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▶ フレセニウス ヘモケア イタリア ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータの特許一覧

特表2024-501103血液から物質を除去するためのフィルタ
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  • 特表-血液から物質を除去するためのフィルタ 図1
  • 特表-血液から物質を除去するためのフィルタ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】血液から物質を除去するためのフィルタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20231228BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20231228BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20231228BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61M1/02 100
B01D39/16 A
B01D25/04
B01D29/04 510F
B01D29/04 530A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527807
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2020081612
(87)【国際公開番号】W WO2022100814
(87)【国際公開日】2022-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519173967
【氏名又は名称】フレセニウス ヘモケア イタリア ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】ボナグイディ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ボルギ,セレナ
(72)【発明者】
【氏名】サラ,ニコレッタ
【テーマコード(参考)】
4C077
4D019
4D116
【Fターム(参考)】
4C077AA12
4C077BB02
4C077CC06
4C077EE01
4C077KK11
4C077LL13
4C077NN02
4C077PP12
4D019AA03
4D019BA13
4D019BB03
4D019CB02
4D019CB06
4D019DA03
4D116AA27
4D116BB01
4D116BC03
4D116BC05
4D116BC77
4D116DD04
4D116EE04
4D116EE10
4D116FF15B
4D116GG12
4D116GG26
4D116GG29
4D116KK04
4D116QB44
4D116UU19
4D116VV30
4D116ZZ01
4D116ZZ05
(57)【要約】
血小板回収を伴う白血球減少の増強のための血液フィルタが開示される。フィルタは、アセトン共重合体溶液でコーティングされた不織布の多孔質フィルタを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から選択された成分を除去し、他の選択された成分を回収するための多孔性の高分子の不織布の布であって、親水性セグメントおよび疎水性セグメントを有する不織布材料を含む前記布と、
多孔性の高分子の前記布に塗布されたコーティングとを備える、血液から物質を除去するための濾過媒体。
【請求項2】
多孔性の高分子の前記布がポリエーテル-エステル共重合体を含む、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
多孔性の高分子の前記布は、以下の高分子構造を含む、請求項1または請求項2に記載のフィルタ。
【化1】
【請求項4】
前記疎水性セグメントは、アルキレングリコールおよび少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸またはエステルに由来する繰り返し単位を含む、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記親水性セグメントは、少なくとも1つのポリアルキレンオキシドグリコールに由来する、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記コーティング溶液は、疎水性モノマーおよび親水性モノマーの重反応によって得られる、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記疎水性モノマーは、ビニルエステル、アルケンおよびアルキルメタクリレートからなる群から選択され、
前記親水性モノマーは、酸基を有するモノマー、塩基性基を有するモノマーおよび極性基を有するモノマーからなる群から選択される、請求項6に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記コーティングは、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体を含むアセトン溶液を含む、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項9】
酢酸ビニル対ビニルピロリドンの比が10:1~4:1である、請求項8に記載のフィルタ。
【請求項10】
入口および出口を含むハウジングと、
前フィルタと、
後フィルタと、
前記前フィルタと前記後フィルタとの間に位置する濾過媒体であって、前記濾過媒体は、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のフィルタの1枚以上のシートを含む、血液フィルタアセンブリ。
【請求項11】
前記濾過媒体は複数の前記フィルタの前記シートの積層を含む、請求項10に記載の血液フィルタアセンブリ。
【請求項12】
ポリエーテル-エステル共重合体を含む布シートを形成し、
酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体を含むコーティング溶液で前記布シートの少なくとも片面をコーティングする工程とを含む、血液から物質を除去するためのフィルタを作製する方法。
【請求項13】
前記コーティングは、前記布を前記コーティング溶液の浴に浸漬することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記布シートから余分なコーティング溶液を除去することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コーティングされた前記布シートを54~111℃の温度で乾燥させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリエーテル-エステル共重合体から作製されたメルトブローン繊維から前記布を形成することを含む、請求項10から請求項15までのいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、血液などの体液から選択された成分および/または不純物などの物質を除去するためのフィルタに関する。より特定的には、本開示は、血小板などの望ましい血液成分の効果的な回収を可能にしながら、白血球などの望ましくない成分を効果的に除去する血液フィルタを対象とする。さらにより具体的には、本開示は、そのようなフィルタを含む血液フィルタアセンブリ、およびそのようなフィルタおよびフィルタアセンブリを作製するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
様々な手動および自動システムおよび方法を使用して、全血が収集され、しばしばその臨床成分(典型的には赤血球、血小板、および血漿)に分離される。全血または収集された成分は通常、個別に保存され、さまざまな特定の状態や病状を治療するために使用される。
【0003】
血液または採取された血液成分(「血液製剤」)を成分を必要とする受容者に輸血する前に、受容者に望ましくない副作用を引き起こす可能性のある不純物または他の物質の存在を最小限に抑えることがしばしば望ましい。例えば、起こり得る反応のために、保存前、または少なくとも輸血前に、血液製剤中の白血球の数を減少させることが望ましいと一般に考えられている(すなわち、「白血球減少」)。
【0004】
フィルタは、今日、血液製剤の白血球減少を達成するために広く使用されている(例えば、全血、赤血球、および/または血小板製剤からの白血球の温濾過および冷濾過)。フィルタは、通常、フィルタハウジングの合わせ壁の間に配置された濾過媒体を含む。ハウジングに関連付けられた入口ポートおよび出口ポートは、フィルタの内部への、およびフィルタの内部からの流路を提供する。ハウジングの壁は、剛性の、典型的にはプラスチックの材料、または柔軟な材料(典型的にはPVC)で作ることができる。血液または血液成分を濾過することの重要性のために、生物学的流体フィルタの構造および性能を改善したいという継続的な要望が存在する。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、血液から物質を除去するための濾過媒体に関する。濾過媒体は、血液から選択された成分を除去し、他の選択された成分を回収するための多孔質の高分子不織材料を含む。濾過媒体は、多孔性高分子材料に塗布されたコーティングを含む。
【0006】
別の態様では、本開示は、入口および出口を有するハウジング、前フィルタ、後フィルタ、ならびに前フィルタと後フィルタとの間に配置された濾過媒体を含み、濾過媒体は、上述の濾過媒体の1枚以上のシートを含む、血液フィルタアセンブリを対象とする。
【0007】
さらなる態様において、本開示は、血液から物質を除去するためのフィルタを作製する方法を対象とする。この方法は、ポリエーテル-エステル共重合体を含む材料で作られた布シートを形成すること、および布シートの少なくとも片面を酢酸ビニルとビニルピロリドンの共重合体であるコーティング溶液でコーティングすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示による代表的なフィルタアセンブリの正面図である。
【0009】
図2図1のフィルタアセンブリの2-2線に沿った側断面図である。
【0010】
図3】本開示のフィルタアセンブリの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、一般的に、血液から選択された成分を除去するためのフィルタに関する。「血液」という用語は、全血および全血から分離された赤血球などの血液成分を含む。本明細書に記載のフィルタは、全血の濾過に特に適している(しかしそれに限定されない)。
【0012】
図1は、本開示によるフィルタアセンブリの一実施形態を示す。フィルタ10は、血液などの生物学的流体から選択された成分および/または不純物を除去するのに適している。フィルタアセンブリ10は、外壁14,16を含むハウジング12を含む(図2)。ハウジング12および実際にはフィルタ10は、オートクレーブ、ガンマ線および/または電子ビームなどの使い捨て血液処理セットの組み立てに一般的に使用される従来の滅菌技術を使用して滅菌することもできる生体適合性材料で作られることが好ましい。一実施形態では、ハウジング壁14,16は、その周囲またはその近くで密閉された剛性の高分子材料でできていてもよい。壁14,16の密閉は、接着剤、溶接、または他の形態の密閉取り付けによって達成することができる。
【0013】
好ましい実施形態では、図1および図2に示すように、ハウジング壁14,16は、柔軟で可撓性の高分子材料で作ることができる。ハウジング壁14,16に適した高分子材料の例には、ポリ塩化ビニルおよび/またはポリオレフィンが含まれる。図1および図2に示されるように、ハウジング壁14,16は、シール18を形成するためにそれらの周縁に沿って結合され得る。図1および図2の実施形態では、内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2002/0113003号に記載されているように、追加の内周シール20を設けることもできる。シール18,20は、緩衝された周辺部分を画定する。
【0014】
通常、本明細書に記載のタイプのフィルタアセンブリは、使い捨て流体処理セットまたはキットの一部として含めることができ、その最も基本的な形態では、生物学的流体は、接続された、または事前に接続された供給源から導入され、フィルタ10を通過し、膜を通過した後、事前に取り付けられた容器に収集され、望ましくない成分が濾過媒体によって捕捉される。したがって、壁14,16は、流体の導入および排出を可能にするために、入口ポート24および出口ポート26をそれぞれ含むことができる。ポート24,26は、ハウジング壁14,16によって画定される内部室と連通する。ポート24,26は、図1および図2に示されるように、壁14,16によって担持され得る。ポート24,26は、ハウジング壁14,16に別々に取り付けるか、またはハウジング壁14,16と一体成形することができる。図1および図2に示されるように、入口ポート24および出口ポート26は、壁14,16上で正反対の関係で配置され得る。したがって、例えば、入口ポート24は、壁14上のフィルタ10の「上」周縁13により近く配置されてもよく、出口ポート26は、フィルタ10および壁16の「下」周縁15により近く配置されてもよい。もちろん、ポート14,16の相対的な位置は、別の方法で修正または提供されてもよいことが理解されるであろう。ポート24,26は、フィルタ10が含まれる使い捨て処理セットの他の容器または部品につながる、内部室とチューブ27との間の流体連通を確立する内部流路を画定する。
【0015】
図2図3に示されるように、ハウジング壁14,16は、濾過媒体30を収容する。一実施形態では、フィルタ30は、白血球の通過を防止する一方で、赤血球および血小板などの他の望ましい血液成分の通過を可能にするサイズの細孔を有する複数の積み重ねられたシートを含むパッドとして提供され得る。一実施形態では、図2に示すように、フィルタ30は複数のシート31を含むことができ、各シート31は所望の直径および/またはサイズおよび分布の細孔を含む。一実施形態では、シート31は、メルトブローン不織繊維でできていてもよい。本開示によれば、繊維は、以下でより詳細に説明される適切な高分子材料から作製され得る。
【0016】
図3に示すように、フィルタ30は、複数のメルトブローン不織繊維シートで作ることができる。さらに、シートのグループは、特定の機能を実行するように選択されたフィルタ部分を備えた濾過媒体を提供することができる。例えば、フィルタ30は、複数のシートから構成されるフィルタ部分を含むことができ、フィルタ部分32および/またはハウジング壁14および入口ポート24に隣接または最も近い部分32を構成するシートは、微小凝集体およびより小さいサイズの粒子の除去を提供する選択された気孔率を有する。図3は2枚のシートを示しているが(例示の目的のみのため)、部分32は1枚以上のシートを含むことができ、典型的には「前フィルタ」を提供するために1枚から5枚のシートを含むことができるが、これらに限定されない。
【0017】
濾過媒体34は、一次または主フィルタを提供することができ、同様に、選択された多孔度の複数のシートを含むことができる。5枚しか示していないが(例示の目的のみのため)、一次または主フィルタを構成するシートの数は、10から40枚のいずれでもよく、各シートは約10μmから約500μmの厚さを有する。一実施形態では、約30枚のシートが濾過媒体34に含まれてもよい。
【0018】
フィルタ部分36は、追加の成分の濾過を提供し、および/または濾過媒体34とハウジング壁16との間のスペーサ要素として機能し得る。複数のシートを含むこともできるフィルタ部分36(例示の目的のためだけに1つのシートのみが示されているが)は、ハウジング壁16および出口ポート26により近い濾過媒体34の下流に配置され、「後フィルタ」と呼ばれることがある。図2に見られるように、フィルタ部分32,34,36を一緒にして、一緒に密封して、単一のフィルタパッドを提供することができる。あるいは、図2に示すように、フィルタ部分32,34,36のそれぞれの個々のシートの一部またはすべてを一緒にして、ハウジング壁14,16とともに、内側シール20でシールすることができる。
【0019】
濾過媒体34は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,736,516号に記載されているように、メルトブローン繊維から作られた不織布材料であってもよい。そこに記載されているように、濾過媒体34の各シートは、ポリエーテル-エステル共重合体(PEC)などの適切な高分子材料で作ることができる。
【0020】
ポリエーテル-エステル共重合体は、少なくとも1つのアルキレングリコール、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸またはそのエステル、およびポリアルキレンオキシドグリコールの溶融物中での重縮合によって得ることができる。アルキレングリコールは2~4個の炭素原子を含むことができ、好ましいグリコールはブチレングリコールである。
【0021】
適切な芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸および4,4’-ジフェニルジカルボン酸が含まれる。
【0022】
好ましいポリアルキレンオキシドグリコールには、ポリブチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコールおよびポリエチレンオキシドグリコール、またはそれらの組み合わせが含まれる。特に好ましいのは、ポリプロピレンオキシド(PPO)/ポリエチレンオキシド(PEO)のブロック共重合体である。
【0023】
得られた高分子は、アルキレングリコール(好ましくは1,4-ブタンジオール)および芳香族ジカルボン酸(好ましくはテレフタル酸またはジメチルテレフタレート)から誘導された繰り返し単位の剛性のセグメント(疎水性)から構築された骨格を有し、ポリアルキレンオキシドグリコールから誘導された柔軟な親水性セグメントを有する。
【0024】
得られる好ましい高分子構造は次の通りである。
【化1】
【0025】
適切なポリアルキレンオキシドグリコールは、市販されている。Pluronic PE6002(商標)は、Basf製のエチレンオキシドグリコールでエンドキャップされたポリプロピレンオキシドである(エチレンオキシド:プロピレンオキシド=36/64重量比)。
【0026】
本明細書に記載のコポリエーテルエステルは、商業的に入手可能であるか、または既知の重縮合プロセスに従って、好ましくは参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,441,125号に記載のプロセスに従って、単一化合物中のチタンと二価金属との組み合わせ、またはチタンと二価金属を含む化合物の組み合わせに基づく触媒であって、二価金属に対するチタンの分子比が、好ましくは1.5未満である触媒の存在下での上記成分の溶融物中の重縮合によって調製することができる。
【0027】
二価金属は、好ましくはアルカリ土類金属であり、好ましくはマグネシウムである。チタンは、好ましくは、チタンアルコキシドまたはチタンエステルなどの金属有機化合物の形態である。
【0028】
本開示によれば、本明細書に記載のコポリエーテル-エステルは、メルトブローによって加工して、6μm未満、好ましくは3μm未満の範囲の直径を有する繊維を得ることができる。好ましい平均直径は1.8から2.2μmの範囲である。
【0029】
コポリエーテルエステル中のポリアルキレンオキシドグリコールの量は、好ましくは0.1~20重量%の範囲、または、ポリエチレンオキシドの0.03~6重量%である。
【0030】
濾過媒体34(またはその各シート)の表面をコーティング溶液でコーティングすることによって、濾過媒体による白血球減少および/または血小板回収をさらに促進することができる。コーティング溶液は、疎水性および親水性モノマーの重反応によって得られる高分子であってもよい。
【0031】
コーティング溶液に使用できる適切な疎水性モノマーの例には、酢酸ビニルなどのビニルエステル;エチレン、プロピレン、ヘキサン-1、ヘプテン-1、ビニルシクロヘキサン、3,3-ジメチル-1-プロペン、3-メチル-1-ジイソブチレン、4-メチルペンテン-1等のアルケン;および飽和アルコールから誘導されるアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、メタクリレートおよびアクリレートを組み込んだメタアクリレート、ならびに両方の混合物を含む。
【0032】
適切な親水性モノマーの例には、酸基を有するモノマー、例えばビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、アクリル酸およびメタクリル酸;塩基性基を有するモノマー、特にビニルピリジン、3-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、3-エチル-4-ビニルピリジン、2,3-ジメチル-5-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリジン、3-ビニルピロリジン;2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、ビニルアルコールなどの極性基を持つモノマを含み、ビニルアルコールは、ビニルエステルをケン化することによる重合後に得ることができる。
【0033】
適切なコーティング高分子/共重合体のより具体的な例としては、限定ではなく、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)と酢酸ビニル(VAc)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と酢酸ビニル(VAc)、N-ビニル-2-ピロリドンと2-エトキシエチルメタクリレート(2-EMMA)、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)とメチルメタクリレート(MMA)、ビニルアルコール(VA)と酢酸ビニル(VAc)を含む。
【0034】
一実施形態では、コーティング溶液は、選択された高分子または共重合体のアセトン溶液であってもよい。より特定の実施形態では、コーティング溶液は、酢酸ビニルおよびビニルピロリドン(VA/VP)統計共重合体の溶液であり得る。酢酸ビニル対ビニルピロリドンの重量比は、10:1と4:1の間、より好ましくは9:1と5:1の間、さらにより好ましくは8:1と6:1の間であり得る。一実施形態では、酢酸ビニルとビニルピロリドンの重量比(VA/VP)は7:1であってもよい。例えば、コーティング溶液は、87.5重量%の酢酸ビニルおよび12.5重量%のビニルピロリドンを含むことができる。濾過媒体30をコーティングし、白血球減少および血小板回収の一方または両方を増強するために、他の共重合体溶液を使用することもできる。上述のコーティング溶液のさらなる特性は、米国特許第7,775,376号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
不織布の濾過媒体のシートは、濾過媒体34の両面をコーティングするのに十分な時間、アセトンコーティング溶液の槽に浸漬することができる。コーティング溶液は、好ましくは約1~5%の高分子を含み、より好ましくは1~3%の高分子溶液、またはより好ましくは2%(95%~99重量%のアセトン、より好ましくは97~99%またはより好ましくは98重量%のアセトン)である。浸漬後、余分なコーティング溶液を媒体の表面から垂らす過剰なコーティング溶液が除去されると、濾過媒体は、選択された時間および/または選択された乾燥温度で乾燥される。乾燥は、当業者によって認識される方法で、オーブン内で、または乾燥ドラムを使用することによって行うことができる。一実施形態では、濾過媒体は、54℃~111℃の温度で、約3~7秒間、好ましくは約5秒間乾燥させることができる。
【0036】
コーティングされた濾過媒体(布)のロールが乾燥された後、ロールは個々のシート31に切断されてもよい。複数のこれらの個々のシートを積み重ねて、前フィルタおよび/または後フィルタのシートと組み合わせて、図1に示すようにフィルタアセンブリに含めるためのフィルタパッドに到達することができる。上記の方法に従って作製されたコーティングされたフィルタは、白血球減少および血小板回収をさらに増強する。以下に示すのは、本明細書に記載のコーティングされたフィルタの改善された白血球減少および血小板回収特性を実証する試験結果である。
【実施例
【0037】
小規模フィルタ(柔らかいハウジング、正方形、表面積15cm)は、20層の布(20層の濾過媒体、3層の前フィルタおよび1層の後フィルタで製造され、前フィルタには1層のスパンボンドPETと2層の不織メルトブローンPBTが含まれ、後フィルタには1層のスパンボンドPETが含まれた)を用いて製造された。以下に記載する2つの異なる濾過媒体、「対照」および「PEC試料」を比較した。対照は、VAVPコーティング高分子(VA/VP重量比7、0.22%w/wアセトン溶液)と組み合わせた標準的なPBTで作製され、PEC試料は、VAVPコーティング高分子(VA/VP重量比7、2%w/wアセトン溶液)と組み合わせたPEC布を含んだ。
【0038】
70mLのCPD(500mL±10%、CPDを除く)を含むPVCバッグに、情報提供を受けたドナーから血液ユニットを採取した。採集後、血液バッグをブタン-1,4-ジオール冷却プレート上で室温で24時間まで保存した。濾過する前に、収集した血液をフィルタシステムに接続した。各バッグについて3回の濾過を行った(各フィルタにつき160gの血液を採取)。濾過は重力によって行われた。
【0039】
白血球(WBC)の除去および血小板(PLT)の回収(シスメックスKX-21N自動血液学分析器による細胞計数)を評価するために、血液バッグから濾過の前後に試料を収集した。濾過した血液中の白血球をフローサイトメトリーで計数した。160gの採血時の総濾過時間も測定された。結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0040】
表1に示されるように、コーティングされたPECを布材料として使用すると、本明細書に記載のコーティング溶液でコーティングされた他の布地と比較して、血小板を回収する能力が向上すると同時に、適切な白血球除去が可能になり、濾過時間が短縮される。
【0041】
上述の実施形態は、本主題の原理の応用例のいくつかを例示するものであることが理解されるであろう。本明細書で個別に開示または請求された特徴の組み合わせを含む、請求された主題の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって多数の修正がなされ得る。これらの理由から、本発明の範囲は上記の説明に限定されず、特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から選択された成分を除去し、他の選択された成分を回収するための多孔性の高分子の不織布の布であって、親水性セグメントおよび疎水性セグメントを有する不織布材料を含む前記布と、
多孔性の高分子の前記布に塗布されたコーティングとを備える、血液から物質を除去するための濾過媒体。
【請求項2】
多孔性の高分子の前記布がポリエーテル-エステル共重合体を含む、請求項1に記載の濾過媒体
【請求項3】
多孔性の高分子の前記布は、以下の高分子構造を含む、請求項1または請求項2に記載の濾過媒体
【化1】
【請求項4】
前記疎水性セグメントは、アルキレングリコールおよび少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸またはエステルに由来する繰り返し単位を含む、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の濾過媒体
【請求項5】
前記親水性セグメントは、少なくとも1つのポリアルキレンオキシドグリコールに由来する、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の濾過媒体
【請求項6】
前記コーティングは、疎水性モノマーおよび親水性モノマーの重反応によって得られたものである、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の濾過媒体
【請求項7】
前記疎水性モノマーは、ビニルエステル、アルケンおよびアルキルメタクリレートからなる群から選択され、
前記親水性モノマーは、酸基を有するモノマー、塩基性基を有するモノマーおよび極性基を有するモノマーからなる群から選択される、請求項6に記載の濾過媒体
【請求項8】
前記コーティングは、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体を含むアセトン溶液を含む、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の濾過媒体
【請求項9】
酢酸ビニル対ビニルピロリドンの比が10:1~4:1である、請求項8に記載の濾過媒体
【請求項10】
入口および出口を含むハウジングと、
前フィルタと、
後フィルタと、
前記前フィルタと前記後フィルタとの間に位置する濾過媒体であって、前記濾過媒体は、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の濾過媒体のシートを1枚以上含む、血液フィルタアセンブリ。
【請求項11】
前記濾過媒体は複数の前記濾過媒体の前記シートの積層を含む、請求項10に記載の血液フィルタアセンブリ。
【請求項12】
ポリエーテル-エステル共重合体を含む布シートを形成し、
酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体を含むコーティング溶液で前記布シートの少なくとも片面をコーティングする工程とを含む、血液から物質を除去するためのフィルタを作製する方法。
【請求項13】
前記コーティングは、前記布を前記コーティング溶液の浴に浸漬することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記布シートから余分なコーティング溶液を除去することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コーティングされた前記布シートを54~111℃の温度で乾燥させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリエーテル-エステル共重合体から作製されたメルトブローン繊維から前記布を形成することを含む、請求項10から請求項15までのいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
濾過媒体34(またはその各シート)の表面をコーティング溶液でコーティングすることによって、濾過媒体による白血球減少および/または血小板回収をさらに促進することができる。コーティング溶液は、疎水性および親水性モノマーの重反応によって得られる高分子であってもよい。
【国際調査報告】