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特表2024-501115光導電性プライミングコーティングを作製するためのプライミング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】光導電性プライミングコーティングを作製するためのプライミング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20231228BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20231228BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20231228BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231228BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231228BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20231228BHJP
   B05D 1/04 20060101ALI20231228BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20231228BHJP
   C01B 32/174 20170101ALI20231228BHJP
   C01B 32/159 20170101ALI20231228BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 D
C09D5/24
C09D7/61
B05D7/24 303B
B05D7/24 303G
B05D7/24 303A
B05D1/02 Z
B05D1/04 H
B05D5/12 B
C01B32/174
C01B32/159
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530930
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-20
(86)【国際出願番号】 RU2021050384
(87)【国際公開番号】W WO2022115004
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】2020139112
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519239702
【氏名又は名称】エムシーディ テクノロジーズ エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】プレチェケンスキー, ミハイル ルドルフォビッチ
(72)【発明者】
【氏名】チェボチャコブ, デミトリー セメノビッチ
(72)【発明者】
【氏名】シリェブ, グレブ イブゲニビッチ
【テーマコード(参考)】
4D075
4G146
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA09
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075BB60Z
4D075BB91X
4D075BB91Z
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB04
4D075DA06
4D075DA23
4D075DB11
4D075DB32
4D075DB36
4D075DB37
4D075DB43
4D075DB48
4D075DB53
4D075DC11
4D075DC12
4D075DC13
4D075EA05
4D075EA06
4D075EA10
4D075EA31
4D075EA41
4D075EB22
4D075EB51
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC07
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC22
4D075EC30
4D075EC31
4D075EC33
4D075EC53
4D075EC54
4G146AA12
4G146AB06
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146AD22
4G146AD37
4G146BA04
4G146CB09
4G146CB10
4J038CG141
4J038HA036
4J038HA216
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA12
4J038KA21
4J038LA06
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA20
4J038PA06
4J038PA07
4J038PA18
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、導電性コーティング、特に静電塗装を受ける前の部品の導電性プライミングコーティング、並びにそのようなコーティング(プライミングコーティング)を作製するためのプライミング組成物に関する。本発明は、静電塗装の前に部品に光導電性プライミングコーティングを作製するためのプライミング組成物であって、0.005重量%超かつ0.1重量%未満の濃度の単層及び/又は二層カーボンナノチューブを含み、20ミクロン以下のプライミング組成物の粉砕度を有する、当該プライミング組成物を提案する。このようなプライミング組成物を塗布する技術的結果は、10Ω/sq未満の比表面抵抗及び少なくとも60%の光反射係数(LRV)を有する光導電性プライミングコーティングである。本発明はまた、プライミング組成物及び光導電性プライミングコーティングを調製する方法を提案する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電塗装の前に部品の淡色導電性プライミングコーティングを製造するためのプライミング製剤であって、前記プライミング製剤が、0.005重量%超かつ0.1重量%未満の濃度の単層及び/又は二層カーボンナノチューブを含み、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムからなる群から選択される、5~40重量%の1つ又はいくつかの白色顔料を含み、前記プライミング製剤の粉砕度が20μm以下であることを特徴とする、プライミング製剤。
【請求項2】
前記プライミング製剤が、高分子量コポリマー及び/又は極性基を有する直鎖ポリマーのアルキルアンモニウム塩、及び/又は極性基を有するブロックコポリマーから選択される、0.1~2重量%の1つ又はいくつかの分散剤を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のプライミング製剤。
【請求項3】
前記プライミング製剤の体積抵抗率が10オーム・cm未満であることを特徴とする、請求項1に記載のプライミング製剤。
【請求項4】
前記プライミング製剤が、0.7未満のオストワルト・デワーレべき乗則関係における流動挙動指数を有する擬塑性非ニュートン流体であることを特徴とする、請求項1に記載のプライミング製剤。
【請求項5】
前記プライミング製剤が、ベントナイト、層状ケイ酸塩、改質層状ケイ酸塩、及び高分子量ポリマーからなる群から選択される、0.1~5重量%の1つ又はいくつかのレオロジー調整剤を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のプライミング製剤。
【請求項6】
請求項1に記載のプライミング製剤を製造するための方法であって、一連の(A)少なくとも1重量%の単層及び/又は二層カーボンナノチューブを含む分散系であり、カーボンナノチューブと分散媒との混合物を50μm以下の粉砕度まで機械加工することによって得られる、単層及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物を、少なくとも溶媒を含む混合物に導入する工程、並びに(B)前記得られた混合物を混合して、20μm以下の粉砕度を有する均一な懸濁液を形成する工程、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
工程(B)における混合が、ディスクインペラを備えたオーバーヘッドスターラを使用して行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(B)における混合が、ローターステータ型ミキサを使用して行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程(B)における混合が、0.4mm超かつ1.8mm未満のビーズ直径を有するビーズミルを使用して、10W・h/kg超の投入エネルギーで0.5超かつ2未満のビーズ体積対懸濁液体積比で行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
工程(A)の前に、前記プライミング製剤の全ての他の成分を前記溶媒に導入して混合し、前記一連の工程(A)及び(B)が前記プライミング製剤の前記製造を完了することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
分散剤及び塗膜形成剤が工程(A)の前に前記溶媒に導入され、工程(A)において、単層及び/又は二層カーボンナノチューブの前記濃縮物及び白色顔料が、溶媒、分散剤及び塗膜形成剤を含有する前記混合物に導入され、前記白色顔料の分散が、前記プライミング製剤の製造を完了する工程(B)において行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングが、請求項1に記載のプライミング製剤を前記部品表面に塗布し、次いで乾燥させることによって製造されることを特徴とする、淡色導電性プライミングコーティング。
【請求項13】
前記コーティングの乾燥が、前記残留溶媒濃度が20重量%以下になるまで行われることを特徴とする、請求項12に記載の淡色導電性プライミングコーティング。
【請求項14】
前記塗装される部品が、1010オーム/スクエア超の表面抵抗を有するポリマー材料で作られていることを特徴とする、請求項12に記載の淡色導電性プライミングコーティング。
【請求項15】
前記塗装される部品が、1010オーム/スクエア超の表面抵抗を有する複合材料で作られていることを特徴とする、請求項12に記載の淡色導電性プライミングコーティング。
【請求項16】
前記塗装される部品が、ポリプロピレン、若しくはポリアミド、若しくはポリカーボネート、若しくはアクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンのコポリマー、又はそれらの混合物で作られていることを特徴とする、請求項14に記載の淡色導電性プライミングコーティング。
【請求項17】
前記塗装される部品が、タルク充填ポリプロピレン、又はガラス充填ポリアミド、又は炭素充填ポリアミド、又はポリエステルシートプレス材料で作られていることを特徴とする、請求項15に記載の淡色導電性プライミングコーティング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性コーティング、より詳しくは、それらの静電塗装前の部品用の導電性プライミングコーティング、並びにそのようなコーティング(プライマー)を製造するためのプライミング製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
静電塗装は、塗装コーティングを製造するための工学において広く使用されている方法であり、部品表面への塗装前の塗料の流れは、小さな帯電液滴に分割される。この塗装方法の利点、すなわち、薄く均一な層を達成し、プロセス自動化を可能にすることは、その広範な適用を確実にした。このプロセスは、塗装される部品又は少なくともその表面が、帯電した塗料液滴によってもたらされる電荷を排出するのに十分な導電性を有する、すなわち導電性であることを必要とする。部品は、10オーム/スクエア(オーム/□)未満、より好ましくは10オーム/□未満、最も好ましくは10オーム/□未満の表面抵抗を有さなければならない。塗装される部品が金属等の導電性材料で作られている場合、この条件は容易に満たされる。しかしながら、多くの産業は、塗装を必要とする部品を使用しているが、それらは十分な導電性を有さないポリマー材料で作られている。したがって、車体の多くの部品は、表面抵抗が1012オーム/□を超えることを特徴とし、静電塗装を不可能にする。導電性プライミングコーティングの層は、このような部品上に予め作製されなければならない。
【0003】
業界は、部品に3重量%を超える量のカーボンブラック(CB)を含む懸濁液を塗布することによって導電性プライミングコーティングを作成する方法を広く使用している。このような懸濁液を乾燥させた後、10重量%を超えるカーボンブラックを含むコーティングが得られる。この方法の重大な欠点は、濃い灰色(最も濃い場合は黒色)のコーティングのである。これは、その後の白色又は淡色の色相への静電塗装において重大な困難を引き起こし、すなわち、高い光反射率値(LRV)を得るために、コーティングの塗布層を厚くする必要があり、これにより、製造塗装ラインのスループットが低下し、塗料消費量が増加し、コーティングの耐用年数に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0004】
開示[中国特許出願公開110591483号A、FUDAN Univ.、2019年12月20日、C09D133/04 C09D175/04 C09D5/24 C09D7/46 C09D7/61]は、8~12部の塗膜形成樹脂、35~45部の水系接着促進剤及び湿潤剤、6.5~7.0部の水系増粘剤、14~20部の水、0.6~1.0部の水系分散剤、0.6~1.0部の水系消泡剤、15~25部のチタンホワイト
導電性粉末」という用語を使用して、著者らは導電性グラフェン又は導電性カーボンブラックを指すことになる。この懸濁液をプライマーとして使用すると、導電性コーティング、例えば0.36重量%CB N311及び0.22重量%の導電性グラフェンXF178の存在が3.4.10オーム/□のコーティング表面抵抗を提供し、コーティング表面抵抗を3.10オーム/□未満に低減するためには、導電性グラフェンの濃度を1.8重量%超に上げる必要がある。本出願は、より少量の導電性機能性粉末及びCBを含むコーティングに関するデータを提供しない。中国特許出願公開110591483号Aの発明に関する出願で提供されるプライマーの明らかな欠点は、高濃度の炭素添加剤、すなわち0.2~6.8重量部(顔料CB、及び導電性CB又はグラフェン)を含み、これは常に0.17重量%を超える。このような高濃度の炭素添加剤は、濃い色の製造されたプライミングコーティングをもたらす。
【0005】
特許開示[中国特許第104403397号B、DONGFENG MOTOR、2017年7月28日、C09D5/24、C09D163/00、C09D133/00、B05D7/26、B05D3/02]は、自動車プライミング製剤中に均一に分散され、カーボンナノチューブを自動車プライミング製剤に導入し、続いて得られた混合物を分散させることによって得られる、0.1~1.5重量%のカーボンナノチューブの含有量を有するカーボンナノチューブを含む複合プライミング製剤を提供することが知られている。このプライミング製剤を塗布することによって製造されるコーティングの表面抵抗は、103~10オーム/□である。プライミング製剤中のカーボンナノチューブの重量濃度0.8重量%において、このようなプライミング製剤を塗布することによって製造されるコーティングの表面抵抗は、5.10オーム/□である。本開示で提供されるそのようなプライミング製剤を使用するための前提条件は、プライミング製剤の色が自動車の上部塗料層の色よりも明るいことである。
【0006】
提供される方法の欠点は、得られたプライミングコーティングの色が濃いことである。検討される開示で提供されたデータ(検討される開示中国特許第104403397号Bの図1)から、この開示で主張される最小量、すなわち0.1重量%のカーボンナノチューブの導入時であっても、コーティングは、約50%のLRVを有する暗灰色を有することになる。これは、濃い色で塗装された自動車部品へのこのプライミング製剤の可能性の或る適用範囲を劇的に制限する。提供される方法の更なる欠点は、全ての他の成分を既に含有するプライミング製剤中に、すなわち、複雑な組成を有するかなり粘性のある分散物中にカーボンナノチューブを分散させる必要があることである。カーボンナノチューブの予備分散がなければ、得られたプライミング製剤は不均一となる可能性があり、すなわち、黒色ドットとして眼に見えるナノチューブのかなり大きな凝集体を含有する場合がある。
【0007】
上記の説明から、10オーム/□未満の表面抵抗及び少なくとも60%の光反射率値(LRV)を有する導電性の淡色プライミングコーティングを作製するという工学的課題が存在することになる。発明の出願[中国特許出願公開110591483号A]及び開示[中国特許第104403397号B]は、この課題を解決しない。本発明では、プロトタイプとして、特許開示[中国特許第104403397号B、DONGFENG MOTOR、2017年7月28日、C09D5/24、C09D163/00、C09D133/00、B05D7/26、B05D3/02]を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公開110591483号A、FUDAN Univ.、2019年12月20日、C09D133/04 C09D175/04 C09D5/24 C09D7/46 C09D7/61
【特許文献2】中国特許第104403397号B、DONGFENG MOTOR、2017年7月28日、C09D5/24、C09D163/00、C09D133/00、B05D7/26、B05D3/02
【発明の概要】
【0009】
本発明は、静電塗装の前に部品の淡色導電性プライミングコーティングを製造するためのプライミング製剤であって、該製剤が、0.005重量%超かつ0.1重量%未満の濃度の単層及び/又は二層カーボンナノチューブを含み、前記プライミング製剤の粉砕度が20μm以下である、プライミング製剤を提供する。
【0010】
そのような導電性プライミング製剤を使用する技術的結果は、10オーム/□未満の表面抵抗及び少なくとも60%の光反射率値(LRV)を有する淡色導電性プライミングコーティングを製造することである。これにより、その後、部品を淡色又は白色で塗装することができる。
【0011】
「プライミング製剤」という用語は、溶媒、塗膜形成剤、分散剤、顔料、レオロジー及び粘度調整剤、塗装される部品及び上部塗料層の材料に対するプライマー接着を改善する薬剤、並びに導電性添加剤を含む複雑な組成を有する懸濁液を指す。導電性添加剤以外のプライミング製剤の成分の化学的性質及び含有量は、塗装された部品の材料、特定の植物に塗装するために使用されるプロセスの特徴、従来技術に基づく経済的パラメータに基づいてもよく、本発明の特徴ではない。例えば、プライミング製剤は、水系(溶媒としての水)であってもよく、又は溶媒は、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、酢酸メトキシプロピル、トルエン、シクロヘキサノン等を含むがこれらに限定されない有機溶媒であってもよい。塗膜形成剤は、既知のアクリル、エポキシ、ポリウレタン、ポリエステル、又は他の塗膜形成剤から選択され得るが、これらに限定されず、提供された例に限定されない。
【0012】
「粉砕度」という用語は、標準[GOST 6589-74塗料及びワニス。「Klin」機器(Grindometer)を使用して粉砕度を決定する方法]及び[ISO 1524:2020(en)塗料、ワニス及び印刷インク-磨砕度の決定]に従って決定されたプライミング製剤中のカーボンナノチューブの粒子及び凝集体のサイズを指す。このパラメータは、サイズに応じたプライミング製剤中のカーボンナノチューブの凝集体の分布の上限を特徴付ける。
【0013】
達成された技術的結果は、プライミング製剤中の導電性成分として、0.005重量%超かつ0.10重量%未満の濃度の単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブを使用することによって引き起こされ、20μm未満の凝集体サイズに十分に分散していた。
【0014】
技術的結果を提供する必要な特有の特徴は、導電性成分として、多層カーボンナノチューブではなく、単層及び/又は二層カーボンナノチューブを使用することである。単層カーボンナノチューブ及び二層カーボンナノチューブ、並びに多層カーボンナノチューブは、高い導電性と管状形態とを併せ持つ。しかしながら、単層カーボンナノチューブと二層カーボンナノチューブとの決定的な違いは、ファンデルワールス力(π-π相互作用)によって結合された六方細密充填管の束へのそれらの好ましい凝集である。このため、カーボンナノチューブを粉砕度20μm以下に分散させた際に、懸濁液中にコイル状の凝集体が残らず、束のみとなる。他方、多層カーボンナノチューブは、束形成する傾向がなく、それらの凝集体は、数マイクロメートル程度のサイズであっても、コイル形態を有することが最も多い。
【0015】
パーコレーション閾値、すなわち、分散媒体中に分布した分散粒子の連結されたクラスタが形成される最小濃度が低いほど、これらの粒子の長さL対直径dの比は高くなることが知られている。球形粒子の場合、ランダムに分布した粒子のパーコレーション閾値は約30%重量/重量である。L/d比が高い粒子の場合、パーコレーション閾値は著しく低く、比が高いほど閾値は低くなる。このため、単層及び/又は二層カーボンナノチューブの線形凝集体(束)を含むプライミング製剤は、コイル状凝集体を含むプライマーと比較して著しく高い導電率を有し、所与の導電率、例えば10オーム・cm未満の体積抵抗率を達成するためには、コイル状凝集体よりも著しく低い濃度の単層及び/又は二層カーボンナノチューブの線形凝集体(束)が必要である。
【0016】
したがって、技術的結果を達成するために、プライミング製剤は、単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブを含まなければならず、これらのナノチューブは、単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの凝集体のほぼ線形形態を保証する最大サイズ20μmまで分散されなければならず、単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの濃度は、0.1重量%未満でなければならない。これらの3つの要件を同時に満たすことにより、高い導電率と高い光反射率値(少なくとも60%のLRV)の両方が保証される。
【0017】
そのレオロジーにより、プライミング製剤は非ニュートン擬似塑性流体であることが好ましく、すなわち、その粘度は剪断速度に依存し、低いほど剪断速度が大きく、剪断速度の10倍の増加は粘度を2倍超減少させる。オストワルト・デワーレべき乗則関係を用いた流体粘度の説明では、これは流動挙動指数が0.7未満であることを意味する。これは、プライミング製剤及びその使用のための調製物の貯蔵中の単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの凝集速度を低下させるであろうが、技術的結果はまた、プライミング製剤のレオロジーの理想からのより小さい偏差(ニュートン)についても達成され得る。
【0018】
プライミング製剤のレオロジーパラメータ、すなわち、その粘度及びいわゆるチキソトロピー指数、又は種々の剪断速度での粘度の比を最適化するため、製剤は、好ましくはレオロジー調整剤を含む。そのような改質剤は、ベントナイトクレイ、層状ケイ酸塩、層状アルモケイ酸塩、高分子量ポリマー若しくは他の既知の増粘剤、又は希釈剤、又は可塑剤、又はゲル化剤、又はそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない。レオロジー調整剤及びその内容物は、主に、プライマーレオロジーに対する選択された塗装プロセス要件によって選択される。
【0019】
プライマーはまた、好ましくは、生成されたプライミングコーティングの光反射率値(LRV)を増加させる、5~40重量%の白色顔料を含む。当該白色顔料は、好ましくは二酸化チタン(チタンホワイト)である。最も好ましくは、プライマー中の二酸化チタンの含有量は20重量%を超える。しかしながら、技術的結果は、より低濃度の二酸化チタンを使用する場合、又は酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウムを含むがこれらに限定されない異なる白色顔料を使用する場合、異なる色の顔料を使用する場合にも達成することができる。
【0020】
より低いエネルギーコスト及びより短い時間で、単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブ及び顔料の必要な分散度、すなわち20μmを超えるサイズを有する複数の凝集体の非存在を達成するため、プライマーは更に0.1~2重量%の分散剤を含むことが好ましい。それらの化学的性質により、分散剤としては、高分子量コポリマーのアルキルアンモニウム塩、又は極性基を有する直鎖ポリマー、又は極性基を有するブロックコポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。使用され得るいくつかの市販の分散剤としては、Disperbyk 118、Disperbyk 161、Disperbyk 180、Disperbyk 2155、BYK 9076等が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、技術的結果は、分散剤の非存在下でも達成され得ることに留意されたい。
【0021】
本発明はまた、プライミング製剤を製造するための方法であって、一連の(A)カーボンナノチューブと分散媒との混合物を粉砕度50μm以下まで機械加工して得られた少なくとも1重量%の単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブを含む分散系である、単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物を、少なくとも溶媒を含む混合物に導入する工程、並びに(B)得られた混合物を混合して、20μm以下の粉砕度を有する均一な懸濁液を形成する工程、を含む方法を提供する。
【0022】
提供される方法は、開示による超濃縮物[ロシア特許第2654959号C2、MSD Technologies S.A R.L.、2018年5月23日、C01B 32/174、B82B 1/00、B82B 3/00、B82Y 40/00]、すなわち、少なくとも2重量%の単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブを含む単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物を使用することができ、当該単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物としてのカーボンナノチューブの凝集体の最大サイズは50μm以下である。単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物としては、単層TUBALLカーボンナノチューブTUBALL MATRIX(商標)204、TUBALL MATRIX(商標)302等の市販の濃縮物が挙げられ得るが、これらに限定されない。しかしながら、技術的結果は、例えば1.5重量%又は更には1重量%の単層及び/又は二層カーボンナノチューブを含む分散媒中の単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブのより低濃度の分散液を使用する場合にも達成され得る。
【0023】
単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物を、プライミング製剤の1つ又はいくつかの他の成分の導入と同時に導入することができる。この方法はまた、プライミング製剤の他の成分の導入及び更なる混合の1つ又はいくつかの更なる工程を含み得る。提供される方法の実施形態は、工程(A)の前にプライミング製剤の全ての他の成分を溶媒に導入して混合し、一連の工程(A)及び(B)がプライミング製剤の製造を完了する方法である。提供される方法の別の可能な実施形態は、分散剤及び塗膜形成剤を工程(A)の前に溶媒に導入し、一方、工程(A)において、単層及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物を白色顔料と共に導入し、これを、プライミング製剤製造を完了させる工程(B)において単層及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物を混合するのと同時に分散させる方法である。
【0024】
技術的結果を提供するプライミング製剤を製造するための方法の際立った特徴は、プライミング製剤の製造が、単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの予備分散濃縮物の導入工程を含むことである。50μm以下の粉砕度までの予備分散は、20μm以下の粉砕度を有する均一な懸濁液を生成するためにプライミング製剤中でのナノチューブの機械的混合の後続の工程中にナノチューブを分散させるために必要であり、その表面への塗布及びその後の乾燥は、高い導電率(10オーム/□未満の表面抵抗)及び高い光反射率値(少なくとも60%のLRV)を有する塗膜を製造する。
【0025】
工程(B)において、20μm以下の粉砕度を有する均一な懸濁液を製造するための工程(A)で得られた混合物の混合は、垂直型撹拌機(ディゾルバとも呼ばれる)、プラネタリーミキサ、ローターステータ型ミキサ、二軸スクリューミキサ、並びに分散用ユニット、例えばコロイドミル、ビーズミル、プラネタリーミル、ボールミル等を含むがこれらに限定されない混合用機器を混合及び使用する任意の既知の方法によって行うことができる。いくつかの用途では、混合は、好ましくはディスクディゾルバ、すなわち、ディスクインペラ、好ましくは歯付きディスクインペラを備える垂直型撹拌機を使用して行われる。いくつかの用途では、混合は好ましくはビーズミルを使用して行われ、ビーズ直径は好ましくは0.4mm超かつ1.8mm未満であり、10W・h/kg超の投入エネルギーでのビーズ体積対懸濁液体積比は0.5超かつ2未満である。
【0026】
いくつかの用途では、工程(A)の前に単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物以外のプライミング製剤の全ての成分を好ましくは溶媒に導入して混合し、一連の工程(A)及び(B)がプライミング製剤の製造を完了する。
【0027】
いくつかの用途では、分散剤及び塗膜形成剤を好ましくは工程(A)の前に溶媒に導入し、一方、工程(A)では、単層及び/又は二層カーボンナノチューブの濃縮物及び白色顔料を、溶媒、分散剤及び塗膜形成剤を含有する混合物に導入し、白色顔料の分散を工程(B)で行い、プライミング製剤の製造を完了させた。
【0028】
単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブをそれらの予備分散を伴わずにプライミング製剤に直接導入することは、得られる懸濁液の分散の程度が不十分であり、したがって、20μmを超えるサイズを有する多数のコイル状凝集体の存在のために、技術的結果を達成することができない。0.1重量%未満の単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの濃度でのプライミング製剤への単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの直接導入は、得られたプライミングコーティングの表面抵抗を10オーム/□より高くし、単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの濃度を0.1重量%より高くすることによって必要な抵抗を達成しようとするあらゆる試みは、プライミングコーティングを許容できないほど濃くする(LRVは60%未満)さらに、単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブの大きな凝集体の存在は、プライミング製剤の品質を損なう、すなわち、その表面は、目に見える黒い点を含む。
【0029】
本発明は、記載されたプライミング製剤を部品表面に塗布し、その後乾燥させることによって製造された淡色導電性プライミングコーティングを提供する。
【0030】
乾燥は、部品表面に塗布されたプライミング製剤からの溶媒の部分的な除去を指す。これは、部品を加熱することにより若しくは加熱によらずに、空気流による吹き込みにより、又は自然対流により達成することができる。いくつかの用途では、乾燥を、好ましくは、プライミング層中の溶媒含有量が20重量%未満、又は更には1重量%未満になるまで行う。いくつかの用途では、30重量%等、より高い含有量の溶媒がプライミング層に残ることが好ましい。乾燥の程度、乾燥条件及び乾燥時間の選択は、上部塗料層の化学組成並びに特定の処理の実施態様に依存する。
【0031】
プライミングコーティングは、1010オーム/スクエア超の表面抵抗を有するポリマー材料で作られた部品に提供されたプライミング製剤を塗布することによって製造されてもよく、例えば、塗装された部品は、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンのコポリマー、又はそれらの混合物を含むがこれらに限定されないポリマーで作られてもよい。
【0032】
プライミングコーティングは、提供されたプライミング製剤を、1010オーム/スクエア超の表面抵抗を有する複合材料で作られた部品に塗布することによって製造することができ、塗装された部品は、例えば、タルク充填ポリプロピレン、ガラス充填ポリアミド、炭素充填ポリアミド、ポリエステルシートプレス材料(SMC複合材)であってもよい。
【0033】
本発明は、以下に提供される実施例及び図面によって説明される。本発明の実施形態を示す以下の実施例では、表面抵抗率は、ANSI/ESD STM 11.11-2015に従って測定した。製造されたプライミング製剤中の粉砕度を、ISO 1524:2020に従って測定した。d8幾何形状を有するBYK spectro 2ガイド分光光度計を使用して、塗布されたプライミングコーティングの光反射率値(LRV)を測定した。プライミング製剤の粘度を、RV-04スピンドルを備えたBrookfield DV3T粘度計を用いて25℃で100mlの試料について測定した。
【0034】
実施例及び図面は、本発明によって提供される技術的課題に対する解決策をよりよく説明するために提供され、本発明の全ての可能な実施形態を網羅するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施例1~3で用いた単層カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真。
【0036】
図2】実施例1~9のプライミング製剤の動的粘度η、mPa.s対粘度計スピンドルの回転速度ω、rpm。
【0037】
図3】プライミング製剤中の単層及び/又は二層カーボンナノチューブの濃度に対するプライミングコーティングの表面抵抗率Rs、オーム/□及び光反射率値LRV、%。点の隣の数字は実施例番号を示す。
【0038】
図4】実施例6で用いた単層及び二層カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真。
【0039】
【表1】
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0040】
本発明の好ましい実施形態
【0041】
実施例1.
【0042】
プライミング製剤を、10重量%のTUBALL(商標)単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を含む市販のカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 302及び90重量%のプロパン-1,2-ジオールとナトリウム2,2’-[(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジイルジ-2,1-エチレンジイル]ビス-(ベンゼンスルホネート)との混合物を用いて製造しカーボンナノチューブと分散媒との混合物を、混合物の粉砕度40μmまで機械加工することによって製造した。使用した濃縮物中の単層カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。1.5lの金属容器内で、100.0gの二酸化チタンDuPont R706及び9.9gのカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 302を、546.1gの不揮発性物質含有量44重量%の市販のアクリル樹脂の水性エマルジョンLacryl 8810、327.0gの蒸留水、14.0gのアクリルポリマー系分散剤Kusumoto Disparlon AQ D-400、2gの植物油系脱気剤WS 360、及び1.0gの改質層状ケイ酸塩に基づくレオロジー調整剤Laponite-RDを含む予め混合された混合物に同時に導入した。得られた混合物を、均質な懸濁液が形成されるまで、ローターステータ型ミキサIKA T50デジタルULTRA-TURRAXを用いて回転速度10000rpmで40分間混合した。製造されたプライミング製剤中のSWCNT含有量は0.099重量%であった。プライミング製剤の体積抵抗率は3.5・10オーム・cmであり、プライミング製剤の粉砕度は19μmであった。図2に示す粘度計スピンドルの回転速度に対するプライミング製剤の動的粘度から、プライミング製剤は、0.43の流動挙動指数を有するオストワルト・デワーレべき乗則関係を満たすこととなる。得られたプライミング製剤を、スプレーガンを使用してポリプロピレン製のポリマー基体上に塗布し、室温で24時間乾燥させた。プライミングコーティングの乾燥後の厚さは17μmであった。プライミングコーティングの表面抵抗率は7.2・10オーム/□であった。プライミングコーティングの光反射率値(LRV)の測定値は60%であった。この実施例及び以下の実施例2~9で得られたコーティングの光反射率値及び表面抵抗率に関するデータを図3に示す。
【0043】
本発明の実施形態
【0044】
実施例2.
【0045】
プライミング製剤を、実施例1におけるように、市販のカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 302を使用して調製した。1.5lの金属容器内で、124.0gの硫酸バリウム「Barit」、124.0gの炭酸カルシウム「Microcaltsit KM-2」、248.0gの二酸化チタンDuPont R706、及び8.5gのカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 302を、389.7gの不揮発性物質含有量44重量%のアクリル樹脂の市販の水性エマルジョンLacryl 8810、96.7gの蒸留水、24.2gのアクリルポリマー系分散剤Kusumoto Disparlon AQ D-400、及び3gの植物油系脱気剤WS 360を含む混合物に同時に導入した。混合物を、外側インペラ40mm及び内部ディスク60mmの直径を有するミルチャンバTML1を備えるビーズミルDispermat CN 20を使用して混合し、ジルコニウムビーズの直径が1.2mm~1.7mmの範囲であり、ミルチャンバ内の酸化ジルコニウムビーズ対混合物の体積比は8:13であった。均質な懸濁液が形成されるまで、インペラ回転速度10.7m/秒(3,400rpm)で30分間混合を行い、総投入エネルギーは46.8W・h/kgであった。その後、60.0gの得られた混合物を、31.8gの不揮発性物質含有量44重量%の市販の水性エマルジョンLacryl 8810、7.8gの蒸留水、0.014gの植物油系脱気剤WS 360、及び0.01gの改質層状ケイ酸塩に基づくレオロジー調整剤Laponite-RDを含む混合物と混合した。オーバーヘッドスターラを用いて15分間混合を行い、回転速度は1.9m/秒(1,500rpm、インペラ直径20mm)であった。製造されたプライミング製剤中のSWCNT含有量は0.05重量%であった。プライミング製剤の体積抵抗率は3.4・10オーム・cmであり、プライミング製剤の粉砕度は17.5μmであった。図2に示す粘度計スピンドルの回転速度に対するプライミング製剤の動的粘度から、プライミング製剤は、0.32の流動挙動指数を有するオストワルト・デワーレべき乗則関係を満たすこととなる。調製したプライミング製剤を、ポリプロピレン、ABSコポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、タルク充填ポリプロピレン、ガラス充填ポリアミド、炭素充填ポリアミドで作られたポリマー基体上にスプレーガンを用いて塗布し、室温で24時間乾燥させた。プライミングコーティングの乾燥後の厚さ、それらの表面抵抗率及び光反射率値(LRV)、並びにプライミングコーティングを塗布する前の基体の表面抵抗率及び光反射率値の値を表1に示す。
【0046】
実施例3.
【0047】
プライミング製剤を、実施例1において提供されるように、市販のカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 302を使用して調製した。1.5lの金属容器内で、124.0gの硫酸バリウム「Barit」、124.0gの炭酸カルシウム「Microcaltsit KM-2」、248.0gの二酸化チタンDuPont R706、及び17.0gのカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 302を、389.7gの不揮発性物質含有量44重量%のアクリル樹脂の市販の水性エマルジョンLacryl 8810、96.7gの蒸留水、24.2gのアクリルポリマー系分散剤Kusumoto Disparlon AQ D-400、及び3gの植物油系脱気剤WS 360を含む予め混合された混合物に同時に導入した。混合物を、均質な懸濁液が得られるまで、ローターステータ型ミキサIKA T50デジタルULTRA-TURRAXを用いて回転速度10000rpmで40分間混合した。その後、60.0gの得られた混合物を、31.8gの不揮発性物質含有量44重量%の市販の水性エマルジョンLacryl 8810、7.8gの蒸留水、0.014gの植物油系脱気剤WS 360、及び0.01gの改質層状ケイ酸塩に基づくレオロジー調整剤Laponite-RDを含む混合物と混合した。均一な懸濁液が形成されるまで、オーバーヘッドスターラを用いて15分間混合を行い、回転速度は3.4m/秒(1,500rpm、インペラ直径40mm)であった。製造されたプライミング製剤は0.099重量%のSWCNTを含む。プライミング製剤の体積抵抗率は7.8・10オーム・cmであり、プライミング製剤の粉砕度は19μmであった。図2に示す粘度計スピンドルの回転速度に対するプライミング製剤の動的粘度から、プライミング製剤は、0.41の流動挙動指数を有するオストワルト・デワーレべき乗則関係を満たすこととなる。調整されたプライミング製剤を、スプレーガンを使用してポリプロピレン製のポリマー基体上に塗布し、室温で24時間乾燥させた。プライミングコーティングの乾燥後の厚さは17μmであった。プライミングコーティングの表面抵抗率は1.3・10オーム/□であった。プライミングコーティングの光反射率値(LRV)の測定値は62%であった。
【0048】
実施例4.
【0049】
プライミング製剤を、5重量%の単層カーボンナノチューブ及び95重量%のトリエチレングリコールジメタクリレートと高分子量コポリマーのアルキルアンモニウム塩との混合物を含み、カーボンナノチューブと分散媒との混合物を機械加工することによって混合物の粉砕度を35μmに製造された、カーボンナノチューブ濃縮物を使用して調製した。500mlの金属容器内で、36.6gの二酸化チタンDuPont R706及び2.0gのカーボンナノチューブ濃縮物を、108.2gの市販の接着促進剤Superchlon 822Sのキシレン中20重量%溶液、1.0gの分散剤Disperbyk 118、1.8gの改質ケイ酸塩に基づくレオロジー調整剤Claytone HY、17.2gのキシレン及び1.3gのトルエンの予め混合された混合物に同時に導入した。混合物を、直径60mmのポリアミドディスクであるアドオンモジュールAPS-500を備えたビーズミルDispermat CN 20を使用して、混合物体積比1:1で、回転速度8.5m/秒(2,700rpm)で30分間、均質な懸濁液が形成されるまで混合した。5.5gの市販の接着促進剤Superchlon 822Sのキシレン中20重量%溶液、7.2gのトルエン及び3.0gのキシレンの混合物84.2gの得られた混合物に添加し、オーバーヘッドスターラを用いて回転数3.1m/秒(1,500 rpm、インペラ直径40mm)で15分間混合した。製造されたプライミング製剤は0.099重量%のSWCNTを含む。製造されたプライミング製剤の体積抵抗率は6.0・10オーム・cmであり、プライミング製剤の粉砕度は15μmであった。図2に示す粘度計スピンドルの回転速度に対するプライミング製剤の動的粘度から、プライミング製剤は、0.42の流動挙動指数を有するオストワルト・デワーレべき乗則関係を満たすこととなる。得られたプライミング製剤を、スプレーガンを使用してポリプロピレン製のポリマー基体上に塗布し、室温で20分間乾燥させた。プライミングコーティングの乾燥後の厚さは12μmであった。プライミングコーティングの表面抵抗率は7.9・10オーム/□であった。プライミング製剤の光反射率値(LRV)の測定値は74%であった。
【0050】
実施例5.
【0051】
プライミング製剤を、2重量%の単層カーボンナノチューブ及び98重量%のトリエチレングリコールジメタクリレートと高分子量コポリマーのアルキルアンモニウム塩との混合物を含み、カーボンナノチューブと分散媒との混合物を機械加工することによって混合物の粉砕度を20μmに製造された、カーボンナノチューブ濃縮物を使用して調製した。1.5lの金属容器内で、214.0gの硫酸バリウム「Barit」及び2.5gのカーボンナノチューブ濃縮物172.0gの市販のアクリル樹脂Degalan LP 64/12、600.5gの酢酸ブチル、6.0gの分散剤Disperbyk 118、及び5.0gの改質ケイ酸塩に基づくレオロジー調整剤Claytone HYの予め混合された混合物に同時に導入した。混合物を、外側インペラ20mm及び内部ディスク60mmの直径を有するミルチャンバTML1を備えるビーズミルDispermat CN 20を使用して混合し、ジルコニウムビーズの直径が0.8mm~1.0mmの範囲であり、ミルチャンバ内の酸化ジルコニウムビーズ対混合物の体積比は8:13であった。均質な懸濁液が形成されるまで、インペラ回転速度10.7m/秒(3,400rpm)で30分間混合を行い、総投入エネルギーは46.8W・h/kgであった。製造されたプライミング製剤は0.005重量%のSWCNTを含む。プライミング製剤の体積抵抗率は3.4・10オーム・cmであり、プライミング製剤の粉砕度は12μmであった。図2に示す粘度計スピンドルの回転速度に対するプライミング製剤の動的粘度から、プライミング製剤は、0.35の流動挙動指数を有するオストワルト・デワーレべき乗則関係を満たすこととなる。調整されたプライミング製剤を、スプレーガンを使用してポリプロピレン製のポリマー基体上に塗布し、室温で24時間乾燥させた。プライミングコーティングの乾燥後の厚さは12μmであった。プライミングコーティングの表面抵抗率は9.8・10オーム/□であった。プライミングコーティングの光反射率値(LRV)の測定値は77%であった。
【0052】
実施例6.
【0053】
プライミング製剤を、1重量%の単層カーボンナノチューブと二層カーボンナノチューブ、及び99重量%のトリエチレングリコールジメタクリレートと、高極性顔料-アフィン基を有する直鎖状ポリマーと、高分子量コポリマーのアルキルアンモニウム塩との混合物を含み、カーボンナノチューブと分散媒との混合物を機械加工することによって混合物の粉砕度を23μmに製造された、カーボンナノチューブ濃縮物を使用して調製した。使用した濃縮物中の単層カーボンナノチューブ及び二層カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を図4に示す。1.5lの金属容器内で、50gのカーボンナノチューブ濃縮物を、172.0gの市販のアクリル樹脂Degalan LP 64/12、553.0gの酢酸ブチル、6.0gの分散剤Disperbyk 118、及び5.0gの改質ケイ酸塩に基づくレオロジー調整剤Claytone HYの予め混合された混合物に導入した。得られた混合物を、オーバーヘッドスターラを用いて回転速度6.3m/秒(2000rpm、インペラ直径60mm)で均一な懸濁液が形成されるまで混合した。その後、214.0gの二酸化チタンDuPont R706を混合物に更に導入し、外側インペラ40mm及び内部ディスク60mmの直径を有するミルチャンバTML1を備えるビーズミルDispermat CN 20を使用して混合し、ジルコニウムビーズの直径が0.8mm~1.0mmの範囲であり、ミルチャンバ内の酸化ジルコニウムビーズ対混合物の体積比は8:13であった。インペラ回転速度10.7m/秒(3,400rpm)で30分間混合を行い、総投入エネルギーは46.8W・h/kgであった。製造されたプライミング製剤は0.05重量%の単層カーボンナノチューブ及び二層カーボンナノチューブを含むプライミング製剤の体積抵抗率は5.6・10オーム・cmであり、プライミング製剤の粉砕度は14μmであった。図2に示す粘度計スピンドルの回転速度に対するプライミング製剤の動的粘度から、プライミング製剤は、0.40の流動挙動指数を有するオストワルト・デワーレべき乗則関係を満たすこととなる。調整されたプライミング製剤を、スプレーガンを使用してポリプロピレン製のポリマー基体上に塗布し、室温で24時間乾燥させた。プライミングコーティングの乾燥後の厚さは14μmであった。製造されたプライミングコーティングの表面抵抗率は3.7・10オーム/□であった。プライミングコーティングの光反射率値(LRV)の測定値は73%であった。
【0054】
実施例7.
【0055】
プライミング製剤を、10重量%の単層カーボンナノチューブ及び90重量%のトリエチレングリコールジメタクリレートと高分子量コポリマーのアルキルアンモニウム塩との混合物を含み、カーボンナノチューブと分散媒との混合物を機械加工することによって混合物の粉砕度を40μmに製造された、市販のカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 204を使用して調製した。150mlのガラス容器内で、0.5gのカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 204を、13gの市販のアクリル樹脂Dianal BR-116(トルエン中40重量%溶液)、25.7gの市販のアクリル樹脂Superchlone 930S(キシレン中20重量%溶液)、23.7gのキシレン、11.9gの酢酸ブチル、24.0gの二酸化チタンDuPont R706、0.5gの改質ケイ酸塩に基づくレオロジー調整剤Claytone 40、及び0.6gの分散剤Disperbyk 118の予め混合されたプライミング混合物に導入した。均一な懸濁液が形成されるまで、混合物をオーバーヘッドスターラを用いて20分間混合し、回転速度は4.2m/秒(2000rpm、インペラ直径40mm)であった。製造されたプライミング製剤は0.05重量%のSWCNTを含む。製造されたプライミング製剤の体積抵抗率は5.0・10オーム・cmであり、プライミング製剤の粉砕度は15μmであった。図2に示す粘度計スピンドルの回転速度に対するプライミング製剤の動的粘度から、プライミング製剤は、0.31の流動挙動指数を有するオストワルト・デワーレべき乗則関係を満たすこととなる。製造されたプライミング製剤を、スプレーガンを使用してポリプロピレン製のポリマー基体上に塗布し、室温で10分間乾燥させた。プライミングコーティングの乾燥後の厚さは17μmであった。製造されたプライミングコーティングの表面抵抗率は6.3・10オーム/□であった。プライミングコーティングの光反射率値(LRV)の測定値は67%であった。
【0056】
実施例8.
【0057】
プライミング製剤を、実施例7において提供されるように、市販のカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 204を使用して調製した。500mlの金属容器内で、48.0gの二酸化チタンDuPont R706及び1.0gの市販のカーボンナノチューブ濃縮物TUBALL(商標)MATRIX 204を、26.0gの市販のアクリル樹脂Dianal BR-116(トルエン中40重量%溶液)、51.4gの市販のアクリル樹脂Superchlone 930S(キシレン中20重量%溶液)、47.2gのキシレン、24.0gの酢酸ブチル、1.0gの改質ケイ酸塩に基づくレオロジー調整剤Claytone40、及び1.2gの分散剤Disperbyk 118の予め混合された混合物に同時に導入した。混合物を、直径60mmのポリアミドディスクであるアドオンモジュールAPS-500を備えたビーズミルDispermat CN 20を使用して、混合物体積比1:1で、回転速度8.5m/秒(2,700rpm)で30分間、均質な懸濁液が形成されるまで混合し、総投入エネルギーは37.2W・h/kgであった。製造されたプライミング製剤は0.05重量%のSWCNTを含む。プライミング製剤の体積抵抗率は4.8・10オーム・cmであり、プライミング製剤の粉砕度は14μmであった。図2に示す粘度計スピンドルの回転速度に対するプライミング製剤の動的粘度から、プライミング製剤は、0.41の流動挙動指数を有するオストワルト・デワーレべき乗則関係を満たすこととなる。得られたプライミング製剤を、スプレーガンを使用してポリプロピレン製のポリマー基体上に塗布し、室温で30分間乾燥させた。プライミングコーティングの乾燥後の厚さは14μmであった。プライミングコーティングの表面抵抗率は2.5・10オーム/□であった。プライミングコーティングの光反射率値(LRV)の測定値は72%であった。
【0058】
実施例9.(比較例)
【0059】
20.0gのカーボンナノチューブ濃縮物を導入したが、実施例4と同様にプライミング製剤を調製した。製造されたプライミング製剤は0.5重量%を含む。製造されたプライミング製剤の体積抵抗率は1.2・10オーム・cm、粉砕度は26μmであった。図2からわかるように、製造されたプライミング製剤は非常に高い粘度を有し、これにより、基体上への可能性のある塗布の方法が制限される。プライミング製剤を、スプレーガンを使用してポリプロピレン製のポリマー基体上に塗布し、室温で24時間乾燥させた。プライミングコーティングの乾燥後の厚さは34μmであった。製造されたプライミングコーティングの表面抵抗率は7.6・10オーム/□であった。光反射率値(LRV)の測定値は54%であった。したがって、製造されたプライミング製剤は十分に淡色ではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、静電塗装前に1010オーム/スクエアを超える表面抵抗を有するポリマー又は複合材料で作られた部品に少なくとも60%の光反射率値を有する導電性プライミングコーティングを製造するため、並びにそのようなコーティングを製造するためのプライミング製剤の製造において使用することができる。

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】