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特表2024-501034マイクロコッカス・ルテウス由来細胞外小胞を含む神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】マイクロコッカス・ルテウス由来細胞外小胞を含む神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20231227BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231227BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20231227BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231227BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
A61K35/74 Z
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/08
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/22
A61P43/00 111
A23L33/135
C12N15/09 Z ZNA
C12N1/20 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539322
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 KR2021016633
(87)【国際公開番号】W WO2022145710
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0184337
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0156079
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516348577
【氏名又は名称】エムディー ヘルスケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MD HEALTHCARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-クン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB07
4B018LB08
4B018MD85
4B018ME10
4B018ME14
4B018MF01
4B065AA34X
4B065BC03
4B065BC05
4B065BC11
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC70
4C087MA13
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA34
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
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4C087MA52
4C087MA56
4C087MA57
4C087MA58
4C087MA60
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA06
4C087ZA12
4C087ZA16
4C087ZA18
4C087ZC02
(57)【要約】
本発明は、マイクロコッカス・ルテウス由来細胞外小胞およびその用途に関し、より詳細には、神経生成障害または神経炎症の結果として発生するアルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、てんかん(epilepsy)、 多発性硬化症(multiple sclerosis)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)、 自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)、注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder)、 大鬱病性障害(major depressive disorder)、双極性障害(bipolar disorder)、不安障害(anxiety disorder)、統合失調症(schizophrenia)、強迫障害(obsessive compulsive disorder)、外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder)、解離障害(dissociative disorder)、摂食障害(eating disorder)、物質使用障害(substance use disorder)、パーソナリティ障害(personality disorder)などの病気を効果的に治療できるマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を有効成分として含む神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の改善、予防、または治療用組成物などに関する。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記神経疾患は、退行性神経疾患または炎症性神経疾患であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記退行性神経疾患は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、てんかん(epilepsy)、カーンズ・セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome;KSS)、慢性進行性外眼筋マヒ(chronic progressive external ophthalmoplegia;CPEO)、MELAS症候群(mitochondrial encephalomyopathy with lactic acidosis and stroke-like episodes;MELAS)、MERRF症候群(myoclonic epilepsy with ragged-red fibers;MERRF)、NARP症候群(neurogenic weakness with ataxia and retinitis pigmentosa;NARP)、Leigh症候群(Leigh syndrome;LS)、およびMIRAS症候群(mitochondrial recessive ataxia syndrome)からなる群から選択された1つ以上の疾患であることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記炎症性神経疾患は、多発性硬化症(multiple sclerosis)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、および糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)からなる群から選択された1つ以上の疾患であることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記精神疾患は、大鬱病性障害(major depressive disorder)、双極性障害(bipolar disorder)、不安障害(anxiety disorder)、統合失調症(schizophrenia)、強迫障害(obsessive compulsive disorder)、外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder)、解離障害(dissociative disorder)、摂食障害(eating disorder)、物質使用障害(substance use disorder)、およびパーソナリティ障害(personality disorder)からなる群から選択された1つ以上の疾患であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記不安障害は、パニック障害(panic disorder)、社会不安障害(social anxiety disorder)、全般性不安障害(generalized anxiety disorder)、および限局性恐怖症(specific phobia)からなる群から選択された1つ以上の不安障害であることを特徴とする請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記パーソナリティ障害は、偏執性パーソナリティ障害(paranoid personality disorder)、反社会的パーソナリティ障害(antisocial personality disorder)、境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorder)、自己愛性パーソナリティ障害(narcissistic personality disorder)、回避性パーソナリティ障害(avoidant personality disorder)、および依存性パーソナリティ障害(dependent personality disorder)からなる群から選択された1つ以上パーソナリティ障害であることを特徴とする請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記神経発達疾患は、知的障害(intellectual disability)、コミュニケーション障害(communication disorder)、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)、注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder)、限局性学習障害(specific learning disorder)、および運動障害(motor disorder)からなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患は、神経生成障害(neurogenesis dysfunction)によるものであることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患は、NLRP3 inflammasome(NLR family pyrin domain containing 3 inflammasome)により媒介されることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記組成物は、NLRP3 inflammasomeの形成を抑制することを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記小胞は、平均直径が10~200nmであることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記小胞は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)から自然的に分泌または人工的に生産されることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項15】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用吸入剤組成物。
【請求項16】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物伝達用組成物。
【請求項17】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用薬学的組成物。
【請求項18】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用食品組成物。
【請求項19】
前記組成物は、脳または神経細胞の老化を抑制することを特徴とする請求項18に記載の食品組成物。
【請求項20】
マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項21】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療方法。
【請求項22】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用途。
【請求項23】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患治療用薬剤の製造のための用途。
【請求項24】
神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物を担持したマイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物の伝達方法。
【請求項25】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物伝達用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロコッカス・ルテウス由来細胞外小胞およびその用途に関し、より具体的には、マイクロコッカス・ルテウスに由来する細胞外小胞を有効成分として含む神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用組成物などに関する。
【0002】
本発明は、2020年12月28日に出願された韓国特許出願第10-2020-0184337号および2021年11月12日に出願された韓国特許出願第10-2021-0156079号に基づく優先権を主張し、前記出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
21世紀に入って過去伝染病と認識された急性感染性疾患の重要性が減少したが、人体の主要臓器に発生する免疫機能または代謝機能の障害による慢性炎症疾患が生活の質の減少とヒトの寿命を決定する主要疾患に病気パターンが変わった。最近の研究においてヒトとマイクロバイオーム(microbiome)との不調和によって免疫機能および代謝機能に異常をもたらして、慢性炎症と異常な細胞死が発生し、難治性疾患が発生するという事実が注目を浴びている。特に、21世紀高齢社会において難治性疾患として、アルツハイマー病などのような認知機能障害、パーキンソン病、ルーゲリック病などのような運動機能障害を含む神経疾患(neurologic disease);自閉性障害、注意欠陥多動性障害などのような神経発達疾患(neurodevelopmental disorder);不安障害、うつ病、統合失調症などのような精神疾患(psychiatric disease)などがヒトの生活の質を決定する主要疾患として国民保健に大きな問題となっている。
【0004】
神経細胞(ニューロン)の退行(neurodegeneration)は、神経細胞の異常な死滅によって脳-神経組織の構造および機能の異常をもたらす。アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、てんかん(epilepsy)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、および糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)などの神経疾患は、神経細胞の退行または神経炎症の結果として発生する。それだけでなく、カーンズ・セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome;KSS)、慢性進行性外眼筋マヒ(chronic progressive external ophthalmoplegia;CPEO)、MELAS症候群(mitochondrial encephalomyopathy with lactic acidosis and stroke-like episodes;MELAS)、MERRF症候群(myoclonic epilepsy with ragged-red fibers;MERRF)、NARP症候群(neurogenic weakness with ataxia and retinitis pigmentosa;NARP)、Leigh症候群(Leigh syndrome;LS)、およびMIRAS症候群(mitochondrial recessive ataxia syndrome)などのような神経疾患も、神経細胞の退行性変化によって発生する。
【0005】
最近、うつ病、自閉症、統合失調症などの精神疾患が腹痛と深い関連があることが明らかとなった。腹痛は、下痢と便秘を伴い、繰り返されれば、過敏性大腸症候群に発達するが、これは、腸内細菌の不均衡(gut microbial dysbiosis)と関連があることが明らかとなった。良くない食品、抗生剤の使用などで腸内細菌の不均衡が生じると、腸内有害微生物が丈夫だった大腸防御膜に亀裂を招き、腸漏れ現象が起こり、その後、有害細菌由来毒素が全身に吸収され、うつ病が発生あるいは悪化することが報告されている[Pharmacotherapy.2015 Oct;35(10):910-6]。
【0006】
神経発達疾患、神経疾患および精神疾患の病因機序に対する研究結果が最近多く出ており、これらの疾患の分子レベルでの核心的な経路に問題があることが明らかとなっている。疾患の病因に関連した核心的な病因機序を知見し、これを回復させることは、多くの疾患を同時に治療できるという希望を提供する。細胞は、様々なストレスに繰り返し暴露されて細胞老化が起こり、この過程で細胞の免疫機能および代謝機能に障害が発生すると、細胞が異常に死滅する。すなわち、神経疾患、神経発達疾患、および精神疾患の核心的な病態生理は、神経幹細胞の異常な死滅または神経細胞間連結性(inter-neuronal integrity)障害の結果として発生する。
【0007】
エネルギー代謝(energy metabolism)は、細胞の機能を行うのに必要なエネルギーを作り出して、様々な物質を形成するものであり、ミトコンドリアで作られたATPを通じて小胞体(endoplasmic reticulum,ER)でタンパク質と脂質を形成し、必要な領域に供給する。細胞は、発生瞬間から様々なストレスに直面するが、生物学的、化学的、物理的、または精神的ストレスは、細胞内で小胞体(ER)ストレス、ミトコンドリア機能異常、リソソーム損傷(lysosomal damage)などを誘導し、そのため、細胞で異常物質を形成し、細胞は、これを危険因子(danger signal)と認知して、炎症反応を誘導する。
【0008】
免疫(immunity)は、生物学的、化学的、物理的、精神的ストレスに対する細胞の防御機序であり、先天免疫(innate immunity)と後天免疫(adaptive immunity)を通じて生じる。最近、免疫機能異常による炎症疾患の病因と関連して細胞内酸化ストレスの結果として発生する危険信号(danger signal)が、細胞質内に存在するパターン認識受容体(pattern recognition receptor)であるNLRP(Nucleotide-binding oligomerization domain)により認知され、これらのうち NLRP3タンパク質は、インフラマソーム(Inflammasomes)を形成し、炎症反応と異常な細胞死を起こすという事実が知られている。特に、NLRP3 inflammasomeの活性化によって引き起こされる炎症は、様々な神経発達疾患、神経疾患、および精神疾患の重要な病因機序であることが知られた。
【0009】
人体に共生する微生物の個数は、100兆個に至り、ヒト細胞より10倍多く、微生物の遺伝子数は、ヒトの遺伝子数の100倍を超えることが知られている。微生物叢(microbiotaあるいはmicrobiome)は、与えられた生息地に存在する真正細菌(bacteria)、古細菌(archaea)、真核生物(eukarya)を含む微生物群集(microbial community)を言う。
【0010】
人体に共生する細菌および周辺環境に存在する細菌は、他の細胞への遺伝子、低分子化合物、タンパク質などの情報を交換するために、ナノメートルサイズの小胞(vesicle)を分泌する。粘膜は、200ナノメートル(nm)サイズ以上の粒子が通過できない物理的な防御膜を形成するので、粘膜に共生する細菌である場合には、粘膜を通過しないが、細菌由来小胞は、サイズが200ナノメートルサイズ以下であるので、比較的自由に粘膜を通じて上皮細胞を通過して人体に吸収される。このように、細菌由来小胞は、細菌から分泌されたものであるが、細菌の構成成分、体内吸収率、不作用危険性などが互いに異なっており、そのため、細菌由来小胞を使用することは、生きている細胞を使用することとは全然異なるか、顕著な効果を示す。
【0011】
局所的に分泌された細菌由来小胞は、粘膜の上皮細胞を通じて吸収され、局所炎症反応を誘導すると共に、上皮細胞を通過した小胞は、リンパ管を介して全身に吸収され、各臓器に分布し、分布した臓器で免疫および炎症反応を調節する。例えば、大腸菌(Escherichia coli)のような病原性グラム陰性細菌に由来する小胞は、病原性ナノ粒子であり、局所的に大腸炎を起こし、血管に吸収された場合には、血管内皮細胞に吸収され、炎症反応を誘導し、全身的な炎症反応および血液凝固を促進させ、また、インスリンが作用する筋肉細胞などに吸収され、インスリン抵抗性と糖尿病を誘発する。一方、有益な細菌に由来する小胞は、病原性小胞による免疫機能および代謝機能の異常を調節し、病気を調節ることができる。
【0012】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)は、マイクロコッカス属に属するグラム陽性細菌であり、水、ちり、土壌などのような自然界に広く分布する細菌である。この菌は、ピリジンのような毒性有機汚染物質で生長するとき、リボフラビンを生成し、ルテイン色素を介して紫外線を吸収することが知られている。また、この菌は、乳製品およびビールからも分離し、乾燥した環境や高塩環境でも生長し、胞子(spore)を形成しないが、冷蔵庫のような冷蔵温度でも長期間生存することが知られている。
【0013】
しかしながら、まだマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を神経発達疾患、神経疾患または精神疾患の治療に応用した事例は報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、上記のような従来の問題点を解決するために鋭意研究した結果、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を細胞に処理したとき、病原性因子による炎症性媒介体の分泌を顕著に抑制し、病原性因子による免疫機能異常をマイクロコッカス・ルテウス由来小胞が効率的に抑制することを確認した。また、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、様々な病気の病因に関連したNLRP3タンパク質発現およびNLRP3 inflammasomeの形成を通した炎症性媒介体の分泌を抑制し、免疫機能を調節することを確認した。また、前記小胞は、細胞の恒常性に重要な信号であるeNOS(endothelial NO synthase)を活性化し、細胞の恒常性を増加させることを確認した。また、神経細胞の死滅を過度に誘導し、認知機能障害を起こす脳疾患マウスモデルに前記小胞を処理したとき、認知機能に関連した行動障害だけでなく、異常タンパク質の沈着を抑制することを確認した。また、前記脳疾患マウスモデルにおいてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞が神経幹細胞の増殖および分化、そして神経細胞間連結性(inter-neuronal intergrity)を増加させて、神経発達疾患、神経疾患または精神疾患に対する治療効果を示すことを確認した。また、前記神経生成(neurogenesis)による治療効果は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞が神経細胞に作用し、神経生成を誘導するBDNF(brain-derived neurotrophic factor)およびストレスによる細胞老化を防止するsirtuinタンパク質発現を増加させて起こることを確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0015】
これより、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または改善用食品組成物を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用吸入剤組成物を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物伝達用組成物を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用食品組成物を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0022】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0025】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用吸入剤組成物を提供する。
【0026】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物伝達用組成物を提供する。
【0027】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用薬学的組成物を提供する。
【0028】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用食品組成物を提供する。
【0029】
また、本発明は、マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0030】
本発明の一具現例において、前記神経疾患は、退行性神経疾患または炎症性神経疾患であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0031】
本発明の他の具現例において、前記退行性神経疾患は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、てんかん(epilepsy)、カーンズ・セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome;KSS)、慢性進行性外眼筋マヒ(chronic progressive external ophthalmoplegia;CPEO)、MELAS症候群(mitochondrial encephalomyopathy with lactic acidosis and stroke-like episodes;MELAS)、MERRF症候群(myoclonic epilepsy with ragged-red fibers;MERRF)、NARP症候群(neurogenic weakness with ataxia and retinitis pigmentosa;NARP)、Leigh症候群(Leigh syndrome;LS)、およびMIRAS症候群(mitochondrial recessive ataxia syndrome)からなる群から選択された1つ以上の疾患であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0032】
本発明のさらに他の具現例において、前記炎症性神経疾患は、多発性硬化症(multiple sclerosis)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、および糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)からなる群から選択された1つ以上の疾患であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0033】
本発明のさらに他の具現例において、前記精神疾患は、大鬱病性障害(major depressive disorder)、双極性障害(bipolar disorder)、不安障害(anxiety disorder)、統合失調症(schizophrenia)、強迫障害(obsessive compulsive disorder)、外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder)、解離障害(dissociative disorder)、摂食障害(eating disorder)、物質使用障害(substance use disorder)、およびパーソナリティ障害(personality disorder)からなる群から選択された1つ以上の疾患であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0034】
本発明のさらに他の具現例において、前記不安障害は、パニック障害(panic disorder)、社会不安障害(social anxiety disorder)、全般性不安障害(generalized anxiety disorder)、および限局性恐怖症(specific phobia)からなる群から選択された1つ以上の不安障害であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0035】
本発明のさらに他の具現例において、前記パーソナリティ障害は、偏執性パーソナリティ障害(paranoid personality disorder)、反社会的パーソナリティ障害(antisocial personality disorder)、境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorder)、自己愛性パーソナリティ障害(narcissistic personality disorder)、回避性パーソナリティ障害(avoidant personality disorder)、および依存性パーソナリティ障害(dependent personality disorder)からなる群から選択された1つ以上パーソナリティ障害であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0036】
本発明のさらに他の具現例において、前記神経発達疾患は、知的障害(intellectual disability)、コミュニケーション障害(communication disorder)、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)、注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder)、限局性学習障害(specific learning disorder)、および運動障害(motor disorder)からなる群から選択された1つ以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0037】
本発明のさらに他の具現例において、前記神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患は、神経生成障害(neurogenesis dysfunction)によるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明のさらに他の具現例において、前記神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患は、NLRP3 inflammasome(NLR family pyrin domain containing 3 inflammasome)により媒介されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明のさらに他の具現例において、前記組成物は、NLRP3 inflammasomeの形成を抑制することができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明のさらに他の具現例において、前記小胞は、平均直径が10~200nmであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明のさらに他の具現例において、前記小胞は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)から自然的に分泌または人工的に生産されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明のさらに他の具現例において、前記組成物は、脳または神経細胞の老化を抑制することができるが、これに制限されるものではない。
【0043】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療方法を提供する。
【0044】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用途を提供する。
【0045】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患治療用薬剤の製造のための用途を提供する。
【0046】
また、本発明は、目的とする神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物を担持したマイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物の伝達方法を提供する。
【0047】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物伝達用途を提供する。
【発明の効果】
【0048】
本発明者らは、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を経口投与したとき、小胞が血管に吸収され、脳組織に分布することを確認した。また、上皮細胞および炎症細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子による炎症性媒介体の分泌を顕著に抑制し、細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子により誘導されるNLRP3タンパク質発現およびNF-kB(p65)信号を抑制することを確認した。また、細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子により抑制されるeNOS信号を増加させることを確認した。また、神経細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子により抑制されるBDNF遺伝子発現を回復させることを確認した。また、神経細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子により抑制されるsirtuin 1およびsirtuin 7遺伝子発現を回復させることを確認した。また、神経疾患マウスモデルに前記小胞を投与したとき、認知機能が有意に回復することを確認した。また、前記神経疾患マウスモデルに前記小胞を投与したとき、神経生成が有意に回復することを確認したところ、本発明によるマイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、てんかん(epilepsy)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)、自閉性障害(autism spectrum disorder)、注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity syndrome)、大鬱病性障害(major depressive disorder)、双極性障害(bipolar disorder)、不安障害(anxiety disorder)、統合失調症(schizophrenia)、強迫障害(obsessive compulsive disorder)、外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder)、解離障害(dissociative disorder)、摂食障害(eating disorder)、物質使用障害(substance use disorder)、およびパーソナリティ障害(personality disorder)などの神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患を予防、症状改善、または治療するための医薬品または健康機能食品などの開発に有用に用いられ得るだけでなく、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患を治療するための薬物伝達システムとして有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞をマウスに経口投与した後、時間別に各臓器を摘出し、各臓器における蛍光強度を測定した結果を示す図である。
図2図2は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞をマウスに経口投与した後、脳組織に小胞が分布する様相を経時的に示す図である。
図3図3は、上皮細胞にマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101 EV)または陽性対照薬物であるデキサメタソン(Dexamethasone,Dex)を投与し、炎症性原因因子である大腸菌由来小胞(E.coli EV)による炎症性媒介体の分泌抑制効果を評価するための実験プロトコルを示す図である。
図4a-4b】図4aおよび図4bは、上皮細胞にマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)を投与し、大腸菌由来小胞(E.coli)による炎症性媒介体IL-8の分泌抑制に対するマイクロコッカス・ルテウス由来小胞用量依存性(a)と対照薬物であるデキサメタソン(Dexamethasone)との効能を比較した実験結果(b)を示す図である。
図5図5は、炎症細胞であるマクロファージにマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(M.luteus EV)を投与し、炎症性原因因子である大腸菌由来小胞(E.coli EV)による炎症性媒介体の分泌抑制効果を評価するための実験プロトコルを示す図である。
図6a-6b】図6aおよび図6bは、マクロファージにマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(M.luteus EV)を投与し、大腸菌由来小胞(E.coli EV)による炎症性媒介体TNF-α(a)とIL-6(b)の分泌抑制効果を確認した結果を示す図である。
図7図7は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MlEV)による免疫機能調節効果を評価するために、炎症性原因因子であるLPS(lipopolysaccharide)を投与したマウスから分離した組織において免疫機能調節タンパク質であるNLRP3、T-bet、ROR-γt発現様相を確認した結果を示す図である。
図8図8は、マクロファージにマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(M.luteus EV)を投与し、LPSによる炎症性媒介体IL-1βの分泌抑制効果を確認した結果を示す図である。
図9図9は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MlEV)による先天免疫機能調節効果を評価するために、炎症性原因因子であるLPSを投与したマウスから分離した組織において先天免疫関連信号であるJNKおよびNF-kB(p65)の活性化程度を評価した結果を示す図である。
図10図10は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MlEV)の先天免疫細胞生成調節効果を評価するために、炎症性原因因子であるLPSを投与したマウスから分離した組織において神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の病因に関連したILC3(type 3 innate lymphoid cells)の数をフローサイトメトリーを用いて測定した結果を示す図である。
図11図11は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)が細胞の恒常性に重要なeNOS信号に及ぼす効果を評価するために、細胞にマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)または陽性対照薬物であるデキサメタソン(Dexamethasone)を投与し、炎症性原因因子である大腸菌由来小胞(E.coli)により抑制されるeNOS信号に及ぼす影響を評価した結果を示す図である。
図12図12は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)が神経細胞の恒常性に重要なsirtuin遺伝子発現に及ぼす効果を評価するために、細胞にマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)と原因因子であるベータ-アミロイドタンパク質(Aβ)を投与し、Aβにより抑制されるsirtuin遺伝子の発現に及ぼす影響を評価した結果を示す図である。
図13図13は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)が神経生成(neurogenesis)に重要なneurotrophinおよび受容体関連遺伝子発現に及ぼす効果を評価するために、細胞にマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)と原因因子であるアミロイド-ベータタンパク質(Aβ)を投与し、Aβにより抑制されるneurotrophinおよび受容体遺伝子の発現に及ぼす影響を評価した結果を示す図である。
図14図14は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)を経口投与した脳疾患マウスモデル(Tg-APP/PS1 mice)において前記小胞の治療効能を評価するための実験プロトコルを示す図である(WT+veh:正常マウスグループ、Tg+veh:脳疾患マウスグループ、Tg+MDH-101:脳疾患マウスモデルにマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)を経口投与したマウスグループ、以下同一。)。
図15図15は、Tg-APP/PS1脳疾患マウスモデルにおいて認知機能に対するマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)の治療効能を新規物体/位置認識試験(novel object/location recognition test)で評価した結果を示す図である。
図16図16は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞をTg-APP/PS1脳疾患マウスモデルにおいて学習能力に対するマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)の治療効能を水迷路試験(water maze test)で評価した結果を示したものであり、(a)は、水迷路試験のプロトコルを示す図であり、(b)は、5日間の学習期間中にHidden platformを探す時間を示す結果を示す図であり、(c)は、水筒の各部分に滞留した時間を示す図である。
図17図17は、Tg-APP/PS1脳疾患マウスモデルにおいて記憶能力改善に対するマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)の治療効能を受動的回避試験(passive avoidance test)で評価した結果を示すものであり、(a)は、受動的回避試験プロトコルを示す図であり、(b)は、暗室(dark chamber)に入ったとき、電気衝撃を受けたマウスがdark chamberに再び入るまでかかる時間を測定した結果を示す図であり、(c)は、電気衝撃を受けた後、マウスが身動きしない時間(freezing time)を示す図である。
図18図18は、Tg-APP/PS1脳疾患マウスモデルの頭頂葉皮質(Parietal cortex)、海馬(Hippocampus)、梨状皮質(Piriform cortex)領域におけるアミロイドベータ(Aβ)プラーク蛍光染色イメージおよび定量データを比較した結果であり、Tg+vehグループ(TG)とTg+MDH-101グループの頭頂葉皮質、海馬、および梨状皮質におけるAβプラーク染色写真(a)、単位面積当たりのAβプラークの数(b)、および単位面積当たりのAβプラークの面積(C)を示す図である。
図19図19は、Tg-APP/PS1脳疾患マウスモデルの海馬(hippocampus)で神経幹細胞の増殖に対するマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)の治療効能を脳で初期神経新生(neurogenesis)のマーカーであるKi-76発現を染色を通じて確認した結果を示すものであり、左側は、Ki-67染色した結果を示す図であり、右側は、正常マウスグループ(WT+veh)と比較して、Tg+vehグループとTg+MDH-101グループにおいてKi-67に染色された細胞の数を割合で示す図である(WT CON:正常マウスグループ、TG CON:脳疾患マウスグループ、以下同一。)。
図20図20は、Tg-APP/PS1脳疾患マウスモデルの海馬(hippocampus)で神経幹細胞の分化および移動に対するマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)の治療効能を神経幹細胞の分化および移動関連マーカーであるダブルコルチン(doublecortin,DCX)の染色を通じて評価した結果を示すものであり、左側は、DCXを染色した結果を示す図であり、右側は、DCXに染色された細胞の平均数を示す図である。
図21図21は、Tg-APP/PS1脳疾患マウスモデルの海馬(hippocampus)で神経細胞の樹状突起(dendrite)の形成に対するマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)の治療効能を脳組織神経細胞のMAP2染色を通じて評価した結果を示すものであり、左側は、MAP2を染色した結果を示す図であり、右側は、MAP2発現レベルを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞およびその用途に関する。
【0051】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0052】
本発明者は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞をマウスに経口投与したとき、前記小胞が全身に吸収され、脳組織に分布することを確認した(実施例2参照)。
【0053】
また、上皮細胞およびマクロファージに前記小胞を処理したとき、炎症性因子による炎症性媒介体IL-8、TNF-α、およびIL-6の分泌を顕著に抑制することを確認した(実施例3および4参照)。
【0054】
また、神経発達疾患、神経疾患、および精神疾患の病因において核心信号伝達要素であるNLRP3タンパク質発現およびNLRP3 inflammatosomeによるIL-1β分泌がマイクロコッカス・ルテウス由来小胞により顕著に抑制されることを確認した(実施例5参照)。
【0055】
また、NLRP3 inflammasomeの形成をプライミング(priming)する信号であるJNKおよびNF-kB(p65)信号伝達経路をマイクロコッカス・ルテウス由来小胞が効率的に抑制することを確認した(実施例6参照)。
【0056】
また、細胞の恒常性に重要な信号であるeNOSの活性化が炎症性因子により抑制されたが、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞により回復したことを確認した(実施例7参照)。
【0057】
また、脳疾患マウスモデルにマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を経口投与したとき、認知機能、学習能力および記憶能力が正常レベルに回復し、異常タンパク質の沈着も抑制されることを確認した(実施例11~14参照)。
【0058】
また、前記脳疾患マウスモデルにおいてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を経口投与したとき、神経幹細胞の増殖、移動、および分化が正常レベルに回復し、神経細胞間連結に重要な樹状突起の形成も、正常レベルに回復することを確認した(実施例15および16参照)。
【0059】
また、神経細胞に異常タンパク質を投与したとき、異常タンパク質により減少した神経生成媒介体であるBDNF遺伝子発現が正常レベルに回復し、細胞の恒常性関連媒介体であるsirtuin 1およびsirtuin 7遺伝子発現も、正常レベルに回復することを確認した(実施例9および10参照)。
【0060】
これより、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を有効成分として含む神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0061】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用薬学的組成物を提供することができる。
【0062】
本発明において使用される用語「細胞外小胞(Extracellular vesicle)」または「小胞(Vesicle)」とは、多様な細菌から分泌されるナノサイズの膜からなる構造物を意味し、例えば、内毒素(lipopolysaccharide)、毒性タンパク質および細菌DNAとRNAも有している大腸菌のようなグラム陰性菌(gram-negative bacteria)由来小胞または外膜小胞体(outer membrane vesicles,OMVs)およびタンパク質と核酸の他にも、細菌の細胞壁構成成分であるペプチドグリカン(peptidoglycan)とリポタイコ酸(lipoteichoic acid)も有しているマイクロコッカス細菌のようなグラム陽性菌(gram-positive bacteria)由来小胞などがある。
【0063】
本発明において、前記細胞外小胞または小胞は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)から自然的に分泌または人工的に生産された膜からなるすべての構造物を総称することができ、本発明において、MDH-101、MDH-101 EV、M.luteus EV、またはMlEVで多様に表示することができる。
【0064】
前記小胞は、マイクロコッカス・ルテウス培養過程で熱処理、高圧処理したり、前記細菌培養液を遠心分離、超高速遠心分離、高圧処理、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍-解凍、電気穿孔、機械的分解、化学物質処理、フィルターによるろ過、ゲルろ過クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動、およびキャピラリー電気泳動からなる群から選択された1つ以上の方法を用いて分離することができる。また、不純物の除去のための洗浄、収得した小胞の濃縮などの過程をさらに含んでもよい。
【0065】
本発明において前記方法によって分離した小胞は、球形の形態であり、平均直径が10~200nm、10~190nm、10~180nm、10~170nm、10~160nm、10~150nm、10~140nm、10~130nm、10~120nm、10~110nm、10~100nm、10~90nm、10~80nm、10~70nm、10~60nm、10~50nm、20~200nm、20~180nm、20~160nm、20~140nm、20~120nm、20~100nm,または20~80nmであってもよく、好ましくは、20~200nmであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0066】
本発明において使用される用語「有効成分として含む」とは、前記マイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効能または活性を達成するのに十分な量を含むことを意味する。
【0067】
本発明において使用される用語「神経発達疾患(neurodevelopmental disorders)」とは、脳を含む中枢神経系の発達遅延または損傷に関連して現れるすべての発達障害を意味し、神経発達疾患は、心理・社会的な問題よりは、脳の発達障害によって発生する疾患と知られており、例えば、知的障害(intellectual disability)、コミュニケーション障害(communication disorder)、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)、注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder)、限局性学習障害(specific learning disorder)、および運動障害(motor disorder)などを含んでもよい。
【0068】
本発明において使用される用語「神経疾患(Neurologic Diseases)」とは、神経系、すなわち脳、脊髄、神経などに異常が生じて発生する疾患を意味し、本発明において、前記神経疾患とは、退行性神経疾患または炎症性神経疾患であってもよく、神経細胞の損傷によって発生する疾患または病態であれば、制限されずに含んでもよい。
【0069】
本発明において使用される用語「退行性神経疾患」とは、加齢に従って起こる退行性疾患のうち、脳で発生する疾患を意味し、例えば、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、てんかん(epilepsy)、カーンズ・セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome;KSS)、慢性進行性外眼筋マヒ(chronic progressive external ophthalmoplegia;CPEO)、MELAS症候群(mitochondrial encephalomyopathy with lactic acidosis and stroke-like episodes;MELAS)、MERRF症候群(myoclonic epilepsy with ragged-red fibers;MERRF)、NARP症候群(neurogenic weakness with ataxia and retinitis pigmentosa;NARP)、Leigh症候群(Leigh syndrome;LS)、およびMIRAS症候群(mitochondrial recessive ataxia syndrome)などを含んでもよい。
【0070】
本発明において使用される用語「炎症性神経疾患」とは、中枢神経系で発生する神経炎症の影響で発生する疾患を意味し、例えば、多発性硬化症(multiple sclerosis)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、および糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)などを含んでもよい。
【0071】
本発明において使用される用語「精神疾患(Psychiatric Diseases)」とは、ヒトの思考、感情、行動などに影響を及ぼす病的な精神状態を意味し、精神機能に障害が来た状態を総称し、例えば、大鬱病性障害(major depressive disorder)、双極性障害(bipolar disorder)、不安障害(anxiety disorder)、統合失調症(schizophrenia)、強迫障害(obsessive compulsive disorder)、外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder)、解離障害(dissociative disorder)、摂食障害(eating disorder)、物質使用障害(substance use disorder)、およびパーソナリティ障害(personality disorder)などを含んでもよい。
【0072】
本発明において使用される用語「不安障害(anxiety disorder)」とは、理由なく不安を感じたり不安の程度が強くなる精神障害を意味し、例えば、パニック障害(panic disorder)、社会不安障害(social anxiety disorder)、全般性不安障害(generalized anxiety disorder)、および限局性恐怖症(specific phobia)などを含んでもよい。
【0073】
本発明において使用される用語「パーソナリティ障害(personality disorder)」とは、幼い時期から徐々に発展し始め、青少年期または成人初期に発症する個人の病理的な情緒、思考および行動の様式を意味し、例えば、偏執性パーソナリティ障害(paranoid personality disorder)、反社会的パーソナリティ障害(antisocial personality disorder)、境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorder)、自己愛性パーソナリティ障害(narcissistic personality disorder)、回避性パーソナリティ障害(avoidant personality disorder)、および依存性パーソナリティ障害(dependent personality disorder)などを含んでもよい。
【0074】
本発明において、前記神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患は、神経生成障害(neurogenesis dysfunction)による疾患であってもよく、より具体的には、様々なストレスによるミトコンドリア機能異常により引き起こされたり、NLRP3 inflammasomeにより媒介される神経細胞損傷、神経炎症および/または神経退行により引き起こされる神経生成障害による疾患であってもよい。
【0075】
前記「神経生成(neurogenesis)」は、神経幹細胞から神経細胞が生成される過程を意味し、成体神経生成(adult neurogenesis)を含んでもよい。
【0076】
本発明において使用される用語「NLRP3 inflammasome(NLR family pyrin domain containing 3 inflammasome)により媒介される」とは、過度に形成されたNLRP3 inflammasomeが多様な信号伝達経路を介して神経炎症反応を誘導して引き起こされた神経損傷により発生することを意味し、本発明の一実施例によれば、前記マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、NLRP3 inflammasomeの形成をプライミング(Priming)する信号伝達経路を抑制することによって、NLRP3 inflammasomeの形成を抑制することができるので、これを通じて、NLRP3 inflammasome(NLR family pyrin domain containing 3 inflammasome)により媒介される神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患を効果的に予防、改善、または治療することができる。
【0077】
本発明において使用される用語「抗老化」とは、老化を防止し、抑制し、老化を最大限遅延させることを意味し、本発明の一実施例によれば、前記小胞を有効成分として含む組成物は、神経生成障害の抑制を通じて脳または神経細胞の老化を抑制することができる。
【0078】
本発明の組成物内の前記小胞の含有量は、疾患の症状、症状の進行程度、患者の状態などに応じて適切に調節可能であり、例えば、全体組成物の重量を基準として0.0001~99.9重量%、または0.001~50重量%であってもよいが、これに限定されるものではない。前記含有量の割合は、溶媒を除去した乾燥量を基準とする値である。
【0079】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含んでもよい。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩解剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルムコーティング物質、および制御放出添加剤からなる群から選択された1つ以上であってもよい。
【0080】
本発明による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、液剤、点眼剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射溶液、またはエアロゾルなどの外用剤などの形態に剤形化して使用でき、前記外用剤は、クリーム、ジェル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはカタプラズマ剤などの剤形を有していてもよい。
【0081】
本発明による薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。
【0082】
製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0083】
本発明による錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤としてコーンスターチ、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、D-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、ヨウ素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)1928、HPMC2208、HPMC2906、HPMC2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモジェルなど賦形剤;ゼラチン、アラビアガム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製セラック、デンプン糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの結合剤が使用でき、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コーンスターチ、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、 L-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、酢酸ポリビニル、ホルムアルデヒド処理カゼインおよびゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアーガム(Guar gum)、重曹、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化デンプン、アラビアガム、アミロベクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、D-ソルビトール液、軽質無水ケイ酸など崩解剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール4000、6000、流動パラフィン、水素添加大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、デンプン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、DL-ロイシン、軽質無水ケイ酸などの滑沢剤;が使用できる。
【0084】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエテール類、ラノリンエーテル類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが使用できる。
【0085】
本発明によるシロップ剤には、白糖の溶液、他の糖類あるいは甘味剤などが使用でき、必要に応じて芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが使用できる。
【0086】
本発明による乳剤には、精製水が使用でき、必要に応じて乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが使用できる。
【0087】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカンタ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC1828、HPMC2906、HPMC2910などの懸濁化剤が使用でき、必要に応じて界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が使用できる。
【0088】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、ピイジー(PEG)、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、非揮発性油-ゴマ油、綿実油、落花生油、ダイズ油、とうもろこし油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンのような溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ヨウ素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドのような溶解補助剤;弱酸およびその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基およびその塩(アンモニアおよび酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類のような緩衝剤;塩化ナトリウムのような等張剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、窒素ガス(N)、エチレンジアミンテトラ酢酸のような安定剤;ソジウムビサルファイト0.1%、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム、アセトンソジウムビサルファイトのような硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムのような無痛化剤;CMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムのような懸濁化剤を含んでもよい。
【0089】
本発明による坐剤には、カカオ脂、ラノリン、ウィテプソル、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツインまたはスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブチラムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスファーマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コトマー(Cotomar)、ヒドロコテSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコテ(Hydrokote)25、ヒドロコテ711、イドロポスタル(Idropostal)、マッサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マッサ-MF、マスポール、マスポール-15、ネオスポスタル-N、パラマウント-B、スポシロ(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スポスタル(N、Es)、ウェコビー(W、R、S、M、Fs)、テゲスタートリグリセライド基剤(TG-95、MA、57)のような基剤が使用できる。
【0090】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。
【0091】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。
【0092】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物感受性、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定できる。
【0093】
本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与でき、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与でき、単一または多重投与できる。上記した要素を全部考慮して副作用なしで最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、本発明の属する技術分野における通常の技術者によって容易に決定できる。
【0094】
本発明の薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与できる。投与のすべての方式は、予想され得るが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髄の周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼球投与、耳投与、鼻腔投与、吸入、口または鼻を通した噴霧、皮膚投与、経皮投与などにより投与できる。
【0095】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重および疾患の重症度などの様々な関連因子とともに、活性成分である薬物の種類によって決定される。具体的には、本発明による組成物の有効量は、患者の年齢、性別、体重によって変わることができ、一般的には、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは、0.01~100mgを毎日または隔日投与したり1日に1~3回に分けて投与できる。しかし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減できるので、前記投与量がいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0096】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療方法を提供する。
【0097】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用途を提供する。
【0098】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患治療用薬剤の製造のための用途を提供する。
【0099】
本発明において「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシなどの哺乳類であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0100】
本発明において「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0101】
本発明において「予防」とは、目的とする疾患の発病を抑制したり遅延させるすべての行為を意味し、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により目的とする疾患とそれによる代謝異常症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味し、「改善」とは、本発明による組成物の投与により目的とする疾患に関連したパラメーター、例えば症状の程度を減少させるすべての行為を意味する。
【0102】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0103】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用食品組成物を提供することができる。
【0104】
前記食品組成物は、健康機能性食品組成物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0105】
本発明の前記小胞を食品添加物として使用する場合、そのまま添加したり他の食品または食品成分と共に使用でき、通常の方法により適切に使用できる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適宜に決定できる。一般的に、食品または飲料の製造時に、本発明の小胞は、原料に対して15重量%以下、または10重量%以下の量で添加できる。しかし、健康および衛生を目的としたりまたは健康調節を目的とする長期間の摂取の場合、前記量は、前記範囲以下であってもよく、安全性の観点から何の問題もないので、有効成分は、前記範囲以上の量でも使用できる。
【0106】
前記食品の種類には、特別な制限はない。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などがあり、通常の意味における健康機能食品を全部含む。
【0107】
本発明による健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有できる。上で述べた天然炭水化物は、ブドウ糖および果糖のようなモノサッカライド、マルトースおよびスクロースのようなジサッカライド、デキストリンおよびシクロデキストリンのようなポリサッカライド、およびキシリトール、ソルビトールおよびエリトリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用できる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mL当たり一般的に約0.01~0.20g、または約0.04~0.10gである。
【0108】
上記以外に、本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有できる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有できる。このような成分は、独立してまたは組み合わせて使用できる。このような添加剤の割合は、大きく重要なことではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01~0.20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用吸入剤組成物を提供する。
【0109】
吸入剤組成物の場合、当業界に公知となった方法により剤形化でき、好適な推進剤、例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適な気体を用いて、加圧パックまたは煙霧機からエアロゾルスプレー形態で便利に伝達できる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を伝達するバルブを提供して決定できる。例えば、吸入器または吹込器に使用されるゼラチンカプセルおよびカートリッジは、化合物およびラクトースまたはデンプンのような好適な粉末基剤の粉末混合物を含有するように剤形化できる。
【0110】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物伝達用組成物を提供する。
【0111】
本発明において使用される用語「薬物伝達」とは、特定の臓器、組織、細胞または細胞小器官に薬物を伝達するために、本発明による小胞にタンパク質、抗体、高分子化合物、低分子化合物、siRNA、オリゴヌクレオチドなどの薬物をローディングして伝達するすべての手段または行為を意味する。
【0112】
本発明において、前記薬物伝達用組成物は、胃、小腸、大腸、肺、肝、腎臓、および脳からなる群から選択された1つ以上の臓器に薬物を伝達することができ、好ましくは、脳に薬物を伝達することができるが、これらに制限されるものではない。
【0113】
また、本発明は、目的とする神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物を担持したマイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物の伝達方法を提供する。
【0114】
また、本発明は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む組成物の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物伝達用途を提供する。
【0115】
また、本発明は、マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【実施例
【0116】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、ただ本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0117】
[実施例]
実施例1.マイクロコッカス・ルテウス培養液から小胞分離
マイクロコッカス・ルテウス菌株を培養した後、その小胞を分離し、特性を分析した。マイクロコッカス・ルテウスを37℃好気性チャンバーで吸光度(OD600)が1.0~1.5となるまでMRS(de Man-Rogosa and Sharpe)培地で培養した後、sub-cultureした。その後、菌株が含まれている培地上澄み液を回収し、10,000g、4℃で20分間遠心分離し、菌株を除去し、0.22μmフィルターにろ過した。ろ過した上澄み液を100kDa Pellicon 2 Cassetteフィルターメンブレン(Merck Millipore,US)でMasterFlex pump system(Cole-Parmer,US)を用いてmicrofiltrationを通じて50ml体積に濃縮した。その後、濃縮させた上澄み液をさらに0.22μmフィルターでろ過した。その後、BCA assayを用いてタンパク質を定量し、得られた小胞に対して下記実験を実施した。
【0118】
実施例2.マイクロコッカス・ルテウス由来小胞の薬物動態学的特性
マイクロコッカス・ルテウス由来小胞の薬物動態学的特性を調べるために、蛍光染色試薬で染色したマイクロコッカス・ルテウス由来小胞をマウスに経口投与し、48時間各臓器で発現した蛍光を測定した。
【0119】
図1に示されたように、蛍光染色されたマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の経時的な臓器の分布をイメージで評価したとき、前記小胞が様々な臓器に分布することを確認できた。また、図2に示されたように、前記小胞は、経口投与後1時間以内に脳組織に分布し、24時間まで持続的に脳組織に分布することを確認できた。
【0120】
実施例3.上皮細胞でマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の抗炎症効果
図3に示されたように、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101 EV)と陽性対照薬物であるデキサメタソン(Dexamethasone)を上皮細胞に前処理した後、炎症性因子である大腸菌由来小胞(E.coli EV)を処理し、炎症性サイトカインであるIL-8の分泌量をELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay,R&D Systems)で測定した。具体的には、上皮細胞にマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を多様な濃度(1、10、100μg/mL)で24時間前処理した後、大腸菌由来小胞を1ng/mLの濃度で24時間処理し、培地に分泌されたIL-8の分泌量を測定した。
【0121】
その結果、図4aに示されたように、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞によりIL-8の分泌が用量依存的に抑制されることを確認した。また、図4bに示されたように、対照薬物であるデキサメタソンと比較したとき、IL-8分泌抑制効果が対照薬物より優れており、前記小胞に熱処理する場合、IL-8分泌抑制効果がなくなることを確認した。上記の結果から、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞が、代表的な抗炎症薬物であるデキサメタソンに比べて、抗炎症効能にさらに優れていることが分かり、また、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞による抗炎症効能が熱処理時になくなることから、抗炎症作用が小胞内に含まれたタンパク質により媒介されることが分かった。
【0122】
実施例4.炎症細胞でマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の抗炎症効果
図5に示されたように、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞(M.luteus EV)を代表的な炎症細胞であるマクロファージに前処理した後、炎症を誘発する大腸菌由来小胞(E.coli EV)を処理し、炎症性サイトカインTNF-αおよびIL-6の分泌量をELISA(R&D Systems)方法で測定した。具体的には、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を多様な濃度(1、10、100μg/mL)でマクロファージに24時間前処理した後、大腸菌由来小胞を1ng/mLの濃度で24時間処理し、培地に分泌されたTNF-αおよびIL-6の分泌量を測定した。
【0123】
その結果、図6aおよび図6bに示されたように、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を前処理した場合、炎症性原因因子である大腸菌由来小胞によるTNF-α(図6a)およびIL-6(図6b)の分泌がマイクロコッカス・ルテウス由来小胞用量依存的に抑制されることを確認した。これは、神経発達疾患、神経疾患または精神疾患において炎症を誘導する炎症細胞で炎症性原因因子による炎症性媒介体の分泌をマイクロコッカス・ルテウス由来小胞が効率的に抑制することを意味する。
【0124】
実施例5.炎症性因子による免疫機能異常に対するマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の免疫機能調節効果
様々な代謝ストレスに対する免疫反応は、神経疾患または精神疾患の病因に非常に重要であることが知られている。特に、細胞質に存在するNLRP3タンパク質は、神経発達疾患、神経疾患または精神疾患の病因に核心的な信号伝達経路と知られている。マイクロコッカス・ルテウス由来小胞による免疫機能調節効果を評価するために、免疫機能異常を誘導する代表的な原因因子であるLPS(Lipopolysaccaride)をマウスに投与し、組織でNLRP3(NLR family pyrin domain containing 3)、t-bet(t-box protein expressed in T cells)、ROR-γt(retineic-acid-receptor-related orphan nuclear receptor gamma)の発現をwestern blottingで確認した。各タンパク質の発現量を測定するために、タンパク質50μgを用い、デキサメタソン(Dexamethasone,Dex)またはマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したマウスグループの組織で上記のタンパク質の発現を評価した。
【0125】
その結果、図7に示されたように、LPSを投与したグループ(LPS)では、陰性対照群に比べてNLRP3タンパク質発現が顕著に増加し、LPSを投与したマウスにマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したグループ(LPS+MlEV)の組織では、デキサメタソンを投与したグループ(LPS+Dex)と同様にNLRP3タンパク質発現が顕著に抑制されることを確認した。また、LPSを投与したグループ(LPS)では、陰性対照群に比べてt-betおよびROR-γtタンパク質発現が顕著に増加し、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したグループ(LPS+MlEV)では、デキサメタソンを投与したグループ(LPS+Dex)より顕著にt-betおよびROR-γtタンパク質発現が抑制された。これは、炎症性原因因子による先天免疫機能異常をマイクロコッカス・ルテウス由来小胞が効率的に抑制することを意味する。
【0126】
また、前記実施例4の方法でマイクロコッカス・ルテウス由来小胞をマクロファージに前処理した後、マクロファージにLPSを処理し、IL-1βの分泌に及ぼす効能を評価した。図8に示されたように、前記小胞を前処理した場合、炎症性因子であるLPSによるIL-1βの分泌がマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(M.luteus EV)用量依存的に抑制されることを確認した。これは、神経発達疾患、神経疾患または精神疾患において炎症を誘導する炎症細胞でNLRP3 inflammasomeを通じて分泌される炎症性媒介体であるIL-1βの分泌をマイクロコッカス・ルテウス由来小胞が効率的に抑制することを意味する。
【0127】
実施例6.炎症性因子による先天免疫機能異常においてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の調節効果
様々な代謝ストレスに対する先天免疫機能異常は、神経発達疾患、神経疾患または精神疾患の病因に非常に重要であることが知られている。免疫疾患の病因では、特定抗原に対するTh1およびTh17の後天免疫反応が免疫機能異常に核心的であるのに対し、神経発達疾患、神経疾患または精神疾患の病因では、先天免疫を誘導する様々な危険因子(danger signal)によりNLRP3 inflammasomeが形成され、病気が発生することが最近明らかとなった。また、危険因子によりNLRP3 inflammasomeが形成されるためには、先行的にLPSおよびTNF-αなどのような炎症性因子によりNLPR3タンパク質発現が誘導されるプライミング(Priming)過程が重要である。
【0128】
NLRP3 inflammasomeの形成に必須のNLRP3プライミング過程でマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効能を評価するために、実施例5の方法でLPSを投与したマウスから組織を摘出し、先天免疫機能関連信号であるJNKおよびNF-kB(p65)の活性化程度をwestern blottingで評価した。各タンパク質の発現量を測定するために、タンパク質50μgを用い、デキサメタソン(Dexamethasone,Dex)またはマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したマウスグループの組織で上記のタンパク質の発現を評価した。
【0129】
その結果、図9に示されたように、LPSを投与したグループ(LPS)では、陰性対照群に比べてJNKおよびp65タンパク質のリン酸化が増加し、これは、デキサメタソン(Dex)およびマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MIEV)により抑制された。これは、NLRP3 inflammasomeの形成をプライミング(Priming)する信号であるJNKおよびNF-kB(p65)信号伝達経路をマイクロコッカス・ルテウス由来小胞が効率的に抑制し、先天免疫機能異常を調節することを意味する。
【0130】
実施例7.炎症性因子による先天免疫細胞の生成においてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の調節効果
様々なストレスに対する先天免疫機能異常による神経発達疾患、神経疾患または精神疾患の病因にROR-γt信号を通したILC3免疫細胞が重要であり、これは、IL-17などを分泌し、病気の病因に関与することが最近明らかとなった。特に、代表的な炎症性神経疾患である多発性硬化症(multiple sclerosis)の病因にILC3免疫細胞が中心的な役割を担当することが明らかとなった。マイクロコッカス・ルテウス由来小胞がILC3免疫細胞の生成に及ぼす効果を評価するために、実施例5の方法でLPSをマウスに投与し、組織で免疫細胞数をフローサイトメトリー(Flow cytometry)方法で評価した。
【0131】
その結果、図10に示されたように、LPSを投与したグループ(LPS)では、陰性対照群に比べてIL-17を分泌するILC3細胞が顕著に増加し、LPSにより増加したILC3細胞数は、デキサメタソン(Dex)およびマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MIEV)により抑制され、小胞を投与した場合が、デキサメタソンを投与した場合より抑制程度がさらに顕著であることを確認した。これは、NLRP3 inflammasomeにより誘導される先天免疫細胞の生成がマイクロコッカス・ルテウス由来小胞により効率的に抑制されることを意味する。
【0132】
実施例8.酸化ストレスに対する細胞の恒常性調節においてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効能
細胞が様々なストレスに繰り返し露出時、これは、細胞内で酸化ストレス(oxidative stress)に変換し、細胞老化および死滅をもたらし、神経発達疾患、神経疾患または精神疾患を起こす。神経発達疾患、神経疾患および精神疾患の病因においてeNOS(endothelial NO synthase)信号を通じて生成されるNO(nitric oxide)は、酸化ストレスの主犯である活性酸素(reactive oxygen species,ROS)の作用を抑制し、細胞の恒常性を増加させる物質を誘導し、細胞の恒常性を増加させ、細胞死滅を抑制する。
【0133】
酸化ストレスに対する細胞の恒常性に及ぼすマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効果を評価するために、実施例3に記述された方法でマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を血管内皮細胞に処理した後、eNOS信号の活性化程度を評価した。信号伝達タンパク質発現を評価するための方法として、lysis bufferを用いて細胞を溶解させ、タンパク質を抽出し、BCA protein assay kit(Thermo,USA)を用いてタンパク質を定量した。タンパク質の活性化程度は、p-ERK、ERK、p-eNOS、eNOS、β-actinに特異的な抗体を用いて評価した。
【0134】
その結果、図11に示されたように、細胞内ERKおよびeNOSのリン酸化が炎症性因子である大腸菌由来小胞(E.coli)により抑制されたが、デキサメタソン(Dex)およびマイクロコッカス・ルテウス由来小胞(MDH-101)により増加したことを確認できた。また、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞によるeNOS活性化は、前記小胞に熱処理した場合に誘導されないことを確認できた。上記の結果から、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、血管内皮細胞の恒常性および血管健康に重要なeNOSおよびERK信号を活性化し、神経疾患または精神疾患の病因を調節することが分かる。
【0135】
実施例9.神経細胞の損傷においてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効能
神経幹細胞および神経細胞が様々なストレスに繰り返し露出時、細胞内では酸化ストレスにより遺伝子損傷をもたらし、そのため、神経細胞の老化および異常な神経細胞の死滅をもたらす。ヒストン脱アセチル化酵素(Histone deacetylase;HDAC)は、ヒストンタンパク質を含んで多様なタンパク質のアセチル化したリシン(Lysine)残基の脱アセチル化(deacetylation)に関与することで、染色質の構造と機能調節を通した遺伝子発現調節だけでなく、細胞内信号伝達過程で重要な役割を担当する。このようなHDACは、クラスI、II、IIIおよびIVに分けられ、クラスIIIに属するサーチュイン(Sirtuin)は、カロリーの低いストレス状況で細胞の恒常性を維持する信号伝達タンパク質と知られている。
【0136】
Sirtuinタンパク質のうち、sirtuin 1(Sirt1)は、核と細胞質に存在し、deacetylase酵素として代謝ストレスによる炎症を抑制し、細胞の生存を増加させる抗老化タンパク質であり;Sirtuin 5(Sirt5)は、ミトコンドリアに存在し、demalonylase、desuccinylase、deacetylase酵素機能を有しており、ミトコンドリアでアンモニア毒性を調節し、ミトコンドリア機能を維持させるタンパク質であり;Sirtuin 7(Sirt7)は、核内の仁(nucleolus)に存在し、deacetylase酵素機能を有していて、rDNA損傷を修復し、リボソーム(ribosome)でタンパク質が好適に生成され得るようにするタンパク質である。
【0137】
酸化ストレスに対する神経細胞の恒常性に及ぼすマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効果を評価するために、実施例3に記述された方法でマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を神経細胞に処理した後、sirtuin遺伝子の発現様相を評価し、陰性対照群としてPBSを用いた。具体的には、lysis bufferを用いて細胞を溶解させ、遺伝子を抽出し、RT-PCRを用いて遺伝子発現を定量した。遺伝子発現程度は、下記表1に示したHDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、Sirt1、Sirt5、およびSirt7遺伝子のmRNAに対する特異的なプライマーを用いて評価した。
【0138】
【表1】
【0139】
その結果、図12に示されたように、神経細胞に異常タンパク質であるベータ-アミロイド(Aβ)を処理したとき、HDAC2およびHDAC5遺伝子発現は、陰性対照群に比べて有意に増加し、Sirt1、Sirt5、およびSirt7遺伝子発現は、陰性対照群に比べて減少した。また、Aβタンパク質により発現が増加したHDAC5遺伝子は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を処理したとき、発現が有意に減少し、Aβタンパク質により発現が減少したSirt1およびSirt7遺伝子は、前記小胞を処理したとき、発現が有意に増加した。上記の結果から、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、Sirt1およびSirt7遺伝子発現を通じて神経細胞の恒常性を増加させて、代謝ストレスによる炎症および細胞死滅を抑制することが分かる。
【0140】
実施例10.神経生成の抑制においてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効能
神経幹細胞および神経細胞が様々なストレスに繰り返し露出時、神経生成能力が低下する。ニューロトロフィン(Neurotrophin)は、分化した神経細胞の生存および機能だけでなく、神経幹細胞の発達に核心的な役割をする成長因子タンパク質群である。ヒトを含む大部分の哺乳類の脳は、胎児時期に神経細胞が作られるが、海馬(hippocampus)領域に神経幹細胞が存在し、生まれた後にも成体神経生成(aldult neurogenesis)が起こる。神経幹細胞および神経細胞の生存および機能に関連したニューロトロフィンは、BDNF(brain-derived neurotrophic factor)、NT3(neurotrophin-3)、NT4/5、およびNGF(nerve growth factor)などが代表的である。これらのうち、BDNFは、中枢神経系と末梢神経系に存在し、TrkB受容体を通じて脳と末梢神経系に存在する神経細胞の生存およびシナプス形成を増加させるだけでなく、神経幹細胞の増殖および分化を誘導するタンパク質である。
【0141】
酸化ストレスに対する神経幹細胞および神経細胞の生存および機能に及ぼすマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効果を評価するために、実施例3に記述された方法でマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を神経細胞に処理した後、ニューロトロフィンおよびその受容体であるTrkB遺伝子の発現様相を評価し、陰性対照群としてPBSを用いた。具体的には、lysis bufferを用いて細胞を溶解させ、遺伝子を抽出し、RT-PCRを用いて遺伝子発現を定量した。遺伝子発現程度は、下記表2に示したBDNF、NT3、NT4/5、NGF、およびTrkB遺伝子のmRNAに対する特異的なプライマーを用いて評価した。
【0142】
【表2】
【0143】
その結果、図13に示されたように、神経細胞に異常タンパク質であるベータ-アミロイド(Aβ)を処理したとき、BDNF、NT3、NT4/5、およびNGF遺伝子の発現は、陰性対照群に比べて有意に減少し、これらのうち、BDNF遺伝子の発現は、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を処理したとき、陰性対照群と同様の程度に回復した。また、BDNF受容体であるTrkB遺伝子発現も、Aβタンパク質により抑制され、これは、前記小胞により陰性対照群レベルに回復した。上記の結果から、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、BDNFおよびTrkB受容体遺伝子発現を増加させて、神経幹細胞の分化および分化神経細胞の生存および機能を増加させることが分かる。
【0144】
実施例11.脳疾患マウスモデルにおいてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の認知機能改善効果
Tg-APP/PS1マウスは、異常APP(amyloid precursor protein)およびPS1(presenilin 1)タンパク質を過発現させて脳疾患を誘導したマウスモデルであり、6.5ヶ月齢から組織学的に探知可能な異常タンパク質プラークの沈着を示し、7~8ヶ月齢の時期に認知機能障害が安定的に探知される動物モデルである。マイクロコッカス・ルテウス由来小胞の認知機能改善効果を評価するために、前記マウスモデルを用いて図14に示されたように、正常マウスグループ(WT+veh)、sham治療脳疾患マウスグループ(Tg+veh)、および脳疾患マウスモデルにマイクロコッカス・ルテウス由来小胞50μg/mouseを経口投与した脳疾患マウスグループ(Tg+MDH-101)に分けて、行動検査および組織学的検査を行った。
【0145】
マイクロコッカス・ルテウス由来小胞の認知機能改善効果を評価するために、図15に示されたように、WT+veh、Tg+veh、およびTg+MDH-101各グループ別に位置が変わった物体または新規物体に露出させて、10分間物体を探索する時間を測定した。その結果、図15に示されたように、2時間または24時間後に測定した新規物体認識試験(novel object recognition test)においてWT+vehおよびTg+MDH-101グループは、新規物体を探索する時間が長いが、Tg+vehグループは変化がないことを確認した。また、位置認識能力試験(novel location recognition test)において、WT+vehおよびTg+MDH-101グループは、位置が移動した物体を探索する時間が長いが、Tg+vehでは変化がないことを確認した。これは、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞が異常タンパク質の生成により誘導される脳疾患マウスにおいて短期および長期認知機能障害の進行を抑制することを意味する。
【0146】
実施例12.脳疾患マウスモデルにおいてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の学習能力改善効果
前記実施例11の脳疾患マウスモデルにおいてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の学習能力改善効能を評価するために、図16aに示されたように、5日間水筒内の隠されたプラットフォーム(platform)を探すように訓練させた後、隠されたプラットフォームを探す評価を行った。
【0147】
その結果、図16bに示されたように、5日間の訓練期間中に隠されたプラットフォームを探す時間は、WT+vehグループが最も速く、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したTg+MDH-101グループは、WT+vehグループと類似した学習能力を示したが、Tg-vehグループは、最も遅い学習時間を示した。また、図16cに示されたように、隠されたプラットフォームの位置を探して滞留する時間の場合、WT+vehグループがプラットフォーム位置に長時間滞留し、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したTg+MDH-101グループは、Tg-vehグループに比べてプラットフォーム位置に滞留した時間が有意に長く現れた。上記の結果から、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、脳疾患マウスの空間知覚の学習および記憶能力の回復に治療効果があることが分かる。
【0148】
実施例13.脳疾患マウスモデルにおいてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の記憶能力改善効果
前記実施例11の脳疾患マウスモデルにおいてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の記憶能力改善効能を評価するために、図17aに示されたように、マウスが暗室に入る場合、足に電気衝撃を加えてchamber contextと連係させた恐怖と不安を学習させた後、24、72、および120時間の長期的な時間でマウスが恐怖/不安と関連させて記憶するかを確認する試験を行った。
【0149】
その結果、図17bに示されたように、WT+vehおよびTg+MDH-101グループのマウスは、24、72、および120時間の時点で実験が行われる300秒が経過しても暗室に入らなかったが、Tg+vehグループのマウスは、暗室に入る時間が次第に速くなることを確認できた。また、図17cに示されたように、マウスが暗室に入り、電気衝撃を受けてから出たとき、衝撃に起因して身動きしない時間(freezing time)の場合、WT+vehグループのマウスは、Tg+vehグループのマウスに比べて身動きしない時間が有意に長かったが、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したTg+MDH-101グループのマウスは、Tg+vehグループのマウスと有意差がないことを確認できた。上記の結果から、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、異常タンパク質により誘導される記憶能力の損失を抑制する効果があることが分かる。
【0150】
実施例14.脳疾患マウスモデルにおいて異常なプラーク形成に及ぼすマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効能評価
アミロイドベータ(Aβ)プラークは、アルツハイマー病患者の脳で代表的に発見されるタンパク質であり、Tg-APP/PS1マウスモデルでは、マウスの脳にAβプラークが蓄積し始まり、アルツハイマー症状を誘導することが知られている。前記実施例11のマウスモデルの脳切片をThioflavin-S染料で蛍光染色を行い、脳組織に沈着したAβプラークを分析した。
【0151】
その結果、図18aに示されたように、脳の頭頂葉皮質(Parietal cortex)、海馬(Hippocampus)、および梨状皮質(Piriform cortex)領域に形成されているAβプラークが、Tg+vehグループとマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したTg+MDH-101グループとの間に差異があることを確認できた。また、図18bおよび図18cに示されたように、Tg+vehグループに比べて、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したTg+MDH-101グループは、脳の頭頂葉皮質および海馬領域に沈着する単位面積当たりのAβプラーク数(図18b)とAβプラーク面積(図18c)が有意に減少することを確認できた。上記の結果から、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、異常タンパク質過発現による脳疾患マウスモデルにおいて異常タンパク質プラークの形成を抑制する効果があることが分かる。
【0152】
実施例15.脳疾患マウスモデルにおいてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の成体神経生成(adult neurogenesis)効能の評価
前記実施例を基にマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与した脳疾患マウスモデルに現れた神経機能の悪化を抑制する機序を糾明するために、神経生成(neurogenesis)を評価した。
【0153】
図19に示されたように、神経幹細胞増殖(neural stem cell proliferation)マーカーと知られたKi-67を蛍光染色し、Ki-67に染色された細胞数を確認した結果、WT+vehグループに比べて、Tg+vehグループにおいてKi-67に染色された細胞数が有意に減少したことを確認できた。一方、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したTg+MDH-101グループは、Tg+vehグループに比べてKi-67に染色された細胞数が有意に増加し、WT+vehグループと同様の程度に回復したことを確認できた。
【0154】
また、神経幹細胞の分化および移動におけるマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の効能を評価するために、神経幹細胞の分化および移動関連マーカーであるDCX(double cortin)を蛍光染色した。その結果、図20に示されたように、WT+vehグループに比べて、Tg+vehグループのDCX陽性細胞数が有意に減少し、これは、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したTg+MDH-101グループにおいて有意に回復したことを確認できた。上記の結果から、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、脳疾患マウスモデルにおいて新しい神経生成(neurogenesis)を誘導し、新しい神経細胞を生成することによって異常タンパク質の生成による神経発達疾患、神経疾患または精神疾患に対して治療効果を示すことが分かる。
【0155】
実施例16.脳疾患マウスモデルにおいてマイクロコッカス・ルテウス由来小胞の神経細胞の樹状突起形成能力の評価
前記実施例を基にマイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与した脳疾患マウスモデルに現れた神経機能の向上に対する作用機序を糾明するために、分化した神経細胞の樹状突起(dendritic process)形成能力を評価した。樹状突起の形態および数の変化は、神経細胞間の信号伝達に重要なので、神経細胞特異的細胞骨格タンベクチルとよく知られた微小管関連タンパク質2(Microtubule-associated protein 2;MAP2)の発現を用いて評価した。
【0156】
その結果、図21に示されたように、WT+vehグループに比べて、Tg+vehグループにおいてMAP2の発現が有意に減少し、これは、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を投与したTg+MDH-101グループにおいて有意に回復したことを確認できた。上記の結果から、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、神経細胞の樹状突起形成を通じて神経細胞間連結性を増加させて神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の発生または経過を調節することが分かる。
【0157】
上記の結果から、本発明のマイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、神経発達疾患、神経疾患または精神疾患の発生または経過を効率的に抑制することが分かった。特に前記小胞は、神経発達疾患、神経疾患または精神疾患の核心的な免疫関連信号伝達物質であるNLRP3 inflammasome形成を調節し、様々な炎症性因子による炎症を抑制することによって、神経幹細胞および神経細胞の異常な死滅を抑制することが分かった。また、前記小胞は、eNOS信号を活性化し、細胞の恒常性に核心信号伝達物質であるNO生成を誘導して、酸化ストレスにより抑制されるsirtuin 1およびsirtuin 7の発現を回復させて神経幹細胞および神経細胞の恒常性を増加させることができ、BDNF発現を増加させて神経幹細胞の増殖および分化だけでなく、神経細胞の生存および神経細胞間連結性を増加させて神経発達疾患、神経疾患および精神疾患を効率的に治療することができることが分かった。
【0158】
したがって、本発明のマイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の改善、予防、または治療用途に用いられ得ることが期待される。
【0159】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明者らは、マイクロコッカス・ルテウス由来小胞を経口投与したとき、小胞が血管に吸収され、脳組織に分布することを確認した。また、上皮細胞および炎症細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子による炎症性媒介体の分泌を顕著に抑制し、細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子により誘導されるNLRP3タンパク質発現およびNF-kB(p65)信号を抑制することを確認した。また、細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子により抑制されるeNOS信号を増加させることを確認した。また、神経細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子により抑制されるBDNF遺伝子発現を回復させることを確認した。また、神経細胞に前記小胞を処理したとき、病原性因子により抑制されるsirtuin 1およびsirtuin 7遺伝子発現を回復させることを確認した。また、神経疾患マウスモデルに前記小胞を投与したとき、認知機能が有意に回復することを確認した。また、前記神経疾患マウスモデルに前記小胞を投与したとき、神経生成が有意に回復することを確認したところ、本発明によるマイクロコッカス・ルテウス由来小胞は、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患を予防、症状改善、または治療するための医薬品または健康機能食品などの開発に有用に用いられ得るだけでなく、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患を治療するための薬物伝達システムとして有用に用いられ得ることが期待される。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
2024501034000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記神経疾患は、退行性神経疾患または炎症性神経疾患であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記退行性神経疾患は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、てんかん(epilepsy)、カーンズ・セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome;KSS)、慢性進行性外眼筋マヒ(chronic progressive external ophthalmoplegia;CPEO)、MELAS症候群(mitochondrial encephalomyopathy with lactic acidosis and stroke-like episodes;MELAS)、MERRF症候群(myoclonic epilepsy with ragged-red fibers;MERRF)、NARP症候群(neurogenic weakness with ataxia and retinitis pigmentosa;NARP)、Leigh症候群(Leigh syndrome;LS)、およびMIRAS症候群(mitochondrial recessive ataxia syndrome)からなる群から選択された1つ以上の疾患であることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記炎症性神経疾患は、多発性硬化症(multiple sclerosis)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、および糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)からなる群から選択された1つ以上の疾患であることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記精神疾患は、大鬱病性障害(major depressive disorder)、双極性障害(bipolar disorder)、不安障害(anxiety disorder)、統合失調症(schizophrenia)、強迫障害(obsessive compulsive disorder)、外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder)、解離障害(dissociative disorder)、摂食障害(eating disorder)、物質使用障害(substance use disorder)、およびパーソナリティ障害(personality disorder)からなる群から選択された1つ以上の疾患であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記不安障害は、パニック障害(panic disorder)、社会不安障害(social anxiety disorder)、全般性不安障害(generalized anxiety disorder)、および限局性恐怖症(specific phobia)からなる群から選択された1つ以上の不安障害であることを特徴とする請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記パーソナリティ障害は、偏執性パーソナリティ障害(paranoid personality disorder)、反社会的パーソナリティ障害(antisocial personality disorder)、境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorder)、自己愛性パーソナリティ障害(narcissistic personality disorder)、回避性パーソナリティ障害(avoidant personality disorder)、および依存性パーソナリティ障害(dependent personality disorder)からなる群から選択された1つ以上パーソナリティ障害であることを特徴とする請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記神経発達疾患は、知的障害(intellectual disability)、コミュニケーション障害(communication disorder)、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)、注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder)、限局性学習障害(specific learning disorder)、および運動障害(motor disorder)からなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患は、神経生成障害(neurogenesis dysfunction)によるものであることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患は、NLRP3 inflammasome(NLR family pyrin domain containing 3 inflammasome)により媒介されることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記組成物は、NLRP3 inflammasomeの形成を抑制することを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記小胞は、平均直径が10~200nmであることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記小胞は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)から自然的に分泌または人工的に生産されることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項15】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用吸入剤組成物。
【請求項16】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の治療薬物伝達用組成物。
【請求項17】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用薬学的組成物。
【請求項18】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞を有効成分として含む、抗老化用食品組成物。
【請求項19】
前記組成物は、脳または神経細胞の老化を抑制することを特徴とする請求項18に記載の食品組成物。
【請求項20】
マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌由来小胞を有効成分として含む、神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項21】
マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来小胞の神経発達疾患、神経疾患、または精神疾患治療用薬剤の製造のための使用
【国際調査報告】