(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片および適用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20231228BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231228BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231228BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231228BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20231228BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231228BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231228BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231228BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231228BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231228BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P3/00 171
A61P7/00
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P25/00
A61P17/02
A61P31/04
A61P43/00 105
A61P9/10 101
A61P3/04
A61P3/10
A61P37/06
A61P35/02
A61P19/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532562
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2021113416
(87)【国際公開番号】W WO2022110922
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】202110911478.X
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011372817.3
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011602742.3
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521501093
【氏名又は名称】クレ バイオテクノロジ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チー シャンドン
(72)【発明者】
【氏名】パン チン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン ハン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー イエジエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジシュオ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片および適用。マウスを免疫して抗ヒトSIRPαモノクローナル抗体を取得し、さらにキメラ抗体およびヒト化抗体を取得する。提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片は、ヒトSIRPαタンパク質に結合し、CD47-SIRPαシグナル経路を遮断し、食作用の増強等の免疫調節効果を有することができる。医薬組成物および核酸分子、ならびに疾患を阻害または治療するための薬物の調製における抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の用途をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片であって、
重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:3、4、5に示されるようなVHCDR1、VHCDR2およびVHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が、それぞれ
(1)SEQ ID NO:37、38、9;
(2)SEQ ID NO:39、38、9;
(3)SEQ ID NO:7、40、9;
(4)SEQ ID NO:7、8、41;
(5)SEQ ID NO:7、8、42;
(6)SEQ ID NO:7、8、43;
(7)SEQ ID NO:37、38、41;
(8)SEQ ID NO:44、38、41;
(9)SEQ ID NO:7、8、9の配列のいずれか一つに示されるようなVLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3を含むことを特徴とする、前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記可変領域は、マウス由来またはヒト由来FR領域をさらに含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記FR領域の配列は、マウス由来であり、前記重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:2に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有し、前記軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:6に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有することを特徴とする
請求項2に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記ヒト由来FR領域は、重鎖FR領域配列および軽鎖FR領域配列を含み、前記重鎖FR領域配列は、ヒト生殖系列重鎖IGHV1-18のFR1、FR2、FR3領域およびIGHJ2*01のFR4領域を含む、ヒト生殖系列重鎖IGHV1-18およびIGHJ2*01の組み合わせ配列に由来し、前記軽鎖FR領域配列は、ヒト生殖系列軽鎖IGKV4-1のFR1、FR2、FR3領域およびIGKJ2*01のFR4領域を含む、ヒト生殖系列軽鎖IGKV4-1およびIGKJ2*01の組み合わせ配列に由来することを特徴とする
請求項2に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:17に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有し、前記軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:18、19、20、21、22、23、24、25のいずれか1項から選択されるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有することを特徴とする
請求項2に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片は、ヒト由来IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4またはその変異体から選択される重鎖定常領域、ならびにヒト由来κ鎖、λ鎖またはその変異体から選択される軽鎖定常領域をさらに含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記重鎖定常領域は、Fc断片またはその変異体を含み、前記Fc断片の変異体は、IgG1に由来し、EUナンバリングに基づいて、突然変異部位L234A、L235A、K338Aを含むことを特徴とする
請求項6に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の重鎖配列は、SEQ ID NO:26に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、もしくは多重特異性抗体であるか、または、前記抗体もしくはその抗原結合断片は、抗体薬物複合体の調製に使用されることを特徴とする
請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
その構造形態は、Fab、F(ab’)2、Fv、またはScFvであることを特徴とする
請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
医薬組成物であって、
請求項1~10のいずれか1項に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片、ならびに一つまたは複数の種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項12】
核酸分子であって、
請求項1~10のいずれか1項に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片をコードするすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項13】
疾患、病症または状況を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の用途。
【請求項14】
前記疾患、病症または状況は、癌、固形腫瘍、慢性感染症、炎症性疾患、多発性硬化症、自己免疫性疾患、神経系疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、移植片の機能不全または関節炎を含み、前記癌は、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞がん、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵臓がん、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、精巣がん、腎臓がん、腎盂および尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、脊椎がん、脳がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、消化器がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、喉頭癌、膠芽腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形種、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞またはB細胞リンパ腫、消化管間質腫瘍、軟部組織腫瘍、肝細胞がんまたは腺がんから選択されることを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、生物医学の技術分野に関し、具体的には、抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片および適用に関する。
【0002】
[背景技術]
AACRの推計によると、2018年に米国で新たに悪性腫瘍と診断される患者数は180万人に達し、癌による死亡者数は60万人を超え、心臓病に次ぐ2位となる。中国国立がんセンターが発表したデータによると、2014年に中国では合計380万人が新たにがんと診断され、同年のがんによる死亡者数は230万人に達した。制御されない細胞増殖は、悪性腫瘍の形成につながる重要な要因であり、腫瘍細胞は、自身の増殖を加速し、体の免疫系による攻撃から身を守るために、長い進化の過程で、腫瘍細胞に対する宿主の免疫監視を逃れるための一連の経路が取得された。Schreiberによって提案された癌免疫編集理論によれば、腫瘍細胞と宿主免疫系との関係は、排除(elimination)、平衡(equilibrium)および回避(escape)の三つの異なる段階に分けることができる。「排除」状態下で、新しい腫瘍細胞は、強い抗原性を有し、免疫系によって容易に識別され排除されるが、排除から生き残った腫瘍細胞は、免疫系と「平衡」状態に入り、宿主の腫瘍を有する生存状態を示す。しかし、宿主免疫系の選択圧を受けた腫瘍細胞の遺伝子の突然変異がある程度蓄積すると、平衡が崩れ、最終的な「回避」状態に入る。この段階の腫瘍細胞は、一連の悪性表現型を生成し、腫瘍抑制因子反応メカニズムを停止させ、正常な免疫反応を誘導するため、正常細胞として識別される可能性がある。腫瘍細胞中の細胞アポトーシスシグナル経路も変化し、免疫細胞によって誘導される腫瘍細胞のアポトーシスメカニズムが無効になる。さらに、腫瘍細胞は、急速かつ抑制されずに増殖するため、その結果生じる組織構造は、免疫細胞を阻害する微小環境を作り出す。腫瘍微小環境において、腫瘍細胞は、骨髄樹状細胞(dentritic cell)の活性化および分化を阻害するVEGF、TGF-β、IL-10等の免疫抑制機能を有する分子を放出し、それによって適応性免疫系を阻害する。同時に、末梢血およびリンパ節でCTLA-4を発現する制御性T細胞(Treg)を誘導することができ、これによりほかの免疫細胞が阻害され、免疫系が腫瘍に対する免疫寛容を発症する可能性がある。
【0003】
腫瘍微小環境における腫瘍関連マクロファージ(TAM、tumor associated macrophage)の食作用は、阻害され、その理由は、ほぼすべての腫瘍細胞が表面でCD47タンパク質を高度に発現し、骨髄細胞表面のシグナル調節タンパク質α(signal regulatory protein α、SIRPα)に結合して、体に「食べないでください(don’t eat me)」または「自己(self)」というシグナルを送ることができ、それによって食作用を阻害する。インテグリン関連タンパク質(IAP、intergin-associated protein)と呼ばれるCD47は、,免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属する広く発現された膜貫通型糖タンパク質である。CD47の分子量は、50kDであり、構造は、多数のグリコシル化N-末端IgV可変ドメイン、五つの高疎水性膜貫通ドメイン、および短いC-末端細胞質尾部を含み、C-末端細胞質尾部の四つの選択的スプライシング形態により、異なる組織におけるCD47の発現が決定される。それに対応するSIRPαは、SHPS-1、BITまたはCD172aタンパク質と呼ばれ、それは、マクロファージ、骨髄樹状細胞、顆粒球、マスト細胞およびその前駆体細胞を含む骨髄細胞(myeloid cell)で主に発現される、膜貫通タンパク質である。SIRPαは、三つの細胞外Ig様ドメインおよび細胞質内の四つのチロシン残基で構成され、当該四つのチロシン残基は、リン酸化部位であると推測される。リン酸化されると、SIRPαは、SHP-1/2タンパク質のSH2ドメインに結合して活性化することにより、下流のシグナル経路を活性化する。SHP-1およびSHP-2タンパク質の発現は、組織特異的であるため、SIRPαは、細胞外刺激に応答して下流のプロテインホスファターゼを動員して活性化するドッキングタンパク質である。Oldenborgは、成熟赤血球(RBC、red blood cell)がCD47と脾臓マクロファージSIRPαの結合によって赤血球の除去から身を守ることを最初に報告した。その後研究者らは、RBCが単球SIRPαに結合してFcγ受容体依存性食作用を阻害することもできることを発見し、これは、食作用における重要な分子であるミオシン-IIA(myosin-IIA)の脱リン酸化によって達成される。臨床的には、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、結腸がん等を含む、様々な固形腫瘍および血液悪性腫瘍でCD47高発現の現象を発見し、その本質は、腫瘍細胞が上記のメカニズムを通じてマクロファージによる細胞毒性を回避することができる。CD47は、他の受容体に結合するか、またはその細胞内細胞質領域を介してシグナル伝達したりすることで、他の生物学的プロセスにも影響を与える。CD47とトロンボスポンジン-1(TSP-1、Thrombospondin-1)または血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR-2)との相互作用は、血管新生を阻害し、それによって腫瘍の増殖を制限する。
【0004】
多くの研究により、CD47抗体またはSIRPα-Fc組換えタンパク質は、異なるマウスPDXモデルにおいて役割を果たすことができることが証明されるが、シタラビン、ドキソルビシン、パクリタキセル、シスプラチン等の従来の化学療法薬またはリツキシマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、トラスツズマブと併用して使用される報告でも、良好な効果を有する。Sockoloskyらは、CD47ナノボディおよびPD-L1を併用して黒色腫B16F10細胞のSyngeneicモデルにおいて良好な抗腫瘍効果を示し得ることを初めて報告した。近年、Hu5F9-G4(悪性固形腫瘍:NCT02216409、血液悪性腫瘍:NCT02678338、NCT03248479、結腸がん:NCT02953782、B細胞非ホジキンリンパ腫:NCT02953509)、CC-90002(AMLおよび骨髄異形成症候群:NCT02641002、進行性固形腫瘍および血液腫瘍:NCT02367196)、SRF231(進行性固形腫瘍および血液腫瘍:NCT03512340)、SIRPα-Fc組換えタンパク質TTI-662(固形腫瘍:NCT02890368、血液悪性腫瘍および固形腫瘍:NCT02663518、骨髄腫およびリンパ腫:NCT03530683)、ALX148(進行性固形腫瘍およびリンパ腫:NCT03013218)を含むCD47-SIRPα経路に作用するいくつかの抗体が臨床フェーズIに入る。
【0005】
CD47自体の生物学的機能により、CD47治療性抗体およびSIRPα-Fc組換えタンパク質が血液系毒性または貧血を引き起こすリスクを有する可能性があることが判明され、これは、CD47遺伝子のノックアウトNODマウスおよびCD47抗体で処理されたマウスモデルで報告されている。さらに、内皮細胞CD47は、細胞接着を介してSIRPγと相互作用することにより、T細胞の経内皮遊走(transendothelial migration)を促進することが報告されるが、SIRPγは、主に骨髄細胞ではなく、T細胞で発現される。
【0006】
従って、SIRPα抗体は、CD47-SIRPαシグナル経路を遮断するより好ましい選択として使用される。Stanford大学のWeissman研究グループは、ヒト化SIRPα抗体KWAR23とリツキシマブとの併用が、ヒトSIRPα遺伝子をノックインしたSRGマウス(Rag2-/-Il2rγ-/-)におけるBurkittリンパ腫の増殖を効果的に阻害できることを証明するが、KWAR23を単独で使用した場合、明らかな効果はない。
【0007】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明の目的は、抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片および適用を提供することであり、抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片は、ヒトSIRPαタンパク質に結合し、CD47-SIRPαシグナル経路を遮断することができる。
【0008】
[課題を解決するための手段]
上記の目的を達成するために、本発明は、抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片を提供し、それは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:3、4、5に示されるようなVHCDR1、VHCDR2およびVHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が、それぞれ
(1)SEQ ID NO:37、38、9;
(2)SEQ ID NO:39、38、9;
(3)SEQ ID NO:7、40、9;
(4)SEQ ID NO:7、8、41;
(5)SEQ ID NO:7、8、42;
(6)SEQ ID NO:7、8、43;
(7)SEQ ID NO:37、38、41;
(8)SEQ ID NO:44、38、41;
(9)SEQ ID NO:7、8、9の配列のいずれか一つに示されるようなVLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3を含む。
【0009】
VLCDRの配列は、次の表を参照することができる。
【0010】
【0011】
選択可能に、前記可変領域は、マウス由来またはヒト由来FR領域をさらに含む。
選択可能に、前記FR領域の配列は、マウス由来であり、前記重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:2に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有し、前記軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:6に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0012】
選択可能に、前記ヒト由来FR領域は、重鎖FR領域配列を含み、前記重鎖FR領域配列は、ヒト生殖系列重鎖IGHV1-18のFR1、FR2、FR3領域およびIGHJ2*01のFR4領域を含む、ヒト生殖系列重鎖IGHV1-18およびIGHJ2*01の組み合わせ配列に由来する。
【0013】
選択可能に、前記ヒト由来FR領域は、軽鎖FR領域配列を含み、前記軽鎖FR領域配列は、ヒト生殖系列軽鎖IGKV4-1のFR1、FR2、FR3領域およびIGKJ2*01のFR4領域を含む、ヒト生殖系列軽鎖IGKV4-1およびIGKJ2*01の組み合わせ配列に由来する。
【0014】
選択可能に、前記重鎖可変領域のFR領域配列は、ヒト生殖系列に由来し、前記重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:17に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0015】
選択可能に、前記軽鎖可変領域のFR領域配列は、ヒト生殖系列に由来し、前記軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:18、19、20、21、22、23、24、25のいずれか1項から選択されるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0016】
選択可能に、前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片は、ヒト由来IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4またはその変異体から選択される重鎖定常領域、ならびにヒト由来κ鎖、λ鎖またはその変異体から選択される軽鎖定常領域をさらに含む。
【0017】
選択可能に、前記重鎖定常領域は、Fc断片またはその変異体を含む。
選択可能に、前記Fc断片の変異体は、IgG1に由来し、EUナンバリングに基づいて、突然変異部位L234A、L235A、K338Aを含む。
【0018】
選択可能に、前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の重鎖配列は、SEQ ID NO:26に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を含む。
【0019】
選択可能に、前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、もしくは多重特異性抗体であるか、または、前記抗体もしくはその抗原結合断片は、抗体薬物複合体の調製に使用される。
【0020】
選択可能に、前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の構造形態は、Fab、F(ab’)2、Fv、またはScFvである。
本発明は、上記の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片、ならびに一つまたは複数の種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物をされに提供する。
【0021】
本発明は、上記の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片をコードする、核酸分子をさらに提供する。
本発明は、上記の核酸分子を含む、担体をさらに提供する。
【0022】
本発明は、上記の担体を使用して形質転換された宿主細胞をさらに提供する。
本発明は、疾患、病症または状況を阻害または治療するための薬物の調製における、上記の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の用途をさらに提供する。
【0023】
選択可能に、前記薬物は、前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片を一つまたは複数の種の他の癌治療剤と併用することによって調製される。
【0024】
選択可能に、前記疾患、病症または状況は、癌、固形腫瘍、慢性感染症、炎症性疾患、多発性硬化症、自己免疫性疾患、神経系疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、移植片の機能不全または関節炎を含む。
【0025】
選択可能に、前記癌は、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞がん、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵臓がん、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、精巣がん、腎臓がん、腎盂および尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、脊椎がん、脳がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、消化器がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、喉頭癌、膠芽腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形種、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞またはB細胞リンパ腫、消化管間質腫瘍、軟部組織腫瘍、肝細胞がんまたは腺がんから選択される。
【0026】
本発明は、SIRPαとCD47との結合を遮断するための製剤の調製における上記の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の適用をさらに提供し、前記製剤は、検出剤を含む。
【0027】
[発明の効果]
従来技術と比較して、本発明は、次のような有益な効果を有する。
(1)本発明によって提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片は、ヒトSIRPαタンパク質に結合し、CD47-SIRPαシグナル経路を遮断することができ、腫瘍の治療または腫瘍抗体医薬品の調製への使用が期待される。
【0028】
(2)本発明によって提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片は、ヒトSIRPαタンパク質のすべてのサブタイプに結合することができ、臨床開発に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図7】Blocking-ELISAの検出結果である。
【
図8】ヒトSIRPaを天然発現するヒト腎明細胞腺がん細胞786-O細胞に結合するSIRPα抗体のFACS検出結果である。
【
図9】抗SIRPα抗体のインビトロ機能実験のADCP結果である。
【
図10】抗SIRPα抗体のインビトロ機能実験のADCP結果である。
【
図11】抗SIRPα抗体のインビトロ機能実験のADCP結果である。
【
図12】各群における腫瘍画像信号値応答の腫瘍増殖曲線およびD18画像シグナル強度結果を示すグラフである。
【
図14】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図15】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図16】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図17】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図18】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図19】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図20】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図21】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図22】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図23】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図24】既知のヒトSIRP alpha結合ドメイ対立遺伝子のアミノ酸配列の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面および実施例を合わせて、本発明の技術的解決策をさらに説明する。
本実験において具体的な条件を定めていない実験方法については、通常、従来の条件に従うか、または原料もしくは商品メーカーが提示する条件に従う。具体的な出所が示されていない試薬は、市場で購入された従来の試薬である。
【0031】
用語:
「抗体」(antibody、Ab)とは、少なくとも一つの抗原結合部位を含み、かつ抗原に特異的に結合できる免疫グロブリン分子(immunoglobulin、Ig)を指す。
【0032】
「抗原」は、体内で免疫応答を誘導し、かつ抗体に特異的に結合できる物資である。抗体と抗原との結合は、両者間で形成された水素結合、ファンデルワールス力、イオン結合および疎水結合を含む、相互作用によって媒介される。抗原の表面と抗体とを結合する領域は、「抗原決定基」または「エピトープ」であり、一般に各抗原には、複数の決定基が存在する。
【0033】
本発明で言及される「抗体」という用語は、その最も広い意味で理解され、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、抗体断片、少なくとも二つの異なる抗原結合ドメインを含む多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含む。抗体は、マウス抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体および他の起源の抗体をさらに含む。本発明の抗体は、ヒト、非ヒト霊長類動物、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ニワトリ、ラクダ、ラマ(Llama)、アルパカ(Alpaca)、グアナコ(Guanaco)、ビクーニャ(Vicunas)の免疫グロブリン分子等を含むがこれらに限定されない、任意の動物に由来することができる。抗体は、非天然アミノ酸、Fcエフェクター機能の突然変異およびグリコシル化部位の突然変異等の追加の変化を含むことができる。抗体は、これらの抗体が所望の生物学的活性を示す限り、翻訳後修飾された抗体、抗体の抗原決定基を含む融合タンパク質、ならびに抗原識別部位に対する他の任意の修飾を含む免疫グロブリン分子をさらに含む。
【0034】
抗体の基本的構造は、二つの完全同一の重鎖(heavy chain、H)および二つの完全同一の軽鎖(light chain、L)がジスルフィド結合によって連結されたY字型のモノマーである。各鎖は、それぞれ、類似した配列を有するが異なる機能を有する約110アミノ酸の2~5個のドメイン(機能領域と呼ばれる)で構成される。抗体分子のN末端付近の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列は、大きく変化し、形成されたドメインは、可変領域(variable region、V領域)と呼ばれ、C末端近くのアミノ酸配列の比較的一定な領域は、定常領域(constant region、C領域)と呼ばれる。
【0035】
重鎖および軽鎖のV領域は、それぞれVHおよびVLと呼ばれ、VHおよびVLは、それぞれ、超可変領域(hypervariable region、HVR)と呼ばれる、非常に可変性の高いアミノ酸組成および配列を有する三つの領域があり、当該領域は、抗原性エピトープに相補的な空間構造を形成し、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼ばれる。VHの三つのCDRは、それぞれVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3で表され、VLの三つのCDRは、それぞれVLCDR1、VLCDR2、VLCDR3で表される。VHおよびVLの合計六つのCDRが一緒になって抗原結合部位(antigen-binding site)を形成する。CDR領域のアミノ酸の多様性は、多数の異なる抗原に対する抗体の特異的結合の分子基盤である。V領域のCDRを除くアミノ酸の組成および配列には、比較的変化が少なく、これは、スケルトン領域またはフレームワーク領域(framework region、FR)と呼ばれる。VHおよびVLは、それぞれFR1、FR2、FR3、FR4で表される四つのスケルトン領域を有する。各VHおよびVLは、三つのCDRおよび四つのFRで構成され、アミノ基末端からカルボキシル基末端までの配列は、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4となる。
【0036】
抗体重鎖定常領域のアミノ酸配列に従って、ヒト免疫グロブリンは、IgM、IgG、IgA、IgD、IgEの五つのクラスに分類されることができる。それは、様々なサブクラス(アイソタイプ)に分類されることができ、例えば、ヒトIgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分類されることができ、IgAは、IgA1およびIgA2に分類されることができる。IgM、IgD、IgEには、サブクラスがあることがまだわかっていない。軽鎖のアミノ酸配列に従って、軽鎖は、κ鎖およびλ鎖に分類されることができる。本発明の抗体は、任意のクラス(例えば、IgM、IgG、IgA、IgD、IgE)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)のものであり得る。
【0037】
重鎖および軽鎖の定常領域は、それぞれCHおよびCLと呼ばれる。IgG、IgA、IgDの重鎖定常領域には、CH1、CH2、CH3の三つのドメインがあり、IgMおよびIgEの重鎖定常領域には、CH1、CH2、CH3、CH4の四つのドメインがある。
【0038】
CH1とCH2との間は、ヒンジ領域(hinge region)であり、プロリンが豊富に含まれているため、伸ばしたり曲げたりしやすく、Y字型の2本のアーム間の距離を変更できるため、2本のアームが抗原エピトープに同時に結合しやすくなる。
【0039】
「抗原結合断片」とは、抗原結合活性を有するFab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ScFv断片等を指す。「Fab断片」(fragment of antigen binding、Fab)とは、単一の抗原性エピトープ(一価)に結合する、VL、VH、CLおよびCH1ドメインで構成される抗体断片を指す。当業者は、パパインがIgGを加水分解して二つの同一のFabセグメントおよび一つのFcセグメントを形成し、ペプシンがIgGを加水分解して一つのF(ab’)2セグメントおよびいくつかのポリペプチド断片(pFc’)を形成する。F(ab’)2重鎖間のジスルフィド結合が切断される場合、二つのFab’断片を形成し、後者は、さらに酵素的に分解されてFv断片を形成する。Fv断片は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むが、定常領域を含まない。一本鎖可変断片scFv(single chain antibody fragment)または一本鎖抗体は、リンカー(linker)で連結された抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域で構成される。
【0040】
「Fc」、「Fcセグメント」または「Fc断片」という用語は、抗原結合活性を有さない結晶化可能な断片(fragment crystallizable)を指し、抗体がエフェクター分子または細胞表面Fc受容体(FcR)と相互作用する部位である。Fc断片は、重鎖定常領域CH1を除く抗体の定常領域のポリペプチドを含む。Fc断片は、その表面に対応するFc受容体を有する細胞に結合し、様々な生物学的効果を生み出す。ADCC効果(交代依存性細胞媒介細胞障害、antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)において、抗体のFabセグメントは、ウイルス感染細胞または腫瘍細胞の抗原エピトープに結合し、そのFcセグメントは、殺傷細胞(NK細胞、マクロファージ等)の表面のFcRに結合し、殺傷細胞による標的細胞の直接の殺傷を媒介する。ADCPは。抗体依存性細胞食作用(antibody-dependent cellular phagocytosis)であり、ADCPのメカニズムは、抗体によって作用された標的細胞がマクロファージ表面上のFcγRメカニズムを活性化し、食作用を誘導し、標的細胞を内部に取り込み、ファゴソームを酸性化して分解することである。いくつかの特定の場合では、抗体のFc機能を廃止することが有益な場合がある。これらのシナリオには、(1)細胞シグナル伝達を誘導する受容体アゴニストとして、(2)受容体とリガンドとの結合を遮断し、シグナル伝達を阻害する受容体アンタゴニストとして、または、(3)対応する抗原を発現する標的細胞に薬物を送達するための薬物担体としての抗体の使用が含まれる。Fcの機能が維持されると、抗体医薬品が対応する受容体を発現する細胞を誤って損傷し、抗体とカップリングした薬物が重要な免疫細胞を誤って損傷する可能性がある。
【0041】
Fc変異体または突然変異の組み合わせは、以下の携帯に限定されない(EUナンバリングに基づく)。
【0042】
【0043】
本発明に記載の抗体または抗原結合断片のCDRアミノ酸残基は、数および位置で既知のKabat番号付け規則に従う。
現在、マウス由来抗体は、抗体医薬品の主要な供給源となっている。マウス抗体は、免疫原性があるため、一般にヒト化処理される。以下の実施例では、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体を提供する。「キメラ抗体」とは、マウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を融合させた抗体であり、マウス抗体によって誘発される免疫応答を軽減することができる。ヒト抗体の定常領域は、ヒト由来IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはその変異体の重鎖定常領域から選択されることができ、ならびにヒト由来κ鎖、λ鎖またはその変異体の軽鎖定常領域から選択されることができる。「ヒト化抗体」とは、マウス抗体のCDR配列をヒト抗体の可変領域フレームワークに移植した抗体を指し、大量のマウスタンパク質成分を保持するため、キメラ抗体によって引き起こされる強い反応を克服することができる。このようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公的DNAデータベースまたは公開された参照文献から入手されることができる。免疫原性の低下による活性の低下を避けるために、ヒト抗体可変領域フレームワーク配列に最小限の逆突然変異または復帰突然変異を施して、活性維持することができる。
【0044】
理論的には、抗体親和性の向上は、抗体の特異性および効力の向上に役立ち、薬剤の投与量を減少させ、毒性および副作用を軽減するのに役立つ。実際の研究作業では、特に固形腫瘍の治療において、親和性の向上及び抗体力価の向上が必ずしも直線的ではないことが証明されているが、多くの場合、この線形関係は、明らかである。本発明のヒト化抗体は、ファージディスプレイによりCDRをさらに親和性成熟させた後のヒト化抗体も含む。インビトロでの抗体親和性成熟の理論的基礎は、インビボでの抗体親和性のプロセスを模倣することである。ランダム突然変異ライブラリを構築し、インビボでのB細胞の高頻度突然変異を模倣することにより、こう親和性抗体をスクリーニングすることができる。
【0045】
本発明によって提供される薬物は、「治療有効量」の抗体または抗原結合断片を含むことができる。「治療有効量」とは、具体的な疾患を効果的に予防または緩和するための治療剤の量を指し、これは、患者の疾患状態、年齢および体重、ならびに患者ごとに望ましい効果を生み出す薬剤の能力などの様々な要因によって異なる場合がある。
【0046】
「配列同一性」とは、二つのポリヌクレオチド配列間または二つのポリペプチド間の配列類似性を指し、二つのポリヌクレオチドまたは二つのポリペプチドの間には、同じ塩基またはアミノ酸を有する程度である。本発明に記載の「少なくとも85%の配列同一性を有する」とは、少なくとも85%、90%、95%、97%、または99%の同一性に達することを指す。
【0047】
Antibody-Drug Conjugates(ADCs、抗体薬物複合体)とは、一つまたは複数の化学薬品(任意選択で、治療剤または細胞障害性薬剤であり得る)に結合した結合タンパク質を指す。抗体薬物複合体は、細胞障害性小分子(cytotoxin)および抗体を永久または不安定な化学リンカー(linker)を介して結合することによって取得されることができる。ADCは、細胞障害性薬剤を選択的かつ持続的に腫瘍に送達されることができる。
【0048】
SIRPαをコードする遺伝子は、多型遺伝子(polymorphic gene)であり、ヒト集団には10種類のSIRPα変異体が知られている。Katsuto Takenakaらは、ヒトHapMapゲノムプロジェクトから37人の血縁関係のない正常な白人、アフリカ人、中国人および日本人のIgVをコードするSIRP alphaドメインをシーケンシングし、10個の異なるSIRP alpha IgをVコードする対立遺伝子を発見した(Polymorphism in Sirpa modulates engraftment of human hematopoietic stem cells,NATURE IMMUNOLOGY VOLUME 8 NUMBER 12 DECEMBER 2007)。10個のSIRPα変異体は、それぞれSIRPα V1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプである。SIRPalphaは、高度に多型的であるが、ChiaChiM.Hoらによる既知のヒトSIRPalpha対立遺伝子のアミノ酸配列の比較では、SIRP alphaとCD47との間の結合海面には、それぞれ対立遺伝子V1(a2d1)型およびV2(a1d1)型の、二つの固有の配列のみが存在することが示される。(「Velcro」 Engineering of High Affinity CD47 Ectodomain as Signal Regulatory Protein(SIRP alpha)Antagonists That Enhance Antibody-dependent Cellular Phagocytosis,JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,VOLUME 290 ・NUMBER 20・MAY 15,2015)。
【0049】
図24に示されるように、既知のヒトSIRP alpha結合ドメイン対立遺伝子のアミノ酸配列比較により、CD47接触界面における二つの変異のみ、a1d1およびa2d1が明らかになった。
図24の1行目のテキストは、最も顕著なヒトSIRP alpha対立遺伝子V1(a2d1)のアミノ酸配列であり、
図1の2行目のテキストは、最も顕著なヒトSIRP対立遺伝子V2(a1d1)のアミノ酸配列である。黒のボックスは、CD47と相互作用する残基を示し、陰影は、V1配列とは異なる残基を示す。Janet Simらによる2535人の個体SIRPα配列および510個のサンプルからのSangerシーケンシングにより、ホモ接合v1/v1、ホモ接合v2/v2、ヘテロ接合v1/v2の三つの対立遺伝子グループを表す、二つのSIRPα変異体v1およびv2が同定される。様々な集団および無関係な部分集団では、SIRPα v1およびv2対立遺伝子群の分布および頻度が決定される。ここで、ヨーロッパ(EUR)、米国(AMR)、東アジア(EAS)、アフリカ(AFR)および南アジア(SAS)の五つのスーパーグループにおけるv1/v2ヘテロ接合の分布は、同様であり、分布範囲は、42.0%~47.2%である。東アジアの人口におけるv2/v2の数は、v1/v1の数よりも大幅に多く、発生頻度は、それぞれ42.3%および13.3%であり、アフリカ、ヨーロッパ、米国、および南アジアの集団では、v1/v1の数は、v2/v2の数よりも多く、v1およびv2の発生頻度の範囲は、それぞれ30.3~49.1%および8.9~24.2%である(参照文献については、MABS,2019, VOL. 11, NO. 6, 1036¨C1052,https://doi.org/10.1080/19420862.2019.1624123を参照する)。Aduro Biotechも、東アジア人口におけるv2/v2ホモ接合の発生頻度が41.3%であり、v1/v1ホモ接合の発生頻度は、34.6%であることを調査し、これは、東アジア人口の41.3%の人が、V2/V2ホモ接合であることも証明される(参照文献については、Voets et al. Journal for ImmunoTherapy of Cancer(2019)7:340を参照する)。
【0050】
SIRPα多型分析の結果に基づくと、臨床開発を促進するには、抗SIRPα抗体がSIRPα v1型遺伝子およびSIRPa v2型遺伝子の両方に結合できることが重要である。
【0051】
実施例1:抗SIRPαマウス抗体の取得
(1)マウス免疫:
抗ヒトSIRPαモノクローナル抗体は、マウスを免疫することによって産生される。実験には、生後6週齢のメスのBalb/cホワイトマウスを使用する。飼育環境:SPFグレード。マウスを購入した後、12/12時間の明/暗サイクル調節、温度20~25℃、湿度40~60%の実験室環境で1週間飼育する。Balb/cマウスを免疫化し、フロイント完全アジュバント(CFA)50μg/マウスによる組換えタンパク質QP009(SIRPα)を2週間免疫化した後、その後、QP009(SIRPα)とフロイント不完全アジュバント(IFA)またはQP009(SIRPα)とアルミニウム塩Alum+CpG ODN 1826を、25μg/マウスで週に1回相互に免疫する。
【0052】
QP009(SIRPα)は、以下に示されるようなアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を有する。
【0053】
【表3】
配列は、UNIPROTアクセッション番号P78324(31-149)から参照される(SIRPA-Tyrosine-protein phosphatase non-receptor type substrate 1 precursor-Homo sapiens(Human)-SIRPA gene & protein(uniprot.org))。
【0054】
(2)細胞融合:
血清中の抗体力価が高いマウスを選択して、脾細胞を融合する。融合の72時間前に、選択したマウスを腹腔内注射で免疫する。最適化されたPEG媒介性融合段階を使用して、脾臓リンパ球を骨髄腫Sp2/0細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を得る。融合したハイブリドーマ細胞をHAT完全培地(20%FBS、1×HATおよび1×OPIを含むIMDM培地)に再懸濁し、96ウェル細胞培養プレート(1×105細胞/150μl/ウェル)に分配し、37℃、5%CO2で培養する。融合後5日目に20%FBSのIMDM培地(2×HATおよび1×OPI)を加え、50μl/ウェル、37℃、5%CO2で培養する。融合後7~8日目に、細胞増殖密度に応じて、培地を完全に交換し、培地は、HT完全培地(20%FBS、1×HTおよび1×OPIを含むIMDM培地)であり、250μl/ウェル、37℃、5%CO2で培養する。
【0055】
(3)ハイブリドーマ細胞のスクリーニング:
細胞増殖密度に従って、融合後10~14日目に、ELISA検出を実施して、ハイブリドーマ上清中の抗SIRPα抗体をスクリーニングする。ハイブリドーマ融合ウェルの上清を取り、ELISAによって、96ウェルプレートを一次スクリーニングしたところ、上清中の抗SIRPα抗体がSIRPα/CD47の結合を遮断でき、即ち、一次スクリーニングの陽性ウェルであることが検出される。一次スクリーニングの陽性ウェルの上清を取り、ELISAによって、QP009(SIRPα)に結合し、SIRPαに結合し、かつSIRPα/CD47の結合を遮断でき、すべて陽性であるクローンを選択し、即ち、抗SIRPα抗体の陽性クローンウェルであることが検出される。陽性クローンを拡大し、かつ適時に24/6ウェルプレートに移し、ELISAによって、細胞培養上清のSIRPαへの結合、およびSIRPα/CD47を遮断できる結合は、すべて陽性クローンウェルであり、即ち、抗SIRPα抗体陽性のクローンウェルであることが検出される。陽性クローンを2~3回限界希釈して、単一細胞クローンし、陽性単一細胞株を凍結保存して、単一細胞クローン71C10を得る。
【0056】
(4)ハイブリドーマモノクローナル抗体のシーケンシングによって得られる抗体配列:
ハイブリドーマ陽性モノクローナル細胞株71C10を取り、mRNAを抽出し、mRNAをcDNAに逆転写して、cDNAをPCR増幅のテンプレートとして使用し、PCR陽性クローンを選択してシーケンシングし、配列を分析して、モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の可変領域の配列を得る。
【0057】
71C10の重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:2であり、具体的には、次のとおりである。
【0058】
【0059】
71C10の軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:6であり、具体的には、次のとおりである。
【0060】
【0061】
実施例2:抗SIRPαキメラ抗体の親和性のSPR検出
(1)モノクローナル細胞株71C10のマウス可変領域配列をヒト定常領域遺伝子と融合させて、キメラ抗体分子を取得する。抗体軽鎖は、kappa軽鎖定常領域CLを使用する。同時に、異なる抗原配列は、抗体分子の性能試験に使用されるように設定される。抗原およびキメラ抗体の分子クローニング設計については、表1および表2を参照する。
【0062】
【0063】
pQDは、シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)断片を有する担体の名称であり、ここで、pQDHは、シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC)断片を有する重鎖可変領域の連結および発現に使用され、pQDKは、シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CL)断片を有する軽鎖可変領域の連結および発現に使用される。「H」は、重鎖を表し、「L」は、軽鎖を表される。「(IgG4)」は、重鎖がヒトIgG4の定常領域を使用することを表す。「(IgG4)」がマークされていない場合、デフォルトでヒト由来IgG1の定常領域が使用される。180122VHは、モノクローナル細胞株71C10由来の重鎖可変領域を表し、180122VLは、モノクローナル細胞株71C10由来の軽鎖可変領域を表す。
【0064】
例示的に、「pQDH-KWAR23-H」は、対照配列KWAR23がpQDH担体に融合されることを表し、pQDHは、シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC)断片を有し、ヒト由来IgG1の定常領域を使用する。「pQDH-180122VH」は、重鎖可変領域配列180122VHがpQDH担体に融合されることを表し、ヒト由来IgG1の定常領域を使用する。上記の配列番号に示される配列は、具体的に次のとおりである。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
(2)抗原およびキメラ抗体の発現、精製
293E細胞の培養密度は、(0.2~3)×106/mlの間に維持され、維持段階培地(GIBCO Freestyle 293 expression medium)で培養し、トランスフェクション前日に、トランスフェクション細胞を遠心分離して培地を交換し、細胞密度を(0.5~0.8)×106/mlに調節する。トランスフェクション当日に、293E細胞密度は、(1~1.5)×106/mlである。プラスミドおよびトランスフェクション試薬PEIを準備し、トランスフェクションするプラスミドの量は、100μg/100ml細胞であり、PEIとプラスミドとの質量比は、2:1である。プラスミドおよびPEIを均一に混合し、15分間放置し、20分内にする。プラスミドおよびPEIの混合物を293Eの細胞にゆっくりと加え、8%CO2、120rpm、37℃のシェーカーに入れて培養し、トランスフェクション5日目に、水平遠心分離機で4700rpmで20分間遠心分離して、細胞上清を収集する。
【0073】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィー精製:カラムを通過する平衡液を少なくとも3CV使用し、実際の体積は、20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHと導電率が平衡液と一致するように確保し、流速は、1ml/minであり、遠心分離後の培地の上清をカラムに通し、40mlのサンプルをローディングし、流速は、0.33ml/minであり、カラムを通過する平衡液を少なくとも3CV使用し、実際の体積は、20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHと導電率が平衡液と一致するように確保し、流速は、0.33ml/minであり、溶離液をカラムに通し、UV280が15mAUに上昇すると溶出ピーク(PAC-EP)の収集を開始し、UV280が15mAUに低下すると収集を停止し、流速は、1ml/minである。サンプルを収集完了後、pH調節液でPAC-EPを中性に調節する。
【0074】
(3)表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性の検出
ヒトSIRPαV1型(タンパク質番号QP094)およびヒトSIRPαV2型(タンパク質番号QP096)に対するSIRPαキメラ抗体QP163164の親和性をBiacore T200(GE)によって測定する。表3および表4は、QP163164およびQP026027の検出結果を示す。結果によると、SIRPαキメラ抗体QP163164は、ヒトSIRPαV1型への結合について5.27E-10Mの親和性KD値を有し、ヒトSIRPαV2型への結合について6.78E-10Mの親和性KD値を有することを示す。ヒトSIRPαV1型およびヒトSIRPαV2型の結合親和性は、対照抗体KWAR23(QP026027)の結合よりも大幅に優れている。
【0075】
【0076】
biacoreによって測定されたキメラ抗体とカニクイザルSIRPαとの間の親和性は、次のとおりである。
【0077】
【0078】
実施例3:抗SIRPαハイブリドーマモノクローナル抗体のヒト化
IMGTヒト抗体重鎖および軽鎖可変領域生殖系列遺伝子データベースおよびMOEソフトウェアを比較することにより、QP163164と高い相同性を有する重鎖および軽鎖可変領域生殖系列遺伝子をテンプレートとして選択し、マウス抗体のCDRを対応するヒトテンプレートにそれぞれ移植し、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順序で可変領域配列を形成する。復帰突然変異の組み合わせに重要なアミノ酸残基をいくつか選択する。ここで、アミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムによって決定され、かつ注釈される。以下の実施例において、重鎖FR領域配列は、ヒト生殖系列重鎖IGHV1-18およびIGHJ2*01の組み合わせ配列に由来し、それは、ヒト生殖系列重鎖IGHV1-18のFR1、FR2、FR3領域およびIGHJ2*01のFR4領域を含む。軽鎖FR領域配列は、ヒト生殖系列軽鎖IGKV4-1およびIGKJ2*01の組み合わせ配列に由来し、それは、ヒト生殖系列軽鎖IGKV4-1のFR1、FR2、FR3領域およびIGKJ2*01のFR4領域を含む。
【0079】
(1)抗SIRPα抗体のヒト化分子クローニング
プライマーPCRを設計して、各ヒト化抗体VH/VK遺伝子断片を構築し、発現担体pQD(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)断片を有する)と相同組換えを行い、抗体全長発現担体VH-CH1-FC-pQD/VK-CL-pQDを構築する。
【0080】
オンラインソフトウェアDNAWorks(v3.2.2)(http://helixweb.nih.gov/dnaworks/)を使用して、組換えに必要な遺伝子断片5’-30bpシグナルペプチド+VH/VK+30bp CH1/CL-3’を含むVH/VKを合成するための複数のプライマーを設計する。TaKaRa会社のPrimer STAR GXL DNAポリメラーゼの取扱説明書に従い、上記で設計した複数のプライマーを用いて、2段階PCR増幅に分けて、組換えに必要な遺伝子断片を含むVH/VKを取得する。発現担体pQDを構築および消化し、BsmBI識別配列および制限部位の異なる特性等、いくつかの特殊な制限酵素を使用して、発現担体pQDを設計および構築する。BsmBIで担体を消化し、ゲルを切断および回収して備蓄する。重鎖発現担体pQD-VH-CH1-FCおよび軽鎖発現担体pQD-VL-CLの構築:重鎖可変領域VH遺伝子断片を、BsmBIで消化された担体pQD(シグナルペプチドおよび重鎖定常領域(CH1-FC)断片を有する)と3:1の比率で混合し、軽鎖可変領域VL遺伝子断片を、BsmBIで消化された担体pQD(シグナルペプチドおよび軽鎖定常領域(CL)断片を有する)と3:1の比率で混合し、混合物をそれぞれDH5aコンピテント細胞に移し、0℃で30分間氷浴し、42℃で90秒間ヒートショックし、5倍量のLB培地を加え、37℃で45分間インキュベートし、LB-Ampプレートに広げ、37℃で一晩培養し、単一クローンを選択して、シーケンスに送って、各標的クローンを取得する。
【0081】
以下の表は、QP163164のヒト化設計の具体的な情報を示す。タンパク質発現番号は、QP256253である。この表において、抗体軽鎖は、kappa軽鎖定常領域CLを使用し、抗体重鎖は、ヒトIgG4定常領域(定常領域の具体的な配列は、実施例2を参照してもよい)を使用する。ヒト化設計の軽鎖および重鎖可変領域の配列は、以下の表に示される配列に限定されない。
【0082】
【0083】
【0084】
QP256253の重鎖可変領域は、QD256という番号のプラスミドによってコードされる。重鎖可変領域配列SEQ ID NO:17の具体的な配列は、次のとおりである。
【0085】
【0086】
(2)抗SIRPα抗体のヒト化タンパク質の発現
293E細胞の培養密度は、(0.2~3)×106/mlの間に維持され、維持段階培地(GIBCO Freestyle 293 expression medium)で培養され、トランスフェクション前日に、トランスフェクション細胞を遠心分離して培地を交換し、細胞密度を(0.5~0.8)×106/mlに調節する。トランスフェクション当日に、293E細胞密度は、(1~1.5)×106/mlである。プラスミドおよびトランスフェクション試薬PEIを準備し、トランスフェクションするプラスミドの量は、100μg/100ml細胞であり、PEIとプラスミドとの質量比は、2:1である。プラスミドおよびPEIを均一に混合し、15分間放置し、20分内にする。プラスミドおよびPEIの混合物を293Eの細胞にゆっくりと加え、8%CO2、120rpm、37℃のシェーカーに入れて培養し、トランスフェクション5日目に、水平遠心分離機で4700rpmで20分間遠心分離して、細胞上清を収集する。
【0087】
(3)抗SIRPα抗体のヒト化タンパク質の精製
プロテインAアフィニティークロマトグラフィー精製:カラムを通過する平衡液を少なくとも3CV使用し、実際の体積は、20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHと導電率が平衡液と一致するように確保し、流速は、1ml/minであり、遠心分離後の培地の上清をカラムに通し、40mlのサンプルをローディングし、流速は、0.33ml/minであり、カラムを通過する平衡液を少なくとも3CV使用し、実際の体積は、20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHと導電率が平衡液と一致するように確保し、流速は、0.33ml/minであり、溶離液をカラムに通し、UV280が15mAUに上昇すると溶出ピーク(PAC-EP)の収集を開始し、UV280が15mAUに低下すると収集を停止し、流速は、1ml/minである。サンプルを収集完了後、pH調節液でPAC-EPを中性に調節する。
【0088】
(4)ヒト化SIRPα抗体活性の同定(結合-ELISA)
結合-ELISA実験方法:それぞれQP094(SIRPαV1-flag-his)、QP096(SIRPαV2-Flag-his)、QP100(cynoSIRPα-flag-his)0.5μg/ml、50μl/ウェルで、4℃で一晩コーティングする。PBSで3回洗浄し、3%BSA/PBS 200μl/ウェルで、室温下で2時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、異なる濃度の抗体を加え、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、PBSで3回洗浄し、二次抗体HRP-anti Fabをインキュベートし、1:2500で希釈し、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、PBSで3回洗浄し、TMBで発色させ、2MのH2SO4で停止させ、450nmで読み取る。
【0089】
(5)ヒト化SIRPα抗体親和性のSPR同定
biacoreによって測定されたヒト化抗体とヒトSIRPαV1型、ヒトSIRPαV2型およびカニクイザルSIRPαとの間の親和性は、以下の表6に示されたとおりであり、結果によると、抗SIRPαヒト化抗体QP256253が、ヒトSIRPαV1型への結合について3.36E-10Mの親和性KD値を有し、ヒトSIRPαV2型への結合について3.19E-10Mの親和性KD値を有することを示す。
【0090】
【0091】
実施例4:抗SIRPα抗体QP163164の親和性成熟
(1)ヒト化ファージミド担体の構築
ヒト化QP256253を、野生型配列(すなわち、元の配列または開示配列として、親和性成熟スクリーニングによって得られた突然変異配列)それぞれscFvモード(VH-3个GGGGS-VL)でファージミド担体に構築する。オーバーラップPCR(over-lap PCR)を使用してVH、(GGGGS)3リンカー、VLをスプライスし、NcoIおよびNotI制限部位を使用して、ファージミド担体にライゲーションする。
【0092】
(2)ファージディスプレイライブラリーの構築
構築された野生型scFvをテンプレートとして使用し、コドンベース(codon-based)プライマーを使用し、プライマー合成プロセスにおいて、突然変異領域のコドンは、50%の野生型コドンおよび50%のNNK(逆向プライマーは、MNNである)を有し、すべてのCDR領域に突然変異を導入して突然変異ライブラリーを構築する。PCR断片をNcoIおよびNotIで消化し、ファージミド担体に接続し、最後に大腸菌TG1を電気形質転換する。各コドンベースのプライマーは、独立したライブラリーを作成する。
【0093】
(3)ライブラリーのパンニング
ライブラリーをレスキューし、パッケージ化して、パンニング用のファージ粒子を生成した後、ビオチン化QP098(cynoSIRPα(ECD))抗原およびストレプトアビジン磁気ビーズを液相パンニングを使用し、選択の各ラウンドは、前のラウンドと比較して抗原濃度を減少させる。3ラウンドのパンニング後、結合活性を検出するためにファージELISA用に250クローンを選択し、陽性クローンをシーケンシングする。シーケンシングクローンを比較および分析した後、冗長配列を除去した後、非冗長配列を全長IGに変換して(重鎖定常領域は、hIgG4のCH1-CH2-CH3を選択し、軽鎖定常領域は、κ軽鎖CLを選択する)、哺乳動物細胞での発現を行う。アフィニティー精製後に全長IGタンパク質を得る。具体的な配列は、以下の表に示されたとおりである。この表において、抗体軽鎖は、kappa軽鎖定常領域CLを使用し、抗体重鎖は、ヒトIgG4定常領域(定常領域の具体的な配列は、実施例2を参照してもよい)を使用する。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
上記の太字および下線部分は、それぞれ、各抗体分子のVLCDR1、VLCDR2、VLCDR3であり、野生型配列QP256253との具体的な比較は、次のとおりである。
【0104】
【0105】
(4)ELISA検出
結合-ELISA(Binding-ELISA)実験方法:それぞれQP094(SIRPαV1-flag-his)、QP096(SIRPαV2-Flag-his)、QP098(cynoSIRPα-flag-his)、QP100(cynoSIRPα-flag-his)0.5μg/ml、50μl/ウェル、4℃で一晩コーティングする。PBSで3回洗浄し、3%BSA/PBS 200μl/ウェルで、室温下で2時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、異なる濃度の抗体を加え、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、PBSで3回洗浄し、二次抗体HRP-anti Fabをインキュベートし、1:2500で希釈し、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、PBSで3回洗浄し、TMBで発色させ、2MのH
2SO
4で停止させ、450nmで読み取る。EC50値は、以下の表に示されたとおりである。以下の表には、ヒト化抗体QP256253、キメラ抗体QP163245、対照抗体QP026249の検出結果も示す。結果は、
図1~
図6に示されたとおりである。
【0106】
【0107】
Blocking-ELISA実験方法:QP001.22μg/mlで4℃下で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄し、5%ミルク250μl/ウェルでブロックし、ビオチン-QP002 0.05μg/ml+Abs 50μg/mlの1:1混合物、HRP-ストレプトアビジン(1:5000)、25℃で1時間インキュベートする。結果は、
図7に示されたとおりである。
【0108】
(5)表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性の検出
biacoreによって測定された抗SIRPα抗体とヒトSIRPαV1型、ヒトSIRPαV2型およびカニクイザルSIRPαとの親和性の一部の結果は、表10に示されたとおりである。表10から、抗SIRPα抗体QP2561589、QP2561586、QP2561581、QP256279、QP2561770は、すべてヒトSIRPαV1型およびヒトSIRPαV2型に結合することができる。同時に、QP2561589、QP2561586、QP256279、QP2561770、QP256253は、すべて、異なるカニクイザルおよびアカゲザルSIRPαタンパク質に結合する。
【0109】
【0110】
上記の表から、親和性成熟抗体QP2561589、QP2561586、QP256279タンパク質のヒトSIRPα V1型およびSIRPα V2型に対する親和性は、対照抗体KWAR23(QP026249)の親和性よりも50倍以上高いことがわかる。
【0111】
実施例5:ヒトSIRPαを天然に発言するヒト腎明細胞腺がん細胞786-O細胞に結合する抗SIRPα抗体のFACS検出
実験段階:786-O細胞を2E5/ウェルで収集し、PBSで1回洗浄し、300gで3分間遠心分離し、上清を廃棄する。ブロッキング:2%FBSで再懸濁し、2E5/ウェル、200μl/ウェルを96ウェルU底プレートに播種し、1時間氷浴する。300gで3分間遠心分離して、上清を廃棄する。抗体のインキュベーション:抗体10μg/mlをインキュベートして1:3で希釈し、100μl/ウェル、1時間氷浴する。遠心分離し、上清を廃棄する。予冷した200μl/ウェルのPBSを加え、300gで5分間遠心分離して、上清を廃棄し、2回繰り返す。二次抗体:PE-抗ヒトFC(1:200)50μl/ウェル、30分間氷浴する。遠心分離し、上清を廃棄する。予冷した200μl/ウェルのPBSを加え、300gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、3回繰り返す。FACSは、平均蛍光値を読み取る。結果は、
図8に示されるように、SIRPα抗体QP163245、QP256253、QP256279、QP2561586、QP2561589は、すべてヒトSIRPαに天然に発言するヒト腎明細胞腺がん細胞786-O細胞に結合し、その結合親和性は、対照抗体QP026249(KWAR23)の結合親和性よりも良好である。
【0112】
実施例6:抗SIRPα抗体のインビトロ機能実験ADCP
(1)抗SIRPα抗体を様々なIgGサブタイプに作成し、分子クローニング設計は、次のとおりである。
【0113】
【0114】
ここで、QP32700279的重鎖(SEQ ID NO:26)の具体的な配列は、次のとおりである。
【0115】
【0116】
QP32700279の軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:18に示されたとおりである。
(2)抗SIRPα抗体インビトロ機能実験ADCP
マクロファージ(Macrophage)の準備:PBMCを蘇生し、キットEasySepTM Human Monocyte Isolation Kit(Stemcell-19359)を使用して、単球(monocytes)を分離し、ヒト組換えM-CSF(最終濃度は、50ng/mLである)を加え、完全に混合し、37℃で細胞を6日間培養してマクロファージを誘導し、細胞を収集して、カウントして備蓄する。CFSEでRaji細胞を標識する。Rajiを2×106cells/mlになるように再懸濁し、次いで50μl/ウェル(1×105/ウェル)に従って、マクロファージ含有96ウェルプレートに加え、抗体の希釈:リツキシマブ(Rituximab)を完全培地で80μg/mlに希釈し、九つの勾配を3倍に希釈し、抗-SIRPαを完全培地で20μg/mlに希釈し、抗体の混合:Combination群では、二つの希釈抗体を1:1で混合し、リツキシマブ群では、同量の培地と混合し、あらかじめ細胞を置いた96ウェルプレートに50μl/ウェルを加え、37℃下で2時間培養し、FACS検出:生CFSE+/CD14+細胞をゲーティングすることにより、食作用(Phagocytosis was measured by gating live CFSE+/CD14+ cells)を測定する。
【0117】
親和性成熟分子および対照抗体をリツキシマブと相乗的にADCP実験に使用し、実験結果によると、SIRPα抗体とリツキシマブとの併用は、リツキシマブ単独と比較して、EC50が小さく、ADCP相乗効果が顕著に増強されたことを示す。結果は、
図9、
図10、
図11に示されたとおりである。
【0118】
実施例7:B-NDG-hSIRPΑマウスモデルにおけるRaji-Luc腫瘍増殖に対する抗SIRPα抗体の阻害効果を評価するQP32700279
腫瘍に対する抗SIRPα抗体の殺傷効果を調査するために、B-NDG-hSIRPΑを使用して、Raji-Luc腫瘍モデルに静脈内接種し、腫瘍増殖に対するSIRPα抗体およびリツキシマブの阻害効果を評価する。Raji-Luc細胞は、10%牛胎児血清含有RPMI1640培地で培養される。PBSに再懸濁したRaji-Luc細胞を、5×105細胞/0.2mLの濃度および0.2mL/匹の体積でB-NDG-hSIPRaマウスの尾静脈に接種する。接種後0日目、3日目に、小動物用イメージャーを使用して腫瘍画像信号値を測定し、平均画像シグナル強度が約1×106P/Sに達し、腫瘍画像信号値および動物の体重に従って、適切な動物を選択してグループ分けし、各実験グループに8匹の動物を含む四つの実験グループに均等に分配する。グループ分けの日に投与を開始し、具体的な投与計画は、以下の表に示される。
【0119】
【0120】
グループ分けおよび投与日をD0としてカウントし、D18時点で、各群の腫瘍画像信号値応答の腫瘍増殖曲線およびD18画像シグナル強度データは、
図12および以下の表に示されたとおりである。
【0121】
【0122】
腫瘍増殖曲線の結果によると、リツキシマブ、QP32700279およびQP32700279、リツキシマブの併用群は、Raji-Luc腫瘍の増殖を顕著に阻害することができ、腫瘍阻害率(TGI)は、それぞれ58.6%、46.4%および84.5%であり、併用投与群は、単一投与群よりも強い抗腫瘍活性を示すことが示される。
【0123】
モデル特性のため、試験後半になると、マウスに異常や麻痺の現象が現れるが、その時点でマウスを安楽死させ、生存曲線を記録する。G1群のすべてのマウスが死亡した時点で(D25)、各群の生存曲線は、
図13に示されたとおりである。
【0124】
生存分析は、Kaplan-Meier法を使用し、群間の比較には、Log rank検定を使用し、p<0.05を有意差とする。対照群と比較して、QP32700279および併用投与群(QP32700279+リツキシマブ)は、すべてRaji-Luc担癌マウスの生存期間を優位に延長できるが(p=0.0445*、p<0.001**)、リツキシマブ群は、担癌マウスの生存期間を効果的に延長することができない(p=0.23)。当該結果によると、QP32700279およびQP32700279+リツキシマブの併用投与は、Raji-Luc担癌マウスの腫瘍増殖状況を効果的に阻害し、それによって、マウスの生存状況を改善できることを示唆する。
【0125】
実施例8:ヒトSIRPαのすべてのサブタイプに結合する抗SIRPα抗体のELISA検出
既知の文献(「Velcro」 Engineering of High Affinity CD47 Ectodomain as Signal Regulatory Protein(SIRP alpha)Antagonists That Enhance Antibody-dependent Cellular Phagocytosis,JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,VOLUME 290 ・NUMBER 20・MAY 15,2015)で報告されているSIRPα V1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10配列によれば、遺伝子合成を介して、上記のSIRPα C末端をマウスIgG2aサブタイプのFc(mouse IgG2a)に融合させ、真核生物発現担体pQDを構築し、293E一過性トランスフェクションにより、プロテインA精製および5日目の一過性上清を得て、それぞれSIRPα V1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10融合Fc(mouse IgG2a)タンパク質を得、さらにELISAを実行して、SIRPαのすべてのサブタイプに対するSIRPα抗体の結合を検出する。配列は、次のとおりである。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
検出対象のSIRPα抗体:
SIRPα抗体QP256279をCHOS細胞で安定発現させ、CHOS安定発現タンパク質番号は、CHO71である。
【0138】
特許WO2017178653によって提供される配列に従って、分子クローニングは、精製されたOSE会社抗SIRPα抗体18D5を実験対照として構築および発現させる。同時に、上記のように、QP026249は、47会社(Forty Seven)の抗SIRPα抗体KWAR23であり、ここでは、KWAR23として表される。
【0139】
SIRPα抗体のSIRPα V1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10への結合のELISA検出実験段階:
SIRPα V1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10、1μg/ml、60μl/ウェルを4℃下で一晩コーティングし、PBSTで2回洗浄し、5%無脂肪ミルク(SANGON BIOTECH)でブロッキングに使用し、200μl/ウェルで、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで2回洗浄し、抗体10μg/ml、5倍希釈、10勾配、60μ/ウェルをインキュベートし、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄し、二次抗体のインキュベーション:抗-hFab1:10000、60μl/ウェル、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄し、発色:TMBを1時間前に室温で平衡化し、100μl/ウェル、10分間顕色させ、2M H2SO4 50ul/ウェルを停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmで読み取る。
【0140】
実験結果は、
図14~
図23に示されるように、本発明のSIRPα抗体CHO71は、SIRPα V1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10のすべてのサブタイプに結合する。OSE会社のSIRPa抗体18D5は、SIRPa V2/V3/V7/V8/V10に結合しない。
【0141】
本発明の内容を上記の好ましい実施形態を通じて詳細に説明したが、本発明は上記の説明に限定されるものでないことを理解されたい。当業者であれば、上記の内容を読めば、本発明に対する様々な修正および変更が明らかとなるであろう。従って、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって限定されるべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片であって、
重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:3、4、5に示されるようなVHCDR1、VHCDR2およびVHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が、それぞれ
(1)SEQ ID NO:37、38、9;
(2)SEQ ID NO:39、38、9;
(3)SEQ ID NO:7、40、9;
(4)SEQ ID NO:7、8、41;
(5)SEQ ID NO:7、8、42;
(6)SEQ ID NO:7、8、43;
(7)SEQ ID NO:37、38、41;
(8)SEQ ID NO:44、38、41;
(9)SEQ ID NO:7、8、9の配列のいずれか一つに示されるようなVLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3を含むことを特徴とする、前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記可変領域は
、FR領域をさらに含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記FR領域の配列は、マウス由来であり、前記重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:2に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有し、前記軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:6に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有することを特徴と
し、
あるいは、前記FR領域の配列は、ヒト由来であり、前記ヒト由来のFR領域は、重鎖FR領域配列および軽鎖FR領域配列を含み、前記重鎖FR領域配列は、ヒト生殖系列重鎖IGHV1-18のFR1、FR2、FR3領域およびIGHJ2*01のFR4領域を含む、ヒト生殖系列重鎖IGHV1-18およびIGHJ2*01の組み合わせ配列に由来し、前記軽鎖FR領域配列は、ヒト生殖系列軽鎖IGKV4-1のFR1、FR2、FR3領域およびIGKJ2*01のFR4領域を含む、ヒト生殖系列軽鎖IGKV4-1およびIGKJ2*01の組み合わせ配列に由来することを特徴とする
請求項2に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:17に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有し、前記軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:18、19、20、21、22、23、24、25のいずれか1
つから選択されるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有することを特徴とする
請求項2に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片は、ヒト由来IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4またはその変異体から選択される重鎖定常領域、ならびにヒト由来κ鎖、λ鎖またはその変異体から選択される軽鎖定常領域をさらに含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記重鎖定常領域は、Fc断片またはその変異体を含み、前記Fc断片の変異体は、IgG1に由来し、EUナンバリングに基づいて、突然変異部位L234A、L235A、K338Aを含むことを特徴とする
請求項
5に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の重鎖配列は、SEQ ID NO:26に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、もしくは多重特異性抗体であ
ることを特徴と
し、
あるいは、その構造形態は、Fab、F(ab’)2、Fv、またはScFvであることを特徴とする
請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
抗体薬物複合体であって、
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片を含むことを特徴とする、前記抗体薬物複合体。
【請求項10】
医薬組成物であって、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片、ならびに一つまたは複数の種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項11】
核酸分子であって、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片をコードするすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項12】
ベクターであって、
請求項11に記載の核酸分子を含むことを特徴とする、前記ベクター。
【請求項13】
宿主細胞であって、
請求項12に記載のベクターの形質転換により得られたことを特徴とする、前記宿主細胞。
【請求項14】
疾患、病症または状況を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の
使用であって、
前記疾患、病症または状況は、癌、固形腫瘍、慢性感染症、炎症性疾患、多発性硬化症、自己免疫性疾患、神経系疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、移植片の機能不全または関節炎を含み、前記癌は、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞がん、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵臓がん、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、精巣がん、腎臓がん、腎盂および尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、脊椎がん、脳がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、消化器がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、喉頭癌、膠芽腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形種、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞またはB細胞リンパ腫、消化管間質腫瘍、軟部組織腫瘍、肝細胞がんまたは腺がんから選択されることを特徴とする
、前記使用。
【請求項15】
前記薬物は、一つまたは複数の他の薬剤と組み合わせて使用されることを特徴とする
請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記他の薬剤は、リツキシマブを含むことを特徴とする
請求項15に記載の使用。
【請求項17】
製剤の調製における、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、
前記製剤は、検出剤を含むことを特徴とする、前記使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
【
図7】Blocking-ELISAの検出結果である。
【
図8】ヒトSIRPaを天然発現するヒト腎明細胞腺がん細胞786-O細胞に結合するSIRPα抗体のFACS検出結果である。
【
図9】抗SIRPα抗体のインビトロ機能実験のADCP結果である。
【
図10】抗SIRPα抗体のインビトロ機能実験のADCP結果である。
【
図11】抗SIRPα抗体のインビトロ機能実験のADCP結果である。
【
図12】各群における腫瘍画像信号値応答の腫瘍増殖曲線およびD18画像シグナル強度結果を示すグラフである。
【
図14】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図15】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図16】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図17】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図18】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図19】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図20】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図21】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図22】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図23】本発明の抗体CHO71および対照抗体18D5、KWAR23のSIRPαV1/V2/V3/V4/V5/V6/V7/V8/V9/V10サブタイプへの結合をELISAで検出した結果を示すグラフである。
【
図24】既知のヒトSIRP alpha結合ドメイ
ン対立遺伝子のアミノ酸配列の比較図である。
V1~V10のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:51~SEQ ID NO:60に示されたとおりである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
実施例4:抗SIRPα抗体QP163164の親和性成熟
(1)ヒト化ファージミド担体の構築
ヒト化QP256253を、野生型配列(すなわち、元の配列または開示配列として、親和性成熟スクリーニングによって得られた突然変異配列)それぞれscFvモード(VH-3×GGGGS(SEQ ID NO:64)-VL)でファージミド担体に構築する。オーバーラップPCR(over-lap PCR)を使用してVH、(GGGGS(SEQ ID NO:64))3リンカー、VLをスプライスし、NcoIおよびNotI制限部位を使用して、ファージミド担体にライゲーションする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】