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特表2024-501024ペイロードを細胞に送達するためのシステムにおける使用のための増加したスループットを有するマイクロ流体チップ
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  • 特表-ペイロードを細胞に送達するためのシステムにおける使用のための増加したスループットを有するマイクロ流体チップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ペイロードを細胞に送達するためのシステムにおける使用のための増加したスループットを有するマイクロ流体チップ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20231227BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539284
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021073121
(87)【国際公開番号】W WO2022147428
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/131,423
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518071763
【氏名又は名称】スクイーズ バイオテクノロジーズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダドガー, マイサム
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB11
4B029CC01
4B029GA08
4B029GB09
4B029GB10
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BD21
4B065BD39
4B065CA44
(57)【要約】
第1の層と、第2の層と、第1の層と第2の層との間の流体流れ領域とを含む、細胞にペイロードを送達させるためのマイクロ流体チップが提供される。このマイクロ流体チップは、流体流れ領域への細胞懸濁液の流れを受け入れるように構成される。マイクロ流体チップの第1の層は、第2の層に向かって延在して、突出部と第2の層との間に狭窄部を形成する突出部を含み、狭窄部は、細胞が狭窄部を通過するときに細胞懸濁液の細胞の細胞膜の摂動を引き起こすように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞にペイロードを送達させるためのマイクロ流体チップであって、前記チップが、
第1の層と、
第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層との間の流体流れ領域とを含み、前記チップが、前記流体流れ領域への細胞懸濁液の流れを受け入れるように構成され、前記細胞懸濁液が複数の細胞を含み、
前記第1の層が、前記第2の層に向かって延在して突出部と前記第2の層との間に狭窄部を形成する前記突出部を含み、前記狭窄部が、前記細胞が前記狭窄部を通過する際に、前記複数の細胞の細胞の細胞膜の摂動を引き起こすように構成される、マイクロ流体チップ。
【請求項2】
前記第1の層がシリコンを含む、請求項1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記第2の層がガラスを含む、請求項1または2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
前記突出部が、前記第1の層の内面に垂直な高さ方向に前記第1の層の前記内面から離れて延在し、前記第1の層の前記内面に隣接する近位端を含む、請求項1~3のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記突出部が、前記第1の層の内面に垂直な高さ方向に前記第1の層の前記内面から離れて延在し、前記突出部の遠位端と前記第2の層の内面との間に前記狭窄部を形成する前記突出部の前記遠位端を含み、前記高さ方向に測定した場合、前記突出部の前記遠位端と前記第2の層の前記内面との間の前記狭窄部の高さが、5ミクロンより小さいまたはそれと等しい、請求項1~4のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
前記狭窄部の前記高さが、前記複数の細胞の前記細胞の直径よりも小さい、請求項5に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項7】
前記マイクロ流体チップが入口および出口を含み、前記入口が、前記チップの第1の端部に配置され、前記出口が、前記第1の端部の反対側の前記チップの第2の端部に配置され、前記入口と前記出口との間の距離が、前記第1の層の内面に垂直な方向に延在する、請求項1~6のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項8】
前記突出部の前記近位端が、前記高さ方向に垂直に延在し、前記突出部の上流側から前記突出部の下流側に延在する厚さを有し、前記突出部の前記近位端の前記厚さが10ミクロンより大きいまたはそれと等しい、請求項4~7のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項9】
前記突出部の前記遠位端が、前記高さ方向に垂直に延在し、前記狭窄部の上流側から前記狭窄部の下流側に延在する厚さを有し、前記突出部の前記遠位端の前記厚さが5ミクロンより大きいまたはそれと等しい、請求項5~8のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項10】
前記突出部が、前記高さ方向に垂直に延在し、前記狭窄部の上流側と前記狭窄部の下流側との間の界面に沿って延在する長さを有し、前記長さが0.5cmより大きいまたはそれと等しい、請求4~9のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項11】
前記狭窄部の前記上流側と前記狭窄部の前記下流側との間の前記界面が、曲線および角度のうちの一方または両方を含む、請求項10に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項12】
前記狭窄部の前記上流側と前記狭窄部の前記下流側との間の前記界面が、蛇行経路を形成する、請求項1~11のいずれかに記載マイクロ流体チップ。
【請求項13】
前記界面の前記蛇行経路が、前記蛇行経路に沿った全ての位置で前記高さ方向に垂直である、請求項12に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項14】
前記蛇行経路が、1またはそれを超える直角を含む、請求項12または13に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項15】
前記第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に対して垂直に延在する前記マイクロ流体チップの第1の寸法が18~24mmである、請求項1~14のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項16】
前記第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に対して垂直に延在する前記マイクロ流体チップの第2の寸法が8~15mmである、請求項1~15のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項17】
前記第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に延在する前記マイクロ流体チップの高さ寸法が1000~1500ミクロンである、請求項1~16のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項18】
前記第2の層が複数の支持ピラーで前記第1の層に接触し、前記複数の支持ピラーの各支持ピラーが前記第1の層の内面から前記第2の層まで延在する、請求項1~17のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項19】
前記第1の層が、前記第1の層の平面に垂直な高さ方向に測定した場合、500~750ミクロンの全高を有する、請求項1~18のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項20】
前記第1の層が450~650ミクロンの最小高さを有し、前記最小厚さが、前記第1の層の内面に垂直な高さ方向に測定され、前記最小厚さが、前記第1の層の外面から、前記流体流れ領域と接する前記第1の層の最も近い内面まで測定される、請求項1~19のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項21】
前記第2の層が、前記第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に測定した場合、450~800ミクロンの厚さを有する、請求項1~20のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項22】
前記突出部の最上面が、前記第1の層の内面に並列であり、前記突出部が前記第1の層の前記内面から延在する高さ方向に垂直な平面を含む、請求項1~21のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項23】
前記突出部の最上面が、前記第2の層の内面に並列であり、前記突出部が前記第1の層の前記内面から延在する高さ方向に垂直な平面を含む、請求項1~22のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項24】
前記突出部の側面が、前記第1の層の内面からある角度で上方に延在する、請求項1~23のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項25】
前記突出部の前記側面が、前記第1の層の前記内面から50~60度傾斜している、請求項24に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項26】
前記突出部の前記側面が、前記第1の層の前記内面から54.7度傾斜している、請求項24または25に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項27】
前記細胞懸濁液がペイロードを含む、請求項1~26のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項28】
前記チップが10psiより大きいまたはそれと等しい圧力で動作するように構成される、請求項1~27のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項29】
前記狭窄部の周囲長に対する前記狭窄部の断面積の商が0.5ミクロンより大きいまたはそれと等しい、請求項1~28のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【請求項30】
ペイロードを細胞に送達させる方法であって、前記方法が、
マイクロ流体チップの流体流れ領域への細胞懸濁液の流れを受け取ることであって、前記細胞懸濁液が複数の細胞を含む、細胞懸濁液の流れを受け取ることと、
前記マイクロ流体チップの突出部と第2の層との間に形成された狭窄部を通して前記細胞を流動させることによって、前記複数の細胞の細胞の細胞膜を摂動させることとを含み、前記突出部が、前記マイクロ流体チップの第1の層の内面から前記マイクロ流体チップの前記第2の層に向かって延在し、前記細胞膜の前記摂動が、ペイロードの前記細胞への進入を可能にする、方法。
【請求項31】
前記マイクロ流体チップの突出部と第2の層との間に形成された狭窄部を通して前記細胞を流動させることによって前記複数の細胞の細胞の細胞膜を摂動させることが、前記狭窄部を通して前記細胞を0.5m/秒より大きいまたはそれと等しい流量で流動させることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記マイクロ流体チップが、10psiより大きいまたはそれと等しい圧力で動作するように構成される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞懸濁液が前記ペイロードを含む、請求項30~32のいずれか記載の方法。
【請求項34】
前記細胞膜の摂動後に前記ペイロードを前記細胞懸濁液と接触させることを含む、請求項30~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
ペイロードを細胞に送達させるためのマイクロ流体チップを製造する方法であって、前記方法が、
第1の層にエッチングして、前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することと、
前記第1の層に第2の層を固定して、前記凹部面と前記第2の層との間に画定された流体流れ領域と、前記突出部と前記第2の層との間に画定された狭窄部とを有するマイクロ流体チップを形成することと、を含む、方法。
【請求項36】
第1の層にエッチングして前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することが、湿式または乾式化学エッチング剤を使用することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
第1の層にエッチングして前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することが、前記流体流れ領域を画定するために30ミクロンより大きいまたはそれと等しい深さまで前記第1の層にエッチングすることを含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
第1の層にエッチングして前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することが、前記突出部の遠位端を形成するために5ミクロンより小さいまたはそれと等しい深さまで前記第1の層にエッチングすることを含む、請求項35~37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
第1の層にエッチングして前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することが、前記突出部の遠位端を形成するために前記第1の層にエッチングすることを含み、前記突出部の前記遠位端が、前記第1の層の平面に垂直な高さ方向に垂直に延在する厚さを有し、前記遠位端の厚さが、前記突出部の上流側から前記突出部下流側に向かって延在し、前記突出部の前記遠位端の厚さが5ミクロンより大きいまたはそれと等しい、請求項35~38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記突出部が、前記高さ方向に垂直に延在し、前記狭窄部の上流側と前記狭窄部の下流側との間の界面に沿って延在する長さを有し、前記長さが0.5cmより大きいまたはそれと等しい、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記狭窄部の前記上流側と前記狭窄部の前記下流側との間の前記界面が、曲線および角度のうちの一方または両方を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記狭窄部の前記上流側と前記狭窄部の前記下流側との間の界面が、蛇行経路を形成する、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記界面の前記蛇行経路が、前記蛇行経路に沿った全ての位置で前記高さ方向に垂直である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記蛇行経路が、1またはそれを超える直角を含む、請求項42または43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月29日に出願された米国仮出願第63/131,423号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ペイロードを細胞内に送達するためのシステムに関し、より具体的には、細胞膜の摂動を引き起こしてペイロードが摂動した細胞膜を通過することを可能にするための狭窄部を有するマイクロ流体チップに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
細胞への様々な材料の制御された送達は、細胞療法の発展中の医療分野において重要である。例えば、様々な研究および治療用途は、細胞膜を通して細胞内へのペプチド、核酸、タンパク質、小分子およびナノ材料の送達を含み得る。国際公開第2013059343号、国際公開第2015023982号、PCT/US2015/058489号、PCT/US2015/060689号、およびPCT/US2016/13113号で論じられているように、狭窄マイクロ流体チャネルを使用して、化合物および他のペイロードを細胞に送達することができる。PCT/US18/66295に開示されているように、卓上実験室および/または臨床システムは、狭窄部カートリッジを通して細胞懸濁液を押し出すように構成されてもよく、狭窄部カートリッジは、細胞懸濁液中の細胞の膜に摂動を引き起こすために、狭窄チャネルまたは狭窄部細孔を有する、1またはそれを超える狭窄部含有要素(例えば、マイクロ流体チップまたはフィルタ等の部分、部品、デバイス、構成要素等)を収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013059343号
【特許文献2】国際公開第2015023982号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
上記で説明したように、細胞内ペイロード送達のためのシステムは、細胞膜の摂動を引き起こすために、細胞懸濁液の細胞をマイクロ流体チップの1またはそれを超える狭窄部に押し出すように構成されたシステムを含む。しかしながら、細胞内ペイロード送達のための公知のシステムは、狭窄部の中および周囲の細胞の目詰まりを起こしやすく、スループット速度が不十分であり、製造するのに十分に簡単かつ効率的ではない。
したがって、高いスループット速度および低い細胞目詰まり速度を有する改善されたマイクロ流体チップの必要性を含む、細胞内ペイロード送達のための改善されたシステム、方法、および技術が必要とされている。改善されたスループット、および細胞目詰まりまたは他の故障に対する改善された耐性、ならびに改善された製造の容易さおよび効率を可能とする改善された幾何学的構成を有するマイクロ流体チップも必要とされている。本明細書に開示されるシステム、方法、および技術は、幾何学的構成、スループット、目詰まりまたは他の故障に対する耐性、およびマイクロ流体チップおよび/またはシステムの製造の容易さおよび効率、使用方法、および/または製造方法を改善するための1またはそれを超えるこれらの必要性に対処することができる。
【0006】
本明細書では、細胞内ペイロード送達のためのシステムにおける使用のためのハイスループットマイクロ流体チップが提供される。本明細書に開示されるマイクロ流体チップは、細胞が狭窄部を通って流れるときに細胞懸濁液中の細胞の細胞膜を摂動させるための狭窄部を有する。特に、本明細書に記載のマイクロ流体チップは、上述のマイクロ流体チップ等の既知のマイクロ流体チップよりもスループットの向上および細胞目詰まりの減少を可能にする。さらに、本明細書に記載のマイクロ流体チップはまた、より一貫した直接的で効率的な方法を使用して製造される。したがって、細胞膜を摂動させ、ペイロードを細胞に導入するためのマイクロ流体チップは、細胞内送達ペイロードのための既知のマイクロ流体チップと比較して、製造がより容易であり得、より高いスループットを達成し得、細胞目詰まりの量を最小化し得る。
【0007】
具体的には、本明細書に開示されるマイクロ流体チップは、上流側の流体流れ領域と下流側の流体流れ領域との間に配置された1またはそれを超える狭窄部を含む。この狭窄部は、既知のマイクロ流体チップの狭窄領域よりも著しく長く、より多くの細胞が狭窄部を同時に通過することを可能にする。したがって、本明細書に記載のマイクロ流体チップに提供される狭窄部は、より大きな摂動された細胞スループットを提供する。本明細書で提供されるマイクロ流体チップはまた、以下で詳細に説明する開示されたチップの固有の幾何学的形状に起因して、狭窄部(複数可)またはその付近での細胞目詰まりの発生を最小限に抑える。
【0008】
細胞膜を摂動させるための狭窄部に加えて、本明細書で提供されるマイクロ流体チップはまた、第1の層と第2の層との間に形成された流体流れ領域を有する第1の層および第2の層を含み、流体流れ領域を通じて細胞懸濁液およびペイロードが流れるように構成される。第1の層は、第1の層の内面から第2の層に向かって延在する1またはそれを超える突出部を含み得る。突出部の端部と第2の層との間の空間は、上述の狭窄部を画定する。狭窄部の高さは、細胞が狭窄部を通って流れるときにその膜が摂動されるように、細胞の直径に依存する。摂動後、細胞膜が閉じる前にペイロードは細胞に入ることができる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップは、マイクロ流体チップの表面を横切る蛇行経路をたどる単一の突出部を含み得る。蛇行経路は、例えば、既知のマイクロ流体チップのものよりもはるかに長い狭窄部を提供することができ、上記で説明したように、より大きな細胞スループットおよび最小限の細胞目詰まりを可能にする。
【0009】
一部の実施形態では、細胞にペイロードを送達させるためのマイクロ流体チップであって、チップは、第1の層と、第2の層と、第1の層と第2の層との間の流体流れ領域とを含み、チップは、流体流れ領域への細胞懸濁液の流れを受け入れるように構成され、細胞懸濁液が複数の細胞を含み、第1の層は、第2の層に向かって延在して突出部と第2の層との間に狭窄部を形成する突出部を含み、狭窄部は、細胞が狭窄部を通過する際に、複数の細胞の細胞の細胞膜の摂動を引き起こすように構成される、マイクロ流体チップが提供される。
【0010】
チップの一部の実施形態では、第1の層がシリコンを含む。
【0011】
チップの一部の実施形態では、第2の層がガラスを含む。
【0012】
チップの一部の実施形態では、突出部は、第1の層の内面に垂直な高さ方向に第1の層の内面から離れて延在し、第1の層の内面に隣接する近位端を含む。
【0013】
チップの一部の実施形態では、突出部は、第1の層の内面に垂直な高さ方向に第1の層の内面から離れて延在し、突出部の遠位端と第2の層の内面との間に狭窄部を形成する突出部の遠位端を含み、高さ方向に測定した場合、突出部の遠位端と第2の層の内面との間の狭窄部の高さは、5ミクロンより小さいまたはそれと等しい。
【0014】
チップの一部の実施形態では、狭窄部の高さは、複数の細胞の細胞の直径よりも小さい。
【0015】
チップの一部の実施形態では、マイクロ流体チップが入口および出口を含み、入口は、チップの第1の端部に配置され、出口は、第1の端部の反対側のチップの第2の端部に配置され、入口と出口との間の距離は、第1の層の内面に垂直な方向に延在する。
【0016】
チップの一部の実施形態では、突出部の近位端は、高さ方向に垂直に延在し、突出部の上流側から突出部の下流側に延在する厚さを有し、突出部の近位端の厚さが10ミクロンより大きいまたはそれと等しい。
【0017】
チップの一部の実施形態では、突出部の遠位端は、高さ方向に垂直に延在し、狭窄部の上流側から狭窄部の下流側に延在する厚さを有し、突出部の遠位端の厚さが5ミクロンより大きいまたはそれと等しい。
【0018】
チップの一部の実施形態では、突出部は、高さ方向に垂直に延在し、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面に沿って延在する長さを有し、長さが0.5cmより大きいまたはそれと等しい。
【0019】
チップの一部の実施形態では、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面は、曲線および角度のうちの一方または両方を含む。
【0020】
チップの一部の実施形態では、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面は、蛇行経路を形成する。
【0021】
チップの一部の実施形態では、界面の蛇行経路は、蛇行経路に沿った全ての位置で高さ方向に垂直である。
【0022】
チップの一部の実施形態では、蛇行経路は、1またはそれを超える直角を含む。
【0023】
チップの一部の実施形態では、第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に対して垂直に延在するマイクロ流体チップの第1の寸法が18~24mmである。
【0024】
チップの一部の実施形態では、第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に対して垂直に延在するマイクロ流体チップの第2の寸法が8~15mmである。
【0025】
チップの一部の実施形態では、第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に延在するマイクロ流体チップの高さ寸法が1000~1500ミクロンである。
【0026】
チップの一部の実施形態では、第2の層が複数の支持ピラーで第1の層に接触し、複数の支持ピラーの各支持ピラーが第1の層の内面から第2の層まで延在する。
【0027】
チップの一部の実施形態では、第1の層は、第1の層の平面に垂直な高さ方向に測定した場合、500~750ミクロンの全高を有する。
【0028】
チップの一部の実施形態では、第1の層が450~650ミクロンの最小高さを有し、最小厚さは、第1の層の内面に垂直な高さ方向に測定され、最小厚さは、第1の層の外面から、流体流れ領域と接する第1の層の最も近い内面まで測定される。
【0029】
チップの一部の実施形態では、第2の層は、第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に測定した場合、450~800ミクロンの厚さを有する。
【0030】
チップの一部の実施形態では、突出部の最上面は、第1の層の内面に並列であり、突出部が第1の層の内面から延在する高さ方向に垂直な平面を含む。
【0031】
チップの一部の実施形態では、突出部の最上面は、第2の層の内面に並列であり、突出部が第1の層の内面から延在する高さ方向に垂直な平面を含む。
【0032】
チップの一部の実施形態では、突出部の側面は、第1の層の内面からある角度で上方に延在する。
【0033】
チップの一部の実施形態では、突出部の側面は、第1の層の内面から50~60度傾斜している。
【0034】
チップの一部の実施形態では、突出部の側面は、第1の層の内面から54.7度傾斜している。
【0035】
チップの一部の実施形態では、細胞懸濁液がペイロードを含む。
【0036】
チップの一部の実施形態では、チップが10psiより大きいまたはそれと等しい圧力で動作するように構成される。
【0037】
チップの一部の実施形態では、狭窄部の周囲長に対する狭窄部の断面積の商が0.5ミクロンより大きいまたはそれと等しい。
【0038】
一部の実施形態では、ペイロードを細胞に送達させる方法が提供され、方法は、マイクロ流体チップの流体流れ領域への細胞懸濁液の流れを受け取ることであって、細胞懸濁液が複数の細胞を含む、細胞懸濁液の流れを受け取ることと、マイクロ流体チップの突出部と第2の層との間に形成された狭窄部を通して細胞を流動させることによって、複数の細胞の細胞の細胞膜を摂動させることとを含み、突出部は、マイクロ流体チップの第1の層の内面からマイクロ流体チップの第2の層に向かって延在し、細胞膜の摂動は、ペイロードの細胞への進入を可能にする。
【0039】
方法の一部の実施形態では、マイクロ流体チップの突出部と第2の層との間に形成された狭窄部を通して細胞を流動させることによって複数の細胞の細胞の細胞膜を摂動させることは、狭窄部を通して細胞を0.5m/秒より大きいまたはそれと等しい流量で流動させることを含む。
【0040】
方法の一部の実施形態では、マイクロ流体チップは、10psiより大きいまたはそれと等しい圧力で動作するように構成される。
【0041】
方法の一部の実施形態では、細胞懸濁液がペイロードを含む。
【0042】
方法の一部の実施形態では、方法は、細胞膜の摂動後にペイロードを細胞懸濁液と接触させることを含む。
【0043】
一部の実施形態では、ペイロードを細胞に送達させるためのマイクロ流体チップを製造する方法が提供され、方法は、第1の層にエッチングして、第1の層の凹部面および第1の層の突出部を形成することと、第1の層に第2の層を固定して、凹部面と第2の層との間に画定された流体流れ領域と、突出部と第2の層との間に画定された狭窄部とを有するマイクロ流体チップを形成することと、を含む。
【0044】
方法の一部の実施形態では、第1の層にエッチングして第1の層の凹部面および第1の層の突出部を形成することは、湿式または乾式化学エッチング剤を使用することを含む。
【0045】
方法の一部の実施形態では、第1の層にエッチングして第1の層の凹部面および第1の層の突出部を形成することは、流体流れ領域を画定するために30ミクロンより大きいまたはそれと等しい深さまで第1の層にエッチングすることを含む。
【0046】
方法の一部の実施形態では、第1の層にエッチングして第1の層の凹部面および第1の層の突出部を形成することは、突出部の遠位端を形成するために5ミクロンより小さいまたはそれと等しい深さまで第1の層にエッチングすることを含む。
【0047】
方法の一部の実施形態では、第1の層にエッチングして第1の層の凹部面および第1の層の突出部を形成することは、突出部の遠位端を形成するために第1の層にエッチングすることを含み、突出部の遠位端は、第1の層の平面に垂直な高さ方向に垂直に延在する厚さを有し、遠位端の厚さは、突出部の上流側から突出部下流側に向かって延在し、突出部の遠位端の厚さが5ミクロンより大きいまたはそれと等しい。
【0048】
方法の一部の実施形態では、突出部は、高さ方向に垂直に延在し、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面に沿って延在する長さを有し、長さが0.5cmより大きいまたはそれと等しい。
【0049】
方法の一部の実施形態では、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面は、曲線および角度のうちの一方または両方を含む。
【0050】
方法の一部の実施形態では、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面は、蛇行経路を形成する。
【0051】
方法の一部の実施形態では、界面の蛇行経路は、蛇行経路に沿った全ての位置で高さ方向に垂直である。
【0052】
方法の一部の実施形態では、蛇行経路は、1またはそれを超える直角を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、実施形態のいずれかに関して上述した1またはそれを超える特徴、特性、または要素のいずれかは、上述したまたは本明細書の他の箇所に記載された他の実施形態のいずれかに組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、いくつかの実施形態による、マイクロ流体チップの上面図を示す。
【0055】
図2A図2Aは、いくつかの実施形態による、マイクロ流体チップの突出部上および狭窄部を通って流れる細胞のアイソメトリック図を示す。
【0056】
図2B図2Bは、いくつかの実施形態による、マイクロ流体チップの突出部上および狭窄部を通って流れる細胞の側面図を示す。
【0057】
図2C図2Cは、いくつかの実施形態による、マイクロ流体チップの突出部上および狭窄部を通って流れる細胞の上面図を示す。
【0058】
図2D図2Dは、いくつかの実施形態による、ペイロードを細胞に送達するためのチップを保持するカートリッジの分解立体図を示す。
【0059】
図3図3は、いくつかの実施形態による、細胞にペイロードを送達させる方法を示す。
【0060】
図4図4は、いくつかの実施形態による、本明細書に記載のマイクロ流体チップの流路剪断応力データを示す。
【0061】
図5図5は、いくつかの実施形態による、本明細書に記載のマイクロ流体チップの流路剪速度データを示す。
【0062】
図6図6は、いくつかの実施形態による、本明細書に提供されるマイクロ流体チップの突出部によって形成された狭窄部を通って流れる細胞の断面図を示す。
【0063】
図7図7は、いくつかの実施形態による、マイクロ流体チップの突出部を形成するためにシリコンの層をエッチングするプロセスを示す。
【0064】
図8】いくつかの実施形態による、5つの異なるマイクロ流体チップの幾何学的形状のゴースト成分(ghost constituency)データを示す。
【0065】
図9図9は、いくつかの実施形態による、5つの異なるマイクロ流体チップの幾何学的形状の総OVA 647送達割合を示す。
【0066】
図10図10は、いくつかの実施形態による、5つの異なるマイクロ流体チップの幾何学的形状の総OVA 647平均蛍光強度を示す。
【0067】
図11図11は、いくつかの実施形態による、5つの異なるマイクロ流体チップの幾何学的形状に対するアネキシンV+細胞の総割合を示す。
【0068】
図12図12は、いくつかの実施形態による、5つの異なるマイクロ流体チップの幾何学的形状についてのアネキシンV+細胞の平均蛍光強度の合計を示す。
【0069】
図13図13は、いくつかの実施形態による、5つの異なるマイクロ流体チップの幾何学的形状についての細胞集団によるOVA 647送達割合を示す。
【0070】
図14図14は、いくつかの実施形態による、5つの異なるマイクロ流体チップの幾何学的形状についての細胞集団によるOVA 647平均蛍光強度を示す。
【0071】
図15図15は、いくつかの実施形態による、5つの異なるマイクロ流体チップの幾何学的形状についての細胞集団によるアネキシンV+細胞の割合を示す。および、
【0072】
図16図16は、いくつかの実施形態による、5つの異なるマイクロ流体チップの幾何学的形状についての細胞集団によるアネキシンV+細胞の平均蛍光強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
発明の詳細な説明
部分的または完全に自動化された細胞内ペイロード送達のためのシステムにおける使用のためのマイクロ流体チップ、ならびに関連する装置、システム、方法、および技術の例示的な実施形態を以下に説明する。
【0074】
本明細書で提供されるマイクロ流体チップは、スループットの向上および細胞目詰まりの発生の減少を提供することができる。具体的には、本明細書で提供されるマイクロ流体チップの総狭窄部領域は、既知のマイクロ流体チップの総狭窄部領域よりも著しく大きく、これにより、より多くの細胞が狭窄部を通過し、狭窄部によって摂動されることが可能になる。より多くの細胞をより速く摂動させることができるため、本明細書で提供されるマイクロ流体チップは、送達されたペイロードを有する細胞の出力の増加を可能にすることができる。
【0075】
さらに、本明細書で提供されるマイクロ流体チップの狭窄部は、マイクロ流体チップの第1の層の底面からマイクロ流体チップの第2の層の上面まで測定される高さ方向に細胞を狭窄する。したがって、狭窄部は、マイクロ流体チップの第1の層(例えば、突出部の上面)とマイクロ流体チップの第2の層との間に形成される。対照的に、当技術分野で知られているマイクロ流体チップの多くの狭窄部は、エッチングされたチャネルの側壁の間に狭窄部が形成されるように、マイクロ流体チップの層に狭いチャネルをエッチングすることによって製造される。本明細書で提供されるマイクロ流体チップの狭窄部の幾何学的形状は、当技術分野で知られているものよりもかなり大きな狭窄部領域を可能にし、これにより、既知のマイクロ流体チップのものよりも多くの細胞を同時におよび/または規定の期間中に摂動させることが可能になる。
【0076】
本明細書で使用されるいくつかの用語の定義、細胞内ペイロードシステムにおける使用のためのマイクロ流体幾何学的形状の説明、本明細書に記載のマイクロ流体チップを使用して細胞にペイロードを送達させる方法、本明細書で提供されるマイクロ流体チップを通る流体流れの流れ特性、本明細書で提供されるマイクロ流体チップを製造する方法、および本明細書で提供されるマイクロ流体チップを使用した細胞摂動の例を以下に提供する。以下、各トピックについて詳細に説明する。
定義
【0077】
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、必要に応じて、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に記載する定義が参照により本明細書に組み込まれる文書と矛盾する場合、記載する定義が優先するものとする。
【0078】
本明細書で使用される場合、単数「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に指示されない限り、複数の言及を含む。
【0079】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「を含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、および「から本質的になる(consisting essentially of)」を含むことが理解される。
【0080】
「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprises)」、および/または「含む(comprising)」という用語は、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1またはそれを超える他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことが更に理解される。
【0081】
「場合(if)」という用語は、文脈に応じて、「とき、場合(when)」または「時(upon)」または「判定に応答して(in response to determining)」または「検出に応答して(in response to detecting)」を意味すると解釈され得る。
【0082】
本明細書で使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における値またはパラメータ「約」への言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(および説明する)。
【0083】
本明細書における説明の目的のために、マイクロ流体チップの方向および寸法は、以下の慣例によって参照され得る:x方向またはx寸法は、図1において水平に延びる寸法を指し得る(x方向は、流れ入口から流れ出口への図1のチップ100を通る流体の全体的な流れの方向である);y方向またはy寸法は、図1において垂直に延びる寸法を指し得る;z方向またはz次元は、図1の紙面の内外を通る次元を指し得る。
【0084】
本明細書の説明では、様々な要素を説明するために第1、第2等の用語を使用しているが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。
【0085】
本明細書に記載の構造的および機能的特性のいずれについても、これらの特性を決定する方法は当技術分野で公知である。
【0086】
特許出願および刊行物を含む本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
細胞内ペイロード送達システムにおける使用のためのマイクロ流体チップの幾何学的形状
【0087】
スループットの増加および細胞目詰まりの減少をもたらす細胞内ペイロード送達システムにおける使用のためのマイクロ流体チップを以下に記載する。具体的には、図1図2Cは、本明細書で提供されるマイクロ流体チップの例示的な幾何学的形状を示す。図1は、マイクロ流体チップの上面図を示し、図2Aは、マイクロ流体チップの一部のアイソメトリック図を示し(突出部および流体流れの方向に注目する)、図2Bは、マイクロ流体チップの一部の側面図を示し(突出部および狭窄部に注目する)、図2Cは、マイクロ流体チップの一部の上面図(狭窄部に注目する)を示す。以下、それぞれについて詳細に説明する。
【0088】
図1は、いくつかの実施形態によるマイクロ流体チップ100の上面図を示す。マイクロ流体チップ100は、細胞内ペイロード送達システムで使用され得る。細胞内ペイロード送達システムおよびデバイスの特徴は、PCT/US18/66295により完全に記載されている。手短に言えば、細胞内ペイロード送達システムは、マイクロ流体チップの狭窄部を通って細胞を強制的に流動させることによって細胞内へのペイロードの送達を可能にし、それによって細胞の膜を摂動させ、ペイロードを細胞に進入させ得る。
【0089】
図1に示すように、マイクロ流体チップ100は、第1の層102、突出部104、流体流れ領域106、ピラー108、流体入口110、および流体出口112を含み得る。
【0090】
マイクロ流体チップ100は、流体入口110で流体の流れを受け取るように構成される。流体が流体入口110でマイクロ流体チップ100に入ると、流体は流体流れ領域106を通って流れる。流体流れ領域106は、マイクロ流体チップ100の第1の層102、マイクロ流体チップの第2の層、および1またはそれを超える突出部104によって画定され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、流体入口110は、マイクロ流体チップ100の第1の端部に配置され、流体出口112は、第1の端部の反対側のマイクロ流体チップ100の第2の端部に配置される。流体入口110と流体出口112との間の距離は、第1の層102の平面(例えば、内面)に垂直な方向に延在し得る。流体入口110と流体出口112との間の距離は、5~30mm、8~25mm、または10~20mmであり得る。いくつかの実施形態では、流体入口110と流体出口112との間の距離は、450mm、250mm、100mm、50mm、30mm、25mm、20mm、15mm、10mm、または8mmより小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、流体入口110と流体出口112との間の距離は、5mm、8mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、50mm、100mm、250mm、または450mmより大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の流体入口110および流体出口112は交換可能であってもよい。いくつかの実施形態では、流体入口110および/または流体出口112は、第2の層に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、流体入口110および/または流体出口112は、第1の層102上に配置されてもよい。
【0092】
マイクロ流体チップ100は、圧力下で動作して、流体の細胞を突出部の上を、突出部の遠位端とマイクロ流体チップ100の第2の層とによって画定される狭窄部領域を通って強制的に流動させる。狭窄部/狭窄部領域は、図2A図2Cを参照してより詳細に説明される。
【0093】
第1の層102は、第1の層102の内面から上方に延在する突出部104を備える。具体的には、突出部104は、第1の層102の内面からマイクロ流体チップ100の第2の層に向かって延在する。突出部104は、第1の層102の内面の近位にある近位端と、マイクロ流体チップ100の第2の層の近位にある遠位端とを含む。マイクロ流体チップ100の突出部104の遠位端と第2の層との間に狭窄部が形成される。
【0094】
流体が流体流れ領域106を通って突出部104を通過した後、流体は流体出口112を通ってマイクロ流体チップ100を出る。流体が流体流れの出口112を出るとき、流体はペイロードを含む複数の細胞を含む。
【0095】
マイクロ流体チップ100はまた、複数のピラー108を含む。マイクロ流体チップ100の第2の層は、複数のピラー108においてのみ第1の層102と接触するように構成されている。いくつかの実施形態では、ピラー108は、マイクロ流体チップ100の第2の層が狭窄部(複数可)を形成するのに十分に第1の層102から離間していることを確実にすることができる。いくつかの実施形態では、ピラー108の最上面は、突出部104の最上面よりも高い(または第1の層102の平面に垂直に延在する高さ方向において第1の層102の外面から更に高い)。
【0096】
マイクロ流体チップ100の長さまたは第1の寸法は、マイクロ流体チップ100の高さ方向に対してx方向に垂直に延在し得る。高さ方向は、第1の層102の平面(例えば、内面または外面)に対して垂直に延在する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の長さは、2~500mm、10~50mm、12~35mm、15~30mm、または18~25mmである。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の長さは、2mm、4mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、100mm、250mm、450mm、または500mmより大きいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の長さは、2mm、4mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、100mm、250mm、450mm、または500mmより小さいまたはそれと等しい。マイクロ流体チップ100の幅、または第2の寸法はまた、マイクロ流体チップ100の高さ方向に対してy方向に垂直に延在し得る。高さ方向は、第1の層102の平面(例えば、内面または外面)に対して垂直に延在する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の幅は、2~100mm、5~50mm、5~25mm、または8~15mmである。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の幅は、2mm、4mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、100mm、250mm、450mm、または500mmより小さいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の幅は、2mm、4mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、100mm、250mm、450mm、または500mmより大きいまたはそれと等しい。
【0097】
マイクロ流体チップ100の高さ寸法は、マイクロ流体チップ100の高さ方向に延在する。高さ方向は、第1の層102の平面(例えば、内面または外面)に対して垂直に延在する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の高さは、300μm、400μm、600μm、800μm、1mm、2mm、3mm、または5mmより小さいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の高さは、300μm、400μm、600μm、800μm、1mm、2mm、3mm、または5mmより大きいまたはそれと等しい。
【0098】
上記で説明したように、マイクロ流体チップ100は、流体の流れを受け取るように構成される。流体は、細胞懸濁液を含み得る。いくつかの実施形態では、流体は、細胞への送達のためのペイロードを含み得、ペイロードは、細胞への送達のための任意の適切なカーゴを含み得る。
【0099】
図2A図2Cは、本明細書で提供されるマイクロ流体チップ(例えば、図1のマイクロ流体チップ100)の狭窄部および突出部を含むマイクロ流体チップの一部の様々な図を示す。図2Aは、突出部204Aおよび狭窄部214Aを含む部分マイクロ流体チップ200Aのアイソメトリック図を示す。マイクロ流体チップの部分200Aの上流側領域からマイクロ流体チップ200Aの下流側領域に流れる複数の細胞が示される。図2Bは、狭窄部214Bを通って流れる際に摂動されている細胞を示す、マイクロ流体チップの部分200Bの側面断面図を示す。図2Cは、マイクロ流体チップの部分200Cの上流側領域から下流側領域まで流体流れ領域内を流れる複数の細胞を含むマイクロ流体チップの部分200Cの上面図を示し、いくつかの細胞は狭窄部214Cを通過するときに摂動される。
【0100】
図2Aに示すマイクロ流体チップの部分200Aは、第1の層202A、無傷の細胞220A、狭窄部214Aを通過するスクイーズされた細胞222A、およびペイロードを含む細胞224Aを更に含む。
【0101】
図2Aに示すように、流体流れ領域の上流側領域から流体流れ領域の下流側領域まで流体流れ領域内を流れる複数の細胞が示される。具体的には、無傷な細胞220Aが上流側領域に位置し、ペイロードを含む細胞224Aが下流側領域に位置する。上流側領域から下流側領域に通過するために、細胞は突出部204Aを通り、狭窄部214Aを通過しなければならない。狭窄部214Aを通過する細胞222Aが示される。狭窄部214Aは、狭窄部214Aの高さ(例えば、突出部204Aの近位端とマイクロ流体チップの第2の層との間の距離)が細胞の直径よりも小さくなるように形成される。したがって、細胞222Aが狭窄部214Aを通過するとき、細胞222Aは、その細胞膜が損傷または摂動されるようにスクイーズされる。この摂動は、マイクロ流体チップの下流側領域におけるペイロードの取り込みを可能にする。
【0102】
マイクロ流体チップの部分200Aの第1の層202Aは、突出部204Aを含む。図示のように、突出部204Aは、第1の層202Aの内面から上方に延在する。突出部204Aの1またはそれを超える側面は、傾斜していてもよい。突出部204Aは、第1の層202Aに近接する近位端と、第2の層に近接する遠位端とによって画定される。いくつかの実施形態では、突出部204Aの近位端の幅は、突出部204Aの遠位端の幅よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態では、狭窄部214Aは、突出部204Aの遠位端とマイクロ流体チップの第2の層とによって画定される。いくつかの実施形態では、突出部204Aの遠位端は平面を含む。平面は、マイクロ流体チップの高さ方向に垂直であってもよく、高さ方向は、第1の層204Aの外面から第2の層の外面まで測定される。
【0103】
突出部204Aの遠位端の平面は、突出部204Aの上流側から突出部204Aの下流側まで測定された幅を有し得る。この測定値をまた、突出部204Aの遠位端の幅として特徴付けてもよい。いくつかの実施形態では、幅は、2~50ミクロン、2~40ミクロン、2~30ミクロン、2~20ミクロン、5~15ミクロン、または8~12ミクロンであり得る。いくつかの実施形態では、幅は、2cm、1cm、5mm、1mm、500ミクロン、100ミクロン、50ミクロン、40ミクロン、30ミクロン、20ミクロン、15ミクロン、12ミクロン、10ミクロン、8ミクロン、または5ミクロンより小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、幅は、2ミクロン、5ミクロン、8ミクロン、10ミクロン、12ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、30ミクロン、40ミクロン、100ミクロン、500ミクロン、1mm、5mm、1cm、または2cmより大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。
【0104】
突出部204Aの近位端は、突出部204Aの遠位端の幅よりも大きい幅を有してもよい。突出部204Aの近位端の幅は、突出部204Aの上流側から突出部204Aの下流側まで測定され得る。いくつかの実施形態では、幅は、10~300ミクロン、50~200ミクロン、80~150ミクロン、または100~125ミクロンであり得る。いくつかの実施形態では、突出部204Aの近位端の幅は、300ミクロン、200ミクロン、150ミクロン、125ミクロン、100ミクロン、90ミクロン、80ミクロン、または50ミクロンより小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、突出部204Aの近位端の幅は、10ミクロン、50ミクロン、80ミクロン、90ミクロン、100ミクロン、125ミクロン、150ミクロン、または200ミクロンより大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップは、第1の層202Aの内面を横切って様々な方向に延在する複数のセグメントまたは部分を有する単一の突出部204Aを含む。いくつかの実施形態では、突出部204Aは、マイクロ流体チップの高さ方向に垂直な方向に延在する。(マイクロ流体チップの高さ方向は、第1の層の内面の平面に垂直に延びる)。いくつかの実施形態では、突出部204Aは、狭窄部214Aの上流側と下流側との間の界面に沿って延在する。いくつかの実施形態では、単一突出部204Aの長さ(例えば、突出部204Aの全てのセグメント/部分の全長)は、0.5~200cm、5~175cm、25~150cm、または75~125cmである。いくつかの実施形態では、単一突出部204Aの長さは、200cm、175cm、150cm、125cm、100cm、75cm、50cm、25cm、または5cmより小さいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、単一突出部204Aの長さは、0.5cm、5cm、25cm、50cm、75cm、100cm、125cm、150cm、または175cmより大きいまたはそれと等しい。
【0106】
上述のように、マイクロ流体チップは、第1の層202Aの内面を横切って1またはそれを超える方向に延在する単一の突出部204Aを含み得る。例えば、突出部204Aは、2つの隣接するセグメントまたは部分が第1の層202Aの内面を横切って異なる方向に延在するように、複数のセグメントまたは部分を含み得る。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップは、第1の層202Aの内面を横切って1またはそれを超える方向に延在する複数の突出部204Aを含み得る。いくつかの実施形態では、突出部204Aは、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面に沿って延在する。いくつかの実施形態では、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面は、曲線および/または角度を含む。いくつかの実施形態では、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面は蛇行経路を形成する。いくつかの実施形態では、界面の蛇行経路は、蛇行経路に沿った全ての位置で高さ方向に垂直である(例えば、第1の層202Aまたは第2の層の1またはそれを超える平面に垂直に延びる)。いくつかの実施形態では、狭窄部の上流側と狭窄部の下流側との間の界面の蛇行経路は、1またはそれを超える直角を含む。
【0107】
図2Bは、狭窄部214Bを通って流れる際に摂動されている細胞を示す、マイクロ流体チップの部分200Bの側面断面図を示す。図2Bに示すマイクロ流体チップの部分200Bは、第1の層202B、第2の層230B、流体流れ領域206B、突出部204B、狭窄部214B、および狭窄部214Bを通過するスクイーズされた細胞222Bを更に含む。スクイーズされた細胞222Bが狭窄部214Bを通過すると、その細胞膜が損傷または摂動され、ペイロードが摂動された細胞膜を通って細胞内に取り込まれる。
【0108】
流体流れ領域206Bは、第1の層202Bの内面、第2の層230Bの内面、および突出部204Bの表面によって画定される。図2Bに示す矢印は、細胞222Bの進行方向を示す。具体的には、細胞222Bは、流体流れ領域206Bの上流側領域から狭窄部214Bを通って、流体流れ領域206Bの下流側領域に移動する。
【0109】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップの高さ方向に測定した場合の第1の層202Bの内面と第2の層230Bの内面との間の距離は、20~300ミクロン、30~200ミクロン、または50~100ミクロンである。いくつかの実施形態では、距離は、300ミクロン、200ミクロン、100ミクロン、50ミクロン、または30ミクロンより小さいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、距離は、20ミクロン、30ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、または200ミクロンより大きいまたはそれと等しい。
【0110】
図示のように、細胞は、突出部204Bの上流側から突出部204Bの下流側に狭窄部214Bを通って移動する。狭窄部214Bを通るこの距離は、突出部204Bの遠位端の平面によって画定される。図2Aを参照して上述したように、突出部204Bの遠位端のこの距離または幅は、2~100ミクロン、2~75ミクロン、2~50ミクロン、2~25ミクロン、5~15ミクロン、または8~12ミクロンであってもよい。いくつかの実施形態では、突出部204Bの遠位端の幅は、100ミクロン、75ミクロン、50ミクロン、25ミクロン、15ミクロン、12ミクロン、10ミクロン、8ミクロン、または5ミクロンより小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、突出部204Bの遠位端の幅は、2ミクロン、5ミクロン、8ミクロン、10ミクロン、12ミクロン、15ミクロン、25ミクロン、50ミクロン、または75ミクロンより大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。
【0111】
高さ方向(第1の層202Bの外面から第2の層230Bの外面に向かう高さ方向)に測定した場合、マイクロ流体チップの第1の層202Bの全高は、第1の層202Bの外面から第1の層202Bのピラーの最上面まで(例えば、第2の層230Bが第1の層202Bと接触する唯一の位置)を測定することとして特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップの第1の層202Bの全高は、400~2000ミクロン、450~800ミクロン、500~750ミクロン、550~700ミクロン、または600~650ミクロンであってもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップの第1の層202Bの全高は、2000ミクロン、1500ミクロン、1000ミクロン、800ミクロン、750ミクロン、700ミクロン、650ミクロン、600ミクロン、550ミクロン、500ミクロン、または450ミクロンより小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップの第1の層202Bの全高は、400ミクロン、450ミクロン、500ミクロン、550ミクロン、600ミクロン、650ミクロン、700ミクロン、750ミクロン、800ミクロン、1000ミクロン、または1500ミクロンより大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。
【0112】
高さ方向(第1の層202Bの外面から第2の層230Bの外面まで延びる高さ方向)で測定した場合、マイクロ流体チップの第1の層202Bの最小高さは、第1の層202Bの外面から、流体流れ領域206Bと接する第1の層202Bの最も近い内面まで測定することとして特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態では、最小高さは、200~1000ミクロン、400~700ミクロン、450~650ミクロン、500~600ミクロン、または525~575ミクロンであってもよい。いくつかの実施形態では、最小高さは、1000ミクロン、700ミクロン、650ミクロン、600ミクロン、600ミクロン、575ミクロン、525ミクロン、500ミクロン、450ミクロン、または400ミクロンより小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、最小高さは、200ミクロン、400ミクロン、450ミクロン、500ミクロン、525ミクロン、575ミクロン、600ミクロン、650ミクロン、700ミクロン、または800ミクロンより大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。
【0113】
第2の層230Bの高さは、第2の層230Bの内面から230Bの外面まで測定され得る。いくつかの実施形態では、第2の層230Bの高さは、400~2000ミクロン、450~800ミクロン、500~750ミクロン、550~700ミクロン、または600~650ミクロンであってもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップの第2の層230Bの高さは、2000ミクロン、1500ミクロン、1000ミクロン、800ミクロン、750ミクロン、700ミクロン、650ミクロン、600ミクロン、550ミクロン、500ミクロン、または450ミクロンより小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップの第2の層230Bの高さは、400ミクロン、450ミクロン、500ミクロン、550ミクロン、600ミクロン、650ミクロン、700ミクロン、750ミクロン、800ミクロン、1000ミクロン、または1500ミクロンより大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。
【0114】
突出部204Bの遠位端の幅は、図2Aの突出部204Aに関して上述したような測定値を含み得る。突出部204Bの近位端の幅は、図2Aの突出部204Aに関して上述したような測定値を含み得る。
【0115】
突出部204Bの遠位端の平面から第2の層230Bの内面まで測定した場合、狭窄部214Bの高さは、マイクロ流体チップを通って流れる流体の細胞の直径よりも小さくなければならない。具体的には、この高さは、スクイーズされていない細胞(例えば、流体流れ領域206の上流側領域内または流体流れ領域206Bの下流側領域内の細胞)の直径よりも小さくなければならない。いくつかの実施形態では、狭窄部214Bの高さは、1~8ミクロン、1.25~5ミクロン、1.5~3ミクロン、1.75~2.75ミクロン、または2~2.5ミクロンである。いくつかの実施形態では、狭窄部214Bの高さは、8ミクロン、7ミクロン、6ミクロン、5ミクロン、4ミクロン、3.5ミクロン、3.25ミクロン、3ミクロン、2.75ミクロン、2.5ミクロン、2ミクロン、1.75ミクロン、1.5ミクロン、または1.25ミクロンより小さいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、狭窄部214Bの高さは、1ミクロン、1.25ミクロン、1.5ミクロン、1.75ミクロン、2ミクロン、2.25ミクロン、2.75ミクロン、3ミクロン、3.25ミクロン、3.5ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、6ミクロン、または7ミクロンより大きいまたはそれと等しい。
【0116】
狭窄部214Bを、狭窄部の周囲長に対する断面積の商によって特徴付けてもよい。いくつかの実施形態では、狭窄部の周囲長に対する断面積の商は0.5~5ミクロンである。いくつかの実施形態では、狭窄部の周囲長に対する断面積の商は、5、4、3、2.5、2、1.5、または1ミクロンより小さいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、狭窄部の周囲長に対する断面積の商は、0.5、1、1.5、2、2.5、3、または4ミクロンより大きいまたはそれと等しい。
【0117】
いくつかの実施形態では、突出部204Bの1またはそれを超える側面は傾斜していてもよい。いくつかの実施形態では、突出部204Bの側面と突出部204Bの基部との間で、突出部204Bが第1の層202Bの内面から延在する基部角度は、40~70度、45~65度、または50~60度であってもよい。いくつかの実施形態では、基部角度は、70度、65度、60度、55度、50度、または45度より小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、基部角度は、40度、45度、50度、55度、60度、または65度より大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、基部角度は54.7度である。いくつかの実施形態では、突出部204Bの両方の基部角度は54.7度である。いくつかの実施形態では、基部角度は、マイクロ流体チップ製造方法に依存する。例えば、基部角度は、シリコンの第1の層202Bにエッチングするための水酸化カリウム(KOH)エッチング方法に依存し得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、第1の層202Bおよび第2の層230Bはそれぞれ、シリコン、ガラス、ポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリジメチルシロキサン(PDMS))、または任意の他の適切な材料を含む。いくつかの実施形態では、第1の層202Bおよび第2の層230Bは、同じ材料組成を含む。いくつかの実施形態では、第1の層202Bの材料組成は、第2の層230Bの材料組成とは異なる。いくつかの実施形態では、一方の層(例えば、第1の層または第2の層)はガラスであり、他方の層(例えば、第1の層または第2の層)はシリコンである。そのような実施形態では、狭窄部は、ガラスとケイ素との間の陽極接合によって画定される。この陽極接合は、マイクロ流体チップの全高に影響を及ぼさない。
【0119】
図2Cは、マイクロ流体チップの部分200Cの上面図を示す。具体的には、図2Cは、(矢印によって示されるように)突出部204C、および狭窄部214Cによって流体流れ領域の上流側領域から流体流れ領域の下流側領域まで通過する複数の細胞の上面図を示す。図2Cに示すマイクロ流体チップの部分200Cは、突出部204C、狭窄部214C、無傷の細胞220C、スクイーズされた細胞222C、およびペイロードを含む細胞224Cを含む。
【0120】
図2Cに示すように、突出部204Cは、図2Aの突出部204Aおよび図2Bの突出部204Bを参照して上述したように、狭窄部214Cを画定する平面によって特徴付けられる。平面表面に対向して、マイクロ流体チップの第2の層の内面が存在する。マイクロ流体チップが加圧下で動作すると、細胞は上流側領域から狭窄部214Cを通って下流側領域に押し出される。狭窄部214Cは、突出部204Cの遠位端の平面と第2の層の内面との間の距離(例えば、高さ)が、スクイーズされていない細胞(例えば、流体流れ領域の上流側領域に配置された細胞220C、またはペイロードを含み、流体流れ領域の下流側領域に配置された細胞224C)の直径よりも小さくなるように構成される。狭窄部214Cは、図2Bの狭窄部214Bを参照して上述したような高さを有し得る。
【0121】
図2A図2Cに示す例では、突出部204A~204Cの遠位端と第2の層の内面との間に狭窄部214A~214Cが形成される。具体的には、図2Bでは、突出部204Bの遠位端の平面と第2の層230Bの内面との間の空間によって、狭窄部214Bが形成される。図2Bの例では、狭窄部は、突出部204Bの遠位端の平面と第2の層230Bの内面との間の距離として画定されるように、流れ方向のその全長にわたって一定の高さを有する。したがって、図2Bに示す角度から見て、狭窄部214Bは、矩形形状を有する。しかしながら、いくつかの追加または代替の実施形態では、狭窄部(狭窄部214B等)は、図2Bに示す俯角から見て、台形、湾曲、階段状、または他の不規則な断面形状を有し得る。
【0122】
例えば、いくつかの実施形態では、(図2Bに示す垂直方向の)均一な断面狭窄部高さを有するのではなく、狭窄部は、垂直方向におけるその断面高さが(図2Bに示す水平方向の)狭窄部長さに沿って(直線的にまたは他の方法で)増加または減少するようなテーパ状形状を有し得る。いくつかの実施形態では、先細りする狭窄部の断面高さは、狭窄部全体の長さに沿って(本明細書に示される断面狭窄高さのいずれかから)約1%、2%、3%、5%、10%、25%、50%、100%、200%、または500%増加または減少し得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、狭窄部は、(図2Bに示す垂直方向の)均一な断面狭窄部高さを有するのではなく、多段階狭窄部高さを有してもよく、狭窄部は、狭窄部の(図2Bに示す水平方向の)複数の段が1またはそれを超える他の段のとは異なる断面高さを有する階段状の形状を有する。例えば、いくつかの実施形態では、狭窄部は、第1の段が第2の段よりも狭い(例えば、低い高さを有する)、または第2の段が第1の段よりも狭い(例えば、低い高さを有する)2つの段を有し得る。狭窄部の段の断面高さは、狭窄部の流れの方向に単調に増加してもよく、狭窄部の流れの方向に単調に減少してもよく、または狭窄部の流れの方向に増加および減少の両方であってもよい(例えば、3つまたはそれを超える狭窄部の段を有する狭窄部の場合)。段は、(例えば、突出部204Bの遠位端の平坦表面および/または第2の層230Bの内表面の)1つの狭窄部壁または両方の狭窄部壁に形成された(図2Bに示す垂直方向の)ステップによって互いに区別され得る。狭窄部内の段間のステップは、直角のステップとして形成されてもよく、および/またはステップ間のテーパ状の移行領域によって形成されてもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、任意の1またはそれを超える狭窄部の段は、本明細書に開示される断面狭窄部高さのいずれかに等しい断面狭窄部高さ(例えば、図2Bに示す垂直方向の)を有し得る。いくつかの実施形態では、隣接する狭窄部の段は、互いに約1%、2%、3%、5%、10%、25%、50%、100%、200%、または500%d異なる断面狭窄部高さを有し得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、任意の1またはそれを超える狭窄部の段は、本明細書に開示される狭窄部長さ(例えば、流れの方向の)のいずれかに等しい狭窄部長さを有し得る。あるいは、狭窄部全体を形成する狭窄部の段のセットは、合計して本明細書に開示される狭窄部長さのいずれかに等しい長さを有し得る。
【0126】
隣接する狭窄部段がテーパ状の狭窄部移行領域によって分離されているいくつかの実施形態では、テーパ状の狭窄部移行領域の長さ(例えば、流れの方向の)は、本明細書に開示される狭窄部長さのいずれかの約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、5%、10%、25%、50%、または100%に等しくてもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、不均一な(例えば、先細りしている)断面高さの狭窄部および/または異なる断面高さの多段を有する狭窄部は、チップが、狭窄部を通過する細胞が狭窄部壁からの圧力を受ける時間を延長することを可能にし、それによって、細胞壁の細孔が開いている時間を延長し、ペイロード送達効率および有効性を増加させ得る。いくつかの実施形態では、最初のより狭い部分とその後のより広い部分とを有する狭窄部は、細孔が最初の部分に迅速かつ効果的に形成され、細胞がより広い部分を通過するときに細孔が開いたままにされることを可能にし得る。より狭い狭窄部に続いてより広い狭窄部を使用することにより、狭窄部全体がより狭い狭窄部幅を有する実施と比較して、細胞生存率を増加させながら効果的なペイロード送達を達成し得る。
カートリッジ内に配置されたチップ
【0128】
図2Dは、4つのチップ240A、240B、240C、240Dを内部に保持するカートリッジ200Dを示す。カートリッジ200Dは、内部にチップを保持し、内部に保持されたチップとの間で流体の流れを導くことができる。図2Dの分解立体図によって示されるように、Oリング242は、チップを押圧し、チップの入口または出口ポートを取り囲み、チップを定位置に保持し、入口/出口ポートの周りにシールを形成し、漏れなくチップに出入りする流体の流れを容易にし得る。
本明細書で提供されるマイクロ流体チップを使用して細胞にペイロードを送達させる方法
【0129】
図3は、本明細書に記載のマイクロ流体チップを使用して細胞にペイロードを送達させるための例示的な方法300を示す。
【0130】
工程302において、マイクロ流体チップ(例えば、図1のマイクロ流体チップ102)は、流体流れ領域への流体の流れを受け取る。流体は、複数の細胞を含む。いくつかの実施形態ではまた、流体はペイロードも含むことができる。具体的には、マイクロ流体チップは、流体流れ領域の上流側領域で流体の流れを受け取る。
【0131】
工程304において、マイクロ流体チップ(例えば、図1のマイクロ流体チップ102)は、マイクロ流体チップ内の狭窄部を通って細胞を流動させることによって、流体から細胞の細胞膜を摂動させる。狭窄部は、突出部とマイクロ流体チップの第2の層との間に形成される。突出部は、マイクロ流体チップの第1の層の内面からマイクロ流体チップの第2の層まで延在する。
【0132】
工程306において、摂動された細胞へのペイロードの送達が行われる。これは、流体流れ領域の下流側領域で起こる。いくつかの実施形態では、ペイロードは、流体流れ領域の下流側領域で摂動後に導入される。ペイロードの送達後、細胞膜は治癒し得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、例えば方法300に従って、本明細書に記載のマイクロ流体チップの狭窄部を通して処理された細胞は、70~100%、80~100%、90~100%、または95~100%の狭窄部を通過した後の生存割合を示し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のマイクロ流体チップの狭窄部を通して処理された細胞は、100%、95%、90%、85%、80%、または75%より小さいまたはそれと等しい狭窄部を通過した後の生存割合を示し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のマイクロ流体チップの狭窄部を通して処理された細胞は、70%、75%、80%、85%、90%、または95%より大きいまたはそれと等しい狭窄部を通過した後の生存割合を示し得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、例えば方法300に従って、本明細書に記載のマイクロ流体チップの狭窄部を通して処理された細胞は、30~100%のペイロード送達割合を示し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のマイクロ流体チップの狭窄部を通過した細胞は、100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、または35%より小さいまたはそれと等しいペイロード送達割合を示し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のマイクロ流体チップの狭窄部を通過した細胞は、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%より大きいまたはそれと等しいペイロード送達割合を示し得る。
本明細書で提供されるマイクロ流体チップの流れ特性
【0135】
本明細書に記載のマイクロ流体チップを通って流れ得る流体の様々な流体流れ特性を以下に説明する。具体的には、圧力、剪断応力、剪断速度、流速、細胞体積流量、細胞目詰まり速度、および細胞スループットが以下に提供される。
【0136】
上記で説明したように、本明細書で提供されるマイクロ流体チップは、細胞懸濁液の細胞が、細胞の膜が摂動されるように狭窄部を通過することによって、流体流れ領域の上流側領域から流体流れ領域の下流側領域に強制されることを確実にするため、圧力下で動作することによって細胞をスクイーズするように設計される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100は、1~200PSI、10~150PSI、または25~100PSIで動作するように構成され得る。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100は、1、5、10、25、50、75、100、125、150、または200PSIより小さいまたはそれと等しい圧力で動作することで細胞をスクイーズするように構成され得る。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100は、1、5、10、25、50、75、100、125、150、または200PSIより大きいまたはそれと等しい圧力でスクイーズするように構成され得る。
【0137】
本明細書で提供されるマイクロ流体チップの突出部および/またはピラーのエッジ効果を除去することにより、狭窄部を通過する細胞の剪断応力が減少され得る。例えば、本明細書で提供されるマイクロ流体チップの狭窄部を通過する細胞の最大剪断応力は、0.001~0.1MPa、0.01~0.1MPa、または0.01~0.05MPaであり得る。いくつかの実施形態では、最大剪断応力は、0.1、0.05、または0.01MPaより小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、最大剪断応力は、0.001、0.01、または0.05MPaより大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。例えば、図4は、本明細書で提供されるマイクロ流体チップ(例えば、堰型チップ)の剪断断応力データを示す。図示のように、本明細書で提供されるマイクロ流体チップの最大剪断応力は、狭窄部を通っておよそ0.004mmの距離で0.02MPa程度で発生する。
【0138】
本明細書で提供されるマイクロ流体チップの狭窄部を通過する細胞の剪断速度はまた、突出部および/またはピラーのエッジ効果を除去することによって減少され得る。例えば、本明細書で提供されるマイクロ流体チップの狭窄部を通過する細胞の最大剪断速度は、5~9(10Hz)または6~8(10Hz)であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるマイクロ流体チップの狭窄部を通過する細胞の最大剪断速度は、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、または5.5(10Hz)より小さくてもよく、またはそれと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるマイクロ流体チップの狭窄部を通過する細胞の最大剪断速度は、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、または8.5(10Hz)より大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。例えば、図5は、本明細書で提供されるマイクロ流体チップ(例えば、堰型チップ)の剪断断速度データを示す。示されるように、本明細書に提供されるマイクロ流体チップによって引き起こされる最大剪断速度は、狭窄部の長さにわたって約6.75(10Hz)およびおよそ0.0045mmで生じる。
【0139】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100は、0.5~15m/秒、2~12m/秒、または3~10m/秒のマイクロ流体チップ100の狭窄部を通る流速を提供することができる。いくつかの実施形態では、狭窄部を通る流速は、15、12、10、8、5、3、2、または1m/秒より小さいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、狭窄部を通る流速は、0.5、1、2、3、5、8、10、または12m/秒より大きいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100は、目詰まりなしに狭窄部を通過する流体(例えば、細胞懸濁液)の流れを受け入れるように構成される。
【0140】
例えば、図6は、本明細書に提供されるマイクロ流体チップの突出部によって形成された狭窄部を通って流れる細胞の断面図を示す。図6に示すように、マイクロ流体チップの狭窄部を通る細胞によって達成される最大流量は5.286m/秒である。
【0141】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100は、50~300mm/秒、75~250mm/秒、または100~150mm/秒の狭窄部を通る体積流量を提供し得る。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の狭窄部を通る体積流量は、300、250、200、150、100mmまたは75mm/秒より小さいまたはそれと等しい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ100の狭窄部を通る体積流量は、50、75、100、150、200、または250mm/秒より大きいまたはそれと等しい。
【0142】
本明細書に記載のマイクロ流体チップは、流体流れ領域および/または狭窄部面積における細胞の目詰まりを最小限に抑えるように設計されている。本明細書で提供される実施形態によるマイクロ流体チップを詰まらせるのに必要な細胞の数は、狭窄部の断面積、粒子/細胞直径、および粒子/細胞流量に依存する。この関係は、以下のように定義することができる:
【数1】
A=断面積、D=粒子径、V=粒子流量
【0143】
本明細書に記載の特定のマイクロ流体チップの断面積、ならびに使用される粒子/細胞の直径および速度に基づいて、本明細書に記載のマイクロ流体チップの区域を閉塞するのに必要な細胞の数を、以下のように定義することができる。
【数2】
【0144】
上記で説明したように、本明細書で提供されるマイクロ流体チップは、高スループットを有するように具体的に設計される。特定の狭窄部の幾何学的形状のために、狭窄部を通過することができる(そして狭窄部によって摂動され得る)細胞数は、所与の時間単位で既知のマイクロ流体チップよりも多い。
本明細書に記載のマイクロ流体チップのエッチング方法
【0145】
様々なエッチング方法を使用して、本明細書に提供されるマイクロ流体チップの第1の層にエッチングして流体流れ領域(突出部および狭窄部を含む)が形成され得る。例えば、使用され得る様々なエッチング方法としては、水酸化カリウム(KOH)エッチング、深堀反応性イオンエッチング(DRIE)、ならびに様々なウェットエッチングおよびドライエッチング技術を含む他の適切なエッチング技術が挙げられる。マイクロ流体チップはまた、成形技術(例えば、射出成形)を使用して製造され得る。
【0146】
図7は、本明細書に記載のマイクロ流体チップの突出部出および狭窄部を含む流体流れ領域を達成するために使用され得る例示的なKOHエッチング方法を示す。KOHエッチングは、シリコンにキャビティを形成するために使用することができる湿式化学エッチングプロセスである。KOHエッチングプロセスは、エッチング温度、使用されるKOHの割合、ストップとして作用する結晶面の実装、異方性の程度、シリコン中の任意の原子欠陥の存在、およびシリコン中に自然に見られる他の不純物の存在によって制御することができる。KOHのエッチング速度はよく理解されているプロセスであるため、シリコン層のKOHエッチングは、いくつかのマイクロ流体チップにわたって一貫したエッチングを達成することができる。
【0147】
図7に示すように、シリコンウエハは、1100°Cで酸化されて、シリコンウエハの表面上に二酸化ケイ素のマスクを形成する。次いで、シリコンウエハリソグラフィの表面にフォトレジストが形成される。具体的には、フォトレジストを形成するためにフォトレジストスピニング法が使用され得る。フォトレジストがシリコンウエハ表面にコーティングされた後、コーティングされたシリコンウエハは、フォトレジストの一部(例えば、流体流れ領域がエッチングされる部分)を除去するために紫外光に曝露される。フォトレジストを現像し、フッ化水素酸を用いて二酸化ケイ素層にアンダーカットをエッチングする。次いで、フォトレジストがシリコン表面から除去され、マスクされたシリコンウエハをKOH溶液に浸漬することにより、KOHを使用してシリコンがエッチングされる。KOHエッチングはシリコンの結晶面に沿ってエッチングするため、KOHエッチングは傾斜した突出部プロファイルを達成する。これにより、正確に54.74度(例えば、突出部の傾斜した側面と突出部の基部との間の角度)の角度を有する突出部プロファイルが得られる。他の全てのエッチングされた表面は、平坦であってもよい。シリコン層が長期間KOH溶液に曝露されると、矩形の特徴のみが形成され得る(54.74度傾斜した突出部は形成されない)。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるマイクロ流体チップは、2つまたはそれを超えるKOHエッチングプロセスを使用して製造され得る。例えば、第1のKOHエッチングは上流側および/または下流側の流体流れ領域をエッチングすることができ、第2のKOHエッチングは狭窄部領域をエッチングすることができる。
【実施例
【0148】
異なる圧力でスクイーズする様々なマイクロ流体チップの幾何学的形状を試験し、その結果を、以下の図8図16に記載する。試験されたマイクロ流体チップは全て、本明細書で提供される実施形態と一致する。以下に提供されるように、マイクロ流体チップの各々は、チップの第1の層の平面に垂直な高さ方向(z方向)に測定した場合、チップの狭窄部の高さ測定値によって特徴付けられる。マイクロ流体チップは以下を含む:
・1.8ミクロンの高さを有し、50PSIで圧迫される狭窄部を有するマイクロ流体チップ;
・1.8ミクロンの高さを有し、55PSIで圧迫される狭窄部を有するマイクロ流体チップ;
・2.0ミクロンの高さを有し、50PSIで圧迫される狭窄部を有するマイクロ流体チップ;
・2.0ミクロンの高さを有し、60PSIで圧迫される狭窄部を有するマイクロ流体チップ;および
・70PSIで圧迫される2.2ミクロンの高さを有する狭窄部を有するマイクロ流体チップ。
【0149】
図8は、様々なタイプのマイクロ流体チップにおけるゴースト発生を評価する研究からのデータを示す。ゴーストの発生は、いくつかの実施形態では、その後の生物学的活性に有利である。例えば、ゴーストの発生は、国際公開第2017/192785号および国際公開第2020/15098号に更に詳細に記載されており、これらは両方ともその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、狭窄部を通過した後のゴースト形成は、約5%~約100%である。いくつかの実施形態では、狭窄部を通過した後のゴースト形成は、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%である。いくつかの実施形態では、ゴースト形成は、細胞が狭窄部を通過した約1.0×10-2秒後から少なくとも約10日後まで測定される。
【0150】
図9および図10は、抗原特異的免疫応答を研究するためのモデルタンパク質として使用される特異的抗原であるOVA(オボアルブミン)の送達データを示す。図9は、上に列挙した異なるマイクロ流体チップの各々に対するOVA送達割合を示す。図10は、上に列挙した異なるマイクロ流体チップの各々に対するOVA 647送達平均蛍光強(MFI)を示す。OVA 647は、比較的低分子量のタンパク質であるオボアルブミンコンジュゲートである。蛍光強度は、どのくらいのペイロードが各細胞に送達されるかを示し、これは送達割合を提供することができる。
【0151】
図11および図12は、アネキシンV+で染色した細胞の分析を示す。図11は、上に列挙した異なるマイクロ流体チップの各々を通過させた後の無核細胞のアネキシンV+染色のデータを示す。アネキシンV+染色の結果は、細胞懸濁液中のゴーストの割合を定量するのに役立ち得る指標である。また、試験した特定のマイクロ流体チップの狭窄部で細胞がどの程度強くスクイーズされたかを示すことができる。図12は、異なるマイクロ流体チップの各々についてのアネキシンV+MFIのデータを示す。
【0152】
図13および図14は、上記で提供されたマイクロ流体チップの各々を通過させた後のゴースト、非ゴーストおよび残存する無核細胞へのOVAの送達を示す。OVA(オボアルブミン)は、抗原特異的免疫応答を研究するためのモデルタンパク質として使用される特異的抗原である。図14は、上記で提供されたマイクロ流体チップの各々に無核細胞を通過させた後のゴースト、非ゴーストおよび残存する細胞のMFIを示す。
【0153】
図15および図16は、アネキシンV+による染色による細胞の分析を示す。図15は、上記で提供されたマイクロ流体チップの各々に無核細胞を通過させた後のゴースト、非ゴースト、および残存する細胞の総アネキシンV+染色率を示す。図16は、上記で提供されたマイクロ流体チップの各々に無核細胞を通過させた後のゴースト、非ゴースト、および残存する細胞のMFIを示す。
【0154】
上記の説明は、例示的なシステム、方法、技術、パラメータ等を記載する。しかしながら、そのような説明は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、代わりに例示的な実施形態の説明として提供されることを認識されたい。
実施形態
【0155】
以下は、特定の実施形態の列挙されたリストである。いくつかの実施形態では、実施形態の依存関係が実施形態を組み合わせることができることを明示的に示さない場合であっても、いずれか1またはそれを超える以下の実施形態のいずれか1またはそれを超える特徴のいずれか1またはそれを超える他の実施形態と組み合わせることができる。
【0156】
実施形態1. 細胞にペイロードを送達させるためのマイクロ流体チップであって、前記チップが、
第1の層と、
第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層との間の流体流れ領域とを含み、前記チップが、前記流体流れ領域への細胞懸濁液の流れを受け入れるように構成され、前記細胞懸濁液が複数の細胞を含み、
前記第1の層が、前記第2の層に向かって延在して突出部と前記第2の層との間に狭窄部を形成する前記突出部を含み、前記狭窄部が、前記細胞が前記狭窄部を通過する際に、前記複数の細胞の細胞の細胞膜の摂動を引き起こすように構成される、マイクロ流体チップ。
【0157】
実施形態2. 前記第1の層がシリコンを含む、実施形態1に記載のマイクロ流体チップ。
【0158】
実施形態3. 前記第2の層がガラスを含む、実施形態1または2に記載のマイクロ流体チップ。
【0159】
実施形態4. 前記突出部が、前記第1の層の内面に垂直な高さ方向に前記第1の層の前記内面から離れて延在し、前記第1の層の前記内面に隣接する近位端を含む、実施形態1~3のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0160】
実施形態5. 前記突出部が、前記第1の層の内面に垂直な高さ方向に前記第1の層の前記内面から離れて延在し、前記突出部の遠位端と前記第2の層の内面との間に前記狭窄部を形成する前記突出部の前記遠位端を含み、前記高さ方向に測定した場合、前記突出部の前記遠位端と前記第2の層の前記内面との間の前記狭窄部の高さが、5ミクロンより小さいまたはそれと等しい、実施形態1~4のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0161】
実施形態6. 前記狭窄部の前記高さが、前記複数の細胞の前記細胞の直径よりも小さい、実施形態5に記載のマイクロ流体チップ。
【0162】
実施形態7. 前記マイクロ流体チップが入口および出口を含み、前記入口が、前記チップの第1の端部に配置され、前記出口が、前記第1の端部の反対側の前記チップの第2の端部に配置され、前記入口と前記出口との間の距離が、前記第1の層の内面に垂直な方向に延在する、実施形態1~6のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0163】
実施形態8. 前記突出部の前記近位端が、前記高さ方向に垂直に延在し、前記突出部の上流側から前記突出部の下流側に延在する厚さを有し、前記突出部の前記近位端の前記厚さが10ミクロンより大きいまたはそれと等しい、実施形態4~7のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0164】
実施形態9. 前記突出部の前記遠位端が、前記高さ方向に垂直に延在し、前記狭窄部の上流側から前記狭窄部の下流側に延在する厚さを有し、前記突出部の前記遠位端の前記厚さが5ミクロンより大きいまたはそれと等しい、実施形態5~8のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0165】
実施形態10. 前記突出部が、前記高さ方向に垂直に延在し、前記狭窄部の上流側と前記狭窄部の下流側との間の界面に沿って延在する長さを有し、前記長さが0.5cmより大きいまたはそれと等しい、請求4~9のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0166】
実施形態11. 前記狭窄部の前記上流側と前記狭窄部の前記下流側との間の前記界面が、曲線および角度のうちの一方または両方を含む、実施形態10に記載のマイクロ流体チップ。
【0167】
実施形態12. 前記狭窄部の前記上流側と前記狭窄部の前記下流側との間の前記界面が、蛇行経路を形成する、実施形態1~11のいずれかに記載マイクロ流体チップ。
【0168】
実施形態13. 前記界面の前記蛇行経路が、前記蛇行経路に沿った全ての位置で前記高さ方向に垂直である、実施形態12に記載のマイクロ流体チップ。
【0169】
実施形態14. 前記蛇行経路が、1またはそれを超える直角を含む、実施形態12または13に記載のマイクロ流体チップ。
【0170】
実施形態15. 前記第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に対して垂直に延在する前記マイクロ流体チップの第1の寸法が18~24mmである、実施形態1~14のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0171】
実施形態16. 前記第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に対して垂直に延在する前記マイクロ流体チップの第2の寸法が8~15mmである、実施形態1~15のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0172】
実施形態17. 前記第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に延在する前記マイクロ流体チップの高さ寸法が1000~1500ミクロンである、実施形態1~16のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0173】
実施形態18. 前記第2の層が複数の支持ピラーで前記第1の層に接触し、前記複数の支持ピラーの各支持ピラーが前記第1の層の内面から前記第2の層まで延在する、実施形態1~17のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0174】
実施形態19. 前記第1の層が、前記第1の層の平面に垂直な高さ方向に測定した場合、500~750ミクロンの全高を有する、実施形態1~18のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0175】
実施形態20. 前記第1の層が450~650ミクロンの最小高さを有し、前記最小厚さが、前記第1の層の内面に垂直な高さ方向に測定され、前記最小厚さが、前記第1の層の外面から、前記流体流れ領域と接する前記第1の層の最も近い内面まで測定される、実施形態1~19のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0176】
実施形態21. 前記第2の層が、前記第1および第2の層の一方または両方の平面に垂直な高さ方向に測定した場合、450~800ミクロンの厚さを有する、実施形態1~20のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0177】
実施形態22. 前記突出部の最上面が、前記第1の層の内面に並列であり、前記突出部が前記第1の層の前記内面から延在する高さ方向に垂直な平面を含む、実施形態1~21のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0178】
実施形態23. 前記突出部の最上面が、前記第2の層の内面に並列であり、前記突出部が前記第1の層の前記内面から延在する高さ方向に垂直な平面を含む、実施形態1~22のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0179】
実施形態24. 前記突出部の側面が、前記第1の層の内面からある角度で上方に延在する、実施形態1~23のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0180】
実施形態25. 前記突出部の前記側面が、前記第1の層の前記内面から50~60度傾斜している、実施形態24に記載のマイクロ流体チップ。
【0181】
実施形態26. 前記突出部の前記側面が、前記第1の層の前記内面から54.7度傾斜している、実施形態24または25に記載のマイクロ流体チップ。
【0182】
実施形態27. 前記細胞懸濁液がペイロードを含む、実施形態1~26のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0183】
実施形態28. 前記チップが10psiより大きいまたはそれと等しい圧力で動作するように構成される、実施形態1~27のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0184】
実施形態29. 前記狭窄部の周囲長に対する前記狭窄部の断面積の商が0.5ミクロンより大きいまたはそれと等しい、実施形態1~28のいずれかに記載のマイクロ流体チップ。
【0185】
実施形態30. ペイロードを細胞に送達させる方法であって、前記方法が、
マイクロ流体チップの流体流れ領域への細胞懸濁液の流れを受け取ることであって、前記細胞懸濁液が複数の細胞を含む、細胞懸濁液の流れを受け取ることと、
前記マイクロ流体チップの突出部と第2の層との間に形成された狭窄部を通して前記細胞を流動させることによって、前記複数の細胞の細胞の細胞膜を摂動させることとを含み、前記突出部が、前記マイクロ流体チップの第1の層の内面から前記マイクロ流体チップの前記第2の層に向かって延在し、前記細胞膜の前記摂動が、ペイロードの前記細胞への進入を可能にする、方法。
【0186】
実施形態31. 前記マイクロ流体チップの突出部と第2の層との間に形成された狭窄部を通して前記細胞を流動させることによって前記複数の細胞の細胞の細胞膜を摂動させることが、前記狭窄部を通して前記細胞を0.5m/秒より大きいまたはそれと等しい流量で流動させることを含む、実施形態30に記載の方法。
【0187】
実施形態32. 前記マイクロ流体チップが、10psiより大きいまたはそれと等しい圧力で動作するように構成される、実施形態30または31に記載の方法。
【0188】
実施形態33. 前記細胞懸濁液が前記ペイロードを含む、実施形態30~32のいずれか記載の方法。
【0189】
実施形態34. 前記細胞膜の摂動後に前記ペイロードを前記細胞懸濁液と接触させることを含む、実施形態30~33のいずれかに記載の方法。
【0190】
実施形態35. ペイロードを細胞に送達させるためのマイクロ流体チップを製造する方法であって、前記方法が、
第1の層にエッチングして、前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することと、
前記第1の層に第2の層を固定して、前記凹部面と前記第2の層との間に画定された流体流れ領域と、前記突出部と前記第2の層との間に画定された狭窄部とを有するマイクロ流体チップを形成することと、を含む、方法。
【0191】
実施形態36. 第1の層にエッチングして前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することが、湿式または乾式化学エッチング剤を使用することを含む、実施形態35に記載の方法。
【0192】
実施形態37. 第1の層にエッチングして前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することが、前記流体流れ領域を画定するために30ミクロンより大きいまたはそれと等しい深さまで前記第1の層にエッチングすることを含む、実施形態35または36に記載の方法。
【0193】
実施形態38. 第1の層にエッチングして前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することが、前記突出部の遠位端を形成するために5ミクロンより小さいまたはそれと等しい深さまで前記第1の層にエッチングすることを含む、実施形態35~37のいずれかに記載の方法。
【0194】
実施形態39. 第1の層にエッチングして前記第1の層の凹部面および前記第1の層の突出部を形成することが、前記突出部の遠位端を形成するために前記第1の層にエッチングすることを含み、前記突出部の前記遠位端が、前記第1の層の平面に垂直な高さ方向に垂直に延在する厚さを有し、前記遠位端の厚さが、前記突出部の上流側から前記突出部下流側に向かって延在し、前記突出部の前記遠位端の厚さが5ミクロンより大きいまたはそれと等しい、実施形態35~38のいずれかに記載の方法。
【0195】
実施形態40. 前記突出部が、前記高さ方向に垂直に延在し、前記狭窄部の上流側と前記狭窄部の下流側との間の界面に沿って延在する長さを有し、前記長さが0.5cmより大きいまたはそれと等しい、実施形態35に記載の方法。
【0196】
実施形態41. 前記狭窄部の前記上流側と前記狭窄部の前記下流側との間の前記界面が、曲線および角度のうちの一方または両方を含む、実施形態40に記載の方法。
【0197】
実施形態42. 前記狭窄部の前記上流側と前記狭窄部の前記下流側との間の界面が、蛇行経路を形成する、実施形態40または41に記載の方法。
【0198】
実施形態43. 前記界面の前記蛇行経路が、前記蛇行経路に沿った全ての位置で前記高さ方向に垂直である、実施形態42に記載の方法。
【0199】
実施形態44. 前記蛇行経路が、1またはそれを超える直角を含む、実施形態42または43に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】