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特表2024-501140抗体断片で修飾され、且つ細胞障害性物質がロードされた多重特異性ヒトアルブミンナノ粒子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】抗体断片で修飾され、且つ細胞障害性物質がロードされた多重特異性ヒトアルブミンナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/765 20060101AFI20231228BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231228BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20231228BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
C07K14/765
C07K19/00
A61P35/00
A61K45/00
A61K9/14
A61K47/42
A61K31/513
A61K9/10
A61K47/69
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533217
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2021057740
(87)【国際公開番号】W WO2022112865
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020000028952
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521104159
【氏名又は名称】アンビション ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ルヴォ,メノッティ
(72)【発明者】
【氏名】デ ファルコ,サンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ロジエロ,ダヴィデ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA29
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE03
4C076EE23
4C076EE41
4C084AA17
4C084MA21
4C084MA41
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA21
4C086MA41
4C086NA13
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA70
4H045GA15
(57)【要約】
本発明は、細胞、好ましくは癌細胞の表面に過剰発現された、又は選択的に発現された標的受容体を認識することができる少なくとも1種類の生体分子で、その表面が修飾された、細胞障害性薬物が任意にロードされた、血清アルブミンナノ粒子、好ましくはヒトの血清アルブミンナノ粒子に関する。特に、血清アルブミンナノ粒子(Alb-NP)は、・-S-チオエーテル結合によってナノ粒子に結合されたリンカー、及び・少なくとも1種類の生体分子を含む少なくとも1つの修飾鎖で修飾される。その少なくとも1種類の生体分子は、(i)リンカーのX基の-NH残基と、その少なくとも1種類の生体分子に挿入されるペプチドコンセンサス配列に含まれるグルタミンのCO-NH残基との間;或いは(ii)その少なくとも1種類の生体分子に挿入されるペプチド配列に含まれるリジンの-NH残基と、リンカーの一部であるコンセンサス配列に挿入されるグルタミンの-CO-NH残基との間で、酵素トランスグルタミナーゼによって仲介されるアミド基転移(又はトランスグルタミネーション)反応によって形成されるアミド結合を介してリンカーに結合される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの修飾鎖で修飾された血清アルブミンナノ粒子(Alb-NP)であって:
・-S-チオエーテル結合によって前記ナノ粒子に結合されたリンカーと、
・少なくとも1種類の生体分子と、
を含み、
前記少なくとも1種類の生体分子が、酵素トランスグルタミナーゼによって仲介されるアミド基転移(又はトランスグルタミネーション)反応により形成されるアミド結合を介して前記リンカーに結合され、
前記ナノ粒子が、以下の式(I):
【化1】
を有し、
式中、Alb-NPが、Zの求電子性基と反応して、前記-S-チオエーテル結合を形成するチオール官能基(-SH)をその表面に含有する血清アルブミンナノ粒子であり;
Z-スペーサー-X-NH-が、リンカーであり:
Zは、アルブミンの-SH基と反応することができ、それによって前記-S-チオエーテル結合が形成される、求電子性基を含有する官能基から誘導され、前記官能基は、2-ブロモ酢酸、3-ブロモプロパン酸,3-クロロプロパン酸、4-ブロモ酪酸、5-クロロ酪酸、5-ブロモペンタン酸、5-クロロペンタン酸、4-ブロモメチル安息香酸、4-クロロメチル安息香酸、2-マレイミド酢酸、3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、5-マレイミドペンタン酸、6-マレイミドヘキサン酸、3-マレイミド安息香酸、4-マレイミド安息香酸、4-(2-N-マレイミド)メチル安息香酸、1-ブロモ酢酸及び1-クロロ酢酸から選択され;
前記スペーサーは:
・-NH-(CH-O)-CH-CO-(nは2~10、好ましくは2、3、4及び5である);
・-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-(nは2~10、好ましくは2、3、4及び5である)であり;
又は前記スペーサーはY基であり、
Yは:
・-NH-(CH-CO-アミノ酸(nは3~10、好ましくは3~5、より好ましくはn=3、4又は5である);
・グリシン、アラニン;
・及びその組み合わせ;から選択され、
mは、1~5の数であり;
前記スペーサーの-NH-基が、Zの前駆体のカルボン酸基とのアミド結合を形成し、且つ前記スペーサーの-CO-基が、次の単位Xの-NH-基とのアミド結合を形成し;
前記-X-NH-基が:
・-NH-(CH-NH-(nは、3~10の範囲であり、好ましくは3、4及び5である);
・-NH-(O-CH-NH-(nは、2~10の範囲であり、好ましくは2、3、4及び5である);
・-NH-(O-CH-CH-NH-(nは、2~10の範囲であり、好ましくは2、3、4及び5である);
・L-リジンアミノ酸;
・L-オルニチンアミノ酸;
・C末端アミド化L-リジンアミノ酸;
・C末端アミド化L-オルニチンアミノ酸;から選択され、
前記-X-NH-基の2つの-NH-基が、前記スペーサーの-CO-基とのアミド結合と、式(VI):
AA-AA-Q-AA-AA 式(VI)
を有するコンセンサス配列のグルタミンとのアミド結合とを、それぞれ形成し、
式中:
AAはロイシン(L;Leu)であるか、又は存在せず;
AAはロイシン(L;Leu)であるか、又はトレオニン(T;Thr)であり;
Qは、式-CO-(CH-CH-(NH)-CO-を有するグルタミンであり;
AAはセリン(S;Ser)であるか、又はグリシン(G;Gly)であり;
AAはプロリン(P;Pro)、アラニン(A;Ala)であるか、又は存在せず;
好ましくは、AA及びAAは同時には存在せず;
互いに異なる、又は同一であるR1及びR2が、Fab、scFv、ナノボディ(NB)、抗体及びその組み合わせから選択され、或いは
前記アルブミンナノ粒子が式(II):
【化2】
を有し、
式中、Z-スペーサー-AA-AA-Q-AA-AAは、リンカーであり;
Alb-NP、Z、スペーサー、R1及びR2は、前記式(I)で定義される通りであり;
式-CO-(CH-CH-(NH)-CO-を有するグルタミンに等しいQを有するAA-AA-Q-AA-AAは、前記式(I)で定義される通りであり、且つ前記スペーサーの-CO-末端と、存在する場合には前記アミノ酸AAの、又はAAの-NH-基との間のアミド結合によってスペーサーに結合され;
リジン(K;Lys)を含有する前記ペプチド配列は式(IX):
(AA)-K-(AA) 式(IX)
を有し、
式中、w及びpは、0~8、好ましくは1~5に含まれる整数であり、但しw及びpは、決して同時に0に等しくならないことを条件とし;
AAは、アラニン(A;Ala)、チロシン(Y;Tyr)、フェニルアラニン(F;Phe)、グリシン(G;Gly)、トリプトファン(W;Trp)及びセリン(S;Ser)から選択されるアミノ酸を示し;
Kはリジン(Lys)である、アルブミンナノ粒子。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、ヒトアルブミンナノ粒子(NP-HSA)又はウシアルブミンナノ粒子(NP-BSA)である、請求項1に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、動的光散乱(DLS)技術で測定された、平均直径(又はZ平均サイズ)100~500nm、好ましくは100~400nm又は300~400nmを有する、請求項1又は2に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項4】
5-FU、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ラルチトレキセド、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン及びその組み合わせから選択される、少なくとも1種類の細胞障害性薬物がロードされた、請求項1から3のいずれか一項に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項5】
R1及びR2が互いに異なり、且つFabの2つの異なるタイプ:Fab1及びFab2;scFvの2つの異なるタイプ:scFv1及びscFv2;NBの2つの異なるタイプ:NB1及びNB2;抗体の2つの異なるタイプ:Ab1及びAb2であり、或いはR1及びR2が、生体分子の混成した組み合わせであり、好ましくはFab1及びscFv1、Fab1及びNB1、scFv1及びNB1、又はAb1及びNB1である、請求項1から4のいずれか一項に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項6】
前記抗体が、抗体DI17E6、トラスツズマブ、パーツズマブ、セツキシマブ、抗Cripto-1モノクローナル抗体、好ましくは抗Cripto-1抗体1B4又は抗Cripto-1抗体10D1から選択されるモノクローナル抗体であり;前記Fabが、トラスツズマブの組換えFab、パーツズマブの組換えFab、抗Cripto-1モノクローナル抗体の、好ましくは抗Cripto-1抗体11B4及び抗Cripto-1抗体10D1から選択される抗Cripto-1モノクローナル抗体の組換えFabから選択され;前記scFvが、抗体DI17E6、トラスツズマブ、パーツズマブ、セツキシマブ、抗Cripto-1モノクローナル抗体、好ましくは抗Cripto-1抗体1B4又は抗Cripto-1抗体10D1から選択される抗体の機能性断片であり;ナノボディ(NB)が、抗VEGFR2 NB、好ましくはNB 3VGR19;抗Her2NB、好ましくはNB 5F7GGC;抗EGFR NB、好ましくはNB EGa1から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項7】
Zが、1-ブロモ酢酸、1-クロロ酢酸及び6-マレイミドヘキサン酸から選択される官能基から誘導される、請求項1から6のいずれか一項に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項8】
前記スペーサーが、-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-(nは2~5に含まれる)であるか、又はグリシンである、請求項1から7のいずれか一項に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項9】
前記X-NH-基が、L-リジンアミノ酸及びC末端アミド化L-リジンアミノ酸から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項10】
前記コンセンサス配列が、LQSP、TQGA、LLQGから選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項11】
前記式(IX)
(AA)-K-(AA)
において、
wが、0に等しく、且つpが1~3に等しく;好ましくは、wが0に等しく、且つpが3に等しく、より好ましくはそれが、KAYA、KGYA、KSYA、KAFA、KGFA、KSFA、KAWA、KGWA、KSWA、KAYG、KGYG、KSYG、KAFG、KGFG、KSFG、KAWG、KGWG、KSWG、KAYS、KGYS、KSYS、KAFS、KGFS、KSFS、KAWS、KGWS、KSWSである、請求項1から8のいずれか一項に記載のアルブミンナノ粒子。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、その表面で蛍光色素、好ましくはフルオレセインイソチオシアネートに共有結合される、請求項1から11のいずれか一項に記載の血清アルブミンナノ粒子。
【請求項13】
【化3】
から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の血清アルブミンナノ粒子。
【請求項14】
前記少なくとも1種類の生体分子が、
(i)リンカーのX基の-NH残基と、前記少なくとも1種類の生体分子に挿入されるペプチドコンセンサス配列に含まれるグルタミンの-CO-NH残基との間;或いは
(ii)前記少なくとも1種類の生体分子に挿入されるペプチド配列に含まれるリジンの-NH残基と、前記リンカーの一部であるコンセンサス配列に挿入されるグルタミンの-CO-NH残基との間で、酵素トランスグルタミナーゼによって仲介されるアミド基転移(又はトランスグルタミネーション)反応によって形成されるアミド結合を介してリンカーに結合される、請求項1から13のいずれか一項に記載のアルブミンナノ粒子を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞、好ましくは癌細胞の表面に過剰発現された、又は選択的に発現された標的受容体を認識することができる少なくとも1種類の生体分子で、その表面が修飾された細胞障害性薬物が任意にロードされた、血清アルブミンナノ粒子、好ましくはヒトのナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトアルブミン(HSA)は、循環系に導入される薬物及び内因性小分子に対する、最も効率的及び多用途の天然担体タンパク質である。HSAへの分子の結合は、その薬物動態学的プロファイルを向上させ、腎臓システムを介したその急速な排出及び毒性を低減する。HSAは、最も豊富な血漿タンパク質(35~50g/L ヒト血清)であり、分子量66.5kDaを有する。大部分の血漿タンパク質のように、肝臓で合成され、肝臓1グラムにつき速度0.7mg/時にて産生される(つまり、10~15g/日)。HSAは、19日の平均血漿半減期を有する。その長い半減期は、高い親和性でFcRn受容体に結合するその能力に大きく依存する[1]。HSAは、長鎖脂肪酸の可溶化剤として働き、したがって、脂質代謝に必須であり、ビリルビン、ヘムの分解生成物に結合し、わずか数例を挙げれば、ペニシリン、スルホンアミド、インドール化合物及びベンゾジアゼピンなどの多くの治療薬に結合する[2]。特異的な手法において銅(II)及びニッケル(II)、並びに比較的非特異的な手法においてカルシウム(II)及び亜鉛(II)などの金属を錯化することができ、これらの金属イオンに対して血中の輸送媒体として作用する。
【0003】
HSAは、非常に可溶性及び極度に安定性の酸性タンパク質であり;4~9に含まれるpH範囲で安定であり、40%エタノールに可溶性であり、構造損失なく、10時間の間でさえ60℃に加熱することができる。腫瘍及び炎症性組織において優先的に吸収されるその能力、即座の、及び広いその利用可能性、その生分解性、並びに毒性及び免疫原性のその本質的な欠如と共に、これらの特性によって、共有又は非共有でそれと結合される治療薬及び他の分子の送達に理想的な分子となる。
【0004】
HSAは、損傷した毛細管がそれに存在し、且つリンパ液排液システムが存在しない、又はリンパ液排液システムに欠陥があるおかげで、腫瘍及び炎症性組織において優先的に蓄積することができる。「受動的腫瘍ターゲティング」として知られるこの特性は、健康な組織の血管では、小分子のみが、内皮バリアを通過する一方、血管壁が透過性となる血管の欠損のおかげで、腫瘍組織において、約40kDaを超える分子量を有する分子が透過し、腫瘍組織に保持される能力の増加を利用する。腫瘍微小血管のポアサイズは直径100~1200nmの範囲であり[3,4]、一方、HSAは、有効直径7.2nmを有し、それによって、正常組織ではなく、腫瘍組織でのみ血管外遊出が可能となる。この現象によって、腫瘍組織におけるHSAなどの巨大分子の取込みがより多くなり、且つ通常かなり急速に排泄され、健康な組織においても細胞障害活性を及ぼすであろう、低分子量抗癌薬の担体としてのその使用に有利に働く。
【0005】
アルブミン集積は、肉腫、卵巣癌及びNovikof肝癌などの固形腫瘍の多くの動物モデルにおいて確認されている[5]。同系乳癌のモデルにおいて、マウス乳房上皮内新形成の病的増殖物において、及び上皮間葉転換に由来する腫瘍において、アルブミンに対する透過性は、リポソーム又はサイズ100nmの他の類似の合成ナノ粒子の透過性の約4倍高く[6]、現象はおそらく、HSAのより高い血漿半減期によって有利に働くこともまた、非常に興味深い。
【0006】
これらのすべての特性のおかげで、小分子及び治療用ペプチド又はホルモン、例えばインスリン又はサイトカインなどの小タンパク質のアルブミンへの接合は、その薬物動態学的プロファイル及び患部組織に対する準特異的輸送の向上のために、広く使用され、且つ有効なアプローチとなっている。
【0007】
腫瘍組織において受動的集積に加えて、HSAは好ましくは、多くの癌細胞によって細胞内に取り込まれ、さらに、それと結合する治療薬(therapeutics)の細胞内放出のためのその使用に有利に働く。実際に、マクロピノサイトーシスのメカニズムを介して癌細胞は、HSAなどの細胞外タンパク質を吸収し、代謝して、その増加した代謝ニーズを満たすことが示されている。その過剰発現及び過剰活性化が、基本的にすべての表現型の悪性癌と関連する、発癌遺伝子Ras、内部原形質膜タンパク質を発現する癌細胞では、細胞増殖をサポートするために、アミノ酸の供給源として、細胞外タンパク質がより多く使用される[7,8]。例えば、膵管腺癌細胞は、必須アミノ酸を含有しないが、正常細胞に対して癌細胞によって優先的に細胞内に取り込まれることができる生理学的濃度のアルブミンを含有する培地で無期限に増殖させることができる[9]。低アルブミン血症は、進行固形腫瘍を有する患者において一般的な特徴としても確認されている[10]。
【0008】
一部の癌細胞は、非特異的マクロピノサイトーシスメカニズムを介してだけでなく、受容体媒介メカニズムも介してHSAを内部に取り入れることができる。癌細胞におけるHSAの優先的インターナリゼーションは主に、カベオリン(Caveolin)、Cav-1、他のいずれかの様式で、例えば濾過若しくは拡散によってそれらを通過させることができない抗体、補体因子及び血液凝固因子などの特異的分子が膜を通過することを可能にする特有の脂質組成を特徴とする、細胞膜のミクロドメイン、カベオラに豊富に存在するタンパク質との結合によることが分かっている。
【0009】
Cav-1は、膵臓癌、前立腺癌、及び乳癌などの多種多様な癌タイプに過剰発現され、Cav-1の過剰発現は、癌の進行と関連する[11,12]。
【0010】
HSAの使用に基づくいくつかのアプローチが、標的化癌療法について記述されている。例えば、HSAを治療薬と共有結合させること、或いは小分子に対して、又はアルブミン結合性ドメイン(ABD)に対して特異的なタンパク質結合部位の親和性を利用することによって、非共有的形式でそれらをロードすることが提案されている。ナノボディ(NB,15kDa)などの、より大きな巨大分子又はヒトTRAIL(30kDa)などの他のタンパク質に挿入されると、ABDは、HSAに結合性を付与し、非常に安定な複合体が形成される[13,14]。HSA上に共有結合する主な方法では、代わりに、還元型の、したがって求電子性と選択的に反応することができるチオールを有する、アミノ酸システイン34の存在が利用される。
【0011】
一般的に使用される更なる方策は、リジンの側鎖上へのペイロードの接合を含む。この方策では、アミド又はイミン結合(又は還元的アミノ化反応後の単純なC-N結合)の形成が利用され、より多くのペイロードの結合を可能にする、システイン34に関する利点を有する。しかしながら、反応の選択性の欠如は、FcRn受容体への結合を損ない、ペイロード-HSA接合体の血漿半減期が低減し得る[15]。この反応を通じて、変化の数及び部位の特異性をコントロールすることは難しく、したがって、構造的観点から不均一であり、制御的観点から特徴付けること、及び枠にはめることは難しい分子が得られると考えるべきである。
【0012】
HSAに小分子を結合するための、広く使用されている別の方法では、組換え又は天然抽出タンパク質ベースのナノ粒子における薬物カプセル化が利用される。ヒト血清アルブミンナノ粒子(NP-HSA)がこの目的で知られている。NP-HSAを使用することにおける利点は、条件の関数として時間の経過にしたがって放出される、非常に多くのペイロードを結合及び/又は捕捉するその能力にある。したがって、ペイロードは、かなり長く血流に維持され、分解から保護され、且つ対象の治療部位(例えば、腫瘍における)へより選択的にアンロードされ、健康な組織とのその相互作用が低減され得る。
【0013】
アルブミンナノ粒子を合成する方法は一般に、脱溶媒和、乳化、熱的ゲル化、乾燥、及び自己集合技術として分類され得る[2,16]。直径が大きすぎる粒子は、腫瘍組織の血管を透過すること、又はカベオラと相互作用することができないであろうことから、NP-HSAのサイズは、その生物学的機能に重要なパラメータである。しかしながら、腫瘍組織に対するHSAの特異性は、高い選択性及び有効性を有する表面受容体を認識する抗体などの分子と比較した場合に、かなり下がる。したがって、癌細胞に対する更なる選択性を付与するために、癌細胞の表面に過剰発現される、又は選択的に発現される特定の標的受容体を認識する、様々な特異的分子(標的化剤又はTA)でアルブミンナノ粒子を修飾することができる。マンノシル化HSAのNPをこの目的に使用して、薬物耐性結腸癌細胞及び腫瘍関連マクロファージを選択的に標的化し、高レベルのマンノース及びSPARC受容体が発現された。同様なアプローチにおいて、葉酸で修飾されたウシ血清アルブミンナノ粒子が、パクリタキセルの標的化投与のために開発された。
【0014】
高い認識特異性を付与するために、種々の癌細胞において高度に発現されるανインテグリンに対するモノクローナル抗体など、癌細胞及び組織における過剰発現された抗原に対するモノクローナル抗体でNP-HSAが修飾された[17]。
【0015】
同様に、癌細胞上で選択的に発現された1つ又は複数の表面抗原を認識する、抗体又は抗体断片を使用することを仮定することができる。Her2などのこれらの抗原の一部は、モノクローナル抗体での抗癌療法の有効な標的である[18,19]。Her2の場合には、タンパク質の異なるエピトープを認識するが、抗原発現性乳癌の患者における治療効果をどちらも提供することができる、トラスツズマブ又はパーツズマブなどのモノクローナル抗体が使用され得る。受容体は、急速に細胞内に取り込まれ、抗体、抗体断片、並びに標的化療法及びより有効な療法のために細胞障害性薬物と接合された抗体(ADC)を細胞内に運ぶことができるため、Her2に対する抗体はNP-HSAの修飾に特に有用である。たとえ、マーカーが同じ効率で細胞内に取り込まれなくとも、癌細胞上に選択的に発現される他のマーカーに対する抗体が同じ目的で使用され得る。この場合には、抗体は、癌細胞近くにNP-HSAをガイドする、認識シグナルとして働くだけであり、その後、カベオラを介してNP-HSAを細胞内に取り込み得る。2つの異なる認識シグナルの存在は、特異性を高め、粒子は単一のマーカーを介して細胞内に取り込まれ得る。
【0016】
これらの用途に関する対象となる更なる分子は、乳癌、結腸癌、胃癌及び他のタイプの癌の癌細胞表面に過剰発現されることが知られているタンパク質Cripto-1である[20]。細胞表面上のヒトタンパク質を非常に選択的に認識するモノクローナル抗体が、文献に広く報告されている[20]。
【0017】
ADCは、永久的又は不安定なリンカーを用いて、小分子抗癌薬又は他の治療薬を抗体に結合することによって構築された高度に強力な生物学的薬物の新たなクラスである。その抗体は、標的細胞上で主に見出される特異的抗原を標的化する。
【0018】
その抗体のおかげで、ADCは、癌細胞受容体に選択的に結合する。受容体-ADC複合体は通常、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ、抗体の分解後にリンカーが切断され、細胞死を誘導する細胞障害性薬物は、DNA結合又はチューブリンとの相互作用など、様々な作用メカニズムを介して放出される。リンカーからの放出は、細胞障害性物質付近及び抗体付近の両方で起こり得て、リンカーは細胞障害性物質にまだ固定されているままである。これらのアプローチで使用される細胞障害性物質、通常小分子は、非常に強力(≦1nM)でなければならず、そうでなければ、それを運ぶ抗体又は断片の濃度が高くなりすぎ、無駄となる。したがって、リンカー又はリンカーの断片(pieces)の存在がその活性を変化させるのを防ぐために、細胞障害性物質がその元の形で放出されることは必須である。NP-HSAを用いた薬物の投与は既に、前臨床的及び臨床的にかなりの成功を示している。NP-HSAは、例えば、ソラフェニブ、5FU及びパクリタキセルなどの種々の薬物を捕捉するために使用されている[21-23]。実際に、NP-HSAを用いて、これらはナノ粒子のメッシュに捕捉されるため、実際にロードされる薬物分子の数を増加することが可能であり、単純な拡散によって時間が経つにつれてインタクトな状態で放出され得る。
【0019】
この文脈において、NP-HSAが、抗体によって癌細胞へガイドされ、構造変化なく放出される細胞障害性物質の多くのコピーを輸送することができる容器として働くことから、抗体又は抗体断片で修飾されたNP-HSAの使用は特に有用である。
【0020】
したがって、癌細胞に細胞障害性薬物を運ぶことができるアルブミンナノ粒子、さらに具体的には、既知のナノ粒子と比較したアルブミンナノ粒子の必要性は、この分野において感じられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、細胞、好ましくは癌細胞の表面の過剰発現された、又は選択的に発現された標的受容体を認識することができる少なくとも1種類の生体分子で修飾された血清アルブミンナノ粒子(Alb-NP)に関する。その少なくとも1種類の生体分子は、リンカー、及び酵素トランスグルタミナーゼによって仲介されるアミド基転移(又はトランスグルタミネーション)反応によって、ナノ粒子表面に固定される。
【0022】
生体分子は好ましくは、抗体、Fab、scFv、ナノボディ(NB)及びその混合物からなる群から選択される。好ましくは、ナノ粒子は、抗体、Fab、scFv、ナノボディ(NB)、ペプチドからなる群から選択される少なくとも2種類の生体分子で修飾され、その少なくとも2種類の生体分子は互いに異なる。
【0023】
好ましくは、ナノ粒子の製造に使用される血清アルブミンは、ヒト血清アルブミン(HSA)である。
【0024】
その少なくとも1種類の生体分子は、ナノ粒子がそれで誘導体化される、リンカーを介してアルブミンナノ粒子に結合される。リンカーでのナノ粒子の誘導体化は、求電子性官能基を含有するリンカーのZ基と、SH求核基(チオール)を含有するアルブミンシステインの側鎖と共有結合の形成によって起こる。
【0025】
好ましくは、リンカーのZ基とアルブミンシステインのチオール基との間に形成する共有結合は、-S-チオエーテル結合である。
【0026】
リンカーの末端部分は、X-NH基を含有し、それが、生体分子の、少なくとも1つのグルタミン(Q;GLN)を含有するコンセンサス配列に結合する。特に、リンカーのX-NH残基は、酵素トランスグルタミナーゼ(MTG)によって仲介されるアミド基転移(又はトランスグルタミネーション)反応による、コンセンサス配列のグルタミンに結合する。その代わりとして、-NH残基が、例えば、ペプチド配列に挿入されるリジン残基の形態で、少なくとも1種類の生体分子の一方の末端に導入され、少なくとも1つのグルタミン(Q;GLN)を含有するコンセンサス配列が、X-NH基の代わりにリンカーの末端に挿入される。この場合には、少なくとも1つのグルタミンを含有するコンセンサス配列は、リンカーの一部である。酵素トランスグルタミナーゼによって仲介されるアミド基転移反応は、少なくとも1種類の生体分子に存在する-NH残基と、リンカーの一部を形成するコンセンサス配列のグルタミンとの間で起こる。
【0027】
好ましくは、本発明に従って修飾された血清アルブミンナノ粒子に、5-FU、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ラルチトレキセド、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン及びその組み合わせなどの少なくとも1種類の細胞障害性薬物がロードされる。言い換えると、ナノ粒子がその中に少なくとも1つの細胞障害性薬物を組込み、上記のように粒子の表面が修飾される。
【0028】
本発明は、本発明に従って修飾され、細胞障害性薬物がロードされた血清アルブミンナノ粒子の使用、又は具体的には病態、好ましくは癌病態を治療するための、ナノ粒子を含む医薬組成物にも関する。特に、かかる病態は、黒色腫、乳癌、転移性乳癌、神経膠腫、膠芽腫、腺癌、腸管の癌、膵臓癌、骨癌、腎臓癌、結腸癌、胃癌、慢性リンパ性白血病、非小細胞肺癌、進行及び/又は転移性腎臓癌、頭頚部癌、進行黒色腫、非ホジキンリンパ腫、転移性黒色腫、肺癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫及び加齢性黄斑変性症から選択される。
【0029】
本発明は、本発明によるリンカーで誘導体化された、好ましくはヒトの、血清アルブミンナノ粒子、及び本発明に従って修飾されたアルブミンナノ粒子の製造のためのその使用にも関する。
【0030】
本発明は、チオエーテル結合の形成によって本発明のリンカーでナノ粒子を機能化し、酵素トランスグルタミナーゼによって仲介されるアミド基転移又はトランスグルタミネーション反応によって、少なくとも1種類の生体分子にリンカーを接合する工程を含む、修飾ナノ粒子を合成する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】トラスツズマブFabで、及びヒトアルブミン粒子に結合された同じFabで得られた、HER2への競合的結合の用量反応曲線を示す(実施例10)。
図2A-B】トラスツズマブFabで、及びヒトアルブミン粒子に結合された同じFabで得られた、2時間(A)及び24時間(B)の時点での、Her2受容体発現性BT474細胞への結合の用量反応曲線を示す(実施例11)。
図3A】トラスツズマブFabで、及びヒトアルブミン粒子に結合された同じFabで得られた、2時間の時点での、Her2受容体発現性BT474細胞及び非受容体発現性MDA-MB-231細胞への結合の用量反応曲線を示す(実施例12)。
図3B-C】トラスツズマブFab(B)及び2時間インキュベートすることによるトラスツズマブ(C)で得られた、Her2受容体発現性BT474細胞及び非受容体発現性MDA-MB-231細胞への結合の用量反応曲線を示す(実施例12)。
図4】抗Cripto-1抗体10D1の組換えFabで、及びヒトアルブミン粒子に結合された同じFabで得られた、2時間及び24時間の時点での、Cripto-1発現性NTERA細胞への結合の用量反応曲線を示す(実施例13)。
図5A-B】Her2-ネガティブ及びCripto-1-ポジティブMDA-MB-231細胞(A)、並びにHer2-ポジティブ及びCripto-1-ポジティブBT474細胞(B)への、抗Cripto-1抗体1B4及び抗Her2トラスツズマブの結合を示す(実施例14)。
図5C】10F1Fab及びトラスツズマブFabで機能化された二重特異性NP-HSAの、Her2-ポジティブ及びCripto-1-ポジティブBT474細胞、並びに及びHer2-ネガティブ及びCripto-1-ポジティブMDA-MB-231細胞への結合の用量反応曲線を示す(実施例14)。
図6A-D】トラスツズマブFab及び10D1Fabで機能化された二重特異性P-HSAの、Her2-ポジティブ及びCripto-1-ポジティブBT474細胞、並びにHer2-ネガティブ及びCripto-1-ポジティブMDA-MB-231細胞への結合(A);トラスツズマブFabで機能化されたNP-HSAと、10D1Fabで機能化されたNP-HSAとの組み合わせの、Her2-ポジティブ及びCripto-1-ポジティブBT474細胞、並びにHer2-ネガティブ及びCripto-1-ポジティブMDA-MB-231細胞への結合(B);10D1Fabで機能化されたNP-HSAの、Her2-ポジティブ及びCripto-1-ポジティブBT474細胞、並びにHer2-ネガティブ及びCripto-1-ポジティブMDA-MB-231細胞への結合(C);トラスツズマブFabで機能化されたNP-HSAの、Her2-ポジティブ及びCripto-1-ポジティブBT474細胞、並びにHer2-ネガティブ及びCripto-1-ポジティブMDA-MB-231細胞への結合(D)(実施例15)を示す。
図7A-H】A~Cは、それぞれ濃度10、100、1000ng/mLでのCripto-1発現性NTERA2細胞へのFITC-NP-HSAの結合を示し;Dにおいて、1000ng/mでのFITCで機能化されていないNP-HSAの、同じ細胞への結合を示し;E~Gは、濃度10、100、1000ng/mLでの、Cripto-1発現性NTERA2細胞へのFITC-NP-HSA-Fabの結合を示し;Hは、FITCで機能化されていないNP-HSA-Fabの、同じ細胞への結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に示す、すべてのアミノ酸は好ましくは、L立体配置である。
【0033】
第1の態様において、本発明は、
・-S-チオエーテル結合によってナノ粒子に結合されるリンカー、及び
・少なくとも1種類の生体分子、
を含む、少なくとも1つの修飾鎖で修飾された血清アルブミンナノ粒子(Alb-NP)に関する。
【0034】
その少なくとも1種類の生体分子が、
(i)リンカーのX基の-NH残基と、少なくとも1種類の生体分子に挿入されるペプチドコンセンサス配列に含まれるグルタミンのCO-NH残基との間;或いは
(ii)少なくとも1種類の生体分子に挿入されるペプチド配列に含まれるリジンの-NH残基と、リンカーの一部であるコンセンサス配列に挿入されるグルタミンの-CO-NH残基との間;で、酵素トランスグルタミナーゼによって仲介されるアミド基転移(又はトランスグルタミネーション)反応によって形成されるアミド結合を介してリンカーに結合される。
【0035】
事例(i)において、リンカーが、式(IV):
【0036】
【化1】
の前駆体から誘導され、
式中、X基の-NH残基が、少なくとも1種類の生体分子に含有される、コンセンサス配列のグルタミン(Q;GLN)のCO-NH残基とアミド結合を形成し、コンセンサス配列が以下の式(VI):
AA-AA-Q-AA-AA 式(VI)
を有し、
式中、AAは、ロイシン(L;Leu)であるか、又は存在せず;
AAは、ロイシン(L;Leu)であるか、又はトレオニン(T;Thr)であり;
Qは、式-CO-(CH-CH-(NH)-CO-を有するグルタミンであり;
AAは、セリン(S;Ser)であるか、又はグリシン(G;Gly)であり;
AAは、プロリン(P;Pro)、アラニン(A;Ala)であり、又は存在しない。好ましくは、AA及びAAは同時に欠くことはない。
【0037】
コンセンサス配列は、好ましくはLQSP、TQGA、LLQGから選択される。
【0038】
事例(ii)において、リンカーは、以下の式(VII):
【0039】
【化2】
による、アミノ酸AA又はAAによってスペーサーに連結される、式(VI)のコンセンサス配列を含む前駆体から誘導される。
【0040】
どちらの事例においても、Z基は、-S-チオエーテル結合によってナノ粒子の表面に結合される。
【0041】
本発明に従って修飾される血清アルブミンナノ粒子は、式(I)又は(II):
【0042】
【化3】


を有する。
【0043】
式(I)において、以下の断片が同定され得る:
【0044】
【化4】
式(II)において、以下の断片が同定され得る:
【0045】
【化5】
酵素トランスグルタミナーゼによって仲介されるアミド基転移反応は、以下に図示される(ダイアグラムI):
【0046】
【化6】
式(I)及び(II)に関して、記号Alb-NPによって表される血清アルブミンナノ粒子は、ウシ血清アルブミンナノ粒子(NP-BSA)又はヒト血清アルブミンナノ粒子(NP-HSA)である。好ましくは、それらはNP-HSAである。
【0047】
アルブミンナノ粒子は、リンカーのZ基に、チオエーテル結合(-S-)により結合された、システイン残基の、好ましくは、アルブミンシステイン34の側鎖の-SHチオール基を有する。
【0048】
アルブミンナノ粒子(Alb-NP)の前駆体は、以下の式(III):
【0049】
【化7】
によって表される。
【0050】
式(I)におけるシンボル.....は、チオエーテル結合によってナノ粒子に結合された複数の修飾鎖の存在を表す。式(I)中で、ナノ粒子の1つの修飾鎖のみが、描写の簡略化のために完全に示される。
【0051】
ナノ粒子は、動的光散乱(DLS)技術で測定される、平均直径(又はZ平均サイズ)約100~500nm、好ましくは100~400nm又は300~400nmを有する。
【0052】
ナノ粒子は、0.02~0.05に含まれる多分散性指数(PDI)を有する。
【0053】
アルブミンナノ粒子は好ましくは、5-FU、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ラルチトレキセド、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン及びその組み合わせなど少なくとも1つの細胞障害性薬物がロードされる。
【0054】
「ロードされる」という用語は、その製造中、並びにリンカー及び生体分子でのその後の修飾前に、ナノ粒子内に細胞障害性薬物が組み込まれることを意味する。
【0055】
アルブミンナノ粒子は、当技術分野で公知の方法によって、例えば脱溶媒和の方法、及び例えば、グルタルアルデヒド又はジアジリンであり得る架橋剤でのその後の安定化によって製造される。アルブミンナノ粒子を製造する別の方法は、高圧均質化法である。
【0056】
他の既知の製造方法は、乳化、熱的ゲル化、乾燥、及び自己集合である。
【0057】
ナノ粒子に細胞障害性薬物がロードされた場合に、後者は、出発アルブミン溶液に溶解又は懸濁され、次いで、上述の方法によってそれを形成する間に、ナノ粒子内に組み込まれる。
【0058】
式(I)に示す本発明のナノ粒子を修飾するために使用されるリンカーは、Z基、スペーサー及びX-NH-基を含む。リンカーは、式(IV):
【0059】
【化8】
の前駆体から誘導され、
式中、Z基は、アルブミンシステイン、好ましくはシステイン34の-SH基と反応することができ、且つ4~9に含まれるpH範囲でチオエーテル結合を形成することができる、求電子性基を含有する官能基から誘導される。
【0060】
好ましくは、Z基は、以下の表1に示す誘導体から出発して、リンカーに導入され得る:
【0061】
【表1】
【0062】
好ましくは、Zは、1-ブロモ酢酸、1-クロロ酢酸及び6-マレイミドヘキサン酸から選択される官能基から誘導される。
【0063】
スペーサーは、X-NH基と、後のZ基との間のスペーサーとして働く、生理学的条件及び極端なpH条件(例えば、pH<3又はpH>9)下での不活性分子である。スペーサーは、拡大された立体配置において、少なくとも10オングストロームのサイズに達し得る、フレキシブルな分子である。
【0064】
スペーサーは好ましくは:
・-NH-(CH-O)-CH-CO-(nは、2~10の範囲であり、好ましくは2、3、4及び5である);
・-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-(nは、2~10の範囲であり、好ましくは2、3、4及び5である)から選択され、
又はスペーサーはY基であり、
Yは:
・-NH-(CH-CO-アミノ酸(nは、3~10の範囲、好ましくは3~5の範囲であり、好ましくはn=3、4又は5である)、つまり、それぞれアミノカプロン酸ε、アミノペンタン酸δ及びアミノ酪酸γ;
・グリシン、アラニン;
・及びその組み合わせから選択され、
mは、1~5に含まれる数である。
【0065】
したがって、Yは、単一アミノ酸、又は指示されたアミノ酸からなり、且つジペプチドとペンタペプチドとの間に含まれる寸法のポリペプチドを示す。
【0066】
スペーサーの-CO-基は、後のX単位の-NH-基とアミド結合を形成し、スペーサーの-NH-基は、Zの前駆体の酸基とアミド結合を形成する。
【0067】
好ましくは、スペーサーは-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-(nは2~5の範囲である)であり、又はそれはグリシンである。
【0068】
式(I)のX-NH基は、正常な生理学的条件下又は極端なpH条件(例えば、pH<3又はpH>9)下でアルキル若しくはメトキシアルキル鎖、又は他の非反応性のフレキシブルな鎖を含むX基に結合された第1級アミン基を含む。
好ましくは、Xは、少なくとも3個のメチレン基を含有するアルキル鎖、又は少なくとも2個のメトキシエチレン基を含有する鎖である。
【0069】
好ましくは、-X-NH-基は:
・-NH-(CH-NH(nは3~10の範囲であり、好ましくは3、4及び5である);
・-NH-(O-CH-NH(nは2~10の範囲であり、好ましくは2、3、4及び5である);
・-NH-(O-CH-CH-NH(nは2~10の範囲であり、好ましくは2、3、4及び5である);
・L-リジン又はD-リジンアミノ酸;
・L-オルニチン又はD-オルニチンアミノ酸;
・C末端アミド化L-リジン又はD-リジンアミノ酸;
・C末端アミド化L-オルニチン又はD-オルニチンアミノ酸;
から選択され得る。
【0070】
X-NH基は、Xのアミン基と、スペーサーから来るカルボキシル基との間に形成されるアミド結合を介してスペーサー基に連結される。
【0071】
X-NH基が、L-リジン、L-オルニチン、L-リシンアミド、L-オルニチン、D-リジン、D-オルニチン、D-リシンアミド及びD-オルニチンアミドから選択されるアミノ酸である場合に、アミド結合を形成するアミン基はα-アミン基である。
【0072】
好ましくは、X-NH基は、L-リジンアミノ酸及びC末端アミド化L-リジンアミノ酸から選択される。
【0073】
一実施形態において、Z基は、1-ブロモ酢酸、1-クロロ酢酸及び6-マレイミドヘキサン酸から選択され;スペーサーは-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-(nは2~5の範囲である)であり、又はそれはグリシンであり;X-NH基は、L-リジンアミノ酸又はC末端アミド化L-リジンアミノ酸である。
【0074】
一実施形態において、アルブミンナノ粒子、好ましくはNP-HSAは、1-ブロモ酢酸、1-クロロ酢酸及び6-マレイミドヘキサン酸から選択されるZ基;スペーサー-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-(nは2~5の範囲である)、又はグリシン;L-リジンアミノ酸、D-リジンアミノ酸、C末端アミド化L-リジンアミノ酸及びC末端アミド化D-リジンアミノ酸から選択されるX-NH基;を含むリンカーで誘導体化される。好ましくは、誘導体化ナノ粒子には、5-FU、ソラフェニブ、パクリタキセル、ドキソルビシン及びその組み合わせから選択される少なくとも1種類の細胞障害性薬物がロードされる。
【0075】
式(I)によるリンカー前駆体の一例は、式(V):
【0076】
【化9】
の、実施例8に従って製造されたBr-CH-CO-OOc-K-NHである。
【0077】
式(V)は、式(I)に従う様々な残基の表示により以下:
【0078】
【化10】
のように示される。
【0079】
リンカー前駆体の別の例は、式(VI):
【0080】
【化11】
の、実施例9に従って製造されたMal-Gly-Lys-CONHである。
【0081】
式(VI)は、式(I)に従う様々な残基の表示により以下:
【0082】
【化12】
のように示される。
【0083】
式(II)の場合には、リンカーは、式(VII):
【0084】
【化13】
の前駆体から誘導され、
式中、Z及びスペーサーは、式(IV)に関して上記の通りに定義され、X-NH基は、式(VIII):
AA-AA-Q-AA-AA 式(VIII)
の少なくとも1つのグルタミン(Q;GLN)を含有するコンセンサスペプチド配列によって置換され、
式中、
AAはロイシン(L;Leu)であるか、又は存在せず;
AAはロイシン(L;Leu)であるか、又はトレオニン(T;Thr)であり;
Qはグルタミンであり;
AAはセリン(S;Ser)であるか、又はグリシン(G;Gly)であり;
AAはプロリン(P;Pro)、アラニン(A;Ala)であるか、又は同時には存在しない。
好ましくは、AA及びAAは同時に欠くことはない。
【0085】
コンセンサス配列は好ましくは、LQSP、TQGA、LLQGから選択される。
【0086】
コンセンサス配列は、スペーサーの-CO-末端と、アミノ酸AA(存在する場合)又はAAの-NH-基とのアミド結合によってスペーサーに結合される。
【0087】
ナノ粒子表面に存在するアルブミンシステインとリンカーとの反応は、4~9に含まれ、好ましくは8以上のpHの緩衝水溶液中で起こる。接合反応は一般に、室温(25℃)にて16時間を超えない時間間隔で終了する。
【0088】
ナノ粒子上に結合され得るリンカー分子の数は、その表面に露出されるチオール基の数に応じて異なる。例えば、平均直径100nmを有するNP-HSA及び7~10nmに含まれる近似の直径を有するHSA分子に基づく近似計算によって、文献に記載の方法で製造されたNP-HSAの各mgに対して2~3nmolに含まれる反応性チオール基の量を推定することが可能となる。
【0089】
アルブミンナノ粒子は、ナノ粒子上の遊離チオールの数を増加するため、したがって、その表面に導入され得るリンカーの密度を増加するために、トラウト(Traut)試薬、2-イミノチオランで処理され得る。
【0090】
本発明によるリンカーは、Z基、スペーサー及びX基、又はアミド結合によって連結されるグルタミンを含有するコンセンサス配列を含有する。鎖全体に分布されるアミド結合を有するリンカーを有する利点は、得られた修飾ナノ粒子に溶解性を付与する能力において、化学的合成法と、例えば酵素を用いた生物学的方法の両方でのリンカー合成の容易さにおいて、極端な化学的-物理的条件(例えば、1~9に含まれるpH)下でさえ、安定性が高いことにある。
【0091】
リンカーでのナノ粒子の誘導体化によって、グルタミンを含むコンセンサス配列(式(IV)のリンカー)又はリジンを含むペプチド配列(式(VII)のリンカー)を保持する少なくとも1種類の生体分子と反応し得る、リンカーから誘導されるアミン基で機能化されたナノ粒子を得ることが可能となる。式(IV)の場合のリンカーのアミン基、又は生体分子に含まれるペプチド配列のアミン基(式(VII)のリンカーの場合)と、コンセンサス配列のグルタミンとの間の反応は、酵素トランスグルタミナーゼによって仲介されるアミド基転移(又はトランスグルタミネーション)反応である。好ましくは、トランスグルタミナーゼは、MTGと呼ばれる細菌性トランスグルタミナーゼである。
【0092】
この反応によって、生体分子の配向部位特異的手法で、イソペプチドアミド結合を介して、本発明のリンカーでの誘導体化によって導入されるアミン基を保持するアルブミンナノ粒子の表面に、生体分子のポリペプチド鎖を共有結合することが可能となる。
【0093】
アルブミン分子のグルタミン及びリジンは、酵素トランスグルタミナーゼに対して反応性ではないことから、アルブミン分子のN末端から誘導される、複数のリジン及びグルタミン、並びにアミン基を保有するが、ナノ粒子のアルブミンは、トランスグルタミナーゼによって仲介されるトランスグルタミネーション反応を受けないことに留意することは重要である。一部の生体分子は、トランスグルタミナーゼ反応性グルタミン残基を含有することが知られている。かかる分子は、これらの用途で同様に使用することができる。
【0094】
式(I)のアルブミンナノ粒子及び式(IV)のリンカーの場合には、生体分子に含有されるコンセンサス配列は、上記で設定される式(VIII)の少なくとも1つのグルタミン(Q;GLN)を含有するペプチド配列である。
【0095】
式(II)のアルブミンナノ粒子の場合には、リジン(K;Lys)を含有するペプチド配列は以下の式(IX):
(AA)-K-(AA) 式(IX)
を有し、
式中、w及びpが、0~8、好ましくは1~5に含まれる整数であり、w及びpは決して、同時に0に等しくならないことを条件とし;
AAは、アラニン(A;Ala)、チロシン(Y;Tyr)、フェニルアラニン(F;Phe)、グリシン(G;Gly)、トリプトファン(W;Trp)及びセリン(S;Ser)から選択されるアミノ酸を示し;
Kはリジン(Lys)である。
【0096】
好ましくは、wは0に等しく、pは1~3に等しく;より好ましくは、wは0に等しく、pは3に等しい。
【0097】
ペプチド配列は好ましくは:
KAYA、KGYA、KSYA、KAFA、KGFA、KSFA、KAWA、KGWA、KSWA、KAYG、KGYG、KSYG、KAFG、KGFG、KSFG、KAWG、KGWG、KSWG、KAYS、KGYS、KSYS、KAFS、KGFS、KSFS、KAWS、KGWS、KSWSから選択される。
【0098】
一実施形態において、アルブミンナノ粒子、好ましくはNP-HSAは、1-ブロモ酢酸、1-クロロ酢酸及び6-マレイミドヘキサン酸から選択されるZ基;スペーサー-NH-(O-CH-CH-CO-(nは3~5の範囲である)又はグリシン;L-リジンアミノ酸、C末端アミド化L-リジンアミノ酸から選択されるX-NH基;を含むリンカーで誘導体化され、リンカーの末端X-NH基は、生体分子に含まれる、LQSP、TQGA、LLQGから選択されるコンセンサス配列におけるグルタミンに、アミド結合によって結合される。
【0099】
好ましくは、かかるナノ粒子に、5-FU、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ラルチトレキセド、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン及びその組み合わせから選択される少なくとも1種類の細胞障害性薬物がロードされる。
【0100】
式(I)のR1及びR2基は、抗体、Fab、scFv、ナノボディ(NB)及びその混合物から選択される生体分子を表す。
【0101】
R1及びR2は、同一、又は互いに異なっていてよい。
【0102】
抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、好ましくはトラスツズマブ又はパーツズマブ、HER2に対するモノクローナル抗体、乳癌の癌細胞によって選択的に発現される表面タンパク質;タンパク質HER2の異なるエピトープを認識するトラスツズマブ及びパーツズマブ;セツキシマブ、抗EGFR抗体;抗Cripto-1モノクローナル抗体、例えば、文献[24]に最近報告されている抗Cripto-1抗体1B4若しくは抗Cripto-1抗体10D1、又は癌細胞の表面に選択的に発現される抗原に対する他の抗体;から選択される。
【0103】
Fabは好ましくは、癌細胞表面に選択的に発現される癌抗原に対する抗体などの生物学的対象の受容体に結合するモノクローナル抗体から産生される組換えFab、例えば、トラスツズマブ(Selisら[25]に記載のように作成される)若しくはパーツズマブの組換えFab、又は抗Cripto-1抗体1B4及び10D1などの既知のモノクローナル抗体のポリペプチド配列を変異導入することによって得られる他のFabである。かかるFabは、重鎖のC末端のコンセンサス配列、例えばTQGA配列を得るために、Selisら[25]に記載のように組換えで作成され得て、アルブミンナノ粒子の表面に存在するリンカーに酵素的に接合され得る。
【0104】
ScFvは、トラスツズマブ、パーツズマブ、セツキシマブ、抗Cripto-1モノクローナル抗体、例えば、抗Cripto-1抗体1B4又は抗Cripto-1抗体10D1、癌細胞の表面に選択的に発現される癌抗原に対する抗体から選択される抗体の機能性断片である。
【0105】
ナノボディ(NB)は、3VGR19 NB[26]などのVEGFR2に対する、5F7GGC NB[27]などのHer2に対する、又はEGa1[27]などのEGFRに対するNBから選択される。
【0106】
式(I)に関して、生体分子にコンセンサス配列を導入する方法は、例えば[25]からの当技術分野で公知である。
【0107】
コンセンサス配列は、分子自体の活性領域から遠い位置で生体分子に導入される。
【0108】
分子自体の活性領域から遠い位置で生体分子に導入されるコンセンサス配列を用いる利点は、本発明のナノ粒子に存在する式(IV)のリンカーに生体分子を結合する能力にあり、その結果、それらはすべて、活性領域(例えば相補性決定領域(CDRS))が、ナノ粒子の外部に向くように位置付けられる。生体分子の活性領域の外向きは、標的細胞上に存在する、例えば癌細胞上に存在する受容体の認識及び受容体との相互作用を促進する。
【0109】
同様に、式(II)の場合において、生体分子上にリジンを含有するペプチド配列を導入する方法は当技術分野で公知である。
【0110】
ペプチド配列は、分子自体の活性領域から遠い位置で生体分子に導入される。
【0111】
分子自体の活性領域から遠い位置で生体分子に導入されるペプチド配列を用いる利点は、本発明のナノ粒子に存在する式(VII)のリンカーに生体分子を結合する能力にあり、その結果、それらはすべて、活性領域(例えば相補性決定領域(CDRS))が、ナノ粒子の外部に向いくように位置付けられる。生体分子の活性領域の外向きは、標的細胞上に存在する、例えば癌細胞上に存在する受容体の認識及び受容体との相互作用を促進する。
【0112】
本発明に記載のリンカーに生体分子を固定する方法を用いて、アルブミンナノ粒子mg当たり生体分子2~80μg、好ましくは5~50μgを固定することが可能である。
【0113】
例えば、生体分子が、分子量約50kDaを有するFabである場合には、ナノ粒子mg当たり生体分子を約200pmolを固定することが可能であり;分子量約25kDaを有するscFvである場合には、その密度は400pmol/mgナノ粒子となり;分子量約12.5kDaを有するNBの場合には、密度は、800pmol/mgナノ粒子となる。
【0114】
ナノ粒子の単位重量当たりの生体分子密度は、Fabに対して6~40%、好ましくは0.2~8%に含まれ、scFvsに対しては0.4~16%、NBに対して1~33%に含まれる。
【0115】
一実施形態において、アルブミンナノ粒子、好ましくはNP-HSAは、1-ブロモ酢酸、1-クロロ酢酸及び6-マレイミドヘキサン酸から選択されるZ基;スペーサー-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-(nは3~5の範囲である)又はグリシン;L-リジンアミノ酸及びC末端アミド化L-リジンアミノ酸から選択されるX-NH基;を含むリンカーで誘導体化され、末端基X-NHは、生体分子に含まれるLQSP、TQGA、LLQGから選択されるコンセンサス配列のグルタミンにアミド結合によって結合され、その生体分子は、抗体、Fab、scFv、ナノボディ(NB)及びその混合物から選択される。
【0116】
好ましくは、5-FU、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ラルチトレキセド、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン及びその組み合わせから選択される細胞障害性薬物が、ナノ粒子にロードされる。
【0117】
特に好ましい実施形態において、R1基及びR2基は互いに異なる。
【0118】
例えば、R1及びR2は、Fab1及びFab2と呼ばれ得る、2つの異なるタイプのFabであり、scFv1及びscFv2と呼ばれ得る、2つの異なるタイプのscFvであり、NB1及びNB2と呼ばれ得る、2つの異なるタイプのNBであり、Ab1及びAb2と呼ばれ得る、2つの異なるタイプの抗体、又は2つの異なるペプチドである。その代わりとして、R1及びR2は、生体分子の混成した組み合わせであり、例えばFab1及びscFv1、Fab1及びNB2、又はscFv1及びNB2、又はAb1及びNB1である。
【0119】
生体分子の組み合わせは、上記の生体分子から選択される。
【0120】
好ましくは、R1は、組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2は抗HER2 Fabであるか、又はR1はトラスツズマブであり、且つR2はセツキシマブであり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はリツキシマブであり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はイピリムマブであり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はアレムツズマブであり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はニボルマブであり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はペムブロリズマブであり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はパニツムマブであり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はイブリツモマブチウキセタン(Ibritumab tiuxetan)であり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はトシツモマブであり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はベバシズマブであり;R1はトラスツズマブであり、且つR2はオファツムマブであり;R1は、組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はセツキシマブであり;R1は、組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はリツキシマブであり;R1は、組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はイピリムマブであり;R1は、組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はアレムツズマブであり;R1は、組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はニボルマブであり;R1は、組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はペムブロリズマブであり;R1は、組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はパニツムマブであり;R1は組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はイブリツモマブチウキセタンであり;R1は組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はトシツモマブであり;R1は、組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はベバシズマブであり;R1は組換え抗Cripto-1 Fab 10D1であり、且つR2はオファツムマブである。
【0121】
少なくとも2種類の生体分子でのナノ粒子の修飾が、分子の等モル溶液を使用して行われる。
【0122】
例えば、Fab1及びFab2混合物の総量少なくとも10μgを、表面上に保持するナノ粒子を製造することができる。
【0123】
このようにして得たナノ粒子が、それらを過剰発現する癌細胞の表面で少なくとも2種類の異なる受容体を認識することが可能となり、その結果として、抗癌薬の送達特異性が高まることから、本発明のこの態様は特に関連性がある。
【0124】
一実施形態において、アルブミンナノ粒子、好ましくはNP-HSAは、1-ブロモ酢酸、1-クロロ酢酸及び6-マレイミドヘキサン酸から選択されるZ基;スペーサー-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-(nは3~5の範囲である)又はグリシン;L-リジンアミノ酸及びC末端アミド化L-リジンアミノ酸から選択されるX-NH基;を含むリンカーで誘導体化され、末端基X-NHは、生体分子に含まれるLQSP、TQGA、LLQGから選択されるコンセンサス配列のグルタミンにアミド結合によって結合される。生体分子は、式(I)におけるR1及びR2によって表され、R1及びR2は同一又は互いに異なる。
【0125】
好ましくは、5-FU、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ラルチトレキセド、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン及びその組み合わせから選択される細胞障害性薬物が、ナノ粒子にロードされる。
【0126】
好ましい実施形態において、ナノ粒子は、式(IV)又は式(VII)のリンカーで誘導体化され、好ましくは式(VIII)の少なくとも1つのグルタミンを含むコンセンサス配列によって、組換え抗HER2 Fab及び/又は組換え抗Cripto Fab 10D1に接合されたNP-HSAである。
【0127】
本発明の一実施形態において、細胞障害性薬物がロードされた、又はロードされていないアルブミンナノ粒子が、アルブミン分子のリジンの側鎖に結合する蛍光色素で誘導体化され得て、続いて本発明のリンカーで処理され、次いでトランスグルタミナーゼとの生体接合(bioconjugation)反応に供され、コンセンサス配列を介して生体分子が固定され得る。その目的に適した蛍光色素は、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)であり、アルブミン分子に対して攻撃的又は有害な化学試薬の非存在下にて、アルブミン分子のリジンの第1級アミン基と反応することができる。
【0128】
好ましくは、本発明による修飾アルブミンナノ粒子は、以下の式:
【0129】
【化14】
(その製造は実施例4に記載されている);
【0130】
【化15】
(その製造は実施例5に記載されている);
【0131】
【化16】
(その製造は実施例6に記載されている);
【0132】
【化17】
(その製造は実施例7に記載されている);
【0133】
【化18】
(その合成は実施例16に記載されている)
から選択される。
【0134】
更なる態様において、本発明は、本発明に従って修飾され、少なくとも1種類の細胞障害性薬物がロードされたアルブミンナノ粒子、好ましくはNP-HSAと、薬剤として許容される賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0135】
更なる態様において、本発明は、本発明に従って修飾され、細胞障害性薬物がロードされたアルブミンナノ粒子、或いは黒色腫、乳癌、転移性乳癌、神経膠腫、膠芽腫、腺癌、腸管の癌、膵臓癌、骨癌、腎臓癌、結腸癌、胃癌、慢性リンパ性白血病、非小細胞肺癌、進行及び/又は転移性腎臓癌、頭頚部癌、進行黒色腫、非ホジキンリンパ腫、転移性黒色腫、肺癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫及び加齢性黄斑変性症から好ましくは選択される癌病態の治療に使用される、それらを含有する医薬組成物に関する。
【0136】
好ましくは、アルブミンナノ粒子はNP-HSAであり、少なくとも2種類の異なるタイプの生体分子で修飾されている。すなわち、式(I)のR1及びR2は互いに異なる。
【0137】
本発明は、黒色腫、乳癌、転移性乳癌、神経膠腫、膠芽腫、腺癌、腸管の癌、膵臓癌、骨癌、腎臓癌、結腸癌、胃癌、慢性リンパ性白血病、非小細胞肺癌、進行及び/又は転移性腎臓癌、頭頚部癌、進行黒色腫、非ホジキンリンパ腫、転移性黒色腫、肺癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫及び加齢性黄斑変性症から好ましくは選択される癌病態を治療する方法であって、本発明に従って修飾され、細胞障害性薬物がロードされたナノ粒子又はそれらを含有する組成物を有効量で、その必要がある患者に投与することを含む方法にも関する。
【0138】
好ましくは、アルブミンナノ粒子はNP-HSAであり、少なくとも2種類の異なるタイプの生体分子で修飾されている。すなわち、式(I)のR1及びR2は互いに異なる。
【実施例
【0139】
実施例1
脱溶媒和法及びグルタルアルデヒドを用いた安定化法による、NP-HSA及びNP-HSA-5FUの製造。
【0140】
HSAナノ粒子の製造のために、脱溶媒和方法[29,30]を以下に記載のように用いた:
ヒトアルブミン100mg(HSA脂肪酸不含,Sigma,MO,USA)を脱イオン水2mLに可溶化し、0.1M NaOHを添加してpH8.6にした。常時攪拌下にて、99.8%エタノール(Sigma,MO,USA)8mLを溶液に一滴ずつ、流量1mL/分にて添加した。5-FUがロードされたナノ粒子の製造について、HSA100mg及び5FU4mg(Sigma Aldrich,MO,USA)を精製水2.2mLに可溶化し、pH8.6にした。エタノールでの脱溶媒和を進める前に2時間、インキュベーションで、且つ一定の攪拌下にて溶液を維持した。脱溶媒和プロセス後、常に一定の電磁攪拌下でのNP-HSAが、HO中で25%のグルタルアルデヒド、グレードII(MO,Sigma)38uLを添加することによって安定化され、24時間攪拌したまま放置した。次いで、エタノール及びグルタルアルデヒドを除去するために、遠心によるHOでの3回の洗浄サイクルでNP-HSAを精製した。最後に、それをPBSに再分散し、+4℃で保存し、Malvern Zetasizer Ultra動的光散乱(DLS)システム(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)を使用して、サイズ(直径nm)、多分散性(多分散性指数,PDI)及びゼータ電位(mVにて)によって特徴付けられた。サイズ測定及びPDIの決定のために、ナノ粒子をPBSに濃度0.1mg/mL NP-HSAまで希釈し、+25℃にて多角度散乱で、且つマイクロキュベット(UV-Cuvette,Brand(登録商標),Wertheim,Germany)を使用して分析した。表面ロードを決定するためのゼータ電位については、NP-HSAを超純水に、濃度0.1mg/mLNPまで希釈し、使い捨てのキャピラリーセルDTS1070(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)によって+25℃にて分析した。すべてのサイズ及びゼータ電位測定が、三重(triplicate)で行われ、平均±標準偏差として報告された。
【0141】
NP-HSAをDLSによって分析し、多分散性指数(PDI)0.04と共に平均直径が130nmであることが判明した。
【0142】
実施例2
脱溶媒和法及びジアジリンを用いた安定化法による、NP-HSAの製造。
【0143】
NP-HSAの製造のために、脱溶媒和法[29,30]を以下に記載のように用いた:
HSA脂肪酸不含アルブミン100mg(Sigma,MO,USA)を精製水2mLに可溶化し、0.1M NaOHを添加してpH8.6にした。常時攪拌下にて、99.8%エタノール(Sigma,MO,USA)8mLを溶液に一滴ずつ、流量1mL/分にて添加した。脱溶媒和プロセス後に、常に常時電磁攪拌下のナノ粒子を、光架橋剤:NHS-ジアジリン(SDA)(Sigma,MO,USA)の添加によって安定化した。特に、HSA/NHS-ジアジリンのモル比が1:5に達するように、NHS-ジアジリン1.68mgを無水DMSO 0.5mlに可溶化し、懸濁液に添加し、インキュベーションで3時間放置した。次いで、MWCO 6000Daのセルロース膜を使用して懸濁液を透析し、最後に、余分なNHS-ジアジリンを除去した後に、NP-HSAを光安定化するために、10分間、常時攪拌下にて紫外線(360nm)に懸濁液を曝露した。次いで、遠心によってHOでの3回洗浄サイクルでNP-HSAを精製し、最後にPBSに再分散し、+4℃で保存し、Malvern Zetasizer Ultra(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)を使用して、サイズ(nm)、PDI及びゼータ電位(mV)によって特徴付けた。サイズ測定及びPDIの決定のために、NP-HSAをPBSに濃度0.1mg/mL NPまで希釈し、+25℃にて多角度散乱で、且つマイクロキュベット(UV-Cuvette,Brand(登録商標),Wertheim,Germany)を使用して分析した。表面ロードを決定するためのゼータ電位については、NP-HSAを超純水に、濃度0.1mg/mL NPまで希釈し、使い捨てのキャピラリーセルDTS1070(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)によって+25℃にて分析した。
【0144】
NP-HSAをDLSによって分析し、PDI 0.04と共に平均直径が340nmであることが判明した。
【0145】
実施例3
高圧均質化によるNP-HSAの製造
【0146】
高圧均質化によるNP-HSAの製造のために、HSA脂肪酸不含アルブミン(Sigma,MO,USA)100mgを精製水に濃度30mg/mLに可溶化する[31]。このようにして得た溶液に、3%(v/v)クロロホルムを添加し、ULTRA-TURRAX(登録商標)T-25(IKA,Germany)によって、最初の均質化を5分間進める。次いで、高圧下にて、Emulsiflex EF-B15(Avestin Inc.,Ottawa,Canada)を使用し、圧力20000psi及び12に等しい均質化サイクル数を適用して、最初のエマルジョンを均質化する。このようにして得たコロイド状分散液を、+40℃にて30分間、回転蒸発器によって真空圧400mmHgにかけて、クロロホルムを除去した。次いで、Malvern Zetasizer Ultra(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)を使用して、サイズ(nm)、PDI及びゼータ電位(mV)によってNP-HSAが特徴付けられた。サイズ決定及びPDI決定のために、NP-HSAをPBSに濃度0.1mg/mL NPまで希釈し、+25℃にて多角度散乱で、且つマイクロキュベット(UV-Cuvette,Brand(登録商標),Wertheim,Germany)を使用して分析した。表面ロードを決定するためのゼータ電位については、NP-HSAを超純水に、濃度0.1mg/mL NPまで希釈し、使い捨てのキャピラリーセルDTS1070(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)によって+25℃にて分析した。
【0147】
NP-HSAをDLSによって分析し、PDI 0.04と共に平均直径が340nmであることが判明した。
【0148】
実施例4
リンカーマレイミド-グリシン-L-リジン-CONHを有するHSAシステイン34で誘導体化され、且つMTGを用いて組換え抗HER2 Fabに接合された、NP-HSAの製造。
【0149】
抗HER2 Fabで修飾されたNP-HSAの製造のために、MTGの作用に感受性のTQGA配列を有する[25]に記載のように製造された組換えFabを使用した。実施例1又は2として得られたNP-HSAの外部SH基はペプチドリンカーマレイミド-Gly-Lys-NHで修飾され、Lys-CONHの表記は、C末端アミド化リジンを示す。式(I)に報告される表記に関して、「Z」単位はマレイミド基であり、グリシンアミノ酸は「スペーサー」を表し、したがって、Lys-CONHは「X-NH」基を表す。誘導体化反応に、1:5のHSA/リンカーモル比を用いた。室温にて、及び常時攪拌下でインキュベーションして16時間後に、余分な試薬を除去するために、NP-HSA-Cys-Gly-Lysと名付けられた修飾NPをHO中で3回洗浄し、リン酸緩衝液に再懸濁した。NPに導入されたリジンにMTGによって接合できるようにC末端にTQGAテトラペプチドを含有する、[25]に記載のように製造された抗HER2 Fabと、NP-HSA-Cys-Gly-Lysとを反応させた。接合反応のために、MTG0.25U/mlの存在下にて、pH7.3のリン酸緩衝液、体積1mL中で、抗HER2 Fab 40μg/mLをNP-HSA-Cys-Gly-Lys1mg/mLと反応させた。NP-HSA-Cys-Gly-LysへのFab接合反応をRP-HPLCによって様々な時点(1~16時間)にてモニターし、上清を分析し、溶解状態の遊離Fabの濃度の減少を評価した。RP-HPLCにおける分析から、16時間後の、接合されたFabの量はNP-HSA-Cys-Gly-Lys10μg/mgであることが分かった。次いで、余分なMTG及びFabを除去するために、このようにして得たNP-HSAを、遠心によるHOでの3回洗浄サイクルで精製した。最後に、それらをPBSに再分散し、+4℃にて保管して、Malvern Zetasizer Ultra(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)を使用して、サイズ(nm)、PDI及びゼータ電位(mV)によって特徴付けた。C4 Vydac分析カラム,4.6×250mm,粒径5μmを備えたAgilent 1100 Series(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)装置をRP-HPLCにおける分析に使用した。抗HER2 Fabの定量化のために、以下の方法を用いた:移動相A:HO+0.1%TFA及び移動相B:ACN+0.1%TFA、25分で30%~45%Bの勾配、流量0.7mL/分。サイズ及びPDIを決定するため、このようにして得たNP-HSAをPBSに、NP-HSA0.1mg/mLの濃度まで希釈し、+25℃にて多角度散乱で、且つマイクロキュベット(UV-Cuvette,Brand(登録商標),Wertheim,Germany)を使用して分析した。表面ロードを決定するためのゼータ電位については、ナノ粒子を超純水に、NP-HSA0.1mg/mLの濃度まで希釈し、DTS1070キャピラリーセル(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)によって+25℃にて分析した。すべてのサイズ及びゼータ電位の決定が、三重で行われ、平均±標準偏差として示された。
【0150】
NP-HSA及びFabに接合されたNP-HSAをDLSによって分析し、平均直径が、未修飾NP-HSAの130nm(PDI0.04)から、Fabに接合されたNP-HSAの145nm(PDI0.09)にわたることが判明した。
【0151】
実施例5
リンカーマレイミド-Gly-Lys-NHを有するHSAシステイン34で誘導体化され、且つMTGを用いて組換え抗Cripto Fab 10D1に接合された、NP-HSAの製造。
【0152】
MTGを用いて、抗Cripto Fabと接合されたNP-HSAを製造するために、実施例1で得たNPのSH基をペプチドリンカーMal-Gly-Lys-NHで修飾した。1:5のHSA/リンカーモル比を機能化反応に用いた。室温にて、及び常時攪拌下でインキュベーションして16時間後に、余分な試薬を除去するために、修飾NP-HSAをHO中で3回洗浄し、リン酸緩衝液に再懸濁した。NP-HSAに導入されたリジンにMTGによって接合することができるようにC末端にTQGAテトラペプチドを含有する抗Cripto-1 Fabと、NP-HSA-Cys-Gly-Lysとを反応させた。抗Cripto-1抗体10D1のプロパティ(roprietary)配列を用いて、[25]に記載のように抗Cripto Fab[24]を製造した。接合反応のために、MTG0.25U/mlの存在下にて、pH7.3リン酸緩衝液、体積1mL中で、抗Cripto-1 Fab40μg/mLをHSA-NP1mg/mLと反応させた。NP-HSA-Cys-Gly-LysへのFab接合反応をRP-HPLCによって様々な時点(1~16時間)にてモニターし、上清を分析し、溶解状態の遊離Fabの濃度の減少を評価した。RP-HPLCにおける分析から、16時間後の、接合されたFabの量はNP-HSA10μg/mgであることが分かった。次いで、余分なMTG及びFabを除去するために、遠心によるHOでの3回洗浄サイクルでナノ粒子を精製した。最後に、それらをPBSに再分散し、+4℃にて保管して、Malvern Zetasizer Ultra(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)を使用して、サイズ(nm)、PDI及びゼータ電位(mV)によって特徴付けた。C4 Vydac分析カラム、4.6×250mm、粒径5μmを備えたAgilent 1100 Series(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)装置をRP-HPLCにおける分析に使用した。抗HER2 Fabの定量化のために、以下の方法を用いた:移動相A:HO+0.1%TFA及び移動相B:ACN+0.1%TFA、25分で30%~45%Bの勾配、流量0.7mL/分。サイズの測定及びPDIの決定のため、ナノ粒子をPBSに、NP0.1mg/mLの濃度まで希釈し、+25℃にて多角度散乱で、且つマイクロキュベット(UV-Cuvette,Brand(登録商標),Wertheim,Germany)を使用して分析した。表面ロードを決定するためのゼータ電位測定のために、ナノ粒子を超純水に、NP-HSA0.1mg/mLの濃度まで希釈し、DTS1070キャピラリーセル(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)によって+25℃にて分析した。すべてのサイズ及びゼータ電位の測定が、三重で行われ、平均±標準偏差として示された。
【0153】
非誘導体化NP-HSA及びFabに接合されたNP-HSAを、DLSによって分析し、平均直径が、未修飾NPの130nm(PDI0.04)から、Fabに接合されたNP-HSAの145nm(PDI0.09)にわたることが判明した。
【0154】
実施例6
リンカーBr-CH-CO-O2Oc-K-NHと、HSAシステイン34とで誘導体化され、且つMTGを用いて組換え抗HER2 Fabに接合された、NP-HSAの製造。
【0155】
MTGを用いて、抗HER2 Fabと接合されたNP-HSAを製造するために、実施例1で得たNP-HSAのSH基をペプチドリンカーBr-CH-CO-O2Oc-K-NHで修飾した。式(I)に報告される表記に関して、「Z」単位は、ブロモ酢酸基であり、O2Ocの表記は、非天然アミノ酸8-アミノ-3,6-ジオキソ-オクタン酸を意味し、「スペーサー」を表し、したがってLys-NHは「X-NH」基を表す。
【0156】
1:5のHSA/リンカーモル比を機能化反応に用いた。室温にて、及び常時攪拌下でインキュベーションして16時間後に、余分な試薬を除去するために、NP-HSA-Cys-O2Oc-Lysとして定義される修飾NP-HSAをHO中で3回洗浄し、リン酸緩衝液に再懸濁した。NP-HSAに導入されたリジンにMTGによって接合できるようにC末端にTQGAテトラペプチドを含有する抗HER2 Fabと、NPs-Cys-O2Oc-Lysとを反応させた[32-35]。接合反応のために、MTG0.25Uの存在下にて、最終体積1mLのpH7.3リン酸緩衝液中で、抗HER2 Fab40μg/mLをHSA NP-HSA-Cys-O2Oc-Lys1mgと反応させた。NPs-Cys-O2Oc-LysへのFab接合反応を、RP-HPLCによって様々な時点(1~16時間)にてモニターし、上清を分析し、溶解状態の遊離Fabの濃度の減少を評価した。RP-HPLCにおける分析から、16時間後の、接合されたFabの量はNP-HSA10μg/mgであることが分かった。次いで、余分なMTG及びFabを除去するために、遠心によるHOでの3回洗浄サイクルでナノ粒子を精製した。最後に、それらをPBSに再分散し、+4℃にて保管して、Malvern Zetasizer Ultra(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)を使用して、サイズ(nm)、多分散性(PDI)及びゼータ電位(mV)によって特徴付けた。C4 Vydac分析カラム、4.6×250mm、粒径5μmを備えたAgilent 1100 Series(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)装置をRP-HPLCにおける分析に使用した。抗HER2 Fabの定量化のために、以下の方法を用いた:移動相A:HO+0.1%TFA及び移動相B:ACN+0.1%TFA、25分で30%~45%Bの勾配、流量0.7mL/分。サイズの測定及びPDIの決定のため、NP-HSAをPBSに、NP0.1mg/mLの濃度まで希釈し、+25℃にて多角度散乱で、且つマイクロキュベット(UV-Cuvette,Brand(登録商標),Wertheim,Germany)を使用して分析した。表面ロードを決定するためのゼータ電位測定のために、ナノ粒子を超純水に、NP0.1mg/mLの濃度まで希釈し、DTS1070キャピラリーセル(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)によって+25℃にて分析した。すべてのサイズ及びゼータ電位の測定が三重で行われ、平均±標準偏差として示された。
【0157】
非誘導体化NP-HSA及びFabに接合されたNP-HSAを、DLSによって分析し、平均直径が、未修飾NPの130nm(PDI0.04)から、Fabに接合されたNP-HSAの145nm(PDI0.09)にわたることが判明した。
【0158】
実施例7
リンカーBr-CH-CO-O2Oc-K-NHと、HSAシステイン34とで誘導体化され、且つMTGを用いて組換え抗Cripto-1 Fab 10D1及び抗HER2 Fabに接合された、NP-HSAの製造。
【0159】
MTGを用いて、2つの抗HER2及び抗Cripto-1 Fabと接合されたHSAナノ粒子を製造するために、実施例1で得たNP-HSAのSH基を最初に、先の実施例に記載のペプチドリンカーBr-CH-CO-O2Oc-K-NHで修飾した。1:5のHSA/リンカーモル比を機能化反応に用いた。室温にて、及び常時攪拌下でインキュベーションして16時間後に、余分な試薬を除去するために、修飾NP-HSA(NP-HSA-Cys-O2Oc-Lys)をHO中で3回洗浄し、リン酸緩衝液に再懸濁した。どちらも、NP-HSAに導入されたリジンにMTGによって接合できるようにC末端にTQGAタグを含有する、2つの異なるFab:抗HER2及び抗Cripto-1の1:1混合物と、NP-HSA-Cys-O2Oc-Lysとを同時に反応させた。接合反応のために、MTG0.25Uの存在下にて、最終体積5mLのpH7.3リン酸緩衝液中で、抗HER2 Fab20μg及び抗Cripto Fab20ugをHSA NPs-O2Oc-Lys1mgと反応させた。NP-HSA-Cys-O2Oc-LysへのFab接合反応を、RP-HPLCによって様々な時点(1~16時間)にてモニターし、上清を分析し、溶解状態の2種類のFabの濃度の減少を評価した。RP-HPLCにおける分析から、16時間後の、2つのFab接合体の量が、NP1mgに対して、抗Cripto-1 Fabについては5μg、トラスツズマブFabについては2μgであることが判明した。次いで、不活性なMTG及びFabを除去するために、遠心によるHOでの3回洗浄サイクルでナノ粒子を精製した。最後に、それらをPBSに再分散し、+4℃にて保管して、Malvern Zetasizer Ultra(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)を使用して、サイズ(nm)、多分散性(PDI)及びゼータ電位(mV)によって特徴付けた。C4 Vydac分析カラム、4.6×250mm、粒径5μmを備えたAgilent 1100 Series(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)装置をRP-HPLCにおける分析に使用した。2種類のFabの定量化のために、以下の方法を用いた:移動相A:HO+0.1%TFA及び移動相B:ACN+0.1%TFA、25分で30%~45%Bの勾配、流量0.7mL/分。
【0160】
サイズの測定及びPDIの決定のため、ナノ粒子をPBSに、NP0.1mg/mLの濃度まで希釈し、+25℃にて多角度散乱で、且つマイクロキュベット(UV-Cuvette,Brand(登録商標),Wertheim,Germany)を使用して分析した。表面ロードを決定するためのゼータ電位測定のために、ナノ粒子を超純水に、NP0.1mg/mLの濃度まで希釈し、DTS1070キャピラリーセル(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)によって+25℃にて分析した。すべてのサイズ及びゼータ電位の測定が三重で行われ、平均±標準偏差として示された。
【0161】
非誘導体化NP-HSA及びFabに接合されたNP-HSAを、DLSによって分析し、平均直径が、未修飾NPの130nm(PDI0.04)から、Fabに接合されたNP-HSAの145nm(PDI0.09)にわたることが判明した。
【0162】
実施例8
リンカーBr-CH-CO-O2Oc-K-NHの化学合成
【0163】
リンカーの構造はBr-CH-CO-O2Oc-L-Lys-CONHであり、Br-CH-CO-の表記は、N末端のブロモ酢酸の残基(「Z」単位)を意味し、O2Ocの表記は、非天然アミノ酸8-アミノ-3,6-ジオキソ-オクタン酸を意味し、L-Lys-CONHの表記は、天然C末端アミド化L-リジンアミノ酸を意味する。Fmoc法を用いて、MBHA Rinkアミド樹脂(IRIS BIOTECH,0.74mmol/g)を使用した固相合成によって、ペプチドが調製された。合成は、590μmolのスケールで実施した。樹脂をジメチルホルムアミド(DMF,Romil,DELTEK)中で3回(5mL×3)洗浄し、DMF中の20%(v/v)ピペリジン(ROMIL,DELTEK)で10分間洗浄して、樹脂からFmoc基を除去した。次に、L-リジンアミノ酸が、DMF中に濃度0.5Mで溶解されたFmoc-L-Lys(Boc)-OH誘導体(IRIS BIOTECH)の形で結合された。5倍の過剰量で使用されたアミノ酸を、文献[36]に記載のようにHATU/DIEA、過剰な1:2(mol/mol)(IRIS BIOTECH)で予め活性化され、室温にて樹脂と1時間接触させた状態で置いた。樹脂をDMFで3回洗浄し、次いでDMF中の40%(v/v)ピペリジン5mLで20分間処理した。樹脂を排液し、DMFで3回洗浄した。次いで、DMF中に濃度0.5Mで溶解された導体Fmoc-O2Oc-OH(8-(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-アミノ)-3,6-ジオキサオクタン酸,IRIS BIOTECH)で樹脂を処理し、文献[36]に記載のように過剰量のHBTU/DIEA1:2(mol/mol)で室温にて1時間、予め活性化させた。最後に、樹脂をDMFで3回洗浄し、DMF中の40%(v/v)ピペリジン5mLで20分間処理した。樹脂を排液し、DMFで3回洗浄した。最後に、DIEA(1:1(mol/mol))が添加されたDCM(ジクロロメタン,ROMIL,DELTEK)中で濃度1Mにてブロモ酢酸25当量で室温にて2時間処理した。最後に、樹脂をDCM、DMF、再びDCMで洗浄し、次いで真空下にて乾燥させた。ペプチドの脱離のために、TFA(トリフルオロ酢酸)/Tis(トリイソプロピルシラン)/HO90/5/5(v/v/v)溶液5mLで樹脂を室温にて3時間処理した。樹脂を濾過除去し、ペプチドを冷たいエチルエーテルで沈殿させ、遠心によって単離し、HO及びACN(アセトニトリル,ROMIL,DELTEK)によって凍結乾燥させた。分取RP-HPLCによって粗製材料を精製し、最後にHPLC 1290 Infinityシステムに連結されたLC-MS ESI-TOFシステム(6230 ESI-TOF質量分析計)上でXbridge C18カラム(50×2.1mm ID,5μm)を用いたLC-MSによって特徴付けた。流量0.2mL/分にて10分で1%溶媒B(ACN,0.05%TFA)~80%Bの勾配。溶媒AはHO、0.05%TFAであった。純粋な生成物約180mg(95%,HPLC)、収率74%が得られた。決定された実験質量は410.13原子質量単位(amu)であり、実験質量410.12amuとほぼ完全に一致した。
【0164】
実施例9
リンカーMal-Gly-Lys-CONHの合成
【0165】
リンカーの構造はMal-Gly-Lys-CONHであり、Malの表記は、N末端の6-マレイミドヘキサン酸(「Z」単位)を意味し、Glyの表記は、天然グリシンアミノ酸を意味し、L-Lys-CONHの表記は、天然C末端アミド化L-リジンアミノ酸を意味する。Fmoc法を用いてMBHA Rinkアミド樹脂(0.74mmol/g)を使用した固相合成によって、ペプチドを製造した。590μmolのスケールで合成を行った。樹脂はDMF中で3回(5mL×3)洗浄し、DMF中の20%(v/v)ピペリジンで10分間処理して、樹脂からFmoc基を除去した。次に、DMF中に0.5Mの濃度で溶解されたFmoc-L-Lys(Boc)-OH誘導体の形でL-リジンアミノ酸が結合された。5倍の過剰量で使用されたアミノ酸を、文献[36]に記載のようにHATU/DIEA、過剰な1:2(mol/mol)(IRIS BIOTECH)で予め活性化し、室温にて樹脂と1時間接触させた状態で置いた。樹脂をDMFで3回洗浄し、次いでDMF中の40%(v/v)ピペリジン5mLで20分間処理した。樹脂を排液し、DMFで3回洗浄した。次いで、DMF中に濃度0.5Mで溶解された誘導体Fmoc-Gly-OH(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-グリシン,IRIS BIOTECH)で樹脂を処理し、文献[36]に記載のように1:2(mol/mol)の過剰量のHBTU/DIEAで室温にて1時間、予め活性化させた。樹脂を最後にDMFで3回洗浄し、DMF中の40%(v/v)ピペリジン5mLで20分間処理した。樹脂を排液し、DMFで3回洗浄した。樹脂を最後に、DIEAが添加されたDMF(1:1(mol/mol))中で濃度1Mの6-マレイミドヘキサン酸(Sigma-Aldrichコード:755842)25当量で室温にて2時間処理した。最後に、樹脂をDCM、DMF及び再びDCMで洗浄し、次いで真空下にて乾燥させた。ペプチドの脱離のために、TFA(トリフルオロ酢酸)/Tis(トリイソプロピルシラン)/HO 90/5/5(v/v/v)溶液5mLで樹脂を室温にて3時間処理した。樹脂を濾過除去し、ペプチドを冷たいエチルエーテルで沈殿させ、遠心によって単離し、HO及びACNによって凍結乾燥させた。分取RP-HPLCによって粗製材料を精製し、最後にHPLC 1290 Infinityシステムに連結されたLC-MS ESI-TOFシステム(6230 ESI-TOF質量分析計)上でXbridge C18カラム(50×2.1mm ID,5μm)を用いたLC-MSによって特徴付けた。流量0.2mL/分にて10分で1%溶媒B(ACN,0.05%TFA)~80%Bの勾配。溶媒AはHO、0.05%TFAであった。
【0166】
純粋な生成物約163mg(95%,HPLC)、収率約70%が得られた。決定された実験質量は394.64amuであり、実験質量394.61amuとほぼ完全に一致した。
【0167】
実施例10
トラスツズマブFab及びトラスツズマブで修飾されたNP-HSA間の組換えHer2結合の競合的結合。
【0168】
受容体に結合するアンタゴニストの量が、同じリガンド、又はレポーターでマークされたその代替物(surrogate)を用いた置き換え試験によって間接的に検出され得る。置き換え試験は、実施例4及び実施例6に記載のように調製された、トラスツズマブFabで機能化されたNP-HSA、マルチウェルプレートの表面に固定化された組換え受容体Her2-Fc(組換えヒトErbB2 Fc Chimera/R&D 1129-ER-050)、及び抗体ビオチン標識トラスツズマブを使用して実施された。96ウェルのマルチウェルプレートの表面に固定化された受容体への、ビオチン標識トラスツズマブの結合を置き換える、トラスツズマブFabで機能化されたNP-HSAの能力を測定することによって実験を行った。並行実験において、NP-HSAに結合していないFabを用いて、実験を行った。リン酸緩衝液中で濃度0.5μg/mLの溶液のインキュベーション(100μL/ウェル)によって、96ウェルのポリスチレンマルチウェルプレートにHer2-Fc受容体を、4℃で一晩固定化した。リン酸緩衝液中のBSAの1%溶液(ウシ血清アルブミン/Merck A7906,300μL/mL)と共にインキュベーション(37℃で2時間のインキュベーション)することによって、ブロッキングを行った。次いで、0.39nM(NP-HSA-Fab約2μg/mL)~100nM(NP-HSA-Fab0.5mg/mL)の間に含まれるFabの増加モル濃度でNP-HSA-Fab(NP-HSA10μg/mg)を含有する、ビオチン標識トラスツズマブ溶液(CNR Institute of Biostructures and Bioimagingによって提供された)を、固定濃度100pMにて様々なウェルに添加した。実験は四重(1つの濃度につき4ウェル)で実施した。固定化受容体に結合されたビオチン標識トラスツズマブの検出は、濃度50ng/mL(100μL/ウェル)のストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(Merck S5512)の溶液を用いて行い、それに続いて、基質TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン/Merck T0440)とインキュベーションした。反応を1N HSOでブロックし、マルチプレートリーダー(680モデル,BIO-RAD)を使用して450nmにて吸光度を読み取った。450nmで得た吸光度値は、ブランク値(Her2-Fcで固定化されていないウェルの吸光度)から引き算され、平均され、ビオチン標識トラスツズマブのみのコントロールと比較してパーセンテージで表された。データをGraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用してS字状曲線に適合させて、阻害IC50を決定した。実験を3回繰り返し行い、平均した。IC50データを以下の表2に報告する。阻害曲線を図1に示す。このデータから、Fabで機能化されたHP-NSAが、単独のFab受容体に結合する同じ能力を有することが実証される。
【0169】
【表2】
【0170】
実施例11
トラスツズマブFabに接合されたNP-HSA及び非接合組換えFabの、Her2-ポジティブBT474細胞への結合。
【0171】
Her2-ポジティブBT474細胞、ヒト乳癌細胞系を、96ウェルプレート(Falcon(登録商標)96 well Clear TC-Treated Microplates,Thermo Scientific)において細胞密度10,000細胞/ウェルにてプレーティングした。+37℃で5%COと共に一晩インキュベートした後、4%ホルムアルデヒドで細胞を室温で15分間固定し、次いでPBS(1×)で2回洗浄し、最後に3%過酸化水素で室温にて10分間処理した。PBS(1×)で2回洗浄した後、3%BSAを含有するPBS-A(Sigma Aldrich,A3294)で細胞を室温にて1時間処理した。0.12~1.0μMに含まれる濃度範囲で、NP-HSA及びトラスツズマブFabを用いて、実施例4及び実施例6に記載のように調製された、トラスツズマブFabと接合されたNP-HSAで、ウェルを二重で処理し、PBS-Aを使用して最終体積100μL/ウェルにした。細胞を試料と共に室温にて2時間及び24時間インキュベートし、PBS(1×)で3回洗浄後に、ヒトFabを認識することができるHRP結合マウスIgG(Sigma-Aldrich)で処理した。最後に、1:1000の希釈で室温にて1時間、ウェルをGAM-HRP(Sigma-Aldrich)で処理した。細胞をPBSで3回洗浄し、暗所で5分間OPD(Sigma Aldrich P9187)(100μL/ウェル)で処理した。2.5M HSO(50μL/ウェル)を使用して、反応をブロックした。BioTekマイクロプレートリーダー(Winooski,VT,USA)を使用して、490nmにて試料の吸光度を読み取った。その値を平均し、ブランクを引き(非機能化NP-HSAで処理したウェルでの値)、GraphPad prism 6.0を使用してプロットし、結合定数を決定した。結合曲線を図2ABに示す。このデータから、同じ濃度のFabの場合に、トラスツズマブFabで機能化されたNP-HSAは、2時間後及び24時間後の両方で単独のFabよりも高い効率で細胞上の受容体に結合できることが実証される。
【0172】
実施例12
トラスツズマブFabに接合されたNP-HSA及び非接合組換えFabの、Her2-ポジティブBT474細胞及びHer2-ネガティブMDA-MB-231細胞への結合。
【0173】
Her2-ポジティブBT474細胞を、96ウェルプレート(Falcon(登録商標)96 well Clear TC-Treated Microplates,Thermo Scientific)において細胞密度10,000細胞/ウェルにてプレーティングした。Her2-ネガティブMDA-MB-231細胞、ヒト乳癌細胞系を、同一の第2プレートにおいて細胞密度5,000細胞/ウェルにてプレーティングした。+37℃で5%COと共に一晩インキュベートした後、4%ホルムアルデヒドで細胞を室温で15分間固定し、次いでPBS(1×)で2回洗浄し、最後に3%過酸化水素で室温にて10分間処理した。PBS(1×)で2回洗浄した後、3%BSAを含有するPBS、PBS-A(Sigma Aldrich,A3294)で細胞を室温にて1時間処理した。0.03μM~50nMに含まれる濃度範囲で、実施例4及び実施例6に記載のように調製された、トラスツズマブFab接合NP-HSAでウェルを二重で処理した。BT474細胞上での受容体の発現及びMDA-MB-231細胞上でのその発現の欠如を検証するために、最終体積100μL/ウェルのPBS-Aに溶解された、濃度500、200及び100μg/mLでトラスツズマブFab及び濃度10、1.0及び0.1μg/mLで全トラスツズマブ抗体を用いて、同じ濃度で、非機能化NP-HSAと並行して実験を行った。細胞を試料と共に室温にて2時間及び24時間インキュベートし、PBS(1×)中で3回洗浄後、ヒトFabを認識することができるHRP(Sigma-Aldrich)と接合されたマウスIgGで処理した。最後に、1:1000の希釈で室温にて1時間、ウェルをGAM-HRP(Sigma-Aldrich)で処理した。細胞をPBSで3回洗浄し、暗所で5分間OPD(Sigma Aldrich P9187)(100μL/ウェル)で処理した。2.5M HSO(50μL/ウェル)を使用して、反応をブロックした。BioTekマイクロプレートリーダー(Winooski,VT,USA)を使用して、490nmにて試料の吸光度を読み取った。その値を平均し、ブランクを引き(非機能化NP-HSAで処理したウェルでの値)、Graph Pad prism 6.0を使用してプロットし、結合定数を決定した。結合曲線を図3ABCに示す。図3Aのデータから、トラスツズマブFabで機能化されたNP-HSAは、非受容体発現性MDA-MB-231系細胞にごくわずかしか結合しないが、その表面にHer2受容体を発現するBT474細胞に結合することができることが実証される。非常に高い濃度の組換えFab及び全抗体を用いて得られた図3B及び3Cのデータから、MDA-MB-231コントロール細胞上でのHer2受容体発現の欠如が実証されている。非機能化NP-HSAは、検出可能なシグナルを提供しなかった。
【0174】
実施例13
組換え抗Cripto Fab 10D1に接合されたNP-HSA及び非接合組換えFabのNTERA細胞への結合。
【0175】
Cripto-1-ポジティブ細胞、NTERAを、96ウェルプレート(Falcon(登録商標)96 well Clear TC-Treated Microplates,Thermo Scientific)において細胞密度5000細胞/ウェルにてプレーティングした。+37℃で5%COと共に一晩インキュベートした後、4%ホルムアルデヒドで細胞を室温で15分間固定し、次いでPBS(1×)で2回洗浄し、最後に3%過酸化水素で室温にて10分間処理した。PBS(1×)で2回洗浄した後、3%PBS-Aで細胞を室温にて1時間処理した。実施例5に記載のように調製された、抗Cripto Fab 10D1で機能化されたNP-HSA、及び単独のFab及び空のNP-HSAを用いて、0.000117μM~0.5μMに含まれる濃度範囲で二組のウェルを処理し、3%PBS-BSA溶液で最終体積100μL/ウェルにした。細胞を試料と共に室温にて2時間及び24時間インキュベートし、PBS(1×)中で3回洗浄後、Fabを認識することができるHRP(Sigma-Aldrich)と接合された抗ヒトマウスIgGで処理した。最後に、1:1000の希釈で室温にて1時間、各ウェルにGAM-HRP(Sigma-Aldrich)を添加した。細胞をPBSで3回洗浄し、暗所にて5分間OPD(100μL/ウェル)で処理した。続いて、2.5M HSOを使用して、反応をブロックした。BioTekマイクロプレートリーダー(Winooski,VT,USA)を使用して、490nmにて試料の吸光度を読み取った。その結合曲線を図4に示し、単独のFabが同じ条件下にて結合することができないのに対して、Fab 10D1で機能化されたNP-HSAは、用量反応及び飽和的様式で2時間後及び24時間後の両方でNTERA細胞に結合することができることが実証されている。非機能化NP-HSAは、検出可能なシグナルを提供しなかった。
【0176】
実施例14
組換え抗Cripto Fab 10D1及び組換えトラスツズマブFabで機能化された二重特異性NP-HSAの、Her2-ポジティブBT474細胞及びHer2-ネガティブMDA-MB-231細胞への結合。
【0177】
Cripto-1及びHer2-ポジティブ細胞、BT474を、96ウェルプレート(Falcon(登録商標)96 well Clear TC-Treated Microplates,Thermo Scientific)において細胞密度10,000細胞/ウェルにてプレーティングした。代わりに、Cripto-1-ポジティブ及びHer2-ネガティブMDA-MB-231細胞を、96ウェルプレートにおいて細胞密度5,000細胞/ウェルにてプレーティングした。+37℃で5%COと共に一晩インキュベートした後、4%ホルムアルデヒドで細胞を室温で15分間固定し、次いでPBS(1×)で2回洗浄し、最後に3%過酸化水素で室温にて10分間処理した。PBS(1×)で2回洗浄した後、3%PBS-Aで細胞を室温にて1時間処理した。実施例7に記載のように調製され、Fab 10D1密度5.0μg/mg NP-HSA及びトラスツズマブFab密度2.0μg/mg NP-HSAを有する、2種類の組換え抗Cripto-1 Fab 10D1及びトラスツズマブFabで機能化されたNP-HSAで二組のウェルを処理した。0.097nM(0.343μg/mL NP-HSA)~50nM(175μg/mL NP-HSA)の総Fabの当量濃度として表される、増加濃度で機能化NP-HSAが使用された。並行して、全1B4抗体(抗Cripto-1,[30]及びトラスツズマブで濃度0.1及び1.0μg/mLにて、同じ細胞を処理した。すべての試料を、3%PBS-BSAを用いて最終体積100μL/ウェルで使用した。細胞を試料と共に室温にて2時間インキュベートし、PBS(1×)中で3回洗浄後、Fabを認識することができるHRP(Sigma-Aldrich)と接合された抗ヒトマウスIgGで処理した。最後に、1:1000の希釈で室温にて1時間、各ウェルにGAM-HRP(Sigma-Aldrich)を添加した。細胞をPBSで3回洗浄し、次いで、暗所にて5分間OPD(100μL/ウェル)で処理した。続いて、2.5M HSOを使用して、反応をブロックした。BioTekマイクロプレートリーダー(Winooski,VT,USA)を使用して、490nmにて試料の吸光度を読み取った。図5ABは、濃度0.1μg/mL及び1.0μg/mLでの2つの細胞系への全B4抗体抗Cripto-1及びトラスツズマブの結合データを示し、BT474細胞が、Her2受容体を発現し、それより少ない程度でCripto-1を発現すること、及びMDA-MB-231細胞が、Cripto-1を小さな程度でのみ発現することが実証されている。図5Cは、用量反応結合曲線を示し、抗Cripto-1 Fabが単独で存在することによって、2つの組換えFabで機能化されたNP-HSAが、Her2-ネガティブBT474及びMDA-MB-231細胞のどちらにも結合することができることを示す。非機能化NP-HSAは、検出可能なシグナルを提供しなかった。
【0178】
実施例15
2種類のNP-HSAの混合物で得られた結合と比較した、組換え抗Cripto Fab 10D1及び組換えトラスツズマブFabで機能化された二重特異性NP-HSAの、Her2-ポジティブBT474細胞及びHer2-ネガティブMDA-MB-231細胞への結合。
【0179】
Cripto-1及びHer2ポジティブ細胞、BT474を、96ウェルプレート(Falcon(登録商標)96 well Clear TC-Treated Microplates,Thermo Scientific)において細胞密度10,000細胞/ウェルにてプレーティングした。Cripto-1ポジティブ及びHer2ネガティブMDA-MB-231細胞を、96ウェルプレートにおいて細胞密度5,000細胞/ウェルにてプレーティングした。+37℃で5%COと共に一晩インキュベートした後、4%ホルムアルデヒドで細胞を室温で15分間固定し、次いでPBS(1×)で2回洗浄し、最後に3%過酸化水素で室温にて10分間処理した。PBS(1×)で2回洗浄した後、3%PBS-Aで細胞を室温にて1時間処理した。密度3.0μg/mg NP-HSA(10D1)及び2μg/mg NP-HSA(トラスツズマブ)にて実施例7に記載のように調製されたNP-HSA機能化二重特異性NP-HSAで、密度10.0μg/mg NP-HSAにて、24pM~12nMの増加濃度で、実施例5に記載のようにFab 10D1のみで機能化されたNP-HSAで、24pM~12nMのFabの増加濃度にて、実施例4及び実施例6に記載のように調製された、密度10.0μg/mg NP-HSAでトラスツズマブFabのみで機能化されたNP-HSAで、濃度1.0μg/mL及び0.1μg/mLの両方で使用された2種類の抗Cripto-1 mAbトラスツズマブ及び1B4[30]で、二組のウェルを、総Fabの24pM~12nMの増加濃度にて処理した。すべての試料を、3%PBS-BSAを用いて最終体積100μL/ウェルで使用した。細胞を試料と共に室温にて2時間インキュベートし、PBS(1×)中で3回洗浄後、Fabを認識することができるHRP(Sigma-Aldrich)と接合された抗ヒトマウスIgGで処理した。最後に、1:1000の希釈で室温にて1時間、各ウェルにGAM-HRP(Sigma-Aldrich)を添加した。細胞をPBSで3回洗浄し、次いで、暗所にて5分間OPD(100μL/ウェル)で処理した。続いて、2.5M HSOを使用して、反応をブロックした。BioTekマイクロプレートリーダー(Winooski,VT,USA)を使用して、490nmにて試料の吸光度を読み取った。用量反応結合曲線を図6ABCDに示し、2つの組換えFabで機能化された二重特異性NP-HSAが、2つの異なるFabで機能化された2種類のNP-HSAの組み合わせと同じ効率で、BT474細胞及びMDA-MB-231細胞の両方に結合することができることが実証されている。非機能化NP-HSAは、検出可能なシグナルを提供しなかった。
【0180】
実施例16
フルオレセインで、及び抗体抗Cripto-1 Fab10D1で機能化されたNP-HSAの製造、並びにサイトフローメトリー(cytofluorimetry)によるCripto-1を発現するNTERA2細胞結合性の実験。
【0181】
NP-HSAは、実施例1に記載のように製造された。NP-HSA5.0mgを0.1Mホウ酸緩衝液(pH9.0)1.0mLに懸濁した。HSA:FITC比1:5(mol/mol)に達するように、フルオレセインイソチオシアネート(FITC,Sigma AldrichコードF4274)0.14mgを懸濁液に添加し、無水DMSO50μLに可溶化した。懸濁液を37℃で3時間攪拌し続けた。
【0182】
FITCへのNP-HSA接合反応は、RP-HPLCによって様々な時点でモニター(1~3時間)され、上清を分析し、溶解状態の遊離FITCの濃度の減少を評価した。RP-HPLCにおける分析から、反応から3時間後のFITC接合体の量は8μg/mg NPであることが分かった。次いで、余分なFITCを除去するために、遠心によるHOでの3回洗浄サイクルでナノ粒子を精製した。最後に、それらをPBSに再分散し、+4℃にて保管した。そのナノ粒子はFITC-NP-HSAと定義された。抗Cripto-1 Fab 10D1とのMTGによる接合に、FITC-NP-HSAのアリコート(4.0mg)を使用し、2つのFabに接合されたFITC-NP-HSA(FITC-NP-HSA-Fab)を得た。HSA/リンカー比1:5(mol/mol)を用いて、FITC-NP-HSA4.0mgをペプチドリンカーBr-CH-CO-O2Oc-K-NH(実施例6及び実施例8参照)で処理した。室温にて、及び常時攪拌下でインキュベーションして16時間後に、余分な試薬を除去するために、修飾NP(FITC-NP-HSA-Lys)をHO中で3回洗浄し、次いでリン酸緩衝液に再懸濁した。FITC-NP-HSA-Lysを抗Cripto Fab 10D1で機能化し(実施例7参照);その機能化は、C末端のTQGAタグの存在を利用してMTGを使用して実施された。機能化反応のために、MTG0.25Uの存在下にて、最終体積1mLのリン酸緩衝液(pH7.3)中で、Fab40μgを使用した。FITC-NP-HSA-LysへのFab接合反応をRP-HPLCによって様々な時点(1~16時間)でモニターし、上清を分析し、溶解状態の遊離Fabの濃度の減少を評価した。RP-HPLCにおける分析から、16時間後の、Fab接合体の量が10μg/mg NP-HSAであることが判明した。このようにして得られた、FITC-NP-HSA-Fabと呼ばれるNP-HSAを次いで、余分なMTG及びFabを除去するために、遠心によるHOでの3回洗浄サイクルで精製した。最後に、それらをPBSに再分散し、+4℃にて保管して、Malvern Zetasizer Ultra(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)を使用して、サイズ(nm)、多分散性(PDI)及びゼータ電位(mV)によって特徴付けた。C4 Vydac分析カラム,4.6×250mm,粒径5μmを備えたAgilent 1100 Series(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)装置をRP-HPLCにおける分析に使用した。溶解状態でのFabの定量化のために、以下の方法を用いた:移動相A:HO+0.1%TFA及び移動相B:ACN+0.1%TFA、25分で30%~45%Bの勾配、流量0.7mL/分。
【0183】
サイトフローメトリー分析のために、グルタミン及び抗生物質を添加して、10%FBS DMEM/F12中で密度40%にてNTERA2細胞をプレーティングした。翌日、細胞をPBSで洗浄し、以下のナノ粒子FITC-NP-HSA、FITC-NP-HSA-Fabを含有する血清不含培地を添加した。FITCを使用せず、FabでマークしたNP-HSAをネガティブコントロールとして使用した。使用されたNPの量は、FITC-NP-HSA-Fabに対して正規化され、抗Cripto Fab濃度1000ng/mL、100ng/mL及び10ng/mLを有するように使用された。細胞をNPと共に37℃で4時間インキュベートし、次いで洗浄し、0.5%BSA PBSに再懸濁した。「BD FACS ARIAIII細胞選別機」で試料を獲得し、FITCのサイズ及び強度について分析した。その結果から、FITCポジティブ細胞(ゲートP3)のパーセンテージ及び分析された総母集団の平均蛍光強度(P1 MFI)が報告される。100ng/mLにて、Fabを含まないFITC-NP-HSA(0.5%)と比較して、FITC-NP-HSA-Fab(1.5%)で有利に、わずかなシグナルが確認された。1000ng/mLにて、シグナルは、両方の試料(preparation)に関して、かなり強い。マークされた細胞の数に関して、Fabで修飾されたNP(53.5%)と修飾されていないNP(63.6%)の間で実質的な差はないことが確認される。FITC-NP-HSA-Fabで確認された蛍光強度は、FITC-NP-HSAで確認された蛍光強度と比べてかなり高く、それぞれMFI3313及び752である。次いで、4.4倍高い蛍光シグナルは、未修飾NP-HSAと比べて、Fabで修飾されたNP-HSA処理細胞で確認され、抗Cripto-1 Fabの存在によって、一部の細胞内へのより多くのNP-HSAインプットが可能となることが示唆される。
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図1
図2AB
図3A
図3BC
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
【国際調査報告】