(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】HBVを標的とする転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20231227BHJP
C12N 15/51 20060101ALI20231227BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20231227BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20231227BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20231227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231227BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231227BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/51 ZNA
C12N15/88 Z
C12N15/54
C12N5/10
A61P31/20
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P1/16
A61P31/14
A61K31/7105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539281
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 US2021062749
(87)【国際公開番号】W WO2022146654
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144072
【氏名又は名称】アークトゥルス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トレジェス, ラモン ディアス
(72)【発明者】
【氏名】ラム, マン ルー
(72)【発明者】
【氏名】タチカワ, キヨシ
(72)【発明者】
【氏名】カルマリ, プリヤ プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】チブクラ, パッドマナブ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA96Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
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4B065CA31
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4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
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4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムを標的化するための転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)をコードする核酸分子が記載される。また、TALENを含有する組成物、宿主細胞、脂質、及び薬学的組成物も記載される。本発明の薬学的組成物を使用して、特に慢性HBV感染を有する個体において肝炎感染を治療するための方法も記載される。特定の実施形態において、第1及び第2のmRNA分子は各々、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールのうちの1つ以上、好ましくは全てを更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝炎感染の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、
(1)第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のmRNA分子であって、前記第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができる、第1のmRNA分子と、
(2)第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2のTALEN単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のmRNA分子であって、前記第2のTALE DNA結合ドメインが、前記標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができる、第2のmRNA分子と、を含むmRNA分子の組み合わせを前記対象に投与することを含み、
前記第1のTALEN単量体及び前記第2のTALEN単量体は、前記第1のTALE DNA結合ドメインが前記第1の半部位配列に結合し、前記第2のTALE DNA結合ドメインが前記第2の半部位配列に結合する場合に、前記標的核酸配列を切断する二量体を形成することができ、
好ましくは、前記第1のヌクレアーゼ触媒ドメインが第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインであり、前記第2のヌクレアーゼ触媒ドメインが第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインである、方法。
【請求項2】
前記標的核酸配列が、HBsAg及びHBVポリメラーゼ(pol)をコードする配列内にあり、好ましくは、
(a)前記標的核酸配列の前記第1の半部位配列が、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、前記標的核酸配列の前記第2の半部位配列が、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は
(b)前記標的核酸配列の前記第1の半部位配列が、配列番号3の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、前記標的核酸配列の前記第2の半部位配列が、配列番号4の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は
(c)前記標的核酸配列が、配列番号5若しくは配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2のmRNA分子が各々、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールのうちの1つ以上、好ましくは全てを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
それぞれ、前記第1のTALE DNA結合ドメインが、配列番号7又は配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記第2のTALE DNA結合ドメインが、配列番号8又は配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインが各々、配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記HBVゲノムが、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象に、好ましくは抗HBV剤を含む第2の治療用組成物を投与することを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、HBV感染、好ましくは慢性HBV感染を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、HBV及びHDVに同時感染している、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
脂質ナノ粒子中に封入されたmRNA分子の組み合わせを含む組成物であって、前記mRNA分子の組み合わせが、
(1)第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のmRNA分子であって、前記第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができる、第1のmRNA分子と、
(2)第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2のTALEN単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のmRNA分子であって、前記第2のTALE DNA結合ドメインが、前記標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができる、第2のmRNA分子と、を含み、
前記第1のTALEN単量体及び前記第2のTALEN単量体は、前記第1のTALE DNA結合ドメインが前記第1の半部位配列に結合し、前記第2のTALE DNA結合ドメインが前記第2の半部位配列に結合する場合に、前記標的核酸配列を切断する二量体を形成することができ、
好ましくは、前記第1のヌクレアーゼ触媒ドメインが第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインであり、前記第2のヌクレアーゼ触媒ドメインが第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインである、組成物。
【請求項10】
前記標的核酸配列が、HBsAg及びHBVポリメラーゼ(pol)をコードする配列内にあり、好ましくは、
(a)前記標的核酸配列の前記第1の半部位配列が、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、前記標的核酸配列の前記第2の半部位配列が、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は
(b)前記標的核酸配列の前記第1の半部位配列が、配列番号3の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、前記標的核酸配列の前記第2の半部位配列が、配列番号4の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は
(c)前記標的核酸配列が、配列番号5若しくは配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1及び第2のmRNA分子が各々、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールのうちの1つ以上、好ましくは全てを更に含む、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
それぞれ、前記第1のTALE DNA結合ドメインが、配列番号7又は配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記第2のTALE DNA結合ドメインが、配列番号8又は配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインが各々、配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記HBVゲノムが、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである、請求項9~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記mRNA分子の組み合わせを封入する前記脂質ナノ粒子が、カチオン性脂質と、アニオン性脂質、双性イオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質、リン脂質、糖脂質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの他の脂質と、を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
(1)第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸、好ましくは第1のmRNA分子であって、前記第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができ、前記第1の半部位配列が、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、第1の核酸、好ましくは第1のmRNA分子と、
(2)第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸、好ましくは第2のmRNA分子であって、前記第2のTALE DNA結合ドメインが、前記標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができ、前記第2の半部位配列が、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、第2の核酸、好ましくは第2のmRNA分子と、の組み合わせであって、
前記第1のTALEN単量体及び前記第2のTALEN単量体は、前記第1のTALE DNA結合ドメインが前記第1の半部位配列に結合し、前記第2のTALE DNA結合ドメインが前記第2の半部位配列に結合する場合に、前記標的核酸配列を切断する二量体を形成することができる、組み合わせ。
【請求項16】
前記HBVゲノムが、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである、請求項15に記載の組み合わせ。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の組み合わせを含む組成物であって、前記第1及び第2の核酸が、脂質ナノ粒子中に別々に又は一緒に封入されている、組成物。
【請求項18】
請求項15に記載の第1のmRNA分子及び第2のmRNA分子のうちの少なくとも1つをコードする、核酸分子。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸分子を含む、単離された宿主細胞。
【請求項20】
前記宿主細胞が肝細胞である、請求項19に記載の単離された宿主細胞。
【請求項21】
請求項9~14若しくは17のいずれか一項に記載の組成物、請求項15若しくは16に記載の組み合わせ、請求項18に記載の核酸分子、又は請求項19若しくは20に記載の単離された宿主細胞と、薬学的に受容可能な担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
HBVゲノム中の標的核酸配列を切断する方法であって、前記HBVゲノムを、請求項9~14若しくは17のいずれか一項に記載の組成物、請求項15若しくは16に記載の組み合わせ、請求項18に記載の核酸分子、請求項19若しくは20に記載の単離された宿主細胞、又は請求項21に記載の薬学的組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項23】
HBVゲノム中の標的核酸配列の遺伝子編集を誘導するための方法であって、前記HBVゲノムを、請求項9~14若しくは17のいずれか一項に記載の組成物、請求項15若しくは16に記載の組み合わせ、請求項18に記載の核酸分子、請求項19若しくは20に記載の単離された宿主細胞、又は請求項21に記載の薬学的組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項24】
前記HBVゲノムが、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
肝炎感染の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、請求項21に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項26】
対象におけるHBVの感染及び/又は複製を低減するための方法であって、請求項21に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項27】
前記対象に、好ましくは抗HBV剤を含む第2の治療用組成物を投与することを更に含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、HBV感染、好ましくは慢性HBV感染を有する、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、HBV及びHDVに同時感染している、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
HBsAg、HBeAg、HBV DNA、HBV cccDNA、又は組み込まれたHBV DNAのうちの1つ以上の発現レベルが、前記対象において低減される、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記発現レベルが、肝細胞レベル、核若しくは細胞レベル、肝臓レベル、血清レベル、又は血漿レベルである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項18に記載の核酸分子をインビトロ又はインビボで転写することを含む、TALENを産生する方法。
【請求項33】
B型肝炎ウイルス(HBV)誘導性疾患の治療を必要とする対象であって、好ましくは慢性HBV感染を有する、対象においてその治療に使用するための、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記HBV誘導性疾患が、進行性線維症、肝硬変及び肝細胞がん(HCC)からなる群から選択される、任意選択的に別の治療剤、好ましくは別の抗HBV剤と組み合わされた、請求項33に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月28日に出願された米国仮特許出願第63/131,145号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、遺伝子標的化及び遺伝子発現調節のための転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(transcription activator-like effector nuclease、TALEN)配列の使用を含む、分子生物学及び遺伝子工学の分野に関する。
【0003】
電子的に提出された配列表への参照
本出願は、ファイル名「065814_11515_Sequence_Listing_ST25」及び2021年12月7日の作成日を有し、91kbのサイズを有するASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出された配列表を含む。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus、HBV)は、4つのオープンリーディングフレーム及び7つのタンパク質をコードする小さな3.2kbの肝指向性DNAウイルスである。約20億人がHBVに感染しており、約2億4000万人が慢性B型肝炎感染(慢性HBV)を有している。慢性B型肝炎感染は、血液中で6ヶ月超にわたって持続するウイルス及びサブウイルス粒子を特徴とする(Cohen et al.J.Viral Hepat.(2011)18(6),377-83)。持続的なHBV感染は、ウイルスペプチド及び循環抗原によるHBV特異的T細胞受容体の慢性的な刺激を介して、循環及び肝臓内HBV特異的CD4+及びCD8+T細胞におけるT細胞疲弊をもたらす。結果として、T細胞の多機能性が減少する(すなわち、IL-2、腫瘍壊死因子(TNF(tumor necrosis factor))-α、IFN-γのレベルの低下、及び増殖の欠如)。
【0005】
慢性HBV(Chronic HBV、CHB)は現在、IFN-α及びヌクレオシド又はヌクレオチド類似体で治療されているが、ウイルスRNA、したがって新しいビリオンの鋳型として基本的な役割を果たす共有結合閉環状DNA(covalently closed circular DNA、cccDNA)と呼ばれる細胞内ウイルス複製中間体が感染肝細胞内に残存するため、最終的には治癒しない。誘導されたウイルス特異的T細胞及びB細胞応答は、cccDNAを保有する肝細胞を効果的に排除し得ると考えられる。HBVポリメラーゼを標的とする現在の療法はウイルス血症を抑制するが、核内に存在するcccDNA及び循環抗原の関連産生に対して限られた効果しか与えない。治癒の最も厳密な形態は、生物からのHBV cccDNAの排除であり得、これは、自然の転帰としても、任意の治療的介入の結果としても観察されていない。しかしながら、HBV表面抗原(HBV surface antigen、HBsAg)の喪失は、臨床的に信頼できる治癒等価物である。その理由は、疾患の再発が重篤な免疫抑制の場合にしか起こり得ず、予防的処置によって予防できるからである。したがって、少なくとも臨床的観点から、HBsAgの喪失は、HBVに対する免疫再構成の最も厳格な形態に関連する。
【0006】
D型肝炎ウイルス(Hepatitis D virus、HDV)感染は、HDVが感染性ウイルス粒子を形成するためにHBsAgの存在を必要とするので、HBVとの同時感染の状況においてのみ生じる。同時感染は、肝硬変の早期発症、肝細胞がん(hepatocellular、HCC)の発症リスクの増加、並びに肝臓関連及び全体的な死亡率の増加に関連する。
したがって、高い効率及び低減された細胞傷害性で、慢性的に感染した患者におけるHBVゲノムの標的化切断を可能にする組成物及び方法を有することは有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cohen et al.J.Viral Hepat.(2011)18(6),377-83
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、肝炎、特にB型肝炎ウイルス(HBV)、より具体的には慢性HBVの治療において、HBV cccDNA、具体的にはHBsAgの標的遺伝子編集に対する医学的必要性は未だ満たされていない。本発明は、特定のDNA配列の指向性切断を誘導するための組成物及び方法を提供することによって、この必要性を満たす。
【0009】
一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、肝炎感染の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、
(1)第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のmRNA分子であって、第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができる、第1のmRNA分子と、
(2)第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2のTALEN単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のmRNA分子であって、第2のTALE DNA結合ドメインが、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができる、第2のmRNA分子と、を含む、mRNA分子の組み合わせを対象に投与することを含み、
第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができ、
好ましくは、第1のヌクレアーゼ触媒ドメインが第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインであり、第2のヌクレアーゼ触媒ドメインが第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインである、方法である。
【0010】
特定の実施形態において、標的核酸配列は、HBsAg及びHBVポリメラーゼ(polymerase、pol)をコードする配列内にあり、好ましくは
(a)標的核酸配列の第1の半部位配列は、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列は、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は
(b)標的核酸配列の第1の半部位配列は、配列番号3の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列は、配列番号4の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は
(c)標的核酸配列は、配列番号5若しくは配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0011】
特定の実施形態において、第1及び第2のmRNA分子は各々、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールのうちの1つ以上、好ましくは全てを更に含む。
【0012】
特定の実施形態において、それぞれ、第1のTALE DNA結合ドメインは、配列番号7又は配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインは、配列番号8又は配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインは各々、配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0013】
特定の実施形態において、HBVゲノムは、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである。
【0014】
特定の実施形態において、本方法は、好ましくは抗HBV剤を含む第2の治療用組成物を対象に投与することを更に含む。
【0015】
特定の実施形態において、対象は、HBV感染、好ましくは慢性HBV感染を有する。
【0016】
特定の実施形態において、対象は、HBV及びHDVに同時感染している。
【0017】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、脂質ナノ粒子中に封入されたmRNA分子の組み合わせを含む組成物であって、mRNA分子の組み合わせが、
(1)第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のmRNA分子であって、第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができる、第1のmRNA分子と、
(2)第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2のTALEN単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のmRNA分子であって、第2のTALE DNA結合ドメインが、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができる、第2のmRNA分子と、を含み、
第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができ、
好ましくは、第1のヌクレアーゼ触媒ドメインが第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインであり、第2のヌクレアーゼ触媒ドメインが第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインである、組成物である。
【0018】
特定の実施形態において、標的核酸配列は、HBsAg及びHBVポリメラーゼ(pol)をコードする配列内にあり、好ましくは
(a)標的核酸配列の第1の半部位配列は、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列は、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は
(b)標的核酸配列の第1の半部位配列は、配列番号3の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列は、配列番号4の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は
(c)標的核酸配列は、配列番号5若しくは配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0019】
特定の実施形態において、第1及び第2のmRNA分子は各々、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールのうちの1つ以上、好ましくは全てを更に含む。
【0020】
特定の実施形態において、それぞれ、第1のTALE DNA結合ドメインは、配列番号7又は配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインは、配列番号8又は配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインは各々、配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0021】
特定の実施形態において、HBVゲノムは、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである。
【0022】
特定の実施形態において、mRNA分子の組み合わせを封入する脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質と、アニオン性脂質、双性イオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質、リン脂質、糖脂質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの他の脂質と、を含む。
【0023】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、
(1)第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸、好ましくは第1のmRNA分子であって、第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができ、第1の半部位配列が、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、第1の核酸、好ましくは第1のmRNA分子と、
(2)第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸、好ましくは第2のmRNA分子であって、第2のTALE DNA結合ドメインが、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができ、第2の半部位配列が、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、第2の核酸、好ましくは第2のmRNA分子と、の組み合わせであって、
第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができる、組み合わせである。
【0024】
特定の実施形態において、HBVゲノムは、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである。
【0025】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される第1の核酸と第2の核酸との組み合わせを含む組成物であって、第1及び第2の核酸が、脂質ナノ粒子中に別々に又は一緒に封入されている、組成物である。
【0026】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の第1のmRNA分子及び第2のmRNA分子のうちの少なくとも1つをコードする、核酸分子である。
【0027】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の核酸分子を含む、単離された宿主細胞である。
【0028】
特定の実施形態において、宿主細胞は肝細胞である。
【0029】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の組成物、本明細書に記載の組み合わせ、本明細書に記載の核酸分子、又は本明細書に記載の単離された宿主細胞と、薬学的に受容可能な担体と、を含む、薬学的組成物である。
【0030】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、HBVゲノム中の標的核酸配列を切断する方法であって、HBVゲノムを、本明細書に記載の組成物、本明細書に記載の組み合わせ、本明細書に記載の核酸分子、本明細書に記載の単離された宿主細胞、又は本明細書に記載の薬学的組成物と接触させることを含む、方法である。
【0031】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、HBVゲノム中の標的核酸配列の遺伝子編集を誘導するための方法であって、HBVゲノムを、本明細書に記載の組成物、本明細書に記載の組み合わせ、本明細書に記載の核酸分子、本明細書に記載の単離された宿主細胞、又は本明細書に記載の薬学的組成物と接触させることを含む、方法である。
【0032】
特定の実施形態において、HBVゲノムは、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである。
【0033】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、肝炎感染の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、本明細書に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法である。
【0034】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、対象におけるHBVの感染及び/又は複製を低減するための方法であって、本明細書に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法である。
【0035】
特定の実施形態において、本方法は、好ましくは抗HBV剤を含む第2の治療用組成物を対象に投与することを更に含む。
【0036】
特定の実施形態において、対象は、HBV感染、好ましくは慢性HBV感染を有する。
【0037】
特定の実施形態において、対象は、HBV及びHDVに同時感染している。
【0038】
特定の実施形態において、HBsAg、HBeAg、HBV DNA、HBV cccDNA、又は組み込まれたHBV DNAのうちの1つ以上の発現レベルが、対象において低減される。特定の実施形態において、発現レベルは、肝細胞レベル、核若しくは細胞レベル、肝臓レベル、血清レベル、又は血漿レベルである。
【0039】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される核酸分子をインビトロ又はインビボで転写することを含む、TALENを産生する方法である。
【0040】
別の一般的な態様において、本明細書で提供されるのは、B型肝炎ウイルス(HBV)誘導性疾患の治療を必要とする対象であって、好ましくは慢性HBV感染を有する、対象においてその治療に使用するための、本明細書に記載の薬学的組成物である。
【0041】
特定の実施形態において、HBV誘導性疾患は、進行性線維症、肝硬変及び肝細胞がん(HCC)からなる群から選択され、任意選択的に別の治療剤、好ましくは別の抗HBV剤と組み合わされる。
【0042】
本発明の他の態様、特徴及び利点は、本発明の詳細な説明及びその好ましい実施形態並びに添付の特許請求の範囲を含む以下の開示から明らかになるであろう。
【0043】
本発明の前述の概要並びに以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。本発明は、図面に示される正確な実施形態に限定されないことを理解すべきである。
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許又は特許出願公開のコピーは、請求及び必要な手数料の支払いに応じて、特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1A】HBV DNAゲノム内のTALEN 28及び33の標的部位を示す。
図1A:HBVゲノム及びウイルスタンパク質(preC/Core、pol、preS1、preS2、HBsAg、及びHBx)の重複オープンリーディングフレームの概略図。TALEN 28及び33は、HBsAg/polをコードする遺伝子内の部位を標的とする。
図1B:TALEN28(上、配列番号5)及びTALEN33(下、配列番号6)の左及び右のTALENアームが標的とするHBV DNA配列。
図1C:TALEN mRNA構築物の概略図。HBV DNA結合ドメインは、15~19個のTALE反復のアレイ内に位置し、それらの各々は、HBV配列を標的とするように設計された反復可変二残基(Repeat Variable Diresidue、RVD)として知られる2つのアミノ酸を含有する。
【
図1B】HBV DNAゲノム内のTALEN 28及び33の標的部位を示す。
図1A:HBVゲノム及びウイルスタンパク質(preC/Core、pol、preS1、preS2、HBsAg、及びHBx)の重複オープンリーディングフレームの概略図。TALEN 28及び33は、HBsAg/polをコードする遺伝子内の部位を標的とする。
図1B:TALEN28(上、配列番号5)及びTALEN33(下、配列番号6)の左及び右のTALENアームが標的とするHBV DNA配列。
図1C:TALEN mRNA構築物の概略図。HBV DNA結合ドメインは、15~19個のTALE反復のアレイ内に位置し、それらの各々は、HBV配列を標的とするように設計された反復可変二残基(Repeat Variable Diresidue、RVD)として知られる2つのアミノ酸を含有する。
【
図1C】HBV DNAゲノム内のTALEN 28及び33の標的部位を示す。
図1A:HBVゲノム及びウイルスタンパク質(preC/Core、pol、preS1、preS2、HBsAg、及びHBx)の重複オープンリーディングフレームの概略図。TALEN 28及び33は、HBsAg/polをコードする遺伝子内の部位を標的とする。
図1B:TALEN28(上、配列番号5)及びTALEN33(下、配列番号6)の左及び右のTALENアームが標的とするHBV DNA配列。
図1C:TALEN mRNA構築物の概略図。HBV DNA結合ドメインは、15~19個のTALE反復のアレイ内に位置し、それらの各々は、HBV配列を標的とするように設計された反復可変二残基(Repeat Variable Diresidue、RVD)として知られる2つのアミノ酸を含有する。
【
図2A】HBV TALEN 28標的配列保存分析を示す。保存ロゴは、TALEN 28の左(
図2A)アーム及び右(
図2B)アームについての各標的ヌクレオチドの存在量に基づいて作成した。保存性が高いほど、豊富なヌクレオチドのサイズが大きくなる。
【
図2B】HBV TALEN 28標的配列保存分析を示す。保存ロゴは、TALEN 28の左(
図2A)アーム及び右(
図2B)アームについての各標的ヌクレオチドの存在量に基づいて作成した。保存性が高いほど、豊富なヌクレオチドのサイズが大きくなる。
【
図3A】HBV TALEN 33標的配列保存分析を示す。保存ロゴは、TALEN 33の左(
図3A)アーム及び右(
図3B)アームについての各標的ヌクレオチドの存在量に基づいて作成した。保存性が高いほど、豊富なヌクレオチドのサイズが大きくなる。
【
図3B】HBV TALEN 33標的配列保存分析を示す。保存ロゴは、TALEN 33の左(
図3A)アーム及び右(
図3B)アームについての各標的ヌクレオチドの存在量に基づいて作成した。保存性が高いほど、豊富なヌクレオチドのサイズが大きくなる。
【
図4A】TALEN 28及びTALEN 33が広範なHBV遺伝子型範囲を標的とすることを示す。TALEN 28(
図4A)及びTALEN 33(
図4B)のそれぞれの左TALENは、高度に保存された配列を標的とし、右TALENアーム内の遺伝子型(genotype、GT)A及びGT Cに単一のミスマッチが観察される。
図4Cは、GT A~HからのHBV DNA単離物に対するインビトロ翻訳TALENタンパク質のDNA切断結果を示す。
【
図4B】TALEN 28及びTALEN 33が広範なHBV遺伝子型範囲を標的とすることを示す。TALEN 28(
図4A)及びTALEN 33(
図4B)のそれぞれの左TALENは、高度に保存された配列を標的とし、右TALENアーム内の遺伝子型(genotype、GT)A及びGT Cに単一のミスマッチが観察される。
図4Cは、GT A~HからのHBV DNA単離物に対するインビトロ翻訳TALENタンパク質のDNA切断結果を示す。
【
図4C】TALEN 28及びTALEN 33が広範なHBV遺伝子型範囲を標的とすることを示す。TALEN 28(
図4A)及びTALEN 33(
図4B)のそれぞれの左TALENは、高度に保存された配列を標的とし、右TALENアーム内の遺伝子型(genotype、GT)A及びGT Cに単一のミスマッチが観察される。
図4Cは、GT A~HからのHBV DNA単離物に対するインビトロ翻訳TALENタンパク質のDNA切断結果を示す。
【
図5A】HepG2.2.15細胞におけるTALEN 28及びTALEN 33の効果を示す。
図5A:TALENプラスミドをインビトロで転写し、細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、核をDAPIで染色し、核内でのTALEN発現を免疫蛍光法によって確認した。6日後、細胞を、細胞培養培地中のHBsAg分泌タンパク質レベル(
図5B)、細胞生存率(
図5C)及びHBV DNA遺伝子編集(
図5D)に対するTALEN活性の効果について評価した。
【
図5B】HepG2.2.15細胞におけるTALEN 28及びTALEN 33の効果を示す。
図5A:TALENプラスミドをインビトロで転写し、細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、核をDAPIで染色し、核内でのTALEN発現を免疫蛍光法によって確認した。6日後、細胞を、細胞培養培地中のHBsAg分泌タンパク質レベル(
図5B)、細胞生存率(
図5C)及びHBV DNA遺伝子編集(
図5D)に対するTALEN活性の効果について評価した。
【
図5C】HepG2.2.15細胞におけるTALEN 28及びTALEN 33の効果を示す。
図5A:TALENプラスミドをインビトロで転写し、細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、核をDAPIで染色し、核内でのTALEN発現を免疫蛍光法によって確認した。6日後、細胞を、細胞培養培地中のHBsAg分泌タンパク質レベル(
図5B)、細胞生存率(
図5C)及びHBV DNA遺伝子編集(
図5D)に対するTALEN活性の効果について評価した。
【
図5D】HepG2.2.15細胞におけるTALEN 28及びTALEN 33の効果を示す。
図5A:TALENプラスミドをインビトロで転写し、細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、核をDAPIで染色し、核内でのTALEN発現を免疫蛍光法によって確認した。6日後、細胞を、細胞培養培地中のHBsAg分泌タンパク質レベル(
図5B)、細胞生存率(
図5C)及びHBV DNA遺伝子編集(
図5D)に対するTALEN活性の効果について評価した。
【
図6A】HBV感染初代ヒト肝細胞(primary human hepatocyte、PHH)におけるTALEN 28の効果を示す。
図6A:PHHを用いたHBV感染及びTALEN mRNAトランスフェクションの概略図。HBV感染後5日目に、TALEN 28 mRNA対を用いて又は用いずにPHHを処置した。
図6B:TALEN 28の発現を免疫蛍光法(赤色)によって検出し、トランスフェクションの6時間後にDAPI(青色)を用いて細胞核を染色した。
図6C:TALEN 28処置細胞からのHBsAg及びHBeAg産生に対する抗ウイルス効果。HBsAg及びHBeAgのレベルを感染後11日目に測定した。
図6D:TALEN誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、TALEN処置の6日後にT7E1消化アッセイによって調べた。星印は、破壊された配列を示す。
図6E:遺伝子編集されたcccDNAは、TALEN 28標的配列内にほとんどの欠失を示した。配列を次世代配列決定によって分析した。
【
図6B】HBV感染初代ヒト肝細胞(primary human hepatocyte、PHH)におけるTALEN 28の効果を示す。
図6A:PHHを用いたHBV感染及びTALEN mRNAトランスフェクションの概略図。HBV感染後5日目に、TALEN 28 mRNA対を用いて又は用いずにPHHを処置した。
図6B:TALEN 28の発現を免疫蛍光法(赤色)によって検出し、トランスフェクションの6時間後にDAPI(青色)を用いて細胞核を染色した。
図6C:TALEN 28処置細胞からのHBsAg及びHBeAg産生に対する抗ウイルス効果。HBsAg及びHBeAgのレベルを感染後11日目に測定した。
図6D:TALEN誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、TALEN処置の6日後にT7E1消化アッセイによって調べた。星印は、破壊された配列を示す。
図6E:遺伝子編集されたcccDNAは、TALEN 28標的配列内にほとんどの欠失を示した。配列を次世代配列決定によって分析した。
【
図6C】HBV感染初代ヒト肝細胞(primary human hepatocyte、PHH)におけるTALEN 28の効果を示す。
図6A:PHHを用いたHBV感染及びTALEN mRNAトランスフェクションの概略図。HBV感染後5日目に、TALEN 28 mRNA対を用いて又は用いずにPHHを処置した。
図6B:TALEN 28の発現を免疫蛍光法(赤色)によって検出し、トランスフェクションの6時間後にDAPI(青色)を用いて細胞核を染色した。
図6C:TALEN 28処置細胞からのHBsAg及びHBeAg産生に対する抗ウイルス効果。HBsAg及びHBeAgのレベルを感染後11日目に測定した。
図6D:TALEN誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、TALEN処置の6日後にT7E1消化アッセイによって調べた。星印は、破壊された配列を示す。
図6E:遺伝子編集されたcccDNAは、TALEN 28標的配列内にほとんどの欠失を示した。配列を次世代配列決定によって分析した。
【
図6D】HBV感染初代ヒト肝細胞(primary human hepatocyte、PHH)におけるTALEN 28の効果を示す。
図6A:PHHを用いたHBV感染及びTALEN mRNAトランスフェクションの概略図。HBV感染後5日目に、TALEN 28 mRNA対を用いて又は用いずにPHHを処置した。
図6B:TALEN 28の発現を免疫蛍光法(赤色)によって検出し、トランスフェクションの6時間後にDAPI(青色)を用いて細胞核を染色した。
図6C:TALEN 28処置細胞からのHBsAg及びHBeAg産生に対する抗ウイルス効果。HBsAg及びHBeAgのレベルを感染後11日目に測定した。
図6D:TALEN誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、TALEN処置の6日後にT7E1消化アッセイによって調べた。星印は、破壊された配列を示す。
図6E:遺伝子編集されたcccDNAは、TALEN 28標的配列内にほとんどの欠失を示した。配列を次世代配列決定によって分析した。
【
図6E】HBV感染初代ヒト肝細胞(primary human hepatocyte、PHH)におけるTALEN 28の効果を示す。
図6A:PHHを用いたHBV感染及びTALEN mRNAトランスフェクションの概略図。HBV感染後5日目に、TALEN 28 mRNA対を用いて又は用いずにPHHを処置した。
図6B:TALEN 28の発現を免疫蛍光法(赤色)によって検出し、トランスフェクションの6時間後にDAPI(青色)を用いて細胞核を染色した。
図6C:TALEN 28処置細胞からのHBsAg及びHBeAg産生に対する抗ウイルス効果。HBsAg及びHBeAgのレベルを感染後11日目に測定した。
図6D:TALEN誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、TALEN処置の6日後にT7E1消化アッセイによって調べた。星印は、破壊された配列を示す。
図6E:遺伝子編集されたcccDNAは、TALEN 28標的配列内にほとんどの欠失を示した。配列を次世代配列決定によって分析した。
【
図7A】HBV感染PHHにおけるTALEN 33の効果を示す。
図7A:PHHを用いたHBV感染及びTALEN mRNAトランスフェクションの概略図。HBV感染後5日目に、fTALEN 33 mRNA対を用いて又は用いずにPHHを処置した。
図7B:TALEN 33の発現を免疫蛍光法(緑色)によって検出し、トランスフェクションの6時間後にDAPI(青色)を用いて細胞核を染色した。
図7C:TALEN 33処置細胞からのHBsAg及びHBeAg産生に対する抗ウイルス効果。TALEN 33の存在下又は不在下でのHBsAg及びHBeAgのレベルを、感染後11日目に測定した。データは、少なくとも3つの独立した研究から計算し、エラーバーを有する平均値を表す。
図7D:TALEN誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、T7E1消化アッセイによって調べた。星印は、破壊された配列を示す。
【
図7B】HBV感染PHHにおけるTALEN 33の効果を示す。
図7A:PHHを用いたHBV感染及びTALEN mRNAトランスフェクションの概略図。HBV感染後5日目に、fTALEN 33 mRNA対を用いて又は用いずにPHHを処置した。
図7B:TALEN 33の発現を免疫蛍光法(緑色)によって検出し、トランスフェクションの6時間後にDAPI(青色)を用いて細胞核を染色した。
図7C:TALEN 33処置細胞からのHBsAg及びHBeAg産生に対する抗ウイルス効果。TALEN 33の存在下又は不在下でのHBsAg及びHBeAgのレベルを、感染後11日目に測定した。データは、少なくとも3つの独立した研究から計算し、エラーバーを有する平均値を表す。
図7D:TALEN誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、T7E1消化アッセイによって調べた。星印は、破壊された配列を示す。
【
図7C】HBV感染PHHにおけるTALEN 33の効果を示す。
図7A:PHHを用いたHBV感染及びTALEN mRNAトランスフェクションの概略図。HBV感染後5日目に、fTALEN 33 mRNA対を用いて又は用いずにPHHを処置した。
図7B:TALEN 33の発現を免疫蛍光法(緑色)によって検出し、トランスフェクションの6時間後にDAPI(青色)を用いて細胞核を染色した。
図7C:TALEN 33処置細胞からのHBsAg及びHBeAg産生に対する抗ウイルス効果。TALEN 33の存在下又は不在下でのHBsAg及びHBeAgのレベルを、感染後11日目に測定した。データは、少なくとも3つの独立した研究から計算し、エラーバーを有する平均値を表す。
図7D:TALEN誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、T7E1消化アッセイによって調べた。星印は、破壊された配列を示す。
【
図7D】HBV感染PHHにおけるTALEN 33の効果を示す。
図7A:PHHを用いたHBV感染及びTALEN mRNAトランスフェクションの概略図。HBV感染後5日目に、fTALEN 33 mRNA対を用いて又は用いずにPHHを処置した。
図7B:TALEN 33の発現を免疫蛍光法(緑色)によって検出し、トランスフェクションの6時間後にDAPI(青色)を用いて細胞核を染色した。
図7C:TALEN 33処置細胞からのHBsAg及びHBeAg産生に対する抗ウイルス効果。TALEN 33の存在下又は不在下でのHBsAg及びHBeAgのレベルを、感染後11日目に測定した。データは、少なくとも3つの独立した研究から計算し、エラーバーを有する平均値を表す。
図7D:TALEN誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、T7E1消化アッセイによって調べた。星印は、破壊された配列を示す。
【
図8】TALEN 33が、HBV GT A~Dに感染したPHH由来のcccDNAを編集したことを示す。T7E1アッセイを、TALEN 33をコードするmRNA対で処置した(+)又は処置していない(-)HBV感染PHHから抽出したcccDNAに対して実行した。星印は、破壊された配列を示す。
【
図9A】脂質ナノ粒子(LNP-HBV TALEN)に封入されたTALEN 33 mRNA対が、血清HBsAg(
図9A)及び血清HBV DNA(
図9B)を低減し、AAV-HBV感染マウスにおいて用量依存的遺伝子編集活性(
図9C)を示したことを示す。
【
図9B】脂質ナノ粒子(LNP-HBV TALEN)に封入されたTALEN 33 mRNA対が、血清HBsAg(
図9A)及び血清HBV DNA(
図9B)を低減し、AAV-HBV感染マウスにおいて用量依存的遺伝子編集活性(
図9C)を示したことを示す。
【
図9C】脂質ナノ粒子(LNP-HBV TALEN)に封入されたTALEN 33 mRNA対が、血清HBsAg(
図9A)及び血清HBV DNA(
図9B)を低減し、AAV-HBV感染マウスにおいて用量依存的遺伝子編集活性(
図9C)を示したことを示す。
【
図10A】AAV-HBV感染マウスにおけるLNP-HBV TALENとHBV処置エンテカビル(entecavir、ETV)との比較を示す。91日間にわたる血漿HBsAg(
図10A)及びHBV DNA(
図10B)の持続的減少が、LNP-HBV TALENの単回投与では観察されたが、非HBV標的化TTR TALENでは観察されなかった。ETVを7日間QD投与すると、血漿HBV DNAが低減したが、処置中止後にウイルスのリバウンドが観察された。
【
図10B】AAV-HBV感染マウスにおけるLNP-HBV TALENとHBV処置エンテカビル(entecavir、ETV)との比較を示す。91日間にわたる血漿HBsAg(
図10A)及びHBV DNA(
図10B)の持続的減少が、LNP-HBV TALENの単回投与では観察されたが、非HBV標的化TTR TALENでは観察されなかった。ETVを7日間QD投与すると、血漿HBV DNAが低減したが、処置中止後にウイルスのリバウンドが観察された。
【発明を実施するための形態】
【0045】
様々な刊行物、論文及び特許が、背景技術及び本明細書全体において引用又は記載されている。これらの参考文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品などに関する考察は、本発明の内容を提供する目的のためである。そのような考察は、これらの事項のいずれか又は全てが、開示又は特許請求される任意の発明に関する先行技術の一部を形成することを認めるものではない。
【0046】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。そうでなければ、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有する。本明細書において引用した全ての特許、公開された特許出願、及び刊行物は、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数形を含むことに留意されたい。
【0048】
特に明記しない限り、本明細書に記載される配列同一性%又は配列同一性%範囲などの任意の数値は、全ての事例において「約(about)」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、数値は、典型的には、記載された値の±10%を含む。例えば、10mgの投与量は、9mg~11mgを含む。本明細書で使用される場合、数値範囲の使用は、文脈が明らかに他を示さない限り、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値(そのような範囲内の整数及び値の分数を含む)を明示的に含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、複数の記載された要素間の接続詞「及び/又は」は、個々の選択肢及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結合される場合、第1の選択肢は、第2の要素を伴わずに第1の要素を適用できることを指す。第2の選択肢は、第1の要素を伴わずに第2の要素を適用できることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素を一緒に適用できることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、その意味の範囲内に入ると理解され、したがって、本明細書で使用される用語「及び/又は」の要件を満たす。選択肢のうちの2つ以上の同時適用可能性もまた、その意味の範囲内にあると理解され、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たす。
【0050】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、その一連の要素内の全ての要素を指すものと理解されたい。当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。このような等価物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0051】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を排除することを意味しないことが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」若しくは「含む(including)」という用語で置き換えることができ、又は本明細書で使用される場合、「有する(having)」という用語で置き換えることもできる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「からなる」は、特許請求の範囲の要素に明記されていない任意の要素、ステップ、又は構成要素を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを除外しない。「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」及び「有する(having)」という前述の用語はいずれも、本発明の態様又は実施形態の文脈において本明細書で使用されるときはいつでも、「からなる(consisting of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で置き換えて、本開示の範囲を変えることができる。
【0053】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において互換的に使用され、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、及び核酸類似体を含有するDNA又はRNA分子を含む核酸分子を含む、RNA及びDNA分子の両方を指す。「相補的ヌクレオチド塩基」という用語は、互いに水素結合を形成する一対のヌクレオチド塩基を意味する。アデニン(Adenine、A)は、RNA中のチミン(thymine、T)又はウラシル(uracil、U)と対合し、グアニン(guanine、G)はシトシン(cytosine、C)と対合する。互いにハイブリダイズする(すなわち、水素結合によって接合する)核酸の相補的セグメント又は鎖。「相補的」とは、核酸が、伝統的なワトソン-クリック又は他の非伝統的な結合様式のいずれかによって、別の核酸配列と水素結合を形成し得ることを意味する。核酸分子は、任意の三次元構造を有し得る。核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖)であり得る。核酸分子の非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(messenger RNA、mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、siRNA、マイクロRNA、tracrRNA、crRNA、ガイドRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、核酸プローブ及び核酸プライマーが挙げられる。核酸分子は、非従来型又は修飾ヌクレオチドを含有し得る。「ポリヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は、本明細書で互換的に使用される場合、ポリヌクレオチド分子の配列を指す。
【0054】
「パーセント(%)配列同一性」又は「%同一性」又は「~と%同一」という語句は、アミノ酸配列に関して使用される場合、アミノ酸配列の全長を構成するアミノ酸残基の数と比較した、2つ以上のアラインメントされたアミノ酸配列の同一アミノ酸のマッチ(「ヒット」)の数を記載する。言い換えれば、アラインメントを使用して、2つ以上の配列について、同じであるアミノ酸残基のパーセンテージ(例えば、アミノ酸配列の全長にわたって90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性)は、配列を比較し、当技術分野で既知の配列比較アルゴリズムを使用して測定される最大一致についてアラインメントさせる場合、又は手動でアラインメントさせ、視覚的に検査する場合に決定することができる。同じ決定をヌクレオチド配列について行うことができる。したがって、配列同一性を決定するために比較される配列は、アミノ酸の置換、付加又は欠失によって異なる場合がある。タンパク質配列をアラインメントさせるための好適なプログラムは、当業者に既知である。タンパク質配列の配列同一性パーセンテージは、例えば、CLUSTALW、Clustal Omega、FASTA又はBLASTなどのプログラムを用いて、例えば、NCBI BLASTアルゴリズムを使用して決定することができる(Altschul SF,et al(1997),Nucleic Acids Res.25:3389-3402)。
【0055】
本明細書で使用される場合、「結合」又は「特異的結合」という用語は、巨大分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的な非共有結合性相互作用を指す。相互作用が全体として配列特異的である限り、結合相互作用の全ての成分が配列特異的である必要はない(例えば、DNA骨格中のリン酸残基との接触)。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「組み合わせ」、「組み合わせて」、「と組み合わせて」、「共送達」、及び「と一緒に投与される」という用語及び語句は、2つ以上の療法又は成分(例えば、2つの核酸分子(mRNA分子など)又は治療用組成物と脂質)の対象への投与の文脈では、2つ以上の療法又は成分の同時投与を指す。「同時投与」は、少なくとも同日内に2つの成分を投与することであり得る。2つの成分が「~と一緒に投与される」又は「~と組み合わせて投与される」場合、それらは、24時間、20時間、16時間、12時間、8時間若しくは4時間、又は1時間以内などの短い期間内に連続して別々の組成物で投与され得るか、又はそれらは、同時に単一の組成物で投与され得る。「~と組み合わせて」という用語の使用は、療法又は成分が対象に投与される順序を制限しない。例えば、第1の療法又は成分(例えば、第1の核酸分子)は、第2の療法又は成分(例えば、第2の核酸分子)の投与の前(例えば、5分~1時間前)、それと同時若しくは同時に、又はその後(例えば、5分~1時間後)に投与することができる。いくつかの実施形態において、第1の療法又は成分(例えば、第1の核酸分子)及び第2の療法又は成分(例えば、例えば、第2の核酸分子)は、同じ組成物中で投与される。他の実施形態において、第1の治療又は成分(例えば、第1の核酸分子)及び第2の治療又は成分(例えば、例えば、第2の核酸分子)は、別々の組成物で投与される。
【0057】
「細胞傷害性」という用語は、細胞(例えば、哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、寄生生物、プリオン、又はそれらの組み合わせを死滅させること、又はそれらに対して有害な、毒性の、若しくは致死的な効果を引き起こすことを指す。
【0058】
「送達」という用語は、化合物、物質、実体、部分、カーゴ又はペイロードを送達する行為又は様式を指す。
【0059】
「送達剤」という用語は、標的細胞へのポリヌクレオチドのインビボ送達を少なくとも部分的に促進する任意の物質を指す。
【0060】
「操作された」という用語は、構造的又は化学的にかかわらず、出発点、野生型又は天然分子から変化する特徴又は特性を有するように設計された分子を指す。
【0061】
核酸配列の「発現」という用語は、以下の事象のうちの1つ以上を指す:(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(例えば、転写による)、(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/又は3’末端プロセシングによる)、(3)RNAのポリペプチド又はタンパク質への翻訳、及び(4)ポリペプチド又はタンパク質の翻訳後修飾。
【0062】
「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルを含み、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とする有機化合物を意味する。脂質は、通常、少なくとも3つのクラスに分類される:(1)脂肪及び油及びワックスを含む「単純脂質」、(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」、並びに(3)ステロイドなどの「誘導脂質」。
【0063】
「脂質送達ビヒクル」という用語は、治療用核酸(例えば、mRNA)を目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官など)に送達するために使用することができる脂質製剤を意味する。脂質送達ビヒクルは、カチオン性脂質、非カチオン性脂質(例えば、リン脂質)、粒子の凝集を防止するコンジュゲート脂質(例えば、PEG-脂質)、及び任意選択的にコレステロールから形成され得る核酸-脂質粒子であり得る。典型的には、治療用核酸(例えば、mRNA)は、粒子の脂質部分に封入されてもよく、それによってそれを酵素分解から保護する。
【0064】
「脂質封入された」という用語は、完全な封入、部分的な封入、又はその両方を有するmRNAなどの治療用核酸を提供する脂質粒子を意味する。好ましい実施形態において、核酸(例えば、mRNA)は、脂質粒子中に完全に封入される。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「天然に存在しない」核酸又はポリペプチドは、天然に存在しない核酸又はポリペプチドを指す。「天然に存在しない」核酸又はポリペプチドは、実験室及び/又は製造環境において合成、処理、製作、及び/又は他の方法で操作することができる。場合によっては、天然に存在しない核酸又はポリペプチドは、処理前に天然に存在する核酸又はポリペプチドに存在しなかった特性を示すように処理、加工、又は操作された天然に存在する核酸又はポリペプチドを含むことができる。本明細書中で使用される場合、「天然に存在しない」核酸又はポリペプチドは、それが発見された天然の供給源から単離又は分離された核酸又はポリペプチドであり得、天然の供給源においてそれが会合していた配列に対する共有結合を欠く。「天然に存在しない」核酸又はポリペプチドは、組換えにより、又は化学合成などの他の方法を介して作製することができる。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に連結された」とは、そのように記載される成分が、それらの意図される様式でそれらが機能することを可能にする関係にある、連結又は並置を指す。例えば、目的の核酸配列に作動可能に連結された調節配列は、目的の核酸配列の転写を指向し得るか、又は目的のアミノ酸配列に作動可能に連結されたシグナル配列は、膜を越えて目的のアミノ酸配列を分泌又は転位し得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「対象」は、本出願の実施形態による方法によって治療されるか、又は治療された任意の動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書で使用される場合、「哺乳類」という用語は、任意の哺乳類を包含する。哺乳類の例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル又は類人猿などの非ヒト霊長類(non-human primate、NHP)、ヒトなどが挙げられるが、これらに限定されず、より好ましくはヒトである。ヒト対象は患者を含むことができる。本明細書に記載される化合物、組成物、及び方法は、HBVによって慢性的に感染され得る種に対するヒト治療及び獣医学的適用の両方において有用であり得る。いくつかの実施形態において、対象は、HBV感染、より具体的には慢性HBV(CHB)感染を有する。対象は、ウイルス共感染を伴う又は伴わないCHBを有し得る。本明細書で使用される場合、「ウイルス同時感染」は、少なくとも2つのタイプのウイルスによる感染を指す。「ウイルス同時感染」は、少なくとも2つのタイプのウイルスによる同時感染であり得る。「ウイルス同時感染」はまた、1つ以上の型のウイルスによる感染が、1つ以上の他の型のウイルスによる既存の感染に追加される、重複感染であり得る。いくつかの実施形態において、対象は、HBV-HDV同時感染を有する。好ましくは、対象は、CHB-HDV同時感染を有する。より好ましくは、対象は、CHB及び慢性HDVのウイルス同時感染を有する。
【0068】
「標的部位」又は「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在するという条件で、結合分子又はドメインが結合する核酸の一部を規定する核酸配列である。本明細書で使用される標的配列の「半部位配列」は、結合のための十分な条件が存在する場合に、結合分子又はドメインが結合する標的配列の部分を指す。一般に、標的核酸配列内には2つの半部位配列が存在し、これらはスペーサー配列によって分離され得る。例えば、第1のTALE DNA結合ドメインは、標的核酸の第1の半部位配列に結合することができ、第2のTALE DNA結合ドメインは、同じ標的核酸の第2の半部位配列に結合することができる。好ましくは、第1の半部位配列及び第2の半部位配列は異なり、スペーサー配列によって分離される。
【0069】
本明細書の説明は、本出願の様々な実施形態を対象とする。任意の実施形態の議論は、例示的であることのみを意味し、特許請求の範囲を含む本開示の範囲がこれらの例に限定されることを示唆することを意図しない。例えば、本明細書に記載される出願の核酸配列の実施形態は、特定の順序で配置された特定のTALE DNA結合ドメイン、ヌクレアーゼ触媒ドメインなどを含むがこれらに限定されない特定の構成要素を含有し得るが、当業者は、本明細書に開示される概念が、出願の核酸配列において使用され得る他の順序で配置された他の構成要素に等しく適用され得ることを理解するであろう。本出願は、特定の組み合わせが明示的に記載されているか否かにかかわらず、本出願の核酸配列において使用することができる任意の配列を有する任意の組み合わせにおける適用可能な構成要素のうちのいずれかの使用を企図する。
【0070】
肝炎
肝炎は肝臓の炎症であり、最も一般的にはウイルス感染によって引き起こされる。A型、B型、C型、D型及びE型と呼ばれる5つの主要な肝炎ウイルスが存在する。A型肝炎及びE型肝炎は、典型的には、汚染された食物又は水の摂取によって引き起こされる。B型肝炎、C型肝炎及びD型肝炎は、通常、感染した体液(例えば、輸血又は汚染された機器を使用する侵襲的医療処置から)との非経口接触の結果として生じる。B型肝炎は性的接触によっても伝染する。
【0071】
A型肝炎ウイルス(Hepatitis A virus、HAV)は、発熱、倦怠感、拒食症、吐気、腹部不快感及び黄疸を引き起こす腸内伝染ウイルス疾患である。HAVは、通常、糞便-経口経路によって、ヒトからヒトへの接触、汚染された食物若しくは水の摂取、又はプールされた血漿製剤による伝染のいずれかによって獲得される。脂質エンベロープが存在しないことにより、HAVは物理化学的不活性化に対して非常に耐性となり、ウイルスは血液製剤の従来の熱処理に耐えることができる。感染した個体におけるHAV抗原及び/又は抗体を同定するための高感度かつ特異的な診断アッセイ、並びにウイルス血症試料を検出してそれらを輸血から排除するための核酸ベースの試験の開発は、重要な公衆衛生上の課題である。
【0072】
A型肝炎ウイルス(HAV)は、Picornaviridae科のHepatovirus属に分類される小さな非エンベロープ球状ウイルスである。HAVゲノムは、ウイルス複製に必要な構造タンパク質及び酵素活性を生じるようにプロセシングされるポリタンパク質前駆体をコードする一本鎖線状の7.5kb RNA分子からなる。HAVは、感染した個体の抗体によって認識される主要な抗原性ドメインを含む4つのカプシドタンパク質(A、B、C及びD)をコードする。カプシドタンパク質に加えて、抗原性ドメインは、2A及びウイルスコードプロテアーゼなどの非構造タンパク質において報告されている。
【0073】
B型肝炎ウイルス(HBV)はヒトに感染し、2つの臨床転帰をもたらし得る。成人における臨床感染の大部分(90~95%)において、ウイルスは数週間又は数ヶ月後に除去され、患者は生涯にわたって再感染に対する免疫を発達させる。しかしながら、残りの症例では、ウイルスは組織から排除されず、患者は慢性的に感染したままである。慢性感染の続発症は重篤である。このような個体は、肝臓組織の瘢痕化(肝硬変)を発症する可能性が高く、最終的に肝細胞がんを発症し得る。HBVは、分娩、性行為、又は感染した血液によって汚染された針の共有の間に、感染した血液又は他の体液、特に唾液及び精液を介して伝染する。
【0074】
慢性B型肝炎(CHB)感染は、肝硬変及び肝細胞がん(HCC)の最も一般的な原因であり、推定で年間500,000~900,000人が死亡している。HBV複製の継続は、肝硬変及びHCCへの進行のリスクを増加させる。
【0075】
C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus、HCV)は、非A非B型肝炎として最初に同定された大部分が慢性の肝臓感染の原因因子である。HCVは、米国で約400万人、世界中で1億7000万人に感染しており、HIVの約4倍であり、輸血に起因する肝炎の90~95%を占める。感染の主な経路は、感染した個体からの汚染された体液、特に血液との接触によるものと推定される。HCV感染は、米国及び他の国における肝移植の主な原因のうちの1つである。米国における肝移植の約40~50%は、HCV感染に基づく。この疾患はしばしば慢性肝損傷に進行する。HCV感染の病理は主に肝臓に影響を及ぼすが、このウイルスは、末梢血リンパ球を含む体内の他の細胞型において見出される。
【0076】
HCVは、Flaviviridae、Hepacivirus属のRNAウイルスであり、ペスチウイルス(pestivirus)、BVDV及びGBV-Bに最も近縁である。HCVゲノムは、長さ約9.6kbのRNAの一本鎖プラス鎖から構成される。HCVゲノムは、約3,000アミノ酸のポリタンパク質をコードする連続した翻訳オープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)を有する。構造タンパク質は、ORFのN末端領域のおよそ最初の四分の一にコードされるようであり、残りは非構造タンパク質をコードする。ポリタンパク質は、子孫ウイルス粒子の複製及びアセンブリに重要な少なくとも10個の別個のウイルスタンパク質に対する前駆体として働く。HCVポリタンパク質における構造タンパク質及び非構造タンパク質の構成は、以下の通りである:C-E1-E2-p7-NS2-NS3-NS4a-NS4b-NS5a-NS5b。
【0077】
デルタ型肝炎ウイルス(hepatitis delta virus、HDV)は、B型肝炎表面抗原に依存してそのエンベロープを組み立て、新たなビリオンを形成して感染を伝播させるサテライトRNAウイルスである。HDVは、小さな1.7Kbのゲノムを有し、それを最小の既知のヒトウイルスにする。D型肝炎環状ゲノムは、GCヌクレオチド含有量が高いために、動物性ウイルスの中で独特である。しかしながら、HDVは、ウイルス性肝炎の最も重篤な形態である。ウイルス性肝炎の他の因子と比較して、急性HDV感染は、劇症肝炎(肝臓の大部分が破壊される、急速進行性の、しばしば致死的な形態の本疾患)とより頻繁に関連する。慢性D型肝炎は、典型的には、慢性HBV感染に類似した壊死性炎症性病変によって特徴付けられるが、より重症であり、肝硬変及び肝不全に急速に進行することが多く、慢性HDV感染と末期肝疾患との不均衡な関連性の原因となる。HDV感染に罹患する個体は、HBVのみに罹患する個体よりも少数であるが、結果として生じる急性又は慢性肝不全は、欧州及び北アメリカにおける肝移植の一般的な適応症である。慢性HDV疾患は、世界中で1500万人が罹患しており、そのうちの約70,000人が米国にいる。The Centers for Disease Controlは、HDV感染に起因して米国で毎年1,000人が死亡していると推定する。
【0078】
HDVビリオンは、リボ核タンパク質コア及びエンベロープから構成される。コアは、HDV-RNA、及びこのウイルスによってコードされる唯一のタンパク質である肝炎デルタ抗原(hepatitis delta antigen、HDAg)を含有する。エンベロープは、ヘルパーウイルス、B型肝炎の表面抗原タンパク質(B型肝炎表面抗原、又はHBsAg)によって形成される。エンベロープは、HBVによって提供される唯一のヘルパー機能である。HDVは、HBVの不在下で細胞内でそのRNAを複製することができるが、HDVビリオンのパッケージング及び放出のため、並びに感染性のためにHBsAgを必要とする。HDVがHBVに依存の結果として、HDVは、HBVに関連してのみ個体に感染する。
【0079】
E型肝炎ウイルス(Hepatitis E virus、HEV)は、世界の多くの資源が限られた地域に固有の急性ウイルス性肝炎の一形態であるE型肝炎ウイルスの原因病原体である。世界人口の約3分の1である約20億人が、HEVに固有の地域に住み、感染のリスクがあると推定される。これらの領域では、E型肝炎は急性肝炎の主要な形態である。例えばインドでは、急性肝炎の約50%がHEVによるものである。
【0080】
HEVは、27~34nmのサイズを有する小さな非エンベロープウイルスであり、Hepeviridae科のHepevirusに分類される。HEVゲノムは、プラス鎖である約7.2kbの一本鎖RNAであり、5’-メチルグアニンキャップ及び3’ポリ(A)ストレッチを有し、orf1、orf2及びorf3と呼ばれる3つの部分的に重複するオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。1693アミノ酸のポリタンパク質であるHEV orf1は、ウイルスの非構造機能をコードする。HEV非構造ポリタンパク質において同定された機能ドメインとしては、(N末端から開始して)メチルトランスフェラーゼ(methyltransferase、MeT)、パパイン様システインプロテアーゼ(papain-like cysteine protease、PCP)、RNAヘリカーゼ(helicase、Hel)及びRNA依存性RNAポリメラーゼ(RNA dependent RNA polymerase、RdRp)が挙げられる。HEV orf2は660アミノ酸のウイルスカプシドタンパク質をコードし、ウイルスRNAゲノムをカプシド化すると考えられている。HEV orf3は、インビトロでの複製に必須ではない114アミノ酸タンパク質を発現すると考えられており、ウイルスアクセサリータンパク質として機能し、感染に対する宿主応答に影響を及ぼす可能性があると考えられている。
【0081】
GBV-C、又はHCVのようなG型肝炎ウイルス(hepatitis G virus、HGV)は、Flaviviridae科に属する。GBV-Cは、世界的な分布を有し、米国ドナー集団において高い有病率を有し、HCV及びHBVと同様に、汚染された血液の輸血及び性的接触によって拡散され得る。現在、GBV-Cは、ポリメラーゼ連鎖反応によって血清中のそのRNAを検出することによってのみ診断することができる。急性又は慢性肝炎に関するGBV-C感染の臨床的意義は十分に理解されていないが、他の証拠の優勢は、GBV-Cがヒトにおいて肝炎を引き起こさないことを示唆する。ウイルスのゲノムは、正の極性を有する一本鎖RNAによって表される。GBV-Cゲノムは、その構成においてHCV RNAに類似しており、すなわち構造遺伝子はゲノム5’領域に位置し、非構造遺伝子は3’末端に位置する。5’末端の非翻訳領域は、RNAコード領域の翻訳を確実にする内部リボソーム搭載部位として機能し得る。
【0082】
B型肝炎ウイルス(HBV)
本明細書で使用される場合、「B型肝炎ウイルス」又は「HBV」は、hepadnaviridae科の特定のウイルスを指す。HBVは、4つのオープンリーディングフレーム及び7つのタンパク質をコードする小さな(例えば、3.2kb)肝指向性DNAウイルスである。HBVによってコードされる7つのタンパク質には、小(small、S)、中(middle、M)、及び大(large、L)表面抗原(HBsAg)又はエンベロープ(envelope、Env)タンパク質、プレコアタンパク質、コアタンパク質、ウイルスポリメラーゼ(polymerase、Pol)、並びにHBxタンパク質が含まれる。HBVは、3つの表面抗原又はエンベロープタンパク質、L、M、及びSを発現し、Sは最小であり、Lは最大であり、Mは中間である。Lタンパク質はPre-S1-Pre-S2-Sドメインを含み、Mタンパク質はPre-S2-Sドメインを含み、Sタンパク質はSドメインのみを含む。コアタンパク質は、ウイルスヌクレオカプシドのサブユニットである。Polは、ウイルスDNA(逆転写酵素、RNaseH、及びプライマー)の合成に必要であり、これは感染した肝細胞の細胞質に局在するヌクレオカプシドにおいて生じる。プレコアは、N末端シグナルペプチドを有するコアタンパク質であり、感染細胞からいわゆるB型肝炎e抗原(hepatitis B e-antigen、HBeAg)として分泌される前に、そのN末端及びC末端でタンパク質分解的にプロセシングされる。HBxタンパク質は、共有結合閉環状DNA(cccDNA)の効率的な転写に必要である。HBxはウイルス構造タンパク質ではない。HBVの全てのウイルスタンパク質は、mRNAを共有するコア及びポリメラーゼを除いて、それら自身のmRNAを有する。タンパク質プレコアを除いて、HBVウイルスタンパク質はいずれも翻訳後タンパク質分解プロセシングを受けない。
【0083】
HBVビリオンは、ウイルスエンベロープ、ヌクレオカプシド、及び部分的二本鎖DNAゲノムの単一コピーを含有する。ヌクレオカプシドは、コアタンパク質の120個の二量体を含み、S、M、及びLウイルスエンベロープ又は表面抗原タンパク質が埋め込まれた脂質膜によって覆われている。細胞への侵入後、ウイルスはコーティングされず、共有結合したウイルスポリメラーゼを有するカプシド含有不完全環状DNA(relaxed circular DNA、rcDNA)が核に移動する。そのプロセスの間、コアタンパク質のリン酸化は構造変化を誘導し、核局在化シグナルを露出させて、カプシドといわゆるインポーチンとの相互作用を可能にする。これらのインポーチンは、核孔複合体へのコアタンパク質の結合を媒介し、その際にカプシドが分解し、ポリメラーゼ/rcDNA複合体が核内に放出される。核内で、rcDNAは除タンパクされ(ポリメラーゼの除去)、宿主DNA修復機構によって共有結合閉環状DNA(cccDNA)ゲノムに変換され(更に、ヒストン及び他の宿主因子の付加によってミニ染色体に変換される)、そこから重複転写物がHBeAg、HBsAg、コアタンパク質、ウイルスポリメラーゼ及びHBxタンパク質をコードする。コアタンパク質、ウイルスポリメラーゼ、及びプレゲノムRNA(pre-genomic RNA、pgRNA)は、細胞質中で会合し、未成熟pgRNA含有カプシド粒子に自己集合し、これは更に成熟rcDNAカプシドに変換され、感染性ウイルス粒子としてエンベロープに包まれて分泌されるか、又は核に輸送されて戻って安定なcccDNAプールを補充及び維持する共通の中間体として機能する。
【0084】
現在まで、HBVは、エンベロープタンパク質上に存在する抗原エピトープに基づいて4つの血清型(adr、adw、ayr、ayw)に分けられ、ウイルスゲノムの配列に基づいて8つの遺伝子型(A、B、C、D、E、F、G及びH)に分けられている。2つの新しい遺伝子型I及びJが最近同定された。HBV遺伝子型は、異なる地理的領域にわたって分布している。例えば、アジアで最も一般的な遺伝子型は、遺伝子型B及びCである。遺伝子型Dは、アフリカ、中東、及びインドで優勢であるが、遺伝子型Aは、北欧、サハラ以南のアフリカ、及び西アフリカに広く分布している。
【0085】
本明細書で使用される場合、「慢性HBV感染」、「慢性B型肝炎ウイルス(CHB)感染」、「CHB」、「CHB感染」又は「CHBウイルス感染」を有する患者又は対象は、当技術分野における通常の意味を指し、より具体的には、HBVに慢性的に感染しており、HBV検出後6ヶ月以上にわたって血液中に検出可能なHBsAg(HBeAgを含む又は含まない)を有する患者又は対象を指す。CHB感染は、4つの相に分類することができ、常にではないが、典型的には、ある相から次の相に進行する:(I)HBeAg陽性慢性感染(以前は免疫寛容として知られていた)、(II)HBeAg陽性慢性肝炎(以前は免疫活性として知られていた)、(III)HBeAg陰性慢性感染(以前は不活性担体として知られていた)、及び(IV)HBeAg陰性慢性肝炎(以前は再活性化として知られていた)。慢性HBV感染の異なる段階はまた、ウイルス負荷、肝臓酵素レベル(壊死炎症活性)、HBeAg、若しくはHBsAg負荷、又はこれらの抗原に対する抗体の存在における差異によって特徴付けられ得る。未処置の対象におけるcccDNAレベルは、細胞当たり約10~50コピーで比較的一定のままであるが、ウイルス血症がかなり変動し得る場合であっても、ヌクレオシ(チ)ド類似体療法によって抑制される場合、細胞当たり1~2コピー程度に低くあり得る。cccDNA種の持続は慢性化をもたらす。いくつかの実施形態において、慢性HBV感染は、(i)B型肝炎コア抗原に対するIgM抗体(IgM抗HBc)について陰性であり、かつB型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎e抗原(HBeAg)、若しくはB型肝炎ウイルスDNAについての核酸検査について陽性であるか、又は(ii)HBsAg若しくはHBV DNAについての核酸検査について陽性であるか、又は少なくとも6ヶ月間隔で2回HBeAgについて陽性であるなどの、Centers for Disease Control and Prevention(CDC)によって公開された検査基準によって特徴付けることができる。
【0086】
本出願のいくつかの実施形態において、標的核酸配列は、HBVゲノム内にある。いくつかの実施形態において、TALE DNA結合ドメインは、HBVゲノム内の標的核酸配列に結合することができる。本出願のいくつかの実施形態において、標的核酸配列は、HBV抗原をコードする核酸配列内にある。いくつかの実施形態において、TALE DNA結合ドメインは、HBV抗原をコードする核酸配列内の標的核酸配列に結合することができる。いくつかの実施形態において、標的核酸配列の第1及び第2の半部位配列は、HBV抗原をコードする核酸配列内にある。いくつかの実施形態において、TALE DNA結合ドメインは、HBVゲノム内の標的核酸配列の半部位配列に結合することができる。HBVゲノム内の標的核酸配列に結合することができるTALE DNA結合ドメインを含むTALEN単量体は、本出願全体を通して「HBV TALEN」とも呼ばれる。任意の遺伝子型のHBVゲノムの核酸配列は、TALE DNA結合のための標的核酸配列であり得る。いくつかの実施形態において、標的核酸配列は、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のHBVゲノム内にある。いくつかの実施形態において、HBVゲノムは、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G及びHのうちの1つ以上のものである。
【0087】
本出願のいくつかの実施形態において、標的核酸配列は、HBVコアタンパク質をコードする核酸配列内にある。特定の実施形態において、TALE DNA結合ドメインは、HBVコアタンパク質をコードする核酸配列内の標的核酸配列に結合することができる。いくつかの実施形態において、標的核酸配列の第1及び第2の半部位配列は、HBVコアタンパク質をコードする核酸配列内にある。
【0088】
本出願のいくつかの実施形態において、標的核酸配列は、HBVポリメラーゼ(pol)をコードする核酸配列内にある。特定の実施形態において、TALE DNA結合ドメインは、HBV polをコードする核酸配列内の標的核酸配列に結合することができる。いくつかの実施形態において、標的核酸配列の第1及び第2の半部位配列は、HBV polをコードする核酸配列内にある。
【0089】
本出願のいくつかの実施形態において、標的核酸配列は、HBV表面抗原(HBsAg)をコードする核酸配列内にある。特定の実施形態において、TALE DNA結合ドメインは、HBsAgをコードする核酸配列内の標的核酸配列に結合することができる。いくつかの実施形態において、標的核酸配列の第1及び第2の半部位配列は、HBsAgをコードする核酸配列内にある。
【0090】
TALEN
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって生成される人工制限酵素である。これらの試薬は、効率的でプログラム可能で特異的なDNA切断を可能にし、インサイチュでのゲノム編集のための強力なツールとなる。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、実際に任意のDNA配列に結合するように迅速に操作することができる。TALENという用語は、本明細書で使用される場合、広義であり、別のTALENからの補助なしに二本鎖DNAを切断することができる単量体TALENを含む。TALENという用語は、一緒に働いて同じ部位でDNAを切断するように操作されたTALENの対の一方又は両方のメンバーを指すためにも使用される。一緒に作用するTALENは、左TALEN及び右TALENと呼ばれる場合があり、これはDNAの掌性を指す。米国特許出願第12/965,590号、米国特許出願第13/426,991号(米国特許第8,450,471号)、米国特許出願第13/427,040号(米国特許第8,440,431号)、米国特許出願第13/427,137号(米国特許第8,440,432号)、及び米国特許出願第13/738,381号(これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0091】
TALエフェクターは、植物病原性Xanthomonas細菌によって分泌されるタンパク質である。DNA結合ドメインは、12番目及び13番目のアミノ酸を除いて、33~34アミノ酸配列の高度に保存された反復セグメントを含有する。これらの2つの位置は高度に可変であり(反復可変二残基(RVD)と呼ばれる)、特異的ヌクレオチド認識と強い相関を示す(
図1C参照)。アミノ酸配列とDNA認識との間のこの単純な関係は、適切なRVDを含有する反復セグメントの組み合わせを選択することによって、特異的DNA結合ドメインの操作を可能にしている。RVDにおけるわずかな変化及び「非従来型」RVD配列の組み込みは、標的化特異性を改善することができる。
【0092】
FokIエンドヌクレアーゼの末端からの非特異的DNA切断ドメインを使用して、酵母アッセイにおいて活性であるハイブリッドヌクレアーゼを構築することができる。これらの試薬はまた、植物細胞及び動物細胞において活性である。最初のTALEN研究は、野生型FokI切断ドメインを使用したが、いくつかのその後のTALEN研究も、切断特異性及び切断活性を改善するように設計された突然変異を有するFokI切断ドメインバリアントを使用した。FokIドメインは二量体として機能し、適切な配向及び間隔で標的ゲノム中の部位のための固有のDNA結合ドメインを有する2つのTALEN構築物を必要とする。TALE DNA結合ドメインとFokI切断ドメイン(C末端ドメイン)との間のアミノ酸残基の数、及び2つの個々のTALEN結合部位(スペーサー)間の塩基の数の両方が、高レベルの活性を達成するためのパラメータである。TALE DNA結合ドメインとFokI切断ドメインとの間のC末端ドメイン中のアミノ酸残基の数は、スペーサー配列中の塩基の数に従ってアミノ酸を導入又は欠失することによって改変され得る。DNA標的配列中のスペーサーは、約12~約30ヌクレオチドであり得る。
【0093】
TALE結合ドメインのアミノ酸配列とDNA認識との間の関係は、設計可能なタンパク質を可能にする。TALEN遺伝子が組み立てられると、それらは、例えば、プラスミド又はウイルス構築物に挿入することができ、次いで、それらを使用して標的細胞をトランスフェクトし、そこで遺伝子産物が発現され、核に入ってゲノムにアクセスする。TALENは、DNAにおいて二本鎖切断(double-strand break、DSB)を誘導することによってゲノムを編集するために使用することができる。例えば、標的細胞においてTALENを発現させ、ゲノム編集をもたらすために、任意の方法及び方法の任意の組み合わせを使用することができる。いくつかの実施形態において、プラスミドDNAなどの1つ以上のTALEN遺伝子を含むDNAが標的細胞にトランスフェクトされる。細胞には、1つ以上のTALEN遺伝子を含む1つ以上のプラスミドがトランスフェクトされ得る。いくつかの実施形態において、標的細胞は、TALEN遺伝子を送達するウイルスベクターで形質導入される。細胞は、1つ以上のウイルスベクターで形質導入され得、各ウイルスベクターは、1つ以上のTALEN遺伝子を送達する。いくつかの実施形態において、TALEN mRNAは、インビトロ転写(in vitro transcription、IVT)によって調製される。いくつかの実施形態において、インビトロ転写されたTALEN mRNAは、標的細胞にトランスフェクトされる。細胞には、1つ以上のTALEN遺伝子をコードする1つ以上のmRNAがトランスフェクトされ得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、TALヌクレアーゼ単量体は、標的核酸配列の2つのDNA半部位配列のうちの1つに結合する。好ましくは、半部位配列はスペーサー配列によって分離される。この間隔は、ヌクレアーゼ触媒ドメインが二量体化し、半部位配列間のスペーサー配列中にDSBを作製することを可能にする。好ましくは、第1の半部位配列及び第2の半部位配列は異なる配列であり、スペーサー配列によって分離されている。
【0095】
いくつかの実施形態において、DSBはインデルを誘導するだろう。本明細書で使用される場合、「インデル」は、挿入、欠失又はそれらの組み合わせから生じる突然変異を指す。当業者によって理解されるであろうように、ゲノム配列のコード領域におけるインデルは、インデルの長さが3の倍数でない限り、フレームシフト突然変異をもたらす。いくつかの実施形態において、DSBは点突然変異を誘導するだろう。本明細書で使用される場合、「点突然変異」は、ヌクレオチドのうちの1つの置換を指す。好ましくは、インデル又は点突然変異は、標的核酸配列のスペーサー配列内にある。
【0096】
いくつかの実施形態において、標的核酸配列の切断は、標的遺伝子の発現の減少をもたらす。いくつかの実施形態において、標的遺伝子の発現の減少は、mRNAレベルの低下である。いくつかの実施形態において、標的遺伝子の発現の減少は、タンパク質レベルの低下又はタンパク質機能性の低下である。「低下した(decreased)」という用語は、一般に、統計的に有意な減少量を意味するために本明細書で使用される。しかしながら、誤解を避けるために、「低下した」とは、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は最大100%の減少(すなわち、参照試料と比較してレベルがない)、又は参照レベルと比較して10%~100%の間の任意の減少を意味する。参照レベルは、例えば、未処置の試料若しくは対象、又は対照処置を受けた試料若しくは対象における発現のレベルであり得る。「統計的に有意な」又は「有意に」という用語は、統計的有意性を指し、一般に、マーカーの正常濃度よりも2標準偏差(two standard deviation、2SD)低い、又はより低い濃度を意味する。この用語は、差異の存在についての統計的証拠を指す。これは、帰無仮説が実際に真である場合に帰無仮説を棄却する決定を下す確率として定義される。判定は、p値を用いて行われることが多い。
【0097】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は組み合わせは、第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1のTALEN単量体であって、第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができる第1のTALEN単量体と、第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2のTALEN単量体であって、第2のTALE DNA結合ドメインが、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができる第2のTALEN単量体と、を含み、第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができる。第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、それらの触媒ドメインを介して二量体を形成することができる。好ましくは、第1のヌクレアーゼ触媒ドメインは第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインであり、第2のヌクレアーゼ触媒ドメインは第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインである。好ましくは、第1の半部位配列及び第2の半部位配列は異なる配列であり、スペーサー配列によって分離されている。
【0098】
いくつかの実施形態において、標的核酸配列は、HBsAg及びHBVポリメラーゼ(pol)をコードする配列内にある。好ましくは、標的核酸配列の第1の半部位配列は、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列は、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は、標的核酸配列の第1の半部位配列は、配列番号3の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列は、配列番号4の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含むか、又は、標的核酸配列は、配列番号5若しくは配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、第1及び第2のTALE DNA結合ドメインはそれぞれ、反復単位を含み、各反復単位は、標的核酸配列中の塩基対の認識を決定する反復可変二残基(RVD)として知られる2つのアミノ酸の超可変領域を含む。いくつかの実施形態において、第1及び第2のTALE DNA結合ドメインはそれぞれ、15~20個のRVD、例えば、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個のRVDを含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、第1のTALE DNA結合ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%同一、例えば、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%同一、例えば、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又は、第1のTALE DNA結合ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%同一、例えば、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインは、配列番号10と少なくとも90%同一、例えば、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインは各々、配列番号11と少なくとも90%同一、例えば、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のTALE DNA結合ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインはそれぞれ、配列番号11のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のTALE DNA結合ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインはそれぞれ、配列番号11のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のTALE DNA結合ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列からなり、第2のTALE DNA結合ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列からなり、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインはそれぞれ、配列番号11のアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態において、第1のTALE DNA結合ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列からなり、第2のTALE DNA結合ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列からなり、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインはそれぞれ、配列番号11のアミノ酸配列からなる。
【0101】
いくつかの実施形態において、それぞれ、第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体は、第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含み、第1のTALE DNA結合ドメインは、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができ、第1の半部位配列は配列番号1又は配列番号3の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、第2の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体は、第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含み、第2のTALE DNA結合ドメインは、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができ、第2の半部位配列は配列番号2又は配列番号4の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができる。いくつかの実施形態において、標的核酸配列は、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及び/又はJのうちの1つ以上のHBVゲノム内にある。いくつかの実施形態において、HBVゲノムは、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、及び/又はHのうちの1つ以上のものである。
【0102】
一態様において、本出願は、HBVゲノム中の標的核酸配列を切断する方法であって、HBVゲノムを、本明細書に記載の任意の組成物、組み合わせ、核酸分子、単離された宿主細胞、又は薬学的組成物と接触させることを含む、方法を提供する。別の態様において、本出願は、HBVゲノム中の標的核酸配列の遺伝子編集を誘導するための方法であって、HBVゲノムを、本明細書に記載の任意の組成物、組み合わせ、核酸分子、単離された宿主細胞、又は薬学的組成物と接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、HBVゲノムは、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである。いくつかの実施形態において、HBVゲノムは、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G及びHのうちの1つ以上のものである。
【0103】
ポリヌクレオチド及びベクター
一般的な態様において、本出願は、第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸、好ましくは第1のmRNA分子であって、第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができ、第1の半部位配列が、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、第1の核酸、好ましくは第1のmRNA分子と、第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸、好ましくは第2のmRNA分子であって、第2のTALE DNA結合ドメインが、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができ、第2の半部位配列が、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、第2の核酸、好ましくは第2のmRNA分子と、の組み合わせであって、第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができる、組み合わせを提供する。
【0104】
核酸分子は、本出願のHBV TALENをコードする任意の天然に存在しないポリヌクレオチド配列を含むことができ、これは、本開示を考慮して当技術分野において既知の方法を使用して作製することができる。ポリヌクレオチドは、RNA、好ましくはmRNAの形態、又は組換え技術(例えば、クローニング)によって得られるか若しくは合成的に産生される(例えば、化学合成)DNAの形態であり得る。DNAは、一本鎖若しくは二本鎖であり得るか、又は二本鎖配列及び一本鎖配列の両方の部分を含み得る。DNAは、例えば、ゲノムDNA、cDNA、又はそれらの組み合わせを含むことができる。ポリヌクレオチドはまた、DNA/RNAハイブリッドであり得る。本出願のポリヌクレオチド及びベクターは、組換えタンパク質産生、宿主細胞におけるタンパク質の発現、又はウイルス粒子の産生のために使用することができる。
【0105】
別の一般的な態様において、本出願は、第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のmRNA分子であって、第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができる、第1のmRNA分子と、第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2のTALEN単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のmRNA分子であって、第2のTALE DNA結合ドメインが、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができる、第2のmRNA分子と、を含む、mRNA分子の組み合わせであって、第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができる、mRNA分子の組み合わせを提供する。
【0106】
好ましくは、第1のヌクレアーゼ触媒ドメインは第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインであり、第2のヌクレアーゼ触媒ドメインは第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインである。第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインは、同じ又は異なり得る。いくつかの実施形態において、FokIヌクレアーゼ触媒ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、配列番号11のアミノ酸配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、各FokIヌクレアーゼ触媒ドメインは、独立して、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、配列番号11のアミノ酸配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、各FokIヌクレアーゼ触媒ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列からなる。
【0107】
いくつかの実施形態において、第1及び第2のmRNA分子は各々、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールのうちの1つ以上、好ましくは全てを更に含む。
【0108】
好ましくは、本明細書に記載のmRNAは、5’キャップを含む。様々な基及びそれらの類似体でキャップされた5’末端は、当技術分野において既知である。全ての真核生物(及び一部のウイルス)に存在するmRNAの5’末端上のCap構造は、インビボでmRNAを安定化するために重要である。天然に存在するCap構造は、グアニン塩基のN7位がメチル化されているリボグアノシン残基を含む。この7-メチルグアノシン(7-methylguanosine、m7G)は、mRNA分子の5’末端で5’-三リン酸鎖を介して5’-三リン酸鎖に連結される。5’末端上のm7Gppp断片の存在は、それがエキソヌクレアーゼによる分解からmRNAを保護し、核から細胞質へのmRNAの輸送を促進し、翻訳開始複合体の構築において重要な役割を果たすので、mRNA成熟に必須である(Cell 9:645-653,(1976)、Nature 266:235,(1977)、Federation of Experimental Biologists Society Letter 96:1-11,(1978)、Cell 40:223-24,(1985)、Prog.Nuc.Acid Res.35:173-207,(1988)、Ann.Rev.Biochem.68:913-963,(1999)、及びJ Biol.Chem.274:30337-3040,(1999))。
【0109】
Cap構造を有するmRNAのみがCap依存性翻訳において活性であり、mRNAの「断頭」は、タンパク質合成のためのそれらの鋳型活性のほぼ完全な喪失をもたらす(Nature,255:33-37,(1975)、J.Biol.Chem.,vol.253:5228-5231(1978)、及びProc.Natl.Acad.Sci.USA,72:1189-1193,(1975))。
【0110】
真核生物mRNAの別の要素は、転写位置1(Cap 1)における2’-O-メチルヌクレオシド残基の存在であり、場合によっては、転写位置1及び2(Cap 2)における2’-O-メチルヌクレオシド残基の存在である。mRNAの2’-O-メチル化は、インビボでのmRNA翻訳のより高い有効性を提供し(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:3952-3956(1980))、5’キャップされたmRNAのヌクレアーゼ安定性を更に改善する。Cap 1(及びCap 2)を有するmRNAは、細胞が真正mRNA 5’末端を認識することを可能にし、いくつかの事例では、感染性遺伝因子から発する転写物を区別することを可能にする特有のマークである(Nucleic Acid Research 43:482-492(2015))。
【0111】
5’キャップ構造及びそれを含むmRNAを調製するための方法のいくつかの例は、WO2015/051169A2、WO/2015/061491、US2018/0273576、並びに米国特許第8,093,367号、同第8,304,529号及び同第10,487,105号に示されている。5’キャップは、m7GpppA、m7GpppC;非メチル化キャップ類似体(例えば、GpppG);ジメチル化キャップ類似体(例えば、m2,7GpppG)、トリメチル化キャップ類似体(例えば、m2,2,7GpppG)、ジメチル化対称キャップ類似体(例えば、m7Gpppm7G)、又は抗逆キャップ類似体(例えば、ARCA;m7,2’OmeGpppG、m72’dGpppG、m7,3’OmeGpppG、m7,3’dGpppG及びそれらの四リン酸誘導体)から選択され得る(例えば、Jemielity,J.et al.,RNA 9:1108-1122(2003)を参照されたい)。5’キャップは、ARCAキャップ(3’-OMe-m7G(5’)pppG)であり得る。5’キャップはmCAP(m7G(5’)ppp(5’)G,N7-メチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン)であってもよい。5’キャップは加水分解に対して耐性であり得る。いくつかの実施形態において、5’キャップは、当技術分野において既知のm7GpppAmpGである。いくつかの実施形態において、5’キャップはm7GpppG又はm7GpppGmであり、これらは当技術分野において既知である。5’キャップ構造の実施形態についての構造式を以下に提供する。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるmRNAは、式(Cap I)の構造を有する5’キャップを含む。
【0113】
【化1】
式中、B
1は、天然又は修飾核酸塩基であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、ハロゲン、OH、及びOCH
3から選択され、各Lは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエート、及びボラノホスフェートからなる群から選択され、各Lは、ジエステル結合によって連結されており、nは0又は1であり、mRNAは、その5’末端で連結された本開示のmRNAを表す。いくつかの実施形態において、B
1は、G、m
7G、又はAである。いくつかの実施形態において、nは、0である。いくつかの実施形態において、nは1である。いくつかの実施形態において、B
1はA又はm
6Aであり、R
1はOCH
3であり、式中、Gはグアニンであり、m
7Gは7-メチルグアニンであり、Aはアデニンであり、m
6AはN
6-メチルアデニンである。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるmRNAは、式(Cap II)の構造を有する5’キャップを含む。
【0115】
【化2】
式中、B
1及びB
2は、それぞれ独立して、天然又は修飾核酸塩基であり、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、ハロゲン、OH、及びOCH
3から選択され、各Lは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエート、及びボラノホスフェートからなる群から選択され、各Lは、ジエステル結合によって連結されており、mRNAは、その5’末端で連結された本開示のmRNAを表し、nは0又は1である。いくつかの実施形態において、R
1、R
2、及びR
3の少なくとも1つはOHである。いくつかの実施形態において、B
1は、G、m
7G、又はAである。いくつかの実施形態において、nは、0である。いくつかの実施形態において、nは1である。いくつかの実施形態において、B
1はA又はm
6Aであり、R
1はOCH
3であり、式中、Gはグアニンであり、m
7Gは7-メチルグアニンであり、Aはアデニンであり、m
6AはN
6-メチルアデニンである。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるmRNAは、式(Cap III)の構造を有する5’キャップを含む。
【0117】
【化3】
式中、B
1、B
2、及びB
3は、各々独立して、天然又は修飾核酸塩基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、各々独立して、ハロゲン、OH、及びOCH
3から選択され、各Lは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエート、及びボラノホスフェートからなる群から選択され、各Lは、ジエステル結合によって連結されており、mRNAは、その5’末端で連結された本開示のmRNAを表し、nは0又は1である。いくつかの実施形態において、R
1、R
2、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つはOHである。いくつかの実施形態において、B
1は、G、m
7G、又はAである。いくつかの実施形態において、B
1は、A又はm
6Aであり、R
1は、OCH
3であり、式中、Gはグアニンであり、m
7Gは7-メチルグアニンであり、Aはアデニンであり、m
6AはN
6-メチルアデニンである。いくつかの実施形態において、nは1である。
【0118】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるmRNAは、式(Cap IV)の構造を有するm7GpppG 5’キャップ類似体を含む。
【0119】
【化4】
式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、ハロゲン、OH、及びOCH
3から選択され、各Lは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエート、及びボラノホスフェートからなる群から選択され、各Lは、ジエステル結合によって連結されており、mRNAは、その5’末端で連結された本開示のmRNAを表し、nは0又は1である。いくつかの実施形態において、R
1、R
2、及びR
3のうちの少なくとも1つはOHである。いくつかの実施形態において、5’キャップはm
7GpppGであり、式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれOHであり、nは1であり、各Lはホスフェートである。いくつかの実施形態において、nは1である。いくつかの実施形態において、5’キャップはm7GpppGmであり、式中、R
1及びR
2は各々OHであり、R
3はOCH
3であり、各Lはホスフェートであり、mRNAはその5’末端で連結された本開示のCFTR mRNAであり、nは1である。
【0120】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるmRNAは、式(Cap V)の構造を有するm7GpppAmpG 5’キャップ類似体を含む。
【0121】
【化5】
式中、R
1、R
2、及びR
4は、各々独立して、ハロゲン、OH、及びOCH
3から選択され、各Lは、独立して、ホスフェート、ホスホロチオエート、及びボラノホスフェートからなる群から選択され、各Lは、ジエステル結合によって連結されており、mRNAは、その5’末端で連結された本開示のmRNAを表し、nは0又は1である。いくつかの実施形態において、R
1、R
2、及びR
4のうちの少なくとも1つはOHである。いくつかの実施形態において、式Cap Vの化合物は、m
7GpppAmpGであり、式中、R
1、R
2、及びR
4はそれぞれOHであり、nは1であり、各Lはホスフェートである。いくつかの実施形態において、nは1である。
【0122】
好ましくは、本明細書に記載のmRNAは、5’非翻訳領域(untranslated region、UTR)配列を更に含む。当該技術分野で理解されているように、5’-UTR及び/又は3’-UTRは、mRNAの安定性又は翻訳効率に影響を及ぼし得る。5’-UTRは、翻訳可能なオリゴマーの安定性を増加させるために、比較的安定であることが当技術分野において既知のmRNA分子(例えば、ヒストン、チューブリン、グロビン、グリセルアルデヒド1-リン酸デヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde 1-phosphate dehydrogenase、GAPDH)、アクチン、又はクエン酸回路酵素)に由来し得る。他の実施形態において、5’-UTR配列は、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)最初期1(immediate-early 1、IE1)遺伝子の部分配列を含み得る。
【0123】
好ましくは、5’-UTRは、ヒトIL-6、アラニンアミノトランスフェラーゼ1、ヒトアポリポタンパク質E、ヒトフィブリノーゲンアルファ鎖、ヒトトランスサイレチン、ヒトハプトグロビン、ヒトアルファ1-抗キモトリプシン、ヒトアンチトロンビン、ヒトアルファ1-アンチトリプシン、ヒトアルブミン、ヒトベータグロビン、ヒト補体C3、ヒト補体C5、SynK(シアノバクテリア、Synechocystis sp.に由来するチラコイドカリウムチャネルタンパク質)、マウスベータグロビン、マウスアルブミン、及びタバコエッチウイルスの5’-UTR、又は前述のもののうちのいずれかの断片から選択される配列を含む。好ましくは、5’-UTRは、タバコエッチウイルス(tobacco etch virus、TEV)に由来する。好ましくは、本明細書に記載のmRNAは、Arabidopsis thalianaによって発現される遺伝子に由来する5’-UTR配列を含む。好ましくは、Arabidopsis thalianaによって発現される遺伝子の5’-UTR配列は、AT1G58420である。好ましい5’-UTR配列は、配列番号12~17を含む。好ましくは、5’-UTR配列は、配列番号13(AT1G58420)を含む。
【0124】
好ましくは、本明細書に記載されるmRNAは、3’-UTRを含む。好ましくは、3’-UTRは、アラニンアミノトランスフェラーゼ1、ヒトアポリポタンパク質E、ヒトフィブリノーゲンアルファ鎖、ヒトハプトグロビン、ヒトアンチトロンビン、ヒトアルファグロビン、ヒトベータグロビン、ヒト補体C3、ヒト成長因子、ヒトヘプシジン、MALAT-1、マウスベータグロビン、マウスアルブミン、及びXenopusベータグロビンの3’-UTR、又は前述のもののうちのいずれかの断片から選択される配列を含む。好ましくは、3’-UTRはXenopusベータグロビンに由来する。好ましい3’-UTR配列は、配列番号18~24を含む。
【0125】
好ましくは、本明細書に記載のmRNAは、mRNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護する働きをすることができる3’テール領域を含む。テール領域は、3’ポリ(A)及び/又は3’ポリ(C)領域であり得る。好ましくは、テール領域は、3’ポリ(A)テールである。本明細書で使用される場合、「3’ポリ(A)テール」又は「ポリアデノシンテール」は、例えば、10~250個の連続アデノシンヌクレオチド、60~125個の連続アデノシンヌクレオチド、90~125個の連続アデノシンヌクレオチド、95~125個の連続アデノシンヌクレオチド、95~121個の連続アデノシンヌクレオチド、100~121個の連続アデノシンヌクレオチド、110~121個の連続アデノシンヌクレオチド、112~121個の連続アデノシンヌクレオチド、114~121個のアデノシン連続ヌクレオチド、及び115~121個の連続アデノシンヌクレオチド、のサイズの範囲であり得る連続アデノシンヌクレオチドのポリマーである。好ましくは、本明細書に記載される3’ポリアデノシンテールは、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124又は125個の連続アデノシンヌクレオチドを含む。3’ポリ(A)テールは、当該分野において既知の種々の方法を使用して(例えば、合成RNA又はインビトロ転写RNAにテールを付加するためにポリ(A)ポリメラーゼを使用して)付加され得る。他の方法としては、ポリAテールをコードする転写ベクターの使用又はリガーゼの使用(例えば、T4 RNAリガーゼ及び/又はT4 DNAリガーゼを使用するスプリントライゲーションによる)が挙げられ、ポリ(A)は、センスRNAの3’末端にライゲーションされ得る。好ましくは、上記方法のうちのいずれかの組み合わせが利用される。
【0126】
いくつかの実施形態において、第1及び第2のmRNA分子は各々、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、DNA結合ドメインをコードする配列、ヌクレアーゼ触媒ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールを含む。いくつかの実施形態において、第1及び第2のmRNA分子は各々、5’キャップ、5’-UTR、N末端ドメインをコードする配列、DNA結合ドメインをコードする配列、ヌクレアーゼ触媒ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールを含む。いくつかの実施形態において、第1及び第2のmRNA分子は各々、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、DNA結合ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールを含む。いくつかの実施形態において、第1及び第2のmRNA分子は各々、5’キャップ、5’-UTR、N末端ドメインをコードする配列、DNA結合ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールを含む。
【0127】
本出願はまた、HBV TALENをコードする核酸の組み合わせを含む、ベクターに関する。本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、遺伝物質を別の細胞に運ぶために使用される核酸分子であり、ここで、遺伝物質が複製及び/又は発現され得る。本開示を考慮して当業者に既知の任意のベクターを使用することができる。ベクターの例としては、プラスミド、ウイルスベクター(バクテリオファージ、動物ウイルス、及び植物ウイルス)、コスミド、及び人工染色体(例えば、YAC)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ベクターはDNAプラスミドである。ベクターは、DNAベクター又はRNAベクターであり得る。当業者は、本開示を考慮して、標準的な組換え技術を通じて本出願のベクターを構築することができる。
【0128】
本出願のベクターは、発現ベクターであり得る。本明細書中で使用される場合、用語「発現ベクター」は、転写され得るRNAをコードする核酸を含む任意の型の遺伝子構築物を指す。発現ベクターとしては、組換えタンパク質発現のためのベクター(例えば、DNAプラスミド又はウイルスベクター)、及び対象の組織における発現のために対象に核酸を送達するためのベクター(例えば、DNAプラスミド又はウイルスベクター)が挙げられるが、これらに限定されない。発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどの因子に依存し得ることは、当業者によって理解されるであろう。
【0129】
本出願のベクターは、様々な調節配列を含有することができる。本明細書中で使用される場合、用語「調節配列」は、複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、安定、及び/又は宿主若しくは生物への核酸若しくはその誘導体のうちの1つ(すなわち、mRNA)の輸送を含む、核酸分子の機能調節を可能にするか、これに寄与するか、又はこれを調節する任意の配列を指す。本開示との関連において、この用語は、プロモータ、エンハンサ及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル及びmRNA安定性に影響を及ぼすエレメント)を包含する。
【0130】
本出願のいくつかの実施形態において、ベクターは非ウイルスベクターである。非ウイルスベクターの例としては、DNAプラスミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、バクテリオファージなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、非ウイルスベクターはDNAプラスミドである。「DNAプラスミドベクター」、「プラスミドDNA」又は「プラスミドDNAベクター」と互換的に使用される「DNAプラスミド」は、好適な宿主細胞中で自己複製することができる二本鎖の一般的に環状のDNA配列を指す。コードされたポリヌクレオチドの発現のために使用されるDNAプラスミドは、典型的には、複製起点、マルチクローニング部位、及び選択可能なマーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子であり得る)を含む。使用され得る好適なDNAプラスミドの例としては、周知の発現系(原核生物系及び真核生物系の両方を含む)において使用するための市販の発現ベクター、例えば、Escherichia coliにおけるタンパク質の産生及び/又は発現のために使用することができるpSE420(Invitrogen,San Diego,Calif.);酵母のSaccharomyces cerevisiae株における産生及び/又は発現のために使用することができるpYES2(Invitrogen,Thermo Fisher Scientific);昆虫細胞における産生及び/又は発現のために使用することができるMAXBAC(登録商標)完全バキュロウイルス発現系(Thermo Fisher Scientific);哺乳類細胞における高レベルの構成的タンパク質発現のために使用することができるpcDNA(商標)又はpcDNA3(商標)(Life Technologies,Thermo Fisher Scientific);並びにほとんどの哺乳類細胞における目的のタンパク質の高レベル一過性発現のために使用することができるpVAX又はpVAX-1(Life Technologies,Thermo Fisher Scientific)が挙げられるが、これらに限定されない。任意の市販のDNAプラスミドの骨格は、日常的な技術及び容易に入手可能な出発物質を使用することによって、宿主細胞におけるタンパク質発現を最適化するように、例えば、特定のエレメント(例えば、複製起点及び/又は抗生物質耐性カセット)の配向を逆転させるように、プラスミドに対して内因性のプロモータ(例えば、抗生物質耐性カセット中のプロモータ)を置換するように、及び/又は転写されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、抗生物質耐性遺伝子のコード配列)を置換するように修飾され得る。(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning a Laboratory Manual,Second Ed.Cold Spring Harbor Press(1989)を参照されたい)。
【0131】
好ましくは、DNAプラスミドは、哺乳類宿主細胞におけるタンパク質発現に適した発現ベクターである。哺乳類宿主細胞におけるタンパク質発現に適した発現ベクターとしては、pcDNA(商標)、pcDNA3(商標)、pVAX、pVAX-1、ADVAX、NTC8454などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、発現ベクターは、pVAX-1に基づいており、哺乳類細胞におけるタンパク質発現を最適化するように更に修飾され得る。pVAX-1は、DNAワクチンにおいて一般的に使用されるプラスミドであり、強力なヒト最初期サイトメガロウイルス(CMV-IE)プロモータ、続いてウシ成長ホルモン(bovine growth hormone、bGH)由来ポリアデニル化配列(pA)を含有する。pVAX-1は、細菌プラスミド増殖を可能にする小さな原核生物プロモータによって駆動されるpUC複製起点及びカナマイシン耐性遺伝子を更に含有する。
【0132】
本出願のベクターはまた、ウイルスベクターであり得る。一般に、ウイルスベクターは、非感染性にされた改変ウイルスDNA又はRNAを保有する遺伝子操作されたウイルスであるが、依然としてウイルスプロモータ及び導入遺伝子を含有し、したがってウイルスプロモータを介した導入遺伝子の翻訳を可能にする。ウイルスベクターはしばしば感染性配列を欠いているので、それらは大規模トランスフェクションのためにヘルパーウイルス又はパッケージング株を必要とする。特定の実施形態において、本明細書に記載されるベクターは、例えば、組換えアデノウイルス、組換えレトロウイルス、ワクシニアウイルス(例えば、改変ワクシニアアンカラ(Modified Vaccinia Ankara、MVA))などの組換えポックスウイルス、セムリキ森林ウイルスなどの組換えアルファウイルス、組換え麻疹ウイルスなどの組換えパラミクソウイルス、又は別の組換えウイルスである。使用することができるウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、腸内ウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスベクター、タバコモザイクウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本明細書に記載のベクターはMVAベクターである。ベクターはまた、非ウイルスベクターであり得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viral、AAV)ベクターである。「AAV」という用語は、任意の血清型のAAV及び任意の種のAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、及びそれらのハイブリッド、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、及びヒツジAAVなどを含む。いくつかのいくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、例えば、組換えアデノウイルスベクターである。組換えアデノウイルスベクターは、例えば、ヒトアデノウイルス(human adenovirus、HAdV若しくはAdHu)、あるいはチンパンジー若しくはゴリラアデノウイルス(ChAd、AdCh若しくはsimian adenovirus、SAdV)又はアカゲザルアデノウイルス(rhesus adenovirus、rhAd)などのシミアンアデノウイルスに由来し得る。好ましくは、アデノウイルスベクターは、組換えヒトアデノウイルスベクター、例えば、組換えヒトアデノウイルス血清型26、又は組換えヒトアデノウイルス血清型5、4、35、7、48などのうちのいずれか1つである。他の実施形態において、アデノウイルスベクターは、rhAdベクター、例えば、rhAd51、rhAd52、又はrhAd53である。本出願に有用な組換えウイルスベクターは、本開示を考慮して当技術分野において既知の方法を使用して調製することができる。例えば、遺伝暗号の縮重を考慮して、同じポリペプチドをコードするいくつかの核酸配列を設計することができる。本出願のHBV TALENをコードするポリヌクレオチドは、任意選択的に、宿主細胞(例えば、細菌細胞又は哺乳類細胞)における適切な発現を確実にするためにコドン最適化することができる。コドン最適化は、当技術分野において広く適用されている技術であり、コドン最適化ポリヌクレオチドを得るための方法は、本開示を考慮すれば当業者に周知であろう。
【0134】
本出願のベクター、例えば、DNAプラスミド又はウイルスベクター(特にAAV、例えば、AAV7、AAV8、AAV9、若しくはハイブリッドAAVを含む肝臓指向性を有する任意の他のAAV、又はアデノウイルスベクター)は、ベクターのポリヌクレオチド配列によってコードされるHBV TALENの複製及び発現を含むがこれらに限定されないベクターの従来の機能を確立するための任意の調節エレメントを含むことができる。調節エレメントとしては、プロモータ、エンハンサ、ポリアデニル化シグナル、翻訳終止コドン、リボソーム結合エレメント、転写ターミネーター、選択マーカー、複製起点などが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、1つ以上の発現カセットを含み得る。「発現カセット」は、細胞機構にRNA及びタンパク質を作製するように指示するベクターの一部である。発現カセットは、典型的には、3つの構成要素:であるプロモータ配列、オープンリーディングフレーム、及び任意選択的にポリアデニル化シグナルを含む3’-非翻訳領域(UTR)を含む。オープンリーディングフレーム(ORF)は、開始コドンから終止コドンまでの目的のタンパク質(例えば、HBV TALEN)のコード配列を含有するリーディングフレームである。発現カセットの調節エレメントは、目的のHBV TALENをコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、その最も広い合理的な文脈で解釈されるべきであり、機能的関係におけるポリヌクレオチドエレメントの連結を指す。ポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチドと機能的な関係に置かれる場合、「作動可能に連結されている」。例えば、プロモータは、コード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている。本明細書に記載される発現カセットにおける使用に適した任意の成分は、本出願のベクターを調製するために任意の組み合わせ及び任意の順序で使用することができる。
【0135】
ベクターは、目的のHBV TALENの発現を制御するために、好ましくは発現カセット内にプロモータ配列を含むことができる。「プロモータ」という用語は、その従来の意味で使用され、作動可能に連結されたヌクレオチド配列の転写を開始するヌクレオチド配列を指す。プロモータは、それが転写するヌクレオチド配列の近くの同じ鎖上に位置する。プロモータは、構成的、誘導性、又は抑制性であり得る。プロモータは、天然に存在するか又は合成であり得る。プロモータは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、及び動物を含む供給源に由来し得る。プロモータは、同種プロモータ(すなわち、ベクターと同じ遺伝子源に由来する)又は異種プロモータ(すなわち、異なるベクター又は遺伝子源に由来する)であり得る。例えば、使用されるベクターがDNAプラスミドである場合、プロモータは、プラスミドに対して内因性(同種)であり得るか、又は他の供給源に由来し得る(異種)。好ましくは、プロモータは、発現カセット内のHBV TALENをコードするポリヌクレオチドの上流に位置する。
【0136】
使用され得るプロモータの例としては、シミアンウイルス40(simian virus 40、SV40)由来のプロモータ、マウス乳がんウイルス(mouse mammary tumor、MMTV)プロモータ、レンチウイルスプロモータ(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)又はウシ免疫不全ウイルス(bovine immunodeficiency virus、BIV)の長い末端反復配列(long terminal repeat、LTR)プロモータ)、モロニーウイルスプロモータ、トリ白血病ウイルス(avian leukosis virus、ALV)プロモータ、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ(例えば、CMV最初期プロモータ(CMV-IE))、エプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr virus、EBV)プロモータ、又はラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus、RSV)プロモータが挙げられるが、これらに限定されない。プロモータはまた、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、又はヒトメタロチオネインのようなヒト遺伝子由来のプロモータであり得る。プロモータは、天然又は合成の筋肉又は皮膚特異的プロモータなどの組織特異的プロモータであり得る。
【0137】
ベクターは、発現された転写物を安定化させ、RNA転写物の核外輸送を増強し、かつ/又は転写-翻訳共役を改善する追加のポリヌクレオチド配列を含むことができる。このような配列の例としては、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサ配列が挙げられる。ポリアデニル化シグナルは、典型的には、ベクターの発現カセット内の目的のタンパク質(例えば、HBV TALEN)のコード配列の下流に位置する。エンハンサ配列は、転写因子によって結合される場合に、関連する遺伝子の転写を増強する調節DNA配列である。エンハンサ配列は、好ましくは、HBV TALENをコードするポリヌクレオチド配列の上流であるが、ベクターの発現カセット内のプロモータ配列の下流に位置する。
【0138】
本開示を考慮して当業者に既知の任意のポリアデニル化シグナルを使用することができる。例えば、ポリアデニル化シグナルは、SV40ポリアデニル化シグナル、LTRポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン(human growth hormone、hGH)ポリアデニル化シグナル、又はヒトβ-グロビンポリアデニル化シグナルであり得る。
【0139】
本開示を考慮して当業者に既知の任意のエンハンサ配列を使用することができる。例えば、エンハンサ配列は、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、又はウイルスエンハンサ(例えば、CMV、HA、RSV、若しくはEBV由来のエンハンサ)であり得る。特定のエンハンサの例としては、ウッドチャックHBV転写後調節エレメント(Woodchuck HBV Post-transcriptional regulatory element、WPRE)、ヒトアポリポタンパク質A1前駆体(apolipoprotein A1 precursor、ApoAI)由来のイントロン/エキソン配列、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1、HTLV-1)の長い末端反復配列(LTR)の非翻訳R-U5ドメイン、スプライシングエンハンサ、合成ウサギβ-グロビンイントロン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
ベクターは、タンパク質の局在化のためのシグナルペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を含むことができる。好ましくは、シグナルペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列は、HBV TALENをコードするポリヌクレオチド配列の上流、例えば、N末端領域に位置する。好ましくは、シグナル配列は、TALENタンパク質の核への局在化を指示してDNA結合及び編集を容易にすることができる核局在化シグナル(nuclear localization signal、NLS)配列である。本開示を考慮して当技術分野において既知の任意のシグナルペプチドを使用することができる。例えば、シグナルペプチドは、SV40ラージT抗原NLS(PKKKRKV)(配列番号31)、ヌクレオプラスミンNLS(KRPAATKKAGQAKKKK)(配列番号32)、EGL-13 NLS(MSRRRKANPTKLSENAKKLAKEVEN)(配列番号33)、c-Mycがん原タンパク質NLS(PAAKRVKLD)(配列番号34)、又はTUSタンパク質NLS(KLKIKRPVK)(配列番号35)であり得る。
【0141】
ベクターは、ポリペプチド又はペプチド親和性タグ、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutathione S-transferase、GST)、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP)並びに黄色蛍光タンパク質(yellow fluorescent protein、YFP)及びmCherryなどの他の蛍光タンパク質、例えば、マルトース結合タンパク質、プロテインA、FLAGタグ(例えば、DYKDDDDK(配列番号36)又はEYKEEEEK(配列番号37)、ヘキサヒスチジン(例えば、HHHHHH)(配列番号38)、mycタグ(例えば、EQKLISEEDL)(配列番号39)、インフルエンザHAタグ(例えば、YPYDVPDYA)(配列番号40)、AcV5タグ(SWKDASGWS)(配列番号41)、ALFA-タグ(例えば,SRLEEELRRRLTE)(配列番号42)、AviTag(例えば、GLNDIFEAQKIEWHE)(配列番号43)、E-タグ(例えば、GAPVPYPDPLEPR)(配列番号44)、S-タグ(例えば、KETAAAKFERQHMDS)(配列番号45)、Strep-タグ(例えば、Strep-tag II:WSHPQFEK)(配列番号46)、T7タグ(例えば、MASMTGGQQMG)(配列番号47)、Ty1タグ(例えば、EVHTNQDPLD)(配列番号48)、V5タグ(例えば、GKPIPNPLLGLDST)(配列番号49)、VSV-Gタグ(例えば、YTDIEMNRLGK)(配列番号50)、又はXpressタグ(例えば、DLYDDDDK)(SEQ ID NO:51)、をコードするポリヌクレオチド配列を含むことができる。親和性タグ又はレポーター融合物は、翻訳融合物が生成されるように、目的のポリペプチド(例えば、HBV TALEN)のリーディングフレームを親和性タグをコードする遺伝子のリーディングフレームに接合する。融合遺伝子の発現は、目的のポリペプチド(例えば、HBV TALEN)及び親和性タグの両方を含む単一のポリペプチドの翻訳をもたらす。親和性タグが利用されるいくつかの場合において、プロテアーゼ認識部位をコードするDNA配列は、親和性タグ及び目的のポリペプチド(例えば、HBV TALEN)についてのリーディングフレームの間に融合されるだろう。
【0142】
DNAプラスミドなどのベクターはまた、細菌細胞、例えばE.coliにおけるプラスミドの選択及び維持のための細菌複製起点及び抗生物質耐性発現カセットを含むことができる。細菌の複製起点及び抗生物質耐性カセットは、HBV TALENをコードする発現カセットと同じ配向で、又は反対(逆)の配向でベクター中に位置することができる。複製起点(origin of replication、ORI)は、複製が開始される配列であり、プラスミドが細胞内で複製及び生存することを可能にする。本出願における使用に適したORIの例としては、ColE1、pMB1、pUC、pSC101、R6K、及び15Aが挙げられるが、これらに限定されず、好ましくはpUCである。
【0143】
細菌細胞における選択及び維持のための発現カセットは、典型的には、抗生物質耐性遺伝子に作動可能に連結されたプロモータ配列を含む。好ましくは、抗生物質耐性遺伝子に作動可能に連結されたプロモータ配列は、目的のタンパク質(例えば、HBV TALEN)をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモータ配列とは異なる。抗生物質耐性遺伝子はコドン最適化することができ、抗生物質耐性遺伝子の配列組成は通常、細菌、例えばE.coliのコドン使用頻度に合わせて調整される。本開示を考慮して当業者に既知の任意の抗生物質耐性遺伝子が使用され得、カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)、アンピシリン耐性遺伝子(Ampr)、及びテトラサイクリン耐性遺伝子(Tetr)、並びにクロラムフェニコール、ブレオマイシン、スペクチノマイシン、カルベニシリンなどに対する耐性を付与する遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
本出願のHBV TALENをコードするポリヌクレオチド及び発現ベクターは、本開示を考慮して当技術分野において既知の任意の方法によって作製することができる。例えば、HBV TALENをコードするポリヌクレオチドは、当業者に周知である標準的な分子生物学技術、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)などを使用して発現ベクターに導入又は「クローニング」することができる。
【0145】
本明細書中で使用される場合、核酸配列又はポリペプチド配列に関する用語「パーセント同一性」又は「相同性」又は「共有配列同一性」又は「パーセント(%)配列同一性」は、最大パーセント同一性について配列をアラインメントさせ、必要な場合、最大パーセント相同性を達成するためにギャップを導入した後の、既知のポリヌクレオチド又はポリペプチドと同一である候補配列中のヌクレオチド残基又はアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。N末端又はC末端の挿入又は欠失は、相同性に影響を及ぼすと解釈されるべきではなく、約30未満、約20未満、又は約10未満、又は5未満のアミノ酸残基のヌクレオチド又はポリペプチド配列への内部欠失及び/又は挿入は、相同性に影響を及ぼすと解釈されるべきではない。ヌクレオチド又はアミノ酸配列レベルでの相同性又は同一性は、配列類似性検索のために調整されたプログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、及びtblastx(Altschul(1997),Nucleic Acids Res.25,3389-3402、及びKarlin(1990),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,2264-2268)によって使用されるアルゴリズムを使用するBLAST(基本ローカルアラインメント検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool))分析によって決定することができる。BLASTプログラムによって使用されるアプローチは、まず、問い合わせ配列とデータベース配列との間の類似するセグメント(ギャップあり及びギャップなし)を考慮し、次いで、同定される全てのマッチの統計的有意性を評価し、最後に、予め選択された有意性の閾値を満たすマッチのみを要約することである。配列データベースの類似性検索における基本的な問題の考察については、Altschul(1994),Nature Genetics 6,119-129を参照されたい。ヒストグラム、記述、アラインメント、期待値(すなわち、データベース配列に対するマッチを報告するための統計的有意性の閾値)、カットオフ、マトリックス、及びフィルター(低複雑性)のための検索パラメータは、デフォルト設定であり得る。blastp、blastx、tblastn、及びtblastxによって使用されるデフォルトスコアリングマトリックスは、長さが85を超える(ヌクレオチド塩基又はアミノ酸)問い合わせ配列について推奨されているBLOSUM62マトリックスである(Henikoff(1992),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,10915-10919)。
【0146】
ヌクレオチド配列を比較するために設計されたblastnについて、スコアリングマトリックスは、N(すなわち、ミスマッチ残基についてのペナルティスコア)に対するM(すなわち、マッチする残基の対についての報酬スコア)の比によって設定され、M及びNについてのデフォルト値は、それぞれ+5及び-4であり得る。4つのblastnパラメータを以下のように調整することができる:Q=10(ギャップ生成ペナルティ)、R=10(ギャップ伸長ペナルティ)、wink=1(クエリに沿った全てのwink番目の位置でワードヒットを生成する)、及びgapw=16(ギャップ付きアラインメントが生成されるウィンドウ幅を設定する)。アミノ酸配列の比較のための等価なBlastpパラメータ設定は、Q=9、R=2、wink=1、及びgapw=32であり得る。GCGパッケージバージョン10.0で利用可能な配列間のBESTFIT(登録商標)比較は、DNAパラメータGAP=50(ギャップ生成ペナルティ)及びLEN=3(ギャップ伸長ペナルティ)を使用することができ、タンパク質比較における同等の設定は、GAP=8及びLEN=2であり得る。
【0147】
本明細書における核酸又はポリペプチド配列、例えば、HBV TALEN単量体、TALE DNA結合ドメイン、ヌクレアーゼ触媒ドメイン、標的配列、スペーサー配列、調節エレメント、非翻訳領域、エンハンサ配列、プロモータの配列の開示において、元の配列に基づくか又は由来すると考えられる配列も開示される。したがって、開示される配列は、それぞれ、配列番号1~55などの本明細書に記載される任意のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の全長ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列、及びそれらの断片と、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも85%、例えば少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性、又は85~99%、若しくは85~95%、若しくは90~99%、若しくは95~99%、若しくは97~99%、若しくは98~99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド又はポリペプチド配列を含む。本明細書中に開示される配列のいずれかの断片又は部分もまた開示される。配列の断片又は部分は、配列全体の少なくとも5個若しくは少なくとも7個若しくは少なくとも10個若しくは少なくとも20個若しくは少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも125個、150個以上若しくは5~10個若しくは10~12個若しくは10~15個若しくは15~20個若しくは20~40個若しくは20~50個若しくは30~50若しくは30~75個若しくは30~100個のアミノ酸又は核酸残基、又は少なくとも100個若しくは少なくとも200個若しくは少なくとも300個若しくは少なくとも400個若しくは少なくとも500個若しくは少なくとも600個若しくは少なくとも700個若しくは少なくとも800個若しくは少なくとも900個若しくは少なくとも1000個若しくは100~200個若しくは100~500個若しくは100~1000個若しくは500~1000個のアミノ酸又は核酸残基、あるいはこれらの量であるが、配列番号1~55のうちのいずれか又は本明細書中に開示されるいずれかの断片の500個未満若しくは700個未満若しくは1000個未満若しくは2000個未満の連続するアミノ酸又は核酸のうちのいずれかを有する配列を含み得る。例えば、少なくとも1つ又は2つ又は3つ又は4つ又は5つのアミノ酸残基が、挿入及び置換を含む開示された配列のN末端及び/若しくはC末端、かつ/又はその中に挿入されている、そのような配列のバリアント、並びにそのようなバリアントをコードする核酸配列も開示される。意図されるバリアントは、更に又は代わりに、例えば、相同組換え又は部位特異的変異誘発若しくはPCR変異誘発による所定の突然変異を含むバリアント、及び他の種の対応するポリペプチド若しくは核酸(本明細書中に記載されるもの、挿入及び置換を含むポリペプチド若しくは核酸のファミリーの対立遺伝子若しくは他の天然に存在するバリアントを含むがこれらに限定されない);並びに/又はポリペプチドが、挿入及び置換を含む天然に存在するアミノ酸以外の部分(例えば、酵素のような検出可能な部分)での置換、化学的手段、酵素的手段、若しくは他の適切な手段によって共有結合的に改変されている誘導体を含み得る。本明細書に記載される核酸配列は、mRNA配列であり得る。
【0148】
「天然に存在しない」、「組換え」、又は「操作された」核酸分子又はポリヌクレオチド配列という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトの介入によって改変された核酸分子又は天然に存在しないポリヌクレオチド配列を指す。非限定的な例として、組換え核酸分子は、1)例えば、化学的又は酵素的技術を使用して(例えば、化学的核酸合成の使用によって、又は核酸分子の複製、重合、エキソヌクレアーゼ消化、エンドヌクレアーゼ消化、ライゲーション、逆転写、転写、塩基修飾(例えば、メチル化を含む)、又は組換え(相同組換え及び部位特異的組換えを含む)のための酵素の使用によって)、インビトロで合成又は修飾されている、2)天然に結合していない結合ヌクレオチド配列を含む、3)天然に存在する核酸分子配列に対して1つ以上のヌクレオチドを欠くように分子クローニング技術を使用して操作されている、かつ/又は4)天然に存在する核酸配列に対して1つ以上の配列変化又は再配列を有するように分子クローニング技術を使用して操作されている。非限定的な例として、cDNAは、インビトロポリメラーゼ反応(複数可)によって生成された、又はリンカーが結合された、又はクローニングベクター若しくは発現ベクターなどのベクターに組み込まれた任意の核酸分子と同様に、組換えDNA分子である。
【0149】
脂質ベースの製剤
標的細胞への核酸の細胞内送達に基づく療法は、細胞外及び細胞内障壁の両方に直面する。実際、裸の核酸物質は、それらの毒性、血清中での低い安定性、迅速な腎クリアランス、標的細胞による取り込みの減少、食細胞取り込み、及び免疫応答を活性化するそれらの能力、それらの臨床開発を妨げる全ての特徴のために、容易に全身投与することができない。外因性核酸物質(例えば、mRNA)がヒト生物系に入ると、それは細網内皮系(reticuloendothelial system、RES)によって外来病原体として認識され、血管系内又は外の標的細胞に遭遇する機会を有する前に血液循環から除去される。血流中の裸の核酸の半減期はおよそ数分であることが報告されている(Kawabata K,Takakura Y,Hashida M,Pharm Res.1995 Jun;12(6):825-30)。化学修飾及び適切な送達方法は、RESによる取り込みを低減し、核酸を遍在性ヌクレアーゼによる分解から保護することができ、これは核酸ベースの療法の安定性及び有効性を増加させる。更に、RNA又はDNAは、細胞による取り込みに好ましくないアニオン性親水性ポリマーであり、これもまた表面でアニオン性である。したがって、核酸ベースの療法の成功は、遺伝物質を標的細胞に効率的かつ効果的に送達し、最小限の毒性で十分なレベルの発現をインビボで得ることができるビヒクル又はベクターの開発に大きく依存する。
【0150】
更に、標的細胞への内在化の際に、核酸送達ベクターは、エンドソーム捕捉、リソソーム分解、ベクターからの核酸アンパッキング、核膜を横切るトランスロケーション(DNAの場合)、及び細胞質での放出(RNAの場合)を含む細胞内障壁によって攻撃される。したがって、核酸ベースの療法の成功は、十分なレベルの遺伝子発現などの所望の活性を得るために核酸を細胞内部の標的部位に送達するベクターの能力に依存する。
【0151】
いくつかの遺伝子療法は、ウイルス送達ベクター(例えば、AAV)を首尾よく利用することができたが、脂質ベースの製剤は、それらの生体適合性及びそれらの大規模生産の容易さに起因して、RNA及び他の核酸化合物のための最も有望な送達系のうちの1つとしてますます認識されている。脂質ベースの核酸療法における最も顕著な進歩のうちの1つは2018年8月に起こり、パチシラン(Patisiran)(ALN-TTR02)が、Food and Drug Administration(FDA)及びEuropean Commission(EC)の両方によって承認された最初のsiRNA治療薬となった。ALN-TTR02は、いわゆる安定核酸脂質粒子(Stable Nucleic Acid Lipid Particle、SNALP)トランスフェクション技術に基づくsiRNA製剤である。パチシランの成功にもかかわらず、脂質製剤を介したmRNAを含む核酸治療薬の送達は、依然として開発中である。
【0152】
いくつかの当技術分野で認識されている核酸治療薬のための脂質製剤化送達ビヒクルとしては、様々な実施形態によれば、ポリエチレンイミン(polyethyleneimine、PEI)などのポリマーベースの担体、リピドイド含有製剤、脂質ナノ粒子及びリポソーム、ナノリポソーム、セラミド含有ナノリポソーム、多小胞リポソーム、プロテオリポソーム、天然及び合成由来エキソソームの両方、天然、合成及び半合成ラメラ体、ナノ微粒子、ミセル、並びにエマルジョンが挙げられる。
【0153】
これらの脂質製剤は、その構造及び組成が異なり、急速に発展している分野で予想され得るように、いくつかの異なる用語が、単一の種類の送達ビヒクルを説明するために当該分野で使用されている。同時に、脂質製剤に関する用語は、科学文献全体を通して頻繁に混同されており、この一貫性のない使用は、脂質製剤に関するいくつかの用語の正確な意味について混乱を引き起こしている。いくつかの潜在的な脂質製剤の中で、リポソーム、カチオン性リポソーム、及び脂質ナノ粒子は、本開示の目的のために本明細書において具体的に詳細に記載され、定義される。
【0154】
脂質-mRNA製剤
本明細書に開示されるmRNA、その薬学的に許容される塩、及び/又はHBV TALENをコードする核酸の組み合わせは、脂質製剤(すなわち、脂質ベースの送達ビヒクル)に組み込むことができる。
【0155】
本開示との関連において、脂質ベースの送達ビヒクルは、典型的には、所望のmRNA又はmRNA分子の組み合わせを標的細胞又は組織に輸送する役割を果たす。脂質ベースの送達ビヒクルは、当該分野において既知の任意の好適な脂質ベースの送達ビヒクルであり得る。いくつかの実施形態において、脂質ベースの送達ビヒクルは、本開示のmRNA又はmRNA分子の組み合わせを含有するリポソーム、カチオン性リポソーム、又は脂質ナノ粒子である。いくつかの実施形態において、脂質ベースの送達ビヒクルは、ナノ粒子又は脂質分子の二重層、及び本開示のmRNA又はmRNA分子の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、脂質二重層は、好ましくは、中性脂質又はポリマーを更に含む。「中性脂質」という用語は、選択されたpHで非荷電又は中性双性イオン形態のいずれかで存在する脂質種を意味する。生理学的pHにおいて、このような脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、及びジアシルグリセロールが挙げられる。いくつかの実施形態において、脂質製剤は、好ましくは液体媒体を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、好ましくは、核酸を更に封入する。いくつかの実施形態において、脂質製剤は、好ましくは、核酸及び中性脂質又はポリマーを更に含む。いくつかの実施形態において、脂質製剤は、好ましくは核酸を封入する。
【0156】
本明細書は、脂質製剤内に封入された1つ以上の治療用mRNA分子を含む脂質製剤を提供する。いくつかの実施形態において、脂質製剤はリポソームを含む。いくつかの実施形態において、脂質製剤はカチオン性リポソームを含む。いくつかの実施形態において、脂質製剤は脂質ナノ粒子を含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、mRNA又はmRNA分子の組み合わせは、脂質製剤中のmRNA又はmRNA分子の組み合わせが水溶液中でヌクレアーゼ分解に対して耐性であるように、脂質製剤の脂質部分内に完全に封入されている。「完全に封入された」という用語は、遊離RNAを有意に分解する血清又はヌクレアーゼアッセイへの曝露後に、核酸-脂質粒子中の核酸(例えば、mRNA)が有意に分解されないことを意味する。完全に封入されている場合、通常100%の遊離核酸を分解する処理において、好ましくは、粒子中の核酸の25%未満が分解され、より好ましくは、粒子中の核酸の10%未満が、最も好ましくは5%未満が分解される。本明細書で使用される場合、「完全に封入された」はまた、核酸-脂質粒子がインビボ投与時にそれらの成分部分に急速に分解しないことを意味する。他の実施形態において、本明細書に記載される脂質製剤は、ヒトなどの哺乳類に対して実質的に非毒性である。いくつかの実施形態において、mRNA分子の組み合わせは、同じ脂質ナノ粒子内に封入される。いくつかの実施形態において、mRNA分子の組み合わせ中の各mRNA分子は、個々の脂質ナノ粒子に独立して封入される。
【0158】
本開示の脂質製剤はまた、典型的には、約1:1~約100:1、約1:1~約50:1、約2:1~約45:1、約3:1~約40:1、約5:1~約38:1、又は約6:1~約40:1、又は約7:1~約35:1、又は約8:1~約30:1、又は約10:1~約25:1、又は約8:1~約12:1、又は約13:1~約17:1、又は約18:1~約24:1、又は約20:1~約30:1の総脂質:RNA比(質量/質量比)を有する。いくつかの好ましい実施形態において、総脂質:RNA比(質量/質量比)は、約10:1~約25:1である。比は、端点を含む、記載された範囲内の任意の値又はサブ値であり得る。
【0159】
本開示の脂質製剤は、典型的には、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、又は約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、約140nm、約145nm、又は約150nmの平均直径を有し、実質的に非毒性である。直径は、端点を含む、記載された範囲内の任意の値又はサブ値であり得る。加えて、核酸は、本開示の脂質ナノ粒子中に存在する場合、水溶液中でヌクレアーゼによる分解に対して耐性である。
【0160】
好ましい実施形態において、脂質製剤は、mRNA又はmRNA分子の組み合わせ、カチオン性脂質(例えば、本明細書に記載される1つ以上のカチオン性脂質又はその塩)、リン脂質、及び粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質(例えば、1つ以上のPEG-脂質コンジュゲート)を含む。脂質製剤はコレステロールも含むことができる。「脂質コンジュゲート」という用語は、脂質粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質を意味する。そのような脂質コンジュゲートとしては、例えば、ジアルキルオキシプロピルにカップリングしたPEG(例えば、PEG-DAAコンジュゲート)、ジアシルグリセロールにカップリングしたPEG(例えば、PEG-DAGコンジュゲート)、コレステロールにカップリングしたPEG、ホスファチジルエタノールアミンにカップリングしたPEG、及びセラミドにカップリングしたPEGなどのPEG-脂質コンジュゲート、カチオン性PEG脂質、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミドオリゴマー、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。PEG又はPOZは、脂質に直接コンジュゲートされ得るか、又はリンカー部分を介して脂質に連結され得る。例えば、非エステル含有リンカー部分及びエステル含有リンカー部分を含む、PEG又はPOZを脂質にカップリングするのに適した任意のリンカー部分を使用することができる。特定の好ましい実施形態において、非エステル含有リンカー部分(例えば、アミド又はカルバメート)が使用される。
【0161】
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」という用語は、正の親水性頭部基と、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の疎水性(すなわち、無極性基を有する)脂肪酸又は脂肪アルキル鎖と、これら2つのドメイン間のコネクターと、を有する両親媒性脂質及びそれらの塩を指す。イオン化可能又はプロトン化可能なカチオン性脂質は、典型的には、そのpKa未満のpHでプロトン化され(すなわち、正に荷電され)、pKaを超えるpHで実質的に中性である。好ましいイオン化可能なカチオン性脂質は、典型的には約7.4である生理学的pHよりも低いpKaを有するものである。本開示のカチオン性脂質は、滴定可能なカチオン性脂質とも呼ばれ得る。カチオン性脂質は、プロトン化可能な三級アミン(例えば、pH滴定可能な)頭部基を有する「アミノ脂質」であり得る。いくつかのアミノの例示的なアミノ脂質は、C18アルキル鎖を含むことができ、各アルキル鎖は、独立して、0~3個の(例えば、0、1、2、又は3個の)二重結合、及び頭部基とアルキル鎖との間のエーテル、エステル、又はケタール結合を有する。そのような陽イオン性脂質としては、DSDMA、DODMA、DLinDMA、DLenDMA、γ-DLenDMA、DLin-K-DMA、DLin-K-C2-DMA(DLin-C2K-DMA、XTC2、及びC2Kとしても知られる)、DLin-K-C3-DMA、DLin-K-C4-DMA、DLen-C2K-DMA、y-DLen-C2K-DMA、DLin-M-C2-DMA(MC2としても知られる)、DLin-M-C3-DMA(MC3としても知られる)、及び(DLin-MP-DMA)(1-Bl 1としても知られる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
本明細書で使用される場合、「アニオン性脂質」という用語は、生理学的pHで負に荷電している脂質を指す。これらの脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオールホスファチジルグリセロール(palmitoyloleyolphosphatidylglycerol、POPG)、及び中性脂質に接合した他のアニオン性修飾基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
核酸-脂質製剤において、mRNA又はmRNA分子の組み合わせは、製剤の脂質部分内に完全に封入されていてもよく、それによって核酸をヌクレアーゼ分解から保護する。好ましい実施形態において、mRNA又はmRNA分子の組み合わせを含む脂質製剤は、脂質製剤の脂質部分内に完全に封入され、それによって核酸をヌクレアーゼ分解から保護する。特定の事例では、脂質製剤中のmRNA又はmRNA分子の組み合わせは、37℃で少なくとも20、30、45、又は60分間ヌクレアーゼへ粒子を曝露した後にも実質的に分解されない。特定の他の事例では、脂質製剤中のmRNA又はmRNA分子の組み合わせは、37℃で少なくとも30、45、若しくは60分間、又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、若しくは36時間血清中で製剤をインキュベーションした後にも実質的に分解されない。他の実施形態において、mRNA又はmRNA分子の組み合わせは、製剤の脂質部分と複合体化される。
【0164】
核酸との関連において、完全な封入は、膜不透過性蛍光色素排除アッセイを実行することによって判定され得、このアッセイは、核酸と会合した場合に増強された蛍光を有する色素を使用する。封入は、色素を脂質製剤に添加し、得られた蛍光を測定し、それを少量の非イオン性界面活性剤の添加時に観察された蛍光と比較することによって判定される。脂質層の界面活性剤が媒介する破壊は、封入された核酸を放出させ、それが膜不透過性色素と相互作用することを可能にする。核酸封入は、E=(I0-I)/I0として計算することができ、式中、I及びI0は、界面活性剤の添加前後の蛍光強度を指す。
【0165】
他の実施形態において、本開示は、複数の核酸-リポソーム、核酸-カチオン性リポソーム、又は核酸-脂質ナノ粒子を含む核酸-脂質組成物を提供する。いくつかの実施形態において、核酸-脂質組成物は、複数のmRNA-リポソームを含む。いくつかの実施形態において、核酸-脂質組成物は、複数のmRNA-カチオン性リポソームを含む。いくつかの実施形態において、核酸-脂質組成物は、複数のmRNA-脂質ナノ粒子を含む。
【0166】
いくつかの実施形態において、脂質製剤は、粒子の約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約30%~約95%、約40%~約95%、約50%~約95%、約60%~約95%、約70%~約95%、約80%~約95%、約85%~約95%、約90%~約95%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、又は少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%若しくは約99%(又はその任意の分数若しくはその中の範囲)がその中に封入されたmRNA又はmRNA分子の組み合わせを有するような、製剤の脂質部分内に完全に封入されたmRNA又はmRNA分子の組み合わせを含む。量は、端点を含む、記載された範囲内の任意の値又はサブ値であり得る。
【0167】
脂質製剤の意図される用途に応じて、成分の割合を変えることができ、特定の製剤の送達効率は、当技術分野において既知のアッセイを使用して測定することができる。
【0168】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される発現可能なポリヌクレオチド及びmRNA構築物は、脂質製剤化される。脂質製剤は、好ましくは、リポソーム、カチオン性リポソーム、及び脂質ナノ粒子から選択されるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態において、脂質製剤は、
(a)本開示のmRNA又はmRNA分子の組み合わせと、
(b)カチオン性脂質と、
(c)凝集低減剤(例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)脂質又はPEG修飾脂質)と、
(d)任意選択的に、非カチオン性脂質(中性脂質など)と、
(e)任意選択的に、ステロールと、を含む、カチオン性リポソーム又は脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)である。
【0169】
好ましくは、mRNA又はmRNA分子の組み合わせを封入する脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質と、アニオン性脂質、双性イオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質、リン脂質、糖脂質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの他の脂質と、を含む。
【0170】
いくつかの実施形態において、カチオン性脂質は、イオン化可能なカチオン性脂質である。一実施形態において、脂質ナノ粒子製剤は、(i)少なくとも1種のカチオン性脂質と、(ii)ヘルパー脂質と、(iii)ステロール(例えば、コレステロール)と、(iv)約20%~約40%のイオン化可能なカチオン性脂質:約25%~約45%のヘルパー脂質:約25%~約45%のステロールのモル比のPEG-脂質と、約0.5~5%のPEG-脂質と、からなる。例示的なカチオン性脂質(イオン化可能なカチオン性脂質を含む)、ヘルパー脂質(例えば、中性脂質)、ステロール、及びリガンド含有脂質(例えば、PEG-脂質)は、本明細書において以下に記載される。
【0171】
特定の脂質及びそれらの相対%組成物の選択は、所望の治療効果、意図されるインビボ送達標的、並びに計画された投薬レジメン及び頻度を含むいくつかの因子に依存する。一般に、高い効力(すなわち、ノックダウン活性又は翻訳効率などの治療効果)及び迅速な組織クリアランスをもたらす生分解性の両方に対応する脂質が最も好ましい。しかしながら、生分解性は、対象内への1回又は2回のみの投与が意図される製剤についてはあまり重要ではない場合がある。更に、脂質組成物は、脂質製剤がインビボ投与及び意図された標的へのその移動の間はその形態を保存するが、その後、標的細胞への取り込みの際に活性薬剤を放出することができるように、注意深い操作を必要とし得る。したがって、いくつかの製剤は、典型的には、脂質の最良の可能なモル比並びに有効成分に対する総脂質の比での脂質の最良の可能な組み合わせを見出すために評価される必要がある。
【0172】
好適な脂質成分及び脂質ナノ粒子を製造する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、PCT/US2020/023442、U.S.8,058,069、U.S.8,822,668、U.S.9,738,593、U.S.9,139,554、PCT/US2014/066242、PCT/US2015/030218、PCT/2017/015886、及びPCT/US2017/067756(これらの内容は参照により組み込まれる)に記載されている。
【0173】
カチオン性脂質
脂質製剤は、好ましくは、カチオン性リポソーム又は脂質ナノ粒子を形成するのに適したカチオン性脂質を含む。カチオン性脂質は、負に荷電した膜に結合して取り込みを誘導することができるので、核酸送達について広く研究されている。一般に、カチオン性脂質は、正の親水性頭部基と、2つ(又はそれ以上)の親油性テール、又はステロイド部分と、これらの2つのドメイン間のコネクターと、を含有する両親媒性物質である。好ましくは、カチオン性脂質は、ほぼ生理学的pHで正味の正電荷を有する。カチオン性リポソームは、伝統的に、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴ、及びsiRNA/小ヘアピンRNA-shRNAを含むオリゴヌクレオチドのための最も一般的に使用される非ウイルス送達系であった。DOTAP、(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)及びDOTMA(N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチル-アンモニウムメチルスルフェート)などのカチオン性脂質は、静電相互作用によって負に荷電した核酸と複合体又はリポプレックスを形成することができ、高いインビトロトランスフェクション効率を提供する。
【0174】
本開示の脂質製剤において、カチオン性脂質は、例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロマイド(DDAB)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロライド(DOTAP)(N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド及び1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロライド塩としても知られる)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-y-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレイルオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロライド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロライド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、若しくは3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)若しくはそれらの類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,3 1-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(C12-200)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin)-K-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28 31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-M-C3-DMA)、3-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(MC3エーテル)、4-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルブタン-1-アミン(MC4エーテル)、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。他のカチオン性脂質としては、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロマイド(DDAB)、3P-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Choi)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DMRIE)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(XTC)が挙げられるが、これらに限定されない。更に、カチオン性脂質の市販の調製物(例えば、LIPOFECTIN(GIBCO/BRLから入手可能なDOTMA及びDOPEを含む)、及びLipofectamine(GIBCO/BRLから入手可能なDOSPA及びDOPEを含む))が使用され得る。
【0175】
他の好適なカチオン性脂質は、国際公開第09/086558号、同第09/127060号、同第10/048536号、同第10/054406号、同第10/088537号、同第10/129709号、及び同第2011/153493号;米国特許公開第2011/0256175号、同第2012/0128760号、及び同第2012/0027803号;米国特許第8,158,601号;並びにLoveet al.,PNAS,107(5),1864-69,2010(これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0176】
他の好適なカチオン性脂質としては、代替脂肪酸基及び他のジアルキルアミノ基を有するものが挙げられ、アルキル置換基が異なるもの(例えば、N-エチル-N-メチルアミノ-、及びN-プロピル-N-エチルアミノ-)が挙げられる。これらの脂質は、アミノ脂質と呼ばれるカチオン性脂質のサブカテゴリーの一部である。本明細書に記載される脂質製剤のいくつかの実施形態において、カチオン性脂質はアミノ脂質である。一般に、飽和アシル鎖が少ないアミノ脂質は、特に複合体が濾過滅菌の目的のために約0.3ミクロン未満にサイジングされる必要がある場合、より容易にサイジングされる。C14~C22の範囲の炭素鎖長を有する不飽和脂肪酸を含有するアミノ脂質を使用してもよい。他の足場もまた、アミノ脂質のアミノ基及び脂肪酸又は脂肪アルキル部分を分離するために使用され得る。
【0177】
いくつかの実施形態において、脂質製剤は、特許出願第PCT/EP2017/064066号による式Iを有するカチオン性脂質を含む。これに関連して、PCT/EP2017/064066の開示も参照により本明細書に組み込まれる。
【0178】
いくつかの実施形態において、本開示のアミノ又はカチオン性脂質はイオン化可能であり、脂質が生理学的pH(例えば、pH7.4)以下のpHで正に荷電し、第2のpH、好ましくは生理学的pH以上で中性であるように、少なくとも1つのプロトン化可能基又は脱プロトン化可能基を有する。もちろん、pHの関数としてのプロトンの付加又は除去は平衡プロセスであり、荷電又は中性脂質への言及は優勢な種の性質を指し、脂質の全てが荷電又は中性形態で存在することを必要としないことが理解されるであろう。2つ以上のプロトン化可能基若しくは脱プロトン化可能基を有する脂質、又は双性イオン性である脂質は、本開示における使用から除外されない。特定の実施形態において、プロトン化可能な脂質は、約4~約11の範囲のプロトン化可能な基のpKaを有する。いくつかの実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質は、約5~約7のpKaを有する。いくつかの実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質のpKaは、約6~約7である。
【0179】
いくつかの実施形態において、脂質製剤は、式Iのイオン化可能なカチオン性脂質:
【0180】
【化6】
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含み、式中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖C
1~C
31アルキル、C
2~C
31アルケニル又はC
2~C
31アルキニル及びコレステリルからなる群から選択され、L
5及びL
6は、各々独立して、直鎖C
1~C
20アルキル及びC
2~C
20アルケニルからなる群から選択され、X
5は、-C(O)O-であり、それによって-C(O)O-R
6が形成されるか、又は-OC(O)-であり、それによって-OC(O)-R
6が形成され、X
6は、-C(O)Oであり、それによって-C(O)O-R
5が形成されるか、又は-OC(O)-であり、それによって-OC(O)-R
5が形成され、X
7は、S又はOであり、L
7は、存在しないか、又は低級アルキルであり、R
4は、直鎖又は分岐鎖C
1~C
6アルキルであり、R
7及びR
8は、各々独立して、水素及び直鎖又は分岐鎖C
1~C
6アルキルからなる群から選択される。
【0181】
いくつかの実施形態において、X7はSである。
【0182】
いくつかの実施形態において、X5は-C(O)O-であり、それによって-C(O)O-R6が形成され、X6は-C(O)Oであり、それによって-C(O)O-R5が形成される。
【0183】
いくつかの実施形態において、R7及びR8は、各々独立して、メチル、エチル及びイソプロピルからなる群から選択される。
【0184】
いくつかの実施形態において、L5及びL6は、各々独立して、C1~C10アルキルである。いくつかの実施形態において、L5はC1~C3アルキルであり、L6はC1~C5アルキルである。いくつかの実施形態において、L6はC1~C2アルキルである。いくつかの実施形態において、L5及びL6はそれぞれ、直鎖C7アルキルである。いくつかの実施形態において、L5及びL6はそれぞれ、直鎖C9アルキルである。
【0185】
いくつかの実施形態において、R5及びR6は各々独立してアルケニルである。いくつかの実施形態において、R6はアルケニルである。いくつかの実施形態において、R6は、C2~C9アルケニルである。いくつかの実施形態において、アルケニルは、単一の二重結合を含む。いくつかの実施形態において、R5及びR6はそれぞれアルキルである。いくつかの実施形態において、R5は分岐アルキルである。いくつかの実施形態において、R5及びR6は、各々独立して、C9アルキル、C9アルケニル及びC9アルキニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、R5及びR6は、各々独立して、C11アルキル、C11アルケニル及びC11アルキニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、R5及びR6は、各々独立して、C7アルキル、C7アルケニル及びC7アルキニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、R5は、-CH((CH2pCH3)2又は-CH((CH2)pCH3)((CH2)p-1CH3)であり、式中、pは4~8である。いくつかの実施形態において、pは5であり、L5はC1~C3アルキルである。いくつかの実施形態において、pは6であり、L5はC3アルキルである。いくつかの実施形態において、pは7である。いくつかの実施形態において、pは8であり、L5はC1~C3アルキルである。いくつかの実施形態において、R5は、-CH((CH2)pCH3)((CH2)p-1CH3)からなり、式中、pは7又は8である。
【0186】
いくつかの実施形態において、R4はエチレン又はプロピレンである。いくつかの実施形態において、R4はn-プロピレン又はイソブチレンである。
【0187】
いくつかの実施形態において、L7は存在せず、R4はエチレンであり、X7はSであり、R7及びR8はそれぞれメチルである。いくつかの実施形態において、L7は存在せず、R4はn-プロピレンであり、X7はSであり、R7及びR8はそれぞれメチルである。いくつかの実施形態において、L7は存在せず、R4はエチレンであり、X7はSであり、R7及びR8はそれぞれエチルである。
【0188】
いくつかの実施形態において、X7はSであり、X5は-C(O)O-であり、それによって-C(O)O-R6が形成され、X6-C(O)Oであり、それによって-C(O)O-R5が形成され、L5及びL6は、各々独立して、直鎖状C3~C7アルキルであり、L7は存在せず、R5は-CH((CH2)pCH3)2であり、R6はC7~C12アルケニルである。いくつかの更なる実施形態において、pは6であり、R6はC9アルケニルである。
【0189】
いくつかの実施形態において、脂質製剤は、
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【化14】
からなる群から選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含む。
【0198】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される任意の1つ以上の脂質は、明示的に除外され得る。
【0199】
ヘルパー脂質及びステロール
本開示のmRNA-脂質製剤は、ヘルパー脂質を含むことができ、ヘルパー脂質は、中性脂質、中性ヘルパー脂質、非カチオン性脂質、非カチオン性ヘルパー脂質、アニオン性脂質、アニオン性ヘルパー脂質、又は双性イオン性脂質と呼ぶことができる。脂質製剤、特にカチオン性リポソーム及び脂質ナノ粒子は、ヘルパー脂質が製剤中に存在する場合、細胞取り込みを増加させることが見出されている。(Curr.Drug Metab.2014;15(9)882-92)。例えば、いくつかの研究は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジ-オレオイル-ホスファチジル-エタノアラミン(DOPE)及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)のような中性及び双性イオン性脂質は、カチオン性脂質よりも融合性であり(すなわち、融合を容易にする)、脂質-核酸複合体の多形特性に影響を及ぼして、ラメラ相から六方晶相への転移を促進し、したがって、細胞膜の融合及び破壊を誘導することができることを示している。(Nanomedicine(Lond).2014 Jan;9(1):105-20)。更に、ヘルパー脂質の使用は、毒性及び免疫原性のような多くの優勢なカチオン性脂質を使用することからの任意の潜在的な有害な影響を低減するのに役立ち得る。
【0200】
本開示の脂質製剤に適した非カチオン性脂質の非限定的な例としては、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレイオール-ホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びそれらの混合物などのリン脂質が挙げられる。他のジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルエタノールアミンリン脂質も使用することができる。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、C10~C24炭素鎖を有する脂肪酸、例えばラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、又はオレオイルに由来するアシル基である。
【0201】
非カチオン性脂質の更なる例としては、コレステロールなどのステロール及びその誘導体が挙げられる。1つの研究は、ヘルパー脂質として、コレステロールは、核酸と接触する脂質層の電荷の間隔を増加させ、電荷分布を核酸の電荷分布により密接に一致させると結論付けた。(J.R.Soc.Interface.2012Mar7;9(68):548-561)。コレステロール誘導体の非限定的な例としては、5α-コレスタノール、5α-コプロスタノール、コレステリル-(2’-ヒドロキシ)-エチルエーテル、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル、及び6-ケトコレスタノールなどの極性類似体、5α-コレスタン、コレステノン、5α-コレスタノン、5α-コレスタノン、及びコレステリルデカノエートなどの非極性類似体、並びにそれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、コレステロール誘導体は、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテルなどの極性類似体である。
【0202】
いくつかの実施形態において、脂質製剤中に存在するヘルパー脂質は、1つ以上のリン脂質及びコレステロール又はその誘導体の混合物を含むか、又はそれからなる。他の実施形態において、脂質製剤中に存在するヘルパー脂質は、1つ以上のリン脂質、例えばコレステロールを含まない脂質製剤を含むか、又はそれからなる。更に他の実施形態において、脂質製剤中に存在するヘルパー脂質は、コレステロール又はその誘導体、例えばリン脂質を含まない脂質製剤を含むか、又はそれからなる。
【0203】
ヘルパー脂質の他の例としては、非リン含有脂質、例えばステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、パルミチン酸アセチル、リシノール酸グリセロール、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリルポリマー、トリエタノールアミン-ラウリルスルフェート、アルキル-アリールスルフェートポリエチルオキシル化脂肪酸アミド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイド、セラミド、及びスフィンゴミエリンが挙げられる。
【0204】
いくつかの実施形態において、ヘルパー脂質は、脂質製剤中に存在する総脂質の約20モル%~約50モル%、約22モル%~約48モル%、約24モル%~約46モル%、約25モル%~約44モル%、約26モル%~約42モル%、約27モル%~約41モル%、約28モル%~約40モル%、又は約29モル%、約30モル%、約31モル%、約32モル%、約33モル%、約34モル%、約35モル%、約36モル%、約37モル%、約38モル%、若しくは約39モル%(又はその任意の分数若しくはその中の範囲)を構成する。
【0205】
いくつかの実施形態において、製剤中のヘルパー脂質の合計は、2つ以上のヘルパー脂質を含み、ヘルパー脂質の総量は、脂質製剤中に存在する総脂質の約20モル%~約50モル%、約22モル%~約48モル%、約24モル%~約46モル%、約25モル%~約44モル%、約26モル%~約42モル%、約27モル%~約41モル%、約28モル%~約40モル%、又は約29モル%、約30モル%、約31モル%、約32モル%、約33モル%、約34モル%、約35モル%、約36モル%、約37モル%、約38モル%、若しくは約39モル%(又はその任意の分数若しくはその中の範囲)を構成する。いくつかの実施形態において、ヘルパー脂質は、DSPC及びDOTAPの組み合わせである。いくつかの実施形態において、ヘルパー脂質は、DSPC及びDOTMAの組み合わせである。
【0206】
脂質製剤中のコレステロール又はコレステロール誘導体は、脂質製剤中に存在する総脂質の最大約40モル%、約45モル%、約50モル%、約55モル%、又は約60モル%を構成し得る。いくつかの実施形態において、コレステロール又はコレステロール誘導体は、脂質製剤中に存在する総脂質の約15モル%~約45モル%、約20モル%~約40モル%、約30モル%~約40モル%、又は約35モル%、約36モル%、約37モル%、約38モル%、約39モル%、又は約40モル%を構成する。
【0207】
脂質製剤中に存在するヘルパー脂質のパーセンテージは目標量であり、製剤中に存在するヘルパー脂質の実際の量は、例えば、±5モル%変動し得る。
【0208】
カチオン性脂質化合物又はイオン化可能なカチオン性脂質化合物を含有する脂質製剤は、モル基準で、約20~40%のカチオン性脂質化合物、約25~40%のコレステロール、約25~50%のヘルパー脂質、及び約0.5~5%のポリエチレングリコール(PEG)脂質であってもよく、パーセントは、製剤中に存在する総脂質のパーセントである。いくつかの実施形態において、組成物は、約22~30%のカチオン性脂質化合物、約30~40%のコレステロール、約30~40%のヘルパー脂質、及び約0.5~3%のPEG-脂質であり、パーセントは、製剤中に存在する総脂質のパーセントである。
【0209】
脂質コンジュゲート
本明細書に記載される脂質製剤は、脂質コンジュゲートを更に含み得る。コンジュゲート脂質は、粒子の凝集を防止するのに有用である。好適なコンジュゲート脂質としては、PEG-脂質コンジュゲート、カチオン性ポリマー-脂質コンジュゲート、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。更に、脂質送達ビヒクルは、リガンド(例えば、抗体、ペプチド、及び炭水化物)をその表面又は結合したPEG鎖の末端に結合させることによって、特異的標的化のために使用することができる(Front.Pharmacol.2015Dec1;6:286)。
【0210】
好ましい実施形態において、脂質コンジュゲートはPEG-脂質である。ポリエチレングリコール(PEG)をコーティング又は表面リガンドとして脂質製剤中に含めること(PEG化と呼ばれる技術)は、ナノ粒子を免疫系から保護し、それらがRES取り込みから逃れるのを助ける(Nanomedicine(Lond).2011Jun;6(4):715-28)。PEG化は、物理的、化学的、及び生物学的機構を介して脂質製剤及びそれらのペイロードを安定化させるために広く使用されている。界面活性剤様PEG脂質(例えば、PEG-DSPE)は、脂質製剤に入って、表面上に水和層及び立体障壁を形成することができる。PEG化の程度に基づいて、表面層は、一般に、ブラシ様層及びマッシュルーム様層の2つのタイプに分けることができる。PEG-DSPE安定化製剤では、PEGは、低度のPEG化(通常5モル%未満)でマッシュルーム型立体構造をとり、PEG-DSPEの含有量が特定のレベルを超えて増加するとブラシ型立体構造にシフトするだろう(J.Nanomaterials.2011;2011:12)。PEG化の増加は、脂質製剤の循環半減期の有意な増加をもたらすことが示されている(Annu.Rev.Biomed.Eng.2011Aug15;13:507-30;J.Control Release.2010Aug3;145(3):178-81)。
【0211】
PEG-脂質の好適な例としては、ジアルキルオキシプロピルにカップリングしたPEG(PEG-DAA)、ジアシルグリセロールにカップリングしたPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質にカップリングしたPEG(PEG-PE)、セラミドにカップリングしたPEG、コレステロール又はその誘導体にカップリングしたPEG、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0212】
PEGは、2つの末端ヒドロキシル基を有するエチレンPEG繰り返し単位の直鎖水溶性ポリマーである。PEGは、それらの分子量によって分類され、以下を含む:モノメトキシポリエチレングリコール(MePEG-OH)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシネート(MePEG-S)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルスクシネート(MePEG-S-NHS)、モノメトキシポリエチレングリコール-アミン(MePEG-NH2)、モノメトキシポリエチレングリコール-トレシレート(MePEG-TRES)、モノメトキシポリエチレングリコール-イミダゾリル-カルボニル(MePEG-IM)、並びに末端メトキシ基の代わりに末端ヒドロキシル基を含有するそのような化合物(例えば、HO-PEG-S、HO-PEG-S-NHS、HO-PEG-NH2)。
【0213】
本明細書に記載されるPEG-脂質コンジュゲートのPEG部分は、約550ダルトン~約10,000ダルトンの範囲の平均分子量を含み得る。特定の事例において、PEG部分は、約750ダルトン~約5,000ダルトン(例えば、約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約2,000ダルトン)の平均分子量を有する。好ましい実施形態において、PEG部分は、約2,000ダルトン又は約750ダルトンの平均分子量を有する。平均分子量は、端点を含む、記載された範囲内の任意の値又はサブ値であり得る。
【0214】
特定の事例において、PEG単量体は、アルキル、アルコキシ、アシル、又はアリール基によって任意選択的に置換され得る。PEGは、脂質に直接コンジュゲートされ得るか、又はリンカー部分を介して脂質に連結され得る。例えば、非エステル含有リンカー部分及びエステル含有リンカー部分を含む、PEGを脂質にカップリングするのに適した任意のリンカー部分を使用することができる。好ましい実施形態において、リンカー部分は非エステル含有リンカー部分である。好適な非エステル含有リンカー部分としては、アミド(-C(O)NH-)、アミノ(-NR-)、カルボニル(-C(O)-)、カルバメート(-NHC(O)O-)、尿素(-NHC(O)NH-)、ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、スクシニル(-(O)CCH2CH2C(O)-)、スクシンアミジル(-NHC(O)CH2CH2C(O)NH-)、エーテル、並びにそれらの組み合わせ(例えば、カルバメートリンカー部分及びアミドリンカー部分の両方を含むリンカー)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、カルバメートリンカーは、PEGを脂質にカップリングするために使用される。
【0215】
他の実施形態において、エステル含有リンカー部分は、PEGを脂質にカップリングさせるために使用される。好適なエステル含有リンカー部分としては、例えば、カーボネート(-OC(O)O-)、スクシノイル、リン酸エステル(-O-(O)POH-O-)、スルホン酸エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0216】
様々な鎖長及び飽和度の様々なアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンをPEGにコンジュゲートして、脂質コンジュゲートを形成することができる。このようなホスファチジルエタノールアミンは、市販されているか、又は当業者に既知の従来の技術を使用して単離若しくは合成され得る。C10~C20の範囲の炭素鎖長を有する飽和又は不飽和脂肪酸を含有するホスファチジルエタノールアミンが好ましい。モノ又はジ不飽和脂肪酸及び飽和及び不飽和脂肪酸の混合物を有するホスファチジルエタノールアミンも使用することができる。好適なホスファチジルエタノールアミンとしては、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(dimyristoyl- phosphatidylethanolamine、DMPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoyl-phosphatidylethanolamine、DPPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(dioleoyl-phosphatidylethanolamine、DOPE)、及びジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(distearoyl-phosphatidylethanolamine、DSPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0217】
いくつかの実施形態において、PEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)コンジュゲート、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)コンジュゲート、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)コンジュゲート、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)コンジュゲート、又はPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)コンジュゲートである。これらの実施形態において、PEGは、好ましくは、約750~約2,000ダルトンの平均分子量を有する。特定の実施形態において、PEGの末端ヒドロキシル基は、メチル基で置換される。
【0218】
上記に加えて、他の親水性ポリマーをPEGの代わりに使用することができる。PEGの代わりに使用され得る好適なポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル、メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、及びポリジメチルアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、並びに誘導体化セルロース(例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0219】
いくつかの実施形態において、脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)は、脂質製剤中に存在する総脂質の約0.1モル%~約2モル%、約0.5モル%~約2モル%、約1モル%~約2モル%、約0.6モル%~約1.9モル%、約0.7モル%~約1.8モル%、約0.8モル%~約1.7モル%、約0.9モル%~約1.6モル%、約0.9モル%~約1.8モル%、約1モル%~約1.8モル%、約1モル%~約1.7モル%、約1.2モル%~約1.8モル%、約1.2モル%~約1.7モル%、約1.3モル%~約1.6モル%、若しくは約1.4モル%~約1.6モル%(又はその任意の分数若しくはその中の範囲)を構成する。他の実施形態において、脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)は、脂質製剤中に存在する総脂質の約0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、若しくは5%(又はその任意の分数若しくはその中の範囲)を含む。量は、端点を含む、記載された範囲内の任意の値又はサブ値であり得る。
【0220】
いくつかの好ましい実施形態において、PEG-脂質はPEG550-PEである。いくつかの好ましい実施形態において、PEG-脂質はPEG750-PEである。いくつかの好ましい実施形態において、PEG-脂質はPEG2000-DMGである。
【0221】
本開示の脂質製剤中に存在する脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)のパーセンテージは、目標量であり、製剤中に存在する脂質コンジュゲートの実際の量は、例えば、±0.5モル%変動し得る。当業者は、脂質コンジュゲートの濃度が、使用される脂質コンジュゲート及び脂質製剤が融合性になる速度に依存して変化し得ることを理解するであろう。
【0222】
脂質製剤の細胞取り込みのための作用機序
核酸の細胞内送達のための脂質製剤、特にリポソーム、カチオン性リポソーム、及び脂質ナノ粒子は、脂質送達ビヒクルの内容物が標的細胞の細胞質ゾルに送達される標的細胞のエンドサイトーシス機構を利用して標的細胞に浸透することによる細胞取り込みのために設計される。(Nucleic Acid Therapeutics,28(3):146-157,2018)。具体的には、本明細書に記載される肝細胞を標的とするmRNA-脂質製剤の場合、mRNA-脂質製剤は、受容体媒介エンドサイトーシスを通じて肝細胞に入る。エンドサイトーシスの前に、脂質送達ビヒクルの表面のPEG-脂質などの官能化リガンドが表面から脱落し、これが標的細胞への内部移行を誘発する。エンドサイトーシスの間、細胞の原形質膜のある部分がベクターを取り囲み、それを小胞に包み込み、次に小胞が細胞膜からピンチオフし、細胞質ゾルに入り、最終的にエンドリソソーム経路を経る。イオン化可能なカチオン性脂質含有送達ビヒクルについて、エンドソームが老化するにつれて酸性度が増加することにより、表面上に強い正電荷を有するビヒクルが生じる。次いで、送達ビヒクルとエンドソーム膜との相互作用が、ペイロードの細胞質送達につながる膜融合事象をもたらす。mRNAペイロードについて、細胞自体の内部翻訳プロセスは、次いで、mRNA又はmRNA分子の組み合わせを、コードされたタンパク質(例えば、HBV TALEN)に翻訳することになる。コードされたタンパク質は更に、細胞内の標的化細胞小器官又は位置への輸送を含む翻訳後プロセシングを受けることができる。本明細書に記載されるHBV TALENの場合、HBV TALENタンパク質は、HBVゲノムが編集され得る核に転座される。
【0223】
脂質コンジュゲートの組成及び濃度を制御することによって、脂質コンジュゲートが脂質製剤から交換される速度、次いで、脂質製剤が融合性になる速度を制御し得る。更に、例えば、pH、温度、又はイオン強度を含む他の変数を使用して、脂質製剤が融合性になる速度を変化させる及び/又は制御することができる。脂質製剤が融合性になる速度を制御するために使用することができる他の方法は、本開示を読めば当業者に明らかになるであろう。また、脂質コンジュゲートの組成及び濃度を制御することによって、リポソーム又は脂質の粒径を制御することができる。
【0224】
脂質製剤の製造
核酸、例えばmRNA又はmRNA分子の組み合わせを含む脂質製剤を調製するための多くの異なる方法が存在する。(Curr.Drug Metabol.2014,15,882-892、Chem.Phys.Lipids2014,177,8-18、Int.J.Pharm.Stud.Res.2012,3,14-20)。薄膜水和、二重エマルジョン、逆相蒸発、マイクロ流体調製、二重非対称遠心分離、エタノール注入、界面活性剤透析、エタノール希釈による自発的小胞形成、及び予め形成されたリポソーム中への封入の技術が、本明細書中で簡単に記載される。
【0225】
薄膜水和
薄膜水和(Thin Film Hydration、TFH)又はBangham法では、脂質を有機溶媒に溶解し、次いでロータリーエバポレーターを使用して蒸発させ、薄い脂質層を形成する。充填される化合物を含有する水性緩衝液による層の水和の後、多重膜小胞(Multilamellar Vesicle、MLV)が形成され、これは、膜を通しての押出しによって、又は出発MLVの超音波処理によって小型化されて、小型単層小胞又は大型単層小胞(Large Unilamellar vesicle、LUV及びSmall Unilamellar vesicle、SUV)を生成することができる。
【0226】
二重エマルジョン
脂質製剤は、脂質を水/有機溶媒混合物に溶解させることを含む二重エマルジョン技術によって調製することもできる。水滴を含有する有機溶液を過剰の水性媒体と混合し、水中油中水型(water-in-oil-in-water、W/O/W)二重エマルジョン形成をもたらす。機械的に激しく振盪した後、水滴の一部が崩壊して、大型単層小胞(LUV)が得られる。
【0227】
逆相蒸発
逆相蒸発(Reverse Phase Evaporation、REV)法はまた、核酸を充填したLUVを達成することを可能にする。この技術では、有機溶媒及び水性緩衝液中にリン脂質を溶解することによって二相系が形成される。次いで、得られた懸濁液を、混合物が透明な1相分散液になるまで短時間超音波処理する。脂質製剤は、減圧下で有機溶媒を蒸発させた後に得られる。この技術は、核酸を含む異なる大小の親水性分子を封入するために使用されてきた。
【0228】
マイクロ流体調製
マイクロ流体法は、他のバルク技術とは異なり、脂質水和プロセスを制御する可能性を与える。この方法は、流れが操作される方法に従って、連続流マイクロ流体及び液滴ベースのマイクロ流体に分類され得る。連続フローモードで動作するマイクロ流体流体力学的集束(microfluidic hydrodynamic focusing、MHF)法では、脂質をイソプロピルアルコールに溶解し、イソプロピルアルコールを2つの水性緩衝液流の間のマイクロチャネル交差接合部に流体力学的に集束させる。小胞サイズは、流速を調節することによって制御され得、したがって、脂質溶液/緩衝液希釈プロセスを制御する。この方法は、3つの入口ポート及び1つの出口ポートからなるマイクロ流体デバイスを使用することによって、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide、ON)脂質製剤を製造するために使用され得る。
【0229】
二重非対称遠心分離
二重非対称遠心分離(Dual Asymmetric Centrifugation、DAC)は、それ自体の垂直軸を中心とした追加の回転を使用するので、より一般的な遠心分離とは異なる。生成された2つの重なり合う動きにより、効率的な均質化が達成される。試料は、通常の遠心分離機におけるように外側に押され、次いで、追加の回転によりバイアルの中心に向かって押される。脂質及びNaCl溶液を混合することにより、粘性の小胞リン脂質ゲル(vesicular phospholipid gel、VPC)が得られ、次いでこれを希釈して脂質製剤分散液を得る。脂質製剤サイズは、DAC速度、脂質濃度及び均質化時間を最適化することによって調節することができる。
【0230】
エタノール注入
エタノール注入(Ethanol Injection、EI)法を核酸封入に使用することができる。この方法は、脂質が溶解されているエタノール溶液を、封入される核酸を含有する水性媒体中に、針を使用して迅速に注入することを提供する。小胞は、リン脂質が媒体全体に分散したときに自発的に形成される。
【0231】
界面活性剤透析
界面活性剤透析法は、核酸を封入するために使用され得る。簡単に述べると、脂質及びプラスミドを適切なイオン強度の界面活性剤溶液中で可溶化し、透析によって界面活性剤を除去した後、安定化された脂質製剤を形成する。次いで、封入されていない核酸をイオン交換クロマトグラフィーによって除去し、そして空の小胞をスクロース密度勾配遠心分離によって除去する。この技術は、カチオン性脂質含有量及び透析緩衝液の塩濃度に非常に敏感であり、また、この方法は規模を拡大することが困難である。
【0232】
エタノール希釈による自発的小胞形成
安定な脂質製剤はまた、エタノール希釈法による自発的小胞形成によって生成され得、この方法において、段階的又は滴下のエタノール希釈は、核酸を含有する迅速に混合する水性緩衝液へのエタノールに溶解した脂質の制御された添加によって、核酸を充填した小胞の即時形成を提供する。
【0233】
予め形成されたリポソーム中への封入
核酸の捕捉はまた、予め形成されたリポソームから出発して、以下の2つの異なる方法によって得ることができる:(1)「リポプレックス」と呼ばれる静電複合体を与えるカチオン性リポソームと核酸との単純な混合であって、それらは細胞培養物をトランスフェクトするために首尾よく使用され得るが、インビボでのそれらの低い封入効率及び乏しい性能によって特徴付けられる、混合;及び(2)リポソームの不安定化であって、40%v/vの濃度までカチオン性小胞の懸濁液に無水エタノールをゆっくりと添加し、その後、核酸を滴下して、充填された小胞を達成する、不安定化。しかしながら、封入プロセスを特徴付ける2つの主なステップは、非常に敏感であり、粒子は小型化されなければならない。
【0234】
特定の実施形態において、脂質及び脂質ナノ粒子、脂質を含む薬学的組成物、脂質を作製する方法又は脂質及び核酸分子を含む薬学的組成物を製剤化する方法、並びに疾患を治療又は予防するために薬学的組成物を使用する方法の例は、米国又は国際特許出願公開、例えばUS2017/0190661、US2006/0008910、US2015/0064242、US2005/0064595、WO/2019/036030、US2019/0022247、WO/2019/036028、WO/2019/036008、WO/2019/036000、US2016/0376224、US2017/0119904、WO/2018/200943、WO/2018/191657、WO/2018/118102、US20180169268、WO2018118102、WO2018119163、US2014/0255472、及びUS2013/0195968(これらのそれぞれの関連する内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0235】
細胞及びポリペプチド
本出願はまた、本明細書に記載のポリヌクレオチド及びベクターのうちのいずれかを含む細胞、好ましくは単離された細胞を提供する。細胞は、例えば、組換えタンパク質産生のため、又はウイルス粒子の産生のために使用することができる。いくつかの実施形態において、細胞は、HBV TALENの産生のために使用することができる。本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、それが最初に見出された生物から取り出された細胞、又はそのような細胞の子孫を指す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチド又はベクターを含む細胞は、単離される代わりに、対象内にあるか、又は対象の一部であってもよい。これらの実施形態において、対象の細胞は、インビボ組換えタンパク質産生又はウイルス粒子の産生のために使用され得る。いくつかの実施形態において、細胞は、インビトロで、例えば他の細胞の存在下で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は、後に第2の生物に導入されるか、又はそれが単離された生物(又はそれが由来する細胞)に再導入される。
【0236】
本出願のHBV TALEN又はHBV TALENをコードする核酸を含む宿主細胞もまた、本発明の一部を形成する。HBV TALENは、宿主細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary、CHO)細胞、腫瘍細胞株、BHK細胞、HEK293細胞などのヒト細胞株、PER.C6細胞、若しくは酵母、細菌、真菌、昆虫細胞など、又はトランスジェニック動物若しくは植物における分子の発現を含む組換えDNA技術を介して産生され得る。特定の実施形態において、細胞は多細胞生物由来であり、特定の実施形態において、それらは脊椎動物又は無脊椎動物起源のものである。特定の実施形態において、細胞は、ヒト細胞などの哺乳類細胞、又は昆虫細胞である。特定の実施形態において、細胞は、初代細胞、例えば、肝臓細胞、より具体的には感染肝臓細胞、HBV感染肝臓細胞、又はHBV cccDNAを保有する肝臓細胞である。一般に、宿主細胞における本発明のHBV TALENなどの組換えタンパク質の産生は、発現可能な形式のタンパク質をコードする異種核酸分子の宿主細胞への導入、核酸分子の発現をもたらす条件下での細胞の培養、及び当該細胞におけるタンパク質の発現を可能にすることを含む。発現可能な形式でタンパク質をコードする核酸分子は、発現カセットの形態であってもよく、通常、エンハンサ、プロモータ、ポリアデニル化シグナルなどの核酸の発現をもたらすことができる配列を必要とする。当業者は、種々のプロモータが宿主細胞における遺伝子の発現を得るために使用され得ることを承知している。プロモータは、構成的であっても調節されていてもよく、ウイルス、原核生物若しくは真核生物供給源を含む様々な供給源から得ることができ、又は人工的に設計することができる。更なる調節配列を付加してもよい。多くのプロモータが、導入遺伝子の発現のために使用され得、当業者に既知であり、例えば、これらは、ウイルスプロモータ、哺乳類プロモータ、合成プロモータなどを含み得る。真核細胞における発現を得るための好適なプロモータの非限定的な例は、CMVプロモータ(US5,385,839)、例えばCMV最初期遺伝子エンハンサ/プロモータ由来のnt.-735~+95を含むCMV最初期プロモータなどである。ポリアデニル化シグナル、例えば、ウシ成長ホルモンポリAシグナル(US5,122,458)は、導入遺伝子の後ろに存在し得る。あるいは、いくつかの広く使用されている発現ベクターは、当技術分野において、例えば、InvitrogenのpcDNA及びpEFベクターシリーズ、BD SciencesからのpMSCV及びpTK-Hyg、StratageneからのpCMV-Scriptなどの商業的供給源から市販されており、これらは、目的のタンパク質を組換え発現させるために、又は好適なプロモータ及び/若しくは転写ターミネーター配列、ポリA配列などを得るために使用することができる。
【0237】
細胞培養物は、接着細胞培養物、例えば、培養容器の表面又はマイクロ担体に付着した細胞、並びに懸濁培養物を含む、任意のタイプの細胞培養物であり得る。ほとんどの大規模懸濁培養は、操作及びスケールアップが最も簡単であるため、バッチプロセス又は流加プロセスとして操作される。今日では、灌流原理に基づく連続プロセスがより一般的になりつつあり、また好適である。好適な培養培地も当業者に周知であり、一般に商業的供給源から大量に得ることができるか、又は標準的なプロトコルに従って特注することができる。培養は、例えば、ディッシュ、ローラーボトル又はバイオリアクター中で、バッチ、流加、連続系などを用いて行うことができる。細胞を培養するための好適な条件は既知である(例えば、Tissue Culture,Academic Press,Kruse and Paterson,editors(1973)、及びR.I.Freshney,Culture of animal cells:A manual of basic technique,fourth edition(Wiley-Liss Inc.,2000,ISBN 0-471-34889-9)を参照されたい)。細胞培養培地は様々な供給業者から入手可能であり、宿主細胞が目的のタンパク質、ここではHBV TALENを発現するために適した培地を日常的に選択することができる。適切な培地は、血清を含んでも含まなくてもよい。
【0238】
したがって、本出願の実施形態は、本出願のHBV TALENを産生する方法にも関する。本方法は、プロモータに作動可能に連結された本出願のHBV TALENをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクトすることと、トランスフェクトされた細胞をHBV TALENの発現に適した条件下で増殖させることと、任意選択的に、細胞内で発現されたHBV TALENを精製又は単離することと、を含む。HBV TALENは、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどを含む当技術分野において既知の任意の方法によって細胞から単離又は回収することができる。組換えタンパク質発現のために使用される技術は、本開示を考慮して当業者に周知である。発現されたHBV TALENはまた、発現されたタンパク質を精製又は単離することなく、例えば、HBV TALENをコードする発現ベクターをトランスフェクトし、HBV TALENの発現に適した条件下で増殖させた細胞の上清を分析することによって研究することもできる。
【0239】
したがって、配列番号25、26、27又は28のうちの1つ以上のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、天然に存在しないポリペプチド又は組換えポリペプチドも提供される。いくつかの実施形態において、TALE DNA結合ドメインを有する天然に存在しないポリペプチド又は組換えポリペプチドは、配列番号25、26、27又は28のうちの1つ以上のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、TALE DNA結合ドメインとの天然に存在しないポリペプチド又は組換えポリペプチドの組み合わせは、配列番号25及び配列番号26のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、TALE DNA結合ドメインとの天然に存在しないポリペプチド又は組換えポリペプチドの組み合わせは、配列番号27及び配列番号28のアミノ酸配列を含む。上記及び下記のように、これらの配列をコードする単離された核酸分子、プロモータに作動可能に連結されたこれらの配列を含むベクター、及びポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はベクターを含む組成物もまた、本出願によって企図される。
【0240】
本出願の一実施形態において、組換えポリペプチドは、配列番号25、26、27又は28のうちの1つ以上のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、例えば、配列番号25、26、27又は28のうちの1つ以上とそれぞれ90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドの組み合わせは、配列番号25及び26のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、例えば、配列番号25及び26とそれぞれ90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドの組み合わせは、配列番号27及び28のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、例えば、配列番号27及び28とそれぞれ90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、天然に存在しないポリペプチド又は組換えポリペプチドは、配列番号25、26、27又は28のうちの1つ以上からなる。好ましくは、天然に存在しないポリペプチド又は組換えポリペプチドの組み合わせは、配列番号25及び26、又は配列番号27及び28からなる。
【0241】
組成物
本出願はまた、本出願による1つ以上のHBV TALEN、組み合わせ、1つ以上のHBV TALENをコードするポリヌクレオチド(RNA及びDNA、好ましくはmRNAを含む)、ベクター、LNP及び/又は宿主細胞を含む、組成物、より具体的には薬学的組成物に関する。本明細書に記載される本出願のHBV TALEN、組み合わせ、核酸、ベクター、LNP及び/又は宿主細胞のいずれも、本出願の組成物又は薬学的組成物において使用することができる。
【0242】
本出願は、例えば、本明細書に記載される任意の核酸分子、ベクター、組み合わせ、LNP又は宿主細胞を、薬学的に受容可能な担体とともに含む薬学的組成物を提供する。薬学的に受容可能な担体は、非毒性であり、有効成分の有効性を妨げてはならない。薬学的に受容可能な担体は、結合剤、崩壊剤、膨潤剤、懸濁化剤、乳化剤、湿潤剤、滑沢剤、香味剤、甘味剤、保存剤、色素、可溶化剤及びコーティングなどの1つ以上の賦形剤を含むことができる。担体又は他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば、筋内、皮内、皮下、経口、静脈内、皮膚、粘膜内(例えば腸)、鼻腔内又は腹膜内経路に依存し得る。液体の注射可能な調製物(例えば、懸濁物及び溶液)について、好適な担体及び添加剤としては、水、グリコール、油、アルコール、防腐剤、着色剤などが挙げられる。固体経口製剤、例えば、散剤、カプセル剤、カプレット剤、ゲルキャップ剤及び錠剤の場合、好適な担体及び添加剤としては、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。鼻腔スプレー/吸入剤混合物の場合、水溶液/懸濁液は、好適な担体及び添加剤として、水、グリコール、油、皮膚軟化剤、安定剤、湿潤剤、防腐剤、芳香剤、香料などを含むことができる。
【0243】
本出願の薬学的組成物は、投与を容易にし、有効性を改善するために、経口(経腸)投与及び非経口注射を含むがこれらに限定されない、対象への投与に適した任意の方法(matter)で製剤化することができる。非経口注射には、静脈内注射又は注入、皮下注射、皮内注射、及び筋肉内注射が含まれる。本出願の薬学的組成物は、経粘膜、眼、直腸、長時間作用型移植、舌下投与、舌下、門脈循環を迂回する口腔粘膜から、吸入、又は鼻腔内を含む他の投与経路用に製剤化することもできる。
【0244】
本出願の好ましい実施形態において、本出願の薬学的組成物は、非経口注射、好ましくは皮下、皮内注射、又は筋肉内注射、より好ましくは筋肉内注射用に製剤化される。
【0245】
本出願の実施形態によれば、投与のための薬学的組成物は、典型的には、薬学的に受容可能な担体、例えば緩衝生理食塩水など、例えばリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)などの水性担体中に緩衝溶液を含むであろう。組成物はまた、生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に受容可能な物質(例えば、pH調整剤及び緩衝剤)を含み得る。例えば、プラスミドDNAを含む本出願の薬学的組成物は、薬学的に受容可能な担体としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含有することができる。プラスミドDNAは、例えば、0.5mg/mL~5mg/mL、例えば0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、又は5mg/mL、好ましくは1mg/mLの濃度で存在し得る。
【0246】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子を含む本出願の薬学的組成物は、例えば、約20μg/mL~約200μg/mL、例えば、20μg/mL、30μg/mL、40μg/mL、50μg/mL、60μg/mL、70μg/mL、80μg/mL、90μg/mL、100μg/mL、110μg/mL、120μg/mL、130μg/mL、140μg/mL、150μg/mL、160μg/mL、170μg/mL、180μg/mL、190μg/mL、又は200μg/mLの濃度で投与することができる。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子を含む本出願の薬学的組成物は、20μg/mL未満の濃度で投与することができる。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子を含む本出願の薬学的組成物は、200μg/mLを超える濃度で投与することができる。
【0247】
本出願はまた、本出願の薬学的組成物を作製する方法を提供する。薬学的組成物を製造する方法は、本出願のHBV TALENをコードする単離されたポリヌクレオチド、ベクター、及び/又はLNPを、1つ以上の薬学的に受容可能な担体と混合することを含む。当業者は、このような組成物を調製するために使用される従来の技術に精通しているであろう。
【0248】
治療方法
本出願は、肝炎を処置するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、B型肝炎ウイルス(HBV)、具体的にはHBV感染の治療を必要とする対象においてそれを行うためのものであり、有効量の本出願の薬学的組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態は、HBV/HDV同時感染を治療する方法に関する。いくつかの実施形態は、HBV表面抗原を低減する方法に関する。いくつかの実施形態は、HBV cccDNAを低減又は根絶する方法に関する。いくつかの実施形態は、組み込まれたHBV DNAを標的化する方法に関する。本明細書に記載される本出願の薬学的組成物のいずれも、本出願の方法において使用することができる。本出願はまた、対象におけるHBVの感染及び/又は複製を低減するための方法であって、本出願の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。ウイルスの感染又は複製に関して本明細書で使用される場合、「低減する(reducing)」又は「低下した(reduced)」という用語は、一般に、未処置対象又は対照処置を投与された対象などの基準レベルと比較して、感染及び/又は複製の量が統計的に有意に減少していることを意味する。しかしながら、誤解を避けるために、「低減する」とは、参照レベルと比較して少なくとも10%低減すること、例えば、少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は最大100%減少すること(すなわち、参照試料と比較してレベルがない)、又は参照レベルと比較して10%~100%の間の任意の減少を意味する。感染及び/又は複製のレベルは、本開示を考慮して当業者によって確認することができる。
【0249】
本明細書で使用される「治療する」、「治療された」、又は「治療すること」という用語は、治療的処置及び予防的又は防止的手段の両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的状態、障害、若しくは疾患に対して(部分的若しくは全体的に)保護するか、若しくは遅延させる(例えば、その発症を軽減若しくは延期する)こと、又は異常になった若しくは異常になるであろうパラメータ、値、機能、若しくは結果の低下の部分的若しくは全体的な回復若しくは阻害などの有益な若しくは所望の臨床結果を得ることである。本開示の目的のために、有益な又は所望の臨床結果としては、症状の緩和、状態、障害又は疾患の発症の程度又は活力又は速度の減少、状態、障害又は疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、状態、障害又は疾患の発症の遅延又は進行の減速、状態、障害又は疾患状態の改善、及び寛解(部分的であるか全体的であるかにかかわらず)(それが実際の臨床症状の即時の軽減、又は状態、障害若しくは疾患の向上若しくは改善に転化するかどうかにかかわらず)が挙げられるが、これらに限定されない。治療は、過剰なレベルの副作用を伴わずに臨床的に有意な応答を誘発しようとする。治療はまた、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することを含む。
【0250】
本明細書で使用される場合、「感染」という用語は、病原体による宿主の侵入を指す。病原体は、宿主に侵入し、宿主内で複製又は増殖することができる場合、「感染性」であると考えられる。感染性因子の例としては、ウイルス(例えば、HBV、HDV及び特定の種のアデノウイルス、プリオン、細菌、真菌、原生動物など)が挙げられる。「HBV感染」とは、具体的には、宿主生物の細胞及び組織などの宿主生物へのHBVの侵入を指す。いくつかの実施形態において、感染は、HBV及びHDVの同時感染である。
【0251】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「有効量」は、それを必要とする対象において所望の効果又は応答を誘導するのに十分な組成物、ポリヌクレオチド、又はベクターの量を意味する。有効量は、HBV感染などの疾患に対する治療効果を提供するのに十分な量であり得る。有効量は、対象の身体状態、年齢、体重、健康など;特定の用途、例えば、治療的処置;及び免疫が所望される特定の疾患、例えば、ウイルス感染などの様々な要因に応じて変化し得る。有効量は、本開示を考慮して当業者によって容易に決定することができる。治療有効量は、例えば、化合物の血中濃度をアッセイすることによって実験的に、又は本開示を考慮して当業者によって生物学的利用能を計算することによって理論的に確認することができる。
【0252】
本出願の特定の実施形態において、有効量は、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上を達成するのに十分な組成物又は組み合わせの量を指す:(i)HBV感染若しくはそれに関連する症状の重症度を低減若しくは改善する効果、(ii)HBV感染若しくはそれに伴う症状の持続期間を低減する効果、(iii)HBV感染若しくはそれに伴う症状の進行を予防する効果、(iv)HBV感染若しくはそれに伴う症状の回帰を引き起こす効果、(v)HBV感染若しくはそれに関連する症状の発症若しくは発症(development or onset)を予防する効果、(vi)HBV感染若しくはそれに伴う症状の再発を予防する効果、(vii)HBV感染を有する対象の入院期間を短縮する効果、(viii)HBV感染を有する対象の入院期間を短縮する効果、(ix)HBV感染を有する対象の生存期間を延長する効果、(x)対象におけるHBV感染を排除する効果、(xi)対象におけるHBV複製を阻害若しくは低減する効果、及び/又は(xii)別の療法の予防若しくは治療効果を増強若しくは改善する効果。
【0253】
治療有効量はまた、臨床セロコンバージョンへの進化と一致してHBsAgレベルを低減する;及び/又は対象の免疫系による感染肝細胞の減少に関連する持続的HBsAgクリアランスを達成する;HBV抗原特異的活性化T細胞集団を誘導する;及び/又は治療中若しくは治療後に検出可能なHBsAgの喪失であって、その後好ましくは治療終了後6ヶ月以上、最も好ましくは生涯持続する、喪失を達成するのに十分な化合物の量であり得る。標的指標の例としては、例えば、100IU/mLのHBsAgの閾値未満である血清HBsAgレベル、及び/又は例えば、処置の開始時よりも多い数若しくは多い多機能性のHBV特異的CD8 T細胞応答が挙げられる。標的指標の更なる例としては、定量下限(lower limit of quantification、LLoQ)より低い血清HBV RNAレベル;及び/又は対象が男性の場合には正常上限の3倍未満若しくは129U/L未満、若しくは対象が女性の場合には108U/L未満の血清ALT濃度、より具体的には、対象が男性の場合には120U/L未満、若しくは対象が女性の場合には105U/L未満の血清ALT濃度、より具体的には、対象が男性の場合には90U/L未満、若しくは対象が女性の場合には57U/L未満の血清ALT濃度;及び/又はHBeAg陰性血清;及び/又は100IU/mL以下、より具体的には、正規化されたとみなされる10IU/mL以下の血清HBsAgレベル;及び/又はHBsセロコンバージョン;及び/又はLLoQ未満のコア関連抗原(core-related antigen、crAg)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態において、有効量は、HBsAg、HBeAg、HBV DNA、HBV cccDNA、又は組み込まれたHBV DNAのうちの1つ以上の発現レベルが対象において低減されるのに十分な量である。いくつかの実施形態において、発現レベルは、肝細胞レベル、核若しくは細胞レベル、肝臓レベル、血清レベル、又は血漿レベルである。いくつかの好ましい実施形態において、有効量は、HBsAg、HBeAg、及びHBV DNAのうちの1つ以上の血清及び/又は血漿レベルが対象において低減されるのに十分な量である。
【0254】
一般的な指針として、核酸分子又はベクターに関して使用される場合の有効量は、約0.1mg/kgの核酸分子又はベクター~約5mg/kgの核酸分子又はベクターの範囲、例えば、約0.1mg/kg、約0.25mg/kg、約0.5mg/kg、約0.75mg/kg、約1.0mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、又は約5.0mg/kgなどであり得る。好ましくは、核酸分子又はベクターの有効量は、約0.25mg/kg~約3mg/kgである。薬学的組成物中の核酸分子又はベクターに関して使用される場合の有効量は、核酸分子又はベクター全体の約0.01mg/mL~約2mg/mLの濃度の範囲、例えば0.01mg/mL、0.02mg/mL、0.03mg/mL、0.04mg/mL、0.05mg/mL、0.06mg/mL、0.07mg/mL、0.08mg/mL、0.09mg/mL、0.1mg/mL、0.25mg/mL、0.5mg/mL、0.75mg/mL、1mg/mL、1.5mg/mL、又は2mg/mLであり得る。好ましくは、分子又はベクターの有効量は、1mg/mL未満、より好ましくは0.05mg/mL未満である。有効量は、1つの核酸分子若しくはベクターから、又は複数の核酸分子若しくはベクターからのものであり得る。有効量は、単一の組成物で、又は複数の組成物、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個の組成物(例えば、錠剤、カプセル若しくは注射剤、又は皮内送達、例えば皮内送達パッチを使用した皮内送達に適合させた任意の組成物)で投与することができ、複数のカプセル又は注射剤の投与が集合的に対象に有効量を提供する。例えば、2つのDNAプラスミドが使用される場合、有効量は3~4mg/mLであり得、各プラスミドは1.5~2mg/mLである。有効量は、単一の治療有効用量として、又は1、2、3、4、5、若しくはそれ以上の用量などの一連の治療有効用量で投与することができるか、又は一連の用量が集合的に対象に治療有効量を提供する。複数回用量が投与される場合、各用量は、同じ量及び/若しくは濃度、又は異なる量及び/若しくは濃度であり得る。投薬戦略の最適化は、当業者によって容易に理解され、実施されるであろう。
【0255】
2つの核酸分子又はベクター、例えば、第1のHBV TALENをコードする第1のベクター及び第2のHBV TALENをコードする第2のベクターを含む組み合わせは、両方のベクター又は核酸分子を混合し、混合物を単一の解剖学的部位に送達することによって対象に投与することができる。あるいは、各々が単一のベクター又は核酸分子を送達する2回の別々の投与を実行することができる。このような実施形態において、ベクター又は核酸分子の両方が、混合物としての単回投与で投与されるか、又は2回の別々の投与で投与されるかにかかわらず、第1のベクター又は核酸分子及び第2のベクター又は核酸分子は、10:1~1:10の重量比(例えば、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、又は1:10)で投与され得る。好ましくは、第1及び第2のベクター又は第1及び第2の核酸分子は、1:1の重量比で投与される。
【0256】
好ましくは、本出願の方法に従って治療される対象は、肝炎に感染した対象、好ましくはHBVに感染した対象、特に慢性HBV感染を有する対象である。いくつかの実施形態において、対象は、HBV及びHDVに同時感染している。急性HBV感染は、その後の広範な適応応答(例えば、HBV特異的T細胞、中和抗体)で補完される自然免疫系の効率的な活性化によって特徴付けられ、これにより、通常、感染した肝細胞の複製が首尾よく抑制又は除去される。対照的に、このような応答は、高いウイルス負荷及び抗原負荷に起因して損なわれるか又は減少し、例えば、HBVエンベロープタンパク質が、豊富に産生され、感染性ウイルスに対して1,000倍過剰でサブウイルス粒子中に放出され得る。
【0257】
慢性HBV感染は、ウイルス負荷、肝酵素レベル(壊死炎症活性)、HBeAg、若しくはHBsAg負荷、又はこれらの抗原に対する抗体の存在によって特徴付けられる段階で説明される。cccDNAレベルは、ウイルス血症がかなり変動し得るとしても、細胞当たり約10~50コピーで比較的一定である。cccDNA種の持続は慢性化をもたらす。より具体的には、慢性HBV感染の段階は、(i)高いウイルス負荷及び正常な又は最小限に上昇した肝酵素によって特徴付けられる免疫寛容段階、(ii)有意に上昇した肝酵素を伴うウイルス複製のより低いレベル又はレベルの低下が観察される免疫活性化HBeAg陽性段階、(iii)HBeAgセロコンバージョンに続く可能性がある、低いウイルス負荷及び血清中の正常な肝酵素レベルを有する低複製状態である不活性HBsAg担体段階、並びに(iv)肝酵素レベルの変動を伴ってウイルス複製が周期的に起こり(再活性化)、プレコア及び/又は基底コアプロモータにおける突然変異が一般的であり、その結果、HBeAgが感染細胞によって産生されないHBeAg陰性段階を含む。好ましくは、有効量は、慢性HBV感染を治療するのに十分な組成物又は本出願の組み合わせの量を指す。
【0258】
いくつかの実施形態において、慢性HBV感染を有する対象は、ヌクレオシド類似体(NUC)治療を受けており、NUC抑制されている。本明細書で使用される場合、「NUC抑制」は、HBVのウイルスレベルが検出不能であり、アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase、ALT)レベルが少なくとも6ヶ月間安定である対象を指す。ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体処置の例としては、HBVポリメラーゼインヒビター(例えば、エンタカビル及びテノホビル)が挙げられる。好ましくは、慢性HBV感染を有する対象は、進行性肝線維症又は肝硬変を有しない。このような対象は、代表的には、線維症について3未満のMETAVIRスコア及び9kPa未満の線維スキャン結果を有する。METAVIRスコアは、B型肝炎患者の肝生検における組織病理学的評価によって炎症及び線維症の程度を評価するために一般的に使用されるスコアリングシステムである。スコアリングシステムは、2つの標準化された数(1つは炎症の程度を反映する数であり、1つは線維症の程度を反映する数)を割り当てる。
【0259】
慢性HBVの排除又は低減は、ウイルス誘導性肝硬変及び肝細胞がんを含む重篤な肝疾患の早期疾患遮断を可能にし得ると考えられている。したがって、本出願の方法は、HBV誘導性疾患を治療するための療法として使用することもできる。HBV誘導性疾患の例としては、肝硬変、がん(例えば、肝細胞がん)、及び線維症、特に、線維症について3以上のMETAVIRスコアを特徴とする進行性線維症が挙げられるが、これらに限定されない。そのような実施形態において、有効量は、12ヶ月以内のHBsAgの持続的喪失及び臨床疾患(例えば、肝硬変、肝細胞がんなど)の有意な減少を達成するのに十分な量である。
【0260】
語句「免疫応答を誘導する」は、本明細書に記載される方法に関して使用される場合、病原性因子(例えば、HBV)に対して処置するための治療的免疫を提供することを包含する。一実施形態において、「免疫応答を誘導する」とは、例えば、HBV感染又はHBVとHDVとの同時感染などの疾患に対する治療効果を提供するために、それを必要とする対象において免疫を産生することを意味する。特定の実施形態において、「免疫応答を誘導する」とは、細胞性免疫、例えば、HBV特異的CD4+及びCD8+T細胞応答を引き起こす又は改善することを指す。特定の実施態様において、このT細胞応答は、CHBを有する治療された患者の機能的治癒をもたらすことができる。特定の実施形態において、「免疫応答を誘導する」とは、HBV感染又はHBV及びHDVの同時感染に対する体液性免疫応答を引き起こすか又は改善することを指す。特定の実施形態において、「免疫応答を誘導する」とは、HBV感染又はHBV及びHDVの同時感染に対する細胞性及び体液性免疫応答を引き起こすか又は改善することを指す。
【0261】
本明細書で使用される場合、「機能的治癒」又は「FC」という用語は、CHBを有していた対象の状態であって、対象が少なくとも6ヶ月間、全てのHBV治療を中止した後に、対象の血清が検出可能なHBV DNA及びHBsAgを含まないままである、CHBを有していた対象の状態を指す。例えば、FCを有する対象の血清は、検出不可能なHBV DNAを有し、HBV治療の終了後6ヶ月でHBsAg陰性である。FCを有する対象におけるHBsAg喪失は、HBsAgセロコンバージョンを伴っても伴わなくてもよい。いくつかの実施形態において、FCは、少なくとも1年、好ましくは少なくとも2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年又は10年持続する。最も好ましくは、FCは一生涯持続する。
【0262】
本明細書中で使用される場合、用語「T細胞機能の回復」とは、消耗したHBV特異的T細胞及びそうでなければ非機能的なHBV特異的T細胞が、それらの正常なエフェクター機能を実行し得るような、それらの再活性化を指す。回復されたHBV特異的T細胞応答の例としては、HBV感染肝細胞の殺傷又は非細胞溶解性制御、HBsAgを発現する組み込まれたHBV DNAを有する肝細胞の殺傷、並びに一旦FCが達成されると、監視の実行及び経時的に再活性化する感染細胞の殺傷が挙げられるが、これらに限定されない。正味の効果は、HBV DNA、HBsAg及び他のHBVタンパク質などのウイルス産物を含まない血清を維持することである。
【0263】
いくつかの実施形態において、開示されたmRNA分子は、複製肝炎感染(例えば、HBV及び/又はHDV)を処置及び/又は阻害するための1つ以上の更なる薬剤と組み合わせて使用され得る。更なる薬剤は、1つ以上の免疫調節薬であり得る。更なる薬剤としては、インターフェロン、ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体、カプシドアセンブリモジュレータ、配列特異的オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又はsiRNA)、侵入阻害剤、及び/又は治療用HBVワクチンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、開示されるmRNA分子は、サイトカインと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、開示されるmRNA分子は、チモシンアルファ-1と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、開示されるmRNA分子は、肝炎感染のための標準治療処置と組み合わせて投与される。HBV感染の標準治療処置は、ヌクレオチド/ヌクレオチド類似体(例えば、ラミブジン、テルビブジン、エンテカビル、アデホビル、テノホビル、及びクレブジン、テノホビルアラフェナミド(Tenofovir alafenamide、TAF)、CMX157、及びAGX-1009)、並びにインターフェロン(例えば、Peg-IFN-2a及びIFN-a-2b、インターフェロンラムダ、組換えインターフェロンアルファ2b、IFN-a)などのウイルスポリメラーゼの阻害剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、開示されるmRNA分子は、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-N3、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、インターフェロンガマ-1b、インターフェロンラムダ-1、インターフェロンラムダ-2、インターフェロンラムダ-3、ペグ化インターフェロンアルファ-2a、ペグ化インターフェロンアルファ-2b、ペグ化インターフェロンラムダ-1、及びペグ化インターフェロンラムダ-2からなる群から選択されるインターフェロンと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、開示されたmRNA分子は、1つ以上のTLR7アゴニストと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、開示されたmRNA分子は、1つ以上のTLR8アゴニストと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、開示されるmRNA分子は、GS-962O(4-アミノ-2-ブトキシ-8-3-(ピロリジン-1-イルメチル)フェニル)メチル-5,7-ジヒドロプテリジン-6-オン)又はGS-9688(Selgantolimod)と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、開示されるmRNA分子は、Bulevirtideと組み合わせて投与される。
【0264】
いくつかの実施形態において、開示されるmRNA分子は、同時(simultaneous)(同時投与(co-administration))又は連続投与のいずれかの後に、1つ以上のオリゴヌクレオチドと組み合わせて投与される。オリゴヌクレオチドは、siRNA、ASO、ギャップマー、及び/又は核酸ポリマー(nucleic acid polymer、NAP)を含み得る。いくつかの実施形態において、開示されるmRNA分子は、ウイルス複製阻害剤などの1つ以上の抗ウイルス剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、開示されるmRNA分子は、HBVカプシドアセンブリモジュレータ(Capsid assembly modulator、CAM)と組み合わせて投与される。HBV CAM分子は、JNJ 6379、NVR 3-778、AB-423、GLS-4、Bayer 41-4109、HAP-1、及びAT-1を含むことができる。いくつかの実施形態において、開示されるオリゴヌクレオチド構築物は、TLRアゴニストなどの1つ以上の免疫調節薬と組み合わせて投与される。TLRアゴニストは、GS-9620、GS-9688、ARB-1598、ANA975、RG7795(ANA773)、MEDI9197、PF-3512676、及びIMO-2055を含むことができる。いくつかの実施形態において、開示されたmRNA分子は、HBVワクチンと組み合わせて投与される。HBVワクチンは、Heplislav、ABX203及びINO-1800を含むことができる。
【0265】
一態様において、siRNA成分は、1つ以上のsiRNA剤を含む。本明細書に開示される各siRNA剤は、少なくともセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む。センス鎖及びアンチセンス鎖は、互いに部分的に、実質的に、又は完全に相補的であり得る。本明細書に記載されるsiRNA剤センス鎖及びアンチセンス鎖の長さはそれぞれ、16~30ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は、独立して17~26ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は、独立して19~26ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は、独立して21~26ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は、独立して21~24ヌクレオチド長である。センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ長さ又は異なる長さのいずれかであり得る。本明細書に開示されるHBV siRNA剤は、HBVの既知の血清型の大部分にわたって保存されているHBVゲノム中の配列に少なくとも部分的に相補的であるアンチセンス鎖配列を含むように設計されている。本明細書に記載されるsiRNA剤は、HBVを発現する細胞に送達されると、1つ以上のHBV遺伝子の発現をインビボで又はインビトロで阻害する。いくつかの実施形態において、siRNA分子は、JNJ 3989、VIR-2218;又はARB-1467であり得る。
【0266】
siRNA剤は、第1の配列を含むセンス鎖(パッセンジャー鎖とも呼ばれる)と、第2の配列を含むアンチセンス鎖(ガイド鎖とも呼ばれる)と、を含む。本明細書に記載されるHBV siRNA剤のセンス鎖は、HBV mRNA中の少なくとも16個の連続したヌクレオチドのヌクレオチド配列に対して少なくとも約85%の同一性を有するコアストレッチを含む。いくつかの実施形態において、HBV mRNA中の配列に対して少なくとも約85%の同一性を有するセンス鎖コアヌクレオチドストレッチは、16、17、18、19、20、21、22、又は23ヌクレオチド長である。HBV siRNA剤のアンチセンス鎖は、HBV mRNA及び対応するセンス鎖中の配列に対して少なくとも16個の連続したヌクレオチドのコアストレッチにわたって少なくとも約85%の相補性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、HBV mRNA又は対応するセンス鎖中の配列に対して少なくとも約85%の相補性を有するアンチセンス鎖コアヌクレオチド配列は、16、17、18、19、20、21、22、又は23ヌクレオチド長である。
【0267】
本出願の実施形態による方法は、それを必要とする対象に、別の抗HBV剤(ヌクレオシド類似体又は他の抗HBV剤など)を本出願の薬学的組成物と組み合わせて投与することを更に含む。例えば、別の抗HBV剤は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD1、抗TIM-3など)、toll様受容体アゴニスト(例えば、TLR7アゴニスト及び/又はTLR8アゴニスト)、RIG-1アゴニスト、IL-15スーパーアゴニスト(Altor Bioscience)、突然変異体IRF3及びIRF7遺伝子アジュバント、STINGアゴニスト(Aduro)、FLT3L遺伝子アジュバント、IL-12遺伝子アジュバント、IL-7-hyFc;HBV envを結合するCAR-T(S-CAR細胞);カプシドアセンブリモジュレータ;cccDNA阻害剤、HBVポリメラーゼ阻害剤(例えば、エンテカビル及びテノホビル)を含むがこれらに限定されない小分子又は抗体であり得る。1つ又は他の抗HBV活性薬剤は、例えば、小分子、抗体若しくはその抗原結合断片、ポリペプチド、タンパク質、又は核酸であり得る。
【0268】
送達方法
本出願の薬学的組成物及び組み合わせは、非経口投与(例えば、筋肉内、皮下、静脈内、又は皮内注射)、経口投与、経皮投与、及び経鼻投与を含むがこれらに限定されない、本開示を考慮して当技術分野において既知の任意の方法によって対象に投与することができる。好ましくは、薬学的組成物及び組み合わせは、非経口的に(例えば、静脈内注射、筋肉内注射又は皮内注射によって)又は経皮的に投与される。
【0269】
薬学的組成物又は組み合わせが1つ以上のDNAプラスミドを含む本出願のいくつかの実施形態において、投与は、皮膚を通した注射、例えば、筋肉内注射又は皮内注射、好ましくは筋肉内注射によるものであり得る。筋肉内注射は、エレクトロポレーション、すなわち、細胞へのDNAプラスミドの送達を促進するための電場の適用と組み合わせることができる。本明細書で使用される場合、「エレクトロポレーション」という用語は、生体膜に微視的経路(細孔)を誘導するための膜貫通電場パルスの使用を指す。インビボエレクトロポレーションの間、適切な大きさ及び持続時間の電場が細胞に印加され、増強された細胞膜透過性の一過性状態を誘導し、したがって、それ自体では細胞膜を通過することができない分子の細胞取り込みを可能にする。エレクトロポレーションによるそのような細孔の作製は、細胞膜の一方の側から他方の側への、プラスミド、オリゴヌクレオチド、siRNA、薬物などの生体分子の通過を容易にする。DNAの送達のためのインビボエレクトロポレーションは、宿主細胞によるプラスミド取り込みを有意に増加させる一方で、注射部位における軽度~中程度の炎症ももたらすことが示されている。結果として、トランスフェクション効率は、従来の注射と比較して、皮内又は筋肉内エレクトロポレーションで有意に改善される(例えば、それぞれ最大1,000倍及び100倍)。
【0270】
典型的な実施形態において、エレクトロポレーションは筋肉内注射と組み合わされる。しかしながら、エレクトロポレーションを他の形態の非経口投与、例えば皮内注射、皮下注射などと組み合わせることも可能である。
【0271】
エレクトロポレーションを介した本出願の薬学的組成物、組み合わせ、又はワクチンの投与は、細胞膜に可逆的孔を形成させるのに有効なエネルギーパルスを哺乳類の所望の組織に送達するように構成することができるエレクトロポレーションデバイスを使用して達成することができる。エレクトロポレーションデバイスは、エレクトロポレーション構成要素及び電極アセンブリ又はハンドルアセンブリを含むことができる。エレクトロポレーション構成要素は、エレクトロポレーションデバイスの以下の構成要素:コントローラ、電流波形発生器、インピーダンステスタ、波形ロガー、入力要素、状態報告要素、通信ポート、メモリ構成要素、電源、及び電力スイッチ、のうちの1つ以上を含むことができる。エレクトロポレーションは、インビボエレクトロポレーションデバイスを使用して達成することができる。本出願の組成物及び免疫原性組み合わせ、特にDNAプラスミドを含むものの送達を容易にすることができるエレクトロポレーションデバイス及びエレクトロポレーション方法の例としては、CELLECTRA(登録商標)(Inovio Pharmaceuticals,Blue Bell,PA)、Elgenエレクトロポレータ(Inovio Pharmaceuticals,Inc.)Tri-Grid(商標)送達システム(Ichor Medical Systems,Inc.,San Diego,CA 92121)、並びに米国特許第7,664,545号、米国特許第8,209,006号、米国特許第9,452,285号、米国特許第5,273,525号、米国特許第6,110,161号、米国特許第6,261,281号、米国特許第6,958,060号、及び米国特許第6,939,862号、米国特許第7,328,064号、米国特許第6,041,252号、米国特許第5,873,849号、米国特許第6,278,895号、米国特許第6,319,901号、米国特許第6,912,417号、米国特許第8,187,249号、米国特許第9,364,664号、米国特許第9,802,035号、米国特許第6,117,660号、及び国際特許出願公開2017/172838号(これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものが挙げられる。例えば、米国特許第6、697,669号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなパルス電場の使用も、本出願の組成物及び組み合わせの送達によって企図される。
【0272】
薬学的組成物又は組み合わせが1つ以上のDNAプラスミドを含む本出願の他の実施形態において、投与方法は経皮である。経皮投与は、細胞へのDNAプラスミドの送達を容易にするために表皮皮膚擦過傷と組み合わせることができる。例えば、皮膚用パッチは表皮皮膚擦過傷に使用することができる。皮膚用パッチを除去すると、組成物又は組み合わせは、剥奪された皮膚上に付着させることができる。
【0273】
送達方法は、上記の実施形態に限定されず、細胞内送達のための任意の手段を使用することができる。本出願の方法によって企図される他の細胞内送達方法としては、リポソーム封入、リポプレックス、ナノ粒子などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本出願の1つ以上のHBV TALENをコードするmRNAは、1つ以上の脂質分子、好ましくは正に荷電した脂質分子を含む組成物中に製剤化することができる。いくつかの実施形態において、本開示の1つ以上のHBV TALENをコードするmRNAは、1つ以上のリポソーム、リポプレックス、及び/又は脂質ナノ粒子を使用して製剤化することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるリポソーム又は脂質ナノ粒子製剤は、ポリカチオン性組成物を含むことができる。いくつかの実施形態において、ポリカチオン性組成物を含む製剤は、本明細書に記載されるHBV TALENをインビボ及び/又はエクスビボで送達するために使用することができる。
【0274】
実施形態
実施形態1は、肝炎感染の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、
(1)第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のmRNA分子であって、第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができる、第1のmRNA分子と、
(2)第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2のTALEN単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のmRNA分子であって、第2のTALE DNA結合ドメインが、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができる、第2のmRNA分子と、を含む、mRNA分子の組み合わせを対象に投与することを含み、
第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができ、
好ましくは、第1のヌクレアーゼ触媒ドメインが第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインであり、第2のヌクレアーゼ触媒ドメインが第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインである、方法を含む。
【0275】
実施形態1aは、第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメイン及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインが同じである、実施形態1の方法を含む。
【0276】
実施形態1bは、第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメイン及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインが異なる、実施形態1の方法を含む。
【0277】
実施形態2は、標的核酸配列が、HBsAg及びHBVポリメラーゼ(pol)をコードする配列内にある、実施形態1~1bのうちのいずれか1つの方法を含む。
【0278】
実施形態2aは、標的核酸配列の第1の半部位配列が、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列が、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、実施形態2の方法を含む。
【0279】
実施形態2bは、標的核酸配列の第1の半部位配列が、配列番号3の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列が、配列番号4の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、実施形態2の方法を含む。
【0280】
実施形態2cは、標的核酸配列が、配列番号5又は配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、実施形態2の方法を含む。
【0281】
実施形態3は、第1及び第2のmRNA分子がそれぞれ、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールのうちの1つ以上、好ましくは全てを更に含む、実施形態1~2cのうちのいずれか1つの方法を含む。
【0282】
実施形態3aは、第1及び第2のmRNA分子がそれぞれ、5’キャップ、5’-UTR、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールを含む、実施形態3の方法を含む。
【0283】
実施形態3bは、第1及び第2のmRNA分子がそれぞれ、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールを含む、実施形態3の方法を含む。
【0284】
実施形態4は、それぞれ、第1のTALE DNA結合ドメインが、配列番号7又は配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが、配列番号8又は配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ、配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態1~3bのうちのいずれか1つの方法を含む。
【0285】
実施形態4aは、第1のTALE DNA結合ドメインが、配列番号7と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが、配列番号8と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ、配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態4の方法を含む。
【0286】
実施形態4a1は、第1のTALE DNA結合ドメインが配列番号7のアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが配列番号8のアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態4aの方法を含む。
【0287】
実施形態4a2は、第1のTALE DNA結合ドメインが配列番号7のアミノ酸配列からなり、第2のTALE DNA結合ドメインが配列番号8のアミノ酸配列からなり、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ配列番号11のアミノ酸配列からなる、実施形態4aの方法を含む。
【0288】
実施形態4bは、第1のTALE DNA結合ドメインが、配列番号9と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが、配列番号10と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ、配列番号11と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、実施形態4の方法を含む。
【0289】
実施形態4b1は、第1のTALE DNA結合ドメインが配列番号9のアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが配列番号10のアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態4bの方法を含む。
【0290】
実施形態4b2は、第1のTALE DNA結合ドメインが配列番号9のアミノ酸配列からなり、第2のTALE DNA結合ドメインが配列番号10のアミノ酸配列からなり、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ配列番号11のアミノ酸配列からなる、実施形態4bの方法を含む。
【0291】
実施形態5は、HBVゲノムが遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである、実施形態1~4b2のうちのいずれか1つの方法を含む。
【0292】
実施形態5aは、HBVゲノムが、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G及びHのうちの1つ以上のものである、実施形態5の方法を含む。
【0293】
実施形態6は、対象に、好ましくは抗HBV剤を含む第2の治療用組成物を投与することを更に含む、実施形態1~5aのうちのいずれか1つの方法を含む。
【0294】
実施形態7は、対象が、HBV感染、好ましくは慢性HBV感染を有する、実施形態1~6のうちのいずれか1つの方法を含む。
【0295】
実施形態8は、対象が、HBV及びHDVに同時感染している、実施形態1~7のうちのいずれか1つの方法を含む。
【0296】
実施形態9は、脂質ナノ粒子中に封入されたmRNA分子の組み合わせを含む組成物であって、mRNA分子の組み合わせが、
(1)第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のmRNA分子であって、第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができる、第1のmRNA分子と、
(2)第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2のTALEN単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のmRNA分子であって、第2のTALE DNA結合ドメインが、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができる、第2のmRNA分子と、を含み、
第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができ、
好ましくは、第1のヌクレアーゼ触媒ドメインが第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインであり、第2のヌクレアーゼ触媒ドメインが第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインである、組成物を含む。
【0297】
実施形態9aは、第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメイン及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインが同じである、実施形態9の組成物を含む。
【0298】
実施形態9bは、第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメイン及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインが異なる、実施形態9の組成物を含む。
【0299】
実施形態9cは、各mRNA分子が、脂質ナノ粒子中に個別に封入されている、実施形態9~9bのうちのいずれか1つの組成物を含む。
【0300】
実施形態9dは、複数のmRNA分子が、個々の脂質ナノ粒子中に封入されている、実施形態9~9bのうちのいずれか1つの組成物を含む。
【0301】
実施形態10は、標的核酸配列が、HBsAg及びHBVポリメラーゼ(pol)をコードする配列内にある、実施形態9~9dのうちのいずれか1つの組成物を含む。
【0302】
実施形態10aは、標的核酸配列の第1の半部位配列が、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列が、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、実施形態10の組成物を含む。
【0303】
実施形態10bは、標的核酸配列の第1の半部位配列が、配列番号3の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、標的核酸配列の第2の半部位配列が、配列番号4の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、実施形態10の組成物を含む。
【0304】
実施形態10cは、標的核酸配列が、配列番号5又は配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、実施形態10の組成物を含む。
【0305】
実施形態11は、第1及び第2のmRNA分子がそれぞれ、5’キャップ、5’-UTR、核局在化シグナルをコードする配列、N末端ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、3’-UTR、及びポリアデノシンテールのうちの1つ以上を更に含む、実施形態9~10cのうちのいずれか1つの組成物を含む。
【0306】
実施形態12は、それぞれ、第1のTALE DNA結合ドメインが、配列番号7又は配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが、配列番号8又は配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ、配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態9~11のうちのいずれか1つの組成物を含む。
【0307】
実施形態12aは、第1のTALE DNA結合ドメインが、配列番号7と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが、配列番号8と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ、配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態12の組成物を含む。
【0308】
実施形態12a1は、第1のTALE DNA結合ドメインが配列番号7のアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが配列番号8のアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態12aの組成物を含む。
【0309】
実施形態12a2は、第1のTALE DNA結合ドメインが配列番号7のアミノ酸配列からなり、第2のTALE DNA結合ドメインが配列番号8のアミノ酸配列からなり、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ配列番号11のアミノ酸配列からなる、実施形態12aの組成物を含む。
【0310】
実施形態12bは、第1のTALE DNA結合ドメインが、配列番号9と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが、配列番号10と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ、配列番号11と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、実施形態12の組成物を含む。
【0311】
実施形態12b1は、第1のTALE DNA結合ドメインが配列番号9のアミノ酸配列を含み、第2のTALE DNA結合ドメインが配列番号10のアミノ酸配列を含み、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態12bの組成物を含む。
【0312】
実施形態12b2は、第1のTALE DNA結合ドメインが配列番号9のアミノ酸配列からなり、第2のTALE DNA結合ドメインが配列番号10のアミノ酸配列からなり、第1及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインがそれぞれ配列番号11のアミノ酸配列からなる、実施形態12bの組成物を含む。
【0313】
実施形態13は、HBVゲノムが遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである、実施形態9~12b2のうちのいずれか1つの組成物を含む。
【0314】
実施形態13aは、HBVゲノムが、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G及びHのうちの1つ以上のものである、実施形態13の組成物を含む。
【0315】
実施形態14は、mRNA分子の組み合わせを封入する脂質ナノ粒子が、カチオン性脂質と、アニオン性脂質、双性イオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質、リン脂質、糖脂質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの他の脂質と、を含む、実施形態9~13aのうちのいずれか1つの組成物を含む。
【0316】
実施形態15は、
(1)第1のTALE DNA結合ドメイン及び第1のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第1の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸、好ましくは第1のmRNA分子であって、第1のTALE DNA結合ドメインが、HBVゲノム内の標的核酸配列の第1の半部位配列に結合することができ、第1の半部位配列が、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、第1の核酸、好ましくは第1のmRNA分子と、
(2)第2のTALE DNA結合ドメイン及び第2のFokIヌクレアーゼ触媒ドメインを含む第2の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)単量体をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸、好ましくは第2のmRNA分子であって、第2のTALE DNA結合ドメインが、標的核酸配列の第2の半部位配列に結合することができ、第2の半部位配列が、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%同一、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、第2の核酸、好ましくは第2のmRNA分子と、の組み合わせであって、
第1のTALEN単量体及び第2のTALEN単量体は、第1のTALE DNA結合ドメインが第1の半部位配列に結合し、第2のTALE DNA結合ドメインが第2の半部位配列に結合する場合に、標的核酸配列を切断する二量体を形成することができる、組み合わせを含む。
【0317】
実施形態15aは、第1の半部位配列が配列番号1の核酸配列を含み、第2の半部位配列が配列番号2の核酸配列を含む、実施形態15の組み合わせを含む。
【0318】
実施形態15bは、第1の半部位配列が配列番号1の核酸配列からなり、第2の半部位配列が配列番号2の核酸配列からなる、実施形態15の組み合わせを含む。
【0319】
実施形態16は、HBVゲノムが遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである、実施形態15~15bのうちのいずれか1つの組み合わせを含む。
【0320】
実施形態16aは、HBVゲノムが遺伝子型A、B、C、D、E、F、G及びHのうちの1つ以上のものである、実施形態16の組み合わせを含む。
【0321】
実施形態17は、実施形態15~16aのうちのいずれか1つの組み合わせを含む組成物であって、第1及び第2の核酸が、脂質ナノ粒子中に別々に又は一緒に封入されている、組成物を含む。
【0322】
実施形態18は、実施形態15~15bのうちのいずれか1つの第1のmRNA分子及び第2のmRNA分子のうちの少なくとも1つをコードする、核酸分子を含む。
【0323】
実施形態19は、実施形態18の核酸分子を含む、単離された宿主細胞を含む。
【0324】
実施形態20は、宿主細胞が肝細胞である、実施形態19の単離された宿主細胞を含む。
【0325】
実施形態21は、実施形態9~14若しくは17のうちのいずれか1つの組成物、実施形態15若しくは16aの組み合わせ、実施形態18の核酸分子、又は実施形態項19若しくは20の単離された宿主細胞と、薬学的に受容可能な担体と、を含む、薬学的組成物を含む。
【0326】
実施形態22は、HBVゲノム中の標的核酸配列を切断する方法であって、HBVゲノムを、実施形態9~14若しくは17のうちのいずれか1つの組成物、実施形態15~16aのうちのいずれか1つの組み合わせ、実施形態18の核酸分子、実施形態19若しくは20の単離された宿主細胞、又は実施形態21の薬学的組成物と接触させることを含む、方法を含む。
【0327】
実施形態23は、HBVゲノム中の標的核酸配列の遺伝子編集を誘導するための方法であって、HBVゲノムを、実施形態9~14若しくは17のうちのいずれか1つの組成物、実施形態15~16aのうちのいずれか1つの組み合わせ、実施形態18の核酸分子、実施形態19若しくは20の単離された宿主細胞、又は実施形態21の薬学的組成物と接触させることを含む、方法を含む。
【0328】
実施形態24は、HBVゲノムが、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJのうちの1つ以上のものである、実施形態22又は23の方法を含む。
【0329】
実施形態24aは、HBVゲノムが、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G及びHのうちの1つ以上のものである、実施形態24の方法を含む。
【0330】
実施形態25は、肝炎感染の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、実施形態21に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法を含む。
【0331】
実施形態26は、対象におけるHBVの感染及び/又は複製を低減するための方法であって、実施形態21に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法を含む。
【0332】
実施形態27は、対象に、好ましくは抗HBV剤を含む第2の治療用組成物を投与することを更に含む、実施形態25又は26の方法を含む。
【0333】
実施形態28は、対象が、HBV感染、好ましくは慢性HBV感染を有する、実施形態25~27のうちのいずれか1つの方法を含む。
【0334】
実施形態29は、対象が、HBV及びHDVに同時感染している、実施形態25~28のうちのいずれか1つの方法を含む。
【0335】
実施形態30は、HBsAg、HBeAg、HBV DNA、HBV cccDNA、又は組み込まれたHBV DNAのうちの1つ以上の発現レベルが、対象において低減される、実施形態25~29のうちのいずれか1つの方法を含む。
【0336】
実施形態30aは、HBsAg、HBeAg、及びHBV DNAのうちの1つ以上の血清及び/又は血漿レベルが、対象において低減される、実施形態30の方法を含む。
【0337】
実施形態31は、発現レベルが、肝細胞レベル、核若しくは細胞レベル、肝臓レベル、血清レベル、又は血漿レベルである、実施形態30の方法を含む。
【0338】
実施形態32は、実施形態18の核酸分子をインビトロ又はインビボで転写することを含む、TALENを産生する方法を含む。
【0339】
実施形態33は、B型肝炎ウイルス(HBV)誘導性疾患の治療を必要とする対象であって、好ましくは慢性HBV感染を有する、対象においてその治療に使用するための、実施形態21の薬学的組成物を含む。
【0340】
実施形態33aは、別の治療剤、好ましくは別の抗HBV剤と組み合わせた、実施形態33の薬学的組成物を含む。
【0341】
実施形態34は、HBV誘導性疾患が、進行性線維症、肝硬変及び肝細胞がん(HCC)からなる群から選択される、実施形態33又は33aの薬学的組成物を含む。
【0342】
実施例1~6の材料及び方法
細胞及び培養
凍結保存したHepG2.2.15細胞(Fox Chase Cancer Center)を解凍し、10%FBSを含有し、抗生物質、2mM L-グルタミン及びG418を補充したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)(Invitrogen)中で培養した。細胞をコラーゲンI被覆フラスコ及びプレート上で培養した。
【0343】
凍結保存した初代ヒト肝細胞(PHH)(Lonza、ロット8317)を解凍し、10%FBS並びにHEPES、L-プロリン、インスリン、上皮成長因子、デキサメタゾン、アスコルビン酸-2-リン酸、及び2%DMSO(Sigma)を含むサプリメントカクテルを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)中で培養した。
【0344】
HBV接種物
遺伝子型(GT)D HBV接種物を収集し、GT D HBV(Genbank U95551)を構成的に発現するHepG2.2.15ヒト肝芽腫細胞の上清から濃縮した。患者血清由来のGT A(PS 3.57)、B(PS 3.4)、C(PS 3.7)、及びD(PS 3.56)HBV接種物は、American Red Crossから購入した。
【0345】
HBV DNAプラスミド
CMVプロモータの制御下にある1.1x遺伝子型B HBVゲノムを含むプラスミドDNAは、HBV感染患者の血清から以前にクローニングされた(Genbank AY220698,Fudan University,China)。遺伝子型A(Genbank AF305422)、C(Genbank AB033550)、D(Genbank V01460)、E(Genbank AB274971)、F(Genbank AB036912)、G(Genbank AF160501)、及びH(Genbank AB375159)由来のHBV配列は、1.1xゲノムとして遺伝子合成され、5’末端にCMVプロモータの一部を含んだ。遺伝子合成された片を配列決定によって確認し、制限部位SalI及びNdeI(Genewiz,USA)を使用してpCMV-HBVプラスミドにサブクローニングした。
【0346】
HBV TALEN mRNA
TALEN DNA配列を、インビトロ転写のためのT7プロモータを有するプラスミドにクローニングした。プラスミドを、BspQI制限部位を使用して線状化し、インビトロ転写した。簡単に述べると、ヌクレオチド三リン酸(nucleotide triphosphate、NTP)及びT7 RNAポリメラーゼを、緩衝水溶液中で線状化鋳型と合わせ、インキュベートした。得られたmRNA転写物を、カラムクロマトグラフィーを使用して精製し、DNA及び二本鎖RNA混入を、酵素反応を使用してmRNAから除去し、mRNAを濃縮し、緩衝液を交換した。
【0347】
HepG2.2.15細胞を用いたHBV TALEN mRNAのトランスフェクション
トランスフェクションの日に、右又は左TALENタンパク質をコードするmRNAを、OptiMEM培地中で1:1の比で組み合わせた後、Lipofectamine MessengerMAXトランスフェクション試薬(Invitrogen)と混合した。HBV TALEN mRNAの不在下でのトランスフェクション混合物もまた、非TALEN対照として調製した。成長させたHepG2.2.15細胞の逆トランスフェクションのために、トランスフェクション混合物を96ウェルプレートウェルに入れ、30,000/ウェルの密度でトランスフェクション混合物の上に播種し、37℃で維持した。その後、トランスフェクション混合物を含有する培地を除去し、新鮮な細胞培養培地を補充した。トランスフェクトされた細胞を30℃で維持し、トランスフェクション後3日目に培地を更に交換した。遺伝子編集及び分泌されたHBsAgを、トランスフェクション後6日目にモニターした。
【0348】
PHHを用いたHBV TALEN mRNAのHBV感染及びトランスフェクション
PHHを、HBV感染の少なくとも1日前に、コラーゲン被覆24ウェルプレートに240,000細胞/ウェルの密度で播種した。PHHを、4%PEG-8000(Sigma)を含有する培地中、細胞当たり200ゲノム当量のHBV接種物で感染させた。翌日、HBV接種物を除去し、cccDNA及びウイルス複製を、HBV TALENをコードするmRNAのトランスフェクション前に少なくとも5日間確立させた。トランスフェクションの日に、Lipofectamine messenger Maxトランスフェクション試薬(Invitrogen)と混合する前に、右又は左TALENタンパク質をコードするmRNAをOptiMEM培地中で1:1の比で組み合わせた。HBV TALEN mRNAの不在下でのトランスフェクション混合物も、非TALEN対照として調製した。37℃でHBV TALEN mRNAを用いて又は用いずにHBV感染PHHを一晩トランスフェクトし、その後、トランスフェクション混合物を含有する培地を除去し、新鮮なPHH培養培地を補充した。トランスフェクトされた細胞を30℃で維持し、トランスフェクション後3日目に培地を更に交換した。遺伝子編集並びに分泌されたHBsAg及びHBeAgを、トランスフェクション後6日目にモニターした。
【0349】
細胞培養におけるHBV TALENタンパク質及びHBV抗原の検出
トランスフェクトされたPHHにおけるHBV TALENタンパク質の発現を、トランスフェクションの6時間後に免疫蛍光法によって検出した。細胞をPerfusion Fixative(Electron Microscopy Sciences,VWR)で固定し、1%Triton(登録商標)-X 100を用いて透過処理し、PBS中の3%正常ヤギ血清(normal goat serum、NGS)でブロッキングした。3%NGSを含有する一次ペプチドタグ特異的抗体を使用し、続いて3%NGSを含有するPBS中で1:1000に希釈したヤギ抗マウスAlexa Fluor 488(Invitrogen)で二次染色することによって、免疫染色を実行した。核染色は、1:1000に希釈したDAPI(ThermoFisher)を二次抗体と混合した二次染色と併せて行った。HBsAg及びHBeAgのレベルを、HBV感染PHH又はHepG2.2.15細胞の上清から、それぞれHBsAg及びHBeAgの定量的検出に対応するChemiluminescent Immunoassay Kit(Autobio Diagnostics)を使用することによってモニターした。免疫蛍光染色及び画像化をOperaシステム(Perkin Elmer)で実行した。
【0350】
HBV cccDNA遺伝子編集検出
HBV TALEN mRNAのトランスフェクション後6日目に、PHHを、50mM Tris-HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1%NP40を含有する溶解緩衝液で、室温で10分間処理した。細胞をスピンダウンして核を単離し、そこからゲノムDNA及びHBV DNAをNucleoSpin Tissue Kit(Macherey-Nagel)を用いて抽出した。HBV DNAの弛緩環状形態をcccDNAから除去するために、抽出したDNAを10単位のT5エキソヌクレアーゼ(New England Biolabs)で37℃で60分間処理した。次いで、T5エキソヌクレアーゼを90℃で5分間加熱することにより不活性化させた。HBsAgコード領域内の標的HBV配列を、95℃で10分間を1サイクル、95℃で30秒間(変性ステップ)、64℃で30秒間(アニーリングステップ)、72℃で30秒間(伸長ステップ)を45サイクル、続いて72℃で10分間の最終伸長のサイクリング条件を使用して、順方向プライマー5’-CCT AGG ACC CCT TCT CGT GT(配列番号29)及び逆方向プライマー5’-ACT GAG CCA GGA GAA ACG GG(配列番号30)、並びにPlatinum PCR SuperMix High Fidelity(Invitrogen)を使用することによって増幅した。10×NEB2緩衝液及び水を10uLのPCR反応物に添加して1×の最終濃度にし、95℃で10分間変性させ、次いで温度を最初に毎秒3℃で85℃に低下させ、次いで更に毎秒0.3℃で25℃に低下させることによって再アニーリングした。ミスマッチDNA配列を、5単位のT7E1ヌクレアーゼ(New England Biolabs)の添加及び37℃で1時間のインキュベーションによって切断した。消化及び未消化産物を、Novex 10%TBEゲル(Thermo Fisher)を用いた電気泳動、及びFluorChem M imager(Protein Simple)を用いたUVによる可視化のためのSYBR green(Thermo Fisher)による染色によって分析した。更に、アンプリコンを次世代配列決定(Genewiz)に供して、TALEN標的領域内の変化を決定した。
【0351】
脂質ナノ粒子内のHBV TALENをコードするmRNAの製剤
エタノール中の脂質(カチオン性脂質:DSPC:コレステロール:PEG-DMG)を、クエン酸緩衝液に溶解した所望のポリペプチドをコードするmRNAと混合することによって、脂質封入mRNA粒子を調製した。混合した材料をリン酸緩衝液で瞬時に希釈した。エタノールを、再生セルロース膜(100kD MWCO)を使用するリン酸緩衝液に対する透析によって、又は修飾ポリエーテルスルホン(modified polyethersulfone、mPES)中空糸膜(100kD MWCO)を使用する接線流濾過(tangential flow filtration、TFF)によって除去した。エタノールが完全に除去されたら、緩衝液を、50mM NaCl及び9%スクロースを含有するHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)緩衝液(pH7.3)と交換した。製剤を濃縮し、続いてPESフィルターを使用して0.2μm濾過した。次いで、製剤中のmRNA濃度をRibogreen蛍光定量アッセイによって測定し、その後、グリセロールを含有する、50mM NaCl、9%スクロース(pH7.3)を含有するHEPES緩衝液で希釈することによって、濃度を最終所望濃度に調整した。次いで、最終製剤を0.2μmフィルターで濾過し、ガラスバイアルに充填し、栓をし、キャップをして、-70±5℃に置いた。凍結製剤を、RibogreenアッセイによるそれらのmRNA含有量及び封入率、断片アナライザーによるmRNA完全性、高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、HPLC)による脂質含有量、Malvern Zetasizer Nano ZSでの動的光散乱による粒径、pH及び浸透圧について特徴付けた。
【0352】
AAV-HBV感染マウスモデル
C57Bl6雄マウス(Taconic)に、1×10^11個のAAV-1.3×HBV(FivePlus)のアデノウイルス感染性粒子を静脈内尾静脈注射によって感染させた。感染の4週間後、血清を採取し、分析してHBsAg及びHBeAgレベルを定量した。4Log以上のHBsAgを有するマウスを、有効性インビボ研究のために選択した。
【0353】
血清中のHBV抗原及びHBV DNAの検出及び定量
AAV-HBVマウスのマウス血清中のHBsAg及びHBeAgのレベルを、Chemiluminescent Immunoassay Kit(Autobio Diagnostics)を使用することによって測定した。血清を、HBeAg及びHBsAg CLIA検出のために、それぞれPBSで1:100及び1:250に希釈した。
【0354】
HBV DNAを、QIAamp DNA Miniキット(Qiagen,カタログ番号51306)、ウイルスDNAのための添付プロトコルの指示に従って、5μlの血清から抽出した。簡単に説明すると、プロテイナーゼK緩衝液中56Cで10分間インキュベートした後、試料を100%エタノールと混合し、QIAmp Mini Spinカラムに適用した。スピンカラムを遠心分離し、説明書に示されるように洗浄し、単離されたDNAを30μlの水に再懸濁した。
【0355】
精製した血清HBV DNAを、2×TaqMan Advance Fast Mix(Thermo Fisher、カタログ番号4444557)を用いて増幅し、20×sAgプローブ(Thermo Fisher、アッセイId Vi03453406_s1 TaqMan遺伝子発現アッセイ(FAM)Dye Label and Assay Concentration FAM-MGB)と混合し、QuantStudio 6 Flex qPCR装置を使用し、50℃で2分間及び95℃で2分間を1サイクル、95℃で10秒間(変性ステップ)、60℃で20秒間(アニーリングステップ)、72℃で30秒間(伸長ステップ)の45サイクル、ランプ速度1.6℃/秒のサイクリング条件を使用して実行した。定量のために、AATC(定量的合成B型肝炎ウイルスDNA(ATCC(登録商標)VR-3232SD(商標))による既知のコピー数の合成HBV DNAの連続希釈を使用して、標準曲線を並行して実行した。データを抽出し、QuantStudioソフトウェアを使用して分析し、一方、統計解析はGraphPadソフトウェアを使用して実行した。
【0356】
マウス肝臓組織におけるHBV DNA遺伝子編集検出
遺伝子編集分析のために、Quick-DNA miniprep Plus Kit(ZymoResearchカタログ番号D4068)からの試薬及びプロトコルを使用して、急速冷凍したマウス肝臓からHBV DNAを抽出した。最初に、急速凍結したマウス肝臓組織をプロテイナーゼK消化緩衝液に入れ、Precellys Evolution Homogenizer(Precellys,Bertin Instruments)内で、軟組織用のPrecellys Lysingキット0.5mlからのチューブ(Precellys、カタログ番号P000933-LYSK0-A)を使用して両方の機械的破壊によって均質化し、次いで消化により、試料を55℃で20分間インキュベートした。次いで、HBV DNAを、スピンカラムクリーンアップによって、Quick-DNA miniprep Plus Kitに示されるように精製した。ゲノムDNAを50ulのDNA溶出緩衝液中に溶出し、定量した。
【0357】
2×SuperFI Platinum MasterMix(Invitrogen、カタログ番号12358250)、順方向プライマー5’-ACA CTC TTT CCC TAC ACG ACG CTC TTC CGA TCT TAT CGC TGG ATG TGT CTG CG-3’(配列番号29)及び逆方向プライマー5’-GAC TGG AGT TCA GAC GTG TGC TCT TCC GAT CTG TCC GAA GGT TTG GTA CAG C-3’(配列番号30)を用いた25ulのPCR反応物中で混合した5ng/ulの精製DNAを使用し、98℃で2分間を1サイクル、95℃で15秒間(変性ステップ)、60℃で15秒間(アニーリングステップ)、72℃で30秒間(伸長ステップ)を35サイクル、続いて72℃で5分間の最終伸長のサイクリング条件を使用するPCRによって、HBV DNA標的配列を増幅した。PCR産物を、NucleoSpin(登録商標)Gel及びPCR Clean-upキット(Macherey-Nagel)を用いてキットの説明書に従って洗浄し、NE緩衝液中に溶出し、定量し、NGS配列決定のために必要に応じて20ng/ulに希釈した。試料をアンプリコン配列決定(アンプリコン-EZ)及びGenewizでの分析に供した。
【実施例】
【0358】
実施例1:TALEN標的部位及びTALEN構造
公的に利用可能なバイオインフォマティクスツールを使用して、コンセンサスHBVゲノム配列内の潜在的なTALEN標的部位を予測した。HBsAg分泌及びウイルス複製を低減するために、HBsAg/polをコードする遺伝子内からTALEN標的部位を選択した(
図1A)。TALEN 28及びTALEN 33は、それぞれ50及び53塩基対長のHBVゲノム領域を標的とし、左アームTALEN配列、右アームTALEN配列、及び両アーム間のスペーサー配列を含む(
図1B)。全てのTALENタンパク質は、キャップ、5’非翻訳領域(UTR)、タグペプチドをコードする配列、核局在化シグナルをコードする配列、TALEN N末端ドメインをコードする配列、反復可変二残基(RVD)を含有する反復ドメインを有するTALEN DNA結合ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、FokIヌクレアーゼをコードする配列、3’UTR及びポリAテールを含むmRNA分子によってコードされた。任意選択的に、キャップ、5’非翻訳領域(UTR)、核局在化シグナルをコードする配列、TALEN N末端ドメインをコードする配列、反復可変二残基(RVD)を含有する反復ドメインを有するTALEN DNA結合ドメインをコードする配列、C末端ドメインをコードする配列、FokIヌクレアーゼをコードする配列、3’UTR及びポリAテールを含む構築物を作製することができる。4つのDNAヌクレオチド塩基を標的化するために使用したTALEN 28及びTALEN 33 RVDは、NN(標的A及びG)、NI(標的T)、NG(標的C)及びHD(標的G)であった(
図1C)。
【0359】
実施例2:TALEN標的部位は保存されており、TALENは広範な機能的遺伝子型範囲を示す
TALEN 28及び33の左及び右アームについてのHBV標的配列の保存分析を、全ての異なるHBV遺伝子型を含む何百ものHBVゲノム配列にわたって実行した。異なる遺伝子型にわたるHBV標的配列のアラインメントは、TALEN 28及びTALEN 33について97~100%の非常に高い保存を示した(それぞれ、以下の表1及び表2)。TALEN 28及びTALEN 33の右アームが標的とする配列については、遺伝子型A及びCについて2つの位置がミスマッチを示した(以下の表1及び表2)。
【0360】
【0361】
【0362】
【0363】
【0364】
TALEN 28及びTALEN 33が標的とする配列の保存を図式的に表すために、保存ロゴを、異なるHBVゲノムにおける各標的化ヌクレオチドの存在量に基づいて生成した。保存が高いほど、豊富なヌクレオチドのサイズが大きい。TALEN 28及びTALEN 33の左アームは、全ての標的ヌクレオチドにわたって非常に高い保存を示した(
図2A及び
図3A)。TALEN 28及びTALEN 33の両方の右アームが標的とするHBV配列については、2つの位置が見出された(TALEN 28については6位及び9位、
図2B;TALEN 33については9位及び12位、
図3B)、これは、HBV遺伝子型に応じて2つの代替塩基(C又はT)を示した。
【0365】
HBV標的配列の可変性がTALEN有効性にどのように影響し得るかを理解するために、TALEN 28及びTALEN 33遺伝子型範囲を、生化学的アッセイを使用して評価した。8つの異なる遺伝子型からのHBV配列をプラスミドにクローニングし、それらのTALEN 28及びTALEN 33標的配列をアラインメントさせたところ、遺伝子型A及びCにおいて単一のミスマッチが示された(
図4A及び
図4B)。TALEN 28及びTALEN 33 mRNAからの左及び右アームを、網状赤血球インビトロ翻訳系(Promega)を使用してインビトロで翻訳し、異なるHBV遺伝子型の配列を含有する線状化プラスミドとともにインキュベートした。HBV標的配列を含有するプラスミドのTALEN消化を、ポリアクリルアミドゲルを使用して分析し、未切断DNAには存在しない新しいDNA断片の存在によって検出した。TALEN 28及びTALEN 33は、試験した全てのHBV遺伝子型(A~H)についてDNA切断を示し、したがって、広い遺伝子型範囲を示した(
図4C)。生化学的アッセイにおいて観察されたTALEN 33の遺伝子型範囲を、初代ヒト肝細胞を異なる遺伝子型(A、B、C及びD)のHBVに感染させ、細胞にTALEN 33 mRNAをトランスフェクトすることによって検証した。TALEN 33 mRNAをトランスフェクトした全ての試料において、HBV DNAの破壊が観察された(
図8、表3)。
【0366】
【0367】
【0368】
【0369】
【0370】
【表9】
*TALEN 33誘導性の標的化cccDNA配列破壊を、標的化アンプリコンの次世代配列決定によって調べた。左及び右のTALEN標的化配列を太字で示し、スペーサー配列を下線で示す。一般的に検出される破壊及び対応する配列決定リード数が示されている。破線は欠失を表し、塩基置換はより大きなフォントで示される。
#TALEN 33標的配列内のHBV Pol及びHBsAgのオープンリーディングフレーム。
【0371】
実施例3:HepG2.2.15細胞におけるHBV TALEN HBsAgの低減及び遺伝子編集
TALEN mRNAの有効性を、HBVを構成的に発現するHepG2.2.15細胞株において試験した。簡潔には、TALEN mRNAを、線状化TALENプラスミドからインビトロで転写した。TALEN mRNAを、リポフェクタミン試薬を用いてHepG2.2.15細胞にトランスフェクトした。TALEN発現は、TALENタンパク質に特異的な抗体を使用する免疫蛍光法によって、24時間後にトランスフェクト細胞において検出することができた(
図5A)。TALEN 28及びTALEN 33 mRNAを異なる濃度でHepG2.2.15細胞にトランスフェクトし、トランスフェクションの6日後に細胞培養培地中のHBsAgのレベルを評価した。細胞培養培地中のHBsAgのレベルの低下は用量依存的であった(
図5B)。高濃度のmRNAのトランスフェクションは、細胞生存率に対して負の効果を有した(
図5C)。HBV DNA編集活性を、mRNAトランスフェクションの6日後に次世代配列決定によって同じ試料において評価した。TALEN 28及びTALEN 33遺伝子編集活性を、スペーサー領域における挿入及び欠失の存在量を決定することによって定量した(
図5D)。
図5Dに示されるように、遺伝子編集活性は用量依存的であり、HBsAg低減と相関した。
【0372】
実施例4:初代ヒト肝細胞(PHH)におけるHBV TALEN HBsAgの低減及び遺伝子編集
初代ヒト肝細胞を5日間感染させた後、TALEN 28又はTALEN 33 mRNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後に培地を交換した後、HBV cccDNA及び細胞培養培地を、遺伝子編集及び抗ウイルスアッセイのために収集した(それぞれTALEN 28及びTALEN 33について
図6A及び
図7A)。TALEN 28発現を、異なるmRNA量のトランスフェクションの24時間後に免疫蛍光法によって検出した(
図6C)。トランスフェクトされていない細胞におけるレベルと比較して、TALEN 28 mRNAのトランスフェクションの6日後に、細胞培養培地におけるHBsAg及びHBeAgレベルの強い減少が検出された(
図6C)。HBV DNA切断活性を、T7E1消化アッセイによって同じ処置細胞及び未処置細胞から抽出したHBV cccDNAにおいて分析した(
図6D)。
図6Dに示すように、編集されたHBV DNAに対応するDNAを、トランスフェクトされた細胞において検出することができた。対照的に、編集されたDNAは、トランスフェクトされていない細胞には存在しなかった(
図6D)。TALEN 28によって導入されたHBV cccDNA修飾の性質を確認するために、標的HBV DNA領域をNGSによって配列決定した。検出された修飾の大部分は、予測されるFokI切断部位における欠失に対応し(
図6E)、HBV cccDNAを修飾するTALEN 28の有効性が確認された。
【0373】
同じ分析をTALEN 33について実施した(
図7A)。最初に、PHHにおけるTALENタンパク質発現を、mRNAトランスフェクションの6時間後に免疫蛍光染色によって確認した(
図7B)。トランスフェクションの6日後(HBV遺伝子型Dによる感染の11日後)に感染細胞においてTALEN 33の有効性を評価した。TALEN 33 mRNAトランスフェクションは、処置されたPHHの細胞培養培地中のHBsAg及びHBeAgの両方のレベルを低下させた(
図7C)。同じPHH試料からHBV cccDNAを抽出した後、T7エンドヌクレアーゼ1消化アッセイにより、TALEN 33 mRNAをトランスフェクトした細胞における修飾HBV DNAの存在が確認された(
図7D)。更に、TALEN 33 mRNAトランスフェクションは、T7E1消化アッセイ(
図8)及びNGSによる遺伝子編集の定量(表3)によって示されるように、A、B、C又はD遺伝子型のHBVに感染したPHH細胞からのHBV cccDNAを破壊することができた。これらの結果は、TALEN mRNAトランスフェクションが、細胞培養培地へのHBVウイルスマーカーの分泌を低減し、遺伝子編集によって異なる遺伝子型のHBV DNAを修飾する能力を確認する。
【0374】
実施例5:LNP-TALENは、AAV HBVマウスモデルにおいてインビボでHBVマーカーを低減する
インビボでのTALEN mRNA処置の有効性を評価するために、AAV-HBVマウスに、脂質ナノ粒子(LNP)又は陰性対照としてのPBS中に製剤化された異なる濃度のTALEN 28及びTALEN 33 mRNAを注射した。0日目(D0)に単回投与した後、HBsAgの血清レベルは、0.5mg/kg及び1mg/kgを注射したマウスでは投与後7日目から有意に低下し、0.25mg/kgを注射したマウスではより低い程度まで低下した(
図9A)。HBsAgの減少は、評価される最後の時点である投与後71日目まで維持された。LNP-TALEN 28及び33の最高用量(1mg/kg)では、HBsAgの減少は、定量に使用したCLIA系の定量の下限に近い、2logのHBsAgに達した。HBsAgレベルの低下と並行して、血清中のHBV DNAレベルもまた、71日目まで、試験した全ての用量(すなわち、0.25mg/kg、0.5mg/kg及び1mg/kgの用量)で処置後7日目までに有意に低下した(
図9B)。血清中のHBsAg及びHBV DNAマーカーの減少は、投与後71日目まで維持され、不可逆的減少と一致した。処置されたAAV-HBVマウスにおけるTALENタンパク質のHBV DNA修飾活性を検証するために、肝臓組織から全DNAを抽出し、HBV TALEN標的部位をNGSによって配列決定した。NGSデータの分析は、TALEN 28及びTALEN 33がHBV DNA標的配列においてインデル修飾を誘導したこと、及び検出された修飾DNAの量がLNP-TALEN用量の増加とともに増加したことを示した(
図9C)。理論に制限されるものではないが、TALENによって誘導されるHBV DNA修飾は不可逆的であるため、HBsAg又はHBV DNAの血清レベルにおけるリバウンドの可能性が低減される。
【0375】
実施例6:単一LNP-TALEN処置後のインビボでのHBV血清マーカーの減少は、ヌクレオシド阻害剤と比較して不可逆的である
ヌクレオシド阻害剤治療薬をLNP-TALEN処置と比較するために、AAV-HBVマウスモデルを使用した。HBsAg及びHBV DNAの4logを超える血清レベルを有するマウスを選択し、7日間毎日(QD)投与されるヌクレオシド阻害剤エンテカビル(ETV、0.01mg/kg)、2mg/kgの単回IV注射として投与されるHBV標的化LNP-TALEN 33、又は2mg/kgの単回IV注射として投与される非HBV標的化TALEN TTRのいずれかで処置した。LNP-TALEN 33の単回注射は、血漿HBsAg(
図10A)及びHBV DNA(
図10B)レベルを91日間にわたって恒久的に低下させた。HBVを標的としないLNP-TALEN TTR処置では、HBV血清マーカーに対する効果は検出されなかった(
図10A、10B)。ETV処置により、処置期間中、血漿HBV DNAレベルのみが低下し、HBsAgレベルは低下せず(
図10A及び10B)、処置が終了すると(7日目)ウイルスのリバウンドが見られた(
図10B)。
【0376】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【表10-5】
【表10-6】
【0377】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に開示された本発明に対して様々な置換及び修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0378】
本明細書中で言及される全ての特許及び刊行物は、本発明が属する当業者のレベルを示す。
【0379】
本明細書に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(単数又は複数)、制限(単数又は複数)の不在下で適切に実施され得る。したがって、例えば、本明細書の各例において、「含む」、「から本質的になる」、及び「からなる」という用語はいずれも、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。使用された用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用において、示され、説明された特徴又はその一部の任意の均等物を除外する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。更に、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、当業者は、本発明がそれによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関しても記載されていることを認識するであろう。例えば、Xが臭素、塩素及びヨウ素からなる群から選択されると記載されている場合、Xが臭素である請求項並びにXが臭素及び塩素である請求項が完全に記載されている。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【配列表】
【国際調査報告】