(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】健全性(SoH)及び充電状態(SoC)を検出するための手段を備えた電池セル及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231228BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20231228BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231228BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231228BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M50/10
H01M10/058
H01M10/052
H01M12/08 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533309
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 ES2020070746
(87)【国際公開番号】W WO2022112622
(87)【国際公開日】2022-06-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523202152
【氏名又は名称】アソシアシオン・セントロ・テクノロヒコ・セイト
【氏名又は名称原語表記】Asociacion Centro Tecnologico Ceit
(71)【出願人】
【識別番号】523202163
【氏名又は名称】ジェライオン・テクノロジーズ・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Gelion Technologies Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ガラルサ ロドリゲス,アイノア
(72)【発明者】
【氏名】アジェルディ オライソラ,イサベル
(72)【発明者】
【氏名】カスターニョ カルモナ,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】デジラーニ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウリッシ、ウルデリコ
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
5H030
5H032
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011DD11
5H029AJ12
5H029AL12
5H029DJ02
5H029HJ12
5H030AA06
5H030AA10
5H030AS20
5H030FF22
5H030FF41
5H032AA02
5H032AS02
5H032AS12
5H032CC01
5H032CC30
5H032HH05
(57)【要約】
電池を構成するバッグ(1.1)の形態の電気化学セル(1)が開示され、電気化学セルは、バッグ(1.1)の外面に固定されたセンサ(2)を備え、センサは、少なくとも1つの感知素子(2.1.1、2.1.2)と、少なくとも1つの導電素子(3)と、任意選択的に、少なくとも1つの抵抗素子(2.2)と、を備え、導電素子(3)は、感知素子(2.1)及び/又は抵抗素子(2.2)を一緒に接続し、感知素子、導電素子(3)、及び/又は抵抗素子(2.2)は、それぞれ、感知素子、導電素子(3)、又は、抵抗素子(2.2)の材料の部分をバッグ(1.1)の外部に別個に堆積させることによって得られる。また、バッグ(1.1)の形態で少なくとも1つの電気化学セルを備える電池も開示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を構成するバッグ(1.1)の形態の電気化学セル(1)であって、
- 前記バッグ(1.1)の外面に固定されたセンサ(2)を有して成り、前記センサ(2)が、少なくとも1つの感知素子(2.1.1、2.1.2)と、少なくとも1つの導電素子(3)と、任意選択的に、少なくとも1つの抵抗素子(2.2)とを有して成り、前記導電素子(3)が前記感知素子(2.1)及び/又は前記抵抗素子(2.2)を一緒に接続し、
- 前記感知素子、前記導電素子(3)、及び/又は前記抵抗素子(2.2)が、それぞれ、前記感知素子、前記導電素子(3)、又は前記抵抗素子(2.2)の材料の部分を前記バッグ(1.1)の前記外面に別個に堆積させることにより得られる、電気化学セル(1)。
【請求項2】
変形感知素子(2.1.1)及び/又は温度感知素子(2.1.2)が、前記バッグ(1.1)の前記外面に堆積されたピエゾ抵抗性材料及び/又は熱抵抗材料によって構成されている、請求項1に記載の電気化学セル(1)。
【請求項3】
同じ材料の複数の感知素子(2.1.1、2.1.2)を有して成る、請求項1または2に記載の電気化学セル(1)。
【請求項4】
前記温度感知素子(2.1.2)が、実質的に前記バッグ(1.1)の中央に配置されている、請求項2または請求項2に従属する請求項3のいずれか一項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項5】
前記温度感知素子(2.1.2)が、実質的に四角形の形状である、請求項4に記載の電気化学セル(1)。
【請求項6】
前記変形感知素子(2.1.2)及び前記抵抗素子(2.2)が、ホイートストンブリッジを形成するように接続されている、請求項2または請求項2に従属する請求項3~5のいずれか一項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項7】
前記感知素子(2.1)、前記抵抗素子(2.2)、又は前記導電素子(3)の前記材料の前記堆積が、スパッタリング又は印刷によって為されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項8】
前記感知素子(2.1.1、2.1.2)、前記抵抗素子(2.2)、及び/又は前記導電素子(3)は、前記バッグ(1.1)の前記外面に異なるそれぞれの層が形成されるように配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項9】
前記センサ(2)が、前記感知素子(2.1.1、2.1.2)、前記抵抗素子(2.2)、及び前記導電素子(3)に適用された不動態化層(4)を有して成る、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項10】
リチウム金属によって構成されたアノードを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項11】
リチウム硫黄セル、リチウム空気セル、固体状リチウムイオンセル、又はリチウム-NMCセルから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の電気化学セル(1)を少なくとも1つを有して成る、SOH及びSOCの検出が行える電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電式電池に関するものであり、好ましくは、そのSoH及びSoCを計算するための手段を備えた電池セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は、貯蔵された化学エネルギーを電流に変換することができる、1つ以上の電気化学セルからなるデバイスである。電気化学セルは、円筒形、ボタン形、角柱形、及びバッグ形などの数多くの形状及びサイズが存在する。具体的には、バッグセルが、電池設計に対して単純で、柔軟な、かつ軽量の解決策を提供することから、近年注目を集めている。
【発明の概要】
【0003】
エネルギー効率を管理し、電池寿命を延ばすには、電池の充電状態(SoC)及び健全性(SoH)を決定することが極めて重要な課題である。
【0004】
具体的には、SoCは、電池の容量に対するその充電レベルを表す。SoCを表す最も一般的な方法は、パーセンテージ(0%=空充電、100%=満充電)である。
【0005】
SoHは、理想的な状態と比較した電池の状態を表す。SoHを表すために最も使用される単位は、パーセンテージ(100%=電池の状態が電池の仕様に適合する)である。一般に、電池のSoHは、製造時に100%であり、時間及び使用を通じて低下する。
【0006】
長年にわたり、電池のSoC及びSoHを決定するためのいくつかの方法が提案されており、最も広く使用されている方法の1つは、特許文献EP3671939(A1)などの、電池の電圧及び電流の電気的測定値の使用に基づくものである。これらの測定値は、異なる外挿アルゴリズムとともに、SoC及びSoHに直接関係するパラメータである電池のインピーダンスを推定することを可能にする。
【0007】
しかしながら、現在の電池のインピーダンスは、1ミリオーム未満であり得、したがって、測定方法及び必要なハードウェアが特定の要件を克服しなければならず、電池のコストを大幅に増加させる。
【0008】
電池の性能を予測するための別の有効な手法は、極めて高感度で低コストのセンサを使用した、電池を構成するセルの内部状態の変化のリアルタイム測定に基づくものである。
【0009】
電池セルの充放電サイクルは、デバイスの劣化に関連する周期的なセルの変形をもたらす、電極及び電解質のミクロ構造的な変化を引き起こす。したがって、セルの容積の変動を検出することができる低コストの非侵襲性センサは、機械的応力をセルの化学分解と関連付けることよって、電池のSoC及びSoHを推定するのに非常に適したツールである。
【0010】
SoC及びSoHを推定するために最も使用されている電池の物理的特性の非侵襲的測定戦略の1つは、セルの表面変形を測定することである。
【0011】
セルの表面変形を測定するための1つのかかる方法は、光学測定であるが、この方法には、過剰なコスト及び電池への組み込みの難しさといった欠点がある。
【0012】
セルの表面変形を測定するための別の方法は、特許文献US2020/0014074(A1)にあるような、セルの表面に接着された変形センサを使用することである。この方法には、接着剤が変形センサとセルの表面との間の絶縁体として作用することによって、データを取得するプロセスが妨げられる、誤差をもたらす、及び製造プロセスが妨げられる、といった大きな欠点がある。
【0013】
したがって、最小の誤差及び低い組み込みコストで変形の正確な測定値を得ることを可能にする、変形センサがセルの表面に直接組み込まれた電気化学セルを開発することが必要である。
【0014】
[発明の目的]
上述した全ての観点から、本発明の目的は、バッグの形態(form of a bag)の電池セルであり、電池セルは、バッグの外面に固定されたセンサを備え、センサは、少なくとも1つの感知素子(または検知素子、sensing element)と、少なくとも1つの導電素子(または伝導素子、conducting element)と、任意選択的に少なくとも1つの抵抗素子(またはレジスター素子、resistor element)と、を備え、導電素子は、感知素子及び/又は抵抗素子を一緒に(または共に若しくは一体的に、together)接続し、感知素子、導電素子、及び/又は抵抗素子は、それぞれ、感知素子材料、導電素子材料、又は抵抗素子材料の部分(または一部分、part)をバッグの外面に別個(または個々、separately)に堆積(deposit)させることによって得られる。
【0015】
センサの異なる素子がセルの外面に直接堆積されるので、バッグは、バッグ表面の変形の測定を妨げ得るような、それゆえ、電池のSoC及びSoHの推定を妨げ得る接着剤、基板などの異なる中間要素の存在を回避することができる。
【0016】
更に、感知素子の材料部分(または材料の一部分)を別個に堆積させることによって、導電素子又は抵抗素子は、感知素子、導電素子、又は抵抗素子が行う機能により適した様々な材料で、これらを構成することを可能にする。
【0017】
好ましくは、感知素子は、バッグの外面に堆積されたピエゾ抵抗性材料(もしくはピエゾ抵抗材料、piezoresistive material)及び/又は熱抵抗材料(もしくは熱抵抗性材料もしくは感熱性材料、thermoresistive material)によって構成された変形感知素子及び/又は温度感知素子である。
【0018】
バッグの外面の特性のより良好なデータ収集のために、したがって、電池のSoC及びSoHのより良好な推定を得るために、感知素子のうちの1つは、セルバッグの表面変形を検出するように構成された変形感知素子である。同様に、別の感知素子は、バッグの表面温度を測定するための温度感知素子である。このようにして、変形感知素子及び温度感知素子によって取得されたデータによって、電池のSoC及びSoHが推定される。
【0019】
その一方で、温度感知素子又は変形感知素子のうちの1つだけでSoC及びSoHを推定することも可能であり得るが、より正確な推定は、それらの組み合わせによって達成される。
【0020】
ピエゾ抵抗性材料は、主に材料変形に対するピエゾ抵抗性材料の電気抵抗を変化させることによって、変形感知素子を構成するための適切な材料になり、同様に、熱抵抗材料は、主にその温度に対する熱抵抗材料の電気抵抗を変化させることによって、温度感知素子に適した材料になる。
【0021】
本発明の特徴によれば、セルは、同じ感知素子材料の複数の感知素子を有して成ることによって、製造コストを低減させて、得られる測定値が、異なる感知素子の間で整合することを確実にする。
【0022】
本発明の一態様によれば、温度感知素子は、バッグの実質的に中央(center)に、すなわち、その外形から等距離にあるバッグの中間点(midway point)に堆積される。バッグの外面の中央は、バッグの表面変形がより少ない位置であると予想される。このようにして、温度感知素子の電気抵抗の変化は、バッグ自体の変形の測定を妨げることなく、ほぼ排他的に材料の温度に関連付けられる。
【0023】
好ましくは、温度感知素子は、実質的に四角形の形状である。この構成は、中央に位置決めすることによって順次導出される温度感知素子の変形を均一にし、結果的に、全方向において同様に変形することを可能にする。したがって、バッグの外面の変形に対する温度感知素子の電気抵抗の変化が更に減少し、データ収集が向上する。
【0024】
追加的に及び好ましくは、感知素子及び抵抗素子は、ホイートストンブリッジ(Wheatstone bridge)を形成するように接続される。これは、感知素子の材料の温度の変化による感知素子の抵抗の変化が、バッグの表面変形による感知素子の抵抗の変化を隠さないことを確実にし、より正確なデータ収集をもたらす。
【0025】
その一方で、感知素子、抵抗素子、又は導電素子の材料の部分(または材料部分もしくは材料の一部分、portion/portions of material)の堆積は、スパッタリング(sputtering)又は印刷(printing)によって行われる。このようにして、センサは、バッグ表面に固定され、データ収集を妨げ得る基板又は接着剤に対する必要性を排除する。
【0026】
好ましくは、感知素子、抵抗素子、及び/又は導電素子は、バッグの外面に異なるそれぞれの層を形成して堆積される。このようにして、センサの製造プロセスは、それぞれが感知素子、抵抗素子、及び/又は導電素子に対応する様々な段階において均質化される。これは、センサを構成する素子の各々の最適化をもたらす。
【0027】
好ましくは、センサは、感知素子、抵抗素子、及び導電素子に適用された(または設けられた若しくは塗布された、applied)不動態化層(または不動態層、passivating layer)を備える。この不動態化層は、酸化、表面の傷などに対する感知素子、抵抗素子、及び導電素子の機械的耐性を高める。
【0028】
本発明の主たるセルが、リチウム金属によって構成されたアノードを有すること、及びセルが、リチウム硫黄セル、リチウム空気セル、固体状リチウムイオンセル(または固体リチウムイオンセル)、又はリチウムNMCセル、好ましくは固体状Li-Sの中から選択されることが想定される。Liアノードの厚さの相当な増加/減少に起因してバッグがそれぞれの充放電サイクル中に相当な容積変化を受けるので、本発明の主たるセルの構成は、Li金属セルの場合のバッグの外面の特性のデータ収集に関して特に興味深い。したがって、上述のセンサ構成によって、かかる変形が検出され、電池のSoC及びSoHのより良好な推定を取得する。
【0029】
また、硫黄の絶縁性質に起因して電池のそれぞれのサイクル中に熱が容易に発生するLi-Sセルの場合、セルバッグが備える様々な感知素子の本発明の主たる構成は、温度及び変形に起因する変化がより効果的に検出されるような、電池のSoC及びSoHのより良好な推定に特に関する。
【0030】
また、本発明の目的は、そのSoH及びSoCを計算するための当該電気化学セルを備える電池である。好ましくは、少なくとも1つのリチウム金属セル、より好ましくは固体状Li-S電池などのLi-Sセルを備えた電池である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】最新技術の例示的なバッグタイプセルの平面図を示す。
【
図2】バッグ表面にセンサを堆積させたセルの例示的な一実施形態の平面図を示す。
【
図3】バッグ表面にセンサ及び導電素子を堆積させたセルの例示的な一実施形態の平面図を示す。
【
図4A】スパッタリング法によってセンサ、導電素子、及び不動態化層をバッグ表面に印刷するための段階を示す。
【
図4B】スパッタリング法によってセンサ、導電素子、及び不動態化層をバッグ表面に印刷するための段階を示す。
【
図4C】スパッタリング法によってセンサ、導電素子、及び不動態化層をバッグ表面に印刷するための段階を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上述した図面の観点から、及び採用された付番に従って、以下で詳細に示され、かつ説明される部品及び要素を備える、本発明の好適な実施形態の実施例をそれらの中で観察することができる。
【0033】
図1は、最新技術の電気化学セル(1)の実施例を示し、具体的には、バッグ(1.1)、好ましくは長方形形状を有する当該バッグ(1.1)を備えたセル(1)を示す。
図1から分かるように、セル(1)は、バッグ(1.1)の一方の端部には陽極端子(1.2)を備え、対向端部には負極端子(1.3)が突出しており、当該陽極端子(1.2)及び負極端子(1.3)において、セル(1)の外部の電気回路との接続が生じる。
【0034】
図2は、バッグ表面(1.1)に印刷されたセンサ(2)を備えたセル(1)を示し、好適な実施形態のこの実施例では、センサ(2)は、一緒に接続された2つの感知素子(2.1.1、2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)で構成されている。具体的には、感知素子は、変形感知素子(2.1.1)及び温度感知素子(2.1.2)である。
【0035】
好ましくは、変形感知素子(2.1.1)及び抵抗素子(2.2)の材料は、ピエゾ抵抗性材料であり、温度感知素子(2.1.2)は、熱抵抗材料である。
【0036】
ピエゾ抵抗性材料は、それを変形させる機械的応力又は歪み(引っ張り又は圧縮)を受けたときに、その電気抵抗が変化するという特性を有する。かかる変化は、原子間の距離の変化又はキャリア濃度の変化のいずれかに起因し得る。ピエゾ抵抗性材料の電気抵抗はまた、温度にも依存し得るので、抵抗素子(2.2)を備えたホイートストンブリッジ構成が必要になる。
【0037】
ピエゾ抵抗性材料の異なる非限定的な例は、NiO、NiCr、TaN、TaNO、などである。
【0038】
熱抵抗材料は、主に温度変化を受けたときに、電位を生成することなく、その電気抵抗が変化するという特性を有し、温度感知素子(2.1.2)の構造に正しく関連付けられた材料をもたらす。
【0039】
サーミスタ材料の異なる非限定的な例は、NiO、Pt、Ag、などである。
【0040】
製造プロセスを簡略化し、したがって、セルの製造コストを低減するために、変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)は、同じ材料で、好ましくはピエゾ抵抗性材料及び熱抵抗材料として機能することができる材料で作製することができる。
【0041】
図2から分かるように、温度感知素子(2.1.2)は、好ましくはバッグ表面(1.1)の中央に堆積される。この位置では、バッグ(1.1)の表面変形が均一であり、かつバッグ表面(1.1)全体の中で最も低いことが予想される。したがって、温度測定時のバッグ(1.1)の外面変形に起因する干渉が低減され、温度感知素子(2.1.2)は、もっぱら温度変化の作用によって変形する。
【0042】
バッグ(1.1)の外面の当該中心は、当該バッグが電池セルを収容するときにバッグ(1.1)の4つの縁部から等距離にあるように規定される。
【0043】
好ましくは、この温度感知素子(2.1.2)は、実質的に正方形の形状を有し、したがって、セルの変形に起因する温度感知素子(2.1.2)の電気抵抗の変化が最小になる。温度感知素子(2.1.2)の材料の全方向において均一な変形が得られ、よって、測定データの信頼性がより高くなる。
【0044】
図3から分かるように、導電素子(3)は、電気信号を送信するためにバッグ(1.1)の外面に堆積されている。この導電素子(3)は、変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)を端子(3.2)に接続する、トラック(3.1)を備え、この端子は、好ましくは、陽極端子(1.2)の近くで、バッグ表面(1.1)の周縁に位置付けられる。
【0045】
かかる端子は、次いで、センサから取得したデータを送信するためにPCBに接続される。
【0046】
好ましくは、感知素子(2.1.1、2.1.2)、抵抗素子(2.2)、及び導電素子(3)をバッグ(1.1)に堆積させるための選択された方法は、例えばロールツーロールプロセスにおいて統合された、インクの形態の液体材料のスパッタリング、及び塗布である。どちらのプロセスも例として記載されたものであり、限定するものではないことに留意されるべきである。
【0047】
スパッタリング法は、固体材料の原子にエネルギーイオンをスパッタリングすることによって原子を蒸発させる物理プロセスである。このプロセスは、材料上の薄膜形成、エッチング技術、及び分析手法において広く使用されている。
【0048】
変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、抵抗素子(2.2)、及び導電素子(3)がセル(1)のバッグ(1.1)の外面に堆積された時点で(又はされてから)、不動態化層(4)が、導電素子(3)の端子(3.2)を除いて、変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、抵抗素子(2.2)、及び導電素子(3)を覆うようにバッグ(1.1)の外面に堆積される。
【0049】
この不動態化層(passivating layer)(4)は、変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、抵抗素子(2.2)、及び導電素子(3)を表面の傷、酸化、などから保護(protect)する。
【0050】
不動態化層(4)の材料の例は、特に制限されるわけではないが、プリント回路基板をコーティングするための市販の化合物である、Plastik70化合物(Plastik70)である。
【0051】
本発明のこの実用的な例示的な実施形態では、スパッタリングは、変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)を堆積させること、導電素子(3)を堆積させること、バッグ表面(1.1)に堆積させた材料を硬化させること、及び不動態化層(4)を堆積させること、の4つの段階に分けられる。
【0052】
図4Aから分かるように、変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)の材料、好ましくはNiOなどのピエゾ抵抗性材料の堆積は、以下の3つの副段階に分けられる。
-バッグ表面(1.1)に剛性マスク層(5)を使用する。このマスクは、スパッタリングによる後続の材料の堆積を容易にする。
-変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)の材料をバッグ表面(1.1)に堆積させる。好ましくは、約100nm~1μmのNiO層が堆積される。
-変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)がバッグ表面(1.1)に取り付けられたままの状態で、マスク層(5)を除去する。
【0053】
同様に、
図4Bから分かるように、導電素子(3)の材料、好ましくはAgなどの導電材料の堆積は、以下の3つの副段階に分けられる。
-バッグ表面(1.1)に剛性マスク層(5)を使用する。
-導電素子材料(3)を堆積させる。好ましくは、約100nm~1μmのAg層を堆積させる。バッグ(1.1)とAg層との間のより良好な接着のために、約10nm~50nmのCr層が使用される。
-変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)、及び導電素子(3)だけをバッグの表面(1.1)に残して、マスク層(5)を除去する。
【0054】
変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、抵抗素子(2.2)、及び導電素子(3)の材料が堆積された時点で(又はされてから)、120℃で1時間にわたり材料を硬化させる。
【0055】
最後に、
図4Cから分かるように、不動態化層(4)の堆積は、以下の3つの副段階に分けられる。
-バッグ表面(1.1)に剛性マスク層(5)を使用する。
-不動態化層(4)の材料をバッグの表面(1.1)に堆積させる。変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)、導電素子(3)、及び不動態化層(5)だけをバッグの表面(1.1)に残して、マスク層(5)を除去する。
【0056】
別の実施形態によれば、バッグ表面(1.1)に変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、抵抗素子(2.2)、導電素子(3)、及び不動態化層(4)を得るための、材料の部分(または一部分)の堆積は、インク及び/又はペーストをバッグ(1.1)の外面に直接印刷することによって行われる。
【0057】
これは、低コストの製造の代替案であり、その場合、バッグ(1.1)は、可撓性材料であり、製造プロセス全体をロールツーロールシステムに統合することを可能にし、結果的に、大きな面を高速で処理することを可能にする。
【0058】
印刷を含む本発明のこの例示的な実施形態は、以下の4つの段階に分けられる。
-導電インク(例えば、銀又はグラファイト)によってバッグ表面(1.1)に導電素子(3)の第1の印刷を行い、後続の硬化によりトラック(3.1)及び端子(3.2)を画定する。
-次いで、ピエゾ抵抗性インク(主に、導電ポリマー、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)、又は埋め込み導電粒子を伴うポリマーマトリックス、例えば、金属ナノ粒子又はカーボンナノチューブを伴うPDMS又はポリイミド)によって、変形感知素子(2.1.1)及び抵抗素子(2.2)をバッグ表面(1.1)に印刷し、続いて、硬化を行う。
-温度感知素子(2.1.2)を、変形感知素子と同じ材料及びプロセスを使用して堆積させること、又は熱抵抗材料を最適化する後続のプロセスを構成することができる。
-最後に、誘電性不動態化層(4)を印刷し、続いて、最終の硬化ステップを行う。
【0059】
現在利用可能な印刷技術は数多くあり(フラットベッド及び回転スクリーン印刷、インクジェット印刷、マイクロディスペンシング、エアロゾル印刷、フレキソ印刷、グラビア、など)、それらは全て、センサ(2)の印刷に有効である。
【0060】
上で説明した方法のうちのいずれかによって、変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、抵抗素子(2.2)、導電素子(3)、及び不動態化層(4)をバッグ表面(1.1)に堆積させた後に、センサによって得られたデータを電池のSoC及びSoHと関連付けるための試験を行った。
【0061】
最初に、変形感知素子(2.1.1)から得られたデータに関する調査に焦点を当てるために、常温の気候室内で試験を行った。
【0062】
変形感知素子(2.1.1)のデータを電池のSoHと関連付けるために、最大変形(ε最大)、最小変形(ε最小)、平均変形(ε平均)、及び変形範囲(Δε=ε最大-ε最小)を電池のSoHと比較した。
【0063】
最小変形及び平均変形は、SoHとの最も強い関係を示す。しかしながら、どちらも、それぞれの充放電サイクル中の変形値に基づいており、通常動作中に識別することは困難であり得る。この場合、最大変形及び平均変形について、-0.9437~-0.9466の相関係数が得られ、ここでも強い関係を示す。
【0064】
したがって、変形感知素子(2.1.1)、温度感知素子(2.1.2)、及び抵抗素子(2.2)は、導電素子(3)を通して端子(3.2)に接続される。かかる端子(3.2)は、バッグ(1.1)の外面の変形及び温度を計算するために必要な残りの要素とともにPCBに接続される。
【0065】
したがって、四角形であり、かつバッグ(1.1)の中央に位置する温度感知素子(2.1.2)は、セルの変形によって変化することなく、正確な温度の示度を提供する。変形感知素子(2.1.1)の場合は、その変形が最大になる場所に配置され、変形が最小になる場所に配置された抵抗素子(2.2)とホイートストンブリッジを形成する。抵抗素子(2.2)では、抵抗が温度とともに変化するので、変形感知素子(2.1.1)の変形によってもっぱら取得されるデータが演繹される。
【0066】
これらの測定データ及びアルゴリズムを使用して、電池のSoH及びSoCが推定され、エネルギー効率のより良好な管理を達成し、かつ電池寿命の延長を管理するための追加的なパラメータを構成する。
【国際調査報告】