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特表2024-501082少なくとも1つの結合要素を伴うイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】少なくとも1つの結合要素を伴うイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20231227BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20231227BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01J37/04 Z
H01L21/265 603B
H01J37/317 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561424
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2021084473
(87)【国際公開番号】W WO2022128593
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】LU102299
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523231510
【氏名又は名称】エムイー2-ファクトリー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・コサト
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・クリッペンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ツォヴァッラ
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB04
5C101EE25
5C101EE37
5C101EE44
5C101EE75
5C101EE76
5C101LL04
(57)【要約】
エネルギーフィルタ(25)と、第1のフィルタフレーム(40)と、少なくとも1つの結合要素(50)とを備える、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)が提供される。エネルギーフィルタ(25)は、イオンビーム(10)のビームエネルギーを吸収する少なくとも1つのフィルタ要素(25a)を有する。少なくとも1つの結合要素(50)は、第1のフィルタフレーム(40)をエネルギーフィルタ(25)と弾性的に連結する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)であって、
イオンビーム(10)のビームエネルギーを吸収する少なくとも1つのフィルタ要素(25a)を有するエネルギーフィルタ(25)と、
第1のフィルタフレーム(40)と、
前記第1のフィルタフレーム(40)を前記エネルギーフィルタ(25)と弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素(50)と
を備えるエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの結合要素(50)は前記エネルギーフィルタ(25)の前記少なくとも1つのフィルタ要素(25a)に配置される、請求項1に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項3】
前記エネルギーフィルタ(25)を収容する第2のフィルタフレーム(30)をさらに備え、前記少なくとも1つの結合要素(50)は前記第1のフィルタフレーム(40)を前記第2のフィルタフレーム(30)と弾性的に連結する、請求項1に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの結合要素(50)は微細ばね要素として構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項5】
前記微細ばね要素(50)は6μm、16μm、または100μmの厚さを有する、請求項4に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項6】
前記微細ばね要素(50)は50μm、100μmの幅と、100μmから最大数mmまでの長さとを有する、請求項4または5に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの結合要素(50)は、前記エネルギーフィルタ(25)および前記第1のフィルタフレーム(40)の少なくとも一方と一体に形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの結合要素(50)は、前記第1のフィルタフレーム(40)および前記第2のフィルタフレーム(30)の少なくとも一方と一体に形成される、請求項3に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの結合要素(50)は、レーザ溶接、ボンディング技術、または少なくとも1つの機械的固定具によって、前記エネルギーフィルタ(25)、前記第1のフィルタフレーム(40)、および前記第2のフィルタフレーム(30)に連結される、請求項1から6のいずれか一項に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのフィルタ要素(25a)は、三角柱形、錐体形、または自由形態の形である、請求項1から9のいずれか一項に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフィルタ要素(25a)は、前記イオンビーム(10)のビーム方向(Z)に対して垂直である平面(X、Y)に配置される、請求項10に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項12】
前記イオンビーム(10)のビーム方向(Z)に対して垂直である平面(X、Y)に配置される少なくとも1つの開口要素(60)と、
基板(70)と
をさらに備え、
前記少なくとも1つの開口要素(60)は、フィルタリングされたイオンビーム(10a)が前記基板(70)に伝送されるように、前記エネルギーフィルタ(25)と前記基板(70)との間に配置される、請求項1から11のいずれか一項に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項13】
前記基板(70)は、前記伝送されたイオンビーム(10a)に対して固定される、または、前記伝送されたイオンビーム(10a)のビーム方向(Z)に対して垂直な第1の方向(70a)および第2の方向(70b)の少なくとも一方において移動可能である、請求項12に記載のエネルギーフィルタ組立体(200)。
【請求項14】
少なくとも1つの最小走査領域(80a)で前記イオンビーム(10)を走査する少なくとも1つの検出要素(80)をさらに備える、請求項12または13に記載のエネルギーフィルタ組立体(200)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの検出要素(80)は走査領域(80b)で前記イオンビーム(10)を走査し、前記走査領域(80b)は前記少なくとも1つの検出要素(80)を越えて延びる、請求項14に記載のエネルギーフィルタ組立体(200)。
【請求項16】
前記検出要素(80)はファラデーカップである、請求項14または15に記載のエネルギーフィルタ組立体(200)。
【請求項17】
前記少なくとも1つのフィルタ要素(25a)は、ケイ素、炭化ケイ素、または炭素から作られる、請求項1から16のいずれか一項に記載のエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)。
【請求項18】
前記少なくとも1つの結合要素(50)は、前記第1のフィルタフレーム(40)と前記エネルギーフィルタ(25)との間の前記連結を制御された引っ張りの下で維持するために予め荷重が掛けられる、請求項1から17のいずれか一項に記載のエネルギーフィルタ組立体(300)。
【請求項19】
予め荷重が掛けられた前記少なくとも1つの結合要素(50)は、前記エネルギーフィルタ(25)への前記制御された引っ張りが、動作の間に許容される全体の温度範囲内に安全値を含む最大の耐えることができる引っ張り未満となるように、構成される、請求項18に記載のエネルギーフィルタ組立体(300)。
【請求項20】
前記少なくとも1つの結合要素(50)は微細引っ張りばね要素として提供される、請求項18または19に記載のエネルギーフィルタ組立体(300)。
【請求項21】
前記第2のフィルタフレーム(30)は湾曲した外形(35)を有し、前記第1のフィルタフレーム(40)は内側輪郭(41)を有し、前記内側輪郭(41)は、隙間(90)が前記第2のフィルタフレーム(30)の前記外形(35)と前記第1のフィルタフレーム(40)の前記内側輪郭(41)との間に設けられるように、前記湾曲した外形(35)に適合される、請求項18から20のいずれか一項に記載のエネルギーフィルタ組立体(300)。
【請求項22】
イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)を製造するための方法であって、
イオンビーム(10)のビームエネルギーを吸収する少なくとも1つのフィルタ要素(25a)を有するエネルギーフィルタ(25)を提供するステップと、
第1のフィルタフレーム(40)を提供するステップと、
前記第1のフィルタフレーム(40)を前記エネルギーフィルタ(25)と弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素(50)によって、前記第1のフィルタフレーム(40)を前記エネルギーフィルタ(25)と連結するステップと
を含む方法。
【請求項23】
前記エネルギーフィルタ(25)を収容する第2のフィルタフレーム(30)を提供するステップと、
前記少なくとも1つの結合要素(50)を前記第1のフィルタフレーム(40)と前記第2のフィルタフレーム(30)との間で弾性的に連結するステップと
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
イオン注入をフィルタリングするための方法であって、
少なくとも1つのフィルタ要素(25a)を有するエネルギーフィルタ(25)を備えるエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)を提供するステップであって、第1のフィルタフレーム(40)が少なくとも1つの結合要素(50)によって前記エネルギーフィルタ(25)と弾性的に連結され、少なくとも1つの開口要素(60)が前記エネルギーフィルタ(25)と基板(70)との間に配置される、ステップと、
前記エネルギーフィルタ(25)および前記少なくとも1つの結合要素(50)にわたって延びるイオンビーム(10)を提供するステップと、
前記イオンビーム(10)のフィルタリングされていないイオン(10b)が前記基板(70)に衝突するのを停止させるように、前記少なくとも1つの開口要素(60)を前記イオンビーム(10)の方向に対して配置するステップと
を含む方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの検出要素(80)が照射されるように、前記エネルギーフィルタ(25)、前記少なくとも1つの結合要素(50)、および前記第1のフィルタフレーム(40)を越えて前記イオンビーム(10)を走査するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)を製造するための方法であって、
シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハを、第1の表面および第2の表面を有する基板材料として提供するステップであって、埋め込み酸化物(BOX)の厚さが30nmから1.5μmの間の厚さで変化する、ステップと、
湿式化学水酸化カリウム(KOH)エッチングまたは水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチングをマスクするための第1のマスク材料層および第2のマスク材料層を、前記SOIウェーハの前記第1の表面および前記第2の表面に適用するステップと、
第1および第2のリソグラフィ処理ステップ、ならびに少なくとも1つの湿式または乾式のエッチングパターン形成ステップを使用することで、前記第1の表面および前記第2の表面に前記第1のマスク材料層および前記第2のマスク材料層のパターン形成をするステップと、
前記マスク材料層のパターン形成の後に前記第1の表面および前記第2の表面を洗浄するステップと、
KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して前記第1の表面または前記第2の表面を第1の湿式化学エッチングするステップと、
前記第1のマスク材料層を除去するステップと、
前記SOIウェーハの前記第1の表面へのKOHもしくはTMAHの湿式エッチングステップまたは乾式エッチングステップをマスクするために、第3のマスク材料層を前記第1の表面に適用するステップと、
第3のリソグラフィ処理ステップ、および少なくとも1つの湿式または乾式のエッチングパターン形成ステップを使用することで、前記第1の表面に前記第3のマスク材料層のパターン形成をするステップと、
前記BOX層において留まる前記SOIウェーハの前記第1の表面にKOHもしくはTMAHの湿式エッチングステップまたは乾式エッチングステップを適用するステップと、
KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して前記第1の表面または前記第2の表面を第2の湿式化学エッチングするステップと、
エッチングが前記BOX層において留められるように、前記第2の表面を第3の湿式化学または乾式のエッチングをするステップと、
前記BOX層を除去するステップと、
前記第1の表面および前記第2の表面における前記マスク層を除去するステップと
を含む方法。
【請求項27】
エッチングを防止するために第1の保護層を前記第2の表面に適用するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の表面のエッチングを防止するために第2の保護層を前記第1の表面または前記第2の表面に適用するステップを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)を製造するための方法であって、
体積材料スラブを提供するステップと、
レーザエッチングまたは機械的腐食デバイスにより前記材料を連続的に除去するステップであって、前記除去は、1ステップごとに数十nmから最大数マイクロメートルまでの増分であり、所与の構造のためにいくつかの除去ステップを伴い、前記連続的な除去は、エネルギーフィルタ(25)、第1のフィルタフレーム(40)、および、前記第1のフィルタフレーム(40)を前記エネルギーフィルタ(25)と弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素(50)の所定の3Dレイアウトに従って実施される、ステップと
を含む方法。
【請求項30】
イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)を製造するための方法であって、
基板または基層を提供するステップと、
エネルギーフィルタ(25)を提供するための第1のフィルタ層(32)、および、第1のフィルタフレーム(40)を提供するための第1のフィルタフレーム層(33)を堆積させるステップと、
レーザまたはイオンビームのエッチングデバイスにより、マスクされたエッチングまたは連続的なエッチングなどの適切なエッチング技術を使用して、前記第1のフィルタ層(32)および前記第1のフィルタフレーム層(33)のパターン形成をするステップと、
第1のフィルタ層(32)および第1のフィルタフレーム層(33)の多重を連続的に堆積させ、パターン形成するステップと、
前記基板または基層を所望の基板層厚さまたは基層厚さへと除去、研磨、またはエッチングするステップと、
前記第1のフィルタ層(32)および前記第1のフィルタフレーム層(33)を除去、研磨、またはエッチングすることで、前記第1のフィルタフレーム(40)を前記エネルギーフィルタ(25)と弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素(50)を切り出すステップと
を含む方法。
【請求項31】
イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体(1、100、200、300)を製造するための方法であって、
エネルギーフィルタ(25)を提供するステップと、
第1のフィルタフレーム(40)を提供するステップと、
レーザアブレーションによって前記エネルギーフィルタ(25)と前記第1のフィルタフレーム(40)との間に少なくとも1つの弾性要素(50)を作り出すステップと、
材料アブレーションによって前記エネルギーフィルタ(25)を前記第1のフィルタフレーム(40)から分離するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のフィルタフレームをエネルギーフィルタと弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素を備えるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体に関する。本発明は、このようなエネルギーフィルタ組立体を製造するための方法にも関する。本発明はさらに、このようなエネルギーフィルタ組立体によりイオン注入をフィルタリングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、半導体材料または光学材料などの材料におけるドーピングまたは欠陥プロファイルの生成を、数ナノメートルから数十マイクロメートルまでの深さ範囲における所定の深さプロファイルで達成するための方法である。このような半導体材料の例には、限定されることはないが、ケイ素、炭化ケイ素、および窒化ガリウムがある。このような光学材料の例には、限定されることはないが、LiNbO、ガラス、およびPMMAがある。
【0003】
単一エネルギーイオン照射によって得られるドーピング濃度ピークもしくは欠陥濃度ピークの深さ分布より広い深さ分布を有するイオン注入によって深さプロファイルを生成する必要性、または、1つもしくはいくつかの単純な単一エネルギー注入によっては生成できないドーピング深さプロファイルもしくは欠陥深さプロファイルを生成する必要性がある。ドーピング濃度ピークは、しばしば、ガウス分布によって、または、より正確にはピアソン分布によって、おおよそ表現することができる。しかしながら、特に、いわゆるチャネリング効果が結晶材料に存在する場合、このような分布からの逸脱もある。単一エネルギーイオンビームが微細構造化エネルギーフィルタ要素を通過するときに単一エネルギーイオンビームのエネルギーが変更される構造化エネルギーフィルタを使用して深さプロファイルを生成するための先行技術の方法が、知られている。結果的に生じるエネルギー分布は、標的材料において深さプロファイルイオンの作成をもたらす。これは、例えば、欧州特許0014516B1(Bartko)に記載されている。
【0004】
このようなイオン注入デバイス20の例が図1に示されており、この例では、イオンビーム10が構造化エネルギーフィルタ25に衝突する。イオンビーム発生源5は、サイクロトロン、高周波線形加速器、静電タンデム加速器、またはシングルエンド静電加速器とすることもできる。他の態様では、イオンビーム発生源5のエネルギーは、0.5MeV/核子から3.0MeV/核子の間、または好ましくは1.0MeV/核子から2.0MeV/核子の間である。ある特定の実施形態では、イオンビーム発生源は、1.3MeV/核子から1.7MeV/核子の間のエネルギーでイオンビーム10を生成する。イオンビーム10の総エネルギーは、1MeVから50MeVの間であり、ある好ましい態様では4MeVから40MeVの間であり、好ましい態様では8MeVから30MeVの間である。イオンビーム10の周波数は、例えば3Hzから500Hzの間といった、1Hzから2kHzの間とでき、ある態様では7Hzから200Hzの間とできる。イオンビーム10は連続イオンビーム10であってもよい。イオンビーム10におけるイオンの例には、限定されることはないが、アルミニウム、窒素、水素、ヘリウム、ホウ素、リン、炭素、ヒ素、およびバナジウムがある。
【0005】
図1において、エネルギーフィルタ25が、右手側における三角形の断面形態を有する膜から作られることが分かるが、この種類の断面形態は本発明の限定ではなく、他の断面形態が使用できる。上方のイオンビーム10-1がエネルギーフィルタ25を通過するのに通る領域25minが、エネルギーフィルタ25の膜の最小の厚さを有するため、上方のイオンビーム10-1は、エネルギーにおける低減がほとんどなく、エネルギーフィルタ25を通過する。別の言い方をすれば、左手側における上方のイオンビーム10-1のエネルギーがE1である場合、(膜におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす膜の阻止能による小さいエネルギー損失により)上方のイオンビーム10-1のエネルギーは右手側において実質的に同じ値E1を有することになる。
【0006】
一方で、下方のイオンビーム10-2は、エネルギーフィルタ25の膜がその最も厚いところである領域25maxを通過する。左手側における下方のイオンビーム10-2のエネルギーE2は、実質的にエネルギーフィルタ25によって吸収され、したがって、右手側における下方のイオンビーム10-2のエネルギーは低減され、上方のイオンビームのエネルギーより小さく、つまり、E1>E2である。その結果、より大きなエネルギーの上方のイオンビーム10-1が、より小さいエネルギーの下方のイオンビーム10-2に対して、基板材料30においてより大きい深さへ浸透することができることになってしまう。これは、ウェーハの一部である基板材料30において、差異のある深さプロファイルをもたらしてしまう。
【0007】
この深さプロファイルは、図1の右手側に示されている。実線の矩形の領域は、イオンが深さd1とd2との間の深さで基板材料に浸透することを示している。しかしながら、水平のプロファイルの形は特別な場合であり、これは、すべてのエネルギーが幾何学的に等しいと見なされる場合で、エネルギーフィルタおよび基板の材料が同じである場合に得られる。ガウス曲線は、エネルギーフィルタ25がなく、d3の深さにおいて最大値を有するおおよその深さプロファイルを示している。イオンビーム10-1のエネルギーの一部がエネルギーフィルタ25において吸収されるため、深さd3が深さd2より大きいことは、理解されるものである。
【0008】
先行技術において、エネルギーフィルタ25の製作について知られているいくつかの原理がある。典型的には、エネルギーフィルタ25は、図1から知られている三角形の断面パターンなどの所望のパターンを生成するために、エッチングされたエネルギーフィルタ25の表面を伴うバルク材料から作られる。ドイツ特許DE102016106119B4(Csato/Krippendorf)には、異なるイオンビームエネルギー低減特性を有する材料の層から製造されるエネルギーフィルタが記載されている。Csato/Krippendorfの特許出願に記載されているエネルギーフィルタから生じる深さプロファイルは、材料の層の構造にも表面の構造にも依存する。
【0009】
さらなる構造の原理が、本出願者の同時継続出願DE102019120623.5に示されており、エネルギーフィルタは、鉛直の壁によって一体に連結される離間された微細構造化層を備える。
【0010】
エネルギーフィルタ25を通じて吸収され得るイオンビーム10からの最大出力は、3つの因子、すなわち、エネルギーフィルタ25の効果的な冷却機構と、エネルギーフィルタ25が作られる膜の熱機械特性と、エネルギーフィルタ25が作られる材料の選択とに依存する。典型的なイオン注入過程では、出力の約50%がエネルギーフィルタ25において吸収されるが、これは、処理条件およびフィルタ形状に依存して80%まで上昇することができる。
【0011】
エネルギーフィルタの例が図2に示されており、エネルギーフィルタ25は、フレーム27に搭載された三角形の構造とされた膜から作られる。ある非限定的な例において、エネルギーフィルタ25は、例えば、(最大で200μmまでで、典型的には2μmから20μmの間の厚さの)ケイ素層21とバルクケイ素23(約400μmの厚さ)との間に挟まれる0.2~1μmの厚さなどを有する絶縁層の二酸化ケイ素層22を備えるシリコンオンインシュレータといった、単一品の材料から作ることができる。構造化膜は、例えば、ケイ素から作られるが、炭化ケイ素、他のケイ素もしくは炭素に基づく材料、またはセラミックから作ることもできる。
【0012】
イオンビーム10についての所与のイオン電流のためのイオン注入過程におけるウェーハ処理量を最適化することで、イオンビーム10を効率的に使用するために、エネルギーフィルタ25の膜だけ照射し、膜が所定位置で保持されるフレーム27を照射しないことが好ましい。実際には、フレーム27の少なくとも一部もイオンビーム10によって照射され、そのため加熱することになる可能性がある。実際、フレーム27が完全に照射されることは可能である。エネルギーフィルタ25を形成する膜が加熱されるが、膜が薄いため(つまり、2μmから20μmの間であるが、最大200μmである)、非常に小さい熱伝導率を有する。膜は、大きさが2x2cmから35x35cmの間であり、標的のウェーハの大きさに対応する。膜とフレーム27との間にはほとんど熱伝導がない。したがって、モノリシックなフレーム27は膜の冷却に寄与せず、関連する膜のための唯一の冷却機構は、膜からの熱放射である。
【0013】
エネルギーフィルタ25における膜の局所的な加熱が、エネルギーフィルタ25を形成する膜の加熱された部分とフレームとの間の熱応力に加えて生じる。さらに、例えば、ビームの静電気もしくは機械的な走査、または、ビームに対するフィルタの機械的運動によるなど、膜の一部だけにおけるイオンビーム10からのエネルギーの吸収による膜の局所的な加熱も、膜の中に熱応力をもたらし、機械的変形または膜への損傷をもたらす可能性がある。膜の加熱も、非常に短い時間の期間内、つまり、1秒未満で起こり、しばしばミリ秒の程度で起こる。冷却効果は、フィルタの隣接する領域またはより離れた領域が、瞬間的に照射された領域より低い温度を有するため、局所的な瞬間の放射の間または直後に起こる。問題は、熱の均等化を提供するための熱の伝導がほとんどないことである。この非均一な温度の分布が、パルス状イオンビーム10および走査イオンビーム10について特に顕著なことである。これらの温度勾配は、エネルギーフィルタ25の膜が作られる材料の中に、欠陥、および分離相の形成をもたらす可能性があり、材料の予期しない改変さえもたらす可能性がある。
【0014】
以前は、問題は、イオン注入のすべての処理の局面(つまり、照射の前の時間、イオンビームによって膜を加熱する局面(局所的または全体)、実際の照射(局所的または全体)、イオンビームの除去の後の冷却局面(局所的または全体)、および注入処理の終了)において、引っ張り、および亀裂や脆性の増加などによる膜の損傷の関連する危険性が、より頻繁に起こる可能性があることであった。
【0015】
モノリシックな縁によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体の主要な欠点は、縁(完全なウェーハ厚さ、およそ100μm)から実際のエネルギーフィルタ膜(典型的な厚さ約20μm)への移行である。フィルタフレームとエネルギーフィルタとに同じ照射出力がある場合、移行において結果生じる熱は、硬い縁の高い熱伝導と、結果生じる大きな熱容量とのため、薄い膜の加熱より大きくなる。結果として、移行領域における温度勾配が上昇し、熱機械的応力をもたらす可能性がある。実用的な態様は、フィルタフレームおよび膜を常に同じ出力で照射することが、伝送されないイオンの損失が非常に大きくなるため、ウェーハ処理量を最大化するという理由のための好ましい処理変更ではないという事実によって、さらに複雑にさせられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第0014516号明細書
【特許文献2】独国特許第102016106119号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102019120623号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そのため、処理の局面の間の応力またはその影響と、膜の亀裂、膜の脆性の増加、または同様の問題を通じたエネルギーフィルタ膜への損傷の関連する危険性とを低減または回避するために、機械的に結合解除されたエネルギーフィルタを用いてイオン注入システムにエネルギーフィルタ組立体を提供することが、本発明の目的である。
【0018】
そのため、エネルギーフィルタの機械的安定性および熱機械的安定性を向上させるために、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を向上させる必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、エネルギーフィルタと、第1のフィルタフレームと、少なくとも1つの結合要素とを備える、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体が提供される。エネルギーフィルタは、イオンビームのビームエネルギーを吸収する少なくとも1つのフィルタ要素を有する。少なくとも1つの結合要素は、第1のフィルタフレームをエネルギーフィルタと弾性的に連結する。
【0020】
エネルギーフィルタ組立体の一態様において、少なくとも1つの結合要素は、エネルギーフィルタの少なくとも1つのフィルタ要素に配置される。
【0021】
エネルギーフィルタ組立体の第2の態様において、エネルギーフィルタ組立体は、エネルギーフィルタを収容する第2のフィルタフレームをさらに備え、少なくとも1つの結合要素は第1のフィルタフレームを第2のフィルタフレームと弾性的に連結する。
【0022】
エネルギーフィルタ組立体の一態様において、少なくとも1つの結合要素は微細ばね要素として構成される。微細ばね要素は6μm、16μm、または数百μmの厚さを有し得る。微細ばね要素は50μm、100μmの幅と、100μmから最大数mmまでの長さとを同じく有し得る。
【0023】
エネルギーフィルタ組立体の一態様において、少なくとも1つの結合要素は、エネルギーフィルタおよび第1のフィルタフレームの少なくとも一方と一体に形成される。
【0024】
エネルギーフィルタ組立体の一態様において、少なくとも1つの結合要素は、第1のフィルタフレームおよび第2のフィルタフレームの少なくとも一方と一体に形成される。
【0025】
エネルギーフィルタ組立体のさらなる態様において、少なくとも1つの結合要素は、レーザ溶接、ボンディング技術、または少なくとも1つの機械的固定具によって、エネルギーフィルタ、第1のフィルタフレーム、および第2のフィルタフレームに連結される。
【0026】
エネルギーフィルタ組立体の一態様において、少なくとも1つのフィルタ要素は、三角柱形、錐体形、または自由形態の形である。
【0027】
エネルギーフィルタ組立体のさらなる態様において、少なくとも1つのフィルタ要素は、イオンビームのビーム方向に対して垂直である平面に配置される。
【0028】
エネルギーフィルタ組立体の第3の態様において、エネルギーフィルタ組立体は少なくとも1つの開口要素と基板とをさらに備える。少なくとも1つの開口要素は、イオンビームのビーム方向に対して垂直である平面に配置される。少なくとも1つの開口要素は、フィルタリングされたイオンビームがフィルタを通じてのみ基板に伝送されるように、エネルギーフィルタと基板との間にさらに配置される。
【0029】
エネルギーフィルタ組立体のさらなる態様において、基板は、伝送されたイオンビームに対して固定される、または、伝送されたイオンビームのビーム方向に対して垂直な第1の方向および第2の方向の少なくとも一方において移動可能である。
【0030】
エネルギーフィルタ組立体の他の態様において、エネルギーフィルタ組立体は、少なくとも1つの最小走査領域でイオンビームを走査する少なくとも1つの検出要素をさらに備える。少なくとも1つの検出要素は走査領域でイオンビームを走査し、走査領域は少なくとも1つの検出要素を越えて延びる。検出要素はファラデーカップであり得る。
【0031】
エネルギーフィルタ組立体のさらなる態様において、少なくとも1つのフィルタ要素はケイ素、炭化ケイ素、または炭素から作られる。
【0032】
エネルギーフィルタ組立体の第4の態様において、少なくとも1つの結合要素は、第1のフィルタフレームとエネルギーフィルタとの間の連結を制御された引っ張りの下で維持するために予め荷重が掛けられる。少なくとも1つの結合要素は、具体的には、イオン照射の間のフィルタの熱膨張の場合について、第1のフィルタフレームとエネルギーフィルタとの間の連結を制御された引っ張りの下で維持するために予め荷重が掛けられる。予め荷重が掛けられた少なくとも1つの結合要素は、エネルギーフィルタへの制御された引っ張りが、動作の間に許容される全体の温度範囲内に安全値を含む最大の耐えることができる引っ張り未満となるように、構成される。少なくとも1つの結合要素は微細引っ張りばね要素として提供され得る。
【0033】
本発明の第5の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するための方法であって、イオンビームのビームエネルギーを少なくとも部分的に吸収する少なくとも1つのフィルタ要素を有するエネルギーフィルタを提供するステップと、第1のフィルタフレームを提供するステップと、第1のフィルタフレームをエネルギーフィルタと弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素によって、第1のフィルタフレームをエネルギーフィルタと連結するステップとを含む方法が提供される。
【0034】
エネルギーフィルタ組立体を製造するための方法の一態様において、方法は、エネルギーフィルタを収容する第2のフィルタフレームを提供するステップと、少なくとも1つの結合要素を第1のフィルタフレームと第2のフィルタフレームとの間で弾性的に連結するステップとをさらに含む。
【0035】
本発明の第6の態様によれば、イオン注入をフィルタリングするための方法であって、少なくとも1つのフィルタ要素を有するエネルギーフィルタを備えるエネルギーフィルタ組立体を提供するステップであって、第1のフィルタフレームが少なくとも1つの結合要素によってエネルギーフィルタと弾性的に連結され、少なくとも1つの開口要素がエネルギーフィルタと基板との間に配置される、ステップと、エネルギーフィルタおよび少なくとも1つの結合要素にわたって延びるイオンビームを提供するステップと、イオンビームのフィルタリングされていないイオンが基板に衝突するのを停止させるように、少なくとも1つの開口要素をイオンビームの方向に対して配置するステップとを含む方法が提供される。
【0036】
イオン注入をフィルタリングするための方法の一態様において、方法は、少なくとも1つの検出要素が照射されるように、エネルギーフィルタ、少なくとも1つの結合要素、および第1のフィルタフレームを越えてイオンビームを走査するステップをさらに含む。
【0037】
本発明の第7の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するためのさらなる方法であって、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハを、第1の表面および第2の表面を有する基板材料として提供するステップであって、埋め込み酸化物(BOX)の厚さが30nmから1.5μmの間の厚さで変化する、ステップと、湿式化学水酸化カリウム(KOH)エッチングまたは水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチングをマスクするための第1のマスク材料層および第2のマスク材料層を、SOIウェーハの第1の表面および第2の表面に適用するステップと、第1および第2のリソグラフィ処理ステップ、ならびに少なくとも1つの湿式または乾式のエッチングパターン形成ステップを使用することで、第1の表面および第2の表面に第1のマスク材料層および第2のマスク材料層のパターン形成をするステップと、マスク材料層のパターン形成の後に第1の表面および第2の表面を洗浄するステップと、KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して第1の表面または第2の表面を第1の湿式化学エッチングするステップと、第1のマスク材料層を除去するステップと、SOIウェーハの第1の表面へのKOHもしくはTMAHの湿式エッチングステップまたは乾式エッチングステップをマスクするために、第3のマスク材料層を第1の表面に適用するステップと、第3のリソグラフィ処理ステップ、および少なくとも1つの湿式または乾式のエッチングパターン形成ステップを使用することで、第1の表面に第3のマスク材料層のパターン形成をするステップと、BOX層において留まるSOIウェーハの第1の表面にKOHもしくはTMAHの湿式エッチングステップまたは乾式エッチングステップを適用するステップと、KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して第1の表面または第2の表面を第2の湿式化学エッチングするステップと、エッチングがBOX層において留められるように、第2の表面を第3の湿式化学または乾式のエッチングをするステップと、BOX層を除去するステップと、第1の表面および第2の表面におけるマスク層を除去するステップとを含む方法が提供される。
【0038】
エネルギーフィルタ組立体を製造するための方法の一態様において、方法は、エッチングを防止するために第1の保護層を第2の表面に適用するステップ、および/または、第1の表面のエッチングを防止するために第2の保護層を第1の表面もしくは第2の表面に適用するステップをさらに含む。
【0039】
本発明の第8の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するためのさらなる方法であって、体積材料スラブを提供するステップと、レーザエッチングまたは機械的腐食デバイスにより材料を連続的に除去するステップであって、除去は、1ステップごとに数十nmから最大数マイクロメートルまでの増分であり、所与の構造のためにいくつかの除去ステップを伴い、連続的な除去は、エネルギーフィルタ、第1のフィルタフレーム、および、第1のフィルタフレームをエネルギーフィルタと弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素の所定の3Dレイアウトに従って実施される、ステップとを含む方法が提供される。
【0040】
本発明の第9の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するためのさらなる方法であって、基板または基層を提供するステップと、エネルギーフィルタを提供するための第1のフィルタ層、および、第1のフィルタフレームを提供するための第1のフィルタフレーム層を堆積させるステップと、レーザまたはイオンビームのエッチングデバイスにより、マスクされたエッチングまたは連続的なエッチングなどの適切なエッチング技術を使用して、第1のフィルタ層および第1のフィルタフレーム層のパターン形成をするステップと、第1のフィルタ層および第1のフィルタフレーム層の多重を連続的に堆積させ、パターン形成するステップと、基板または基層を所望の基板層厚さまたは基層厚さへと除去、研磨、またはエッチングするステップと、第1のフィルタ層および第1のフィルタフレーム層を除去、研磨、またはエッチングすることで、第1のフィルタフレームをエネルギーフィルタと弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素を切り出すステップとを含む方法が提供される。
【0041】
本発明の第10の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するためのさらなる方法であって、エネルギーフィルタを提供するステップと、第1のフィルタフレームを提供するステップと、レーザアブレーションによってエネルギーフィルタと第1のフィルタフレームとの間に少なくとも1つの弾性要素を作り出すステップと、材料アブレーションによってエネルギーフィルタを第1のフィルタフレームから分離するステップとを含む方法が提供される。
【0042】
ここで、本発明が図に基づいて説明される。図に記載されている本発明の実施形態および態様が単なる例であり、請求の保護の範囲を何らかの形で限定することがないことは、理解されるものである。本発明は、請求項およびそれらの均等によって定められる。本発明のある態様または実施形態の特徴が、本発明の他の実施形態の異なる態様の図と組み合わせることができることは、理解されるものである。本発明は、本開示の一部としてのいくつかの例の以下の詳細な説明を、添付の図面の検討の下で読むとき、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】先行技術において知られているようなエネルギーフィルタを伴うイオン注入デバイスの原理の図である。
図2】エネルギーフィルタを伴うイオン注入デバイスの構造の図である。
図3A】第1のフィルタフレームをエネルギーフィルタと弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素を伴う、本発明の第1の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体の上面図である。
図3B図3Aの切断線A-A’によるエネルギーフィルタ組立体の断面図である。
図4A】第1のフィルタフレームを、エネルギーフィルタを収容する第2のフィルタフレームと弾性的に連結する少なくとも1つの結合要素を伴う、本発明の第2の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体の上面図である。
図4B図4Aの切断線A-A’によるエネルギーフィルタ組立体の断面図である。
図5A】少なくとも1つの開口要素がエネルギーフィルタと基板との間に配置されている、少なくとも1つの開口要素と基板とを伴う、本発明の第3の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体の断面図である。
図5B】少なくとも1つの最小走査領域でイオンビームを走査する少なくとも1つの検出要素を伴う図5Aのエネルギーフィルタ組立体の上面図である。
図5C】少なくとも1つの検出要素を越えて延びる走査領域でイオンビームを走査する少なくとも1つの検出要素を伴う図5Aのエネルギーフィルタ組立体の上面図である。
図6】第1のフィルタフレームとエネルギーフィルタとの間の連結を制御された引っ張りの下で維持するための予め荷重の掛けられた結合要素を伴う、本発明の他の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体の上面図である。
図7A】本発明による、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するための方法の流れ図である。
図7B】本発明による、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するための方法の流れ図である。
図7C】本発明による、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するための方法の流れ図である。
図7D】本発明による、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するための方法の流れ図である。
図7E】本発明による、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を製造するための方法の流れ図である。
図8】本発明による、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体を使用してイオン注入をフィルタリングするための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
ここで、本発明が図面に基づいて説明される。本明細書に記載されている本発明の実施形態および態様が単なる例であり、請求の保護の範囲を何らかの形で限定することがないことは、理解されるものである。本発明は、請求項およびそれらの均等によって定められる。本発明のある態様または実施形態の特徴が、本発明の異なる態様および/または実施形態の特徴と組み合わせることができることは、理解されるものである。本発明の目的は、本開示の目的のための例を用いて、本開示をその例に限定することなく、以下において完全に記載されている。例は、本発明の異なる態様を提起している。本技術の教示を実施するために、組み合わされたこれらの態様のすべてを実施することは必要とされない。むしろ、専門家は、有用と思われ、対応する用途および実施に必要とされるそれらの態様を選択し組み合わせることになる。
【0045】
図3Aは、本発明の第1の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1の上面図を示している。図3Bは、図3Aの切断線A-A’によるエネルギーフィルタ組立体1の断面図である。図3Aおよび図3Bにおいて見られるように、エネルギーフィルタ組立体1は、イオンビーム10のビームエネルギーを少なくとも部分的に吸収する少なくとも1つのフィルタ要素25aを有するエネルギーフィルタ25を備える。エネルギーフィルタ組立体1は、第1のフィルタフレーム40と、少なくとも1つの結合要素50とをさらに備え、少なくとも1つの結合要素50は、第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と弾性的に連結する。エネルギーフィルタ25の少なくとも1つのフィルタ要素25aは、三角柱形を伴う断面を有する膜から作られるが、この種類の断面形態は本発明の限定ではなく、必要および/または要求に応じて、他の断面形態が使用できる。例えば、エネルギーフィルタ25の少なくとも1つのフィルタ要素25aは、錐体形または自由形態の形を有する膜から作られ得る。
【0046】
少なくとも1つのフィルタ要素25aは、ケイ素、炭化ケイ素、または炭素から作ることができるが、この種類の材料は本発明の限定ではなく、必要および/または要求に応じて、他の材料が使用できる。図3Aにおいて見られるように、少なくとも1つの結合要素50は、エネルギーフィルタ25の少なくとも1つのフィルタ要素25aに配置される。さらに図3Aにおいて見られるように、少なくとも1つの結合要素50は第1のフィルタフレーム40にも配置される。少なくとも1つの結合要素50は、エネルギーフィルタ25の少なくとも1つの部分と一体に形成させることができる。少なくとも1つの結合要素50は、第1のフィルタフレーム40の少なくとも1つの部分と一体に形成させることもできる。しかしながら、少なくとも1つの結合要素50は、エネルギーフィルタ25の少なくとも1つの部分と別々に形成させることもできる。少なくとも1つの結合要素50は、第1のフィルタフレーム40の少なくとも1つの部分と別々に形成させることもできる。少なくとも1つの結合要素50は、レーザ溶接、ボンディング技術、または少なくとも1つの機械的固定具によって、エネルギーフィルタ25および第1のフィルタフレーム40に連結させることができるが、この種類の連結は、本発明の限定ではなく、必要および/または要求に応じて、他の連結技術が使用できる。図3Bにおいて見られるように、少なくとも1つのフィルタ要素25aは、イオンビーム発生源5(図示されていない)を介して照射されるイオンビーム10のビーム方向Zに対して垂直である平面X、Yに配置される。
【0047】
本発明の第1の態様において、エネルギーフィルタ組立体1は5つの結合要素50を備えており、結合要素50のうちの2つはエネルギーフィルタ25の各々の長手方向側に配置されており、結合要素50のうちの1つはエネルギーフィルタ25の各々の幅側に配置されている。しかしながら、本発明の第1の態様において、2つの結合要素50がエネルギーフィルタ25の各々の幅側に配置されてもよく、結合要素50のうちの1つがエネルギーフィルタ25の各々の長手方向側に配置されてもよい。さらに、本発明の第1の態様において、結合要素50の数は本発明によって限定されていない。エネルギーフィルタ組立体1は、6つ以上の結合要素50、または4つ以下の結合要素50を備えることができる。本発明のさらなる態様において、エネルギーフィルタ組立体1は、1つだけの結合要素50を備えることもでき、結合要素50は第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と弾性的に連結する。本発明のさらなる態様において、少なくとも1つの結合要素50が、第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と弾性的に連結するために、エネルギーフィルタ25の上面および/または底面に配置され得る。
【0048】
本発明の第1の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1であれば、少なくとも1つの結合要素50が微細ばね要素として構成できる。微細ばね要素は6μm、16μm、または数百μmの厚さを有し得る。微細ばね要素50は50μm、100μmの幅と、100μmから最大数mmまでの長さとを有し得る。しかしながら、この種類の結合要素50は本発明の限定ではなく、必要および/または要求に応じて、他の種類の結合要素が使用できる。
【0049】
図4Aは、本発明の第2の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体100の上面図を示している。図4Bは、図4Aの切断線A-A’によるエネルギーフィルタ組立体100の断面図を示している。本発明の第2の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体100は、本発明の第1の態様によるフィルタ組立体1と同じ構成を備えている。したがって、本発明の第1の態様におけるものと実質的に同じ機能を有する要素は、ここでも同じ符号とされ、簡潔性のためにここでは詳細に説明および/または図示されない。図4Aにおいて見て取れるように、エネルギーフィルタ組立体100は、エネルギーフィルタ25を収容する第2のフィルタフレーム30をさらに備え、少なくとも1つの結合要素50が第1のフィルタフレーム40を第2のフィルタフレーム30と弾性的に連結する。
【0050】
図4Aにおいて見られるように、本発明の第2の態様において、少なくとも1つの結合要素50が、エネルギーフィルタ25の少なくとも1つのフィルタ要素25aを収容する第2のフィルタフレーム30に配置される。さらに図4Aにおいて見られるように、少なくとも1つの結合要素50は第1のフィルタフレーム40にも配置される。少なくとも1つの結合要素50は、第2のフィルタフレーム30の少なくとも1つの部分と一体に形成させることができる。少なくとも1つの結合要素50は、第1のフィルタフレーム40の少なくとも1つの部分と一体に形成させることもできる。しかしながら、少なくとも1つの結合要素50は、第2のフィルタフレーム30の少なくとも1つの部分と別々に形成させることもできる。少なくとも1つの結合要素50は、第1のフィルタフレーム40の少なくとも1つの部分と別々に形成させることもできる。少なくとも1つの結合要素50は、レーザ溶接、ボンディング技術、または少なくとも1つの機械的固定具によって、第2のフィルタフレーム30および第1のフィルタフレーム40に連結させることができるが、この種類の連結は、本発明の限定ではなく、必要および/または要求に応じて、他の連結技術が使用できる。さらに、本発明の第2の態様において、結合要素50の数は本発明によって限定されていない。エネルギーフィルタ組立体100は、6つ以上の結合要素50、または4つ以下の結合要素50を備えることができる。本発明のさらなる態様において、エネルギーフィルタ組立体100は、1つだけの結合要素50を備えることもでき、結合要素50は第1のフィルタフレーム40を第2のフィルタフレーム30と弾性的に連結する。本発明のさらなる態様において、少なくとも1つの結合要素50が、第2のフィルタフレーム30を介して第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と弾性的に連結するために、第2のフィルタフレーム30の上面および/または底面に配置され得る。
【0051】
図4Bにおいて見られるように、本発明の第2の態様において、少なくとも1つのフィルタ要素25aは、イオンビーム発生源5(図示されていない)を介して照射されるイオンビーム10のビーム方向Zに対して垂直である平面X、Yに配置される。図4Bにおいて見られるように、エネルギーフィルタ組立体100は絶縁層の二酸化ケイ素層22を備え、例えば、二酸化ケイ素層22は、第1のフィルタフレーム40とバルクケイ素23(約400μmの厚さ)との間に挟まれた0.3~1.5μmの厚さを有する。しかしながら、本発明はそれに限定されず、絶縁層の二酸化ケイ素層22は省略されてもよく、必要および/または要求に応じて、他の連結層が使用されてもよい。図4Bにおいて見られるように、エネルギーフィルタ25は、膜の最小厚さを有する層厚さを伴う少なくとも1つのフィルタ層32を有する。エネルギーフィルタ25は、1つだけのフィルタ層32を有する、または、複数のフィルタ層32を有するとして構成され得る。例えば、エネルギーフィルタ25は、5つのフィルタ層32の各々が膜の最小の厚さを伴う層厚さを有する状態で、5つのフィルタ層32を有して作られ得る。フィルタ層32の量は本発明の限定ではない。さらに、図4Bにおいて見られるように、第1のフィルタフレーム40は、最小厚さを有する層厚さを伴う少なくとも1つの第1のフィルタフレーム層43を有する。第1のフィルタフレーム40は、1つだけの第1のフィルタフレーム層43を有する、または、複数の第1のフィルタフレーム層43を有するとして構成され得る。第1のフィルタフレーム層43の量は本発明の限定ではない。さらに、図4Bにおいて見られるように、第2のフィルタフレーム30は、最小厚さを有する層厚さを伴う少なくとも1つの第2のフィルタフレーム層33を有する。第2のフィルタフレーム30は、1つだけの第2のフィルタフレーム層33を有する、または、複数の第2のフィルタフレーム層33を有するとして構成され得る。第2のフィルタフレーム層33の量は本発明の限定ではない。
【0052】
図5Aは、本発明の第3の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体200の断面図を示している。図5Bおよび図5Cは、本発明の第3の態様によるエネルギーフィルタ組立体200のさらなる態様の上面図を示している。本発明の第3の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体200は、本発明の第1の態様によるフィルタ組立体1と同じ構成と、本発明の第2の態様によるフィルタ組立体100と同じ構成とを備える。したがって、本発明の第1の態様および第2の態様におけるものと実質的に同じ機能を有する要素は、ここでも同じ符号とされ、簡潔性のためにここでは詳細に説明および/または図示されない。
【0053】
図5Aにおいて見られるように、本発明の第3の態様において、エネルギーフィルタ組立体200は、イオンビーム発生源5(図示されていない)を介して照射されるイオンビーム10のビーム方向Zに対して垂直である平面X、Yに配置される少なくとも1つの開口要素60をさらに備える。エネルギーフィルタ組立体200は基板70をさらに備え、少なくとも1つの開口要素60は、フィルタリングされたイオンビーム10aが基板70に伝送されるように、および、フィルタリングされていないイオンビーム10bが少なくとも1つの開口要素60によって遮蔽されるように、エネルギーフィルタ25と基板70との間に配置される。図5Aにおいて見られるように、基板70は、伝送されたイオンビーム10aに対して固定され得る。しかしながら、本発明はそれに限定されず、基板70は、伝送されたイオンビーム10aのビーム方向Zに対して両方とも垂直である第1の方向70aおよび第2の方向70bの少なくとも一方に移動可能ともできる。
【0054】
本発明の第3の態様によるエネルギーフィルタ組立体200のさらなる態様において、エネルギーフィルタ組立体200は少なくとも1つの検出要素80をさらに備え、検出要素80は、図5Aおよび図5Bにおいて最もよく見られるように、少なくとも1つの最小走査領域80aでイオンビーム10を走査する。少なくとも1つの検出要素80はファラデーカップであり得るが、本発明はそれに限定されない。
【0055】
本発明の第3の態様によるエネルギーフィルタ組立体200のさらなる態様において、少なくとも1つの検出要素80は走査領域80bでイオンビーム10を走査し、走査領域80bは、図5Cにおいて最もよく見られるように、少なくとも1つの検出要素80を越えて延びている。
【0056】
図6は、本発明の第4の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体300の上面図を示している。本発明の第3の態様によるイオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体300は、本発明の第1の態様によるフィルタ組立体1と同じ構成と、本発明の第2の態様によるフィルタ組立体100と同じ構成と、本発明の第3の態様によるフィルタ組立体100と同じ構成とを備える。したがって、本発明の第1の態様、第2の態様、および第3の態様におけるものと実質的に同じ機能を有する要素は、ここでも同じ符号とされ、簡潔性のためにここでは詳細に説明および/または図示されない。少なくとも1つの結合要素50は、第2のフィルタフレーム30を介して第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と弾性的に連結する。しかしながら、本発明はこれに限定されることはなく、少なくとも1つの結合要素50は、第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と直接的に弾性的に連結することもできる。本発明の第4の態様のエネルギーフィルタ組立体300において、少なくとも1つの結合要素50は、第1のフィルタフレーム40とエネルギーフィルタ25との間の連結を制御された引っ張りの下で維持するために予め荷重が掛けられる。エネルギーフィルタ25の膜は、「膨張」する傾向、つまり、歪みを形成する傾向を有する。例えば、少なくとも1つの結合要素50は引っ張りばね50として構成され得る。目的は、エネルギーフィルタ25の膜が、配向(鉛直/直立または水平/横たえる)および外部負荷(熱影響および機械的影響)に拘わらず、その「平坦な応力状態」をできる限り保持することを確保することである。そのため、エネルギーフィルタ25の膜は、第1のフィルタフレーム40および第2のフィルタフレーム30の中の均一に分配された予め荷重の掛けられた引っ張りばね50によって引っ張られる。そのため、エネルギーフィルタ25の膜は、引張応力によって、つまり、制御された引っ張りによって、(実質的に)平滑または平坦に維持させることができる。引っ張りばね50は、対応する安全因子(外部荷重の種類および大きさに依存する)を伴う最大の耐えることができる引張応力(材料に依存する)が、動作の間に許容される全体の温度範囲内で越えさせられないように、さらに構成される。
【0057】
図6におけるエネルギーフィルタ組立体300の上面図において見られるように、第2のフィルタフレーム30は湾曲した外形35を有する。例えば、第2のフィルタフレーム30は波状の外形35を有する。第1のフィルタフレーム40は、第2のフィルタフレーム30の湾曲した外形に適合させられるように構成される。そのため、例えば、第1のフィルタフレーム40は波状または湾曲の内側輪郭41を有する。図6において見られるように、隙間90が、第2のフィルタフレーム30の外形35と第1のフィルタフレーム40の内側輪郭41との間に設けられる。図6において見られるように、少なくとも1つの結合要素50が、第2のフィルタフレーム30の外形35と第1のフィルタフレーム40の内側輪郭41とを弾性的に連結するために設けられている。例えば、隙間90はレーザアブレーションによって除去される。隙間90を提供することで、エネルギーフィルタ25は第1のフィルタフレーム40から分離される。そのため、結合要素50は、エネルギーフィルタ25を包囲する第2のフィルタフレーム30と第1のフィルタフレーム40との間に柔軟な機械的連結を作り出す。湾曲した外形35は、具体的には、結合要素50が引っ張りばね50として構成されるとき、少なくとも1つの結合要素50の力を吸収する。そのため、熱機械応力の影響がさらに低減され得る。
【0058】
図6において見られるように、第1のフィルタフレーム40および/または第2のフィルタフレーム30には、3Dレーザアブレーションを使用して、引っ張りばね50を取り付けるために孔が設けられ得る。引っ張りばね50を設置した後、エネルギーフィルタ25の膜と第1のフィルタフレーム40とは、特定の切断形状(すべての機械的影響および熱力学的影響が考慮される)によって、互いから結合解除される。この切断も、3Dレーザアブレーションを使用して生成され得る。
【0059】
本発明の第4の態様によるエネルギーフィルタ組立体300のさらなる態様において、予め荷重が掛けられた少なくとも1つの結合要素50は、エネルギーフィルタ25への制御された引っ張りが、動作の間に許容される全体の温度範囲内に安全値を含む最大許容引っ張り未満となるように、構成される。
【0060】
本発明の第4の態様によるエネルギーフィルタ組立体300のさらなる態様において、少なくとも1つの結合要素50が微細引っ張りばね要素として提供され得る。しかしながら、本発明はそれに限定されず、他の予め荷重の掛けられた要素が、必要および/または要求に応じて使用されてもよい。
【0061】
図7A図7Eは、本発明による、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を製造するための方法の流れ図を示している。
【0062】
本発明の第5の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を製造するための方法400が提供される。方法400は、イオンビーム10のビームエネルギーを少なくとも部分的に吸収する少なくとも1つのフィルタ要素25を有するエネルギーフィルタ25を提供するステップ401と、第1のフィルタフレーム40を提供するステップ402と、第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素50によって、第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と連結するステップとを含む。方法400は、エネルギーフィルタ25を収容する第2のフィルタフレーム30を提供するステップ403と、少なくとも1つの結合要素50を第1のフィルタフレーム40と第2のフィルタフレーム30との間で弾性的に連結するステップ404とをさらに含む。
【0063】
本発明の第6の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を製造するための方法500が提供される。方法500は、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハを、第1の表面および第2の表面を有する基板材料として提供するステップ501であって、埋め込み酸化物(BOX)の厚さが30nmから1.5μmの間の厚さで変化する、ステップ501と、湿式化学水酸化カリウム(KOH)エッチングまたは水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチングをマスクするための第1のマスク材料層および第2のマスク材料層を、SOIウェーハの第1の表面および第2の表面に適用するステップ502と、第1および第2のリソグラフィ処理ステップ、ならびに少なくとも1つの湿式または乾式のエッチングパターン形成ステップを使用することで、第1の表面および第2の表面に第1のマスク材料層および第2のマスク材料層のパターン形成をするステップ503と、マスク材料層のパターン形成の後に第1の表面および第2の表面を洗浄するステップ504と、KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して第1の表面または第2の表面を第1の湿式化学エッチングするステップ505と、第1のマスク材料層を除去するステップ506と、SOIウェーハの第1の表面へのKOHもしくはTMAHの湿式エッチングステップまたは乾式エッチングステップをマスクするために、第3のマスク材料層を第1の表面に適用するステップ506と、第3のリソグラフィ処理ステップ、および少なくとも1つの湿式または乾式のエッチングパターン形成ステップを使用することで、第1の表面に第3のマスク材料層のパターン形成をするステップ507と、BOX層において留まるSOIウェーハの第1の表面にKOHもしくはTMAHの湿式エッチングステップまたは乾式エッチングステップを適用するステップ508と、KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して第1の表面または第2の表面を第2の湿式化学エッチングするステップ509と、エッチングがBOX層において留められるように、第2の表面を第3の湿式化学または乾式のエッチングをするステップ510と、BOX層を除去するステップ511と、第1の表面および第2の表面におけるマスク層を除去するステップ512とを含む。
【0064】
イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を製造するための方法500のさらなる態様において、方法500は、エッチングを防止するために第1の保護層を第2の表面に適用するステップ513を含む。方法500は、第1の表面のエッチングを防止するために第2の保護層を第1の表面または第2の表面に適用するステップ514をさらに含み得る。
【0065】
本発明の第7の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を製造するための方法600が提供される。方法は、体積材料スラブを提供するステップ601と、レーザエッチングまたは機械的腐食デバイスにより材料を連続的に除去するステップ602であって、連続的な除去602は、1ステップごとに数十nmから最大数マイクロメートルまでの増分であり、所与の構造のためにいくつかの除去ステップを伴い、連続的な除去602は、エネルギーフィルタ25、第1のフィルタフレーム40、および、第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素50の所定の3Dレイアウトに従って実施される、ステップ602とを含む。
【0066】
本発明の第8の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を製造するための方法700が提供される。方法は、基板または基層を提供するステップ701と、エネルギーフィルタ25を提供するための第1のエネルギーフィルタ層32、および、第1のフィルタフレーム40を提供するための第1のフィルタフレーム層43を堆積させるステップ702と、レーザまたはイオンビームのエッチングデバイスにより、マスクされたエッチングまたは連続的なエッチングなどの適切なエッチング技術を使用して、第1のエネルギーフィルタ層32および第1のフィルタフレーム層43のパターン形成をするステップ703と、第1のエネルギーフィルタ層32および第1のフィルタフレーム層43の多重を連続的に堆積させ、パターン形成するステップ704と、基板または基層を所望の基板層厚さまたは基層厚さへと除去、研磨、またはエッチングするステップ705と、第1のエネルギーフィルタ層32および第1のフィルタフレーム層43を除去、研磨、またはエッチングすることで、第1のフィルタフレーム40をエネルギーフィルタ25と弾性的に連結するための少なくとも1つの結合要素50を切り出すステップ706とを含む。
【0067】
本発明の第9の態様によれば、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を製造するための方法800が提供される。方法800は、エネルギーフィルタ25を提供するステップ801と、第1のフィルタフレーム40を提供するステップ802と、レーザアブレーションによってエネルギーフィルタ25と第1のフィルタフレーム40との間に少なくとも1つの弾性要素50を作り出すステップ803と、材料アブレーションによってエネルギーフィルタ25を第1のフィルタフレーム40から分離するステップ804とを含む。
【0068】
図8は、本発明の第10の態様による、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を使用してイオン注入をフィルタリングするための方法900の流れ図を示している。方法900は、少なくとも1つのフィルタ要素25aを伴うエネルギーフィルタ25を備えるエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を提供するステップ901であって、第1のフィルタフレーム40が少なくとも1つの結合要素50によってエネルギーフィルタ25と弾性的に連結され、少なくとも1つの開口要素60がエネルギーフィルタ25と基板70との間に配置される、ステップ901と、エネルギーフィルタ25および少なくとも1つの結合要素50にわたって延びるイオンビーム10を提供するステップ902と、イオンビーム10のフィルタリングされていないイオン10bが基板70に衝突するのを停止させるように、少なくとも1つの開口要素60をイオンビーム10の方向に対して配置するステップ903とを含む。方法900は、イオンビーム10が、エネルギーフィルタ25および少なくとも1つの結合要素50にわたって延び、および少なくとも部分的に第1のフィルタフレーム40にわたって延びることをさらに含み得る。具体的には、イオンビーム10が、エネルギーフィルタ25および少なくとも1つの結合要素50にわたって延び、および少なくとも部分的に第1のフィルタフレームにわたって延びることを方法900が含むとき、走査領域は、ファラデーカップの形態での少なくとも1つの検出要素を越えて延びる。
【0069】
本発明の第10の態様による、イオン注入システムのためのエネルギーフィルタ組立体1、100、200、300を使用してイオン注入をフィルタリングするための方法900のさらなる態様において、方法900は、少なくとも1つの検出要素80が照射されるように、エネルギーフィルタ25、少なくとも1つの結合要素50、および第1のフィルタフレーム40を越えてイオンビーム10を走査するステップ904を含む。
【0070】
本発明の先の記載から、当業者は、本発明における改善、変更、および改良に気付くことになる。当技術分野における技能の中でのこのような改善、変更、および改良は、添付の特許請求の範囲によって網羅されるように意図されている。
【符号の説明】
【0071】
1 エネルギーフィルタ組立体
5 イオンビーム発生源
10 イオンビーム
20 イオン注入デバイス
21 ケイ素層
22 二酸化ケイ素層
23 バルクケイ素
25 エネルギーフィルタ
25a フィルタ要素
30 第2のフィルタフレーム
32 エネルギーフィルタ層
33 第2のフィルタフレーム層
35 湾曲した外形
40 第1のフィルタフレーム
41 内側輪郭
43 第1のフィルタ層
50 結合要素
60 開口要素
70 基板
70a 第1の方向
70b 第2の方向
80 検出要素
80a 最小走査領域
80b 走査領域
90 隙間
100 エネルギーフィルタ組立体
200 エネルギーフィルタ組立体
300 エネルギーフィルタ組立体
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
【図
【国際調査報告】