(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】TSNフローのスケジューリング方法、通信システム及び中央ネットワーク構成エンティティ
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0446 20230101AFI20231227BHJP
H04W 72/1263 20230101ALI20231227BHJP
H04W 28/10 20090101ALI20231227BHJP
H04W 28/16 20090101ALI20231227BHJP
H04L 7/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H04W72/0446
H04W72/1263
H04W28/10
H04W28/16
H04L7/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561943
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2021041439
(87)【国際公開番号】W WO2022208975
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】ボノビル、エルベ
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ボリスキン、アルテム
【テーマコード(参考)】
5K047
5K067
【Fターム(参考)】
5K047AA06
5K047BB01
5K047BB15
5K047HH01
5K047HH12
5K047HH42
5K047LL14
5K067AA14
(57)【要約】
本開示は、タイムセンシティブネットワーク(TSN)内の通信システムにおけるTSNフローをスケジューリングする方法に関する。本方法は、中央ネットワーク構成エンティティにおいて実施される。無線フレーム内の伝送機会の時間粒度に関する支援情報が少なくとも1つのTSNブリッジから取得される。取得した支援情報に基づいて、複数のTSNフローの時系列を上記時間粒度まで計算することによって、上記TSNフローがスケジューリングされる。本開示は、対応する通信システム及び対応する中央ネットワーク構成エンティティに更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイムセンシティブネットワーク(TSN)内の通信システムにおいてTSNフローをスケジューリングする方法であって、前記方法は、中央ネットワーク構成エンティティにおいて実施され、
内部時間制約を有する少なくとも1つのTSNブリッジから、伝送フレーム内の伝送機会の時間粒度に関する支援情報を取得することと、
取得した前記支援情報に基づいて、複数のTSNフローの時系列を前記時間粒度まで計算することによって、前記TSNフローをスケジューリングすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は、期間及びオフセットを含み、前記オフセットは、前記中央ネットワーク構成エンティティ及び前記TSNブリッジに共通のクロックに関して定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は期間を含み、複数の指向性ポート対について、対応するオフセットを更に含み、前記オフセットは、前記中央ネットワーク構成エンティティ及び前記TSNブリッジに共通のクロックに対して定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記期間はスロット持続時間に対応し、前記オフセットはスロットの開始を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記期間はスロット持続時間に対応し、第1のオフセットは、第1の伝送方向に静的に割り当てられた伝送機会の第1のグループの開始を示し、第2のオフセットは、第2の伝送方向に静的に割り当てられた伝送機会の第2のグループの開始を示す、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は、スロット内の、第1の伝送方向と第2の伝送方向との間の各伝送機会の割り当てのインジケーションを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記インジケーションは、複数の指向性ポート対についての、スロット内の各伝送機会の利用可能性ステータスの対応するビットマップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インジケーションは、
所与の伝送方向についての、スロット内の各伝送機会の利用可能性ステータスの複数のビットマップであって、ビットマップは所定の可能性のあるスロット構造に対応する、複数のビットマップと、
複数の指向性ポート対についての、前記複数のビットマップのうちの特定のビットマップへの対応するインデックスと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は、
各伝送機会に対応する性質のインジケーションであって、各前記性質は、柔軟性を有するか又は固定であり、
柔軟性を有する前記性質は、第1の伝送方向及び第2の伝送方向についての柔軟性を有する使用に関連付けられ、
固定の前記性質は、前記第1の伝送方向及び前記第2の伝送方向間の1つのみの伝送方向についての固定の使用に関連付けられる、インジケーションと、
複数の指向性ポート対についての、前記第1の伝送方向及び前記第2の伝送方向間の対応する伝送方向のインジケーションと、
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は、
値の複数のセットであって、値のセットは、所定の可能性のあるスロット構造に対応し、第1の伝送方向及び第2の伝送方向のそれぞれについて、スロット内の各伝送機会の利用可能性ステータスを示す、値の複数のセットと、
複数の指向性ポート対についての、前記値の複数のセットのうちの特定の値のセットに対応するインデックス、並びに前記第1の伝送方向及び前記第2の伝送方向間の対応する伝送方向のインジケーションと、
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
タイムセンシティブネットワーク(TSN)内の通信システムであって、前記通信システムは、内部時間制約を有する少なくとも1つのTSNブリッジと、
前記少なくとも1つのTSNブリッジから、伝送フレーム内の伝送機会の時間粒度に関する支援情報を取得し、
取得した前記支援情報に基づいて、TSNフローの時系列を前記時間粒度まで計算することによって、複数のTSNフローをスケジューリングする、
ように構成される中央ネットワーク構成エンティティとを備える、通信システム。
【請求項12】
タイムセンシティブネットワーク(TSN)内の通信システムの中央ネットワーク構成エンティティであって、前記中央ネットワーク構成エンティティは、
内部時間制約を有する少なくとも1つのTSNブリッジから、伝送フレーム内の伝送機会の時間粒度に関する支援情報を取得し、
取得した前記支援情報に基づいて、複数のTSNフローの時系列を前記時間粒度まで計算することによって、TSNフローをスケジューリングする、
ように構成される、中央ネットワーク構成エンティティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気通信の分野に属する。本開示は、包括的には、タイムセンシティブネットワーキング(TSN)の方法及びシステムに関し、より詳細には、5Gシステム(5GS)等の無線ブリッジを含むTSNネットワークに関する。
【0002】
特に、TSNフローをスケジューリングする方法、そのような方法が実施される通信システム、そのような通信システムにおける、そのような方法を実施するように構成されるエンティティとしての中央ネットワーク構成エンティティ、中央ネットワーク構成エンティティにおいてそのような方法を実施するコンピュータプログラム、及びそのようなコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読ストレージ媒体が開示される。
【背景技術】
【0003】
高速で信頼できる通信及び情報ネットワーキング、特に、タイムセンシティブネットワーキング(TSN)は、スマートファクトリー環境にとって不可欠である。このようなネットワーキングによって、生産計画及びロジスティクスだけでなく、個々の生産ステップを密接に接続することによってファクトリーにわたる統合が可能になる。
【0004】
産業ネットワークでは、求められている接続性を提供するために、確定的な性能を必要とする機械及びサービスに対するリアルタイム制御に使用されるタイムセンシティブ(TS)トラフィックを含む様々なタイプのトラフィックをサポートする必要がある。
【0005】
タイムセンシティブネットワーキング(TSN)は、TSトラフィックを処理するための確定的な遅延を産業ネットワークに提供するために、IEEE802.1Qによって標準化されている。エンドツーエンド通信デッドライン及び限定ジッターが、例えば、IEEE802.1Qccによって標準化されているように、ネットワーク内の全ての構成要素について生成されたストリームごと及びポートごとのゲート制御リストに関して、個々のフレーム及びストリームの時間同期及びTSNスケジューリング等の複数のメカニズムを通じて保証される。
【0006】
当初、TSNは、センサ/コントローラとITセンターとの間の高速通信をサポートすることが可能な有線ネットワークを対象としていた。センサ及びアクチュエータが有線から無線に移行することで、移動性、拡張性、及びメンテナンスコスト削減等の付加的な利点が得られる。無線デバイスをTSNネットワークに接続するためには、3GPP(商標)で定義されているような無線伝送技術が必要である。
【0007】
有線技術と無線技術との融合は、規格互換性並びに(限定型)有線媒体及び(開放型)無線媒体を通じたデータ伝送の特質等のまだ十分には解決されていない複数の課題を提起している。
【0008】
イーサネットネットワークとして、TSNは、エンドノード(トーカー/リスナーノード)と、双方向イーサネットリンクを通じてエンドノード間を接続するブリッジノードとから形成される。
【0009】
集中型アーキテクチャにおいて、エンドステーションは、フロー要件及びTSN通信構成を集中型ユーザ構成エンティティ(CUC)に送信している。
【0010】
CUCは、ユーザ構成を集中型ネットワーク構成エンティティ(CNC)に送信する。
【0011】
各TSNスイッチは、遅延管理されたオブジェクトとしてCNCを識別する。スイッチによってTSNに送信されるパラメータは、流出及び流入ポート識別情報、トラフィッククラス、並びにポート対あたりの最小遅延及び最大遅延としてのQoSパラメータである。
【0012】
CNCは、TSNエンドステーション間の中間スイッチの、スケジュール、すなわち伝送時間と、異なるスイッチのTASの制御パラメータ及びルーティング決定、すなわちスイッチ選択とを計算する。これらの計算は、TSN通信のストリーム要件を満たすように行われる。
【0013】
図1は、3GPP TS23.501規格に従う5Gシステム及びCNC間のインタラクションを示し、
図2は、無線ブリッジとして役割を果たす5Gシステムの汎用モデルを示す。
【0014】
一般的に言えば、無線ブリッジはTSNネットワークのエンティティであり、その機能は、無線手段を通じて、アップストリームサブネットワークをダウンストリームサブネットワークと共に接続することである。
図1において、5Gシステム11は、TSNアプリケーション機能(AF)13を通じて中央ネットワーク構成エンティティ(CNC)12からタイミング及び制御情報を受信するTSNブリッジとみなされる。TSN-AFは、CNCからの制御情報を、パケットデータユニット(PDU)セッションのプロファイルを定義するポリシー制御に変換する。このプロファイルは、CNCタイミングスケジュールに従って、TSNパケットを、TSNエンドステーションへの論理TSNブリッジとみなされるネットワークにおいて伝播させるという目的を有している。
【0015】
5Gシステム11は、
-3GPP 5Gコアインフラストラクチャシステムアーキテクチャのコンポーネントを表すユーザプレーン機能(UPF)21と、
-少なくとも1つの基地局(gNB)22と、
-少なくとも1つのユーザ機器(UE)23と、
を備える。
【0016】
少なくとも1つのUEは、少なくとも1つのgNBに無線接続され、少なくとも1つのデバイス側(DS)ポート24を備えている。
図2はK個のそのようなDSポートを表す。ここで、Kは任意の正の整数である。UPFは、少なくとも1つのgNBへのワイヤライン接続を有し、通常、少なくとも1つのネットワーク側(NW)ポート25を備えている。
図2はN個のそのようなNWポートを表す。ここで、Nは任意の正の整数である。
【0017】
5GSブリッジは、集中型ネットワーク構成(CNC)エンティティ12との通信を可能にするTSNアプリケーション機能(AF)13も含む。CNC12は、ネットワークインフラストラクチャ(例えば、リンク及びブリッジ)の物理的トポロジ及びTSN能力を発見し、TSNスケジューリングを計算し、TSNスケジューリングに従ってブリッジのTSN機能を構成し、これにより、ストリーム要求に従って少なくとも2つのESの所望の接続を可能にする。この点で、CNCは、
図1に示すように、
図2に表す5GSブリッジとの通信を含む、ネットワーク内のブリッジと通信する。特に、5GSブリッジは、TSNアプリケーション機能(AF)13を通じて中央ネットワーク構成エンティティ(CNC)12からタイミング情報及び制御情報を受信する。TSN-AFは、CNCからの制御情報を、パケットデータユニット(PDU)セッションのプロファイルを定義するポリシー制御に変換する。このプロファイルは、CNCタイミングスケジュールに従って、ネットワークにおいてTSNパケットを伝播させるという目的を有しており、TSNエンドステーションへの論理TSNブリッジとみなされる。
【0018】
最終的に、各ポートにTSNトランスレータ(TT)を設けることができる。この目的は、5GSブリッジの内部機能を、CNC及び他のネットワークエンティティから隠すことである。
【0019】
TSNネットワークは、TSN能力を、IEEE802.1Qccに従って、TSNパラメータの単一のセット、例えば、ポートごと又はポート対ごとの最小/最大依存遅延及び独立遅延によって特徴付けることができるという意味で固定構成を有する少なくとも1つの有線TSNブリッジを更に備えることができる。
【0020】
有線ブリッジと異なり、5GSブリッジは、無線通信に関する5GSブリッジの内部機能を調整することによって要求に応じて調整することができる可変のTSN能力を有する点を特徴とする。特に、これは、独立遅延、対応する無線リンクのスループット能力に関連するポート対あたりの依存遅延、又は双方に関係する場合がある。ポート対あたりの依存遅延は、伝送のために周期的に予約されるリソース量及び伝送に関連する無線リンク品質にも関係付けられている場合がある。UE間で用いられる無線リソースの競合の結果として、特定のリンクにより多くのリソースが提供されるほど、その他のリンクに残されたリソースが少なくなるという、無線リンクの相互依存特性が生じる。UEあたりの5GSブリッジスループット能力がそのように俊敏であるため、トラフィック負荷に従って5GSブリッジ性能を調整し、その性能を最適化することが可能になる。
【0021】
無線通信において、伝送はスロット化される。無線媒体は、時間次元において、フレームと呼ばれる複数の要素に分割される。フレーム自体は、スロットから構成される。スロットは、スケジューラと呼ばれる機能によって、QoS要件(通常、遅延、帯域幅、パケット誤り率)、パケット待機時間、所望の公平性などの様々な要因に依存して、受信データに割り当てられる。伝送の開始は、スロットの開始で始まる。このため、スケジューラの決定が何であれ、伝送機会(TxOp)は別個であり、受信パケットは、無線媒体にアクセスする前に、少なくとも次のTxOpまで待機しなくてはならない。
【0022】
このため、TxOpはジッターを発生させる。ジッターは通常、システムが許容できる伝送遅延に含まれる。タイムセンシティブトラフィック(TSC)の場合、このジッターは、出力にリーキーバケットを実装させることで吸収することができるが、最大ジッターに対応する遅延と引き換えになる。
【0023】
TSNシステムにおいて、CNCは、決定論的なエンドツーエンド伝送時間を有することを目的として、全てのネットワークデバイスにおいて異なるフローをスケジューリングする。この目的のため、CNCは、データ経路に沿ってネットワークデバイスによって生じる遅延に関する厳密な情報を持つ必要がある。ネットワークデバイスが5GSブリッジである場合、TxOp粒度が、5GSブリッジがアドバタイズする最大遅延に含まれる。これは、保守的な手法であり、5GSブリッジの実際の能力を利用しないことにつながる。
【0024】
無線伝送における2つの方向を多重化する方法は、従来の方式で2つ存在する。1つは、2つの方向を周波数で分離し(周波数分割複信(FDD))、一方の方向(例えば、アップリンクUL)に専用のスペクトルチャンクと、他方の方向であるダウンリンク(DL)に専用の別のスペクトルチャンクとを持たせることである。FDDモードでは、UL及びDL伝送は、時間において同時に発生する場合がある。別の可能性は、2つの方向を時間で分離することである(時分割複信(TDD))。TDDモードにおいて、フレーム内のスロットは、UL又はDLのいずれかに割り当てられる。このため、UL及びDLは同時に発生することはなく、5GSブリッジの伝送遅延を計算するときに考慮されるTxOpに更なる遅延が発生する。
【0025】
5Gシステムにおいて、スケジューラが、緊急であり、到着したばかりであるとみなされるデータ要素を送信するために、データフローに既に割り当てられたスロットを最後の時間に先取りし、その伝送遅延を、先取りされたデータフローの再送信と引き換えにして最小化することが可能である。しかしながら、この機構は、いくつかの理由から、TSNシナリオにうまく適合されていない。この機構は、DLにおいては良好に機能するが、ULでははるかに効率が低い。なぜなら、基地局におけるスケジューラが、UE側におけるデータ要素の到着をまず認識しなくてはならないためである。そして、TSNフローは通常周期的であり、先取りを頻繁にかつ定期的に行うことにより、残りのトラフィックの性能が低下することになる。トラフィックの大部分がTSCである場合、先取りするリソースはほとんど残っていない。別の理由は、TSN環境における重要なメトリックが、決定論的で(時間において安定した)、制限され、制御された伝送遅延を持つことである。TSNとの関連では、予測可能な無線スケジューラにおいて割り当てポリシーを有した方が良いようである。
【0026】
5G TDDモードは、UL/DL分割の観点で柔軟性をもたらし、トラフィック方向に依存してUL及びDLにおける無線リソースに動的に適合することを可能にする。しかしながら、これは干渉の発生と引き換えである。実際に、これは一般的に推奨され、いくつかのスペクトル規則は、所与の周波数帯域において動作している基地局が、時間において完全に同期され、共通のUL/DLパターンを用いることを義務付けている。TSNに関して、所与のUL/DLパターンを選択する柔軟性が5GSブリッジに存在すると仮定すると、問題は、UL/DLパターンの選択が5GSブリッジ遅延性能に影響を有することを考慮して、所与のトラフィックに関して性能を最適化するためにこれをどのように選択するかである。
【発明の概要】
【0027】
本発明は、添付の独立請求項によって定義される。本明細書に開示される概念の更なる特徴及び利点が以下の記載において示される。
【0028】
本開示は状況の改善を目的とする。
【0029】
このために、本開示は、タイムセンシティブネットワーク内の通信システムにおいてTSNフローをスケジューリングする方法であって、方法は中央ネットワーク構成エンティティにおいて実施され、
-内部時間制約を有する少なくとも1つのTSNブリッジから、伝送フレーム内の伝送機会の時間粒度に関する支援情報を取得することと、
-取得した支援情報に基づいて、複数のTSNフローの時系列を時間粒度まで計算することによって、TSNフローをスケジューリングすることと、
を含む、方法を説明する。
【0030】
方法によれば、TSNブリッジは、その伝送機会の時間粒度に関して支援情報を中央ネットワーク構成エンティティ(以後、CNC)に提供する。CNCは、異なるTSNのフローの時系列を計算するとき、この情報を考慮に入れる。
【0031】
例えば、支援情報によって、CNCが、時系列の潜在的セットについて、TSNブリッジの結果として得られる伝送遅延が何になるかを理解することが可能になる。結果として、CNCは、利用可能な伝送機会を全体として最大限に用いるために特に決定された時系列に従ってTSNフローをスケジューリングすることによって、TSNブリッジの伝送遅延を最適化するように構成することができる。
【0032】
一例において、TSNブリッジからの支援情報は、期間及びオフセットを含み、このオフセットは、中央ネットワーク構成エンティティ及びTSNブリッジに共通のクロックに関して定義される。
【0033】
そのような期間及びオフセットの組み合わせにより、CNCは、フレーム内の各スロットの時間枠を正確に知ることができる。結果として、CNCは、パケットの伝送遅延を最小限にするために、例えば、このパケットの到着をスロットの終了時間に向けてスケジューリングするとともに、このパケットの送信を次のスロットの開始時間の直後にスケジューリングすることができる。
【0034】
一例において、TSNブリッジからの支援情報は期間を含み、複数の指向性ポート対について、対応するオフセットを更に含む。このオフセットは、中央ネットワーク構成エンティティ及びTSNブリッジに共通のクロックに対して定義される。
【0035】
指向性ポート対ごとに区別されたオフセットを提供することによって、CNCは、所与のポート対を通るフローの方向に依存して、このポート対を通るフローのスケジューリングの様々なルールを用いることが可能になる。結果として、アップリンク通信及びダウンリンク通信の双方を最適化しながら、異なる優先度で扱うことができる。
【0036】
一例において、期間はスロット持続時間に対応し、オフセットはスロットの開始を示す。
【0037】
これにより、CNCは、僅か数個の値から、単純なモジュロ演算によって、各スロットの開始時間及び終了時間を容易に決定することが可能になる。結果として、支援情報を送信するためのネットワークリソース及びCNCにおける計算リソースが共同で最小になる。
【0038】
一例において、期間はスロット持続時間に対応し、第1のオフセットは、第1の伝送方向に静的に割り当てられた伝送機会の第1のグループの開始を示し、第2のオフセットは、第2の伝送方向に静的に割り当てられた伝送機会の第2のグループの開始を示す。
【0039】
そのような例において、各スロットがそれぞれ対応する伝送方向に静的に割り当てられた2つの部分を含むフレーム構造について、CNCは、3つのみの値に限定された簡潔な支援情報のみに基づいて、パケット到着時間、及び逆に、パケット送信時間を首尾よくかつ最適にスケジューリングする時期を容易に決定することができる。
【0040】
一例において、TSNブリッジからの支援情報は、スロット内の、第1の伝送方向と第2の伝送方向の各伝送機会の割り当てのインジケーションを更に含む。
【0041】
この例においては、支援情報により、CNCが、フレームの1つ以上のスロット内の伝送機会の性質の再分割と無関係に、2方向伝送を最適にスケジューリングすることが可能になるという点で、ロバストに設計される。
【0042】
一例において、インジケーションは、複数の指向性ポート対についての、スロット内の各伝送機会の利用可能性ステータスの対応するビットマップを含む。
【0043】
利用可能性ステータスのそれぞれが単一のビットに符号化されるビットマップは、各伝送機会が所与の指向性ポート対について利用可能であるか否かをCNCに通知する単純で効率的な方式である。
【0044】
結果として、CNCは、指向性ポート対ごとに、フローがこの指向性ポート対に利用可能な伝送機会においてのみスケジューリングされる時系列を計算することができる。結果として、そのような計算された時系列は、伝送機会ごとにアップリンクトラフィックが可能にされるか又はダウンリンクトラフィックが可能にされるかの観点で、フレーム構造に関係する詳細がCNCに提供されない場合であっても、フレーム構造を遵守することができる。したがって、パケットは、TSNブリッジにおいて、スケジュールに従って最適な時間に、効率的に送信及び受信することができる。結果として、TSNブリッジを通じた遅延が正確に管理される。
【0045】
一例において、インジケーションは、
-所与の伝送方向についての、スロット内の各伝送機会の利用可能性ステータスの複数のビットマップであって、ビットマップは所定の可能性のあるスロット構造に対応する、複数のビットマップと、
-複数の指向性ポート対についての、複数のビットマップのうちの特定のビットマップへの対応するインデックスと、
を含む。
【0046】
結果として、特に、少数の異なるフレーム構造が複数の指向性ポート対によって共有されるシナリオにおいて、TSNブリッジによってCNCに送信される支援情報の全体量が、前者の例よりも最小化される。
【0047】
一例において、TSNブリッジからの支援情報は、
-各伝送機会の対応する性質のインジケーションであって、この各性質は、柔軟性を有するか又は固定であり、
-柔軟性を有する性質は、第1の伝送方向及び第2の伝送方向についての柔軟性を有する使用に関連付けられ、
-固定の性質は、第1の伝送方向及び第2の伝送方向間の1つのみの伝送方向についての固定の使用に関連付けられる、インジケーションと、
-複数の指向性ポート対についての、第1の伝送方向及び第2の伝送方向間の対応する伝送方向のインジケーションと、
を更に含む。
【0048】
これにより、いくつかの伝送機会が柔軟性を有する、すなわち、TSNブリッジにおけるフレーム構造の記述において、アップリンク伝送にもダウンリンク伝送にも強制的に専用にされていないが、実際は、最後の瞬間に基地局よってアップリンク伝送又はダウンリンク伝送のいずれかに割り当てられる特定のフレーム構造を考慮する場合であっても、伝送遅延の最適化が可能になる。
【0049】
本開示は、他の態様において、
-上記の通信システム、
-上記の通信システムの中央ネットワーク構成エンティティ、
-処理ユニットによって実行されると、処理ユニットに、本明細書に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読ストレージ媒体、
-処理ユニットがアクセス可能であるとともに、処理ユニットによって実行されると、処理ユニットに、本明細書に記載の方法を実行させる命令の1つ以上の記憶されたシーケンスを含むコンピュータプログラム、及び、
-メモリに動作可能に接続された処理ユニットを備える、本明細書に記載の方法を実行するように構成された処理回路、
についても記載する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】従来技術から既知の、3GPP TS23.501規格による論理TSNブリッジとして機能する5Gシステムを示す図である。
【
図2】従来技術から既知の5GSブリッジの汎用モデルを示す図である。
【
図3】従来技術によるTSNフローのスケジューリングと、スロットレベルにおける時間位置合わせが行われる、本発明の例示的な実施形態によるTSNフローのスケジューリングとの差を伝送フレームに関して示す図である。
【
図3a】従来技術によるTSNフローのスケジューリングと、スロットレベルにおける時間位置合わせが行われる、本発明の例示的な実施形態によるTSNフローのスケジューリングとの差を伝送フレームに関して示す図である。
【
図3b】従来技術によるTSNフローのスケジューリングと、スロットレベルにおける時間位置合わせが行われる、本発明の例示的な実施形態によるTSNフローのスケジューリングとの差を伝送フレームに関して示す図である。
【
図4】従来技術によるTSNフローのスケジューリングと、本発明の例示的な実施形態によるTSNフローのスケジューリングとの差を、単純なUL/DL TDDフレーム構造を有する伝送フレームに関して示す図である。
【
図4a】従来技術によるTSNフローのスケジューリングと、本発明の例示的な実施形態によるTSNフローのスケジューリングとの差を、単純なUL/DL TDDフレーム構造を有する伝送フレームに関して示す図である。
【
図4b】従来技術によるTSNフローのスケジューリングと、本発明の例示的な実施形態によるTSNフローのスケジューリングとの差を、単純なUL/DL TDDフレーム構造を有する伝送フレームに関して示す図である。
【
図5】本発明の例示的な実施形態による、単純なUL/DL TDDフレーム構造を有する伝送フレームの場合にTSNブリッジによって送信される支援情報の性質を示す図である。
【
図6】本発明の例示的な実施形態による、柔軟なUL/DL TDDフレーム構造を有する伝送フレームの場合にTSNブリッジによって送信される支援情報の性質を示す図である。
【
図7】本発明の例示的な実施形態による、UL/DL/F TDDフレーム構造を有する伝送フレームの場合にTSNブリッジによって送信される支援情報の性質を示す図であり、「F」は柔軟性を有する性質の伝送機会を指す。
【
図8】本発明の例示的な実施形態による、支援情報の例示的な性質として、伝送機会の記述を、指向性ポート対に関連する情報と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本開示は、タイムセンシティブネットワーク内の通信システムにおけるTSNフローをスケジューリングする方法を記述する。
【0052】
本方法は、中央ネットワーク構成エンティティにおいて実施される。
【0053】
本方法は、
-内部時間制約を有する少なくとも1つのTSNブリッジから、伝送機会の時間粒度に関する支援情報を取得することと、
-取得した支援情報に基づいて、上記TSNフローの時系列を上記時間粒度まで計算することによって、複数のTSNフローをスケジューリングすることと、
を含む。
【0054】
本方法は、例えば時分割伝送媒体を用いることができるため、内部時間制約を有する任意のブリッジに適用可能である。支援情報が取得される、内部時間制約を有するそのようなブリッジは、本明細書全体を通じて、「時間制約TSNブリッジ」と呼ぶ。そのようなブリッジの例は、5GSブリッジとも呼ばれるTSNブリッジとして機能する5Gシステムである。この場合、伝送媒体は無線媒体である。以後、時間制約TSNブリッジの伝送媒体の多岐にわたる可能な時分割を考慮して、様々な例示的な実施形態を説明する。当然ながら、本方法は、複数のTSNフローをスケジューリングする共通の目的で、同様に内部時間制約を有する場合もあり、又は反対にこれが欠如している場合もある追加のTSNブリッジから追加の支援情報を取得することを排除しない。実際に、タイムセンシティブネットワークは、様々なサブネットワーク及び様々なTSNブリッジを含む場合があり、そのうちの1つ、いくつか又は全てが内部時間制約を有する場合がある。
【0055】
伝送媒体の1つの可能な時分割を
図3に示す。フレーム31は大きなスケールである。各フレームは、複数のスロット32に分割することができ、各スロットは、最終的に複数の伝送機会(TxOp)33に分割される。5GSブリッジの場合、5GSは、スロット形成のためにいくつかの数値規定を定めている。一般的な例(6GHz未満の周波数)では、フレーム持続時間は約10msであり、スロット持続時間は1msであるため、伝送機会持続時間は約140μsとなる。50Mbit/sのスループットを考慮すると、1回の伝送機会で約800オクテットのデータを送信することができる。
【0056】
CNCに関連する支援情報を形成する場合がある時間制約TSNブリッジからのデータの性質及び深度は、目下の伝送フレームの構造に依存して変動する場合がある。
【0057】
さらに、少なくとも1つのTSNブリッジにおける遅延の最適化に鑑みてCNCにおける支援情報を考慮に入れるとの点で、従来技術を上回る改善の機会も、以下に基づいて可変である。
-目下の伝送フレームの構造、及び
-TSNブリッジによってCNCに送信される支援情報の性質及び深度。
【0058】
図3に示す伝送媒体の可能性のある時分割の場合、基地局における、当該技術分野において既知の一般的なリソース配分は、次のスロットのスケジューリングを定義することである。これは、
図3aに示すように、スロットn中に到着する全てのパケット34、35が、スロットn+1においてより早く送信されることを意味する。
【0059】
現行技術では、CNCは、TSNブリッジによって提供される、TSNブリッジの独立遅延及び依存遅延を検討して、そのTSNスケジューリングを計算する。
【0060】
依存遅延は、負荷依存の遅延の一部である。依存遅延Ddepは、例えば、伝送媒体が無線媒体である場合、所与の無線条件及び所与の負荷を仮定して、1つのスロットにおいて利用可能な平均スループットから計算することができる。
【0061】
独立遅延は負荷から独立し、現行技術では、スロット持続時間を含む。このため、時間制約TSNブリッジによってアドバタイズされたこの独立遅延D
indは、通常、式(1)によって定義される。
【数1】
ここで、C及びmarginは共に定数値を有し、T
pは、
図3の例で表されるように、スロットの全持続時間を意味する。
【0062】
換言すれば、
図3aによってわかるように、現行技術では、パケットの到着時間と送信時間との間隔として定義されるパケットの実際の伝送時間(TxDelay)36は、常に、スロットの全持続時間よりも長い。
【0063】
図3bに示すように、実際の伝送時間TxDelay36を低減するためには、所与のスロット内のパケット到着時間を、次のスロットの開始に近づけてシフトさせることが可能であるという利点が存在する。
【0064】
これを行うためには、この例では、CNCは、各ネットワークデバイスにおいてパケットの伝送時間を計算するとき、TSNブリッジのスロット化をより効率的に考慮に入れる必要がある。
【0065】
これに関して、CNCが、時間制約TSNブリッジの独立遅延を、全スロット持続時間よりも場合によっては短いものとみなすことが可能となるためには、CNCが、上記で定義したような全スロット持続時間Tpだけでなく、TSNブリッジからのより具体的な情報にもアクセスを有することが必要である。
【0066】
このより具体的な情報は、少なくとも、伝送フレーム内の伝送機会の時間粒度に関する。
【0067】
このため、
図3bに示すスロットレベルの位置合わせの場合、時間制約TSNブリッジは、例えば以下のインジケーションを含むことができる支援情報をCNCに提供する。
-TSNブリッジごと:既に定義したように、スロットの持続時間に対応する伝送期間T
p、及び、
-同様にTSNブリッジごと:TSNブリッジ及びCNCに共通のクロックに対し相対的な、スロットの開始に対応するオフセットT
o。
【0068】
この例によれば、支援情報Tp及びToは、全体としてTSNブリッジに関連付けられた値である。換言すれば、Tp及びToは、この例において、流入及び/又は流出ポートとして用いることができるTSNブリッジの全てのポート組み合わせに共通の値である。
【0069】
この支援情報を用いて、TSNブリッジによってCNCにアドバタイズされる独立遅延は、式(2)のように変換することができる。
【数2】
【0070】
結果として、スロットの開始をマーキングするオフセットTo及び2つの連続スロットの開始間の時間Tpを知ることによって、CNCは、各スロット内の伝送機会間を区別するTSNフローの時系列を計算することができる。したがって、現行技術と対照的に、そのような時系列は、伝送フレーム内のスロットの時間粒度よりも単純ではなく厳密な時間粒度まで計算される。例えば、パケットの到着時間は所与のスロットの終了(したがって、スロット内の遅い伝送機会)に向けてシフトすることができる一方で、上記パケットの後続の送信時間は、次のスロットの開始(したがって、そのスロット内の早い伝送機会)にスケジューリングすることができる。
【0071】
したがって、結果として得られる伝送遅延は、スロットの全持続時間よりも小さくすることができる。
【0072】
スロットレベルにおける時間位置合わせを用いる上記の例において、支援情報は、各スロットの内部組成に関するインジケーションを含む必要がなく、このため、これをCNCから隠すことができる。
【0073】
しかしながら、支援情報の一部として、各スロットの内部組成に関するインジケーションをCNCに提供することにより、CNCにおける独立遅延の推定を更に改善することができる。
【0074】
この態様を例証するために、これ以降において、別の例を説明する。
【0075】
この例において、TSNブリッジは、時分割複信(TDD)モードにおいて動作しているとみなされる。これは、各スロットを、
-アップリンク伝送モードに使用可能な伝送機会のセット(UL TxOp)、及び
-ダウンリンク伝送モードに使用可能な伝送機会の別のセット(DL TxOp)、
のパターンとして記述することができることを意味する。
【0076】
静的UL/DL分割を仮定して、そのようなフレーミングは、
図4に示すようなものとすることができる。これは、UL/DLパターンが経時的に一定であることを意味し、期間T
pはスロット持続時間に対応し、UL TxOp及びDL TxOpは全く又はほとんどインタリーブされない。
【0077】
既知のシナリオにおいて、基地局におけるスケジューラは、現在のスロットにおいてパケットにリソースを配分することができる。別の既知のシナリオにおいて、周期的TSCトラフィックを想定して、リソースのいくらかの事前配分が行われる。
【0078】
図4aに示すような現行技術では、伝送遅延36は、スロットの全持続時間よりも長く、所与のパケットについて、そのパケットの伝送を、そのパケットの伝送モード(アップリンク又はダウンリンク)に使用可能な伝送機会中にのみ行うことができるという追加の制約を有する。
【0079】
パケットの到着時間を伝送フレームのスロット化と可能な限り位置合わせするために、TSNブリッジからの支援情報を通じて、TxOpがデータフローの方向に依存して2つの異なる性質を有することをCNCに通知することが可能である。
【0080】
このため、そのような例において、TSNブリッジによってCNCに提供される支援情報は、スロットの全持続時間に対応する伝送期間T
pと、UL TxOpの開始及びDL TxOpの開始をそれぞれマーキングする2つのオフセット
【数3】
及び
【数4】
とを含むことができる。双方のオフセットはTSNブリッジ及びCNCに共通のクロックに対するものである。そのようなタイプの支援情報を
図5に示す。
【0081】
しかしながら、そのような支援情報は理想的でない。実際に、CNCは、伝送媒体の詳細、及びTSNブリッジの内部構成の詳細を認識する必要がない。特に、伝送機会の使用をアップリンク又はダウンリンクの使用として識別することは、原則的に、CNCが認識しない概念である。
【0082】
したがって、CNCに、データフロー方向に依存して時間制約が異なる可能性があることを警告するために、TSNブリッジにおいて、指向性ポート対あたりの時間オフセットを示すことが提案される。このため、オフセット
【数5】
が、指向性ポート対(P
i,P
j)に提供され、(P
iを流入ポート、P
jを流出ポートと仮定する)、オフセット
【数6】
が指向性ポート対(P
j,P
i)に提供される(P
jを流入ポート、P
iを流出ポートと仮定する)。このため、TSNブリッジは、DL及びULについて異なるオフセット値を提供することが可能である。
【0083】
TSNブリッジによってCNCに提供される支援情報は、この場合、以下のインジケーションを含むことができる。
-TSNブリッジごと:スロットの全持続時間に対応する伝送期間T
p、及び、
-そのようなブリッジの指向性ポート対(P
i,P
j)ごと:TSNブリッジ及びCNCに共通のクロックに対するオフセット
【数7】
51であり、ここで、P
iはポート対(P
i,P
j)の流入ポートであり、P
jは流出ポートである。
【0084】
T
p及び
【数8】
の値に基づいて、TSNブリッジによってCNCにアドバタイズされる独立遅延D
indは、式(2)において定義されるように計算することができるのに対し、依存遅延D
depは、伝送媒体が無線媒体である場合、式(3)からの所与の無線条件及び所与の負荷を仮定して、1つの方向について1つのスロットにおいて利用可能な平均スループットから、1つの方向(UL又はDL)について計算することができる。
【数9】
ここで、
dは、方向:UL又はDLを示し、
【数10】
は、上記スロット内の方向dについてのTxOpの数であり、
Caps
dは、所与の無線条件及び所与の負荷を仮定した、1つのTxOpのビットの容量であり、
T
pは、1つのスロットの全持続時間である。
現行技術では、遅延は、指向性ポート対ごとにTSNブリッジによってCNCに提供されることに留意されたい。
【0085】
これにより、CNCが、
図4bに示すように、例えば、所与のスロット内のUL TxOp中のパケットの到着34及び次のスロットの次のUL TxOp中のそのようなパケットの伝送をスケジューリングすることによって、TSNブリッジにおける伝送遅延36を最小化することが可能になる。逆に、反対のフローを検討すると、別のパケットの到着35を、所与のスロット内のDL TxOp中にスケジューリングすることができ、そのようなパケットの伝送を、次のスロットの次のDL TxOp中にスケジューリングすることができる。
【0086】
更に別の例において、スロット内のTxOpをUL及びDLに専用にする観点で、5G規格の柔軟性を利用することができる。
【0087】
【0088】
そのような例において、可能な限り多くのパケット到着時間を伝送フレームスロット化と位置合わせするために、CNCは、スロット内のTxOpの詳細を認識するべきである。
【0089】
時間制約TSNブリッジの指向性ポート対(Pi,Pj)ごとに、この指向性ポート対のために用いることができるTxOpに対応するビットマップをCNCに提供することが可能である。このため、ビットマップ{1,1,0,1,0,0}は、スロットが6つのTxOpを含むことを示すことができるが、第1、第2及び第4のみがポートPiからポートPjに向かうデータフローのために用いることができる。
【0090】
この例では、CNCに提供される支援情報は、以下のインジケーションを含むことができる。
-TSNブリッジごと:スロット持続時間に対応する伝送期間Tp、並びにTSNブリッジ及びCNCに共通のクロックに対し相対的な、スロットの開始に対応するオフセットTo51、並びに
-そのようなTSNブリッジの指向性ポート対(Pi,Pj)ごとの、スロット内の利用可能なTxOpのビットマップ62。
【0091】
通常、時間制約TSNブリッジは、このシナリオにおいて、DLについての1つのTxOpビットマップ62、及びULについての1つのTxOpビットマップ63を定義し、支援情報では、指向性ポート対ごとに一方又は他方を提供する。
【0092】
代替的に、指向性ポート対(Pi,Pj)ごとに、これらの可能なスロット構成のうちの一方を指し示す対応するインデックスと組み合わされた所与のTSNブリッジの複数の可能なスロット構成をCNCに提供することが可能である。
【0093】
そのような代替の結果として、CNCに提供される支援情報は、以下のインジケーションを含むことができる。
-TSNブリッジごとの、スロット持続時間に対応する伝送期間Tp、このTSNブリッジ及びCNCに共通のクロックに対し相対的な、スロットの開始に対応するオフセットTo、並びに異なる利用可能なTxOp構成に対応する異なるビットマップ、並びに、
-指向性ポート対(Pi,Pj)ごと:用いるTxOpビットマップへのインデックス。
【0094】
値Tp及びTpの値に基づいて、TSNブリッジによってCNCにアドバタイズされる独立遅延(Dind)は、式(2)において定義されたように計算することができる。
【0095】
全体としての支援情報に基づいて、独立遅延(D
dep)は、好ましくは、「瞬間」遅延として計算する、すなわち、伝送媒体が無線媒体である場合、所与の無線条件及び所与の負荷式(4)を仮定して、単一のTxOpのスループットから計算することができる。
【数11】
ここで、
dは、方向UL又はDLであり、
【数12】
は、1つのスロットにおけるTxOpの総数であり、
Caps
dは、1つのTxOpのビットの容量であり(所与の無線条件及び所与の負荷を仮定する)、
T
pは、1つのスロットの持続時間であり、
t
TxOpは、TxOpの持続時間である。
【0096】
5G規格の高い柔軟性を示す更に別の例を
図7に示す。
図4~
図6に示すようなUL/DLパターンの更なる変形として、
図7は、柔軟性TxOp(F)の概念を更に導入する。柔軟性を有するTxOpは、基地局において最後の瞬間にUL伝送又はDL伝送に割り当てられる。すなわち、スロット構造は、各スロットの開始の制御部において示すことができる。
【0097】
この実施形態において、フレーム構造は、依然として周期的とみなされ、すなわち、スロット構造は、時間中一定であるが、TSNブリッジは、いずれのスロットが柔軟性を有し得るかを示す。TSNブリッジは、各指向性ポート対の方向(UL又はDL)を更に示す。これらの情報を用いて、CNCは、所与のストリームセットの最良のUL/DL構造を決定することができる。
【0098】
このため、この例では、TSNによってCNCに提供される支援情報は、以下のインジケーションを含むことができる。
-TSNブリッジごとの、スロットの持続時間に対応する伝送期間Tp、並びに5GSブリッジ及びCNCに共通のクロックに対し相対的な、このスロットの開始をマーキングするオフセットTo61、TSNブリッジごとの、各値が例えば以下のように符号化される、上記スロット内のTxOpの構造を示す値のセット71、
0:TxOpが利用可能でない、
1:TxOpが方向d1(例えば、DL TxOp)について利用可能、
2:TxOpが方向d2(例えば、UL TxOp)について利用可能である。
3:TxOpが双方向について利用可能(柔軟性を有するTxOp)、並びに、
-指向性ポート対(Pi,Pj)ごとの、指向性ポート対の方向d1又はd2を示す値84。
【0099】
【0100】
スロット内のTxOpの構造を示す値のセットは、
図6の例におけるビットマップに類似した記述支援情報のタイプであるが、本例では、特に、特定のTxOpを、柔軟性を有するものとしてシグナリングすることができるようにするため、より多くの可能な値を許可するということが追加されている。
【0101】
当然ながら、所与のスロット内のTxOpの構造を記述する値の単一のセットを提供する代わりに、TSNブリッジは、値の複数の可能なセット81、82をCNCに提供することも可能である。加えて、CNCがそのようなTSNブリッジの任意の所与の指向性ポート対について値の1つの固有の関連するセットを選択することができるように、TSNブリッジは、これらの可能な値のセットに対応するものを示す、指向性ポートごとのインデックス83をCNCに提供することも可能である。
【0102】
図6の例と同様に、TSNブリッジによってCNCにアドバタイズされる独立遅延D
indは、式(2)において定義されるように計算することができるのに対し、依存遅延D
depは、好ましくは、伝送媒体が無線媒体である場合、所与の無線条件及び所与の負荷式(4)を仮定して、「瞬時」遅延として計算される、すなわち、1つのTxOpのスループットから計算される。
【0103】
加えて、任意選択で、CNCは、選択したスロット構造を、そのような支援情報を発行したTSNブリッジに戻して示すことができる。このインジケーションは、例えば、少なくとも、柔軟性を有するTxOpを記述する値の1つ又はいくつかのセットの形態とすることができる。符号化は、TSNブリッジによって支援情報の一部として以前に提供されたTxOpの構造を示す値のセットの符号化に類似することができる。
【0104】
上記の例のうちの任意のものにおいて遭遇し得る更なる可能性は、TSNブリッジが、いくつかの基地局により内部的に構築される場合があることである。このため、潜在的に、基地局ごとに1つの異なるTDDフレーム構成が存在することができる。
【0105】
しかしながら、反対に、例えば、伝送媒体が無線媒体である場合、又は基地局間干渉を制限するために、無線スペクトル規制ルールによって、所与のTSNブリッジにおける全ての基地局が同じTDDフレーム構成を有することが要求される場合がある。
【0106】
そのような固有の要件は、TSNブリッジによってCNCに示すこともできる。これを行うために、例えば、慣例により、支援情報の一部として、一意のTxOp記述を示すことができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイムセンシティブネットワーク(TSN)内の通信システムにおいてTSNフローをスケジューリングする方法であって、前記方法は、中央ネットワーク構成エンティティにおいて実施され、
内部時間制約を有する少なくとも1つのTSNブリッジから、
スロットで分割された伝送フレーム内の伝送機会の時間粒度に関する支援情報を取得すること
であって、前記スロットは前記伝送機会で分割されている、取得することと、
取得した前記支援情報に基づいて、
前記TSNブリッジを介して、前記スロットの全時間よりも小さい伝送遅延を考慮して、複数のTSNフローの時系列を前記時間粒度まで計算することによって、前記TSNフローをスケジューリングすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は、期間及びオフセットを含み、前記オフセットは、前記中央ネットワーク構成エンティティ及び前記TSNブリッジに共通のクロックに関して定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は期間を含み、複数の指向性ポート対について、対応するオフセットを更に含み、前記オフセットは、前記中央ネットワーク構成エンティティ及び前記TSNブリッジに共通のクロックに対して定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記期間はスロット持続時間に対応し、前記オフセットはスロットの開始を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記期間はスロット持続時間に対応し、第1のオフセットは、第1の伝送方向に静的に割り当てられた伝送機会の第1のグループの開始を示し、第2のオフセットは、第2の伝送方向に静的に割り当てられた伝送機会の第2のグループの開始を示す、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は、スロット内の、第1の伝送方向と第2の伝送方向との間の各伝送機会の割り当てのインジケーションを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記インジケーションは、複数の指向性ポート対についての、スロット内の各伝送機会の利用可能性ステータスの対応するビットマップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インジケーションは、
所与の伝送方向についての、スロット内の各伝送機会の利用可能性ステータスの複数のビットマップであって、ビットマップは所定の可能性のあるスロット構造に対応する、複数のビットマップと、
複数の指向性ポート対についての、前記複数のビットマップのうちの特定のビットマップへの対応するインデックスと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は、
各伝送機会に対応する性質のインジケーションであって、各前記性質は、柔軟性を有するか又は固定であり、
柔軟性を有する前記性質は、第1の伝送方向及び第2の伝送方向についての柔軟性を有する使用に関連付けられ、
固定の前記性質は、前記第1の伝送方向及び前記第2の伝送方向間の1つのみの伝送方向についての固定の使用に関連付けられる、インジケーションと、
複数の指向性ポート対についての、前記第1の伝送方向及び前記第2の伝送方向間の対応する伝送方向のインジケーションと、
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記TSNブリッジからの前記支援情報は、
値の複数のセットであって、値のセットは、所定の可能性のあるスロット構造に対応し、第1の伝送方向及び第2の伝送方向のそれぞれについて、スロット内の各伝送機会の利用可能性ステータスを示す、値の複数のセットと、
複数の指向性ポート対についての、前記値の複数のセットのうちの特定の値のセットに対応するインデックス、並びに前記第1の伝送方向及び前記第2の伝送方向間の対応する伝送方向のインジケーションと、
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
タイムセンシティブネットワーク(TSN)内の通信システムの中央ネットワーク構成エンティティであって、前記中央ネットワーク構成エンティティは、
内部時間制約を有する少なくとも1つのTSNブリッジから、
スロットで分割された伝送フレーム内の伝送機会の時間粒度に関する支援情報を取得し、
ただし、前記スロットは前記伝送機会で分割されており、
取得した前記支援情報に基づいて、
前記TSNブリッジを介して、前記スロットの全時間よりも小さい伝送遅延を考慮して、複数のTSNフローの時系列を前記時間粒度まで計算することによって、TSNフローをスケジューリングする、
ように構成される、中央ネットワーク構成エンティティ。
【請求項12】
タイムセンシティブネットワーク(TSN)内の通信システムであって、前記通信システムは、内部時間制約を有する少なくとも1つのTSNブリッジと、請求項11に記載の中央ネットワーク構成エンティティとを備える、通信システム。
【国際調査報告】