイソブチレンコハク酸エステルを含む、請求項11に記載の防汚組成物。
【請求項14】
前記ポリイソブチレンコハク酸エステルが、ポリイソブチレンコハク酸無水物とポリオールとの反応から誘導される、請求項13に記載の防汚組成物。
【請求項15】
前記ポリオールが、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、グリセロール、グルコース、スクロース、アラビトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、リビトール、ソルビトール、キシリトール、トレイトール、ガラクチトール、イソマルト、イジトール、ラクチトール、又はこれらの組み合わせを含む、請求項14に記載の防汚組成物。
【請求項16】
前記ポリオールが、ペンタエリスリトールを含む、請求項14に記載の防汚組成物。
【請求項17】
前記ポリアルキレンイミド又は前記アミン置換ポリアルキレンイミドを含み、前記ポリアルキレンイミドが、ポリアルキレンスクシンイミドであり、前記アミン置換ポリアルキレンイミドが、アミン置換ポリアルキレンスクシンイミドである、請求項2~9のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項18】
前記ポリアルキレンスクシンイミドが、ポリエチレンスクシンイミド、ポリイソプロピレンスクシンイミド、ポリイソブチレンスクシンイミド、又はこれらの組み合わせである、請求項17に記載の防汚組成物。
【請求項19】
前記アミン置換ポリアルキレンスクシンイミドが、アミン置換ポリエチレンスクシンイミド、アミン置換ポリイソプロピレンスクシンイミド、アミン置換ポリイソブチレンスクシンイミド、又はこれらの組み合わせである、請求項17に記載の防汚組成物。
【請求項20】
前記樹脂と前記ポリオレフィンとの総重量に基づいて、前記樹脂が、約1~約99重量%の濃度で存在し、前記ポリオレフィンが、約1~約99重量%の濃度で存在する、請求項1~19のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項21】
前記樹脂と前記ポリオレフィンとの総重量に基づいて、前記樹脂が、約20~約80重量%の濃度で存在し、前記ポリオレフィンが、約20~約80重量%の濃度で存在する、請求項1~19のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項22】
前記樹脂、前記ポリオレフィン、及び前記キレート剤の総重量に基づいて、前記樹脂が、約10~約80重量%の濃度で存在し、前記ポリオレフィンが、約10~約80重量%の濃度で存在し、前記キレート剤が、約1~約25重量%の濃度で存在する、請求項3~19のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項23】
前記樹脂、前記ポリオレフィン、及び前記キレート剤の総重量に基づいて、前記樹脂が、約20~約70重量%の濃度で存在し、前記ポリオレフィンが、約20~約70重量%の濃度で存在し、前記キレート剤が、約5~約15重量%の濃度で存在する、請求項3~19のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項24】
炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を低減又は防止するための方法であって、前記方法は、前記構造部分を、請求項1~23のいずれか一項に記載の有効量の防汚組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項25】
炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を低減又は防止するための、請求項1~23のいずれか一項に記載の防汚組成物の使用。
【請求項26】
前記炭化水素流体が、石油化学流体である、請求項24又は25に記載の方法又は使用。
【請求項27】
前記石油化学流体が、アスファルテン、パラフィン、ワックス、スケール、ナフテネート、コークス、又はこれらの組み合わせを含む、請求項26に記載の方法又は使用。
【請求項28】
前記防汚組成物を、汚染物質前駆体を分散させるのに有効な量で前記石油化学流体と接触させる、請求項26又は27に記載の方法又は使用。
【請求項29】
前記防汚組成物を、汚染物質の堆積を防止又は低減するのに有効な量で前記石油化学流体と接触させる、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項30】
前記防汚組成物を、アスファルテンを分散させるのに有効な量で前記石油化学流体と接触させる、請求項26又は27に記載の方法又は使用。
【請求項31】
前記防汚組成物を、コークスの堆積を防止又は低減するのに有効な量で前記構造部分と接触させる、請求項26又は27に記載の方法又は使用。
【請求項32】
前記構造部分が、生産、貯蔵装置、熱交換器、パイプ、ポンプ、流量計、バルブ、脱塩装置、炉、コーカー、蒸留塔、分留塔、大気圧塔、パイプ蒸留器、デブタナイザー、反応器、流動接触分解装置、流動接触分解スラリー沈殿装置、水素化分解装置、水蒸気分解装置、熱分解装置、ビスブレーカー、還流装置、コンデンサー、スクラバー、又はこれらの組み合わせ、の部分を含む、請求項24~31のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項33】
前記構造部分が、熱交換器、原油処理装置、流動接触分解装置、流動接触分解スラリー沈殿装置、水素化分解装置、水蒸気分解装置、熱分解装置、ビスブレーカー、又はこれらの組み合わせ、の部分を含む、請求項32に記載の方法又は使用。
【請求項34】
前記構造部分が、熱交換器、原油処理装置、流動接触分解装置、ビスブレーカー、又はこれらの組み合わせ、の部分を含む、請求項33に記載の方法又は使用。
【請求項35】
前記防汚組成物の有効量が、炭化水素流体の総量に基づいて、約1ppm~約50,000ppmである、請求項24~34のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項36】
前記防汚組成物の有効量が、約1ppm~約500ppmである、請求項35に記載の方法又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
石油精製システムの構造部分の汚染を有利に低減する防汚組成物が開発された。これには、コークス化反応の低減や、原油の生産及び処理に使用される装置やラインでの固形物の堆積の抑制が含まれる。防汚剤はまた、油生産プロセスにおいても使用され得る。防汚組成物は、アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む樹脂と、ポリアルキレンエステル、ポリオレフィンアミドアルケンアミン、ポリエチレンポリアミン、ポリアルキレンイミン、又はこれらの組み合わせを含むポリオレフィンと、任意選択的に、ポリアルキレンイミド、アミン置換ポリアルキレンイミド、又はこれらの組み合わせと、任意選択的に、N,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミンと、を含有する。
【背景技術】
【0002】
石油化学製品及びこれらの供給原料は、典型的には、処理中に約35℃~約550℃の温度に加熱される。更に、加熱及び熱交換システムで加熱流体として使用される石油炭化水素は、同様に高温に加熱される。このような高温に加熱すると、石油炭化水素に汚染堆積物が形成される可能性がある。この汚染堆積物は、処理及び加熱装置の表面に堆積物を形成する可能性があり、これらの表面を汚染する。
【0003】
汚染堆積物は、原油又は他の炭化水素ストリームへの熱伝達の速度を低下させる可能性があり、時間の経過とともに、熱交換器又は炉のスループットの速度を低下させる可能性がある。対処されない場合、装置の汚染が進行して、処理装置や配管中の原油の流れを妨げたり、又はフィルタースクリーン、バルブ、及びトラップを詰まらせたりする可能性がある。したがって、表面の汚染は、エネルギーコストの増加、設備コストの増加(例えば、装置の変更又は交換)、及び保守コストの増加(例えば、スクリーン、フィルター、パイプ、バルブ、トラップなどの洗浄又は交換)をもたらす可能性がある。
【0004】
汚染の正確なメカニズムは不明だが、原油又は炭化水素流のいくつかの異なる成分が汚染の原因となる可能性がある。例えば、アスファルテン、多環芳香族炭化水素、コークス、有機ポリマー、有機反応生成物、無機ケイ酸塩、無機塩、金属酸化物、金属硫化物などは、石油処理における汚染堆積物の複雑な性質に寄与すると考えられている。更に、金属酸化物及び金属硫化物は、縮退分岐を促進し、フリーラジカルを形成することによって石油炭化水素の酸化速度を加速することによって、汚染に寄与すると考えられている。形成されたフリーラジカルは、続いて、石油の成分を酸化及び重合することによって反応して、ガム、高分子物質、及び堆積物を形成し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
比較的低い粘度(例えば、500センチポアズ未満)及び高い安定性という制約により、炭化水素流体にさらされる石油精製システムの構造部分の汚染を阻害する(すなわち、低減又は防止する)効果的なコークス防止組成物及び防汚組成物の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を抑制するための防汚組成物に関し、その防汚組成物は、アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む、有効量の樹脂と、ポリアルキレンエステル、ポリオレフィンアミドアルケンアミン、ポリエチレンポリアミン、ポリアルキレンイミン、又はこれらの組み合わせを含む、有効量のポリオレフィンとを含む。
【0007】
防汚組成物は、有効量の、ポリアルキレンイミド、アミン置換ポリアルキレンイミド、又はこれらの組み合わせを更に含むことができる。
【0008】
更に、本明細書に記載される防汚組成物は、N,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミンを含む、有効量のキレート化合物を更に含むことができる。
【0009】
防汚組成物は、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を含むアルキルフェノール-アルデヒド樹脂を有する。
【0010】
更に、アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、C~C20アルキルフェノール-アルデヒド樹脂、好ましくは、C~C16アルキルフェノール-アルデヒド樹脂、より好ましくは、C~C12アルキルフェノール-アルデヒド樹脂、更により好ましくは、C~C12アルキルフェノール-アルデヒド樹脂、更により好ましくは、C~C12アルキルフェノール-アルデヒド樹脂、最も好ましくは、ノニルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を含む。
【0011】
更に、防汚組成物は、ポリアルキレンコハク酸エステル、ポリアルキレンコハク酸無水物、ポリアルキレンコハク酸、又はこれらの組み合わせ、好ましくは、ポリエチレンコハク酸エステル、ポリエチレンコハク酸無水物、ポリエチレンコハク酸、ポリプロピレンコハク酸エステル、ポリプロピレンコハク酸無水物、ポリプロピレンコハク酸、ポリイソブチレンコハク酸エステル、ポリイソブチレンコハク酸無水物、ポリイソブチレンコハク酸、又はこれらの組み合わせ、のポリアルキレンエステルを含み、より好ましくは、ポリアルキレンエステルは、ポリイソブチレンコハク酸エステルを含む。
【0012】
防汚組成物において、ポリイソブチレンコハク酸エステルは、ポリイソブチレンコハク酸無水物とポリオールとの反応から誘導される。ポリオールは、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、グリセロール、グルコース、スクロース、アラビトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、リビトール、ソルビトール、キシリトール、トレイトール、ガラクチトール、イソマルト、イジトール、ラクチトール、又はこれらの組み合わせを含み得る。好ましくは、ポリオールは、ペンタエリスリトールを含む。
【0013】
防汚組成物は、ポリアルキレンイミド又はアミン置換ポリアルキレンイミドを含むことができ、ポリアルキレンイミドは、ポリアルキレンスクシンイミドであり、アミン置換ポリアルキレンイミドは、アミン置換ポリアルキレンスクシンイミドであり、好ましくは、ポリアルキレンスクシンイミドは、ポリエチレンスクシンイミド、ポリイソプロピレンスクシンイミド、ポリイソブチレンスクシンイミド、又はこれらの組み合わせであり、アミン置換ポリアルキレンスクシンイミドは、アミン置換ポリエチレンスクシンイミド、アミン置換ポリイソプロピレンスクシンイミド、アミン置換ポリイソブチレンスクシンイミド、又はこれらの組み合わせである。
【0014】
防汚組成物はまた、N,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミンを含むキレート化合物を含むこともできる。
【0015】
防汚組成物は、樹脂とポリオレフィンとの総重量に基づいて、約1~約99重量%の濃度で存在する樹脂と、約1~約99重量%の濃度で存在するポリオレフィンとを有し、好ましくは、樹脂とポリオレフィンとの総重量に基づいて、樹脂は、約20~約80重量%の濃度で存在し、ポリオレフィンは、約20~約80重量%の濃度で存在する。
【0016】
更に、防汚組成物は、樹脂、ポリオレフィン、及びキレート剤の総重量に基づいて、約10~約80重量%の濃度で存在する樹脂、約10~約80重量%の濃度で存在するポリオレフィン、及び約1~約25重量%の濃度で存在するキレート剤を有し、好ましくは、樹脂、ポリオレフィン、及びキレート剤の総重量に基づいて、樹脂は、約20~約70重量%の濃度で存在し、ポリオレフィンは、約20~約70重量%の濃度で存在し、キレート剤は、約5~約15重量%の濃度で存在する。
【0017】
炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を低減又は防止するための方法も開示され、この方法は、構造部分を本明細書に記載の有効量の防汚組成物と接触させることを含む。
【0018】
炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を低減又は防止するための方法も開示され、この方法は、構造部分を本明細書に記載の防汚組成物と接触させることを含む。
【0019】
炭化水素流体にさらされる石油精製システムの構造部分の汚染を低減又は防止するための方法において、炭化水素流体は石油化学流体であり得る。
【0020】
炭化水素流体にさらされる石油精製システムの構造部分の汚染を低減又は防止するための方法において、石油化学流体は、アスファルテン、パラフィン、ワックス、スケール、ナフテネート、コークス、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0021】
本明細書で記載される方法は、防汚組成物を、汚染物質前駆体を分散させるのに有効な量で石油化学流体と接触させる。
【0022】
また、本明細書で記載される方法は、防汚組成物を、汚染物質の堆積を防止又は低減するのに有効な量で石油化学流体と接触させる。
【0023】
開示の方法では、防汚組成物を、アスファルテンを分散させるのに有効な量で石油化学流体と接触させることができる。
【0024】
開示の方法では、防汚組成物を、コークスの堆積を防止又は低減するのに有効な量で石油化学流体と接触させることができる。
【0025】
更に、開示の方法では、防汚組成物を、汚染物質の堆積を防止又は低減するのに有効な量で石油化学流体と接触させることができる。
【0026】
開示の方法では、石油精製システムにおける構造部分は、貯蔵装置、熱交換器、パイプ、ポンプ、流量計、バルブ、脱塩装置、炉、コーカー、蒸留塔、分留塔、大気圧塔、パイプ蒸留器、デブタナイザー、反応器、流動接触分解装置、流動接触分解スラリー沈殿装置、水素化分解装置、水蒸気分解装置、熱分解装置、ビスブレーカー、還流装置、コンデンサー、スクラバー、又はこれらの組み合わせ、の部分を含み得る。好ましくは、構造部分は、熱交換器、原油処理装置、流動接触分解装置、流動接触分解スラリー沈殿装置、水素化分解装置、水蒸気分解装置、熱分解装置、ビスブレーカー、又はこれらの組み合わせ、の部分を含み得る。より好ましくは、構造部分は、流動接触分解装置、ビスブレーカー、又はこれらの組み合わせ、の部分を含み得る。
【0027】
炭化水素流体にさらされる石油精製システムの構造部分の汚染を低減又は防止するための方法では、防汚組成物の有効量は、炭化水素流体の総量に基づいて、約1ppm~約50,000ppm、又は約1ppm~約500ppmの防汚組成物である。
【0028】
他の目的及び特徴は、一部は明らかであり、一部は以下に示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】様々な試薬を用いた高温液体プロセスシミュレータ(hot liquid process simulator、HLPS)試験における入口温度と出口温度との間の温度差対時間のグラフを示している。
図2】様々な試薬を用いた高温液体プロセスシミュレータ(hot liquid process simulator、HLPS)試験における入口温度と出口温度との間の温度差対時間のグラフを示している。
【0030】
図3】50ppm用量で様々な試薬を使用したアスファルテン分散性試験(asphaltene dispersancy test、ADT)の結果の写真を示している。
図4】50ppm用量で様々な試薬を使用したアスファルテン分散性試験(asphaltene dispersancy test、ADT)の結果の写真を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を抑制する(例えば、低減又は防止する)方法で使用することができる防汚組成物が開示されている。防汚組成物は、石油精製システム並びに石油生産における構造部分の表面への汚染化合物の堆積を低減する。特定の理論に束縛されるものではないが、防汚組成物の成分は、2つ以上の作用機序を提供し、一方の成分は、炭化水素中の金属をキレート化して金属を化学的に不活性にし、一方、組成物のもう1つの成分又は複数の成分は、炭化水素流体の成分を分散させ、特に、他方の成分は、炭化水素流体中にアスファルテン/汚染物質前駆体を分散させる、と考えられる。
【0032】
本明細書に記載の防汚組成物は、炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を抑制するために使用することができる。本開示は、炭化水素流体にさらされる石油精製システムにおける構造部分の汚染を抑制するための防汚組成物に関し、その防汚組成物は、アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む有効量の樹脂と、ポリアルキレンエステル、ポリオレフィンアミド、アルケンアミン、ポリエチレンポリアミン、ポリアルキレンイミン、又はこれらの組み合わせを含む有効量のポリオレフィンと、を含む。
【0033】
防汚組成物は、有効量の、ポリアルキレンイミド、アミン置換ポリアルキレンイミド、又はこれらの組み合わせを更に含むことができる。
【0034】
更に、本明細書に記載される防汚組成物は、N,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミンを含む、有効量のキレート化合物を更に含むことができる。
【0035】
防汚組成物は、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を含むアルキルフェノール-アルデヒド樹脂を有する。
【0036】
更に、アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、C~C20アルキルフェノール-アルデヒド樹脂、好ましくは、C~C16アルキルフェノール-アルデヒド樹脂、より好ましくは、C~C12アルキルフェノール-アルデヒド樹脂、更により好ましくは、C~C12アルキルフェノール-アルデヒド樹脂、更により好ましくは、C~C12アルキルフェノール-アルデヒド樹脂を含む。
【0037】
好ましいノニルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、重質芳香族溶媒中における、ノニル-及びジノニルフェノールの混合物(約10:1のモル割合で)と、ホルムアルデヒドとの重縮合によって、調製された。好ましいノニルフェノールホルムアルデヒド樹脂は、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定された約3200ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0038】
アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、式1
【化1】
(式中、Rは、C~C20アルキルであり、Rは、水素、C~Cアルキル、又はアルカリルであり、nは、4~75の整数である)の構造を有することができる。
【0039】
好ましくは、式1の樹脂について、Rは、C~C16アルキル、C~C12アルキル、C~C12アルキル、C~C12アルキル、最も好ましくは、ノニルである。
【0040】
更に、式1の樹脂は、好ましくは、水素のRを有する。
【0041】
また、式1の樹脂は、好ましくは、10~20の整数としてnを有する。
【0042】
更に、防汚組成物は、ポリアルキレンコハク酸エステル、ポリアルキレンコハク酸無水物、ポリアルキレンコハク酸、又はこれらの組み合わせ、好ましくは、ポリエチレンコハク酸エステル、ポリエチレンコハク酸無水物、ポリエチレンコハク酸、ポリプロピレンコハク酸エステル、ポリプロピレンコハク酸無水物、ポリプロピレンコハク酸、ポリイソブチレンコハク酸エステル、ポリイソブチレンコハク酸無水物、ポリイソブチレンコハク酸、又はこれらの組み合わせ、のポリアルキレンエステルを含み、より好ましくは、ポリアルキレンエステルは、ポリイソブチレンコハク酸エステルを含む。
【0043】
防汚組成物では、ポリイソブチレンコハク酸エステルは、ポリイソブチレンコハク酸無水物とポリオールとの反応から誘導される。ポリオールは、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、グリセロール、グルコース、スクロース、アラビトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、リビトール、ソルビトール、キシリトール、トレイトール、ガラクチトール、イソマルト、イジトール、ラクチトール、又はこれらの組み合わせを含み得る。好ましくは、ポリオールは、ペンタエリスリトールを含む。
【0044】
500~4200の数平均分子量を有するポリイソブテニレン(polyisobutenylene、PIB)を、触媒の存在下、約160~約230℃でペンタエリスリトールと反応させる。PIB部分は、特定の原油特性に必要な性能に基づいて改質される。
【0045】
好ましいポリイソブテニレンペンタエリスリトールエステルは、以下の構造
【化2】
(式中、n及びmは、2~16の整数である)を有することができる。
【0046】
防汚組成物は、ポリアルキレンイミド又はアミン置換ポリアルキレンイミドを含むことができ、ポリアルキレンイミドは、ポリアルキレンスクシンイミドであり、アミン置換ポリアルキレンイミドは、アミン置換ポリアルキレンスクシンイミドであり、好ましくは、ポリアルキレンスクシンイミドは、ポリエチレンスクシンイミド、ポリイソプロピレンスクシンイミド、ポリイソブチレンスクシンイミド、又はこれらの組み合わせであり、アミン置換ポリアルキレンスクシンイミドは、アミン置換ポリエチレンスクシンイミド、アミン置換ポリイソプロピレンスクシンイミド、アミン置換ポリイソブチレンスクシンイミド、又はこれらの組み合わせである。
【0047】
防汚組成物はまた、N,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミンを含むキレート化合物も含むことができる。
【0048】
樹脂及びポリオレフィンを有する防汚組成物は、好ましくは、樹脂とポリオレフィンとの総重量に基づいて、約1~約99重量%、約1~約90重量%、約1~約80重量%、約1~約70重量%、約1~約65重量%、約1~約60重量%、約1~約55重量%、約1~約50重量%、約1~約45重量%、約10~約99重量%、約10~約90重量%、約10~約80重量%、約10~約70重量%、約10~約65重量%、約10~約60重量%、約10~約55重量%、約10~約50重量%、約10~約45重量%、約20~約99重量%、約20~約90重量%、約20~約80重量%、約20~約70重量%、約20~約65重量%、約20~約60重量%、約20~約55重量%、約20~約50重量%、約20~約45重量%、約25~約99重量%、約25~約90重量%、約25~約80重量%、約25~約70重量%、約25~約65重量%、約25~約60重量%、約25~約55重量%、約25~約50重量%、約25~約45重量%、約30~約99重量%、約30~約90重量%、約30~約80重量、約30~約70重量%、約30~約65重量%、約30~約60重量%、約30~約55重量%、約30~約50重量%、約30~約45重量%、約35~約99重量%、約35~約90重量%、約35~約80重量%、約35~約70重量%、約35~約65重量%、約35~約60重量%、約35~約55重量%、約35~約50重量%、約35~約45重量%、約40~約99重量%、約40~約90重量%、約40~約80重量%、約40~約70重量%、約40~約65重量%、約40~約60重量%、約40~約55重量%、約40~約50重量%、又は約40~約45重量%の濃度で存在する樹脂を有する。
【0049】
樹脂及びポリオレフィンを有する防汚組成物は、樹脂とポリオレフィンとの総重量に基づいて、約1~約99重量%、約1~約90重量%、約1~約80重量%、約1~約70重量%、約1~約65重量%、約1~約60重量%、約1~約55重量%、約1~約50重量%、約1~約45重量%、約10~約99重量%、約10~約90重量%、約10~約80重量%、約10~約70重量%、約10~約65重量%、約10~約60重量%、約10~約55重量%、約10~約50重量%、約10~約45重量%、約20~約99重量%、約20~約90重量%、約20~約80重量%、約20~約70重量%、約20~約65重量%、約20~約60重量%、約20~約55重量%、約20~約50重量%、約20~約45重量%、約25~約99重量%、約25~約90重量%、約25~約80重量%、約25~約70重量%、約25~約65重量%、約25~約60重量%、約25~約55重量%、約25~約50重量%、約25~約45重量%、約30~約99重量%、約30~約90重量%、約30~約80重量%、約30~約70重量%、約30~約65重量%、約30~約60重量%、約30~約55重量%、約30~約50重量%、約30~約45重量%、約35~約99重量%、約35~約90重量%、約35~約80重量%、約35~約70重量%、約35~約65重量%、約35~約60重量%、約35~約55重量%、約35~約50重量%、約35~約45重量%、約40~約99重量%、約40~約90重量%、約40~約80重量%、約40~約70重量%、約40~約65重量%、約40~約60重量%、約40~約55重量%、約40~約50重量%、又は約40~約45重量%の濃度で存在するポリオレフィンを有する。
【0050】
更に、樹脂、ポリオレフィン、及びキレート剤を有する防汚組成物は、樹脂、ポリオレフィン、及びキレート剤の総重量に基づいて、約10~約80重量%、約10~約70重量%、約10~約65重量%、約10~約60重量%、約10~約55重量%、約10~約50重量%、約10~約45重量%、約20~約80重量%、約20~約70重量%、約20~約65重量%、約20~約60重量%、約20~約55重量%、約20~約50重量%、約20~約45重量%、約25~約80重量%、約25~約70重量%、約25~約65重量%、約25~約60重量%、約25~約55重量%、約25~約50重量%、約25~約45重量%、約30~約80重量%、約30~約70重量%、約30~約65重量%、約30~約60重量%、約30~約55重量%、約30~約50重量%、約30~約45重量%、約35~約80重量%、約35~約70重量%、約35~約65重量%、約35~約60重量%、約35~約55重量%、約35~約50重量%、約35~約45重量%、約40~約80重量%、約40~約70重量%、約40~約65重量%、約40~約60重量%、約40~約55重量%、約40~約50重量%、又は約40~約45重量%の濃度で存在する樹脂を有する。
【0051】
樹脂、ポリオレフィン、及びキレート剤を有する防汚組成物は、樹脂、ポリオレフィン、及びキレート剤の総重量に基づいて、約10~約80重量%、約10~約70重量%、約10~約65重量%、約10~約60重量%、約10~約55重量%、約10~約50重量%、約10~約45重量%、約20~約80重量%、約20~約70重量%、約20~約65重量%、約20~約60重量%、約20~約55重量%、約20~約50重量%、約20~約45重量%、約25~約80重量%、約25~約70重量%、約25~約65重量%、約25~約60重量%、約25~約55重量%、約25~約50重量%、約25~約45重量%、約30~約80重量%、約30~約70重量%、約30~約65重量%、約30~約60重量%、約30~約55重量%、約30~約50重量%、約30~約45重量%、約35~約80重量%、約35~約70重量%、約35~約65重量%、約35~約60重量%、約35~約55重量%、約35~約50重量%、約35~約45重量%、約40~約80重量%、約40~約70重量%、約40~約65重量%、約40~約60重量%、約40~約55重量%、約40~約50重量%、又は約40~約45重量%の濃度で存在するポリオレフィンを有する。
【0052】
樹脂、ポリオレフィン、及びキレート剤を有する防汚組成物は、樹脂、ポリオレフィン、及びキレート剤の総重量に基づいて、約1~約25重量%、約1~約20重量%、約1~約15重量%、約5~約25重量%、約5~約20重量%、約5~約15重量%、約10~約25重量%、約10~約20重量%、又は約10~約15重量%の濃度で存在するキレート剤を有する。
【0053】
また、炭化水素流体にさらされる石油精製システム及び/又は生産システムにおける構造部分の汚染を低減又は防止するための方法も開示され、その方法は、構造部分を、本明細書に記載の有効量の防汚組成物と接触させることを含む。
【0054】
炭化水素流体にさらされる石油精製システム及び/又は生産システムにおける構造部分の汚染を低減又は防止するための方法もまた開示され、その方法は、構造部分を、本明細書に記載の防汚組成物と接触させることを含む。
【0055】
炭化水素流体にさらされる石油精製システム及び/又は生産システムにおける構造部分の汚染を低減又は防止するための方法では、その炭化水素流体は、石油化学流体であり得る。
【0056】
炭化水素流体にさらされる石油精製システム及び/又は生産システムにおける構造部分の汚染を低減又は防止するための方法において、石油化学流体は、アスファルテン、パラフィン、ワックス、スケール、ナフテネート、コークス、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0057】
本明細書で記載される方法は、防汚組成物を、汚染物質前駆体を分散させるのに有効な量で石油化学流体と接触させる。
【0058】
また、本明細書で記載される方法は、防汚組成物を、汚染物質の堆積を防止又は低減するのに有効な量で石油化学流体と接触させる。
【0059】
開示の方法では、防汚組成物は、アスファルテンを分散させるのに有効な量で石油化学流体と接触させることができる。
【0060】
開示の方法では、防汚組成物は、コークスの堆積を防止又は低減するのに有効な量で石油化学流体と接触させることができる。
【0061】
更に、開示の方法では、防汚組成物は、汚染物質の堆積を防止又は低減するのに有効な量で石油化学流体と接触させることができる。
【0062】
開示の方法では、石油精製システムにおける構造部分は、生産、貯蔵装置、熱交換器、パイプ、ポンプ、流量計、バルブ、脱塩装置、炉、コーカー、蒸留塔、分留塔、大気圧塔、パイプ蒸留器、デブタナイザー、反応器、流動接触分解装置、流動接触分解スラリー沈殿装置、水素化分解装置、水蒸気分解装置、熱分解装置、ビスブレーカー、還流装置、コンデンサー、スクラバー、又はこれらの組み合わせ、の部分を含み得る。好ましくは、構造部分は、流動接触分解装置、流動接触分解スラリー沈殿装置、水素化分解装置、水蒸気分解装置、熱分解装置、ビスブレーカー、又はこれらの組み合わせ、の部分を含み得る。より好ましくは、構造部分は、原油処理装置、ビスブレーカー、又はこれらの組み合わせ、の部分を含み得る。
【0063】
防汚組成物は、更に、本明細書に記載されるように、樹脂及びポリオレフィンから本質的になっていてもよい。これらの成分から実質的になる防汚組成物は、本明細書に記載されている方法で使用されるときに、炭化水素流体にさらされる石油精製システムの構造部分と接触する炭化水素流体中の汚染物質の堆積の許容可能な低減又は防止という新規な特性を有する。
【0064】
防汚組成物は、更に、本明細書に記載のように、樹脂、ポリオレフィン、及びキレート剤から本質的になっていてもよい。これらの成分から実質的になる防汚組成物は、本明細書に記載されている方法で使用されるときに、炭化水素流体にさらされる石油精製システムの構造部分と接触する炭化水素流体中の汚染物質の堆積の許容可能な低減又は防止という新規な特性を有する。
【0065】
原油の成分の堆積を低減又は防止するための方法において、防汚組成物の有効量は、炭化水素流体の総量に基づいて、約1ppm~約50,000ppm、約1ppm~約40,000ppm、約1ppm~約30,000ppm、約1ppm~約20,000ppm、約1ppm~約10,000ppm、約1ppm~約7,500ppm、約1ppm~約5,000ppm、約1ppm~約2,500ppm、約1ppm~約2,000ppm、約1ppm~約1,500ppm、約1ppm~約1,000ppm、約1ppm~約500ppm、約1ppm~約100ppm、約5ppm~約50,000ppm、約5ppm~約40,000ppm、約5ppm~約30,000ppm、約5ppm~約20,000ppm、約5ppm~約10,000ppm、約5ppm~約7,500ppm、約5ppm~約5,000ppm、約5ppm~約2,500ppm、約5ppm~約2,000ppm、約5ppm~約1,500ppm、約5ppm~約1,000ppm、約5ppm~約500ppm、又は約5ppm~約100ppmの防汚組成物である。
【0066】
定義
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、好ましくは1から32個の炭素原子(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、30、31、又は32個の炭素)を有する、直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカルを指す。アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、二級ブチル、及び三級ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、非置換であっても、又は上記で定めるような1つ又は複数の好適な置換基によって置換されていてもよい。
【0067】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、30、31、又は32個の炭素を有し、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカルを指す。アルケニル基としては、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソ-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、及び2-ブテニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニル基は、非置換であっても、又は上記で定めるような1つ又は複数の好適な置換基によって置換されていてもよい。
【0068】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、30、31、又は32個の炭素を有し、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカルを指す。アルキニル基としては、エチニル、プロピニル、及びブチニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキニル基は、非置換であっても、又は上記で定めるような1つ又は複数の好適な置換基によって置換されていてもよい。
【0069】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるようなアルキル基を指す。
【0070】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニルなどの単環式、二環式、又は三環式の芳香族ラジカルを意味し、上記で定めるような1つ又は複数の好適な置換基、好ましくは、1~5個の好適な置換基によって、任意選択的に置換される。
【0071】
本明細書で使用される「アリールアルキル」という用語は、アルキル基を介して親分子部分に結合したアリール基を指す。アリールアルキル基は、非置換であっても、又は上記で定めるような1つ又は複数の好適な置換基によって置換されていてもよい。
【0072】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、単環式、二環式又は三環式の炭素環式ラジカル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタニル及びビシクロ[5.2.0]ノナニルなど)を指し、任意選択的に、1つ又は2つの二重結合を含有している。シクロアルキル基は、非置換であっても、又は上記で定めるような1つ又は複数の好適な置換基、好ましくは、1~5個の好適な置換基によって置換されていてもよい。
【0073】
本明細書で使用される「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードラジカルを指す。
【0074】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、環内にO、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子(例えば、1~3個のヘテロ原子)を含有する単環式、二環式、又は三環式の芳香族複素環式基を指す。ヘテロアリール基として、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル、フリル、イミダゾリル、ピロリル、オキサゾリル(例えば、1,3-オキサゾリル、1,2-オキサゾリル)、チアゾリル(例えば、1,2-チアゾリル、1,3-チアゾリル)、ピラゾリル、テトラゾリル、トリアゾリル(例えば、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル)、オキサジアゾリル(例えば、1,2,3-オキサジアゾリル)、チアジアゾリル(例えば、1,3,4-チアジアゾリル)、キノリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、及びインドリルが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、非置換であっても、又は上記で定めるような1つ又は複数の好適な置換基、好ましくは、1~5個の好適な置換基によって置換されていてもよい。
【0075】
本明細書で使用される「複素環」又は「ヘテロシクリル」という用語は、N、O、S(O)n、P(O)n、PRz、NH又はNRz(式中、Rzは好適な置換基である)から選択される1~4個のヘテロ原子を含有する単環式、二環式、又は三環式基を指す。複素環式基には、任意で1つ又は2つの二重結合が含まれる。複素環式基としては、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピラゾリジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチアジニル、テトラヒドロ-チアジアジニル、モルホリニル、オキセタニル、テトラヒドロジアジニル、オキサジニル、オキサチアジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、クロマニル、イソクロマニル、及びベンゾオキサジニルが挙げられるが、これらに限定されない。単環式飽和又は部分飽和環系の例は、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、イミダゾリジン-1-イル、イミダゾリジン-2-イル、イミダゾリジン-4-イル、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、ピロリジン-3-イル、ピペリジン-1-イル、ピペリジン-2-イル、ピペリジン-3-イル、ピペラジン-1-イル、ピペラジン-2-イル、ピペラジン-3-イル、1,3-オキサゾリジン-3-イル、イソチアゾリジン、1,3-チアゾリジン-3-イル、1,2-ピラゾリジン-2-イル、1,3-ピラゾリジン-1-イル、チオモルホリン-イル、1,2-テトラヒドロチアジン-2-イル、1,3-テトラヒドロチアジン-3-イル、テトラヒドロチアジアジン-イル、モルホリン-イル、1,2-テトラヒドロジアジン-2-イル、1,3-テトラヒドロジアジン-1-イル、1,4-オキサジン-2-イル、及び1,2,5-オキサチアジン-4-イルである。複素環式基は、非置換であっても、又は上記で定めるような1つ又は複数の好適な置換基、好ましくは、1~3個の好適な置換基によって置換されていてもよい。
【0076】
本明細書で使用される「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0077】
本明細書で使用される「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「することができる(can)」、「含有する(contain)」という用語、及びこれらの変形は、追加の作用又は構造の可能性を排除しない制限のない移行句、用語、又は単語であることが意図される。単数形「a」、「and」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書に提示された実施形態又は要素を「含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」他の実施形態も企図する。
【0078】
本発明を詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲に定める本発明の範囲から逸脱することなく、改変及び変更が可能であることは明らかであろう。
【実施例
【0079】
以下の非限定的な実施例は、本発明を更に説明するために提供される。
【0080】
実施例1:高温液体プロセスシミュレータ(HLPS)
HLPSは、防汚剤化学性能を評価するための業界で受け入れられている試験方法である。この試験では、脱塩した原油を使用する。用いた試験条件は、次の通りである:(a)ロッド温度:400℃、流量:1mL/分、圧力:500psi、及び反応時間:80分。
【0081】
HLPS試験では、均質化された原油試料を、所与の流量で加熱ゾーンを通過させる。この試験中、入口、出口、及びロッドの温度を、測定し、記録する。汚染物質前駆体は、加熱ゾーンを通過する間に不安定化され、沈殿して加熱ロッドに付着する傾向があり、その結果、出口温度が低下する。防汚剤濃度3000ppmを有する防汚剤添加脱塩原油を用いて試験を繰り返す。次いで、これらの試験からの汚染曲線を、性能改善について比較する。生成物1(50重量%のポリイソブテニルコハク酸ペンタエリスリトールエステル(比較化学物質1))及び50重量%の4-ノニルフェノールホルムアルデヒド樹脂(比較化学物質2))を含有する防汚組成物についての結果、並びに、3000ppm用量のポリイソブテニルコハク酸ペンタエリスリトールエステル(比較化学物質1)及び4-ノニルフェノールホルムアルデヒド樹脂(比較化学物質2)についての結果を、図1に示す。生成物2(キシレン中、43.5重量%のポリイソブテニルコハク酸ペンタエリスリトールエステル(比較化学物質1)、43.5重量%の4-ノニルフェノールホルムアルデヒド樹脂(比較化学物質2)、及び13重量%のN,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミン)を含有する防汚組成物についての結果、並びに、3000ppmのポリイソブテニルコハク酸ペンタエリスリトールエステル(比較化学物質1)及び4-ノニルフェノールホルムアルデヒド樹脂(比較化学物質2)についての結果を、図2に示す。
【0082】
実施例2:アスファルテン分散性試験(ADT)
500μLの原油を試験管に取る。第1の管は「ブランク」のままであるが、他の管には50ppmの防汚剤化学物質を添加した。各試験管中の沈殿量を記録し、ブランクと比較する。生成物1(50重量%のポリイソブテニルコハク酸ペンタエリスリトールエステル(比較化学物質1)及び50重量%の4-ノニルフェノールホルムアルデヒド樹脂(比較化学物質2))を含有する防汚組成物、並びに50ppm用量でのポリイソブテニルコハク酸ペンタエリスリトールエステル(比較化学物質1)、比較化学物質3、及び比較化学物質4についての結果を、図3に示す。生成物1の防汚組成物は、最も少ない沈殿物及び最も透明な溶液によって証明されるように、試験されたこれらの薬剤の中で最良のアスファルテン分散性を示した。
【0083】
生成物2(43.5重量%のポリイソブテニルコハク酸ペンタエリスリトールエステル(比較化学物質1)、43.5重量%の4-ノニルフェノールホルムアルデヒド樹脂(比較化学物質2)、及び13重量%のN,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミン)を含有する防汚組成物についての結果、並びに、50ppmの用量での比較化学物質1及び比較化学物質2の各々単独を含有する防汚組成物についての結果を図4に示す。生成物2の防汚組成物は、沈殿物の量及び溶液の透明度によって証明されるように、有利なアスファルテン分散性を示した。
【0084】
本発明又はその好適な実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、要素のうちの1つ又は複数が存在することを意味することが意図される。用語「~を含む/備える(comprising)」、「~を含む(including)」、及び「~を有する(having)」は、包括的であることが意図され、そこに列挙されている要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0085】
上記した事項に鑑みれば、本発明のいくつかの目的が達成され、かつ他の有益な結果が獲得されることが分かるであろう。
【0086】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の組成物及び方法に様々な変更が加えられ得ることから、上記の記述に含まれ、添付の図面に図示されるすべての事項は、例示的なものであって、限定的な意味ではないと解釈されるものとすることが意図される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】