(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】液化水素の生成プロセス
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20231228BHJP
F25J 1/02 20060101ALI20231228BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F25J1/00 C
F25J1/02
C01B3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528460
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 GB2021000117
(87)【国際公開番号】W WO2022106801
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517443853
【氏名又は名称】ガスコンサルト リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Gasconsult Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】スキナー,ジェフリー フレデリック
【テーマコード(参考)】
4D047
4G140
【Fターム(参考)】
4D047AA02
4D047AB07
4D047BA03
4D047BB07
4D047CA03
4D047CA06
4D047CA09
4D047CA12
4D047CA17
4D047EA00
4G140AB02
(57)【要約】
水素ガスを液化するためのプロセスである。このプロセスは、高温膨張機および低温膨張機を有する冷却ループ内を循環する冷媒との熱交換によって水素ガスを中間温度まで冷却するステップを含み、低温膨張機からの流出ストリームが一部の凝縮冷媒を含み、循環冷媒から凝縮物を分離する手段が設けられ、凝縮物の蒸発および再加熱による熱交換によって水素ガスをさらに冷却するステップをさらに含む。冷却ループ内の流体は、典型的にはメタン(二酸化炭素、水蒸気および他の不純物を除去した後の天然ガスなど)、または窒素またはそれらの混合物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを液化するためのプロセスであって、
・水素供給ガスのストリーム[1]を提供するステップと、
・1バール~50バールの圧力でリサイクル水素ガスのストリーム[2]を提供するステップと、
・ストリーム[1]、[2]を水素圧縮機[A]に導入するステップであって、前記圧縮機が、10バール~200バールの圧力を有する混合排出ストリーム[3]を有する、ステップと、
・熱交換器[B]の第1の高温通路で前記混合排出ストリーム[3]を冷却するステップであって、前記高温通路が流出ストリーム[4]を有する、ステップと、
・熱交換器[C]の第1の高温通路で前記ストリーム[4]を冷却するステップであって、前記高温通路が流出ストリーム[5]を有する、ステップと、
・熱交換器[D]の第1の高温通路で前記ストリーム[5]を冷却するステップであって、前記高温通路が流出ストリーム[6]を有する、ステップと、
・ストリーム[6]を水素液化ユニット[E]に通すステップであって、前記水素液化ユニットが、1または複数の水素ガス膨張機と、1または複数の熱交換器と、オルト水素をパラ水素に触媒変換する1または複数のステージとを含み、水素液化ユニットが、-240℃~-255℃の温度を有する液体水素の流出ストリーム[7]および1バール~20バールの圧力を有するガス状水素の流出ストリーム[8]を有する、ステップと、
・ストリーム[8]を、流出ストリーム[9]を有する熱交換器[D]の第1の低温通路で再加熱し、次いで、流出ストリーム[10]を有する熱交換器[C]の第1の低温通路で再加熱し、その後、熱交換器[B]の第1の低温通路で再加熱するステップであって、熱交換器[B]からの再加熱したストリームが、前記水素リサイクルガスストリーム[2]を形成する、ステップと、
・10バール~150バールの圧力で冷媒ガスのストリーム[21]を提供するステップと、
・冷媒ガスのストリーム[21]を第1の部分[22]と第2の部分[25]とに分割するステップと、
・前記第1の部分[22]を第1の冷媒ガス膨張機[L]に通するステップであって、前記第1の冷媒ガス膨張機からの流出ストリーム[23]が、5バール~50バールの圧力を有する、ステップと、
・熱交換器[B]の第2の低温通路で第1の冷媒ガス膨張機流出ストリーム[23]を再加熱して、再加熱されたストリーム[24]を形成するステップと、
・再加熱されたストリーム[24]を圧縮機[M]で10バール~150バールの圧力に圧縮して、冷媒ガスの第1の構成要素[21]を形成するステップと、
・冷媒ガスの第2の部分[25]を、流出ストリーム[26]を有する熱交換器[B]の第2の高温通路に通すステップと、
・冷媒ガスの冷却した第2の部分[26]を第2の冷媒ガス膨張機[N]に通し、前記第2の冷媒ガス膨張機からの流出ストリーム[27]が、3バール~50バールの圧力を有し、かつ蒸気と液体の混合物を含む、ステップと、
・蒸気/液体分離器[O]で第2のガス膨張機[N]の流出ストリーム[27]を分離して、蒸気ストリーム[28]および液体ストリーム[29]を形成するステップと、
・前記液体ストリーム[29]をバルブ[P]で減圧して、0.5バール~10バールの圧力を有するストリーム[30]を形成するステップと、
・熱交換器(D)の第2の低温通路でストリーム[30]を蒸発および再加熱して、流出蒸気ストリーム[31]を形成するステップと、
・流出ストリーム[32]を有する低圧冷媒圧縮機[Q]により、ストリーム[31]をストリーム[28]の圧力と同じ圧力まで圧縮するステップと、
・ストリーム[28]とストリーム[32]を結合して、ストリーム[34]を形成するステップと、
・ストリーム[34]を熱交換器[C]の第2の低温通路で再加熱してストリーム[35]を形成し、その後、熱交換器[B]の第3の低温通路で再加熱してストリーム[36]を形成するステップと、
・再加熱したストリーム[36]を圧縮機[M]で10~150バールの圧力に圧縮して、冷媒ガスの第2の構成要素[21]を形成するステップとを備えることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
圧縮機[A]からの混合排出ストリーム[3]が、20バール~100バールの圧力を有することを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロセスにおいて、
ストリーム[30]の圧力が、1バール~3バールであることを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のプロセスにおいて、
冷媒ガスが、メタンまたはメタンに富むガスであることを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセスにおいて、
第2のガス膨張機[N]からの流出ストリーム[27]の圧力が、10バール~50バールであることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項1~3の何れか一項に記載のプロセスにおいて、
冷媒ガスが、窒素であることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスにおいて、
第2のガス膨張機[N]からの流出ストリーム[27]の圧力が、3バール~30バールであることを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項1~3の何れか一項に記載のプロセスにおいて、
冷媒ガスが、メタンと窒素の混合物であることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項1~3の何れか一項に記載のプロセスにおいて、
第1の冷媒ガス膨張機[L]を流れる冷媒ガス[21]が、メタンまたはメタンに富むガスであり、第2の冷媒ガス膨張機[N]、分離器[O]およびバルブ[P]を流れる冷媒ガス[26]が、窒素であることを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載のプロセスにおいて、
圧縮機(A)の流入ストリーム[2]の温度が、-200℃~40℃であることを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項10に記載のプロセスにおいて、
圧縮機[A]への流入ストリームが、水素液化ユニット[E]の流出ストリーム[8]から直接取り出されるか、または熱交換器[D]または[C]の第1の低温通路の出口から取り出されることを特徴とするプロセス。
【請求項12】
周囲温度に近い第2の冷媒ガスのストリーム[11]が提供される、請求項1~11の何れか一項に記載のプロセスにおいて、
ストリーム[11]を熱交換器[B]の第3の高温通路で冷却して流出ストリーム[12]を形成するステップと、
ストリーム[12]を熱交換器[C]の第2の高温通路で冷却して流出ストリーム[13]を形成するステップと、
ストリーム[13]を熱交換器[D]の第2の高温通路で冷却して流出ストリーム[14]を形成するするステップと、
ストリーム[14]を水素液化ユニット[E]に入れるステップであって、その中でストリーム[14]が、ストリーム[15]として[E]を出る前に、膨張の1または複数のステージを通過して冷却を提供する、ステップと、
ストリーム[15]を熱交換器[D]の第3の低温通路で再加熱してストリーム[16]を形成するステップと、
熱交換器[C]の第3の低温通路でストリーム[16]をさらに再加熱してストリーム[17]を形成するステップと、
熱交換器[B]の第4の低温通路でストリーム[17]をさらに再加熱してストリーム[18]を形成するステップと、
圧縮機[F]でストリーム[18]を再圧縮してストリーム[11]を形成するステップとを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスにおいて、
第2の冷媒ガスが、水素、ヘリウム、または水素またはヘリウムとネオンの混合物であることを特徴とするプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスを液化する方法に関し、特に液化する水素を液化前に中間温度まで冷却する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化水素は、炭素含有燃料の代替となる可能性がある。宇宙用途での現在の使用に加えて、将来的には航空機および船舶の燃料として、より大量の液体水素が必要とされるであろう。燃料としての水素の利用が増えるに連れて、液体水素の大規模な貯蔵と輸送の必要性が高まることとなる。
【0003】
提案されている既存の水素液化プロセスは、主に、
・蒸発する流体(「第1の冷媒」)との熱交換によって、流入する水素を中間温度(以下「中間温度」)に冷却(以下「予備冷却」)する第1のステップ(最も広く提案されている第1の冷媒は液体窒素であり、液体メタン(LNG)および混合冷媒も提案されている)と、
・予備冷却した水素の一部またはヘリウムなどの第2の冷媒のワーク膨張のいずれかによって、予備冷却した水素をさらに冷却して液化させる第2のステップとを備える。
【0004】
予備冷却を一切行わない、前述した第2のステップ(水素または第2の冷媒の膨張による冷却)のみを含む水素液化プロセスも実現可能であり、これまで実施されてきたかもしれないが、予備冷却の第1のステップを組み込むことは、(a)液化プロセス全体の総圧縮力の減少と、(b)第2の冷媒システムの循環速度および圧縮力の減少に起因する投資および製造コストの明らかな低下という、2つの要因から好ましいといえる。
【0005】
要因(b)に関連して、第1の予備冷却ステップの出口において水素の実際上の最低温度(第1の冷媒として液体窒素を使用する場合、通常は約-190℃)を使用すると、必要な循環速度、ひいては上記第2のステップにおける冷媒の圧縮力を最小限に抑えることができる。しかしながら、実際上の最低の予備冷却温度は、予備冷却システムの圧縮力要件を考慮すると、完全な液化プロセスの総圧縮力を必ずしも最小にするわけではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の主要な態様は、水素の液化に関するものであり、液化される水素ストリームを中間温度、典型的には-150℃~-200℃に予備冷却する改良された方法を開示する。
【0007】
本明細書の何れかにおいて、圧力を「バール」と記載している場合、それらはバール絶対圧である。
【0008】
開示の予備冷却の手段は、メタン、窒素またはそれらの混合物に限定されるものではないが、そのような物質の流体を含む閉じたサイクルであり、
・ガス状流出ストリームを有する高温ガス膨張機、
・部分的に液化された流出ストリームを有する低温ガス膨張機、
・低温ガス膨張機の流出ストリームからの液体を分離すること、
・分離した液体を大気圧付近まで減圧すること、
・供給水素(および第2の冷媒(これを使用する場合))を周囲温度付近から連続的に冷却することであって、先ずは、高温ガス膨張機からの流出ストリームとの熱交換によって、第2に、液体の分離後に低温ガス膨張機からの流出ストリームとの熱交換によって、第3に、減圧した液体冷媒の蒸発との熱交換によって、-150℃~-200℃の典型的な中間温度に連続冷却すること、
・得られた低圧冷媒ストリームを再圧縮すること
を含む。
【0009】
上記予備冷却の構成は、GB2486036に記載のメタン液化(LNG生成)のプロセスに類似しており、特に、低温ガス膨張機における液体の形成と、それに続く低温ガス膨張機の流出ストリームからの液体の分離に関して、類似している。この引用ケースでは、低温ガス膨張機で形成された液体が、プロセスの全液体(LNG)出力の一部に寄与するが、本願では、水素液化プロセスにおいて、上記液体が減圧された後、液化される水素と熱交換することにより蒸発し、それによって、水素を中間温度、典型的には-150℃~-200℃に冷却するようになっている。
【0010】
本発明は、上記高温ガス膨張機の冷媒としてメタンを使用する一方で、上記低温ガス膨張機の冷媒として窒素を使用することを含む。
【0011】
本出願人は、液化される水素を冷却する本方法、すなわち、ガス膨張機で液体冷媒を形成し、その液体を、水素液化プロセスにおける予備冷却剤として、分離および減圧して蒸発させる方法が、先行技術には開示されておらず、新規なものであると考える。上記液体の生成は、低温ガス膨張機における機械的仕事の直接的な生成に起因するため、熱的に効率的である。また、水素液化プロセス内で液体メタンまたは液体窒素などの液体冷媒を生成し、混合冷媒のような液体の第1の冷媒の高コストで複雑な外部供給の必要性を除去するという実用的な利点もある。
【0012】
すなわち、本発明の主要な態様に係る、水素を液化するためのプロセスの説明が提供され、そのプロセスが(
図1/3およびそれに示す機器タグおよびストリーム番号を参照すると)、
・純粋な水素供給ガスのストリーム[1]を提供するステップと、
・1バール~50バールの圧力でリサイクル水素ガスのストリーム[2]を提供するステップと、
・ストリーム[1]、[2]を水素圧縮機[A]に導入するステップであって、前記圧縮機が、10バール~200バールの圧力、より典型的には20バール~100バールの圧力を有する冷却後の混合排出ストリーム[3]を有する、ステップと、
・熱交換器[B]の第1の高温通路で前記混合排出ストリーム[3]を冷却するステップであって、前記高温通路が、流出ストリーム[4]を有する、ステップと、
・熱交換器[C]の第1の高温通路で前記ストリーム[4]を冷却するステップであって、前記高温通路が、流出ストリーム[5]を有する、ステップと、
・熱交換器[D]の第1の高温通路で前記ストリーム[5]を冷却するステップであって、前記高温通路が、流出ストリーム[6]を有する、ステップと、
・ストリーム[6]を水素液化ユニット[E]に通すステップと、
・水素液化ユニット[E]が、典型的には、ストリーム[6]を2つの部分に分割すること;第1のガス膨張機で第1の部分[e-1]を冷却して流出ストリーム[e-2]を形成すること;第1の熱交換機で第2の部分[e-3]を冷却してストリーム[e-4]を形成すること;ストリーム[e-4]を2つの部分に分けること;第2のガス膨張機で第1の部分[e-5]を冷却して流出ストリーム[e-6]を形成すること;第2の熱交換器で第2の部分[e-7]を冷却および液化して液化水素生成物ストリーム[7]を形成すること;ストリーム[e-6]を第2の熱交換器に通してリサイクルすることによりストリーム[e-8]を形成すること;ストリーム[e-2]と[e-8]を組み合わせてストリーム[e-9]を形成すること;第1の熱交換器でストリーム[e-9]を再加熱してリサイクル水素ストリーム[8]を形成すること;第2の熱交換器に触媒を設けてオルト水素からパラ水素への変換を促進することを含み、
・液化水素生成物ストリーム[7]が、-240℃~-255℃の温度を有し、
・リサイクル水素ストリーム[8]が、1バール~30バールの圧力を有し;熱交換器[D]の第1の低温通路でストリーム[8]を再加熱して流出ストリーム[9]を形成するステップと;熱交換器[C]の第1の低温通路でストリーム[9]を再加熱して流出ストリーム[10]を形成するステップと;熱交換器[B]の第1の低温通路でストリーム[10]を再加熱するステップであって、熱交換器[B]からの再加熱したストリームが、上記水素リサイクルガスストリーム[2]を形成する、ステップとを含み、
・熱交換器[B]、[C]、[D]が、物理的に単一ユニットに組み合わせることができ、
・10バール~150バールの圧力で冷媒ガスのストリーム[21]を提供するステップと、
・冷媒ガスのストリーム[21]を第1の部分[22]と第2の部分[25]とに分割するステップと、
・前記第1の部分[22]を第1の冷媒ガス膨張機[L]に通するステップであって、前記第1の冷媒ガス膨張機からの流出ストリーム[23]が、5バール~50バールの圧力を有する、ステップと、
・熱交換器[B]の第2の低温通路で第1の冷媒ガス膨張機流出ストリーム[23]を再加熱して、再加熱したストリーム[24]を形成するステップと、
・再加熱したストリーム[24]を圧縮機[M]で10バール~150バールの圧力に圧縮して、冷却後の冷媒ガスの第1の構成要素[21]を形成するステップと、
・冷媒ガスの第2の部分[25]を、流出ストリーム[26]を有する熱交換器[B]の第2の高温通路に通すステップと、
・冷媒ガスの冷却した第2の部分[26]を第2の冷媒ガス膨張機[N]に通し、前記第2の冷媒ガス膨張機からの流出ストリーム[27]が、典型的には3バール~50バールの圧力を有し、かつ蒸気と液体の混合物を含む、ステップと、
・蒸気/液体分離器[O]で第2のガス膨張機[N]の流出ストリーム[27]を分離して、蒸気ストリーム[28]および液体ストリーム[29]を形成するステップと、
・前記液体ストリーム[29]を、典型的にはバルブ[P]で減圧して、0.5バール~10バールの圧力、典型的には大気圧に近い圧力を有するストリーム[30]を形成するステップであって、ストリーム[30]の温度が、ほぼ大気圧で、冷媒としてメタンを用いた場合には典型的には-160℃、冷媒として窒素を用いた場合には-195℃である、ステップと、
・熱交換器(D)の第2の低温通路でストリーム[30]を蒸発および再加熱して、流出蒸気ストリーム[31]を形成するステップと、
・流出ストリーム[32]を有する冷媒圧縮機[Q]により、ストリーム[31]をストリーム[28]の圧力と同じ圧力まで圧縮するステップと、
・ストリーム[28]とストリーム[32]を結合して、ストリーム[34]を形成するステップと、
・ストリーム[34]を熱交換器[C]の第2の低温通路で再加熱してストリーム[35]を形成し、その後、熱交換器[B]の第3の低温通路で再加熱してストリーム[36]を形成するステップと、
・再加熱したストリーム[36]を圧縮機[M]で10~150バールの圧力に圧縮して、冷却後の冷媒ガスの第2の構成要素[21]を形成するステップとを備える。
【0013】
本発明の第2の態様は、上述した2段の膨張機予備冷却回路の高効率を利用して、水素リサイクル圧縮機を周囲温度よりかなり低い吸入温度で運転することである。提案のフロースキームは、
図2/3に概略的に示されている。ストリーム[9]は、通常、-120℃の温度で圧縮機Aの第1の部分に入る。
【0014】
代替的には、圧縮機[A]への流入ストリームは、水素液化ユニット[E]の流出ストリーム[8]から直接、または
図1/3の熱交換器[C]の第1の低温通路[10]の出口から取り入れることができる。
【0015】
圧縮機[A]の入口温度に応じて、圧縮機[A]の電力は、
図1/3に示す周囲入口温度を有する構成と比較して、約50%低減することができる。第1の冷媒圧縮機[M]、[Q]の電力需要は、ほぼ同等に増加する。
【0016】
本出願人は、周囲温度よりもかなり低い入口温度で水素圧縮機を動作させるこの構成は、以下のように、水素液化についての先行技術との関係で、新規であり、特に有利であると考える。
・水素の密度が遠心圧縮機で使用するには低すぎる可能性があるため、水素圧縮には一般に往復圧縮機の使用が必要であり、往復圧縮機の比較的高い投資および運転コストを考慮すると、特に複数の圧縮機を並行して使用する大規模な設備では、周囲温度より低い入口温度の使用による往復圧縮機の電力要件の低減は重要であり、
・入口温度が周囲温度より大幅に低い状態で水素圧縮機を運転すると、入口密度が増加し、例えば、-120℃では、入口密度が周囲温度のときの密度の約2倍になり、水素液化において遠心圧縮の使用が容易になる。
【0017】
図3/3に示す本発明の第3の態様では、水素液化ユニット[E]において水素ストリームをさらに冷却して液化するのに必要な冷却の一部またはすべてが、閉回路における1または複数の段階の第2の冷媒の膨張によって提供される。この構成により、ストリーム[6]の一部の膨張によって水素液化ユニット[E]で生成される冷却の量を、大幅に削減または排除することができ、その結果、ストリーム[8]の流量および圧縮機[A]に必要な電力は、
図1/3に示すフロースキームよりも大幅に低くなり得る。
【0018】
本発明のこの第3の態様によれば、
・第2の冷媒のストリーム[11]が、熱交換器[B]、[C]、[D]で連続的に冷却されて、典型的には水素液化ユニット[E]への水素流入ストリーム[6]と同じ温度を有するストリーム[14]を形成し、
・本発明の前述した主要な態様に関して説明した、
図1/3に示す水素液化ユニット[E]の典型的な内部構成に加えて、水素液化ユニット[E]は、典型的には、ストリーム[14]を2つの部分に分割すること;第1の膨張機で第1の部分[e-11]を冷却して流出ストリーム[e-12]を形成すること;第1の熱交換器で第2の部分[e-13]を冷却してストリーム[e-14]を形成すること;第1の熱交換器でストリーム[e-14]を再加熱してストリーム[e-15]を形成すること;第2の膨張機でストリーム[e-12]をさらに冷却して流出ストリーム[e-16]を形成すること;第2の熱交換器でストリーム[e-16]を再加熱してストリーム[e-17]を形成すること;並びに、ストリーム[e-15]と[e-17]とを組み合わせてストリーム[15]を形成することをさらに含み、
・ストリーム[15]が、ストリーム[14]よりも低い圧力で水素液化ユニット[E]を出て、
・ストリーム15が、熱交換器[D]、[C]、[B]で連続的に再加熱されて、周囲温度に近い再加熱したストリーム[18]を形成し、
・その後、ストリーム[18]が圧縮機[F]で再圧縮されて、冷却後の第2の冷媒[11]を形成する。
【0019】
第2の冷媒は、水素、ヘリウムまたはネオン、またはそれらの混合物を含むことができる。
【0020】
第2の冷媒として水素を使用する場合、第2の冷媒回路に変換触媒がない場合、オルト水素からパラ水素への有意な変換は期待されない。本発明のこの第3の態様におけるストリーム[6]の上述した結果として得られる低い流れにより、水素液化ユニット[E]において変換触媒を通過する水素の流れは、
図1/3に示す本発明の主要な態様におけるよりも少なくなり、その結果、オルト水素からパラ水素への変換触媒の量も減らすことができる。
【0021】
本発明は、広く使用されているプロセスシミュレーションソフトウェアによって広範にシミュレーションされている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1/3は、本発明の主要な態様を示している。
【
図2】
図2/3は、本発明の第2の態様を示している。
【
図3】
図3/3は、本発明の第3の態様を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照しながら本発明を説明することとする。それら添付図面は、本発明に係るプロセスの実施形態を例示するフロー図を示している。
【0024】
正確なフローシートは変動する可能性があるが、通常は、それらの基本的な要素が含まれる。
【0025】
図1/3に示す本発明の第1の実施形態では、圧力25バールの液化される水素の供給ストリーム[1]が、圧縮機[A]に導入される。圧縮機は、後述するリサイクル水素のストリーム[2]も受け入れる。供給水素と冷却後のリサイクル水素の混合ストリーム[3]は、75バールで圧縮機から排出される。
【0026】
混合ストリーム[3]は、熱交換器[B]の第1の高温通路を通過することにより-50℃に冷却されて、ストリーム[4]を形成し、その後、熱交換器[C]の第1の高温通路を通過することにより-120℃にさらに冷却されて、ストリーム[5]を形成する。必要な冷却は、メタン冷媒の閉回路によって後述するように与えられる。
【0027】
熱交換器[C]からの流出ストリーム[5]は、低圧メタン冷媒ストリームの蒸発によって-158℃にさらに冷却されて、ストリーム[6]を形成する。
【0028】
その後、ストリーム[6]は、水素液化ユニット[E]に流れる。この水素液化ユニットは、1または複数の水素膨張機と、1または複数の熱交換器と、1または複数のオルト-パラ水素触媒変換ステージとを備える。
【0029】
水素液化ユニット[E]は、温度-244℃、圧力7.5バールの液体水素の流出ストリーム[7]と、温度-161℃、圧力6.8バールのガス状水素ストリームの流出ストリーム[8]とを有する。
【0030】
ストリーム[8]は、熱交換器[D]の低温通路で最初に再加熱されて、温度-123℃のストリーム[9]を形成し、その後、熱交換器[C]の第1の低温通路でさらに再加熱されて、温度-53℃のストリーム[10]を形成し、次いで、熱交換器[B]の第1の低温通路でさらに再加熱される。ほぼ周囲温度の再加熱されたストリームは、上述した水素リサイクルストリーム[2]を形成する。
【0031】
メタン冷媒を含む上述した閉じた冷却回路は、冷媒圧縮機[M]の吐出口に90バールの圧力を有するストリーム[21]を有する。
【0032】
圧縮機[M]からの流出ストリーム[21]は、第1の部分[22]と第2の部分[25]とに分割される。
【0033】
第1の部分[22]は、圧力26バールおよび温度-54℃の流出ストリーム[23]を有する第1の冷媒ガス膨張機[L]に送られる。第2の部分[25]は、熱交換器[B]の第2の高温通路を通過する。この熱交換器は、上述した水素ストリーム[4]と同じ出口温度-50℃を有する流出ストリーム[26]を有する。
【0034】
ストリーム[23]は、熱交換器[B]の第2の低温通路で周囲温度近くまで再加熱される。再加熱したストリーム[24]は、上述した冷媒ガスストリーム[21]の冷却後の第1の構成要素として、周囲温度付近で冷媒圧縮機[M]に流れる。
【0035】
熱交換器[B]からの流出ストリーム[26]は、第2の冷媒ガス膨張機[N]に流れる。この第2の冷媒ガス膨張機は、圧力10バールおよび温度-124℃で、蒸気と液体の両方を含む流出ストリーム[27]を有する。
【0036】
ストリーム[27]は、蒸気/液体分離器[O]で分離されて、蒸気ストリーム[28]および液体ストリーム[29]を形成する。
【0037】
液体ストリーム[29]は、バルブ[P]で大気圧付近まで減圧されて、-158℃の温度を有する液体と蒸気の混合物を流出ストリーム[30]に形成する。
【0038】
ストリーム[30]は、熱交換器(D)の第2の低温通路で完全に蒸発および再加熱され、上述した水素ストリーム[9]と同じ温度-123℃を有する流出蒸気ストリーム[31]を形成する。ストリーム[31]は、冷媒圧縮機[Q]により圧縮される。この冷媒圧縮機は、ストリーム[28]と同じ9.7バールの圧力を有する流出ストリーム[32]を備える。その後、ストリーム[28]、[33]は結合されて、ストリーム[34]を形成する。
【0039】
ストリーム[34]は、熱交換器[C]の第2の低温通路で最初に再加熱されて、-53℃の温度を有するストリーム[35]を形成し、その後、熱交換器[B]の第3の低温通路で再加熱される。再加熱したストリーム[36]は、上述した冷媒ガスストリーム[21]の冷却後の第2の構成要素としてほぼ周囲温度で圧縮機[M]に流れる。
【0040】
本発明の第2の実施形態を示す添付の
図2/3を参照して、本発明をさらに説明する。上記概念で説明されるこの第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例を含み、ここでは、水素リサイクル圧縮機[A]が、周囲温度よりかなり低い吸入温度の流入ストリームを受け入れる。
【0041】
この第2の実施形態の例では、水素リサイクルストリーム[9]が、温度-123℃および圧力6.6バールで圧縮機[A]に直接流れる。その後、圧縮機[A]からの流出ストリーム[3]の温度は、周囲温度近くまで低下する。
【国際調査報告】