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特表2024-501100生物活性ポリエチレンコポリマー、ポリエチレン高分子およびそれらの関連する方法
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  • 特表-生物活性ポリエチレンコポリマー、ポリエチレン高分子およびそれらの関連する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】生物活性ポリエチレンコポリマー、ポリエチレン高分子およびそれらの関連する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20231228BHJP
   C07D 209/76 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08G61/08
C07D209/76
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524987
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 SG2020050622
(87)【国際公開番号】W WO2022093107
(87)【国際公開日】2022-05-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】テオ、ペイリ
(72)【発明者】
【氏名】槇尾 晴之
(72)【発明者】
【氏名】グオ、ジアイー
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】テオ、ユー チン
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA38
4J032CA68
4J032CB03
4J032CB12
4J032CC01
4J032CE03
4J032CG00
(57)【要約】
一般式(I)によって表される1つ以上の繰り返し単位および一般式(II)によって表される1つ以上の繰り返し単位を含むポリ(ノルボルネン)主鎖を有する生物活性ポリエチレンコポリマーが提供される。また、ポリエチレン高分子、前記生物活性ポリエチレンコポリマーを含む材料、前記生物活性ポリエチレンコポリマーを調製する方法および前記ポリエチレン高分子を調製する方法も提供される。
【化1】

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)によって表される1つ以上の繰り返し単位および一般式(II)によって表される1つ以上の繰り返し単位:
【化1】

(式中、
は、任意に置換されたアルキルであり;
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから選択され;
Lは、ヘテロアルキレンであり;
Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体からなる群から選択される生物活性部分を含み;
Yは、ポリエチレンまたはその一部を含み;並びに
およびZは、それぞれ独立して、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を含むポリ(ノルボルネン)主鎖を有する生物活性ポリエチレンコポリマー。
【請求項2】
Yが一般式(III):
【化2】

(式中、
Aは、NRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;並びに
nは、10から350である)によって表される、請求項1のコポリマー。
【請求項3】
nが20から250である、請求項2のコポリマー。
【請求項4】
Bが存在し、かつ一般式:
【化3】

(式中、
6a、R6b、R6cおよびR6dは、それぞれ独立して、C、CR、CR、N、NR、OまたはSからなる群から選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;並びに
7a、R7bおよびR7cは、=O、=S、-F、-Cl、-Br、-I、=CR、-CR、-OH、-SH、-NHまたは=NRとして任意に存在する)によって表される、請求項2または請求項3のコポリマー。
【請求項5】
Yが以下の一般式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc):
【化4】

(式中、
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
6aおよびR6dは、それぞれ独立して、C、CR、CR、N、NR、OまたはSからなる群から選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;
7aは、=O、=S、-F、-Cl、-Br、-I、=CR、-CR、-OH、-SH、-NHまたは=NRとして任意に存在し;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;並びに
nは、10から350である)から選択される、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項6】
Yが以下の一般式(IIId)、(IIIe)または(IIIf):
【化5】

(式中、
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;並びに
nは、10から350である)から選択される、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項7】
一般式(I)によって表される繰り返し単位が、コポリマーに対して1から100モル%の量である、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項8】
一般式(I)の分子量が、一般式(II)の分子量の30%を超えて一般式(II)の分子量と異ならない、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項9】
Lが20個の炭素原子から300個の炭素原子を有するヘテロアルキレンである、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項10】
Lがポリエチレングリコール(PEG)である、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項11】
Lが500と7,000との間の数平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)である、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項12】
がC-Cアルキルであり、かつRがC-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルまたはC-C20アルキルカルボニルアルキルから選択される、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項13】
がメチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはt-ブチルから独立して選択される直鎖または分枝C-Cアルキル置換基であり、かつRがメチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシルから独立して選択される直鎖または分枝C-C20アルキル置換基である、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項14】
およびZがともにCRであり、ここで、RおよびRが、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項15】
Xがペプチド配列、ラミニン由来ペプチド、インテグリン結合ペプチド、細胞透過性ペプチド、コラーゲン配列、コラーゲン模倣物、コラーゲン断片、ヘパラン硫酸、グリコサミノグリカン(GAG)およびそれらの誘導体からなる群から選択される、タンパク質、ペプチドまたは炭水化物を含む、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項16】
XがRGD、SRGDS、RGDS、A5G81(AGQWHRVSVRWGC)、SVVYGLR、(IRIK)、(IKKI)、DGEA、(PHypG)型配列、(PGHyp)型配列、(HypGP)型配列、(HypPG)型配列、(GHypP)型配列、(GPHyp)型配列、ヘパリンオリゴ糖DP8、DP10、DP12、DP14、DP16およびヒアルロン酸からなる群から選択される、前述の請求項のいずれか一項のコポリマー。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項の生物活性ポリエチレンコポリマーを調製する方法であって、該方法は:
一般式(IV)によって表される1つ以上の生物活性高分子を、触媒の存在下で一般式(V)によって表される1つ以上のポリエチレン高分子と重合させて、生物活性ポリエチレンコポリマー:
【化6】

(式中、
は、任意に置換されたアルキルであり;
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから選択され;
Lは、ヘテロアルキレンであり;
Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体からなる群から選択される生物活性部分を含み;
Yは、ポリエチレンまたはその一部を含み;並びに
およびZは、それぞれ独立して、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を得ることを含む、方法。
【請求項18】
触媒がルテニウム錯体を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
方法が開環メタセシス重合(ROMP)を含む、請求項17から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から16のいずれか一項のコポリマーを調製するための、一般式(VIII)によって表されるポリエチレン高分子:
【化7】

(式中、
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;
Aは、NRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;並びに
nは、10から350である)。
【請求項21】
請求項20のポリエチレン高分子を調製する方法であって、該方法は:
(i)一般式(IX):
【化8】

(式中、
は、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を有するジカルボン酸無水物を提供すること;および
(ii)一般式(IX)を有する前記ジカルボン酸無水物をアミンと反応させて、ポリエチレン高分子を得ること(ここで、アミンは、一般式(X):
【化9】

(式中、
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Aは、NRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;
nは、10から350である)によって表される)
を含む、方法。
【請求項22】
工程(ii)の前に、
(a-i)一般式(XIa)または(XIb):
【化10】

(式中、
6aおよびR6dは、それぞれ独立して、C、CR、CR、N、NR、OまたはSからなる群から選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;
7aは、=O、=S、-F、-Cl、-Br、-I、=CR、-CR、-OH、-SH、-NHまたは=NRとして任意に存在し;
およびRは、それぞれ独立して、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;
nは、10から350である)を有するポリエチレンを提供すること;および
(b-i)一般式(XIa)または(XIb)を有する前記ポリエチレンをジアミンHN-R-NHまたはアンモニアNHと反応させて、一般式(X)を有するアミンを得ること
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(ii)および工程(b-i)の少なくとも1つを、有機溶媒および/または塩基の存在下で実施する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
有機溶媒が芳香族溶媒を含み;かつ塩基が第三級アミンを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
薬剤における使用のための、請求項1から16のいずれか一項のコポリマーを含む材料。
【請求項26】
材料が消費者ケア製品、創傷包帯、皮膚足場、骨および骨髄オルガノイド足場、軟骨インプラント、関節インプラント並びに医療デバイスからなる群から選択される器具の一部である、請求項25に記載の材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広く、生物活性ポリエチレンコポリマー、ポリエチレン高分子および前記生物活性ポリエチレンコポリマーを含む材料に関する。本開示はまた、前記生物活性ポリエチレンコポリマー、前記ポリエチレン高分子および前記材料を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
長年にわたる生物の生物学および生理学のより良い理解は、生物系における既存の機能を増強するまたは置き換えるための代替材料を使用する可能性の評価につながってきた。
【0003】
しかしながら、生物系中でまたは生物系と望ましく機能するための機械的および生物学的要件の両方を満たす適切な材料を特定することは、しばしば困難である。
【0004】
これは、所望の生物学的属性を有する生物活性分子(例えばコラーゲン、キトサン等)が、しばしば、有用なバイオ医療用途について必要とされる機械的強度を欠くためである。例えば、そのような生物活性分子の多くは、非常に吸湿性であり、水分を吸収するとゲルとして存在し、これが、それらを、埋め込み型デバイスなどの重量を支えるバイオ医療用途における使用のためにはそれら自身では弱すぎるものとする。
【0005】
一方、機械的に優れた特徴を有する合成材料は、生物系との絶え間ない相互作用を必要とする用途において適切に使用するためにそれらについて必要とされる生物学的属性を欠く。
【0006】
特に興味深いのは、その高くはない生体適合性にもかかわらず、バイオ医療用途においてしばしば使用されるポリエチレン(PE)である。PEは、不活性、高い機械的強度、良好な熱安定性、良好な/容易な材料加工性、滅菌の容易さおよび低いコストなどの特性のため、消費者ケア製品および使い捨て製品(例えば、おむつおよび生理用品)、並びに医療デバイス(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)または架橋ポリエチレン(XPE)のいずれかの形態での、胆管ステント、胃腸ステント、関節形成術用インプラントおよび関節インプラント)において頻繁に使用される一般的なプラスチックである。
【0007】
しかしながら、ポリエチレンの使用に関連しては、いくつかの重大な問題がある。例えば、ポリエチレンインプラントは、人体中に挿入するとき、異物反応(FBR)を引き起こし得る。これは、移植部位の周囲で誘発される、炎症および他のタイプの望ましくない免疫応答をもたらし得、これは、炎症を鎮めるための免疫抑制剤の投与を必要とするであろう。免疫抑制剤の投与が失敗した場合においては、インプラントの除去が、継続する免疫抑制剤の投与と一緒に必要であり得る。ポリエチレン系胃腸ステントおよび胆管ステントにおいては、生物付着もまた、ステントの閉塞および再ステントについての必要性をもたらす問題であり得る。皮膚感作もまた、材料に対する摩擦の結果として、ポリエチレン系製品では一般的である。例えば、おむつ皮膚炎は、乳児が経験する最も一般的な皮膚の病気であり、深刻な場合においては潰瘍形成および膿疱形成につながり得る。失禁および低下した可動性などの理由のためおむつ着用を必要とする成人においては、皮膚炎はまた、しばしば敗血症につながる褥瘡をもたらし得る。さらに、合成ポリマーは、ほとんどの有機溶媒中に不溶であるだけでなく、そのままでは比較的不活性なポリマーでもあるため、ポリエチレンを扱うことも、困難である。
【0008】
結果として得られた材料が所望の生物学的特性および機械的特性の両方を達成し得ることを期待して、これらの異なる材料を組み合わせることもまた、困難である。これは、ペプチドおよび炭水化物などの生物活性分子が、前者が親水性であり、一方で後者が疎水性であるため、しばしばポリエチレンと適合しないためである。
【0009】
すなわち、2つの異なる材料を物理的に一緒にブレンドすることはしばしば、2つの相互に適合しない材料の相分離をもたらし、得られた全体の材料を効果のないものとする。
【0010】
それらの親水性における固有の違いは同様に、特にこれらの材料の分子量が比較的高いとき、これらの材料から生物活性ポリエチレンコポリマーを化学的に合成することを極めて困難にする。これは、これら2つの化学的に異なるタイプの材料を化学的に一緒に組み合わせようとするときに克服する必要があるさまざまな複雑な化学的ハードル(例えばポリエチレンの不活性のための低い反応性、副生成物の望まれない化学的浸出等)に加えてである。
【0011】
上記を考慮して、上述の問題に対処するかまたは少なくともそれらを改善する必要がある。特に、生物活性ポリエチレンコポリマー、ポリエチレン高分子、前記生物活性ポリエチレンコポリマーを含む材料および上述の問題に対処するかまたは少なくともそれらを改善する関連する方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0012】
概要
一面においては、一般式(I)によって表される1つ以上の(one or more)繰り返し単位および一般式(II)によって表される1つ以上の繰り返し単位:
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、
は、任意に置換されたアルキルであり;
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから選択され;
Lは、ヘテロアルキレンであり;
Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体からなる群から選択される生物活性部分を含み;
Yは、ポリエチレンまたはその一部を含み;並びに
およびZは、それぞれ独立して、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を含むポリ(ノルボルネン)主鎖を有する生物活性ポリエチレンコポリマーが提供される。
【0015】
一つの実施態様においては、Yは、一般式(III):
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、
Aは、NRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;並びに
nは、10から350である)によって表される。
【0018】
一つの実施態様においては、nは、20から250である。
【0019】
一つの実施態様においては、Bは、存在し、一般式:
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、
6a、R6b、R6cおよびR6dは、それぞれ独立して、C、CR、CR、N、NR、OまたはSからなる群から選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;並びに
7a、R7bおよびR7cは、=O、=S、-F、-Cl、-Br、-I、=CR、-CR、-OH、-SH、-NHまたは=NRとして任意に存在する)によって表される。
【0022】
一つの実施態様においては、Yは、以下の一般式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc):
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
6aおよびR6dは、それぞれ独立して、C、CR、CR、N、NR、OまたはSからなる群から選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;
7aは、=O、=S、-F、-Cl、-Br、-I、=CR、-CR、-OH、-SH、-NHまたは=NRとして任意に存在し;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;並びに
nは、10から350である)から選択される。
【0025】
一つの実施態様においては、Yは、以下の一般式(IIId)、(IIIe)または(IIIf):
【0026】
【化5】
【0027】
(式中、
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;並びに
nは、10から350である)から選択される。
【0028】
一つの実施態様においては、一般式(I)によって表される繰り返し単位は、コポリマーに対して1から100モル%の量である。
【0029】
一つの実施態様においては、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量の30%を超えて一般式(II)の分子量と異ならない。
【0030】
一つの実施態様においては、Lは、20個の炭素原子から300個の炭素原子を有するヘテロアルキレンである。
【0031】
一つの実施態様においては、Lは、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0032】
一つの実施態様においては、Lは、500と7,000との間の数平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)である。
【0033】
一つの実施態様においては、Rは、C-Cアルキルであり、かつRは、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルまたはC-C20アルキルカルボニルアルキルから選択される。
【0034】
一つの実施態様においては、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはt-ブチルから独立して選択される直鎖または分枝C-Cアルキル置換基であり、かつRは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシルから独立して選択される直鎖または分枝C-C20アルキル置換基である。
【0035】
一つの実施態様においては、ZおよびZは、ともにCRであり、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される。
【0036】
一つの実施態様においては、Xは、ペプチド配列、ラミニン由来ペプチド、インテグリン結合ペプチド、細胞透過性ペプチド、コラーゲン配列、コラーゲン模倣物、コラーゲン断片、ヘパラン硫酸(heparin sulfate)、グリコサミノグリカン(GAG)およびそれらの誘導体からなる群から選択される、タンパク質、ペプチドまたは炭水化物を含む。
【0037】
一つの実施態様においては、Xは、RGD、SRGDS、RGDS、A5G81(AGQWHRVSVRWGC)、SVVYGLR、(IRIK)、(IKKI)、DGEA、(PHypG)型配列、(PGHyp)型配列、(HypGP)型配列、(HypPG)型配列、(GHypP)型配列、(GPHyp)型配列、ヘパリンオリゴ糖DP8、DP10、DP12、DP14、DP16およびヒアルロン酸からなる群から選択される。
【0038】
一面においては、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーを調製する方法であって、該方法は:
一般式(IV)によって表される1つ以上の生物活性高分子を、触媒の存在下で一般式(V)によって表される1つ以上のポリエチレン高分子と重合させて、生物活性ポリエチレンコポリマー:
【0039】
【化6】
【0040】
(式中、
は、任意に置換されたアルキルであり;
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから選択され;
Lは、ヘテロアルキレンであり;
Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体からなる群から選択される生物活性部分を含み;
Yは、ポリエチレンまたはその一部を含み;並びに
およびZは、それぞれ独立して、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を得ることを含む、方法が提供される。
【0041】
一つの実施態様においては、触媒は、ルテニウム錯体を含む。
【0042】
一つの実施態様においては、方法は、開環メタセシス重合(ROMP)を含む。
【0043】
一面においては、本明細書において開示するコポリマーを調製するための、一般式(VIII)によって表されるポリエチレン高分子:
【0044】
【化7】
【0045】
(式中、
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;
Aは、NRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;並びに
nは、10から350である)が提供される。
【0046】
一面においては、本明細書において開示するポリエチレン高分子を調製する方法であって、該方法は:
(i)一般式(IX):
【0047】
【化8】
【0048】
(式中、Zは、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を有するジカルボン酸無水物を提供すること;および
(ii)一般式(IX)を有する前記ジカルボン酸無水物をアミンと反応させて、ポリエチレン高分子を得ること(ここで、アミンは、一般式(X):
【0049】
【化9】
【0050】
(式中、
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Aは、NRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;
nは、10から350である)によって表される)
を含む、方法が提供される。
【0051】
一つの実施態様においては、方法はさらに、工程(ii)の前に、
(a-i)一般式(XIa)または(XIb):
【0052】
【化10】
【0053】
(式中、
6aおよびR6dは、それぞれ独立して、C、CR、CR、N、NR、OまたはSからなる群から選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;
7aは、=O、=S、-F、-Cl、-Br、-I、=CR、-CR、-OH、-SH、-NHまたは=NRとして任意に存在し;
およびRは、それぞれ独立して、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;
nは、10から350である)を有するポリエチレンを提供すること;および
(b-i)一般式(XIa)または(XIb)を有する前記ポリエチレンをジアミンHN-R-NHまたはアンモニアNHと反応させて、一般式(X)を有するアミンを得ること
を含む。
【0054】
一つの実施態様においては、工程(ii)および工程(b-i)の少なくとも1つは、有機溶媒および/または塩基の存在下で実施する。
【0055】
一つの実施態様においては、有機溶媒は、芳香族溶媒を含み;塩基は、第三級アミンを含む。
【0056】
一面においては、薬剤における使用のための、本明細書において開示するコポリマーを含む材料が提供される。
【0057】
一つの実施態様においては、材料は、消費者ケア製品、創傷包帯、皮膚足場、骨および骨髄オルガノイド足場、軟骨インプラント、関節インプラント並びに医療デバイスからなる群から選択される器具の一部である。
【0058】
定義
本明細書において使用する用語「ポリマー」は、繰り返し単位を含む化学化合物を指し、重合のプロセスを通して作り出される。ポリマーを構成する単位は典型的には、モノマーおよび/またはマクロモノマーから誘導される。ポリマーは典型的には、多数の構成単位の繰り返しを含む。
【0059】
本明細書において使用する用語「モノマー」または「マクロモノマー」は、ポリマーを形成するためにそのような物質の1つ以上に共有結合し得る化学物質を指す。
【0060】
本明細書において使用する用語「生物活性」は、生物学的効果、好ましくは生きている生命体、組織、または細胞に対して望ましいまたは正の生物学的効果を有する特性を広く指す。
【0061】
本明細書において使用する用語「生体適合性」は、毒性反応、免疫反応、損傷などの有害な生理学的応答を実質的にまたは有意に引き出すことなく、生物系または生物系の一部と適合している特性を広く指す。そのような生物系または一部は、血液、細胞、組織、器官等を含む。
【0062】
用語「結合(bond)」は、化合物または分子中の原子間の結合(linkage)を指す。結合は、単結合、二重結合、または三重結合であり得る。
【0063】
以下の多くの置換基の定義において、「該基は末端基または架橋基であり得る」と述べられている。これは、該用語の使用が、基が末端基/部分である状況、並びに基が分子の2つの他の部分間のリンカーである状況を包含することを意図していることを意図している。一例として1つの炭素原子を有する「アルキル」という用語を使用すると、末端基として存在するときは、1つの炭素原子を有する「アルキル」という用語は、-CHを意味し得、架橋基として存在するときは、1つの炭素原子を有する「アルキル」という用語は、-CH-を意味し得る等が理解されるであろう。
【0064】
基または基の一部としての用語「アルキル」は、1から20個の炭素原子、1から10個の炭素原子、1から6個の炭素原子、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個の炭素原子を有する直鎖または分枝脂肪族炭化水素基を指す。適切な直鎖および分岐アルキル置換基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等を含む。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0065】
基または基の一部としての用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有し、鎖中に2から20個の炭素原子、2から10個の炭素原子、2から6個の炭素原子、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個の炭素原子を有する直鎖または分枝であり得る脂肪族炭化水素基を意味する。該基は、複数の二重結合を含有し得、各二重結合についての方向は、独立してEまたはZである。例示的なアルケニル基は、エテニル、ビニル、アリル、1-メチルビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテンチル、1,3-ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテンチル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ペンタジエニル、2,4-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、2-メチルペンテニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテンチル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル等を含むが、これらに限定されない。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0066】
基または基の一部としての用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有し、鎖中に2から20個の炭素原子、2から10個の炭素原子、2から6個の炭素原子、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個の炭素原子を有する直鎖または分枝であり得る脂肪族炭化水素基を意味する。該基は、複数の三重結合を含有し得る。例示的なアルキニル基は、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1-ブチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、5-ヘキシニル、1-ヘプチニル、2-ヘプチニル、6-ヘプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、7-オクチニル、1-ノニニル、2-ノニニル、8-ノニニル、1-デシニル、2-デシニル、9-デシニル等を含むが、これらに限定されない。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0067】
本明細書において使用する用語「ヘテロアルキレン」は、O、NR、Si、PまたはSから選択されるヘテロ原子で置き換えられた1つ以上の-CH-を有するアルキレンを指し、ここで、Rは、水素または本明細書において定義するアルキルである。用語「ヘテロアルキレン」は、直鎖状、分枝状または環状であり得、500個までの炭素原子を含有し得る。
【0068】
本明細書において使用する用語「アルコキシ」は、直鎖または分岐アルキルオキシ基を指す。例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ等を含む。
【0069】
本明細書において使用する用語「アルコキシアルキル」は、-R-O-R’ (式中、RおよびR’は、本明細書において定義するアルキルである)を含有する基を広く指すことを意図している。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0070】
本明細書において使用する用語「アルキルカルボニル」は、-R-C(=O)-(式中、Rは、本明細書において定義するアルキルである)を含有する基を広く指すことを意図している。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0071】
本明細書において使用する用語「アルキルカルボニルアルキル」は、-R-C(=O)-R’ (式中、RおよびR’は、本明細書において定義するアルキルである)を含有する基を広く指すことを意図している。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0072】
本明細書において使用する用語「カルボキシルアルキル」は、-C(=O)-O-R(式中、Rは、本明細書において定義するアルキルである)を含有する基を広く指すことを意図している。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0073】
本明細書において使用する用語「オキシカルボニルアルキル」は、-O-C(=O)-Rを含有する基を広く指すことを意図しており、ここで、Rは、本明細書において定義するアルキルである。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0074】
本明細書において使用する用語「アルキルカルボキシルアルキル」は、-R-C(=O)-O-R’ (式中、RおよびR’は、本明細書において定義するアルキルである)を含有する基を広く指すことを意図している。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0075】
本明細書において使用する用語「アルコキシカルボニルアルキル」は、-R-O-C(=O)-R’ (式中、RおよびR’は、本明細書において定義するアルキルである)を含有する基を広く指すことを意図している。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0076】
本明細書において使用する用語「オキシ」は、-O-を含有する基を広く指すことを意図している。
【0077】
本明細書において使用する用語「カルボニル」は、-C(=O)-を含有する基を広く指すことを意図している。
【0078】
本明細書において使用する用語「オキシカルボニル」は、-O-C(=O)-を含有する基を広く指すことを意図している。
【0079】
本明細書において使用する用語「カルボキシル」は、-C(=O)-O-R(式中、Rは、水素または有機基である)を含有する基を広く指すことを意図している。
【0080】
用語「ハロゲン」は、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素を表す。用語「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨードを表す。
【0081】
用語「アミン基」等は、-NR(式中、Rは、独立して水素または有機基である)を含有する基を広く指すことを意図している。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0082】
用語「アミド基」等は、-C(=O)NR(式中、Rは、独立して水素または有機基である)を含有する基を広く指すことを意図している。該基は、末端基または架橋基であり得る。
【0083】
本明細書において使用する用語「複素環」は、2つ以上の異なる種類の原子が結合して少なくとも1つの環を形成する構造を広く指す。例えば、複素環は、炭素原子並びに酸素(O)、窒素(N)または(NR)および硫黄(S)から選択される少なくとも別の原子(すなわちヘテロ原子)によって形成され得、ここで、Rは独立して、水素または有機基である。該用語はまた、飽和および不飽和の5員環、並びに飽和および不飽和の6員環も含むが、これらに限定されない。複素環構造を有する基の例は、フラン、チオフェン、1H-ピロール、2H-ピロール、1-ピロリン、2-ピロリン、3-ピロリン、1-ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、4-イミダゾリン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、二置換1、2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、1,3-ジオキソラン、1,2-オキサチオラン、1,3-オキサチオラン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、2H-ピラン、4H-ピラン、2-ピロン、4-ピロン、1,4-ジオキシン、2H-チオピラン、4H-チオピラン、テトラヒドロピラン、チアン、ピペリジン、1,4-ジオキサン、1,2-ジチアン、1,3-ジチアン、1,4-ジチアン、1,3,5-トリチアン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン等を含むが、これらに限定されない。
【0084】
用語「任意に置換された」は、化学構造または部分を説明するために使用するとき、その水素原子の1つ以上が、アルコール、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニル、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル)、アルキニル、アルキルカルボニルオキシ(-OC(O)アルキル)、アミド(-C(O)NH-アルキル-または-アルキルNHC(O)アルキル)、アミン(アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノなどの)、アリール、アリールオキシ、アゾ、カルバモイル(-NHC(O)O-アルキル-または-OC(O)NH-アルキル)、カルバミル(例えば、CONH、並びにCONH-アルキル、CONH-アリール、およびCONH-アリールアルキル)、カルボキシル、カルボン酸、シアノ、エステル、エーテル(例えば、メトキシ、エトキシ)、ハロ、ハロアルキル(例えば、-CCl、-CF、-C(CF)、ヘテロアルキル、イソシアネート、イソチオシアネート、ニトリル、ニトロ、ホスホジエステル、スルフィド、スルホンアミド(例えば、SONH)、スルホン、スルホニル(アルキルスルホニル、アリールスルホニルおよびアリールアルキルスルホニルを含む)、スルホキシド、チオール(例えば、スルフヒドリル、チオエーテル)またはウレア(-NHCONH-アルキル-)などのの化学部分または官能基で任意に置換されている化学構造または部分を指す。
【0085】
本明細書において使用する用語「マイクロ」は、約1ミクロンから約1000ミクロンまでの寸法を含むように広く解釈されるべきである。
【0086】
本明細書において使用する用語「ナノ」は、約1000nm未満、約500nm未満、約100nm未満または約50nm未満の寸法を含むように広く解釈されるべきである。
【0087】
この説明において使用する用語「結合(coupled)」または「接続(connected)」は、他に述べない限り、直接接続または1つ以上の中間手段を通した接続の両方をカバーすることを意図している。
【0088】
2つの要素を指すときに本明細書において使用する用語「関連する」は、2つの要素間の広範な関係を指す。該関係は、物理的、化学的または生物学的関係を含むが、これらに限定されない。例えば、要素Aが要素Bと関連しているとき、要素AおよびBは互いに直接または間接的に付着し(attached)得るか、または要素Aは要素Bを含有し得るか若しくはその逆である。
【0089】
2つの要素を指すときに本明細書において使用する用語「隣接する」は、1つの要素が別の要素に近接していることを指し、互いに接触する要素であり得るが、これに限定されず、または1つ以上の、それらの間に配置されるさらなる要素によって分離されている要素をさらに含み得る。
【0090】
用語「および/または」、例えば、「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味またはいずれかの意味についての明確な支持を提供するものと解されるべきである。
【0091】
さらに、本明細書における説明においては、単語「実質的に」は、使用するときはいつでも、「完全に(entirely)」または「完全に(completely)」等を含むが、これらに制限されないと理解される。さらに、「含む(comprising)」、「含む(comprise)」などの用語は、使用するときはいつでも、それらが、明示的に列挙されていない他の構成要素に加えて、そのような用語の後に列挙される要素/構成要素を広く含むという点で、非制限的な記述言語であることを意図している。例えば、「含む(comprising)」を使用するとき、「1つの」特徴への言及はまた、その特徴の「少なくとも1つの」への言及であることも意図している。「からなる(consisting)」、「からなる(consist)」などの用語は、適切な文脈においては、「含む(comprising)」、「含む(comprise)」などの用語のサブセットとして見なされ得る。従って、「含む(comprising)」、「含む(comprise)」などの用語を使用する、本明細書において開示する実施態様においては、これらの実施態様は、「からなる(consisting)」、「からなる(consist)」などの用語を使用する、対応する実施態様についての教示を提供することが理解されるであろう。さらに、「約」、「およそ」などの用語は、使用するときはいつでも、典型的には、合理的な変動、例えば、開示する値の+/-5%の変動、または開示する値の4%の変動、または開示する値の3%の変動、開示する値の2%の変動または開示する値の1%の変動を意味する。
【0092】
さらに、本明細書における説明においては、特定の値が、範囲中で開示され得る。範囲の終点を示す値は、好ましい範囲を例示することを意図している。範囲を説明するときはいつでも、その範囲は、その範囲内の個々の数値だけでなく、全ての可能な下位範囲をカバーし、教示することを意図している。すなわち、範囲の終点は、柔軟性のない制限として解釈されるべきではない。例えば、1%から5%の範囲の説明は、1%から2%、1%から3%、1%から4%、2%から3%等の下位範囲、並びに個別に、1%、2%、3%、4%、5%などのその範囲内の値を具体的に開示したことを意図している。範囲内の個々の数値はまた、整数、分数および小数も含むことが理解されるべきである。さらに、範囲を説明するときはいつでも、該範囲は、示された数値端点から2桁までの追加の小数点以下または有効数字(適切な場合)の値をカバーし、教示することも意図している。例えば、1%から5%の範囲の説明は、1.00%から5.00%およびまた1.0%から5.0%の範囲並びに該範囲にまたがる全てのそれらの中間値(1.01%、1.02%...4.98%、4.99%、5.00%および1.1%、1.2%...4.8%、4.9%、5.0%等)を具体的に開示したことを意図している。上記の特定の開示の意図は、範囲の任意の深さ/幅に適用可能である。
【0093】
さらに、いくつかの実施態様を説明するとき、本開示は、方法および/またはプロセスを特定の一連の工程として開示している場合がある。しかしながら、他に必要とされない限り、方法またはプロセスは、開示した特定の一連の工程に限定されるべきではないことが理解されるであろう。他の一連の工程も、可能であり得る。本明細書において開示する工程の特定の順序は、過度の制限として解釈されるべきではない。他に必要とされない限り、本明細書において開示する方法および/またはプロセスは、記載する順序で行う工程に限定されるべきではない。工程の順序は、変更し得、依然として本開示の範囲内にある。
【0094】
さらに、本開示が、本明細書において論じる特徴(features)/特徴(characteristics)の1つ以上を有する実施態様を提供する一方で、これらの特徴(features)/特徴(characteristics)の1つ以上はまた、他の代替実施態様においては放棄し得、本開示は、そのような放棄およびこれらの関連する代替実施態様についての支持を提供することが理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0095】
実施態様の説明
生物活性ポリエチレンコポリマー、該生物活性ポリエチレンコポリマーを調製するためのポリエチレン高分子、該生物活性ポリエチレンコポリマーを含む材料および関連する方法の例示的で非限定的な実施態様を、以下に開示する。
【0096】
生物活性ポリエチレンコポリマー
一般式(I)によって表される1つ以上の繰り返し単位および一般式(II)によって表される1つ以上の繰り返し単位:
【0097】
【化11】
【0098】
(式中、
は、任意に置換されたアルキルであり;
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから選択され;
Lは、ヘテロアルキレンであり;
Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体からなる群から選択される生物活性部分を含み;
Yは、ポリエチレンまたはその一部を含み;並びに
およびZは、それぞれ独立して、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を含むポリ(ノルボルネン)主鎖を有する生物活性ポリエチレンコポリマーが提供される。
【0099】
さまざまな実施態様において、一般式(I)によって表される繰り返し単位および/または部分Xは、生物活性、生体適合性および/または生分解性を有する。さまざまな実施態様において、一般式(II)によって表される繰り返し単位および/または部分Yは、そのままでまたはベース材料への添加剤として使用したときに、良好な機械的強度/硬度/ベースポリオレフィン材料との相溶性/混和性を有する。さまざまな実施態様において、一般式(II)によって表される繰り返し単位および/または部分Yは、一般式(I)によって表される繰り返し単位および/または部分Xよりも高い機械的強度を有する。有利なことに、生物活性ポリエチレンコポリマーにおける一般式(I)および(II)によって表される繰り返し単位の存在は、該コポリマーに生物活性および機械的強度の両方を付与し、機械的に強い生物活性コポリマーにつながる。さまざまな実施態様において、該コポリマーはまた、生体適合性であり得る。従って、さまざまな実施態様において、該コポリマーは、生体材料として分類することができる。有利なことに、ポリエチレン側鎖の存在のため、生物活性ポリエチレンコポリマーは、純粋なコラーゲンなどの従来の生体分子または生物材料よりも高い熱安定性を有する。さらにより有利なことに、生物活性ポリエチレンコポリマーの熱安定性は、該コポリマーの実施態様が高温での加工、または200℃を超える溶融押出およびメルトブローなどの過酷な材料加工についてさえ適することを可能とし、該コポリマーをバイオ医療デバイスまたはおむつの重要な構成要素である不織繊維/布(fabrics)などの用途における使用について理想的/魅力的なものとする。さまざまな実施態様において、一般式(II)によって表される繰り返し単位および/または部分Yは、実質的にまたは完全に非生物活性であるか、または少なくとも一般式(I)によって表される繰り返し単位および/または生物活性部分Xよりも生物活性が低い。
【0100】
さまざまな実施態様において、Lは、生物活性部分Xをポリ(ノルボルネン)主鎖に連結するポリマーリンカーである。有利なことに、Lは、生物活性部分XのサイズおよびY中に存在する合成ポリマー(すなわちポリエチレン)のサイズ/長さに基づいて、調整および/またはカスタマイズ可能であるように設計される。さまざまな実施態様において、コポリマーの物理的特性は、マクロモノマーまたはポリマー中のL(例えば、PEG鎖)の長さに依存して、変更するまたは調整することができる。ポリマーリンカーLの分子量および/または長さは、コポリマーが使用されることになる用途に依存して、生物活性部分XおよびYについて選択した合成ポリマー(すなわちポリエチレン)の分子量および/または長さに適するようにカスタマイズし得る。さまざまな実施態様において、Yの分子量は、約5,000以下である。例えば、創傷包帯およびおむつ用の不織布(cloth)などの高い強度を必要としない用途については、得られるコポリマーを、繊維製造のために中分子量のPEとブレンドするであろうから、5,000未満の分子量のPEを使用し得る。他の実施態様においては、Yの分子量は、約5,000を超える。例えば、コポリマーを、インプラント製造のために超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)とブレンドするであろう、軟骨および関節インプラントなどの高い機械的強度を必要とする用途については、Yの分子量は、5,000以上である。
【0101】
さまざまな実施態様において、Yは、一般式(III):
【0102】
【化12】
【0103】
(式中、
Aは、NRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;並びに
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基である)によって表される。
【0104】
さまざまな実施態様において、、Yは、一般式(III-1):
【0105】
【化13】
【0106】
(式中、
Aは、NまたはNRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;点線は、任意の化学結合を表す)によって表される。
【0107】
さまざまな実施態様において、AとBとの間の点線は、任意の第2の化学結合を表す。さまざまな実施態様において、BとRとの間の点線は、任意の第2の化学結合を表す。
【0108】
さまざまな実施態様において、元々のPE主鎖の炭素は、偶数である。
【0109】
さまざまな実施態様において、nは、約10から約350、約20から約250、または約25から約100である。さまざまな実施態様において、約10から約350の繰り返し単位(n)を有するPEは、出発材料としての使用について適している。さまざまな実施態様において、約20から約250の繰り返し単位(n)または約25から約100の繰り返し単位(n)を有するPEはさらに、マクロモノマー合成および重合における使用/取扱いについて適している。これらのnの範囲において、ポリエチレン(PE)は、マクロモノマーの合成および共重合中の十分な反応性を維持しながら、良好な機械的特性およびベースポリオレフィン材料との/への相溶性を有する。さまざまな実施態様において、nは、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約105、少なくとも約110、少なくとも約115、少なくとも約120、少なくとも約125、少なくとも約130、少なくとも約135、少なくとも約140、少なくとも約145、少なくとも約150、少なくとも約155、少なくとも約160、少なくとも約165、少なくとも約170、少なくとも約175、少なくとも約180、少なくとも約185、少なくとも約190、少なくとも約195、少なくとも約200、少なくとも約210、少なくとも約220、少なくとも約230、少なくとも約240、少なくとも約250、少なくとも約260、少なくとも約270、少なくとも約280、少なくとも約290、少なくとも約300、少なくとも約310、少なくとも約320、少なくとも約330、少なくとも約340、または少なくとも約350である。さまざまな実施態様において、nの値がポリマーまたはポリマー混合物中に存在する繰り返し単位の平均数を表すことが、当業者によって理解されるであろう。さまざまな実施態様において、nはまた、重合度も表す。
【0110】
さまざまな実施態様において、一般式(III-1)に、Aは存在するが、一方でBは存在しない。そのような実施態様においては、Yは、一般式(III-2):
【0111】
【化14】
【0112】
によって表される。
【0113】
さまざまな実施態様において、Aは、NまたはNRとして存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたC-C20アルキル、任意に置換されたC-C20アルケニルまたは任意に置換されたC-C20アルキニルから独立して選択される。さまざまな実施態様において、Aは、単結合を介してRに付着している。例えば、Aは、-NH-であり、-A-Rは、-NH-Rであり得る。さまざまな実施態様において、Aは、二重結合を介してRに付着している。例えば、Aは、-N=であり、-A=Rは、-N=Rであり得る。
【0114】
さまざまな実施態様において、Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として存在する。さまざまな実施態様において、少なくとも1つのNヘテロ原子を有する複素環はまた、環中の少なくとも1つのC原子が、NまたはNRから選択される1つの窒素含有置換基/基で置き換えられていることを意味するとも理解される。さまざまな実施態様において、Bは、N(またはNR)、OおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子で任意に置き換えられた、環中の3個までのC原子を有する、5員または6員の複素環として存在する。
【0115】
さまざまな実施態様において、Bは、以下の構造:
【0116】
【化15】
【0117】
(式中、
6a、R6b、R6cおよびR6dは、それぞれ独立して、C、CR、CR、N、NR、OまたはSからなる群から選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;並びに
7a、R7bおよびR7cは、=O、=S、-F、-Cl、-Br、-I、=CR、-CR、-OH、-SH、-NHまたは=NRとして任意に存在する)によって表される5員の複素環である。
【0118】
さまざまな実施態様において、R6aとR7a、R6bとR7b、およびR6cとR7cとの間の点線は、任意の単化学結合または二重化学結合を表す。さまざまな実施態様において、R6aは、単結合を介してR7aに付着し、R6bは、単結合を介してR7bに付着し、および/またはR6cは、単結合を介してR7cに付着する。例えば、R6aがCであり、R7aが-Brであるとき、そのときは、R6a7aは、C-Brである。さまざまな実施態様において、R6aは、二重結合を介してR7aに付着し、R6bは、二重結合を介してR7bに付着し、および/またはR6cは、二重結合を介してR7cに付着する。例えば、R6aがCであり、R7a=Oであるとき、そのときは、R6a7aは、C=Oである。
【0119】
さまざまな実施態様において、Bは、コハク酸イミド(またはピロリジン-2,5-ジオン)、チオコハク酸イミド(または5-チオキソピロリジン-2-オン)、ジチオコハク酸イミド(またはピロリジン-2,5-ジチオン)、ピロリジン、ピロール、ピラゾリジン、マレイミド(またはピロール-2,5-ジオン)、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾールおよびイミダゾールからなる群から選択される。
【0120】
さまざまな実施態様において、AおよびBの1つのみが、一般式(III)中に存在する。例えば、Aが一般式(III)中に存在するとき、Bは一般式(III)に存在せず、逆もまた同様である。
【0121】
さまざまな実施態様において、一般式(III)に、Bは存在するが、一方でAは存在しない。そのような実施態様においては、Yは、一般式(IIIa):
【0122】
【化16】
【0123】
によって表し得る。
【0124】
さまざまな実施態様において、一般式(III)に、Aは存在するが、一方でBは存在しない。そのような実施態様においては、Yは、一般式(IIIb):
【0125】
【化17】
【0126】
によって表し得る。
【0127】
さまざまな実施態様において、一般式(III)に、AおよびBは、ともに存在しない。そのような実施態様においては、Yは、一般式(IIIc):
【0128】
【化18】
【0129】
によって表し得る。
【0130】
さまざまな実施態様において、Rは、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択される。さまざまな実施態様において、Rは、直鎖または分枝C-Cアルケニルである。例えば、Rは、エテニル、アリルまたはプロペニルであり得る。さまざまな実施態様において、Rは、直鎖または分枝C-Cアルキルである。例えば、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、またはイソプロピルであり得る。さまざまな実施態様において、Yが一般式(IIIc)によって表されるとき、Rは、メチルである。
【0131】
さまざまな実施態様において、Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基である。
【0132】
さまざまな実施態様において、Yは、以下の一般式(IIIg)、(IIIh)または(IIIi):
【0133】
【化19】
【0134】
(式中、nは、10から350である)から選択される。
【0135】
さまざまな実施態様において、Yは、以下の特性の1つ以上を含む:不活性;長い貯蔵寿命;機械的強度;耐衝撃性;熱安定性;弾性;弾性回復;滑らかさ;軽量;低毒性または無毒性;および親油性化合物/ポリマーへの混和性、相溶性または親和性。
【0136】
さまざまな実施態様において、Yは、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールが実質的にない。
【0137】
さまざまな実施態様において、一般式(II)の総分子量は、約50,000以下、約45,000以下、約40,000以下、約35,000以下、約30,000以下、約25,000以下、約20,000以下、約15,000以下または約10,000以下に保たれる。一般式(I)および(II)の総分子量が高すぎるとき、共重合が非効率になり得ることが理解されるであろう。
【0138】
さまざまな実施態様において、ポリマーリンカーLの分子量および/または長さは、一般式(I)によって表される繰り返し単位の全体の分子サイズが、一般式(II)によって表される繰り返し単位の分子サイズと同様である/同等であるように選択する。例えば、4,000の分子量を有するポリエチレンをYについての合成ポリマーの選択肢として選択し、約400から約500の分子量を有するペプチドを生物活性部分Xの選択肢として選択する場合、そのときは、Lは、約3,400の分子量を含むように設計し得る。さまざまな実施態様において、一般式(I)の分子量を一般式(II)の分子量に適合させるために調整されるのはLの長さであることが理解されるであろう。他の実施態様においては、ポリマーリンカーLの分子量および/または長さは、一般式(I)によって表される繰り返し単位の全体の分子サイズが、一般式(II)によって表される繰り返し単位の分子サイズと異なるように選択する。
【0139】
さまざまな実施態様において、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量と同等である/実質的に同様である。さまざまな実施態様において、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量の30%を超えて一般式(II)の分子量とは異ならない、またはその逆である。例えば、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量より最大で約30%多く若しくは最大で30%少なくあり得、またはその逆である。一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量の約30%を超えて、約25%を超えて、約20%を超えて、約15%を超えて、約10%を超えて、約5%を超えて、約4%を超えて、約3%を超えて、約2%を超えて、若しくは約1%を超えて一般式(II)の分子量と異なり得ず、またはその逆である。さまざまな実施態様において、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量の約20%を超えて一般式(II)の分子量とは異ならない、またはその逆である。例えば、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量より最大で約20%多いか若しくは最大で20%少なく、またはその逆であり得る。有利なことに、生物活性部分を有する繰り返し単位は、ポリエチレンを有する繰り返し単位の分子サイズ/重量/長さと同様であるそれを有するため、生物活性部分Xの長さを延長し、それによってXが、「見える」こと、細胞への結合のために利用可能であることまたは所望の生物活性のためにその標的の生理学的部位にアクセス可能であること、すなわちポリエチレン鎖の海/マトリックス中に埋もれないことを可能にする。他の実施態様においては、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量と同等でない/実質的に同様でない。さまざまな実施態様において、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量の30%を超えて一般式(II)の分子量と異なり、またはその逆である。例えば、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量より約30%多く若しくは30%少なくあり得るか、またはその逆である。一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量の約30%を超えて、約35%を超えて、約40%を超えて、約45%を超えて、約50%を超えて、約55%を超えて、約60%を超えて、約65%を超えて、約70%を超えて、約75%を超えて、または約80%を超えて、一般式(II)の分子量と異なり得るか、またはその逆である。
【0140】
さまざまな実施態様において、一般式(I)の分子量は、約50,000以下、約45,000以下、約40,000以下、約35,000以下、約30,000以下、約25,000以下、約20,000以下、約15,000以下または約10,000以下に保たれる。さまざまな実施態様において、一般式(I)の分子量は、約100から約15,000、約200から約14,000、約300から約13,000、約400から約12,000、約500から約11,000、約1,000から約10,000、約1,500から約9,500、約2,000から約9,000、約2,500から約8,500、約3,000から約8,000、約3,500から約7,500、約4,000から約7,000、約4,500から約6,500、約5,000から約6,000または約5,500である。さまざまな実施態様において、Xが10を超えるアミノ酸を含有するより長いペプチドを含み、Lの分子量が約6,000であるとき、そのときは、一般式(I)の分子量は、約7,000より大きい。さまざまな実施態様において、Xが約5,000以上の分子量を有する大きなペプチドを含み、L(例えば、ポリエチレングリコール)の分子量が約6,000であるとき、そのときは、一般式(I)の分子量は、約12,000までであり得る。
【0141】
さまざまな実施態様において、一般式(II)の分子量は、約50,000以下、約45,000以下、約40,000以下、約35,000以下、約30,000以下、約25,000以下、約20,000以下、約15,000以下または約10,000以下に保たれる。さまざまな実施態様において、一般式(II)の分子量は、約100から約15,000、約200から約14,000、約300から約13,000、約400から約12,000、約500から約11,000、約1,000から約10,000、約1,500から約9,500、約2,000から約9,000、約2,500から約8,500、約3,000から約8,000、約3,500から約7,500、約4,000から約7,000、約4,500から約6,500、約5,000から約6,000または約5,500である。
【0142】
さまざまな実施態様において、一般式(I)および一般式(II)の総分子量は、約300,000、約300,000以下、約200,000以下、約100,000以下、約90,000以下、約80,000以下、約70,000以下、約60,000以下、約50,000以下、約45,000以下、約40,000以下、約35,000以下、約30,000以下、約25,000以下、約20,000以下、または約15,000以下に保たれ、共重合を促進する。
【0143】
さまざまな実施態様において、Lは、親水性である。Lが調整可能であるため、一般式(I)によって表される繰り返し単位の親水性および/または膨潤性、並びにまた生物活性ポリエチレンコポリマーの全体の親水性および/または膨潤性も、所望どおりに調整し得る。有利なことに、Lの存在は、一般式(I)によって表される繰り返し単位の親水性、およびまた生物活性ポリエチレンコポリマーの全体の親水性を増加させる。さらにより有利なことに、Lの存在は、生物活性ポリエチレンコポリマーの親水性およびワックス性を増加させ、従って高度に疎水性であり結晶質であるポリエチレン鎖(高分子量PEについて)を軟かくし、該コポリマーを、加工後、より堅くないものとする。さまざまな実施態様において、Lは、水の取り込みを与えるための、全体のコポリマーの親水性の調整を可能にする。さまざまな実施態様において、Lはまた、滑らかさを与えるための、全体のコポリマーのワックス性の調整を可能にする。個々の生物活性部分は一般に親水性であり、一方でポリエチレンは一般に疎水性であるため、生物活性部分およびポリエチレンは典型的には相互に適合しないことが、当業者によって理解されるであろう。一般式(I)によって表される繰り返し単位におけるLの使用で、(生物活性構成要素の)親水性と(合成構成要素、すなわちポリエチレンの)疎水性との間のバランスを達成し、それらのお互いの相溶性を増加させ得ることが、有利に示される。
【0144】
さまざまな実施態様において、Lは、アモルファスである。有利なことに、Lの存在は、生物活性ポリエチレンコポリマーの非晶質性を増加させおよび/または結晶性を減少させ、該コポリマーを、より柔らかいまたはより堅くないプラスチックを作り出すのに有用なものとする。
【0145】
さまざまな実施態様において、Lは、少なくとも20個の炭素原子、少なくとも30個の炭素原子、少なくとも40個の炭素原子、少なくとも50個の炭素原子、少なくとも60個の炭素原子、少なくとも70個の炭素原子、少なくとも80個の炭素原子、少なくとも90個の炭素原子、少なくとも100個の炭素原子、少なくとも150個の炭素原子、少なくとも200個の炭素原子、少なくとも250個の炭素原子または少なくとも300個の炭素原子を有するヘテロアルキレンである。さまざまな実施態様において、Lは、C20-C300ヘテロアルキレンまたは20個の炭素原子から300個の炭素原子を有するヘテロアルキレンである。
【0146】
さまざまな実施態様において、Lは、約500と約7,000との間の数平均分子量を有する。Lは、約600、約700、約800、約900、約1,000、約1,500、約2,000、約2,500、約3,000、約3,500、約4,000、約4,500、約5,000、約5,500、約6,000、約6,500または約7,000の数平均分子量を有し得る。さまざまな実施態様において、Lの数平均分子量は、約1,000から約6,000である。
【0147】
さまざまな実施態様において、L中のヘテロ原子は、Oである。さまざまな実施態様において、Lは、ポリアルキレングリコールである。さまざまな実施態様において、Lは、ポリ(C-Cアルキレングリコール)である。Lは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリブチレングリコール(PBG)等からなる群から選択し得る。有利なことに、PEGなどのポリアルキレングリコールの使用は、マクロモノマーおよび結果として得られるコポリマーの親水性を増加させ得る。さまざまな実施態様において、PEGなどのポリアルキレングリコールは、末端基としての代わりに、全体のポリマーにおけるスペーサー、リンカーまたは連結基として使用する。
【0148】
さまざまな実施態様において、Lは、少なくとも約10個の繰り返し単位、少なくとも約15個の繰り返し単位、少なくとも約20個の繰り返し単位、少なくとも約21個の繰り返し単位、少なくとも約22個の繰り返し単位、少なくとも約23個の繰り返し単位、少なくとも約24個の繰り返し単位、少なくとも約25個の繰り返し単位、少なくとも約30個の繰り返し単位、少なくとも約40個の繰り返し単位、少なくとも約50個の繰り返し単位、少なくとも約60個の繰り返し単位、少なくとも約70個の繰り返し単位、少なくとも約80個の繰り返し単位、少なくとも約90個の繰り返し単位、少なくとも約100個の繰り返し単位、少なくとも約150個の繰り返し単位、少なくとも約200個の繰り返し単位、または少なくとも約250個の繰り返し単位を有するポリアルキレングリコールである。さまざまな実施態様において、Lは、約10個のモノマー/繰り返し単位から約250個のモノマー/繰り返し単位を含む。短いPEG鎖を使用する従来のポリマーとは異なり、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は、Lに少なくとも20個の繰り返し単位の長いポリアルキレングリコール鎖を組み込む。
【0149】
さまざまな実施態様において、Lは、PEG500、PEG600、PEG700、PEG800、PEG900、PEG1000、PEG1100、PEG1200、PEG1300、PEG1400、PEG1500、PEG2000、PEG2500、PEG3000、PEG3500、PEG4000、PEG4500、PEG5000、PEG6000およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0150】
さまざまな実施態様において、Xは、以下の配置:-R-L-NR-C(=O)-X中のカルボン酸官能基を通してポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)主鎖に結合する。有利なことに、カルボン酸官能基を通してXを連結することにより、X中のアミン末端基は、その生物活性を送達することのために完全に自由であり、従ってXのバイオアベイラビリティを保証する。アミン基は生物活性を付与するため、生物活性部分中のアミン基をポリマー結合のために使い果たすことは望ましくないかもしれないことが理解されるであろう。
【0151】
さまざまな実施態様において、Xは、ペプチド/アミド結合、すなわち-NR-C(=O)-を介してポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)主鎖に結合する。有利なことに、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーは、エステル結合を含有する従来のポリマーよりもかなり強くおよび/または安定である。理論によって拘束されるものではないが、エステル結合は、生物活性部分を血流中に放出して、生物活性部分の早期代謝につながり得る加水分解をより受けやすいため、アミド結合は、エステル結合よりも強いと考えられている。
【0152】
さまざまな実施態様において、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルおよびアルキルカルボニルアルキル中のH原子の1つ以上は、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ、シアノアルキルおよびニトロによって任意に置き換えられる。
【0153】
さまざまな実施態様において、Rは、C-C20アルキルから選択される。C-C20アルキル置換基は、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、
1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等から選択される直鎖または分枝置換基であり得る。Rは、直鎖または分枝C-Cアルキル置換基であり得る。さまざまな実施態様において、Rの長さは、Lにおける繰り返し単位の長さと同じである。例えば、Lがポリ(ブチレングリコール)である場合、そのときは、Rは、ブチルである。別の例においては、Lがポリ(エチレングリコール)である場合、そのときは、Rは、エチルである。さまざまな実施態様において、Rは、Lに適合するように注意深く設計されることが理解されるであろう。
【0154】
さまざまな実施態様において、Rは、H、C-C20アルキル、C-C20アルケニルまたはC-C20アルキニルから選択される。
【0155】
さまざまな実施態様において、ZおよびZは、それぞれ独立して、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される。ポリ(ノルボルネン)主鎖は、ポリ(ノルボルネン-イミド)、ポリ(ノルボルネン-ジカルボキシイミド)、ポリ(ノルボルネン)主鎖は、ポリ(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)、ポリ(7-オキサノルボルネン)、ポリ(オキサノルボルネン-イミド)、ポリ(オキサノルボルネン-ジカルボキシイミド)等からなる群から選択し得る。さまざまな実施態様において、ZおよびZは、それぞれ独立して、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、C-C20アルキル、C-C20アルケニルおよびC-C20アルキニルからなる群から選択される。さまざまな実施態様において、Zは、CHである。さまざまな実施態様において、Zは、CHである。
【0156】
さまざまな実施態様において、Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体から選択される生物活性部分を含む。さまざまな実施態様において、タンパク質、ペプチド、炭水化物または治療/薬物分子それらの誘導体は、1つのカルボン酸末端基を含有するように任意に修飾されているまたは修飾されたタンパク質、ペプチド、炭水化物または治療/薬物分子を含む。いくつかの実施態様においては、生物活性部分は、1つのみのカルボン酸末端基を含有する。
【0157】
さまざまな実施態様において、生物活性部分は、モノカルボン酸を含む。有利なことに、モノカルボン酸末端基を有する生物活性部分の使用は、さもなければ2つ以上のカルボン酸がある場合に起こり得る望ましくない架橋の可能性を回避する。さまざまな実施態様において従って、生物活性部分Xは、2つ以上のカルボン酸末端基、例えば、ジカルボン酸またはトリカルボン酸が実質的にない。
【0158】
さまざまな実施態様において、Xは、タンパク質またはペプチドを含む。Xは、ペプチド配列、ラミニン由来ペプチド、インテグリン結合ペプチド、細胞透過性ペプチド、コラーゲン配列、コラーゲン模倣物またはコラーゲン模倣ペプチドまたはコラーゲン断片であり得る。さまざまな実施態様において、Xは、任意の配列の、2から50個のアミノ酸残基、2から40個のアミノ酸残基または2から20個のアミノ酸残基を含む。さまざまな実施態様において、Xは、任意の配列の、50個のアミノ酸残基、40個のアミノ酸残基、30個のアミノ酸残基、25個のアミノ酸残基、20個のアミノ酸残基、15個のアミノ酸残基、10個のアミノ酸残基、9個のアミノ酸残基、8個のアミノ酸残基を含む、7個のアミノ酸残基、6個のアミノ酸残基、5個のアミノ酸残基、4個のアミノ酸残基または3個のアミノ酸残基を含む。アミノ酸残基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択し得る。さまざまな実施態様において、Xは、3から20個の天然アミノ酸を含むペプチド配列である。Xは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)、SRGDSおよびRGDSからなる群から選択されるインテグリン結合ペプチド;ラミニン由来ペプチドA5G81(AGQWHRVSVRWGC);オステオポンチン由来ペプチドSVVYGLR;IRIKまたは(IRIK)または(IKKI)から選択される細胞透過性/抗微生物ペプチドであり得る。さまざまな実施態様において、Xは、任意の配列または順列の、3から20単位の、グリシン(G)、プロリン(P)およびヒドロキシプロリン(Hyp)を含むコラーゲン配列である。Xは、(PHypG)型配列、(PGHyp)型配列、(HypGP)型配列、(HypPG)型配列、(GHypP)型配列、(GPHyp)型配列またはコラーゲン模倣DGEAを有するコラーゲン断片であり得る。
【0159】
さまざまな実施態様において、Xは、炭水化物を含む。さまざまな実施態様において、Xは、単糖、二糖、オリゴ糖または多糖を含む。さまざまな実施態様において、Xは、2から50個の糖単位、2から40個の糖単位、2から20個の糖単位または10から14個の糖単位を含む。さまざまな実施態様において、Xは、50個の糖単位、40個の糖単位、30個の糖単位、25個の糖単位、20個の糖単位、15個の糖単位、14個の糖単位、13個の糖単位、12個の糖単位、11個の糖単位、10個の糖単位、9個の糖単位、8個の糖単位、7個の糖単位、6個の糖単位、5個の糖単位、4個の糖単位または3個の糖単位または2個の糖単位を含む。Xは、ヘパラン硫酸(HS)またはグリコサミノグリカン(GAG)であり得る。さまざまな実施態様において、Xは、DP8、DP10、DP12、DP14およびDP16からなる群から選択されるヘパリンオリゴ糖である。さまざまな実施態様において、Xは、グリコサミノグリカン(GAG)の最も単純な形態であるヒアルロン酸である。
【0160】
さまざまな実施態様において、Xは、そのヒドロキシ基を介して一般式(I)の残りの部分に化学的に結合している。例えば、Xが炭水化物/糖類であるとき、Xを一般式(I)に連結するために、酸化および/または還元的アミノ化反応を炭水化物のヒドロキシ上で実施し得る。糖上の-CHOHは、-C(=O)Hに酸化し得、これが引き続き、L上の-NH末端を使用する還元的アミノ化を受け、ペプチド結合を作り出す。
【0161】
さまざまな実施態様において、Xは、1つのカルボン酸末端基を含有したか、または含有するように修飾された炭水化物/糖類を含む。酸化などの1つ以上の化学反応による修飾を炭水化物/糖類上で実施して、カルボン酸基を作り出し得る。さまざまな実施態様において、修飾は、炭水化物/糖類中に元々存在するヒドロキシル基上で実施する。さまざまな実施態様において、炭水化物/糖類上の-CHOHを、完全に-C(=O)OHに酸化し、これが引き続き、L上の-NH末端と反応して、炭水化物/糖類を一般式(I)の残りの部分:X-C(=O)-NH-L-に連結するペプチド結合を作り出す。しかしながら、カルボン酸が炭水化物/糖類において天然に存在する場合は、炭水化物/糖類への修飾は何ら必要とされない/必要でない可能性があることが理解されるであろう。
【0162】
さまざまな実施態様において、Xは、治療/薬物分子を含む。さまざまな実施態様において、Xは、抗生物質、抗微生物剤、抗菌剤、血液希釈剤または抗炎症剤を含む。Xは、ペニシリン、アモキシシリン、アムホテリシン、シプロフロキサシン(CIF)、アトルバスタチン、アスピリンまたはストレプトマイシン、リボスタマイシン若しくはゲンタマイシンから選択されるアミノグリコシド系分子であり得る。Xは、カルボン酸基を含有する任意の治療または薬物分子であり得ることが理解されるであろう。
【0163】
さまざまな実施態様において、Xは、-COOH、-CHOH、-CHNHおよび=CHNHからなる群から選択されるその化学部分の1つを介して、一般式(I)の残りの部分に化学的に結合している。例えば、薬物分子上の-CHNHまたは=CHNHは、L上の-NH末端と反応する前に小さなジカルボン酸に結合して、薬物分子を一般式(I)の残りの部分:X-C(=O)-NH-L-に連結するペプチド結合を作り出し得る。
【0164】
さまざまな実施態様において、Xは、1つのカルボン酸末端基を含有したか、または含有するように修飾された治療/薬物分子を含む。酸化などの1つ以上の化学反応による修飾を治療/薬物分子上で実施して、カルボン酸基を作り出し得る。さまざまな実施態様において、修飾は、治療/薬物分子中に元々存在するヒドロキシル基上で実施する。例えば、さまざまな実施態様においてXがリボスタマイシンまたはゲンタマイシンであるとき、薬物分子上の-CHOHを、完全に-C(=O)OHに酸化し、これが引き続き、L上の-NH末端と反応して、薬物分子を一般式(I)の残りの部分:X-C(=O)-NH-L-に連結するペプチド結合を作り出す。しかしながら、カルボン酸が治療/薬物分子中にすでに存在する場合は、治療/薬物分子への修飾は何ら必要とされない/必要でない可能性があることが理解されるであろう。
【0165】
さまざまな実施態様において、生物活性部分は、1つのカルボン酸末端基を含有するように修飾されているか(is modified)、または修飾されている(has been modified)。例えば、カルボン酸末端基が炭水化物または治療/薬物分子中に存在しない場合、炭水化物または治療/薬物分子を修飾して、炭水化物または治療/薬物分子の末端の1つにカルボン酸を付加し得る。修飾は、炭水化物中のヒドロキシ基をカルボン酸に変換するための酸化反応を含み得る。
【0166】
さまざまな実施態様において、一般式(I)によって表される繰り返し単位は、コポリマーに対して、約1mol%から約100mol%、約2mol%から約99mol%、約3mol%から約98mol%、約4mol%から約97mol%、約5mol%から約96mol%、約10mol%から約95mol%、約15mol%から約90mol%、約20mol%から約85mol%、約25mol%から約80mol%、約30mol%から約75mol%、約35mol%から約70mol%、約40mol%から約65mol%、約45mol%から約60mol%、または約50mol%から約55mol%の量である。さまざまな実施態様において、一般式(I)によって表される繰り返し単位は、コポリマーに対して約1mol%から約10mol%の量である。さまざまな実施態様において、生物活性部分は、生物活性ポリエチレンコポリマーの、約2mol%、約3mol%、約4mol%、約5mol%、約6mol%、約7mol%、約8mol%、約9mol%または約10mol%である。いくつかの実施態様においては、一般式(I)によって表される繰り返し単位は、コポリマーに対して約10モル%以下の量である。いくつかの実施態様においては、生物活性部分は、非極性溶媒中で比較的不溶性であり、それによって製造費用が高い大過剰の一般式(I)を使用することなく、コポリマー中に10%を超える一般式(I)を含むことを困難とすることが理解されるであろう。
【0167】
さまざまな実施態様において、Rは、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルまたはC-C20アルキルカルボニルアルキルから選択される。C-C20アルキル置換基は、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等から選択される直鎖または分枝置換基であり得る。
【0168】
さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマー中の一般式(I)によって表される繰り返し単位の数の一般式(II)によって表される繰り返し単位の数との比は、約1:1から約1:100、約1:2から約1:99、約1:3から約1:98、約1:4から約1:97、約1:5から約1:96、約1:6から約1:95、約1:7から約1:90、約1:8から約1:85、約1:9から約1:80、約1:10から約1:75、約1:15から約1:70、約1:20から約1:65、約1:25から約1:60、約1:30から約1:55、約1:35から約1:50、または約1:40から約1:45である。さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマー中の一般式(I)によって表される繰り返し単位の数の一般式(II)によって表される繰り返し単位の数との比は、約1:10、約1:15、約1:20、約1:25、約1:30、約1:35、約1:40、約1:45または約1:50である。
【0169】
さまざまな実施態様において、コポリマー中の一般式(I)によって表される繰り返し単位の数は、約10から約1,000である。さまざまな実施態様において、コポリマー中の一般式(II)によって表される繰り返し単位の数は、約10から約1,000である。
【0170】
さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーは、約2,000から約300,000、約3,000から約200,000、約4,000から約150,000、約5,000から約100,000、約10,000から約90,000、約20,000から約80,000、約30,000から約70,000、約40,000から約60,000、または約50,000の数平均分子量(Mn)を有する。
【0171】
さまざまな実施態様において、生物活性合成コポリマーは、約1.0から約10.0の多分散指数(PDI)を有する。さまざまな実施態様において、生物活性合成コポリマーのPDIは、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5または約10.0である。さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーは、約1.0から約3.0、約1.05から約2.95、約1.1から約2.9、約1.2から約2.8、約1.4から約2.6、約1.6から約2.4、約1.8から約2.2または約2.0の多分散指数(PDI)を有する。さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーのPDIは、1.50以下である。
【0172】
さまざまな実施態様において、一般式(I)によって表される1つ以上の繰り返し単位および一般式(II)によって表される1つ以上の繰り返し単位は、少なくとも共有相互作用を介してポリ(ノルボルネン)主鎖に連結するように設計する。さまざまな実施態様において、一般式(I)によって表される各繰り返し単位は、ポリ(ノルボルネン)主鎖に共有結合し、および/または一般式(II)によって表される各繰り返し単位は、ポリ(ノルボルネン)主鎖に共有結合している。有利なことに、生物活性部分(一般式(I)における)は生物活性ポリエチレンポリマーに共有結合しているので、生物活性は局在化している。さまざまな実施態様において、生体分子などの生物活性部分は、ポリマーから浸出せず、従って循環系に入るおよび/または身体系の意図しない部分に達する生体分子によって引き起こされる望ましくない/望まれない副作用を防止する。生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は従って、治療効果が達成される前に早期に代謝され得る薬物として投与される従来の生体分子が直面する問題を克服する。さまざまな実施態様において、薬物分子などの生物活性部分は、廃棄が不適切に管理される場合において環境中に漏出し得る媒体中に浸出しない。
【0173】
ファンデルワールス相互作用などの他の相互作用もまた、コポリマー内に存在し得ることが理解されるであろう。
【0174】
さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーは、ブラシ、ボトルブラシ、ブロック、くしまたはグラフトコポリマー構造を含む。さまざまな実施態様において、繰り返し単位は、ポリマー内でランダムに分布/配置し得る。
【0175】
さまざまな実施態様において、一般式(I)によって表される1つ以上の繰り返し単位は、2つ以上の異なるタイプの生物活性部分Xを含む。さまざまな実施態様において、一般式(I)によって表される1つ以上の繰り返し単位は、2、3、4、5、6、7または8個の異なるタイプの生物活性部分Xを含む。例えば、生物活性ポリエチレンコポリマー内に、Xとしてペプチドを含む一般式(I)によって表される繰り返し単位およびXとして炭水化物を含む一般式(I)によって表される繰り返し単位があり得る。有利なことに、さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーは、2つ以上の異なるタイプの生物活性を付与する。
【0176】
さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーは、ランダムポリマーまたはブロックコポリマーである。いくつかの実施態様においては、ブロックポリマーは、ジブロックまたはトリブロックポリマーである。例えば、コポリマーは、2個または3個の異なるポリマーブロックを有し得るか、またはそれらから構成される。いくつかの実施態様においては、マルチブロックコポリマーは、3個を超えるポリマーブロックを含む。ブロックは、ポリマー内でランダムに分布/配置し得る。
【0177】
さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーは、以下の1つから選択される:一般式(I)中の(GPHyp)および一般式(II)中のコハク酸末端ポリエチレンを含む(SA-t-PE)-[(GPHyp)コポリマー;一般式(I)中のRGDおよび一般式(II)中のコハク酸末端ポリエチレンを含むSA-t-PE-RGDコポリマー;並びに一般式(I)中のRGDおよび一般式(II)中のアミン末端ポリエチレンを含むアミン末端PE-RGDコポリマー。
【0178】
有利なことに、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーは、高度にカスタマイズ可能である。生物活性ポリエチレンコポリマーが意図される用途に依存して、所望の生物活性を有するXを選択して所望の物理的属性を有するYと組み合わせて、一般式(I)および(II)によって表される所望の繰り返し単位を有する生物活性ポリエチレンコポリマーを最終的に取得し得る。例えば、生物付着の問題に直面するステントについては、抗微生物ペプチドをステント材料中に組み込んで生物付着を標的とすることができる。関節インプラント(例えば膝関節インプラント)については、RGDペプチドなどの軟骨再生のためのインテグリンに結合するペプチド、または軟骨環境を模倣して軟骨細胞の結合を促進するオリゴ糖を組み込むことによって、ポリエチレンを、より生体適合性であるものとし得る。いくつかの可能なオリゴ糖は、ヒアルロン酸断片および硫酸化糖を含み得る。
【0179】
さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーは、さらなる使用のためにベースポリマーとブレンドする。さまざまな実施態様において、ベースポリマーは、一般式(II)において使用する合成ポリマーYと同様であるかまたは同じタイプのものである。例えば、ベースポリマーは、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよびα-オレフィンのコポリマーなどのポリアルキレン/ポリオレフィンであり得る。さまざまな実施態様において、医療グレードのポリマーを基材用に使用し、一方で低分子量ポリエチレンを生物活性ポリエチレンコポリマーの合成側鎖において使用する。有利なことに、生物活性ポリエチレンポリマーの実施態様は、生体分子を、コポリマーのポリエチレンサイドアームと同様であるベース材料中に、相分離なしにブレンドすることを可能にする。有利なことに、さまざまな実施態様において、親水性PEG鎖は、コポリマー構造中/内によく分散されており、従って、合成ポリエチレン(PE)-ペプチドコポリマーを疎水性ベース材料とブレンドするときに、より良好なブレンド結果が得られる。
【0180】
さまざまな実施態様において、以下のコポリマー:
A)一般式(III-1):
【0181】
【化20】
【0182】
(式中、
Aは、NまたはNRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;点線は、任意の化学結合を表し;
nは、10から350である)を含むコポリマー;
【0183】
B)一般式(VIII-1):
【0184】
【化21】
【0185】
(式中、
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;
Aは、NまたはNRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;点線は、任意の化学結合を表し;
nは、10から350である)によって表されるポリエチレン高分子から調製されるコポリマー;並びに
【0186】
C)本明細書において開示するポリエチレン高分子を調製する方法において説明する中間体に由来するコポリマーであって、該方法は:
(i)一般式(IX):
【0187】
【化22】
【0188】
(式中、Zは、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を有するジカルボン酸無水物を提供すること;および
(ii)一般式(IX)を有する前記ジカルボン酸無水物をアミンと反応させて、ポリエチレン高分子を得ること(ここで、アミンは、一般式(X-1):
【0189】
【化23】
【0190】
(式中、
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Aは、NまたはNRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;点線は、任意の化学結合を表し;並びに
nは、10から350である)によって表される)
を含む、コポリマー
もまた、提供される。
【0191】
さまざまな実施態様において、コポリマーA)~C)は、本明細書において開示する他のコポリマーと同様に望ましい特性を有する。
【0192】
さまざまな実施態様において、一般式(III-1)を含む生物活性ポリエチレンコポリマーは、一般式(III)を含む生物活性ポリエチレンコポリマーと同様に望ましい特徴を有する。
【0193】
さまざまな実施態様において、一般式(VIII-1)によって表されるポリエチレン高分子から調製される生物活性ポリエチレンコポリマーは、一般式(VIII)によって表されるポリエチレン高分子から調製される生物活性ポリエチレンコポリマーと同様に望ましい特徴を有する。
【0194】
さまざまな実施態様において、一般式(X-1)によって表されるアミンに由来する生理活性ポリエチレンコポリマーは、一般式(X)によって表されるアミンに由来する生理活性ポリエチレンコポリマーと同様に望ましい特徴を有する。
【0195】
方法
生物活性ポリエチレンコポリマーを調製する方法が提供され、該方法は:一般式(IV)によって表される1つ以上の生物活性高分子を一般式(V)によって表される1つ以上のポリエチレン高分子と重合させて、生物活性ポリエチレンコポリマーを得ることを含む:
【0196】
【化24】
【0197】
(式中、
は、任意に置換されたアルキルであり;
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから選択され;
Lは、ヘテロアルキレンであり;
Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体からなる群から選択される生物活性部分を含み;
Yは、ポリエチレンを含み;並びに
およびZは、それぞれ独立して、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)。
【0198】
有利なことに、さまざまな実施態様において、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーを調製する方法はまた、生物活性ポリエチレンコポリマーを設計するためのモジュラー法でもある。
【0199】
生物活性ポリエチレンコポリマーを設計するモジュラー法も提供され、該方法は:所望の生物学的活性に基づいて第1のモジュールから1つ以上の高分子を選択すること(第1のモジュールは、公知の生物活性を有する一般式(IV)によって表されるノルボルネンジカルボキシイミド含有生物活性高分子のライブラリーからなる);所望の物理的属性に基づいて第2のモジュールから1つ以上の高分子を選択すること(第2のモジュールは、公知の物理的属性を有する一般式(V)によって表されるノルボルネンジカルボキシイミド含有ポリエチレン高分子のライブラリーからなる);および該第1のモジュールから選択した該1つ以上の高分子を、該第2のモジュールから選択した該1つ以上の高分子と重合させて、生物活性ポリエチレンコポリマーを得ることを含む。
【0200】
【化25】
【0201】
有利なことに、本明細書において開示する方法は、所望の生物活性および物理的特性を有する生物活性ポリエチレンコポリマーの迅速なカスタマイズおよび素早い開発/構築を可能にする。
【0202】
さまざまな実施態様において、重合反応は、1つ以上のオレフィンメタセシス連鎖成長重合工程を含む。オレフィンメタセシス連鎖成長重合は、開環メタセシス重合(ROMP)であり得る。さまざまな実施態様において、ROMP反応は、マクロモノマーの反応性部分で、例えば、オレフィン/アルケン/C=C部分で起こる。ROMPは、「アームファースト」ROMP、「ブラシファースト」ROMP、「グラフトツー」ROMP、「グラフトフロム」ROMP、「グラフトスルー」ROMP、またはそれらの組合せを含む、多くの異なるアプローチを含み得る。有利なことに、ROMPは、所望の生物活性を有する明確に定義されたポリエチレンポリマーの素早い開発/構築を可能にする。さまざまな実施態様において、標的の用途に依存して、一般式(I)によって表される目的の生物活性を有する生体分子を、選択し、ROMPを使用して一般式(II)によって表されるポリエチレンと一緒に共重合させ得る。
【0203】
さまざまな実施態様において、重合反応は、重合開始剤/触媒/促進剤の存在下で実施する。さまざまな実施態様において、重合開始剤/触媒/促進剤は、金属錯体を含む。金属錯体は、ルテニウム、モリブデンまたはタングステン錯体であり得る。さまざまな実施態様において、ROMPは、ルテニウム錯体の存在下で実施する。有利なことに、他の遷移金属(例えば、WおよびMo)と比較して、Ruは、極性官能基の存在下でより安定であり、それによって、Ruを、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体からなる群から選択される生物活性部分を含むROMP反応について適したオレフィンメタセシス触媒とする。さまざまな実施態様において、Ruは、空気に安定(すなわち空気中で安定)および熱的に安定(すなわち高温で安定)である一方で、大規模に商業的に入手可能であり、これが、ROMPを高温で行うことを可能にする。ルテニウム錯体は、第1世代のグラブス触媒、第2世代のグラブス触媒、ホベイダ・グラブス触媒、第3世代のグラブス触媒またはそれらの誘導体から選択されるグラブス触媒を含み得る。
【0204】
さまざまな実施態様において、R、R、R、L、X、Y、ZおよびZは、1つ以上の特徴を含有しおよび/または上記のものと同様である1つ以上の特性を共有する。
【0205】
さまざまな実施態様において、重合反応は、a)一般式(IV)によって表される1つ以上の生物活性高分子を一般式(V)によって表される1つ以上のポリエチレン高分子と混合して、溶液を得ること;b)触媒をa)からの該溶液に添加すること;およびc)生物活性ポリエチレンコポリマーを沈殿させることを含む。
【0206】
さまざまな実施態様において、重合反応は、一般式(IV)によって表される1つ以上の生物活性高分子を一般式(V)によって表される1つ以上のポリエチレン高分子と約1:1から約1:10の比で混合することを含む。さまざまな実施態様において、一般式(IV)によって表される1つ以上の生物活性高分子は、一般式(V)によって表される1つ以上のポリエチレン高分子に約1:5の比で添加する。
【0207】
さまざまな実施態様において、工程a)および/または工程b)は、約20℃から約180℃の範囲の温度で行うまたは取り組む。さまざまな実施態様において、工程a)および/または工程b)は、使用する溶媒の沸点、例えば、1,2-ジクロロベンゼンの沸点の直下の温度で行うまたは取り組む。工程a)および工程b)を行う温度は、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、または約180℃の温度から独立して選択し得る。さまざまな実施態様において、より高い分子のポリエチレン(PE)を扱うときは、高温反応条件が必要とされる。
【0208】
さまざまな実施態様において、工程a)および/または工程b)は、約30分から約3日の範囲の期間、行うまたは取り組む。工程a)および工程b)を行う期間は、約30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、20時間、1日、2日または3日の期間から独立して選択し得る。
【0209】
さまざまな実施態様において、工程a)および/または工程b)は、有機溶媒の存在下で行う。さまざまな実施態様において、工程a)および工程b)についての有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、ジクロロベンゼン等およびそれらの組合せからなる群から独立して選択される非極性溶媒である。さまざまな実施態様において、ベンゼンおよび/またはトルエンなどの非極性性溶媒は、特にPE系材料について使用し得る。さまざまな実施態様において、使用する有機溶媒は、工程a)およびb)について同じである。使用する溶媒のタイプは、使用する反応物のタイプに依存し、上記に限定されないことが理解されるべきである。いくつかの実施態様においては、ベンゼンは、トルエンと比較して高温で一般式(I)および(II)を溶解し得る。
【0210】
さまざまな実施態様において、工程c)は、有機溶媒の混合物中で行う。有機溶媒の混合物は、1つ以上の非プロトン性有機溶媒および1つ以上のプロトン性有機溶媒を含有し得る。さまざまな実施態様において、工程c)についての有機溶媒の混合物は、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル(ACN)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、エチルビニルエーテル、メタノール、エタノール、ブタノール等およびそれらの組合せからなる群から選択される。使用する溶媒のタイプは、使用する反応物のタイプに依存し、上記に限定されないことが理解されるべきである。さまざまな実施態様において、エチルビニルエーテルは、工程b)において添加する触媒をクエンチするために使用する。数滴のエチルビニルエーテルのみ、添加/使用し得る。さまざまな実施態様において、工程c)は、大量のプロトン性溶媒、例えば、メタノールを、工程a)およびb)から得られた反応混合物中に添加することによって行う。
【0211】
有利なことに、上記の注意深く設計/制御した条件で重合を行うことにより、本明細書において開示する方法の実施態様は、個々の構成要素(例えば、L、X、Y構成要素)の広く変化するおよび/または反対の特性を首尾よく克服して、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーを構築した。
【0212】
生物活性ホモポリマーを調製する方法も提供され、該方法は:一般式(IV)によって表される1つ以上の生物活性高分子を重合させて、生物活性合成ホモポリマーを得ることを含む:
【0213】
【化26】
【0214】
(式中、Rは、任意に置換されたアルキルであり;Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから選択され;Lは、ヘテロアルキレンであり;Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体からなる群から選択される生物活性部分を含み;並びにZは、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)。
【0215】
ポリエチレンホモポリマーを調製する方法も提供され、該方法は:一般式(V)によって表される1つ以上のポリエチレン高分子を重合させて、ポリエチレンホモポリマーを得ることを含む:
【0216】
【化27】
【0217】
(式中、Rは、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;Yは、ポリエチレンを含み;並びにZは、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)。
【0218】
生物活性高分子
本明細書において開示するコポリマーを調製するための、一般式(IV)によって表される生物活性高分子もまた、提供される:
【0219】
【化28】
【0220】
(式中、
は、任意に置換されたアルキルであり;
は、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから選択され;
Lは、ヘテロアルキレンであり;
Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体から選択される生物活性部分を含み;並びに
は、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)。
【0221】
さまざまな実施態様において、R、R、L、XおよびZは、1つ以上の特徴を含有しおよび/またはすでに上記したものと同様である1つ以上の特性を共有する。
【0222】
さまざまな実施態様において、生物活性高分子は、自己重合または共重合を受ける。そのさまざまな実施態様において、生物活性高分子はまた、生物活性マクロモノマーとしても振る舞う。
【0223】
さまざまな実施態様において、Xは、以下の配置:-R-L-NR-C(=O)-X中のカルボン酸官能基を通してノルボルネンジカルボキシイミドに結合する。有利なことに、カルボン酸官能基を通してXを連結することにより、X中のアミン末端基は、その生物活性を送達することのために完全に自由であり、従ってXのバイオアベイラビリティを保証する。アミン基は生物活性を付与するため、生物活性部分中のアミン基をポリマー結合のために使い果たすことは望ましくないかもしれないことが理解されるであろう。
【0224】
さまざまな実施態様において、Xは、ペプチド/アミド結合、すなわち-NR-C(=O)-を介してノルボルネンジカルボキシイミドに結合する。有利なことに、本明細書において開示する生物活性高分子は、エステル結合を含有する従来の高分子よりもかなり強くおよび/または安定である。理論によって拘束されるものではないが、エステル結合は、生物活性部分を血流中に放出して、生物活性部分の早期代謝につながり得る加水分解をより受けやすいため、アミド結合は、エステル結合よりも強いと考えられている。
【0225】
本明細書において開示する生物活性高分子を調製する方法も提供され、該方法は:(i)一般式(VI):
【0226】
【化29】
【0227】
(式中、Zは、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を有するジカルボン酸無水物を提供すること;
(ii)一般式(VI)を有する前記ジカルボン酸無水物をジアミンRN-L-R-NHと反応させて、一般式(VII):
【0228】
【化30】
【0229】
(式中、Rは、任意に置換されたアルキルであり;RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから選択され、ここで、RおよびRの少なくとも1つは、Hであり;Lは、ヘテロアルキレンであり;Zは、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を有するアミンを得ること;並びに
(iii)一般式(VII)を有する前記アミンを酸含有生物活性部分X-C(=O)OHと反応させて、生物活性高分子を得ること(ここで、Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子およびそれらの誘導体からなる群から選択される生物活性部分を含む)を含む。
【0230】
さまざまな実施態様において、R、R、L、XおよびZは、1つ以上の特徴を含有しおよび/または上記のものと同様である1つ以上の特性を共有する。
【0231】
さまざまな実施態様において、RおよびRは、それぞれ独立して、H、C-C20アルキル、C-C20アルケニルまたはC-C20アルキニルから選択され、ここで、RおよびRの少なくとも1つは、Hである。
【0232】
さまざまな実施態様において、工程(ii)は、Xをノルボルネンジカルボン酸無水物に結合させるためのジアミンRN-L-R-NHの使用を含む。使用するジアミンは、商業的に入手可能であるものであり得る。有利なことに、該方法は、簡単な反応であり、商業的に入手できず合成的に作製が困難であるポリ(エチレングリコール)アミノカルボン酸を必要としない。さまざまな実施態様において従って、該方法は、退屈な多段階でおよび/または低収率の合成手順を必要としない。さまざまな実施態様において、ジアミンRN-L-R-NHは、一般式(VII)を有するアミンが2つの末端上でノルボルネンジカルボキシイミドと結合しない(さもなければ、ジアミンRN-L-R-NHを末端基の代わりにリンカーにするであろう)ことを確実にするためにわずかに過剰に使用する。
【0233】
さまざまな実施態様において、ジアミンは、Lがポリ(エチレングリコール)であるポリ(エチレングリコール)ジアミンである。
【0234】
さまざまな実施態様において、方法は、工程(iii)の前に、一般式(VII)を有するアミンを精製して、生成物を単離しおよび/または不純物を除去することをさらに含む。さまざまな実施態様において、精製工程は、酸または塩基の少なくとも1つで洗浄することを含む。精製工程は、一般式(VII)を有するアミンを中和するために、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回または少なくとも8回、酸または塩基の少なくとも1つで洗浄することを含み得る。さまざまな実施態様において、精製工程は、二重中和工程を含む。一つの実施態様においては、二重中和は、未反応のジアミンRN-L-R-NHを除去するために酸で洗浄する第1の工程および一般式(VII)を有するアミンを中和するために塩基で洗浄する第2の工程を含む。ジアミンRN-L-R-NHは塩基性であるため、酸を前記ジアミンに添加することは、一般式(VII)を有するアミンからの除去のためにジアミンを中和するであろうことが理解されるであろう。酸で洗浄する第1の工程はアミン末端で一般式(VII)を有するアミンをプロトン化し得るが、塩基または過剰の塩基で洗浄する引き続く第2の工程は、プロトン化された形態をその遊離アミン形態に変換することもまた理解されるであろう。第1の中和工程について使用する酸は、HCl、HNO、HSOおよびHPOからなる群から選択し得る。第2の中和工程について使用する塩基は、NaOH、KOH、NHOHおよびCa(OH)からなる群から選択し得る。さまざまな実施態様において、第2の中和工程は、塩基で少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回または少なくとも4回洗浄して、最大化収率のために一般式(VII)を有するアミンを完全に抽出することを含む。一つの実施態様においては、第2の中和は、塩基で2回洗浄することを含む。理論によって拘束されるものではないが、一般式(VII)を有するアミンのプロトン化形態の30%までが、抽出中に水相中に存在し得ると考えられている。さまざまな実施態様において従って、塩基で洗浄する工程は、一般式(VII)を有するアミンを水相および有機相の両方から完全に抽出するために、水相を塩基で1回洗浄することおよび有機相を塩基で1回洗浄することを含む。有利なことに、結合後に二重中和工程を使用して遊離アミン末端を得ることにより、該方法は、保護/脱保護工程などのいかなる追加の工程についても必要性を排除する。ジアミン、特にポリエチレングリコールジアミンの使用は、極めて困難であり、典型的にはノルボルネンジカルボン酸無水物に結合するために1つのアミン末端の保護を必要とすることが、当業者によって理解されるであろう。実際、さまざまな実施態様において、PEGなどのポリアルキレングリコールは、末端基としての代わりに、全体のポリマー中のスペーサー、リンカーまたは連結基として使用する。すなわち、PEGジアミンの1つのアミン末端を保護して、それをノルボルネンジカルボン酸無水物と結合させることを考慮することは、直観的に見え得る。保護基は次いで、さらなる反応用にアミン末端を露出させるために除去し得る。しかしながら、これは、反応に余分な工程を加えるであろうし、そのため望ましくないかもしれない。本開示の実施態様は、ペプチドへのさらなる結合用の遊離アミン末端を得るために、結合後に二重中和工程を行うことによって、合成および精製工程におけるこの問題をうまく克服した。
【0235】
ポリエチレン高分子
本明細書において開示するコポリマーを調製するための一般式(VIII)によって表されるポリエチレン高分子もまた、提供される。
【0236】
【化31】
【0237】
さまざまな実施態様において、ポリエチレン高分子は、一般式(VIII-1):
【0238】
【化32】
【0239】
によって表される。
【0240】
さまざまな実施態様において、一般式(VIII-1)に、Aは存在するが、一方でBは存在しない。そのような実施態様においては、ポリエチレン高分子は、一般式(VIII-2):
【0241】
【化33】
【0242】
によって表される。
【0243】
さまざまな実施態様において、ポリエチレン高分子は、以下の一般式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc):
【0244】
【化34】
【0245】
の1つによって表し得る。
【0246】
さまざまな実施態様において、Z、R、R6a、R6d、R7a、R、A、B、RおよびTは、1つ以上の特徴を含有しおよび/またはすでに上記したものと同様である1つ以上の特性を共有する。
【0247】
本明細書において開示するポリエチレン高分子を調製する方法も提供され、該方法は:(i)一般式(IX):
【0248】
【化35】
【0249】
(式中、Zは、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)を有するジカルボン酸無水物を提供すること;および
(ii)一般式(IX)を有する前記ジカルボン酸無水物をアミンと反応させて、ポリエチレン高分子を得ること(ここで、アミンは、一般式(X):
【0250】
【化36】
【0251】
(式中、
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
Aは、NRとして任意に存在し、ここで、Rは、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルまたは任意に置換されたアルキニルから独立して選択され;
Bは、環中に少なくとも1つのNヘテロ原子を有する5員または6員の複素環として任意に存在し;
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基であり;並びに
nは、10から350である)によって表される)
を含む。
【0252】
さまざまな実施態様において、アミンは、一般式(X-1):
【0253】
【化37】
【0254】
によって表される。
【0255】
さまざまな実施態様において、一般式(X-1)に、Aは存在するが、一方でBは存在しない。そのような実施態様においては、アミンは、一般式(X-2):
【0256】
【化38】
【0257】
によって表される。
【0258】
さまざまな実施態様において、一般式(X)は、以下の一般式(Xa)、(Xb)または(Xc):
【0259】
【化39】
【0260】
(式中、
は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
6aおよびR6dは、それぞれ独立して、C、CR、CR、N、NR、OまたはSからなる群から選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;
7aは、=O、=S、-F、-Cl、-Br、-I、=CR、-CR、-OH、-SH、-NHまたは=NRとして任意に存在し;並びに
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基である)の1つによって表し得る。
【0261】
さまざまな実施態様において、方法はさらに、工程(ii)の前に、
(a-i)一般式(XIa)または(XIb):
【0262】
【化40】
【0263】
(式中、
6aおよびR6dは、それぞれ独立して、C、CR、CR、N、NR、OまたはSからなる群から選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択され;
7aは、=O、=S、-F、-Cl、-Br、-I、=CR、-CR、-OH、-SH、-NHまたは=NRとして任意に存在し;
およびRは、それぞれ独立して、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;
並びに
Tは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基である)を有するポリエチレンを提供すること;および
(b-i)一般式(XIa)または(XIb)を有する前記ポリエチレンをジアミンHN-R-NHまたはアンモニアNHと反応させて、一般式(X)を有するアミンを得ること
を含む。
【0264】
さまざまな実施態様において、一般式(X-1)または(X-2)における-A=R結合は、一般式(XIb)を有するポリエチレン(例えばPE-アルデヒドまたはPE-CHO)をHN-R-NHと反応させることによって作り出す。
【0265】
一般式(VIII-1)または(VIII-2)によって表されるポリエチレン高分子を調製する方法も提供され、該方法は:
(i)一般式(XIb):
【0266】
【化41】
【0267】
(式中、
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20アルキニル、C-C20アルコキシ、C-C20アルコキシアルキル、C-C20アルキルカルボニルおよびC-C20アルキルカルボニルアルキルからなる群から選択され;並びにTは、水素およびメチルからなる群から選択される末端基である)を有するポリエチレンを提供すること:および
(ii)一般式(XIb)を有する前記ポリエチレンをペンダントNHを含有するノルボルネンジカルボキシイミドと反応させて、ポリエチレン高分子を得ること(ここで、ノルボルネンジカルボキシイミドは、一般式(XII):
【0268】
【化42】
【0269】
(式中、
10は、単結合、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシアルキル、任意に置換されたアルキルカルボニルまたは任意に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され;およびZは、CR、O、NR、SiR、PRまたはSから選択され、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニルおよび任意に置換されたアルキニルからなる群から選択される)によって表される)
を含む。
【0270】
さまざまな実施態様において、工程(ii)および工程(b-i)の少なくとも1つは、有機溶媒および/または塩基の存在下で実施する。
【0271】
さまざまな実施態様において、工程(ii)および/または工程(b-i)は、有機溶媒の存在下で行う。有機溶媒は、非極性溶媒であり得る。さまざまな実施態様において、工程(ii)および/または工程(b-i)についての有機溶媒は、トルエンなどの芳香族溶媒である。有利なことに、さまざまな実施態様において、縮合反応からの水の除去は、トルエンを溶媒として使用するとき、より効率的である。さまざまな実施態様において、ベンゼン、トルエン、p-キシレン、テトラリンまたはデカリンなどの非極性溶媒を、使用し得る。さまざまな実施態様において、工程(ii)および/または工程(b-i)についての有機溶媒は、ハロゲン化溶媒である。ハロゲン化溶媒は、ジクロロベンゼンなどの塩素化溶媒であり得る。さまざまな実施態様において、使用する有機溶媒は、工程(ii)および(b-i)について同じである。使用する溶媒の種類は、使用する反応物の種類に依存し、上記に限定されないことが理解されるべきである。
【0272】
さまざまな実施態様において、工程(ii)および/または工程(b-i)は、塩基の存在下で行う。塩基は、第三級アミンまたはピリジンから選択される有機塩基であり得る。さまざまな実施態様において、第三級アミンは、トリエチルアミンから選択される。
【0273】
さまざまな実施態様において、工程(ii)および/または工程(b-i)は、約80℃から約200℃の範囲の温度で行うまたは取り組む。工程(ii)および工程(b-i)を行う温度は、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、約180℃、約190℃、または約200℃の温度から独立して選択し得る。
【0274】
さまざまな実施態様において、工程(ii)および/または工程(b-i)は、約30分から約3日の範囲の期間、行うまたは取り組む。工程(ii)および工程(b-i)を行う期間は、約30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、20時間、1日、2日または3日の時間から独立して選択し得る。
【0275】
生物活性ポリエチレンコポリマーを含む材料
薬剤における使用のための、本明細書において開示するコポリマーを含む材料もまた、提供される。さまざまな実施態様において、材料は、おむつおよび生理用品などの消費者ケア製品、創傷包帯、皮膚足場、骨足場、骨および骨髄オルガノイド足場、関節インプラントおよび軟骨インプラントなどのインプラント、腸ステントなどの医療デバイスからなる群から選択される器具の一部であるか、またはその上で使用する。例えば、材料は、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーを含む組織再生用の足場、創傷包帯または医療デバイスであり得る。材料は、医療デバイスにおいて使用するポリエチレンの生体適合性をコラーゲン産生の刺激を通して増加させるのに適した材料であり得る。材料は、創傷治癒を促進するのに適した材料であり得る。材料は、(RGDまたはコラーゲンなどの生物活性部分を組み込むことによって)皮膚組織の再生のための材料であり得る。材料は、(ヒアルロン酸またはRGDなどの生物活性部分を組み込むことによって)軟骨再生のための膝関節インプラントであり得る。材料は、創傷包帯または組織および血清取扱デバイスにおける使用について適した抗菌材料であり得る。材料は、コラーゲンを組み込むことによっておむつなどの皮膚接触製品における快適さを増加させるための材料であり得る。
【0276】
さまざまな実施態様において、材料は、エレクトロスピニング、溶融押出、ホットメルト押出、射出成形、フィラメント溶解製法または熱溶解積層法タイプの三次元印刷、メルトブロー等を介して加工する。
【0277】
さまざまな実施態様において、材料または生物活性ポリエチレンコポリマーは、人体または動物の体上/中で使用するとき、毒性反応/応答、免疫反応/応答、損傷などの有害な生理学的応答を実質的にまたは有意に引き出すことなく、生物系または生物系の一部と適合している。さまざまな実施態様において、ポリマーは、有害な生理学的応答を引き出す物質が実質的にない。
【0278】
細胞増殖または軟骨組織若しくは皮膚組織の再生などの組織再生、または創傷治癒を加速する/刺激する/促進する方法もまた、提供され、該方法は、本明細書において開示する生物活性活性コポリマーまたは材料をヒトまたは動物の体に投与すること/適用することを含む。
【0279】
細胞増殖または組織再生、または軟骨組織若しくは皮膚組織の再生などの創傷治癒を加速する/刺激する/促進するための薬剤の製造における、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーまたは材料の使用もまた、提供される。
【0280】
例えば、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーまたは材料の実施態様は、糖尿病足病性潰瘍などの糖尿病患者上の創傷(例えば糖尿病関連の傷または創傷)の治癒を促進することにおいて有用であり得る。有利なことに、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーまたは材料の実施態様は、材料自体内に必要な刺激を有する包帯を作り出して、増強された回復率のために皮膚細胞の再生を促進するのに有用であり得る。そのような材料は、創傷包帯について有用であるだけでなく、改善された治癒結果のために増強された組織再生を必要とする他の医療デバイスにおいても有用であろう。そのような用途のいくつかは、軟骨細胞によるインプラントの周囲でのコラーゲンの堆積が移植からの回復に役立つ軟骨インプラントを含み得る。
【0281】
バイオフィルム根絶のための、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーまたは材料の使用もまた、提供される。
【0282】
さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーは、幹細胞および/または増殖因子が実質的にない。さまざまな実施態様において、生物活性ポリエチレンコポリマーは、非生物付着性である。
【0283】
さまざまな実施態様において、生物活性部分は、コポリマーに直接化学的に連結している。さまざまな実施態様において、生物活性部分は、ポリマーマトリックス中にカプセル化されていない。
【0284】
さまざまな実施態様において、生物活性部分(例えば、ペプチド)は、アミノ酪酸スペーサーを介してノルボルネンジカルボキシイミドに結合していない。
【0285】
さまざまな実施態様において、生物活性部分は、特定の配列を有する構造的に明確に定義されたコラーゲンを含む。さまざまな実施態様において、生物活性部分は、広い分子量分布および/若しくは不明確な構造を有する、並びに/または人体において負の免疫応答を引き出す(illicit)ことが知られている、動物由来のコラーゲンが実質的にない。
【0286】
さまざまな実施態様において、ポリエチレングリコールは、そのままではモノマーとして使用しない。例えば、さまざまな実施態様において、エチレングリコール単位は、コポリマー/高分子中に末端基として存在しない。
【0287】
本明細書において開示する生物活性ポリエチレンポリマーおよび/または方法の実施態様は、光活性化などの活性化方法でのコポリマーからの薬物分子などの生物活性分子のいかなる放出をも含まない。生物活性ポリエチレンポリマーの実施態様は、光切断可能な基が実質的にない。
【図面の簡単な説明】
【0288】
図1図1は、本明細書において開示するさまざまな実施態様に従う生物活性ポリエチレンポリマーの概略図100である。
図2図2は、純粋なRGDペプチド(「RGD(PURE)」)、NBPEG1000RGDマクロモノマー(「NB PEG1000RGD」)、NBPEホモポリマー(「PE」)およびコハク酸末端ポリエチレン(SAt-PE)-PEGRGDコポリマー(「(RGD)ROMP」)の熱重量分析および示差操作熱量測定(TGA-DSC)グラフを示す。
図3A図3Aは、対照と比較した、本明細書において開示するさまざまな実施態様に従って調製したPE-ペプチド系材料の生体適合性を示すグラフである。結果は、ヒトの表皮を除去した真皮モデル上で培養したヒトケラチノサイト上の細胞生存率試験から得た。医療グレードのポリプロピレンとブレンドした生物活性PEの3D印刷シートを、皮膚モデルに24時間および48時間適用した(ここで、6個のペプチド(SRGDS、RGDS、(IRIK)、(GPHyp)、DGEAおよびRGD)のマクロモノマーを、PEのマクロモノマーと共重合した)。比較例は、市販の包帯Allevyn(すなわちポリウレタンフォーム)およびActicoat(すなわち銀系ポリプロピレン不織包帯)である。使用した対照は、側鎖としてPEおよびmPEG1000を有するポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)を含む。
図3B図3Bは、対照と比較した、本明細書において開示するさまざまな実施態様に従って調製したたPE-ペプチド系材料の生体適合性を示すグラフである。結果は、エクスビボヒト皮膚モデルとしての、ヒトの表皮を除去した真皮モデル上での細胞生存率試験から得た(ここで、6個のペプチド(SRGDS、RGDS、(IRIK)、(GPHyp)、DGEAおよびRGD)のマクロモノマーを、PEのマクロモノマーと共重合し、生物活性コポリマーを、ポリプロピレンとブレンドし、フィラメント中に押し出し、シート中に3D印刷し、次いでヒト皮膚モデルに適用した)。比較例は、市販の包帯Allevyn(すなわちポリウレタンフォーム)およびActicoat(すなわち銀系ポリプロピレン不織包帯)である。使用した対照は、側鎖としてPEおよびmPEG1000を有するポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)を含む。
図4図4は、材料適用の3日後の予備的なエクスビボ創傷閉鎖試験から得たヒト皮膚サンプルの断面ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色画像を示す。比較例は、市販の包帯Allevyn(すなわちポリウレタン系包帯)である。使用した対照は、側鎖としてPEおよびmPEG1000を有するポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)を含む。
図5図5は、PE-ペプチド系材料の3日の適用後の予備的なエクスビボ創傷閉鎖試験から得たヒト皮膚サンプルの断面ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色画像を示す。PE-ペプチド系材料は、6%のRGDマクロモノマーと共重合したPEのマクロモノマーであり、最終の生物活性ポリエチレンコポリマーは、0.1%、1%および3%のブレンド比で医療グレードのポリプロピレンとブレンドしている。
図6図6は、生物活性アミン末端ポリエチレン(PE)-RGDコポリマーの熱重量分析および示差走査熱量測定(TGA-DSC)グラフを示す。
図7図7は、市販の創傷包帯であるActicoatおよびAllevynと比較した、本明細書において開示するさまざまな実施態様に従って調製したPE-ペプチド系材料の生体適合性を示すグラフである。結果は、PLAと1:4の比でブレンドしたPERGDコポリマー上でのHs27ヒト皮膚線維芽細胞の生存率試験から得た。医療グレードのPLAとブレンドしたPERGDコポリマーは、10%FBSおよび1%Pen/Strepを有するDMEM中で増殖させたHs27ヒト線維芽細胞を用いた生体適合性試験のためにナノファイバー中にエレクトロスピニングした。
【実施例
【0289】
本開示の例示的な実施態様は、以下の実施例、表および該当する場合は図面と併せて、よりよく理解され、当業者には容易に明らかであるであろう。本発明の範囲から逸脱することなく、構造的、および化学的変化に関連する他の修飾を行い得ることができることが理解されるべきである。例示的な実施態様は、いくつかは、1つ以上の実施態様と組み合わせて新しい例示的な実施態様を形成し得るため、必ずしも相互に排他的ではない。例示的な実施態様は、開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0290】
実施例1:生物活性ポリエチレンコポリマーを構築することへのモジュラーアプローチ
ペプチド、炭水化物または薬物分子のいずれかを含有する生物活性マクロモノマーの構築のための一般的な戦略を、開発した。単純な2工程の合成が、さまざまな鎖長の生物活性マクロモノマーの広いライブラリーの迅速な構築を可能にし、これが、標的の用途において必要とされる所望の生物活性を有する合成ポリマー(すなわちポリエチレン)の素早い開発を可能にする。生物活性マクロモノマーを所望の物理的特性を有する合成ポリマーのマクロモノマー(すなわちポリエチレン)と適合させることにより、さまざまな用途に適するように所望の高分子を構築するためのモジュラーアプローチが、このライブラリーを使用して可能となる。迅速なポリマーのカスタマイズをすなわち、達成することができる。
【0291】
スキーム1に示すように、所望の生物活性材料を設計する/構築するためのモジュラービルディングブロックシステムを、開発した。いったん標的の医療用途を特定すると、「プラグアンドプレイ」アプローチ(スキーム1)を使用して、治療効果を有するだけでなく、容易な保管および取扱いに必要な機械的特性も有する、所望の生物活性ポリエチレン材料を作り出すことができる。
【0292】
【化43】
【0293】
モジュラーアプローチを使用することにより、モノマーの末端で生物活性分子からなるマクロモノマーを作り出し、他の合成ポリマー(すなわちポリエチレン)と共重合して、標的の生物活性を有する生物活性ポリエチレンコポリマーを作り出すことができる。所望のポリマーは、生物活性分子を、カルボン酸基を有する任意のペプチドまたは炭水化物に切り替えることによって、本明細書において開示するさまざまな実施態様に従って開発した戦略を使用して高度にカスタマイズ可能である。これが、いったん標的の用途を特定すると、生物活性ポリマーの迅速な合成を可能にする。作り出した生物活性ポリマーは、皮膚細胞の再生、骨細胞の再生、抗菌活性、軟骨組織の再生、創傷治癒、コラーゲン産生、抗炎症からコレステロール合成阻害(例えば、薬物としてアトルバスタチンを使用して)に至る特性を有し得、ニーズに依存して、機械的に頑丈であるように作製することができる。モジュラー合成は従って、用途のポリマー特性への適合をはるかに単純でかつ効果的にする。
【0294】
実施例2:生物活性ポリエチレンコポリマーを調製する方法
本明細書において開示するさまざまな実施態様に従って生物活性ポリエチレンコポリマーを調製する方法は、生物活性分子のマクロモノマーおよびポリエチレンを別々に作り出すこと、および開環メタセシス重合(ROMP)技術を使用して、これらのさもなければ相互に適合しない分子を一緒に連結することを含む。結果は、生物活性分子および材料の全体的な機械的強度のためのポリエチレンの両方を有するブラシポリマーである(スキーム2)。マクロモノマーを別々に作り出すことにより、発明者らは、臨床医または医療技術企業がそこから選択するさまざまな特性を有するマクロモノマーのライブラリーを構築することができ、所望の治療効果を有する材料を、標的の用途に適するように、簡単にかつ迅速に構築することができる。マクロモノマーを別々に作り出すことにより、発明者らはまた、生物医学実験室における有効性の迅速な試験のための、マクロモノマーおよび最終的なコポリマーのライブラリーを構築することもできる。これらのマクロモノマー(MM)のさまざまな組合せはまた、実験室における生物活性の迅速なスクリーニングのための、さまざまな生物活性分子を含有する明確に定義されたブラシコポリマーのライブラリーも生成し得る。
【0295】
以下の実施例においては、ポリエチレンおよびポリエチレングリコール(PEG)部分上につながれた生物活性分子のペンダントアームを含有するブラシポリマーを、作り出した。生物活性分子は、3~20個のアミノ酸残基からの、20個の天然アミノ酸の任意の組合せのペプチド配列、グリコサミノグリカンなどの炭水化物または特定の抗生物質などのカルボン酸末端を含有する薬物分子から選択される生体分子を含み得る。生体分子はまた、DGEA、(Gly-Pro-Hyp)および(Pro-Hyp-Gly)などの、任意の配列の3~20個のアミノ酸残基からのコラーゲン模倣ペプチドも含み得る。用途に依存して、開環メタセシス重合による、本明細書において開示するブラシポリマー技術を使用して、目的の生物活性を有する生体分子を、選択し、ポリエチレンと一緒に共重合することができる。
【0296】
得られたポリマーは、良好な材料の取扱いおよび加工性のためのはるかにより良好な物理的および機械的特性を有しながら、関与する生体分子の生物活性を示す。
【0297】
生物活性ポリエチレンコポリマーを引き続き、ペンダントアーム(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン)上のそれと同様のポリマーとブレンドして、カテーテル、創傷包帯、組織足場、形成外科インプラント、補綴部品、軟骨関節インプラントなどのバイオ医療デバイスにおける使用のための生物活性材料を作り出すことができる。
【0298】
本明細書において開示するさまざまな実施態様に従って生物活性ポリエチレンコポリマーを調製する合成経路を、スキーム2に例示する。
【0299】
【化44】
【0300】
実施例3:生物活性マクロモノマーおよび合成方法
本明細書において開示するさまざまな実施態様に従う生物活性マクロモノマーの合成のための一般的な戦略を、開発した。さまざまな鎖長のポリエチレングリコールジアミン(例えば、M=1,000-6,000)を、シス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物と反応させて、主要なマクロモノマー体、すなわちノルボルネンジカルボキシイミドおよびポリエチレングリコール(NBPEG)を含有するマクロモノマー体を作り出す(スキーム3.1)。いったんNBPEGを作り出すと、さまざまなペプチド、炭水化物または薬物分子を次いで、これらのNBPEG鎖と反応させて、所望の治療特性を有する生物活性マクロモノマーを作り出す。
【0301】
マクロモノマーの本体を用いて、生物活性分子上のカルボン酸末端を使用して、NBPEG-NH上のアミン基と炭水化物またはペプチドのカルボン酸末端との間にペプチド/アミド結合を形成する縮合反応により、任意のペプチド、炭水化物または薬物分子(R)を使用することができる(スキーム3.2)。薬物分子の例は、アモキシシリンまたはシプロフロキサシンなどの抗生物質を含む。さまざまな実施態様において、Rは、抗菌ペプチド(IRIK)または(IKKI)のコポリマー;ヘパリンオリゴ糖DP10、DP12、DP14、細胞外マトリックスペプチドCOLまたはRGDであり、ここで、COLは、DGEA、(GPHyp)または(PHypG)、または(PGHyp)であり得る。さまざまな実施態様において、Rは、COH基、または20個の天然アミノ酸から形成される、3~20個のアミノ酸残基のペプチド配列を有する、炭水化物または薬物分子である。さまざまな実施態様において、Rは、DP12、DP14、COLまたはRGDであり、ここで、COLは、DGEAまたは(GPHyp)またはP、HypおよびGの任意の組合せであり得る。炭水化物がカルボン酸基を有さない場合、それを含むような炭水化物の修飾が必要であり得る。あるいは、アミン置換反応または還元的アミノ化反応をまた、炭水化物のヒドロキシ基またはカルボニル基上に行うこともできる。
【0302】
【化45】
【0303】
【化46】
【0304】
実施例4:ポリエチレンマクロモノマーおよび合成方法
ポリエチレン(PE)マクロモノマーは、コハク酸末端または第一級アミン末端を用いて作り出し得る。
【0305】
コハク酸末端を有するPEマクロモノマーを作り出すために、低分子量および多分散性のビニル末端ポリエチレンを無水マレイン酸と反応させて、コハク酸末端ポリエチレン(SA-t-PE)を得る。このPEを次いで、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)および最後に、シス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物と反応させて、所望のPEマクロモノマーを作り出すことができる(スキーム4.1)。
【0306】
マクロモノマー形成のためにポリエチレン(PE)上に第一級アミン末端を得るために、ビニル末端PEのヒドロアミノメチル化を、ワンポットの2工程プロセス(ここでは、それをまずヒドロホルミル化を介して直鎖カルボニルに変換し、その後ヘキサメチレンジアミン(HMDA)の存在下での還元的アミノ化を行う)で行う(スキーム4.2)。アミン末端PEの取得後、シス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物との縮合が、PEマクロモノマーをもたらし(スキーム4.3)、これを、それ自体または他のマクロモノマーのいずれかを用いたブラシポリマーの形成において使用することができる。
【0307】
【化47】
【0308】
【化48】
【0309】
【化49】
【0310】
実施例5:開環メタセシス重合触媒
生物活性マクロモノマーおよび合成ポリマー(すなわちPE)マクロモノマーの両方を用いて、最終の生物活性ポリエチレンコポリマーを、グラブス型触媒1を使用するROMPによって調製する(スキーム5)。
【0311】
【化50】
【0312】
実施例6:生物活性ポリエチレンコポリマーの例
図1は、本明細書において開示するさまざまな実施態様に従って設計した生物活性ポリエチレンコポリマー100を示す。生物活性ポリエチレンコポリマー100は、ポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)主鎖102、ポリエチレン104a、104bおよび104cのペンダントアーム、並びにPEG鎖108a、108bおよび108cにつながれた生物活性分子106a、106bおよび106cのペンダントアームを含む。概略図に示すように、ペンダントアームは、ポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)主鎖102に付着している。106a、106bおよび106cは、同じまたは異なるタイプの生物活性部分であり得る。
【0313】
生物活性分子の例は、20個の天然アミノ酸から形成される、3~20個のアミノ酸残基のペプチド配列、DGEA、(Gly-Pro-Hyp)および(Pro-Hyp-Gly)、(Hyp-Pro-Gly)、(Gly-Hyp-Pro)、(Hyp-Gly-Pro)および(Pro-Gly-Hyp)などの任意の配列の3~20個のアミノ酸残基からのコラーゲン模倣ペプチド、グリコサミノグリカンなどの炭水化物または特定の抗生物質などのカルボン酸末端を含有する薬物分子から選択される生体分子を含む。
【0314】
コラーゲンは、それらの皮膚適合性および報告されている皮膚組織を再生する能力のため、スキンケアおよび創傷ケア業界において人気のある材料である。さらに、それらは、癌につながる可能性がある、過度に活性な組織再生を防止するのに十分に穏やかである。コラーゲン自体の親水性は、皮膚における水分補給を保つ能力が過度に乾燥した皮膚から生じる皮膚炎を防止するため、それを、スキンケア製品についての魅力的な材料とする。それゆえ、コラーゲン断片およびコラーゲン模倣物の使用は、おむつ製造用に、ポリプロピレン基材中にブレンドするためのポリマーを作り出すためにPEにおいて使用し得る。
【0315】
ヒアルロン酸(HA)およびコラーゲン(COL)などの天然に存在する生体ポリマーは、細胞の増殖(growth)および増殖(proliferation)を支援することが示されている。いくつかの研究は、HAが糖尿病足病性潰瘍(DFU)の治癒率を著しく改善することを示した。HAは、軟骨の再生を促進することが報告されている。コラーゲンゲルまたは凍結乾燥コラーゲンパッドは、創傷治療用に市販されている。ウシコラーゲンで作られたコラーゲン足場であるインテグラは、現在、火傷治療についてのゴールドスタンダードである。コラーゲンの皮膚組織を再生する能力、および高度に生体適合性である材料であることは、それを、創傷治癒材料について非常に魅力的な材料とする。
【0316】
HAおよびCOLの他に、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)ペプチドは、骨、軟骨および皮膚の細胞の両方の増殖を促進することが報告されているさらに別の1つの興味深いペプチドである。RGD配列は、コラーゲンおよびフィブリンなどの細胞外マトリックス(ECM)構成要素に結合するECMの高分子量糖タンパク質であるフィブロネクチンの最小結合ドメインである。RGDペプチド配列は、創傷治癒プロセスに寄与する細胞表面インテグリンと相互作用することによって細胞活性を調節することが知られている。RGDペプチドで修飾した材料は、細胞の接着、拡散および創傷治癒を促進することが報告されている。RGDはまた、軟骨発達の調節について必要とされる形質転換増殖因子(TGF-β)活性化のためのインテグリン結合を可能にする。そのため、RGDは、創傷治癒および軟骨修復のための材料開発において考慮する重要なペプチドである。
【0317】
例は、迅速な皮膚の再上皮形成が必要とされる慢性創傷の治療用の創傷包帯材料の開発であろう。RGDは、細胞の付着、移動および増殖のためにインテグリンに結合することができるペプチド配列である。そのため、RGDのマクロモノマーを、作り出す(スキーム6a)。包帯は長い貯蔵寿命および良好な機械的強度を有しながら不活性であることが必要とされるため、ポリエチレン含有マクロモノマーをこのRGD含有マクロモノマーと一組にして、最終的なRGDおよびPEのコポリマーを作り出す(スキーム6b)。材料は、生体適合性であることが試験されており、ヒト皮膚同等モデルを使用して再上皮形成を促進する。
【0318】
【化51】
【0319】
RGDは、良好なインテグリン結合剤および骨増殖因子結合剤であるため、それはまた、PEマクロモノマーと一組にして、骨および骨髄オルガノイド作成のための基質または足場材料としての使用のための生物活性コポリマーを作り出すこともできる。ポリマーを構築することにおけるそのようなモジュラーアプローチは、さまざまな生物活性マクロモノマーの合成マクロモノマーとの適合が、標的の用途に基づく機械的に強い治療材料を迅速に作り出すことを可能にする。
【0320】
RGDは、その酸末端、またはカルボン酸官能基を有する任意の炭水化物またはアモキシシリン若しくはシプロフロキサシンなどの任意の薬物分子を介して、任意のペプチド配列で置き換えることができる。
【0321】
例えば、5個と10個との間の二糖単位のヘパラン硫酸(HS)鎖などのグリコサミノグリカン(GAG)を、生物活性部分として使用し得る。理論によって拘束されるものではないが、HS鎖は、骨形成タンパク質(BMP)、特に筋芽細胞を骨芽細胞に分化転換することができるBMP-2に対して活性であると考えられている。理論によって拘束されるものではないが、六二糖単位を有するHS断片であるDP12は、BMP-2について最も高い結合親和性を有すると考えられている。
【0322】
生物活性材料はまた、コラーゲン断片および模倣物で作り出し得る。骨は、機械的ストレスに適応し、骨格組織の完全性を維持するために、人のライフサイクル全体を通して自分自身を再構築する、石灰化されたコラーゲン組織である。現在の骨足場は典型的には、ときどきリン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトなどのいくらかのリン酸カルシウムセラミックスで石灰化された、コラーゲンスポンジでできている。コラーゲンの生体適合性並びにその骨および軟骨組織との類似性は、それを骨および軟骨についての理想的な足場材料とする。使用し得る可能性のあるいくつかのコラーゲン模倣物は、DGEA並びにさまざまな長さのグリシン、プロリンおよびヒドロキシプロリン配列を有するコラーゲン断片を含む。理論によって拘束されるものではないが、DGEAは、間葉系幹細胞の接着および骨芽細胞への分化を支援すると考えられている。さらに、理論によって拘束されるものではないが、細胞外マトリックス(ECM)は、主にコラーゲン材料であるため、コラーゲンはまた、優れた皮膚足場材料となると考えられている。研究されている他のECMペプチドは、ラットにおける創傷治癒を促進することが報告されているラミニン由来のペプチドA5G81を含む。
【0323】
組織再生生体分子のほかに、(IRIK)および(IKKI)などの細胞透過性ペプチドもまた、非生物付着材料への組込みのための生物活性部分として使用し得る。生物付着は、カテーテル、腸ステントおよびさらには創傷包帯などのバイオ医療デバイスにおいて、深刻な問題である。緑膿菌などのバイオフィルム形成細菌を標的とする能力は、ヒトに毒性でない一方で、そのようなペプチドをバイオ医療デバイス材料についての魅力的な候補にする。
【0324】
抗生物質などの薬剤分子もまた、ブラシポリマー中に組み込み得る。理論的には、カルボン酸末端を有する任意の薬物分子が、これらの生物活性合成ポリマーの作り出しを可能にするであろう。重合に成功した薬物分子のいくつかは、アモキシシリンおよびシプロフロキサシンを含む。ブラシポリマーは、抗菌デバイスにおける使用のためにも、作り出した。
【0325】
要約すると、ポリマーの設計および合成へのモジュラーアプローチを使用することによって、生物活性ポリエチレンコポリマーの迅速な構築のための生物活性マクロモノマーを作り出すための一般的な戦略を開発した。そのような治療材料合成へのモジュラーアプローチは、治療カスタマイズが各患者のニーズに適することを可能とし、そのため個人医療の理想的な状況に近づく。
【0326】
要約すると、ポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)主鎖上に側鎖としてペグ化生体分子を有するポリエチレンを有する一連のポリマーを、ROMP技術を介して開発した。これらのポリマーのいくつかの生体適合性および皮膚細胞生存率もまた試験し、生物活性における損失なしに過酷な材料加工温度に耐える材料の能力を実証した。本明細書において提示する一般的な戦略は、生物添加剤をポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)主鎖上のポリマー側鎖と同様のタイプのベースポリマーとブレンドすることができる、バイオ医療デバイス用の材料における該生物添加剤としての使用のための生物活性ポリエチレンコポリマーを作り出す方法を形成する。ポリエチレンの側鎖は、生体分子をベースの合成ポリマーとより適合するものとするのを助け、これが、それらを相分離なしに一緒にブレンドすることを可能にする。ブラシポリマーの形成はまた、極めて吸湿性である傾向があり、これが、材料としてのそれらの悪い取扱い性および低い加工性をもたらす、天然の生体分子自体と比較して、生体分子がより良好な構造的完全性を有することを可能にする。
【0327】
実施例7:コハク酸末端ポリエチレン(SA-t-PE)-ペプチドコポリマー
7.1.(SA-t-PE)-[(GPHyp)コポリマー
この実施例は、おむつなどの消費者製品における使用のための、ブラシポリマー合成によってコラーゲン断片または模倣物をポリエチレン中に組み込むための新しい戦略の開発を示す。作り出した生物活性ポリエチレンは、典型的には220℃で溶融押出によって起こる不織繊維製造用の医療グレードのポリプロピレン(PP)中にブレンドすることができる。皮膚の生体適合性を増強することが知られている、アルギニル-グリシル-アスパラギン酸(RGD)などの他のペプチドもまた、同様の戦略を使用して作製することができる。
【0328】
コハク酸末端ポリエチレン(SA-t-PE)は、文献の方法(Macromolecules 2009,42,4356-4358;Supporting Information中の2番目の例に従う)に従って得た。
【0329】
7.1.1.PEマクロモノマー
アミンハンドルをまず、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)を使用してSA-t-PE上に作り出し、その後アミン化PEをノルボルネンジカルボン酸無水物リンカー(シス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物)に接続して、PEマクロモノマーを作り出した(スキーム7.1)。
【0330】
7.1.2.ペプチドマクロモノマー
ペプチドマクロモノマーは、一方のアミン末端上でPEGジアミン(MW1,000~6,000)をシス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物と反応させ、その後PEGジアミンの別のアミン末端上で適切なペプチドと2回目の縮合反応を行うことによって調製した(スキーム7.2)。
【0331】
(GPHyp)、(PGHyp)などのコラーゲン断片、DGEAなどのコラーゲン模倣物、RGD、SRGDSなどの細胞外マトリックスペプチドのマクロモノマーもまた、この一般的な戦略を使用して調製した。
【0332】
7.1.3.PE-ペプチドコポリマー
いったん両方のマクロモノマーを合成すると、開環メタセシス重合を、グラブス触媒を使用してマクロモノマー上で行い(スキーム5、触媒1)、所望のPE-ペプチドコポリマーを得た(スキーム7.3)。
【0333】
合成したコポリマーは、5:1のPE:ペプチドモノマー比にもかかわらず、ポリマー中に平均6%のペプチド組込みを示した。これはおそらく、ベンゼン中のペプチドマクロモノマーの悪い溶解性のためである。トルエンなどの他の非極性溶媒は最悪であり、2%以下のRGD組込みである。極性溶媒は一般に、PEを溶解しない。
【0334】
合成の際、ポリマーを、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を使用してグラブス触媒からの残留金属についてチェックし、金属含有量が0.1ppm未満であることを確かめる。クラス2B医療デバイスにおけるRuについてのFDA許容吸入限界は、0.1μg/gである。5kgの赤ちゃんについては、これは、0.5mgのRuに相当する。各使い捨ておむつがそのカバーとして10gの不織PE-COLシートを使用し、PP中のPE-COLのブレンド比を3%であると仮定すると、材料中に0.3gのPE-COLがある。0.1ppmRuでは、0.3gの材料中に検出されるRuの量は、0.03μgである。これは、クラス2BデバイスについてのFDA限界をはるかに下回る。おむつのような用途については、そのようなRu限界は、取るに足らない。
【0335】
【化52】
【0336】
【化53】
【0337】
【化54】
【0338】
7.2.SA-t-PERGDコポリマー
本実施例は、創傷治癒および軟骨修復における用途のための、ポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)主鎖上に、ポリエチレン側鎖を有する、RGD、HAおよびコラーゲン断片などのペグ化生体分子を有するブラシポリマーの開発を示す。
【0339】
コハク酸末端ポリエチレン(SA-t-PE)は、文献の方法(Macromolecules 2009,42,4356-4358;Supporting Informationの2番目の例に従う)によって調製した。SA-t-PEを作製するために使用するPEは、ノルボルネンなどのリンカーユニット上にグラフトして、そのようなPE側鎖を含むブラシポリマー中にさらに重合させるであろうマクロモノマーを作り出すことにおける使用についてちょうどよい、1,400~5,000のMW範囲中にある。
【0340】
7.2.1.PEマクロモノマー
アミンハンドルを、まずヘキサメチレンジアミン(HMDA)を使用してSA-t-PE上に作り出し、その後アミン化PEをノルボルネンジカルボン酸無水物リンカー(シス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物)に接続して、PEマクロモノマーを作り出した(スキーム7.1)。
【0341】
7.2.2.ペプチドマクロモノマー
ペプチドマクロモノマーは、一方のアミン末端上でPEGジアミン(PEのMW範囲に依存してMW1,000~6,000)をシス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物と反応させ、その後PEGジアミンの別のアミン末端上で適切なペプチドと2回目の縮合反応を行うことによって調製した(スキーム7.2)。
【0342】
7.2.3.PE-ペプチドコポリマー
いったん両方のマクロモノマーを合成すると、開環メタセシス重合を、グラブス触媒を使用してマクロモノマー上で行い(スキーム5、触媒1)、所望のPE-RGDコポリマー(SA-t-PERGD)を得た(スキーム7.4)。
【0343】
合成したコポリマーは、5:1のPE:RGDモノマー比にもかかわらず、ポリマー中に平均6%のRGD組込みを示した。これはおそらく、ベンゼン中のRGDPEGNBマクロモノマーの悪い溶解性のためである。トルエンなどの他の非極性溶媒は最悪であり、2%以下のRGD組込みである。極性溶媒は一般に、PEを溶解しない。
【0344】
合成の際、ポリマーを、ICPMSを使用してグラブス触媒からの残留金属についてチェックし、金属含有量が0.1ppm未満であることを確かめる。各軟骨インプラント(骨軟骨プラグ)が作製のために1gのPEを使用すると仮定すると、10%の生物活性PEブレンド比で、インプラント材料中に0.1gの生物活性PEがある。0.1ppmRuでは、0.1gの生物活性PE中に検出されるRuの量は、0.01μgである。これは、吸入による100μg/日または1μg/日のFDAの1日あたりの経口暴露限界をはるかに下回る。
【0345】
【化55】
【0346】
7.3.熱安定性
ICP-MSの後、熱重量分析および示差走査熱量測定(TGA-DSC)の測定値を、純粋なRGD、NBPEGRGD、NBPEホモポリマーおよびPE-co-PEGRGDコポリマー(PE-RGD)上で得、ポリマーの熱安定性を確かめた。DSC曲線から、材料が3D印刷または不織繊維製造のいずれかについてのPEまたはPPの典型的な溶融加工温度よりもはるかに高い温度である>450℃(467℃)で単相劣化/重量損失を受けることが示される。それゆえ、材料の増強された熱安定性が、生体分子の組込みにもかかわらず実証された。
【0347】
純粋なRGDは、そのマクロモノマーNBPEG1000RGD(250~400℃)よりも低い、およびそのPE-RGDコポリマー(400~500℃)よりもさらにはるかに低い温度(150~250℃)で分解することが観察された。NBPEGRGDは、最初の分解がRGD基の損失のためであり、その後PEG鎖の分解が約250℃から起こる、2相分解(重量損失)を示した。PE-RGDコポリマーは、466℃で50%の重量損失を受けるのみであり、これは、ポリマーを使用可能なデバイスに加工するための、溶融押出またはフィラメント溶解製法(FFF/FDM)などのほとんどの材料加工方法の使用を可能にする。PEGへの付着およびその後のノルボルネンジカルボキシイミド主鎖上のROMPを介したPEとの共重合の際の、RGDの熱安定性における著しい増強が従って、ここで明らかである。
【0348】
7.4.生体適合性
生物活性PEを、医療グレードのポリプロピレン粉末と0.1~10%のさまざまな比でブレンドして、製剤を作り出した。製剤を次いで、二軸フィラメント押出機を使用して190℃で溶融押出して、フィラメント溶解製法(FFF)プリンター品質のフィラメントを作り出し、これを次いで、ヒト皮膚モデル上でのエクスビボ試験のための、1.5×1.5mmの細孔を有する2×2cmの材料のシートを作り出すために、プリンターに供給した。
【0349】
本明細書において開示するさまざまな実施態様に従って設計したポリマーの生物活性を実証するために、ヒト皮膚試験を、バイオマクロモノマー上に付着したペプチドを有するポリマーのいくつかを使用して行った。生体活性合成ポリマーを、基材としての医療グレードのPPとブレンドした。そして、PPは、179℃のより高い融点を有する。ポリマーブレンドを、フィラメント押出機を使用して220℃でフィラメント中に押し出し、その後FFF印刷を行って、組み込まれた細孔を有するシートを得た。シートを次いでヒト皮膚モデル上で試験し、明らかに、本明細書において開示するさまざまな実施態様に従って設計した材料は、Allevyn(ポリウレタンフォーム)およびActicoat(銀系不織包帯)などの市販の包帯と比較して、はるかにより良好な皮膚細胞生存率を示した(図3Aから図3B)。これらは、慢性創傷患者のための、病院において最も一般的に処方される2つの創傷包帯である。これらの皮膚データで、生物活性合成ポリマーの効果および過酷な材料加工温度(220℃)に耐えるそれらの能力が、実証された。付着した生体分子の生物活性は、そのような温度でさえ失われず、これは、材料加工についての高い安定性およびさまざまな治療についての生物有効性を有する生物活性ポリマーを作り出す本開示の能力を実証する。
【0350】
生体適合性試験は、皮膚バンクから得たケラチノサイトを使用して表皮を再成長させることによって皮膚モデルを再構築するためにヒトの真皮を使用してSRISのヒト組織研究室において行った。試験は、その内容が参照により完全に本明細書に組み込まれるTopping,G. et al.(Primary Intention:The Australian Journal of Wound Management,2006,14(1),14-21)に従う、報告された標準プロトコルに従って行った。簡単に言うと、包帯材料を、皮膚生存率を支援するために皮膚に提供する媒体を有する皮膚モデル上に適用した。包帯を24時間時(図3A)および48時間時(図3B)に除去し、皮膚サンプルを、アラマーブルーで染色し、それぞれ90分間インキュベートし、染色を蛍光分光法によって分析して、生細胞の量をチェックした。
【0351】
コポリマーは、合成ポリマーとしてPEを、生物活性マクロモノマーとしてさまざまな特性の広範なペプチド、すなわち抗微生物ペプチド;IRIK;コラーゲン断片(GPHyp):GPHyp;コラーゲン模倣物:DGEAおよびインテグリン結合ペプチド:RGD、SRGDSおよびRGDSを使用して作り出した。コポリマーを引き続き、ポリプロピレンとブレンドし、シート中に3D印刷し、AllevynおよびActicoatなどの市販の創傷包帯に対する細胞生存率および生体適合性について試験した。
【0352】
エクスビボ試験から、コラーゲン系材料である、(GPHyp)およびDGEAはともに、24時間時点で、対照と比較して増強された細胞生存率を示したことがわかる。SRGDSもまた、対照をわずかに上回った(図3A)。48時間時点で、SRGDSおよびGPHypはともに良好な細胞生存率を保持しており、これは、それらの、ヒト皮膚との生体適合性を実証する(図3B)。(IRIK)などの抗微生物ペプチドで作製した生物活性PEでさえ、市販の抗微生物包帯であるActicoatと比較して、妥当な生体適合性を示した。
【0353】
PE-ペプチド系材料の3日適用後の予備的なエクスビボ創傷閉鎖試験から得たヒト皮膚サンプルの断面ヘマトキシリン染色およびエオシン染色(H&E)画像を、図4および図5に提供する。比較例は、市販の包帯Allevyn(すなわちポリウレタン系包帯)である。使用した対照は、側鎖としてPEおよびmPEG1000を有するポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)を含む。PE-ペプチド系材料は、RGDのマクロモノマーと共重合したPEのマクロモノマーであり、それぞれ0.1%、1%および3%のPE-RGDコポリマーの比でポリプロピレンとブレンドしている。
【0354】
要するに、PEGおよびノルボルネンジカルボキシイミドリンカーを使用して、PEの、コラーゲンフ断片、コラーゲン模倣物、抗微生物ペプチド(IRIK)並びにRGDおよびSRGDSなどの細胞外マトリックスペプチドを含むさまざまなペプチドとのコポリマー材料を、調製した。該材料は、良好な生体適合性データだけでなく増強された熱安定性も示した。一般に、任意の配列の長さが3~20個のアミノ酸のペプチドおよび14個までの糖単位のオリゴ糖を、一般に使用することができる。
【0355】
7.5.結論
ペグ化ペプチドおよびコラーゲン断片のポリエチレン(PE)側鎖を含有するブラシポリマー中への組込みを通して、生物活性ポリエチレンを、消費者製品およびポリエチレンまたはポリプロピレン系医療デバイス用の不織繊維における使用のために作り出した。試験用のプロトタイプを作り出すために、これらのポリマーを、粉末として医療グレードのポリプロピレン中にブレンドし、FDMプリンターを使用して220℃でシート中に溶融押出した。ポリマーシートは、ヒト皮膚モデル上でエクスビボで試験し、ヒト皮膚との優れた生体適合性を実証した。他のペグ化ペプチドもまた、PE中への組込みの際に良好な生体適合性を実証した。実施例において示すように、ペプチドの熱安定性は、PE系ブラシポリマー中への組込みの際に劇的に改善した。任意の配列の長さが3~20個のアミノ酸のペプチドおよび14個までの糖単位のオリゴ糖を、一般に使用することができる。
【0356】
PEG化コラーゲン断片またはペプチドを含有するポリマー材料を、ポリノルボルネンジカルボキシイミド主鎖を使用するブラシポリマーとして、ポリエチレンを用いて開発した。ポリマーは、エクスビボヒト皮膚モデルを使用して、生体適合性および増強された細胞生存率の観点からペプチドの生物活性を示した。同時に、ポリマーはまた、467℃でのみ50%の材料重量損失を示したTGA-DSC曲線から明らかなように、改善された熱安定性も示した。ポリマーは、220℃で溶融押出し、ヒト皮膚上で試験したときに生物活性における損失は何ら示さなかったが、これは、コラーゲンのそれのような熱安定性および生物活性の両方を有する生物活性ポリエチレン材料を開発することにおける能力を実証する。材料は、従来の材料加工方法によって溶融加工することができ、これが、それらを、おむつなどの消費者製品用の有用な材料とする。それらはまた、ポリエチレンのそれらのような良好な機械的特性も実証した。
【0357】
創傷治癒を改善することが知られているペグ化生体分子のポリエチレンへの組込みを通して、使用する生体分子の生物活性、並びにポリエチレンの物理的特性の両方を有する、新規な材料を作り出した。RGDなどの細胞外マトリックスペプチド、コラーゲンおよびA5G81などのラミニン由来ペプチドは、皮膚細胞の増殖および創傷治癒を増強することが知られている。ブラシポリマーを、ポリノルボルネンジカルボキシイミド主鎖上に、ポリエチレン側鎖とともに、ペグ化側鎖上のこれらのペプチドを用いて作り出した。材料を次いで、FFFプリンターを使用してシート中に3D印刷し、ヒト皮膚モデル上で試験した。材料のエクスビボ試験は、対照としての市販の包帯と比較して改善された細胞生存率を示した。
【0358】
ポリエチレン側鎖およびペグ化ペプチドを有するブラシポリマーは、創傷包帯および他の医療デバイスなどの組織再生材料における使用のために作り出した。ペプチドをポリエチレン中に組み込むことにより、生物活性を、さもなければ不活性なポリエチレン中で作り出した。同時に、コラーゲン断片およびRGDなどのペプチドの熱安定性を、劇的に増強させた。ペプチドはまた、PEから相分離しなかった。これが、生物活性PEを、創傷包帯製造における不織繊維製造用に、ベースのポリプロピレン(PP)中にブレンドすることを可能にした。生物活性PEはまた、関節インプラントおよびステントなどの他のバイオ医療デバイスの作成用にPE中にブレンドして、より生体適合性であるPEを使用する結果として、インプラントを受ける患者における回復率を改善することができる。
【0359】
7.6.材料および方法
7.6.1.一般的な手順
開環メタセシス重合反応およびRGDマクロモノマー合成は、窒素雰囲気下、Vacuumu Atmosphereグローブボックス中で行った。SA-t-PEマクロモノマーは、周囲条件下で合成した。使用した全ての溶媒-Alfa Aesarからの無水ベンゼンおよび無水メタノールは、グローブボックス中で、購入したまま使用した。グラブス第2世代触媒は、Sigma Aldrichから購入し、全てのペプチド(RGDペプチドを含む)は、Biomatik Inc.から購入した。HMDAおよびPEGジアミンは、Alfa Aesarから購入した。全ての購入試薬は、さらなる精製なしに使用した。コハク酸末端ポリエチレン(MW15,000以下)は、文献(Macromolecules 2009,42,4356-4358;Supporting Information中の2番目の例に従う)に従って調製した。
【0360】
H NMRスペクトルは、Jeol 500MHz NMR分光計上で記録した。GPCクロマトグラムは、2PLgel Mixed Bカラム(300×7.5mm、粒子サイズ10μm)および1PLgel Mixed Bガードカラム(50×7.5mm)を備えたAgilent Infinity II High Temperature GPCシステム上で記録した。溶離液は、TCBであり、1ml/minの流速および160℃のオーブン温度である。ポリスチレンを、校正標準として使用した。
【0361】
7.6.2.PE MW1,400~5,000についてのSA-t-PEマクロモノマー(SA-t-PEHMDANB)の合成
SA-t-PE(6mmol)を250ml丸底フラスコ(rbf)中に秤量し、その後トルエン(120ml)を添加した。HMDA(18mmol)およびトリエチルアミン(6mmol)を次いで、加えた。混合物を次いで、水除去用にdean starkトラップを接続して、還流下で一晩撹拌した。混合物を次いで、冷却し、濃縮し、その後MeOHを添加して、ベージュ色沈殿物を得た。混合物を濾過し、残渣を、MeOHで洗浄し、真空オーブン中で一晩乾燥させて、SA-t-PEHMDAを定量的に得た。
【0362】
SA-t-PEHMDA(6mmol)を250mlのrbfに添加し、その後シス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物(6.5mmol)、トルエン(120ml)およびトリエチルアミン(6mmol)添加した。混合物を次いで、水除去用にdean starkトラップを接続して、一晩還流した。混合物を次いで、冷却し、濃縮し、その後MeOHを添加して、ベージュ色沈殿物を得た。混合物を濾過し、残渣を、MeOHで洗浄し、真空オーブン中で一晩乾燥させて、SA-t-PEマクロモノマー(SA-t-PEHMDANB)を定量的に得た。H NMR(C)δ=5.88-5.85(m、2H)、5.16-5.47(m、2H)、3.41-3.36(m、5H)、2.97-3.36(m、4H)、2.64(bs、2H)。
【0363】
7.6.3.NBPEGマクロモノマー体(H N-PEG-NH 1,000~6,000について)の合成
PEGジアミン(1g)およびシス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物(1当量)を100mlのrbfに添加し、その後トルエン(50ml)を添加した。トリエチルアミン(1当量)を添加し、混合物を、水除去用にdean-starkトラップを取り付けて、還流下で一晩撹拌した。得られた溶液を蒸発乾固し、ジクロロメタン(40ml)を添加し、その後0.1M HCl(40ml)を添加した。有機層を、抽出し、0.1M NaOH(50ml)で洗浄した。0.1M NaOH(50ml)を酸洗浄からの水性画分に添加し、その後CHCl(30ml)を添加した。有機層を、抽出し、合わせ、飽和NaClで洗浄し、NaSO上で乾燥させた。物質を蒸発乾固させて、PEGジアミン1,000については淡いオレンジ色の油、NBPEG、並びにPEGジアミン3,400および6,000についてはベージュ色固体を得た。H NMR(MeOD):δ=6.36(t、2H、NB)、3.67(s、PEG)、3.21(s、2H、NB)、2.74(s、2H、NB)、1.92(s、2H)。
【0364】
7.6.4.PEG1,000~6,000についての代表的な調製物としてのNBPEG 1000 RGDの合成
RGD(OMeで保護されたアスパラギン酸上の1つのカルボン酸を有する)(0.0937g、0.26mmol)を、グローブボックス中で、4mlバイアル中のMeOH(2.5ml)中に溶解した。PrEtN(91μL、0.52mmol)を添加し、混合物を撹拌した(A)。HOBT(0.0353g、0.26mmol)およびHBTU(0.0992g、0.26mmol)を20mlバイアル中のMeOH(12.5ml)中に40℃で溶解し、その後(A)からのRGD溶液を添加して、溶液(B)を得た。溶液Bを次いで、40mlバイアル中のNBPEG1000(0.25g、0.218mmol)に添加し、室温で一晩撹拌する。得られた混合物を次いで蒸発乾固し、油をジエチルエーテル(50ml)に添加した。ジエチルエーテル溶液を、冷凍庫中で48時間冷やし、デカントした。MeOH(5ml)を残渣に加えて、白色のpptを有するオレンジ色の溶液を得た。混合物をシリンジフィルターに通し、透明な濾液を蒸発乾固して、RGDPEGNBのオレンジ色の油を95%収率で得た。H NMR(MeOD):δ=7.74(dd)、7.35-7.42(m)、6.32(t)、4.39(s)、4.20(s)、3.63(br s)、3.60(d)、3.17(t)、2.70(d)。MALDI-MS:661.3([M-NB]+2H)。
【0365】
7.6.5.PEG1,000~6,000についての代表的な調製物としてのNBPEG 1000 DGEAの合成
DGEA(OMeで保護された2つのカルボン酸末端を有する)(0.109g、0.26mmol)を、グローブボックス中でMeOH(2.5ml)中に溶解した。PrEtN(91μl、0.52mmol)を添加し、混合物を溶液Aとして撹拌した。HOBT(0.0353g、0.26mmol)およびHBTU(0.0992g、0.26mmol)をMeOH(12.5ml)中に40℃で溶解し、その後溶液Aを添加して、懸濁液Bを得た。懸濁液Bを次いで、NBPEGNH(0.25g、0.218mmol)に添加し、室温で24時間撹拌した。得られた淡黄色の混合物を次いで溶媒蒸発によって濃縮して、黄色の油状混合物を得た。混合物をEtO中に分散させ、溶液を冷凍庫中に48時間置いた。EtO層を取り出し、MeOHを残渣に添加して、黄色の懸濁液を得た。濾過および溶媒蒸発を行って、黄色の油状生成物NB-PEG-DGEA(0.28g、収率73%)を得た。H NMR(CDOD、500MHz、25℃):δ7.80(d、1H)、7.71(d、1H)、7.44-7.38(m、2H)、6.33(s、2H)、4.40(s、2H)、4.22(s、1H)、3.95(s、1H)、3.68(m、6H)、3.64(m、84H)、3.57(m、4H)、3.18(s、2H)、2.82(s、2H)、2.72(s、2H)、2.47(m、2H)、2.14(m、1H)、1.96(m、1H)、1.48-1.41(dd、2H)。
【0366】
7.6.6.さまざまな配列並びにn=6までの鎖長、PEG1000~6,000のグリシン、プロリンおよびヒドロキシプロリンのコラーゲン断片についての代表的な調製物としてのNBPEG 1000 (GPHyp) の合成
(GPHyp)(0.213g、0.26mmol)を、グローブボックス中でMeOH(2.5ml)中に溶解した。PrEtN(91μl、0.52mmol)を添加し、混合物を撹拌した(溶液A)。HOBT(0.0353g、0.26mmol)およびHBTU(0.0992g、0.26mmol)をMeOH(12.5ml)中に40℃で溶解し、その後溶液Aを添加して、懸濁液Bを得た。懸濁液Bを次いで、NBPEGNH(0.25g、0.218mmol)に添加し、室温で24時間撹拌した。得られた淡黄色の混合物を次いで溶媒蒸発によって濃縮して、ベージュ色の混合物を得た。混合物を、EtO中に分散させ、48時間凍結させた。EtO層を取り出し、MeOHを残渣に添加して、ベージュ色の懸濁液を得た。濾過および溶媒蒸発を行って、ベージュ色の油状生成物NB-PEG-(GPHyp)(0.25g、収率50%)を得た。
【0367】
H NMR(CDOD、500MHz、25℃):δ6.33(s、2H)、4.73-4.44(br、4H)、3.65(m、84H)、3.57(m、4H)、3.18(s、2H)、2.72(s、2H)、2.39-1.80(br、8H)、1.44-1.37(dd、2H)。
【0368】
7.6.7.PEG1,000~6,000についての代表的な調製物としてのNBPEG 1000 (IRIK) の合成
(IRIK)(1つのBoc保護アミンを有する)(0.100g、0.0875mmol)を、グローブボックス中でMeOH(1.0ml)中に溶解した。PrEtN(31μl、0.175mmol)を添加し、混合物を溶液Aとして撹拌した。HOBT(0.012g,0.0875mmol)およびHBTU(0.033g,80.0875mmol)をMeOH(1.5ml)中に40℃で溶解し、その後溶液Aを添加して、懸濁液Bを得た。懸濁液Bを次いで、NBPEGNH(0.0835g、0.073mmol)に添加し、室温で24時間撹拌した。得られた淡黄色の混合物を次いで溶媒蒸発によって濃縮して、黄色の油状混合物を得た。混合物をEtO中に分散させ、溶液を冷凍庫中に48時間置いた。EtO層を取り出し、MeOHを残渣に添加して、黄色の懸濁液を得た。濾過および溶媒蒸発を行って、黄色の粘着性固体生成物(0.14g、収率70%)を得た。固体を、ジクロロメタン(3.0ml)およびトリフルオロ酢酸(0.5ml)中に溶解し、室温で24時間撹拌した。得られた淡黄色混合物を次いで、溶媒蒸発によって濃縮し、EtOで洗浄して、淡黄色固体を得た。固体を、ジクロロメタン(2.0ml)およびMeOH(1.0ml)中に再溶解した。EtN(200μl)を添加し、混合物を室温で24時間撹拌した。得られた淡黄色混合物を次いで、溶媒蒸発によって濃縮し、EtOで繰り返し洗浄して、淡黄色固体NB-PEG-IRIK(0.12g、63%)を得た。H NMR(CDOD、500MHz、25℃):δ6.32(s、2H)、4.50-4.10(m、7H)、3.64(m、84H)、3.25-3.10(m、4H)、3.00-2.80(m、5H)、1.90-1.30(m、30H)、1.25-1.15(m、4H)、1.05-0.85(m、24H)。
【0369】
7.6.8.任意の配列の3~20個のアミノ酸のペプチド長についての、SA-t-PE-ペプチドコポリマーについての代表的な手順としてのSA-t-PEマクロモノマーおよびRGDペプチドマクロモノマーのROMPについての手順
RGDペプチドマクロモノマー(0.0342g、0.0023mmol)を20mlバイアル中に秤量し、その後SA-t-PE(0.2g、0.12mmol)を添加した。ベンゼン(2.3ml)を添加し、混合物を透明な溶液が得られるまで75℃で撹拌した。ベンゼン中の触媒1の溶液(1.25mol%、0.05M)を該溶液に添加し、反応物を75℃で22時間撹拌した。エチルビニルエーテルを反応混合物に添加し、その後MeOH(15ml)を添加して、ベージュ色沈殿物を得た。混合物を濾過し、残渣を、メタノールで5回洗浄し、真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【0370】
SA-t-PERGDコポリマーについて、H NMR:6.0(s、未反応SA-t-PE)、5.62-5.38(m)、3.65(PEG)、1.46(t、CH)、1.02(PE CH)。
【0371】
実施例8:アミン末端ポリエチレン(PE)-ペプチドコポリマー
8.1.アミン末端PE-RGDコポリマー
この実施例は、ポリエチレン上に第一級アミン末端を作り出すためのワンポットの2工程戦略、およびマクロモノマー合成におけるその引き続く使用、およびその後のバイオマクロモノマーとの共重合による生物活性ポリエチレンコポリマーの形成を示す。この方法においては、直鎖第一級アミンを、ポリエチレンを使用してヒドロアミノメチル化を介して作り出し、引き続きシス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物を用いたマクロモノマー形成において使用する。生物活性ポリエチレンは、このPEマクロモノマーを生体分子含有マクロモノマーと共重合させることによって作り出すことができる。PE-RGDコポリマーは、ヒト皮膚線維芽細胞と適合する生物活性PEの例としてここで報告する。
【0372】
8.1.1.PEマクロモノマー
マクロモノマー形成のためにポリエチレン(PE)上に第一級アミン末端を得るために、ビニル末端PEのヒドロアミノメチル化をワンポットの2工程プロセス(ここでは、それをまずヒドロホルミル化を介して直鎖カルボニルに変換し、その後ヘキサメチレンジアミン(HMDA)またはNHガスの存在下での還元的アミノ化を行った)で行った(スキーム4.2)。ここでの直鎖対分枝比は優れており、ここで、分枝カルボニルまたはアミンは、検出されなかった。無視できる量の直鎖アルコール(<1%)が、粗生成物中に検出された。
【0373】
アミン末端PEの取得後、シス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物との縮合が、PEマクロモノマーをもたらし(スキーム4.3)、これを、それ自体または他のマクロモノマーのいずれかを用いたブラシポリマーの形成において使用することができるであろう。
【0374】
8.1.2.PE-ペプチドコポリマー
PEマクロモノマーを使用した生物活性PEの形成を実証するために、PEマクロモノマーを、グラブス触媒を用いる開環メタセシス重合(ROMP)を使用して、PEG化RGDマクロモノマーと反応させて、PEおよびPEG化RGDのコポリマーを得た(スキーム8.1)。
【0375】
【化56】
【0376】
8.2.熱安定性
PERGDコポリマーは、材料加工を受ける前に熱安定性についてチェックした。コポリマーのTGA分析から、ポリマーは465℃で50%の重量損失を受けることがわかり、これは、200℃未満の分解温度を有する純粋なRGD自体と比較してその高い熱安定性を示す(図6)。
【0377】
8.3.生体適合性
引き続き、PERGDコポリマーを、医療グレードのPLAとブレンドし、10%FBSおよび1%Pen/Strepを有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で増殖させたHs27ヒト線維芽細胞を用いた生体適合性試験のためにナノファイバー中にエレクトロスピニングした。エレクトロスピニングしたサンプル上の72時間の細胞生存率試験から、PERGDは、25%のPERGD/PLA混合比でネガティブ対照または純粋なPLAと比較してわずかな細胞増殖を、並びに市販の創傷包帯ActicoatおよびAllevynよりもはるかにより良好な細胞生存率を示すことがわかる(図7)。生細胞は、細胞増殖について不可欠である。
【0378】
結論として、アミン末端PEを、HMDAの存在下でのワンポットの2工程ヒドロアミノメチル化反応を使用してうまく作り出し、PEマクロモノマーを、それを使用して構築した。生物活性PEコポリマーもまた、例としてPERGDを使用して、作り出し、ヒト皮膚の生体適合性について首尾よく試験した。
【0379】
8.4.材料および方法
8.4.1.一般的な手順
開環メタセシス重合反応およびRGDマクロモノマー合成は、窒素雰囲気下、Vacuumu Atmosphereグローブボックス中で行った。PEHMDANBマクロモノマーは、周囲条件下で合成した。PEHMDA合成は、Parr Instrument社からの、PTFEガスケットを装備したHastelloy圧力反応器中で行った。使用した全ての溶媒-Alfa Aesarからの無水ベンゼンおよび無水メタノールは、グローブボックス中で、購入したまま使用した。グラブス第2世代触媒は、Sigma Aldrichから購入し、全てのペプチドは、Biomatik Inc.から購入した。[Rh(acac)(CO)]、[Ir(COD)Cl]、キサントホス、HMDA、トリエチルアミンおよびPEGジアミンは、Alfa Aesarから購入した。全ての購入試薬は、さらなら精製なしに使用した。ビニル末端PE(MW1,400~5,000)は、文献の方法(Macromolecules 2009,42,4356-4358;Supporting Informationの2番目の例に従う)に従って得た。
【0380】
H NMRスペクトルは、Bruker Avance 400MHz NMR分光計上で記録した。GPCクロマトグラムは、2PLgel Mixed Bカラム(300×7.5mm、粒子サイズ10μm)および1PLgel Mixed Bガードカラム(50×7.5mm)を備えたAgilent Infinity II High Temperature GPCシステム上で記録した。溶離液は、TCBであり、1ml/minの流速および160℃のオーブン温度である。ポリスチレンを、校正標準として使用した。
【0381】
PERGDコポリマーを、PLAと1:4の比でブレンドし、繊維のシート中にエレクトロスピニングし、これを次いで、70%エタノールで滅菌し、乾燥させ、線維芽細胞Hs27と72時間インキュベートし、Celltitre-Gloアッセイを使用して細胞生存率についてチェックした。
【0382】
8.4.2.PEHMDAの合成
ビニル末端PE(0.35g、0.25mmol)およびキサントホス(0.0036g、6.25μmol)を25ml圧力反応器中に秤量し、その後トルエン(3.5ml)を添加した。Rh(acac)(CO)を次いで(0.5ml、0.65mg/ml、1.25μmol)、混合物に添加した。容器を、密閉し、CO/H(g)(1:1)で5回フラッシュし、ガスで45バールに加圧した。混合物を、100℃で12時間撹拌し、次いで冷却した。HMDA(0.0581g、0.5mmol)を、トルエン(1ml)中に溶解し、冷却した混合物に添加し、その後[Ir(COD)Cl](1ml、0.84mg/ml)を添加した。容器を、密閉し、H(g)で5回フラッシュし、ガスで20バールに加圧した。混合物を、135℃で4時間撹拌し、冷却し、その後MeOHを添加して、白色沈殿物を得た。沈殿物を濾過し、残渣を、MeOHで繰り返し洗浄し、その後真空オーブン中で乾燥させて、PEHMDAの白色固体生成物を68%収率で得た。H NMR(トルエン-d8、90℃):δ=0.91(t、3H)、1.36(br、s、148H)、1.47-1.44(m)、2.61-2.54(68%変換でm、6H)。
【0383】
8.4.3.PECH NH の合成
ビニル末端PE(0.35g、0.25mmol)およびキサントホス(0.0036g、6.25μmol)を50ml圧力反応器中に秤量し、その後トルエン(3.5ml)を添加した。Rh(acac)(CO)を次いで(0.5ml、0.65mg/ml、1.25μmol)、混合物に添加した。容器を、密閉し、CO/H(g)(1:1)で5回フラッシュし、ガスで45バールに加圧した。混合物を、100℃で12時間撹拌し、次いで冷却した。[Ir(COD)Cl](1ml、0.84mg/ml)を冷却混合物に添加し、容器を、密閉し、NH(g)で5回フラッシュし、NH(g)で3バールに加圧した。容器をさらに、さらなる20バールのH(g)で加圧した。混合物を次いで、135℃で3時間撹拌し、冷却し、その後MeOHを添加して、白色沈殿物を得た。沈殿物を濾過し、残渣を、MeOHで繰り返し洗浄し、その後真空オーブン中で乾燥させて、PECHNHの白色固体生成物を61%収率で得た。H NMR(トルエン-d8、90℃):δ=0.90(t、3H)、1.34(br、s、194H)、2.58(61%収率でt、2H)。
【0384】
8.4.4.PEHMDANBの合成
PEHMDAおよびPECHNHは、未反応のPEから分離することができず、混合物として使用する。使用するPEHMDAおよびPECHNHの量は、未反応のPEを含有するサンプル混合物中のそれぞれの割合に基づいて計算する。
【0385】
PEHMDA(0.2mmol)およびシス-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボン酸無水物(0.04g、0.25mmol)をrbf中に秤量し、その後トルエン(20ml)およびEtN(28μL、0.2mmol)を添加した。フラスコにdean starkトラップを備え付け、混合物を12時間還流した。反応物を冷却し、MeOHを混合物に添加して、淡黄色溶液中の白色沈殿物を得た。混合物を濾過し、残渣をMeOHで繰り返し洗浄して、オフホワイトの生成物を得た。H NMR(トルエン-d8、90℃):5.89(s)、5.87(s)、3.42(t)、3.01(t)、2.53-2.60(m)、2.19(s)、1.37(br s)、0.92(t)。生成物は、PEHMDANBおよび未反応のPEの混合物として存在する。
【0386】
8.4.5.任意の配列の3~20個のアミノ酸のペプチド長についての、PE-ペプチドコポリマーについての代表的な手順としてのPEHMDANBマクロモノマーおよびRGDペプチドマクロモノマーのROMPについての手順
RGDペプチドマクロモノマー(0.0342g、0.0023mmol)を20mlバイアル中に秤量し、その後PEHMDANB(0.12mmol)を添加する。ベンゼン(2.3ml)を添加し、混合物を透明な溶液が得られるまで75℃で撹拌する。ベンゼン中のグラブス触媒(第2世代)の溶液(1.25mol%、0.05M)を該溶液に添加し、反応物を75℃で22時間撹拌する。エチルビニルエーテルを反応混合物に添加し、その後MeOH(15ml)を添加して、ベージュ色沈殿物を得る。混合物を濾過し、残渣を、MeOHで5回洗浄し、真空オーブン中で一晩乾燥させる。PERGDについて、H NMR(トルエンd8、90℃):δ=5.88(s)、5.85(s)(未反応PEHMDANB)、5.46-5.42(m)、3.53(br s、PEG)、3.4(t)、2.57-2.53(m)、1.36(br s、PECH)、0.91(br s、PECH)。サンプルは、未反応PEを含有する。
【0387】
実施例9:用途
本開示は、より柔らかく、より生体適合性であるPE/PPブレンドを作り出すための新しいモジュラー合成方法を提供する。本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は、以下の特性:
・皮膚に対して無毒性;
・37℃で変性する純粋なコラーゲンと比較した、材料加工についての増加した熱安定性;および
・ゲルまたは吸湿性結晶中に存在する純粋なコラーゲン、オリゴペプチドまたはオリゴ糖と比較した、増加した構造的完全性
の1つ以上を有する。
【0388】
有利なことに、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は、疎水性PPと親水性コラーゲンとの間に存在する相いれない材料特性にもかかわらず、生体分子(例えば、コラーゲン)を、コポリマー(例えば、ポリプロピレン)の合成ポリマーサイドアームと同様の合成ポリマーのベース材料中に、相分離なしにブレンドすることを可能にする。
【0389】
本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は、良好な熱安定性および生体適合性データを示した。有利なことに、本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は、おむつおよび生理用品などの消費者ケア製品、または関節インプラント、腸ステント、創傷包帯、軟骨インプラントなどのバイオ医療デバイスを製造するために使用することができる。
【0390】
本開示は、標的の用途または必要とされる生物活性に依存して、最適な生物活性分子を用いた生物活性コポリマーの構築のために生物活性マクロモノマーを迅速に作り出す新しいモジュール合成法を提供する。生物活性マクロモノマーは、ポリエチレンと容易に共重合して、所望の物理的および機械的特性を有する生物ポリエチレンコポリマーを形成し得る。有利なことに、ポリマーリンカーへの結合の際に、生物活性分子の増加した安定性がある。本明細書において開示する戦略の実施態様は、任意のペプチド、炭水化物または薬物分子を、生物活性の損失なしにポリマー合成において使用することを可能にする。本明細書において開示する戦略の実施態様はまた、生物活性マクロモノマーライブラリーの迅速な構築を可能にする。カルボン酸基を有する任意の生物活性分子を、使用し得る。要約すると、本開示は、バイオ医療材料のカスタマイズのための高度に万能の戦略を提供する。
【0391】
本明細書において開示する方法の実施態様は、マクロモノマーを最適な合成ポリマーと一組にして、合成ポリマーの機械的および物理的特性並びに生物活性分子の生物学的活性の両方を有する生物活性ポリマーを作り出すことを可能にする。
【0392】
本明細書において開示する方法の実施態様は、生物活性分子の合成ポリマー中への物理的ブレンドの代わりに、化学的に結合したさまざまなタイプの生物活性ポリマーを作り出すための簡単な戦略である。
【0393】
有利なことに、非細胞または増殖因子に基づく生物活性が、本明細書において開示するポリマー上に提供される。本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は、組織再生、バイオフィルム根絶などの治療効果を増強する生物活性、並びにまたポリマーのような構造的完全性および機械的強度の両方を有する。本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は、生体分子を、コポリマーの合成ポリマーサイドアームと同様の合成ポリマーのベース材料中に、相分離なしにブレンドすることを可能にする。本明細書において開示する方法の実施態様は、ポリエチレンが、生体分子での修飾の際に、ヒト組織に対して生体適合性になることを可能にする。本明細書において開示する方法の実施態様は、広範囲の生体分子を使用して、任意の所望の治療効果を達成することを可能にする。本明細書において開示する方法の実施態様はまた、広範囲の合成ポリマーを使用して、標的バイオデバイス用の材料において必要とされるさまざまな機械的、物理的特性を達成することを可能にする。
【0394】
本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は、バイオ医療デバイス用の生物添加剤として使用して、デバイス材料自体に治療効果を提供することを可能にし得る。
【0395】
本明細書において開示する方法の実施態様は、非細胞ベースまたは増殖因子ベースの治療を使用し、これが、デバイスまたは足場などの材料の長い貯蔵寿命を可能にし、望ましくないまたは制御されない生物活性(例えば、組織再生)を防止する。
【0396】
本明細書において開示する生物活性ポリエチレンコポリマーの実施態様は、創傷包帯、軟骨インプラントまたは骨足場についての生物添加剤として使用して、皮膚、軟骨または骨組織の再生について必要とされる刺激を作る出し得る。
【0397】
広く説明した本開示の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書において開示する実施態様に対して他の変形および/または修飾を行い得ることが、当業者によって理解されるであろう。例えば、本明細書における説明において、さまざまな例示的な実施態様の特徴を、さまざまな例示的な実施態様にわたって、混合、組み合わせ、交換、組み込み、採用、修飾、包含等し得る。本実施態様は従って、全ての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】