(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】導電性マイクロ波遮蔽組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 71/12 20060101AFI20231227BHJP
C08L 25/06 20060101ALI20231227BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231227BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L25/06
C08K3/013
C08L53/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539750
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 IB2021062397
(87)【国際公開番号】W WO2022144777
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ,ノルベルト
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC032
4J002BP013
4J002CH061
4J002CH071
4J002DA036
4J002FD016
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
熱可塑性組成物が:(a)ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンを含む約82wt%から約92wt%の熱可塑性樹脂と;(b)約3wt%から約13wt%の炭素系充填剤と、を含む。炭素系充填剤は、少なくとも650平方メートル毎グラム(m2/g)の比表面積と、少なくとも250ミリリットル毎100グラム(ml/100g)の吸油量とを有する。この組成物は、約75ギガヘルツ(GHz)から約110GHzの周波数で測定された、3.5から10の間の誘電定数ε’と、0.25から5の間の散逸損失ε”とを有する。組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料は、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも50%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンを含んでなる、約82wt%から約92wt%の熱可塑性樹脂と;
(b)ASTM D2414に準拠して試験された、少なくとも650平方メートル毎グラム(m
2/g)の比表面積、および少なくとも250ミリリットル毎100グラム(ml/100g)の吸油量を有する、約3wt%から約13wt%の炭素系充填剤と、
を含んでなり、
約75ギガヘルツ(GHz)から約110GHzの間の周波数で測定された、3.5から10の間の誘電定数ε’と、0.25から5の間の散逸損失ε”とを有する熱可塑性組成物であって、
前記組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも50%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮し、
すべての成分の一つに合わせた重量パーセント値が100wt%を超えず、すべての重量パーセント値が前記組成物の全重量を基準にする、組成物。
【請求項2】
前記組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭素系充填剤が、4wt%から8wt%の量で存在し、前記組成物のモールド成形試料が、77GHzの周波数で少なくとも80%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記炭素系充填剤が、ASM D3037に準拠して決定された650m
2/gから1500m
2/gの比表面積と、ASTM D2414に準拠して決定された250ml/100gから500ml/100gの吸油量とを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリ(フェニレンエーテル)がポリフェニレンオキシド(PPO)を含んでなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
約1wt%から約10wt%の耐衝撃性改良剤成分をさらに含んでなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記耐衝撃性改良剤成分がスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンを含んでなる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
0.01wt%から約5wt%のポリエチレンポリマーをさらに含んでなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
自由空間法に従って決定された、約75GHzから110GHzの周波数での約-5デシベル毎センチメートル(dB/cm)から-110dB/cmの間の減衰定数を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
自由空間法に従って決定された、約75GHzから110GHzの周波数での約5dBから約50dBの全遮蔽有効度を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
自由空間法に従って決定された、約75GHzから110GHzの周波数での入射放射の約40%から約90%の間の、透過モードで測定されるマイクロ波吸収電力を有する、請求項1から10のいずれかに一項に記載の組成物。
【請求項12】
SABIC法に準拠して決定される、2.55E+14オーム.cm未満の体積電気抵抗率を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
構成要素(b)の炭素系充填剤とは異なる少なくとも一つのさらなる炭素系充填剤をさらに含んでなる、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物を含んでなる物品。
【請求項15】
自動車用センサの内部または外部部品を含んでなる、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、良好な誘電特性を有するカーボンブラックを含むポリ(フェニレンエーテル)系の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業では、車間距離制御装置、駐車/車線変更アシスト、後退警報器、死角検知機能、衝突回避機能、その他多くの機能を用いた運転支援を提供するために、電子レーダーセンサの使用が増加している。これらのレーダーセンサは、比較的高い周波数、好ましくは約24GHz(短距離レーダー、10~20メートル)、および約77GHz(長距離レーダー、150~200メートル)で動作する。これらのセンサが効果的に動作するには、擬似的な電磁放射源から保護される必要がある。アルミニウムやステンレス鋼などの金属は、マイクロ波(MW)遮蔽用の最も一般的な材料であるが、重く高価であり、最終部品に成形するには複雑な加工が必要である。ポリマー/炭素コンポジットは、低密度、低コストで、容易に成形されて大量のモールド成形部品に製造される。炭素充填剤は、空洞内の電子センサを保護する筐体壁の中でMW放射を捕捉または偏向させる。従来のポリマー系レーダー吸収材料は、エラストマー系の柔軟なシートまたはブランケット、液体塗料、および独立気泡ポリマー発泡体の形態である。しかし、現在入手可能な材料は、自動車用途のMW放射遮蔽材としては好適ではない。
【0003】
これらの欠点および他の欠点が、本開示の態様によって対処される。
【発明の概要】
【0004】
本開示の態様は、(a)ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンを含む約82wt%から約92wt%の熱可塑性樹脂と;(b)約3wt%から約13wt%の炭素系充填剤と、を含む熱可塑性組成物に関する。炭素系充填剤は、ASTM D3037に準拠して試験された少なくとも650平方メートル毎グラム(m2/g)の比表面積と、ASTM D2414に準拠して試験された少なくとも250ミリリットル毎100グラム(ml/100g)の吸油量とを有する。組成物は、約75ギガヘルツ(GHz)から約110GHzの間の周波数で測定された、3.5から10の間の誘電定数ε’と、0.25から5の間の散逸損失ε”とを有する。組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料は、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも50%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する。
【0005】
必ずしも縮尺通りに描かれていない諸図面では、同様の数字が、異なる図において同様の構成成分を記述している場合がある。文字に付けられた異なる接尾辞を有する同様の数字が、同様の構成成分の異なる実例を表している場合がある。図面は概して、本明細書で考察される様々な態様を、限定するものとしてではなく例として示している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1Aおよび1Bはそれぞれ、透過モードおよび金属裏打ち反射モードで本発明の組成物の誘電特性を決定する装置の視覚的表現である。
【
図2】
図2Aおよび2Bはそれぞれ、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、比較組成物および実施例組成物についての複素誘電率の実数部および虚数部(誘電定数としても知られる実数部ε’、および散逸損失としても知られる虚数部ε”)をそれぞれ示す。
【
図3】
図3Aおよび3Bはそれぞれ、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、比較組成物および実施例組成物についての減衰定数および全遮蔽有効度を示す。
【
図4】
図4は、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、比較組成物および実施例組成物についての金属裏打ち反射モードで測定された帰還損失を示す。
【
図5】
図5Aおよび5Bはそれぞれ、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、比較組成物および実施例組成物についての金属裏打ち反射モードおよび透過モードでのパーセント吸収電力を示す。
【
図6】
図6は、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、比較組成物C1.1についての透過モードでのパーセント電力を示す。
【
図7】
図7は、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、実施例組成物Ex1.1の透過モードでのパーセント電力を示す。
【
図8】
図8は、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、実施例組成物Ex1.2の透過モードでのパーセント電力を示す。
【
図9】
図9は、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、実施例組成物Ex1.3の透過モードでのパーセント電力を示す。
【
図10】
図10は、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、実施例組成物Ex1.4の透過モードでのパーセント電力を示す。
【
図11】
図11は、Wバンド(75~110GHz)で観測される場合の周波数の関数として、実施例組成物Ex1.5の透過モードでのパーセント電力を示す。
【
図12】
図12は、77GHzで観測される場合の炭素充填量の関数として、実施例組成物および比較組成物の透過モードでのパーセント電力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、有害なマイクロ波電磁エネルギーから電子レーダーセンサを隔離することができる筐体または内部部品を製造するのに使用することができる可塑性コンポジット材料に関する。カーボンブラックを含む従来のポリエステル系組成物と比較して、本開示の材料は、中温から高温で動作する非晶質ポリマーマトリクスを必要とする用途に好適である。
【0008】
本開示は、以下の、本開示の詳細な記載、およびそこに含まれる実施例を参照することにより、さらに容易に理解することができる。様々な態様では、本開示は、(a)ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンを含む約82wt%から約92wt%の熱可塑性樹脂と;(b)約3wt%から約13wt%の炭素系充填剤と、を含む熱可塑性組成物に関する。特定の態様では、熱可塑性組成物は、約4wt%から約13wt%の炭素系充填剤、または約5wt%から約13wt%の炭素系充填剤を含む。炭素系充填剤は、ASTM D3037に準拠して試験された少なくとも650平方メートル毎グラム(m2/g)の比表面積と、ASTM D2414に準拠して試験された少なくとも250ミリリットル毎100グラム(ml/100g)の吸油量とを有する。組成物は、約75ギガヘルツ(GHz)から約110GHzの間の周波数で測定された、3.5から10の間の誘電定数ε’と、0.25から5の間の散逸損失ε”とを有する。組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料は、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも50%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する。
【0009】
本化合物、組成物、物品、システム、装置、および/または方法が開示され記載されるのに先立って、それらが、別途指定されていない限り具体的な合成方法に限定されず、または別途指定されていない限り特定の試薬に限定されず、それゆえに様々であり得るのが言うまでもないことは、理解されるものとする。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載する目的だけのものであり、限定することを意図するものではないことは、理解されるものとする。
【0010】
本開示の構成要素の様々な組み合わせ、例えば、同一の独立請求項に従属する従属請求項からの構成要素の組み合わせが、本開示に包含される。
【0011】
さらに、別途言明されているのでない限り、本明細書に記載されるいかなる方法も、そのステップが具体的な順序で実行されることを要求するものとして解釈されることは決して意図されていないと理解されるものとする。従って、方法請求項が、そのステップが従うことになる順序を実際に記載していない場合には、またはそのステップが具体的な順序に限定されることが、特許請求の範囲もしくは明細書に他に具体的に定められていない場合には、順序が推論されることは、いかなる点においても決して意図されない。これは、ステップの並びまたは操作の流れに関する論理の問題;文法的な構成または句読点から得られる平易な意味;および明細書に記載された態様の数またはタイプ、を含め、解釈のためのいかなる可能な非明示的な根拠についても当てはまる。
【0012】
本明細書で言及されるあらゆる公開文献は、引用された公開文献に関連する方法および/または材料を開示し記載するために、参照により本書に組み込まれる。
定義
【0013】
また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載する目的だけのものであり、限定することを意図するものではないことは、理解されるものとする。本明細書および特許請求の範囲で使用されるとおり、用語「含んでなる(comprising)」は、態様「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を含み得る。別途定義されているのでない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、当業者によって共通に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲では、本明細書で定義されるものとされる複数の用語が参照されることになる。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとおり、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが規定されているのでない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「ポリ(フェニレンエーテル)」を指す場合、それは、二つ以上のポリ(フェニレンエーテル)ポリマーの混合物を含む。
【0015】
本明細書で使用されるとおり、用語「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物、および同類のものを包含する。
【0016】
本明細書では、範囲を、ある値(第1の値)から別の値(第2の値)までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合には、その範囲は、いくつかの態様では、第1の値および第2の値のうちの一つまたは両方を含む。同様に、値が近似値として表現される場合には、先行詞「約」の使用により、特定の値が別の態様を形成することは理解されよう。さらに、各範囲の端点は、もう一方の端点との関連でも、他の端点から独立にも、どちらでも有効であることが理解されよう。本明細書で開示される複数の値が存在すること、そして各値は本明細書において、その特定の値自体に加えて、「約」その値としても開示されることもまた理解される。例えば、値「10」が開示される場合には、約「10」も開示される。また、二つの特定の単位の間の各単位も開示されることが理解される。例えば、10と15が開示される場合には、11、12、13、14もまた開示される。
【0017】
本明細書で使用されるとおり、用語「約」および「のところまたはその周辺」は、問題となっている量または値が、指定値、近似的に指定値、または指定値とほぼ同じであり得ることを意味する。本明細書で使用されるとおり、別途指示または推論されているのでない限り、その値は、表示された公称値±10%の変動であるとおおむね理解される。この用語は、特許請求の範囲に記載された均等な結果または効果がそうした類似の値によって促されることを伝えるよう意図されている。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、およびその他の量および特性は、正確ではなく、正確である必要もないが、公差、換算係数、丸め、測定誤差、および同類のもの、ならびに当業者に公知のその他の要因を反映して、所望に応じて近似的であり得る、および/または大きくもしくは小さくなり得ることは理解される。概して、量、サイズ、配合、パラメータ、または他の量もしくは特性は、そのように明示的に定められているかどうかにかかわらず、「約」または「近似値」である。定量的な値の前に「約」が使用される場合には、パラメータもまた、別途具体的に定められているのでない限りその具体的で定量的な値自体をも含むと理解される。
【0018】
開示されるのは、本開示の組成物を準備するのに使用される成分のみならず、本明細書に開示される方法の範囲内で使用される組成物自体である。これらのそして他の材料は、本明細書に開示されるものであるが、これらの材料の組み合わせ、部分集合、相互作用、群などが開示される場合には、これらの化合物のそれぞれ様々な個別のおよび集合的な組み合せと並び換えの具体的な参照を明示的に開示することはできなくとも、それぞれが本明細書に具体的に企図され記載されるものとして理解される。例えば、特定の化合物が開示され、考察され、それらの化合物を含む複数の分子に対して行うことができる多数の修正形態が考察される場合には、具体的に企図されるのは、具体的に反対の指示がない限り、その化合物と可能な修正形態のそれぞれおよびすべての組み合わせと並び換えである。よって、分子A、B、およびCの集合のみならず、分子D、E、およびFの集合が開示され、組み合わせ分子の例であるA-Dが開示されている場合には、それぞれが個別に言及されていない場合であっても、それぞれが個別に、そして集合的に企図され、組み合わせ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されていると見なされる。同様に、これらのいずれの部分集合または組み合わせもまた開示される。よって、例えば、A-E、B-F、C-Eの部分群が、開示されているとみなされる。この考え方は、本開示の組成物を製造するおよび使用する方法におけるステップを含むがこれらに限定されない、本出願のすべての態様に当てはまる。よって、実行できる様々な追加のステップがある場合には、これらの追加のステップのそれぞれは、本開示の方法のいずれかの具体的な態様または態様の組み合わせを用いて実行できることが理解される。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、組成物または物品中の特定の構成要素または成分の重量部が参照されていれば、それは、その構成要素または成分と、組成物または物品中の他の構成要素または成分との間の、重量部で表現される重量関係を示すものである。よって、2重量部の成分Xと5重量部の成分Yを含有する化合物では、XとYは2:5の重量比で存在し、化合物中に追加の成分が含有されているかどうかにかかわらず、そのような比率で存在する。
【0020】
成分の重量パーセントは、具体的に反対の記載があるのでない限り、その成分が含まれる配合物または組成物の全重量を基準にする。
【0021】
本明細書で使用されるとおり、用語「数平均分子量」または「Mn」は、互換的に使用することができ、試料中の全ポリマー鎖の統計平均分子量を指し、式:
【0022】
【数1】
で定義され、式中、M
iは鎖の分子量であり、N
iはその分子量の鎖の数である。M
nは、ポリマー、例えばポリカルボナートポリマーについて、分子量標準、例えばポリカルボナート標準またはポリスチレン標準、好ましくは認証済みまたは追跡可能な分子量標準を使用して、当業者に周知の方法で測定することができる。
【0023】
本明細書で使用されるとおり、用語「重量平均分子量」または「Mw」は、互換的に使用することができ、式:
【0024】
【数2】
で定義され、式中、M
iは鎖の分子量であり、N
iはその分子量の鎖の数である。M
nと比較して、M
wでは、分子量平均への寄与を決定する際に、所与の鎖の分子量が考慮される。よって、所与の鎖の分子量が大きいほど、M
wへのその鎖の寄与は大きい。M
wは、ポリマー、例えばポリカルボナートポリマーについて、分子量標準、例えばポリカルボナート標準またはポリスチレン標準、好ましくは認証済みまたは追跡可能な分子量標準を使用して、当業者に周知の方法で測定することができる。
【0025】
本明細書で使用されるとおり、用語「多分散度」または「PDI」は、互換的に使用することができ、式:
【0026】
【数3】
によって定義される。PDIは1以上の値を有するが、ポリマー鎖が均一な鎖長に近づくにつれて、PDIは1に近づく。
【0027】
ポリマーの成分に関して使用される用語「残基」および「構造単位」は、本明細書を通じて同義である。
【0028】
本明細書で使用されるとおり、用語「重量パーセント」、「wt%」、および「wt.%」は、互換的に使用することができ、別途指定されているのでない限り、組成物の全重量を基準にした所与の成分の重量パーセントを示す。よって、別途指定されているのでない限り、すべてのwt%の値は、組成物の全重量を基準にする。開示された組成物または配合物中の全成分のwt%値の総和は100に等しいと理解されるのが望ましい。
【0029】
本明細書で別途反対の記載があるのでない限り、すべての試験規格は、本出願時に有効な最新の規格である。
【0030】
本明細書に開示される材料のそれぞれは、市販されている、および/またはその製造方法が当業者に公知である。
【0031】
本明細書に開示される組成物は、特定の機能を有することが理解される。本明細書で開示されるのは、開示される機能を実行する特定の構造的要件であり、開示される構造に関連する同一の機能を実行できる様々な構造が存在すること、そしてこれらの構造が典型的に同じ結果を実現することが理解される。
熱可塑性組成物
【0032】
マイクロ波放射(~1~300ギガヘルツ(GHz)周波数、または~1~300ミリメートル(mm)波長)は、自動車用途向けレーダーセンサの動作に使用される最も一般的なEMエネルギー源である。金属(アルミニウム、ステンレス鋼など)、金属充填剤、例えば、アルミニウムフレーク、ステンレス鋼繊維、および銀コートされたポリアミド繊維を含有するポリマーコンポジット材料、金属化コーティング剤、本質的に導電性のポリマー(ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、およびポリアニリンなど)、炭化ケイ素、フェライト類(Fe2O3+Ni/Zn/Cd/Co酸化物)、ならびにカルボニル鉄は、有害なマイクロ波電磁放射から自動車用レーダーセンサを遮蔽するために使用されている材料の一部である。
【0033】
レーダー設計者がマイクロ波レーダー干渉用の材料を選択する際に考慮するいくつかの電磁誘電特性がある。複素誘電率(実数部および虚数部)、複素透磁率(実数部および虚数部)、材料によって吸収、反射、または透過される放射の量、遮蔽有効度、反射損失、挿入損失、および減衰は、レーダーセンサ用途の可塑性部品の製造にとって対象となる材料特性の一部に過ぎない。また、除去または最小化されなければ自動車用電子センサの正常な動作に妨げる可能性のあるマイクロ波エネルギーを捕捉する場合には、入射放射の周波数と材料の厚さもまた重要である。
【0034】
材料の遮蔽有効度(SE)は例えば、導電性材料および/または磁性材料で作られた障壁または遮蔽を用いて電磁場を遮断することによりその周囲の電磁放射を低減させる材料の能力を記述する。これらの場合、遮蔽は、保護されることになる材料に入射する電磁放射の一部または全部を吸収するかまたは反射するかのいずれかによって影響を受ける可能性がある。この有害な放射を遮断する遮蔽材料の能力は通常、入射放射の周波数(または波長)、保護層の厚さに依存するものであり、材料の電気伝導率および/または誘電特性によって変化すると予想される。
【0035】
材料の遮蔽有効度は概して、反射、吸収、内部反射損失の結果である。これは以下の式:
SET(dB)=SEA+SER+SEM
で表される。
【0036】
遮蔽効率>10デシベル(dB)である場合には、多重反射SEMに起因する遮蔽有効度は、通常無視できる。したがって、全遮蔽有効度は:
SET(dB)=SEA+SER
と簡単になり、ここで
【0037】
SEAおよびSERは、ベクトルネットワークアナライザを使用したSパラメータ測定から以下の:
【0038】
【0039】
【0040】
上記の式中、S11は反射についての散乱パラメータ、S21は透過についての散乱パラメータであり、それらは、実数部および虚数部を有する複素数である。同様の式が、減衰、反射、および挿入損失、吸収電力など、他の誘電特性の計算にも使用することができる。
【0041】
本開示の組成物の誘電特性を測定するのに使用される自由空間法は、ベクトルネットワークアナライザ、互いに対向する2つのアンテナであって、それらアンテナの間に等距離に置かれた試料ホルダを有するアンテナからなる。ネットワークアナライザの散乱パラメータ出力を誘電特性に変換するためにソフトウェアが使用される。自由空間測定技術は、試験下にある材料の誘電率と透磁率を決定する方法を提供する。これらの方法は非接触である、すなわち、試験下にある材料は、測定装置のいかなる能動部品とも直接には接触しない。裏打ちのない試料および金属裏打ちされた試料について、自由空間法を使用して本開示の材料の誘電特性を測定する装置をそれぞれ
図1Aおよび1Bに図示する。商業用途では、透過モード(裏打ちなし)での
図1Aの装置が概して使用される一方、軍事/ステルス用途では、
図1Bの金属裏打ちされた装置が概して好まれる。6インチ×8インチ×1/8インチの寸法の射出成形板状体が、自由空間法を用いて試験された標本であった。
【0042】
炭素(粉体、プレートレット、繊維、ナノチューブなど)は、未充填の状態ではマイクロ波放射に対して実質的に透明であるポリマーに電磁的干渉特性を付与する一般的に好まれる充填剤として登場している。ポリマー-炭素コンポジットは、例えば、自動車用ボンネットの下の筐体に使用される場合には、外部起源の電磁放射によってセンサの電子性能が劣化するのを防止することにより、筐体内に位置するレーダーセンサを保護することができる。また、とりわけシリコーン、ポリウレタン、およびニトリルゴムなどの炭素含有エラストマーも、空洞内のセンサの正常な動作によって発生する共振周波数を減衰させる高損失保護ブランケットとして使用することができる。
【0043】
本開示は、熱可塑性物系の炭素充填材料について記載しており、これらの材料は、剛性で、モールド成形されると特定の形状を維持する高弾性率のものであり、自動車用センサ用途において電磁放射を捕捉する内部または外部部品として使用することができる。本開示の実施例に記載されるとおり、高表面積、低注入密度のカーボンブラック(例えば、ENSACO(登録商標) 360G、780m2/gr、135Kg/m3)を、ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンを含む熱可塑性樹脂に組み込むことにより、複素誘電率の実数部および虚数部を増加させた、そして減衰および遮蔽有効度を増加させた材料が得られる。
【0044】
電気伝導率および誘電干渉性能を達成するカーボンブラックの能力は、主に以下の:
●カーボンブラックの形態(主要な粒子サイズおよび凝集構造) - カーボンブラックの構造が高まるほど、電気伝導率の浸透しきい値は低くなる;
●カーボンブラックの充填量 - カーボンブラックの充填量が多いほど、電気伝導率、誘電率の実数部および虚数部、透過モードでのパーセント反射などが高くなる;
●分散物の質 - コンパウンディング工程は、充填剤の分散性、せん断抵抗、混合サイクル、押出スループットなどに影響すること;および
●ポリマーマトリクス(結晶化度、分子量) - 出発ポリマーのメルトフローインデックスが高いほど、浸透しきい値は低くなる、
の関数である。
【0045】
特定の態様では、炭素系充填剤は、ASTM D3037に準拠して試験された少なくとも650平方メートル毎グラム(m2/g)の比表面積と、ASTM D2414に準拠して試験された少なくとも250ミリリットル毎100グラム(ml/100g)の吸油量とを有する。具体的な態様では、カーボンブラック粉体は、イメリス・グラファイト&カーボン社(IMERYS Graphite & Carbon)製のENSACO(登録商標) 360Gである。ENSACO(登録商標) 360Gと、従来型/比較のカーボンブラック粉体であるVulcan(登録商標) XC72との比較を表1に示す:
【0046】
【0047】
示されているとおり、ENSACO(登録商標) 360Gの比表面積(m2/g)、吸油量(ml/100g)および注入密度(Kg/m3)はそれぞれ、780、320、および135である。比較のVulcan(登録商標) XC72カーボンブラック粉体の同じパラメータはそれぞれ、254、174、および264である。
【0048】
よって本開示の態様は概して、ポリマーおよび炭素充填剤を含む材料からモールド成形された自動車用レーダーセンサの部品(プレート、筐体、カバーなど)であって、モールド成形された部分が、好適な設計特性および望ましい平均厚さ、マイクロ波吸収効率、吸収バンド幅、SE、減衰、電気的な表面抵抗率および体積抵抗率特性を有する部品に関する。さらなる態様は、レーダー遮蔽材料から形成されたモールド成形部分を含む物品(レーダーセンサ、カメラ、ECU)に関するものであり、そのようなモールド成形部分は、センサのプリント回路基板内に位置する送信アンテナと受信アンテナとの間のマイクロ波放射の透過を可能にする少なくとも二つの開口部を有する。
【0049】
具体的な態様では、熱可塑性組成物は:(a)約82wt%から約92wt%のポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンを含む熱可塑性樹脂と;(b)約3wt%から約13wt%の炭素系充填剤と、を含む。炭素系充填剤は、ASTM D3037に準拠して試験された少なくとも650平方メートル毎グラム(m2/g)の比表面積と、ASTM D2414に準拠して試験された少なくとも250ミリリットル毎100グラム(ml/100g)の吸油量とを有する。組成物は、約75ギガヘルツ(GHz)から約110GHzの間の周波数で測定された、3.5から10の間の誘電定数ε’と、0.25から5の間の散逸損失ε”とを有し、組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料は、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも50%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する。すべての成分の一つに合わせた重量パーセント値は100wt%を超えず、すべての重量パーセント値は組成物の全重量を基準にする。
【0050】
特定の態様では、炭素系充填剤は、650m2/gから1500m2/gの比表面積を有する。さらなる態様では、炭素系充填剤は、250ml/100gから500ml/100gの吸油量を有する。
【0051】
組成物はポリ(フェニレンエーテル)を含む。ポリ(フェニレンエーテル)は、高温での剛性、寸法安定性、および高い衝撃強度と延性特性との組み合わせを与える。好適なポリ(フェニレンエーテル)類には、式
【0052】
【化1】
を有する繰り返し構造単位を含むものなどが挙げられ、式中、出現する各Z
1は独立に、ハロゲン、非置換または置換C
1-C
12ヒドロカルビルであるが、ただしその場合、ヒドロカルビル基が、三級ヒドロカルビル、C
1-C
12ヒドロカルビルチオ、C
1-C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2-C
12ハロヒドロカルビルオキシではなく、少なくとも二つの炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を分離するのが条件であり;出現する各Z
2は独立に、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1-C
12ヒドロカルビルであるが、ただしその場合、ヒドロカルビル基が、三級ヒドロカルビル、C
1-C
12ヒドロカルビルチオ、またはC
2-C
12ヒドロカルビルオキシではなく、少なくとも二つの炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を分離するのが条件である。本明細書で使用されるとおり、用語「ヒドロカルビル」は、それ自体で使用されるか、他の用語の接頭辞、接尾辞、または断片として使用されるかによらず、炭素および水素のみを含有する残基を指す。残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、または不飽和のものとすることができる。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含有するものとすることもできる。しかし、ヒドロカルビル残基が置換されているものとして記載される場合には、それは随意に、置換残基の炭素および水素構成員に加えてヘテロ原子を含有していてもよい。よって、置換されていると具体的に記載されている場合には、ヒドロカルビル残基はまた、一つまたは複数のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基、または同類にものを含有するものとすることもできるか、またはヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含有するものとすることができる。一例として、Z
1は、末端3,5-ジメチル-1,4-フェニル基と酸化重合触媒のジ-n-ブチルアミン成分との反応により形成されるジ-n-ブチルアミノメチル基とすることができる。
【0053】
ポリ(フェニレンエーテル)は、クロロホルム中、25℃で測定して0.35から0.6デシリットル毎グラムの固有粘度を有するものとすることができる。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)固有粘度は0.35から0.5デシリットル毎グラム、特に0.4から0.5デシリットル毎グラムとすることができる。
【0054】
ポリ(フェニレンエーテル)は、組成物の他の成分とコンパウンディングされた後、少なくとも70,000原子量単位の重量平均分子量を有する。いくつかの態様では、他の成分とコンパウンディングされた後のポリ(フェニレンエーテル)は、70,000から110,000原子量単位、具体的には70,000から100,000原子量単位、より具体的には70,000から90,000原子量単位の重量平均分子量を有する。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、そしてポリスチレン標準との比較に基づいて決定することができる。
【0055】
いくつかの態様では、他の成分とコンパウンディングされる前のポリ(フェニレンエーテル)は、60,000から90,000原子量単位、具体的には60,000から80,000原子量単位、より具体的には60,000から70,000原子量単位の重量平均分子量を有する。これらのコンパウンディング前分子量から、上記の所望のコンパウンディング後分子量を得ることができる。
【0056】
いくつかの態様では、ポリ(フェニレンエーテル)は、組み込まれたジフェノキノン残基を、本質的に含まない。この文脈では、「本質的に含まない」は、ジフェノキノンの残基を含むポリ(フェニレンエーテル)分子が1重量パーセント未満であることを意味する。ヘイ(Hay)に対する米国特許第3,306,874号明細書に記載されているとおり、一価フェノールの酸化重合によるポリ(フェニレンエーテル)の合成では、所望のポリ(フェニレンエーテル)だけでなく、副生成物としてジフェノキノンも生じる。例えば、一価フェノールが2,6-ジメチルフェノールの場合には、3,3’,5,5’-テトラメチルジフェノキノンが生成する。典型的には、ジフェノキノンは、重合反応混合物を加熱して、末端または内部のジフェノキノン残基を含むポリ(フェニレンエーテル)を得ることによって、ポリ(フェニレンエーテル)中に「再平衡化」される(すなわち、ジフェノキノンがポリ(フェニレンエーテル)構造に組み込まれる)。例えば、2,6-ジメチルフェノールの酸化重合によりポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)および3,3’,5,5’-テトラメチルジフェノキノンを得ることによって、ポリ(フェニレンエーテル)を準備する場合には、反応混合物の再平衡化は、組み込まれたジフェノキノンの末端および内部残基を有するポリ(フェニレンエーテル)を生成することができる。しかし、このような再平衡化は、ポリ(フェニレンエーテル)の分子量を低減させる。したがって、より高分子量のポリ(フェニレンエーテル)が所望される場合には、ジフェノキノンをポリ(フェニレンエーテル)鎖に再平衡化するのではなく、ジフェノキノンをポリ(フェニレンエーテル)から分離するのが望ましい場合がある。このような分離は例えば、ポリ(フェニレンエーテル)を不溶性としジフェノキノンを可溶性とする溶媒または溶媒混合物中で、ポリ(フェニレンエーテル)を沈殿させることによって、達成することができる。例えば、トルエン中で2,6-ジメチルフェノールを酸化重合してポリ(フェニレンエーテル)を調製し、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)と3,3’,5,5’-テトラメチルジフェノキノンとを含むトルエン溶液を得る場合には、1容量のトルエン溶液と、1から4容量のメタノールまたはメタノール/水混合物とを混合することにより、ジフェノキノンを本質的に含まないポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を得ることができる。あるいは、酸化重合中に生成されるジフェノキノン副生成物の量は、(例えば、10重量パーセント未満の一価フェノールの存在下で酸化重合を開始し、そして少なくとも50分間にわたって少なくとも95重量パーセントの一価フェノールを加えることによって)最小化することができる、および/またはポリ(フェニレンエーテル)鎖中へのジフェノキノンの再平衡化は、(例えば、酸化重合の終了後200分以内にポリ(フェニレンエーテル)を単離することによって)最小化することができる。これらの手法は、デルスマンら(Delsman et al.)の米国特許第8,025,158号明細書に記載されている。トルエン中でのジフェノキノンの温度依存性溶解度を利用する代替の手法では、ジフェノキノンとポリ(フェニレンエーテル)とを含むトルエン溶液を、ジフェノキノンは難溶性とするがポリ(フェニレンエーテル)は可溶性とする25℃の温度に調整し、不溶性のジフェノキノンを固液分離(例えば、ろ過)によって除去することができる。
【0057】
ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル単位、2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル単位、またはそれらの組み合わせを含むものとすることができる。ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)とすることができる。いくつかの態様では、ポリ(フェニレンエーテル)は、クロロホルム中、25℃で測定された0.35から0.6デシリットル毎グラムの固有粘度を有するポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を含む。この範囲では、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)の固有粘度は、クロロホルム中25℃で測定して、0.35から0.5デシリットル毎グラム、より具体的には0.4から0.5デシリットル毎グラムとすることができる。
【0058】
いくつかの態様では、ポリ(フェニレンエーテル)は、アミノアルキル含有末端基を有する、そして典型的には、ヒドロキシ基に対してオルト位に位置する分子を含む。アミノアルキル含有末端基は、例えば、ジ-n-ブチルアミノメチル基またはモルホリノメチル基とすることができる。また、高頻度で存在するのは、テトラメチルジフェノキノン(TMDQ)末端基であり、典型的には、テトラメチルジフェノキノン副生成物を存在させた2,6-ジメチルフェノール含有反応混合物から得られる。ポリ(フェニレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、アイオノマー、またはブロックコポリマーのみならず、先の少なくとも一つを含む組み合わせの形態をとるものとすることができる。
【0059】
特定の態様では、ポリ(フェニレンエーテル)はポリフェニレンオキシド(PPO)を含む。例示的なポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、CAS登録番号25134-01-4であり、25℃のクロロホルム中で測定された0.46デシリットル毎グラムの固有粘度を有し、SABICからPPO 646として入手される。
【0060】
いくつかの態様では、熱可塑性組成物は、少なくとも40wt%、または少なくとも45wt%、または少なくとも50wt%、または少なくとも55wt%、少なくとも60wt%、少なくとも65wt%、または50~75wt%、または55~75wt%、または60~75wt%、または65~75wt%、または65~72wt%など、組成物中の主要成分としてポリ(フェニレンエーテル)を含む。
【0061】
熱可塑性組成物はポリスチレン(PS)をも含む。PSを加えて熱可塑性組成物の粘度を低下させて、押出温度での加工を可能にするようにしてもよい。ポリスチレンは、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーである。簡潔にするため、この成分を「水素化ブロックコポリマー」と称する。水素化ブロックコポリマーは概して、水素化ブロックコポリマーの重量を基準にして、10から45重量パーセントのポリ(アルケニル芳香族)含有量を含む。この範囲内では、ポリ(アルケニル芳香族)含有量は20から40重量パーセント、具体的には25から35重量パーセントとすることができる。
【0062】
いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、少なくとも100,000原子量単位の重量平均分子量を有する。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、100,000から1,000,000原子量単位、具体的には100,000から400,000原子量単位の重量平均分子量を有するポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン・トリブロックコポリマーを含む。
【0063】
水素化ブロックコポリマーを準備するのに使用されるアルケニル芳香族モノマーは、構造
【0064】
【化2】
を有するものとすることができ、式中、R
7およびR
8がそれぞれ独立に、水素原子、C
1-C
8アルキル基、またはC
2-C
8アルケニル基を表し;R
9およびR
13がそれぞれ独立に、水素原子、C
1-C
8アルキル基、塩素原子、または臭素原子を表し;R
10、R
11、およびR
12がそれぞれ独立に、水素原子、C
1-C
8アルキル基、またはC
2-C
8アルケニル基を表すか、またはR
10およびR
11が、中心芳香族環と結合してナフチル基を形成するか、またはR
11およびR
12が、中心芳香族環と結合してナフチル基を形成する。具体的なアルケニル芳香族モノマーには、例えば、スチレン、p-クロロスチレンなどのクロロスチレン類、アルファ-メチルスチレンおよびp-メチルスチレンなどのメチルスチレン類、3-t-ブチルスチレンおよび4-t-ブチルスチレンなどのt-ブチルスチレン類などが挙げられる。いくつかの態様では、アルケニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0065】
水素化ブロックコポリマーを準備するのに使用される共役ジエンは、C4-C20共役ジエンとすることができる。好適な共役ジエンには、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、および同類のもの、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。いくつかの態様では、共役ジエンは、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、共役ジエンは1,3-ブタジエンからなる。
【0066】
水素化ブロックコポリマーは、(A)アルケニル芳香族化合物から誘導される少なくとも一つのブロックと、(B)共役ジエンから誘導される少なくとも一つのブロックとを含むコポリマーであって、ブロック(B)中の脂肪族不飽和基含有量が、水素化によって少なくとも部分的に低減されている。いくつかの態様では、(B)ブロック中の脂肪族不飽和は、少なくとも50パーセント、具体的には少なくとも70パーセント低減される。ブロック(A)と(B)の配置には、直鎖構造、グラフト構造、分岐鎖を含むか含まない放射状のテレブロック構造が含まれる。直鎖ブロックコポリマーには、テーパード(tapered)直鎖構造および非テーパード直鎖構造などが挙げられる。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーはテーパード直鎖構造を有する。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは非テーパード直鎖構造を有する。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族モノマーの無秩序な取り込みを含む(B)ブロックを含む。直鎖ブロックコポリマーには、ジブロック(A-Bブロック)、トリブロック(A-B-AブロックまたはB-A-Bブロック)、テトラブロック(A-B-A-Bブロック)、およびペンタブロック(A-B-A-B-AブロックまたはB-A-B-A-Bブロック)構造のみならず、(A)と(B)の合計で6ブロック以上を含有する直鎖構造が挙げられ、ここで、各(A)ブロックの分子量は、他の(A)ブロックの分子量と同じまたは異なるものとすることができ、各(B)ブロックの分子量は、他の(B)ブロックの分子量と同じまたは異なるものとすることができる。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせである。
【0067】
いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族化合物および共役ジエン以外のモノマーの残基を含まない。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族化合物および共役ジエンから誘導されるブロックからなる。それは、これらのまたは他のモノマーから形成されたグラフトを含まない。またそれは、炭素原子と水素原子からなり、したがってヘテロ原子を含まない。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、一つまたは複数の酸官能基化剤、例えば無水マレイン酸の残基を含む。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン・トリブロックコポリマーを含む。
【0068】
水素化ブロックコポリマーを準備する方法は当該技術分野では公知であり、多くの水素化ブロックコポリマーが市販されている。例示的な市販の水素化ブロックコポリマーには、クレイトンポリマーズ社(Kraton Polymers)からKRATON G1701(37重量%のポリスチレンを有する)およびG1702(28重量%のポリスチレンを有する)として入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)ジブロックコポリマー;クレイトンポリマーズ社からKRATON G1641(ポリスチレン33重量パーセント)、G1651(ポリスチレン31~33重量パーセントのポリスチレンを有する)、およびG1654(ポリスチレン31重量パーセントのポリスチレンを有する)として入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン・トリブロックコポリマー;ならびにクラレ(Kuraray)からSEPTON S4044、S4055、S4077、およびS4099として入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)-ポリスチレン・トリブロックコポリマーなどが挙げられる。さらなる市販の水素化ブロックコポリマーには、ディナソル社(Dynasol)からCALPRENE CH-6170、CH-7171、CH-6174、およびCH-6140として、またクラレからSEPTON 8006および8007として入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)・トリブロックコポリマー;クラレからSEPTON 2006および2007として入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)コポリマー;ならびにクレイトンポリマーズ社からKRATON G4609およびG4610として、旭化成(Asahi)からTUFTEC H1272として入手可能な、これらの水素化ブロックコポリマーの油展コンパウンドなどが挙げられる。二つ以上の水素化ブロックコポリマーの混合物を使用することもできる。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、少なくとも100,000原子量単位の重量平均分子量を有するポリスチレンポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン・トリブロックコポリマーを含む。
【0069】
いくつかの態様では、熱可塑性組成物は、約5wt%から約40wt%のポリスチレン、または約5wt%から約35wt%のポリスチレン、または約5wt%から約30wt%のポリスチレン、または約5wt%から約25wt%のポリスチレンを含む、約5wt%から約20wt%のポリスチレン、または約10wt%から約40wt%のポリスチレン、または約10wt%から約35wt%のポリスチレン、または約10wt%から約30wt%のポリスチレン、約10wt%から約25wt%のポリスチレン、または約10wt%から約20wt%のポリスチレン、または約15wt%から約40wt%のポリスチレン、または約15wt%から約35wt%のポリスチレン、または約15wt%から約30wt%のポリスチレン、または約15wt%から約25wt%のポリスチレン、または約15wt%から約20wt%のポリスチレン、または約17wt%から約20wt%のポリスチレンを含む。
【0070】
組成物は、約1wt%から約10wt%の耐衝撃性改良剤成分を含む。耐衝撃性改良剤は、ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンを含む熱可塑性樹脂と相溶性である、そして23℃でASTM D256に従って測定されるノッチ付きアイゾッド衝撃強度によって測定された組成物の耐衝撃性を改良する、ゴム状ポリマーである。耐衝撃性改良剤は、ポリ(アルケニル芳香族)含有量およびゴム含有量を含み、ゴム含有量に対するポリ(アルケニル芳香族)含有量の重量比は、少なくとも0.5である。いくつかの態様では、ゴム含有量に対するポリ(アルケニル芳香族)含有量の重量比は0.5から20、具体的には1から10、より具体的には2から5である。一例として、耐衝撃性改良剤がゴム状変性ポリスチレンである場合には、ポリ(アルケニル芳香族)含有量はポリスチレンからなり、ゴム含有量はポリブタジエンからなる。別の例として、耐衝撃性改良剤がポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン・トリブロックコポリマーである場合には、ポリ(アルケニル芳香族)含有量はポリスチレンからなり、ゴム含有量はポリ(エチレン-ブチレン)からなる。好適な耐衝撃性改良剤には、ゴム状変性ポリ(アルケニル芳香族)類(ゴム状変性ポリスチレン類など、高衝撃ポリスチレン類としても知られる)、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンの未水素化ブロックコポリマー(ポリスチレン-ポリブタジエン・ジブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン・トリブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリイソプレン・ジブロックコポリマー、およびポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン・トリブロックコポリマーなど)、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンの水素化ブロックコポリマー(ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)ジブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン・トリブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)ジブロックコポリマー、およびポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン・トリブロックコポリマーなど)、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。よって、ゴム含有量の供給源には、ポリブタジエン類、ブロックコポリマー内のポリブタジエンブロック、グラフトコポリマー内のポリブタジエングラフト、ポリイソプレン類、ブロックコポリマー内のポリイソプレンブロック、グラフトコポリマー内のポリイソプレングラフト、ブロックコポリマー内のエチレン-プロピレンコポリマーブロック、およびブロックコポリマー内のエチレン-ブチレンブロックなどを挙げることができる。
【0071】
耐衝撃性改良剤を準備するのに使用されるアルケニル芳香族モノマーは、構造
【0072】
【化3】
を有するものとすることができ、式中、R
5およびR
6がそれぞれ独立に、水素原子、C
1-C
8アルキル基、またはC
2-C
8アルケニル基を表し;R
7およびR
11がそれぞれ独立に、水素原子、C
1-C
8アルキル基、塩素原子、または臭素原子を表し;R
8、R
9、およびR
10がそれぞれ独立に、水素原子、C
1-C
8アルキル基、またはC
2-C
8アルケニル基を表すか、またはR
8およびR
9が中心芳香族環と結合してナフチル基を形成するか、またはR
9およびR
10が中心芳香族環と結合してナフチル基を形成する。具体的なアルケニル芳香族モノマーには、例えば、スチレン、p-クロロスチレンなどのクロロスチレン類、アルファ-メチルスチレンおよびp-メチルスチレンなどのメチルスチレン類、3-t-ブチルスチレンおよび4-t-ブチルスチレンなどのt-ブチルスチレン類などが挙げられる。いくつかの態様では、アルケニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0073】
未水素化または水素化ブロックコポリマーを準備するのに使用される共役ジエンは、C4-C20共役ジエンとすることができる。好適な共役ジエンには、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、および同類のもの、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。いくつかの態様では、共役ジエンは、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、共役ジエンは1,3-ブタジエンからなる。
【0074】
いくつかの態様では、耐衝撃性改良剤はゴム状変性ポリスチレンを含む。ゴム状変性ポリスチレンは、ポリスチレンおよびポリブタジエンを含む。ゴム状変性ポリスチレンは、「高衝撃ポリスチレン」または「HIPS」と称されることがある。いくつかの態様では、ゴム状変性ポリスチレンは、ゴム状変性ポリスチレンの重量を基準にして、80から96重量パーセントのポリスチレン、具体的には88から94重量パーセントのポリスチレン;および4から20重量パーセントのポリブタジエン、具体的には6から12重量パーセントのポリブタジエンを含む。いくつかの態様では、ゴム状変性ポリスチレンは10から35パーセントの実効的なゲル含有量を有する。好適なゴム状変性ポリスチレンは、例えばSABICのHIPS3190として市販されている。
【0075】
いくつかの態様では、耐衝撃性改良剤は、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを含む。簡潔にするために、この成分を「水素化ブロックコポリマー」と称する。水素化ブロックコポリマーは、水素化ブロックコポリマーの重量を基準にして、約10から約90重量パーセントのポリ(アルケニル芳香族)含有量および約90から約10重量パーセントの水素化ポリ(共役ジエン)含有量を含むものとすることができる。いくつかの態様では、水素化ブロックコポリマーは、低ポリ(アルケニル芳香族含有量)水素化ブロックコポリマーであり、その中のポリ(アルケニル芳香族)含有量は、約10から40重量パーセント未満、具体的には約20から約35重量パーセント、さらに具体的には約25から約35重量パーセント、さらに具体的には約30から約35重量パーセントであり、これらはすべて、低ポリ(アルケニル芳香族含有量)水素化ブロックコポリマーの重量を基準にしている。他の態様では、水素化ブロックコポリマーは、高ポリ(アルケニル芳香族含有量)水素化ブロックコポリマーであり、その中のポリ(アルケニル芳香族)含有量は、40から約90重量パーセント、具体的には約50から約80重量パーセント、より具体的には約60から約70重量パーセントであり、これらはすべて、高ポリ(アルケニル芳香族含有量)水素化ブロックコポリマーの重量を基準にしている。
【0076】
さらなる態様では、組成物は、0.01wt%から約5wt%のポリエチレンポリマーをさらに含む。ポリエチレンポリマーには、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン、およびそれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらには限定されない。
【0077】
いくつかの態様では、組成物は、構成要素(b)の炭素系充填剤とは異なる少なくとも一つのさらなる炭素系充填剤をさらに含む。例示的な炭素系充填剤には、キャボット社(Cabot)から入手可能なVulcan(登録商標) XC72が挙げられるが、これには限定されない。
熱可塑性組成物の特性
【0078】
本開示の態様による熱可塑性組成物は、従来の組成物と比較して、向上した誘電特性を有する。いくつかの態様では、組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料は、自由空間法に従って約75GHzから110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する。特定の態様では、炭素系充填剤は4wt%から8wt%の量で存在し、組成物のモールド成形試料は、少なくとも80%の、77GHzの周波数において透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する。
【0079】
さらなる態様では、組成物は、約-5デシベル毎センチメートル(dB/cm)から-110dB/cmの間の減衰定数を有する。いくつかの態様では、組成物は、約75GHzから約110GHzの周波数において約5dBから約50dBの間、または特定の態様では約5dBから約45dBの間、または約5dBから約40dBの間、または約5dBから約35dBの間の全遮蔽有効度を有する。
【0080】
特定の態様では、組成物は、約75GHzから約110GHzの周波数において、入射放射の約40%から約90%の間、またはいくつかの態様では、入射放射の約45%から約90%の間、入射放射の約50%から約90%の間、入射放射の約55%から約90%の間、入射放射の約60%から約90%の間の、透過モードで測定されたマイクロ波吸収電力を有する。
【0081】
特定の態様では、組成物は、SABIC法に準拠して決定される、2.55E+14オーム.cm未満、または1.0E+14オーム.cm未満、または1.0E+13オーム.cm未満、または1.0E+12オーム.cm未満、または1.0E+11オーム.cm未満、または1.0E+10オーム.cm未満、または1.0E+09オーム.cm未満、または1.0E+08オーム.cm未満、または1.0E+07オーム.cm未満、または1.0E+06オーム.cm未満、または1.0E+05オーム.cm未満、または1.0E+04オーム.cm未満、または1.0E+03オーム.cm未満の体積電気抵抗率を有する。
製造方法
【0082】
本明細書に記載される一つまたはいずれの先の成分も、最初に互いにドライブレンドされ、または先の成分のいずれかの組み合わせとドライブレンドされ、次いで、単一または複数フィーダから押出機に供給される場合があるか、または単一または複数フィーダから押出機に別個に供給される場合がある。本開示で使用される充填剤はまた、最初に加工されてマスターバッチにされ、次いで、押出機に供給される場合がある。成分は、スロートホッパまたはいずれかのサイドフィーダから押出機に供給される場合がある。
【0083】
本開示で使用される押出機は、一軸スクリュ、複数軸スクリュ、噛み合い式共回転または逆回転スクリュ、非噛み合い式共回転または逆回転スクリュ、往復スクリュ、ピン付きスクリュ、スクリーン付きスクリュ、ピン付きバレル、ロール、ラム、螺旋ロータ、コニーダ、ディスクパック処理機、様々な他のタイプの押出装置、または先の少なくとも一つを含む組み合わせを有する場合がある。
【0084】
成分はまた、いっしょに混合される場合があり、次いで、熱可塑性組成物を形成するために溶融ブレンドされる場合がある。成分の溶融ブレンディングは、せん断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、または先の力もしくはエネルギーの形態の少なくとも一つを含む組み合わせの使用が関与する。
【0085】
コンパウンディング時の押出機上のバレル温度は、樹脂が半結晶性有機ポリマーであれば約融点以上に、または樹脂が非晶性樹脂であれば約流動点(例えばガラス転移温度)以上の温度に、ポリマーの少なくとも一部が到達するような温度に設定することができる。
【0086】
前述した成分を含む混合物は、望ましい場合には、複数のブレンディングおよび形成のステップに供される場合がある。例えば、熱可塑性組成物は、最初に押出成形されてペレットに形成される場合がある。次いで、ペレットはモールド成形機に供給されて、いずかの望ましい形状または製造物に形成される場合がある。あるいは、単一の溶融混合機から出る熱可塑性組成物は、シートまたはストランドに形成され、アニーリング、一軸または二軸延伸など、押出後工程に供される場合がある。
【0087】
本工程における溶融物の温度は、いくつかの態様では、成分の過度の熱劣化を避けるために、可能な限り低く維持される場合がある。特定の態様では、溶融物の温度は、約230℃から約350℃の間に維持されるが、ただし処理装置内での樹脂の滞留時間が比較的短く保たれることを条件に、さらに高い温度を使用することができる。いくつかの態様では、溶融処理された組成物は、ダイの小さな出口穴を通して押出機などの処理装置から出る。得られた溶融樹脂のストランドは、このストランドを水浴に通すことによって冷却される場合がある。冷却されたストランドは、包装やさらなる取り扱いのためにペレットに切断することができる。
製造物品
【0088】
特定の態様では、本開示は、熱可塑性組成物を含む成形された、形成された、またはモールド成形された物品に関係する。熱可塑性組成物は、射出成形、押出成形、回転成形、ブロー成形、および熱成形などの様々な手段によって、有用な形状の物品にモールド成形することができる。好適な物品を、吸収機構によるマイクロ波放射の捕捉が所望される技術、例えば自動車や電気通信の用途であるがこれらに限定されるものではない技術に使用してもよい。自動車用途の例には、レーダーセンサ、カメラ、または電子制御ユニット(ECU)を含め、自動車用センサの内部または外部部品が挙げられるが、これらには限定されない。通信用途の例には、携帯電話/タブレット、カーラジオ、コンピュータ、パラボラアンテナ、5G通信基地局、および同類のものなどが挙げられるが、これらには限定されない。
【0089】
本開示の構成要素の様々な組み合わせ、例えば、同一の独立請求項に従属する従属請求項からの構成要素の組み合わせが、本開示に包含される。
本開示の態様
【0090】
様々な態様において、本開示は、少なくとも以下の態様に関するものであってそれらを含む。
【0091】
態様1. (a)ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンを含んでなる、約82wt%から約92wt%の熱可塑性樹脂と;
(b)ASTM D2414に準拠して試験された、少なくとも650平方メートル毎グラム(m2/g)の比表面積、および少なくとも250ミリリットル毎100グラム(ml/100g)の吸油量を有する、約3wt%から約13wt%の炭素系充填剤と、
を含んでなり、または本質的にそれからなり、
約75ギガヘルツ(GHz)から約110GHzの間の周波数で測定された、3.5から10の間の誘電定数ε’と、0.25から5の間の散逸損失ε”とを有する熱可塑性組成物であって、
前記組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも50%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮し、
すべての成分の一つに合わせた重量パーセント値が100wt%を超えず、すべての重量パーセント値が前記組成物の全重量を基準にする、組成物。
【0092】
態様2. 前記組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する、態様1に記載の組成物。
【0093】
態様3. 前記炭素系充填剤が、4wt%から8wt%の量で存在し、前記組成物のモールド成形試料が、77GHzの周波数で少なくとも80%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、態様1または2に記載の組成物。
【0094】
態様4. 前記炭素系充填剤が、ASM D3037に準拠して決定された650m2/gから1500m2/gの比表面積と、ASTM D2414に準拠して決定された250ml/100gから500ml/100gの吸油量とを有する、態様1から3のいずれか一つに記載の組成物。
【0095】
態様5. 前記ポリ(フェニレンエーテル)がポリフェニレンオキシド(PPO)を含んでなる、態様1から4のいずれか一つに記載の組成物。
【0096】
態様6. 約1wt%から約10wt%の耐衝撃性改良剤成分をさらに含んでなる、態様1から5のいずれか一つに記載の組成物。
【0097】
態様7. 前記耐衝撃性改良剤成分がスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンゴムを含んでなる、態様6に記載の組成物。
【0098】
態様8. 0.01wt%から約5wt%のポリエチレンポリマーをさらに含んでなる、態様1から7のいずれか一つに記載の組成物。
【0099】
態様9. 前記ポリエチレンポリマーが直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を含んでなる、態様8に記載の組成物。
【0100】
態様10. 自由空間法に従って決定された、約75GHzから110GHzの周波数での約-5デシベル毎センチメートル(dB/cm)から-110dB/cmの間の減衰定数を有する、態様1から9のいずれか一つに記載の組成物。
【0101】
態様11. 自由空間法に従って決定された、約75GHzから110GHzの周波数での約5dBから約50dBの全遮蔽有効度を有する、態様1から10のいずれか一つに記載の組成物。
【0102】
態様12. 自由空間法に従って決定された、約75GHzから110GHzの周波数での入射放射の約40%から約90%の間の、透過モードで測定されるマイクロ波吸収電力を有する、態様1から11のいずれか一つに記載の組成物。
【0103】
態様13. SABIC法に準拠して決定される、2.55E+14オーム.cm未満の体積電気抵抗率を有する、態様1から12のいずれか一つに記載の組成物。
【0104】
態様14. 構成要素(b)の炭素系充填剤とは異なる少なくとも一つのさらなる炭素系充填剤をさらに含んでなる、態様1から13のいずれか一つに記載の組成物。
【0105】
態様15. SABIC法に準拠して決定される、約5wt%から約13wt%の炭素系充填剤を含んでなり、1.0E+3オーム.cm未満の体積電気抵抗率を有する、態様1から14のいずれか一つに記載の組成物。
【0106】
態様16. 態様1から15のいずれか一つに記載の組成物を含んでなる物品。
【0107】
態様17. 自動車用センサの内部または外部部品を含んでなる、態様16に記載の物品。
【0108】
態様18. 前記内部または外部部品が、レーダーセンサ、カメラ、または電子制御ユニット(ECU)を含んでなる、態様17に記載の物品。
【実施例】
【0109】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、装置、および/または方法がいかにして製造され評価されるかの完全な開示および記載を当業者に提供するように提示されるものであり、純粋に例示的であることが意図され、開示を限定することは意図されないものである。数(例えば、量、温度など)に関して正確性を保証するよう努力がなされているが、幾分かの誤差および偏差を考慮に入れることが望ましい。別途指示されているのでない限り、部は重量部であり、温度は℃であるか、または周囲温度であり、圧力は大気圧であるか、または大気圧に近い。別途指示されているのでない限り、組成に言及するパーセンテージはwt%に関するものである。
【0110】
反応条件、例えば、成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、および他の反応範囲、ならびに記載される工程から得られる製造物の純度および収率を最適化するのに使用できる条件の多数の変形形態および組み合わせが存在する。そのような工程条件を最適化するには、妥当で定型的な実験しか必要でないであろう。
【0111】
表2に列挙した成分を含む実施例組成物および比較組成物を準備した:
【0112】
【0113】
実施例の組成物および比較組成物の組成を表3に示す:
【0114】
【0115】
表4に、組成物の様々な誘電特性を示す。比較組成物C1.2は、その高い炭素含有量のせいで、押出成形して試験することができなかった:
【0116】
【0117】
表4の6インチ×8インチ×1/8インチのモールド成形試料のそれぞれの実際の厚さを20点で測定し、試料の平均厚さを以下の:C1.1(3.260mm)、Ex1.1(3.227mm)、Ex1.2(3.289mm)、Ex1.3(3.272mm)、Ex1.4(3.302mm)、およびEx1.5(3.305mm)のように定めた。
【0118】
これらの組成物の体積電気抵抗率特性を表5に示す:
【0119】
【0120】
組成物の体積電気抵抗率を測定する「SABIC法」は、63ミリメートル(mm)の公称長さ、12.35ミリメートルの幅、3.18ミリメートルの厚さを有する材料のモールド成形棒を使用することを含む。よって、この棒の断面積(幅×厚さ)は39.27mm2、すなわち0.3927cm2である。棒の断面/長さは、0.3927cm2/6.3cm、すなわち0.0623cmである。棒の両端は、きれいな切断面を作り出すために液体窒素中で極低温破壊され、棒の両端は端効果をなくすために銀系の塗料で塗装されている。銀で塗装した棒の両端間の抵抗(オームの単位)をオーム計で測定し、ついで、棒の断面をその長さで除算した比(cm2/cm、すなわちcmの単位)を、測定した抵抗(オームの単位)に乗算することによって、体積電気抵抗率(オーム.cmの単位)を計算する。ASTM D257法は、40.79の補正係数と共に使用される。
【0121】
データから、炭素含有量が増加するにつれて電気抵抗率が減少する(電気伝導率が増加する)ことが観測される。組成物の様々な誘電特性を示すグラフを
図2A~12に示す。具体的には、
図2Aおよび2Bは、Wバンドにおける周波数の関数として、組成物についての複素誘電率の実数部および虚数部(それぞれ、誘電率の実数部ε’および誘電率の虚数部ε”)を示している。周波数は、75から110ギガヘルツ(GHz)の間で測定した。示されているとおり、ε’およびε”は、試験された周波数で、カーボンブラック含有量が増加するにつれて高くなっている。
【0122】
図3Aおよび3Bはそれぞれ、減衰および全遮蔽有効度を示している。データが示すとおり、材料中の炭素レベルが増加する(マイクロ波放射を捕捉するさらに多くの炭素粒子が存在する)場合には、より多くのマイクロ波エネルギーが減衰または遮蔽されるので、カーボンブラック含有量が増加するにつれて減衰および全遮蔽有効度はともに増加する。減衰の値における負の符号はエネルギー損失を表し、これは炭素系材料の存在に起因して失われたエネルギー量(材料の単位厚さあたりのdB)である。
【0123】
金属裏打ち反射モードにおける帰還損失を
図4に、金属裏打ち反射モードおよび透過モードにおけるパーセント吸収電力をそれぞれ
図5Aおよび5Bに示す。
図1Bが図示するとおり、金属裏打ち反射モードで評価される試料の場合には、金属プレート(アルミニウム、ステンレス鋼、または同類のもの)が、試験下の材料と受信アンテナ(
図1Bにおけるアンテナ2)の間に配置されて、試料を通過するいかなるエネルギー透過をも遮断し、よって、アンテナ1から放射されるいかなる放射のアンテナ2への到達をも防ぐ。この測定モードでは、マイクロ波を高度に反射する金属シートが試料の背後に追加されることによって、試料を透過する放射がほぼ完全に除去されるので、材料によって吸収された放射と材料から反射された放射のみが測定される。金属プレートがあることによって、そうでなければ材料を透過することで失われたはずの放射が材料に戻され、この反射されたエネルギーの一部が材料に吸収され戻されることになり、よって、反射(または帰還)損失の量が増加する。
図4は、試料の背後に金属プレートを使用して、試料を透過する放射を遮断した場合に失われる反射量(dB単位)(すなわち得られた吸収であり、透過は無し)を示している。このグラフは、反射が失われる(すなわち得られた吸収が最大になる)具体的な周波数も示している。例えば-30dBの帰還損失は、99.9%の吸収効率と等価である(金属プレートがあるので透過率はゼロ)。同様に-20dBの帰還損失は99%の吸収効率と等価である。
【0124】
図5Aおよび5Bは、本開示の組成物について、金属裏打ち反射モードおよび透過モードにおけるパーセント吸収電力をそれぞれ示している。これらのグラフが示すとおり、所与の周波数で所与の組成物によって吸収される放射の量は、金属裏打ち反射モードを使用して測定された場合では、透過モードを使用して実行された同一測定と比較して概して高い。この結果は、上記の説明と一致しており、これは、金属裏打ち反射モードでは、金属板状体の存在によりさらなる吸収がもたらされ、この金属板状体によって、そうでなければ二次吸収のせいで試料に戻され失われたはずのエネルギーの向きが変えられるためである。
【0125】
図6~11は、比較組成物および実施例組成物について、透過モードで測定された吸収、反射、および透過パーセント電力を示している。77GHzにおいて、炭素充填量の関数として、これらの組成物について透過モードで測定された吸収、反射、および透過パーセント電力を、
図12に示す。パーセント反射とパーセント透過はどちらも、実数部および虚数部を有するどちらも複素数である、そしてベクトルネットワークアナライザを使用して得られる、散乱パラメータS
11(反射)とS
21(透過)の測定値から、直接計算することができる。パーセント吸収は直接測定することができないので、100%(試料に入射する放射の総量)と、パーセント反射およびパーセント透過の総和との差として各周波数について計算される。多くの用途では、透過モードで測定を行う場合、パーセント吸収電力を最大にし、パーセント反射電力とパーセント透過電力を最小にすることが望ましい。77GHz周波数で得られた
図12のデータから、炭素含有量が増加するにつれて、試料を透過する電力量が減少することが観測されるが、これは、試料内部にマイクロ波放射を捕捉するためにさらに多く炭素粒子が利用でき、よって受信アンテナに到達するエネルギーを減少させるからである。同様に、炭素含有量が増加すると、試料から反射される電力量が増加するが、これは、材料がより導電性になり、マイクロ波を透過する可塑物ではなくマイクロ波を反射する金属として、さらに誘電性の挙動をするからである。透過モードで測定されたパーセント吸収電力を、組成物中に存在するカーボンブラックに関してプロットしたこのグラフは、予想外の傾向を示している。このグラフが示すとおり、組成物によって吸収される電力量は最初、配合物に加えられる炭素の量が比較的少ない(2および4wt%)場合に増加し、炭素の濃度が約6wt%のときに最大になる。さらに、炭素の濃度が約6wt%より増加すると、77GHz周波数のマイクロ波エネルギーを吸収する能力を低下させた材料が生じる。したがって、77GHzでなされた観測結果からは:(a)調査したカーボンブラックの範囲(2wt%から12wt%)でマイクロ波吸収有効度の最大値が存在する可能性があること;(b)この最大値は、4wt%から8wt%の間の炭素充填量で生じる可能性があること;(c)この濃度範囲で吸収されるエネルギー量はほぼ83%である可能性があり、これは全く予想外のことであること、
が示唆される。
【0126】
本開示の実施例および比較例で得られた実験結果から、75から110GHzの間の周波数でこれらの組成物の誘電特性に関して以下の観測結果:
●複素誘電率の実数部(誘電定数)が、約2から10の間であったこと;
●複素誘電率の虚数部(誘電損失)が、約0.05から5の間であったこと;
●減衰が、約-2dB/cmから-100dB/cmの間であったこと;
●遮蔽有効度が、約0.5dBから50dBの間であったこと;
●透過モードで測定されたマイクロ波吸収電力が、入射放射の約20%から90%の間であったこと;
●配合物中のENSACO(登録商標) 360Gカーボンブラックの量を増加させると、材料の複素誘電率の実数部および虚数部の両方が増加したこと;
●配合物中のENSACO(登録商標) 360Gカーボンブラックの量を増加させると、減衰定数および全遮蔽有効度の両方が増加したこと;
●77GHzで材料が透過させる電力量は、2wt%のカーボンブラックでの約70%から、12wt%のカーボンブラックでの1%の何分の一かにまで減少したこと;および
●77GHzで材料が吸収する電力量は、2wt%のカーボンブラックでの約30%から、12wt%のカーボンブラックでの約73%まで増加し、約6wt%のカーボンブラックで最大83%になったこと、
が得られた。
【0127】
上記は、例示的なものであって制限的なものではないことが意図される。例えば、上記の実施例(またはそれらの一つまたは複数の態様)は、互いに組み合わせて使用してもよい。他の態様は、例えば、上記を検討した時点で当業者によって、使用することができる。要約書は、米国特許法施行規則1.72(b)を遵守するよう提供されて、読者が技術的開示の本質を速やかに把握できるようにするものである。これはまた、特許請求の範囲の趣旨または意味の限定に使用されないであろうという理解のもとで提出される。また、上の、発明を実施するための形態では、開示を簡素化するために、様々な特徴がいっしょにグループ化される場合がある。これは、特許請求されていない開示された特徴がいずれの請求項にも必須であることを意図しているとは解釈されないのが望ましい。むしろ、発明の主題が、特定の開示された態様の全特徴よりも少ない特徴の中にある場合がある。したがって、以下の特許請求の範囲は、例または態様として、発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は別個の態様としてそれ自体で独立しており、そのような態様は、様々な組み合わせまたは並び換えで互いに組み合わせることができることが企図される。本開示の範囲は、そうした請求項が権利を与えられた、均等物の可能な限り広い範囲と共に、添付の特許請求の範囲を参照しつつ決定されるのが望ましい。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンを含んでなる、約82wt%から約92wt%の熱可塑性樹脂と;
(b)ASTM D2414に準拠して試験された、少なくとも650平方メートル毎グラム(m
2/g)の比表面積、および少なくとも250ミリリットル毎100グラム(ml/100g)の吸油量を有する、約3wt%から約13wt%の炭素系充填剤と、
を含んでなり、
約75ギガヘルツ(GHz)から約110GHzの間の周波数で測定された、3.5から10の間の誘電定数ε’と、0.25から5の間の散逸損失ε”とを有する熱可塑性組成物であって、
前記組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも50%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮し、
すべての成分の一つに合わせた重量パーセント値が100wt%を超えず、すべての重量パーセント値が前記組成物の全重量を基準にする、組成物。
【請求項2】
前記組成物の1/8インチ厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って約75GHzから約110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭素系充填剤が、4wt%から8wt%の量で存在し、前記組成物のモールド成形試料が、77GHzの周波数で少なくとも80%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記炭素系充填剤が、ASM D3037に準拠して決定された650m
2/gから1500m
2/gの比表面積と、ASTM D2414に準拠して決定された250ml/100gから500ml/100gの吸油量とを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリ(フェニレンエーテル)がポリフェニレンオキシド(PPO)を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約1wt%から約10wt%の耐衝撃性改良剤成分をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記耐衝撃性改良剤成分がスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンを含んでなる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
0.01wt%から約5wt%のポリエチレンポリマーをさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
自由空間法に従って決定された、約75GHzから110GHzの周波数での約-5デシベル毎センチメートル(dB/cm)から-110dB/cmの間の減衰定数を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
自由空間法に従って決定された、約75GHzから110GHzの周波数での約5dBから約50dBの全遮蔽有効度を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
自由空間法に従って決定された、約75GHzから110GHzの周波数での入射放射の約40%から約90%の間の、透過モードで測定されるマイクロ波吸収電力を有する、請求項1から8のいずれかに一項に記載の組成物。
【請求項12】
SABIC法に準拠して決定される、2.55E+14オーム.cm未満の体積電気抵抗率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
構成要素(b)の炭素系充填剤とは異なる少なくとも一つのさらなる炭素系充填剤をさらに含んでなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物を含んでなる物品。
【請求項15】
自動車用センサの内部または外部部品を含んでなる、請求項14に記載の物品。
【国際調査報告】