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特表2024-501153モルヒネからのノルオキシモルフォンの合成のための新規方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】モルヒネからのノルオキシモルフォンの合成のための新規方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 489/08 20060101AFI20231228BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231228BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
C07D489/08
A61K31/485
A61P25/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533312
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 IN2021050262
(87)【国際公開番号】W WO2022144911
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202021056621
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523202347
【氏名又は名称】ナヴィン サクセナ リサーチ アンド テクノロジー ピーブイティー.エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴルバチョフ,ディミトリー
(72)【発明者】
【氏名】ラム,ホン ワイ
(72)【発明者】
【氏名】サクセナ,アーカーシュ
(72)【発明者】
【氏名】サクセナ,ナヴィン サティアパール
【テーマコード(参考)】
4C086
4H039
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086CB23
4C086MA01
4C086NA20
4C086ZA08
4H039CA60
4H039CA71
4H039CE20
(57)【要約】
本発明は、先行技術で使用されるものと比較して毒性がより低く、より低コストの試薬及び溶媒を使用してモルヒネをノルオキシモルフォンに変換するための、新規の効率的でポット経済的かつ原子経済的であり、工業的に適用可能な方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルヒネからノルオキシモルフォンを調製するための方法であって、
【化1】

1)式(II)のモルヒネを反応させて式(III)の化合物を得るステップ、
2a)前記式(III)の化合物を酸化剤で酸化して式(IV)の化合物を得るステップ、
2b)前記式(IV)の化合物をアシル化剤でアシル化して式(V)の化合物を得るステップ、
3a)前記式(V)の化合物をペルオキシ酸化に供して式(VI)の化合物を得るステップ、
3b)前記式(VI)の化合物を還元して式(VII)の化合物を得るステップ、及び
4)前記式(VII)の化合物を加水分解して式(I)のノルオキシモルフォンを得るステップを含み、
式中、R及びRは、独立して1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルアリール基、又は2~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニル基、又はアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基、又は置換若しくは非置換アリールオキシカルボニル基、又はアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルアリールオキシカルボニル基、又はシアニド基、又は式Si(R(式中、基Rは同一又は異なっていてもよく、それぞれ1~6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基及び置換若しくは非置換アリール基からそれぞれ選択され、Rは、それぞれアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルカルボニル基、又はアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルアリールカルボニル基、又は置換若しくは非置換アリールカルボニル基、又は2~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニルカルボニル基である)のシリル基であり、
ステップ2aがAlbright-Goldman酸化条件を使用して行われ、
ステップ2a及びステップ2bをワンポット単一ステップ変換に組み合わせることができ、
ステップ3a及びステップ3bをワンポット単一ステップ変換に組み合わせることができる、方法。
【請求項2】
式(III)の化合物が、式(IV)の化合物を形成するために、Albright-Goldman酸化条件で典型的に利用される酸化剤を使用して酸化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び非環式又は環式有機酸無水物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸無水物が、無水酢酸、安息香酸無水物、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物、ペンタン酸無水物、ヘキサン酸無水物、イソ酪酸無水物、イソ吉草酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、アンゲリカ酸無水物、クロトン酸無水物、ピバル酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、モノフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、クロロ酢酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、3-メチルグルタル酸無水物、3,3-ジメチルグルタル酸無水物、ヘキサフルオログルタル酸無水物、無水フタル酸、無水ホモフタル酸からなる群から選択される、請求項2及び3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ2aにおける前記酸化反応が、大気圧及び約0℃~120℃の温度で適切に行われ得る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化反応が55℃~65℃で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アシル化剤が無水酢酸である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ステップ2bにおける前記アシル化が、酢酸ナトリウム又はトリエチルアミンの存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ3aが、-10℃~100℃の温度の氷酢酸中で実質的に無水条件下で、予め形成された過ギ酸を用いて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記過ギ酸が、ギ酸を30%以上の過酸化水素で処理することによって調製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ3b)で使用される還元剤が10%パラジウム炭素である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記還元が、氷酢酸中25℃~80℃の温度範囲で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ4における前記加水分解が、硫酸などの酸性加水分解触媒又は水酸化カリウムなどの塩基性加水分解触媒の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記プロセスステップ2a、2b、3a及び3bが異なるポットで行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセスステップ1、2a、2b、3a、3b及び4が、バッチ反応器、又は連続フロー反応器、又はマイクロ波反応器、又はそれらの組み合わせで行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記R及びRがエトキシカルボニル基であり、Rがアセチル基である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行技術で使用されるものと比較して毒性がより低く、より低コストの試薬及び溶媒を使用してモルヒネをノルオキシモルフォンに変換するための、新規の効率的でポット経済的かつ原子経済的であり、工業的に適用可能な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モルフィナン化合物は、オピエート受容体アゴニスト又はオピエート受容体アンタゴニストとして作用することができる構造的に関連するアルカロイドの群である。モルヒネ、ヒドロモルフォン、コデイン、ヒドロコドン、ジヒドロモルヒネ、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロモルフォン、及びオキシモルフォンなどのMu-オピエート受容体アゴニストは、疼痛緩和のための鎮痛薬として有用である。しかし、ナロキソン、ナルトレキソン及びナルメフェンなどの化合物は、物質乱用の処置又はmu-オピエートアゴニストの効果を逆転させるのに有用なmu-オピエート受容体アンタゴニストである。有用な医薬活性を示す天然に存在するアヘン系アルカロイドの半合成誘導体の他の例としては、メチルナルトレキソンブロミド、ナロキセゴール、ナルブフィン、ナルフラフィンなどが挙げられる。mu-オピエート受容体アンタゴニストの広範なファミリーは、一般に「nal-誘導体」又は「nal-化合物」と称される。様々な医学的に関連するnal-誘導体の例を図1に示す。
【0003】
【化1】
【0004】
これらの医学的に関連する化合物の合成は、ノルオキシモルフォン(化合物I)を、上記のnal-誘導体の調製をもたらす後期多様化のための共通の中間体として利用する。ノルオキシモルフォンによって調製することができる多様な範囲の活性医薬成分(API)は、この中間体の効率的な合成を特に興味深いものにしている。現在、ノルオキシモルフォンのより一般的な合成経路は、テバイン及びオリパビンなどの天然に存在するアルカロイドを利用する。しかし、これらの出発物質にはいくつかの制限がある。例えば、テバイン及びオリパビンは、ケシ植物(植物名:papaver somniferum)から希少な量で見出され、抽出される。テバイン及びオリパビンと比較して、ケシ植物中のモルヒネの含有量は有意に高く、したがってモルヒネをより豊富に、かつかなり低いコストで利用可能にする。
【0005】
これらの理由から、モルヒネからのノルオキシモルフォンの効率的かつ工業的に適用可能な合成が非常に望ましいであろう。オリパビン及びテバインからのノルオキシモルフォン(化合物I)の合成をスキーム1に示す。
【0006】
【化2】
【0007】
特許文献1(特許文献2)のB.T.Weber及びL.Hochstrasserは、モルヒネをノルオキシモルフォンに変換する方法を開示している。合成経路は、R.A.Wallaceによって報告された以前に公開された特許文献3(特許文献4)に本質的に類似している。両方の特許における6ステップ合成経路をスキーム2に示す。特定の些細で明白なプロセス関連の変化に加えて、2つの特許間の違いの2つの重要な点は、スキーム2に示すように、a)式(A)のアリルアルコールの式(B)の対応するエノンへの酸化、及びb)式(C)の酢酸ジエノールの式(D)の対応する14-ヒドロキシエノンへの変換に使用される条件のセットである。
【0008】
【化3】
【0009】
両方の特許を慎重に検査すると、これらの方法を工業的に実行不可能にするいくつかの大きな欠点及び限界が特定された。例えば、
【0010】
・第1のステップは、溶媒としてクロロホルム(特許文献3)又はジクロロメタン(特許文献1)のいずれかを使用して行われる。欧州医薬品庁(EMA)Q3C(R6)Guideline for Residual Solventsによれば、クロロホルム及びジクロロメタンは「クラス2」溶媒として分類される。EMAによれば、クラス2溶媒は、「...それらの固有の毒性のために医薬品に制限されるべきである」。同様に、EMAによれば、クラス3溶媒は「...毒性が比較的低く、ヒトの健康に対するリスクが比較的低いとみなされ得る」。したがって、クラス3溶媒の使用が非常に望ましいであろう。
【0011】
・第2のステップは、Swern酸化条件(特許文献1)を使用して実施される。Swern酸化は、代替的な金属媒介酸化反応と比較して毒性の低い試薬の使用、及び高い官能基耐性のために、小規模な学術的試みにおいてアルコールをケトンに酸化するために日常的に展開されている。しかし、この方法論は、-80℃もの低さに達する温度の予備冷却反応条件を必要とする。工業規模で長期間にわたってそのような極めて低い反応温度を達成し維持することは実用的ではない。特許文献1では、発明者らはこの大きな欠点を認識し、室温でSwern酸化を行うことによって解決しようと試みたが、結局大量の望ましくない副不純物の生成を観察し、これはプロセスの利点を著しく損なう。特許文献3では、第2のステップが、非常に毒性の高いクロム系酸化剤であるジョーンズ試薬を使用して行われる。これは、深刻な環境、健康、及び安全上の懸念を引き起こす。あるいは、酸化は、特許文献5(特許文献6)及び非特許文献1に報告されているように、酸化剤として二酸化マンガンを使用して行うことができる。残念ながら、この酸化を進めるためには超化学量論量の二酸化マンガンが必要であるため、この方法論は原子不経済であり、大過剰の無機廃棄物の生成につながる。式(A)の化合物の二酸化マンガン媒介酸化に使用される溶媒はクロロホルムであり、これは毒性溶媒である。したがって、より工業的に適用可能な毒性の低い試薬及び反応条件を使用した式(A)の化合物の酸化が非常に望ましい。
【0012】
・すべての以前の報告において、スキーム2に示される第2及び第3のステップは、別々の反応ポットで別個のステップとして実施される。効率的な多段階合成プロセスのために、ポット経済性は、複数の変換を単一ポット反応に入れ子にすることによって製造プロセス全体を合理化し、それにより全体的なプロセス効率を高めるのに役立つため、極めて重要である。したがって、式(A)の化合物の式(C)の化合物への単一ポット変換、したがって式(B)の化合物を単離する必要性を排除することが非常に望ましいであろう。
【0013】
・第4のステップは、酸化剤としてm-クロロ過安息香酸(特許文献3)又は過ギ酸(特許文献1及び特許文献3)のいずれかを使用して行われる。m-クロロ過安息香酸(mCPBA)は不安定で高価であるため、理想的ではない。また、mCPBAの分子量(M.W.)は172.57g/molである。スキーム2に示す式(C)の化合物から式(D)の化合物への変換中、ヒドロキシル基(M.W.≒17g/mol)が導入され、mCPBAの分子量の9.85%のみの質量移動を意味する。このため、mCPBAは非常に原子不経済な試薬である。原子経済性は、反応中の廃棄副生成物の生成を低減し、それによりプロセス全体をより安全かつ環境に優しいものにするのに役立つため、極めて重要である。したがって、上記の変換を達成するために、より原子経済的な過酸を使用することが望ましい。mCPBAと比較して、過ギ酸(M.W.=62.02g/mol)は著しく安価で原子経済的である(過ギ酸の分子量の27%の質量移動)。しかし、それも非常に不安定である。本発明者らは、事前に形成された過ギ酸を使用し、スキーム2に示されるように式(C)の化合物を式(D)の化合物に変換するための特許文献1に報告された手順を再現しようと試みたが、ジエノールアシレートの7,8-エポキシド誘導体を含む顕著な量の望ましくない副生成物の生成を観察した。この観察は、特許文献1の知見と一致する。したがって、望ましくない不純物の形成を最小限に抑えながら、式(C)の化合物を式(D)の化合物に変換することが非常に望ましい。
【0014】
・以前の報告において、スキーム2に示される第4及び第5のステップは、別々の反応ポットで別個のステップとして実施される。例えば、式(C)の化合物の式(D)の化合物への過酸媒介酸化が完了した後、反応混合物を水素化オートクレーブ反応ポットに移す。前述のように、プロセスのポット経済性を最適化し、複数の変換を単一ポットプロセスとして行う能力を高めることにより、多段階プロセスの全体的な効率に大きな影響を及ぼすことができる。したがって、式(C)の化合物の式(E)の化合物への単一ポット変換が非常に望ましいであろう。
【0015】
・特許文献1で報告された全体の収率は37%であるが、特許文献3で報告された全体の収率は約60%である。したがって、収率がより高いプロセスが望ましい。
【0016】
・特許文献3におけるノルオキシモルフォンのアッセイによって報告された純度は90%のみであるが、特許文献1におけるノルオキシモルフォンのHPLCによって報告された純度は94%のみである。したがって、優れた品質のノルオキシモルフォンの形成につながるプロセスも望ましい。
【0017】
・特許文献3及び特許文献1の両方におけるモルヒネのノルオキシモルフォンへの変換は、スキーム2に示すように、6ポットプロセスとして報告されている。したがって、より良好なポット経済性を有するプロセスが非常に望ましい。本発明者らの分析では、本発明者らは、非特許文献2に提供されている一般的に受け入れられている「ポット経済性」の定義を採用し、文献には、「...ワンポット合成は、化学反応の効率を改善するための戦略と定義され、それによって反応物は、1つのみの[単一]反応器内で連続的な化学反応に供される」と記載されている。本発明の目的のために、「ポット」、「容器」、「フラスコ」、「ミキサー」、「反応器」、「静的/バルク反応器」、「連続フロー反応器」、「マイクロ波反応器」という用語、及び他のそのような同様の用語は、それらがすべて化学変換が起こり得るデバイスであるように、互いに同等とみなされる。本発明者らはまた、「...プロセスで使用されるすべての材料の最終生成物への組込みを最大化するように合成方法を設計すべきである(ACS Green Chemistry Principles#2)」と記載する同じ報告書で提供されている「原子経済性」の一般に受け入れられている定義を採用した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第9,546,177号明細書
【特許文献2】欧州特許第3 024 835号明細書
【特許文献3】米国特許第5,112,975号明細書
【特許文献4】欧州特許第0 158476号明細書
【特許文献5】仏国特許第2,515,184号明細書
【特許文献6】米国特許第4,795,813号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Tetrahedron 1992,48(11),6709-6716
【非特許文献2】Chem.Sci.2016,7,866-880
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、当技術分野では、より毒性が低く、より低コストの環境に優しい試薬を使用して、式(II)のモルヒネを式(I)のノルオキシモルフォンに変換するための、効率的でポット経済的かつ原子経済的であり、工業的に適用可能な方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記のセクションで強調したように、従来技術に見出される欠点及び制限に対処する目的で改善された方法を提供する。したがって、本発明は、モルヒネからノルオキシモルフォンを製造するための改善された方法(スキーム3)であって、以下のステップ:
1.式(II)のモルヒネを反応させて、式(III)(式中、R及びRは、独立して1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルアリール基、又は2~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニル基、又はアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基、又は置換若しくは非置換アリールオキシカルボニル基、又はアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アリールアルコキシカルボニル基、又はシアニド基、又は式Si(R(式中、基Rは同一又は異なっていてもよく、それぞれ1~6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基及び置換若しくは非置換アリール基からそれぞれ選択される)の化合物を得るステップ、
2a.式(III)の化合物を酸化剤で酸化して、それぞれ式(IV)の化合物を得るステップ、
2b.式(IV)の化合物をアシル化剤でアシル化して、式(V)(式中、R及びRは、独立して1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルアリール基、又は2~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニル基、又はアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基、又は置換若しくは非置換アリールオキシカルボニル基、又はアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アリールアルコキシカルボニル基、又はシアニド基、又は式Si(R(式中、基Rは同一又は異なっていてもよく、それぞれ1~6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基、及び置換若しくは非置換アリール基からそれぞれ選択され、Rは、それぞれアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルカルボニル基、又はアルキル残基中に1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アリールアルキルカルボニル基、又は置換若しくは非置換アリールカルボニル基、又は2~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニルカルボニル基である)の化合物を得るステップ、
3a.式(V)の化合物をペルオキシ酸化に供して、それぞれ式(VI)の化合物を得るステップ、
3b.式(VI)の化合物を還元して、それぞれ式(VII)の化合物を得るステップ、及び
4.式(VII)の化合物を加水分解して式(I)のノルオキシモルフォンを得るステップ
を含み、ステップ2aがAlbright-Goldman酸化条件を使用して行われ、ステップ2a及びステップ2bをワンポット単一ステップ変換に組み合わせることができ、
ステップ3a及びステップ3bをワンポット単一ステップ変換に組み合わせることができる、方法に関する。
【0022】
本発明によるモルヒネからノルオキシモルフォンを調製するための新規のポット経済的方法を以下のスキーム3に示す。
【化4】
【0023】
本発明は更に、スキーム3のステップ1に示すように、式(II)のモルヒネを式(III)の化合物に変換するための非毒性非ハロゲン化極性有機溶媒の使用を記載する。特に、ICH Q3C(R6)Guideline for Residual Solventsによって定義されるクラス3溶媒は、初めて首尾よく使用されてこの変換に影響を及ぼした。
【0024】
本発明はまた、スキーム3のステップ2に示されるように、穏やかな工業的に適用可能な条件下での式(IV)の化合物のその場形成による式(III)のアリルアルコールの式(V)の対応するジエノールアシレートへの直接的かつ効率的なワンポット変換を記載する。
【0025】
本発明はまた、スキーム3のステップ3に示されるように、穏やかな工業的に適用可能な条件下での式(VI)の化合物のその場形成による式(V)の化合物の式(VII)の化合物への直接的かつ効率的なワンポット変換を更に記載する。
【0026】
本発明の更に好ましい実施形態は、従属請求項に定義される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
ここで、本発明を、その様々な態様がより完全に理解及び認識され得るように、特定の好ましい任意選択の実施形態に関連して詳細に説明する。
【0028】
より簡潔な説明を提供するために、本明細書に示される定量的表現のいくつかは、「約」という用語で修飾されない。「約」という用語が明示的に使用されるか否かにかかわらず、本明細書に示されるすべての量は、実際の所与の値を指すことを意図し、また、そのような所与の値の実験条件及び/又は測定条件による近似を含む、当技術分野における一般的技能に基づいて合理的に推測されるそのような所与の値への近似を指すことを意図することが理解される。より簡潔な説明を提供するために、本明細書の定量的表現のいくつかは、約量X~約量Yの範囲として列挙される。ある範囲が列挙される場合、その範囲は、列挙された上限及び下限に限定されず、むしろ約量X~約量Yの全範囲、又はその中の任意の量若しくは範囲を含むことが理解される。
【0029】
したがって、一態様では、本発明は、スキーム3に示すステップを特徴とする、式(II)のモルヒネを式(I)のノルオキシモルフォンに変換する方法に関する。
【0030】
本発明で使用される出発物質モルヒネは、スペインから調達した。
【0031】
スキーム3に示される式(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)の化合物では、R及びRは上記のセクションのように定義され、式中、Rは、好ましくはエトキシカルボニル基、又はアセチル基、又はメチル基、又は式Si(Rのシリル基から選択され、基Rは同一又は異なっていてもよく、それぞれ1~6個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基から選択され、Rは、好ましくはエトキシカルボニル基又はシアニド基から選択される。しかし、好ましい実施形態において、R及びRは、好ましくはエトキシカルボニル基である。スキーム3に示される式(V)の化合物において、R及びRは好ましくはエトキシカルボニル基であり、Rは上記のセクションのように定義され、式中、Rは好ましくはメチルカルボニルであり、一般にアセチル基とも称される。以下に示す反応ステップは、スキーム3に列挙したものに対応する。
【0032】
モルヒネからノルオキシモルフォンを調製するための方法の以下に示されるステップ1~4の条件及びパラメータを含む本発明の説明は、例としてステップ1がエチルハロホルメートエステル(例えば、エチルクロロホルメート)を使用して行われ、アシル基(R)がアセチルである場合について、そのようなステップ及びそこで生成される関連化合物を主に参照して与えられる。しかし、他のR、R及びR基は、モルヒネからノルオキシモルフォンを得るために、それぞれエトキシカルボニル及びアセチル基で全部又は一部が置換されてもよいと解釈されるべきである。
【0033】
ステップ1:したがって、式(II)のモルヒネから式(I)のノルオキシモルフォンを調製するための本発明の方法のステップ1において、最初のステップは、スキーム3に示されるような式(II)のモルヒネの式(III)の化合物への変換であり、それにより好ましくはC-3ヒドロキシル位にカーボネート基及びN-17アミノ位にカルバメート基を導入する。反応は、モルヒネを、例えば式X-C(=O)OR(式中、Xはハロゲン、好ましくは臭素又は塩素、又はより好ましくは塩素であり、それによりハロホルメートエステルはクロロホルメートであり、Rは1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルアリール基、又は2~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニル基である)のハロホルメートエステルと接触させることによって進行する。上記の定義内の例示的なR基は、メチル、エチル、プロピル、ヘプチル、1,1,1-トリクロロエチル、ビニル、ブテニル、フェニル、ベンジル、カルボベンジル及びナフチル基である。好ましくは、Rはエチル基であり、したがってエチルクロロホルメートが好ましいハロホルメートエステルである。
【0034】
反応は、好ましくは不活性雰囲気下で、不活性非毒性有機溶媒の存在下で行われ、ここで反応物は、溶液、分散液、懸濁液又は他の反応混合物を形成するために利用される反応条件下で溶解又は分散され得る。本明細書で使用される場合、「不活性」という修飾用語は、関連する反応に関連して言及される物質が、反応物及び所望の1種又は複数の生成物と少なくとも実質的に非反応性であることを意味する。
【0035】
ハロホルメートエステルは、好ましくは利用される有機溶媒中のモルヒネの溶液又は他の混合物に撹拌しながらゆっくり添加される。有機溶媒は、例えばアレーン、ケトン、エステル、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アレーン、又はそのような有機溶媒の2種以上の混合物から選択され得る。一実施形態では、アセトン、酢酸エチル又はそれらの混合物が溶媒として好ましい。別の実施形態では、酢酸エチルが溶媒としてより好ましい。
【0036】
反応は、好ましくは重炭酸カリウム及び重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、又はそのような弱塩基の2種以上の混合物から選択され得る弱塩基によって促進される。好ましい実施形態では、重炭酸ナトリウムが弱塩基として使用される。
【0037】
ステップ1における反応は、モルヒネ1モル当たり:約5~15モルのアルキル、アルケニル、アリールアルキル又はアリールブロモホルメート若しくはクロロホルメートなどのハロホルメートエステル、好ましくは約9.0モルのエチルクロロホルメート、約10~25モルの弱塩基、好ましくは約15モルの重炭酸ナトリウム、及び約0.1~100リットルの有機溶媒、好ましくは約1~10リットルの酢酸エチル若しくはアセトン又はそれらの組み合わせ、酢酸エチル若しくはアセトン又はそれらの組み合わせが有機溶媒として使用される場合、より好ましくは約3リットルを利用することによって行うことができる。反応は、例えば大気圧及び約30℃~100℃の温度で適切に行われ得るが、アセトンが有機溶媒として使用される場合は約35℃~45℃が好ましく、酢酸エチルが有機溶媒として使用される場合は約70℃~80℃が好ましい。不活性雰囲気は、好ましくは窒素である。
【0038】
好ましくは、ステップ1の反応は、実質的に無水の反応成分を使用することによって実質的に無水であり、すなわち混合物は10%を超える水を含有せず、より好ましくは5%を超える水を含有しない。
【0039】
反応完了後、反応混合物を室温(約30℃)まで冷却し、反応混合物を濾過した後、得られた濾液を濃縮乾固することにより、式(III)の生成物を単離する。
【0040】
より毒性が低く環境に優しい溶媒である酢酸エチルを反応溶媒として利用することにより、本発明の方法のステップ1は、クロロホルム及びジクロロメタンなどの非常に毒性が高く環境に有害なハロゲン化溶媒を使用する以前の報告よりも大幅に改善されている。
【0041】
ステップ2a:モルヒネからノルオキシモルフォンを調製するための本発明の方法の次のステップでは、式(III)の化合物を、スキーム3に示されるように式(IV)の化合物に変換し、それによりAlbright-Goldman酸化条件を使用して、式(III)の化合物中のアリルアルコール部分を式(IV)の化合物中の対応するエノン部分に変換する。Albright-Goldman酸化条件を使用した式(III)の化合物の式(IV)の化合物への変換は、本発明者らの知る限り、文献に以前に報告されていない。Albright-Goldman酸化では、本発明の範囲内で理解されるように、一般にアルコールを非環式又は環式有機酸無水物及びジアルキルスルホキシドと接触させることにより、第一級又は第二級アルコールが温和な条件下でそれぞれ対応するアルデヒド又はケトンに酸化される。
【0042】
本例では、式(III)の化合物を、反応時間を短縮するために撹拌しながら室温で、又は撹拌しながら高温で非環式又は環式有機酸無水物及びジアルキルスルホキシドと接触させることによって反応が進行する。反応は、好ましくは不活性雰囲気において無水条件下で行われる。酸無水物は、反応物としてだけでなく、溶液、分散液、懸濁液又は他の反応混合物を形成するために利用される反応条件下で残りの反応物を溶解又は分散させることができる有機溶媒として働く。
【0043】
ステップ2aの反応に利用される非環式有機酸無水物は、式(ROのものであり、式中、Rは上に定義される通りである。上記の定義内の例示的な非環式有機酸無水物は、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水ペンタン酸、無水ヘキサン酸、無水イソ酪酸、イソ吉草酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、無水アンゲリカ酸、無水クロトン酸、安息香酸無水物、及び置換安息香酸無水物である。しかし、好ましい一実施形態では、無水酢酸が非環式有機酸無水物である。別の好ましい実施形態では、安息香酸無水物が非環式有機酸無水物である。
【0044】
ステップ2aの反応に利用される環式有機酸無水物は、図2に以下に示す式(VIII)のものであり、式中Rは、アルキル残基中に2~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基、又は2個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニル基である。上記の定義内の例示的な環式有機酸無水物は、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、3-メチルグルタル酸無水物、3,3-ジメチルグルタル酸無水物、ヘキサフルオログルタル酸無水物、無水フタル酸、無水ホモフタル酸などである。しかし、好ましい一実施形態では、グルタル酸無水物が環式有機酸無水物である。
【0045】
【化5】
【0046】
ジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましいジアルキルスルホキシドである。
【0047】
ステップ2aの反応に適した酸化条件には、式(III)の化合物1モル当たり:約1~1000モルの有機酸無水物、好ましくは約10~50モルの無水酢酸、より好ましくは約25モルの無水酢酸、約1~100モルのDMSO、好ましくは約1~20モルのDMSO、より好ましくは約10モルのDMSOの添加又は存在が含まれる。反応は、例えば大気圧及び約0℃~120℃の温度で適切に行われ得るが、約70℃~85℃が好ましい。不活性雰囲気は、好ましくは窒素である。実質的にステップ1に記載の無水条件が好ましい。
【0048】
例えば、約4時間以内に完了し得る反応の終了時に、式(IV)の生成物を任意の適切な方法で反応混合物から回収することができる。好ましくは、反応の完了後、反応混合物を室温(約30℃)に冷却し、任意の適切なクエンチ手順を使用してクエンチする。好ましくは、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液を反応混合物に添加してクエンチを補助し、続いて式(IV)の化合物を有機溶媒中に抽出し、合わせたものから有機溶媒の少なくとも実質的な部分を蒸発させ、式(IV)の化合物を固体として得る。抽出に使用される有機溶媒は、例えば、式(IV)の化合物を優先的に溶解し、その後抽出溶媒を蒸発させて式(IV)の所望の生成物を得ることができるアレーン、ケトン、エーテル、エステル、ハロゲン化アルカン又はハロゲン化アレーンであってもよい。シクロペンチルメチルエーテルが抽出溶媒としての使用に好ましい。
【0049】
ステップ2b:モルヒネからノルオキシモルフォンを調製するための本発明の方法の後続のステップにおいて、式(IV)の化合物のアシル化は、その化合物を式(ROの酸無水物であるアシル化剤、又は式RX(式中、Rは上で定義した通りであり、Xはハロゲンである)のハロゲン化アシルと反応的に接触させることによって行われ、それにより式(V)のジエノールアシレート化合物が調製される。好ましくは、Xは臭化物又はより好ましくは塩化物であり、Rはアセチルである。
【0050】
アセチル化又は他のアシル化反応は、好ましくは不活性雰囲気下で触媒酸(以下「酸触媒」と称する)の存在下で、又はより好ましくは触媒塩基(以下「塩基触媒」と称する)の存在下で行われる。
【0051】
スキーム3のステップ2bにおける反応に適した条件には、式(IV)の化合物1モル当たり:約0.01~50モルの塩基(すなわち、塩基触媒)及び約1~100モルのアシル化剤の添加又は存在が含まれる。反応は、例えば、大気圧及び約0℃~120℃の温度で適切に行われ得るが、約75℃~85℃が好ましい。不活性雰囲気は、好ましくは窒素である。ステップ1について実質的に上述した無水条件が好ましい。
【0052】
適切なアシル化剤としては、例えば、塩化アセチル及び酢酸の混合無水物が挙げられる。無水酢酸が好ましい。塩基触媒は、酢酸ナトリウム若しくはカリウム、ピリジン、トリエチルアミン又は前述の塩基の2種以上の混合物から選択され得る。トリエチルアミンが触媒として一般に好ましく、特に無水酢酸が好ましいアシル化剤として利用される場合に好ましい。好ましくは、式(IV)の化合物1モル当たり、好ましくは無水トリエチルアミン約10モル及び無水酢酸約20モルが利用され、これらは溶媒としても機能する。
【0053】
適切な酸触媒としては、例えばp-トルエンスルホン酸及び三フッ化ホウ素エーテラートが挙げられる。ステップ2bについて上に記載された条件及びパラメータは、一般に上記の定義内の様々なR、R及びR基と共に使用するために適用可能である。
【0054】
2~4時間以内に完了し得る反応の完了後、反応混合物を室温(約30℃)に冷却することによって式(V)のジエノールアシレートを回収することができ、回収は、抽出手順を利用して行われる。そのような抽出は、例えば、式(V)の化合物を優先的に溶解し、その後抽出溶媒を蒸発させて式(V)の所望の生成物を得ることができるアレーン、ケトン、エーテル、エステル、ハロゲン化アルカン又はハロゲン化アレーンであり得る有機溶媒を使用して行うことができる。シクロペンチルメチルエーテルが抽出溶媒としての使用に好ましい。好ましくは、冷却した反応混合物を水で希釈し、シクロペンチルメチルエーテルを使用して抽出する。得られた式(V)の化合物を含有する有機溶媒抽出物を重炭酸ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、続いて有機溶媒を蒸発させて、所望の式(V)の化合物を固体として得る。
【0055】
ステップ2:反応混合物は、上記ステップ2aに記載された反応の完了後、かつステップ2aに記載された抽出手順の前に冷却することが有利であるが、このような冷却は十分に省略することができる。同様に、式(IV)の化合物の回収は、ステップ2bの開始前に十分に省略することができ、これはステップ2aの反応混合物中でその場で進行することができる。
【0056】
式(IV)の化合物のその場形成による式(III)の化合物の式(V)の化合物へのワンポット変換は、HPLC分析が<5%の式(III)の反応物を検出するまで(約4時間の反応時間)、窒素の不活性雰囲気下で撹拌しながら、高温でステップ2aにおいて上述したように式(III)の化合物を有機酸無水物及びジアルキルスルホキシドと接触させることによって進行し、検出された時点で、ステップ2bにおいて上述したように塩基触媒又は酸触媒を反応混合物に導入し、窒素の不活性雰囲気下で高温で更に約2時間撹拌する。反応の終了時に、式(V)のジエノールアシレートを任意の適切な方法で反応混合物から回収することができる。好ましくは、式(V)の化合物の回収は、上記のステップ2bに記載されたのと同じ回収手順を使用して行われる。
【0057】
したがって、本発明では、式(IV)の化合物のその場形成を介してシングルポット変換で式(III)の化合物を式(V)の化合物に直接変換することができ、それにより全体的な変換をポット経済的かつ原子経済的にすることが示された。この変換は、安価で毒性が低く、非常に安定な試薬を使用して行われ、工業規模で容易に適用することができる反応パラメータ(反応温度及び反応圧力など)下で実施することができる。
【0058】
ステップ3a:モルヒネからノルオキシモルフォンを調製するための本発明の方法の次のステップにおいて、式(VI)の化合物は、式(V)の化合物をペルオキシ酸化剤、例えば過ギ酸、過酢酸、モノ過マレイン酸、トリフルオロ過酢酸、トリクロロ過酢酸、置換基が、例えばクロロ、ブロモ、ヨード、フルオロ又はニトロであり得る置換又は非置換過安息香酸と接触させることによって調製される。適切な過酸は、水溶液として、又は純粋な形態で使用され得る。
【0059】
過酸は、その場で、すなわちジエノールアシレートの存在下で、過酸化水素水と対応する酸又は対応する酸無水物との反応によって形成され得る。約30%(w/w)以上の過酸化水素水の濃度が好ましい。好ましくは、過酸は、ジエノールアシレートと接触させる前に調製される。
【0060】
式(V)のジエノールアシレートは、式(VI)の化合物が形成されるように、ジエノールアシレートのC-14位にヒドロキシル基を導入又は置換するのに有効な反応条件下でペルオキシ酸化剤と反応させる。好ましくは、純粋な形態又は水溶液の形態のペルオキシ酸化剤は、ジエノールアシレート及び過酸と実質的に非反応性である不活性有機溶媒中にジエノールアシレートを含有する溶液又は他の混合物に添加される。溶媒は、有利にはジエノールアシレート及び過酸のそれぞれに対して可溶化量で存在する。
【0061】
有機溶媒は、例えば酢酸、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレン(ジクロロメタン)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、アセトニトリル、1,2-ジメトキシエタン、酢酸n-プロピル及びそれらの混合物などの極性有機溶媒であることが好ましい。酢酸が好ましいが、氷酢酸がより好ましい。
【0062】
溶媒及びジエノールアシレートに加えて、反応混合物は他の成分を含んでもよい。例えば、反応混合物は、ジエノールアシレートの7,8-エポキシド誘導体及び他の副反応生成物の形成を阻害するのに有効な薬剤を含み得る。酸触媒、すなわち約0~約3又はそれよりわずかに高い範囲のpKaを有する酸を含めることにより、より高い収率で式(VI)のエノンを調製することが可能になることが以前に報告されている(米国特許第5,112,975号明細書)。しかし、本発明では、反応混合物中に酸触媒を含めることは、反応の結果に有意な悪影響も有利な影響も及ぼさないことが観察された。したがって、酸触媒は、場合により予防的包含物として反応混合物に添加されてもよい。
【0063】
反応条件は、好ましくは水の実質的な非存在下で、すなわち、水が、好ましくは反応混合物の重量に基づいて5重量パーセントを超える量で存在しない状態でジエノールアシレートとペルオキシ酸化剤との反応を行うことを更に含む。そのような反応条件は、反応混合物に無水成分を利用し、不活性無水雰囲気、例えば乾燥窒素下で反応を行うことによって好都合に提供され得る。過酸化水素水を対応する酸又は対応する酸無水物と接触させることによって過酸を形成する際、過酸溶液中の水の存在を最小限に抑えるために、約30%(w/w)以上の過酸化水素水の濃度が好ましい。過酸化水素水の他に、実質的に水和水が反応混合物の成分のいずれにも存在しないことが好ましい。同様に、反応混合物に添加される溶媒、例えば氷酢酸又はギ酸は、好ましくは95%以上の純度、より好ましくは98%以上の純度である。
【0064】
過酸溶液は、好ましくは連続的な滴下流速で、ジエノールアシレート1モル当たり毎分約0.01~約0.1グラム当量の平均速度でジエノールアシレートに添加される。望ましくは、ジエノールアシレート1モル当たり合計で少なくとも1グラム当量の過酸が添加される。添加は、有利には、好ましくは反応混合物を撹拌しながら約30~約120分間の期間にわたって行われてもよい。
【0065】
反応は、任意の適切な圧力(好ましくは約大気圧)及び任意の適切な温度、例えば約-10℃~100℃、好ましくは約-5℃~5℃で有効に行われ得る。
【0066】
過酸は、同じ基準で、例えば約1~約10モル、より好ましくは約5モルの総量で添加されてもよい。利用される場合、酸触媒は、例えばジエノールアシレート1モル当たり約0.01~0.5モル、好ましくは約0.5モルの量であってもよい。溶媒は、例えば、ジエノールアセテート1モル当たり約0.5~20リットル、好ましくは約5~10リットルの量で存在し得る。
【0067】
反応の完了後、反応混合物を水又は好ましくはアルカリ水溶液でクエンチすることによって式(VI)のエノンを簡便に回収することができ、例えばNHOH水溶液が好ましい。その後、クエンチした混合物を、例えばクロロホルムであり得る水非混和性有機溶媒を使用して抽出することにより、エノン化合物を分離することができる。これに続いて、ブライン洗浄、無水硫酸マグネシウムを使用したエノン含有有機層の乾燥、抽出溶媒の蒸発及び得られた固体の乾燥を行う。
【0068】
ステップ3b:本方法の次のステップにおいて、式(VII)の化合物は、式(VI)の化合物の還元によって、好ましくはその化合物の接触水素化によって調製される。適切な触媒には、例えば、適切な支持体上に設けることができ、化学的に組み合わせることができる貴金属触媒が含まれる(例えば、白金炭素、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素、ロジウム炭素、酸化白金、二酢酸パラジウム、二塩化パラジウム、テトラキスパラジウム、二酢酸ロジウム及び三塩化ロジウム)。炭担持10%パラジウムが好ましい。これは、化合物(VI)1部当たり約0.1部のパラジウムを提供するのに十分な量で使用される。
【0069】
還元反応は、好ましくは不活性有機液体媒体、例えばアルコール(例えば、エタノール)、エステル(例えば、酢酸エチル)又は酸(例えば、酢酸又はギ酸)の存在下で行われる。溶媒は、好ましくは氷酢酸である。
【0070】
ステップ3bの還元反応に適した条件は、式(VI)の化合物1モル当たり約0.1~100gの利用される触媒(好ましくは約22gの10%Pd炭)、及び約0.1~10リットルの有機溶媒(好ましくは約2.3リットルの氷酢酸)の添加又は存在を含む。反応は、例えば約1~10気圧、好ましくは約7気圧の水素、及び約25℃~80℃、好ましくは40℃~55℃、より好ましくは約45℃の温度で適切に行われ得る。反応は、好ましい条件下で約4時間以内に完了することができる。
【0071】
ステップ3bの生成物、すなわち式(VII)の化合物は、任意の適切な方法で回収することができ、好ましくは反応混合物をセライト珪藻土で濾過して触媒を除去し、濾液から溶媒を蒸発させ、濾過残渣を有機溶媒、好ましくはクロロホルムに溶解し、有機層を水で洗浄し、洗浄した有機相を除去し、溶媒をそこから蒸発させることによって行われる。残りの固体残渣を、固体が溶解するまで還流下でアルコール性溶媒、好ましくは2-プロパノールに溶解し、溶解した時点で、好ましくは0℃~5℃の温度まで混合物をゆっくりと冷却し、この時点で固体沈殿物が形成し始める。混合物を濾過し、固体沈殿物を収集し、乾燥させることによって所望の生成物を得る。所望の生成物の第2の収穫物を得るために、得られた濾液に対して再結晶プロセスを繰り返してもよい。
【0072】
ステップ3:反応混合物のHPLC分析によって監視される反応の完了後かつステップ3aで上述した抽出手順の前に、式(VI)の化合物の回収は、ステップ3bの開始前に十分に省略することができ、これはステップ3aの反応混合物中でその場で進行することができる。
【0073】
式(VI)の化合物のその場形成による式(V)の化合物の式(VII)の化合物へのワンポット変換は、HPLC分析が<5%の式(V)の反応物を検出するまで(約2時間の反応時間)、不活性有機溶媒中に分散した式(V)の化合物と、ステップ3aで上述したようにC?14位にベータ配向ヒドロキシル基を導入することが可能なペルオキシ酸化剤の予め形成された溶液を、窒素の不活性雰囲気下で撹拌しながら低温で接触させ、検出された時点で、過剰の過酸化物をクエンチするために活性炭を反応混合物に添加して撹拌し、続いて10%パラジウム炭を添加し、ステップ3bで上述したように、水素ガス雰囲気下で高温で式(VI)の化合物の触媒還元を更に4時間行うことによって進行する。反応の終了時に、式(VII)のビス保護されたノルオキシモルフォンを任意の適切な方法で反応混合物から回収することができる。好ましくは、式(VII)の化合物の回収は、上記のステップ3bに記載されるのと同じ回収手順を使用して行われる。
【0074】
したがって、本発明では、式(VI)の化合物のその場形成により、単一ポット変換で式(V)の化合物を式(VII)の化合物に直接変換することができ、それにより全体的な変換をポット経済的かつ原子経済的にすることが示された。この変換は、安価で毒性が低く、非常に安定な試薬を使用して行われ、工業規模で容易に適用することができる反応パラメータ(反応温度及び反応圧力など)下で行うことができる。
【0075】
ステップ4:本発明の方法の最後のステップでは、式(I)のノルオキシモルフォンは、式(VII)の化合物から加水分解によって、好ましくは加水分解条件下で、好ましくは水の存在下でその化合物を酸性又は塩基性加水分解触媒と接触させることによって調製される。その後、加水分解混合物を中和剤(例えば、NHOH水溶液)で中和し、中和混合物を濾過し、濾液を洗浄及び乾燥することによってノルオキシモルフォンを回収してもよい。
【0076】
硫酸が好ましい酸性触媒であり、適切な塩基性加水分解触媒として、例えばKOHが挙げられ、これはエタノール、水、又はジエチレングリコールなどのその溶液として利用することができる。
【0077】
硫酸を使用する加水分解反応に適した条件には、式(VII)の化合物1モル当たり約0.1~10リットルの4.5モル(M)硫酸水溶液に相当する量の硫酸(水溶液)の添加が含まれる。好ましくは、同じ基準で約4リットルの4.5M硫酸水溶液が使用される。加水分解は、例えば、窒素雰囲気下で大気圧及び約70℃~120℃、好ましくは95℃~105℃の温度で適切に行われ得る。このようにして得られた粗ノルオキシモルフォンは、上記の精製プロセスを繰り返すことによって更に精製することができる。
【0078】
本発明によれば、プロセスステップ1、2a、2b、3a、3b及び4は、バッチ反応器、又は連続フロー反応器、又はマイクロ波反応器、又はそれらの組み合わせで行うことができる。
【0079】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるが、限定することを意味するものではない。本開示を通して与えられるすべての部及びパーセンテージは、別段の指示がない限り重量基準である。別段の指示がない限り、各実施例で調製した化合物の同一性は、質量分析、IRならびにNMR(H及び13C)によって確認し、各実施例の反応圧力はほぼ大気圧であった。
【実施例
【0080】
実施例1:ステップ1:溶媒としてアセトンを使用する式(III)の化合物の調製:
【0081】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィン(R及びR=エトキシカルボニルを有する化合物III)
【0082】
アセトン(20mL)中のモルヒネ(2.00g、7.0mmol)及び重炭酸ナトリウム(8.82g、105.0mmol)の撹拌懸濁液に、エチルクロロホルメート(6.00mL、63.0mmol)を一度に添加し、得られた混合物を40℃で6時間撹拌した。反応混合物を、室温、すなわち約20~25℃まで冷却し、濾過して固体残渣をアセトン(10mL)で洗浄した。濾液を収集し、真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して98.25%の純度を有する表題化合物2.89g(理論値の99%)が残った。
【0083】
実施例2:ステップ1:溶媒として酢酸エチルを使用する式(III)の化合物の調製:
【0084】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィン(R及びR=エトキシカルボニルを有する化合物III)
【0085】
酢酸エチル(20mL)中のモルヒネ(2.00g、7.0mmol)及び重炭酸ナトリウム(8.82g、105.0mmol)の撹拌懸濁液に、エチルクロロホルメート(6.00mL、63.0mmol)を一度に添加し、得られた混合物を75℃で6時間撹拌した。反応混合物を、室温、すなわち約20~25℃まで冷却し、濾過して固体残渣を酢酸エチル(10mL)で洗浄した。濾液を収集し、真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して98.66%の純度を有する表題化合物2.82g(理論値の97%)が残った。
【0086】
実施例3:ステップ2a:無水酢酸を使用する式(IV)の化合物の調製:
【0087】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノン(R及びR=エトキシカルボニルを有する化合物IV)
【0088】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィン(2.00g、4.8mmol)の無水酢酸(4.54mL、48.0mmol)中撹拌溶液に、ジメチルスルホキシド(1.71mL、24.0mmol)を窒素の不活性雰囲気下で一度に添加し、得られた混合物を80℃で1.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(III)の化合物が検出された。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、シクロペンチルメチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して99.10%の純度を有する表題化合物1.95g(理論値の98%)が残った。
【0089】
実施例4:ステップ2a:安息香酸無水物を使用する式(IV)の化合物の調製:
【0090】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノン(R及びR=エトキシカルボニルを有する化合物IV)
【0091】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィン(2.00g、4.8mmol)のジメチルスルホキシド(3.41mL、48.0mmol)中撹拌溶液に窒素の不活性雰囲気下で安息香酸無水物(10.9g、48.0mmol)を一度に添加し、得られた混合物を80℃で1.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(III)の化合物が検出された。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、シクロペンチルメチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して98.01%の純度を有する表題化合物1.78g(理論値の90%)が残った。
【0092】
実施例5:ステップ2a:無水グルタル酸を使用する式(IV)の化合物の調製:
【0093】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノン(R及びR=エトキシカルボニルを有する化合物IV)
【0094】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィン(2.00g、4.8mmol)のジメチルスルホキシド(3.41mL、48.0mmol)中撹拌溶液に、窒素の不活性雰囲気下で無水グルタル酸(5.48g、48.0mmol)を一度に添加し、得られた混合物を80℃で1.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(III)の化合物が検出された。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、シクロペンチルメチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して96.59%の純度を有する表題化合物1.48g(理論値の75%)が残った。
【0095】
実施例6:ステップ2a:式(IV)の化合物の調製:
【0096】
3-O-メトキシ,N-エトキシカルボニル-ノルモルフィノン(R=メチル及びR=エトキシカルボニルを有する化合物IV)
【0097】
3-O-メトキシ,N-エトキシカルボニル-ノルモルフィン(2.00g、5.6mmol)の無水酢酸(5.29mL、56.0mmol)中撹拌溶液に、ジメチルスルホキシド(1.99mL、28.0mmol)を窒素の不活性雰囲気下で一度に添加し、得られた混合物を80℃で1.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(III)の化合物が検出された。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、シクロペンチルメチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して97.74%の純度を有する表題化合物1.91g(理論値の96%)が残った。
【0098】
実施例7:ステップ2a:式(IV)の化合物の調製:
【0099】
3-O-アセチル,N-シアノ-ノルモルフィノン(R=アセチル、及びR=シアノを有する化合物IV)
【0100】
3-O-アセチル,N-シアノ-ノルモルフィン(2.00g、5.9mmol)の無水酢酸(5.58mL、59.0mmol)中撹拌溶液に、窒素の不活性雰囲気下でジメチルスルホキシド(2.10mL、29.5mmol)を一度に添加し、得られた混合物を80℃で1.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(III)の化合物が検出された。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、シクロペンチルメチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して99.08%の純度を有する表題化合物1.94g(理論値の98%)が残った。
【0101】
実施例8:ステップ2a:式(IV)の化合物の調製:
【0102】
3-O-t-ブチルジメチルシリル,N-シアノ-ノルモルフィノン(R=t-ブチルジメチルシリル及びR=シアノを有する化合物IV)
【0103】
3-O-t-ブチルジメチルシリル,N-シアノ-ノルモルフィン(2.00g、4.4mmol)の無水酢酸(4.16mL、44.0mmol)中撹拌溶液に、窒素の不活性雰囲気下でジメチルスルホキシド(1.56mL、22.0mmol)を一度に添加し、得られた混合物を80℃で1.5時間撹拌し、その時点で、HPLC分析により反応混合物中で<2%の式(III)の化合物が検出された。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、シクロペンチルメチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して99.13%の純度を有する表題化合物1.94g(理論値の97%)が残った。
【0104】
実施例9:ステップ2a:式(IV)の化合物の調製:
【0105】
モルフィノン(R=水素及びR=メチルを有する化合物IV)
【0106】
モルヒネ(2.00g、7.0mmol)の無水酢酸(6.62mL、70.0mmol)中撹拌溶液に、ジメチルスルホキシド(2.13mL、30.0mmol)を窒素の不活性雰囲気下で一度に添加し、得られた混合物を80℃で16時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で式(IV)の表題化合物は検出されず、反応を中止した。
【0107】
実施例10:ステップ2b:EtNを塩基として使用する式(V)の化合物の調製:
【0108】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノンジエノールアセテート(R及びR=エトキシカルボニル、及びR=アセチルを有する化合物V)
【0109】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノン(1.95g、4.7mmol)の無水酢酸(4.44mL、47.0mmol)中撹拌溶液に、窒素の不活性雰囲気下でトリエチルアミン(1.64mL、11.8mmol)を一度に添加し、得られた混合物を80℃で2.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(IV)の化合物が検出された。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、シクロペンチルメチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して97.62%の純度を有する表題化合物2.13g(理論値の99%)が残った。
【0110】
実施例11:ステップ2:塩基としてNaOAcを使用する式(V)の化合物のワンポット調製:
【0111】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノンジエノールアセテート(R及びR=エトキシカルボニル、及びR=アセチルを有する化合物V)
【0112】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィン(2.00g、4.8mmol)の無水酢酸(11.34mL、120.0mmol)中撹拌溶液に、ジメチルスルホキシド(3.41mL、48.0mmol)を窒素の不活性雰囲気下で一度に添加し、得られた混合物を80℃で1.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(III)の化合物が検出された。次いで、酢酸ナトリウム(3.94g、48.0mmol)を反応混合物に一度に添加し、80℃で3時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、シクロペンチルメチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して94.34%の純度を有する表題化合物1.96g(理論値の90%)が残った。
【0113】
実施例12:ステップ2:EtNを塩基として使用する式(V)の化合物のワンポット調製:
【0114】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノンジエノールアセテート(R及びR=エトキシカルボニル、及びR=アセチルを有する化合物V)
【0115】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィン(2.00g、4.8mmol)の無水酢酸(11.34mL、120.0mmol)中撹拌溶液に、ジメチルスルホキシド(3.41mL、48.0mmol)を窒素の不活性雰囲気下で一度に添加し、得られた混合物を80℃で1.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(III)の化合物が検出された。次いで、トリエチルアミン(6.69mL、48.0mmol)を反応混合物に一度に添加し、80℃で2.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(IV)の化合物が検出された。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、シクロペンチルメチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して96.27%の純度を有する表題化合物2.04g(理論値の93%)が残った。
【0116】
実施例13:ステップ3a:式(VI)の化合物の調製:
【0117】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-14-ノルモルフィノン(R及びR=エトキシカルボニルを有する化合物VI)
【0118】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノンジエノールアセテート(5.0g、11.0mmol)の氷酢酸(30mL)中溶液を、窒素の不活性雰囲気下で0℃で30分間撹拌した。別のフラスコ内で、ギ酸(15.6mL)と50%H水溶液(3.13mL)の混合物を、窒素の不活性雰囲気下で0℃で30分間撹拌することにより、過ギ酸の溶液を調製した。温度を0℃に維持しながら、予め形成された過ギ酸溶液を、シリンジポンプを介して3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノンジエノールアセテートを含む主反応容器に45分間にわたって滴下添加し、得られた混合物を更に1.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(V)の化合物が検出された。反応混合物を水(50mL)で希釈し、濃アンモニア水(72mL)を添加することによってpHを約8にゆっくり調整した。混合物を室温に加温し、クロロホルム(3×60mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(75mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮すると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して90.74%の純度を有する表題化合物4.62g(理論値の98%)が残った。
【0119】
実施例14:ステップ3b:式(VII)の化合物の調製:
【0120】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルオキシモルフィン(R及びR=エトキシカルボニルを有する化合物VII)
【0121】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-14-ヒドロキシノルモルフィノン(3.8g、8.8mmol)の酢酸(15mL)中撹拌溶液に、オートクレーブチャンバ内で10%パラジウム炭(190mg)を添加し、密封した。反応混合物を窒素ガス流で3回、続いて水素ガスで更に3回パージし、得られた反応混合物を水素雰囲気下で、温度45℃及び約7気圧の実質的に一定の反応チャンバ圧力で4時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(VI)の化合物が検出された。反応混合物を25℃に冷却し、反応チャンバ内の圧力を1気圧にし、触媒をセライト珪藻土を通して濾過によって除去し、濾液を真空中で濃縮した。得られた残渣にクロロホルム(50mL)を添加し、有機相を水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮した。残りの残渣を還流2-プロパノール(15mL)に溶解して20分間撹拌し、混合物を0℃にゆっくり冷却し、その時点で沈殿が形成し始めた。懸濁液を濾過し、沈殿物を収集して乾燥させると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して99.53%の純度を有する表題化合物3.34g(理論値の88%)が残った。必要に応じて、得られた濾液を場合により濃縮し、得られた残渣を上記の再結晶プロセスに供して、表題化合物の第2の収穫物を得ることができた。
【0122】
実施例15:ステップ3:式(VII)の化合物の調製:
【0123】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルオキシモルフィン(R及びR=エトキシカルボニルを有する化合物VII)
【0124】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノンジエノールアセテート(2.2g、4.8mmol)の氷酢酸(13mL)中溶液を、窒素の不活性雰囲気下で0℃で30分間撹拌した。別のフラスコ内で、ギ酸(6.8mL)と50%H水溶液(1.37mL)の混合物を、窒素の不活性雰囲気下で0℃で30分間撹拌することにより過ギ酸の溶液を調製した。温度を0℃に維持しながら、予め形成された過ギ酸溶液を、シリンジポンプを介して3-O,N-ビス-エトキシカルボニル-ノルモルフィノンジエノールアセテートを含む主反応容器に45分間にわたって滴下添加し、得られた混合物を更に1.5時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(V)の化合物が検出された。活性炭(25mg)を反応混合物に添加し、25℃の温度で30分間撹拌し、続いて炭の10%パラジウム(110mg)を添加した。オートクレーブチャンバを密封し、反応混合物を窒素ガス流で10分間、続いて水素ガス流で更に10分間パージし、得られた反応混合物を水素雰囲気下で、温度45℃及び約7気圧の実質的に一定の反応チャンバ圧力で4時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(VI)の化合物が検出された。反応混合物を25℃に冷却し、反応チャンバ内の圧力を1気圧にし、触媒をセライト珪藻土を通して濾過によって除去し、濾液を真空中で濃縮した。得られた残渣にクロロホルム(30mL)を添加し、有機相を水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空中で濃縮した。残りの残渣を還流2-プロパノール(10mL)に溶解し、20分間撹拌し、混合物を0℃にゆっくり冷却し、その時点で沈殿が形成し始めた。懸濁液を濾過し、沈殿物を収集して乾燥させると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して97.40%の純度を有する表題化合物1.90g(理論値の92%)が残った。必要に応じて、得られた濾液を場合により濃縮し、得られた残渣を上記の再結晶プロセスに供して、表題化合物の第2の収穫物を得ることができた。
【0125】
実施例16:ステップ4:式(I)の化合物の調製:
【0126】
ノルオキシモルフォン(化合物I)
【0127】
3-O,N-ビス-エトキシカルボニルノルオキシモルフォン(7.00g、16.2mmol)の4.5MのHSO水溶液(40mL)中溶液を、窒素の不活性雰囲気下で100℃で17時間撹拌し、その時点でHPLC分析により反応混合物中で<2%の式(VII)の化合物が検出された。反応混合物を室温(25℃)まで冷却し、濃アンモニア水(30mL)を添加することによってpHを約9にゆっくりと調整し、その時点で固体沈殿物が形成し始めた。沈殿物を濾過し、収集して乾燥させると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して95.54%の純度を有する表題化合物4.56g(理論値の98%)が残った。このようにして形成された式(I)の粗ノルオキシモルフォンは、場合により以下に記載されるように更に精製することができた。
【0128】
粗ノルオキシモルフォン(4.56g、15.9mmol)の水(42mL)中撹拌溶液に、37%HCl水溶液(5.2mL)を添加した。溶液を窒素の不活性雰囲気下で90℃で15分間撹拌した。溶液を室温に冷却し、濾過した。得られた濾液のpHを、濃アンモニア水(10mL)の添加によって約9に調整し、その時点で固体沈殿物が形成し始めた。沈殿物を濾過し、収集して乾燥させると、得られた表題化合物のHPLC分析により決定して98.82%の純度を有する表題化合物4.24g(理論値の91%)が残った。
【国際調査報告】