(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】免疫グロブリンGのプロセススケールでの単離のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/36 20060101AFI20231227BHJP
C07K 1/18 20060101ALN20231227BHJP
C07K 1/30 20060101ALN20231227BHJP
C07K 1/34 20060101ALN20231227BHJP
C07K 16/06 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
C07K1/36
C07K1/18
C07K1/30
C07K1/34
C07K16/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539286
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 US2021065017
(87)【国際公開番号】W WO2022146856
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518276450
【氏名又は名称】プラズマ テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】PLASMA TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ズルロ、ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】カーティン、デニス
(72)【発明者】
【氏名】ラトケ、クラウス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ドーフマン、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェリハン、マシュー
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045AA40
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA75
4H045EA20
4H045GA23
(57)【要約】
血漿からの免疫グロブリンG(IgG)の単離のための方法であって、IgGが最初に塩沈殿によって分画され、続いて連続的なイオン交換ステップで、IgGがイオン交換ステップの未結合のフロースルー画分に現れる方法が提供される。いくつかの実施形態は、連続的な陰イオン交換ステップを使用する。他の実施形態は、陰イオン交換ステップの後、陰イオン交換ステップから陽イオン交換ステップへのフロースルーを適用し、IgGは陽イオン交換ステップからのフロースルー画分に集められる。IgGは高収率(通常約75%以上)かつ高純度で収集される。クロマトグラフィー媒体からの結合及び溶出を回避することで、IgGの品質や収率を犠牲にすることなく処理及びスケールアップが簡素化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的タンパク質及び複数の夾雑物を含む溶液から前記標的タンパク質を単離する方法であって、
前記溶液に塩を添加することで上清及び沈殿物を生成すること、
前記沈殿物を水溶液に溶解することで、前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第1の部分を含む溶解した沈殿物を生成すること、
前記溶解した沈殿物を、第1の極性の第1の電荷を有する第1のイオン交換媒体に適用することで、前記複数の夾雑物の第2の部分を含む第1の結合画分と、前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第3の部分を含む第1のフロースルーとを生成すること、及び、
前記第1のフロースルーを、前記第1の極性とは反対の第2の極性の第2の電荷を有する第2のイオン交換媒体に適用することで、前記複数の夾雑物の第3の部分を含む第2の結合画分と、前記標的タンパク質を含む第2のフロースルーとを生成すること
を含み、
前記第2の交換媒体の容量は、前記第2のイオン交換媒体を使用したイオン交換中に失われる前記標的タンパク質が前記溶液中の前記標的タンパク質の量の約10%未満となるように選択される方法。
【請求項2】
前記溶液が血漿である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液が分離ステップの産物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩がクエン酸塩又は酢酸塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のイオン交換媒体が陰イオン交換媒体であり、前記第2の陰イオン交換媒体が陽イオン交換媒体であり、前記標的タンパク質が免疫グロブリンGである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の夾雑物が第XI因子又は活性化第XI因子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のイオン交換媒体が粒子又はビーズとして構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のイオン交換媒体がフィルターとして構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶解した沈殿物にカプリル酸塩を添加することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
カプリル酸塩の添加後に固体を除去することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
固体を除去することが濾過ステップの適用を含み、前記フィルターは珪藻土を含み、第XI因子又は第XII因子を選択的に保持するフィルターを選択することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記デプスフィルターはパーライトを含まない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記標的タンパク質の収率が少なくとも70%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記上清から少なくとも1つの追加のタンパク質を回収することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶液の体積が少なくとも500Lである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
標的タンパク質及び複数の夾雑物を含む溶液から前記標的タンパク質を単離するためのシステムであって、
前記溶液を受け取り塩分画ステップを行うように構成された分画モジュールであって、前記塩分画ステップは、上清及び沈殿物を生成し、前記上清を前記沈殿物から分離し、前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第1の部分を含む前記沈殿物を第1の出力として提供するものである、前記分画モジュール、
第1の極性の第1の電荷を有する第1のイオン交換媒体を含むとともに前記第1の出力に連通する第1の分離モジュールであって、前記第1の分離モジュールはフロースルー画分を含む第2の出力を提供するように構成されており、前記フロースルー画分は前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第2の部分を含むものである、前記第1の分離モジュール、及び、
前記第1の極性とは反対の第2の極性の第2の電荷を有する第2の交換媒体を含む第2の分離モジュールであって、前記第2の分離モジュールは、前記複数の夾雑物の第3の部分を保持し、前記標的タンパク質を含む第3の出力を提供するように構成されており、前記第2の分離モジュールは、前記第2のイオン交換媒体でのクロマトグラフィーで失われる前記標的タンパク質が前記溶液中の前記標的タンパク質の量の約10%未満となる前記第2のイオン交換媒体の容量を提供するように選択された量の前記第2のイオン交換媒体を含む、前記第2の分離モジュール
を含む、システム。
【請求項17】
前記分画モジュールと前記第1の分離モジュールとの間の流体経路内にウイルス不活化モジュールを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のイオン交換媒体が陰イオン交換体であり、前記第2の陰イオン交換媒体が陽イオン交換体であり、前記標的タンパク質が免疫グロブリンGである、請求項16又は17に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の夾雑物が、第XI因子、活性化第XI因子、第XII因子、及び活性化第XII因子からなる群から選択される凝固因子を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記溶液が血漿である、請求項16~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記溶液が、血漿に適用された沈殿ステップに由来する上清又は沈殿物である、請求項16~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1の出力と前記第1の分離モジュールとの間に挿入されたデプスフィルターをさらに含む、請求項16~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記デプスフィルターは、珪藻土を含むとともに、前記デプスフィルターを通過する物質の第XI因子又は第XII因子含有量を選択的に低下させるように選択される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記デプスフィルターはパーライトを含まない、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記溶液の体積が少なくとも500Lである、請求項16~24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
標的タンパク質及び複数の夾雑物を含む溶液から前記標的タンパク質を単離する方法であって、
前記溶液に塩を添加することで、前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第1の部分を含む上清と、沈殿物とを生成すること、
前記上清を、第1の極性の第1の電荷を有する第1のイオン交換媒体に適用することで、前記複数の夾雑物の第2の部分を含む第1の結合画分と、前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第3の部分を含む第1のフロースルーとを生成すること、及び、
前記第1のフロースルーを、前記第1の極性とは反対の第2の極性の第2の電荷を有する第2のイオン交換媒体に適用することで、前記複数の夾雑物の第3の部分を含む第2の結合画分と、前記標的タンパク質を含む第2のフロースルーとを生成すること
を含み、
前記第2の交換媒体の容量は、前記第2のイオン交換媒体を使用したイオン交換中に失われる前記標的タンパク質が前記溶液中の前記標的タンパク質の量の約10%未満となるように選択される方法。
【請求項27】
前記溶液が血漿である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶液が分画ステップの産物である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記塩がクエン酸塩又は酢酸塩である、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の交換媒体が、粒子、ビーズ、又はフィルターとして構成されている、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第2のイオン交換媒体がフィルターとして構成されている、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記上清にカプリル酸塩を添加することをさらに含む、請求項26~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
カプリル酸塩の添加後に固体を除去することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
固体を除去することが、珪藻土を含むデプスフィルターの使用を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記デプスフィルターはパーライトを含まない、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記タンパク質の収率は少なくとも70%である、請求項26~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記沈殿物から少なくとも1つの追加のタンパク質を回収することを含む、請求項26~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記溶液の体積が少なくとも500Lである、請求項26~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
標的タンパク質及び複数の夾雑物を含む溶液から前記標的タンパク質を単離するためのシステムであって、
前記血液製剤を受け取り塩分画ステップを行うように構成された分画モジュールであって、前記塩分画ステップは、上清及び沈殿物を生成し、前記上清を前記沈殿物から分離し、前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第1の部分を含む前記上清を第1の出力として提供するものである、前記分画モジュール、
第1の極性の第1の電荷を有する第1のイオン交換媒体を含むとともに前記第1の出力に連通する第1の分離モジュールであって、前記第1の分離モジュールはフロースルー画分を含む第2の出力を提供するように構成されており、前記フロースルー画分は前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第2の部分を含むものである、前記第1の分離モジュール、及び、
前記第1の極性とは反対の第2の極性の第2の電荷を有する第2の交換媒体を含む第2の分離モジュールであって、前記第2の分離モジュールは、前記複数の夾雑物の第3の部分を保持し、前記標的タンパク質を含む第3の出力を提供するように構成されており、前記第2の分離モジュールは、前記第2のイオン交換媒体でのクロマトグラフィーで失われる前記標的タンパク質が前記溶液中の前記標的タンパク質の量の約3%未満となる前記第2のイオン交換媒体の容量を提供するように選択された量の前記第2のイオン交換媒体を含む、前記第2の分離モジュール
を含む、システム。
【請求項40】
前記分画モジュールと前記第1の分離モジュールとの間の流体経路内にウイルス不活化モジュールを含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記溶液が血漿である、請求項39又は40に記載のシステム。
【請求項42】
前記溶液が、血漿に適用された分画ステップに由来する上清又は沈殿物である、請求項39又は40に記載のシステム。
【請求項43】
前記溶液の体積が少なくとも500Lである、請求項39~42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
免疫グロブリンGを単離する方法であって、
複数のIgGサブクラスを含む免疫グロブリンG(IgG)を含む水溶液に、少なくとも10重量%までの濃度のクエン酸を添加することにより、第1の上清及び第1の沈殿物を生成すること、
前記第1の上清を前記第1の沈殿物から分離すること、
前記第1の上清に、少なくとも22重量%の濃度までクエン酸ナトリウムを添加することにより、第2の上清及び第2の沈殿物を生成すること、
前記第2の上清を前記第2の沈殿物から分離すること、
前記第2の沈殿物を溶解させることで溶解した第2の沈殿物を生成すること、
前記溶解した第2の沈殿物の導電率を1mS~10mS(7mSよりも5mS~10mSに調整して、希釈タンパク質溶液を形成すること、
前記希釈タンパク質溶液を、陰イオン交換媒体を含む第1のイオン交換カラムに適用することで第1のフロースルーを生成すること、及び、
前記第1のフロースルーを、陰イオン交換媒体を含む第2のイオン交換カラムに適用することで、免疫グロブリンG調製物を含む第2のフロースルーを生成することであって、前記第2のフロースルーは2つ以上の免疫グロブリンGサブクラスの少なくとも部分的な分離を提供すること、及び、前記免疫グロブリンG調製物は少なくとも85重量%の純度を有すること
を含む方法。
【請求項45】
前記溶解した第2の沈殿物に脂肪酸を添加することで懸濁液を形成することを含み、前記脂肪酸は炭素数4~10の炭素鎖を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記溶解した第2の沈殿物をデプスフィルターに適用することを含む、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記溶解した第2の沈殿物に存在する凝固因子の活性化を回避するために前記デプスフィルターの組成及びサイズを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
導電率の調整はバッファー交換によっては行われない、請求項44~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記陰イオン交換媒体は第四級アミンを含む、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
免疫グロブリンを含有する前記第2のフロースルーを、IgGが陽イオン交換媒体に結合する条件下で陽イオン交換媒体に適用すること、
陽イオン交換媒体を洗浄すること、及び
結合したIgGを前記陽イオン交換媒体から溶出すること
を含む、請求項44~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記陽イオン交換媒体がカルボン酸基を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記第1のイオン交換カラム及び前記第2のイオン交換カラムが、流体流路によって互いに直列に接続されている、請求項44~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記第1のフロースルーが、前記第2のイオン交換カラムに適用される前に収集及びプールされる、請求項44~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記水溶液の体積が少なくとも500Lである、請求項44~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも40mg/mLの濃度のイムノグロブリンG(IgG)であって、95%を超える純度を有し、かつクロマトグラフィー媒体から溶出されたものではない前記IgG、及び
10μg/mL未満の濃度のイムノグロブリンA
を含む医薬組成物。
【請求項56】
活性化第XI因子の含有量が1mU/mL未満である、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
第XII因子の含有量が0.1μg/mL未満である、請求項55又は56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
IgGが少なくとも2Lの血漿から単離される、請求項55~57のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項59】
治療用タンパク質の忍容性を向上させ、及び点滴速度を高める方法であって、
前記治療用タンパク質を、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法によって単離することであって、前記治療用タンパク質は少なくとも95%の純度を有し、かつ変性条件にさらされていないものであること、及び
前記治療用タンパク質を点滴に提供すること
を含む方法。
【請求項60】
前記治療用タンパク質がIgGである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
治療用タンパク質の忍容性を向上させ、及び点滴速度を高める方法であって、
前記治療用タンパク質を、請求項26~38のいずれか一項に記載の方法によって単離することであって、前記治療用タンパク質は少なくとも95%の純度を有し、かつ変性条件にさらされていないものであること、及び
前記治療用タンパク質を点滴に提供すること
を含む方法。
【請求項62】
前記治療用タンパク質がIgGである、請求項61に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書におけるすべての参照された外部資料は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる参考文献における用語の定義又は使用が、本明細書に提供されるその用語の定義と一致しない、又は矛盾する場合、本明細書に提供されるその用語の定義が優先されるものとみなされる。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、特に血清及び/又は血漿からの免疫グロブリンG(IgG)の単離である。
【背景技術】
【0003】
背景技術の説明には、本発明を理解するのに役立ち得る情報が含まれる。ここで提供される情報が先行技術であること、又は現在請求されている発明に関連していること、あるいは具体的又は黙示的に参照されている出版物が先行技術であることを自認するものではない。
【0004】
免疫グロブリンG(IgG)は、原発性免疫不全症やその他の様々な免疫疾患の治療のためにヒトの血漿から調製されるタンパク質産物である。さらに、IgGは、病原体(例えば、SARS-CoV2)の除去の促進、及び感染の予防又は治療のための受動免疫伝達に使用できる。70年以上にわたり、IgGはコーン(Cohn)プロセスで製造されてきた。コーンプロセスでは、温度、pH、エタノール濃度、イオン強度、及びタンパク質濃度を変化させながら、血漿タンパク質を、エタノールにおけるその溶解度の違いに基づいて分離又は分画する。市販の血漿分別装置によるコーンプロセスからの全体的なIgG収率は一般に開示されていないが、最新のコーンプロセスでは、達成される収率は出発物質中に存在するIgGのわずか約50~60%であると広く考えられている。さらに、このプロセスが完了するまでに約7~10日かかると認識されている。
【0005】
Zurloらの特許文献1は、クエン酸塩を使用した血漿の連続分画を利用することでIgGを含む沈殿物を得るIgGの単離方法を記載している。溶解及びバッファー交換の後に得られるIgGが豊富な溶液をイオン交換クロマトグラフィーで処理することで、IgGを含む溶出液を生成する。この溶出画分をさらに陰イオン交換クロマトグラフィーにかける。残念ながら、この技術をイオン交換ステップに適したバッファーへのバッファー交換に利用する場合、このプロセスはダイアフィルトレーション膜の急速なファウリングを生じる可能性がある。そのため、ダイアフィルトレーションを適用できる規模が制限される。さらに、IgGの結合とその後のイオン交換媒体からの溶出でのタンパク質の損失は避けられない。
【0006】
したがって、高収率及び高純度でIgGを単離するための、迅速で効率的かつスケーラブルな方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,879,331号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主題は、免疫グロブリンG(IgG)又は他のタンパク質(例えば、アルブミン、AAT)の高純度かつ高収率での単離を提供する組成物、方法、及びシステムを提供する。そのような方法は、IgGがフロースルー画分に留まる連続的なイオン交換ステップを利用することで、溶出ステップの必要性を回避する。従来の結合、洗浄、及び溶出ステップを回避することで、処理及びスケールアッププロセスが簡素化され、同時に収率も向上する。さらに、非IgGタンパク質を、プロセスの様々な廃棄物の流れ(イオン交換ステップからの結合画分など)から単離できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の概念の一実施形態は、溶液(例えば、血漿、分離ステップの産物)に塩(クエン酸塩又は酢酸塩など)を添加することで上清及び沈殿物を生成すること、前記沈殿物を水溶液に溶解することで前記タンパク質及び少なくとも1つの夾雑物を含む溶解した沈殿物を生成すること、前記溶解した沈殿物を陰イオン交換媒体に適用することで第1の結合画分及び第1のフロースルー(第1のフロースルーは前記タンパク質及び夾雑物を含む)を生成すること、及び、前記タンパク質及び前記夾雑物の両方と結合できる陽イオン交換媒体に第1のフロースルーを適用することで、前記タンパク質を含む第2のフロースルー及び前記夾雑物を含む第2の結合画分を生成することによって、その溶液からタンパク質(例えば、IgG)を単離する方法である。そのような方法では、陽イオン交換媒体の容量は、陽イオン交換ステップ中に失われる前記タンパク質が、前記溶液中の前記タンパク質の量の約3%未満(分かっている範囲???3~10%)となるように選択される。そのような実施形態のいくつかでは、前記タンパク質は免疫グロブリンGであり、前記夾雑物は第XI因子又は活性化第XI因子であり得る。そのような方法では、陽イオン交換媒体は粒子、ビーズ、又はフィルターとして提供され得る。そのような実施形態のいくつかでは、カプリル酸塩を前記溶解した沈殿物に添加し、続いて固体を除去するステップを含むことができる。そのような固体除去は、第XI因子及び/又は第XII因子を保持するように選択されたデプスフィルター、例えば珪藻土を含むデプスフィルターを使用して達成することができる。そのようなデプスフィルターはパーライトを除外することができる。そのような方法からのタンパク質の収率は、(出発タンパク質溶液中のタンパク質の量に対して)70%以上であり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加のタンパク質が、塩添加ステップからの上清から回収される。
【0010】
本発明の概念の別の実施形態は、溶液(例えば、血漿、又は血漿から得られる画分)からタンパク質(例えば、IgG)を単離するためのシステムである。そのようなシステムは、前記溶液を受け取り、上清と沈殿物を生成し、上清を沈殿物から分離し、沈殿物を第1の出力として提供する塩分画を行うように構成された分画モジュールを含む。それはまた、陰イオン交換媒体を含むとともに第1の出力に接続され、及びフロースルー画分(前記タンパク質及び少なくとも1つの夾雑物を含む)用の第2の出力を有する第1の分離モジュールを含む。前記夾雑物(例えば、第XI因子及び/又は活性化第XI因子)と結合する陽イオン交換媒体を含み、かつ前記タンパク質を含む第2のフロースルー画分用の第3の出力を有する第2の分離モジュールが提供される。この第2の分離モジュールは、陽イオン交換ステップ中に失われるのが、血液製剤中の前記タンパク質の量の3%未満(範囲3~10%)となるような陽イオン交換能力を提供する量の陽イオン交換媒体を含む。そのようなシステムは、分画モジュールと第1の分離モジュールとの間の流体経路内にウイルス不活化モジュールを含むことができる。いくつかの実施形態では、デプスフィルターが第1の出力と第1の分離モジュールとの間に挿入される。そのようなデプスフィルターは、第XI因子及び/又は第XII因子を保持するように選択することができ、珪藻土を含むことができる。そのような実施形態のいくつかでは、デプスフィルターはパーライトを除外することができる。
【0011】
本発明の概念の別の実施形態は、塩(例えば、クエン酸塩又は酢酸塩)を溶液(例えば、血漿又は単離ステップの生成物)に添加することで上清及び沈殿物(前記上清は前記タンパク質及び少なくとも1つの夾雑物を含む)を生成すること、前記上清を陰イオン交換媒体に適用することで第1の結合画分及び第1のフロースルー(第1のフロースルーは前記タンパク質及び夾雑物を含む)を生成すること、及び、第1のフロースルーを陽イオン交換媒体に適用することで、前記タンパク質を含む第2のフロースルー及び前記夾雑物を含む第2の結合画分を生成することによって、前記溶液からタンパク質(例えば、IgG、アルブミン、AAT)を単離するための方法である。陽イオン交換媒体の容量は、陽イオン交換中に失われるのが、前記溶液中の前記タンパク質の量の約3%未満(範囲3~10%???)となるように選択される。陽イオン交換媒体は、粒子、ビーズ、又はフィルターとして提供され得る。そのような実施形態のいくつかでは、溶解された上清にカプリル酸塩を添加し、その後、得られた溶液から固体を除去することができる。そのような固体は、珪藻土を含むデプスフィルターを使用して除去できる。いくつかの実施形態では、パーライトはそのようなデプスフィルターから除外される。典型的には、前記タンパク質(例えば、IgG)の収率は、(前記溶液中の前記タンパク質の量に対して)70%以上である。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加のタンパク質を沈殿物から回収することができる。
【0012】
本発明の概念の別の実施形態は、溶液(血漿又は血漿由来の画分など)からタンパク質(例えば、IgG、アルブミン、AAT)を単離するためのシステムであり、このシステムは、前記溶液を受け取り、塩分画ステップを行うことで上清及び沈殿物を生成するとともに前記上清を前記沈殿物から分離して前記上清を第1の出力に提供する分画モジュールを含む。このシステムはまた、陰イオン交換媒体を含む第1の分離モジュールを含み、第1の分離モジュールは、第1の出力を受け取り、フロースルー画分(前記タンパク質及び少なくとも1つの夾雑物を含む)を含む第2の出力を提供する。第2の出力は、第2の分離モジュールであって、前記夾雑物及び前記タンパク質と結合できる陽イオン交換媒体を含むとともに前記タンパク質を含む第2のフロースルー画分を含む第3の出力を提供する第2の分離モジュールに向けられる。第2の分離モジュールは、陽イオン交換ステップ中に失われるのが、第2の出力中の前記タンパク質の量の約3%未満(範囲3~10%???)となるように選択された容量を提供する量の陽イオン交換媒体を含む。そのようなシステムは、分画モジュールと第1の分離モジュールとの間の流体経路内にウイルス不活化モジュールを含むことができる。
【0013】
本発明の概念の別の実施形態は、2つ以上のIgGサブクラスに存在する免疫グロブリンG(IgG)を含む水溶液にクエン酸塩を添加することで少なくとも11重量%の濃度にし、第1の上清及び第1の沈殿物を生成することにより、免疫グロブリンGを単離する方法である。第1の上清を第1の沈殿物から分離し、追加のクエン酸塩を第1の上清に22~26重量%の濃度まで添加することにより、第2の上清及び第2の沈殿物を生成する。第2の沈殿物を第2の上清から分離し、溶解させる。溶解した第2の沈殿物の導電率を5mS~10mS(例えば、約7mS)に調整して、希釈タンパク質溶液を形成する。この希釈されたタンパク質溶液を、陰イオン交換媒体(例えば、第四級アミンを含むもの)を含む第1のイオン交換カラムに適用して第1のフロースルーを生成し、次にこれを陰イオン交換媒体を含む第2のイオン交換カラムに適用して第2のフロースルーを生成する。第1及び第2の陰イオン交換カラムは直列に配置することができる。あるいは、第1のフロースルーを集めてプールしてから第2の陰イオン交換カラムに適用することもできる。この第2のフロースルーはIgGを含み、また、2つ以上の免疫グロブリンクラス又はIgGサブクラスの少なくとも部分的な分離も提供する。得られたIgGは少なくとも約85重量%の純度を有する。そのような実施形態のいくつかでは、溶解した第2の沈殿物に脂肪酸(例えば、炭素数4~10の炭素鎖を有する脂肪酸)を添加することで懸濁液を形成し、次いでこれをデプスフィルターに適用することができる。デプスフィルターの組成及びサイズは、溶解した第2の沈殿物中に存在する凝固因子の活性化を回避し、フィルターを通過する物質中の凝固因子の濃度を低下させるように選択される。そのような実施形態のいくつかでは、第2のフロースルー画分を、IgGが陽イオン交換媒体に結合し、そこに結合したままであるような条件下で陽イオン交換媒体(例えば、スルホン酸基及び/又はカルボン酸基を含むもの)に適用することによってさらに処理することができる。次いで、陽イオン交換媒体を洗浄し、その後、IgGを陽イオン交換媒体から溶出させる。
【0014】
本発明の概念の別の実施形態は、少なくとも40mg/mLの濃度の免疫グロブリンG(IgG)及び2μg/mL未満の濃度の免疫グロブリンAとを含み、前記IgGが98%超の純度を有し、かつクロマトグラフィー媒体から溶出されたものではない医薬組成物である。いくつかの実施形態では、そのような医薬組成物は、1mU/mL未満の活性化第XI因子を含む。いくつかの実施形態では、そのような医薬組成物は、0.1μg/mL未満の第XII因子を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物に含有されるIgGは、少なくとも2Lの血漿から単離される。
【0015】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様及び利点は、添付の図面とともに、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、2つの陰イオン交換ステップを連続して利用する本発明の概念の例示的なプロセスを概略的に示す。
【
図2】
図2は、2つの陰イオン交換ステップを連続して利用する本発明の概念の例示的なプロセスを概略的に示す。
【
図3】
図3は、2つの陰イオン交換ステップを連続して使用する、血液製剤からの免疫グロブリンG(IgG)の単離に適用される本発明の概念の例示的なプロセスを概略的に示す。
【
図4】
図4は、還元条件下、様々なクエン酸濃度での第2の沈殿ステップ中に生成された上清及び沈殿物に対して行ったSDS-PAGEの結果を示す。矢印は、還元条件下でのIgGの重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を示す。
【
図5】
図5は、IgG沈殿試験の結果及び二次沈殿IgG回収率の平均(N=3)を示す。
【
図6】
図6は、Q-セファロース(商標)カラムブレークスルー試験から得られたサンプルのビス-トリスSDS-PAGEの典型的な結果を示す。
【
図7】
図7は、様々なイオン交換カラム配置から得られたサンプルの還元ビス-トリスSDS-PAGEの結果を示す。IgG産物は様々なイオン交換クロマトグラフィーのカラム配置に由来した。
【
図8】
図8は、連続する2L Q-セファロース(商標)カラムで実施された2Lパイロットスケール法のクロマトグラフィー中に得られた典型的なA280測定値を示す。個々の画分は垂直線で示されている。
【
図9】
図9は、本発明の概念の2Lスケールプロセスのクロマトグラフィー中に得られたサンプルの非還元ビス-トリスSDS-PAGEの典型的な結果を示す。レーンのラベルは、
図8のラベルされた画分に対応する。「最終プール」は画分1~5で構成される。
【
図10】
図10は、4つの市販の静脈内IgG製品及び本発明の概念の方法によって製造された3つの2Lスケールバッチからの最終産物の非還元ビス-トリスSDS-PAGEの典型的な結果を示す。1レーン当たり5μgのタンパク質をロードした。
【
図11】
図11は、陰イオン交換及び最小限の陽イオン交換を利用する本発明の概念の例示的なプロセスを概略的に示す。
【
図12】
図12は、陰イオン交換及び制限容量陽イオン交換を利用する本発明の概念の例示的なプロセスを概略的に示す。
【
図13】
図13は、陰イオン交換及び制限容量陽イオン交換を使用する、血液製剤からの免疫グロブリンG(IgG)の単離に適用される本発明の概念の例示的なプロセスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本発明者らは、FDAが市販製品に対して設定した純度基準を満たしながら、約75%~80%又はそれ以上のIgG収率を提供できる商業的に拡張可能な方法を開発した。これは、現在のコーンプロセスのIgG収率50~60%に劣らない。このプロセスはまた、最終産物における第XI因子、第XII因子、及び/又はIgAによる夾雑物を劇的に減少させ、そのような夾雑物を現在では検出できないレベルまで減少させることができる。
【0018】
開示された技術は、プロセススケールでの高純度及び高収率での免疫グロブリンGの迅速な提供を含む、多くの有利な技術的効果を提供することが理解される。
本発明者らの方法は、アルコールの使用を排除し、変性条件(例えば、極端なpH変化など)を最小限に抑えるため、より自然なIgGを生成する。さらに、特許請求の範囲に記載の方法では、IgGはクロマトグラフィー媒体に結合しその後溶出されるのではない。これにより、収率が向上し、変性の可能性が低下すると同時に、単離プロセスが簡素化され、処理時間が大幅に短縮されるという利点がある。そのため、これらの方法は現在のIgG単離方法とは異なり(そしてはるかにコスト効率が高く)、また、IgG産物を、より高いタンパク質安定性で、より長いin vivo半減期で、より速い点滴速度で、より向上した患者忍容性で、及びより低下した免疫原性で提供できる。コーンプロセスに依存する方法では完了するまでに約7~10日かかるのに対し、本発明者らの製造方法は約2日である。この新しい方法の製造プラントの建設及び操業コストは、既存のプラントのコストの数分の一で済むと予測されており、同時に他の治療用タンパク質も活性型及び天然型で、より高収率で生産される。さらに、可燃性/爆発性の化学物質は使用されないため、設備投資が削減され、作業者の安全性が向上し、環境への悪影響が軽減される。免疫グロブリンG(IgG)の単離が本明細書で論じられているが、本発明者らは、商業的価値のある他の血清タンパク質(例えば、AAT、アルブミン)も様々な中間プロセスの流れ(例えば、沈殿ステップからの上清又は沈殿物、クロマトグラフィー媒体に結合した物質など)から単離され得ることを意図していることが理解される。
【0019】
本発明の概念のいくつかの実施形態は、同じイオン交換効果(例えば、陰イオン交換)を有する2つ以上のイオン交換クロマトグラフィーステップを連続して利用し、ここでのバッファー条件及びカラム結合容量は、各イオン交換クロマトグラフィーステップのフロースルー画分に標的タンパク質(例えば、IgG)を提供するために選択又は最適化される。そのようなイオン交換ステップは、同様の容量の媒体(例えば、体積が同様又は同一である同じイオン交換媒体)を使用して実施することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、同様のイオン交換機能を有するが容量が異なるイオン交換媒体(例えば、体積が異なる2つの同じイオン交換媒体)を使用することができる。そのようなイオン交換媒体は、第1の体積又は量のイオン交換媒体のフロースルー画分が第2の体積又は量のイオン交換媒体の入口に向けられるように配置することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、第1の体積又は量のイオン交換媒体のフロースルー画分のすべて又は一部を、第2の体積又は量のイオン交換媒体に適用する前にプールすることができる。
【0020】
本発明の概念の実施形態は、陰イオン交換クロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィーのいずれかを利用することができ、バッファー条件及びカラム結合容量は、各クロマトグラフィーステップのフロースルー画分に標的タンパク質(例えば、IgG)を提供するように選択又は最適化される。
【0021】
本発明の概念による方法の一例が
図1に示されている。この状況では、血液製剤は、血清、血漿、脱クリオ(cryo-poor)血漿、クリオプレシピテートが再溶解された脱クリオ血漿、又はそのような材料に適用される分離ステップから得られる画分(例えば、クロマトグラフィー溶出液、クロマトグラフィーフロースルー、上清、又は溶解した沈殿物)であり得ることが理解される。また、血液製剤が具体的に引用されているが、そのような方法は、目的のタンパク質を含む任意の溶液(例えば、細胞培養培地、細胞培養からの細胞の溶解物、細菌溶解物、溶媒和封入体など)に適用できることも理解される。
図1に示す方法では、分画プロセスからの沈殿物は、イオン交換媒体に適用する前に溶解される。
【0022】
いくつかの実施形態では、そのような再溶解物質は、クロマトグラフィー媒体を詰まらせる可能性のある残留未溶解物質又は沈殿物質を除去するために、例えば1つ以上のフィルターを通すことによって清澄化され得る。いくつかの実施形態では、そのような再溶解沈殿物のバッファー組成は、イオン交換媒体に適用する前に変更することができる。これは、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアリシス、ダイアフィルトレーション、及び/又は再沈殿(例えば、PEGを使用)及びそれに続く再溶解などによるバッファー交換(すなわち、タンパク質含有溶液から塩を除去するプロセス)によって達成できる。あるいは、いくつかの実施形態では、そのような再溶解した沈殿物は、所望の浸透圧及び/又は導電率(例えば、2~10mS)が達成されるまで、希釈することができる(これは、再溶解した沈殿物中に元々存在していた塩を保持する)。第1のイオン交換ステップからのフロースルー画分は、同様の電荷特性(すなわち、陰イオン交換、陽イオン交換)を有するイオン交換媒体を利用する第2のイオン交換ステップに送られ、目的のタンパク質が、この第2のイオン交換ステップのフロースルー画分において高収率(例えば、出発物質中の目的のタンパク質の量に対して70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を超える)かつ高純度(例えば、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%を超える)で回収される。本発明者らは、いくつかの実施形態では、2つのイオン交換カラムの代わりに単一の大きいイオン交換カラムを使用できることを想定しているが、そのようなアプローチは必然的に操作の規模を制限することになる。イオン交換ステップは陰イオン交換ステップとして示されているが、イオン交換ステップが陽イオン交換媒体を使用して実施される実施形態も想定され、IgG以外のタンパク質の単離に適用することができる。
【0023】
本発明の概念の別の実施形態が
図2に示されている。ここでは、第1のイオン交換ステップが、分画ステップから得られた上清に対して実施される。いくつかの実施形態では、そのような上清は、クロマトグラフィー媒体を詰まらせる可能性のある残留粒子や沈殿物質を除去するために、例えば1つ以上のフィルターを通過させることによって清澄化され得る。いくつかの実施形態では、そのような上清のバッファー組成は、イオン交換媒体に適用する前に変更することができる。これは、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアリシス、ダイアフィルトレーション、及び/又は沈殿(例えば、PEGを使用)及びそれに続く溶解などによるバッファー交換(すなわち、タンパク質含有溶液から塩を除去するプロセス)によって達成できる。あるいは、いくつかの実施形態では、そのような上清は、所望の浸透圧及び/又は導電率(例えば、2~10mS)が達成されるまで、希釈することができる(これは、上清中に元々存在していた塩を保持する)。第1のイオン交換ステップからのフロースルー画分は、同様の電荷特性(すなわち、陰イオン交換、陽イオン交換)を有するイオン交換媒体を利用する第2のイオン交換ステップに送られ、目的のタンパク質が、この第2のイオン交換ステップのフロースルー画分において高収率(例えば、出発物質中の目的のタンパク質の量に対して70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を超える)かつ高純度(例えば、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%を超える)で回収される。
【0024】
また、
図1及び2では血液製剤が具体的に引用されているが、そのような方法は、目的のタンパク質を含む任意の溶液(例えば、細胞培養培地、細胞培養からの細胞の溶解物、細菌溶解物、溶媒和封入体など)に適用可能であることも理解される。イオン交換ステップは陰イオン交換ステップとして示されているが、イオン交換ステップが陽イオン交換媒体を使用して実施される実施形態もまた想定される。そのような方法は、例えば、IgG以外のタンパク質の単離に使用することができる。
【0025】
本発明者らは、本発明の概念の方法が血漿からのIgGの単離に特に有用であることを発見したが、IgGを含む他の溶液(例えば、細胞培養培地、細胞溶解物、溶解した封入体、他の体液など)への適用も想定される。本願の文脈内では、血漿には、採取したての血清、採取したての血漿、凍結乾燥血漿を再構成したもの、冷蔵血漿、凍結血漿、回収した血漿(recovered plasma)、脱クリオ血漿、クリオプレシピテートが再溶解された脱クリオ血漿、及びこれらの2つ以上の混合物が含まれるものとみなされる。そのような血漿は、例えば、血液又は血漿収集センターからプールされた材料として入手することができる。血漿からIgGを単離するための本発明の概念の方法の例を
図3に示す。
【0026】
最初の2つのステップについて、本発明者らは、2つの沈殿ステップに幅広い塩濃度を用いて塩分画プロセスを変更及び/又は最適化し、最適濃度(例えば、第1の塩沈殿では約11%及び第2の塩沈殿では約26%)を決定し、また、不要なタンパク質を最小限に抑えながらIgG収率を最大化した。クエン酸塩又は酢酸塩が好ましいが、任意の適切な塩を使用することができる。そのような塩は、塩溶液として(例えば、計算量で50重量%の塩溶液として)、及び/又は乾燥形態で(例えば、粉末又は結晶固体として)迅速に添加することができる。示されているように、第1の沈殿ステップではIgGに富んだ上清が生成され、第2の沈殿ステップではIgGに富んだ沈殿又はペーストが生成される。このIgGに富んだ沈殿物は、イオン交換ステップの前に(例えば水に)溶解される。そのような実施形態では、バッファー交換ステップ(例えば、ダイアリシス、ダイアフィルトレーション、限外濾過とそれに続く希釈、サイズ排除クロマトグラフィーなど)を、イオン交換ステップの前に実施することができる。あるいは、再溶解した沈殿物を、所望の導電率(例えば、2~10mS)又はイオン強度が達成されるまで希釈することもできる。バッファー交換ステップ中に沈殿が発生する場合があること、及び、最初のイオン交換ステップの前にそのような沈殿した物質を除去するために追加の濾過ステップ(例えば、深層濾過、又は深層濾過とそれに続く清澄化又は研磨濾過ステップ)を実施できることが理解される。
図3に示すように、本発明の概念の大規模IgGプロセスにおいて、IgGは、第2の陰イオン交換ステップからのフロースルー(すなわち、非結合)画分において回収され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、ウイルス不活化ステップが、イオン交換ステップの前に、溶解したIgGに富む沈殿物に適用される。例えば、エンベロープウイルスを不活化するために、pHを5.7に下げ、カプリル酸塩を添加することができる。そのようなステップは重大なIgG損失に寄与するとは考えられず、カプリル酸塩はその後のイオン交換ステップで効果的に除去できる。
【0028】
従来のタンパク質精製プロセスでは、最終タンパク質産物の純度のために収率が犠牲になる。驚くべきことに、本明細書に記載の方法では、IgGは通常、高収率(出発物質中に存在するIgGの70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を超える)及び高純度(80%、85%、90%、95%、98%、又は99%を超える)の両方で回収される。
【0029】
実施例
沈殿剤としてクエン酸ナトリウムを使用する2回の沈殿ステップで、クリオプレシピテートに乏しい血漿からのIgGの複数の塩分画を実施した。2リットルのテストバッチをパイロット施設で調製した。達成されたIgG収率は、第2の沈殿物(すなわち、第2の沈殿ステップから生じる沈殿物)では90%であり、第2の上清(すなわち、第2の沈殿ステップから生じる上清)ではわずか3%であったが、2回目は、第2の沈殿物では95%及び第2の上清ではわずか3%の収率が達成された。第2の上清に約3%のIgGが同様に存在することは、塩分画プロセスが安定しており、血漿中の出発IgGの約95%が得られることを示している。
【0030】
塩分画プロセスによるIgG収率及び純度の最適なプロトコルを開発するために、幅広いクエン酸ナトリウム濃度を調査した。脱クリオ血漿に最初の11%クエン酸ナトリウム(w/v)で1時間沈殿させるステップを行い、続いて4,500×gで遠心分離した。得られた第1の上清1を22%~28%(w/v)のクエン酸ナトリウム濃度での2時間の第2のクエン酸ナトリウム沈殿ステップでさらに分画し、続いて4,500×gで遠心分離した。第1の沈殿ステップからのペースト(すなわち、第1の沈殿物)及び第2の沈殿ステップからのペースト(すなわち、第2の沈殿物)を、湿潤ペースト1グラム当たり水10mLの濃度で注射用水に溶解した。分画プロセス中、温度(2~8℃)及びpH(7.0±0.1)の両方を維持した。クエン酸濃度は、周囲温度(20~25℃)で50%w/vクエン酸ナトリウムを添加することによって調整した。
【0031】
総タンパク質及びIgG含有量の分析は、主に、それぞれA280測定及び総IgG ELISA(Invitrogen)によって行った。総IgG ELISAの測定精度は、脱クリオ血漿などの複雑な溶液では正確性が低くなる可能性があるが、これは純度の高いIgGを使用するプロセスステップで相対的なIgG濃度を測定するのには適した方法である。
【0032】
最初の11%(w/v)クエン酸塩沈殿ステップでは典型的に、第1の上清中のIgGの98%回収率が見られた(データは示されていない)。表1に示すように、第2の沈殿ステップからの第2の沈殿物におけるIgG収率は、クエン酸濃度が22%から24%(w/v)に上昇するにつれて上昇し、その後、クエン酸濃度が26%及び28%w/vになると頭打ちになる(第1の上清からの約85%のIgG回収率)。これらのデータは、対応する第2の上清で観察されたIgG濃度が逆の傾向を示すことによってさらに裏付けられる。
【0033】
【0034】
第2の沈殿物重量が増加してもそれに対応するIgG収率の増加が伴っていないことは、26%(w/v)クエン酸塩を超える沈殿物に望ましくない夾雑タンパク質が蓄積することを示している。これはSDS-PAGEにより確認された(
図4)。
図4は、脱クリオ血漿に適用された分画プロセスの還元条件下で行われた4~12%SDS-PAGEゲルの結果を示す。矢印は、IgGの重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を示す。ゲルには、レーンごとに20A
280単位のタンパク質をロードした。示されるように、IgGは第1の上清(S1)及び第2の沈殿(ペレット2)で明らかであり、第2の沈殿ステップにおいて高い(例えば、26%、28%w/v)クエン酸濃度では、第2の沈殿物で夾雑タンパク質の増加が観察される。
【0035】
沈殿ステップの安定性は、同じ脱クリオ血漿プールのアリコートを11~13%(w/v)クエン酸塩、次に22~26%(w/v)クエン酸塩で分画することによって特徴付けられた。得られた上清及び沈殿物中のIgG収率をELISAによって分析した。得られた平均IgGレベルを
図5に示す。
図5は、第1の沈殿クエン酸濃度及び第2の沈殿クエン酸濃度の様々なペアで得られた平均結果のヒストグラムを示す(例えば、「11-22%」は、第1の沈殿ステップでは11%w/vクエン酸塩及び第2の沈殿ステップでは22%w/vクエン酸塩を示す)。示されるように、第1の沈殿ステップでは11%クエン酸塩(w/v)及び第2の沈殿ステップでは24%~26%(w/v)クエン酸塩11-24%が、最大IgG収率を達成するのに最適であった。12又は13%(w/v)クエン酸塩での第1の沈殿では、第2の沈殿ステップを様々な濃度で行った場合、IgG収率が比較的低いように見えた。
【0036】
初期沈殿ステップの安定性をさらに特徴付けるために、2L体積のプールされた脱クリオ血漿を4つ処理した。それぞれの処理では、初期沈殿に11%(w/v)クエン酸濃度を使用し、第2の沈殿ステップに26%(w/v)クエン酸濃度を使用した。これらのそれぞれからの第2の沈殿物を注射用水に溶解した(湿潤ペースト1g当たり10mL)。IgG濃度を比濁法により測定した。結果を表2に示す。
【0037】
【0038】
示されるように、比濁分析データは非常に一貫しており、出発脱クリオ血漿から最初の11%沈殿ステップ後に得られた第1の上清中のIgGの平均回収率が98.1%であることを示している。このデータは、第1の沈殿物にIgGが欠乏している(<1%)ことと一致する。P2における4つのバッチにわたる第2の沈殿物における最終IgG収率は90.3%IgGであり、第2の上清中に残存するIgGの平均値は6.2%であった。本発明者らは、遠心分離中に一部のIgG含有沈殿物が収集されなかったため、より大規模な遠心分離により第2の沈殿物におけるIgGの回収率は約95%以上になり得ると考えている。
【0039】
そのような第2の沈殿物を注射用水に10mL/g湿潤ペーストで溶解すると、溶液が濁り及び/又は乳白色を呈する場合があることが分かった。本発明者らは、濁りは懸濁脂質及び不溶化不純物の結果である可能性が高いと考えている。小規模な研究では、次のイオン交換ステップの前に、バッファー交換(すなわち、IgG含有溶液からの塩の除去)にダイアリシスを使用した。そのような沈殿した物質は、ダイアリシスされた物質をイオン交換媒体に適用する前に、詰まりを避けるために遠心分離又は濾過(例えば、デプスフィルターを使用)によって除去することができる。ダイアフィルトレーションの使用中に同様の沈殿が認められたため、ダイアフィルトレーションはイオン交換クロマトグラフィー前のバッファー交換には不適切であった。
【0040】
本発明者らは、スケールアップにおいて、再溶解した第2の沈殿物から沈殿する物質を除去するために深層濾過を使用すると、追加の非IgGタンパク質がイオン交換クロマトグラフィーに導入されることを発見した。小規模では、そのような非IgGタンパク質はダイアリシス/遠心分離プロセスで除去され、イオン交換カラムへのタンパク質負荷には寄与しなかった。
【0041】
陰イオン交換媒体の容量研究では、Q-セファロース(商標)カラムでのブレークスルーは、樹脂1mLあたり約14A
280単位で発生することが確認された。35A
280単位を2回(14A
280/mL)、5mLのQ-セファロース(商標)カラムに注入した後、高分子量の夾雑物が62kDaマーカーの上の数か所に現れ始め、3回目の35A
280単位注入(21A
280/mL)の後に顕著なアルブミン(約60kDa)のブレークスルーが発生する。そのような研究の典型的な結果は、
図6のSDS-PAGEゲルに示されている。
【0042】
図6は、Q-セファロース(商標)カラムブレークスルー研究から得られたサンプルの還元ビス-トリスSDS-PAGEページゲルを示す。5mL Q-セファロース(商標)カラムに、DL10デプスフィルターとXLGフィルターをそれぞれ通過させた35A
280のP2物質を3回の注入により連続的にロードした。レーン1は分子量標準を含む。レーン2は、濾過された第2の沈殿物を含む。レーン3は、注入1後のフロースルー画分を含む(上記のとおり)。レーン4は、注入2後のフロースルー画分を含む。レーン5は、注入3後のフロースルー画分を含む。デプスフィルター処理した溶解した第2の沈殿物の3つのバッチにわたる平均±SDタンパク質負荷は、23,162±2,000A
280単位であった。これは、上限標準偏差及び10%の安全マージンを満たすための、出発血漿1Lあたり少なくとも約1LのQ-セファロースカラムサイズに相当する。
【0043】
通常、イオン交換クロマトグラフィーを使用したIgGの単離では、ネガティブ選択(すなわち、IgGが結合しない)としての陰イオン交換を、IgGが結合し、結合したIgGから夾雑物が洗浄された後に溶出されるポジティブセレクターとしての陽イオン交換と組み合わせて利用する。陽イオン交換クロマトグラフィーにおけるそのような結合、洗浄、及び溶出のステップは、そのようなアプローチのスケーラビリティを制限し、また、プロセス中にIgGが損失する追加の機会も提供する。
【0044】
本発明者らは、別のクロマトグラフィーフレームワークを開発するために、
図6に示すようなQ-セファロース(商標)カラム容量に関する情報を使用した。溶解及び深層濾過した第2の沈殿物質を最初にQ-セファロース(商標)(陰イオン交換体)カラム(14A
280/mL)で処理して物質のプールを生成し、これを様々な下流クロマトグラフィースキームに適用した。単一の5mL Q-セファロース(商標)カラム操作からのフロースルーを表すそのようなプールされた物質の量を、続いて第2の5mL Q-セファロース(商標)カラム、5mL DEAEセファロース(商標)カラム、5mL CM-セファロース(商標)カラム、又は5mL CMセファロース(商標)カラムに連結された5mL DEAEセファロース(商標)カラムのそれぞれに適用した。連結されたDEAE/CMカラムの場合、CMセファロース(商標)カラムの溶出前にDEAEセファロース(商標)カラムをCMセファロース(商標)カラムから分離した。
図7は、様々なクロマトグラフィーカラムスキームから得られたIgG産物のビス-トリスSDS-PAGEゲルを提供する。レーン1は分子量標準を含む。レーン2は、単一のQ-セファロース(商標)カラムからの初期フロースルーを含む。レーン3は、CMセファロース(商標)カラムからの溶出液を含む。レーンは、DEAEセファロース(商標)カラムからのフロースルーを適用することで得られる物質と、このフロースルーをCMセファロース(商標)カラムに適用することで得られる溶出液を含む。レーン5は、DEAEセファロース(商標)カラムからのフロースルーを含む。レーン6は、DEAEセファロース(商標)カラムからの溶出液を含む。レーン7は、第2のQ-セファロースカラムからのフロースルーを含む。レーン8は、第2のQ-セファロース(商標)カラムからの溶出液を含む。矢印は、高分子量成分を除去した結果、より高純度の産物を生成した樹脂の組み合わせを示す。
【0045】
図7において矢印で示す材質をLCMSで分析することで、各カラムスキームで生成された相対IgG純度を決定した。すべてのカラム配置の産物は同様の純度を有するように見える。
【0046】
2Lスケールの脱クリオ血漿と、直列に配置された2本の同様のサイズの2L Q-セファロース(商標)カラムとを使用して、3回の完全な操作を行った。クロマトグラフィーはAKTA Explorer FPLC(商標)システムで実施した。これらのプロセスの最終条件は次のとおりである:2×2L Q-セファロース(商標)カラム(1×Axichrome(商標)100/300及び1×Axichrome(商標)140/300)を直列に結合し、20mM NaOAC pH5.7で平衡化した。カラムに45mL/分でロードし、50mL/分で洗浄し、2M NaClステップ(9500mLで実施)で溶出した。A280読み取り値に基づいて1リットルの画分を収集した。これらの条件下で、許容可能なFXIaレベルの高純度IgGが得られ、この方法がスケーラブルであることが示された。濾過後の3つのバッチ(バッチD、E、及びF)の物理的特性を以下の表3に示す。
【0047】
【0048】
総じて、クロマトグラフィーではすべての2Lスケールの方法が全く同じように行われ、プロファイルや分画収集に大きな違いはなかった。説明の目的で、バッチEを代表例として選択した。産物の分画収集は、A
280が50mAUに達したときに開始し、吸光度が125mAUに低下したときに終了した。
図8に示すように、主要なフロースルーピーク(画分1~5)は、驚くべきことに形状が均一ではなく、900mAU/mLの最大A
280で頂点に達する3~4つの異なる特徴を含んでいた。2つの小さな特徴(画分6、二相ピーク及び画分8の単一ピーク)がメインピークの後に観察された。溶出ピーク(溶出画分)は、主に形状が均一で、物質の複雑な尾部がある。
図8に示すクロマトグラムにおいて、個々の画分は垂直バーで示される。
【0049】
図9は、バッチE Q-セファロース(商標)/Q-セファロース(商標)クロマトグラフィーから収集したそれぞれの画分を1レーン当たり10A
280ユニットでロードしたゲル上の非還元ビス-トリスSDS-PAGEの結果を示す。レーンラベルは、
図8でラベルされた画分に対応する。「最終プール」は画分1~5のプールで構成されており、それぞれは純粋なIgG(150kDa)であると考えられる。画分5にわずかな余分なバンド(約200kDa)が見られる。このバンドは明らかに、画分6に含まれる物質の二相ピークからの「にじみ」であり、IgG種と混合された約200kDaのタンパク質種から構成されているようである。最終プール(画分1~5)は、>95%IgGであるとみられ、明らかな夾雑物は存在していないようである。
【0050】
法的規制により、ヒトでの使用のために製造されたヒト由来製品の生物学的処理には2つのウイルス不活化/除去ステップを含めることが必要となる場合がある。そのために、本発明の概念の方法は、第2の沈殿物に適用されるウイルス不活化ステップ、及び/又はイオン交換クロマトグラフィー後にウイルスを除去するためのナノフィルトレーションを含むことができる。
【0051】
2リットル規模の方法は、例えば、深層濾過の前にウイルス不活化のために室温で1時間20mMのカプリル酸ナトリウムでの処理を含むように修正することができる。溶解した第2の沈殿物にカプリル酸塩を添加すると、少量の白色の沈殿物が形成されることがある。表4は、Q-セファロース(商標)クロマトグラフィーによる処理で得られたサンプルのカプリル酸含有量を示す。Sartoclear(登録商標)DL10深層濾過後、元のボーラスのカプリル酸塩の63%が浄化されたサンプルで検出可能である。P2深層濾過後のサンプルの希釈がSartoclear(登録商標)XLG滅菌フィルター後のサンプルで考慮される場合、この濾過ステップではカプリル酸塩の損失はない。残りのカプリル酸塩はすべてQ-セファロース(商標)クロマトグラフィー中に除去され、このプロセスステップ後のIgG画分には検出可能なレベルのカプリル酸塩は観察されない。
【0052】
【0053】
ウイルスの不活化に加えて、ウイルス除去(例えば、ナノフィルトレーションによる)をウイルス除去に適用することができる。例えば、ナノフィルトレーションを、本発明の概念の方法における2つのウイルス不活化/除去ステップのうちの2番目として適用することができる。ウイルス除去は、任意の適切なナノフィルター/ナノフィルトレーション装置及び/又は方法を使用して達成することができる。適切なナノフィルトレーション装置には、Sartorius Virosart(登録商標)Max(商標)0.1μmプレフィルターとその後のSartorius Virosart(登録商標)HC(商標)0.02μmウイルス除去フィルターが含まれるが、これに限定されない。典型的なウイルス除去ステップでは、製品材料を添加する前に、メーカーの指示に従ってプレフィルターとウイルス除去フィルターが順番に取り付けられ、水で洗い流される。例えば、220cm2Virosart(登録商標)Max(商標)フィルターとVirosart(登録商標)HC(商標)フィルター(Sartorius)の組み合わせセットを使用して、約2Lの血漿に由来する物質を処理できる。あるいは、そのような結合フィルターの2つ以上の組み合わせセットを使用して、フィルターアセンブリを通るフラックスの損失を減少させ、処理時間を短縮することができる。
【0054】
目的のタンパク質を単離するための本発明の概念の方法全体を通してフロースルー画分を使用すると、標的タンパク質の濃度が臨床応用にとって最適ではない溶液が得られる可能性がある。したがって、本発明の概念の方法は、目的のタンパク質が精製された後に行われ、当技術分野で知られている技術を利用する最終タンパク質濃縮ステップを含むことができる。そのような濃縮ステップは、例えば、限外濾過によって行うことができ、薬学的に許容されるバッファー組成物へのバッファー交換を可能にするダイアフィルトレーションステップを組み込むことができる。例えば、IgGの単離では、高度に精製された産物材料を約4%(w/v)以上(例えば、約5%w/v)のIgGに濃縮することができ、濃縮ステップ中にダイアフィルトレーションを使用して、現存するバッファーを、0.2Mグリシンを含むバッファー(pH4.2~6.5)又はその他の薬学的に許容されるバッファーに置換することができる。例えば、そのような濃縮/ダイアフィルトレーションステップは:(1)ナノフィルトレーションされたタンパク質溶液を約500mLの体積まで濃縮すること、(2)上記約500mLの体積を製剤バッファー(例えば、8又はそれ以上のダイアボリューム)にダイアフィルトレーションすること、及び(3)ダイアフィルトレーションされた体積を、タンパク質の標的濃度(例えば、約5%w/vのIgG)に濃縮すること、の3つのステップで行うことができる。タンパク質濃度は、例えば280nmでの吸光度によってモニタリングできる。
【0055】
3つのバッチ(E、F、G)の全体的なIgG収率を、出発血漿について及び沈殿ステップの後続の画分について有効とされている比濁分析アッセイを使用して決定した。精製作業によりIgG純度が90%以上に達したら、A280測定値と吸光係数1.3を使用してIgGを定量した。表5は、各プロセスステップで存在する3つのバッチすべての平均総IgGを示す。平均プロセス収率は75%であり、最も重大なプロセス損失は深層濾過(約8%)及びQ-セファロース(商標)クロマトグラフィー(約9%)ステップで発生する。
【0056】
【0057】
直列に配置された2つの陰イオン交換カラムを使用して行われるクロマトグラフィーステップでは、IgG以外のすべてのタンパク質の>99%が除去される。驚くべきことに、物質の2つの小さい後続ピーク(
図8の画分6及び8)はIgG種を含み、(ELISAによる)測定可能なIgAもIgMも含まないことが判明した。これらの画分の両方におけるIgG種は、IgG4に偏っている(約30%)。本発明者らは、Q-セファロース(商標)クロマトグラフィーフロースルー画分の変則的な形状は、カラムに投入されたサンプル中に見出される4つのIgGサブクラスの差異的で一時的な保持によるものであると考えている。IgGサブクラスELISAデータは、IgG1がフロースルー画分全体にわたって継続的に出現し、第2のショルダー(
図10の画分3)はタイプ2及び3に富んでいるようである一方、IgG4は主にメインUV「ピーク」の終わりに向かって溶出する(画分5)ことを示している。この予期せぬ結果は、使用したバッファー導電率(約7mS)での陰イオン交換樹脂のIgG相互作用が制限されたため、結合せずにカラムを通過する一部のIgGサブクラスの進行を本質的に遅らせたことによるものであり得る。本発明者らは、血液製剤から始まる統合プロセスにおいて、バッファー条件及び陰イオン交換媒体の選択及び/又は容量を最適化することで、陰イオン交換クロマトグラフィーからのフロースルー画分におけるIgGサブクラスの分離を提供できると考えている。
【0058】
従来技術のタンパク質単離プロセスでは、一般に、タンパク質産物の収率と純度の間には反比例の関係がある。驚くべきことに、本発明者らは、本発明の概念の方法が、非常に高い収率(出発物質のIgGの量の70%を超える)及び高純度の両方を提供できることを見出した。直列に配置された2つのQ-セファロース(商標)カラムを使用し、IgGがフロースルー画分で収集される本発明の概念の方法を使用して、いくつかのIgG産物の精製について、安全性及び同時精製の非IgGタンパク質量を調べるために、包括的な分析試験を実施した。
【0059】
図10に示すように、SDS-PAGEは、>98%のIgG純度の産物純度を示し、これはヒト用に現在市販されているIgG産物の純度に匹敵するか、又はそれを上回る。具体的には、市販の静脈内IgG製品(ガンマガード(Gammagard)(登録商標)、Gamunex(登録商標)、プリバジェン(Privagen)(登録商標)、及びビビガム(Bivigam)(商標))と比較して試験すると、最終産物のIgGにはHMW夾雑物が少なくなる。
【0060】
2つのQ-セファロース(商標)を使用する本発明の概念の方法によるIgG産物の分析試験結果を表6に示す。この目的のために、本発明の概念のそのような方法を使用して生成された2L規模のバッチからのIgG産物を、総タンパク質約5%を目標として、0.2Mグリシン、pH4.2に配合した。これは、ヒト用の治療用IgG製品に関する現行方式と一致している。IgG濃度を、分光測光法による280nmでの吸光度により測定した。最終産物製剤に対して追加のタンパク質含有量の測定を行った。3つのそれぞれの最終製剤の方法全体の平均濃度(N=5)は、それぞれ41.2、52.9、及び50.9mg/mLであった。IgGサブクラス分布をIgGサブクラスELISAによって測定し、3つの最終製剤全体で63%のIgG1、28%のIgG2、7%のIgG3、及び2%のIgG4であると決定された。それぞれの脱クリオ血漿出発物質の値は、59%のIgG1、29%のIgG2、7%のIgG3、及び4%のIgG4であった。他の免疫グロブリン種に関しては、IgAのみがELISAで検出され(3.3μg/mL)、LCMSで確認された。ただし、IgA含有量は4μg/mL未満である。IgMはELISAでは検出されず、LCMSでは微量のIgM、IgE、及びIgDペプチドのみが検出された。
【0061】
【0062】
直列に配置された2つの陰イオン交換カラムを使用する本発明の概念のIgG単離方法からの産物を、安全性及び有効性に関する内容について特性評価した。したがって、抗A、B、及びD抗体、抗補体活性(ACA)、プロテインキナーゼA(PKA)活性、Fc機能、トロンビン生成アッセイ又はTGAによる活性化凝固因子XI(FXIa)活性、及び非活性化部分トロンボプラスチン時間(NAPTT)活性を、いくつかの2L規模の最終産物製剤について特性評価した。結果は次のとおりである。
【0063】
・抗A、B、D抗体:試験した3つの産物バッチはすべて、ヒト用製品の一般的な許容基準に合格した。
・Fc機能/重合:3つの産物バッチすべてのFc機能は、試験した2つのIgG濃度で>100%であり、これはヒト用IgG製品の一般的な許容基準を満たすかそれを超えている。さらに、SE-HPLCデータは、IgGの>96%が単量体であり、二量体が<4%、高次ポリマー<0.2%であり、Ig断片がほとんど検出できないレベルであることを示している。これは、ヒト用のIgG製品に関するFDA及びEUの両方の仕様を満たしている。
【0064】
・PKA及びACA活性:PKA及びACA活性は、それぞれのタンパク質分解カスケードを通じて自然免疫の活性化/不活性化を引き起こす可能性がある夾雑物の存在を検査するものである。PKA活性は低く(平均=1.3IU/mL)、ヒト用のIgG製品の一般的な許容基準である35IU/mLを十分に下回っていた。しかし、ACA活性は1.0CH50U/mgを超えていた。
【0065】
・凝固促進活性:凝固時間は固有の凝固促進活性(供給源に関係なく)を測定するが、TGAアッセイはFXIa様活性を測定する。最も低い希釈率では、バッチE(141秒)は>150秒の許容基準をほとんど満たさなかったが、バッチFとGは合格であった。3つのバッチすべてにおけるFXIa様活性はやや高く(>2.0mU/mL)、これは精製プロセス中のある時点で凝固の接触経路が活性化されたことを示している。FXIa(すなわち、活性化第XI因子)やその他の微量夾雑物を除去するには、直列に配置されたQ-セファロース(商標)カラムからの流出液に適用される陽イオン交換カラムを使用することができ、セファロース(商標)溶出液に見られるIgGを結合させ、その後、陽イオン交換媒体からIgGを溶出する。このプロセスの条件を最適化している間に、本発明者らは驚くべきことに、夾雑接触活性化因子(例えば、活性化第XI因子)及び他の夾雑物が、IgGよりも高い親和性で陽イオン交換媒体に結合することを発見した。この観察結果は、夾雑物の量に合わせて陽イオン交換媒体の容量を調整するために使用され、それによってIgGの陽イオン交換媒体への結合を防止した。この調整により、以下に示すように、陽イオン交換媒体をネガティブ選択モード(すなわち、フロースルーで所望のタンパク質産物を収集するモード)で使用できる。
【0066】
あるいは、本発明の概念のいくつかの実施形態は、陰イオン及び陽イオン交換クロマトグラフィーの両方を利用し、バッファー条件、差異のあるタンパク質親和性、及びイオン交換クロマトグラフィー媒体の結合容量が、各クロマトグラフィーステップのフロースルー画分に標的タンパク質(例えば、IgG)を提供するように選択又は最適化される。この目的に向けて、最初のイオン交換ステップ(例えば、陰イオン交換、陽イオン交換)は、目的のタンパク質にあまり結合しない高容量イオン交換媒体を使用して実施され得る。例えば、IgGの単離では、大容量/高容量の陰イオン交換ステップを実施して、IgGを含むフロースルー画分を提供し、夾雑タンパク質を含む結合画分を保持することができる。次いで、フロースルー画分を(いくつかの実施形態では、イオン強度/導電率を調整するための塩の添加に続いて)小容量又は低容量の陽イオン交換媒体に適用する。陰イオン及び陽イオン交換の両方を利用する従来のプロセスでは、陽イオン媒体が陰イオン交換ステップ(IgGがフロースルー画分に見られる)とは反対のモードで利用されることが理解される。従来のIgG単離プロセスでは、標的タンパク質(IgG)は陽イオン交換媒体上に保持されるが、残りのタンパク質夾雑物はフロースルー画分に見られる。陽イオン交換媒体を洗浄又はリンスした後、IgGは溶出によって(例えば、高塩含有量のバッファーの適用によって)回収される。
【0067】
典型的な方法とは対照的に、本発明の概念のこの実施形態では、陽イオン交換ステップは、不純物を結合しながら、目的のタンパク質(IgG)はフロースルー画分に残るように設計される。この小容量又は低容量の陽イオン交換媒体のサイズは、陰イオン交換媒体のフロースルー中に見出される夾雑タンパク質がブレークスルーとなる(バッファー条件を考慮に入れる)量又は容量とほぼ同じか、それをわずかに(例えば、1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%)上回るように選択される。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、これにより、陽イオン交換媒体に一時的に結合する可能性のある任意のIgGを夾雑タンパク質で置き換えることが可能になると考えている。陽イオン交換媒体の量/容量を慎重に選択すると、夾雑タンパク質を効率的に除去できると同時に、フロースルー画分で高収率のIgGが得られる。
【0068】
本発明の概念のプロセスの別の例を以下の
図11に示す。これに関連して、血液製剤は、血清、血漿、冷蔵血漿、凍結血漿、回収血漿、再構成された凍結乾燥血漿、脱クリオ血漿、クリオプレシピテートが再溶解された脱クリオ血漿、又はそのような材料に適用される沈殿及び/又は精製ステップから得られる画分(例えば、上清又は溶解した沈殿物)であり得ることが理解される。また、血液製剤が具体的に引用されているが、そのような方法は、目的のタンパク質を含む任意の溶液(例えば、細胞培養培地、細胞培養からの細胞の溶解物、細菌溶解物、溶媒和封入体など)に適用できることも理解される。塩沈殿(例えば、クエン酸塩又は酢酸塩による)によって生成された沈殿物は、再溶解され、陰イオン交換媒体に適用される。
【0069】
いくつかの実施形態では、そのような再溶解物質は、クロマトグラフィー媒体を詰まらせる可能性のある残留未溶解物質又は沈殿物質を除去するために、例えば1つ以上のフィルターを通すことによって清澄化され得る。いくつかの実施形態では、そのような再溶解沈殿物のバッファー組成は、陰イオン交換媒体に適用する前に変更することができる。いくつかの実施形態では、これは、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアリシス、ダイアフィルトレーション、限外濾過による濃縮とそれに続く希釈、エレクトロダイアリシス、及び/又は再沈殿(例えばPEGを使用)とそれに続く再溶解などのバッファー交換(すなわち、タンパク質含有溶液から塩が除去されるプロセス)を通じて達成され得る。あるいは、好ましい実施形態では、そのような再溶解沈殿物を、所望の浸透圧及び/又は導電率(例えば、2~10mS)が達成されるまで希釈することができる(これは、再溶解沈殿物中に元々存在していた塩を保持する)。陰イオン交換ステップからのフロースルー画分は、陽イオン交換媒体を使用する低容量陽イオン交換ステップに送られる。他のプロセスとは対照的に、目的のタンパク質は、この第2の陽イオン交換ステップのフロースルー画分で高収率(例えば、出発物質中の目的のタンパク質の量と比較して70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を超える)かつ高純度(例えば、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%を超える)で回収される。最初のイオン交換ステップは陰イオン交換ステップとして示されているが、最初のイオン交換ステップが高容量陽イオン交換媒体を使用して行われ、続いて低容量陰イオン交換ステップが行われる実施形態(目的のタンパク質が主に、両方のイオン交換ステップのフロースルー体積に存在する)も想定されており、IgG以外のタンパク質の単離に適用できる。
【0070】
本発明の概念の別の実施形態が
図12に示されている。ここでは、最初のイオン交換ステップが、分画ステップから得られた上清に対して行われる。血液製剤が具体的に引用されているが、そのような方法は、目的のタンパク質を含む任意の溶液(例えば、細胞培養培地、細胞培養からの細胞の溶解物、細菌溶解物、溶媒和封入体など)に適用できることも理解される。最初のイオン交換ステップは陰イオン交換ステップとして示されているが、最初のイオン交換ステップが高容量陽イオン交換媒体を使用して行われ、第2のイオン交換ステップが低容量陰イオン交換媒体を使用して行われる実施形態も想定される。そのような方法は、例えば、IgG以外のタンパク質の単離に使用することができる。
【0071】
そのような実施形態のいくつかでは、塩分画から得られた上清は、クロマトグラフィー媒体を詰まらせる可能性のある残留粒子又は沈殿物質を除去するために、例えば1つ以上のフィルターを通すことによって清澄化され得る。いくつかの実施形態では、そのような上清のバッファー組成は、陰イオン交換媒体に適用する前に変更することができる。これは、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアリシス、ダイアフィルトレーション、及び/又は沈殿(例えばPEGを使用)とそれに続く溶解などのバッファー交換(すなわち、タンパク質含有溶液から塩が除去されるプロセス)を通じて達成され得る。あるいは、好ましい実施形態では、そのような上清を、所望の浸透圧及び/又は導電率(例えば、2~10mS)が達成されるまで希釈することができる(これは、上清中に元々存在していた塩を保持する)。陰イオン交換ステップからのフロースルー画分は、陽イオン交換媒体(例えば、カルボン酸基及び/又はスルホン酸基を含む媒体)を使用する低容量陽イオン交換ステップに送られる。従来技術のプロセスとは対照的に、目的のタンパク質は陰イオン交換ステップのフロースルー画分に見られ、第2の陽イオン交換ステップのフロースルー画分で高収率(例えば、出発物質中の目的のタンパク質の量に対して70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を超える)かつ高純度(例えば、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%を超える)で回収される
図11及び
図12における最初のイオン交換ステップは、陰イオン交換ステップとそれに続く低容量陽イオン交換ステップへのフロースルー画分の適用(その後、陽イオン交換流出液から目的のタンパク質を回収)を使用することを示しているが、本発明者らは、最初の陽イオン交換ステップに続いて、低容量陰イオン交換ステップへのフロースルー画分の適用、及び陰イオン交換からのフロースルー画分からの目的のタンパク質の回収を利用する類似の方法を想定している。そのような方法は、非IgGタンパク質の単離に適用できる。
【0072】
本発明者らは、本発明の概念の方法が、血漿からのIgGの単離に特に有用であることを発見したが、IgGを含む他の溶液(例えば、細胞培養培地、細胞溶解物、他の体液など)への適用も想定される。本願の文脈内では、血漿には、採取したての血漿、冷蔵血漿、凍結血漿、脱クリオ血漿、及びクリオプレシピテートが再溶解された脱クリオ血漿が含まれるとみなされる。そのような血漿は、例えば、商業収集センターから入手することができる。血漿からIgGを単離するための本発明の概念の方法の一例を
図13に示す。
【0073】
図13に示す最初の2つのステップについて、本発明者らは、2つの沈殿ステップに幅広い塩濃度を用いて塩分画プロセスを変更及び/又は最適化し、最適濃度(すなわち、第1の塩沈殿では約11%及び第2の塩沈殿では約26%)を決定し、また、不要なタンパク質を最小限に抑えながらIgG収率を最大化した。そのような塩は、塩溶液として(例えば、計算量で50重量%の塩溶液として)、及び/又は乾燥形態(例えば、粉末又は結晶固体として)迅速に添加することができる。示されているように、第1の沈殿ステップではIgGに富んだ上清が生成され、第2の沈殿ステップではIgGに富んだ沈殿又はペーストが生成される。このIgGに富んだ沈殿物は、イオン交換ステップの前に(例えば水に)溶解される。以下に記載するように、そのような方法の好ましい実施形態では、バッファー交換ステップ(例えば、ダイアリシス、ダイアフィルトレーション、限外濾過とそれに続く希釈、サイズ排除クロマトグラフィーなど)は、イオン交換ステップの前には行われない。
【0074】
大規模プロセスを成功させるには、処理ステップで使用される媒体(例えば、クロマトグラフィー媒体など)の詰まりを回避する必要がある。そのような大規模プロセスでは、約500~600L(例えば高度免疫の場合)から8,000L以上(例えば正常IgGの場合)の血漿又は血清を利用することができる。出願人らは、最初の分画ステップでクエン酸塩沈殿を利用する先行技術の方法(米国特許第7,879,331号に記載されているものなど)は、バッファー交換のための単純なバッグダイアリシスが非実用的になる規模(例えば、約1L以下)では有用ではないことを発見した。本発明者らは、より大規模な適用をサポートするためにバッグダイアリシスをダイアフィルトレーションに置き換える試みは、たとえ処理されるタンパク質溶液中に沈殿物質が明らかに見えなくても、ダイアフィルトレーション膜の急速な詰まりのため非現実的であることを発見した。
【0075】
最終的に、本発明者らは、濾過を使用することで、残留する未溶解物質又は懸濁物質、及び/又はIgGに富む沈殿物の溶解後に沈殿する物質(例えば、ウイルス不活化時)を除去できることを発見した。驚くべきことに、本発明者らは、イオン交換ステップの前に使用される濾過媒体の選択が、IgG及び望ましくない夾雑物(例えば、第XI因子、第XII因子)の両方の濃度に大きな影響を与えることを見出した。大規模なIgG単離に有用なフィルターのスクリーニング研究の典型的な結果を表7に示す。
【0076】
【0077】
フィルター組成が、フィルター材料上の所望のIgG産物の保持、ならびに第XI因子及び第XII因子などの夾雑物の保持に影響を与えることは明らかである。特に、珪藻土デプスフィルター(例えば、F1)の使用は、最小限のIgG保持(総タンパク質の関数として)と、第XI因子及び第XII因子の両方の夾雑物の顕著な減少を示す。対照的に、シリカ(例えば、F9)は第XI因子及び第XII因子を効果的に除去することが判明したが、タンパク質含有量の全体的な損失はIgG収率に悪影響を及ぼす。同様に、第四級アミン/PESフィルターはタンパク質をほとんど保持しなかったが、夾雑タンパク質はほとんど、又はまったく保持されなかった。
【0078】
したがって、本発明の概念のいくつかの実施形態では、イオン交換ステップの前に、珪藻土を含むデプスフィルターを大規模なIgG単離プロセスに組み込むことができる。そのような実施形態のいくつかでは、珪藻土フィルターはデプスフィルターとすることができる。いくつかの実施形態では、本方法で使用される珪藻土フィルターはパーライトを除外することができる。いくつかの実施形態では、後続のステップにおけるクロマトグラフィー媒体の詰まりを低減するために、そのような濾過ステップの後に追加の粒子濾過ステップ(例えば、1μm、0.45μm、0.2μm細孔濾過)を実施することができる。いくつかの実施形態では、デプスフィルターのサイズは、第XI因子及び/又は第XII因子の活性化をもたらし得る利用可能な表面積を最小限に抑えながら、十分なフィルター容量及びフラックス保持を提供するように最適化することができる。
【0079】
図6に示すように、本発明の概念のIgG単離プロセスにおいて、第1のイオン交換ステップは、陰イオン交換媒体を使用して実施することができる。そのような陰イオン交換媒体は、第四級アミン(Q)媒体であり得る。そのような陰イオン交換媒体は、広範囲のpH条件(例えば、pH1~14、pH2~13、pH3~12、pH4~11)にわたって正電荷を維持することができる。陰イオン交換媒体は、任意の適切な支持体(例えば、アガロース、架橋アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ガラス、又はそれらの組み合わせ)上に、任意の適切な構成(例えば、多孔質ビーズ、非多孔質ビーズ、繊維、ウール、フィルターなど)で提供することができる。
【0080】
本発明の概念の好ましい実施形態では、第2の沈殿ステップからの再溶解した沈殿物は、陰イオン交換媒体に適用する前にバッファー交換プロセスに供されない。本願の文脈において、バッファー交換プロセスとは、目的のタンパク質(例えば、IgG)を含む溶液から塩を除去するプロセスを指す。そのようなプロセスの例としては、ダイアリシス、ダイアフィルトレーション、限外濾過による濃縮とそれに続く希釈、及びサイズ排除クロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなバッファー交換プロセスには、濃縮されていない再溶解沈殿物の単純な希釈(これはタンパク質溶液中に存在する塩を保持する)は含まれない。目的のタンパク質(例えば、IgG)はイオン交換ステップのフロースルー画分で回収されるため、希釈を行う場合は、最小体積(例えば、元の体積の3倍未満、元の体積の約1.5倍から2.5倍、元の体積の約2倍、元の体積の約1.5倍、又はほぼ元の体積)の希釈剤を使用して行うことが好ましい。
【0081】
図6に示すように、本発明の概念の大規模IgGプロセスでは、IgGは陰イオン交換媒体からのフロースルー(すなわち、非結合)画分で回収される。この第1のフロースルー画分は、続いて、夾雑タンパク質を保持しながらIgG(これも通常、陽イオン交換媒体に結合する)をフロースルー画分(すなわち、第2のフロースルー画分)中で通過させるようにサイズ/容量、及びバッファー条件が選択された小容量又は低容量の陽イオン交換媒体(例えば、カルボン酸基又はスルホン酸基を含む媒体)に適用される。典型的には、陽イオン交換媒体の容量又はサイズは、第1のフロースルー画分に存在する夾雑物に対する容量と同等又はそれをわずかに(例えば、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、75%、又は100%)超えるように選択される。理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、陽イオン交換媒体及び結合条件がそのように選択されると、IgGが夾雑タンパク質によって置き換えられることで第2のフロースルー画分に残るために、IgGを結合させてから溶出する方法よりも収率が上がると考えている。好ましい実施形態では、陽イオン交換ステップにおけるIgGの損失は、出発物質のIgGの量の約10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満である。
【0082】
そのような陽イオン交換媒体は、任意の適切な支持体(例えば、アガロース、架橋アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ガラス、又はそれらの組み合わせ)上に、任意の適切な構成(例えば、多孔質ビーズ、非多孔質ビーズ、繊維、ウール、フィルターなど)で提供することができる。本発明者らは、使用される陽イオン交換媒体の容量は非常に小さくてよく、好ましい実施形態ではペンダント陽イオン交換基を有するフィルターによって提供できることを発見した。これは、精製ステップと清澄化ステップを有利に組み合わせる。
【0083】
本発明の概念のいくつかの実施形態では、夾雑物に対する容量及び選択性を最適化するために、陽イオン交換媒体に適用する前に、第1のフロースルー画分のバッファー組成、導電率、及び/又はpHを変更することができる。好ましい実施形態では、塩を添加することで、第1のフロースルー画分のイオン強度又は導電率を所望の範囲内に収まるように高めることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、第2のフロースルー画分を追加の処理ステップにかけることができる。そのような追加の処理ステップには、ウイルス除去のためのナノフィルトレーション、例えば0.02μmの細孔膜を使用する濾過が含まれ得る。本発明者らは、これが収量損失を最小限に抑えながら、残留するウイルス粒子を効果的に保持できることを発見した。
【0085】
いくつかの実施形態では、精製タンパク質溶液は、安定性を提供する薬理学的に適合するバッファー中で有用な濃度を有する医薬品を提供するために、濃縮及びダイアフィルトレーションによる使用のために調製され得る。IgGの場合、そのようなステップは、適切な製剤バッファー(例えば、0.2Mグリシン、pH4.2~pH6.5)中で、損失を最小限に抑えながら、例えば、約4%~6%IgG(w/v)以上のIgG濃度を提供することができる。濃度は、既知の方法を使用して高めるなどの調整をすることができる。
【0086】
本発明の概念のIgG単離プロセスの典型的なIgG収率の結果を表8に示す。
【0087】
【0088】
表8に示す材料から得られた試験結果は、商用IgG製品のリリース基準をすべて満たしていた。結果は表9及び表10である。
【0089】
【0090】
【0091】
著しく低いレベルの第XI因子夾雑物に加えて、本発明者らは、本発明の概念の方法が驚くほど低いレベルのIgA夾雑物を提供することを発見した。
上述の方法は、わずか24~72時間(好ましくは約48時間)で出発血漿から約72~85%の収率のIgG(出発物質のIgG量と比較して)を一貫して生成する、安定しておりかつ商業的にスケーラブルなプロセスである。得られる産物は、100%の機能性を備えた99%を超える純度のIgG産物である。
【0092】
本発明の概念の方法によって生成される様々な中間廃棄物流、例えば、第1の分画ステップで生成された沈殿物、第2の分画ステップで生成された上清、陰イオン交換ステップからの結合画分、及び/又は陽イオン交換ステップからの結合画分から、追加の血漿タンパク質が回収され得ることが理解される。いくつかの実施形態では、そのような中間産物流の2つ以上を、単離される非IgG血漿タンパク質の供給源として組み合わせることができる。そのような中間産物は、任意の適切な方法(例えば、追加の沈殿ステップ、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び/又は混合モードクロマトグラフィー)によって処理することで、出発材料からの追加の非IgGタンパク質の単離を促進することができる。
【0093】
本発明者らは、クエン酸塩沈殿ステップは従来技術のエタノール沈殿プロセスよりも穏やかであり、IgG産物がアルコール、極端なpH変化、極端な温度への多数及び長時間の曝露、ならびに長い処理時間なしで得られるため、タンパク質変性のリスクを最小限に抑えると考えている。アルコール及び低pHを避けることは、タンパク質の安定性、in vivo半減期、タンパク質治療薬の免疫原性、患者の忍容性、及び点滴速度の向上に影響する。
【0094】
本発明者らの方法はまた、環境に優しく(塩対アルコール)、コーン分画ベースのプロセスよりも費用対効果が高い。
本明細書における本発明の概念から逸脱することなく、すでに説明したもの以外のさらに多くの修正が可能であることは、当業者には明らかである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の趣旨以外によって制限されるべきではない。さらに、明細書及び特許請求の範囲の両方を解釈する際には、すべての用語は、文脈と一致する可能な限り広い方法で解釈されるべきである。特に、「含む」という用語は、非排他的な方法で要素、コンポーネント、又はステップを指すものとして解釈されるべきであり、参照された要素、コンポーネント、又はステップが、明示的に参照されていない他の要素、コンポーネント、又はステップと共に存在し、利用され、又は組み合わされてよいことを指す。明細書、特許請求の範囲が、A、B、C....及びNからなる群から選択されるもののうちの少なくとも1つに言及している場合、その文脈は、A+NやB+Nなどではなく、その群から1つの要素のみを必要とすると解釈されるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的タンパク質及び複数の夾雑物を含む溶液から前記標的タンパク質を単離する方法であって、
前記溶液に塩を添加することで上清及び沈殿物を生成すること、
前記沈殿物を水溶液に溶解することで、前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第1の部分を含む溶解した沈殿物を生成すること、
前記溶解した沈殿物を、第1の極性の第1の電荷を有する第1のイオン交換媒体に適用することで、前記複数の夾雑物の第2の部分を含む第1の結合画分と、前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第3の部分を含む第1のフロースルーとを生成すること、及び、
前記第1のフロースルーを、前記第1の極性とは反対の第2の極性の第2の電荷を有する第2のイオン交換媒体に適用することで、前記複数の夾雑物の第3の部分を含む第2の結合画分と、前記標的タンパク質を含む第2のフロースルーとを生成すること
を含み、
前記第2の
イオン交換媒体の容量は、前記第2のイオン交換媒体を使用したイオン交換中に失われる前記標的タンパク質が前記溶液中の前記標的タンパク質の量の約10%未満となるように選択される方法。
【請求項2】
前記溶液が血漿である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液が分離ステップの産物である、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩がクエン酸塩又は酢酸塩である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のイオン交換媒体が陰イオン交換媒体であり、前記第2
のイオン交換媒体が陽イオン交換媒体であり、前記標的タンパク質が免疫グロブリンGである、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の夾雑物が第XI因子又は活性化第XI因子を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶解した沈殿物にカプリル酸塩を添加することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
カプリル酸塩の添加後に
、第XI因子又は第XII因子を選択的に保持する濾過ステップの適用によって固体を除去することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記標的タンパク質の収率が少なくとも70%である、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液の体積が少なくとも500Lである、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
標的タンパク質及び複数の夾雑物を含む溶液から前記標的タンパク質を単離するためのシステムであって、
前記溶液を受け取り塩分画ステップを行うように構成された分画モジュールであって、前記塩分画ステップは、上清及び沈殿物を生成し、前記上清を前記沈殿物から分離し、前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第1の部分を含む前記沈殿物を第1の出力として提供するものである、前記分画モジュール、
第1の極性の第1の電荷を有する第1のイオン交換媒体を含むとともに前記第1の出力に連通する第1の分離モジュールであって、前記第1の分離モジュールはフロースルー画分を含む第2の出力を提供するように構成されており、前記フロースルー画分は前記標的タンパク質及び前記複数の夾雑物の第2の部分を含むものである、前記第1の分離モジュール、及び、
前記第1の極性とは反対の第2の極性の第2の電荷を有する第2の交換媒体を含む第2の分離モジュールであって、前記第2の分離モジュールは、前記複数の夾雑物の第3の部分を保持し、前記標的タンパク質を含む第3の出力を提供するように構成されており、前記第2の分離モジュールは、前記第2のイオン交換媒体でのクロマトグラフィーで失われる前記標的タンパク質が前記溶液中の前記標的タンパク質の量の約10%未満となる前記第2のイオン交換媒体の容量を提供するように選択された量の前記第2のイオン交換媒体を含む、前記第2の分離モジュール
を含む、システム。
【請求項12】
前記分画モジュールと前記第1の分離モジュールとの間の流体経路内にウイルス不活化モジュールを含む、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1のイオン交換媒体が陰イオン交換体であり、前記第2の陰イオン交換媒体が陽イオン交換体であり、前記標的タンパク質が免疫グロブリンGである、請求項
11に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の夾雑物が、第XI因子、活性化第XI因子、第XII因子、及び活性化第XII因子からなる群から選択される凝固因子を含む、請求項
11に記載のシステム。
【請求項15】
前記溶液が
、血漿
、血漿に適用された沈殿ステップに由来する上清、及び血漿に適用された沈殿ステップに由来する沈殿物からなる群から選択される、請求項
11に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の出力と前記第1の分離モジュールとの間に挿入されたデプスフィルターをさらに含
み、
前記デプスフィルターは、前記デプスフィルターを通過する物質の第XI因子又は第XII因子含有量を選択的に低下させる、請求項
11に記載のシステム。
【請求項17】
前記溶液の体積が少なくとも500Lである、請求項
11に記載のシステム。
【国際調査報告】