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特表2024-501053リサイクル廃プラスチックから生成された熱分解油をバージンオレフィンおよび石油化学中間体に変換するための真の循環型ソリューションのための接触クラッキング方法
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  • 特表-リサイクル廃プラスチックから生成された熱分解油をバージンオレフィンおよび石油化学中間体に変換するための真の循環型ソリューションのための接触クラッキング方法 図1
  • 特表-リサイクル廃プラスチックから生成された熱分解油をバージンオレフィンおよび石油化学中間体に変換するための真の循環型ソリューションのための接触クラッキング方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】リサイクル廃プラスチックから生成された熱分解油をバージンオレフィンおよび石油化学中間体に変換するための真の循環型ソリューションのための接触クラッキング方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 51/06 20060101AFI20231227BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20231227BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C10G51/06
C10G11/18
C10G1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539804
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 US2021052367
(87)【国際公開番号】W WO2022146513
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/131,484
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522005594
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ポルテーラ, ホアキン アントニオ デ, オリベイラ
(72)【発明者】
【氏名】マリ, ラーマ, ラオ
(72)【発明者】
【氏名】グローテン, ウィリブロード, エー.
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129AA03
4H129BA04
4H129BA07
4H129BB03
4H129BC12
4H129BC33
4H129CA03
4H129CA08
4H129CA22
4H129KA02
4H129KB02
4H129KC05X
4H129KC06X
4H129KC09X
4H129KC10X
4H129KC14X
4H129KC16X
4H129KC17X
4H129KC28X
4H129KD02X
4H129KD06X
4H129KD07X
4H129KD09X
4H129KD30X
4H129MA02
4H129MA11
4H129MB03A
4H129NA26
4H129NA27
4H129NA43
(57)【要約】
原材料を生成するためのおよび真の循環型ポリマーを生成するための方法およびシステム。該システムおよび方法は、プラスチック廃棄物熱分解油などの廃棄物由来炭化水素流を第1反応器システム内で触媒混合物で処理すること、および化石ベース原料を第2反応器システム内で触媒混合物で処理することを含んでいてもよい。触媒混合物は、第1および第2反応器システムのそれぞれに、共通の触媒再生器から供給されてもよい。化石ベース炭化水素生成物を含む排出液は、第2反応器システムから回収されてもよく、廃棄物由来炭化水素生成物を含む排出液は、第1反応器システムから回収されてもよい。分離後、第1および第2反応器システムのそれぞれからの使用済み触媒は、共通の触媒再生器に戻されてもよい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真の循環型ポリマーを生成するための原材料を生成するための方法であって、
プラスチック廃棄物熱分解油を第1反応器システム内で触媒混合物で処理すること、
化石ベース原料を第2反応器システム内で上記触媒混合物で処理すること、
上記第1および第2反応器システムのそれぞれに、共通の触媒再生器から上記触媒混合物を供給すること、
上記第2反応器システムから、化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を回収すること、
上記第1反応器システムから、廃棄物由来炭化水素生成物を含む排出液を回収すること、ならびに
上記第1および第2反応器システムのそれぞれから上記共通の触媒再生器に使用済み触媒を戻すこと
を含む方法。
【請求項2】
上記第2反応器システムから回収された上記廃棄物由来炭化水素生成物とは別にして、上記第1反応器システムから回収された上記化石ベース炭化水素生成物を維持することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収されたオレフィン留分を重合システムに供給して循環型ポリマーを生成することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プラスチック、タイヤまたは他のポリマー材料を含む廃棄物流を熱分解して、上記プラスチック廃棄物熱分解油を生成することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記廃棄物由来炭化水素生成物の1種もしくは複数種、または上記廃棄物由来炭化水素生成物の処理から得られる廃棄物由来モノマーを、重合プロセスに直接または間接的に供給して、循環型ポリマーを生成することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
プラスチック廃棄物を、プラスチックを生成するための原料に変換するための方法であって、
ポリマー廃棄物原料を熱分解してプラスチック廃棄物熱分解油を生成すること、
触媒再生器内で、第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生すること、
上記触媒混合物の一部分を第1反応器システムに供給すること、
上記触媒混合物の一部分を第2反応器システムに供給すること、
上記第1反応器システム内で、化石ベース原料を上記触媒混合物と接触させて、上記化石ベース原料の一部分をクラッキングすることにより、化石由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第1排出液を生成すること、
上記第2反応器システム内で、
上記プラスチック廃棄物熱分解油を反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングすることであって、上記高濃度触媒混合物が、上記第2反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第2反応器システム内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器または上記第1反応器システム内よりも高い濃度の第2触媒を有し、また、上記接触が、廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素、上記第1触媒ならびに上記第2触媒を含む第2反応器排出液を生成する、こと、
上記第2反応器排出液を分離して、上記第1触媒ならびに上記廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成すること、
上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第2反応器に供給し、それによって上記第2反応器システム内で上記第2触媒を高濃度化すること、
上記第1排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記化石由来オレフィンを含む第1反応器システム生成物流とを回収すること、
上記第1流を分離して、(i)使用済み第1触媒と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2反応器システム生成物流とを回収すること、ならびに
(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み第1触媒とのそれぞれを上記触媒再生器に供給すること
を含む、方法。
【請求項7】
上記第1触媒が、非晶質シリカアルミナ、Y型ゼオライト、X型ゼオライト、ゼオライトベータ、ゼオライトMOR、モルデナイト、フォージャサイト、ナノ結晶質ゼオライトおよびMCMメソポーラス材料からなる群から選択される1種または複数種を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記第2触媒が、
中細孔ゼオライトおよびペンタシル系ゼオライトからなる群から選択される添加剤型クラッキング触媒もしくは添加剤型クラッキング触媒の混合物、または
MgO、CaO、CeO、MgTiO、CaTiO、LiTiおよびZnTiO、Ca/Mg、ホウ素、希土類ベース捕捉添加剤もしくは低塩素FCC触媒からなる群から選択される汚染物質捕捉添加剤もしくは汚染物質捕捉添加剤の混合物
の一方または両方を含む、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記第1反応器システム生成物流を第1分留システムに供給して、上記第1反応器システム生成物流を分離することにより、2種以上の化石由来炭化水素留分を回収すること、および
上記第2反応器システム生成物流を第2分留システムに供給して、上記第2反応器システム生成物流を分離することにより、2種以上の廃棄物由来炭化水素留分を回収すること
をさらに含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
上記2種以上の廃棄物由来炭化水素留分のうち1種もしくは複数種、または上記2種以上の廃棄物由来炭化水素留分のうち1種もしく複数種の処理から得られたモノマーを、重合プロセスに直接または間接的に供給して、循環型ポリマーを生成することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記熱分解が、ポリマー廃棄物原料を熱分解して、鉄、カルシウム、銅、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ケイ素、チタン、亜鉛および塩素からなる群から選択される1種または複数種の汚染物質をある濃度で有するプラスチック廃棄物熱分解油を生成することを含み、
上記第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物が、上記1種または複数種の汚染物質を捕捉するように構成された第2触媒を含み、
上記第2反応器システム内の上記接触は、
上記プラスチック廃棄物熱分解油を第1段階反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油から汚染物質を除去し、かつ上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングすることであって、上記高濃度触媒混合物が、上記第2反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第1段階反応器内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器内よりも高い濃度の第2触媒を有し、また、上記接触が、低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油、上記第1触媒、および捕捉された汚染物質を含有する上記第2触媒を含む第1段階反応器排出液を生成する、こと、
上記第1段階反応器排出液を分離して、上記第1触媒、および上記低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成すること、
上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第1段階反応器に供給し、それによって上記第1段階反応器内で上記第2触媒を高濃度化すること、ならびに
上記第1流を第2段階反応器に供給して、上記処理済みプラスチック廃棄物熱分解油をクラッキングすることにより、使用済み触媒ならびに廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2段階反応器排出液を回収すること
を含み、
上記第1流の分離は、上記第2段階反応器排出液を分離して、(i)使用済み触媒と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2段階反応器システム生成物流とを回収することを含む、請求項6~10のいずれか一項に記載のプラスチック廃棄物を、プラスチックを生成するための原料に変換するため方法。
【請求項12】
上記第2反応器システムから回収された上記廃棄物由来炭化水素生成物とは別にして、上記第1反応器システムから回収された上記化石ベース炭化水素留分を維持することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を、上記第2反応器システムの上記第1反応器に供給することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を、上記第2反応器システムの上記第2反応器に供給することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
上記第2触媒の一部分を上記第1反応器から引き出すことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
プラスチック廃棄物材料を、循環型ポリマーを生成するためのモノマーに変換するための方法であって、
ポリマー廃棄物原料を熱分解して、鉄、カルシウム、銅、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ケイ素、チタン、亜鉛および塩素からなる群から選択される1種または複数種の汚染物質をある濃度で有するプラスチック廃棄物熱分解油を生成すること、
触媒再生器内で、第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生することであって、上記第2触媒が、上記1種または複数種の汚染物質を捕捉するように構成される、こと、
上記触媒混合物の一部分を第1反応器システムに供給すること、
上記触媒混合物の一部分を第2反応器システムに供給すること、
上記第1反応器システム内で、
上記プラスチック廃棄物熱分解油を第1反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油から汚染物質を除去し、かつ上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングすることであって、上記高濃度触媒混合物が、上記第1反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第1反応器システム内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器内よりも高い濃度の第2触媒を有し、また、上記接触が、低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油、上記第1触媒、および捕捉された汚染物質を含有する上記第2触媒を含む第1反応器排出液を生成する、こと、
上記第1反応器排出液を分離して、上記第1触媒、および上記低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成すること、
上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第1反応器に供給し、それによって上記第1反応器システム内で上記第2触媒を高濃度化すること、ならびに
上記第1流を分離システムに供給して、使用済み第1触媒を含む第1分離排出液と、上記処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第2分離排出液とを回収すること、
上記第2分離排出液を分留システムに供給して、上記処理済み廃棄物熱分解油を、軽質オレフィン留分、ナフサ留分および処理済み熱分解油留分を含む3種以上の炭化水素留分に分留すること、
上記ナフサ留分および上記処理済み熱分解油留分のうち少なくとも1種を第2反応器システムに供給すること、
上記第2反応器システム内で、上記ナフサ留分および上記重油留分のうち少なくとも1種を上記触媒混合物と接触させて、含まれる上記炭化水素の一部分をクラッキングすることにより、廃棄物由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第2反応器システム排出液を生成すること、
上記第2反応器システム排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンを含む第2反応器システム生成物流とを回収すること、ならびに
(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み第1触媒を含む第1分離排出液とのそれぞれを上記触媒再生器に供給すること
を含む、方法。
【請求項17】
真の循環型ポリマーを生成するための原材料を生成するための方法であって、
ポリマー廃棄物混合物を、第1段階反応器および第2段階反応器を含む第1反応器システム内で処理することであって、上記ポリマー廃棄物混合物の上記処理は、
上記ポリマー廃棄物混合物を上記第1段階反応器に供給して、含まれるポリマーを熱分解し、かつ熱分解した排出液を回収すること、
廃棄物由来プラスチック熱分解油および触媒混合物を上記第2段階反応器に供給して、含まれる炭化水素をクラッキングし、かつクラッキングした炭化水素を含む排出液を回収すること
を含む、こと、
上記第1段階反応器からの上記熱分解した排出液、および上記第2段階反応器からの上記排出液を第1分留システムに供給して、上記排出液を、上記廃棄物由来プラスチック熱分解油および1種または複数種の廃棄物由来オレフィン留分を含む2種以上の廃棄物由来炭化水素流に分離すること、
化石ベース原料を第2反応器システム内で上記触媒混合物で処理すること、
上記第1および第2反応器システムのそれぞれに、共通の触媒再生器から上記触媒混合物を供給すること、
化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を上記第2反応器システムから回収すること、
上記化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を第2分留システムに供給すること、ならびに
上記第1および第2反応器システムのそれぞれから上記共通の触媒再生器に使用済み触媒を戻すこと
を含む、方法。
【請求項18】
上記触媒混合物が第1触媒および第2触媒を含み、上記第2段階反応器が触媒高濃度化反応器システムであり、上記方法は、
上記触媒混合物および上記クラッキングした炭化水素を含む第2段階反応器排出液を回収すること、
上記第2段階反応器排出液を分離して、上記第1触媒および上記クラッキングした炭化水素を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成すること、
上記第1流を分離して、(i)使用済み触媒と、(ii)上記第1分留システムに供給された上記第2段階反応器排出液とを回収すること、ならびに
上記第2流を上記第2段階反応器に供給し、それによって、上記第2反応器内で循環する上記第2触媒を高濃度化して、上記再生器から受け取ったときの上記触媒混合物よりも高い濃度にすること
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記ポリマー廃棄物熱分解油が、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリベンズイミダゾール、ポリ乳酸、ナイロン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ポリマー、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)からなる群から選択される1種もしくは複数種の熱可塑性樹脂;アクリル、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、ウレタン、尿素類およびイソシアネートのうち1種もしくは複数種を含むモノマーから形成された1種または複数種の熱硬化性樹脂;ならびにポリブタジエン、イソプレン、クロロプレン、スチレン-ブタジエン、ニトリルおよびエチレンビニルアセテートからなる群から選択される1種もしくは複数種の不飽和もしくは飽和エラストマーに由来するか、または上記ポリマー廃棄物供給物もしくはポリマー廃棄物混合物が、該熱可塑性樹脂、該熱硬化性樹脂、ならびに該エラストマーを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
真の循環型ポリマーを生成するための原材料を生成するためのシステムであって、
プラスチック廃棄物熱分解油を処理するために構成された、触媒混合物を含む第1反応器システム、
化石ベース原料を上記触媒混合物で処理するために構成された第2反応器システム、
上記第1および第2反応器システムのそれぞれに、共通の触媒再生器から上記触媒混合物を供給するための供給ライン、
化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を上記第2反応器システムから回収するためのフローライン、
廃棄物由来炭化水素生成物を含む排出液を上記第1反応器システムから回収するためのフローライン、ならびに
上記第1および第2反応器システムのそれぞれから上記共通の触媒再生器に使用済み触媒を戻すためのフローライン
を含む、システム。
【請求項21】
プラスチック、タイヤまたは他のポリマー材料を含む廃棄物流を熱分解して、上記プラスチック廃棄物熱分解油を生成するように構成されたプラスチック廃棄物熱分解システムをさらに含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項22】
プラスチック廃棄物を、プラスチックを生成するための原料に変換するためのシステムであって、
ポリマー廃棄物原料を熱分解してプラスチック廃棄物熱分解油を生成するために構成されたプラスチック廃棄物熱分解反応器システム、
第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生するための触媒再生器、
上記触媒混合物の一部分を上記触媒再生器から第1反応器システムに供給するための第1フローライン、
上記触媒混合物の一部分を上記触媒再生器から第2反応器システムに供給するための第2フローライン、
化石ベース原料を上記触媒混合物と接触させて、上記化石ベース原料の一部分をクラッキングすることにより、化石由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第1排出液を生成するために構成された上記第1反応器システム、
上記プラスチック廃棄物熱分解油を反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングすることであって、上記高濃度触媒混合物が、上記第2反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第2反応器システム内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器または上記第1反応器内よりも高い濃度の第2触媒を有し、また、上記接触が、廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素、上記第1触媒ならびに上記第2触媒を含む第2反応器排出液を生成する、こと、
上記第2反応器排出液を分離して、上記第1触媒ならびに上記廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成すること、
上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第2反応器に供給し、それによって上記第2反応器システム内で上記第2触媒を高濃度化すること
のために構成された上記第2反応器システム、
上記第1排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記化石由来オレフィンを含む第1反応器システム生成物流とを回収するための第1分離システム、
上記第1流を分離して、(i)使用済み第1触媒と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素を含む第2反応器システム生成物流とを回収するための分離システム、ならびに
(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み第1触媒とのそれぞれを上記触媒再生器に供給するために構成されたフローライン
を含む、システム。
【請求項23】
上記第1反応器システム生成物流を分離して、2種以上の化石由来炭化水素留分を回収するように構成された第1分留システム、ならびに
上記第2反応器システム生成物流を分離して、2種以上の廃棄物由来炭化水素留分を回収するように構成された第2分留システム
をさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項24】
上記2種以上の廃棄物由来炭化水素留分のうち1種もしくは複数種、または上記2種以上の廃棄物由来炭化水素留分のうち1種もしくは複数種の処理から得られたモノマーを直接または間接的に受け取って、循環型ポリマーを生成するように構成された重合システムをさらに含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項25】
プラスチック廃棄物を、プラスチックを生成するための原料に変換するためのシステムであって、
ポリマー廃棄物原料を熱分解して、鉄、カルシウム、銅、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ケイ素、チタン、亜鉛および塩素からなる群から選択される1種または複数種の汚染物質をある濃度で有するプラスチック廃棄物熱分解油を生成するための熱分解反応器システム、
第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生するための触媒再生器であって、上記第2触媒が、上記1種または複数種の汚染物質を捕捉するように構成される、触媒再生器、
上記触媒混合物の一部分を上記触媒再生器から第1反応器システムに供給するためのフローライン、
上記触媒混合物の一部分を上記触媒再生器から第2反応器システムに供給するためのフローライン、
化石ベース原料を上記触媒混合物と接触させて、上記化石ベース原料の一部分をクラッキングすることにより、化石由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第1排出液を生成するために構成された上記第1反応器システム、
上記プラスチック廃棄物熱分解油を第1段階反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油から汚染物質を除去し、かつ上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングすることであって、上記高濃度触媒混合物が、上記第2反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第1段階反応器内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器内よりも高い濃度の第2触媒を有し、また、上記接触が、低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油、上記第1触媒、および捕捉された汚染物質を含有する上記第2触媒を含む第1段階反応器排出液を生成する、こと、
上記第1段階反応器排出液を分離して、上記第1触媒、および上記低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成すること、
上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第1段階反応器に供給し、それによって上記第1段階反応器内で上記第2触媒を高濃度化すること、ならびに
上記第1流を第2段階反応器に供給して、上記処理済みプラスチック廃棄物熱分解油をクラッキングすることにより、使用済み触媒ならびに廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2段階反応器排出液を回収すること
のために構成された上記第2反応器システム、
上記第1排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記化石由来オレフィンを含む第1反応器システム生成物流とを回収するために構成された第1分離システム、
上記第2段階反応器排出液を分離して、(i)使用済み触媒と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2段階反応器システム生成物流とを回収するために構成された第2分離システム、ならびに
(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み触媒とのそれぞれを上記触媒再生器に供給するためのフローライン
を含む、システム。
【請求項26】
上記第1反応器システム生成物流を分離して、2種以上の化石由来炭化水素留分を回収する第1分留システム、および
上記第2段階反応器システム生成物流を分離し、かつ2種以上の廃棄物由来炭化水素留分を回収する第2分留システム
をさらに含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
上記第2反応器システムから回収された上記廃棄物由来炭化水素生成物とは別にして、上記第1反応器システムから回収された上記化石ベース炭化水素留分を維持するために構成された、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収されたまたはそれに由来するモノマーを直接または間接的に受け取って、循環型ポリマーを生成するように構成された重合をさらに含む、請求項26または請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を、上記第2反応器システムの上記第1反応器に供給するためのフローラインをさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を、上記第2反応器システムの上記第2反応器に供給するためのフローラインをさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
上記第2触媒の一部分を上記第1反応器から引き出すためのフローラインをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
プラスチック廃棄物材料を循環型ポリマーに変換するためのシステムであって、
ポリマー廃棄物原料を熱分解して、鉄、カルシウム、銅、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ケイ素、チタン、亜鉛および塩素からなる群から選択される1種または複数種の汚染物質をある濃度で有するプラスチック廃棄物熱分解油を生成するためのプラスチック廃棄物熱分解反応器、
第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生するための触媒再生器であって、上記第2触媒が、上記1種または複数種の汚染物質を捕捉するように構成される、触媒再生器、
上記触媒混合物の一部分を第1反応器システムに供給するためのフローライン、
上記触媒混合物の一部分を第2反応器システムに供給するためのフローライン、
上記プラスチック廃棄物熱分解油を第1反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油から汚染物質を除去し、かつ上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングすることであって、上記高濃度触媒混合物が、上記第1反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第1反応器システム内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器内よりも高い濃度の第2触媒を有し、また、上記接触が、低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油、上記第1触媒、および捕捉された汚染物質を含有する上記第2触媒を含む第1反応器排出液を生成する、こと、
上記第1反応器排出液を分離して、上記第1触媒、および上記低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成すること、
上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第1反応器に供給し、それによって上記第1反応器システム内で上記第2触媒を高濃度化することのために構成された上記第1反応器システム、ならびに
使用済み第1触媒を含む第1分離排出液と、上記処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第2分離排出液とを回収する分離システム、
上記処理済み廃器物熱分解油を、軽質オレフィン留分、ナフサ留分および処理済み熱分解油留分を含む3種以上の炭化水素留分に分留する分留システム、
上記ナフサ留分および上記処理済み熱分解油留分のうち少なくとも1種を第2反応器システムに供給するためのフローライン、
上記ナフサ留分および上記重油留分のうち少なくとも1種を上記触媒混合物と接触させて、含まれる上記炭化水素の一部分をクラッキングすることにより、廃棄物由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第2反応器システム排出液を生成するために構成された上記第2反応器システム、
上記第2反応器システム排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンを含む第2反応器システム生成物流とを回収するために構成された分離システム、ならびに
(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み第1触媒を含む第1分離排出液とのそれぞれを上記触媒再生器に供給するためのフローライン
を含む、システム。
【請求項33】
真の循環型ポリマーを生成するための原材料を生成するためのシステムであって、
第1段階反応器および第2段階反応器を含む第1反応器システムであって、
上記ポリマー廃棄物混合物を上記第1段階反応器に供給して、含まれるポリマーを熱分解し、かつ熱分解した排出液を回収すること、
廃棄物由来プラスチック熱分解油および触媒混合物を上記第2段階反応器に供給して、含まれる炭化水素をクラッキングし、かつクラッキングした炭化水素を含む排出液を回収すること、
上記第1段階反応器からの上記熱分解した排出液と、上記第2段階反応器からの上記排出液とを第1分留システムに供給して、上記排出液を、上記廃棄物由来プラスチック熱分解油および1種または複数種の廃棄物由来オレフィン留分を含む2種以上の廃棄物由来炭化水素流に分離すること
のために構成された第1反応器システム、
化石ベース原料を上記触媒混合物で処理するために構成された第2反応器システム、
上記第1および第2反応器システムのそれぞれに上記触媒混合物を供給するために構成された共通の触媒再生器、
化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を上記第2反応器システムから回収するためのフローライン、
上記化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を分離するための第2分留システム、ならびに
上記第1および第2反応器システムのそれぞれから上記共通の触媒再生器に使用済み触媒を戻すためのフローライン
を含む、システム。
【請求項34】
上記触媒混合物が第1触媒および第2触媒を含み、上記第2段階反応器が触媒高濃度化反応器システムである、請求項33に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、プラスチック廃棄物などの廃棄物材料をリサイクルすることに関する。より詳細には、本明細書の実施形態は、耐用年数を終えたプラスチック材料を、新しいプラスチック材料および組成物を生成するのに有用となり得るオレフィンおよび化学中間体に戻すための真の循環型ソリューションを提供するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック廃棄物の熱的熱分解は、使用済みプラスチックを価値ある分子に変換することによって、使用済みプラスチックから価値ある炭素および水素元素を再生するものであり、該価値ある分子は、新しい化学中間体にアップグレートすることができ、それらから全く新しい消費財に変換することができる。このプロセスは、使用後のプラスチックを新しい材料に繰り返しリサイクルできる可能性があるので、このプロセスを経て生成されたポリマーを循環型ポリマーと呼ぶ。これにより、埋め立て地および環境におけるプラスチック廃棄物が低減されることになり、等量の化石から生成された原料の消費が置き換わる。しかしながら、このリサイクル経路の経済的実現可能性に影響を及ぼすいくつかの因子がある。
【0003】
プラスチック廃棄物の熱分解に由来する液体油生成物は、液体スチームクラッキング装置に供給できない場合があったり、液体スチームクラッキング装置に供給する前に処理もしくはコンディショニングを必要とする場合があったりする。高レベルの窒素、塩素ならびにモノおよびジオレフィン、さらには鉄およびカルシウムなどの汚染物質は、スチームクラッキング炉に供給物として直接添加される前にさらなる検討または調節を必要とし得る。この原料をスチームクラッキング可能なものにするために、1つの可能性ある解決策として、最初にジオレフィンを飽和し、その後モノオレフィンを飽和してから、水素化処理するなどの、水素化処理ステップを必要とする場合がある。しかしながら、そのようなステップは、水素供給、多数の高圧反応器の付加、関連した投資(槽が利用可能ではない場合)、および運転コストを必要とする。
【0004】
そのような手法に対する別の選択肢として、従来のナフサ原料と混合してクラッキング装置に送ることにより、熱分解油の性質の負の影響を薄めることが考えられる。しかしながら、熱分解油のクラッキングから得られたオレフィンおよび石油化学中間体は、従来のナフサからのそれらと混ぜ合わせられることになり、最終オレフィン生成物に少量であるが寄与することになり、物質収支方法論に基づいて特定の循環含量を有するという証明が必要となる。しかしながら、新しい炭化水素供給物との希釈/混ぜ合わせは、過渡的解決策にすぎず、循環型プラスチック経済のための実現可能な長期にわたる解決策ではない。
【0005】
プラスチックリサイクルの実現可能性に影響する別の因子は、費用効果的チャネルを経て入手可能なプラスチック廃棄物原料の量が限られることである。インフラおよび物流の制限に起因して、リサイクルにアクセス可能なプラスチックの量は、各地理的位置で制限される。利用可能な現行のプラスチック熱分解プロセス技術のほとんどは、一列車当たり50T/日以下のプラスチックを処理するよう設計された。これは、スケールアップに対する制限だけではなく、プラスチック廃棄物の入手可能性によっても決められた。このスケールにおいて、これらのユニットの1つから生成された熱分解油は、年間13,000メトリックトンの量に等しいが、これが世界規模のナフサクラッキング装置に供給された場合、1つのスチームクラッキング加熱器への全供給のわずか2wt%を構成することになる。プラスチック廃棄物熱分解ユニット容量は、将来的には、1,000~2,000トン/日のプラスチック供給物の範囲のさらに大きいサイズに増大することが予想される。しかしながら、これらのより高い容量であっても、得られるナフサクラッキング装置への原料の寄与は、スチームクラッキング装置への全供給物の一部に過ぎないと考えられる。したがって、得られる生成物は、100%循環型ではないことになり、得られる生成物は、循環成分が非常に小さい割合となると考えられる。
【0006】
プラスチック廃棄物を獲得するコスト、および熱分解に適した原料へと選別しクリーニングするのに関連したコストも高い。多くの提案されたプロセスは、供給のばらつきおよび汚染物質の含量に対して柔軟ではなく、使用可能な原料を生成するために多量の選別およびクリーニングを必要とする。液体ナフサクラッキング装置への熱分解油原料の品質および汚染に関する問題に対処するために、多くの会社が、純粋なPEまたはPPなど、費用のかかるクリーンで純粋なリサイクルプラスチック原料を熱分解ユニットに使用するか、水素処理および水素化処理するか、または熱分解油をはるかに多くの量の化石由来ナフサとブレンドすることによる希釈効果を使用している。しかしながら、1日当たり約3,800バレルなどといったより大きな容量であっても、熱分解油を水素処理および水素化処理して、供給物を典型的なスチームクラッキングユニットに適したものにすることは、依然として不経済である場合がある。
【0007】
プラスチックリサイクルに影響するさらに他の因子は、プラスチック熱分解ユニットの設計処理能力が典型的には小さく、規模の経済の有利性が活用されず、必要とされる生成物の処理レベルのために、関連する運転および資本コストが高くなってしまうことである。送られる熱分解油生成物の量および品質、さらなる処理に必要とされる準備、ならびに既存の操作に対する影響は、既存の下流設備との一体化を難しくする。さらに、化石ベース生成物と混ぜ合わせた場合の熱分解生成物の販売からの収益は、処理コストと比較するとしばしば好ましくなく、様々なプラスチック熱分解由来生成物に対する利用可能な市場および価格に依存して変動し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書の実施形態は、プラスチックなどの廃棄物材料の熱的熱分解から生成された熱分解油を、有用なバージンオレフィンおよび石油化学中間体に変換して戻すという課題の1つまたは複数に対処するシステムおよび方法に関する。1つまたは複数の実施形態では、該システムおよび方法は、プラスチック廃棄物リサイクルに対する真の循環型ソリューションを提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、真の循環型ポリマーを生成するための原材料を生成するための方法に関する。該方法は、プラスチック廃棄物熱分解油などの廃棄物由来炭化水素流を第1反応器システム内で触媒混合物で処理すること、および化石ベース原料を第2反応器システム内で上記触媒混合物で処理することを含んでいてもよい。上記触媒混合物は、上記第1および第2反応器システムのそれぞれに、共通の触媒再生器から供給されてもよい。該方法は、化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を上記第2反応器システムから回収すること、および廃棄物由来炭化水素生成物を含む排出液を上記第1反応器システムから回収することも含んでいてもよい。上記排出液中の上記触媒から上記炭化水素を分離した後、該方法は、上記第1および第2反応器システムのそれぞれから上記共通の触媒再生器に使用済み触媒を戻すことを含んでいてもよい。
【0010】
様々な実施形態では、該方法は、上記第2反応器システムから回収された上記廃棄物由来炭化水素生成物とは別にして、上記第1反応器システムから回収された上記化石ベース炭化水素生成物を維持することを含んでいてもよい。さらなる実施形態は、上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収されたオレフィン留分を重合システムに供給して循環型ポリマーを生成することを含んでいてもよい。さらに、該方法は、プラスチック、タイヤまたは他のポリマー材料を含む廃棄物流を熱分解して、上記プラスチック廃棄物熱分解油を生成することを含んでいてもよい。さらに他の実施形態では、該方法は、上記廃棄物由来炭化水素生成物の1種もしくは複数種、または上記廃棄物由来炭化水素生成物の処理から得られる廃棄物由来モノマーを、重合プロセスに直接または間接的に供給して、循環型ポリマーを生成することを含んでいてもよい。
【0011】
別の態様では、本明細書の実施形態は、プラスチック廃棄物を、プラスチックを生成するための原料に変換するための方法を対象とする。該方法は、ポリマー廃棄物原料を熱分解して、プラスチック廃棄物熱分解油を生成することを含んでいてもよい。第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物が、触媒再生器で再生されてもよい。上記触媒混合物の一部分は第1反応器システムに供給されてもよく、上記触媒混合物の別の部分は第2反応器システムに供給されてもよい。上記第1反応器システム内で、化石ベース原料を上記触媒混合物と接触させて、上記化石ベース原料の一部分をクラッキングすることにより、化石由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第1排出液を生成してもよい。上記第2反応器システム内で、上記プラスチック廃棄物熱分解油を反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングしてもよく、上記高濃度触媒混合物が、上記第2反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第2反応器システム内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器または上記第1反応器システム内よりも高い濃度の第2触媒を有している。上記第2反応器システム内の上記接触が、廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素、上記第1触媒ならびに上記第2触媒を含む第2反応器排出液を生成する。次いで、上記第2反応器排出液を分離して、上記第1触媒ならびに上記廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成してもよい。上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第2反応器に供給し、それによって上記第2反応器システム内で上記第2触媒を高濃度化してもよい。上記第1排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記化石由来オレフィンを含む第1反応器システム生成物流とを回収してもよい。上記第1流(上記第2反応器からの排出液および使用済み第1触媒)を分離して、(i)使用済み第1触媒と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2反応器システム生成物流とを回収してもよい。該方法は、(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み第1触媒とのそれぞれを上記触媒再生器に供給することを含んでいてもよい。
【0012】
一部の実施形態では、上記第1触媒は、非晶質シリカアルミナ、Y型ゼオライト、X型ゼオライト、ゼオライトベータ、ゼオライトMOR、モルデナイト、フォージャサイト、ナノ結晶質ゼオライトおよびMCMメソポーラス材料からなる群から選択される1種または複数種を含む。
【0013】
様々な実施形態では、上記第2触媒は、中細孔ゼオライトおよびペンタシル系ゼオライトからなる群から選択される添加剤型クラッキング触媒もしくは添加剤型クラッキング触媒の混合物;またはMgO、CaO、CeO、MgTiO、CaTiO、LiTiおよびZnTiO、Ca/Mg、ホウ素、希土類ベース捕捉添加剤もしくは低塩素FCC触媒からなる群から選択される汚染物質捕捉添加剤もしくは汚染物質捕捉添加剤の混合物の一方または両方を含む。
【0014】
一部の実施形態による方法は、上記第1反応器システム生成物流を第1分留システムに供給して、上記第1反応器システム生成物流を分離することにより、2種以上の化石由来炭化水素留分を回収することを含んでいてもよい。本明細書の実施形態による方法は、上記第2反応器システム生成物流を第2分留システムに供給して、上記第2反応器システム生成物流を分離することにより、2種以上の廃棄物由来炭化水素留分を回収することをさらに含んでいてもよい。該方法は、上記2種以上の廃棄物由来炭化水素留分のうち1種または複数種を重合プロセスに供給して、循環型ポリマーを生成することを含んでいてもよい。
【0015】
別の態様では、本明細書の実施形態は、プラスチック廃棄物を、プラスチックを生成するための原料に変換するための方法に関する。該方法は、ポリマー廃棄物原料を熱分解して、1種または複数種の汚染物質をある濃度で有するプラスチック廃棄物熱分解油を生成することを含んでいてもよい。上記汚染物質は、例えば、鉄、カルシウム、銅、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ケイ素、チタン、亜鉛および塩素のうち1種または複数種を含んでいてもよい。該方法は、触媒再生器内で、第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生することを含んでいてもよく、上記第2触媒が、上記1種または複数種の汚染物質を捕捉するように構成される。上記触媒混合物の一部分は、第1反応器システムに供給されてもよく、上記触媒混合物の別の部分は、第2反応器システムに供給されてもよい。上記第1反応器システム内で、化石ベース原料を上記触媒混合物と接触させて、上記化石ベース原料の一部分をクラッキングすることにより、化石由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第1排出液を生成してもよい。上記第2反応器システム内で、上記プラスチック廃棄物熱分解油を第1段階反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油から汚染物質を除去し、かつ上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングしてもよく、上記高濃度触媒混合物が、上記第2反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第1段階反応器内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器内よりも高い濃度の第2触媒を有し、また、上記接触が、低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油、上記第1触媒、および捕捉された汚染物質を含有する上記第2触媒を含む第1段階反応器排出液を生成する。上記第1段階反応器排出液を分離して、上記第1触媒、および上記低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成してもよい。上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第1段階反応器に供給し、それによって上記第1段階反応器内で上記第2触媒を高濃度化してもよい。上記第1流を第2段階反応器に供給して、上記処理済みプラスチック廃棄物熱分解油をクラッキングすることにより、使用済み触媒ならびに廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2段階反応器排出液を回収してもよい。上記第1排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記化石由来オレフィンを含む第1反応器システム生成物流を回収してもよい。さらに、上記第2段階反応器排出液を分離して、(i)使用済み触媒と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2段階反応器システム生成物流とを回収してもよい。方法は、(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み触媒とのそれぞれを上記触媒再生器に供給することを含んでいてもよい。
【0016】
一部の実施形態では、該方法はさらに、上記第1反応器システム生成物流を第1分留システムに供給して、上記第1反応器システム生成物流を分離することにより、2種以上の化石由来炭化水素留分を回収すること;および上記第2段階反応器システム生成物流を第2分留システムに供給して、上記第2段階反応器システム生成物流を分離することにより、2種以上の廃棄物由来炭化水素留分を回収すること、を含んでいてもよい。
【0017】
様々な実施形態では、該方法は、上記第2反応器システムから回収された上記廃棄物由来炭化水素生成物とは別にして、上記第1反応器システムから回収された上記化石ベース炭化水素留分を維持することをさらに含んでいてもよい。
【0018】
循環型ポリマーを生成するために、本明細書の実施形態は、上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収されたオレフィン留分を重合システムに供給して、循環型ポリマーを生成することをさらに含んでいてもよい。
【0019】
上記廃棄物由来炭化水素生成物の分離後、本明細書の方法は、上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を、上記第2反応器システムの上記第1反応器に供給することを含んでいてもよい。このように、追加の廃棄物由来オレフィンを上記廃棄物ベース原料から生成してもよい。他の実施形態では、該方法は、上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を、上記第2反応器システムの上記第2反応器に供給することを含んでいてもよい。
【0020】
さらに別の態様では、本明細書の実施形態は、プラスチック廃棄物材料を循環型ポリマーに変換するための方法に関する。該方法は、ポリマー廃棄物原料を熱分解して、鉄、カルシウム、銅、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ケイ素、チタン、亜鉛および塩素からなる群から選択される1種または複数種の汚染物質をある濃度で有するプラスチック廃棄物熱分解油を生成することを含んでいてもよい。該方法は、触媒再生器で、第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生することを含んでいてもよく、上記第2触媒が、上記1種または複数種の汚染物質を捕捉するように構成される。上記触媒混合物の一部分は第1反応器システムに供給されてもよく、上記触媒混合物の一部分は第2反応器システムに供給されてもよい。上記第1反応器システム内で、上記プラスチック廃棄物熱分解油を第1反応器で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油から汚染物質を除去し、かつ上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングしてもよく、上記高濃度触媒混合物が、上記第1反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第1反応器システム内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器内よりも高い濃度の第2触媒を有している。上記第1反応器システム内の上記接触が、低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油、上記第1触媒、および捕捉された汚染物質を含有する上記第2触媒を含む第1反応器排出液を生成してもよい。次いで、上記第1反応器排出液を分離して、上記第1触媒、および上記低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成してもよい。上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第1反応器に供給し、それによって上記第1反応器システム内で上記第2触媒を高濃度化してもよい。上記第1流を分離システムに供給して、使用済み第1触媒を含む第1分離排出液と、上記処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第2分離排出液とを回収してもよい。上記第2分離排出液を分留システムに供給して、上記処理済み廃棄物熱分解油を、軽質オレフィン留分、ナフサ留分および処理済み熱分解油留分を含む3種以上の炭化水素留分に分留してもよい。上記ナフサ留分および上記処理済み熱分解油留分のうち少なくとも1種を第2反応器システムに供給して、上記ナフサ留分および上記重油留分のうち少なくとも1種を上記触媒混合物と接触させて、含まれる上記炭化水素の一部分をクラッキングすることにより、廃棄物由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第2反応器システム排出液を生成してもよい。次いで、上記第2反応器システム排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンを含む第2反応器システム生成物流とを回収してもよい。該方法は、(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み第1触媒を含む第1分離排出液とのそれぞれを上記触媒再生器に供給することをさらに含んでいてもよい。
【0021】
なおさらなる態様では、本明細書の実施形態は、真の循環型ポリマーを生成するための原材料を生成するための方法を対象とする。該方法は、第1段階反応器および第2段階反応器を含む第1反応器システム内でポリマー廃棄物混合物を処理することを含んでいてもよい。上記ポリマー廃棄物混合物の上記処理が、上記ポリマー廃棄物混合物を上記第1段階反応器に供給して、含まれるポリマーを熱分解し、かつ熱分解した排出液を回収することを含んでいてもよい。上記ポリマー廃棄物混合物の上記処理が、廃棄物由来プラスチック熱分解油および触媒混合物を上記第2段階反応器に供給して、含まれる炭化水素をクラッキングし、かつクラッキングした炭化水素を含む排出液を回収することを含んでいてもよい。上記第1段階反応器からの上記熱分解排出液および上記第2段階反応器からの上記排出液を第1分留システムに供給して、上記排出液を、上記廃棄物由来プラスチック熱分解油および1種または複数種の廃棄物由来オレフィン留分を含む2種以上の廃棄物由来炭化水素流に分離してもよい。化石ベース原料を第2反応器システム内で上記触媒混合物で処理してもよい。さらに、該方法は、上記第1および第2反応器システムのそれぞれに、共通の触媒再生器から上記触媒混合物を供給することを含んでいてもよい。化石ベース炭化水素生成物を含む排出液は、上記第2反応器システムから回収されてもよく、上記化石ベース炭化水素生成物を含む排出液は、第2分留システムに供給されてもよい。該方法は、上記第1および第2反応器システムのそれぞれから上記共通の触媒再生器に使用済み触媒を戻すことを含んでいてもよい。
【0022】
該方法の一部の実施形態では、上記触媒混合物は、第1触媒および第2触媒を含み、上記第2段階反応器は、触媒高濃度化反応器システムである。該方法は、上記触媒混合物および上記クラッキングした炭化水素を含む第2段階反応器排出液を回収することを含んでいてもよい。上記第2段階反応器排出液を分離して、上記第1触媒および上記クラッキングした炭化水素を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成してもよい。上記第1流を分離して、(i)使用済み触媒と、(ii)上記第1分留システムに供給された上記第2段階反応器排出液とを回収してもよい。該方法は、上記第2流を上記第2段階反応器に供給し、それによって、上記第2反応器内を循環する上記第2触媒を高濃度化して、上記再生器から受け取ったときの上記触媒混合物よりも高い濃度にすることを含んでいてもよい。
【0023】
上述の方法のいずれかにおいて、上記ポリマー廃棄物熱分解油は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリベンズイミダゾール、ポリ乳酸、ナイロン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ポリマー、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)からなる群から選択される1種または複数種の熱可塑性樹脂;アクリル、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、ウレタン、尿素類およびイソシアネートの1種または複数種を含むモノマーから形成された1種または複数種の熱硬化性樹脂;ならびにポリブタジエン、イソプレン、クロロプレン、スチレン-ブタジエン、ニトリルおよびエチレンビニルアセテートからなる群から選択される1種または複数種の不飽和または飽和エラストマーに由来してもよく、または上記ポリマー廃棄物供給物もしくはポリマー廃棄物混合物は、これらを含んでいてもよい。
【0024】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、再循環バージン軽質オレフィンおよび石油化学中間体を生成する装置およびプロセススキームに関する。別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、熱分解油汚染物質を処理し、さらに再循環バージン軽質オレフィンおよび石油化学中間体を生成する方法および装置に関する。さらに別の態様では、本明細書の実施形態は、上記に概説した方法を行うためのシステムを対象とする。
【0025】
一部の態様では、本明細書の実施形態は、真の循環型ポリマーを生成するための原材料を生成するためのシステムを対象とする。該システムは、プラスチック廃棄物熱分解油を処理するために構成された、触媒混合物を含む第1反応器システム、および化石ベース原料を上記触媒混合物で処理するために構成された第2反応器システムを含んでいてもよい。供給ラインが、上記第1および第2反応器システムのそれぞれに、共通の触媒再生器から上記触媒混合物を供給するために構成されてもよい。フローラインが、化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を上記第2反応器システムから回収するために構成されてもよい。別のフローラインが、廃棄物由来炭化水素生成物を含む排出液を上記第1反応器システムから回収するために構成されてもよい。さらなるフローラインが、上記第1および第2反応器システムのそれぞれから上記共通の触媒再生器に使用済み触媒を戻すために構成されてもよい。一部の実施形態では、該システムは、プラスチック、タイヤまたは他のポリマー材料を含む廃棄物流を熱分解して、上記プラスチック廃棄物熱分解油を生成するように構成されたプラスチック廃棄物熱分解システムをさらに含む。
【0026】
他の態様では、本明細書の実施形態は、プラスチック廃棄物を、循環型プラスチックを生成するための原料に変換するためのシステムを対象とする。該システムは、ポリマー廃棄物原料を熱分解してプラスチック廃棄物熱分解油を生成するために構成されたプラスチック廃棄物熱分解反応器システムを含む。触媒再生器が、第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生するために設けられる。第1フローラインが、上記触媒混合物の一部分を上記触媒再生器から第1反応器システムに供給するために設けられる。同様に、第2フローラインが、上記触媒混合物の一部分を上記触媒再生器から第2反応器システムに供給するために設けられる。上記第1反応器システムは、化石ベース原料を上記触媒混合物と接触させて、上記化石ベース原料の一部分をクラッキングすることにより、化石由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第1排出液を生成するために構成される。上記第2反応器システムは、上記プラスチック廃棄物熱分解油を反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングすることであって、上記高濃度触媒混合物が、上記第2反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第2反応器システム内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器または上記第1反応器内よりも高い濃度の第2触媒を有し、また、上記接触が、廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素、上記第1触媒ならびに上記第2触媒を含む第2反応器排出液を生成する、こと;上記第2反応器排出液を分離して、上記第1触媒ならびに上記廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成すること;ならびに上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第2反応器に供給し、それによって上記第2反応器システム内で上記第2触媒を高濃度化することのために構成される。該システムは、上記第1排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記化石由来オレフィンを含む第1反応器システム生成物流とを回収するための第1分離システムをさらに含む。別の分離システムが、上記第1流を分離して、(i)使用済み第1触媒と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素を含む第2反応器システム生成物流とを回収するために設けられる。また、フローラインが、(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み第1触媒とのそれぞれを上記触媒再生器に供給するために設けられる。一部の実施形態では、該システムは、第1分留システムおよび第2分留システムを含む。上記第1分離システムは、上記第1反応器システム生成物流を分離して、2種以上の化石由来炭化水素留分を回収するように構成される。上記第2分留システムは、上記第2反応器システム生成物流を分離して、2種以上の廃棄物由来炭化水素留分を回収するように構成される。該システムの他の実施形態は、上記2種以上の廃棄物由来炭化水素留分のうち1種もしくは複数種、または上記2種以上の廃棄物由来炭化水素留分のうち1種もしくは複数種の処理から得られたモノマーを直接または間接的に受け取って、循環型ポリマーを生成するように構成された重合システムを含んでいてもよい。
【0027】
一部の態様では、本明細書の実施形態は、プラスチック廃棄物を、プラスチックを生成するための原料に変換するためのシステムを対象とする。該システムは、ポリマー廃棄物原料を熱分解して、鉄、カルシウム、銅、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ケイ素、チタン、亜鉛および塩素からなる群から選択される1種または複数種の汚染物質をある濃度で有するポリマー廃棄物熱分解油を生成するための熱分解反応器システムを含んでいてもよい。触媒再生器が、第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生するが、上記第2触媒は、上記1種または複数種の汚染物質を捕捉するように構成される。フローラインが、上記触媒再生器から上記触媒混合物の一部分を第1反応器システムに供給する。別のフローラインが、上記触媒再生器から上記触媒混合物の一部分を第2反応器システムに供給する。上記第1反応器システムは、化石ベース原料を上記触媒混合物と接触させて、上記化石ベース原料の一部分をクラッキングすることにより、化石由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第1排出液を生成するために構成される。上記第2反応器システムは、上記プラスチック廃棄物熱分解油を第1段階反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油から汚染物質を除去し、かつ上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングするために構成される。上記高濃度触媒混合物は、上記第2反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含む。したがって上記第1段階反応器内の上記触媒混合物は、上記触媒再生器内よりも高い濃度の第2触媒を有する。さらに、上記接触は、低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油、上記第1触媒、および捕捉された汚染物質を含有する上記第2触媒を含む第1段階反応器排出液を生成する。上記第1反応器システムは、上記第1段階反応器排出液を分離して、上記第1触媒および上記低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成するための分離器を含んでいてもよい。フローラインが、上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第1段階反応器に供給し、それによって上記第1段階反応器内で上記第2触媒を高濃度化するために設けられてもよい。上記反応器システムは、上記第1流を第2段階反応器に供給して、上記処理済みプラスチック廃棄物熱分解油をクラッキングすることにより、使用済み触媒ならびに廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2段階反応器排出液を回収するためのフローラインをさらに含んでいてもよい。第1分離システムが、上記第1排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記化石由来オレフィンを含む第1反応器システム生成物流とを回収するために構成される。第2分離システムが、上記第2段階反応器排出液を分離して、(i)使用済み触媒と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2段階反応器システム生成物流とを回収するために構成され、フローラインが、(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み触媒とのそれぞれを上記触媒再生器に供給するために設けられる。一部の実施形態では、該システムは、第1分留システムおよび第2分留システムをさらに含む。上記第1分留システムは、上記第1反応器システム生成物流を分離して、2種以上の化石由来炭化水素留分を回収するように構成される。上記第2分留システムは、上記第2段階反応器システム生成物流を分離し、かつ2種以上の廃棄物由来炭化水素留分を回収するように構成される。一部の実施形態では、該システムは、上記第2反応器システムから回収された上記廃棄物由来炭化水素生成物とは別にして、上記第1反応器システムから回収された上記化石ベース炭化水素留分を維持するために構成されてもよい。様々な実施形態は、上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収されたまたはそれに由来するモノマーを直接または間接的に受け取って、循環型ポリマーを生成するように構成された重合も含む。該システムの一部の実施形態は、上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を、上記第2反応器システムの上記第1反応器に供給するためのフローラインを含み、一方、その他は、上記廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を、上記第2反応器システムの上記第2反応器に供給するためのフローラインを含む。フローラインが、上記第2触媒の一部分を上記第1反応器から引き出すために設けられてもよい。
【0028】
他の態様では、本明細書の実施形態は、プラスチック廃棄物材料を循環型ポリマーに変換するためのシステムを対象とする。該システムは、ポリマー廃棄物原料を熱分解して、鉄、カルシウム、銅、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ケイ素、チタン、亜鉛および塩素からなる群から選択される1種または複数種の汚染物質をある濃度で有するプラスチック廃棄物熱分解油を生成するためのプラスチック廃棄物熱分解反応器を含んでいてもよい。触媒再生器が、第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物を再生するために設けられるが、上記第2触媒は、上記1種または複数種の汚染物質を捕捉するように構成される。該システムは、上記触媒混合物の一部分を第1反応器システムに供給するためのフローライン、および上記触媒混合物の一部分を第2反応器システムに供給するためのフローラインを含む。上記第1反応器システムは、上記プラスチック廃棄物熱分解油を第1反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、上記プラスチック廃棄物熱分解油から汚染物質を除去し、かつ上記プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングすることであって、上記高濃度触媒混合物が、上記第1反応器システムに供給された上記触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって上記第1反応器システム内の上記触媒混合物が、上記触媒再生器内よりも高い濃度の第2触媒を有し、また、上記接触が、低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油、上記第1触媒、および捕捉された汚染物質を含有する上記第2触媒を含む第1反応器排出液を生成する、こと;上記第1反応器排出液を分離して、上記第1触媒、および上記低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第1流と、上記第2触媒を含む第2流とを生成すること;上記第2流を上記追加の第2触媒として上記第1反応器に供給し、それによって上記第1反応器システム内で上記第2触媒を高濃度化することのために構成され、使用済み第1触媒を含む第1分離排出液と、上記処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第2分離排出液とを回収するための分離システム。分留システムが、上記処理済み廃棄物熱分解油を、軽質オレフィン留分、ナフサ留分および処理済み熱分解油留分を含む3種以上の炭化水素留分に分留するのに使用される。該システムは、上記ナフサ留分および上記処理済み熱分解油留分のうち少なくとも1種を第2反応器システムに供給するためのフローラインを含む。上記第2反応器システムは、上記ナフサ留分および上記重油留分のうち少なくとも1種を上記触媒混合物と接触させて、含まれる上記炭化水素の一部分をクラッキングすることにより、廃棄物由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第2反応器システム排出液を生成するために構成される。上記第2反応器システム排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記廃棄物由来オレフィンを含む第2反応器システム生成物流とを回収するために構成された分離システムが設けられる。該システムは、(i)上記使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)上記使用済み第1触媒を含む第1分離排出液とのそれぞれを上記触媒再生器に供給するためのフローラインをさらに含む。
【0029】
さらに他の態様では、本明細書の実施形態は、真の循環型ポリマーを生成するための原材料を生成するためのシステムを対象とする。該システムは、第1段階反応器および第2段階反応器を含む第1反応器システムを含んでいてもよい。ポリマー廃棄物混合物を上記第1段階反応器に供給して、含まれるポリマーを熱分解し、かつ熱分解した排出物を回収する。廃棄物由来プラスチック熱分解油および触媒混合物を上記第2段階反応器に供給して、含まれる炭化水素をクラッキングし、かつクラッキングした炭化水素を含む排出液を回収する。上記第1段階反応器からの上記熱分解した排出液および上記第2段階反応器からの上記排出液をフローラインを介して第1分留システムに供給して、上記排出液を、上記廃棄物由来プラスチック熱分解油および1種または複数種の廃棄物由来オレフィン留分を含む2種以上の廃棄物由来炭化水素流に分離する。該システムは、化石ベース原料を上記触媒混合物で処理するために構成された第2反応器システムをさらに含む。共通の触媒再生器が、上記第1および第2反応器システムのそれぞれに上記触媒混合物を供給するために設けられ構成される。フローラインが、化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を上記第2反応器システムから回収するために構成される。第2分留システムが、上記化石ベース炭化水素生成物を含む排出液を分離するために設けられ構成される。該システムは、上記第1および第2反応器システムのそれぞれから上記共通の触媒再生器に使用済み触媒を戻すためのフローラインをさらに含む。一部の実施形態では、上記触媒混合物は、第1触媒および第2触媒を含み、上記第2段階反応器は、触媒高濃度化反応器システムである。
【0030】
他の態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本明細書に開示する1つまたは複数の実施形態によるシステムおよび方法の簡略化したプロセスフロー図を示す。
図1A】本明細書に開示する1つまたは複数の実施形態によるシステムおよび方法の簡略化したプロセスフロー図を示す。
図2】本明細書に開示する1つまたは複数の実施形態によるシステムおよび方法の簡略化したプロセスフロー図を示す。
図3】本明細書に開示する1つまたは複数の実施形態によるシステムおよび方法の簡略化したプロセスフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書の実施形態は、概して、廃棄物材料を処理して、軽質オレフィンおよび石油化学中間体などのバージン原料を形成することを対象とする。例えば、プラスチック、エラストマーおよび他のポリマー材料などの廃棄物材料は、熱分解を受けることで、ポリマー材料が破壊され、かつ熱分解油が形成される。本明細書の方法およびシステムは、有利には、そのような廃棄物由来熱分解油を処理して、オレフィンおよび石油化学中間体を形成することができる。次いで、そのようなオレフィンおよび石油化学中間体を使用して、熱可塑性樹脂およびエラストマーポリマーを含むポリマー材料を再び形成することで、一部の実施形態では真の循環型ポリマーを提供することができる。
【0033】
本明細書で使用される、循環型ポリマー、循環型プラスチック、循環型エラストマー、および他の同様の「循環型」または「再循環型」という用語は、エチレンまたはプロピレンなどのモノマー成分からポリマーを生成し、ポリマーで形成された消費財を生産し使用して廃(使用済み)ポリマー材料を得て、次いでその廃ポリマー材料をモノマー成分に変換し戻して、再びポリマーへと変えて消費財に変換するという循環型プロセスを指す。本明細書の実施形態は、大部分が、廃ポリマー材料からモノマー成分に戻す変換を対象とする。
【0034】
廃棄物材料の変換のための本明細書の実施形態は、真の循環型ポリマーを生成するために使用できる原材料を生成するための方法を特に対象とするスタンドアローン型システムを含んでいてもよい。廃棄物材料を変換するための本明細書の他の実施形態は、化石ベース材料を、典型的には製油所で生成されるオレフィン、燃料などの生成物に変換するためのプロセスと一体化されたシステムを含んでいてもよい。一部の実施形態では、化石ベース材料を変換するためのシステムは、本明細書に記載される廃棄物ベース材料をさらに処理するように改造されてもよい。
【0035】
一体化されたシステムおよびプロセスから始まり、本明細書の実施形態は、廃棄物ベース材料を触媒により変換するための第1反応システム、化石ベース材料を触媒により変換するための第2反応システム、ならびに第1および第2反応システムのそれぞれで使用される触媒混合物を再生するための共通の触媒再生システムを含んでいてもよい。プラスチック廃棄物熱分解油などの廃棄物由来炭化水素流を第1反応器システムに供給し、触媒混合物と接触させて、含まれる炭化水素をより軽質の廃棄物由来炭化水素にクラッキングしてもよい。原油に直接または間接的に由来する燃料油留分または他の様々な炭化水素カットなどの化石ベース原料は、第2反応器システムに供給され、触媒混合物と接触して、含まれる炭化水素をより軽質の化石由来炭化水素にクラッキングしてもよい。第1および第2反応器システムのそれぞれに供給される触媒混合物は、共通の触媒再生器から提供されてもよい。化石ベース炭化水素生成物および使用済み触媒を含む排出液は、第2反応器システムから回収されてもよい。同様に、廃棄物由来炭化水素生成物および使用済み触媒を含む排出液は、第1反応器システムから回収されてもよい。それぞれの排出液の分離後、第1および第2反応器システムのそれぞれからの使用済み触媒は、再生および反応器内での再使用のために共通の触媒再生器に戻されてもよい。
【0036】
一部の実施形態では、反応器排出液は、炭化水素生成物を処理するために共通の分留システムに供給されてもよい。しかしながら、そのような実施形態は、廃棄物由来炭化水素と化石由来炭化水素とを混ぜ合わせることになり得る。
【0037】
他の実施形態では、第1反応器システムから回収された化石ベース炭化水素生成物は、第2反応器システムから回収された廃棄物由来炭化水素生成物とは別にして、維持され処理されてもよい。このように、廃棄物由来炭化水素生成物は、純粋に循環型なものとして提供でき、それに由来する消費財は、真の再循環型製品として提供できる。例えば、廃棄物由来炭化水素生成物から回収されたオレフィン留分は、重合システムに供給されて循環型ポリマーを生成してもよい。
【0038】
本明細書の実施形態で有用な廃棄物由来炭化水素流は、任意の数の供給源から得られてもよい。一部の実施形態では、例えば、廃棄物由来炭化水素流が、ポリマー材料、例えば熱可塑性樹脂、タイヤ、または他のポリマー材料を含む廃棄物流を熱分解し、プラスチック廃棄物熱分解油を生成することによって、形成されてもよい。
【0039】
熱分解されてプラスチック廃棄物熱分解油を形成し得るポリマーは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂およびエラストマーを含んでいてもよい。例えば、熱分解を受けてプラスチック廃棄物熱分解油を形成する廃棄物材料は、多くの他の熱可塑性樹脂の中でも、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリベンズイミダゾール、ポリ乳酸、ナイロン、およびポリメチルメタクリル酸(PMMA)などのアクリルポリマーを含んでいてもよい。本明細書で有用なプラスチック廃棄物熱分解油は、当技術分野で公知の様々な不飽和または飽和エラストマーおよびゴム、例えばポリブタジエン、イソプレン、スチレン-ブタジエン、エチレンビニルアセテートおよび数多くの他のものから形成されてもよい。本明細書の実施形態は、上記列挙されたものおよび当技術分野で公知の他のものを含むいくらかの量のヘテロ原子含有ポリマーを処理するのに十分堅牢であってもよいが、得られるプラスチック廃棄物熱分解油のヘテロ原子の含量は、典型的には2wt%未満、例えば1wt%未満または0.5wt%未満であるべきである。
【0040】
上述のポリマー廃棄物材料の熱分解は、ポリマー廃棄物材料の熱によるまたは触媒による熱分解によって行われてもよい。例えば、プラスチック原料の熱的熱分解は、高温で、例えば300℃~850℃の範囲の温度で、例えば約350℃~約600℃でプラスチック原料を接触させることによって実行されてもよい。プラスチックの熱分解は、軽質ガス炭化水素生成物および液体炭化水素生成物を含む様々な炭化水素を生成でき、それらの全体または一部分が、本明細書のプラスチック廃棄物熱分解油として使用されてもよい。
【0041】
ポリマー材料は一般に、最終生成物を生成するために処理され、この場合、重合触媒、ならびに金属着色剤および架橋剤などの様々な添加剤が、生成されるポリマー中に保持されるが、これらは、とりわけ鉄、カルシウムおよび硫黄などの様々な汚染物質を熱分解プロセスに導入する。ポリマー自体は、典型的なクラッキングプロセスで汚染物質と見なされ得る酸素、窒素、塩素およびフッ素などの様々な原子も含有し得る。本明細書の実施形態は、プラスチック廃棄物熱分解液体を前処理して、これらの汚染物質の一部または大部分を除去してもよい。他の実施形態では、本明細書の方法は、そのような費用のかかる前処理なしで、プラスチック廃棄物熱分解液体を有利に変換するのに十分堅牢であってもよい。
【0042】
廃棄物材料をオレフィンおよび石油化学物質に、次いで完成消費財に変え、次いで再び得られた破棄・廃棄物製品を原材料として使用して、価値ある軽質オレフィンおよび石油化学物質へと変換することで、真の再循環型生成物の生成を提供してもよい。本明細書の実施形態は、「グリーンな」生成物も企図しており、その場合、廃棄物反応器への原料は、クラッキングされてとりわけプロピレンおよびエチレンなどのオレフィンを生成しかつ/または他の石油化学中間体を生成し得る生物由来油、バイオマス、バイオ廃棄物材料および他の再生可能な原料を含んでいてもよい。そのような材料の使用によって、原料の柔軟性を提供しつつ、生成されたオレフィンおよび他の石油化学物質、ならびにそれらから作製された消費財を、化石由来生成物ではないと分類することが可能となり得る。
【0043】
本明細書の一体化方法は、上述のように、共通の触媒再生器を使用して、個々の廃棄物由来および化石由来供給物を処理してもよい。本明細書の実施形態により処理され得る化石由来供給物は、原油、またはそこから直接もしくは間接的に生成された任意の数の炭化水素留分を含んでいてもよい。例えば、本明細書の実施形態は、約200℃もしくは250℃以下の沸点を有するものもしくはその任意の部分、例えばナフサ留分などの1種もしくは複数種の軽質炭化水素留分、および/または約200℃もしくは250℃から約600℃もしくは700℃までの範囲の沸点を持つものもしくはその任意の部分、例えば、とりわけ常圧軽油、真空軽油、ディーゼルおよび常圧もしくは真空残油などの1種もしくは複数種の重質炭化水素留分を含む化石由来炭化水素をクラッキングしてもよい。
【0044】
本明細書の実施形態に有用な触媒は、様々な流体接触クラッキング(FCC)触媒を含んでいてもよい。好適なFCC触媒は、当技術分野で公知のものの中でもとりわけ、Y型ゼオライト、X型ゼオライト、モルデナイト、フォージャサイト、ナノ結晶質ゼオライトおよびMCMメソポーラス材料を含んでいてもよい。典型的には、そのような触媒は、より重質の炭化水素をクラッキングするために選ばれる。
【0045】
添加剤型クラッキング触媒は、ゼオライトのペンタシル系(例えば、ZSM-5またはZSM-11)などの様々な中細孔ゼオライトを含んでいてもよい。典型的には、そのような触媒は、エチレン、プロピレンおよびブテンなどの軽質オレフィンの生成のための、C4およびナフサ範囲の炭化水素などのより軽質の炭化水素をクラッキングするために選ばれる。
【0046】
本明細書の実施形態は、汚染物質捕捉添加剤(捕捉触媒、不動態化剤など)を使用してもよい。有用な汚染物質捕捉添加剤は、反応条件でFCCまたは添加剤型クラッキング触媒よりも汚染物質に対してより高い親和性を有する化合物および構造体である。したがって汚染物質は、汚染物質捕捉添加剤上に優先的に吸収または保持され得る。汚染物質捕捉添加剤は、MgO、CaO、CeO2、MgTiO3、CaTiO3、Li2Ti2O7およびZnTiO3、Ca/Mg、ホウ素、および他の希土類ベース捕捉添加剤を含んでいてもよい。有用な汚染物質捕捉添加剤は、とりわけ低塩素FCC触媒を含んでいてもよい。
【0047】
上述のように、様々な汚染物質が、使用するプラスチック廃棄物熱分解油で見られ得る。様々なプラスチック廃棄物熱分解油原料で見られ得る汚染物質は、とりわけ、鉄、銅、カルシウム、リン、バナジウム、ニッケル、ナトリウムおよび塩素のうち1種または複数種を含み得る。そのような汚染物質は、より重質の炭化水素をより軽質の炭化水素に変換するのに使用されるFCC触媒を含むクラッキング触媒などの触媒の性能に有害な影響を及ぼす可能性がある。様々な汚染物質は、クラッキング触媒を毒してその活性を低減させ、および/またはプロセスへの毎日の新鮮な触媒の補充率を増やすことが必要になり得る。汚染物質は、細孔を詰まらせるか、または触媒細孔の拡散性を低減させて、触媒の有効性を阻害する可能性もある。
【0048】
汚染物質捕捉添加剤は、上述のように、触媒よりも汚染物質に対してより高い親和性を有するべきである。したがって、使用される特定のタイプの汚染物質捕捉添加剤は、標的とされる特定の汚染物質に依存し得る。本明細書に開示される一部の実施形態で有用な汚染物質捕捉添加剤は、FCC触媒販売業者により製造される市販のバナジウム/ニッケル/鉄捕捉剤(添加剤)を含んでいてもよい。
【0049】
本明細書の実施形態は、FCC触媒および添加剤型クラッキング触媒の混合物を利用してもよい。本明細書の他の実施形態は、FCC触媒および金属/汚染物質捕捉触媒の混合物を利用してもよい。さらに他の実施形態は、FCC触媒、添加剤型クラッキング触媒および捕捉触媒の混合物を利用してもよい。
【0050】
用いられる様々な触媒の均質な混合物として触媒再生器から循環されるが、本明細書の実施形態は、望ましくは、触媒の1種または複数種を反応器内で高濃度化してもよい。例えば、反応器槽内で生じる反応が高濃度触媒に対して強化されるように、その槽内で添加剤型クラッキング触媒または捕捉触媒の濃度を増大させ、高濃度触媒を活かして反応器の動態を改善することが望ましい場合がある。
【0051】
本明細書の実施形態は、各触媒型の間のサイズおよび/または密度の差を活かすことによって、反応器内の触媒を有利に高濃度化し得る。例えば、Y型ベースゼオライトなどの第1触媒は、20~200ミクロンの範囲の粒度および0.60~1.0g/mlの範囲の見掛けの嵩密度を有していてもよい。ZSM-5またはZSM-11などの第2触媒は、20~350ミクロンの範囲の粒度および0.7~1.2g/mlの範囲の見掛けの嵩密度を有していてもよい。そのような触媒は、サイズおよび密度の一方または両方に基づいて分離されてもよく、より重いまたはより稠密な触媒は、有利に反応器へとリサイクルされて、反応器内で高濃度化されてもよい。反応器内でのそのような触媒分離および高濃度化は、一部の実施形態では、例えば米国特許第10450514号、同第10758883号、同第10351786号、または同第9452404号(それぞれが本明細書の実施形態に矛盾のない程度まで参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法およびシステムを使用して行われてもよい。
【0052】
廃棄物ベース原料の反応器システムおよび化石ベース原料の反応器システムのそれぞれは、再生器から同じ触媒混合物を受け取ってもよい。例えば触媒混合物は、FCC触媒およびZSM-5触媒をそれぞれ9:1~4:1の比(重量、体積、粒子数など)で含んでいてもよい。本明細書の実施形態による廃棄物ベース原料の反応器システム内のより大きくより稠密なZSM-5触媒の高濃度化によって、触媒混合物が廃棄物ベース原料の反応器システム内を循環して、FCC対ZSM-5比が0.2:1~9.5:1、例えば1:4になり得る。これらの比は単なる例示である。なぜなら、再生器内の触媒の比は、変数の中でもとりわけ、処理される化石ベース原料、化石ベース原料の反応器システムの構成、それぞれの新鮮な触媒の供給速度および使用済み触媒の引き出し速度、ならびに廃棄物ベース原料の反応器システムに関連する流動化条件および触媒分離/リサイクル変数(分離効率、リサイクル速度、新鮮な触媒の補充の供給速度、使用済み触媒引き出し速度など)に応じて変化し得るからである。
【0053】
特定の実施形態では、再生器内に含まれ再生器から循環する触媒混合物は、第1触媒対第2触媒の重量比が2:1~9:1の範囲であってもよく、この場合、第1触媒は、第2触媒よりも軽く、および/または第2触媒よりも稠密ではない。したがって、化石ベース炭化水素原料を変換するためのライザー反応器は、再生器内に含まれるものと同様の第1触媒対第2触媒の比で動作し得る。廃棄物ベース炭化水素原料を変換するための反応器は、再生器内に含まれるものと同様の比で触媒を受けながら、再生器内よりも低い循環第1触媒対第2触媒の比、例えば1:1~1:9の範囲の比で動作し得る。
【0054】
次に図1を参照すると、プラスチック廃棄物を、プラスチックを生成するための原料に変換するためのシステム1の簡略化したプロセスフロー図が例示されている。システム1は、第1反応器システム3および第2反応器システム5を含んでいてもよく、それぞれが、再生した触媒6、7を触媒再生器9から受け取り、使用済み触媒11、12を触媒再生器9に戻す。再生器9と反応器システム3、5との間を再循環される触媒混合物は、FCC触媒および添加剤触媒の混合物、例えばY-ゼオライトおよびZSM-5の混合物など、第1触媒と第2触媒との均質混合物であってもよい。例えば再生器9は、約600℃~約750℃の範囲の温度、および約1barg~約5bargの範囲の圧力で動作してもよい。
【0055】
化石由来炭化水素供給流13は、第1反応器システム3に供給されてもよい。化石由来炭化水素供給物は、上述のように、1種または複数種の炭化水素留分、例えばナフサ留分、軽油留分、または原油などに由来する他の炭化水素留分であってもよい。
【0056】
廃棄物由来炭化水素供給流15は、第2反応器システム5に供給されて、より軽質の炭化水素に変換(クラッキング)されてもよい。該システムは、ポリマー廃棄物原料などの廃棄物流を熱分解して、プラスチック廃棄物熱分解油などの廃棄物由来炭化水素供給流15を生成するための熱分解反応器(図示せず)を含んでいてもよい。例えば、触媒または非触媒プラスチック熱分解ユニット(図示せず)は、ポリマー廃棄物を熱分解して、他の生成物(図示せず)の中でもプラスチック廃棄物熱分解油流15を生成するように使用されてもよい。あるいは、プラスチック廃棄物熱分解油原料15は、遠隔の供給源(図示せず)から供給されてもよく、例えばトラックまたはパイプラインを介して図1の変換ユニットに供給されてもよい。
【0057】
第1反応器システム3内では、化石ベース炭化水素原料13を触媒混合物と接触させて、化石ベース原料の一部分をクラッキングしてもよい。化石ベース原料の気化、および/または所望の反応器温度、例えば500℃~約750℃の範囲の反応器温度への供給物の温度の上昇に必要とされる熱、ならびに吸熱性の熱(反応熱)に必要とされる熱は、再生器9からの高温再生触媒によって提供されてもよい。ライザー反応器を含んでもよい第1反応器システム3内の圧力は、典型的には約1barg~約5bargの範囲にある。反応熱は反応器の長さに沿って温度を低下させるので、反応器は、C4、C5およびナフサ範囲の炭化水素のクラッキングに好ましい場合がある温度、例えば600℃~750℃の温度で開始し、より重質の炭化水素原料をクラッキングするのに好ましい場合があるより低い反応器温度、例えば475℃~520℃まで低下してもよい。したがって、反応器への様々な供給物は、条件がそれらの処理に好ましい反応器の長さに沿って導入されてもよい。
【0058】
排出液17は反応器システム3から回収されてもよく、この排出液は、化石由来オレフィン(クラッキングした炭化水素生成物)、第1触媒および第2触媒を含んでいる。次いで、排出液17は、望む場合にはクエンチ処理されてもよく、分離システム19に前進させて第1排出液を分離することにより、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物11と、(ii)化石ベース炭化水素原料13の処理から得られる化石由来オレフィンおよび他の化石由来炭化水素生成物を含む第1反応器システム生成物流21とを回収してもよい。次いで、使用済み触媒の混合物11を触媒再生器9に戻して再生し、反応器内で再使用してもよい。クエンチ処理を使用する場合、重質真空軽油、常圧塔底油、重質炭化水素残油供給物、軽質循環油(LCO)などの炭化水素供給物、および/またはスチームが、クエンチ処理媒体として注入されてもよい。
【0059】
化石由来炭化水素生成物21からの使用済み触媒11の分離後、化石由来炭化水素生成物を分留システム23に前進させ、そこで化石由来炭化水素を、沸点の基づき任意の数の別々の化石由来炭化水素留分に分留してもよい。図示されるように、化石由来炭化水素生成物流21を分留システム23内で分留して、エチレン含有留分25、プロピレン含有留分27、ブテン含有留分29、C5留分31、ナフサ留分33、軽質循環油留分35およびスラリー油留分37を回収してもよい。これらの留分のそれぞれは、生成物留分として販売するためにさらに処理または回収されてもよい。例えばナフサ留分は、ガソリンプールで使用される芳香族を回収するために処理されてもよく、および/またはナフサ範囲の炭化水素を追加のエチレンおよびプロピレンに変換するために反応器システム3にリサイクルされてもよい。別の例として、C5留分は、ガソリンプール用に使用されてもよく、および/またはオレフィン変換ユニット(図示せず)に供給されるか、もしくは反応器システム3にリサイクルし戻されて、含まれるC5を追加のエチレンおよびプロピレンに変換してもよい。
【0060】
第2反応器システム5内では、プラスチック廃棄物熱分解油などの廃棄物由来炭化水素流15が、再生器9から提供された再生触媒混合物6から形成された高濃度触媒混合物と接触されてもよい。反応器システム5内の高濃度触媒混合物との接触によって、廃棄物由来炭化水素の一部分をクラッキングして、廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素、第1触媒ならびに第2触媒を含む第2反応器システム排出液を生成できる。廃棄物ベース原料の気化、および/または所望の反応器温度、例えば500℃~約750℃の範囲の反応器温度への供給物の温度の上昇に必要とされる熱、ならびに吸熱性の熱(反応熱)に必要とされる熱は、再生器9からの高温再生触媒によって提供されてもよい。例えばライザー反応器を含んでもよい第2反応器システム5内の圧力は、典型的には約1barg~約5bargの範囲にある。反応熱は、反応器の長さに沿って温度を低下させるので、反応器は、C4、C5およびナフサ範囲の炭化水素のクラッキングに好ましい場合がある温度、例えば600℃~750℃の温度で開始し、より重質の炭化水素原料をクラッキングするのに好ましい場合があるより低い反応器温度、例えば475℃~520℃まで低下してもよい。したがって、反応器への様々な廃棄物ベース供給物は、条件がそれらの処理に好ましい反応器の長さに沿って導入されてもよい。
【0061】
第2反応器システム内の高濃度触媒混合物は、再生器から第2反応器システムに供給された触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含み、したがって第2反応器システム内の触媒混合物は、触媒再生器または第1反応器内よりも高い濃度の第2触媒を有する。第2反応器システム内の変換および排出液の回収の後、第2反応器排出液は、望む場合には必要に応じてクエンチ処理されてもよく、次いで分離されて、第1触媒ならびに廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素を含む第1流と、第2触媒を含む第2流とを生成してもよい。次いで第2流は、追加の第2触媒として第2反応器システムに戻され、それによって第2反応器システム内で第2触媒を高濃度化してもよい。
【0062】
第2触媒が枯渇した第1流を、望む場合にはクエンチ処理し、触媒分離器に供給して、(i)使用済み第1触媒留分12と、(ii)廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2反応器システム生成物流49とを回収してもよい。次いで、使用済み触媒12は、再生および反応器内での再使用のために触媒再生器9に戻されてもよい。クエンチ処理を使用する場合、重質真空軽油、常圧塔底油、重質炭化水素残油供給物、軽質循環油(LCO)などの廃棄物ベース炭化水素供給物、および/またはスチームが、廃棄物ベース炭化水素クエンチ処理が分留システム51によって提供される場合などに、クエンチ処理媒体として注入されてもよい。
【0063】
廃棄物由来炭化水素生成物49から使用済み触媒12を分離した後、廃棄物由来炭化水素生成物を分留システム51に前進させてもよく、そこで廃棄物由来炭化水素を、沸点に基づいて任意の数の別々の廃棄物由来炭化水素留分に分留してもよい。図示されるように、廃棄物由来炭化水素生成物流49は、分留システム51内で分留されて、エチレン含有留分53、プロピレン含有留分55、ブテン含有留分57、C5留分59、ナフサ留分61、軽質循環油留分63および処理済み熱分解油留分65を回収してもよい。これらの留分のそれぞれは、廃棄物由来生成物留分として販売するためにさらに処理または回収されてもよい。例えば、回収され得る他の炭化水素留分の中でも、エチレンおよびプロピレン流は、必要な場合にはさらに精製されて、例えば99.8%よりも高い純度を有するポリマーグレードの廃棄物由来オレフィン留分を提供してもよい。次いで、そのような廃棄物由来オレフィン留分は、循環型ポリマーを生成するために重合ユニットに提供されてもよい。別の例として、ブテン含有留分57またはC4含有留分は、さらに分離/または処理されて、廃棄物由来プロピレンおよびエチレンを生成してもよく、次いで、これらを重合ユニットに提供して循環型ポリマーを生成してもよい。さらに別の例として、ナフサ留分61は、さらに精製および/または処理されて、循環型芳香族留分を回収してもよい。次いで、廃棄物由来芳香族は、ポリスチレン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、および当技術分野で公知の多くの他のタイプの芳香族含有ポリマーなどの芳香族含有循環型ポリマーの生成に提供されてもよい。様々な生成物留分またはそれらの一部分は、ポリエーテル、ポリエステルおよび他の循環型ポリマーの生成に好適な原料を提供するためにさらに処理されてもよい。
【0064】
容易に想像できるように、多数の多くのタイプの任意の循環型ポリマーを、本明細書の実施形態によるプラスチック廃棄物の熱分解および処理から得られる廃棄物由来留分から作製することができる。一般に、本明細書の実施形態は、廃棄物由来炭化水素生成物留分から回収されたまたはそれに由来する1種または複数種のモノマーを直接または間接的に重合システムに供給して、循環型ポリマーを生成することを含んでいてもよい。本明細書の実施形態は、考えられる循環型ポリマーの中でも、上述のプラスチック廃棄物熱分解油を形成するために熱分解され得るポリマーを含む循環型ポリマーの生成を企図する。
【0065】
一部の実施形態では、第2反応器システム5は、図1Aに図示されるものと同様であってもよい。再生され混合された第1および第2触媒6は、共通の触媒再生器9からフローライン71を介して制御弁72を経てライザー反応器73の底部に供給されてもよい。ライザー反応器73の底部で、再生混合触媒は、フローライン74を介して供給された追加の第2触媒と混合される。フローライン74中の触媒は、より高い濃度のより大きいおよび/またはより重い第2触媒、例えばZSM-5を有していてもよい。
【0066】
ライザー反応器73内の混合触媒は、再生器9からの混合物6で供給されるものに比べてより高い濃度のより大きいおよび/またはより重い第2触媒を有しているが、この混合触媒は、次いで、二次ライザー反応器73内で炭化水素と接触させてもよい。例えば、プラスチック廃棄物熱分解油供給物5は、ライザー反応器73のより低い部分に導入されてもよく、上昇スチームは、使用される場合、フローライン75を介してライザー反応器73に供給されてもよい。プラスチック廃棄物熱分解油は、望む場合には、図1Aに図示されないライザー反応器73に沿った各種の場所に供給することもできる。
【0067】
ライザー反応器73内でクラッキング反応が生じると、プラスチック廃棄物熱分解油供給物およびスチーム供給物は、クラッキングした炭化水素生成物と一緒に第1および第2触媒の両方を同伴するのに十分な流量で維持される。次いで、触媒混合物を含む反応器排出液流は、より稠密なおよび/またはより大きい第2触媒の高濃度化を容易にするのに使用されてもよい固体分離装置(SSD)77に進入する。SSD77は、ライザー反応器73からの排出液を蒸気/第1触媒流79および第2触媒流81に分離してもよい。分離器から回収された第2触媒は、フローライン74を介してライザー反応器73にリサイクルされ戻して継続的に反応させ、上述のように、ライザー反応器73内にさらに高い濃度の第2触媒を提供してもよい。
【0068】
次いで、フローライン79中のクラッキングした炭化水素および第1触媒を離脱槽83に供給して、第1触媒をクラッキングした炭化水素生成物から分離してもよい。軽質オレフィン、C炭化水素、ナフサ範囲の炭化水素およびより重質の炭化水素を含むクラッキングした廃棄物由来炭化水素生成物は、フローライン49を介して回収されてもよく、次いで分離されて、所望の廃棄物由来生成物または生成物留分を回収してもよい。次いで、第1触媒12は、離脱槽83から回収され、触媒再生器に戻されてもよい。
【0069】
上昇スチーム75に加え、上昇媒体/反応物として、Cオレフィンもしくはパラフィン、ナフサまたは他の外部流などの追加の廃棄物由来供給流を注入するように準備してもよい。そのような供給流の場所は、それぞれの流れに含まれる炭化水素のクラッキングに対して優先的な条件が提供されるような場所であってもよい。
【0070】
第2反応器システム5は、ライザー反応器、固形分分離装置および離脱槽を含むものとして図1Aに例示されているが、反応器内で第2触媒を分離し高濃度化するための他の構成が使用されてもよい。さらに、第2反応器システムの反応器は、ライザー反応器に限定されない。一部の実施形態では、第2反応器システムは、気泡床または移動床反応器などの反応器を含んでいてもよく、そこでは、流動化が、両触媒のうちより軽質のものまたはより稠密ではないもののみを反応器外に運ぶのに十分であり、それによって反応器内の第2触媒が高濃度化されると共に、炭化水素排出液と一緒に第1触媒が除去される。反応器槽内で高濃度化された第2触媒は、必要に応じて再生のために引き出されてもよい。
【0071】
さらに他の実施形態では、第2反応器システム5は、図2に示されるものなどの2つ以上の反応器または反応器システムを含んでいてもよく、図2では、同様の番号は同様の部分を表す。多数の反応器システム5を使用して、例えば、第1段階反応器または反応器システム5A内で汚染物質を含む廃棄物由来熱分解油を有利に前処理してもよく、次いで、処理済み廃棄物由来熱分解油を第2段階反応器または反応器システム5B内でさらにクラッキングしてもよい。さらに、上記にて論じた固形分分離概念の使用は、添加剤型触媒、クラッキング触媒および/または捕捉触媒を、第1および第2段階反応器または反応器システムのいずれかまたは両方内で高濃度化するのに使用されてもよい。
【0072】
例えば、触媒再生器9からの再生触媒混合物は、混合流乱流床/移動床反応器5Aに供給されてもよい。捕捉触媒89は、混合流乱流床/移動床反応器5Aに供給されてもよい。捕捉触媒は、再生器から供給される混合触媒中の触媒のいずれかよりも大きいおよび/または稠密な粒子から形成されてもよい。反応器5A内の流れレジームは、捕捉触媒が乱流または気泡床を形成する一方、再生混合触媒が移動床を形成し、炭化水素および他の流動化気体と共に流れ、混合触媒および炭化水素が、第1段階反応器5Aからの排出液91として回収されるように維持されてもよい。必要に応じて、捕捉触媒は、反応器システム5Aからフローライン93を介して回収されてもよく、廃棄されてもよく、または金属を回収するためにさらに処理されてもよい。
【0073】
第2段階反応器システム5Bは、図1Aに関して説明したものと同様であってもよく、混合触媒および処理済み炭化水素を含む供給混合物91を受け取る。次いで、第2反応器排出液として回収された変換生成物および触媒は、初期分離器に供給されて、混合触媒のうちより大きい/より稠密な触媒をリサイクルして、反応器5B内のより大きい/より稠密な触媒の高濃度化を可能にしてもよい。次いで、変換炭化水素およびより軽質の/より稠密ではない触媒を分離し、使用済み触媒12を元の再生器9に戻し、廃棄物由来炭化水素生成物を分留システム51に前進させて、図1に関して上述したように処理してもよい。
【0074】
図2に示されるように、処理スキームは、熱分解油供給汚染物質の除去と、廃棄物由来炭化水素流からの軽質オレフィンおよび芳香族の生成のための触媒処理とを一体化している。これは、汚染された廃棄物由来原料の処理および加工を有利に可能することができ、捕捉触媒を含む様々な触媒を高濃度化できることから、従来提案されている水素化処理システムよりも効率的で費用効果のある、廃棄物由来原料を処理する手段を提供することができる。
【0075】
図2は、3粒子系(再生器からの混合クラッキング触媒+捕捉触媒)を含むものとして上に説明したが、本明細書の実施形態は、添加剤が豊富なFCC触媒および捕捉触媒が再生器から循環される2粒子-2段階反応器システムをさらに企図する。得られた汚染物質を含む触媒は、第1段階反応器5Aから回収されてもよく、一方、添加剤が豊富なFCC触媒は、処理済み供給蒸気と共に第2段階反応器5Bに進ませてもよい。多数の流れレジーム(乱流、混合および輸送)で動作する本明細書の反応器システムの柔軟性によって、粒子/触媒と反応器段階内の選択粒子の高濃度化との他の様々な組合せが考えられる。
【0076】
図2による方法の別の例として、ポリマー廃棄物原料を熱分解して、鉄、カルシウム、塩素または他の汚染物質などの1種または複数種の汚染物質をある濃度で有するプラスチック廃棄物熱分解油15を生成してもよい。第1触媒および第2触媒を含む触媒混合物は、触媒再生器9内で再生されてもよく、第2触媒は、1種または複数種の汚染物質を捕捉するように構成される。触媒混合物の第1部分は、第1反応器システム3に供給されてもよく、触媒混合物の第2部分は、第2反応器システム5に供給されてもよい。
【0077】
第1反応器システム3内では、化石ベース原料を触媒混合物と接触させて、化石ベース原料の一部分をクラッキングすることにより、化石由来オレフィン、第1触媒および第2触媒を含む第1排出液17を生成してもよい。次いで、第1排出液は、図1に関して説明したものと同様に処理して、第1排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物と、(ii)化石由来オレフィンおよび他の化石由来炭化水素生成物21を含む第1反応器システム生成物流とを回収してもよい。
【0078】
第2反応器システム内では、汚染されたプラスチック廃棄物熱分解油は、第1段階反応器内で高濃度触媒混合物と接触させて、プラスチック廃棄物熱分解油から汚染物質を除去し、プラスチック廃棄物熱分解油の一部分をクラッキングしてもよい。高濃度触媒混合物は、再生器から第2反応器システムに供給された触媒混合物の一部分および追加の第2触媒を含んでいてもよい。したがって第1段階反応器内の触媒混合物は、触媒再生器9内よりも高い濃度の第2触媒を有していてもよい。第1段階反応器5A内での混合触媒の接触は、低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油、第1触媒、および捕捉された汚染物質を含有する第2触媒を含む第1段階反応器排出液を生成し得る。次いで、第1段階反応器排出液を分離して、第1触媒、および低減した汚染物質濃度を有する処理済みプラスチック廃棄物熱分解油を含む第1流91と、第2触媒を含む第2流とを生成してもよい。次いで、第2流を追加の第2触媒として第2反応器に供給し、それによって第1段階反応器システム内で第2触媒(捕捉触媒)を高濃度化してもよい。次いで、第1流を第2段階反応器に供給して、処理済みプラスチック廃棄物熱分解油をクラッキングし、かつ使用済み触媒ならびに廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2段階反応器排出液を回収してもよい。次いで、第2段階反応器排出液を分離して、(i)使用済み触媒と、(ii)廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第2反応器システム生成物流49とを回収してもよい。
【0079】
次いで、(i)反応器システム3から回収された、使用済み第1触媒および使用済み第2触媒11の混合物と、(ii)反応器システム5から回収された使用済み触媒12とのそれぞれは、触媒再生器に供給されて再生され、炭化水素の変換において継続的に使用されてもよい。
【0080】
図1のシステムのように、第2反応器システム5から回収された廃棄物由来炭化水素生成物とは別にして、第1反応器システム3から回収された化石ベース炭化水素留分を維持することが望ましい場合がある。このように、分離システム51からの全ての生成物は、廃棄物由来生成物として保証可能かつ正しく説明可能であってもよく、これらは例えば循環型ポリマーを生成するのに使用されてもよい。
【0081】
図2に示されていないが、本明細書の方法およびシステムは、廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を第2反応器システム5の第1段階反応器5Aに供給することを含んでいてもよい。例えばC4、C5または全範囲のナフサの軽質ナフサ留分が、より軽質の炭化水素のクラッキングに対して優先的な条件で動作してもよい第1段階反応器5Aに供給されてもよい。
【0082】
さらに、本明細書の方法およびシステムは、廃棄物由来炭化水素生成物から回収された1種または複数種の炭化水素留分を第2反応器システムの第2段階反応器5Bに供給することも企図する。例えば、重質ナフサ留分または他のより重質の炭化水素留分が、より重質の炭化水素のクラッキングに対して優先的な条件で動作してもよい第2段階反応器5Bに供給されてもよい。
【0083】
図2に関して説明した反応器システムおよび以下に説明する図3に関する反応器システムのそれぞれにおける反応条件は、図1に関して説明したものと同様であってもよい。例えば、再生器9は、約600℃~約750℃の範囲の温度および約1barg~約5bargの範囲の圧力で動作してもよい。化石ベースおよび廃棄物ベース炭化水素原料を変換するための反応器は、約450℃~約750℃の範囲の温度で動作してもよい。同様に、図2および3の実施形態で回収された反応器排出液は、望む場合にはクエンチ処理してもよい。
【0084】
図2に関して上に説明したように、共通の再生器は、廃棄物由来炭化水素原料を処理するための2段階反応器システムの第1段階反応器にのみ再生触媒を供給するするように構成されてもよい。本明細書の他の実施形態は、廃棄物由来炭化水素原料を処理するため2段階反応器システムの第1段階反応器および第2段階反応器のそれぞれへの再生触媒の供給を企図する。さらに他の実施形態では、廃棄物由来炭化水素原料を処理するための2段階反応器システムの第2段階反応器システムは、図3に示されるものなど、第1段階から処理済み供給物を間接的に受け取ってもよい。
【0085】
次に図3を参照すると、廃棄物由来炭化水素供給物を処理するためのシステムの簡略化したプロセスフロー図が例示されており、同様の番号は同様の部分を表す。一部の実施形態では、図3のシステムは、図1および2に例示したものと同様な化石由来炭化水素の処理と併用されてもよく、反応器システム3は、図3には例示されていない。他の実施形態では、図3のシステムは、廃棄物由来炭化水素を処理するためのスタンドアローン型システムとして使用されてもよい(即ち、化石由来炭化水素の処理と一体化されていない)。
【0086】
図3の実施形態は、それぞれが触媒再生器9から混合触媒(6、100)を受け取る第1段階反応器システム5Aおよび第2段階反応器システム5Bを含む2段階反応器システムを含む。また、図3の実施形態は、処理済み廃棄物由来炭化水素を第1段階反応器システム5Aから第2段階反応器システム5Bに間接的に提供する。
【0087】
図3に示されるように、廃棄物由来炭化水素供給流15は、第1段階反応器システム5Aに供給されて、含まれる炭化水素を、第1触媒および第2触媒を含む混合触媒系との接触を介して、より軽質の炭化水素に変換(クラッキング)してもよい。該システムは、ポリマー廃棄物原料などの廃棄物流を熱分解して、プラスチック廃棄物熱分解油などの廃棄物由来炭化水素供給流15を生成するための熱分解反応器(図示せず)を含んでいてもよい。例えば、触媒または非触媒プラスチック熱分解ユニット(図示せず)を使用して、ポリマー廃棄物を熱分解し、生成物(図示せず)の中でもとりわけ、プラスチック廃棄物熱分解油流15を生成してもよい。あるいは、プラスチック廃棄物熱分解油原料15は、遠隔の供給源(図示せず)から供給されてもよく、例えばトラックまたはパイプラインを介して図3の変換ユニットに供給されてもよい。廃棄物由来炭化水素流15が、汚染された廃棄物由来炭化水素流である場合、第1段階反応器5A内での炭化水素のクラッキングに加え、汚染物質が、捕捉触媒であってもよい第2触媒によって捕獲されることなどにより、廃棄物由来炭化水素から除去されてもよい。
【0088】
第1段階反応器システム5A内では、プラスチック廃棄物熱分解油などの廃棄物由来炭化水素流15を、再生器9から提供された再生触媒混合物6から形成された高濃度触媒混合物と接触させてもよい。反応器システム5内の高濃度触媒混合物との接触は、廃棄物由来炭化水素の一部分をクラッキングし、かつ汚染物質を除去して、廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素、第1触媒ならびに第2触媒を含む第1段階反応器システム排出液を生成してもよい。
【0089】
第1段階反応器システム内の高濃度触媒混合物は、再生器9から第1段階反応器システム5Aに供給された触媒混合物の一部分6および追加の第2触媒を含み、したがって第1段階反応器システム5A内の触媒混合物は、触媒再生器9内よりも高い濃度の第2触媒を有する。第1段階反応器システム5A内の変換および排出液の回収の後、第1段階反応器排出液を分離して、第1触媒ならびに処理済み廃棄物由来オレフィンおよび他の炭化水素を含む第1流と、第2触媒を含む第2流とを生成してもよい。次いで、第2流は、追加の第2触媒として第1段階反応器システム5Aに戻して、それによって第1段階反応器システム内で第2触媒を高濃度化してもよい。
【0090】
第2触媒が枯渇した第1流を触媒分離器に供給して、(i)使用済み第1触媒留分12と、(ii)廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素を含む第1段階反応器システム生成物流49とを回収してもよい。次いで、使用済み触媒12は、再生および反応器内での再使用のために触媒再生器9に戻されてもよい。
【0091】
廃棄物由来炭化水素生成物49からの使用済み触媒12の分離後、廃棄物由来炭化水素生成物を分留システム51に前進させてもよく、そこで廃棄物由来炭化水素は、沸点に基づいて任意の数の別々の廃棄物由来炭化水素留分に分留されてもよい。図示されるように、廃棄物由来炭化水素生成物流49は、分留システム51内で分留されて、エチレン含有留分53、プロピレン含有留分55、ブテン含有留分57、C5留分59、ナフサ留分61、軽質循環油留分63および処理済み熱分解油留分65を回収してもよい。
【0092】
処理済み廃棄物由来炭化水素は、分留システム51から、例えばライザー反応器を含んでもよい第2段階反応器システム5Bに提供されてもよい。第2段階反応器システム5Bに供給されてもよい処理済み廃棄物由来留分は、例えば、とりわけ、C4炭化水素57、C5炭化水素59、ナフサ範囲の炭化水素61Aおよび/または処理済み熱分解油65を含んでいてもよい。
【0093】
次いで、図示される処理済み廃棄物由来炭化水素原料またはナフサ/非変換油61Aおよび65を、第2段階反応器システム5B内で触媒混合物100と接触させて、処理済み廃棄物ベース原料の一部分をクラッキングしてもよい。追加の廃棄物由来オレフィン(クラッキングした炭化水素生成物)、第1触媒および第2触媒を含んでいる排出液は、第2段階反応器システム5Bから回収されてもよい。次いで、第2段階反応器システム5Bからの排出液を分離システム109に前進させて、排出液を分離して、(i)使用済み第1触媒および使用済み第2触媒の混合物111と、(ii)処理済み廃棄物ベース炭化水素原料61A、65の処理から得られた追加の廃棄物由来オレフィンおよび他の廃棄物由来炭化水素生成物を含む第2段階反応器システム生成物流113とを回収してもよい。次いで、使用済み触媒の混合物111は、再生および反応器内での再使用のために触媒再生器9に戻されてもよい。
【0094】
処理済み廃棄物由来炭化水素生成物113からの使用済み触媒111の分離後、処理済み廃棄物由来炭化水素生成物113を分留システム51に前進させて、第1段階反応器システム5Aから回収された蒸気生成物49と一緒に分離してもよい。
【0095】
図3に示されるプロセスの一部の実施形態では、第1段階反応器システム5Aは、ポリマー廃棄物材料をプラスチック廃棄物熱分解油に変換するための触媒熱分解反応器によるものであってもよい。例えば、プラスチック原料の触媒熱分解は、350℃~850℃の範囲、例えば約400℃~約750℃の範囲の温度などの高温でプラスチック原料を適切なプラスチック熱分解触媒と接触させることによって、実行されてもよい。一部の実施形態では、熱分解触媒は、使用済みFCCおよび/またはZSM-5触媒の個々の成分または混合物を含んでいてもよい。これらの触媒/添加剤は、選択された反応物、金属または汚染物質に対する反応性および/または吸着能などの所望の目的をもたらすように改変されてもよい。プラスチックの熱分解は、軽質ガス炭化水素生成物および液体炭化水素生成物を含む様々な炭化水素を生成し得る。次いで、熱分解生成物は、分留システム51に供給して、様々な炭化水素留分に分離してもよく、該様々な炭化水素留分は、本明細書の実施形態による触媒高濃度化反応器を含んでもよい1つまたは複数の第2段階反応器システム5Bに供給されてもよいプラスチック廃棄物熱分解油および他の廃棄物ベース供給物として使用される部分を含む。上述のように、第2反応器システム5Bに触媒を提供する再生器は、例えば図1の反応器システム3に関して説明したものと同様であってもよい化石ベース反応器システム(図示せず)に触媒を提供してもよい。
【0096】
実施例1
この実施例は、本明細書に記載される反応システムの接触クラッキング性能を例示する。実験は、熱分解油を変換するために、超安定Y型ゼオライト(USY)触媒とZSM-5添加剤との組合せを使用して、循環流動床(CFB)パイロットプラントで実施した。熱分解ユニットで処理されたプラスチック廃棄物の変換から得られた原料の基本性質を表1に示す。供給物Aはナフサ範囲の供給物であり、一方、供給物Bはナフサと重油とのブレンドである。
【0097】
軽質オレフィンを最大限にするためのプラスチック廃棄物のリサイクルからの様々な原料の可能性を研究した。表2で報告するパイロットプラント実験からの第1性能データセットは、表1で定義されるナフサ供給物、供給物Aに該当し、一方、第2セットは、供給物Bに該当する。表2に見られるように、熱分解油供給物の接触クラッキングの結果、非常に高い収率のエチレン、プロピレンおよびブチレンが生成された。両方のタイプの原料は同様の結果を示したことから、本明細書に開示される処理を使用して真の再循環型石油化学構成要素を製造できるこれら原料の可能性が実証されている。
【0098】
実験データは、本明細書の実施形態の明確な特徴も示しているが、触媒、方法およびハードウェアは、プラスチック廃棄物からの生態系および環境汚染に対する影響を低減させると同時に、軽質オレフィン(エチレン、プロピレンおよびブチレン)を最大限にするために触媒反応に有利となるように調整してもよい。この実施例は、本明細書に記載されるシステムを使用してこれらの非慣例的な供給物を軽質オレフィンにクラッキングする触媒、反応器条件およびメカニズムを明らかに実証している。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
実施例2
これらの実験において、熱分解プロセスユニットからの液体油(ナフサ範囲および重油)生成物のブレンドは、以下の表3に述べる条件でCFBパイロットプラントにおいてUSYおよびZSM-5触媒ブレンドの存在下で接触クラッキングに供された。表3に提示されたデータから、比較的高いC/O比と相まって1050°F~1100°Fに高めた反応器温度の結果、より高い軽質オレフィン(プロピレン、エチレンおよびブチレン)の収率が得られたことが明らかである。また、ケースCおよびケースDについて提供された条件では、熱分解由来油は、より高いオレフィン生成能力を示し、軽質オレフィンを最大限にするのに優先的な条件を反映している。
【0102】
【表3】
【0103】
上述のように、本明細書の実施形態は、真の循環型溶液をプラスチックリサイクルに提供できるシステムおよび方法を提供する。FCCユニットと関連しつつもそれ自体の分離生成物セクションを持つ単一の再生器二重触媒(SRDC)反応システム、または熱分解ユニットと一体化されたスタンドアローン型の目的生産ユニットを利用することによって、得られる生成物は100%循環型になるであろう。さらに、流動床触媒反応器の特性のため、例えば600トン/日以上の小さい容量を持つ熱分解ユニットなど、本質的に任意の容量を持つ熱分解ユニットから生成物を受け取るために経済的なサイズとすることができる。
【0104】
本明細書の実施形態は、経済的実現可能性因子である原料獲得および処理コストに対処するのにも役立つ。FCCプラットフォーム、およびより重要にはSRDCプラットフォームのため、本明細書の実施形態によるシステムは、供給物のばらつきおよび汚染物質の含量に関して本質的な柔軟性を有し、したがって選別およびクリーニングに関連するコストを低下させる。
【0105】
したがって、下流設備で熱分解油変換ステップとしてFCCおよび/またはSRDCプラットフォームを選択することは、熱分解油の量および品質の要件に関して上記列挙された因子に対処する。これらのプラットフォームを使用する本明細書の実施形態は、水素処理および水素化処理の必要性をなくし、既存の動作に対する影響を最小限にすることもできる。単一の再生器を使用しつつ、反応器システム内で選択された触媒を高濃度化する本明細書のシステムの能力は、典型的な化石ベース炭化水素流とははるかに異なる汚染された原料および様々な組成の廃棄物由来炭化水素の処理を可能にし、化石ベース炭化水素による希釈およびスチームクラッキングに勝る著しい利点と共に、並列プラスチック熱分解油ライザー反応器を含んでもよいFCCシステムに勝る利点も提供する。
【0106】
本明細書の実施形態のさらなる利点は、生成物の販売からの収益の因子に関する。FCCユニットにボルト連結されつつもそれ自体の分離生成物セクションを持つSRDCユニット、または熱分解ユニットと一体化されたスタンドアローン型の目的生産ユニットを利用することによって、生成物は100%循環型になるであろう。本明細書の実施形態から得られたオレフィンおよび他の価値ある生成物は、100%循環型で高濃度のものとすることができ、そのような生成物はプレミアがつき、したがってこのリサイクル経路の経済的実現可能性を支援することができる。
【0107】
全体として本明細書の実施形態は、FCC/SRDCプラットフォームを適用することによって、既存の設備と一体化する場合であろうと、目的生産専用設備においてであろうと、プラスチック廃棄物熱分解油を価値ある生成物に変換する能力を提供する。その利益は、(1)原料品質の柔軟性、(2)希釈する必要なく、または化石由来ナフサと混ぜ合わせる必要なく、より広範な組成および潜在的な汚染物質を扱う能力、(3)100%循環型でプレミア価格がつく分離生成物を生成する能力、(4)既存の下流設備の動作に対する良好な一体化および低い影響、(5)上述の利益の全てを維持しつつ、現在計画されている熱分解設備から生成される比較的少量の熱分解油(650t/日)と、将来のさらに大きいサイズの熱分解油(3,000t/日超)との両方を、SRDCまたはFCCユニットにおいて規模の経済で処理する能力に由来する。
【0108】
他に定義されない限り、使用される全ての技術的および科学的用語は、これらのシステム、装置、方法、プロセスおよび組成物が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0109】
単数形「1つまたは1種の(a)」、「1つまたは1種の(an)」、および「そのまたは上記(the)」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の指示対象を含む。
【0110】
本明細書および添付される特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprise)」、「有する」および「含む(include)」という単語、ならびにそれらの全ての文法上の変形例はそれぞれ、追加の要素またはステップを排除しないオープンで非限定的な意味を有するものとする。
【0111】
「必要に応じて」は、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいことを意味する。その記載は、事象または状況が生じる場合および生じない場合を含む。
【0112】
「およそ」または「約」という単語が使用される場合、この用語は、最大±10%、最大5%、最大2%、最大1%、最大0.5%、最大0.1%または最大0.01%の値のばらつきがあり得ることを意味する場合がある。
【0113】
範囲は、およその1つの特定の値からおよその別の特定の値までとして、それらの値を包含して表される場合がある。そのような範囲が表されるとき、別の実施形態は、上記範囲内の全ての特定の値およびそれらの組合せとともに、上記1つの特定の値から上記他の特定の値までであると理解されたい。
【0114】
本開示は限られた数の実施形態を含むが、本開示の利益を有する当業者なら、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態が考えられることが理解されよう。したがって、その範囲は、添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

図1
図1A
図2
図3
【国際調査報告】