(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ジペプチジルペプチダーゼ及びロイシンアミノペプチダーゼポリペプチドバリアント
(51)【国際特許分類】
C12N 9/48 20060101AFI20231227BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20231227BHJP
C07K 14/37 20060101ALI20231227BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231227BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231227BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231227BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231227BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231227BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231227BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231227BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231227BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C12N9/48 ZNA
C12N15/55
C07K14/37
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/06
A61P1/04
A61P29/00
A61K9/08
A61K38/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549130
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2021079522
(87)【国際公開番号】W WO2022090144
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/080170
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523155881
【氏名又は名称】アミラ バイオテック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョラー,ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ティーツ,シルヴィア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA58Y
4B065AA77X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA31
4B065CA44
4C076AA11
4C076BB01
4C076CC05
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4C076FF68
4C084AA02
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4C084AA07
4C084BA01
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4C084ZB08
4C084ZB11
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA10
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)及びロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチドの末端切断型バリアントであるペプチダーゼ活性を有するポリペプチド、それらをコードするベクターなどの核酸、並びに本明細書に記載される核酸を含み、且つ任意選択で、本明細書に記載されるポリペプチドを発現する宿主細胞に関する。本明細書に記載されるポリペプチド及び核酸は、医療適用において、例えば、グルテン関連障害、例えばセリアック病(CeD)及び非セリアックグルテン過敏症(NCGS)、並びに無グルテン食(GFD)から利益を得る可能性のある他の疾患の治療において有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端切断型ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)ポリペプチドを含むポリペプチド。
【請求項2】
末端切断型DPPIVポリペプチドにおいて、野生型DPPIVポリペプチドと比較して、(i)N末端で1個又は2個のアミノ酸が欠失しており、且つ/又は(ii)C末端で最大15個のアミノ酸が欠失している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で12~14個のアミノ酸が欠失している、請求項1又は2に記載のDPPIVポリペプチド。
【請求項4】
野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で13個又は14個のアミノ酸が欠失している、請求項1~3のいずれか一項に記載のDPPIVポリペプチド。
【請求項5】
野生型DPPIVポリペプチドが、配列番号1又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
(i)配列番号1の残基1~748によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(ii)配列番号1の残基1~747によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(iii)配列番号1の残基1~746によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(iv)配列番号1の残基1~745によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(v)配列番号1の残基2~748によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(vi)配列番号1の残基2~747によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(vii)配列番号1の残基2~746によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、及び
(viii)配列番号1の残基2~745によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチド。
【請求項7】
トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)に由来する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
ポリペプチドのN末端からジペプチドモチーフNH2-X-Proを切断する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)で産生される、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチドを含むポリペプチド。
【請求項11】
末端切断型LAPポリペプチドにおいて、野生型LAPポリペプチドと比較して、(i)N末端で最大7個のアミノ酸が欠失しており、且つ/又は(ii)C末端で最大23個のアミノ酸が欠失している、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
野生型LAPポリペプチドと比較してN末端で4~6個のアミノ酸が欠失している、請求項10又は11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
野生型LAPポリペプチドと比較してN末端で6個のアミノ酸が欠失している、請求項10~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で20~22個の間のアミノ酸が欠失している、請求項10~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で8個、16個、21個、又は22個のアミノ酸が欠失している、請求項10~14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で22個のアミノ酸が欠失している、請求項10~15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
野生型LAPポリペプチドが、配列番号2又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列を有する、請求項10~16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
(i)配列番号2の残基7~471によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド、
(ii)配列番号2の残基7~463によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド、
(iii)配列番号2の残基7~458によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド、
(iv)配列番号2の残基7~457によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド、及び
(v)配列番号2の残基7~456によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチド。
【請求項19】
トリコフィトン・ルブルムに由来する、請求項10~18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
単一アミノ酸がNH2-X-Pro配列でプロリンに接続している場合を除き、ポリペプチドのN末端から単一アミノ酸を切断する、請求項10~19のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
ピキア・パストリスで産生される、請求項10~20のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
(i)請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド、
(ii)請求項10~21のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は
(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ
を含む組成物。
【請求項23】
(i)請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド、及び
(ii)請求項10~21のいずれか一項に記載のポリペプチド
を含む組成物。
【請求項24】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチドと、請求項10~21のいずれか一項に記載のポリペプチドとの重量比が、1:20~1:5の間、好ましくは1:15~1:7.5の間、より好ましくは約1:9.5である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
以下の33マーペプチド:
LQLQPFPQPQLPYPQPQLPYPQPQLPYPQPQPF
を完全に分解する、請求項23又は24に記載の組成物。
【請求項26】
薬学的使用のための、請求項23~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
セリアック病の治療に使用するための、請求項23~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
経口組成物、特に液体経口組成物である、請求項23~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項30】
請求項29に記載の核酸でトランスフェクトされた細胞。
【請求項31】
請求項10~21のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項32】
請求項31に記載の核酸でトランスフェクトされた細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)及びロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチドの末端切断型バリアントであるペプチダーゼ活性を有するポリペプチド、それらをコードするベクターなどの核酸、並びに本明細書に記載される核酸を含み、且つ任意選択で、本明細書に記載されるポリペプチドを発現する宿主細胞に関する。本明細書に記載されるポリペプチド及び核酸は、医療適用において、例えば、グルテン関連障害、例えばセリアック病(CeD)及び非セリアックグルテン過敏症(NCGS)、並びに無グルテン食(GFD)から利益を得る可能性のある他の疾患の治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
コムギ、オオムギ、及びライムギは、歴史を通してヒトの食事における重要な主食であるが、消化耐性の免疫原性ペプチドの混合物であるその成分グルテンと、人体との間の相互作用は、ますます多様な臨床的、血清学的及び形態学的症状、並びに自己免疫反応の現れを誘発する。グルテンは、高分子グルテニン及び単量体アルコール可溶性グリアジンからなり、これは高い免疫原性又は毒性の潜在力を有する。プロリン及びグルタミンの高含有量、並びにリジン及びメチオニンの低含有量に起因して、グリアジンは、管腔内プロテアーゼ及び腸刷子縁膜酵素による分解に対して主に安定したままである。
【0003】
グリアジン及びグルテニンは、グルテンタンパク質の80%~85%を占める。グリアジンは、α/β-、γ-、及びω-グリアジンに分けられ、鎖内ジスルフィド結合を介して接続されているか(α/β-及びγ-グリアジン)、又は接続されていない(ω-グリアジン)、単量体タンパク質である。α-グリアジンのN末端ドメインは、プロリン及びグルタミンに富んだヘプタペプチドPQPQPFP及びペンタペプチドPQQPY及び最も特徴的な免疫原性フラグメントを含有する。
【0004】
グルテン関連障害は、ヒトの障害の3つの主なタイプを指す: 自己免疫性セリアック病、コムギアレルギー及び非セリアックグルテン過敏症。
【0005】
セリアック病(CeD)は、患者が、様々な腸及び腸外症状、例えば、グルテン消化中の不完全なタンパク質分解によって生成される、グルテン免疫原性ペプチド(GIP)によって誘発される特定の神経学的症状を発症する、慢性自己免疫障害である。これらの複合的GIPは、プロリン及びグルタミンに富んでおり、内在性の胃、膵臓及び腸の刷子縁プロテアーゼによって十分に消化されない。GIPは、遺伝的素因を持っている個体(ヒト白血球抗原HLA-DQ2及び/又はDQ8)においてT細胞エピトープとして機能し、CD4+ T細胞媒介性免疫応答を誘発する。これは、細胞傷害性T細胞の生成、並びに局所及び全身性炎症反応をもたらし、このことは、小腸の上皮内層の崩壊、並びに腸外の臨床症状及び合併症を説明する。
【0006】
患者は、下痢、嘔吐、膨満感、便秘、腹痛、体重減少、慢性疲労及び様々な他の症状を呈し得る。二次的合併症としては、以下に限定されないが、がん、骨粗鬆症及び骨減少症のリスクの増加、女性の流産及び不妊症、並びに子供の発育不全症候群が挙げられる。人口の約40%が、CeDの発症に必要とされる遺伝子型HLA-DQ2及び/又はHLA-DQ8ハプロタイプを保有する。全体の有病率は4.5%から0.75%に及ぶ。
【0007】
CeDの診断は、典型的には、患者の臨床歴及び総合的症状、血清学的試験、及び上部小腸における生検からの知見の組み合わせに基づく。典型的な症状を有する患者では、組織トランスグルタミナーゼに対する血清IgA抗体(抗tTG)の測定は、高い感度及び特異度を有する優れたスクリーニング方法であり、一次スクリーニング試験と見なされている。疑いのある個体の血液はまた、抗筋内膜(EMA)-IgA、抗グリアジン(AGA)又は脱アミド化グリアジン特異的抗体(DGP)の存在について試験され得る。
【0008】
さらなるグルテン関連合併症は、非セリアックグルテン過敏症(NCGS)である。NCGSは、CeD又はコムギアレルギー(WA)に罹患していない対象における、グルテン含有食品の摂取に関連する腸及び腸外症状を特徴とする症候群である。NCGSの有病率は、まだ明確には定められていないが、有病率は、研究される集団に応じて、一般集団の6%もの高さであると推定されている。
【0009】
NCGSでは、臨床的に、症状は、腸の障害(腹痛、下痢、吐き気、ボディマス減少、膨満感、及び鼓腸)から皮膚(紅斑、湿疹)、一般的全身性症状(例えば、「ぼんやりとした頭(foggy mind)」、頭痛、疲労、骨及び関節痛)、貧血、行動(注意障害、抑うつ、及び活動亢進)、及び慢性潰瘍性口内炎まで及ぶ。CeDとは対照的に、NCGSに対する具体的な遺伝的素因はこれまでに特定されておらず、血清学的バイオマーカーはNCGSについて利用可能ではない。なぜならばセリアック関連抗体の測定は、NCGSに対して感受性ではないか又は特異的ではないからである。
【0010】
適応免疫系が活性化されるCeDとは対照的に、NCGSでは、自然免疫系からの応答が上方制御されるようである。NCGS患者の胃腸管及びそれらの腸透過性は正常であり、それらの十二指腸粘膜の組織像における病変は軽微であるが、好酸球及び好塩基球の十二指腸固有層への浸潤の増加、及び循環好塩基球の活性化が、NCGS患者で観察されている。研究は、グルテン含有食品の摂取と、神経学及び精神医学障害/症状、例えば、運動失調、末梢神経障害、統合失調症、自閉症、抑うつ、不安、及び幻覚(いわゆるグルテン精神病)の出現との間の関係を調査し、グルテン関連ペプチドが、体循環に入り、腸外症状を引き起こし得ることが示唆されている。
【0011】
疾患の病因の様々なステップを標的化するか、又は小腸粘膜に到達する前に免疫原性ペプチドを無害にすることを目標とする治療戦略が開発中である。現在、CeD及びNCGSに対する唯一の治療オプションは、厳格なGFDである。この治療のゴールは、グルテン摂取及びGIP(グルテン関連障害の外部免疫誘因)の生成の最も厳格な回避である。臨床治療ゴールは、症状の消散及び/又は回避、及びGIP誘導性自己免疫反応の予防、並びに上部胃腸(GI)管における形態学的及び機能的変化(例えば、絨毛萎縮)の改善又は回避である。無グルテン製品中に存在し得る非常に微量のグルテンでも、完全なGFDを厳守していないため、免疫反応及び臨床症状を誘発し得る。GFDを厳守するための最大限の努力にもかかわらず、患者のかなりのサブグループは、不意のグルテン摂取をもたらす、食事の誤り及び交差汚染に起因して、症状を示したままである。
【0012】
CeD患者は、3~4ヶ月の期間、グルテンを完全及び厳格に回避する場合、臨床的、血清学的及び形態学的に無症候性になる。このことは、GIPの、永続する完全な酵素的分解が、CeDに対する治療として適格であることを示す。
【発明の概要】
【0013】
トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)のジぺプチジルペプチダーゼIV(ruDPPIV)及びトリコフィトン・ルブルムのロイシンアミノペプチダーゼII(ruLAPII)の組み合わせは、GIPの完全な分解をもたらす。
【0014】
P.パストリス(P. pastoris)発現プラットフォームにおけるruLAPII(ruLAPIIショート)及びruDPPIV(ruDPPIVショート)のショートバリアントの産生が、本明細書に記載される。ruLAPII及びruDPPIVのこれらのバリアントを精製し、それらの全長バリアントとともに酵素活性(U/mg精製タンパク質)について試験した。精製した短縮型バリアントを、無傷分子の質量分析によって分析した。
【0015】
ruDPPIVのショートバリアントが、全長バリアントと同様の酵素活性を示すことが見出された。ruLAPIIについて、全長バリアントと比較してわずかに低い活性が測定された:
・ruDPPIV_ショート: 12.7U/mg
・ruDPPIV全長: 12.4U/mg
・ruLAPII_ショート: 1.1U/mg
・ruLAPII全長: 1.5U/mg
【0016】
起こり得る分解を評価するための質量分析による試験は、以下を明らかにした: 分解産物のみを特定できた全長分子ruDPPIVとは対照的に、ruDPPIVショートについて、全長産物を見出すことができたが、分解物も見出すことができた。分解産物のみが特定された全長分子ruLAPIIとは対照的に、ruLAPIIショートについて、分解物は観察されなかった。
【0017】
提示される結果に基づいて、ruDPPIV及びruLAPIIのショートバリアントは、改善を示す。なぜならば、全長分子を質量分析で特定することができ(全長分子では、分解物のみが特定された)、短縮型バリアントは、依然として同様の酵素活性を示したからである。
【0018】
したがって、本発明は、活性を保持し、少なくとも部分的に分解に対して耐性がある、末端切断型ruDPPIV及びruLAPIIポリペプチドを産生できるという驚くべき結果に少なくとも部分的に基づく。
【0019】
概要
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、特にruDPPIV、又はロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)、特にruLAPIIの末端切断型バリアントであるペプチダーゼ活性を有するポリペプチドを提供する。ruDPPIV及びruLAPIIは、皮膚糸状菌トリコフィトン・ルブルムに由来するペプチダーゼである。
【0020】
一態様では、本発明は、末端切断型ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)ポリペプチドを含むポリペプチドを提供する。一実施形態では、末端切断は、N末端及び/又はC末端切断である。一実施形態では、末端切断型DPPIVポリペプチドは、野生型DPPIVポリペプチドのフラグメントである。
【0021】
様々な実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、又は少なくとも14個のアミノ酸が欠失している。様々な実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、又は15個のアミノ酸が欠失している。これら及び他の実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドと比較してN末端で少なくとも1個のアミノ酸が欠失している。これら及び他の実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドと比較してN末端で1個又は2個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドと比較してN末端で少なくとも1個のアミノ酸が欠失しており、且つ野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で少なくとも14個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドと比較してN末端で1個のアミノ酸が欠失しており、且つ野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で14個のアミノ酸が欠失している。
【0022】
一実施形態では、末端切断型DPPIVポリペプチドにおいて、野生型DPPIVポリペプチドと比較して、(i)N末端で1個又は2個のアミノ酸が欠失しており、且つ/又は(ii)C末端で最大15個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で12~14個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で13個又は14個のアミノ酸が欠失している。
【0023】
一実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドは、配列番号1又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列を有する。
【0024】
様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号1又はそのバリアントの残基1~745、1~746、1~747、1~748、1~749、1~750、1~751、1~752、1~753、1~754、1~755、1~756、1~757、1~758、又は1~759によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含む。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号1又はそのバリアントの残基2~745、2~746、2~747、2~748、2~749、2~750、2~751、2~752、2~753、2~754、2~755、2~756、2~757、2~758、又は2~759によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含む。
【0025】
さらなる態様では、本発明は、
(i)配列番号1の残基1~748によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(ii)配列番号1の残基1~747によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(iii)配列番号1の残基1~746によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(iv)配列番号1の残基1~745によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(v)配列番号1の残基2~748によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(vi)配列番号1の残基2~747によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(vii)配列番号1の残基2~746によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、及び
(viii)配列番号1の残基2~745によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドを提供する。
【0026】
一実施形態では、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、トリコフィトン・ルブルムに由来する。
【0027】
一実施形態では、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、ポリペプチドのN末端からジペプチドモチーフNH2-X-Proを切断する。
【0028】
一実施形態では、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)で産生される。
【0029】
異なる実施形態では、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、それが由来する野生型DPPIVポリペプチドの配列、例えば、配列番号1又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列を含まず、好ましくは、それが由来する野生型DPPIVポリペプチドの非末端切断型配列、例えば、配列番号1又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列、特に、末端切断型DPPIVポリペプチドと比較してより少ない程度に末端切断されている、それが由来する野生型DPPIVポリペプチドの配列、例えば、配列番号1又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列を含まない。例えば、野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で14個のアミノ酸が欠失している末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドの場合、ポリペプチドは、非末端切断型の、すなわち野生型の、DPPIVポリペプチドのアミノ酸配列を含まず、好ましくは、例えば、野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で13個以下のアミノ酸が欠失している野生型DPPIVポリペプチドのアミノ酸配列を含まない。同様に、例えば、野生型DPPIVポリペプチドの残基1~746によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型DPPIVポリペプチドを含む末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドの場合、ポリペプチドは、非末端切断型の、すなわち野生型の、DPPIVポリペプチドのアミノ酸配列を含まず、好ましくは、野生型DPPIVポリペプチドの残基1~747又はより多くの残基によって表されるアミノ酸配列を含まない。言い換えれば、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドにおいて末端切断型DPPIVポリペプチドのN末端及び/又はC末端に存在し得る配列は、好ましくは、野生型DPPIVポリペプチドと比較して末端切断型DPPIVポリペプチドにおいて末端切断されている又は欠失しているアミノ酸に一致しない。したがって、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、それが由来する野生型DPPIVポリペプチドの全長配列、又は末端切断型DPPIVポリペプチドのアミノ酸配列より長い、野生型DPPIVポリペプチドの全長配列の連続アミノ酸配列を含まない。
【0030】
一実施形態では、野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で特定数のアミノ酸が欠失している場合、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、野生型DPPIVポリペプチドと比較してC末端で欠失しているアミノ酸によって表されるアミノ酸配列を含まない。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号1又はそのバリアントの残基747~760、748~760、749~760、750~760、751~760、752~760、753~760、754~760、又は755~760によって表されるアミノ酸配列を含まない。
【0031】
本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、それが由来する野生型DPPIVポリペプチドの活性を保持する。本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドは、それが由来する野生型DPPIVポリペプチドの活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を保持する。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドからなるポリペプチドを提供し、これは、任意選択でシグナルペプチド、例えばピキア・パストリスにおける分泌発現に有用なシグナルペプチドに融合され、シグナルペプチドは、好ましくは末端切断型DPPIVポリペプチドのN末端に融合される。
【0033】
一実施形態では、末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド及び/又は末端切断型DPPIVポリペプチドは、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチドを含むポリペプチドを提供する。一実施形態では、末端切断は、N末端及び/又はC末端切断である。一実施形態では、末端切断型LAPポリペプチドは、野生型LAPポリペプチドのフラグメントである。
【0035】
様々な実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、又は少なくとも22個のアミノ酸が欠失している。様々な実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、又は23個のアミノ酸が欠失している。これら及び他の実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してN末端で少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、又は少なくとも6個のアミノ酸が欠失している。これら及び他の実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してN末端で1個、2個、3個、4個、5個、6個、又は7個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してN末端で少なくとも6個のアミノ酸が欠失しており、且つ野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で少なくとも22個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してN末端で6個のアミノ酸が欠失しており、且つ野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で22個のアミノ酸が欠失している。
【0036】
一実施形態では、末端切断型LAPポリペプチドにおいて、野生型LAPポリペプチドと比較して、(i)N末端で最大7個のアミノ酸が欠失しており、且つ/又は(ii)C末端で最大23個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してN末端で4~6個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してN末端で6個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で20~22個の間のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で8個、16個、21個、又は22個のアミノ酸が欠失している。一実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で22個のアミノ酸が欠失している。
【0037】
一実施形態では、野生型LAPポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列を有する。
【0038】
様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントの残基1~456、1~457、1~458、1~459、1~460、1~461、1~462、1~463、1~464、1~465、1~466、1~467、1~468、1~469、1~470、1~471、1~472、1~473、1~474、1~475、1~476、1~477、又は1~478によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントの残基2~456、2~457、2~458、2~459、2~460、2~461、2~462、2~463、2~464、2~465、2~466、2~467、2~468、2~469、2~470、2~471、2~472、2~473、2~474、2~475、2~476、2~477、又は2~478によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントの残基3~456、3~457、3~458、3~459、3~460、3~461、3~462、3~463、3~464、3~465、3~466、3~467、3~468、3~469、3~470、3~471、3~472、3~473、3~474、3~475、3~476、3~477、又は3~478によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントの残基4~456、4~457、4~458、4~459、4~460、4~461、4~462、4~463、4~464、4~465、4~466、4~467、4~468、4~469、4~470、4~471、4~472、4~473、4~474、4~475、4~476、4~477、又は4~478によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントの残基5~456、5~457、5~458、5~459、5~460、5~461、5~462、5~463、5~464、5~465、5~466、5~467、5~468、5~469、5~470、5~471、5~472、5~473、5~474、5~475、5~476、5~477、又は5~478によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントの残基6~456、6~457、6~458、6~459、6~460、6~461、6~462、6~463、6~464、6~465、6~466、6~467、6~468、6~469、6~470、6~471、6~472、6~473、6~474、6~475、6~476、6~477、又は6~478によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントの残基7~456、7~457、7~458、7~459、7~460、7~461、7~462、7~463、7~464、7~465、7~466、7~467、7~468、7~469、7~470、7~471、7~472、7~473、7~474、7~475、7~476、7~477、又は7~478によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントの残基8~456、8~457、8~458、8~459、8~460、8~461、8~462、8~463、8~464、8~465、8~466、8~467、8~468、8~469、8~470、8~471、8~472、8~473、8~474、8~475、8~476、8~477、又は8~478によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む。
【0039】
さらなる態様では、本発明は、
(i)配列番号2の残基7~471によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド、
(ii)配列番号2の残基7~463によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド、
(iii)配列番号2の残基7~458によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド、
(iv)配列番号2の残基7~457によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド、及び
(v)配列番号2の残基7~456によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドを提供する。
【0040】
一実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、トリコフィトン・ルブルムに由来する。
【0041】
一実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、単一アミノ酸がNH2-X-Pro配列でプロリンに接続している場合を除き、ポリペプチドのN末端から単一アミノ酸を切断する。
【0042】
一実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、ピキア・パストリスで産生される。
【0043】
異なる実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、それが由来する野生型LAPポリペプチドの配列、例えば、配列番号2又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列を含まず、好ましくは、それが由来する野生型LAPポリペプチドの非末端切断型配列、例えば、配列番号2又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列、特に、末端切断型LAPポリペプチドと比較してより少ない程度に末端切断されている、それが由来する野生型LAPポリペプチドの配列、例えば、配列番号2又はそのバリアントによって表されるアミノ酸配列を含まない。例えば、野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で22個のアミノ酸が欠失している末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドの場合、ポリペプチドは、非末端切断型の、すなわち野生型の、LAPポリペプチドのアミノ酸配列を含まず、好ましくは、例えば、野生型LAPポリペプチドと比較してC末端で21個以下のアミノ酸が欠失している野生型LAPポリペプチドのアミノ酸配列を含まない。同様に、例えば、野生型LAPポリペプチドの残基1~457によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドの場合、ポリペプチドは、非末端切断型の、すなわち野生型の、LAPポリペプチドのアミノ酸配列を含まず、好ましくは、野生型LAPポリペプチドの残基1~458又はより多くの残基によって表されるアミノ酸配列を含まない。同様に、例えば、野生型LAPポリペプチドの残基7~457によって表されるアミノ酸配列からなる末端切断型LAPポリペプチドを含む末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドの場合、ポリペプチドは、非末端切断型の、すなわち野生型の、LAPポリペプチドのアミノ酸配列を含まず、好ましくは、野生型LAPポリペプチドの残基6~457、7~458、又は6~458又はより多くの残基によって表されるアミノ酸配列を含まない。言い換えれば、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドにおいて末端切断型LAPポリペプチドのN末端及び/又はC末端に存在し得る配列は、好ましくは、野生型LAPポリペプチドと比較して末端切断型LAPポリペプチドにおいて末端切断されている又は欠失しているアミノ酸に一致しない。したがって、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、それが由来する野生型LAPポリペプチドの全長配列、又は末端切断型LAPポリペプチドのアミノ酸配列より長い、野生型LAPポリペプチドの全長配列の連続アミノ酸配列を含まない。
【0044】
一実施形態では、野生型LAPポリペプチドと比較してN末端及び/又はC末端で特定数のアミノ酸が欠失している場合、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、野生型LAPポリペプチドと比較してN末端及び/又はC末端で欠失しているアミノ酸によって表されるアミノ酸配列を含まない。様々な実施形態では、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、配列番号2又はそのバリアントの残基1~6によって表されるアミノ酸配列を含まず、且つ/又は配列番号2又はそのバリアントの残基458~479、459~479、460~479、461~479、462~479、463~479、464~479、465~479、466~479、467~479、468~479、469~479、470~479、471~479、472~479、473~479、又は474~479によって表されるアミノ酸配列を含まない。
【0045】
本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、それが由来する野生型LAPポリペプチドの活性を保持する。本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドは、それが由来する野生型LAPポリペプチドの活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を保持する。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドからなるポリペプチドを提供し、これは、任意選択でシグナルペプチド、例えばピキア・パストリスにおける分泌発現に有用なシグナルペプチドに融合され、シグナルペプチドは、好ましくは末端切断型LAPポリペプチドのN末端に融合される。
【0047】
一実施形態では、末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド及び/又は末端切断型LAPポリペプチドは、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる。
【0048】
さらなる態様では、本発明は、
(i)本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、
(ii)本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド、又は
(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ
を含む組成物を提供する。
【0049】
さらなる態様では、本発明は、
(i)本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチド、及び
(ii)本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチド
を含む組成物を提供する。
【0050】
一実施形態では、本明細書に記載される組成物において、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドは、組成物中のDPPIVポリペプチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%を構成する。一実施形態では、本明細書に記載される組成物において、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドは、組成物中のLAPポリペプチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%を構成する。例えば、本明細書に記載される組成物において、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドは、組成物中のDPPIVポリペプチドの少なくとも70%を構成し、且つ本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドは、組成物中のLAPポリペプチドの少なくとも70%を構成する。例えば、本明細書に記載される組成物において、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドは、組成物中のDPPIVポリペプチドの少なくとも80%を構成し、且つ本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドは、組成物中のLAPポリペプチドの少なくとも80%を構成する。例えば、本明細書に記載される組成物において、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドは、組成物中のDPPIVポリペプチドの少なくとも90%を構成し、且つ本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドは、組成物中のLAPポリペプチドの少なくとも90%を構成する。例えば、本明細書に記載される組成物において、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドは、組成物中のDPPIVポリペプチドの少なくとも95%を構成し、且つ本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドは、組成物中のLAPポリペプチドの少なくとも95%を構成する。例えば、本明細書に記載される組成物において、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドは、組成物中のDPPIVポリペプチドの少なくとも98%を構成し、且つ本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドは、組成物中のLAPポリペプチドの少なくとも98%を構成する。
【0051】
一実施形態では、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドと、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドとの重量比は、1:20~1:5の間、好ましくは1:15~1:7.5の間、より好ましくは約1:9.5である。
【0052】
一実施形態では、本明細書に記載される組成物は、例えば以下のアルファ-グリアジン33マーペプチド:
LQLQPFPQPQLPYPQPQLPYPQPQLPYPQPQPF
を完全に分解する。
【0053】
一実施形態では、本明細書に記載される組成物は、医薬組成物である。
【0054】
さらなる態様では、本発明は、薬学的使用のための本明細書に記載される組成物を提供する。
【0055】
さらなる態様では、本発明は、グルテン関連障害の治療に使用するための本明細書に記載される組成物を提供する。
【0056】
一実施形態では、本明細書に記載される組成物は、経口組成物、特に液体経口組成物である。
【0057】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される末端切断型DPPIVポリペプチドを含むポリペプチドをコードする核酸を提供する。さらなる態様では、本発明は、前記核酸でトランスフェクトされた細胞を提供する。
【0058】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される末端切断型LAPポリペプチドを含むポリペプチドをコードする核酸を提供する。さらなる態様では、本発明は、前記核酸でトランスフェクトされた細胞を提供する。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、薬学的使用のための本明細書に記載されるポリペプチド及び組成物を提供する。一実施形態では、薬学的使用は、対象におけるグルテン関連障害の治療的又は予防的処置を含む。
【0060】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されるポリペプチド又は組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるグルテン関連障害を治療又は予防する方法を提供する。
【0061】
一態様では、本発明は、本明細書に記載される方法に使用するための本明細書に記載されるポリペプチド又は組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】P.パストリスAOX1スクリーニングの概要。グルコース放出は、多糖の酵素的消化によって行われる(EnPump200システム、EnPresso GmbH)。プロモーターは、メタノール濃度を制限することによって誘導される。
【
図2】ruLAPII_ショートについての供給戦略。
【
図3】ruDPPIV_ショートについての供給戦略。
【
図4】LP1(pFJP6015、ruDPPIV_ショート)株バックグラウンドを有するクローンから単離された培養上清のクーマシー染色。7.5μLの培養上清を、還元条件下で12%Bis-Tris SDSゲル、26ウェル、MES緩衝液にロードした。A)SDS PAGE/クーマシー染色、黒色の矢印は、ruDPPIV産物の位置を示し、青色の矢印は、ruDPPIVのより高分子量のバリアントの位置を示す。B)ローディングスキーム、黒色: 後の高細胞密度発酵用に選択されたクローン、緑色: 参照株。
【
図5】LP1(pFJP6014、ruLAPII_ショート)株バックグラウンドを有するクローンから単離された培養上清のクーマシー染色。7.5μLの培養上清を、還元条件下で12%Bis-Tris SDSゲル、26ウェル、MES緩衝液にロードした。A)SDS PAGE/クーマシー染色、黒色の矢印は、ruLAPII産物の位置を示す; B)ローディングスキーム、黒色: 後の高細胞密度発酵用に選択されたクローン、緑色: 参照株。
【
図6】LP1(pFJP6015、ruDPPIV_ショート)株バックグラウンドを有するクローンのバイオマス生成。LP1(pFJP6015.8)、LP1(pFJP6015.6)、LP1(pFJP6015.18)、LP1(pFJP6015.12)、LP1(pFJP6015.15)、LP1(pCKP6003.1)。A)光学密度OD600; B)乾燥細胞重量DCW。
【
図7】LP1(pFJP6015、ruDPPIV_ショート)株バックグラウンドを有するクローンの酵素活性。LP1(pFJP6015.8)、LP1(pFJP6015.6)、LP1(pFJP6015.18)、LP1(pFJP6015.12)、LP1(pFJP6015.15)、LP1(pCKP6003.1)。活性測定(AMCアッセイ)は、AMYRAによって提供されるSOPに従って行った。
【
図8】LP1(pFJP6014、ruLAPII_ショート)株バックグラウンドを有するクローンのバイオマス生成。LP1(pFJP6014.13)、LP1(pFJP6014.20)、LP1(pFJP6014.6)、LP1(pFJP6014.12)、LP1(pFJP6014.15)、LP1(pCKP6011.4)。A)光学密度OD600; B)乾燥細胞重量DCW。
【
図9】LP1(pFJP6014、ruLAPII_ショート)株バックグラウンドを有するクローンの酵素活性。LP1(pFJP6014.13)、LP1(pFJP6014.20)、LP1(pFJP6014.6)、LP1(pFJP6014.12)、LP1(pFJP6014.15)、LP1(pCKP6011.4)。活性測定(AMCアッセイ)は、AMYRAによって提供されるSOPに従って行った。
【
図10】LP1(pFJP6015、ruDPPIV_ショート)株バックグラウンドを有するクローンから単離された精製物のクーマシー染色。7.5μLの培養上清を、還元条件下で12%Bis-Tris SDSゲル、26ウェル、MES緩衝液にロードした。A)SDS PAGE/クーマシー染色、黒色の矢印は、ruDPPIV産物の位置を示し、青色の矢印は、ruDPPIVのより高分子量のバリアントの位置を示す。B)ローディングスキーム。
【
図11】LP1(pFJP6014.13、ruLAPII_ショート)株バックグラウンドを有するクローンから単離された精製物のクーマシー染色。7.5μLの培養上清を、還元条件下で12%Bis-Tris SDSゲル、26ウェル、MES緩衝液にロードした。A)SDS PAGE/クーマシー染色、黒色の矢印は、ruLAPII産物の位置を示し、青色の矢印は、ruLAPIIの分子量バリアントの位置を示す; B)ローディングスキーム。
【
図12】ruDPPIVの質量分析(Maldi-TOF)。40μLのPNGase消化した溶出サンプルを、Maldi-TOFによって分析した(実施例1、セクション7.10を参照)。A)ruDPPIV_ショート; 予想質量: 84,802; B)ruDPPIV; 予想質量: 86,486。
【
図13】ruLAPIIの質量分析。40μLのPNGase消化した溶出サンプルを、Maldi-TOFによって分析した(実施例1、セクション7.10を参照)。A)ruLAPII_ショート; 予想質量: 48,696; B)ruLAPII; 予想質量: 51,714。赤色の数字は、ESIデータを示す。
【
図14】ruLAPIIによる33マーの部分分解(A)/ruDPPIVによる33マーの不分解(B)。
【
図15】ruLAPII及びruDPPIVの相乗的作用機序
【発明を実施するための形態】
【0063】
本開示は以下に詳細に記載されるが、本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール及び試薬に限定されず、これらは様々であり得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することだけを目的としており、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本開示の範囲を限定することを意図していないことも理解されるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0064】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", H.G.W. Leuenberger, B. Nagel, and H. Kolbl, Eds., Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland, (1995)に記載されるように定義される。
【0065】
本開示の実施は、別段の指示がない限り、化学、生化学、細胞生物学、免疫学、及び当技術分野の文献で説明される組換えDNA技術の従来の方法を用いる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照)。
【0066】
以下では、本開示の要素について記載する。これらの要素は、具体的な実施形態とともに列挙されるが、追加の実施形態を作り出すために、それらを、任意の方法及び任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に記載される実施例及び実施形態は、明示的に記載される実施形態のみに本開示を限定すると解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載される実施形態を、任意の数の開示される要素と組み合わせる実施形態を開示及び包含すると理解されるべきである。さらに、記載されるすべての要素の任意の並べ換え及び組み合わせは、文脈上別の意味を示す場合を除き、この記載によって開示されると見なされるべきである。
【0067】
用語「約」は、おおよそ又はほぼを意味し、一実施形態では、本明細書に記載される数値又は範囲の文脈において、列挙される又は特許請求される数値又は範囲の±20%、±10%、±5%、又は±3%を意味する。
【0068】
本開示を記載する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」及び同様の言及は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、範囲内に入るそれぞれ別個の値に個々に言及する省略方法として機能することを単に意図している。本明細書に別段の指示がない限り、それぞれ個々の値は、あたかも本明細書で個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるあらゆる実施例又は例示的な言葉(例えば、「例えば~など」)の使用は、単に本開示をよりよく説明することを意図しており、特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、任意の特許請求されていない要素が本開示の実施に不可欠であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0069】
別段明記しない限り、用語「含む」は、本文書の文脈では、「含む」によって導入されるリストのメンバーに加えて、さらなるメンバーが任意選択で存在し得ることを示すために使用される。しかし、本開示の特定の実施形態として、用語「含む」は、さらなるメンバーが存在しない可能性を包含することが企図され、すなわち、この実施形態の目的のために、「含む」は、「からなる」又は「から本質的になる」の意味を有すると理解されるべきである。
【0070】
本明細書の本文全体で、いくつかの文書が引用される。本明細書で引用されるそれぞれの文書(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、説明書などを含む)は、上記又は下記にかかわらず、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本開示がそのような開示に先行する権利を有していなかったことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0071】
定義
以下では、本開示のすべての態様に適用される定義を提供する。以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有する。あらゆる未定義の用語は、それらの技術分野で認識される意味を有する。
【0072】
「低下させる」、「減少する」、「阻害する」又は「損なう」などの用語は、本明細書で使用される場合、好ましくは少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、又はさらにより多くの、レベルの全体的な低下、又は全体的な低下を引き起こす能力に関する。これらの用語は、完全な又は本質的に完全な阻害、すなわち、ゼロ又は本質的にゼロへの低下を含む。
【0073】
「増加する」、「増強する」又は「超える」などの用語は、好ましくは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、又はさらにより多くの増加又は増強に関する。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチダーゼ」、「プロテアーゼ」、「タンパク質分解酵素」及び「ペプチド加水分解酵素」は、同義語であり、交換可能に使用してもよい。ペプチダーゼは、タンパク質又はペプチドのペプチド結合(CO-NH)の切断を触媒し、これらのタンパク質又はペプチドをペプチド又は遊離アミノ酸に消化するすべての酵素を含む。エキソペプチダーゼは、アミノ(N)末端又はカルボキシ(C)末端で、ポリペプチド鎖の末端付近で作用する。遊離N末端で作用するものは、単一アミノ酸残基を遊離させ、アミノペプチダーゼと呼ばれる。
【0075】
ジペプチジルペプチダーゼIV又はジペプチジルペプチダーゼ4(略称: DPPIV又はDPP4)は、ポリペプチドのN末端からX-プロリン又はX-アラニンジペプチドを切断するセリンエキソペプチダーゼである。
【0076】
ロイシンアミノペプチダーゼ(略称: LAP)は、ペプチド及びタンパク質のN末端でロイシン残基の加水分解を優先的に触媒する酵素である。しかし、他のN末端残基も切断することが可能である。
【0077】
トリコフィトン・ルブルムのジペプチジルペプチダーゼIV(ruDPPIV)及びトリコフィトン・ルブルムのロイシンアミノペプチダーゼII(ruLAPII)は、それぞれ、DPPIVポリペプチド及びLAPポリペプチドの好ましい実施形態である。ロイシンアミノペプチダーゼであるruLAPIIは、単一アミノ酸がNH2-X-Pro配列でプロリンに接続している場合を除き、ポリペプチドのN末端から単一アミノ酸を切断する。ジペプチジルペプチダーゼであるruDPPIVは、ポリペプチドのN末端からジペプチドモチーフNH2-X-Proを選択的に切断する。したがって、両酵素の同時適用を使用して、プロリンに富んだ消化耐性のGIPを分解することができる。
【0078】
ruDPPIV及びruLAPIIのどちらも、十分に記載されている免疫反応性GIPを代表し、且つ認められたモデルペプチドとして機能するα-グリアジン33マー(グルテン由来の高免疫原性ペプチド)を単独で完全に分解することはできない。α-グリアジン33マーは、最も強力なセリアック病関連T細胞エピトープの2つを複数コピーで含有し、高度に分解耐性であると記載される。ruLAPIIは、N末端から最初の3個のアミノ酸を除去することができるが、次に続くQPモチーフのために、分解はその点を超えて進行することができない(
図14Aを参照)。他方で、ruDPPIVは、X-Proジペプチドモチーフを特異的に切断するが、33マーのN末端に存在するアミノ酸を切断しないため、33マーに影響を及ぼさない(
図14Bを参照)。しかし、組み合わせて存在する場合、ruDPPIV及びruLAPIIは、グリアジン33マーを完全に分解することができる(
図15)。完全な分解のために、ruDPPIV及びruLAPIIは、相乗的に作用しなければならない。
【0079】
ruDPPIVポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、又は80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有し得る。
【0080】
ruLAPIIポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、又は80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有し得る。
【0081】
本明細書に記載されるポリペプチドは、末端切断型ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)ポリペプチド、例えば末端切断型ruDPPIV、又は末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えば末端切断型ruLAPIIを含む。末端切断型DPPIVポリペプチド、例えば末端切断型ruDPPIV、又は末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えば末端切断型ruLAPIIは、キメラ又は融合タンパク質の一部であってもよい。
【0082】
「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、N末端及び/又はC末端で1つ以上の他のアミノ酸配列に連結された、末端切断型DPPIVポリペプチド、例えば末端切断型ruDPPIV、又は末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えば末端切断型ruLAPIIを含む。
【0083】
用語「1つ以上の他のアミノ酸配列」は、末端切断型DPPIVポリペプチド、例えば末端切断型ruDPPIVの場合、DPPIVポリペプチド、例えばruDPPIVと実質的に相同でないタンパク質に対応するアミノ酸配列を指す。融合タンパク質内で、末端切断型DPPIVポリペプチド、例えば末端切断型ruDPPIV及び1つ以上の他のアミノ酸配列は、互いに融合される。1つ以上の他のアミノ酸配列は、末端切断型DPPIVポリペプチド、例えば末端切断型ruDPPIVのN末端及び/又はC末端に融合され得る。しかし、末端切断型DPPIVポリペプチド、例えば末端切断型ruDPPIVへの1つ以上の他のアミノ酸配列の融合は、完全な、すなわち非末端切断型のDPPIVポリペプチド、例えばruDPPIVに存在するアミノ酸配列の、末端切断型DPPIVポリペプチド、例えば末端切断型ruDPPIVへの付加をもたらさない。
【0084】
用語「1つ以上の他のアミノ酸配列」は、末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えば末端切断型ruLAPIIの場合、ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えばruLAPIIと実質的に相同でないタンパク質に対応するアミノ酸配列を指す。融合タンパク質内で、末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えば末端切断型ruLAPII及び1つ以上の他のアミノ酸配列は、互いに融合される。1つ以上の他のアミノ酸配列は、末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えば末端切断型ruLAPIIのN末端及び/又はC末端に融合され得る。しかし、末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えば末端切断型ruLAPIIへの1つ以上の他のアミノ酸配列の融合は、完全な、すなわち非末端切断型のロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えばruLAPIIに存在するアミノ酸配列の、末端切断型ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)ポリペプチド、例えば末端切断型ruLAPIIへの付加をもたらさない。
【0085】
一実施形態では、1つ以上の他のアミノ酸配列は、末端切断型ポリペプチドに、例えば末端切断型ポリペプチドのN末端に融合される、シグナル配列、例えば異種シグナル配列を含む。
【0086】
本開示によれば、用語「ペプチド」は、オリゴペプチド及びポリペプチドを含み、ペプチド結合を介して互いに連結された、約2個以上、約3個以上、約4個以上、約6個以上、約8個以上、約10個以上、約13個以上、約16個以上、約20個以上、及び最大約50個、約100個又は約150個の連続したアミノ酸を含む物質を指す。用語「タンパク質」又は「ポリペプチド」は、大きなペプチド、特に約150個を超えるアミノ酸を有するペプチドを指すが、用語「ペプチド」、「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、本明細書では通常同義語として使用される。
【0087】
アミノ酸配列(ペプチド又はタンパク質)に関して、「フラグメント」は、アミノ酸配列の一部、すなわち、N末端及び/又はC末端で短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端で短縮されたフラグメント(N末端フラグメント)は、例えば、オープンリーディングフレームの3'末端を欠く末端切断型オープンリーディングフレームの翻訳によって入手可能である。N末端で短縮されたフラグメント(C末端フラグメント)は、例えば、オープンリーディングフレームの5'末端を欠く末端切断型オープンリーディングフレームの翻訳によって入手可能である(末端切断型オープンリーディングフレームが、翻訳を開始する役割を果たす開始コドンを含む限り)。アミノ酸配列のフラグメントは、例えば、アミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列のフラグメントは、好ましくは、アミノ酸配列からの少なくとも6個、特に少なくとも8個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、又は少なくとも100個の連続したアミノ酸を含む。
【0088】
本明細書における「バリアント」は、少なくとも1つのアミノ酸改変によって親アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。親アミノ酸配列は、天然に存在する又は野生型(WT)アミノ酸配列であってもよく、又は野生型アミノ酸配列の改変版であってもよい。好ましくは、バリアントのアミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変、例えば、親と比較して1~約20個のアミノ酸改変、好ましくは1~約10個又は1~約5個のアミノ酸改変を有する。
【0089】
本明細書における「野生型」又は「WT」又は「天然」は、アレルバリエーションを含む、天然に見出されるアミノ酸配列を意味する。野生型アミノ酸配列、ペプチド又はタンパク質は、意図的に改変されていないアミノ酸配列を有する。
【0090】
本開示の目的のために、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質又はポリペプチド)の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアント及び/又はアミノ酸置換バリアントを含む。用語「バリアント」は、すべての変異体、スプライスバリアント、翻訳後修飾バリアント、コンフォメーション、アイソフォーム、アレルバリアント、種バリアント、及び種ホモログ、特に天然に存在するものを含む。用語「バリアント」は、特に、アミノ酸配列のフラグメントを含む。
【0091】
アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列における単一又は2つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、1つ以上のアミノ酸残基が、アミノ酸配列中の特定の部位に挿入されるが、得られた産物の適切なスクリーニングを用いたランダムな挿入も可能である。アミノ酸付加バリアントは、1つ以上のアミノ酸、例えば1個、2個、3個、5個、10個、20個、30個、50個、又はより多くのアミノ酸のアミノ末端融合物及び/又はカルボキシ末端融合物を含む。アミノ酸欠失バリアントは、配列からの1つ以上のアミノ酸の除去、例えば1個、2個、3個、5個、10個、20個、30個、50個、又はより多くのアミノ酸の除去を特徴とする。欠失は、タンパク質の任意の位置にあってもよい。タンパク質のN末端及び/又はC末端に欠失を含むアミノ酸欠失バリアントは、N末端及び/又はC末端切断バリアントとも呼ばれる。アミノ酸置換バリアントは、配列中の少なくとも1つの残基が除去され、別の残基がその場所に挿入されることを特徴とする。相同なタンパク質又はペプチド間で保存されていない、アミノ酸配列中の位置にある改変、及び/又はアミノ酸を同様の特性を有する他のアミノ酸で置換する改変が好ましい。好ましくは、ペプチド及びタンパク質バリアントにおけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電した又は非荷電のアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、側鎖において関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、一般に、4つのファミリーに分けられる: 酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)アミノ酸。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族アミノ酸としてまとめて分類されることがある。一実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の群内の置換を含む:
グリシン、アラニン、
バリン、イソロイシン、ロイシン、
アスパラギン酸、グルタミン酸、
アスパラギン、グルタミン、
セリン、スレオニン、
リジン、アルギニン、及び
フェニルアラニン、チロシン。
【0092】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と、前記所与のアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。類似性又は同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性又は同一性の程度は、好ましくは、少なくとも約20個、少なくとも約40個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、又は約200個のアミノ酸、いくつかの実施形態では連続アミノ酸について与えられる。いくつかの実施形態では、類似性又は同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアライメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良の配列アライメントを使用して、例えば、標準設定、好ましくはEMBOSS:needle、マトリックス: Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップエクステンド0.5を使用して、Alignを使用して行うことができる。
【0093】
「配列類似性」は、同一であるか、又は保存的アミノ酸置換を表す、アミノ酸のパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。
【0094】
用語「%同一である」、「%同一性」又は同様の用語は、特に、比較対象の配列間の最適なアライメントにおいて同一であるヌクレオチド又はアミノ酸のパーセンテージを指すことを意図している。前記パーセンテージは、純粋に統計的なものであり、2つの配列間の差異は、比較対象の配列の全長にわたってランダムに分布していてもよいが、必ずしもそうであるとは限らない。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を特定するために、セグメント又は「比較ウインドウ」に関して、最適なアライメントの後、配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアライメントは、手動で、又はSmith and Waterman, 1981, Ads App. Math. 2, 482による局所ホモロジーアルゴリズムを用いて、Neddleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48, 443による局所ホモロジーアルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 88, 2444による類似性探索アルゴリズムを用いて、又は前記アルゴリズムを使用したコンピュータプログラムを用いて(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)行われてもよい。いくつかの実施形態では、2つの配列の同一性パーセントは、米国国立生物工学情報センター(NCBI)のウェブサイト(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&BLAST_SPEC=blast2seq&LINK_LOC=align2seq)で利用可能な、BLASTN又はBLASTPアルゴリズムを使用して決定される。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトでBLASTNアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む: (i)期待値閾値(Expect Threshold)を10に設定する; (ii)ワードサイズを28に設定する; (iii)クエリー範囲における最大マッチを0に設定する; (iv)マッチ/ミスマッチスコアを1、-2に設定する; (v)ギャップコストを線形に設定する; 及び(vi)低複雑度領域に対するフィルターを使用する。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトでBLASTPアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む: (i)期待値閾値を10に設定する; (ii)ワードサイズを3に設定する; (iii)クエリー範囲における最大マッチを0に設定する; (iv)マトリックスをBLOSUM62に設定する; (v)ギャップコストを存在: 11 伸長: 1に設定する; 及び(vi)条件付き組成スコアマトリックス調整(conditional compositional score matrix adjustment)。
【0095】
同一性パーセンテージは、比較対象の配列が対応する同一の位置の数を決定し、この数を比較される位置の数(例えば、参照配列中の位置の数)で割り、この結果に100を掛けることによって得られる。
【0096】
いくつかの実施形態では、類似性又は同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、又は約200個のヌクレオチド、いくつかの実施形態では連続ヌクレオチドについて与えられる。いくつかの実施形態では、類似性又は同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
【0097】
本開示によれば、相同なアミノ酸配列は、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を示す。
【0098】
本発明によれば、特定のペプチド又はポリペプチドに関して用語「末端切断型」は、親ペプチド又はポリペプチド、例えば野生型ペプチド又はポリペプチドのN末端及び/又はC末端で1つ以上のアミノ酸が欠失したペプチド又はポリペプチドを指す。本発明によれば、アミノ酸配列の末端切断型形態又はバリアントは、前記アミノ酸配列のフラグメントである。
【0099】
本明細書に記載されるアミノ酸配列バリアントは、例えば組換えDNA操作によって、当業者によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入又は欠失を有するペプチド又はタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えば、Sambrook et al.(1989)に詳細に記載される。さらに、本明細書に記載されるペプチド及びアミノ酸バリアントは、公知のペプチド合成技術を用いて、例えば固相合成及び同様の方法によって、容易に調製され得る。
【0100】
一実施形態では、アミノ酸配列(ペプチド又はタンパク質)のフラグメント又はバリアントは、好ましくは「機能的フラグメント」又は「機能的バリアント」である。アミノ酸配列の用語「機能的フラグメント」又は「機能的バリアント」は、それが由来するアミノ酸配列の機能的特性と同一又は類似の1つ以上の機能的特性を示す任意のフラグメント又はバリアントに関し、すなわち、それは機能的に同等である。ペプチダーゼ、例えばDPPIV又はLAPの配列に関して、1つの特定の機能は、フラグメント又はバリアントが由来するアミノ酸配列によって示される1つ以上のペプチダーゼ活性である。用語「機能的フラグメント」又は「機能的バリアント」は、本明細書で使用される場合、特に、親分子又は配列のアミノ酸配列と比較して1つ以上のアミノ酸が変更されたアミノ酸配列を含み、且つ、親分子又は配列の機能の1つ以上、例えばペプチダーゼ活性を果たすことが依然として可能である、バリアント分子又は配列を指す。一実施形態では、親分子又は配列のアミノ酸配列における改変は、分子又は配列の特徴に著しく影響を及ぼさず、又は変更しない。異なる実施形態では、機能的フラグメント又は機能的バリアントの機能は低下し得るが、依然として著しく存在してもよく、例えば、機能的バリアントのペプチダーゼ活性は、親分子又は配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%であってもよい。しかし、他の実施形態では、機能的フラグメント又は機能的バリアントのペプチダーゼ活性は、親分子又は配列と比較して増強されてもよい。
【0101】
指定されるアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質又はポリペプチド)に「由来する」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質又はポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源を指す。好ましくは、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列又はそのフラグメントと同一、本質的に同一又は相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列又はそのフラグメントのバリアントであり得る。例えば、本明細書で使用するのに適した配列は、天然配列の所望の活性を維持しながら、それらが由来する天然に存在する配列又は天然配列とは配列において異なるように変更され得ることが当業者によって理解される。
【0102】
本明細書で使用される場合、「説明資料」又は「説明書」は、本発明の組成物及び方法の有用性を伝えるために使用することができる出版物、記録、図表、又は任意の他の表現媒体を含む。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の組成物を含有する容器に添付されてもよく、又は組成物を含有する容器と一緒に出荷されてもよい。あるいは、説明資料及び組成物が受領者によって協同的に使用されることを意図して、説明資料は、容器とは別に出荷されてもよい。
【0103】
本明細書に記載されるポリペプチド及び核酸は、単離された及び/又は組換え分子であってもよい。
【0104】
「単離された」とは、自然状態から変更された又は取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に自然に存在する核酸又はペプチドは、「単離され」ていないが、その自然状態の共存物質から部分的又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは、「単離され」ている。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができ、又は非天然環境、例えば宿主細胞中に存在することができる。
【0105】
本発明の文脈における用語「組換え」は、「遺伝子工学によって作られた」ことを意味する。好ましくは、本発明の文脈における組換え核酸などの「組換え物体」は、天然に存在しない。
【0106】
用語「天然に存在する」は、本明細書で使用される場合、物体を自然界に見出すことができるという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)に存在し、且つ自然界の供給源から単離することができ、且つ実験室でヒトによって意図的に改変されていないペプチド又は核酸は、天然に存在する。
【0107】
用語「遺伝子改変」又は単に「改変」は、核酸を用いた細胞のトランスフェクションを含む。用語「トランスフェクション」は、細胞への核酸(複数)の導入に関する。本発明の目的のために、用語「トランスフェクション」はまた、細胞への核酸(単数)の導入又は該細胞による核酸(単数)の取り込みを含む。本発明によれば、本明細書に記載される核酸のトランスフェクションのための細胞は、インビトロ(in vitro)で存在することができる。本発明によれば、トランスフェクションは、一過的又は安定的であり得る。トランスフェクションの一部の適用について、トランスフェクトされた遺伝物質が一過的にのみ発現されれば十分である。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過的に発現させることができる。トランスフェクションプロセスで導入された核酸は、通常、核ゲノムに組み込まれないため、外来核酸は、有糸分裂を通して希釈されるか、又は分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈速度を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が、実際に細胞及びその娘細胞のゲノム中に残ることが望まれる場合、安定的トランスフェクションが起こらなければならない。このような安定的トランスフェクションは、トランスフェクションのためのウイルスベースのシステム又はトランスポゾンベースのシステムを使用することによって達成することができる。
【0108】
核酸
用語「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、本明細書で使用される場合、DNA及びRNA、例えば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え産生された分子及び化学合成された分子を含むことを意図している。核酸は、一本鎖又は二本鎖であってもよい。RNAは、インビトロ転写されたRNA(IVT RNA)又は合成RNAを含む。
【0109】
一実施形態では、本明細書に記載される核酸は、改変された及び/又は天然に存在しないヌクレオシドを有してもよい。
【0110】
核酸はベクターに含まれてもよい。用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、それが連結されている別の核酸を輸送することが可能である核酸分子を指し、当業者に公知の任意のベクター、例えば、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、例えばラムダファージ、ウイルスベクター、例えばレトロウイルス、アデノウイルス若しくはバキュロウイルスベクター、又は人工染色体ベクター、例えば細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、若しくはP1人工染色体(PAC)を含む。前記ベクターは、発現ベクター及びクローニングベクターを含む。発現ベクターは、プラスミド及びウイルスベクターを含み、一般に、所望のコード配列と、特定の宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫、又は哺乳動物)における又はインビトロ発現系における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切なDNA配列とを含有する。クローニングベクターは、一般に、特定の所望のDNAフラグメントを操作及び増幅するために使用され、所望のDNAフラグメントの発現に必要な機能的配列を欠いている可能性がある。
【0111】
「プラスミド」は、追加のDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループを指す。「ウイルスベクター」は、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができるベクターである。
【0112】
特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。
【0113】
「発現ベクター」は、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することが可能である。一般に、組換えDNA技術に使用される発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態で存在する。本明細書において、プラスミドは、ベクターの最も一般的に使用される形態であるため、「プラスミド」及び「ベクター」は、交換可能に使用することができる。しかし、本発明は、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)を含むことを意図している。
【0114】
機能的タンパク質の産生は、タンパク質を産生する生物の細胞機構と密接に関連する。大腸菌(E. coli)は、そのゲノムが完全にマッピングされており、生物が扱いやすく、急速に増殖し、増殖のために費用がかからず準備が簡単な培地を必要とし、タンパク質を培地に分泌してタンパク質の回収を容易にするため、典型的には、多くのタンパク質の発現のために選択される「工場」となっている。しかし、大腸菌は、原核生物であり、産生されているタンパク質を修飾する酵素を含有する、真核生物に存在する細胞内オルガネラ、例えば小胞体及びゴルジ装置を欠く。多くの真核生物タンパク質は、大腸菌で産生可能であるが、グリコシル化又は翻訳後修飾が起こらないため、これらは非機能的な未完成形態で産生され得る。
【0115】
したがって、真核生物の酵母、哺乳動物及び植物の発現系が、タンパク質産生に頻繁に使用される。例えば、メタノール資化性酵母P.パストリスは、タンパク質の異種発現のための強力な宿主となっており、ハイスループット技術を用いたヒトタンパク質の発現のための代替真核生物宿主として確立されている。
【0116】
別の例として、植物が、タンパク質の大規模な異種発現のための発現宿主として使用されており、従来の発現系に対する費用対効果、拡張性及び安全性の潜在的利点を提供する。現在、様々な植物異種発現系、例えば一過的発現、植物細胞懸濁培養物、組換え植物ウイルス及び葉緑体トランスジェニック系がある。植物で発現されたタンパク質は、哺乳動物タンパク質からの多少の変化を有するが(例えば、グリコシル化)、現在、これらの差異がヒト患者において有害反応を引き起こすという証拠はない。
【0117】
別の適切な異種発現系は、多くの場合バキュロウイルス発現ベクターと組み合わせて、昆虫細胞を使用する。バキュロウイルスベクターは、培養昆虫細胞でタンパク質を発現させるために利用可能である。本明細書に記載されるポリペプチドの産生のための特に好ましい一発現系は、ピキア・パストリス発現系である。P.パストリスは、そのアルコールオキシダーゼプロモーターが単離及びクローニングされて以来、外来タンパク質の産生のための優れた宿主となるように開発されている。他の真核生物発現系と比較して、ピキア(Pichia)は、細菌に関連するエンドトキシンの問題も、動物細胞培養物において産生されたタンパク質のウイルス汚染の問題もないため、多くの利点を提供する。さらに、P.パストリスは、グルコースの非存在下でメタノールを炭素源として利用することができる。P.パストリス発現系は、メタノール誘導性アルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターを使用し、これは、メタノールの代謝における第一段階を触媒する酵素であるアルコールオキシダーゼの発現をコードする遺伝子を制御する。このプロモーターは、特徴付けられており、一連のP.パストリス発現ベクターに組み込まれている。P.パストリスで産生されたタンパク質は、典型的には、正しく折り畳まれ、培地に分泌されるため、遺伝子操作されたP.パストリスの発酵は、大腸菌発現系の優れた代替物を提供する。さらに、P.パストリスは、発現されたタンパク質を自発的にグリコシル化する能力を有し、これも大腸菌に対する利点である。この系を使用して、いくつかのタンパク質、例えば破傷風毒素フラグメント、百日咳菌(Bordetella pertussis)パータクチン、ヒト血清アルブミン及びリゾチームが産生されている。
【0118】
本開示において、用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施形態では、RNAは、リボヌクレオチド残基の全部又は大部分を含有する。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを指す。RNAは、限定することなく、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え産生されたRNA、並びに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は変更によって天然に存在するRNAとは異なる改変されたRNAを包含する。このような変更は、内部RNAヌクレオチドへの又はRNAの末端(複数可)への非ヌクレオチド物質の付加を指し得る。RNAにおけるヌクレオチドが、非標準的ヌクレオチド、例えば化学的に合成されたヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドであり得ることも本明細書において企図される。本開示について、これらの変更されたRNAは、天然に存在するRNAの類似体と見なされる。
【0119】
本開示の特定の実施形態では、RNAは、ペプチド又はタンパク質をコードするRNA転写産物に関連するメッセンジャーRNA(mRNA)である。当技術分野で確立されているように、mRNAは、一般に、5'非翻訳領域(5'-UTR)、ペプチドコード領域及び3'非翻訳領域(3'-UTR)を含有する。いくつかの実施形態では、RNAは、インビトロ転写又は化学合成によって産生される。一実施形態では、mRNAは、DNA鋳型を使用したインビトロ転写によって産生され、DNAは、デオキシリボヌクレオチドを含有する核酸を指す。
【0120】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは、5'-キャップを含む。用語「5'-キャップ」は、mRNA分子の5'末端に見出される構造を指し、一般に、5'から5'への三リン酸結合を介してmRNAに接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは、7位でメチル化される。5'-キャップ又は5'-キャップ類似体を有するRNAの提供は、インビトロ転写によって達成されてもよく、このインビトロ転写では、5'-キャップは、RNA鎖に同時転写的に発現されるか、又はキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに結合されてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは、5'-UTR及び/又は3'-UTRを含む。用語「非翻訳領域」又は「UTR」は、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されないDNA分子中の領域、又はRNA分子、例えばmRNA分子中の対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンリーディングフレームの5'(上流)(5'-UTR)及び/又はオープンリーディングフレームの3'(下流)(3'-UTR)に存在し得る。5'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の開始コドンの上流である5'末端に位置する。5'-UTRは、5'-キャップ(存在する場合)の下流にあり、例えば、5'-キャップに直接隣接している。3'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の終止コドンの下流である3'末端に位置するが、用語「3'-UTR」は、好ましくは、ポリ(A)配列を含まない。したがって、3'-UTRは、ポリ(A)配列(存在する場合)の上流にあり、例えば、ポリ(A)配列に直接隣接している。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「ポリ(A)配列」又は「ポリAテイル」は、典型的にはRNA分子の3'末端に位置する、アデニル酸残基の配列を指す。ポリ(A)配列は当業者に公知であり、本明細書に記載されるRNA中の3'-UTRに続いてもよい。
【0123】
本発明のすべての態様の一実施形態では、本明細書に記載される核酸は、核酸でトランスフェクトされた細胞において発現され、コードされたポリペプチドを提供する。一実施形態では、発現は細胞外空間へ行われ、すなわち、コードされたポリペプチドは分泌される。
【0124】
「コードする」とは、ヌクレオチドの定義された配列(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)、又はアミノ酸の定義された配列、及びそれから生じる生物学的特性を有する、生物学的プロセスにおける他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として機能する、ポリヌクレオチド、例えば遺伝子、cDNA、又はmRNA中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が、細胞又は他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、且つ通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖との両方が、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードすると呼ぶことができる。
【0125】
本開示の文脈において、用語「転写」は、DNA配列中の遺伝コードがRNAに転写されるプロセスに関する。続いて、RNAは、ペプチド又はタンパク質に翻訳され得る。
【0126】
本発明によれば、用語「転写」は「インビトロ転写」を含み、用語「インビトロ転写」は、RNA、特にmRNAが無細胞系で、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、インビトロで合成されるプロセスに関する。好ましくは、転写産物の生成のために、クローニングベクターが適用される。これらのクローニングベクターは、一般に、転写ベクターと呼ばれ、本発明によれば用語「ベクター」に包含される。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモーターであり得る。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、及びSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、本発明によるインビトロ転写は、T7又はSP6プロモーターによって制御される。インビトロ転写用のDNA鋳型は、核酸、特にcDNAのクローニング、及びそれをインビトロ転写用の適切なベクターに導入することによって得てもよい。cDNAは、RNAの逆転写によって得てもよい。
【0127】
用語「発現」は、本明細書で使用される場合、特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳と定義される。
【0128】
RNAに関して、用語「発現」又は「翻訳」は、mRNA鎖がアミノ酸の配列の組み立てを指示して、ペプチド又はタンパク質を作る、細胞のリボソームにおけるプロセスに関する。
【0129】
本明細書で使用される場合、「内因性」は、生物、細胞、組織又は系に由来するか、又はそれらの内部で産生された、任意の物質を指す。
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「外因性」は、生物、細胞、組織又は系から導入されたか、又はそれらの外部で産生された、任意の物質を指す。
【0131】
本明細書で使用される場合、用語「連結された」、「融合された」、又は「融合」は、交換可能に使用される。これらの用語は、2つ以上の要素又は成分又はドメインを結びつけることを指す。
【0132】
医薬組成物
本発明のすべての態様の一実施形態では、ポリペプチドなどの本明細書に記載される成分は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよく、且つ任意選択で安定剤などを含んでもよい、医薬組成物において投与されてもよい。一実施形態では、医薬組成物は、治療的又は予防的処置のため、例えば、グルテン関連障害の治療又は予防に使用するためのものである。
【0133】
用語「医薬組成物」は、治療上有効な薬剤を、好ましくは薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含む製剤に関する。前記医薬組成物は、前記医薬組成物の対象への投与により、疾患又は障害を治療し、予防し、又はその重症度を低下させるのに有用である。医薬組成物はまた、医薬製剤として当技術分野で公知である。
【0134】
本開示による医薬組成物は、一般に、「薬学的に有効な量」で、且つ「薬学的に許容可能な調製物」において適用される。
【0135】
用語「薬学的に許容可能な」とは、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0136】
用語「薬学的に有効な量」又は「治療上有効な量」は、所望の反応又は所望の効果を単独で、又はさらなる用量とともに達成する量を指す。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅らせること、特に疾患の進行を中断又は逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた、前記疾患又は前記状態の発症の遅延又は発症の予防であってもよい。本明細書に記載される組成物の有効量は、治療されるべき状態、疾患の重大さ、患者の個々のパラメータ、例えば年齢、生理学的状態、サイズ及び体重、治療期間、随伴する療法のタイプ(存在する場合)、具体的な投与経路、及び同様の要因に応じて決まる。したがって、本明細書に記載される組成物の投与量は、様々なそのようなパラメータに応じて決まり得る。患者における反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(又は異なる、より局所化された投与経路によって達成される、効果的により高い用量)が使用されてもよい。
【0137】
本開示の医薬組成物は、塩、緩衝剤、保存剤、及び任意選択で他の治療剤を含有してもよい。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む。
【0138】
本開示の医薬組成物に使用するのに適した保存剤としては、限定することなく、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン及びチメロサールが挙げられる。
【0139】
用語「賦形剤」は、本明細書で使用される場合、本開示の医薬組成物中に存在し得るが有効成分ではない物質を指す。賦形剤の例としては、限定することなく、担体、結合剤、希釈剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、又は着色剤が挙げられる。
【0140】
用語「希釈剤」は、希釈する及び/又は薄める薬剤に関する。さらに、用語「希釈剤」は、流体、液体又は固体の懸濁液及び/又は混合媒体の任意の1つ以上を含む。適切な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。
【0141】
用語「担体」は、天然、合成、有機、無機であり得る成分であって、医薬組成物の投与を容易にし、増強し又は可能にするように、その中で活性成分が組み合わされる成分を指す。担体は、本明細書で使用される場合、対象への投与に適した、1つ以上の適合性のある固体又は液体の充填剤、希釈剤、又はカプセル化物質であってもよい。適切な担体としては、限定することなく、滅菌水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、滅菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、及び特に生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー又はポリオキシエチレン/ポリオキシ-プロピレンコポリマーが挙げられる。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、等張食塩水を含む。
【0142】
治療的使用のための薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤は、薬学の技術分野において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R Gennaro edit. 1985)に記載されている。
【0143】
薬学的担体、賦形剤又は希釈剤は、意図する投与経路及び標準的な薬学業務に関して選択することができる。
【0144】
一実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、経口、静脈内、動脈内、皮下、皮内又は筋肉内に投与されてもよい。特定の実施形態では、医薬組成物は、局所投与又は全身投与用に製剤化される。全身投与は、胃腸管を介した吸収を伴う経腸投与、又は非経口投与を含み得る。本明細書で使用される場合、「非経口投与」は、胃腸管を介する以外の任意の方法における投与、例えば静脈内注射による投与を指す。好ましい実施形態では、医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0145】
用語「同時投与する」は、本明細書で使用される場合、異なる化合物又は組成物が同じ患者に投与されるプロセスを意味する。異なる化合物又は組成物は、同時に、本質的に同時に、又は連続的に投与されてもよい。
【0146】
治療
本発明は、対象における病理学的状態、例えばグルテン関連障害(セリアック病及び非セリアックグルテン過敏症を含む)、消化管吸収不良、スプルー、アレルギー反応及び酵素欠損症を治療するための方法及び薬剤を提供する。例えば、アレルギー反応は、グルテンに対する反応であり得る。本発明は、特に、セリアック病(CeD)及び非セリアックグルテン過敏症を治療するための方法及び薬剤を提供する。本明細書に記載される方法は、有効量の、本明細書に記載されるポリペプチド又は組成物を投与するステップを含み得る。
【0147】
ruLAPII及びruDPPIVのカクテルは、グルテン免疫原性ペプチド(GIP)を、それらがグルテンの消化で生成されると、インサイチュ(in-situ)で、数分のうちに非免疫原性の単一アミノ酸及びジペプチドに分解し、それにより、免疫応答、及びその後のグルテン関連障害の症状を予防する。本明細書に記載される末端切断型ポリペプチドバリアントは、生物学的活性を保持するため、それらは、それらが由来する親ポリペプチドと同じ又は同様の有用性を有する。
【0148】
本発明の治療用化合物又は組成物は、予防的に(すなわち、疾患又は障害を予防するために)又は治療的に(すなわち、疾患又は障害を治療するために)、疾患若しくは障害に罹患しているか、又は疾患若しくは障害を発症する危険性がある(又は発症しやすい)対象に投与されてもよい。このような対象は、標準的な臨床方法を使用して特定され得る。本発明の文脈において、予防的投与は、疾患の明らかな臨床症状の現れの前に行われ、疾患又は障害が予防されるか、あるいはその進行が遅延される。医療の分野の文脈では、用語「予防する」は、疾患による死亡率又は罹患率の負荷を低下させるあらゆる活動を包含する。予防は、一次、二次及び三次予防レベルで行うことができる。一次予防は、疾患の発症を回避する一方で、二次及び三次レベルの予防は、疾患の進行及び症状の出現を予防することと、機能を回復させ、疾患関連合併症を減らすことによって、すでに確立された疾患の悪影響を低下させることとを目的とした活動を包含する。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明の薬剤又は組成物の投与は、単回投与によって行われてもよく、又は複数回投与によってブーストされてもよい。
【0150】
用語「疾患」は、個体の体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患は、多くの場合、特定の症状及び徴候に関連する医学的状態と解釈される。疾患は、感染症など、外部原因にもともと由来する要因によって引き起こされてもよく、又はそれは、自己免疫疾患など、内部機能障害によって引き起こされてもよい。ヒトでは、「疾患」は、多くの場合、苦しんでいる個人に対して痛み、機能障害、苦痛、社会的問題、若しくは死を引き起こすか、又は個人と接触する人々に同様の問題を引き起こすあらゆる状態を指すために、より広く使用される。このより広い意味では、それは、傷害、能力障害、障害、症候群、臨床的実体、感染症、単発症状、逸脱した挙動、及び構造と機能の非定型なバリエーションを含むことがあり、一方、他の文脈及び他の目的では、これらは、区別可能なカテゴリーと見なされる可能性がある。多くの疾患にかかり、それを抱えて生活すると、人生観及び性格が変化し得るため、疾患は、通常、身体的にだけでなく感情的にも個人に影響を及ぼす。
【0151】
用語「グルテン関連障害」は、グルテン含有食品、例えばコムギベースの食品の摂取によって引き起こされる状態及び疾患に関する。この用語は、セリアック病(CeD)、コムギアレルギー(WA)及び非セリアックグルテン過敏症(NCGS)、並びに無グルテン食(GFD)から利益を得る可能性のある他の疾患を含む。
【0152】
セリアック病(CeD)は、遺伝的素因を持っている個体においてグルテン免疫原性ペプチド(GIP)によって引き起こされる慢性免疫媒介性腸疾患である。GIPは、グルテンの消化において生成され、疾患病理において中心的な役割を果たす; それらは、消化耐性の、プロリンに富んだペプチドからなり、HLA-DQ2及びHLA-DQ8陽性患者においてT細胞エピトープとして機能し、それにより、CD4+ T細胞は、HLA分子と会合し、典型的な自己免疫病理を開始させるが、このことは、臨床症状及び長期合併症を説明する。現在の診断は、腸疾患、絨毛萎縮、陰窩の過形成、及び上皮内リンパ球増加の臨床症状の存在、並びに小腸における組織トランスグルタミナーゼ(tTG)、脱アミド化グリアジンペプチド(DGP)、及び筋内膜(EMA)に対する循環CeD特異的抗体の存在に基づく。
【0153】
非セリアックグルテン過敏症は、グルテンの摂取に関連するグルテン関連障害である。CeDとは対照的に、NCGSに対する特定の遺伝的素因はこれまで特定されておらず、血清学的バイオマーカーはNCGSについて利用可能ではない。なぜならばセリアック関連抗体の測定は、NCGSに対して感受性ではないか又は特異的ではないからである。NCGS患者の胃腸管及びそれらの腸透過性は正常であり、それらの十二指腸粘膜の組織像における病変は軽微であるが、好酸球及び好塩基球の十二指腸固有層への浸潤の増加、及び循環好塩基球の活性化が、NCGS患者で観察されており、これらが、症候群に関連する症状の原因となる可能性がある。
【0154】
グルテン由来のGIPは、グルテン関連障害を引き起こす誘因であるため、厳格な生涯にわたる無グルテン食が、治療の主力となっている。しかし、無グルテン食は、毎日の生活の中で達成することが非常に困難である。
【0155】
本文脈において、用語「治療」、「治療する」又は「治療的介入」は、疾患又は障害などの状態と闘う目的のための対象の管理及びケアに関する。この用語は、症状又は合併症を緩和するため、疾患、障害又は状態の進行を遅延させるため、症状及び合併症を緩和又は軽減するため、及び/又は疾患、障害又は状態を治癒又は排除するため、及び状態を予防するための、治療上有効な化合物の投与など、対象が罹患している所与の状態に対する処置の全領域を含むことを意図しており、予防は、疾患、状態又は障害と闘う目的のための個体の管理及びケアと理解されるべきであり、症状又は合併症の発症を予防するための活性化合物の投与を含む。
【0156】
用語「治療的処置」は、個体の健康状態を改善し、且つ/又は寿命を延ばす(増加させる)任意の処置に関する。前記処置は、個体における疾患を排除し、個体における疾患の発症を阻止し又は遅らせ、個体における疾患の発症を阻害し又は遅らせ、個体における症状の頻度又は重症度を減少させ、且つ/又は現在疾患を有する又は以前に疾患を有していた個体における再発を減少させ得る。
【0157】
用語「予防的処置」又は「防止的処置」は、個体において疾患の発生を予防することを意図した任意の処置に関する。用語「予防的処置」又は「防止的処置」は、本明細書で交換可能に使用される。
【0158】
用語「個体」及び「対象」は、本明細書で交換可能に使用される。それらは、疾患又は障害に苦しんでいる可能性があるか、又はそれらにかかりやすいが、疾患又は障害を有していても又は有していなくてもよい、ヒト又は別の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ又は霊長類)を指す。多くの実施形態では、個体は、ヒトである。別段明記しない限り、用語「個体」及び「対象」は、特定の年齢を示すものではなく、したがって、成人、高齢者、子供、及び新生児を包含する。本開示の実施形態では、「個体」又は「対象」は、「患者」である。
【0159】
用語「患者」は、処置のための個体又は対象、特に疾患にかかっている個体又は対象を意味する。
【0160】
本明細書で言及される文書及び研究の引用は、前述のいずれかが、関係のある先行技術であることを認めることを意図していない。これらの文書の内容に関するすべての記述は、出願人に入手可能な情報に基づいており、これらの文書の内容の正確性を認めるものではない。
【0161】
以下の記載は、当業者が様々な実施形態を作製及び使用できるようにするために提示される。具体的なデバイス、技術、及び適用の記載は、例としてのみ提供される。本明細書に記載される実施例に対する様々な改変は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に定義される一般原則は、様々な実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施例及び適用に適用され得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載され且つ示される実施例に限定されることを意図するものではないが、特許請求の範囲と一致する範囲が与えられるべきである。
【実施例】
【0162】
以下の実施例は、LonzaのP.パストリス発現プラットフォームにおけるruLAPII(ruLAPII_ショート)及びruDPPIV(ruDPPIV_ショート)のショートバリアントの産生を試験するために行ったスクリーニング研究を記載する。ruLAPII及びruDPPIVのこれらのバリアントを精製し、それらの全長バリアントとともに酵素活性(U/mg精製タンパク質)について試験した。精製した短縮型バリアントを、無傷分子の質量分析によって分析した。
【0163】
ruDPPIV_ショート
株バックグラウンドLP1における23個のPAOX1クローンを、SDS PAGE/クーマシー染色を使用して培養培地中へのruDPPIV_ショートの分泌、及び酵素活性(AMCアッセイ、Amyraによって提供されるSOP)について分析した。最大2,032U/L[参照株LP1(pCKP6003.1)=4,325U/L]の酵素活性、及び参照株よりも低い産物力価を有するいくつかの有望なクローンを特定した。5個のクローンを、参照株とともに高細胞密度発酵(Ambr250)において試験した。酵素活性は、最大9,056U/L[参照株LP1(pCKP6003.1)=21,586U/L]であり、参照株よりも低い産物力価であった。産物ruDPPIV[株LP1(pCKP6003.1)で発現された]及びruDPPIV_ショート[株LP1(pFJP6015.6)で発現された]を培養上清から精製し、活性を測定した。同様の比生産性が測定された。
・ruDPPIV_ショート: 12.7U/mg
・ruDPPIV全長: 12.4U/mg
【0164】
精製したruDPPIV及びruDPPIV_ショートを、脱グリコシル化し、起こり得る分解について質量分析によって分析した。
・ruDPPIV_ショート: 全長産物及び分解産物が観察された
・ruDPPIV全長: 分解産物のみが観察された
【0165】
ruLAPII_ショート
株バックグラウンドLP1における23個のPAOX1クローンを、SDS PAGE/クーマシー染色を使用して培養培地中へのruLAPII_ショートの分泌、及び酵素活性(AMCアッセイ、Amyraによって提供されるSOP)について分析した。最大26U/L[参照株LP1(pCKP6011.4)=174U/L]の酵素活性、及び参照株よりも低い産物力価を有するいくつかの有望なクローンを特定した。5個のクローンを、参照株とともに高細胞密度発酵(Ambr250)において試験した。酵素活性は、最大371U/L[参照株LP1(pCKP6011.4)=1,212U/L]であった。産物ruLAPII[株LP1(pCKP6011.4)で発現された]及びruLAPII_ショート[株LP1(pFJP6014.13)で発現された]を培養上清から精製し、活性を測定した。ショートバリアントの比活性は、野生型ruLAPIIの比活性よりわずかに低かった。
・ruLAPII_ショート: 1.1U/mg
・ruLAPII全長: 1.5U/mg
【0166】
精製したruLAPII及びruLAPII_ショートを、脱グリコシル化し、起こり得る分解について質量分析によって分析した。
・ruLAPII_ショート: 全長産物のみが観察され、分解産物は観察されなかった
・ruLAPII全長: 分解産物のみが観察された
【0167】
実施例1: 材料及び方法
1. 株及びプラスミド
1.1 大腸菌(Escherichia coli)株
DH10B(Invitrogen、カタログ番号18297-00)をすべてのクローニングステップに使用した。
【0168】
1.2 ピキア・パストリス株
すべてのP.パストリス発現研究を、株LP1を用いて行った。遺伝子型の記載は、要求に応じて共有することができる。
【0169】
1.3 プラスミド
pXSP603ベクターの直鎖状約3085bpのSbfI/SfiIフラグメントの、ATUM400860からの直鎖状1480bpのSbfI/SfiI消化フラグメント(短いruLAPIIバリアントを含有する)とのライゲーションによって、PAOX1プラスミドpFJP6014を構築した。
【0170】
pXSP603ベクターの直鎖状約3085bpのSbfI/SfiIフラグメントの、ATUM400861からの直鎖状2314bpのSbfI/SfiI消化フラグメント(短いruDPPIVバリアントを含有する)とのライゲーションによって、PAOX1プラスミドpFJP6015を構築した。
【0171】
続いて、ケミカルコンピテントDH10B細胞をライゲーションミックスで形質転換した。制限消化分析後、新たに生成されたプラスミド中の目的遺伝子を配列決定によって確認し、後のマルチコピースクリーニングのために、株LP1をプラスミドpFJP6014及びpFJP6015で形質転換した。
【0172】
【0173】
2. 遺伝子
5'及び3'側で欠けているコドンを除き、元のruLAPII配列(すなわち、プラスミドpCKP6011)に由来するruLAPII_ショート産物のDNA配列(セクション3.1及び3.2を参照)。
【0174】
5'及び3'側で欠けているコドンを除き、元のruDPPIV配列(すなわち、プラスミドpCKP6003)に由来するruDPPIV_ショート産物のDNA配列(セクション3.3及び3.4を参照)。
【0175】
3. タンパク質配列
3.1 ruLAPII
斜体は、対応するショートバリアントにおいて欠けているアミノ酸を示す。
理論Mw: 51843.34 理論pI: 6.73
【0176】
3.2 ruLAPIIショートバリアント
理論Mw: 48695.79 理論pI: 6.62
【0177】
3.3 ruDPPIV
斜体は、対応するショートバリアントにおいて欠けているアミノ酸を示す。
理論Mw: 86486.34 理論pI: 8.05
【0178】
3.4 ruDPPIVショートバリアント
理論Mw: 84931.48 理論pI: 7.77
【0179】
4. 一次スクリーニング
4.1 マルチコピースクリーニング
DraIによるプラスミドの直鎖化の後、株LP1をプラスミドpFJP6014(ruLAPII_ショート)及びpFJP6015(ruDPPIV_ショート)で形質転換し、様々な濃度のZeocin(商標)(Invitrogen、カタログ番号ant-zn-1)(500及び1000μg/mL)を含有する寒天プレート上に播種した。30℃で48時間のインキュベーション後、宿主/プラスミド組み込みごとに23個のクローンを選び取り、後の24ウェルプレートにおける発現スクリーニングのために、マスタープレート(100μg/mL Zeocin(商標)を含有する)上に画線塗布した。
【0180】
4.2 24ウェルプレートにおける発現
発現実験は、濃縮多糖(50g/L、EnPump200、EnPresso、Germany)及び14U/L濃縮酵素混合物(EnPump200、EnPresso、Germany)を補充したYPC(酵母エキス、ペプトン、100mMクエン酸ナトリウム、pH6.0)培地を含有する24ウェルプレート(GE Healthcare Life sciences、カタログ番号7701-5102)において行った。YPG(酵母ペプトングリセロール)中で30℃で一晩増殖させた培養物を、主培養液(2mL)に開始OD600が2になるように接種した。続いて、培養物を25℃で260rpmの振とうでインキュベートし、12時間ごとに72時間の繰り返しメタノールショット(1%)によって誘導した。
【0181】
5. 高細胞密度発酵
培地は、3g kg-1ペプトン(Biokar、カタログ番号A1601)を含有する、Gasser(Gasser et al. 2013; Future Microbiol., 8(2): 191-208)及びPrielhofer(Prielhofer et al. 2013, Microbial Cell Factories 12:5)から改変された培地に基づいている。暗条件下で4℃で保存されるPTM1、-4℃で保存されるビオチン、及び4℃で保存されるビオチン溶液を除き、試薬及び溶液は室温で保存される。別段記載される場合を除き、試薬はMerck(Darmstadt、Germany)によって供給された。
【0182】
5.1 前培養
主発酵のための接種材料を産生するために、振とうフラスコ中の培養を行った。各株について、100mLの前培養培地を500mLのバッフル付き振とうフラスコに入れ、1mLの-80℃グリセロールストック培養物を接種した。振とうフラスコを、オービタルシェーカー(Kuhner ISF-1-W)で170rpm(φ25mm)及び30℃で21時間(±2時間)インキュベートした。接種材料をバイオリアクターに移す直前に、培養物の純培養状態を顕微鏡検査(Nikon Eclipse)によって確認した。主発酵は、発酵槽に初期光学密度が1になるように接種することによって、これらの前培養物から開始した。
【0183】
5.2 主発酵
周辺、培地及び溶液を準備した後、バイオリアクターに90mLのバッチ培地を満たし、121℃で30分間オートクレーブし、次いでAmbr250ステーションに取り付けた。炭素基質及び塩基の添加のための供給システムは、70%エタノール、2M水酸化ナトリウム、次いで脱塩水でそれぞれ30分間すすぐことにより、定置洗浄した。PAOX1株のpH制御のために、酸(リン酸)及び塩基(アンモニア)を使用した。空気及び酸素による撹拌及び曝気のための設定値は、溶存酸素の値が25%~40%の間に留まるように機能するカスケードコントローラーによって決定される。
【0184】
5.3 発酵のセットアップ及び戦略
約1の初期光学密度及びグリセロール濃度により、バッチ段階の期間(バッチ段階の長さ)が事前に決定される。
【0185】
ruLAPII_ショート
発酵を、Lonza SOP143961-2及び報告2014.157(S. Bieli and N. Krumov, 2014)に従って行った。
【0186】
バッチ段階の後、主発酵は、バイオマス生成の段階と、それに続く標的タンパク質産生の段階に分けられる(
図2を参照)。5時間12mL・L
-1 BV h
-1の一定のグリセロール供給(45%)をフェドバッチ段階1の間に行う。この段階の後に、発酵槽に供給が導入されない約30分の短い飢餓期間が続き、これは、一方では完全なグリセロールの枯渇、及び他方では行おうとしているメタノール供給に対する細胞代謝の適応を目標とする。産生段階は、30℃から26℃への温度シフト及び5mL・L
-1 BV h
-1の一定のメタノール供給の開始で始まる。
【0187】
ruDPPIV_ショート
発酵を、Lonza SOP143601-2及び報告2014.157(S. Bieli and N. Krumov, 2014)に従って行った。
【0188】
バッチ段階(pH5.2)の後、主発酵は、バイオマス生成の段階と、それに続く標的タンパク質産生の段階に分けられる(
図3を参照)。6時間12mL・L
-1 BV h
-1の一定のグリセロール供給(45%)をフェドバッチ段階1の間に行う。この段階の後に、発酵槽に供給が導入されない約30分の短い飢餓期間が続き、これは、一方では完全なグリセロールの枯渇、及び他方では行おうとしているメタノール供給に対する細胞代謝の適応を目標とする。産生段階は、30℃から24.2℃への温度シフト、及び6.5mL・L
-1 BV h
-1の供給速度が達成されるまでの指数関数的メタノール供給の開始で始まり、この供給速度は発酵終了まで続いた。
【0189】
Ambr250システムを用いた発酵は、様々な供給の自動開始(バッチ段階の終了時のDOスパイクの検出による)及び様々な供給段階のプログラムされた期間を可能とする、カスタムプログラミングスクリプトを使用することによって実行した。発酵パラメータを、IRISプロセス制御システムによって制御及び記録した。
【0190】
6. 下流の精製
精製は、プレゼンテーション「GLH-003:DPP4 and LAP2 step elution feasibility」(プレゼンテーション; A. Zurbriggen et al., 2016)及びデモンストレーションランのブロックフロー図に基づいて、簡略化されたバッチモードを使用して行った。
【0191】
ruLAPII_ショート
精製を、「LAP2_BFD_Demonstration Runs_01」(A. Zurbriggen, 2016)に従って、バッチモードに適合させた。発酵、及び4000rpm、4℃で45分間の培養ブロスの遠心分離の後、100μLのHaltプロテアーゼ阻害剤-単回使用カクテル(100×)(Thermo Scientific、カタログ番号78430)を12mLのEoF培養上清に添加した。
【0192】
樹脂調製
1mLのSP Sepharose(登録商標)XL(GE Healthcare、カタログ番号GE17-5073-01、結合能力5~10mg/mL)を、15mLのFalconチューブに添加し、混合した。続いて、Falconチューブを、1000rpmで5分間遠心分離した。樹脂を、10mLのMQ水で洗浄し、1000rpmで5分間遠心分離した。続いて、上清をピペッティングによって除去し、平衡化のために10mLの50mM酢酸Na、pH5.0を添加した。1000rpmで5分間の遠心分離の後、樹脂の上清をピペッティングによって除去し、樹脂を10mLの50mM酢酸Na、pH5.0で再度洗浄した。
【0193】
サンプルインキュベーション
1000rpmで5分間の遠心分離の後、樹脂の上清をピペッティングによって除去し、樹脂を、12mLのEoF培養上清とともに、ロッキングシェーカー上で室温にて30分間インキュベートした。インキュベーション後、Falconチューブを1000rpmで5分間遠心分離し、上清をピペッティングによって除去した。
【0194】
洗浄
樹脂を10mLの20mMリン酸Na、pH6.0で洗浄し、1000rpmで5分間遠心分離し、上清をピペッティングによって除去した。洗浄後、Falconチューブを1000rpmで5分間遠心分離し、上清をピペッティングによって除去した。
【0195】
溶出
2mLの20mMリン酸Na、pH6.0、130mM NaClを樹脂に添加し、ロッキングシェーカー上で室温にて10分間インキュベートした。続いて、Falconチューブを1000rpmで5分間遠心分離し、上清を単離し、後の分析のために-20℃で保存した。
【0196】
ruDPPIV_ショート
精製を、「DPP4_BFD_Demonstration Runs_01」(A. Zurbriggen, 2016)に従って、バッチモードに適合させた。発酵、及び4000rpm、4℃で45分間の培養ブロスの遠心分離の後、100μLのHaltプロテアーゼ阻害剤-単回使用カクテル(100×)(Thermo Scientific、カタログ番号78430)を12mLのEoF培養上清に添加した。
【0197】
樹脂調製
1mLのSP Sepharose(登録商標)XL(GE Healthcare、カタログ番号GE17-5073-01)、結合能力5~10mg/mLを、15mLのFalconチューブに添加し、混合した。続いて、Falconチューブを、1000rpmで5分間遠心分離した。樹脂を、10mLのMQ水で洗浄し、1000rpmで5分間遠心分離し、上清をピペッティングによって除去し、平衡化のために10mLの25mM Tris、pH7.2を添加した。1000rpmで5分間の遠心分離の後、樹脂の上清をピペッティングによって除去し、樹脂を10mLの25mM Tris、pH7.2で再度洗浄した。
【0198】
サンプルインキュベーション
1000rpmで5分間の遠心分離の後、樹脂の上清をピペッティングによって除去し、樹脂を、12mLのEoF培養上清とともに、ロッキングシェーカー上で室温にて30分間インキュベートした。インキュベーション後、Falconチューブを1000rpmで5分間遠心分離し、上清をピペッティングによって除去した。
【0199】
洗浄
樹脂を10mLの25mM Tris、pH7.2、20mM NaClで洗浄し、1000rpmで5分間遠心分離し、上清をピペッティングによって除去した。洗浄後、Falconチューブを1000rpmで5分間遠心分離し、上清をピペッティングによって除去した。
【0200】
溶出
2mLの25mM Tris、pH7.2、130mM NaClを樹脂に添加し、ロッキングシェーカー上で室温にて10分間インキュベートした。続いて、Falconチューブを1000rpmで5分間遠心分離し、上清を単離し、後の分析のために-20℃で保存した。
【0201】
7. 分析方法
7.1 サンプル処理
細胞(1mLサンプル)を、4℃で6000gにて5分間の遠心分離によって除去し、上清を収集した。サンプルを、分析に直接供するか、又は後の試験のために-80℃で保存した。
【0202】
7.2 湿細胞重量
湿細胞重量を測定するために、1mLの発酵懸濁液を、事前に計量したチューブに移した。サンプルを15,000gにて15分間遠心分離し、上清を単離した。その後、チューブを計量し、湿細胞重量(g L-1)(現在の発酵体積あたりのバイオマス)を計算した。
【0203】
7.3 乾燥細胞重量
乾燥細胞重量の決定のため、1mLのサンプルを、17,000g(4℃)にて15分間遠心分離した。上清を捨て、得られたペレットを100℃で48時間乾燥させた。得られた乾燥細胞重量(g L-1)(現在の発酵体積あたりのバイオマス)を計算した。
【0204】
7.4 光学密度
バイオマス濃度を、フォトスペクトロメーターの直線範囲(OD600=0.05~OD=0.5の間)における600nmでの光学密度を測定することによって決定した。簡単に言えば、10μLの培養物を96ウェルプレート(VWR、カタログ番号732-2746)に添加し、Starletリキッドハンドラー(Hamilton、Bonaduz、Switzerland)を使用してPBS(190μL)中に希釈した(希釈係数1:20)。続いて、600nmにおける光学密度を、Tecan Infiniteリーダーを用いて測定した。ブランクとして、200μLのYPC培地を使用した。
【0205】
7.5 SDS PAGE/クーマシー染色による産物の検出
SDS-PAGEを還元条件下で実行した。プレキャストCriterion 12%Bis-Tris SDSゲル(Bio-Rad、カタログ番号567-1124)を、MES緩衝液(Bio-Rad、カタログ番号161-0796)とともに使用した。サンプルを、NuPAGE 4×LDSローディング緩衝液(Invitrogen、カタログ番号NP0007)と混合し、95℃で5分間インキュベートした。レーンあたり、7.5μLのサンプル(10μLの培養上清に5μLの4×LDSローディング緩衝液を加える)をロードした。分子量標準として、Mark12(Invitrogen、カタログ番号LC5677)をロードした。参照として、1μgの組換えruLAPII(Biomeva LAP-2 100.6mg/ml)をロードした。電気泳動を、200Vでおおよそ80分間行った。分離されたタンパク質は、GelCode Blue染色試薬(Thermo Scientific、カタログ番号24592)を用いて1~2時間染色することによって可視化し、一晩、水を用いて脱染した。
【0206】
7.6 AMC活性アッセイ
活性の試験を、96ウェルプレート(GreinerOne、カタログ番号655900)中で行った。基質として、ruDPPIVについて10mM Gly-Pro-AMC(Bachem、カタログ番号I1225)又はruLAPIIについて10mM Leu-AMC塩酸塩(Bachem、カタログ番号I1245)を使用した。反応緩衝液として、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5、1mM CoCl2、1%BSA)を使用した。標準として、1mM AMC(EtOH中に可溶化、Bachem、カタログ番号Q-1025)を、反応緩衝液中に希釈した0nM~10,000nMの最終濃度で使用した。サンプル(細胞不含培地)を1/400~1/2500の間で希釈し、蛍光はAMC標準曲線内にあった。簡単に言えば、10μLのサンプルを、10μLの基質(最終濃度: 1mM)とともに90μLの反応緩衝液に添加した。測定を以下の設定を用いて行った:
温度: 25℃
励起: 370nm
放射: 460nm
反応期間: 30分
測定間隔: 30秒
【0207】
7.7 BCAアッセイ(タンパク質濃度)
タンパク質測定を、製造業者(Pierce BCAタンパク質アッセイキット、カタログ番号23227)に従って、96ウェルマイクロタイタープレートに適合させて行った。
【0208】
7.8 PNGase消化(脱グリコシル化)
脱グリコシル化を、製造業者(NEB Rapid PNGase F、カタログ番号P0710S)に従って行った。簡単に言えば、15μLの溶出サンプルを、5μLのRapid PNGase F緩衝液(5×)に添加し、80℃で2分間インキュベートした。冷めた後、1μLのRapid PNGase Fを添加し、50℃で10分間インキュベートした。
【0209】
7.9 サンプルの脱塩
簡単に言えば、脱塩を、Amicon Ultra -0.5mL、30Kについて、製造業者(Merck、カタログ番号UFC503096)に従って行った。簡単に言えば、5個のPNGase F消化したサンプルをプールし(合計100μL)、25mM Tris、pH7.2を用いて500μLまで満たした。続いて、チューブを、4℃で14,000gにて10分間遠心分離した。上清を単離した。次いで、20μLの25mM Tris、pH7.2をフィルターに添加し、4℃で14,000gにて10分間遠心分離した。両サンプルを、後の分析のためにプールした。
【0210】
7.10 質量分析
分析を、B-Fabric(Functional Genomics Center Zurich)で行った。簡単に言えば、ESI-MS分析の前に、サンプルを、C4 Zip Tips(Millipore、USA)を使用して脱塩し、MeOH:2-PrOH:0.2%FA(30:20:50)中で分析した。溶液を、溶融石英キャピラリー(ID75μm)を通じて1μL/分の流速で注入し、PicoTips(ID30μm)を通じてスプレーした。最後のものは、New Objective(Woburn、MA)から入手した。サンプルのNano ESI-MS分析を、Synapt G2_Si質量分析計で行い、データを、MassLynx 4.2ソフトウェア(両方ともWaters、UK)を用いて記録した。質量スペクトルを、1秒のスキャン期間及び0.1秒のスキャン間遅延を用いて100~5000daのm/z範囲をスキャンすることによって、ポジティブイオンモードで取得した。スプレー電圧を3kVに設定し、コーン電圧を50Vに設定し、ソース温度を80℃に設定した。4個すべてのサンプルを、さらにサンプル調製せずにMALDI-MSによっても分析し、すなわち、鋼標的上に単に適用した。
【0211】
7.11 グリセロールストック培養物
二次スクリーニングにおける実験のために使用される-80℃ストック培養物を、以下のプロトコールに従って調製した:
主培養物の接種:
・20mLのYPD培地を100mL振とうフラスコに移す
・20μLのZeocin(商標)(InvivoGen、カタログ番号ant-zn-1)(100mg/mL)を添加する; 最終濃度: 100μg/mL
・プレートからのコロニーのループを用いて接種する
・30℃、200rpmでおおよそ20時間インキュベートする
-80℃での保存用の主培養物の調製:
・光学密度(OD600)を測定する(期待されるOD600は40~50である)
・850μLの培養物を、150μLグリセロール(100%)を含有するNunc1.8mLクライオチューブに添加する
・転倒混和する
・-80℃で保存する
【0212】
実施例2: 一次スクリーニング
直鎖化プラスミドpFJP6015(ruDPPIV_ショート)及びpFJP6014(ruLAPII_ショート)を用いたP.パストリス株の形質転換後、コロニーを選び取って、2mLのYPC培地を含有する24ウェルプレート中に接種した。明らかに分離しているコロニーのみを取った。合計で、46個のクローン(産物あたり23個のクローン)を、25℃、260rpmでインキュベートし、pH6.0で増殖させ、12時間ごとに72時間のメタノール(1%)の繰り返しショットによって誘導した。参照として、前駆体株LP1(pCKP6003.1、ruDPPIV)及びLP1(pCKP6011.4、ruLAPII)を含めた。
【0213】
続いて、クローンの培養上清を、SDS PAGE/クーマシー染色及び酵素活性(AMCアッセイ)によって分析した。
【0214】
1. ruDPPIV_ショートバリアント
pH6.0で増殖させたすべてのLP1(pCKP6015)クローンの培養上清を、還元条件下で12%SDS PAGEゲル上にロードした。参照として、参照株LP1(pCKP6003.1、ruDPPIV)の培養上清をロードした(
図4、レーン26)。
【0215】
図4Aに示されるように、いくつかのクローンの培養上清は、参照株LP1(pCKP6003.1)(
図4、レーン26)と同じ高さで移動するバンドを示した。濃いruDPPIV_ショート産物は、クローンLP1(pCKP6015.8)(
図4、レーン6)、LP1(pCKP6015.6)(
図4、レーン13)、LP1(pCKP6015.12)(
図4、レーン14)、LP1(pCKP6015.15)(
図4、レーン19)及びLP1(pCKP6015.18)(
図4、レーン25)の培養上清に見出すことができた。最も濃い産物バンドを有するクローンについて、参照株LP1(pCKP6003.1)に見出される結果と同様な凝集体形成が観察され(
図4、レーン6、13、14、19及び25をレーン26と比較)、このことは、ショートバリアントが、全長ruDPPIVと同様な凝集体(ruDPPIV二量体の可能性が最も高い)を形成することが可能であることを示す。最も濃い産物量は、クローンLP1(pFJP6015.8)に見出され、これは、参照株LP1(pCKP6003.1)に見出される産物量のおおよそ半分であることが視覚的に決定された。
【0216】
すべてのクローンの培養上清を、AMCアッセイを使用して酵素活性について分析した(実施例1、セクション7.6を参照)。予想どおり、最も高い産物力価を示すクローンの培養上清はまた、最も高い酵素活性を示した。最も高い活性は、クローンLP1(pFJP6015.8)(2032U/L)の培養上清に見出され、これは、参照株LP1(pCKP6003.1)(4325U/L)において測定された活性のおおよそ半分であった。参照クローンLP1(pCKP6003.1)は、初期スクリーニング(3977U/L、ResRep2014.111)におけるものと再現性のある活性を示した。要約すると、データは、ruDPPIVのショートバリアントが依然として酵素的に活性であることを示唆した。
【0217】
2. ruLAPII_ショートバリアント
pH6.0で増殖させたすべてのLP1(pCKP6014)クローンの培養上清を、還元条件下で12%SDS PAGEゲル上にロードした。参照として、参照株LP1(pCKP6011.4、ruLAPII)の培養上清(
図5、レーン26)及び精製されたruLAPII(Biomeva LAP-2 100.6mg/mL)をロードした。
【0218】
ruDPPIVを産生するクローンとは対照的に、ruLAPIIを産生するクローンの培養上清において、産物量は全く見えないか又は非常に少ない産物量が見られ(
図5A)、これは、定量化を困難にするruLAPIIの強いグリコシル化に起因して説明され得る(すなわち、くっきりしたバンドがないが、むしろぼやけたバンドがある)。高産生株を特定するこの困難性にもかかわらず、いくつかのクローンは、有望な結果を示した: LP1(pFJP6014.6)(
図5、レーン13)、LP1(pFJP6014.12)(
図5、レーン14)、LP1(pFJP6014.13)(
図5、レーン15)、LP1(pFJP6014.20)(
図5、レーン18)及びLP1(pFJP6014.15)(
図5、レーン19)。全体的に、ruLAPII_ショートクローンによって分泌される産物量は、参照株LP1(pCKP6011.4)と比較して著しく低かった。
【0219】
すべてのクローンの培養上清を、AMCアッセイを使用して酵素活性について分析した(実施例1、セクション7.6を参照)。予想どおり、最も高い産物力価を示すクローンの培養上清はまた、最も高い酵素活性を示した。最も高い活性は、クローンLP1(pFJP6014.13)(26.1U/L)の培養上清に見出され、これは、参照株LP1(pCKP6011.4)(173.8U/L)において測定された活性のおおよそ15%であった。参照クローンは、初期スクリーニング(158.4U/L、ResRep2014.111)におけるのと同様の活性を示した。要約すると、データは、ショートバリアントが依然として酵素的に活性であることを示唆した。
【0220】
実施例3: 二次スクリーニング
AOX1プロモーターによる発現は、制限されたメタノール供給によって誘導される。約24~28時間のバッチ段階(pO2スパイクによって示される)の後に、バイオマスを増加させるためのグリセロールフェドバッチ段階が続く。12時間のグリセロール供給の後、ruDPPIV又はruLAPIIのいずれかのための発酵プロトコールに応じて、メタノール供給を開始する。ruDPPIV又はruLAPIIのいずれかのショートバリアントの5個のクローンの他に、直接的比較のために参照株を含めた。
【0221】
【0222】
1. ruDPPIV_ショート
1.1 バイオマス生成
すべての発酵ランの細胞密度及び乾燥細胞重量を、互いに比較した。すべての発酵についてのバッチ段階の期間を、すべての株について45g L-1グリセロールの初期グリセロール濃度及び1の開始OD600によって事前に決定し、バッチ段階は18~20時間の間で終了した(pO2スパイクによって示される)。続いて、12時間のグリセロール供給を開始し、その後にメタノール供給が続いた。全発酵期間は78時間であった。
【0223】
発酵の終了時にバイオマスにおける有意差は観察されなかった(中央値WCWから10%未満の偏差、及び中央値DCWから1%未満の偏差)。これは、株が、ruDPPIVのショートバリアントによって影響を受けなかったことを示した。光学密度にわずかな差が観察されたが、培養物の高細胞密度に起因する分析誤差である可能性が最も高かった(
図6)。
【0224】
1.2 産物生成
いくつかのサンプルを、発酵ランの途中で、それぞれ、ruDPPIV_ショート産物増加を調査するため、且つ最も有望な株を特定するために、採取した。細胞を遠心分離し、培養上清を単離した。続いて、代表的なサンプルを、SDS PAGE/クーマシー染色によって分析した。
【0225】
一次スクリーニングのデータから予想されたように、ruDPPIV_ショートの産物力価は、全長産物ruDPPIVと比較して著しく減少した(
図7、緑色の線を他の線と比較)。最高の生産性のruDPPIV_ショートクローン[クローンLP1(pFJP6015.15)無し]の培養上清を、互いに比較した場合、活性において有意差は観察されなかった; すなわち、酵素活性は、7,276.6U/L~9,055.6U/Lの間の範囲であった。野生型株LP1(pCKP6003.1)と比較すると、最高の生産性のruDPPIV_ショートクローンの活性は、参照株LP1(pCKP6003.1)(21,586U/L)のおおよそ50%であった(
図7)。参照クローンLP1(pCKP6003.1)の活性は、以前のデータ(25,000U/L、10 L Infors、報告2014.157)と一致した。
【0226】
2. ruLAPII_ショート
2.1 バイオマス生成
すべての発酵ランの細胞密度及び乾燥細胞重量を、互いに比較した。すべての発酵についてのバッチ段階の期間を、すべての株について45g L-1グリセロールの初期グリセロール濃度及び1の開始OD600によって事前に決定し、バッチ段階は18~20時間の間で終了した(pO2スパイクによって示される)。続いて、12時間のグリセロール供給を開始し、その後にメタノール供給が続いた。全発酵期間は78時間であった。
【0227】
発酵の終了時にバイオマスにおける有意差は観察されず(中央値WCWから10%未満の偏差、及び中央値DCWから1%未満の偏差)、このことは、ショートバリアントを産生するクローンが、全長ruLAPIIを産生するクローンと同様に増殖することを示す。光学密度にわずかな差が観察されたが、培養培地の高細胞密度に起因する分析誤差である可能性が最も高かった(
図8)。
【0228】
2.2 産物生成
いくつかのサンプルを、発酵ランの途中で、それぞれ、ruLAPII_ショート産物増加を調査するため、且つ最も有望な株を特定するために、採取した。細胞を遠心分離し、培養上清を単離した。続いて、代表的なサンプルを、SDS PAGE/クーマシー染色及びAMCアッセイによって分析した。
【0229】
ruDPPIV_ショートと同様に、また、一次スクリーニングのデータから予想されたように、ruLAPII_ショートの産物力価は、全長ruLAPIIと比較して著しく減少した(
図9、緑色の線を他の線と比較)。株のランキングは、一次スクリーニングにおいて観察されたものと同一であった。最高の生産性の2つのruLAPII_ショートクローンの培養上清を、互いに比較した場合、活性において激しい差は観察されなかった; すなわち、酵素活性は、320U/L~371.2U/Lの間の範囲であった。野生型株LP1(pCKP6011.4)と比較すると、最高の生産性のruLAPII_ショートクローンの活性は、参照株LP1(pCKP6011.4)(1,212.3U/L)のおおよそ30%であった(
図9)。参照クローンLP1(pCKP6011.4)の活性は、以前のデータ(1,500U/L、10 L Infors、報告2014.157)と一致した。
【0230】
実施例4: 比活性
実施例2及び3に示されるように、ruDPPIV又はruLAPIIのショートバリアントの体積活性(U/L)は、著しく低下した。産物量も著しく低下したため、低下した活性が、より低い比活性に起因するのか、又は培養上清中のより低い産物量に起因するのかが明らかではなかった。したがって、比活性を評価するために、タンパク質を精製し、比活性(すなわち、U/mg)を評価することが決定された。その目的のため、「GLH-003:DPP4 and LAP2 step elution feasibility」(プレゼンテーション; A. Zurbriggen et al., 2016)からの精製戦略を、バッチモードでの使用に適合させた。
【0231】
1. ruDPPIV_ショート
LP1(pFJP6015.6、ruDPPI_ショート、9,056U/L)及びLP1(pCKP6003.1、ruDPPIV、21,586U/L)からの培養上清12mLを、2mLのSP Sepharose XL(GE Healthcare)上にロードし、続いて、10mLの25mM Tris、pH7.2、20mM NaClによる2回の洗浄後に、2mLの25mM Tris、pH7.2、130mM NaCl中に溶出した。精製サンプル(ロード、フロースルー及び溶出)から、AMCアッセイ(活性アッセイ)及びBCAアッセイ(タンパク質濃度)を行った。3回の試行を行った: 1回目の精製試行では、技術的問題が生じ、それ故、データを信頼できなかった。3回目の試行では、目的は、後の質量分析のため、より多くの精製材料を生成することであった。増加するサンプル体積及び樹脂にもかかわらず、すでに結合能力に達し、材料供給における改善を生ずることができなかった。便宜のため、2回目の精製試行のデータを提示する。
【0232】
精製後、サンプルをSDS-PAGE/クーマシー染色にロードし、BCAアッセイをAMCアッセイとともに行った(
図10)。
【0233】
ruDPPIV_ショートとruDPPIVとの間に、比活性(12U/mg)において激しい差は見出されなかった。比較のため、tox材料生成(報告ResRep2014.165)のruDPPIV精製材料は、19.6U/mg及び20U/mgの比活性を示した; デモンストレーションランは、18.3U/mg及び17.9U/mgの活性を示した。本明細書に提示されるデータと、材料生成報告との間のruDPPIVの差は、異なる樹脂モード(バッチモード対カラムモード)のためである可能性が最も高い。
【0234】
2. ruLAPII_ショート
LP1(pFJP6014.13、ruLAPII_ショート、371U/L)及びLP1(pCKP6011.4、ruLAPII、1,212U/L)からの培養上清12mLを、2mLのSP Sepharose XL(GE Healthcare)上にロードし、続いて、10mLの20mMリン酸Na、pH6.0による2回の洗浄後に、2mLの20mMリン酸Na、pH6.0、130mM NaCl中に溶出した。精製サンプル(ロード、フロースルー及び溶出)から、AMCアッセイ(活性アッセイ)及びBCAアッセイ(タンパク質濃度)を行った。3回の試行を行った: 1回目の精製試行では、技術的問題が生じ、それ故、データを信頼できなかった。3回目の試行では、目的は、後の質量分析のため、より多くの精製材料を生成することであった。ruDPPIV_ショート精製と同様に、すでに結合能力に達し、材料供給における改善を生ずることができなかった。便宜のため、2回目の精製試行のデータを提示する。
【0235】
精製後、サンプルをSDS-PAGE/クーマシー染色にロードし、BCAアッセイをAMCアッセイとともに行った(
図11)。
【0236】
ruLAPII_ショートの精製したサンプルにおいてわずかにより低い比活性が見出され、全長ruLAPIIよりおおよそ26%低かった(すなわち、1.1U/mg対1.5U/mg)。サンプルを、クーマシー染色したSDSゲル上で比較すると、予想された位置に、より少ないバリアントが見出された(
図11、レーン3&6又はレーン4&7を比較、青色の矢印)。ruLAPIIの比活性(1.5U/mg)は、tox材料生成(1.7U/mg及び報告ResRep2014.165)及びデモラン(1.9U/mg及び2U/mg)中に観察されたものよりわずかに低かった。ruDPPIV精製と同様に、差は、わずかに異なる精製戦略(すなわち、バッチモード対カラムモード)の使用によって説明され得る。
【0237】
実施例4: 産物分解
この研究の目的は、ruDPPIV及びruLAPIIのショートバリアントが、全長分子で観察されたように、さらに分解しないことを確認することであった。この目的のために、質量分析(ESI-MS及びMaldi-TOF)を行った。簡単に言えば、精製後、溶出サンプルを、(質量分析を妨害する)グリカン構造を切断するためにPNGase Fで、且つ遊離グリカンを除去するためにAmicon脱塩でさらに処理した。
【0238】
1. ruDPPIV_ショート
まず、ESI-MS及びMaldi-TOFをB-Fabricによって行った。ESI-MSについて、シグナル強度は非常に低いか、又はタンパク質様の種は全く検出できなかった。微量のPNGaseF(34,874Da及び34,887Da)が検出された。
【0239】
両バリアントについて、Maldi-TOFでは分解物が観察された。全長ruDPPIVとは対照的に、全長ruDPPIV_ショート分子は、おそらくアセチル化修飾(+42)を伴って見出すことができた(
図12)。
【0240】
2. ruLAPII_ショート
まず、ESI-MS及びMaldi-TOFをB-Fabricによって行った。ESI-MSについて、全長分子ruLAPIIのサンプルのみが見出された。微量のPNGaseF(34,869Da及び34,863Da)が検出された。
【0241】
Maldi-TOFでは、ruLAPIIショートについて、全長分子のみが検出された。全長ruLAPII分子について、分解物のみを特定することができた。全長ruLAPIIについて、Val4及びLys457の後(48,884da)、及びVal4の後のみ(51,284da)に主な切断が生じ、これは、Biomevaによって供給された以前のデータと一致した(
図13)。
【0242】
【配列表】
【国際調査報告】