(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】炭素繊維強化複合材料用BMI樹脂製剤、BMIプリプレグおよび炭素繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20231227BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20231227BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20231227BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C08J5/24 CER
C08L65/00
C08L79/08 Z
C08G61/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558299
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 US2021061612
(87)【国際公開番号】W WO2022120049
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523209575
【氏名又は名称】トウレ コンポジット マテリアルズ アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY COMPOSITE MATERIALS AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】19002 50th Ave E,Tacoma,WA 98446,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミリガン,マデリン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ,ジョナサン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハロ,アルフレッド,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】カマエ,トシヤ
(72)【発明者】
【氏名】マツウラ,ナオキ
(72)【発明者】
【氏名】フルカワ,コウジ
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA05
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB22
4F072AB28
4F072AD03
4F072AD45
4F072AE03
4F072AE23
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF19
4F072AF23
4F072AF29
4F072AG03
4F072AG17
4F072AH43
4F072AH49
4F072AK02
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL05
4F072AL07
4F072AL17
4J002CE001
4J002CM04X
4J002CM04Y
4J002DA016
4J002DA037
4J002DA077
4J002DA087
4J002DA097
4J002DA107
4J002DE077
4J002DE096
4J002DE117
4J002DE137
4J002DE147
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002FA046
4J002FA087
4J002FA08X
4J002FD016
4J032BA12
4J032BB06
4J032BC05
(57)【要約】
強化繊維、粒子(D1)および(D2)、ならびに熱硬化性樹脂組成物を含む繊維強化プリプレグが提供される。樹脂は、マレイミド化合物(A)と、コモノマー(B)とを含む。コモノマー(B)は、アルケニルフェノール基、アルケニルフェノキシ基、またはジアミン基の少なくとも1つを有する。粒子(D1)は(D2)よりも小さく、粒子(D1)および(D2)は熱硬化性樹脂中で不溶性である。粒子(D1)は、直径が1~10ミクロンの範囲であり、体積基準で3~6ミクロンのモードを有し、かつ熱硬化性樹脂の3~12体積%で存在する。粒子(D2)は、直径が10~100ミクロンの範囲であり、20~60ミクロンのモードを有し、かつ熱硬化性樹脂の1~6体積%で存在する。硬化後、粒子(D1)および(D2)の少なくとも90体積%がプリプレグ中間層中に残存する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維と、
第1のコモノマー(A)、
第2のコモノマー(B)、および
粒子(D)
を含む熱硬化性樹脂組成物と、を含む繊維強化プリプレグであって、
前記粒子(D)が、前記第1のコモノマー(A)および前記第2のコモノマー(B)中で不溶性であり、前記粒子(D)が、前記プリプレグ中の前記熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含み、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有し、
条件i)またはii)、すなわち、
i)前記第1のコモノマー(A)はマレイミド化合物を含み、前記第2のコモノマー(B)はアルケニルフェノール基、アルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つを含む、または
ii)前記粒子(D)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有する、前記プリプレグ中の前記熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%の粒子(D1)と、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有する、前記プリプレグ中の前記熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%の粒子(D2)とを含む
の少なくとも一方が満たされる、繊維強化プリプレグ。
【請求項2】
前記繊維強化プリプレグから作製された硬化複合体が、条件i)またはii)の少なくとも1つが満たされる場合、4.45kJ/mで衝撃を受けた後に、ASTM規格ASTM D7137M-17に従って測定された、35ksi以上の衝撃後圧縮強度(Compressive strength After Impact:CAI)を有する、請求項1に記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項3】
前記プリプレグは、繊維層と中間層とを含み、
前記繊維層は、前記熱硬化性樹脂組成物を含浸させた前記強化繊維を含み、
前記中間層は、前記熱硬化性樹脂組成物、前記粒子(D)を含み、
前記粒子(D)の少なくとも90体積%が、前記プリプレグの硬化後に前記中間層中に残存する、請求項1または2に記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項4】
前記粒子(D1)は、前記熱硬化性樹脂組成物の総体積の5~10体積%を含む、請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項5】
前記粒子(D2)は、前記熱硬化性樹脂組成物の総体積の2~4.5%を含む、請求項1~4のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項6】
前記粒子(D1)と前記粒子(D2)との体積比が、90:10~50:50、好ましくは80:20~40:60である、請求項1~5のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項7】
前記粒子(D)は、ポリイミド粒子を含む、請求項1~6のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項8】
前記粒子(D2)は、20~60ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~50ミクロンのモードを有する、請求項1~7のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項9】
前記粒子(D)が、200℃以上、好ましくは220℃以上のガラス転移温度を有する、請求項1~8のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂組成物は、その中に溶解している熱可塑性物質(C)をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項11】
前記熱可塑性物質(C)は、ポリイミドを含み、かつ前記粒子(D1)および(D2)の重量を除く、前記熱硬化性樹脂組成物全体の0.5~5質量%の量で存在する、請求項10に記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂組成物の樹脂流動指数を5以下に下げるために十分な量の促進剤をさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項13】
前記促進剤の量は、成分(A)および(B)に対して0.05~0.質量5%である、請求項12に記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項14】
前記促進剤がリン含有促進剤を含む、請求項12または13に記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項15】
前記マレイミド化合物(A)は、N,N’-4,4’-ジフェニルメタン-ビスマレイミド、N,N’-2,4-トルエン-ビスマレイミド、N,N’-2,2,4-トリメチルヘキサン-ビスマレイミド、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~14のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項16】
前記マレイミド化合物(A)は、2つ以上のビスマレイミド化合物の共融混合物を含む、請求項1~15のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項17】
前記コモノマー(B)は、o,o’-ジアリルビスフェノールAを含む、請求項1~16のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【請求項18】
第1のコモノマー(A)と、
第2のコモノマー(B)と、
粒子(D)と、を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記粒子(D)が、前記第1のコモノマー(A)および前記第2のコモノマー(B)中で不溶性であり、前記粒子(D)が、前記プリプレグ中の前記熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含み、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有し、
条件i)またはii)、すなわち、
i)前記第1のコモノマー(A)はマレイミド化合物を含み、前記第2のコモノマー(B)はアルケニルフェノール基、もしくはアルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つを含む、または
ii)前記粒子(D)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有する粒子(D1)であって、前記熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含む粒子(D1)と、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有する粒子(D2)であって、前記熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む粒子(D2)とを含む
の少なくとも一方が満たされる、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
粒子(D1)と粒子(D2)との体積比が90:10~50:50である、請求項18に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項20】
前記粒子(D1)はポリイミド粒子を含む、請求項18または19に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項21】
前記粒子(D2)は、20~60ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~40ミクロンのモードを有する、請求項18~20のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項22】
前記粒子(D1)は、200℃~400℃、好ましくは220℃~400℃、さらに好ましくは220℃以上のガラス転移温度を有する、請求項18~21のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項23】
その中に溶解している熱可塑性物質(C)をさらに含む、請求項18~22のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項24】
前記熱可塑性物質(C)はポリイミドを含む、請求項23に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項25】
前記熱硬化性樹脂の樹脂流動指数を5以下に下げるために十分な量の促進剤をさらに含む、請求項18~24のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項26】
前記促進剤の量が、成分(A)および(B)に対して0.05~0.5質量%である、請求項25に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項27】
前記促進剤がリン含有促進剤を含む、請求項25または26に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項28】
前記マレイミド化合物(A)は、N,N’-4,4’-ジフェニルメタン-ビスマレイミド、N,N’-2,4-トルエン-ビスマレイミド、N,N’-2,2,4-トリメチルヘキサン-ビスマレイミド、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項18~27のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項29】
前記第2のコモノマー(B)は、o,o’-ジアリルビスフェノールAを含む、請求項18~28のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項30】
第1のコモノマー(A)と、
第2のコモノマー(B)と、
粒子(D1)と、
粒子(D2)と、を合併することを含む、熱硬化性樹脂組成物を作製する方法であって、
前記粒子(D1)および粒子(D2)が、前記第1のコモノマー(A)および前記第2のコモノマー(B)中で不溶性であり、前記粒子(D1)が、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有し、かつ前記粒子(D1)が、前記熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含み、前記粒子(D2)が、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有し、かつ前記粒子(D2)が、前記熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む、熱硬化性樹脂組成物を作製する方法。
【請求項31】
前記第1のコモノマー(A)および前記第2のコモノマー(B)を合併してモノマー混合物を形成し、次いで、前記粒子(D1)および(D2)を前記モノマー混合物と合併して前記熱硬化性樹脂組成物を形成する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記粒子(D1)および前記粒子(D2)を合併して2つ以上のモードを含む粒子混合物を形成し、次いで、前記粒子混合物を前記モノマー混合物と合併して前記熱硬化性樹脂組成物を形成する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記粒子(D1)および前記粒子(D2)を合併して2つ以上のモードを含む粒子混合物を形成する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記粒子混合物を、前記第1のコモノマー(A)または前記第2のコモノマー(B)のいずれかと合併し、次いで、前記コモノマー(A)または前記コモノマー(B)の他方と合併して前記熱硬化性樹脂を形成する、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、「炭素繊維強化複合材料用BMI樹脂製剤、BMIプリプレグおよび炭素繊維強化複合材料」と題する2020年12月4日に出願した米国仮出願第63/121,632号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、高温耐性および衝撃後の優れた圧縮強度の特性を必要とする用途に適した繊維強化複合部品を製造するための繊維強化プリプレグに関する。
【背景技術】
【0003】
炭素繊維強化複合材料のマトリクスに対する現在のマレイミド樹脂、ビスマレイミド(BMI)樹脂、ならびにベンゾオキサジン(BOX)樹脂の欠陥は、複合部品の衝撃後圧縮(Compression After Impact:CAI)により測定される破壊靭性の低下である。破壊靭性を高める技術、例えば、マトリクス樹脂への熱可塑性物質の溶解は、BMI樹脂マトリクスに溶解する熱可塑性物質がほんの少数であるため、あまり効果的ではない。例えば、典型的なポリイミド(PI)は、非常に高い分子量を有する傾向があるため、室温での粘度の望ましくない上昇を引き起こすことなしには、少量しかBMI樹脂に溶解させることができない。この高粘度化によりプリプレグのタックが低下し、脆いプリプレグとなる。他の低分子量熱可塑性物質、例えば、アミン末端ポリエーテルスルホン(PES)は、BMIやBOXマトリクスの靭性に影響を与えるために、熱硬化性樹脂組成物中での高い装填量を必要とする。このような多量のPESは、BMIまたはBOXマトリクスの全体的特性を低下させ始めるため、得られるプリプレグや複合体の構造物は、BMIやベンゾオキサジン樹脂に知られている望ましい機械的および熱的な利点を有さない。
【0004】
炭素繊維複合体の靭性を高めるために試みられている他の方法は、プリプレグのプライ間の中間層に粒子を適用することである。従来の微粒子中間層強化剤、例えばポリアミドは、BOXやBMIの高い使用温度に、さらに高い必要硬化温度には言うまでもなく耐えることができない。現在、靭性を高めるために、200℃超のTgを有する粒子を使用することができるが、その靭性が低いため、わずかにしか効果的でない。それらの粒子は、その上、溶媒に溶解しにくいため、良好な強靭化粒子として通常は有利である、高度に球状の粒子を生成することを困難にする。この粒子は、研削法によってしか十分に小さくすることができないため、不規則な形状をしており、したがって、高温マトリクス材料、例えば、BMI、ポリイミド、BOX、および特定の高温エポキシの靭性を高めるためのその有効性がさらに低下する。
【0005】
BMI炭素繊維強化プリプレグ(Carbon Fiber Reinforced Prepreg:CFRP)系の強靭化には、従来からPI粒子が使用されている。靭性を高めるために必要とされる多量のPI粒子が、経済性と機械的特性上の問題から、その材料の全般的な使用を減少させる。プリプレグに組み込まれる粒子の体積が大きいと、それらのプリプレグの取扱い性やタックが損なわれ、プリプレグの、部品への加工が困難になる。さらに、粒子の体積が大きすぎると、プリプレグ中の樹脂系の流動特性を改善することが困難である。
【0006】
本発明者らは、前記の課題について鋭意検討して、マトリクスとしてのビスマレイミドまたはBOX樹脂組成物、および2つの異なる大きさの粒子を含む層間粒子を組み込む繊維強化プリプレグを調製することにより、前記の課題を解決できることを見出した。
【発明の概要】
【0007】
強化繊維および熱硬化性樹脂組成物を含む繊維強化プリプレグ。熱硬化性樹脂組成物は、第1のコモノマー(A)、第2のコモノマー(B)、および粒子(D)を含む、第1のコモノマー(A)、第2のコモノマー(B)、および粒子(D)からなる、または第1のコモノマー(A)、第2のコモノマー(B)、および粒子(D)から本質的になる。粒子(D)は、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性である。粒子(D)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含む、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%からなる、またはプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%から本質的になり、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有する。繊維強化プリプレグから作製された硬化複合体は、以下の条件i)またはii)の少なくとも1つが満たされる場合、4.45kJ/mで衝撃を受けた後に、本明細書の実施例中で詳細に記載されるように、ASTM規格ASTM D7137M-17に従って測定された、35ksi以上の衝撃後圧縮強度(Compressive strength After Impact:CAI)を有する。
【0008】
i)第1のコモノマー(A)は、マレイミド化合物を含む、マレイミド化合物からなる、もしくはマレイミド化合物から本質的になり、第2のコモノマー(B)は、アルケニルフェノール基、アルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つを含む、アルケニルフェノール基、アルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つからなる、もしくはアルケニルフェノール基、アルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つから本質的になる、または
ii)粒子(D)は、粒子(D1)および(D2)を含む、粒子(D1)および(D2)からなる、または粒子(D1)および(D2)から本質的になり、粒子(D1)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含む、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%からなる、またはプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%から本質的になり、かつ1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有し、粒子(D2)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%からなる、またはプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%から本質的になり、かつ10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有する。
【0009】
熱硬化性樹脂組成物も提供される。熱硬化性樹脂組成物は、第1のコモノマー(A)、第2のコモノマー(B)、および粒子(D)を含む、第1のコモノマー(A)、第2のコモノマー(B)、および粒子(D)からなる、または第1のコモノマー(A)、第2のコモノマー(B)、および粒子(D)から本質的になる。粒子(D)は、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性である。粒子(D)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含む、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%からなる、またはプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%から本質的になり、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有する。以下の条件i)またはii)の少なくとも1つを満たす。
【0010】
i)第1のコモノマー(A)は、マレイミド化合物を含み、第2のコモノマー(B)は、アルケニルフェノール基、もしくはアルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つを含む、または
ii)粒子(D)は、粒子(D1)および(D2)を含み、粒子(D1)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D1)は、熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含み、粒子(D2)は、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D2)は、熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む。
【0011】
さらに、熱硬化性樹脂組成物の作製方法が提供される。本方法は、以下のもの、すなわち、
・第1のコモノマー(A)と、
・第2のコモノマー(B)と、
・粒子(D1)と、
・粒子(D2)と、を合併するステップを含む、それらを合併するステップからなる、またはそれらを合併するステップから本質的になる。
【0012】
粒子(D1)および粒子(D2)は、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性である。粒子(D1)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D1)は、熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含む。粒子(D2)は、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D2)は、熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む。
【0013】
これらの繊維強化プリプレグから作製された硬化複合材料は、優れた衝撃後圧縮、ならびに本明細書に記載される他の望ましい特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】粒径の体積百分率の関数としてプロットした、粒子(D1)および(D2)の典型的な度数分布の一例を示す。
【
図2】2つの異なる粒子径のレベルの変化がCAIに及ぼす効果を示す。
【
図3】繊維層と、粒子を含有する中間層とを示す硬化積層体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、第1のコモノマー(A)と第2のコモノマー(B)とを含む樹脂組成物中に粒子(D)の集団を含ませると、硬化繊維強化複合体(Fiber Reinforced Composite:FRC)部品のCAIが改善されることを見出した。粒子(D)の集団は、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性であり、粒子(D)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含む、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%からなる、またはプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%から本質的になり、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有する。硬化複合体のCAIの改善を達成するためには、以下の2つの条件の少なくとも1つが満たされる。それらの条件は、
i)コモノマー(A)は、マレイミド化合物を含む、マレイミド化合物からなる、またはマレイミド化合物から本質的になり、第2のコモノマー(B)は、アルケニルフェノール基、もしくはアルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つを含む、アルケニルフェノール基、もしくはアルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つからなる、またはアルケニルフェノール基、もしくはアルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つから本質的になる。
【0016】
ii)粒子(D)は、2つの粒子集団(D1)および(D2)を含む、2つの粒子集団(D1)および(D2)からなる、または2つの粒子集団(D1)および(D2)から本質的になる。各粒子集団(D1)および(D2)は、それ自身の粒径範囲、および各々の対応する分布の範囲内に、体積基準で、それ自体のモードを有する。粒子(D1)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有する。粒子(D1)は、熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含み、粒子(D2)は、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D2)は、熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む。
【0017】
本明細書で言及するCAI値は、実施例に記載される、炭素繊維を使用して手順に従って、作製および硬化させた硬化繊維強化複合体を用いて測定し、測定は、4.45kJ/mで衝撃を与えた後、標準ASTM D 7137M-17に従って行う。
【0018】
本明細書で使用する場合、モードとは、体積基準で、粒子径の各範囲内で最も一般的な粒径である。本明細書で使用する、熱硬化性樹脂組成物全体に対する体積百分率、または熱硬化性樹脂組成物全体に対する体積%という用語は、熱硬化性樹脂と、粒子(D1)および(D2)を含み得る粒子(D)を含む任意の他の添加剤とを含むが、プリプレグまたは複合体中の繊維は含まない体積%を意味する。
【0019】
それらのプリプレグのマトリクスは、熱硬化性樹脂組成物である。一実施形態によると、熱硬化性組成物は、マレイミドもしくはビスマレイミド化合物を含む、マレイミドもしくはビスマレイミド化合物からなる、またはマレイミドもしくはビスマレイミド化合物から本質的になる第1のコモノマー(A)、および第2のコモノマー(B)を含み得る。特定の実施形態によると、第1のコモノマー(A)のマレイミド化合物は、N,N’-4,4’-ジフェニルメタン-ビスマレイミド、N,N’-2,4-トルエン-ビスマレイミド、N,N’-2,2,4-トリメチルヘキサン-ビスマレイミドまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含み得る。特定の実施形態によると、第1のコモノマーであるマレイミド化合物(A)は、2つ以上のビスマレイミド化合物の共融混合物であり得る。本明細書で使用する「共融」という用語は、混合物の融点が最低であり、個々のビスマレイミド化合物の融点よりも低いことを意味する。コモノマー(B)は、アルケニルフェノール基、アルケニルフェノキシ基、またはジアミン基の少なくとも1つを含み得る。特定の実施形態によると、コモノマー(B)は、o,o’-ジアリルビスフェノールAであり得る。
【0020】
粒子(D1)および粒子(D2)を含み得る、粒子(D1)および粒子(D2)からなり得る、または粒子(D1)および粒子(D2)から本質的になり得る粒子(D)は、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性である。粒子(D)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含み得る、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%からなり得る、またはプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%から本質的になり得て、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有する。粒子(D1)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%で、プリプレグ中に存在し得る。粒子(D1)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有し得る。粒子(D2)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%で、プリプレグ中に存在し得る。粒子(D2)は、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有し得る。他の実施形態によると、粒子(D2)は、20~60ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~50ミクロンのモードを有し得る。
【0021】
前述のように、繊維強化プリプレグは、繊維層および中間層と呼ばれる、少なくとも2つの層を有し得る。繊維層は、マレイミド成分(A)およびコモノマー(B)の熱硬化性樹脂組成物を含浸させた強化繊維を含むが、一実施形態では、繊維層が、好ましくは、粒子(D1)および粒子(D2)を含み得る粒子(D)を含まないか、またはほとんど含まない。中間層は、熱硬化性樹脂組成物と、粒子(D1)および(D2)を含み得る粒子(D)とを含むが、当該技術分野では公知のように、強化繊維を含まない(またはほとんど含まない)。一実施形態では、粒子(D1)および粒子(D2)を含み得る粒子(D)の総量の少なくとも90体積%が、プリプレグの硬化後に中間層中に残存する。
【0022】
一実施形態では、粒子(D)が、ポリイミド粒子を含む。一実施形態では、粒子(D1)が、ポリイミド粒子を含む。一実施形態では、粒子(D2)が、ポリイミド粒子を含む。一実施形態によると、粒子(D)は、200℃以上のガラス転移温度を有し得る。さらに別の実施形態では、粒子(D)が、220℃以上のガラス転移温度を有し得る。一実施形態によると、粒子(D1)は、200℃以上のガラス転移温度を有し得る。さらに他の実施形態では、粒子(D1)が、220℃以上のガラス転移温度を有し得る。一実施形態では、粒子(D2)が、200℃以上のガラス転移温度を有し得る。さらに他の実施形態では、粒子(D1)が、220℃以上のガラス転移温度を有し得る。
【0023】
一実施形態によると、熱硬化性樹脂組成物はさらに、その中に溶解している熱可塑性物質(C)を含み得る。粒子(D1)および粒子(D2)を含み得る粒子(D)は、この熱可塑性物質(C)中に溶解しない。一実施形態では、熱可塑性物質(C)が、ポリイミドであり得て、かつ粒子(D1)および(D2)を含み得る粒子(D)を除く、熱硬化性樹脂組成物全体の0.5~5質量%の量で存在し得る。
【0024】
熱硬化性樹脂組成物はさらに、本明細書では触媒とも呼ばれる促進剤を、熱硬化性樹脂組成物の40℃における樹脂流動指数を5以下に下げるために十分な量で含み得る。一実施形態によると、促進剤の量は、成分(A)および(B)に対して、0.05~0.5質量%であり得る。他の実施形態では、促進剤が、リン含有促進剤であり得る。熱可塑性物質(C)は、プリプレグのタックの低下に役立ち、その取扱い性に影響する。しかしながら、熱可塑性物質の存在は、熱硬化性樹脂組成物が、硬化中に十分に硬化する前に、熱硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる。そのため、硬化中に熱硬化性樹脂が、不必要に動いて流れることがある。したがって、促進剤が、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度を高めるために役立ち、硬化サイクル中に、その粘度を上昇させ、熱硬化性樹脂の不要な流動や移動を軽減する。
【0025】
本発明はさらに、本明細書に開示される繊維強化プリプレグを硬化させて得られる繊維強化複合品または繊維強化複合部品または繊維強化複合材料を提供する。さらに、繊維強化プリプレグを180℃~300℃の温度で硬化させる方法である、繊維強化複合材料または繊維強化複合品または繊維強化複合部品の作製方法が提供される。本発明はさらに、熱硬化性樹脂組成物を提供する。熱硬化性樹脂組成物は、第1のコモノマー(A)、第2のコモノマー(B)、および粒子(D)を含む、第1のコモノマー(A)、第2のコモノマー(B)、および粒子(D)からなる、または第1のコモノマー(A)、第2のコモノマー(B)、および粒子(D)から本質的になる。粒子(D)は、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性であり、粒子(D)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含み、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有する。以下の条件i)またはii)の少なくとも1つまたは両方を満たす。
【0026】
i)第1のコモノマー(A)は、マレイミド化合物を含む、マレイミド化合物からなる、またはマレイミド化合物から本質的になり、第2のコモノマー(B)は、アルケニルフェノール基、もしくはアルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つを含む、アルケニルフェノール基、もしくはアルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つからなる、またはアルケニルフェノール基、もしくはアルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つから本質的になる。
【0027】
ii)粒子(D)は、粒子(D1)および(D2)を含む、粒子(D1)および(D2)からなる、または粒子(D1)および(D2)から本質的になり、粒子(D1)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D1)は、熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含み、粒子(D2)は、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D2)は、熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む。
【0028】
繊維強化プリプレグは、繊維層と中間層とを有し得る。中間層は、繊維層間にある、樹脂の層であって、
図3に示すように、粒子(D1)および(D2)を含み得る粒子(D)を含有する。当該技術分野では公知のように、樹脂の層内(intralayer of resin)は、繊維層中の繊維間にある樹脂である。繊維強化プリプレグは、2つの方法のいずれかにより製造され得る。
【0029】
第1の方法では、繊維層、例えば、繊維トウ、メッシュ、布帛、または束の片面または両面に、熱硬化性樹脂組成物、粒子(D1)および粒子(D2)を含み得る粒子(D)を含有する単一フィルムを含浸させることにより、プリプレグが形成され得る。この方法では、含浸工程中に、繊維層の繊維間にある樹脂の層内へと粒子(D)が侵入しないように、「ろ過」することに繊維が役立ち得る。したがって、本方法によると、含浸後および硬化後に、全粒子(D)の90体積%以上が、繊維層の層内に存在するよりもむしろ中間層内に留まる。
【0030】
第2の方法では、まず、繊維層、例えば、繊維トウ、メッシュ、布帛、または束の片面または両面に、熱硬化性樹脂組成物を含むが粒子(D)は含まない樹脂フィルムの第1の層を含浸させることにより、プリプレグが形成され得る。この第2の方法の次のステップは、熱硬化性樹脂と、粒子(D1)および(D2)を含み得る粒子(D)とを含む、樹脂フィルムの第2の層を、樹脂フィルムの第1の層の片面または両面に配置することである。したがって、特定の実施形態では、粒子(D1)および(D2)を含み得る全粒子(D)の90体積%以上が、硬化後に中間層内に留まるように、粒子(D)を含有する熱硬化性樹脂を、繊維層上に配置することによって、中間層が形成され得る。つまり、硬化後、粒子(D)の10体積%以下が、繊維層中の繊維間の層内に存在する。
【0031】
繊維強化プリプレグは、硬化複合体として、35ksi以上の衝撃後圧縮(Compression After Impact:CAI)値を有し得る。特定の実施形態では、プリプレグの硬化後に、粒子(D)の60体積%、65体積%、70体積%、75体積%、80体積%、85体積%、90体積%、95体積%以上が、中間層中に残存する。粒子(D)は、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含み、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有する。特定の実施形態によると、硬化プリプレグのCAIは、35、37.5、40、42.5、45、47.5、または50ksi以上であり得る。
【0032】
35ksi以上のCAIは、粒子(D1)および(D2)を含む、粒子(D1)および(D2)からなる、または粒子(D1)および(D2)から本質的になる粒子(D)の包含により達成され得て、粒子(D1)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D1)は、熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含み、粒子(D2)は、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D2)は、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)を含む熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む。本実施形態では、第1および第2のコモノマーは、特には限定されない。
【0033】
他の実施形態によると、繊維強化プリプレグは、硬化複合体として、35、37.5、40、42.5、45、47.5、または50ksi以上のCAI値を有し得る。本実施形態では、粒子(D)が、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含み、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有し、第1のコモノマー(A)は、マレイミド化合物を含み、第2のコモノマー(B)は、アルケニルフェノール基、またはアルケニルフェノキシ基、またはジアミン基の少なくとも1つを含む。他の実施形態によると、コモノマー(B)は、ビニル基を含み得る。
【0034】
他の実施形態によると、繊維強化プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物がさらに、熱可塑性物質(C)を含む。
【0035】
粒子(D)は、1種または複数種の粒子を含み得る。例えば、粒子(D)は、サイズの異なる集団(D1)および(D2)のブレンドであってもよい。粒子(D)は、異なる材料から作製された粒子のブレンドであってもよい。粒子(D1)は、1種または複数種の材料から作製された粒子を含み得る。粒子(D2)は、1種または複数種の材料から作製された粒子を含み得る。小粒子(D1)と大粒子(D2)との体積比は、90:10~50:50、または90:10~60:40、または80:20~60:40であり得る。(D1)と(D2)との体積比は、90:10、または80:10、または70:30、もしくは60:40と同等かそれ以上、または50:50と同等かそれ以上であり得る。
【0036】
繊維強化プリプレグは、繊維層と中間層とを有し得る。繊維層を用意するために、粒子(D)を含有しない(または10体積%以下含有する)熱硬化性樹脂組成物を、強化繊維を含有する繊維層に含浸させてもよい。中間層を用意するために、粒子(D)を含有する熱硬化性樹脂組成物を、繊維層上に配置してもよい。一実施形態では、粒子(D)の総体積に対して、粒子(D)の90%以上が、硬化後に中間層内に留まり得る。
【0037】
熱硬化性樹脂組成物を含む繊維強化プリプレグは、硬化後に35ksi以上のCAIを有し得る。特定の実施形態によると、CAIは、35、37.5、40、42.5、45、47.5、または50ksi以上であり得る。本発明のいくつかの実施形態は、靭性が、CFRPに特には必要とされない場合に、より少量(体積で)の粒子を使用できるように、35ksi超のCAIを有してもよい。体積での粒子の量の低下はさらに、他の特性、例えば、圧縮強度およびオープンホール圧縮(Open Hole Compression:OHC)等の圧縮型特性を高め得る。本発明の特定の実施形態によると、繊維強化プリプレグ、または熱硬化性樹脂組成物を用いて作製された硬化複合体は、50ksi以上のCAIを有し得る。この特性は、高い耐衝撃性が必要とされるようなCFRP部品(例えば、航空宇宙部品の主要構造用)に関して靭性が重要である用途において重大な影響を持つ。
【0038】
特定の例示的実施形態では、前述のBMI樹脂を硬化させて得られる硬化BMIマトリクス樹脂が提供される。さらに、特定の実施形態によると、前述の熱硬化性樹脂組成物と、粒子(D1)および(D2)を含み得る粒子(D)とを、粒子(D)の90体積%以上が硬化後のプリプレグの中間層中に残存するように強化繊維に含浸させることにより得られるプリプレグが提供される。さらに、中間層中に粒子(D)(粒子(D1)および(D2)を含み得る)の90体積%以上を含む、前述のBMI樹脂組成物および強化繊維基材を含むプリプレグを硬化させて得られる硬化物を含む、繊維強化複合材料または繊維強化複合部品または繊維強化複合品が提供される。粒子(D)の90体積%以上が硬化後の中間層内に含有されていると、粒子(D)は、硬化CFRPの靭性を効果的に高めることができる。
粒子(D)ならびに粒子(D1)および(D2)
本発明者らは、硬化部品の原料となる繊維強化プリプレグのプライ間の中間層中に、特定範囲の大きさを有する粒子(D)を含ませると、硬化繊維強化複合体(FRC)部品のCAIが改善することを見出した。特に、第1のコモノマー(A)がマレイミド化合物を含み、第2のコモノマー(B)がアルケニルフェノール基、またはアルケニルフェノキシ基、またはジアミン基の少なくとも1つを含む場合、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含み、1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有する粒子(D)は、4.45kJ/mで衝撃を受けた後に、本明細書の実施例中で記載される手順により、ASTM規格ASTM D7137M-17に従って測定された、35ksi以上のCAIを有する硬化複合体を提供するために効果的である。(D)粒子は、1~100ミクロン、10~90ミクロン、10~80ミクロン、20~100ミクロン、10~70ミクロン、30~100ミクロン、5~95ミクロン、10~95ミクロン、3~85ミクロン、4~60ミクロン、1~70ミクロン、または3~85ミクロンの範囲の粒径を有し得る。粒子(D)の少なくとも1つのモードは、3~60ミクロン、5~55ミクロン、10~50ミクロン、または15~45ミクロンであり得る。
【0039】
いくつかの実施形態によると、粒子(D)は、本明細書では(D1)および(D2)と呼ばれる少なくとも2つの粒子集団を含み得る、それらからなり得る、またはそれらから本質的になり得る。
【0040】
本発明者らは、硬化部品の原料となる繊維強化プリプレグのプライ間の中間層中に、本明細書では粒子(D1)および粒子(D2)と呼ばれる、少なくとも2つのサイズの粒子を含ませた場合、硬化繊維強化複合体(FRC)のCAIが改善することを見出した。したがって、これらのプリプレグの中間層は、これら2つの粒子集団(D1)および(D2)を含む。各粒子集団(D1)および(D2)は、体積基準で、それ自体の粒径範囲およびモードを有する。本明細書で使用する場合、モードとは、体積での度数分布としてプロットして、粒子径の各範囲内で最も一般的な粒径である。
図1は、粒子(D1)および(D2)の、体積百分率でのモードおよび直径の範囲を示す、度数分布の一例を示す。粒子(D1)および(D2)の各々のモードは、粒径サイズの各範囲内の、体積での最頻径(すなわち、ピーク)である。
図1は、小粒子(D1)と大粒子(D2)との体積比が異なる複数のプロットを示す。
図1に見られるように、(D1)粒子のモードは、1ミクロンからおよそ10ミクロンの直径範囲での最頻体積である。大粒子のモード(D2)は、およそ10ミクロンからおよそ100ミクロンの直径範囲内の、体積での最頻径(すなわち、ピーク)である。粒子(D1)の直径範囲の下限は、非ゼロ体積頻度を有する最初の直径と定義される。粒子(D1)の直径範囲の上限は、(D1)モード径の後で、非ゼロ体積頻度を有する最初の最大径、または(D1)モードピークの後で、(D1)粒子モードよりも大きい直径を有する最初の最小体積頻度径のいずれかである。大粒子(D2)の直径範囲の下限は、粒子(D1)の直径範囲の上限と同じ直径またはそれより大きい、非ゼロ体積頻度を有する最小径である。したがって、(D1)の直径範囲の上限は、粒子(D2)の直径範囲の下限と同じであり得る。(D2)粒子の直径範囲の上限は、(D2)粒子のモードよりも大きい直径を有する、最後の非ゼロ体積頻度径である。
【0041】
広範な研究の後、本発明者らは驚くべきことに、粒子の粒径サイズ範囲およびモードの、これら2つの別個の(集団)が中間層中に一緒に存在する場合、粒子の単一モードサイズ範囲のみを利用する場合よりも少ない総量の粒子が必要であり得るように、硬化BMI CFRPの靱性を高められることを見出した。粒子(D1)は、1~15ミクロンに及ぶ粒径サイズ、および体積で、4~6ミクロンの粒径のモードを有し得る。全樹脂系中の粒子(D1)の量は、熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%であり得る。粒子(D1)の量は、熱硬化性樹脂組成物全体の、1~15体積%、または2~13体積%、または4~10体積%、または5~15体積%、または1~20体積%、または3~15体積%、または5~10体積%であり得る。粒子(D2)は、15~100ミクロンに及ぶ直径サイズを有する粒子を含有する。全樹脂系中の(D2)粒子の量は、熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%、もしくは1~13体積%、または熱硬化性樹脂組成物全体の0.1~10体積%、もしくは1~7体積%、もしくは2~10体積%、もしくは3~8体積%、もしくは2~5体積%、もしくは0.5~4体積%であり得る。特定の理論に拘束されることは望まないが、粒子(D1)の直径が1ミクロン超から10ミクロン未満に及ぶ場合、粒子(D1)は、中間層中の(D1)粒子の充填レベルを効果的に上昇させ得るため、CFRPの靭性を高めて、CFRPのCAIを高め得る。粒子(D2)が10~100ミクロンの間、または15~130ミクロンの直径範囲を有する場合、いかなる理論にも拘束されることを望まないが、粒子(D2)は、中間層内の粒子(D1)の濃度を高めるために十分な厚さを有する中間層を効果的に生成し得るため、CFRPの靱性を効果的に高め得る。粒子(D1)の量が、熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%であり、粒子(D2)の量が、熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%である場合、各々の粒子径集団(D1)または(D2)を、存在する粒子の総体積が同じ状態で単独で使用する場合よりも高いレベルにCAIが高まり得る。例えば、粒子(D1)の、熱硬化性樹脂組成物全体に対する体積%は、熱硬化性樹脂組成物全体の1~45体積%、または10~40体積%、または15~35体積%、または20~30体積%、または4~12体積%、または1~20体積%、または5~15体積%、または3~10体積%であり得る。粒子(D2)の、熱硬化性樹脂組成物全体に対する体積%は、熱硬化性樹脂組成物全体の0.5~6体積%、または1~6体積%、または1~7体積%、または1~10体積%、または1~15体積%、または2~14体積%、または3~13体積%、または1.5~10体積%、または5~13体積%、または5~10体積%であり得る。
【0042】
粒子(D1)の直径範囲は、1~15ミクロン、または1~14ミクロン、または1~13ミクロン、または2~12ミクロン、または1~10ミクロンであり得る。粒子(D1)の体積モード(mode by volume)は、これらの範囲内のどこかに入り得る。粒子(D1)の体積モードは、1~15ミクロン、または1~14ミクロン、または1~13ミクロン、または2~12ミクロン、または1~10ミクロン、または3~7ミクロン、または4~6ミクロン、または2~10ミクロン、または3~6ミクロンであり得る。特定の理論に拘束されることは望まないが、(D1)粒子がこれらの範囲内にある場合、(D1)粒子は、(D2)粒子間で、十分に密な充填を生み出し、強靭性を付与し得る。粒子が1ミクロン超であると、中間層へと透過し得る。粒子が15ミクロンより小さいと、充填密度が高くなり得るため、硬化CFRP成分の靭性が高まり得る。
【0043】
粒子(D2)の直径範囲は、10~200ミクロン、または10~100ミクロン、または10~90ミクロン、または10~70ミクロン、または10~60ミクロン、または11~150ミクロン、または12~120ミクロン、または13~150ミクロン、または14~140ミクロン、または10~120ミクロン、または15~145ミクロンであり得る。粒子(D2)の体積モードは、それら前述の範囲内のどこかに入り得る。粒子(D2)の体積モードは、10~100ミクロン、または20~80ミクロン、または40~60ミクロン、または10~200ミクロン、または11~150ミクロン、または12~120ミクロン、または13~150ミクロン、または14~140ミクロン、または10~120ミクロン、または15~145ミクロン、または20~60ミクロン、または15~70ミクロン、または30~50ミクロンであり得る。特定の理論に拘束されることは望まないが、(D2)粒子がこのサイズ範囲内にある場合、(D2)粒子は、十分な中間層厚さを生み出して、より少ない(D1)粒子の使用を可能にするであろう。このサイズ範囲は、(D1)粒子の使用数を少なくしながら、より厚い中間層を生成し得る。粒子の量が少ないため、樹脂流動が良くなり得て、CFRP部品の品質を向上させ、特に、低圧硬化時、例えば、オートクレーブ外での加工時、またはプリプレグ基材として布構造を使用する場合にボイド形成の可能性が低下する。
【0044】
上記条件のすべてを満たす場合、CAIで測定した、硬化複合部品または硬化プリプレグの破壊靭性が高まり得て、硬化複合体または硬化プリプレグのCAIは、40ksiであり得るか、または2つの異なる粒子径(D1)および(D2)がプリプレグ中に含まれなかった場合よりも高まり得る。小粒径を含む粒子(D1)のみを組み込むことにより、小粒子のみを高装填量(体積)で加えることにより、同様のCAI結果が達成され得るとはいえ、粒子(D1)および粒子(D2)の両方が存在すると、粒子(D1)および(D2)の少ない総量(体積)を使用できる。それは、取扱い性の良い材料作り、例えば、タックや柔軟性の上昇に効果的である。さらに、タックおよび樹脂流動を互いに独立して制御するために、系内の粒子量の低下は、溶解した熱可塑性物質および促進剤の両方を、制御された量で添加することにより、樹脂の流動を制御できるようにする。
【0045】
特定の理論に拘束されることはないが、粒子(D1)は、十分に小さい場合、大粒子(D2)間の間隙体積をより良好に充填できるため、大粒子(D2)は、中間層にとって十分な厚さを維持し得る。小粒子(D1)は、靭性の上昇ではより効率的であり得るが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の破壊靭性を効果的に高めるために十分な中間層厚さを維持できないであろう。大粒子(D2)を少量組み込むことにより、中間層厚さが維持され得るため、小粒子(D1)の(大粒子(D2)の量と比べて)大きい体積を有する一方で、CFRPの破壊靭性が上昇する。さらに、高Tgのマトリクス材料では、これらの樹脂マトリクス系の硬化時の粘度が非常に低いため、(D1)と(D2)との体積比が重要である。この低粘度のため、中間層厚さを維持することが非常に難しく、粒子(D1)および(D2)を、大粒子(D2)と小粒子(D1)との間の一定の相対量範囲内に保つと、破壊靭性を改善するために、中間層厚さが維持され得るのに対して、小粒子(D1)の有効性が高まることが見出された。これはさらに、硬化CFRPの特性の堅牢性の改善に役立ち、他の類似材料の使用を制限する、非常に厳密な硬化や袋詰めスケジュールに固執する必要なく、異なる硬化サイクルや袋詰め構成を可能にする。さらに、マトリクス系中の粒子の体積量が減少することで、マトリクス系の流動とタックを制御するために使用される熱可塑性物質および促進剤の量の融通性が大きくなり得る。
【0046】
さらに、大粒子のある一定の最小体積閾値が、中間層厚さを維持するために効果的であり得て、かつこの閾値を超える、追加の(D2)粒子の添加は、硬化複合部品のCAIを著しく改善するために必要でないであろう。(D2)粒子の粒子含有量が6%未満に保たれれば、プリプレグの取扱い性は良好であり、かつボイドが低減しているか全く存在しない完全圧密化・硬化型CFRPパネルとなるために、樹脂流動が十分である。これは、硬化時に自由体積を充填するために樹脂流動が重要である布帛を使用してプリプレグを生成する場合に特に有利であり、ボイド含有量を減らす。粒子含有量を低く保つことのさらなる利点としては、タック制御が挙げられる。粒子含有量が少ないと、タックは、溶解した熱可塑性物質の異なる量を使用して、制御され得る。これは、プリプレグの重要な特性である、プレプリグのタックをカスタマイズするために特に重要であり得る。
図2は、粒子なし(D2)、2体積%の粒子(D2)、および3体積%の粒子(D2)を含む硬化複合体のCAIをプロットした一例を示す。
図2からわかるように、小粒子(D1)の体積百分率を上昇させると、硬化複合体のCAIも上昇する。しかしながら、粒子(D2)の量が多い3体積%は、小粒子(D1)の装填量が同じ場合、大粒子(D2)の2体積%で作製された複合体よりも低いCAIを有する。同じく、(D2)粒子を含まない、およそ7体積%ないし18体積%の粒子(D1)は、2体積%または3体積%のいずれかの(D2)粒子をさらに含む、およそ4体積%、5体積%または6体積%の(D1)粒子で作製された硬化複合体よりも低いCAIをもたらすことがわかるであろう。
【0047】
本発明の特定の実施形態によると、(D1)粒子および(D2)粒子を合併した場合、その組合せは、2つの別個のモードを有する
図2に類似した粒度分布を有し得る。他の実施形態では、組合せは、1つのモードのみを有し得る。(D1)粒度分布が1つまたは複数のモードを有し、(D2)粒度分布が1つまたは複数のモードを有するさらに他の実施形態では、粒度分布を測定すると、(D1)粒子と(D2)粒子との複合粒度分布が、2つ以上のモードを有する粒度分布となり得る。この、粒子径の組合せは、異なる粒度分布、例えば、平均値、中央値、最頻値が各々異なる値を有する非対称分布を有し得る。粒度分布は、(D1)粒子がメジャーモードであり、かつマイナーモードが、(D1)粒子および(D2)粒子の両方からなり得るように、少なくとも2つ以上のモードを有し得る。
【0048】
粒子を合併すると、半分の高さでの粒子径の範囲は、2ミクロンから80ミクロンの間であり得る。他の実施形態では、粒子の範囲は、粒子分布図の半分の高さで3ミクロン~60ミクロンであり得て、分布は、1つまたは複数のモードを有し得る。
【0049】
特定の実施形態では、粒子(D1)および(D2)が、各々、200℃超のTgを有し得る。使用されるマトリクス系は200℃超のTgを有するため、200℃未満のTgを有する粒子を組み込むと、特に高温および水飽和条件下で、CFRPの機械的特性を大きく低下させるであろう。他の実施形態では、粒子が、220℃超のTgを有するであろう。220℃超のTgを有する粒子の組込みは、マトリクス樹脂系の熱酸化安定性を、最終的には硬化CFRPの熱酸化安定性を大いに上昇させる。220℃超のTgを有する粒子(D1)および/または粒子(D2)はさらに、硬化した熱硬化性樹脂材料の最高(ultimate)Tgへの影響を低減し得る。これは、BMIまたはBOXのようなマトリクス、および硬化したTgが220℃超であり得る特定の高温Tgエポキシの場合に特に重要である。例えば、粒子(D1)または(D2)のガラス転移温度は、200℃~1500℃、または220℃~1500℃以上であり得る。
【0050】
粒子(D1)および(D2)は、同じ材料、または異なる材料から形成され得る。粒子(D1)および(D2)は、各々、様々な材料の混合物であり得る。樹脂系の前述の実施形態に組み込まれ得る粒子(D1)および/または(D2)は、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、およびそれらの混合物から選択され得る。熱可塑性強靭化剤粒子(D1)および/または(D2)としては、それらの開示の全体が、参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれている米国特許第5,248,711号明細書および同第5,120,823号明細書に記載されている熱可塑性ポリイミド粒子のいずれかであり得る。粒子(D1)および/または(D2)は、二無水物とジアミンとの間の反応により形成され得る。粒子(D1)および/または(D2)は、ポリイミドまたは他の熱可塑性材料を極低温条件下で粉砕または研削することにより形成され得る。粒子(D1)および/または(D2)はさらに、懸濁沈殿(suspension precipitation)により形成することもできる。
【0051】
市販されている適切な例示的強靭化剤粒子(D1)および/または(D2)としては、Evonik Industries A.Gから入手可能である高性能粉末P84が挙げられる。P84パウダーは、その全内容が、参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれている米国特許第4,001,186号明細書の教示に従って作製される。P84パウダーは、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物(BTDA)、トルエンジアミン、および4,4′-ジアミノジフェニルメタンのポリイミドである。他の例示的な熱可塑性強靭化剤としては、ポリエーテルイミド、例えば、Sabic(サウジアラビア、Al-Jubail)から入手可能であるULTEM(登録商標)1000が挙げられる。高性能粉末P84パウダーは、これらの選択肢の中で最も高いTgを有するため、好ましい熱可塑性強靭化剤であり得る。熱可塑性強靭化剤は、各用途の性能要件に一致する、プリプレグ樹脂の所望の、強靭化の程度を提供する量で添加される。
【0052】
特定の実施形態では、大粒子(D2)が、特定の無機材料からなり得る。例えば、(D2)粒子は、任意の種類の無機粒子、例えば、粘土からなり得て(may be comprised of)、それらからなり得て(may consist of)、またはそれらから本質的になり得る。(D2)に適切な無機粒子の例としては、金属酸化物粒子、金属粒子、および鉱物粒子が挙げられる。粒子(D2)に適切な他の無機材料の例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、およびガラスバルーン(すなわち、中空ガラス粒子)が挙げられる。
【0053】
粒子(D2)に適切な他の材料の例としては、微粒子金属酸化物、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズが挙げられる。(D2)粒子に適切な微粒子金属の例としては、金、銀、銅、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、亜鉛、およびステンレス鋼が挙げられる。粒子(D2)に適切な鉱物の例としては、モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノトライト、バーミキュライト、およびセリサイトが挙げられる。
【0054】
粒子(D2)に適切な炭素質材料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバー、カーボンナノビーズ、フラーレン等が挙げられる。
第1のコモノマー(A) マレイミド化合物(A)
第1のコモノマー(A)は特には限定されないが、特定の実施形態によると、少なくとも1つのマレイミド化合物を含み得る、少なくとも1つのマレイミド化合物からなり得る、または少なくとも1つのマレイミド化合物から本質的になり得る。
【0055】
本発明における第1のコモノマー(A)を含むマレイミド化合物またはビスマレイミド化合物は、公知のビスマレイミド化合物のいずれかを含み得る。「マレイミド」および「ビスマレイミド」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。第1のコモノマー(A)のビスマレイミド化合物は、典型的には、無水マレイン酸または置換無水マレイン酸を芳香族ジアミンおよび/または脂肪族ジアミンと反応させることにより調製される。例示的なビスマレイミドは、以下のとおりである。N,N’-4,4’-ジフェニルメタン-ビスマレイミド、N,N’-2,4-トルエン-ビスマレイミド、N,N’-2,6-トルエン-ビスマレイミド、N,N’-2,2,4-トリメチルヘキサン-ビスマレイミド、N,N’-エチレン-ビスマレイミド、N,N’-エチレン-ビス(2-メチル)マレイミド、N,N’-トリメチレン-ビスマレイミド、N,N’-テトラメチレン-ビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレン-ビスマレイミド、N,N’-1,4-シクロヘキシレン-ビスマレイミド、N,N’-メタ-フェニレン-ビスマレイミド、N,N’-パラ-フェニレン-ビスマレイミド、N,N’-4,4’-3,3’-ジクロロジフェニルメタン-ビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルエーテル-ビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルスルホン-ビスマレイミド、N,N’-4.4’-ジシクロヘキシルメタン-ビスマレイミド、N,N’-α,α’-4.4’-ジメチレンシクロヘキサン-ビスマレイミド、N,N’-メタキシレン-ビスマレイミド、N,N’-パラ-キシレン-ビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルシクロヘキサン-ビスマレイミド、N,N’-メタフェニレン-ビステトラヒドフタルイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’-4,4’-2,2-ジフェニルプロパン-ビスマレイミド、N,N’-4,4-1,1-ジフェニルプロパン-ビスマレイミド、N,N’-4,4’-トリフェニルメタン-ビスマレイミド、N,N’-α,α’-1,3-ジプロピレン-5,5-ジメチルヒダントイン-ビスマレイミド、N,N’-4,4’-(1,1,1-トリフェニルエタン)-ビスマレイミド、N,N’-3,5-トリアゾール-1,2,4-ビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビス-イタコンイミド、N,N’-パラ-フェニレンビス-イタコンイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスジメチル-マレイミド、N,N’-4,4’-2,2-ジフェニルプロパン-ビスジメチル-マレイミド、N,N’-ヘキサメチレン-ビスジメチル-マレイミド、N,N’-4,4’-(ジフェニルエーテル)-ビスジメチル-マレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルスルホン-ビスジメチル-マレイミド、N,N’-(オキシジ-パラ-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-(オキシジ-パラ-フェニレン)-ビス-(2-メチルマレイミド)、N,N’-(メチレンジ-パラ-フェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(メチレンジ-パラ-フェニレン)-ビス-(2-メチルマレイミド)、N,N’(メチレンジ-パラ-フェニレン)-ビス-(2-フェニルマレイミド)、N,N’-(スルホニルジ-パラ-フェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(チオジ-パラ-フェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(ジチオジ-パラ-フェニレン)-ビスマレイミド;N,N’-(スルホニルジ-メタ-フェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(オルト,パラ-イソプロピリデンジフェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(イソプロピリデンジ-パラ-フェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(オルト,パラ-シクロヘキシリデンジフェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(シクロヘキシリデンジ-パラ-フェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(エチレンジ-パラ-フェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(4,4″-パラ-トリフェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(パラ-フェニレンジオキシ-ジ-パラ-フェニレン)-ビスマレイミド、N,N’-(メチレン-ジ-パラ-フェニレン)-ビス-(2,3-ジクロロマレイミド)、およびN,N’-(オキシ-ジ-パラ-フェニレン)-ビス-(2-クロロマレイミド)。
第2のコモノマー(B)
第1のコモノマー(A)と第2のコモノマー(B)とが共に反応して、熱硬化性樹脂を形成する。
【0056】
上述の第1のコモノマー(A)として使用されるビスマレイミド系モノマーは、単独で使用されることは少なく、たいていは、充填剤、レオロジーコントロール剤、触媒、繊維性強化材および非繊維性強化材等に加えて、他の重合性種を含有し得る全樹脂系として使用される。ビスマレイミド樹脂系で特に重要であるのは、第2のコモノマー(B)として使用される様々なコモノマーおよび反応性改質剤(modifier)である。
【0057】
第2のコモノマー(B)は、ビスマレイミドと反応するという点で相互作用的であり得る、またはそれら自体もしくは他のシステム成分とのみ反応してもよく、これらの材料の一部は、2つ以上の機能を果たし得る。例えばエポキシ樹脂は、一般にマレイミド基とは反応しないが、他のシステム成分、特にアミン、フェノール、および無水物と反応し得る。さらに、液状エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAまたはビスフェノールFをベースとするものは、粘着付与剤として役立ち得て、接着剤、マトリクス樹脂、およびプリプレグのレイアップ温度タック(layup temperature tack)を上昇させる。
【0058】
第2のコモノマー(B)の中で、第1のコモノマー(A)としてのマレイミドおよびビスマレイミドと共に有用なものは、ジアミンおよびポリアミン、ならびにアルケニルおよびアルケニルフェノールおよびフェノキシエーテルである。有用なジアミンおよびポリアミンとしては、例えば、脂肪族アミン、例えば、1,6-ジアミノ-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)エーテル等、ならびに芳香族アミン、例えば、1,2-、1,3-、および1,4-フェニレンジアミン、2,4-および2,6-トルエンジアミン、2,2’-、2,4’-、3,3’-、および4,4’-ジアミノジフェニルメタンの両方とも、ならびに架橋メチレン基が、二価の有機基、例えば、-CO-、-COO-、-OCOO-、-SO-、-S-、-SO2-、-NH-CO-等で置換されているジアミノジフェニルメタン類似体が挙げられる。ビスマレイミドと前述のアミンとから調製されるプレポリマーも有用である。
【0059】
アルケニル基含有化合物、特にアルケニル芳香族化合物も、適切な第2のコモノマー(B)であり得る。その化合物の例としては、スチレン、1,4-ジビニルベンゼン、テレフタル酸ジアクリレート、シアヌル酸トリアクリレート、グリセリルトリアクリレートが挙げられる。対応する、アリル基、メタリル基、メタクリロ基、およびメチルビニル基含有化合物も適する。アルケニルフェノールおよびアルケニルフェノキシエーテルの中で有用なものは、特に、アリルフェノール、メタリルフェノール、およびプロペニルフェノール、例えば、米国特許第4,100,140号明細書に開示される、o,o’-ジアリルビスフェノールA、オイゲノール、オイゲノールメチルエーテル、および類似化合物である。アリルフェニル基もしくはプロペニルフェニル基、またはアリルフェノキシ基もしくはプロペニルフェノキシ基を末端に有するオリゴマーも有用であり、例えば、適切に末端化されたポリシロキサン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等である。適切に末端化されたオリゴマーは、例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,546,129号明細書に教示されるように、フェノール化ジシクロペンタジエンをアリル化し、続いてアリルフェノールへと転位させることによって調製され得る。最も好ましくは、アルケニルフェノールが、o,o’-ジアリルビスフェノールAまたはo,o’-ジプロペニルビスフェノールAである。アルケニルフェノールコモノマーおよびアルケニルフェノキシコモノマーは、全系の重量に基づいて70質量%までの量で利用され、いくつかの実施形態では10~50%、他の実施形態では約20~約40%の量で利用される。アルケニル基含有コモノマーの量がBMI混合物中で10%を超える場合、高弾性率および高Tgを有し得る。30%を超える場合、樹脂の靭性および取扱い性を改善し得る。
【0060】
具体例としては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第4,100,140号明細書に開示される、o,o’-ジアリルビスフェノールA、オイゲノール、オイゲノールメチルエーテル、および類似化合物が挙げられる。特に好ましい第2のコモノマー(B)は、o,o’-ジアリルビスフェノールAおよびo,o’-ジプロペニルビスフェノールAである。Compimide(登録商標)TM124は、Evonik Industries AGから入手可能である市販の共硬化剤であり、o,o’-ジアリルビスフェノールAを含有する。
【0061】
同じく、第2のコモノマー(B)として有用であるのは、シアネートエステル樹脂、およびビスマレイミドとのその反応生成物である。シアネートエステル樹脂は、-OCN反応性部分を含有し、一般に、ハロゲン化シアンとジフェノールまたはポリフェノールとの反応により調製される。適切なシアネートエステル樹脂およびその調製方法は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,546,131号明細書に開示される。
【0062】
シアネート樹脂とエポキシ樹脂またはビスマレイミド樹脂との反応により調製されるプレポリマーも有用である。ビスマレイミド樹脂は、三菱ガス化学株式会社から「BTトリアジン樹脂」として市販されている。エポキシ樹脂は、先に示したように、対象発明の樹脂系に有用であり得る。このような樹脂の中には、Handbook of Epoxy Resins、LeeおよびNeville、McGraw-Hill、(C)1967、およびEpoxy Resins Chemistry and Technology、MayおよびTanaka、Marcel Dekker、C.1973という論文に記載のものがある。ビスマレイミド製剤のタックを補助する能力があるため、最も有用なエポキシ樹脂の中には、液状エポキシ、特にビスフェノールA、ビスフェノールF、およびp-アミノフェノールから誘導されるものがある。一般に、少量のエポキシ樹脂が利用され、例えば約30質量%まで、さらに好ましくは20質量%まで、最も好ましくは10質量%未満である。
【0063】
対象発明の実施において、強靭化改質剤も、第2のコモノマー(B)として有用であり得る。一般に、それらは、600から30,000ダルトンの間の分子量を有する反応性オリゴマーである。これらの改質剤は、末端化されているか、または内側反応性基(medial reactive group)を有してもよく、例えば、先に述べたアリルもしくはプロペニルフェノール、およびフェノキシエーテル、またはアミノ、マレイミド、シアネート、イソシアヌレート、またはビスマレイミドと反応する他の基を有してもよい。それらのオリゴマーの骨格は、多様な性質、例えば、ポリアリーレン、例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等であり得て、その両方の内容が、参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれている、米国特許第4,175,175号明細書および論文Toughening of Bis Maleimide Resins. Synthesis and Characterization of Maleimide Terminated Poly(Arylene Ether) Oligomers and Polymers、J. E. McGrath等、NASA report n187-27036、Final Report Task 1-17000において調製される。骨格はさらに、ポリシロキサン、特に、アリル基またはプロペニルフェノール基またはフェノキシ基を末端に有するポリ(ジシクロペンタジエン)からも誘導され得る。
溶解した熱可塑性物質(C)
特定の実施形態では,タックを調整する必要があり得る。異なる種類の製造の使用が増加するにつれて、製品のタックの調整が重要となっている。タックが高い場合は、プリプレグのハンドレイアップが可能である。タックが低い場合は、自動繊維配置(Automated Fiber Placement:AFP)および自動テープ積層(Automated Tape Layup:ATL)が実現され得る。タックは、樹脂マトリクスに可溶性熱可塑性物質を添加することで調整され得る。例示的マトリクス樹脂であるBMIの場合、BMIまたはBOXマトリクス系に可溶性の熱可塑性物質は、ポリイミド、例えばMatrimide(登録商標)5218であり得るか、または別の種類のポリマー、例えば、反応性もしくは非反応性のポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等であり得る。この追加の可溶性熱可塑性物質の重量平均分子量(Mw)は、約2000~約150,000ダルトンであり得るが、好ましくは、20,000~約100,000ダルトンであってよい。可溶性熱可塑性物質のMwが20,000~約100,000ダルトンである場合、溶解可能な可溶性熱可塑性物質の量は、熱硬化性樹脂系中で、粒子(D1)および(D2)を除いて、0~5質量%であり得る。樹脂系中に可溶性熱可塑性物質が存在しない場合、プリプレグのタックは高くなるため、ハンドレイアップに適切であり得る。可溶性樹脂熱可塑性物質が、熱硬化性マトリクス中で、粒子(D1)および(D2)を除いて、5質量%未満であれば、タックは、AFP/ATLシステムと好都合に機能するほど十分に低くなり得る。このシステムの場合、常温では低タック、加熱時は高タックになることが好ましい。粒子および熱可塑性物質の体積%および質量%が高すぎると、加熱さえも十分なタックを生み出し得ないため、AFP/ATLシステムが悪条件になる。さらに、熱可塑性物質が5質量%未満で存在する場合、プリプレグは、ドレープ性および取扱い性が良く、脆性でない。
【0064】
可溶性熱可塑性物質は、熱硬化性マトリクス系の室温粘度(タックに関係する)を調整するために添加され得るものの、高温の熱硬化性マトリクス系を添加する難しさは、非常に急勾配の粘度曲線であり、それが、硬化中の熱硬化性樹脂をもたらす。したがって、室温粘度が、熱硬化性マトリクス中に溶解させた可溶性熱可塑性物質により設定されると、熱硬化性樹脂の硬化温度では、最低粘度および総流動指数が低すぎるままであるため、硬化中に、樹脂の流動が大きすぎる。そのため、部品の厚さが不均一になり、部品製造に支障をきたす。さらに、流動が増大すると、プリプレグの中間層厚さの制御が難しくなり、中間層中の粒子数が変化し得る。樹脂流動が大きい場合、樹脂流動を減らすために、特定の複雑な袋詰め技術が必要となり、そのような袋詰めを作るための複雑さと時間が増加する。高温樹脂系に対して特有の促進剤を、熱可塑性物質と共に組み込むと、硬化中のマトリクス系の最低粘度および総流動指数が制御され得る一方で、室温粘度には影響を与えないことが見出された。この、樹脂流動の低下は、あまり複雑でない袋詰め技術を可能にすることによって、CFRP部品の製造に必要な時間を大幅に短縮する。このアプローチの難しさは、プリプレグの加工のしやすさに影響を与えないような適切な量の促進剤を選択することである。
促進剤/触媒(E)
例示的マトリクス系であるBMIの場合、本明細書では促進剤とも呼ばれる触媒は、当業者に周知であり、例えば、第三級アミン、金属カルボン酸塩、例えばオクト酸スズ(II)、および特に有機ホスフィン、有機ホスフィン塩、錯体、およびマレイミド基含有化合物と有機ホスフィンとの反応生成物、例えば、その全内容が、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第3,843,605号明細書中で、エポキシ樹脂系に有用と開示されているものが挙げられる。
【0065】
本発明の特定の実施形態では、BMIマトリクス系を触媒するために有機ホスフィンを使用する。それらの実施形態では、使用する触媒の量が、第1および第2のコモノマー(A)および(B)の0.01質量%~0.5質量%である。触媒の量が0.01%超であり、かつ可溶性熱可塑性物質系の上記の量と組み合わされる場合、タック、最低粘度、および樹脂流動指数が、熱硬化性樹脂系の硬化中の取扱い性および適切な樹脂流動の両方に関して、許容可能レベルに調整され得る。触媒の量が熱硬化性樹脂成分(A)および(B)の0.5質量%未満である場合、マトリクス系は、過度の早期架橋(premature crosslinking)なく、繊維の混合、フィルム化およびプリプレグ化を含むプリプレグ化系を通して、うまく処理され得る。
熱硬化性樹脂組成物の40℃での粘度
BMI樹脂組成物の40℃での粘度は、硬化FRCの機械的特性を維持しつつ、未硬化FRCプリプレグの取扱いおよび加工の容易さの両方を達成するために、1×103から3×104Pa・sの間であり得る。40℃での粘度が低すぎると、タックが高すぎることがあるため、取扱い性が損なわれ得る。40℃での粘度が高すぎると、タックが低すぎることがあり、プリプレグが過度に脆くなるため、未硬化FRCの成形性が不十分であり得る。さらに、熱硬化性樹脂組成物の40℃での最低粘度は、1Pa・s超であるとよい。最低粘度が低すぎると、樹脂流動が過度に大きくなり、特別な取扱いや成形手順が必要になり、材料を扱いにくくさせる(例えば、ブリードアウトによる過多の樹脂の損失)。熱硬化性樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments社製)を使用して、直径40mmの平行板を使用し、40℃から150℃まで、2℃/分の速度で昇温しながら、ひずみ10%、周波数0.5Hz、板間隔1mmで測定した。熱硬化性マレイミドまたはBMI樹脂組成物の粘度は、組成物に用いる特定成分の選択によって、望みどおりであり得るように調整および制御され得る。特に、成分(A)および(B)として存在するマレイミド樹脂およびコモノマーの種類および相対比率は、熱硬化性樹脂組成物全体の粘度を調整するために、必要に応じて変更可能である。
他の添加物
さらに、本発明の効果を低下させない限り、BMI樹脂組成物中に、追加の無機微粒子材料、例えば粘土を含めてもよい。無機微粒子材料が(D1)粒子と同じサイズ分布内にある場合、(D1)粒子の量を減らして同じ体積分布を保ってもよい。本発明の特定の実施形態の有利な効果は、CAIを上昇させるために、多量の熱可塑性(D1)粒子を必要としないことである。それが、本発明の特定の実施形態にとってはより望ましい可能性がある他の特性を提供し得る他の粒子の添加を可能にする。追加の粒子が(D2)粒子と同じサイズ分布内にある場合、それらの粒子は、その追加の無機粒子が高める他の特性と共に、CAIの上昇を促進するために使用され得る。それらの粒子は、ある種の熱可塑性粒子ほど効果的ではないにしても、CAIを高め得る上に中間層中で必要とされる粒子の全体量を減らし得る中間層厚さを生み出すために依然として使用できる。粒子が、(D1)のサイズよりも小さい場合、それらの粒子は主に、繊維間の層内へ分散し、CAIに大きな影響を与えず、本発明の特定の実施形態の特性に大きな影響を与えないであろう。適切な無機粒子の非限定的な例としては、金属酸化物粒子、金属粒子、および鉱物粒子が挙げられる。無機粒子は、硬化した熱硬化性樹脂組成物の1つまたは複数の機能を改善するため、および硬化した熱硬化性樹脂組成物に1つまたは複数の機能を付与するために使用され得る。そのような機能の例としては、表面硬度、抗ブロッキング性、耐熱性、バリア性、伝導性、帯電防止性、電磁波吸収、紫外線(ultraviolet:UV)遮蔽、強靭性、耐衝撃性、および低線熱膨張係数が挙げられる。他の適切な無機材料の例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、およびガラスバルーンが挙げられる。
【0066】
無機粒子は、1nm~10μmの範囲にあり得る。任意の形状の無機粒子が使用可能であり、例えば、無機粒子は、球状、針状、板状、バルーン状、または中空状であり得る。無機粒子は、単に粉末として使用してもよいし、溶媒状のゾルまたはコロイド中の分散体として使用してもよい。さらに、粒子の分散およびBMI樹脂との界面親和性を改善するために、無機粒子の表面をカップリング剤で処理してもよい。
【0067】
適切な微粒子金属酸化物の例としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ、およびフッ素ドープ酸化スズが挙げられる。適切な微粒子金属の例としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、亜鉛、およびステンレスが挙げられる。適切な鉱物の例としては、モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノトライト、バーミキュライト、およびセリサイトが挙げられる。
【0068】
他の適切な炭素質材料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバー、カーボンナノビーズ、フラーレン等が挙げられる。
【0069】
特定の実施形態では、本発明の効果を低下させない限り、BMI樹脂組成物は、前述の材料に加えて、1つまたは複数の他の材料を含有してもよい。他の材料の例としては、離型剤、表面処理剤、難燃剤、抗菌剤、レベリング剤、消泡剤、チキソトロピー剤、熱安定剤、光安定剤、UV吸収剤、顔料、カップリング剤、および金属アルコキシドが挙げられる。
強化繊維
使用できる強化繊維の種類には、本発明の効果を低下させない限り、特に限定または制約はない。例としては、ガラス繊維、炭素繊維、および黒鉛繊維、例えば、Sガラス繊維、S-1ガラス繊維、S-2ガラス繊維、S-3ガラス繊維、Eガラス繊維、およびLガラス繊維、有機繊維、例えばアラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維、例えばアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、炭化タングステン繊維、および天然/バイオ繊維が挙げられる。特に、炭素繊維の使用が、非常に高い強度および剛性を有し、かつ軽量でもある硬化FRC材料を提供し得る。適切な炭素繊維の例としては、東レ製の、約200~250GPaの標準弾性率を有する炭素繊維(Torayca(登録商標)T300、T300J、T400H、T600S、T700S、T700G)、約250~300GPaの中間弾性率を有する炭素繊維(Torayca(登録商標)T800H、T800S、T1000G、M30S、M30G)、または300GPa超の高弾性率を有する炭素繊維(Torayca(登録商標)M40、M35J、M40J、M46J、M50J、M55J、M60J)が挙げられる。これらの炭素繊維のうち、標準弾性率、4.9GPa以上の強度、および2.1%以上の伸度を有するものが実施例で使用される。
【0070】
使用される強化繊維の層の形態や配置は、特に限定されない。当該技術分野で公知の強化繊維の形態および空間配置のいずれか、例えば、一方向に長い繊維、ランダムな配向のチョップド繊維、シングルトウ、ナロートウ、織物、マット、編物、ブレードが利用され得る。本明細書で使用する「長繊維」という用語は、10mm以上の長さにわたって実質的に連続する単繊維、またはその単繊維を含む繊維束を指す。本明細書で使用する「短繊維」という用語は、10mmよりも短い長さに切断された繊維を含む繊維束を指す。特に、高比強度および高比弾性率が望まれる最終使用用途においては、強化繊維束が一方向に配置されている形態が最も適切であり得る。取扱い性の観点から、布状(織物)の形態も本発明に適している。
製造方法
本発明のFRC材料は、プリプレグ積層成形法、樹脂トランスファー成形法、樹脂フィルム注入法、ハンドレイアップ法、シート成形コンパウンド法、フィラメントワインディング法、および引抜き成形法等の方法を使用して製造され得るが、この点において特に限定または制約を受けることはない。
【0071】
樹脂トランスファー成形法とは、強化繊維基材に液状の熱硬化性樹脂組成物を直接含浸させて硬化させる方法である。この方法は、プリプレグのような中間製品を含まないため、成形コストの削減が期待され、かつ宇宙船、航空機、鉄道車両、自動車、船舶等の構造材の製造に有利に使用される。
【0072】
プリプレグ積層成形法は、強化繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させて製造したプリプレグを成形および/または積層し、成形および/または積層したプリプレグへの熱と圧力の印加により樹脂を硬化させFRC材料を得る方法である。
【0073】
フィラメントワインディング法は、1本から数十本の強化繊維ロービングを一方向に引き揃え、熱硬化性樹脂組成物を含浸させながら、所定の角度で張力をかけつつ、回転する金属コア(マンドレル)に巻き付ける方法である。ロービングのラップが所定の厚さになった後、硬化させ、次いで、金属コアを除去する。
【0074】
引抜き成形法とは、強化繊維を連続的に、液状の熱硬化性樹脂組成物で満たした含浸槽を通過させて、強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、その後、含浸した強化繊維を、引張機を使用して連続的に引き抜くことによって、スクイズダイおよび加熱ダイを通して成形および硬化の加工を行う方法である。この方法は、FRC材料を連続的に成形できる利点を提供するため、釣り竿、ロッド、パイプ、シート、アンテナ、建築構造物等のFRC材料の製造に使用される。得られるFRC材料に優れた剛性と強度を与えるためには、これらの方法のうち、プリプレグ積層成形法が使用され得る。
【0075】
プリプレグは、高温BMI樹脂組成物および強化繊維を含有し得る。そのようなプリプレグは、強化繊維基材に本発明のBMI樹脂組成物を含浸させることにより得ることができる。含浸方法としては、湿式法とホットメルト法(乾式法)が挙げられる。
【0076】
湿式法は、まず、溶媒、例えば、メチルエチルケトンまたはメタノール中にBMI樹脂組成物を溶解して生成した、BMI樹脂組成物の溶液中に強化繊維を浸漬して回収し、その後、オーブン等を介して蒸発させて溶媒を除去し、強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を含浸させる方法である。ホットメルト法は、あらかじめ加熱して流動性にさせたBMI樹脂組成物を強化繊維に直接含浸させることにより、またはまず樹脂フィルムとして使用するBMI樹脂組成物を剥離紙等の片に塗布してから、平面状に構成した強化繊維の片側または両側にフィルムを重ね、熱と圧力を加えて強化繊維に樹脂を含浸させることにより実施され得る。ホットメルト法は、実質的に残留溶媒を含まないプリプレグをもたらし得る。
【0077】
プリプレグは、40から500g/m2の間の炭素繊維目付けを有し得る。炭素繊維目付けが40g/m2未満であると、繊維含有量が不十分であり得て、繊維強化複合体(FRC)が低強度を有し得る。炭素繊維目付けが500g/m2超であると、プリプレグのドレーピング容易性が損なわれて、中間層粒子の効果が低下し得る。プリプレグはさらに、20から70wt%の間の樹脂含有量を有し得る。樹脂含有量が20wt%未満であると、含浸が不十分であり得て、多数のボイドを生み出し得る。樹脂含有量が70wt%超であると、FRCの機械的特性が損なわれる。
【0078】
プリプレグ積層成形法、プレス成形法、オートクレーブ成形法、袋詰め成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等では、適切な熱と圧力を使用し得る。
【0079】
オートクレーブ成形法とは、プリプレグを所定形状のツールプレート上に積層してから、バギングフィルムで覆った後、積層体から空気を抜きながら、熱と圧力を加えて硬化させる方法である。繊維の配向の精密な制御を可能にし得ると同様に、ボイドの含有量が最小限であるため、機械的特性に優れた高品質の成形材料を提供し得る。成形工程中に印加される圧力は0.3~1.0MPaであり得るのに対して、成形温度は90~300℃の範囲(本発明の一実施形態では、180℃~220℃、または200℃~220℃の範囲)にあり得る。
【0080】
ラッピングテープ法とは、プリプレグをマンドレルまたは他の何らかの芯金に巻き付けて筒状のFRC材料を形成する方法である。この方法は、ゴルフシャフトや釣り竿および他の棒状製品の製造に使用され得る。より具体的に、本方法は、マンドレルにプリプレグを巻き付けること、プリプレグを固定する目的での張力下、プリプレグに熱可塑性フィルム製ラッピングテープを巻き付けること、およびそれらに圧力をかけることを含む。オーブン内で加熱して樹脂を硬化させた後、芯金を除去して筒状体を得る。ラッピングテープを巻き付けるために使用する張力は20~100Nであり得る。硬化温度は90~300℃の範囲(本発明の一実施形態では、180℃~220℃、例えば、200℃~220℃の範囲)にあり得る。
【0081】
内圧成形法とは、熱可塑性樹脂チューブまたは他の何らかの内圧アプリケータにプリプレグを巻き付けて得たプリフォームを金型内にセットし、内圧アプリケータ内へと高圧ガスを導入して圧力をかけると同時に金型を加熱してプリプレグを成形する方法である。本方法は、複雑な形状の物体、例えば、ゴルフシャフト、バット、およびテニスまたはバドミントンのラケットを成形する際に使用され得る。成形工程中に印加される圧力は、0.1~2.0MPaであり得る。成形温度は、室温から300℃の間、または180~275℃の範囲(本発明の一実施形態では、180℃~220℃、例えば、200℃~220℃の範囲)にあり得る。
【0082】
さらに、熱硬化性樹脂組成物の作製方法が提供される。本方法は、以下のもの、すなわち、
・第1のコモノマー(A)と、
・第2のコモノマー(B)と、
・粒子(D1)と、
・粒子(D2)と、を合併するステップを含む、それらを合併するステップからなる、またはそれらを合併するステップから本質的になる。
【0083】
粒子(D1)および粒子(D2)は、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性である。粒子(D1)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D1)は、熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含む。粒子(D2)は、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D2)は、熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む。
【0084】
一実施形態によると、モノマー混合物を形成するために、まず、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)を合併してもよく、その後、熱硬化性樹脂組成物を形成するために、粒子(D1)および(D2)をモノマー混合物と合併してもよい。他の実施形態によると、粒子混合物が、2つ以上のモードを含む、2つ以上のモードからなる、または2つ以上のモードから本質的になるように粒子混合物を形成するために、粒子(D1)および粒子(D2)を合併してもよい。この、2つ以上のモードを含む、2つ以上のモードからなる、または2つ以上のモードから本質的になる粒子混合物は、次いで、熱硬化性樹脂を形成するために、第1のコモノマー(A)または第2のコモノマー(B)のいずれかと合併してから、コモノマー(A)またはコモノマー(B)の他方と合併され得る。さらに他の実施形態によると、2つ以上のモードを含む、2つ以上のモードからなる、または2つ以上のモードから本質的になる粒子混合物は、熱硬化性樹脂組成物を形成するために、モノマー混合物と合併され得る。
用途
本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化した熱硬化性樹脂組成物と強化繊維とを含有するFRC材料は、一般産業用途、ならびに航空および宇宙用途にも有利に使用される。FRC材料はさらに、他の用途、例えば、スポーツ用途(例えば、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスまたはバドミントンのラケット、ホッケースティック、およびスキーストック)、ならびに車両用構造材料(例えば、自動車、自転車、船舶、鉄道車両、ドライブシャフト、板ばね、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙ローラ、屋根材、ケーブル、および修理・強化材料)において使用され得る。
【0085】
本発明は、以下の非限定的な態様に従って要約され得る。
【0086】
態様1 強化繊維と
第1のコモノマー(A)、
第2のコモノマー(B)、および
粒子(D)
を含む熱硬化性樹脂組成物と、を含む繊維強化プリプレグであって、
粒子(D)が、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性であり、粒子(D)が、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含み、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有し、
条件i)またはii)、すなわち、
i)第1のコモノマー(A)はマレイミド化合物を含み、第2のコモノマー(B)はアルケニルフェノール基、アルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つを含む、または
ii)粒子(D)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有する、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%の粒子(D1)と、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有する、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%の粒子(D2)とを含む
の少なくとも一方が満たされる、繊維強化プリプレグ。
【0087】
態様2 繊維強化プリプレグから作製された硬化複合体が、条件i)またはii)の少なくとも1つが満たされる場合、4.45kJ/mで衝撃を受けた後に、ASTM D7137M-17に従って測定された、35ksi以上の衝撃後圧縮強度(Compressive strength After Impact:CAI)を有する、態様1に記載の繊維強化プリプレグ。
【0088】
態様3 プリプレグは、繊維層と中間層とを含み、
前記繊維層は、熱硬化性樹脂組成物を含浸させた強化繊維を含み、
前記中間層は、熱硬化性樹脂組成物、粒子(D)を含み、
粒子(D)の少なくとも90体積%が、プリプレグの硬化後に中間層中に残存する、態様1または2に記載の繊維強化プリプレグ。
【0089】
態様4 粒子(D1)が、熱硬化性樹脂組成物の総体積の5~10体積%を含む、態様1~3のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0090】
態様5 粒子(D2)が、熱硬化性樹脂組成物の総体積の2~4.5%を含む、態様1~4のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0091】
態様6 粒子(D1)と粒子(D2)との体積比が、90:10~50:50、好ましくは80:20~40:60である、態様1~5のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0092】
態様7 粒子(D)が、ポリイミド粒子を含む、態様1~6のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0093】
態様8 粒子(D2)が、20~60ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~50ミクロンのモードを有する、態様1~7のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0094】
態様9 粒子(D)が、200℃以上、好ましくは220℃以上のガラス転移温度を有する、態様1~8のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0095】
態様10 熱硬化性樹脂組成物が、その中に溶解している熱可塑性物質(C)をさらに含む、態様1~9のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0096】
態様11 熱可塑性物質(C)が、ポリイミドを含み、かつ粒子(D1)および(D2)の重量を除く、熱硬化性樹脂組成物全体の0.5~5質量%の量で存在する、態様10に記載の繊維強化プリプレグ。
【0097】
態様12 熱硬化性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物の樹脂流動指数を5以下に下げるために十分な量の促進剤をさらに含む、態様1~11のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0098】
態様13 促進剤の量が、成分(A)および(B)に対して0.05~0.5質量%である、態様12に記載の繊維強化プリプレグ。
【0099】
態様14 促進剤がリン含有促進剤を含む、態様12または13に記載の繊維強化プリプレグ。
【0100】
態様15 マレイミド化合物(A)が、N,N’-4,4’-ジフェニルメタン-ビスマレイミド、N,N’-2,4-トルエン-ビスマレイミド、N,N’-2,2,4-トリメチルヘキサン-ビスマレイミドまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、態様1~14のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0101】
態様16 マレイミド化合物(A)が、2つ以上のビスマレイミド化合物の共融混合物を含む、態様1~15のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0102】
態様17 コモノマー(B)が、o,o’-ジアリルビスフェノールAを含む、態様1~16のいずれかに記載の繊維強化プリプレグ。
【0103】
態様18 第1のコモノマー(A)と、
第2のコモノマー(B)と、
粒子(D)と、を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
粒子(D)が、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性であり、粒子(D)が、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物全体の4~18体積%を含み、かつ1~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、少なくとも1つの3~60ミクロンのモードを有する熱硬化性樹脂組成物であって、
条件i)またはii)、すなわち、
i)第1のコモノマー(A)はマレイミド化合物を含み、第2のコモノマー(B)はアルケニルフェノール基、もしくはアルケニルフェノキシ基、もしくはジアミン基の少なくとも1つを含む、または
ii)粒子(D)は、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有する粒子(D1)であって、前記熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含む粒子(D1)と、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有する粒子(D2)であって、前記熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む粒子(D2)とを含む
の少なくとも一方が満たされる、熱硬化性樹脂組成物。
【0104】
態様19 粒子(D1)と粒子(D2)との体積比が、90:10~50:50である、態様18に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0105】
態様20 粒子(D1)がポリイミド粒子を含む、態様18または19に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0106】
態様21 粒子(D2)が、20~60ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~40ミクロンのモードを有する、態様18~20のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0107】
態様22 粒子(D1)が、200℃~400℃、好ましくは220℃~400℃、さらに好ましくは220℃以上のガラス転移温度を有する、態様18~21のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0108】
態様23 その中に溶解している熱可塑性物質(C)をさらに含む、態様18~22のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0109】
態様24 熱可塑性物質(C)がポリイミドを含む、態様23に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0110】
態様25 熱硬化性樹脂の樹脂流動指数を5以下に下げるために十分な量の促進剤をさらに含む、態様18~24のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0111】
態様26 促進剤の量が、成分(A)および(B)に対して0.05~0.5質量%である、態様25に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0112】
態様27 促進剤がリン含有促進剤を含む、態様25または26に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0113】
態様28 マレイミド化合物(A)が、N,N’-4,4’-ジフェニルメタン-ビスマレイミド、N,N’-2,4-トルエン-ビスマレイミド、N,N’-2,2,4-トリメチルヘキサン-ビスマレイミドまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、態様18~27のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0114】
態様29 第2のコモノマー(B)が、o,o’-ジアリルビスフェノールAを含む、態様18~28のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0115】
態様30 第1のコモノマー(A)と、
第2のコモノマー(B)と、
粒子(D1)、
粒子(D2)と、を合併することを含む、熱硬化性樹脂組成物を作製する方法であって、
粒子(D1)および粒子(D2)が、第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)中で不溶性であり、粒子(D1)が、1~10ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、3~6ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D1)が、熱硬化性樹脂組成物全体の3~12体積%を含み、粒子(D2)が、10~100ミクロンの範囲の粒径、および体積基準で、20~60ミクロンのモードを有し、かつ粒子(D2)が、熱硬化性樹脂組成物全体の1~6体積%を含む、熱硬化性樹脂組成物を作製する方法。
【0116】
態様31 第1のコモノマー(A)および第2のコモノマー(B)を合併してモノマー混合物を形成し、次いで、粒子(D1)および(D2)をモノマー混合物と合併して熱硬化性樹脂組成物を形成する、態様30に記載の方法。
【0117】
態様32 粒子(D1)および粒子(D2)を合併して2つ以上のモードを含む粒子混合物を形成し、次いで、粒子混合物をモノマー混合物と合併して熱硬化性樹脂組成物を形成する、態様31に記載の方法。
【0118】
態様33 粒子(D1)および粒子(D2)を合併して2つ以上のモードを含む粒子混合物を形成する、態様30に記載の方法。
【0119】
態様34 粒子混合物を、第1のコモノマー(A)または第2のコモノマー(B)のいずれかと合併し、次いで、コモノマー(A)またはコモノマー(B)の他方と合併して熱硬化性樹脂を形成する、態様33に記載の方法。
【0120】
本明細書の範囲内で、実施形態は、明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で記載されたが、実施形態は、本発明から逸脱することなく様々に組み合わせたり分離したりできることが意図され、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載される好ましい特徴はすべて、本明細書に記載される発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書の発明が、組成物または工程の基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えない任意の要素または工程ステップを除外すると解釈され得る。さらに、いくつかの実施形態では、本発明が、本明細書で指定されていない任意の要素または工程ステップを除外すると解釈され得る。
【0122】
本発明は、具体的な実施形態と関連して、本明細書に図示および記載されているが、本発明は、示された詳細に限定されるとは意図されない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲内で、本発明を逸脱することなく、細部に様々な変更を加えることができる。
実施例
以下、本発明の実施形態を実施例としてより詳細に記載する。様々な特性の測定は、以下に記載する方法を使用して行った。これらの特性は、特に記載のない限り、温度23℃、相対湿度50%の環境条件下で測定した。次いで、ホットメルトプリプレグ法を使用して、例示的樹脂からプリプレグを作製した。表1(実施例)および表2(比較例)に示す、実施例および比較例で使用した成分は、以下のとおりである。
【0123】
強化繊維 実施例および比較例では、以下に示す東レ社製の炭素繊維「Torayca(登録商標)」繊維を使用した。
【0124】
成分A、マレイミド化合物 Compimide(登録商標)353A(Evonik Industries AG社製)、N,N’-4,4’-ジフェニルメタン-ビスマレイミド、N,N’-2,4-トルエン-ビスマレイミド、およびN,N’-2,2,4-トリメチルヘキサン-ビスマレイミド
成分B、コモノマー Compimide(登録商標)TM124(Evonik Industries AG製)、o,o’-ジアリルビスフェノールA
成分C、熱可塑性物質Matrimid(登録商標)9725
粒子(D1) Evonik Industries社製ポリイミドP84(登録商標)NT SF(公称寸法は1~10ミクロン)
粒子(D2) Evonik Industries社製ポリイミドP84(登録商標)NT F(公称寸法は10~100ミクロン)
本対象発明では、実施例でビスマレイミド樹脂を使用したが、ビスマレイミドだけに限定されるべきではなく、他の高温材料、例えば、ベンゾオキサジン(BOX)、および200℃超のTgを有する高温エポキシも本発明の実施形態として企図される。
硬化樹脂のガラス転移温度の測定(DMA TorsionによるTg)
厚さ2mmの金属スペーサを用いて厚さ2mmに設定した型穴に樹脂組成物を吐出した。次いで、この樹脂組成物を、上記硬化条件1および2により、コンベクションオーブン中で熱処理して硬化させ、2mm厚の硬化性樹脂板を得た。上述のプレートから長さ50mm、幅12.7mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments社製)を使用した1.0Hzねじりモードにおいて、先端複合材料(Suppliers of Advanced Composite Materials:SACMA)のSACMA推奨方法(SACMA Recommended Methods:SRM)18R-94(ガラス転移温度測定)に準拠して、40℃~350℃の温度へと5℃/minの速度で加熱してTg測定した。Tgは、蓄熱弾性率曲線上で、ガラス領域の接線とガラス領域からゴム領域への転移領域の接線との交点を求めることで決定し、その交点での温度をガラス転移温度と見なし、一般にG’開始Tgと呼ばれる。
衝撃後圧縮(CAI)の測定
「プリプレグの硬化」に記載の方法により、以下のレイアップ構成[+45°/0°/-45°/90°]3S 24plyでCFRPパネルを調製した。硬化後、CFRPパネルは4インチ×6インチの大きさのテストクーポンに加工した。テストクーポンを、ASTM規格ASTM D 7137M-17に従ってテストした。各クーポンの圧縮強度は、厚さ1インチ当たり1000in-lb(4.45kJ/m)の衝撃を与えた後、ASTM規格ASTM D 7137M-17に従って試験した。
繊維目付け
樹脂目付け(Resin Areal Weight:RAW)は、プリプレグ化前のフィルム状の樹脂を採取し、100×100mm四角形試料を切り出し、四角形上の樹脂を削り取り、樹脂の重量を測定することで求めた。目付けは、この重量の2倍を四角形試料の面積で割ったものである。繊維目付け(Fiber Areal Weight:FAW)は、同様の方法を介してプリプレグ後に測定し、100×100mm四角形試料を切り出し、プリプレグの重量を測定し、この値からRAWを差し引いた。
プリプレグ中の樹脂含有率
樹脂含有率(RC)は、プリプレグ中の樹脂の質量%であり、以下、
RC=RAW/[(RAW+FAW)]
のように計算した。
未硬化樹脂の粘度
未硬化の樹脂試験片を、40℃に予熱した直径40mmの平行平板型レオメータ(ARES、TA Instruments社製)に、0.6mmのギャップで配置した。ねじり変位を10rad/sで加えた。2℃/分で昇温して、樹脂の最低粘度を決定した。
粒子径測定
粒子は、静的光散乱法とMie理論(入射光の波長に類似する球状粒子を想定)を使用して測定し、以下の方法と機器を利用して結果を解析した。使用した装置は、乾式法測定用のScirocco 2000セルカセットを使用したマスターサイザー2000であった。マスターサイザー2000は、以下の設定、すなわち、
分散媒=空気
吸収値=0
屈折率=1.50
オブスキュレーション設定=1~12%
分散条件=65%での0.35bar
ゲートのギャップ幅=約0.125’’(約0.318cm)
にセットした。
各試料の測定時間は6秒に設定した。
【0125】
当該技術分野では公知のように、結果は度数分布曲線として報告され、すなわち、直径の頻度がy軸にプロットされ、対する粒子径(直径)がx軸にプロットされる。結果は、そのように得られた各ピークの範囲とモードを決定するために解析され得る。
【0126】
報告された測定値は、全粒子の体積百分率(%)当たりの粒子径(直径)である。
粒子径測定(光学顕微鏡)
粒度分布の決定に利用できる他の方法は、光学顕微鏡である。中間層中および層内の粒子の体積%を決定するこの方法は、以下のとおりである。硬化した試料を切断し、クロスカットし、研磨砥石を使用して、3ミクロン仕上げまたはそれより良い仕上げに研磨した。これは、Struers社から入手可能であるTegramin装置のような自動研磨機を使用することで実現した。研磨したら、300倍以上の顕微鏡とZeiss Zenソフトウェア(粒子径およびカウントモジュール付き)を使用して、粒子径の体積分布を測定した。サイズが決定されたら、粒度分布図を作成した。粒子が解像しにくい場合は、粒子とマトリクス樹脂との間のコントラストを高めるために、適切なフィルタを備えた蛍光光源を使用してもよい。
樹脂流動指数
樹脂流動指数は、未硬化樹脂の粘度から算出される。未硬化樹脂の粘度は、上記のように測定する。40℃から140℃までの未硬化樹脂粘度を測定した後、次式により流動指数を算出した。
【0127】
【数1】
タック
タックは、参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれている、Composites Part A:Applied Science and Manufacturing、114、295~306頁に公開された論文に記載の手順に従って、25℃および90℃で相対湿度50%において測定した。タックの試験には、以下のパラメータ
・クーポンサイズ 215mm×75mm
・速度 3’’/分
・ローラ圧縮 100N
・試験 タック・トゥ・セルフ(プリプレグ対プリプレグ)
を使用した。
【0128】
タックは、3900-2B/T800S標準プリプレグと比較して、「高タック」「中タック」「低タック」と見なした。
硬化後の中間層中に残存する粒子の体積百分率
中間層中および層内の粒子の体積%を決定する方法は、以下のとおりである。硬化した試料を切断し、クロスカットし、研磨砥石を使用して、3ミクロン仕上げまたはそれより良い仕上げに研磨した。これは、Struers社製のTegraminのような自動研磨機を使用することで実現した。研磨したら、300倍以上の倍率の顕微鏡を使用して、粒子径およびカウントモジュールを備えたZeiss Zenソフトウェアを使用して表面を分析し、中間層中および層内にある粒子の体積%を測定した。粒子が解像しにくい場合は、粒子とマトリクス樹脂との間のコントラストを改善するために、適切なフィルタを備えた蛍光光源を使用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物の製造
配合部数に応じて、所定量の第2のコモノマー(B)と熱可塑性樹脂(C)とを混合し、120℃で1時間加熱して熱可塑性樹脂を溶解させた。さらに、第1のコモノマー(A)としてのビスマレイミド化合物を、個別に140℃で溶融させた。混合物と、第1のコモノマー(A)としてのビスマレイミド化合物とを、100℃へと降温した後に混合し、さらに促進剤を60℃で添加してから、混練して高耐熱性熱硬化性樹脂組成物を調製した。表1~4は、様々な例示的樹脂組成物の組成、および得られる硬化樹脂の特性をまとめたものである。
プリプレグの製造
指定の樹脂組成物を含浸させた炭素繊維を含むプリプレグを調製した。表に記載のように調製した樹脂組成物を、ナイフコーターで剥離紙に塗工して、単位面積当たりの樹脂質量が52g/m2の樹脂フィルムを2枚製造した。一方向に配置された炭素繊維構成体(単位面積当たりの質量が190g/m2)の両面に、前述の製作した2枚の樹脂フィルムを重ね合わせ、熱ロールを用いて、100℃の温度および1気圧の圧力で熱と圧力を加えて、炭素繊維に、熱硬化性樹脂組成物と粒子(D1)と(D2)とを含浸させることによりプリプレグを得た。実施例1~8、10~13、ならびに比較例1、および4~11では、プリプレグの製造にTorayca(登録商標)繊維T1100G-F1Eを使用した。比較例2および3、ならびに実施例9では、プリプレグの製造にTorayca(登録商標)繊維T1100G-51Eを使用した。
プリプレグの硬化
上記で得られたプリプレグを裁断および積層して、真空バッグ成形に供し、真空をかけたオートクレーブ内で、以下の硬化条件1を使用して、圧力が20PSIを超えるまで硬化させた。初期温度勾配の間、85PSIを印加し、硬化サイクル全体にわたって維持した。このプリプレグを、以下の硬化条件2を使用してコンベクションオーブン内でポストキュアした。
硬化条件1
1. 室温から143℃まで1.7℃/minの速度で昇温する。
2. 143℃で2時間保持する。
3. 143℃から190℃まで1.7℃/minの速度で昇温する。
4. 190℃で2時間保持する。
5. 190℃から30℃まで2℃/分の速度で降温する。
硬化条件2
1. 室温から227℃まで1.7℃/minの速度で昇温する。
2. 227℃で4時間保持する。
3. 227℃から30℃まで2℃/分の速度で降温する。
【0129】
実験結果は、実施例について表1および表2に、ならびに比較例について表3および表4に示す。熱硬化性樹脂成分(A)および(B)は、成分(A)、(B)、(C)、(D1)、(D2)および(E)の合計に対する質量パーセントで提供される。成分(C)は、成分(A)、(B)、(C)および(E)の合計(すなわち、粒子(D1)および(D2)の重量は除く)に対する質量%として提供される。成分(E)は、成分(A)および(B)の重量に対する質量%として提供される。粒子(D1)および(D2)は、熱硬化性樹脂成分(A)、(B)、(C)、(D1)、(D2)および(E)の総体積に対する体積%として示す。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【表4】
上記の例からわかるように、実施例1および2は、(D2)粒子には20ミクロンの平均粒子径を有するIM30Kガラスバブルを使用し、(D1)粒子にはP84 SF粒子を使用する。この結果から、強靭化用粒子としてIM30Kガラスバブル(D2)のみを使用した比較例3および4と比べて、(D1)粒子と組み合わせた(D2)粒子の高い相対量は、CAIの上昇を示すことが実証される。驚くべきことに、(D1)粒子を全く含まない試料と比べてCAI値の大きな変化を達成するためには、比較的少量の小粒子(D1)が必要とされた。
【0134】
実施例3~13は、(D1)および(D2)の両方ともにP84粒子を使用して、(D1)粒子と(D2)粒子との異なる比率および量を使用する。CAI値からわかるように、いずれも42ksi超であり、優れた靭性を与える。実施例13は、熱可塑性物質または促進剤を有しておらず、(D1)粒子と(D2)粒子との組合せは、従来強靭化が困難である高流動樹脂系でさえも強靭化させることを実証する。
【0135】
実施例12は、50:50の比率から少し離れているにもかかわらず、他の実施例ほどではないが依然として高いCAIを示す。
【0136】
比較例3~7および10または11は、強靭化のために単一粒子を使用する。特に、これらの例は、2つの粒度分布が使用される実施例と同様の装填量を組み込んでいるにもかかわらず、より低いCAI値を有する。
【0137】
比較例1または2は、粒子を含まない。それらのサンプルは、粒子を添加していないこの樹脂系のCAIを示す。
【0138】
比較例5は、良好なCAIを示すが、非常に多量の(D1)P84 SF粒子を代償にしてである。この大量の(D1)粒子は、試料の加工を非常に難しくさせて、プリプレグを適切に混合して成膜するために、通常よりも高い温度が必要であった。より高い温度は、これらの温度での反応性を高めるため、処理時間を短縮した。さらに、得られたプリプレグは、タックがほとんどから全くなかった。この材料は、依然として硬化CFRP部品へと作製され得るが、市販製品として実用的ではない。
【0139】
大粒子は、より優れた亀裂停止を生み出し、かつ小粒子は、より良好な充填性を可能にすると考えられているため、破壊力学の教示に基づく逆の予想にかかわらず、大半の小粒子(D1)と共に使用した、ほんの少量の大粒子(D2)のみが、(D2)粒子のみを使用した場合、または多量の大粒子(D2)を使用した場合よりも優れた破壊靭性をもたらすとわかったことは驚くべきであった。さらに、(D2)粒子のような大粒子または(D1)粒子のような小粒子のみのいずれか一方の単一分布を使用した場合と比べて、粒子径の二峰性分布により、これほど高いCAI結果が達成されることは、さらに驚くべきであった。
【国際調査報告】