(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量を促進することにおいて使用するための2’-フコシルラクトース
(51)【国際特許分類】
A23L 33/125 20160101AFI20231228BHJP
A61K 31/7016 20060101ALI20231228BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20231228BHJP
A61K 31/718 20060101ALI20231228BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20231228BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231228BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231228BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231228BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20231228BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231228BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20231228BHJP
【FI】
A23L33/125
A61K31/7016
A61K31/702
A61K31/718
A61P25/20
A61P31/14
A61P29/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P25/22
A61P17/00
A61P37/08
A23L33/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533292
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2021083489
(87)【国際公開番号】W WO2022117538
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505310426
【氏名又は名称】フリースランドカンピーナ ネーデルランド ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナウタ、アリエン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD03
4B018MD05
4B018MD20
4B018MD23
4B018MD29
4B018MD31
4B018MD47
4B018ME09
4B018ME11
4B018ME14
4B018MF02
4C086AA10
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4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZA68
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB33
4C086ZC35
(57)【要約】
ヒト対象の胃腸管におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の存在量を増加させるための食物繊維の調製物であって、前記調製物中の食物繊維は、2’-フコシルラクトース(2’-FL)と、任意選択的に、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、難消化性デンプン、ポリデキストロース及び2’-フコシルラクトース以外のヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される1種以上のさらなるオリゴ糖とから実質的になる、調製物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象の胃腸管におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の存在量を増加させるための食物繊維の調製物の非治療的使用であって、前記調製物中の前記食物繊維は、2’-フコシルラクトース(2’-FL)と、任意選択的に、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、難消化性デンプン、ポリデキストロース及び2’-フコシルラクトース以外のヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される1種以上のさらなるオリゴ糖とから実質的になる、非治療的使用。
【請求項2】
前記ヒト対象は、1歳超の年齢、好ましくは3歳超、より好ましくは18歳超、特に好ましくは40歳超、さらにより好ましくは50歳超、特により好ましくは60歳超及び最も好ましくは65歳超の年齢である、請求項1に記載の非治療的使用。
【請求項3】
前記ヒト対象は、前記胃腸管におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の平均未満の存在量を有する、請求項1又は2に記載の非治療的使用。
【請求項4】
睡眠の質及び/又は睡眠の持続性を改善するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項5】
睡眠の質及び/又は睡眠の持続性に対する食物繊維、好ましくはオリゴ糖、より好ましくはガラクトオリゴ糖(GOS)の効果を高めるための、請求項1~3のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項6】
前記調製物は、少なくとも0.01グラム、より好ましくは少なくとも0.02グラム、さらにより好ましくは少なくとも0.04グラム、より好ましくは少なくとも0.06グラム、より好ましくは少なくとも0.08グラム及び最も好ましくは少なくとも0.10グラムの1日2’-FL投与量で前記ヒト対象に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項7】
前記調製物は、2’-フコシルラクトース(2’-FL)及びガラクトオリゴ糖(GOS)を0.05:1~2:1、より好ましくは0.10:1~1:1、好ましくは0.20:1~0.5:1及び最も好ましくは0.25:1~0.5:1の2’-FL:GOS重量比で含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項8】
前記調製物は、脂質、可消化炭水化物、タンパク質及び/又はビタミンから選択されるさらなる成分を追加的に含む栄養組成物の一部である、請求項1~7のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項9】
COVID-19若しくはSARS-CoV-2感染症、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎若しくはクローン病などの炎症性腸症状、糖尿病、不安及び/又はアトピー性皮膚炎などのアレルギーを患っているか又はそれを発症するリスクがあるヒト対象の胃腸管におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の存在量を増加させることにおいて使用するための食物繊維の調製物であって、前記調製物中の前記食物繊維は、2’-フコシルラクトース(2’-FL)と、任意選択的に、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、難消化性デンプン及び2’-フコシルラクトース以外のヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される1種以上のさらなるオリゴ糖とから実質的になる、調製物。
【請求項10】
2’-フコシルラクトース(2’-FL)及びガラクトオリゴ糖(GOS)を0.05:1~2:1、より好ましくは0.10:1~1:1、好ましくは0.20:1~0.5:1及び最も好ましくは0.25:1~0.5:1の2’-FL:GOS重量比で含む、請求項9に記載の使用のための調製物。
【請求項11】
少なくとも0.01グラム、より好ましくは少なくとも0.02グラム、さらにより好ましくは少なくとも0.04グラム、より好ましくは少なくとも0.06グラム、より好ましくは少なくとも0.08グラム、さらにより好ましくは少なくとも0.10グラム、より好ましくは少なくとも0.5グラム、さらにより好ましくは少なくとも1.0グラム及び最も好ましくは少なくとも2.0グラムの1日2’-FL投与量で前記ヒト対象に投与される、請求項9又は10に記載の使用のための調製物。
【請求項12】
最大で40グラム、より好ましくは最大で30グラム、さらにより好ましくは最大で20グラム及び最も好ましくは最大で10グラムの1日2’-FL投与量で前記ヒト対象に投与される、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための調製物。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の使用のための調製物と、脂質、可消化炭水化物、タンパク質、プロバイオティクス及び/又はビタミンから選択されるさらなる成分とを含む栄養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト対象の胃腸管におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の存在量を促進することにおいて使用するための、少なくとも2’-フコシルラクトース(2’-FL)を含む食物繊維の調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
腸内微生物叢における細菌種の性質は、摂取される食品によって大きく左右されることになる。種々の有益な腸内細菌は、オリゴ糖及び多糖類などの食物繊維を摂取する。
【0003】
ヒトの母乳は、例えば、特に腸内における細菌のコロニー形成及び病原体からの保護など、乳児の健康に有益な影響を有することが示されている種々のオリゴ糖(ヒトミルクオリゴ糖(HMO)と分類される)を含有する。例えば、地理的起源及び遺伝的背景に応じて、ヒトの母乳中のHMOの量及び多様性は、女性によって様々であるが、ヒトの母乳は、主に、フコシル化HMO(35~50%)、シアル酸付加HMO(12~14%)及び非フコシル化天然HMO(42~55%)の3つのHMOタイプを含有すると言うことができる。フコシル化HMOは、ヒトの母乳中に最も多く含まれるHMOである2’-フコシルラクトース(2’-FL)を含む。
【0004】
健康上の有益性に関連する腸内微生物叢種の1種は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)である。M.Lebas,et al.,Microorganisms 2020,8,1528に開示されているとおり、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)は、健常な対象で優勢であると共に、多く存在するグラム陰性バクテリアである。これは、クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸症状に対して有効であることが種々の研究で示されている。
【0005】
K.Ganesan et al.,Int.J.Mol.Sci.,2018,19,3720は、糖尿病に対するF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の効果をレビューしている。
【0006】
T.Tochio et al.,Foods 2018,7,140は、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量を、アトピー性皮膚炎などのアレルギーに関連する症状の改善と関連付けている。
【0007】
うつ状態及び不安に対するF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の効果は、Z.Hao et al.,Psychoneuroendocrinology,2019;104,132-142で研究及び報告されている。
【0008】
さらに、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)は、種々の腸の状態に対する好適なバイオマーカーであるようである。M.Lopez-Silas et al.,The ISME Journal,2017,11,841-852を参照されたい。
【0009】
N.Salazar,Nutrients,2019,11,1765に示されているとおり、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量は、年齢と共に低減し、特に65歳を超えると顕著である。
【0010】
コロナウイルスパンデミックとしても知られるCOVID-19パンデミックは、重篤性急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)により引き起こされるコロナウイルス疾病2019(COVID-19)の継続中のパンデミックである。COVID-19パンデミックは、2019年12月に中国の武漢で初めて確認された。世界保健機関は、2020年1月に国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の発生及び2020年3月にパンデミックの発生を宣言した。2021年3月4日現在、1億1500万人を超える事例が確認されており、COVID-19に起因する死亡者は、255万人を超え、史上最も犠牲者を伴うパンデミックの1つとなっている。
【0011】
Yeoh YK,et al.(Gut 2021;0:1-9.doi:10.1136/gutjnl-2020-323020)は、患者が投薬を受けたか否かに関わらず、腸内ミクロビオーム組成が非COVID-19個体と比べてCOVID-19患者で顕著に変化していたことを示した(p<0.01)。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)など、既知の免疫調節能を有するいくつかの種の腸内細菌は、患者に少数のみ存在し、疾病の治癒後30日間以内に回収したサンプルでも少数のままであった。さらに、この乱れた組成は、C反応性タンパク、乳酸脱水素酵素、アスパラギン酸アミノ基転移酵素及びγ-グルタミルトランスフェラーゼなどの炎症性サイトカイン及び血液マーカーの濃度の上昇と一致する疾病の重症度の層別化を示した。腸内微生物叢の組成と、COVID-19の患者におけるサイトカイン及び炎症性マーカーのレベルとの関連性は、場合により宿主免疫応答の調節を介して、COVID-19重症度の程度に腸内ミクロビオームが関与していることを示唆している。さらに、疾病の治癒後の腸内微生物叢腸内毒素症は、症状の持続に関与している可能性がある。
【0012】
従って、ヒト対象の胃腸管におけるF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量を増加させることができる処置は、COVID-19又はSARS-CoV-2感染症に係る症状を予防、治療又は緩和する効果を有することが期待される。
【0013】
「処置」という用語は、所与の疾病又は病気に関連して、特に限定されないが、疾病若しくは病気の阻害(例えば、疾病若しくは病気の発症の抑止)、疾病若しくは病気の緩和(例えば、疾病若しくは病気の退行をもたらす);及び/又は疾病若しくは病気に起因するか若しくはその結果として生じる病状の緩和(例えば、疾病若しくは病気の症状の緩和、予防若しくは治療)を含む。
【0014】
「予防」という用語は、所与の疾病又は病気に関連して、依然として何も生じていない場合における疾病の発症の開始の予防、病気若しくは疾病の素因があり得るが、病気若しくは疾病を有すると依然として診断されていない対象における疾病若しくは病気の予防及び/又は既に存在する場合にはさらなる疾病/病気の発症の予防を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、好ましくは、非乳児、より好ましくは65歳を超える高齢者などの成人などのヒト対象の胃腸管におけるF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量を増加させることができる調製物及び栄養組成物を提供することである。
【0016】
本明細書における非乳児ヒト対象は、少なくとも3歳の年齢のヒト対象と定義される。
【0017】
本発明のさらなる目的は、COVID-19/SARS-CoV-2感染症、炎症性腸症状、糖尿病、不安及び/又はアトピー性皮膚炎などのアレルギーを患っているか又はそのリスクが高い、好ましくは非乳児、より好ましくは成人、さらにより好ましくは65歳を超える高齢者などのヒト対象の胃腸管におけるF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量を増加させることにおいて使用するための調製物及び栄養組成物を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、ヒト対象、好ましくは非乳児、より好ましくは成人、最も好ましくは65歳を超える高齢者におけるCovid-19又はSARS-Cov-2感染症の重症度を低減させることにおいて使用するための調製物及び栄養組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、これらの対象に食物繊維の調製物を投与することによって満たされ得ることがここで見出され、前記調製物中の食物繊維は、食物繊維として、2’-FLと、任意選択的に、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ポリデキストロース、難消化性デンプン及び2’-フコシルラクトース以外のヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される1種以上のさらなるオリゴ糖とから実質的になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「前記調製物中の食物繊維は、2’-フコシルラクトース(2’-FL)と、任意選択的に、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、難消化性デンプン、ポリデキストロース及び2’-フコシルラクトース以外のヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される1種以上のさらなるオリゴ糖とから実質的になる」に用いられる「~から実質的になる」という用語は、この調製物が、列挙されているもの以外の食物繊維をいかなる材料量でも含有しないことを意味する。
【0021】
「材料量」は、腸内における細菌のコロニー形成に影響を与えない量として定義され、実際には、食物繊維の乾燥重量に基づいて<5重量%、より好ましくは<1重量%となる。調製物は、従って、イソマルトオリゴ糖;α-D-(1,6)結合を有する難消化性グルコースオリゴマーをいかなる量(材料量)でも含有しない。
【0022】
好ましい実施形態では、調製物は、唯一の食物繊維として、2’-FLと、任意選択的なさらなるオリゴ糖とからなる。
【0023】
調製物は、水、単糖類(例えば、フルクトース、グルコース、ガラクトース)、スクロース及び/又はラクトースなどの食物繊維と分類できない化合物を含有し得る。
【0024】
ここで、成人及び高齢対象の糞便物質のインビトロ試験において、2’-FLは、このようなヒト対象におけるF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量を増加させることが可能であることが示されている。
【0025】
これは、Cheng et al.(Frontiers in Microbiology,October 2020,Volume 11,article 569700)により行われたインビトロ試験において、2’-FLが単独培養におけるF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量に影響を与えないと結論付けられていることを考慮すると特に意外である。ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.infantis)との共培養でも、2’-FLは、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量を増加させることができなかった。明らかに且つ意外にも、本インビトロ試験に従うと、腸内ミクロビオームを表す共培養において、2’-FLは、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量を増加させることが可能である。
【0026】
さらに、ラットにおける試験では、2’-FLの投与の結果、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量の低減が示された(F.Cheilat et al.,Nutrients 2020,12,1532)。
【0027】
また、米国特許出願公開第2018/0015032号明細書は、2’-FL及びイソマルトオリゴ糖(IMO)の2:5重量比混合物を含む栄養組成物で処置した成人のヒトでのF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)レベルの上昇を報告しているが、この増加が2’-FL、IMO又はこの組み合わせの投与に起因していたかは、明らかにされないままであった。
【0028】
本発明は、従って、ヒト対象の胃腸管におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の存在量を増加させるための食物繊維の調製物の使用に関し、前記調製物中の食物繊維は、2’-フコシルラクトース(2’-FL)と、任意選択的に、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ポリデキストロース、難消化性デンプン及び2’-フコシルラクトース以外のヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される1種以上のさらなるオリゴ糖とからなる。この使用は、治療的又は非治療的であり得る。
【0029】
ヒト対象は、2歳超、好ましくは3歳超、より好ましくは18歳超、特に好ましくは40歳超、さらにより好ましくは50歳超、特により好ましくは60歳超及び最も好ましくは65歳超の年齢など、1歳を超えた年齢である。
【0030】
好ましくは、ヒト対象は、胃腸管におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の平均未満の存在量を有する。
【0031】
ヒト対象は、健常なヒト対象であり得るが、炎症性腸症状(炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎若しくはクローン病など)、Covid-19若しくはSARS-CoV-2感染症、糖尿病、アレルギー(アトピー性皮膚炎など)、不安、睡眠病気、睡眠不足、断眠及び/又は睡眠欲求の増加を患っているか又はそれを発症するリスクがあるヒト対象でもあり得る。
【0032】
本明細書で用いられる場合、胃腸管中のF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の平均存在量よりも低いとは、対象の胃腸管におけるF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の数が、同じ年齢群に属する10人の健常な対象群の腸管におけるF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の数の平均と比べて低いことを指す。健常な対象は、疾病と診断されておらず、腸管に関する何らかの問題を患っていない対象である。年齢群は、0~最大で1歳、1~最大で3歳、3~最大で10歳、10~最大で18歳、18~最大で20歳、20~最大で30歳、30~最大で40歳、40~最大で50歳、50~最大で60歳、60~最大で70歳、70~最大で80歳、80~最大で90歳及び90~最大で90歳と定義される。
【0033】
本明細書で用いられる場合、対象の胃腸管におけるF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量の増加は、2’-FLを介入させた後(1~5mg/日、少なくとも2週間)における、介入前と比べた対象の胃腸管中のF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の数の増加を指す。増加は、好ましくは、少なくとも3%、より好ましくは少なくとも8%、少なくとも10%など、さらにより好ましくは少なくとも15%である。増加の程度は、2’-FLの1日投与量に応じ得る。F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量は、実施例で以下に記載のとおりに決定され得る。
【0034】
本発明は、COVID-19若しくはSARS-CoV-2感染症、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎若しくはクローン病などの炎症性腸症状、糖尿病、不安及び/又はアトピー性皮膚炎などのアレルギーを患っているか又はそのいずれかの発症リスクが高いヒト対象の胃腸管におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の存在量を増加させることにおいて使用するための、2’-フコシルラクトース(2’-FL)と、任意選択的に、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ポリデキストロース、難消化性デンプン及び2’-フコシルラクトース以外のヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される1種以上のさらなるオリゴ糖とからなる食物繊維の調製物にさらに関する。
【0035】
調製物は、好ましくは、少なくとも0.01グラム、より好ましくは少なくとも0.02グラム、さらにより好ましくは少なくとも0.04グラム、より好ましくは少なくとも0.06グラム、より好ましくは少なくとも0.08グラム、さらにより好ましくは少なくとも0.10グラム、より好ましくは少なくとも0.5グラム、さらにより好ましくは少なくとも1.0グラム及び最も好ましくは少なくとも2.0グラムの1日2’-FL投与量でヒト対象に投与される。
【0036】
1日2’-FL投与量は、好ましくは、最大で40グラム、より好ましくは最大で30グラム、さらにより好ましくは最大で20グラム及び最も好ましくは最大で10グラムである。
【0037】
調製物は、食物繊維として2’-FLのみを含有するか、又は食物繊維として、2’-FL以外に、ガラクトオリゴ糖(GOS)、フラクトオリゴ糖(FOS)、難消化性デンプン(RS)、ポリデキストロース(PDX)及び2’-フコシルラクトース以外のヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される1種以上のオリゴ糖を含有する。
【0038】
調製物中に存在する好ましいオリゴ糖は、GOS及び/又はFOSである。最も好ましいオリゴ糖は、GOSである。
【0039】
ガラクトオリゴ糖(GOS)の基本構造は、約7ガラクトース残基以下(重合度8;DP8)まで延在する還元末端におけるラクトース核を含む。
【0040】
市販のGOS調製物は、一般に、およそ100種の異なる種類の構造並びに様々なDP及び結合を有するオリゴマーの混合物がもたらされる、β-ガラクトシダーゼ酵素(EC.3.2.1.23)によるラクトースの酵素処理によるトランスガラクトシル化反応を介して生成される。β-ガラクトシダーゼは、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、クルイベロマイセス・マルシアナス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロマイセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、スポロボロマイセス・シングラリス(Sporobolomyces singularis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)及びパピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)(クリプトコッカス・パピリオトレマ・テレストリス(Cryptococcus Papiliotrema terrestris))などの多くの微生物で産生される。β-ガラクトシダーゼは、その三次元構造において異なり、その結果としてグリコシド結合のステレオ選択的形成及びレジオ選択的形成がもたらされる。酵素反応後、GOSは、ナノろ過及び/又は擬似移動床クロマトグラフィ(SMB)などの従来の方法を用いて単離及び精製される。得られる生成物は、必要に応じて乾燥(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥又は噴霧冷却により)されて粉末を形成し得るGOS含有シロップである。
【0041】
特に好ましいタイプのGOSは、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)由来のβ-ガラクトシダーゼ酵素により調製された、Biotis(商標)GOSなどのGOSである。B.シルクランス(B.circulans)由来のβ-ガラクトシダーゼは、特に強いトランスガラクトシル化活性を有すると共に、世界的に商品化されている。
【0042】
フラクトオリゴ糖(FOS)は、イヌリン分解又はトランスフルクトシル化プロセスのいずれかによって商業的に生成されている。イヌリンは、多くの種類の植物によって生成される天然の多糖であり、工業的にはチコリーから最も多く抽出されている。イヌリンは、ポリフルクトース:末端α(1→2)結合D-グルコースとの、β(2→1)結合により結合したD-フルクトース残基のポリマーである。イヌリンの重合度は、約10~約60の範囲である。イヌリンは、酵素的又は化学的に、一般構造Glu-Frun(GFn)及びFrum(Fm)(ここで、n及びmは、1~約7の範囲である)を有するオリゴ糖の混合物に分解され得る。このプロセスは、自然界でもある程度生じるものであり、これらのオリゴ糖は、特にキクイモ(Jerusalem artichoke)、チコリー及びブルーアガベ植物などの多数の植物に見出すことができる。市販のFOSの主成分は、ケストース(GF2)、ニストース(GF3)、フルクトシルニストース(GF4)、ビフルコース(GF3)、イヌロビオース(F2)、イヌロトリオース(F3)及びイヌロテトラオース(F4)である。
【0043】
FOSの第2の分類は、スクロースに対するβ-フルクトシダーゼ(例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス属(Aspergillus)由来)のトランスフルクトシル化作用によって調製される。得られる混合物は、GFn(nは1~5の範囲)の一般式を有する。
【0044】
難消化性デンプン(RS)は、小腸で消化されない食物デンプンの一部である。
【0045】
ポリデキストロース(PDX)は、合成的に生成されるグルコース単位の分岐ポリマーである。ポリデキストロースは、可溶性繊維の形態であり、健康上の有益性を示す。
【0046】
2’-FL以外のHMOの例としては、3’-フコシルラクトース(3’-FL)などのフコシル化ラクトース、3’-シアリルラクトース(3’-SL)及び6’-シアリルラクトース(6’-SL)などのシアル酸付加ラクトース並びにラクト-N-テトラオース(LNT)及びラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)などの四糖が挙げられる。
【0047】
食物繊維の調製物が2’-FLに追加して1種以上のオリゴ糖を含有する場合、それは、好ましくは、2’-FL及びさらなるオリゴ糖を0.05:1~2:1、より好ましくは0.08:1~2:1、さらにより好ましくは0.10:1~1:1、さらにより好ましくは0.20:1~0.50:1及び最も好ましくは0.25:1~0.5:1の2’-FL:さらなるオリゴ糖重量比で含む。
【0048】
より好ましくは、このさらなるオリゴ糖は、FOS及び/又はGOSであり、これは、2’-FL:(FOS+GOS)重量比が好ましくは0.05:1~2:1、より好ましくは0.08:1~2:1、さらにより好ましくは0.10:1~1:1、さらにより好ましくは0.20:1~0.50:1及び最も好ましくは0.25:1~0.50:1であることを意味する。
【0049】
最も好ましくは、このさらなるオリゴ糖は、GOSであり、2’-FL:GOS重量比は、好ましくは、0.05:1~2:1、より好ましくは0.08:1~2:1、より好ましくは0.10:1~1:1、さらに好ましくは0.20:1~0.50:1及び最も好ましくは0.25:1~0.50:1である。
【0050】
上記の重量比は、オリゴ糖(DP≧2)の乾燥重量に基づいており、従って単糖含有量が除かれる。
【0051】
理論的には、GOS及び2’-FLを含む食物繊維の混合物をヒト対象に投与すると、ビフィズス菌、特にB.アドルセンシス(B.adolescensis)及びB.ロンガム(B.longum)と、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)との間である種の栄養共生が生じるとされている。
【0052】
さらに、ヒト対象の加齢に際して、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量が減少するのみならず、近位結腸におけるビフィズス菌の存在量も減少する。2’-FL及びGOSの併用は、従って、微生物叢組成及びヒト対象の活性をさらに改善するであろう。
【0053】
加えて、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量は、一定の睡眠治療に対する効果に影響を有し得ることが強く示唆されている。オリゴ糖、特にガラクトオリゴ糖(GOS)などの食物繊維は、睡眠の質及び/又は睡眠の持続性に効果を有することが知られている。このような治療に対して反応がある対象中の腸内微生物叢は、このような治療に対して反応がない対象のものに対して大きく異なることがここで見出された。反応群及び非反応群の両方は、脳に影響を与え得る代謝産物を産生することが知られているビフィズス菌(より具体的にはB.アドルセンシス(B.adolescensis)及びB.ロンガム(B.longum))の存在量の増加を示したが、(反応群における治療中に変化しなかった)F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の相対的存在量は、非反応群よりも約3倍高かった。前記睡眠治療に対する反応群の糞便サンプルは、フィーカリバクテリウム属(Feacalibacterium)関連遺伝経路の存在量が非反応群のものよりも高いことも示した。従って、食物繊維による治療に対する反応は、一定のレベルを上回るF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)のベースライン存在量により強化されることが予期される。
【0054】
従って、2’-FL調製物の投与によるF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量の増加は、睡眠の質及び/又は睡眠の持続性に対するオリゴ糖、特にガラクトオリゴ糖(GOS)などの食物繊維の好ましい効果に対するヒト対象の反応性を高める(すなわち反応群の数を増加させる)ことが予期される。
【0055】
この効果を達成するために、2’-FLは、同じ治療期間中に投与される併用調製物若しくは栄養組成物中又は個別の調製物若しくは栄養組成物中において、前記食物繊維と一緒に投与され得る。代わりに、F.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)のベースラインレベルを高め、これにより睡眠の質及び/又は持続性に対する食物繊維の効果に対する反応性を高めるために、前記食物繊維を投与する数日又は数週間前に2’-FLの投与を開始し得る。
【0056】
「睡眠の質及び/又は睡眠の持続性の改善」とは、入眠の促進;成熟した睡眠パターンの誘導若しくは支援;睡眠障害の低減若しくは予防/ベッドに入っている間の睡眠時間の延長;深い睡眠感の増加;起床時のより爽快な感覚;並びに/又はより活力に満ちた感覚及び/若しくは日中より良好な気分を得るなどの態様の1つ以上、好ましくは2つ以上を含む。
【0057】
本発明は、従って、睡眠の質及び/又は睡眠の持続性を向上させるための2’-FL含有調製物の(非)治療的使用にも関する。本発明は、睡眠の質及び/又は睡眠の持続性に対する食物繊維、好ましくはオリゴ糖、より好ましくはガラクトオリゴ糖(GOS)の効果を高めるための2’-FL含有調製物の(非)治療的使用にも関する。
【0058】
食物繊維の調製物は、そのまま投与され得るが、栄養組成物の一部として投与されることが好ましい。このような栄養組成物において、食物繊維は、栄養組成物の総重量に対して且つ乾燥重量に基づいて少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%、例えば91重量%以下、92重量%、93重量%又は94重量%の量で存在することが好ましい。より好ましくは、2’-FLは、栄養組成物の総重量に対して且つ乾燥重量に基づいて少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%、例えば91重量%以下、92重量%、93重量%又は94重量%の量で栄養組成物中に存在することが好ましい。
【0059】
栄養組成物は、食品製品、飲料又は栄養補助食品の形態を有し得る。
【0060】
栄養組成物は、食物繊維の調製物以外に、脂質、可消化炭水化物、プロバイオティクス、タンパク質並びに/又はビタミン、ミネラル及び/若しくは生物活性ペプチドなどの追加の栄養剤から選択される少なくとも1種のさらなる成分を含む。
【0061】
食物繊維の調製物の他に、栄養組成物は、追加の食物繊維をいずれの材料量でも含有しない。すなわち、栄養組成物中の食物繊維の総量の5重量%以下、より好ましくは1重量%以下は、食物繊維の調製物以外の供給源に由来し得る。
【0062】
脂質の例は、動物性脂質(乳脂肪、魚油)及び/又は植物性脂質(例えば、藻類性油、真菌性油及び細菌性油)であり、好ましくは長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC-PUFA;20~24個の炭素原子、好ましくは2つ以上の不飽和結合を含む20個又は22個の炭素原子の長さを有する脂肪酸又は脂肪アシル鎖)を含む。
【0063】
タンパク質の例は、乳タンパク質(例えば、カゼイン及び/又は乳漿タンパク質)、植物性タンパク質(例えば、ダイズタンパク質及び/又はイネタンパク質)、約20アミノ酸以下の長さのポリペプチド(カゼイントリプシン加水分解物など)などのこれらの加水分解物、これらの発酵生成物(発酵乳漿タンパク質濃縮物又は発酵乳漿タンパク質単離物など)、トリプトファン及びシステインなどの遊離アミノ酸並びにその混合物である。
【0064】
可消化炭水化物の例は、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ剤固形分、デンプン及びマルトデキストリンである。
【0065】
ビタミン及びミネラルの例は、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB3及びビタミンB6であり、且つF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の酸素感応性の観点から、ビタミンC、ビタミンE及び/又はβカロチンなどの抗酸化効果をもたらすビタミンである。
【0066】
栄養組成物は、香味剤、防腐剤及び/又は着色剤をさらに含有し得る。
【0067】
好適なプロバイオティクスの例は、ビフィズス菌及び/又は乳酸杆菌などの(シンバイオティクス)細菌である。
【0068】
栄養組成物は、液体、半液体又は固体の構成成分を有し得る。
【0069】
栄養組成物は、ヒト、ヤギ、ヒツジ、雌ウシ、ラクダ又は反芻動物由来の乳などの哺乳動物の乳ではない。栄養組成物は、合成組成物である。「合成組成物」という用語は、人工的に調製された組成物を指し、好ましくは生体外で化学的及び/又は生物学的に、例えば化学反応、酵素反応又は組換えにより生成される少なくとも1種の化合物を含有する組成物を意味する。
【0070】
好適な食品製品及び飲料の例は、乳、ミルクセーキ、チョコレートミルク、ヨーグルト、クリーム、チーズ、プリン及びアイスクリームなどの乳製品;栄養バー、エネルギーバー、スナックバー、シリアルバー及び糖尿病患者のためのバーなどのバー;栄養ドリンク、ダイエットドリンク、液体完全食、スポーツドリンク及び他の栄養飲料などの液体製品;チップス、トルティーヤ、パフ入りスナック、クラッカー、プレッツェル及びセイボリービスケットなどのセイボリースナック;マフィン、ケーキ及びビスケットなどのベーカリー製品;グミなどの菓子;並びにスパゲッティなどのパスタである。
【0071】
食品サプリメントは、丸剤、カプセル又は乾燥粉末の形態を有し得る。食品サプリメントは、直ちに消費可能なもの又は水のような液体中に溶解する必要があるものであり得る。乾燥粉末形態の製品には、所望の粉末量(例えば、日又は単位投与量)を計測するためのスプーンなどのデバイスが付属し得る。
【0072】
栄養組成物は、ジャー、ボトル、サッシェ、カートン、ラッピング等で提供され得る。
【0073】
好ましい実施形態では、食物繊維の調製物又は前記調製物を含む栄養組成物は、単一回分の形態で提供される。単一回分の各々は、任意選択的に、個別に包装され得る。
【0074】
一実施形態では、単一回分は、1.0~40グラム、好ましくは1.0~30グラム、好ましくは1.5~25グラム、より好ましくは2.0~20グラム、より好ましくは2.5~15グラム、さらにより好ましくは3.0~10グラム、より好ましくは3.5~8グラム及び最も好ましくは4.0~5.0グラムの2’-FLを含むことが好ましい。
【0075】
他の実施形態では、単一回分は、少なくとも0.01グラム、より好ましくは少なくとも0.02グラム、さらにより好ましくは少なくとも0.04グラム、より好ましくは少なくとも0.06グラム、より好ましくは少なくとも0.08グラム、さらにより好ましくは少なくとも0.10グラム、より好ましくは少なくとも0.5グラム、さらにより好ましくは少なくとも1.0グラム及び最も好ましくは少なくとも2.0グラムの2’-FLを含むことが好ましい。本実施形態に係る単一回分は、最大で40グラム、より好ましくは最大で30グラム、さらにより好ましくは最大で20グラム及び最も好ましくは最大で10グラムの2’-FLを含むことが好ましい。
【0076】
調製物又は栄養組成物の単位投与量は、少なくとも週に1回、好ましくは少なくとも3日に1回、より好ましくは少なくとも2日に1回、最も好ましくは少なくとも1日に1回投与することが好ましい。
【0077】
一実施形態では、2’-FLの1日投与量は、0.5~40グラム、好ましくは0.5~30グラム、より好ましくは0.5~20グラム、より好ましくは0.5~10グラム、さらにより好ましくは1.0~10グラム、より好ましくは1.0~5.0グラム及び最も好ましくは4.0~5.0グラムの2’-FLの範囲であることが好ましい。
【0078】
他の実施形態では、2’-FLの1日投与量は、少なくとも0.01グラム、より好ましくは少なくとも0.02グラム、さらにより好ましくは少なくとも0.04グラム、より好ましくは少なくとも0.06グラム、より好ましくは少なくとも0.08グラム及び最も好ましくは少なくとも0.10グラムの2’-FLであることが好ましい。本実施形態に係る1日投与量は、最大で10グラム、より好ましくは最大で8.0グラム、さらにより好ましくは最大で6.0グラム、より好ましくは最大で5.0グラム、より好ましくは最大で4.0グラム、より好ましくは最大で2.0グラム及び最も好ましくは最大で1.0グラムの2’-FLであることが好ましい。
【0079】
調製物又は栄養組成物の使用は、少なくとも2週間、例えば少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月又はさらに少なくとも6ヶ月の期間継続することが好ましい。調製物又は栄養組成物の投与によりもたらされる健康上の有益性を維持するために、調製物又は栄養組成物は、少なくとも1日1回投与することが好ましい。調製物又は栄養組成物は、朝食中又は1日の終わり、例えば就寝の0~120分、より好ましくは0~60分及び最も好ましくは0~30分前に食事と共に摂取され得る。代わりに、調製物又は栄養組成物は、例えば、朝食及び夕食中又は朝食中及び就寝前、好ましくは朝及び夕方の1日2回投与され得る。食事と一緒の投与は、簡便であると共に、摂取者が調製物又は栄養組成物の摂取を忘れる恐れが低減する。
【実施例】
【0080】
実施例1
12人の不作為に連絡した成人グループ(25~50歳の年齢の3人の男性及び3人の女性並びに70~79歳の年齢の3人の男性及び3人の女性)により、自身の糞便物質がインビトロ試験のために提供された。無酸素凍結保存した糞便種菌を解凍し、96%N2及び4%H2を充填した嫌気性チャンバに移した。標準的な回腸流出物培地を用いて、2’-FL(10mg/ml)のインキュベーションを10%(v/v)糞便種菌と共にデュプリケートで行う一方、対照として、糞便種菌を伴わないインキュベーション及び炭水化物を伴わないインキュベーションを行った。播種から0時間、4時間、10時間及び24時間後にサンプルを回収した。
【0081】
次いで、各培養ボトルからの3つの1mlアリコートを1.5ml Eppendorfチューブに分配した。これらのアリコートの1つを100℃で5分間加熱して、上澄み中の炭水化物を判定した。その後、すべてのサンプルを4℃、18600相対遠心力(rcf)で10分間遠心分離した。他の2つのチューブからの上澄みを貯蔵し、代謝産物測定のために-20℃で保管した一方、残りのペレットを微生物叢組成分析のために-80℃で保管した。
【0082】
微生物叢組成を、Illumina Hiseq2500(2×150bp)を用いたバーコード付きの16Sリボソーム性RNA(rRNA)遺伝子単位複製配列の配列決定により決定した。回収したペレットを350μlのStool Transport and Recovery(STAR)緩衝剤(Roche Diagnostics、米国)と混合し、その後、0.1mmジルコニアビーズ0.25g及びガラスビーズ(直径2.5mm)を3個含むスクリューキャップチューブに移した。
【0083】
次いで、FastPrep-24(商標)5Gビーズ破砕グラインダ及び溶解システム(MP Biomedicals、オランダ)を用いて、サンプルを反復的にビーズ破砕(3×5.5ms×60s)に供し、続いて4℃で15分間遠心分離に供した。上澄みを回収し、ペレットを300μlのSTAR緩衝剤によるさらなる単離サイクルに供した。250μlの組み合わせた上澄みをMaxwellR 16Tissue LEV Total RNA purification Kit Cartridge(XAS1220)に移し、MaxwellR 16 Instrument(Promega、ライデン、オランダ)を用いて処理した。
【0084】
その後、DNAを35μlのヌクレアーゼフリー水中に溶出した。16SrRNA遺伝子のV4領域を、バーコード付515F-806Rプライマー及び鋳型として希釈DNA(ヌクレアーゼフリー水中、20ng/μl)を用いて、50℃のアニーリング温度において3連で増幅した。PCRをR.An,et al.,Nutrients,11(2019)2193に記載のとおり行った。精製PCR産物の等モル混合物を配列決定に供した(Eurofins Genomics、コンスタンツ、ドイツ)。生の配列決定データをNG-Tax 1.0を用いて加工した。分類は、SILVAデータベースバージョン128に基づいて割り当てた。
【0085】
インキュベーション中、異なる炭水化物を有する微生物叢組成と無炭水化物対照との間における変化を比較対比するために、veganパッケージにおけるprc機能を使用して、主要反応曲線(PRC)分析を用いて最もフィット(重み>0.05)する属を同定して、無炭水化物及び炭水化物系インキュベーション間で観察された差異を説明した[J.Oksanen,et al.,Package‘vegan’.Community ecology package,version,2013,2(9)]。
【0086】
その結果、2’-FLの摂取により、2’-FLを含まない対照培地における増殖と比べてF.プラウスニッツイ(F.prausnitzii)の存在量の増加がもたらされることが観察された。
【0087】
実施例2
この試験は、睡眠障害を有する(ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)≧9)70人の一見健常なオランダ成人(年齢30~50歳、BMI 19.5~25kg/m2)でランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験として設計された。
【0088】
含まれる対象は、3週間の休薬期間で、それぞれ3週間、Biotis(商標)Sleepwell又は偽薬で開始するように(すべて同時に)無作為化した。
【0089】
Biotis(商標)Sleepwellは、19.3重量%のBiotis(商標)GOS、10重量%のラクトース及び52.5重量%の乳漿タンパク質を含む組成物である。
【0090】
偽薬は、脱脂粉乳であった。
【0091】
Biotis(商標)Sleepwell及び偽薬は、16.3グラムの生成物を含有する同等の白いサッシェに梱包した。味の違いを隠すために、生成物をバニラで風味付けし、スクラロースで甘味を付けた。生成物は、150mlのぬるい水に溶解する必要があり、1日1回、就寝の約1時間前に摂取させた。
【0092】
各介入期間中、就寝時間及び起床時間、生活習慣、睡眠特性(PSQIアンケート)並びに起床時の健康状態及び気分に関するアンケートを毎日記入する必要があった。スリープトラッカー(SmartSleep(商標)、Philips、オランダ)による測定を、製品を摂取する前、各介入期間中及び各期間の最後の5晩中、連続する5晩で行った。便サンプルを第1介入期間中にのみ0日目及び21日目に回収した。
【0093】
介入試験に係る138の糞便サンプルから単離されたDNAを完全(5Gb)ショットガンメタゲノムシーケンス(PE150リード、Novaseq 6000)に供した。生の配列決定データを、精度管理(QC)を含めてショットガンメタゲノムシーケンスデータのために加工した(HUMANn2 workflow-based)。生の配列決定データを、データ精度管理、マイニング及びデータの生物学的解釈を含むVisual Analyticsによるアウトプット表現を含む、ショットガンメタゲノムシーケンスのためのバイオインフォマティクスワークフローで分析した。
【0094】
ミクロビオーム組成を、多変量(PCA/RDA)及び二変量統計法を用いて分析した。介入生成物による介入の前後において、治療群間並びに比較的よく寝た対象及び比較的よく寝られなかった対象で比較を行った。サンプル中のミクロビオーム遺伝機能(汎用バイオインフォマティクスパイプライン及びバックグラウンドデータベースにより検出した)を同じ方法で予備的に比較した。
【0095】
文献において睡眠の質と関連付けられている、微生物機能に標的化した分析を専用のバイオインフォマティクスモジュールで行った。この目的のために、配列決定リードをコンティグにアセンブリした(サンプル毎に新たなアセンブリ)。以下のモジュールを用いた。
1)M.Valles-Colomer,et.al.,Nature Microbiology 4(2019)623-632により発表されている「Gut-Brain」モジュールを用いて、このタイプの遺伝子を検索し、これらを定量化した(相対的存在量)。
【0096】
2)「Gut-Brain」モジュールを、睡眠の質に関連付けられている微生物遺伝子、より具体的にはGABA産生、カテコールアミンの脱共役化及びヒスチジン脱カルボキシル化に関与する遺伝子を特に探すために新たに構築したバイオインフォマティクスモジュールにより拡張した。遺伝子リストを、Hidden Markov Models(HMM)に基づく新規の機能的バイオインフォマティクスモジュールの生成に用いた。推定遺伝子を、予測されたタンパク質配列をHMMでスキャンすることによりミクロビオームデータにおいて同定した。ダウンストリーム統計分析を組成分析に記載のものと同じ方法で行った。
【0097】
結果
試験群中において、真の反応群(すなわちBiotis(商標)Sleepwellを摂取した後に睡眠の改善が観察されたが、偽薬の摂取では改善が観察されない対象)と、真の非反応群(すなわちBiotis(商標)Sleepwellでも偽薬でも睡眠の改善が見られない対象)との存在が見られた。
【0098】
これら2つの群の微生物叢を比較したところ、顕著な分類学的な組成の差異が明らかになった。
【0099】
介入開始前(0日目)には、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)の相対存在量の中央値は、真の非反応群(7.5%)と比べて真の反応群(2.5%)でおよそ3倍低く、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)の相対存在量の中央値は、真の非反応群(8.6%)と比べて真の反応群(1.2%)でおよそ7倍低い。
【0100】
Biotis(商標)Sleepwellによる3週間の介入後、有益なビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)の顕著な増加が真の反応群及び真の非反応群の両方で検出された。これは、ビフィズス菌存在量に対するBiotis(商標)Sleepwell、特にGOSの効果を証明するものである。
【0101】
しかしながら、真の反応群におけるビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)レベルの相対存在量の中央値は、真の非反応群(25.8%)におけるものよりも顕著に低いままであった(12.7%)。ビフィドバクテリウム科についても同じ傾向が見出された。換言すると、このようなビフィズス菌存在量は、睡眠と直接的に相関するものではない。
【0102】
0日目におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の相対存在量の中央値は、真の非反応群(6.2%)と比べて真の反応群でおよそ3倍高い(18.2%)ことも観察された。
【0103】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)に対するBiotis(商標)Sleepwellの促進効果は、真の反応群及び真の非反応群の両方で試験終了時に検出されなかった。
【0104】
真の反応群及び真の非反応群の微生物経路(MetaCyc)も比較した。0日目に、26のMetaCyc経路が真の反応群及び真の非反応群間で異なり、これらの経路は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)と強い相関を有した:キュレーションしたGut-Brainモジュール(GBM;M.Valles-Colomer,et.al.,Nature Microbiology 4(2019)623-632に記載)、「キノリン酸分解」(キノリン酸の増加は、うつ状態と関連付けられている;O.V.Averina et al.,Int.J.Mol.Sci.,21(2020)9234)、「イノシトール合成」(前頭皮質イノシトールは、総睡眠時間と正の相関を示し、うつ状態の重症度と負の相関を示す;A.S.Urrila et al.,Neurospychobiology 75(2017)21-31)及び「一酸化窒素合成II-亜硝酸還元酵素」(一酸化窒素は、有益な神経伝達物質としてみなされている)は、真の反応群で顕著に低かった。
【0105】
上記は、(i)GOSによる処置がビフィズス菌の存在量を増加させるが、(ii)これが、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の存在量のベースラインが一定の最低レベルにある場合にのみ、向上した睡眠をもたらすことが強く示唆された。従って、このベースラインレベルを高めることで(2’-FLによって達成され得る(実施例1を参照されたい))、GOSによる処置に対する真の反応群の数が増加することが予期される。
【0106】
このような組成の例を以下の表に表す。
【0107】
栄養分 含有量
タンパク質(g) 10
乳漿タンパク質(g) 9.5
Lactium(登録商標)(73%タンパク質)(mg) 200
ラクトース(g) 1.9
GOS(g) 5.2
2’FL(g) 0.5
マグネシウム(mg) 200
亜鉛(mg) 5
ビタミンB6(mg) 1
ナイアシン(mg) 10
ビタミンD3(μg) 10
【0108】
栄養分 含有量
タンパク質(g) 10
乳漿タンパク質(g) 9.5
Lactium(登録商標)(73%タンパク質)(mg) 200
ラクトース(g) 1.9
GOS(g) 5.2
2’FL(g) 0.25
マグネシウム(mg) 200
亜鉛(mg) 5
ビタミンB6(mg) 1
ナイアシン(mg) 10
ビタミンD3(μg) 10
【0109】
栄養分 含有量
タンパク質(g) 10
乳漿タンパク質(g) 9.5
Lactium(登録商標)(73%タンパク質)(mg) 200
ラクトース(g) 1.9
GOS(g) 5.2
2’FL(g) 1.0
マグネシウム(mg) 200
亜鉛(mg) 5
ビタミンB6(mg) 1
ナイアシン(mg) 10
ビタミンD3(μg) 10
【国際調査報告】