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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
F16J15/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539754
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2021063005
(87)【国際公開番号】W WO2022140089
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/129,148
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523238852
【氏名又は名称】デュポン スペシャルティ プロダクツ ユーエスエー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 哲久
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA12
3J040BA02
3J040BA03
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA41
3J040FA02
3J040FA07
3J040HA06
3J040HA07
3J040HA15
(57)【要約】
本明細書に提供されるのは、2つの部品から形成されたガスケット(100)であり、第1の部品(11)はエラストマーから作製されており、第2の部品(21)は、エラストマーよりもガス透過が少なく、可撓性が低い特性を有する材料から作製されており、第2の部品は、2つの構成要素(31、41)間におけるガス透過の方向に対して垂直又は実質的に垂直な方向に、第1の部品に固定されている。ガスケットは、低分子ガスの透過を低減又は防止することができ、したがって、ガスケットは、例えば、半導体ウェーハプロセス技術用の装置のシールに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス透過から2つの構成要素を密封するためのガスケットであって、前記ガスケットが、
(A)エラストマーを含む第1の部品と、
(B)前記エラストマーよりもガス透過が少なく、可撓性が低い材料を含む第2の部品と、
を含み、
前記第2の部品は前記第1の部品に固定されており、前記第1の部品及び前記第2の部品は、前記ガスケットが前記2つの構成要素の間にシールとして設置されたときに、前記2つの構成要素の間のガス透過が減少する又は防止されるように、前記第1の部品が前記2つの構成要素の真空側の近位にあり、前記第2の部品が前記2つの構成要素の外部雰囲気側の近位にあるように位置している、
ガスケット。
【請求項2】
前記第2の部品は、前記2つの構成要素間におけるガス透過の方向に対して垂直方向に位置する、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記第1の部品と前記第2の部品の接触部の形状は円筒形である、請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記第1の部品は、フッ素化エラストマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項5】
前記第1の部品は、パーフルオロエラストマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項6】
前記第2の部品は、金属又は金属合金を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項7】
前記第2の部品は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項8】
アルミニウム又はアルミニウム合金の接触部表面は細孔を有し、前記エラストマーの少なくとも一部は、圧縮成形によって前記細孔に挿入されている、請求項7に記載のガスケット。
【請求項9】
ガス透過から2つの構成要素を密封するためのガスケットを製造する方法であって、前記ガスケットが、(A)エラストマーから作製された第1の部品と、(B)金属又は金属合金から作製された第2の部品とを含み、前記方法が、
(a)金属又は金属合金から作製された金属部品を用意する工程であって、パーフルオロエラストマーに結合される前記金属部品の表面は、化学的又は機械的に処理される、工程と、
(b)硬化性パーフルオロエラストマー組成物を前記金属部品の前記表面上に圧縮成形する工程と、
を含む、方法。
【請求項10】
2つの構成要素と請求項1~8のいずれか一項に記載のガスケットとを含む密封構造体であって、各構成要素は、互いに平行に面する表面を有し、
前記ガスケットは、前記構成要素をガス漏れから密封するために、前記2つの表面の間に配置されており、
前記第2の部品は、前記2つの構成要素間におけるガス透過の方向に対して垂直方向に、前記第1の部品と固定されている、
密封構造体。
【請求項11】
前記第1の部品は、線形圧縮率3~40%まで圧縮されている、請求項10に記載の密封構造体。
【請求項12】
前記第2の部品は、各構成要素の前記表面と連続的な接触を形成している、請求項10又は11に記載の密封構造体。
【請求項13】
半導体製造プロセス又はフラットパネルディスプレイ製造プロセスで使用される装置の高真空シールに使用される、請求項10、11、又は12のいずれか一項に記載の密封構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高真空条件下でのガス透過を防止するガスケット(特にOリング)及びガスケットを形成する方法に関する。ガスケットは、半導体ウェーハプロセス技術で使用される密封構成要素として有用である。
【背景技術】
【0002】
本発明が関係する技術分野をより詳細に説明するために、いくつかの特許及び刊行物が本明細書で引用される。これらの特許及び刊行物のそれぞれの開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
密封構成要素(Oリング、ガスケットなど)は、高温並びに多くの種類の有機溶剤及びガス(その一部は腐食性、反応性、又はそうでなければ侵食性であり得る)などの過酷な条件に曝される。フッ素化エラストマーは望ましい弾性を有し、化学的反応性が低く、耐熱性が高いことから、フッ素化エラストマーは様々な産業で密封構成要素に広く使用されている。フッ素化エラストマーから形成された密封構成要素を使用した装置は、高い真空条件又は加圧条件を達成することができる。なぜなら、そのような密封構成要素は、そのような過酷な条件下で使用される場合でも効果的に機能することができるからである。
【0004】
真空又は蒸着プロセス機器用のチャンバシールなどの、半導体製造技術で使用される密封構成要素は、特殊なガス(例えば、蒸着プロセスガス又はチャンバクリーニングガス)及びプラズマに曝される。半導体ウェーハプロセスは高温下で行われるため、そのような密封構成要素には高い耐熱性も要求される。フッ素化エラストマーは、上記の優れた特性に基づくと、過酷な条件下で使用するための良い候補となるが、ガス透過が課題である。なぜなら、フッ素化エラストマーは、特に高温下で使用される場合、低分子のガス(例えば、O又はN)をわずかに(1×10-4Pa)透過させるからである。金属はガス透過を防止することができることから、そのような目的のために全金属ガスケットが使用されることがある。しかしながら、金属の可撓性は比較的低いことから、全金属ガスケットは、最適に密封するためには、所定の位置に慎重に着座させてボルトで固定する必要がある。更に、金属ガスケットが使用される場合、金属ガスケットに接触するフランジを鏡面仕上げまで研磨しなければならない。別の従来技術は、一方が耐熱性の高いパーフルオロエラストマーガスケット、他方がガス透過の少ない部分フッ素化エラストマーガスケットの2つのガスケットの組み合わせを使用するものである。しかしながら、この2つのシールの間には窒素ガスパージが必要であるため、この技術の実施は容易な作業ではない。したがって、低分子のガスの透過を防止することができる可撓性の密封構成要素が依然として緊急に必要とされている。
【0005】
米国特許第9,290,838(B)号明細書は、Oリングの表面の少なくとも一部分に展性金属コーティングがコーティングされた拡散防止金属コーティングOリングを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に提供されるのは、半導体ウェーハプロセス技術に有用なガスケットである。ガスケットは、2つの構成要素の間に位置し、2つの構成要素の間における低分子(例えば、O又はN)のガスの透過を防止又は低減することができる。本技術のガスケットは、2つの部品から形成されている。第1の部品は、エラストマー(フルオロエラストマー、特にパーフルオロエラストマー)から作製されており、第2の部品は、ガス透過性の低い剛性材料(金属など)から作製されている。第2の部品は、第1の部品と強固に固定されているため、2つの構成要素の間のガス透過は実質的に低減又は完全に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】密封されるべき2つの構成要素の間に位置する本発明のガスケットの一実施形態の一部分の断面図である。
図1a図1の断面図であり、矢印は、2つの構成要素をガスケットで密封する印加力を示す。
図2】密封されるべき2つの構成要素の間に位置する本発明のガスケットの別の実施形態の一部分の断面図である。
図2a図2の断面図であり、矢印は、2つの構成要素をガスケットで密封する印加力を示す。
図3】密封されるべき2つの構成要素の間に位置する本発明のガスケットの更に別の実施形態の一部分の断面図である。
図3a図3の断面図であり、矢印は、2つの構成要素をガスケットで密封する印加力を示す。
図4】本発明のガスケットの平面図である。
図4a】本発明のガスケットの側断面図である。
図5】2つの構成要素と密封係合した本発明のガスケットの側断面図である。
図5a】2つの構成要素と密封係合した本発明のガスケットの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のガスケットは、2つの部品、すなわち、(A)エラストマーから作製された第1の部品と、(B)エラストマーよりもガス透過が少なく、可撓性が低い特性を有する材料から作製された第2の部品とを含む。
【0009】
第1の部品は、エラストマーから作製されている。特に、フッ素化エラストマーが、望ましい弾性、低い化学的反応性、良好な耐溶剤性、及び高い耐熱性など、その優れた特性から、好ましい。フルオロエラストマー(FKM)及びパーフルオロエラストマー(FFKM)を使用することができる。従来のフルオロエラストマーは、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、又は例えばフルオロ(メチルビニルエーテル)などの別の部分フッ素化コモノマー及び硬化部位モノマーの共重合単位を含む。従来のパーフルオロエラストマーは、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)及び硬化部位モノマーの共重合単位を含む。好適なフルオロエラストマーとしては、Bishらに発行された米国特許第8,765,876号明細書に記載されているものが挙げられるが、これに限定されない。フルオロエラストマーは、Kaiser,R.J,et al.,“Synthesis of Transparent Fluorocarbon Elastomers:Effect of Crosslinker Type and Electron Beam Irradiation Level on Physical and Mechanical Behavior”,Journal of Applied Polymer Science,Vol.27,pages 957-968(1982)、及びそこに引用されている参考文献に記載されている方法によって合成されてもよい。好適なパーフルオロエラストマーとしては、MacLachlanらに発行された米国特許第6,281,296号明細書及びKohtaro Takahashiに発行された米国特許第6,191,208号明細書に記載されているものが挙げられるが、これに限定されず、これらの参考文献に記載されている方法によって調製されてもよい。
【0010】
第1の部品は、その望ましい弾性特性により、ガス漏れ(すなわちガス拡散)を防止し、ガスケットを使用している装置内の高圧又は高真空を維持するように機能する。第1の部品は可撓性材料(エラストマー)から作製されているため、ガスケットを密封構成要素に適合させるときに、密封構造体の可撓性及び密封構造体の表面の滑らかさを提供する。第1の部品は、ガスケットが密封構造体で使用される場合、線形圧縮率3~40%、好ましくは線形圧縮率10~30%まで圧縮され、この線は、ガスケットの半径に垂直な、第1の部品の断面の最大直径である。この線は、図4a及び図5に例えばa-aとして、及び図1a、図2a、及び図3aに矢印として示される。本明細書で使用する場合、「垂直」という用語は、線a-aに平行な方向を指す。
【0011】
第2の部品は、エラストマーよりもガス透過が少なく、可撓性が低い特性を有する材料から作製されている。この要件を満たすあらゆる材料を使用することができるが、金属及び金属合金が、その剛性及び低いガス透過性から、好ましい。チャンバクリーニングガス又はプラズマに対する反応性が低い金属又は金属合金がより好ましい。この点において、アルミニウム又はアルミニウム合金が使用され得る。第2の部品での使用のために注目すべき金属は、ステンレス鋼304、316、及びアルミニウムA1000系、A5000系、及びA6000系である。低分子ガスに対するこれらの金属の透過性は、本明細書に記載される厚さで使用される場合、ゼロ又は少なくとも実質的にゼロであると考えられる。本明細書で使用する場合、「実質的にゼロ」という用語は、ゼロよりも大きく、且つ1×10-8Pa以下の圧力を指す。
【0012】
第2の部品は厚さを有する。厚さは、第1の部品の大きさ及び第2の部品の材料に応じて異なる。厚さは、密封されるべき2つの構成要素の間にガスケットが位置するときに、図1a、図2a及び図3aの矢印として示される圧縮力によって第2の部品が破損しない又は不可逆的な曲げ変形を受けないようなものとすべきである。このような破壊又は変形は、目視検査で観察されることがある。或いは、高いガス透過率は、第2の部品が損傷していることを示すことがある。
【0013】
例えば、第2の部品がアルミニウムから作製されている場合、アルミニウムの厚さは、線a-aに沿ったエラストマー(第1の部品)の断面の直径が3.5±0.10mmであるとき、好ましくは約0.2~約10mmである。この場合も、高いガス透過率は、第2の部品の厚さが不十分であることを示すことがある。
【0014】
第2の部品は、低分子のガスに対するガス透過バリアとして機能する。エラストマーは、空気の漏れを基本的に防ぐことはできるが、酸素ガス又は窒素ガスなどの少量の低分子ガスはエラストマーを透過することができる。真空チャンバ内で窒素又は酸素の1×10-4Torrの圧力を生じさせる透過性ですら、蒸着プロセス又は半導体ウェーハプロセスなどのいくつかのプロセスを破壊するのには十分である。
【0015】
第2の部品は可撓性の低い材料から作製されているが、密封構造体の両構成要素の表面と完全に接触しているべきである。完全な接触を確実にするために、第2の部品は、垂直方向に、すなわち、図4a及び図5にa-aとして並びに図1a、図2a、及び図3aに矢印として示される線に沿って、線形圧縮率5%未満まで圧縮され得る。
【0016】
ガスケットの第1の部品は、ガスケットの第2の部品に強固に結合されている必要がある。
【0017】
第1の部品がパーフルオロエラストマーから作製されており、第2の部品が金属又は金属合金から作製されている場合、ガスケットは、以下の工程、すなわち、
(a)ガスケットの金属部品(これは、金属及び金属合金を含む第2の部品を意味する)を用意する工程であって、パーフルオロエラストマーに結合される金属部品の表面は、化学的又は機械的に処理される、工程と、
(b)硬化性パーフルオロエラストマー組成物を金属部品の表面上に圧縮成形する工程と、
によって形成することができる。
【0018】
工程(a)において、金属部品の表面を化学的又は機械的に処理し、強固な金属-パーフルオロエラストマー結合を形成する。パーフルオロエラストマーは化学的に不活性であるため、パーフルオロエラストマーに対する金属表面の結合は困難である。金属表面の化学的前処理の典型的な例は、接着プライマー又は結合剤である。このような化学薬品を金属部品の表面上にコーティングして、パーフルオロエラストマーと金属部品との間の結合強度を向上させることができる。金属とパーフルオロエラストマーとの間の強固な結合の別の例は、金属の表面を粗面処理して、例えば傷又は細孔を生じさせることによるアンカー効果の使用である。酸エッチング、亜鉛めっきクロメート処理、サンドブラスト、レーザエッチング、及び陽極処理を使用することができる。金属がアルミニウム又はアルミニウム合金である場合、アルミニウム(合金)の表面を陽極酸化して多孔質表面を形成するために、Minowaらによる欧州特許第1,855,864(B)号明細書に開示されている方法を使用することができる。
【0019】
工程(b)において、硬化性パーフルオロエラストマー組成物を使用して、パーフルオロエラストマー部品(すなわち、第1の部品)を金属部品上に形成する。通常、パーフルオロエラストマーは、少なくとも2つの主パーフルオロモノマーの共重合単位を有する非晶質高分子組成物である。典型的には、主コモノマーの一方はパーフルオロオレフィンであり、他方はパーフルオロビニルエーテルである。代表的なパーフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンが挙げられる。好適なパーフルオロビニルエーテルとしては、式(I)のものが挙げられる。
CF2=CFO(RfO)(Rf’O)Rf” (I)
式中、Rf及びRf’は、2~6個の炭素原子の異なる直鎖又は分岐パーフルオロアルキレン基であり、m及びnは独立して0~10であり、Rf”は、1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である。
【0020】
他の適切なフルオロエラストマー及びパーフルオロエラストマーは、上記で引用したBish、Kaiser、MacLachlan、及びTakahashiの文献に記載されている。
【0021】
硬化性パーフルオロエラストマー組成物は、金属部品の多孔質表面上に圧縮成形される。モールドは、ガスケットの形状である。金属部品は、硬化性パーフルオロエラストマー組成物がモールド内に配置される前に、モールド内に配置される。成形は、パーフルオロエラストマーを少なくとも部分的に硬化(すなわち、加硫又は架橋)させて金属表面に結合させるのに十分な時間にわたって、加圧下及び高温で行われる。結合は、パーフルオロエラストマー化合物が、架橋前に、加圧下で金属の多孔質表面構造に流入することによって強化される。任意選択的に、結果として得られたパーフルオロエラストマー-金属部品は、エラストマーの物理的特性及び金属表面に対する硬化エラストマーの結合強度を向上させるのに十分な時間にわたって、高温でポストキュアされてもよい。ポストキュアは、空気オーブン内又は不活性雰囲気中で行われてもよい。典型的な圧縮成形条件は、180~220℃の温度で4~8分である。典型的なポストキュア条件は、250~315℃の温度で5~48時間である。同様の成形プロセスは、上記で引用したMacLachlan特許及びTakahashi特許に記載されている。
【0022】
例えば、真空チャンバ又は加圧容器のシールを形成するために使用される場合、ガスケットは、2つの構成要素の間に配置されて、2つの構成要素の隙間を密封する。好ましくは、第1の部品及び第2の部品は、ガスケットが2つの構成要素の間にシールとして設置されたときに、2つの構成要素の間のガス透過が減少する又は防止されるように、第1の部品が2つの構成要素の真空側の近位にあり、第2の部品が2つの構成要素の外部雰囲気側の近位にあるように位置している。
【0023】
ここで、図の全体を通して同様の参照番号が対応する構造を示す図面を参照すると、特に、図1を参照すると、本発明のガスケット(100)の一実施形態の断面図が示されている。ガスケット(100)は、エラストマー(11)と、金属(21)、好ましくはアルミニウムとから形成され、これらは互いに強固に接続されている。ガスケット(100)は、2つの構成要素(31、41)の間に位置し、2つの構成要素(31、41)の間の隙間を密封している。ガスケットが半導体製造技術で使用される場合、ガスケット(100)の内側のエラストマー側(11)は、真空に、又は密封された構成要素の内部(50)に存在する特殊なガス(蒸着プロセスガス又はチャンバクリーニングガスなど)及びプラズマに曝される。第2の部品である金属又は金属合金(21)は、ガス透過を防止するために、ガスケット(100)の外側に位置する。金属又は金属合金部品(21)は、2つの構成要素(31、41)の表面に垂直な垂直方向に位置する。
【0024】
換言すれば、第2の部品(21)は第1の部品(11)に固定されており、第1の部品及び第2の部品は、ガスケット(100)が2つの構成要素(31、41)の間にシールとして設置されたときに、2つの構成要素(31、41)によって画定される空間(50)へのガス透過が減少する又は防止されるように、第1の部品(11)が2つの構成要素(31、41)の真空又は処理側(50)の近位にあり、第2の部品(21)が2つの構成要素(31、41)の外部雰囲気側の近位にあるように位置している。
【0025】
図2は、金属部品(21)とエラストマー部品(11)とから形成されたガスケット(100)の別の実施形態の断面図を示す。図1と同様に、金属部品は、外側に位置し、エラストマー部品は、ガスケットの内側(50)に位置する。加えて、ガスケットの断面図はほぼ円形である。有利なことに、図2に示されるガスケットの全体図は、フッ素化エラストマーから形成された従来のガスケット、例えばトーラス又はOリングの形状に類似している。したがって、図2に示されるガスケットは、従来の用途に適用することができ、現在の装置の密封構成要素(31、41)の構造を変更するための精巧で高価な設備更新を伴わずに、上述のような改良されたシールが提供される。
【0026】
特に、図1及び図2において、エラストマー(11)と金属(21)の接触部は、一定の直径を持つ円形断面と垂直軸線、すなわち、ガスケットの平面及び2つの構成要素(31、41)の表面に垂直な軸線とを有する円筒形である。
【0027】
ここで図3を参照すると、密封されるべき2つの構成要素(31、41)の間にガスケット(100)が位置する本発明の別の実施形態の断面図が示されている。図1及び図2と同様に、エラストマー部品(11)は、密封されたチャンバの内部(50)の近位に、ガスケットの内側に位置している。また、図2と同様に、ガスケット(100)の全体図は、従来のガスケットのものに類似している。しかしながら、図1及び図2の実施形態は、エラストマー(11)と金属(21)の接触部の形状によって、図3の実施形態から区別される。図3のエラストマーと金属の接触部は、一定の直径を持つ円形断面と垂直軸線、すなわち、2つの構成要素(31、41)の表面に垂直な軸線とを有する円筒形として正確に描写されていない。むしろ、この接触部は湾曲した形状である。その断面は円形であるが、その直径は、密封構成要素(31、41)の間の距離に対して一定ではない。エラストマー(11)と金属(21)との間の完全な接触及び適切な結合が本明細書に記載される方法によって達成され得ることを前提として、あらゆる形状の接触部が本方向での使用に適している。
【0028】
ここで図1a、図2a、及び図3aを参照すると、図1図2、及び図3の実施形態はそれぞれ、密封構成要素(31、41)に対して垂直方向に印加される密封力を示す矢印を加えて複製されたものである。図示の実施形態の3つ全てにおいて、第2の部品(21)は、2つの構成要素間におけるガス透過の方向に対して垂直方向に位置する。密封されたチャンバの外部からその内部(50)に移動するガスは、矢印によって示される垂直方向に垂直な成分を有するベクトルによって表される方向に移動しなければならない。
【0029】
当業者であれば、所定の線形圧縮における指定の大きさ及び方向を有する力の印加に適合した金属部品(21)を設計することが可能である。設計の選択には、金属部品(21)の金属及び断面の選択が含まれる。例えば、図1及び図1aのガスケット(100)と比較すると、図2及び図2aに示されるようなガスケット(100)は、典型的な力よりも大きな力を垂直方向に印加することが必要なシールに使用されることがあり、図3及び図3aに示されるようなガスケット(100)は、典型的な力よりも小さな力を垂直方向に印加することが必要なシールに使用されることがある。
【0030】
ここで図4を参照すると、ガスケット100の平面図は、ガスケット100の平面内の線b-b及び線c-cを示す。更に、エラストマー製部品11は、密封された構成要素(31、41)の内部50の近位にあり、密封された構成要素は、図4には示されていない。
【0031】
ここで図4aを参照すると、ガスケット100のこの断面図は、ガスケットの平面内の線b-b及び線c-cに垂直な垂直軸線a-aを示す。線b-b及び線c-cは、図4aには示されていない。
【0032】
ここで図5を参照すると、密封された構造は、2つの密封構成要素(31、41)とガスケット(100)とを含む。各構成要素(31、41)は、他方の構成要素の表面に平行な表面を有し、ガスケット(100)は、構成要素(31、41)を密封して内部(50)へのガス漏れを防止するために、2つの平行な表面の間に配置されている。第2の部品(21)は、構成要素(31、41)の平行な表面の方向に垂直な方向に、第1の部品(11)に固定されている。換言すれば、第2の部品(21)は、線a-aに平行な方向に、第1の部品(11)に固定されている。
【0033】
ここで図5aを参照すると、2つの構成要素(31、41)と密封係合したガスケット(100)の断面斜視図は、各構成要素(31、41)の表面と連続的な接触を形成している第2の部品(21)を示す。
【0034】
図4及び図5aにはトーラス又はOリングなどの円形のガスケットが示されているが、本発明のガスケットは、ガスケットに関して知られる又は密封されるべき機器の設計によって必要とされる任意の形状を有してもよい。ガスケットの他の従来の形状としては、楕円形、及び丸みを帯びた角を持つ矩形、例えば正方形が挙げられる。
【0035】
図面には示されていないが、いずれか又は両方の密封構成要素(31、41)には、本発明のガスケットによって密封される孔に加えて、1つ以上の孔が備えられていてもよい。これらの孔は、本発明のガスケット又は他の手段によって、ガス透過から密封され得る。例えば、密封構成要素(31、41)には、ガス入口弁、真空ポート、又はヒータ、圧力計、電極、及び温度プローブ、ラングミュアプローブ若しくはQMSプローブなどのプローブが挙げられるがこれらに限定されない器具が挿入され得る開口部用の孔が備えられていてもよい。
【0036】
以下に本発明を更に詳細に説明するための実施例を示す。本発明を実施するために現時点で考えられる好ましい形態を示すこれらの実施例は、本発明を例示することを意図し、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0037】
試験サンプル
試験サンプル1:図1に示す新規開発したガスケット
試験サンプル2:図2に示す新規開発したガスケット
試験サンプル3:パーフルオロエラストマーから形成された従来のOリング(FFKM製のAS568 228 Oリング)
試験サンプル4:フッ素化エラストマーから形成された従来のOリング(FKM製のAS568 228 Oリング)
【0038】
試験サンプル1及び試験サンプル2は、コキュア成形プロセスによって作製したFFKM(11)とアルミニウム(21)の結合部品であった。硬化性パーフルオロエラストマーは、上記で引用した米国特許第6,281,296号明細書及び米国特許第6,191,208号明細書及び欧州特許第1,855,864(B)号明細書に記載されている方法に従って調製した。結合方法は、欧州特許第1,855,864(B)号明細書によっても開示されている。試験サンプル3及び試験サンプル4は、市販のものから入手した。
【0039】
真空シールのガス透過の試験機器及び方法
試験-1
試験機器は、真空シール用のステンレス鋼のAS568 228 Oリングのサイズのフランジを有する真空チャンバである。真空ポンプ及びQMS(四重極質量分析器)がチャンバに備えられている。機器を200℃超まで加熱するために、リボンヒータをチャンバの周囲に取り付け、サーモスタットを有するマントルヒータをフランジの周囲に取り付けた。
【0040】
真空密封するために、試験サンプル(試験サンプル1、3及び4)の2部品ガスケットを機器のフランジに取り付けた。チャンバの周囲のリボンヒータを100℃に設定した状態で、チャンバを1×10-7Paの超真空レベルにした。リボンヒータは、チャンバを常時100℃で加熱し続ける。フランジの周囲のマントルヒータがオフのとき、チャンバの周囲のリボンヒータによる加熱によって、フランジ温度は52℃であった。真空ポンプを連続的に運転することによって真空を維持した。チャンバの周囲のヒータを100℃に設定したままで、フランジの周囲のマントルヒータによってフランジの周囲のヒータの温度を2.5℃/minの速度で200℃まで上昇させた。
【0041】
フランジの周囲のヒータの温度が100℃、150℃及び200℃を記録したときに、シールの透過から生じた真空チャンバ内の空気圧をQMSによって測定した。これらの温度において、N及びOの分圧も測定した。
【0042】
試験-2
試験サンプル2を実施するために、アルミニウム製のフランジも用意した。ステンレス鋼とアルミニウムとの間の熱伝導率の違いから、測定開始温度は66℃であった。温度熱サイクルに対する再現性を確認するために、透過測定を10回実施した。フランジはアルミニウム製であるため、試験後に、繰り返しの使用に不適当な物理的損傷がフランジにないことを確認するために、試験サンプル2の表面をItasca,ILに所在のKEYENCE Corp.の3D画像測定器型式VHX-7000によって検査した。表面の傷は認められなかった。
【0043】
ガス透過(空気、N、及びO)率の試験結果。
試験-1
空気透過率の結果を表1に示し、N透過率の結果を表2に示し、Oの結果を表3に示す。ここで報告されるガス透過率の単位は全て、パスカル(Pa)である。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
試験-2
空気透過率の結果を表4に示し、N透過率の結果を表5に示し、Oの結果を表6に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
試験2の終了後、フランジの損傷は認められなかった。
【0052】
本発明の特定の好ましい実施形態が上で説明され、具体的に例示されてきたが、本発明がそのような実施形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の多くの特徴及び利点は、本発明の構造及び機能の詳細と一緒に前述の説明で示されているが、本開示は、例示的なものにすぎず、添付の特許請求の範囲が表現される用語の広範な一般的意味によって示される最大限まで、本発明の原理内において、詳細、とりわけ部品の形状、サイズ及び配置に関して変更形態がなされ得ることが理解されるべきである。
図1
図1a
図2
図2a
図3
図3a
図4
図4a
図5
図5a
【国際調査報告】