(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】アセトンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/49 20060101AFI20231227BHJP
C07C 49/08 20060101ALI20231227BHJP
B01J 23/10 20060101ALI20231227BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20231227BHJP
B01J 29/74 20060101ALI20231227BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20231227BHJP
B01J 29/67 20060101ALI20231227BHJP
B01J 29/80 20060101ALI20231227BHJP
B01J 23/80 20060101ALI20231227BHJP
C07C 45/48 20060101ALN20231227BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
C07C45/49
C07C49/08 A
B01J23/10 M
B01J29/70 M
B01J29/74 M
B01J23/63 M
B01J29/67 M
B01J29/80 M
B01J23/80 M
C07C45/48
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539288
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 ES2021070931
(87)【国際公開番号】W WO2022144480
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511000083
【氏名又は名称】コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス(セエセイセ)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
【住所又は居所原語表記】C/Serrano,117,E-28006 Madrid,Spain
(71)【出願人】
【識別番号】522191314
【氏名又は名称】ウニヴェルシダッド ポリテクニカ デ バレンシア
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】プリエト ゴンザレス,ゴンザロ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス マルコス,エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ファルポン,マルコス
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA14
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4G169BA01B
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4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07B
4H006AA02
4H006AB80
4H006AB84
4H006AC29
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4H006BA05
4H006BA07
4H006BA08
4H006BA09
4H006BA10
4H006BA25
4H006BA71
4H006BB60
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BD33
4H006BE20
4H006BE40
4H006BE41
4H039CL25
(57)【要約】
アセトンの製造方法
本発明は、合成ガスおよび固体の多成分触媒からアセトンを直接合成する方法に関し;前記多成分触媒は、少なくとも1つのカルボニル化活性成分および少なくとも1つのケトン化活性成分を統合し;前記カルボニル化成分は、8員環単位を含む網目構造を有するゼオタイプ材料を含み;前記ケトン化成分は、イットリウム、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、マンガン、亜鉛、ガリウム、インジウム、スズ、ビスマス、ランタニド元素、もしくはそれらの任意の組合せのリストから選択される水酸化物、酸化物、またはそれらの任意の組合せを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトンを直接合成する方法であって、少なくとも、以下の工程:
a)固体の多成分触媒上で、少なくとも合成ガスを含む供給流を反応させる工程であって:前記多成分触媒は、少なくとも1つのカルボニル化活性成分および少なくとも1つのケトン化活性成分を統合し;前記カルボニル化成分は、8員環単位を含む網目構造を有するゼオタイプ材料を含み;前記ケトン化成分は、イットリウム、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、マンガン、亜鉛、ガリウム、インジウム、スズ、ビスマス、ランタニド元素、もしくはそれらの任意の組合せのリストから選択される水酸化物、酸化物、またはそれらの任意の組合せを含む;工程;
b)前記反応工程の前記流体からアセトンを回収する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ゼオタイプ材料は、MOR、ETL、FER、CHA、SZR構造またはそれらの任意の組合せからなる群から選択されるゼオライトである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼオライトは、Al、Ga、B、In、Y、La、Feまたはそれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの三価元素を取り込んでいる、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記三価元素はAlであり、前記ゼオライトは3~100のSiO
2/Al
2O
3モル比を有する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼオライトは、その表面上に堆積した、銀、銅、パラジウム、イリジウム、白金、ロジウム、レニウム、亜鉛、およびそれらの任意の組合せから選択される金属を含む、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ゼオライトは、銀、銅、パラジウム、およびそれらの任意の組合せから選択される金属を添加することによって改質されている、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記多成分触媒の前記ケトン化成分は、CeO
2、ZrO
2またはそれらの任意の組合せを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記多成分触媒の前記ケトン化成分は、マンガン、チタン、他のランタニド、およびそれらの任意の組合せのリストから選択される元素をさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記多成分触媒は、次に、水素化成分を含む、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記多成分触媒の前記水素化成分は、ZnO、ZrO
2、MgO、In
2O
3、Ga
2O
3、CeO
2またはそれらの任意の組合せから選択される酸化物を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記多成分触媒の前記水素化成分は、ZnO、ZrO
2、MgO、In
2O
3、Ga
2O
3、CeO
2またはそれらの任意の組合せから選択される酸化物担持銅を含む、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記多成分触媒の前記水素化成分は、Al
2O
3、ゼオライトまたはそれらの任意の組合せから選択される酸性固体をさらに含む、
請求項9~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記多成分触媒は、その粉末形態にある個々の成分から複合材料として形成される、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記多成分触媒は、個々の成分の成形体の混合物を含む、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記供給流は、メタノール、ジメチルエーテル、またはそれらの任意の組合せから選択される有機化合物をさらに含む、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記反応は単一の反応器中で行われる、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記反応の温度は373K~673Kの範囲内である、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記反応の圧力は1バール~200バールの範囲内である、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記供給流におけるH
2/COモル比は、0.1~4である、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記供給流におけるCO
2/COモル比は、0~2の範囲内である、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
一酸化炭素、二酸化炭素、水素、メタノール、DME、酢酸、酢酸メチル、またはそれらの任意の組合せを含む流体が、前記反応器の排出流から回収され、前記反応器に再循環される、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記反応器の排出流から回収されたメタノールを含む前記流体が、別の反応器において脱水工程に供され、ここで、メタノールは、完全にまたは部分的にDMEに転換され、続いて、水の完全または部分的除去の工程が、本発明の方法の前記反応器へのその再循環の前に行われる、
請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、合成ガスを少なくとも含むガス混合物を多成分触媒と接触させることによるアセトンの製造方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
アセトンは、2-プロパノンとしても知られ、ポリカーボネートおよびエポキシ樹脂の製造のためのアクリレートおよびビスフェノール-Aの合成において重要な溶媒および化学中間体である。
【0003】
工業レベルでのアセトン製造は一般に、ベンゼンをプロピレンでアルキル化してクメンを製造することからなる第1の工程を含み、クメンは空気中で連続的に酸化されてクメンヒドロペルオキシドを形成する。次に、別の反応工程において、クメンヒドロペルオキシドを酸性媒体中で加水分解して、等モル量のフェノールおよびアセトンを製造する。結果として、設定された方法によるアセトンの製造方法の経済的収益性は、次に、フェノールの市場での需要に直接関連している。あるいは、プロピレンの部分酸化方法によってアセトンを得ることができる。
【0004】
代替的な炭素源からのアセトンの製造方法の開発は非常に関心を集めており、開発を達成することは、(プロピレンのような)アルケンまたは(ベンゼンのような)芳香族炭化水素などの需要が高い供給源の利用可能性からだけでなく、ならびにフェノールなどの二次生成物の市場需要からも分離される。
【0005】
合成ガスおよびその直接誘導体は、アセトン製造のための炭素源として興味深い代替物を構成する。合成ガス(synthesis gas)は、「合成ガス(syngas)」として一般に知られ、典型的には主成分として一酸化炭素(CO)、水素(H)2、および場合によっては二酸化炭素(CO2)からでも構成される混合物である。合成ガスは、とりわけ、例えば、石炭ガス化、バイオマスガス化および/または改質、ならびに二酸化炭素水素化による天然ガスの水蒸気改質または部分酸化によって、多数の炭素源から得ることができる。
【0006】
メタノールは、合成ガス中に存在する炭素酸化物を、水素を用いて選択的に水素化することからなる、メタノール合成として知られる触媒的方法を介して合成ガスから直接得ることができる。J. P. Lange著の文献“Methanol synthesis: a short review of technology improvements”(Catalysis Today, volume 64, Issues 1-2, 2001, pages 3-8)には、合成ガスからメタノールを直接製造するための既存の触媒および方法の概要が示されている。
【0007】
ジメチルエーテル(DME)は、メタノールから誘導されるエーテル化合物である。メタノールからのジメチルエーテルの製造は、接触脱水工程で行うことができる。H. BateniおよびC. Able著の文献“Development of Heterogeneous Catalysts for Dehydration of Methanol to Dimethyl Ether: A Review”(Catalysis in Industry, volume 11, 2019, pages 7-33)には、メタノールを転化してジメチルエーテルを製造するための既存の触媒および方法のリストが記載されている。あるいは、DMEは、メタノール合成の工程とそれに続く脱水とを組み合わせることによって、単一の工程で合成ガスから直接製造することができる。A. Schafer等による文献US9295978B2は、単一の反応工程における合成ガスからのジメチルエーテル製造方法を記載している。Q. Fu等による文献US8669295B2は、メタノール、ジメチルエーテル、さらに軽質オレフィンの混合物を合成ガスから単一の工程で得る方法を記載している。したがって、それらの脱水から誘導されるメタノールおよびジメチルエーテルの両方は、当技術分野で記載される方法を介して合成ガスから直接得ることができる。
【0008】
合成ガス、または合成ガスとその誘導体(メタノール、ジメチルエーテル、またはそれらの組合せなど)との混合物などの、利用可能性が高い炭素源を転換することによってアセトンを直接得るための方法の開発は、非常に関心を集めている。
【0009】
文献CN102653777Bは、発酵プロセスを行い生物学的触媒として作用する微生物と合成ガスとを接触させることによって、他のアルコール型生成物と共にアセトンを製造するための方法を記載している。
【0010】
V. Berzin等著の文献“Selective production of acetone during continuous
synthesis gas fermentation by engineered biocatalyst Clostridium sp. MAceT113”(Letters in Applied Microbiology, volume 55, 2012, pages 149-154)には、当該方法のために設計された微生物の存在下で合成ガス流の発酵によりアセトンを製造する方法が記載されている。
【0011】
しかしながら、微生物を介したこれらの発酵経路は、微生物の安定性および機能性に必要とされる穏やかな温度で低い収率および生産性を示し、一般に、反応生成物は、高度に希釈された水溶液の形態で得られ、それらを濃縮するためにかなりの量のエネルギーを必要とする。
【0012】
文献CN111517929Aは、酸性ゼオライト触媒を適用することによって、ジメチルエーテルおよび/またはメタノールと一酸化炭素との混合物からアセトンを製造する方法に関する。
【0013】
文献CN104193606Aは、いくつかの別個の反応工程および分離工程を含む、合成ガスからアセトンを調製する方法を開示している。
【0014】
文献GB2212494Aには、合成ガスからアセトンを直接合成する方法が記載されている。この方法によれば、合成ガスを、有機溶媒に溶解した分子触媒と接触させる。ここで、前記分子触媒は、酸素の非存在下で、少なくとも1つの第VIII族遷移金属、有機塩基、1つまたは複数の金属と錯体を形成することができる配位子、およびアニオン源を反応させることによって、得られる。
【0015】
上記を考慮すると、固体触媒のみを使用する方法において、アセトンを直接製造する方法、換言すると、合成ガス、あるいは合成ガス混合物および合成ガス誘導体(メタノール、DMEまたはそれらの組合せなど)から、中間の分離工程および/または精製工程を行わずに、単一の反応工程でアセトンを製造する方法を開発することに関心が集まっている。このタイプの方法は、下記を転換することによって、アセトンを直接製造するためのその使用の技術的利点を提示する:
(i)合成ガス流、または、
(ii)当技術分野で公知の方法による、メタノールおよび/またはジメチルエーテルへの合成ガスのそれまでの部分的転換処理からの排出流であって、ここで、合成ガスは、その誘導体であるメタノール、ジメチルエーテルまたはこれらの組合せと混合して現れる、排出流。
【0016】
触媒が固体であるという事実は、連続的な化学的処理の実装にとって非常に有益である。これは、触媒が、その分離、および適切な場合には流体相中の試薬と生成物との混合物の回収、ならびに失活後のそれらの回復または再生のための処理を単純化するからである。
【0017】
したがって、本発明の目的の1つは、単一の反応工程において、少なくとも合成ガスを含むガス混合物を固体の多成分触媒と接触させることによって、アセトンを製造する方法を提供することである。
【0018】
このような方法は、以下によって実施することができることが見出された:
(i)合成ガスを含む流体を提供すること、
(ii)前記供給流を、1つのカルボニル化成分および1つのケトン化成分を少なくとも含む固体の多成分触媒と接触させること。
【0019】
本発明の文脈において使用される用語「多成分触媒」は、少なくとも2つの異なる固体成分の混合物を含む触媒であって、前記成分が別々の触媒として使用される場合に異なる触媒機能を示す触媒として、理解される。
【0020】
本発明の文脈において使用される用語「カルボニル化」は、アルコール型化合物またはエーテル型化合物と、一酸化炭素とからカルボキシル化合物が形成される反応として理解される。本発明に係るカルボニル化成分は、このタイプの反応を触媒する成分である。
【0021】
本発明の文脈において使用される用語「ケトン化」は、2つのカルボキシル化合物の縮合によって、または、単一のカルボキシル化合物の自己縮合によって、ケトン型化合物、二酸化炭素および水が生成される反応として理解される。本発明に係るケトン化成分は、このタイプの反応を触媒する成分である。
【0022】
〔説明〕
本発明は、第1の工程において、合成ガスを含むガス流を固体の多成分触媒と1つの反応工程で接触させる工程と、第2の工程において、前記反応工程の排出流からアセトンを回収する工程と、を含むアセトンの製造方法に関する。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲を通して、用語「含む」およびその活用形は、他の技術的特徴を排除することを意図するものではない。当業者にとって、本発明の他の目的、利点および特徴は、部分的には本明細書から、部分的には本発明の実施形態から、導き出すことができる。
【0024】
本発明の方法のためには、中間生成物の分留、単離、調整および/または精製の工程なしに、単一の反応工程において、合成ガスを含むガス流を、カルボニル化反応およびケトン化反応のための触媒機能を少なくとも統合する多成分触媒と接触させることが本質的であると考えられる。本発明の方法によれば、本発明の有利な効果を達成するために適した多成分触媒が、アセトンが主要な有機生成物の1つである生成物流の形成を引き起こす。
【0025】
したがって、本発明は、アセトンを直接合成する方法であって:
(i)多成分触媒を提供する工程、
(ii)合成ガスを含む供給流を提供する工程、
(iii)(i)で提供した触媒を(ii)で提供した供給流と接触させて、アセトンを調製する工程、および、
(iv)反応生成物の混合物からアセトンを回収する工程、
を含む、方法に関する。
【0026】
より具体的には、本発明は、アセトンを直接合成する方法であって:
a)固体の多成分触媒上で、少なくとも合成ガスを含む供給流を反応させる工程であって:前記多成分触媒は、少なくとも1つのカルボニル化活性成分および少なくとも1つのケトン化活性成分を統合し;前記カルボニル化成分は、8員環単位を含む網目構造を有するゼオタイプ材料を含み;前記ケトン化成分は、イットリウム、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、マンガン、亜鉛、ガリウム、インジウム、スズ、ビスマス、ランタニド元素、もしくはそれらの任意の組合せのリストから選択される水酸化物、酸化物、またはそれらの任意の組合せを含む;工程、
b)前記反応工程の流体からアセトンを回収する工程、
を含む、方法に関する。
【0027】
ケトン化成分を含む酸化物もしくは水酸化物とは、記載された元素(イットリウム、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、マンガン、亜鉛、ガリウム、インジウム、スズ、ビスマス、ランタニド元素)の任意の酸化物または水酸化物を指す。これらの元素は、それらの可能な原子価のいずれかで作用することができる。
【0028】
多成分触媒
本発明によれば、多成分触媒は、カルボニル化反応のための少なくとも1つの活性成分と、ケトン化反応のための少なくとも1つの活性成分とを含む。
【0029】
多成分触媒中のカルボニル化成分は、網目構造中の8員環(8-membered rings、8MR)によって形成されるチャネルを含む少なくとも1つのゼオタイプを含む。本発明の文脈において使用される用語「ゼオタイプ」は、頂点を共有し、2ナノメートル(2.10-9メートル)以下の直径を有する細孔および/またはキャビティを規定するMO4四面体から構築された構造的網目を有するゼオライトおよび関連する結晶性成分の一群を指す。ここで、Mは金属または非金属型の化学元素を表し、ゼオライトの場合には主にケイ素(Si)である。ゼオタイプのためにまず有用な構造は、したがって、ABW、AEN、AFR、AFV、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AVE、AVL、AWO、AWW、BCT、BIK、BRE、CAS、CDO、CFG、CSV、CZP、DAC、DDR、EAB、EEI、EON、EPI、ESV、ETL、EZT、FER、HEU、IHW、IRN、ITE、ITW、JBW、JNT、JSN、JSW、LEV、MAZ、MFS、MOR、MRT、MTF、NSI、OWE、PAR、PCR、PCS、PSI、PTY、PWW、RRO、RTE、RTH、RWR、SAS、SFO、STI、UEI、UFI、VET、YUG、ZON、ACO、AEI、AFN、AFS、AFT、AFX、AFY、ANA、BOZ、BPH、CGS、CHA、CLO、DFO、DFT、EDI、ERI、ETR、ETV、GIS、GME、GOO、IFU、IFW、IFY、IWW、JOZ、KFI、LIT、LOV、LTA、LTF、LYJ、LTL、MEL、MER、MON、MOZ、MWF、NAB、NAT、NPT、OBW、OFF、OSO、PAU、PHI、POR、PUN、PWN、RHO、RSN、RWY、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SFV、SFW、SIV、SOR、SOS、STW、SWY、SYT、SZR、THO、TSC、TUN、UOE、USO、UOV、VNI、VSV、WEI、WEN、YFI型構造体、およびこれら構造型のうち2つ以上で構成された混合構造を含む。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、多成分触媒中のカルボニル化成分は、ゼオライトを含む。SiおよびOに加えて、好適なゼオライト構造網目は、Al、Ga、B、In、Y、La、Feまたはそれらの組合せから選択される少なくとも1つの三価元素を含んでもよい。これらの元素は、従来の方法のいずれかによってゼオライト網目に導入することができる。本発明のより好ましい実施形態において、ゼオライト構造網目は、Al、Gaまたはそれらの任意の組合せを含む。本発明のさらにより好ましい実施形態において、ゼオライト構造網目はAlを含む。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、多成分触媒のカルボニル化成分中のゼオライト構造網目は、三価元素であるAlを含み、ゼオライト組成物中のSiO2/Al2O3モル比は3~100の範囲内である。さらにより好ましくは、前記比は、8~40の範囲内である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、多成分触媒中のカルボニル化成分は、MOR、ETL、FER、CHA、SZR型構造またはそれらの任意の組合せを有するゼオライトを含む。
【0033】
場合により、カルボニル化成分のゼオライトは、Ag、Cu、Ir、Pd、Pt、Rh、Co、ReまたはZn、好ましくはAg、Cu、Pdまたはそれらの任意の組合せなどの1つ以上の金属を組み込むことによって、修飾されている。これらの元素は、網目には組み込まれず、むしろ、ゼオライト表面(その細孔およびキャビティの内表面ならびに結晶の外表面の両方を含む)上に堆積される。これら任意の金属をゼオライト成分に組み込むためのいくつかの方法が、当技術分野において公知である。これらの方法は、含浸、蒸着-沈殿、イオン交換、静電吸着、共沈、溶融塩の浸透、または固体沈着などの調製技術を含む。文献“Handbook of Heterogeneous Catalysis”(G. Ertl, H. Knoezinger, F. Schuth, J. Weitkamp (編集者); volume 1, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. Weinheim, 2008)および文献“Synthesis of solid catalysts”(K. P. de Jong (編集者); Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. Weinheim, 2009)は、ゼオタイプなどの無機支持体材料に金属を組み込むための既存の方法への参照を提供する。
【0034】
多成分触媒中のケトン化成分に関して、有用な成分は、まず、任意の好適な酸化物、水酸化物またはそれらの組合せである。多数の金属、非金属およびランタニド酸化物がケトン化のための活性を示し得るが、本発明の文脈において、多成分触媒中の有用なケトン化成分は必ず安定でなければならず、すなわち、多成分触媒中の有用なケトン化成分は、本発明の方法の条件下、合成ガスを含む供給流の存在下で、金属状態に還元されないか、またはケトン化のための不活性カーバイド型化合物に完全にもしくは部分的に変換されない場合がある。本発明の方法に好適な酸化物および水酸化物は、酸化イットリウムおよび水酸化イットリウム、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、マンガン、亜鉛、ガリウム、インジウム、スズ、ビスマス、ランタニド元素、またはそれらの任意の組合せの化合物のリストから選択されるすべてのものを、担持されていない状態で、または、担持触媒用の支持体として従来使用されているものなどの多孔質材料、例えばSiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、ゼオライト、SiC、炭素もしくはそれらの組合せとの組合せで、含む。好ましくは、多成分触媒のケトン化成分は、CeO2、ZrO2またはそれらの任意の組合せを含む。より好ましくは、多成分触媒のケトン化成分は、CeO2、ZrO2およびそれらの任意の組合せに加えて、マンガン、チタン、他のランタニド、およびそれらの任意の組合せのリストから選択される元素を含んでもよい。より好ましくは、多成分触媒のケトン化成分は、CeO2、ZrO2およびそれらの任意の組合せに加えて、周期表の第8~11属のものから選択される金属を含んでもよい。さらにより好ましくは、多成分触媒のケトン化成分は、CeO2、ZrO2およびそれらの任意の組合せに加えて、金属Pdを含んでもよい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、多成分触媒は、さらに、メタノール、DMEまたはそれらの組合せへの合成ガスの水素化に好適な水素化成分を取り込んでいる。本発明の文脈において、前記水素化成分は、ZnO、ZrO2、MgO、In2O3、Ga2O3、CeO2またはそれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの酸化物を含む。本発明の別の好ましい実施形態において、前記水素化成分は、次に、Cu、Pdまたはそれらの任意の組合せから選択される酸化物担持金属を含む。より好ましい実施形態において、水素化成分は、Al2O3から選択される少なくとも1つの酸性固体を、γ-アルミナ、η-アルミナ、χ-アルミナ、他の遷移アルミナ、アモルファスSiO2-Al2O3、ゼオライト、またはそれらの組合せの形態で、含む。
【0036】
本発明によれば、種々の元素が、多成分触媒に統合されている。この統合は、その触媒活性種間に異なるレベルの空間的近接性を生じさせる種々の方法で固体成分を混合することによって、達成することができる。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、多成分触媒中の成分の統合は、一方の成分から他方の成分の粒子の表面上への、ナノメートルまたはマイクロメートルサイズの粒子の堆積を含む。ナノメートルまたはマイクロメートルサイズの粒子を材料から固体の表面上に取り込み、かつ分散させるためのいくつかの方法が、当技術分野において公知である。これらの方法は、好適な前駆体塩の含浸、蒸着-沈殿、共沈、溶融塩の浸透、固体沈着、または表面誘導結晶化などの調製技術を含み、必要に応じて、焼成などの熱処理が続く。
【0038】
本発明の別の特定の実施形態において、多成分触媒中の成分は、多成分触媒がその粉末形態にある個々の成分から複合材料として形成されるように、モルタルまたはミル中で個々の成分を固相粉砕することによって、統合される。
【0039】
本発明の別の実施形態において、多成分触媒中の成分は、多成分触媒が個々の成分の成形体の混合物を含むように、空間的にランダムな方法または空間的に構造化された方法のいずれかで、本発明の方法が実施される反応器中で巨視的粒子またはその成形体を混合することによって、統合される。
【0040】
本発明の文脈において使用される用語「成形体」は、固体触媒が用途のために成形された、当技術分野において公知の方法、例えばペレット化、押出、造粒または噴霧乾燥、によって製造される、いくつかの微粒子および巨視的形態を含む。カルボニル化成分およびケトン化成分に加えて、多成分触媒は、そのような成形体の多孔性または機械的特性を改善する目的で一般的に組み込まれる結合剤および添加剤を含んでもよい。
【0041】
本発明の特定の実施形態において、アセトン合成反応の開始前に、多成分触媒は活性化処理に供される。本発明の別の特定の実施形態において、アセトン合成を実施するのと同じ反応器中で、前記活性化処理は実施される。本発明の好ましい実施形態において、前記活性化処理は、空気、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、およびそれらの任意の組合せのリストから選択されるガス流を反応器内で確立した後の、373K~1073Kの範囲内で選択される1つ以上の温度での1つ以上の熱処理工程からなる。本発明のさらにより好ましい実施形態において、前記活性化処理は、空気、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、およびそれらの任意の組合せのリストから選択されるガス流を反応器内で確立した後の、373K~1073Kの範囲内で選択される温度での第1の熱処理工程と、続いて、少なくとも水素、一酸化炭素、またはそれらの任意の組合せを含むガス流を反応器内で確立した後の、373K~623Kの範囲内で選択される温度での第2の熱処理工程と、からなる。
【0042】
処理条件
本発明の一実施形態によれば、本方法の反応工程は、反応条件の単一のセット(温度、圧力、および気体-固体接触時間)の下で、単一の反応器中で行われる。試薬は、気相または液相に導入することができ、その後、液体を気化させて気体供給流を形成することができる。
【0043】
本発明の方法への供給流は、合成ガスを含む。本発明によれば、合成ガス中のH2/COモル比は0.1~4の範囲内であってもよい。本発明の好ましい実施形態において、合成ガス中の前記H2/COモル比は0.3~2.5の範囲内である。より好ましくは、合成ガス中のH2/COモル比は、0.5~2の範囲内である。
【0044】
本発明によれば、合成ガス中のCO2/COモル比は0~2の範囲内であってもよい。本発明の好ましい実施形態において、合成ガス中の前記CO2/COモル比は0~0.5の範囲内である。より好ましくは、合成ガス中のCO2/COモル比は0~0.1の範囲内である。
【0045】
本発明の特定の実施形態において、方法への供給流は、合成ガスに加えて、メタノール、DME、またはそれらの混合物から選択される有機化合物を含む。本発明の好ましい実施形態において、方法に対する供給流中のCO/(メタノール+DME)モル比は、10超であり、より好ましくは20超である。
【0046】
本発明の方法への供給流は、合成ガス、メタノールおよび/またはDMEのアセトンへの変換を妨げない他の化合物、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、水、メタン、エタンまたはプロパンをさらに含んでもよい。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、前記方法への供給流は、合成ガス流がメタノール、DME、またはそれらの任意の組合せへ部分的に変換されるそれまでの反応工程から生じる。
【0048】
本発明によれば、本方法は、373度ケルビン(K)~673Kの範囲内の反応温度で行われる。本発明の文脈において使用される反応温度は、ステンレス鋼シースの内側に配置したK型熱電対によって測定される多成分触媒を含む反応器中の最高温度として理解される。本発明の好ましい実施形態において、本方法は、473K~613Kの範囲内の反応温度で行われる。より好ましくは、本方法は、493K~573Kの範囲内の反応温度で行われる。
【0049】
本発明の方法に好適な典型的な運転圧力は、約1バール~約200バールである。本発明の好ましい実施形態において、本方法は、5バール~200バールの範囲内の反応圧力で行われる。より好ましくは、本方法は、10バール~150バールの範囲内の反応温度で行われる。
【0050】
本発明の方法の生成物は、典型的には気相中で反応器から流れる。本発明の一実施形態において、反応器の排出流は、反応器の下流で分留され、換言すれば、アセトン生成物を回収する。
【0051】
本発明の別の特定の実施形態において、反応器の排出流中に存在する化合物(前記方法への供給流中に存在する、反応器を通過する間に変換されなかった試薬、反応生成物、またはそれらの組合せなど)は回収され、反応器に再循環される。本発明の好ましい実施形態において、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、メタノール、DME、酢酸、酢酸メチル、またはそれらの任意の組合せを含む流体が、反応器の排出流から回収され、反応器に再循環される。
【0052】
本発明の別の特定の実施形態において、メタノールを含む反応器の排出流から回収された化合物の混合物は、別の反応器において脱水工程に供され、ここで、メタノールは、完全にまたは部分的にDMEに転換され、続いて、水の全部または部分的除去の工程が、本発明の方法の反応器へのその再循環の前に行われる。
【0053】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明の実施例1、2、3、5および12に係るH-ETL材料のX線粉末回折図を示す。X軸は、角度(度単位で2θ)に対応し、左から右に向かうにつれて増加する。Y軸は、相対的カウントの任意単位での回折信号強度に対応し、下から上に向かうにつれて増加する。
【0054】
図2は、本発明の実施例4、6、7、8および9に係るAg-H-MOR材料のX線粉末回折図を示す。X軸は、角度(度単位で2θ)に対応し、左から右に向かうにつれて増加する。Y軸は、相対的カウントの任意単位での回折信号強度に対応し、下から上に向かうにつれて増加する。
【0055】
〔実施例〕
以下の実施例は説明のために提供されているが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0056】
以下の方法を用いて、以下の実施例において調製および使用した材料の特性を決定した。
【0057】
(i)触媒粒子の巨視的サイズは、Retsch較正ステンレス鋼篩を用いて測定した。
【0058】
(ii)X線粉末回折によって、材料の結晶構造を決定した。実験的に、測定は、PANalytical X’Celerator検出器を備えたPANalytical CUBIX回折計を使用して、Bragg-Brentano幾何学を用いて行われた。45kVの電圧および40mAの強度で動作する銅金属アノード源において生成されたCu Kα(λ1=1.5406Å、λ2=1.5444Å、I2/I1=0.5)のX線放射線を使用した。ゴニオメータアームの長さは200mmであり、5mmの照射試料面積を有する可変発散スリットを使用した。使用した測定範囲は、2.0°~40.0°(2θ)であり、0.020°(2θ)のステップと、ステップごとに35秒の測定時間とを有していた。測定は298Kで行い、試料は79mm2または804mm2の試料面積を有する試料ホルダ上に微粉末として載せ、照射試料の表面に垂直な軸を中心に0.5回転/秒で回転させた。
【0059】
iii)カルボニル化成分に含まれるゼオライト材料の化学組成は、Varian 715-ES分光計を使用して、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって決定した。試料を、硝酸(HNO3)および塩酸(HCl)の、1:3(HNO3:HCl)の比率の混合物に、333Kで20時間予め溶解した。
【0060】
〔本発明に係る多成分触媒の合成〕
〔H-ETLゼオライト(SiO2/Al2O3=16)の合成〕
ETLゼオライトは、そのアルミノシリケート形態(EU-12)で合成された。まず、脱イオン水に予め溶解した0.4gの水酸化ナトリウムNaOH(Sigma Aldrich、純度97%)、4.78gの水酸化ルビジウム溶液(RbOH、50%水溶液、Sigma Aldrich、99.9%)、脱イオン水に予め溶解した4.65gの塩化コリン(ChCl、Sigma Aldrich、≧99%)、0.80gの水酸化アルミニウム一水和物、Al(OH)3.H2O(Sigma Aldrich、試薬グレード純度)、12.5gのコロイドシリカ(Sigma Aldrich、LUDOX AS40、水中40%懸濁液)、および、ゲルのモル組成を2.0 ChCl:0.7 Rb2O:0.3 Na2O:0.25 Al2O3:5.0 SiO2:100 H2Oとするのに必要な量の脱イオン水(伝導率<1μS/cm)を混合して、合成ゲルを合成した。ゲルを、250rpmでマグネチックスターラーを用いて、室温で24時間撹拌し続けた。次に、合成ゲルを、35ml容量のテフロン(登録商標)シースを備えた2つのステンレス鋼オートクレーブに分割した。オートクレーブを423Kに予熱した乾燥炉に導入し、回転撹拌(60rpm)下で8日間、その温度に維持した。次いで、得られた固体を、濾過によってゲルの残りから回収し、十分な脱イオン水で洗浄した。最後に、得られた固体を373Kのストーブ中で乾燥し、続いて管状反応器中で823K(2K/分)で4時間焼成し、固定床の形態に、合成空気流(約80ml/分)下で充填した。続いて、焼成した固体を、脱イオン水中の0.5M NH4NO3溶液中に懸濁させることによる、3回のイオン交換工程に供し、それぞれのイオン交換工程の後に濾過することによって、固体の回収を媒介した。イオン交換後、回収した固体を373Kで5時間空気乾燥した。最後に、固体を、固定床管状反応器中で823K(2K/分)で4時間、合成空気流(約80ml/分)下で追加の焼成工程に供した。
【0061】
〔H-MORゼオライト(SiO2/Al2O3=18)の合成〕
H-MOR材料の合成のために、そのアンモニウム形態のモルデナイトゼオライト3g(NH4-MOR、供給業者によって提供されたSiO2/Al2O3のモル比は20に等しい、Zeolyst International)を、合成空気流(約80ml/分)下で、298Kから823Kまで(3K/分の加熱速度)の加熱、および823Kで4時間の等温工程により、固定床管状反応器中で焼成熱処理に供した。
【0062】
〔銀で変性した変性H-MORゼオライト(Ag-H-MOR)(SiO2/Al2O3=18)の合成〕
Ag-H-MOR材料の合成のために、そのアンモニウム形態のモルデナイトゼオライト7.65g(NH4-MOR、供給業者によって提供されたSiO2/Al2O3のモル比は20に等しい、Zeolyst International)を、45mlの脱イオン水(伝導率<1μS/cm)中に懸濁させた。1.00gの硝酸銀(AgNO3、Sigma Aldrich、≧99%)を4mlの脱イオン水に溶解した。当該AgNO3溶液をNH4-MOR懸濁溶液に添加し、室温で30分間撹拌した。溶媒を、323Kでロータリーエバポレーターを用いて減圧下で蒸発させた。次いで、得られた材料を373Kで2時間乾燥し、続いて、非対流マッフル炉中、空気雰囲気中、383Kで4時間の後、3K/分の温度勾配による773Kまでの加熱工程、および773Kで3時間の最終等温工程を行う熱プログラムを用いて、乾燥および後焼成に供した。
【0063】
〔変性Ag-H-MORゼオライト(mod-Ag-H-MOR)の合成〕
2.5gのAg-H-MORゼオライトを、200~400μmのサイズ範囲の微粒子に成形し、600~800μmのサイズ範囲の炭化ケイ素(SiC)微粒子と混合した。続いて、当該微粒子の混合物を、石英ウール支持体上の固定床管状反応器に導入した。固定床の総体積は1.5mlであった。まず、50ml/分のN2(Abello-Linde、99.999%)の下方垂直流下で、(3K/分の温度勾配で)室温から773Kに加熱し、続いて、773Kで3時間の等温工程および室温への冷却を行った。次に、約80ml/分の1/45/45/9のモル比のDME/CO/H2/Arを含むガス流を反応器中で確立し、反応器の下流に位置するダイヤフラム圧力調節弁(Swagelok)を通して、反応器を20バールの圧力まで加圧した。次に、3K/分の加熱勾配の後に反応器の温度を548Kまで上昇させ、続いて、548Kの一定温度で15時間維持し、続いて室温まで冷却した。最後に、ゼオライト微粒子(mod-Ag-H-MOR)を、ふるい分けによって前記床からの微粒子の混合物から回収した。
【0064】
〔H-FERゼオライトの合成〕
H-FERゼオライトを、アルミノシリケートの形態で合成した。0.79gのCATAPAL擬ベーマイト(Sasol Materials、72%)、10.63gのトランス-1,4-ジアミノシクロヘキサン(TDACH、Sigma Aldrich、98%)、25.33gのコロイドシリカ(Sigma Aldrich、LUDOX AS40、水中40%懸濁液)および脱イオン水(伝導率<1μS/cm)を混合することによって、合成ゲルを調製した。当該ゲルが1 SiO2:0.033 Al2O3:0.48 TDACH:5 H2Oのモル組成を達成するのに必要な量の水を、250rpmで機械的撹拌機を用いて、室温で蒸発させながら、混合物を撹拌し続けた。必要量の水を前記ゲル組成物に適合させたら、3.52gのフッ化水素酸(Sigma Aldrich、水中48%)を前記ゲルに添加し、1 SiO2:0.033 Al2O3:0.48 TDACH:0.5 HF:5 H2Oのゲルの最終組成物を得た。調製したゲルを、室温でさらに約30分間撹拌し続けた。次に、合成ゲルを、35ml容量のテフロン(登録商標)シースを備えた3つのステンレス鋼オートクレーブに分割した。該オートクレーブを423Kに予熱した乾燥炉に導入し、その温度で15日間維持した。次いで、得られた固体を、濾過によってゲルの残りから回収し、十分な脱イオン水で洗浄した。最後に、得られた固体を373Kのストーブ中で乾燥し、続いて管状反応器中で823K(1K/分)で10時間焼成し、固定床の形態に、合成空気流(約80ml/分)下で充填した。
【0065】
〔プラセオジムがドープされた酸化セリウム(Pr-CeO2)の合成〕
Pr-CeO2材料の合成のために、0.56gの硝酸プラセオジム六水和物、Pr(NO3)3.6H2O(Alfa Aesar、99.99%)を5.09gの硝酸セリウム六水和物、Ce(NO3)3.6H2O(Alfa Aesar、99.99%)と混合し、両固体の均一な混合物が得られるまでセラミックス乳鉢中で激しく粉砕した。次いで、空気雰囲気中で、非対流マッフル炉中で、温度を1K/分で673Kの温度まで上昇させ、続いて、673Kで5時間、最終等温工程を行う熱プログラムを用いて、前記混合物を焼成に供した。
【0066】
〔ジルコニウムがドープされた酸化セリウム(CeO2-ZrO2)の合成〕
セリウム(IV)およびジルコニウム(IV)の混合酸化物(Sigma-Aldrich、99%)を、(3K/分の温度勾配で)室温から773Kまでの、約100ml/分・gのN2流(Abello-Linde、99.999%)下での加熱、続いて773Kで4時間の等温工程、および室温までの冷却からなる熱処理に供することによって、CeO2-ZrO2材料を合成した。
【0067】
〔Pdで変性し、ジルコニウムがドープされた酸化セリウム(Pd-CeO2-ZrO2)の合成〕
Pd-CeO2-ZrO2材料の合成のために、前述の方法に従って合成された2gのCeO2-ZrO2を50mlのアセトン中に懸濁した。4.1mgのパラジウムアセチルアセトネート(Pd(acac)2、Sigma Aldrich、99%)を5mlのアセトンに溶解した。Pd(acac)2溶液を、CeO2-ZrO2懸濁溶液に添加し、室温で20分間撹拌した。溶媒を、303Kでロータリーエバポレーターを用いて減圧下で蒸発させた。次いで、得られた材料を333Kで4時間乾燥し、続いて、非対流マッフル炉中、空気雰囲気中、383Kで4時間の後、1K/分の温度勾配による873Kまでの加熱工程、および873Kで4時間の最終等温工程を行う熱プログラムを用いて、乾燥および後焼成に供した。
【0068】
〔H-FERおよびPd-CeO2-ZrO2の複合体(H-FER/Pd-CeO2-ZrO2)の合成〕
複合材料の合成のため、212mgのH-FERと1.59mgのPd-CeO2-ZrO2とを、微粉末の形態で、セラミック乳鉢を用いて、均一な外観を有する粉末状の固形物が得られるまで混合した。
【0069】
〔酸化アルミニウム担持酸化プラセオジム、Pr2O3/Al2O3の合成〕
Pr2O3/Al2O3材料を含浸によって合成した。第1の工程において、空気雰囲気中の非対流マッフル炉中、823Kでの擬ベーマイト型DISPERAL HP14前駆体(Sasol Materials、Germany)の焼成によって製造された1.90gの酸化アルミニウムを、多口丸底フラスコ中、473Kの温度で、vacuubrand-MZ-2C-NTダイアフラムポンプによって提供される動的減圧下で4時間乾燥させた。1.84gの硝酸プラセオジム、Pr(NO3)3.6H2O(Alfa Aesar、99.99%)を2mlの脱イオン水に溶解した。1.33mlの硝酸プラセオジム溶液を、予め乾燥させた酸化アルミニウムと、室温および静的減圧下で接触させ、当該溶液を酸化アルミニウム支持体の細孔に浸透させた。得られた材料は、合成空気流(約80ml/分)下で、343Kで10時間、固定床管状反応器中で乾燥処理に供され、その後、同じ反応器中で、同じ合成空気流下で、343Kから773Kまでの加熱(3K/分の加熱速度)および773Kで3時間の等温工程によって焼成処理に供された。
【0070】
〔混合した銅、亜鉛およびアルミニウムの酸化物(Cu/ZnO/Al2O3)の合成〕
CuO/ZnO/Al2O3材料を共沈により合成した。3.84gの硝酸銅、Cu(NO3)2.2.5H2O(Alfa Aesar、98.0-102.0%)、2.67gの硝酸亜鉛、Zn(NO3)2.6H2O(Alfa Aesar、99%)、および1.67gの硝酸アルミニウム、Al(NO3)3.9H2O(ACROS、99%)を30mlの脱イオン水に溶解した。希釈Na2CO3溶液を添加することによってpHを7に調整した50mlの脱イオン水に、油浴中で338K、磁気回転撹拌(350rpm)を維持しながら、シリンジポンプを用いて2ml/分の一定速度で当該硝酸塩溶液を添加した。硝酸塩溶液の混合中、Na2CO3溶液(1.5M)を同時に添加することによって、pHを一定に維持した。形成された沈殿物を、磁気撹拌しながら、338Kの母液中に2時間保持した。合成した固体を濾過によって回収し、濾過および脱イオン水による洗浄を7回行った。得られた前駆体を、空気雰囲気中で、非対流マッフル炉中で、温度を2K/分で673Kの温度まで上昇させ、続いて673Kで4時間の最終等温工程を行う熱プログラムを用いて、焼成に供した。
【0071】
〔酸化アルミニウム(γ-Al2O3)の合成〕
γ-Al2O3材料は、分散性擬ベーマイト型前駆体(DISPERAL HP14(Sasol Materials,Germany))の焼成によって合成した。5gの擬ベーマイト前駆体を、空気雰囲気中、非対流マッフル炉中で温度を2K/分で823Kの温度まで上昇させ、続いて823Kで4時間の最終等温工程を行う熱プログラムを用いて、焼成した。
【0072】
〔多成分触媒を成形するための一般的な方法Iおよび触媒アッセイ〕
一般的な実験方法において、反応は、内径7.8mmの316Lステンレス鋼固定床反応器中で行われ、当該反応器は、その外側に巻かれ、PIDコントローラによって制御される、600Wの熱抵抗器と、316Lステンレス鋼シースによって覆われ、触媒床の中心に軸方向に挿入されたK型熱電対とを備えている。
【0073】
触媒床の調製のために、触媒の2つの成分を別々に微粒子に成形し、200~400μmのサイズ範囲の微粒子をふるい分けによって単離した。次に、600~800μmのサイズ範囲の炭化ケイ素微粒子(SiC、Fisher Chemical、平均粒径約696μm)を単離した。多成分触媒の2つの成分の微粒子の所定の質量を均一に混合し、得られた混合物を、総体積が1.8mlになるまでSiC微粒子と順に混合し、石英ウール支持体上の固定床管状反応器に導入した。
【0074】
触媒実験の前に、多成分触媒を、インサイチュ活性化処理、言い換えれば、管状反応器自体に供した。前記活性化処理は、約50ml/分のN2流(Abello-Linde、99.999%)下で、(3K/分の温度勾配で)室温から773Kに加熱し、続いて773Kで4時間等温工程を行い、室温に冷却することからなった。次に、触媒的転換実験を開始した。その目的のために、加圧シリンダー(Abello-Linde)から供給される1/45/45/9のモル比でDME/CO/H2/Arを含むガス流を反応器内に確立し、反応器を、反応器の下流に位置するダイヤフラム圧力調整弁(Swagelok)を通して所望の反応圧力に加圧した。次に、所望の空間速度(GHSV)が得られるようにDME/CO/H2/Arの流れを調整し、反応器温度を3K/分の加熱勾配後に所望の反応温度まで上昇させた。管状反応器の出口流を圧力制御弁で減圧し、2つの分析チャネルを備えている、直結のAgilent 7890ガスクロマトグラフに導いた。第1のチャネルは、永久気体の分析のために、HayeSep R 80/100(6ft)充填カラム、HP-PLOT-Q 30m(膜厚20μm)キャピラリーカラム、およびHP-PLOT 5A 30m(膜厚12μm)分子篩キャピラリーカラム、ならびに2つのTCD検出器を備え、第2の分析チャネルは、炭化水素および酸化化合物の分析のためのDB 1-MS(60m)キャピラリーカラムおよびFID検出器を備えている。
【0075】
〔多成分触媒を成形するための一般的な方法IIおよび触媒アッセイ〕
別の一般的な実験方法では、実験手順は、触媒床を調製する工程を除いて、一般的な方法Iに示されている手順に従った。この一般的な方法IIによれば、多成分触媒の2つの成分を別々に微粒子に成形し、200~400μmのサイズ範囲の微粒子をふるい分けによって単離した。次に、600~800μmのサイズ範囲の炭化ケイ素(SiC)微粒子を単離した。多成分触媒の2つの成分のそれぞれの微粒子の所定の質量を、別々に、均一な混合物が得られるまでSiC微粒子と混合した。続いて、ケトン化成分の微粒子とSiCとの混合物を、石英ウール支持体上の固定床管状反応器に導入した。次いで、石英ウールを仕切板(3mm)として添加し、カルボニル化成分の微粒子とSiCとの混合物を固定床反応器に添加し、反応器中のガス流の方向において、ケトン化成分の粒子によって形成される床の上流に配置した。触媒床の総体積は1.8~3.2mlであった。
【0076】
〔多成分触媒を成形するための一般的な方法IIIおよび触媒アッセイ〕
別の一般的な実験方法では、実験手順は、触媒床を調製する工程を除いて、一般的な方法Iに示されている手順に従った。この一般的な方法IIIによれば、多成分触媒の2つの成分は、微粉末の形態で、セラミック乳鉢を用いて、均一な外観を有する粉末固体が得られるまで混合された。次に、この固体多成分を微粒子に成形し、200~400μmのサイズ範囲の微粒子をふるい分けによって単離した。次に、600~800μmのサイズ範囲の炭化ケイ素(SiC)微粒子を単離した。多成分触媒の微粒子の所定の質量を、1.8mlの総体積になるまでSiC微粒子と混合し、これを石英ウール支持体上の固定床管状反応器に導入した。
【0077】
〔多成分触媒を成形するための一般的な方法IVおよび触媒アッセイ〕
別の一般的な実験方法では、実験手順は、触媒床を調製する工程ならびにインサイチュ活性化手順およびその後の触媒的転換実験を除いて、一般的な方法Iに示されている手順に従った。この一般的な方法IVによれば、多成分触媒の成分を別々に微粒子に成形し、200~400μmのサイズ範囲の微粒子をふるい分けによって単離した。次に、600~800μmのサイズ範囲の炭化ケイ素(SiC)微粒子を単離した。多成分触媒の2つの成分のそれぞれの微粒子の所定の質量を、別々に、均一な混合物が得られるまでSiC微粒子と混合した。続いて、ケトン化成分の微粒子とSiCとの混合物を、石英ウール支持体上の固定床管状反応器に導入した。次いで、石英ウールを仕切板(3mm)として添加し、カルボニル化成分の微粒子とSiCとの混合物を固定床反応器に添加し、反応器中のガス流の方向において、ケトン化成分の粒子の上流に配置した。次いで、石英ウールを仕切板(3mm)として添加し、水素化成分の微粒子とSiCとの混合物を固定床反応器に添加し、反応器中のガス流の方向において、カルボニル化成分の粒子の上流に配置した。触媒床の総体積は1.8mlであった。
【0078】
触媒実験の前に、多成分触媒を、インサイチュ活性化処理、言い換えれば、管状反応器自体に供した。前記活性化処理は、約50ml/分のN2流(Abello-Linde、99.999%)下で、(3K/分の温度勾配で)室温から773Kに加熱し、続いて773Kで4時間等温工程を行い、室温に冷却することからなった。さらに、多成分触媒を、N2(Abello-Linde、99.999%)で50ml N2/分で希釈された、約20ml/分のH2流(Abello-Linde、99.999%)下で、(3K/分の温度勾配で)室温から523Kに加熱し、続いて523Kで3時間の等温工程、および室温に冷却することからなる第2のインサイチュ活性化工程に供した。次に、触媒的転換実験を開始した。その目的のために、加圧シリンダー(Abello-Linde)から供給される45/45/10のモル比でCO/H2/Arを含むガス流を反応器内に確立し、反応器を、反応器の下流に位置するダイヤフラム圧力調整弁(Swagelok)を通して所望の反応圧力に加圧した。次に、所望の空間速度(GHSV)が得られるようにCO/H2/Arの流体を調整し、反応器温度を3K/分の加熱勾配後に所望の反応温度まで上昇させた。一般的な方法Iに記載されているように、管状反応器の出口流を圧力制御弁で減圧し、2つの分析チャネルを備えている、直結のAgilent 7890ガスクロマトグラフに導いた。
【0079】
〔多成分触媒を成形するための一般的な方法Vおよび触媒アッセイ〕
別の一般的な実験方法では、実験手順は、触媒床を調製する工程を除いて、一般的な方法Iに示されている手順に従った。この一般的な方法Vによれば、多成分触媒の単一の成分は、200~400μmのサイズ範囲の微粒子に、ふるい分けによって成形された。次に、600~800μmのサイズ範囲の炭化ケイ素(SiC)微粒子を単離した。多成分触媒の成分微粒子の所定の質量を、均一な混合物が得られるまでSiC微粒子と混合した。続いて、多成分触媒の成分微粒子とSiCとの混合物を、石英ウール支持体上の固定床管状反応器に導入した。触媒床の総体積は1.8mlであった。
【0080】
例1:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての209mgのH-ETLゼオライトと、ケトン化成分としての452mgのCeO2-ZrO2(Sigma Aldrich、99.0%)とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IIに従って行った。
【0081】
例2:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての158mgのH-ETLゼオライトと、ケトン化成分としての347mgのCeO2-ZrO2(Sigma Aldrich、99.0%)とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IIIに従って行った。
【0082】
例3:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての180mgのH-ETLゼオライトと、ケトン化成分としての396mgのCeO2-ZrO2(Sigma Aldrich、99.0%)とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法Iに従って行った。
【0083】
例4:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての125mgのAg-H-MORゼオライトと、ケトン化成分としての419mgのCeO2-ZrO2(Sigma Aldrich、99.0%)とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IIに従って行った。
【0084】
例5:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての202mgのH-ETLゼオライトと、ケトン化成分としての452mgのPr2O3/Al2O3とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IIに従って行った。
【0085】
例6:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての198mgのAg-H-MORゼオライトと、ケトン化成分としての424mgのPr-CeO2とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IIに従って行った。
【0086】
例7:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての150mgのAg-H-MORゼオライトと、ケトン化成分としての525mgのPr2O3/Al2O3とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IIに従って行った。
【0087】
例8:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての700mgのmod-Ag-H-MORゼオライトと、ケトン化成分としての1.80gのH-FER/Pd-CeO2-ZrO2とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、活性化処理を598Kの温度で実施したことを除いて、一般的な方法IIに従って行った。
【0088】
例9:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、水素化成分としての198mgのCuO/ZnO/Al2O3および103mgのγ-Al2O3と、カルボニル化成分としての106mgのAg-H-MORゼオライトと、ケトン化成分としての503mgのCeO2-ZrO2とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IVに従って行った。
【0089】
例10:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、水素化成分としての197mgのCu/Zn/Al2O3および102mgのγ-Al2O3と、カルボニル化成分としての107mgのAg-H-MORゼオライトと、ケトン化成分としての499mgのCeO2-ZrO2とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IVに従って行った。
【0090】
例11:
本発明に係る一実施例において、多成分触媒は、水素化成分としての199mgのCuO/ZnO/Al2O3および105mgのγ-Al2O3と、カルボニル化成分としての106mgのAg-H-MORゼオライトと、ケトン化成分としての496mgのCeO2-ZrO2とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IVに従って行った。
【0091】
例12:
本発明によらない一比較例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての183mgのAg-H-MORゼオライトと、ケトン化成分としての403mgのWO3(Sigma Aldrich、99.9%)とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IIに従って行った。
【0092】
例13:
本発明によらない一比較例において、多成分触媒は、カルボニル化成分としての184mgのH-BEAゼオライト(SiO2/Al2O3=27、TosoH)と、ケトン化成分としての407mgのCeO2-ZrO2(Sigma Aldrich、99.0%)とを含有していた。多成分触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法IIに従って行った。
【0093】
例14:
本発明によらない一比較例において、触媒は、1つのカルボニル化成分、言い換えれば、500mgのH-MORゼオライトのみを含有していた。触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法Vに従って行った。
【0094】
例15:
本発明によらない一比較例において、触媒は、1つのカルボニル化成分、言い換えれば、399mgのH-ETLゼオライトのみを含有していた。触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法Vに従って行った。
【0095】
例16:
本発明によらない一比較例において、触媒は、1つのケトン化成分、言い換えれば、350mgのCeO2-ZrO2のみを含有していた。触媒の形成および触媒アッセイは、一般的な方法Vに従って行った。
【0096】
【0097】
(1)反応温度。
(2)GHSV:ガスの時間当たりの空間速度。
【0098】
(3)r=アセトン生産性:
r=[wアセトン]/[Mcat]
ここで、wアセトンは生成されたアセトンの質量流量であり、Mcatは、多官能性触媒の質量である。
【0099】
(4)メタノールフリー基準での有機生成物間の選択性。処理中に、あるいはDMEへの脱水の工程の後に、メタノールが試薬として再循環され得るという事実を考慮すると、有機化合物に対する選択性をメタノールフリー基準で表すことが合理的である。すなわち、それぞれの有機反応生成物「i」それぞれに対する選択性(Si)は、以下の式で算出される:
Si=[Ni,出口*Ci]/[ΣNj,出口*Cj]*100
式中、Ni,出口は反応器出口流中の生成物「i」のモル流量(mol h-1)であり、分母の合計は、メタノールを除く全ての有機生成物「j」に及ぶ。
【0100】
(5)AcOOMe:酢酸メチル。
(6)その他:他の有機化合物:DME、C2+炭化水素、および酢酸などの他の酸化化合物。
【0101】
表1に提示された結果から推定され得るように、本発明に係る例1~11は、アセトンに対する選択性が低く実質的にゼロである、本発明によらない比較例12~16で得られたものよりも、はるかに高いアセトンに対する選択性が得られる方法をもたらす。言い換えると、前記例は、多成分触媒中に少なくとも1つのカルボニル化成分および少なくとも1つのケトン化成分が存在することが、高い選択性でアセトンを製造するために必須であることを示している。
【0102】
本発明を好ましい実施形態の点から説明してきたが、前記説明は、本明細書に記載された本発明を限定するものと解釈されるべきではないことが理解される。説明を読んだ後、本発明の示唆に照らせば、当業者には、いくつかの変更および修正を行うことができることが直ちに明白になるであろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の趣旨および範囲内に入るすべてのそのような変更および修正を包含するものと解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1、2、3、5および12に係るH-ETL材料のX線粉末回折図を示す。X軸は、角度(度単位で2θ)に対応し、左から右に向かうにつれて増加する。Y軸は、相対的カウントの任意単位での回折信号強度に対応し、下から上に向かうにつれて増加する。
【
図2】
図2は、本発明の実施例4、6、7、8および9に係るAg-H-MOR材料のX線粉末回折図を示す。X軸は、角度(度単位で2θ)に対応し、左から右に向かうにつれて増加する。Y軸は、相対的カウントの任意単位での回折信号強度に対応し、下から上に向かうにつれて増加する。
【国際調査報告】