IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レイセオン カンパニーの特許一覧

特表2024-501162アルミニウム含有材料のオキシ水酸化物コーティングの適用のプロセス
<>
  • 特表-アルミニウム含有材料のオキシ水酸化物コーティングの適用のプロセス 図1
  • 特表-アルミニウム含有材料のオキシ水酸化物コーティングの適用のプロセス 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】アルミニウム含有材料のオキシ水酸化物コーティングの適用のプロセス
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/66 20060101AFI20231228BHJP
   C23C 22/78 20060101ALI20231228BHJP
   C23C 22/82 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C23C22/66
C23C22/78
C23C22/82
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533939
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 US2021061699
(87)【国際公開番号】W WO2022120106
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】17/111,646
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ミュニサミー,シル
【テーマコード(参考)】
4K026
【Fターム(参考)】
4K026AA09
4K026BA08
4K026BB06
4K026BB08
4K026CA15
4K026CA32
4K026CA36
4K026CA37
4K026CA38
4K026EB01
(57)【要約】
クロメート非含有保護コーティングを有するアルミニウム含有材料の表面を提供するためのプロセスには、アルミニウム含有材料の表面を脱脂して脱脂された表面を生成すること、脱脂の直後に脱脂された表面を高アルカリ処理で処理して、表面上にすすを有するアルカリ処理された表面を生成すること、及び高アルカリ処理の直後にアルカリ処理されたすす表面を熱水処理で処理することが含まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム含有材料の表面をコーティングするプロセスであって、
アルミニウム含有材料の表面を脱脂して脱脂された表面を生成すること;
前記脱脂の直後に前記脱脂された表面を高アルカリ処理で処理して、前記表面上にすす(smut)を有するアルカリ処理された表面を生成すること;及び
前記高アルカリ処理の直後に前記アルカリ処理された表面を熱水処理で処理し、クロメート非含有コーティングを有する前記アルミニウム含有材料の前記表面を提供すること
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記脱脂は、前記表面を浸漬タンク内で5~10分間処理することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記脱脂は、9~11のpH及び110~150F(43~66C)の温度で行われる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記表面を高アルカリ処理で処理する工程は、高アルカリ溶液を含有する浸漬タンク内で30秒~3分間行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記表面を高アルカリ処理で処理する前記工程は、135~150F(57~66C)の温度で、12を超えるpHで行われる、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記高アルカリ溶液は、15~60g/lの水酸化ナトリウム(NaOH)、5~20g/lの重炭酸ナトリウム(NaHCO)、5~10g/lの硝酸ナトリウム(NaNO)と共に、硫化ナトリウム(NaS)、トリエタノールアミン(C15NO)及びグルコン酸カリウム(C11KO)を含有する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記高アルカリ処理からの前記すすは除去されず、前記アルミニウムは、前記熱水処理に直接的に供され、前記すすは、前記アルミニウム含有材料に存在するアルミニウム及び他の金属のオキシ水酸化物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記オキシ水酸化物は、NaAl(OH)、Al(OH)、Mg(OH)、Cu(OH)、CuO、CuO、CuS、NaZn(OH)、SiO.xHOのうちの1つ以上を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記表面を前記熱水処理で処理する工程は、20~60分間行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記表面を前記熱水処理で処理する前記工程は、前記表面を脱イオン化水を含有するタンク内で185~212F(85~100C)で6.4のpHで20~30分間浸漬することを含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記表面を前記熱水処理で処理する前記工程は、前記表面を蒸気に250~270F(121~132C)及び30~35PSIで50~60分間曝露することを含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
前記アルミニウムを浸漬タンク内で5~10分間脱脂すること;
前記アルミニウムを高アルカリ処理浸漬タンク内で30秒~3分間処理すること;及び
前記アルミニウムを前記熱水処理で20~60分間処理すること
をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記熱水処理の後に前記アルミニウム含有材料を塗装または結合させることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
アルミニウム含有材料の表面をコーティングするプロセスであって、
アルミニウム含有材料の表面を浸漬タンク内で5~10分間、9~11のpH及び110~150F(43~66C)の温度で脱脂して、脱脂された表面を生成すること;
前記脱脂の直後に前記脱脂された表面を高アルカリ処理浸漬タンク内で30秒~3分間、135~150F(57~66C)の温度で、12を超えるpHで処理して、前記表面上にすすを有するアルカリ処理された表面を生成すること;及び
前記高アルカリ処理の直後に前記アルカリ処理された表面を熱水処理で20~60分間処理することであって、前記高アルカリ処理からのすすは除去されず、前記表面上にすすを有する前記アルミニウムアルカリ処理された表面は、熱水処理浸漬に直接的に供され、クロメート非含有コーティングを有する前記アルミニウム含有材料の前記表面を提供する、前記処理すること
を含む、前記プロセス。
【請求項15】
前記高アルカリ処理浸漬タンク内の高アルカリ溶液は、15~60g/lの水酸化ナトリウム(NaOH)、5~20g/lの重炭酸ナトリウム(NaHCO)、5~10g/lの硝酸ナトリウム(NaNO)と共に、硫化ナトリウム(NaS)、トリエタノールアミン(C15NO)及びグルコン酸カリウム(C11KO)を含有し、前記高アルカリ処理浸漬は、アルミニウム含有材料に存在する前記アルミニウム及び他の金属のオキシ水酸化物である前記すすを形成し、前記オキシ水酸化物は、NaAl(OH)、Al(OH)、Mg(OH)、Cu(OH)、CuO、CuO、CuS、NaZn(OH)、SiO.xHOのうちの1つ以上を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記熱水処理は、185~212F(85~100C)で6.4のpHで20~30分間の脱イオン化水を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記熱水処理は、250~270F(121~132C)及び30~35PSIで50~60分間の蒸気を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項18】
前記熱水処理の後に前記アルミニウム含有材料を塗装及び/または結合させることをさらに含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項19】
アルミニウム含有材料の表面をコーティングするプロセスであって、
アルミニウム含有材料の表面を浸漬タンク内で5~10分間、9~11のpH及び110~150F(43~66C)の温度で脱脂して、脱脂された表面を生成すること;
前記脱脂の直後に前記脱脂された表面を第1の高アルカリ処理浸漬タンク内で処理して、前記表面上にすすを有するアルカリ処理された表面を生成すること;
前記第1の高アルカリ処理の後に前記表面上にすすを有する前記アルカリ処理された表面を脱酸素すること;
前記脱酸素の直後に前記脱酸素され、前記アルカリ処理された表面を第2の高アルカリ処理浸漬タンク内で30秒~3分間、135~150F(57~66C)の温度で、12を超えるpHで処理すること;及び
前記高アルカリ処理の直後に前記アルミニウムを熱水処理で20~60分間処理することであって、前記高アルカリ処理からのすすは除去されず、前記アルミニウムは、熱水処理浸漬に直接的に供され、クロメート非含有コーティングを有する前記アルミニウム含有材料の前記表面を提供する、前記処理すること
を含む、前記プロセス。
【請求項20】
前記熱水処理の後に前記アルミニウム含有材料を塗装及び/または結合させることをさらに含む、請求項19に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、有機コーティング適用のためにクロメート変換コーティングを置換するアルミニウム含有材料の表面を事前処理するためのプロセスに関する。
【0002】
アルミニウム、アルミニウム合金、及び他のアルミニウム含有材料は、耐食性を必要とする構造を形成するために頻繁に使用される。腐食に対する保護は、有機保護コーティング(例えば、プライマー、トップコート塗装)の適用によって達成され得る。活性金属であるアルミニウムは、酸化/腐食反応を容易に受け得るが、表面上の比較的薄い非連続的な天然の自然酸化物層(3~6nm)の存在は、あるレベルの腐食保護を提供する。この天然酸化物膜は、塩水などの高度に腐食性の環境に対して十分に耐性ではなく、塗装のための十分なベースも提供しない場合がある。より耐食性であり、かつ塗装のためのベースとして好適である改善された膜は通常、陽極酸化によってまたはクロメート変換プロセスによってアルミニウム含有材料の表面上に形成され得る。
【0003】
化学的変換コーティングの分野において、6価クロムイオン(Cr6+)ベースのクロメート変換コーティングは、アルミニウムの独立型腐食保護のためにならびに結合及び塗装用途のための接着層ベースコートとして一般的に使用される。激しい腐食環境における製品の分野の場合、アルミニウムは、典型的には、ベースコートとして6価ベースのクロメート変換コーティングと、それに続いてプライマーとしてのポリマーエポキシ及びトップコートとしてのポリマーポリウレタンの層で塗装され得る。塗装用途のための3つの異なる層のシステムにおいて、クロメートは、接着層として機能し、プライマーは、腐食保護のバルクを提供する腐食阻害剤層として機能し、トップコートは、障壁/UV保護層として機能する。いくつかのシステムでは、6価ベースのクロメート洗浄プライマーは、ベースコートを形成するために金属表面上に直接的に噴霧される。6価クロムイオンを有するコーティングは、優れた性能、信頼性を示し、数十年にわたって標準とみなされた。しかしながら、6価クロムイオンは、有害な作用を有し得、将来の設計及び用途から段階的に除外されている。
【0004】
クロメートコーティングについて観察される製造及び分野的問題のうちの1つは、コーティングの水に結合したCr3+-O-Cr6+骨格で生じる経時的及び構造的変化ならびにその結果生じる疎水性によるプライマーの適切な接着である。代替手段(例えば、3価クロムイオンベースのコーティング及びジルコニウムベースのコーティング)が市販されているが、満足のいく性能を提供しない場合がある。通常、クロメート変換コーティング(CCC)プロセスは、複雑で毒性のある化学的製剤を用いる複数の工程を伴う。例えば、一般的に使用される仕様MIL-DTL-5541は、アルカリ脱脂剤、アルカリエッチ、酸脱酸素剤などの化学的溶液タンクを用いる1型(6価ベースのクロメート)及びII型(3価ベースのクロメート)コーティングを規定しており、クロメートコーティングタンクが最終コーティングを生成するために使用される。各化学的プロセスタンクの後に必然的にすすぎ水タンクが続くので、環境面積の増加をもたらす。
【発明の概要】
【0005】
本開示の1つの開示される非限定的な実施形態によるプロセスには、アルミニウム含有材料の表面を脱脂して脱脂された表面を生成すること;脱脂の直後に脱脂された表面を高アルカリ処理で処理して、表面上にすすを有するアルカリ処理された表面を生成すること;及び高アルカリ処理の直後にアルカリ処理された表面を熱水処理で処理し、クロメート非含有コーティングを有するアルミニウム含有材料の表面を提供することが含まれる。
【0006】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、脱脂が、表面を浸漬タンク内で5~10分間処理することを含むことが含まれる。
【0007】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、脱脂が、9~11のpH及び110~150F(43~66C)の温度で行われることが含まれる。
【0008】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、表面を高アルカリ処理で処理する工程が、高アルカリ溶液を含有する浸漬タンク内で30秒~3分間行われることが含まれる。
【0009】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、表面を高アルカリ処理で処理する工程が、135~150F(57~66C)の温度で、12を超えるpHで行われることが含まれる。
【0010】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、高アルカリ溶液が、15~60g/lの水酸化ナトリウム(NaOH)、5~20g/lの重炭酸ナトリウム(NaHCO)、5~10g/l硝酸ナトリウム(NaNO)と共に、硫化ナトリウム(NaS)、トリエタノールアミン(C15NO)及びグルコン酸カリウム(C11KO)を含有することが含まれる。
【0011】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、高アルカリ処理からのすすが除去されず、アルミニウムが熱水処理に直接的に供され、すすが、アルミニウム含有材料に存在するアルミニウム及び他の金属のオキシ水酸化物を含むことが含まれる。
【0012】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、オキシ水酸化物が、NaAl(OH)、Al(OH)、Mg(OH)、Cu(OH)、CuO、CuO、CuS、NaZn(OH)、SiO.xHOのうちの1つ以上を含むことが含まれる。
【0013】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、表面を熱水処理で処理する工程が、20~60分間行われることが含まれる。
【0014】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、表面を熱水処理で処理する工程が、脱イオン化水を含有する表面タンク内で185~212F(85~100C)で6.4のpHで20~30分間浸漬することを含むことが含まれる。
【0015】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、表面を熱水処理で処理する工程が、表面を蒸気に250~270F(121~132C)及び30~35PSIで50~60分間曝露することを含むことが含まれる。
【0016】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、アルミニウムを浸漬タンク内で5~10分間脱脂すること;アルミニウムを高アルカリ処理浸漬タンク内で30秒~3分間処理すること;及びアルミニウムを熱水処理で20~60分間処理することが含まれる。
【0017】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、熱水処理の後にアルミニウム含有材料を塗装または結合させることが含まれる。
【0018】
本開示の1つの開示される非限定的な実施形態によるプロセスには、アルミニウム含有材料の表面を浸漬タンク内で5~10分間、9~11のpH及び110~150F(43~66C)の温度で脱脂して、脱脂された表面を生成すること;脱脂の直後に脱脂された表面を高アルカリ処理浸漬タンク内で30秒~3分間、135~150F(57~66C)の温度で、12を超えるpHで処理して、表面上にすすを有するアルカリ処理された表面を生成すること;及び高アルカリ処理の直後にアルカリ処理された表面を熱水処理で20~60分間処理することであって、高アルカリ処理からのすすは除去されず、表面上にすすを有するアルミニウムアルカリ処理された表面は、熱水処理浸漬に直接的に供され、クロメート非含有コーティングを有するアルミニウム含有材料の表面を提供する、処理することが含まれる。
【0019】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、高アルカリ処理浸漬タンク内の高アルカリ溶液が、15~60g/lの水酸化ナトリウム(NaOH)、5~20g/lの重炭酸ナトリウム(NaHCO)、5~10g/lの硝酸ナトリウム(NaNO)と共に、硫化ナトリウム(NaS)、トリエタノールアミン(C15NO)及びグルコン酸カリウム(C11KO)を含有し、高アルカリ処理浸漬が、アルミニウム含有材料に存在するアルミニウム及び他の金属のオキシ水酸化物であるすすを形成し、オキシ水酸化物が、NaAl(OH)、Al(OH)、Mg(OH)、Cu(OH)、CuO、CuO、CuS、NaZn(OH)、SiO.xHOのうちの1つ以上を含むことが含まれる。
【0020】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、熱水処理が、185~212F(85~100C)で6.4のpHで20~30分間の脱イオン化水を含むことが含まれる。
【0021】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、熱水処理が、250~270F(121~132C)及び30~35PSIで50~60分間の蒸気を含むことが含まれる。
【0022】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、熱水処理の後にアルミニウム含有材料を塗装及び/または結合させることが含まれる。
【0023】
本開示の1つの開示される非限定的な実施形態によるプロセスには、アルミニウム含有材料の表面を浸漬タンク内で5~10分間、9~11のpH及び110~150F(43~66C)の温度で脱脂して、脱脂された表面を生成すること;脱脂の直後に脱脂された表面を第1の高アルカリ処理浸漬タンク内で処理して、表面上にすすを有するアルカリ処理された表面を生成すること;第1の高アルカリ処理の後に表面上にすすを有するアルカリ処理された表面を脱酸素すること;脱酸素の直後に脱酸素され、アルカリ処理された表面を第2の高アルカリ処理浸漬タンク内で30秒~3分間、135~150F(57~66C)の温度で、12を超えるpHで処理すること;及び高アルカリ処理の直後にアルミニウムを熱水処理で20~60分間処理することであって、高アルカリ処理からのすすは除去されず、アルミニウムは、熱水処理浸漬に直接的に供され、クロメート非含有コーティングを有するアルミニウム含有材料の表面を提供する、処理することが含まれる。
【0024】
本開示の前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態には、熱水処理の後にアルミニウム含有材料を塗装及び/または結合させることが含まれる。
【0025】
前述の特徴及び要素は、別途明示的に示されない限り、排他性を伴わずに様々な組み合わせで組み合わされ得る。これらの特徴及び要素ならびに本発明のオペレーションは、以下の説明及び添付の図面に照らしてより明らかになるであろう。しかしながら、以下の説明及び図面は、本質的に例示的であり、非限定的であることが意図されていることが理解されるべきである。
【0026】
様々な特徴は、開示される非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。詳細な説明に付随する図面は、以下のように簡単に説明され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】1つの開示される非限定的な実施形態によるアルミニウム上のベースコートの適用のためのプロセスの概略図である。
図2】別の開示される非限定的な実施形態によるアルミニウム上のベースコートの適用のためのプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、6価ベースの変換コーティングならびに3価クロム及びジルコニウム化学物質をベースとする他の複雑なコーティングシステムを置き換えるために使用され得る非毒性化学的工程でアルミニウム上に形成されるベースコートの適用のためのプロセス20を概略的に示している。プロセス20は、本明細書でALSC(アルミニウム(AL)すす(S)コーティング(C))と称され得、高アルカリ処理工程中にアルミニウム表面上に形成される合金オキシ水酸化物膜を利用する。開示される実施形態では、ALSCプロセス20は、関連する浸漬タンク(示されていない)内での3つの化学的浸漬によって定義される。プロセス20には通常、脱脂剤浸漬(工程22)、高アルカリ処理浸漬(工程24)、及び熱水処理浸漬(工程26)が含まれる。各浸漬は、比較的長い期間、例えば、5~10分間の脱脂剤工程(工程22)、30秒~3分間の高アルカリ処理浸漬(工程24)、及び20~60分間の熱水処理浸漬(工程26)である。
【0029】
アルミニウムは、その高い強度対重量比、調整可能な機能的特性及びリサイクル性のため、軍事、航空宇宙、自動車、医療産業において使用されている。鍛造(例えば、6061、5052)及び鋳造(例えば、A356、A380)アルミニウム合金は、いくつかの用途のために日常的に利用される。
【0030】
処理される基材金属に関連した「アルミニウム」という用語には、85%から99%まで変わるアルミニウム含有量を有するアルミニウム合金が含まれ、そのアルミニウム合金は通常、クロメート化または他の化学的または電気化学的処理の前に清浄及び脱酸素処理に供される。アルミニウム合金は通常、より多くの量の他の合金金属、例えば、ケイ素、クロム、鉛、鉄、銅、マグネシウム、マンガン、亜鉛などを含有する。本明細書で使用される場合、アルミニウム含有材料には、85重量%を超えるアルミニウムを含有するアルミニウム合金が含まれる。本明細書におけるパーセント組成に対するすべての言及は、別途記述されない限り重量パーセントである。
【0031】
最初に、ALSCプロセス20の脱脂剤浸漬(工程22)は、金属表面から冷却剤、油、グリース、及び機械加工混入物質を除去するためのアルカリ溶液中でのアルミニウムの清浄を提供する。このプロセス工程中に水切れのない表面が得られ、アルミニウムが次の処理工程の準備ができていることを示す。
【0032】
1つの脱脂剤溶液は、例えば、アルカリ塩(すなわち、ナトリウムまたはカリウムケイ酸塩及びリン酸塩)、界面活性剤、金属イオン封鎖剤、及び溶媒を成分として含有し得、9~11のpH及び110~150F(43~66C)の温度で機能する。一実施形態では、浸漬時間は、5~10分であり得る。BASF of New Jersey,USAによって製造された市販のChemetall Aluminum Cleaner NST;または上記と同様の組成を有する浴が利用され得る。残留化学物質を除去するための脱脂剤浴の後にすすぎ(例えば、水道水または脱イオン化(DI)水)浴が任意に続き得る。この余分なすすぎ浴は、脱脂剤浴上で清浄された金属を噴霧すすぎすることによって省略され、または同様のpH及び化学物質を有する次のプロセス(工程24)にすすぎを伴わずに移行され得る。アルミニウム表面は、脱脂剤工程の前に有機混入物質を除去するためにイソプロピルアルコールまたはアセトンがしみ込んだ布で拭かれ得る。
【0033】
次に、ALSCプロセス20の高アルカリ処理浸漬(工程24)は、清浄されたアルミニウムを、例えば、15~60g/lの水酸化ナトリウム(NaOH)、5~20g/lの重炭酸ナトリウム(NaHCO)、5~10g/lの硝酸ナトリウム(NaNO)と共に、硫化ナトリウム(NaS)、トリエタノールアミン(C15NO)及びグルコン酸カリウム(C11KO)を含有する高アルカリ溶液中で処理することを伴う。浴は、135~150F(57~66C)の温度で、12を超えるpHで稼働される。一実施形態では、溶液中の浸漬時間は、30秒~3分であり得る。
【0034】
高アルカリ処理浸漬(工程24)中に、アルミニウム合金マトリックスに存在するアルミニウム及び他の金属のオキシ水酸化物、例えば、NaAl(OH)、Al(OH)、Mg(OH)、Cu(OH)、CuO、CuO、CuS、NaZn(OH)、SiO.xHOまたは混合金属オキシ水酸化物がアルミニウム上に形成する。オキシ水酸化物形成反応の例のための式1~5を参照されたい。
【0035】
2Al+2NaOH+6HO→2NaAl(OH)+3H (1)
【0036】
Mg+2(OH)→Mg(OH)+2e (2)
【0037】
Si+2HO→SiO+2H (3)
【0038】
CuO+HO+2OH→2Cu(OH)+2e (4)
【0039】
2Cu+2OH→CuO+HO+2e (5)
【0040】
金属オキシ水酸化物の形成は、X線光電子分光(XPS)分析によって確認され、これは、高アルカリ処理された表面上の金属オキシ水酸化物に関する元素(例えば、6061アルミニウム合金上のAl、Mg、O、Si、Cu及びCr)の存在を示したのに対し、むき出しのまたはコーティングされたアルミニウムの表面は、上記で列挙された元素のすべてを示さなかった。オキシ水酸化物は、金属表面を、虹色を伴う灰色または黒色の色合いに変化させる。形成される膜の色及び厚さは、アルミニウム合金(例えば、6061、2024、7075)の組成、処理時間、及び高アルカリ浴活性(すなわち、エッチ速度)に応じて変化する。例えば、2024アルミニウム上では、明るい黒色膜が、硫化銅及び/または酸化銅(II)の存在により観察されるのに対し、6061アルミニウム上では、明るい灰色膜が、水酸化マグネシウム及び水和二酸化ケイ素の存在により観察される。次いでアルミニウムは、残留アルカリ化学物質を除去するために水道水またはDI水ですすがれ得る。
【0041】
アルミニウムの高アルカリ処理浸漬(工程24)は、激しい反応をもたらして、遊離水素、熱、ならびにアルミニウム合金マトリックスに存在するアルミニウム及び他の金属の複合酸化物及び水酸化物を生成する。これらの反応生成物の一部、例えば、水酸化マグネシウム、硫化銅、酸化銅、酸化クロム、酸化ケイ素は、不溶性であり、「すす」の形態でアルミニウムの表面上に残存する。典型的には、すすは、クロメート及び陽極酸化処理において酸性化学物質を使用することによって除去される。開示される実施形態では、すすは除去されず、アルミニウムは、熱水処理浸漬(工程26)に直接的に供されてすすコーティングを形成する。
【0042】
ALSCプロセス20の熱水処理浸漬(工程26)は、高アルカリ処理浸漬(工程24)において形成された膜を接着機能性コーティングに変換することを伴う。熱水処理浸漬(工程26)は、沸騰している脱イオン化水中で185~212F(85~100C)で6.4のpHで20~30分間実施され得る。代替的には、熱水処理浸漬(工程26)は、蒸気中で250~270F(121~132C)及び30~35PSIで50~60分間実施され得る。
【0043】
6061アルミニウム合金上のXPS及び走査型電子顕微鏡エネルギー分散X線分光法(SEM-EDS)によって測定される最終コーティング組成物は、蒸気によって処理された場合(SEM-EDS測定)、アルミニウム(63wt%)、マグネシウム(1.8wt%)、鉄(2wt%)、銅(1.7wt%)及び酸素(31wt%)、ならびに沸騰しているDI水によって処理された場合(XPS測定)、アルミニウム(18at%)、マグネシウム(0.4at%)、炭素(16at%)及び酸素(65at%)からなる。2024アルミニウム合金上では、AlSCコーティングは、蒸気によって処理された場合(SEM-EDS測定)、アルミニウム(37wt%)、銅(1wt%)、マグネシウム(1wt%)、マンガン(3wt%)、炭素(3wt%)及び酸素(54wt%)からなる。機械的断面/SEM及びXPSは、ALSCについて0.45~4μmの厚さ範囲を示している。厚さは、高アルカリ処理浸漬(工程24)及び熱水処理浸漬(工程26)の処理時間及び条件によって制御される。
【0044】
図2に関して、ALSCプロセス20Aの代替的な実施形態は、追加の高アルカリ処理(工程30)と、それに続く高アルカリ処理浸漬(工程24)前の脱酸素剤処理(工程32)を伴う。高アルカリ処理(工程30)は、高アルカリ処理浸漬(工程24)と同等であり得る。追加の高アルカリ処理(工程30)及び脱酸素剤処理(工程32)は、ALSCコーティング形成の前に表面上に新たなバルク様組成物を提供するために使用される。
【0045】
アルミニウム基材がALSCプロセスに従って処理された後、処理されたアルミニウムは、高いpH/腐食性/酸化環境において独立して使用され、もしくは塗装もしくは接着結合され、またはそうでなければ硬化性有機保護剤で仕上げされ得る(工程28)。
【0046】
ALSCプロセスによってアルミニウム上に形成されたコーティングは、塗装及び接着結合用途のためにクロメート変換コーティングを置き換える潜在性を有する。試験は、ALSC表面が、I型クロメート表面と比較して高い表面エネルギー及び湿潤性を有することを示した。例えば、接触角測定は、ALSCについて17°、TYIクロメートについて90°、TYIII封孔処理済陽極酸化について80°、TYIII非封孔処理陽極酸化について36°、熱水のみで処理された表面について36°及びむき出しの6061Al合金について86°を示した。ALSCは、測定されたサンプル間で最も低い接触角値を有し、それは、他の測定されたサンプル、特にクロメート及び封孔処理された陽極酸化表面の疎水性と比較してALSCの親水性特質を示す。この特性は利点であろうし、クロメート及び陽極酸化コーティングとは異なり、塗装及び結合の前にALSC表面の最小の表面調製をもたらし、または表面調製をもたらさない場合がある。ASTM D3359方法A及びBに従うALSC表面に対するプライマー(例えば、MIL-PRF-23377)接着試験は、5A及び5Bの評価をそれぞれ示した。また、24ヶ月経過し、プライマーでコーティングされた蒸気で処理されたALSC表面は、最小の表面調製でMIL-DTL-5541及びFED-STD-141方法6301.3に従う浸潤テープ接着試験に通過した。プライマーでコーティングされたALSC表面についてのASTM B117に従う168時間塩噴霧試験は、ブリスター化も、コーティングの浮き上がりも、腐食も示さなかった。X切断領域及び保護されていないむき出しの金属端上でいくらかの腐食があったが、クリープ腐食は観察されなかった。塩噴霧(168時間)後のプライマーの接着は、X切断界面の近くでプライマーのいくらかの剥離を示した(>1mm、ASTM D3359方法Aに従って3A)I型クロメートと比較してALSCについてより良好であった。研究されたALSCの特性に基づいて、それは、TT-C-490IV型及びMIL-DTL-5541QPL/QPDコーティング物質として使用される潜在性を有する。
【0047】
他の用途、例えば、接着結合及び冷却剤接触領域は、ALSCプロセスから利益を受け得る。ALSCコーティングは、腐食性化学的攻撃に耐え、高いpH/酸化環境の場合にアルミニウム上で使用され得る。Sterrad and Sterisシステムを使用する医療デバイス会社及びGMV 14665様条件で製品を使用する自動車会社は、独立型ALSCから利益を受け得る。コーティングは、GMV14665 pH13.5試験を通過し、40g/l水酸化ナトリウム、5ml/lのTritonX-100、8.5g/lの硝酸ナトリウム、2~5g/lの2024Al金属チップ及び8.4g/lの重炭酸ナトリウムを含有するアルカリエッチ溶液に浸漬した場合に陽極酸化コーティングよりも良好に機能する。重量喪失法及び視覚検査は、陽極酸化コーティング(MIL-A-8625、TYIIIハードコート、0.002”厚、封孔処理済及び非封孔処理)が、上記のアルカリエッチ溶液中で15分で完全に分解する一方で、ALSCコーティングの66~94%の全体性が影響しないままであることを示す。
【0048】
特定の工程順序が示され、記載され、請求されているが、工程は、別途示されない限り任意の順序で実施され、分離され、または組み合わされ得、依然として本開示から利益を受けることが理解されるべきである。
【0049】
前述の説明は、その中の限定によって定義されるのではなく、例示的なものである。様々な非限定的な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者は、上記の教示に照らして様々な修飾及び変更が添付の特許請求の範囲に入ることを認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本開示は、具体的に説明されたもの以外で実施され得ることが理解される。その理由のため、添付の特許請求の範囲は、真の範囲及び内容を決定するために検討されるべきである。
図1
図2
【国際調査報告】