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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】搾乳システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20231228BHJP
   A01K 13/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A01K29/00 A
A01K13/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533967
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 SE2021051299
(87)【国際公開番号】W WO2022146221
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】2051578-9
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】521499848
【氏名又は名称】デラバル ホールディング アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベッティルソン、アンデシュ
(57)【要約】
搾乳システム(100)であって、ティートカップ(110a、110b、110c、110d)であって、各々がそれぞれの乳排出管(120a、120b、120c、120d)に接続されている、ティートカップ(110a、110b、110c、110d)と、真空ポンプ(140)と、貯乳タンク(130)と、ティートカップ(110a、110b、110c、110d)内の現行の真空圧力レベルを制御するように構成された真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)と、各々が、乳頭(210a、210b、210c、210d)のうちの1つの乳頭下の現行の真空圧力レベルを測定するように構成された真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)と、動物識別センサ(250)と、データベース(180)と、処理装置(170)であって、動物IDを決定し、データベース(180)からそれぞれの各乳頭(210a、210b、210c、210d)のデータを抽出し、各乳頭(210a、210b、210c、210d)における乳頭固有の真空圧力レベルを決定し、各ティートカップ(110a、110b、110c、110d)における乳頭固有の真空圧力レベルを設定するために、各真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)へのコマンドを生成する、ように構成された処理装置(170)と、を備えている、搾乳システム(100)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティートカップ(110a、110b、110c、110d)であって、各々が搾乳セッション(400)における乳抽出中に動物(200)の乳頭(210a、210b、210c、210d)それぞれにフィットするように構成されている、複数のティートカップ(110a、110b、110c、110d)と、
複数の乳排出管(120a、120b、120c、120d)であって、各乳排出管(120a、120b、120c、120d)がそれぞれのティートカップ(110a、110b、110c、110d)に接続されている、複数の乳排出管(120a、120b、120c、120d)と、
真空圧力を生成するように構成された真空ポンプ(140)と、
前記それぞれ接続された乳排出管(120a、120b、120c、120d)を介して前記ティートカップ(110a、110b、110c、110d)の各々に接続されており、かつ前記真空ポンプ(140)にも接続されている貯乳タンク(130)と、
複数の真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)であって、各真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)が、1つのティートカップ(110a、110b、110c、110d)に関連付けられており、かつ、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の前記関連付けられたティートカップ(110a、110b、110c、110d)内の現行の真空圧力レベルを制御するように構成されている、複数の真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)と、
複数の真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)であって、各真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)が、1つのティートカップ(110a、110b、110c、110d)に関連付けられており、かつ、前記搾乳セッション(400)の乳抽出中に前記乳頭(210a、210b、210c、210d)のうちの1つの乳頭下の前記関連付けられたティートカップ(110a、110b、110c、110d)内の現行の真空圧力レベルを測定するように構成されている、複数の真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)と、
前記動物(200)の動物固有情報を取得するように構成された動物識別センサ(250)と、
前記動物(200)の識別基準に関連付けられた、前記動物(200)の各乳頭(210a、210b、210c、210d)それぞれの少なくとも1つの以前の搾乳セッション(400)に関連するデータを記憶するように構成されたデータベース(180)と、
前記真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)、前記真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)、前記動物識別センサ(250)、及び前記データベース(180)に通信可能に接続されている処理装置(170)と、
を備える、搾乳システムであって、前記処理装置(170)が、
前記動物識別センサ(250)から取得した動物固有情報に基づいて、搾乳される前記動物(200)の前記識別基準を決定し、
前記決定された識別基準に基づいて、前記データベース(180)から、前記識別された動物(200)の各乳頭(210a、210b、210c、210d)それぞれのデータを抽出し、
前記ティートカップ(110a、110b、110c、110d)が前記それぞれの乳頭(210a、210b、210c、210d)に取り付けられているときに、前記搾乳セッション(400)の開始からの期間に各乳頭(210a、210b、210c、210d)それぞれにかけられる乳頭固有の真空圧力レベルを、前記抽出されたデータに基づいて決定し、
各関連付けられたティートカップ(110a、110b、110c、110d)それぞれにおける前記決定された乳頭固有の真空圧力レベルを設定するために、各真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)へのそれぞれのコマンドを生成する、
ように構成されている、
搾乳システム(100)。
【請求項2】
前記搾乳セッションが、前記第1の乳頭(210a、210b、210c、210d)に対して前処理が行われたとき、又は、前記第1のティートカップ(110a、110b、110c、110d)が前記第1の乳頭(210a、210b、210c、210d)に取り付けられたとき、のいずれかに開始する、請求項1に記載の搾乳システム(100)。
【請求項3】
前記処理装置(170)が、
前記搾乳セッション(400)中に前記動物(200)の各乳頭(210a、210b、210c、210d)それぞれに適用される真空プロファイル(402a、402b、402c、402d)を、前記抽出されたデータに基づいて決定し、
前記それぞれの乳頭(210a、210b、210c、210d)の前記対応する真空プロファイル(402a、402b、402c、402d)に従って、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の関連付けられた各ティートカップ(110a、110b、110c、110d)における現行の前記それぞれの真空圧力レベルを制御するために、各真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)への各コマンドを生成する、
ように構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の搾乳システム(100)。
【請求項4】
前記真空プロファイル(402a、402b、402c、402d)が、前記搾乳セッション(400)中に維持されるべき前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の一定の真空圧力レベルを含む、請求項3に記載の搾乳システム(100)。
【請求項5】
前記真空プロファイル(402a、402b、402c、402d)が、前記搾乳セッション(400)中に時間とともに変化する前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の真空圧力レベルを含む、請求項3に記載の搾乳システム(100)。
【請求項6】
サービスプロバイダの中央処理装置(192)と通信するための通信装置(190)、を備える請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)であって、前記処理装置(170)が、
前記動物(200)のデータ及び/又は前記動物(200)の前記識別基準を、前記通信装置(190)を介して前記サービスプロバイダの前記中央処理装置(192)に提供し、
前記搾乳セッション(400)中に前記動物(200)の各乳頭(210a、210b、210c、210d)それぞれに適用される前記真空プロファイル(402a、402b、402c、402d)を、前記中央処理装置(192)から取得する、
ように構成されている、
請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項7】
前記処理装置(170)が、
前記搾乳セッション(400)中に、前記対応する真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)から、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)の各々の乳頭下のそれぞれの真空圧力レベルを連続的に取得し、
前記取得したそれぞれの真空圧力レベルを前記それぞれの真空プロファイル(402a、402b、402c、402d)と比較し、
前記取得した真空圧力レベルが前記真空プロファイル(402a、402b、402c、402d)の前記真空圧力レベルと異なる場合、
前記それぞれの乳頭(210a、210b、210c、210d)の前記対応する真空プロファイル(402a、402b、402c、402d)に従って、各ティートカップ(110a、110b、110c、110d)における前記それぞれの真空圧力レベルを調整するために、各真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)へのそれぞれのコマンドを生成する、
ように構成されている、
請求項3~請求項6のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項8】
前記ティートカップ(110a、110b、110c、110d)が、前記搾乳セッション中に前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下で繰り返し開閉されるライナ(310)を備えており、前記真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)が、前記ライナ(310)が開いている期間中に前記真空圧力レベルを少なくとも2回測定するように構成されている、請求項7に記載の搾乳システム(100)。
【請求項9】
前記真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)が、実質的に毎秒10~1000回の測定、好ましくは毎秒100~1000回の測定によって前記真空圧力レベルを測定するように構成されている、請求項7又は請求項8に記載の搾乳システム(100)。
【請求項10】
前記処理装置(170)が、
前記それぞれ関連付けられた真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)から取得した所定の数の最新の真空圧力レベルに基づいて、前記それぞれの乳頭(210a、210b、210c、210d)下の各ティートカップ(110a、110b、110c、110d)における現行の真空圧力レベルのローリング平均を計算する、ように構成されており、
前記真空プロファイル(402a、402b、402c、402d)との前記比較が、真空圧力レベルの前記計算されたローリング平均を用いて行われる、
請求項7~請求項9のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項11】
前記処理装置(170)が、
前記それぞれの乳頭(210a、210b、210c、210d)に取り付けられた各ティートカップ(110a、110b、110c、110d)に関連付けられた前記真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)へのコマンドを繰り返し生成して、
前記真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)から取得した前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の前記最後に取得した真空圧力レベルが、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の以前に取得した真空圧力レベルよりも低いとき、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の前記真空圧力レベルをステップで増加させるか、
又は、
前記真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)から取得した前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の前記最後に取得した真空圧力レベルが、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の前記以前に取得した真空圧力レベルを超えるとき、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の前記真空圧力レベルを前記ステップで減少させるか、
のいずれかをさせるように構成されている、
請求項1に記載の搾乳システム(100)。
【請求項12】
前記ステップサイズが、前記最後に取得した真空圧力レベルと前記以前に取得した真空圧力レベルとの間の差に比例する、請求項11に記載の搾乳システム(100)。
【請求項13】
前記処理装置(170)が、
前記乳頭(210a、210b、210c、210d)に取り付けられた前記ティートカップ(110a、110b、110c、110d)に関連付けられた前記真空圧力センサ(160a、160b、160c、160d)から取得した前記真空圧力レベルの測定値に基づいて、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)のうちの1つの乳頭下の前記真空圧力レベルが最大許容真空圧力レベルを超えたことを検出し、
前記乳頭(210a、210b、210c、210d)下の前記真空圧力レベルを減少させるために、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)に取り付けられた前記ティートカップ(110a、110b、110c、110d)に関連付けられた前記真空レギュレータ(150a、150b、150c、150d)へのコマンドを生成する、
ように構成されている、
請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項14】
前記処理装置(170)が、
前記識別された動物(200)の各乳頭(210a、210b、210c、210d)それぞれの最新の搾乳セッション(400)に関連するデータを前記データベース(180)に提供し、前記特定の乳頭(210a、210b、210c、210d)、前記動物(200)の前記識別基準、及び時間基準に関連付けられた状態で前記データベース(180)に記憶させる、
ように構成されている、
請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項15】
前記処理装置(170)が、
前記動物(200)の1つの乳頭(210a、210b、210c、210d)の少なくとも1つの搾乳セッション(400)に関連する以前に記憶されたデータと、前記乳頭(210a、210b、210c、210d)の最新の搾乳セッション(400)に関連する対応するデータとの間の、閾値限界を超える差を検出し、
前記差が検出されたときに、出力されるアラートを生成する、
ように構成されている、
請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項16】
前記処理装置(170)が、
前記動物(200)の最後の搾乳セッション(400)と、前記動物(200)が次の搾乳セッション(400)を開始しようとするその時点との間の期間を求め、
前記求められた期間に基づいて、各乳頭(210a、210b、210c、210d)それぞれにかけられる前記乳頭固有の真空圧力レベルを決定する、
ように構成されている、
請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搾乳システムに関する。より詳細には、搾乳システムであって、複数のティートカップと、複数の乳排出管と、真空ポンプと、貯乳タンクと、複数の真空レギュレータと、複数の真空圧力センサと、動物識別センサと、データベースと、搾乳セッション中に動物の各乳頭それぞれにかけられる乳頭固有の真空圧力レベルを制御する処理装置と、を備える搾乳システム、が記載されている。
【背景技術】
【0002】
酪農場では、乳は、典型的には、ライナを有するティートカップを動物の各乳頭に取り付け、脈動真空に加えて乳頭の先端下に搾乳真空をかけることによって、動物から抽出される。これにより、搾乳真空による吸引が、脈動真空によって引き起こされるライナの開閉するリズミカルな動きによって断続されるように、子牛のリズミカルな哺乳が模倣される。その結果、乳頭がマッサージされて動物のオキシトシン放出が刺激され、これにより乳汁排出反射が活性化され、第1の乳頭に第1のティートカップを取り付けた後約40~60秒で、乳腺胞乳(alveoli milk)の乳放出がもたらされる。また、マッサージされることによって、乳頭端の鬱血が防止される。
【0003】
(搾乳装置を効率的に使用し、最大数の動物から搾乳できるようにするために)過剰な搾乳真空による乳頭の損傷を回避しつつ、可能な限り高速で動物から乳を排出することが望ましい。
【0004】
しかしながら、動物の乳頭の乳流量は、様々な理由、例えば、遺伝的変異、及び/又は、適用されるティートカップ/ライナにあまり適さない逸脱したサイズ/形状を乳頭が有していることがある(典型的には、実際の乳頭のサイズとは無関係に、同じティートカップ/ライナサイズがすべての乳頭に適用される)ために、典型的には、乳頭間で等しく分配されていない。
【0005】
乳流量が不均一に分配されるだけでなく、それぞれの乳頭を刺激している間の乳流量の増加率も異なる。単位時間当たりの乳流量は、搾乳セッション中に動物のすべての乳頭において異なり得る。
【0006】
少なくともいくつかの動物は、たとえ搾乳真空を急激に高めても、より高い乳流量で乳を放出しないことが観察されており、これらの動物にとって、乳頭にかけられる搾乳真空を高めることは、高い搾乳真空に乳頭をさらすことになり、乳頭を傷つける恐れがある。
【0007】
上述したこれらの特徴は、互いに一致して実施される場合があり、問題を悪化させる。
【0008】
さらなる研究及び開発を通じて、満足のいく乳頭の保全性を確保及び/又は強化しながら、時間及び効率に関して改善された乳排出のためのコンセプトを発展させることが望まれる。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の目的は、上記の問題の少なくともいくつかを解決し、搾乳システム内での動物の搾乳を改善することである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、搾乳システムによって達成される。本搾乳システムは、複数のティートカップを備え、各ティートカップは、搾乳セッションにおける乳抽出中に動物のそれぞれの乳頭にフィットするように構成されている。本搾乳システムはまた、複数の乳排出管を備え、各乳排出管は、それぞれのティートカップに接続されている。さらに、本搾乳システムは、システム真空と呼ばれ得る真空圧力を生成するように構成された真空ポンプを備える。本搾乳システムはさらに、それぞれの接続された乳排出管を介してティートカップの各々に接続されており、かつ真空ポンプにも接続されている貯乳タンク、を備える。また、本搾乳システムは、複数の真空レギュレータを備え、各真空レギュレータは、1つのティートカップに関連付けられており、乳頭下の関連付けられたティートカップ内の現行の真空圧力レベルを制御するように構成されている。本搾乳システムは、複数の真空圧力センサを備え、各真空圧力センサは、1つのティートカップに関連付けられており、搾乳セッションの乳抽出中に乳頭のうちの1つの乳頭下の関連付けられたティートカップ内の現行の真空圧力レベルを測定するように構成されている。さらに、本搾乳システムは、動物の動物固有情報を取得するように構成された動物識別センサを備える。本搾乳システムは、動物の識別基準に関連付けられた、動物の各乳頭それぞれの少なくとも1回の以前の搾乳セッションに関連するデータを、記憶するように構成されているデータベースをさらに備える。本搾乳システムはまた、真空レギュレータ、真空圧力センサ、動物識別センサ、及びデータベースに通信可能に接続された処理装置を備える。処理装置は、動物識別センサから取得した動物固有情報に基づいて、搾乳される動物の識別基準を決定するように構成されている。処理装置はまた、決定された識別基準に基づいて、データベースから、識別された動物の各乳頭それぞれのデータを抽出するように構成されている。さらに、処理装置は、ティートカップがそれぞれの乳頭に取り付けられているときに、搾乳セッションの開始からの期間に各乳頭それぞれにかけられるべき乳頭固有の真空圧力レベルを、抽出されたデータに基づいて決定するように構成されている。処理装置はさらに、各ティートカップそれぞれにおける決定された乳頭固有の真空圧力レベルを設定するために、各真空レギュレータへのそれぞれのコマンドを生成するように構成されている。
【0011】
処理装置は、各乳頭下のそれぞれの真空圧力レベルを測定し、それを各乳頭それぞれにかけられた以前に記憶された乳頭固有の真空圧力レベルと比較することによって、ティートカップに関連付けられた対応する真空レギュレータへのそれぞれのコマンドを生成することにより、各ティートカップにおける真空圧力レベルを設定することができる。したがって、乳頭の保全性を確保しつつ、高い乳流量を有する乳頭に対して高い真空圧力レベルを可能にするレベルに、乳頭固有の真空圧力レベルを調整することができる。
【0012】
それによって、乳頭固有の真空圧力レベルを個々の各乳頭の乳流量に適合させることにより、乳抽出が根本的に改善される。搾乳ステーション/搾乳ロボットで扱われる各動物の総搾乳時間が(従来の解決策と比較して)短縮され、これにより、搾乳システムにおいて単位時間当たりにより多くの動物を扱うことが可能になる。しかしながら、搾乳は穏やかな方法で行われ、乳頭下の過剰な真空圧力によって引き起こされる動物への不都合が排除される、又は少なくとも減少する。過剰な真空圧は、乳腺炎などの乳房疾患を助長し得る損傷を引き起こすことがあり、これにより、個々の動物の苦痛に加えて、農場への深刻な経済的影響が引き起こされることがある。
【0013】
第1の態様による搾乳システムの一実装形態では、搾乳セッションは、第1の乳頭に対して前処理が実行されたとき、又は第1のティートカップが第1の乳頭に適用されたとき、のいずれかから開始される。
【0014】
搾乳セッションが開始される特定の瞬間を規定することによって、明確で曖昧さのない固定点が確立され、これにより処理装置の計算及び制御が容易になる。
【0015】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、処理装置は、抽出されたデータに基づいて、搾乳セッション中に動物のそれぞれの各乳頭に適用される真空プロファイルを決定するように構成されている。処理装置はまた、それぞれの乳頭の対応する真空プロファイルに従って、乳頭下の関連付けられた各ティートカップにおける現行のそれぞれの真空圧力レベルを制御するために、各真空レギュレータへのそれぞれのコマンドを生成するように構成されている。
【0016】
それによって、かけられる乳頭固有の真空圧力レベルを、搾乳セッション中に時間とともに変化する乳頭の乳流量に適合させることができ、これにより、乳頭の乳流量が許容し得る高い真空圧力レベルがかけられる。これにより、過剰な真空によって乳頭を酷使せずに、搾乳セッションの合計時間をさらに短縮することができる。
【0017】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、真空プロファイルは、乳頭下の一定の真空圧力レベルを含み、この真空圧力レベルは、搾乳セッション中に維持される。
【0018】
第1の態様による搾乳システムの別の実装形態では、真空プロファイルは、乳頭下の真空圧力レベルを含み、この真空圧力レベルは、搾乳セッション中に時間とともに変化する。
【0019】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、搾乳システムは、サービスプロバイダの中央処理装置と通信するための通信装置を備える。処理装置は、動物のデータ及び/又は動物の識別基準を、通信装置を介してサービスプロバイダの中央処理装置に提供するように構成されている。処理装置はまた、搾乳セッション中に動物の各乳頭それぞれに適用される真空プロファイルを中央処理装置から取得するように構成されている。
【0020】
農場において局所的に処理能力を維持する代わりに、中央装置において計算及び/又はデータ記憶を行うことによって、いくつかの利点が達成される。農業従事者は、プログラムの更新及びコンピュータのセキュリティ問題に関して悩まされる必要がない。サービスプロバイダの最近の開発及び革新によるプログラムの更新は、中央処理装置においてただちに実施することができる。
【0021】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、処理装置は、搾乳セッション中に、対応する真空圧力センサから、乳頭の各々の乳頭下のそれぞれの真空圧力レベルを連続的に取得するように構成されている。処理装置は、取得したそれぞれの真空圧力レベルをそれぞれの真空プロファイルと比較するように構成されている。さらに、処理装置はまた、取得した真空圧力レベルが真空プロファイルの真空圧力レベルと異なる場合、それぞれの乳頭の対応する真空プロファイルに従って、各ティートカップにおけるそれぞれの真空圧力レベルを調整するために、各真空レギュレータへのそれぞれのコマンドを生成するように構成されている。
【0022】
このようにして、各乳頭にかけられる真空圧力レベルの連続的な監視及び調整が達成され、乳頭固有の真空圧力レベルの中断されない監視及び設定が可能になる。
【0023】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、ティートカップは、搾乳セッション中に乳頭下で繰り返し開閉されるライナを備えており、真空圧力センサは、ライナが開いている期間中に真空圧力レベルを少なくとも2回測定するように構成されている。
【0024】
真空圧力レベルを頻繁に測定することができることによって、少なくともライナが開いて、乳頭が真空にさらされているとき、その時の/瞬間的な真空圧力のより良好な制御が達成される。また、乳流量の変化率を検出することも可能になる。乳流量の急速な増加/減少のいずれかの場合、2つの測定値の間の大きな差は、小さな差が検出されたときよりも大きなステップで真空圧力レベルが変更され得ることをトリガし得る。この場合、かけられる真空圧力レベルを、ティートカップに関連付けられた真空レギュレータを介して適合させることができる。それにより、真空によって引き起こされる乳頭の損傷又は刺激を回避しつつ、時間効率の良い搾乳のために適切な真空圧力レベルを各乳頭に提供することが可能になる。
【0025】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、真空圧力センサは、実質的に毎秒10~1000回の測定、好ましくは毎秒100~1000回の測定によって真空圧力レベルを測定するように構成されている。
【0026】
各乳頭下の真空圧力レベルがより頻繁に測定されるほど、以前の搾乳セッションと比較して動物の乳流量に偏差があるときにも、決定された乳頭固有の真空圧力レベルを維持するために、かけられる真空圧力レベルのより正確な微調整を行うことができる。
【0027】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、処理装置は、それぞれ関連付けられた真空圧力センサから取得した所定の数の最新の真空圧力レベルに基づいて、それぞれの乳頭下の各ティートカップにおける現行の真空圧力レベルのローリング平均を計算するように構成されている。真空プロファイルとの比較は、真空圧力レベルの計算されたローリング平均を用いて行われる。
【0028】
例えば、最新の5個又は10個の測定された真空圧力レベルのローリング平均を計算することで、測定における任意の変動が均一化され、これにより、真空プロファイル/決定された乳頭固有の真空圧力レベルのより信頼性の高い安定した比較がもたらされる。
【0029】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、処理装置は、それぞれの乳頭に適用されたティートカップに関連付けられた真空レギュレータへのコマンドを繰り返し生成して、真空圧力センサから取得した乳頭下の最新の真空圧力レベルが、以前に取得した乳頭下の真空圧力レベルよりも低いときに、乳頭下の真空圧力レベルをステップで増加させるか、又は、真空圧力センサから取得した乳頭下の最新の真空圧力レベルが、以前に取得した乳頭下の真空圧力レベルを超えるときに、乳頭下の真空圧力レベルをステップで減少させるか、のいずれかをさせるように構成されている。
【0030】
これにより、真空圧力レベルをリアルタイムで適合させることができる。真空圧力レベルの2つの後続の測定値を比較することによって、後続の真空圧力レベルの方向及び大きさを示す変化率を求めることができる。
【0031】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、ステップサイズは、取得した最新の真空圧力レベルと、例えば最後から2番目に取得した真空圧力レベルなどの以前に取得した真空圧力レベルとの間の差に比例する。
【0032】
測定値間の検出された差に比例し得るステップサイズで真空圧力を変化させるように真空レギュレータに命令することによって、その時の乳流量に適合しない不適切な真空圧力レベルが乳頭にかけられることが回避される。
【0033】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、処理装置は、乳頭に取り付けられたティートカップに関連付けられた真空圧力センサから取得した真空圧力レベルの測定値に基づいて、乳頭のうちの1つの乳頭下の真空圧力レベルが最大許容真空圧力レベルを超えたことを検出するように構成されている。処理装置はまた、その乳頭下の真空圧力レベルを減少させるために、乳頭に取り付けられたティートカップに関連付けられた真空レギュレータへのコマンドを生成するように構成されている。
【0034】
これにより、乳頭の乳流量が、かけられる真空圧に対応していない場合に、乳頭に過剰な真空圧力がかけられることが回避される。それによって、動物の乳頭の穏やかな扱いが確保されるにも関わらず、乳頭容量に適合した効率的な真空圧力をかけることが可能となり、これにより、動物の乳頭の保全性を損なわずに乳が短時間で排出されるため、搾乳セッションが改善及び合理化される。
【0035】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、処理装置は、識別された動物の各乳頭それぞれの最新の搾乳セッションに関連するデータを、データベースに提供し、特定の乳頭、動物の識別基準、及び時間基準に関連付けられた状態でデータベースに記憶させる。
【0036】
記憶されるデータは、異なる実装形態において異なっていてもよく、動物の各乳頭の乳生産量、搾乳セッション中に従うべき真空プロファイル、及び/又は少なくとも搾乳セッションの開始時にかけられるべき乳頭固有の初期真空圧力レベルを含むことができる。記憶されたデータを連続的に更新することによって、動物の泌乳サイクルにわたる乳収量の変化が補正され、さらには予測することができる。
【0037】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、処理装置は、動物の1つの乳頭の少なくとも1回の搾乳セッションに関連する以前に記憶されたデータと、乳頭の最新の搾乳セッションに関連する対応するデータとの間の、閾値限界を超える差を検出するように構成されている。また、処理装置は、差が検出されたときに、出力されるアラートを生成するように構成されている。
【0038】
乳収量又はかけられた真空圧力のいずれかにおける、2回の搾乳セッション間の結果の偏差が大きすぎる(すなわち閾値限界を超える)場合、その理由は、動物が乳腺炎、感染症、又は他の何らかの疾患に罹患しており、適切な専門治療を必要とする可能性があるためであり得る。疾患を検出して治療を早期に開始することにより、動物は早期に回復する可能性が高く、動物が病気である期間が短縮される。
【0039】
第1の態様による搾乳システムのさらに別の実装形態では、処理装置は、動物の最後の搾乳セッションと、動物が次の搾乳セッションを開始しようとするその時点との間の期間を求めるように構成されている。処理装置は、求められた期間にも基づいて、各乳頭それぞれにかけられる乳頭固有の真空圧力レベルを決定するように構成されている。
【0040】
決定される乳頭固有の真空圧力レベル及び/又は真空プロファイルを期間に基づいて調整することによって、動物の予測される乳流量に、より対応する真空圧力レベル及び/又は真空プロファイルが提供される。
【0041】
これにより、時間効率が良く、しかも乳頭に優しい乳抽出が提供される。
【0042】
他の利点及びさらなる新規の特徴は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
以下では本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0044】
図1】一実施形態に係る搾乳システムを示している。
図2】一実施形態に係る搾乳システムを示している。
図3】一実施形態に係る、ライナを備えたティートカップに関する搾乳システムの細部を示している。
図4A】乳抽出中の第1の乳頭の単位時間当たりの乳流量及び真空プロファイルの例を示した図である。
図4B】乳抽出中の第2の乳頭の単位時間当たりの乳流量及び真空プロファイルの例を示した図である。
図4C】乳抽出中の第3の乳頭の単位時間当たりの乳流量及び真空プロファイルの例を示した図である。
図4D】乳抽出中の第4の乳頭の単位時間当たりの乳流量及び真空プロファイルの例を示した図である。
図5】乳抽出中の乳頭の単位時間当たりの乳流量及び真空プロファイルの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、搾乳システムとして定義され、以下に記載される実施形態において実施され得る。しかしながら、これらの実施形態は、多くの異なる形態で例示及び実現されてもよく、本明細書に記載された例に限定されるものではない。むしろ、実施形態のこれらの例示的な例は、本開示が詳細かつ完全なものとなるように提供されている。
【0046】
さらに他の目的及び特徴は、添付の図面と併せて考慮される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、図面は単に例示の目的のために設計されており、添付の特許請求の範囲が参照される本明細書に開示された実施形態の限定を定義するものではないことを理解されたい。さらに、図面は、必ずしも正しい縮尺では描かれておらず、特に明記されていない限り、本明細書に記載されている構造及び手順を概念的に示すことを単に意図している。
【0047】
図1は、搾乳セッション中に動物から乳を抽出するように構成された搾乳システム100を示している。動物は、農場での酪農のための家畜の群に含まれ得る。搾乳システム100は、必須ではないが、有利には、自由に歩き回る動物を自発的に搾乳するように構成された自動搾乳設備、例えば搾乳ロボットにおいて実施されてもよく、動物は、所望されたときに搾乳されるために搾乳設備/搾乳システム100を訪れてもよい。
【0048】
「動物」は、例えば牛、山羊、羊、ラクダ、馬、乳水牛、ロバ、ヤクなどの任意のタイプの家畜化された雌の哺乳動物であってよい。動物は、例えば牛のように4つの乳頭、又は例えば山羊及び/若しくは羊のように2つの乳頭を有する場合がある(すべてを網羅していない)。他の動物は、他の数の乳頭を有する場合がある。
【0049】
搾乳システム100は、複数のティートカップ110a、110b、110c、110dを備える。ティートカップ110a、110b、110c、110dの数は、典型的には、搾乳システム100内で搾乳される動物の乳頭の数と同じである。各ティートカップ110a、110b、110c、110dは、動物のそれぞれの乳頭にフィットし、かつ搾乳セッションにおいて乳抽出中に乳頭に取り付けられるように構成されている。
【0050】
各ティートカップ110a、110b、110c、110dは、それぞれの乳頭から排出された乳を、接続されている貯乳タンク130に導くそれぞれの乳排出管120a、120b、120c、120dに接続されている。貯乳タンク130は、貯乳タンク130のシステム真空圧力を生成した、及び/又は連続的に生成する真空ポンプ140に接続されている。システム真空圧力は、例えば約48~55kPaの範囲内とすることができる。
【0051】
「真空圧力」及び/又は「搾乳真空」及び/又は「システム真空圧力」という表現は、周囲大気圧と比較して下回っている圧力を指す。
【0052】
貯乳タンク130は、搾乳セッション中に排出された乳を集めることができ、集められた乳は、ポンプ装置及びチューブを介して、接続されている冷却タンクに転送することができ、冷却タンクに乳が集められ冷却温度に維持されることができる。
【0053】
搾乳システム100はまた、複数の真空レギュレータ150a、150b、150c、150dを備える。各真空レギュレータ150a、150b、150c、150dに真空ポンプ140が接続されており、それによって、真空レギュレータ150a、150b、150c、150dにシステム真空が提供される。
【0054】
各真空レギュレータ150a、150b、150c、150dは、ソレノイドを備え、ソレノイドの弁の位置は、例えば、真空レギュレータ150a、150b、150c、150dに通信可能に接続された処理装置170によって生成されるパルス幅変調(PWM)信号を用いて、ソレノイドを取り囲む磁場を調整することによって調整することができ、それによって、真空ポンプ140のシステム真空と大気圧の空気との混合を変化させて制御真空pを作り出す。
【0055】
真空レギュレータ150a、150b、150c、150dは、それぞれの弁装置155a、155b、155c、155dを備える、又はそれぞれの弁装置155a、155b、155c、155dに接続されてもよい。弁装置155a、155b、155c、155dは、それぞれのティートカップ110a、110b、110c、110dに関連付けられたそれぞれの乳排出管120a、120b、120c、120dに配置されている。
【0056】
弁装置155a、155b、155c、155dは、膜157によって分離された湿潤部156及び乾燥部158を備える。乳排出管120a、120b、120c、120dは、弁装置155a、155b、155c、155dの湿潤部156を通過している。
【0057】
弁装置155a、155b、155c、155dの上流の、乳排出管120a、120b、120c、120dに関連付けられたティートカップ110a、110b、110c、110d内の現行の真空圧力レベルは、真空レギュレータ150a、150b、150c、150dによって弁装置155a、155b、155c、155dの乾燥部158に供給される制御真空レベルpと同じ真空レベルに調整される。
【0058】
したがって、乳頭下のティートカップ110a、110b、110c、110d内の現行の真空圧力レベルを、個々に調整することができる。
【0059】
弁装置155a、155b、155c、155dは、例えば、それ自体公知である遮断弁を備えることができる。
【0060】
さらに、搾乳システム100は、複数の真空圧力センサ160a、160b、160c、160dを備える。各真空圧力センサ160a、160b、160c、160dは、1つのティートカップ110a、110b、110c、110dに関連付けられており、搾乳セッションの乳抽出中に乳頭のうちの1つの乳頭下の関連付けられたティートカップ110a、110b、110c、110d内の現行の真空圧力レベルを測定するように構成されている。したがって、1つの真空圧力センサ160a、160b、160c、160dを、乳頭のうちの1つの乳頭下の1つの特定のティートカップ110a、110b、110c、110d内の現行の真空圧力レベルを測定するため専用とすることができる。
【0061】
搾乳システム100は、動物の識別基準及び/又は場合によっては時間基準にも関連付けられる、動物の各乳頭それぞれの少なくとも1回の以前の搾乳セッションに関連するデータを記憶するように構成されたデータベース180をさらに備える。記憶されるデータは、例えば、搾乳セッション中の各乳頭の単位時間当たりの乳抽出、及び/又は搾乳セッション中に維持されるべき真空レベル/真空プロファイルを含むことができる。
【0062】
搾乳セッションは、動物のオキシトシン放出の刺激を開始する前処理が動物の第1の乳頭に対して行われたときに開始されるものとみなすことができる。前処理は、乳頭を水ですすぐことによる乳頭の洗浄、乳頭をブラシで処理すること、又は他の方法で乳頭をいじる/刺激することを含むことができる。前処理の開始から乳腺胞乳の放出までに要する時間は、約40~60秒であり得る。しかしながら、この時間は、異なる品種、異なる個々の動物、及び同じ動物でも異なる状況において異なることがあり、単に大まかな推定とみなすことができる。
【0063】
しかしながら、前処理は、すべての農場で行われるわけではない。前処理が行われない場合、搾乳セッションは、第1のティートカップ110a、110b、110c、110dが第1の乳頭に取り付けられたときに開始されると考えることができる。
【0064】
真空プロファイルは、いくつかの実施形態では、搾乳セッション中に維持されるべき乳頭下の一定の真空圧力レベルを含むことができる。これに代えて、別の実施形態では、真空プロファイルは、搾乳セッション中に時間とともに変化する動物の乳頭下の複数の真空圧力レベルを含むことができる。
【0065】
さらに、搾乳システム100はまた、処理装置170を備えており、この処理装置170は、例えば、無線若しくは光学技術に基づく無線接続、又は電気ケーブル若しくは光ファイバによって実施される有線接続を介して、真空レギュレータ150a、150b、150c、150d、真空圧力センサ160a、160b、160c、160d、動物識別センサ、及びデータベース180に通信可能に接続されている。
【0066】
真空圧力センサ160a、160b、160c、160dは、いくつかの実施形態では、実質的に毎秒10~1000回の測定、好ましくは毎秒100~1000回の測定によって真空圧力レベルを測定するように構成することができる。
【0067】
真空圧力センサ160a、160b、160c、160dはまた、さらにいくつかの実施形態では、ライナが開いている期間中に真空圧力レベルを少なくとも2回測定するように構成することもできる。
【0068】
処理装置170は、動物識別センサから取得した動物固有情報に基づいて、搾乳される動物の識別基準を決定するように構成されている。処理装置170はまた、決定された識別基準に基づいて、データベース180から、識別された動物の各乳頭それぞれのデータを抽出するように構成されている。さらに、処理装置170は、ティートカップ110a、110b、110c、110dがそれぞれの乳頭に取り付けられているときに、搾乳セッションの開始からの期間に各乳頭それぞれにかけられる乳頭固有の真空圧力レベルを、抽出されたデータに基づいて決定するように構成されている。処理装置170はまた、各関連付けられたティートカップ110a、110b、110c、110dそれぞれに決定された乳頭固有の真空圧力レベルを設定するために、各真空レギュレータ150a、150b、150c、150dへのそれぞれのコマンドを生成するように構成されている。
【0069】
いくつかの実施形態では、処理装置170はまた、抽出されたデータに基づいて、搾乳セッション中に動物の各乳頭それぞれに適用される真空プロファイルを決定するように構成することができる。また、処理装置170は、それぞれの乳頭の対応する真空プロファイルに従って、乳頭下の関連付けられた各ティートカップ110a、110b、110c、110dにおける現行のそれぞれの真空圧力レベルを制御するために、各真空レギュレータ150a、150b、150c、150dへのそれぞれのコマンドを生成するように構成することができる。
【0070】
搾乳システム100はまた、いくつかの実施形態では、サービスプロバイダの中央処理装置192と通信するための通信装置190を備えていることができる。中央処理装置192は、様々な関連データを記憶することができる中央データベース193に接続することができる。
【0071】
農場における処理装置170は、動物のデータ及び/又は動物の識別基準を、通信装置190を介してサービスプロバイダの中央処理装置192に提供するように構成することができる。搾乳セッション中に動物の各乳頭それぞれに適用される真空プロファイルは、中央処理装置192から取得することができる。
【0072】
処理装置170は、さらにいくつかの実施形態では、搾乳セッション中に、各乳頭下のそれぞれの真空圧力レベルを、対応する真空圧力センサ160a、160b、160c、160dから連続的に取得するように構成することができる。また、処理装置170は、取得したそれぞれの真空圧力レベルをそれぞれの真空プロファイルと比較するように構成することができる。乳頭下の真空圧力レベルの直接的なリアルタイム(又はほぼリアルタイム)の制御が可能になる。取得した真空圧力レベルが真空プロファイルの真空圧力レベルと異なる場合、処理装置170は、それぞれの乳頭の対応する真空プロファイルに従って、関連付けられた各ティートカップ110a、110b、110c、110dにおけるそれぞれの真空圧力レベルを調整するために、各真空レギュレータ150a、150b、150c、150dへのそれぞれのコマンドを生成することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、処理装置170は、それぞれ関連付けられた真空圧力センサ160a、160b、160c、160dから取得した所定の数の最新の真空圧力レベル、例えば5個の最新の測定値、10個の最新の測定値などに基づいて、乳頭210a、210b、210c、210d下の各ティートカップ110a、110b、110c、110dにおける現行の真空圧力レベルのローリング平均を計算するように構成することができる。また、処理装置170は、各乳頭210a、210b、210c、210dそれぞれの真空圧力レベルの計算されたローリング平均に基づいて、真空プロファイルとの比較を実行するように構成することができる。これにより、測定結果の任意の変動に起因する測定結果の偏差が均一化され、乳頭下の真空圧力レベルのより信頼性の高い測定値につながる。
【0074】
処理装置170は、乳頭下の真空圧力レベルを調整するために、乳頭に取り付けられたティートカップ110a、110b、110c、110dに関連付けられた真空レギュレータ150a、150b、150c、150dへのコマンドを繰り返し生成するように構成することができる。調整は、真空圧力センサ160a、160b、160c、160dから取得した、最後に取得した乳頭下の真空圧力レベルが、以前に取得した乳頭下の真空圧力レベルよりも低いとき、すなわち乳頭下の真空圧力レベルが減少しているとき、乳頭下の真空圧力レベルをステップで増加させることを含むことができる。以前に取得した真空圧力レベルは、例えば、最後から2番目に取得した真空圧力レベルであってもよく、あるいは、以前に行われた測定であってもよい。
【0075】
これに加えて、又はこれに代えて、調整は、真空圧力センサ160a、160b、160c、160dから取得した、最後に取得した乳頭下の真空圧力レベルが、以前に取得した乳頭下の真空圧力レベルを超えるとき、乳頭下の真空圧力レベルを、ステップで減少させることを含むことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、ステップサイズは、最後に取得した真空圧力レベルと以前に取得した真空圧力レベルとの間の差に比例することができる。
【0077】
したがって、乳頭下の真空圧力レベルの2つの後続の測定値間に大きな差が検出されることにより、乳頭下にかけられる真空圧力レベルを、真空レギュレータを介して大きく調整することをトリガでき、逆もまた同様である。
【0078】
処理装置170は、いくつかの実施形態では、乳頭のうちの1つの乳頭下の真空圧力レベルが最大許容真空圧力レベルを超えたことを、その乳頭に取り付けられたティートカップ110a、110b、110c、110dに関連付けられた真空圧力センサ160a、160b、160c、160dから取得した真空圧力レベルの測定値に基づいて検出するように構成することができる。次いで、処理装置170は、乳頭下の真空圧力レベルを低下させるために、乳頭に取り付けられたティートカップ110a、110b、110c、110dに関連付けられた真空レギュレータ150a、150b、150c、150dへのコマンドを生成するように構成することができる。
【0079】
最大許容真空圧力レベルは、例えば38kPa、42kPaなどに設定することができる。最大許容真空圧力レベルは、異なる乳頭に対して異なるレベルに設定することができる。これにより、乳頭が過剰な真空圧力によって損傷しないことが確保される。
【0080】
いくつかの実施形態では、処理装置170はまた、識別された動物の各乳頭それぞれの最新の搾乳セッションに関連するデータを、データベースに提供し、特定の乳頭、動物の識別基準、及び時間基準に関連付けられた状態でデータベース180に記憶させるように構成することができる。
【0081】
処理装置170は、いくつかの実施形態では、動物の1つの乳頭の搾乳セッションに関連する以前に記憶されたデータと、乳頭の最新の搾乳セッションの乳流量データとの間の、例えば10%、20%などの閾値限界を超える差を検出するように構成することができる。処理装置170は、差が検出されたときに、出力されるアラートを生成するように構成することができる。
【0082】
アラートは、例えば、農業従事者の携帯電話、コンピュータ、及び/又はウェアラブル電子デバイス(インテリジェントウォッチ及び/又はインテリジェントグラス若しくは同様のデバイスなど)に出力することができる。これに加えて、又はこれに代えて、アラートは、農場に配置されたラウドスピーカ及び/又はディスプレイに出力されてもよい。
【0083】
処理装置170は、一般的に有利には、コンピュータプログラムを実行することによって、上述した手順を自動的に実行するように構成されている。したがって、いくつかの実施形態によれば、処理装置170は、コンピュータプログラムを記憶するメモリユニット、すなわち不揮発性データキャリアを備えることができ、次いで、不揮発性データキャリアは、処理装置170内の少なくとも1つのプロセッサの形態の処理回路に、コンピュータプログラムが処理回路上で実行されたときに上述した動作を実行させるソフトウェアを含むことができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、処理装置170は、動物の最後の搾乳セッションと、動物が次の搾乳セッションを開始しようとしている現時点との間の期間を求めるように構成されている。特定の動物における最後の搾乳セッションの時点を、動物の識別基準に関連付けられた状態でデータベース180に記憶することができる。
【0085】
期間が予測よりも長い場合、例えば20%長い場合、そうでない場合よりも動物が多くの乳を生産したことを予測することができ、これは搾乳曲線の形状に影響を及ぼし得る。これはまた、動物のそれぞれの乳頭に必要とされる前刺激の量/時間、及び/又は乳頭の単位時間当たりの乳流量のレベルに影響を及ぼし得る。したがって、(平均期間と比較して)延びた期間では、各乳頭それぞれにかけられる乳頭固有の真空圧力レベル及び/又は真空プロファイルを増大させることができ、逆もまた同様である。いくつかの実施形態では、乳頭固有の真空圧力レベル及び/又は真空プロファイルの調整を、求められた期間と平均期間との間の偏差の大きさに関連して行うことができ、乳頭にかけられる真空圧力レベルと乳頭の乳流量との間のより良好な対応がもたらされる。
【0086】
図2は、カメラ、ビデオカメラ、ライダ、レーダ、赤外線カメラなどのセンサ240に通信可能に接続されたロボットアーム230を備える搾乳ロボットなどの、ティートカップ配置装置220を備える搾乳システム100を示している。センサ240は、搾乳される動物200の各乳頭210a、210b、210c、210dの位置を検出するように構成されている。
【0087】
図示された非限定的な実施形態では、ティートカップ配置装置220は、搾乳ロボットとして具体化されており、搾乳ロボットは、自主搾乳システム(Voluntary Milking System、VMS)と呼ばれることもある、自動搾乳システム(Automatic Milking System、AMS)又は類似のシステムの一部であってもよい。本明細書に開示されている方法及び搾乳システム100は、搾乳ロボットを伴う使用に限定されず、搾乳パーラーにおいて拘束された動物及び/又は搾乳ピット若しくはロータリー搾乳パーラーにおける手動搾乳など、一般に知られている任意の搾乳コンセプトと一緒に利用されてもよい。
【0088】
ティートカップ配置装置220は、有線接続又は無線接続を介してセンサ240に通信可能に接続することができ、それによって動物の乳頭210a、210b、210c、210dのそれぞれの位置に関する情報を取得する。ティートカップ配置装置220は、センサ240によって行われるセンサ検出に基づいて、動物200のそれぞれの乳頭210a、210b、210c、210d上にティートカップ110a、110b、110c、110dの各々を順次取り付けるように構成することができる。ティートカップ110a、110b、110c、110dは、保管マガジン又は同様の保管ゾーン内に保持することができ、ティートカップ配置装置220は、ティートカップを一度に1つ把持し、それを乳頭210a、210b、210c、210dのうちの1つに取り付け、すべてのティートカップ110a、110b、110c、110dが取り付けられるまでこれを繰り返すことができる。ティートカップ110a、110b、110c、110dは、搾乳セッションのたびに同じ順序で乳頭210a、210b、210c、210dに取り付けることができる。
【0089】
多くの場合、後方の乳頭は、前方の乳頭よりも多くの乳を供給する。したがって、後方の乳頭の乳流量は、前方の乳頭の乳流量よりも多い。いくつかの実施形態では、後方の乳頭からの搾乳は、前方の乳頭からの搾乳よりも長い時間がかかることがあるため、ティートカップ110a、110b、110c、110dは、前方の乳頭に取り付けられる前に、まず後方の乳頭に取り付けられる場合がある。
【0090】
それによって、搾乳セッションの合計時間が短縮され、搾乳システム100によって扱われる動物200のより高いスループットにつながる。すなわち、より多くの動物200を搾乳システム100によって扱うことができ、これによって農場の収益性が改善される。
【0091】
農場における各個別の動物200の各乳頭210a、210b、210c、210dの乳抽出曲線及び/又は真空プロファイル(又は乳頭固有の真空圧力レベル)に関するデータは、例えば、処理装置170に通信可能に接続される又は処理装置170に含まれるデジタルメモリ又はデータベース180に記憶して、後にそこから取り出すことができる。これに代えて、又はこれに加えて、データを中央データベース193に記憶することができ、中央処理装置192によってデータにアクセスすることができる。
【0092】
データベース180、193は、特定の動物200の識別基準に関連付けられた、農場における動物200の乳頭210a、210b、210c、210dの乳抽出の履歴データ、真空プロファイル、及び/又は真空圧力レベルを記憶することができる。
【0093】
処理装置170は、例えばカメラなどの動物識別装置250に接続されており、カメラは、例えば、動物固有のスキンパターン、及び/又は、耳タグ上の動物固有ID番号、皮上のID番号(又は他の動物固有マーキング)、ID番号を含むバーコードなど、動物200に施された視覚的マーキングに基づいて、画像認識プログラムとともに動物200を識別することができる。
【0094】
あるいは、別の実施形態では、動物識別装置250は、短距離無線通信に基づくものとすることができる。この場合、例えば、動物200の耳に取り付けられた、動物200の首の周りの首ひもに保持された、動物200の皮膚の下に注入された、動物200に関連付けられた無線周波数識別(Radio-Frequency Identification、RFID)タグから信号を取得する、リーダ又はトランシーバの形態の動物識別装置250によって、動物200の識別を行うことができる。RFIDの代わりに、シグナリングは、Bluetooth、Wi-Fi、近距離無線通信(NFC)などに基づくものでもよい。
【0095】
信号を発するタグは、動物200を一意に(少なくとも農場内で一意に)識別するための電子的に記憶された情報を含むことができる。
【0096】
次いで、動物識別装置250は、識別装置から取得した動物200の識別基準を、有線又は無線通信インタフェースを介して処理装置170に提供することができる。
【0097】
動物200が、動物識別装置250と連携して処理装置170によって識別されたとき、ロボットアーム230は、ティートカップ110a、110b、110c、110dをそれぞれの乳頭210a、210b、210c、210dに1つずつ取り付け始めることができる。ティートカップ110a、110b、110c、110dは、上述したものと同じ順序で取り付けることができる。しかしながら、いくつかの代替実施形態では、ティートカップ110a、110b、110c、110dを、別の順序、例えば任意の順序で取り付けてもよい。
【0098】
処理装置170は、データベース180、193に通信可能に接続されている。動物固有情報、動物の識別基準に基づいて、動物200の各特定の乳頭210a、210b、210c、210dのデータ/情報が抽出される。データは、ティートカップ110a、110b、110c、110dが乳頭210a、210b、210c、210dそれぞれに取り付けられているときの、搾乳セッションの開始からの期間における、各特定の乳頭210a、210b、210c、210dの単位時間当たりの乳流量、特定の乳頭210a、210b、210c、210dに適用される真空プロファイル、及び/又は各乳頭210a、210b、210c、210dそれぞれにかけられる乳頭固有の真空圧力レベルを含むことができる。
【0099】
例えば、かけられる乳頭固有の真空圧力レベルは、関連付けられた真空圧力センサ160a、160b、160c、160dによって乳頭210a、210b、210c、210d下のティートカップ110a、110b、110c、110d内で測定されるように、32kPa、35kPa、40kPa、又はその近傍とすることができる。
【0100】
記憶されたデータが各特定の乳頭210a、210b、210c、210dの単位時間当たりの乳流量を含み得る場合、処理装置170は、乳頭210a、210b、210c、210d下で維持されるべき対応する真空圧力レベルをアルゴリズムに従って計算するように構成されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、処理装置170は、乳頭210a、210b、210c、210d下の現行の乳頭固有の真空圧力レベルを、搾乳セッション全体にわたり一定のレベルに維持することができる。乳が乳頭210a、210b、210c、210dから異なる流量で流れると、乳頭210a、210b、210c、210d下の真空圧力レベルも変化する。乳頭210a、210b、210c、210d下の現行の一定の真空圧力レベルを維持するために、かけられる真空圧力レベルを調整することができる。
【0102】
処理装置170は、それぞれ関連付けられた真空圧力センサ160a、160b、160c、160dを用いて、乳頭210a、210b、210c、210d下の真空圧力を連続的に/繰り返し測定することができる。この場合、処理装置170は、関連付けられた真空圧力センサ160a、160b、160c、160dによって測定される、乳頭210a、210b、210c、210d下のその時の/瞬間的な(又はいくらかのわずかな時間遅延を伴うほぼその時の/瞬間的な)真空圧力を取得することができる。測定された真空圧力レベルは、搾乳セッション中に一定に維持するべき真空プロファイル及び/又は乳頭固有の真空圧力レベルと比較することができる。比較の結果に基づいて、処理装置170は、ティートカップ110a、110b、110c、110d及び乳頭210a、210b、210c、210dに関連付けられた真空レギュレータ150a、150b、150c、150dへのコマンドを生成して、乳頭210a、210b、210c、210d下の真空圧力レベルを調整し、それによって、乳頭210a、210b、210c、210d下の真空圧力レベルを、搾乳セッション中に一定に維持されるべき真空プロファイルの真空圧力レベル及び/又は乳頭固有の真空圧力レベルのいずれかに設定することができる。
【0103】
ティートカップ110a、110b、110c、110dが動物の乳頭210a、210b、210c、210dに取り付けられたときに、脈動圧力がかけられる。パルス管(pulse tube)を介してティートカップ110a、110b、110c、110dにおける脈動チャンバにかけられる脈動圧力レベルは、いくつかの実施形態では、休止段階D中の大気圧と、いくつかの実施形態における搾乳段階B中のシステム真空圧力との間で変化してもよい。脈動真空をかけるための配置構造は、図面に示されていない。
【0104】
したがって、吸引は、図3に示したように、ティートカップ110a、110b、110c、110d内のライナ310の開閉するリズミカルな反復運動によって断続される。閉じたライナによって及ぼされる力により、乳頭210a、210b、210c、210dに対するマッサージをもたらす。その結果、乳頭210a、210b、210c、210dがマッサージされ、乳頭端における(例えば血液の)鬱血が防止されつつ、子牛の哺乳を模倣する、搾乳真空をかけることと組み合わせた、開閉するライナ310のリズミカルな動きによって、オキシトシン放出及び射乳が刺激される。
【0105】
乳頭210a、210b、210c、210d下に過剰な真空レベルをかけることによって乳頭210a、210b、210c、210dを損傷したり傷つけたりすることなく、(搾乳システム100によって単位時間当たりより多くの動物を扱うことができるように)可能な限り短い時間の間に効率的に動物200の乳を抽出することが望ましい。
【0106】
開示されたコンセプトの利点として、乳頭固有の乳流量制御型搾乳の適合化に向けた方法論が開発され、これは効率的でありながら、乳頭の保全性も守られる。
【0107】
したがって、各乳頭210a、210b、210c、210d下にかけられる真空圧力レベルが異なり得るため、乳抽出をより効率的にすることができる。それによって、各乳頭210a、210b、210c、210d下にかけられる真空圧力レベルを、各乳頭210a、210b、210c、210dそれぞれの容量に関して最適化することができ、搾乳セッションの全体的な最適化につながる。
【0108】
いくつかの実施形態では、搾乳セッションが終了しようとするとき、ティートカップのスムーズな取り外しを可能にするために、取り外し真空圧力をかけることができる。取り外し真空圧力レベルは、例えば約15kPaなど、約10~20kPaに設定することができる。
【0109】
図4A図4Dは、搾乳セッション400中の動物200のそれぞれの乳頭210a、210b、210c、210dのそれぞれの乳流量曲線401a、401b、401c、401d、及び対応する真空プロファイル402a、402b、402c、402dを示している。
【0110】
搾乳ロボット220において搾乳される動物200の場合、ティートカップ110a、110b、110c、110dは、従来どおり、ロボットアーム230によって乳頭210a、210b、210c、210dに順次取り付けられるため、乳抽出が、異なる乳頭210a、210b、210c、210dで、異なる段階となることがある。例えば、最後のティートカップ110a、110b、110c、110dが最後の乳頭に取り付けられたとき、最初の乳頭210a、210b、210c、210dにおいて乳腺胞乳が抽出され始めることがある。
【0111】
この場合に動物200は、4つの乳頭210a、210b、210c、210dを有する。4つのティートカップ110a、110b、110c、110dが、例えばロボットアーム230によって一度に1つずつ乳頭210a、210b、210c、210d上に順次取り付けられる。
【0112】
最初に、第1のティートカップ110aが時点tで第1の乳頭210aに取り付けられる。前刺激が行われていない場合、第1のティートカップ110aが第1の乳頭210aに取り付けられるこの時点tは搾乳セッション400の開始でもある。
【0113】
図4Aに概略的に示したように、乳腺胞乳は、第1の乳頭210aから流れ始めていない。代わりに、乳槽乳(cistern milk)が乳頭210aから抽出され、すべての乳槽乳がティートカップ110aを介して抽出されたとき、乳流量曲線401aに示されるように、乳腺胞乳が抽出されるまで乳流量が下降することがある。
【0114】
この場合、真空プロファイル402aは、乳流量曲線401aに対応するように、かつ乳腺胞乳が流れ始める前の下降時に乳頭210a下の真空圧力レベルを低下させるように計算されている。
【0115】
図4Bは、動物200の第2の乳頭210bの乳流量曲線401b、及び対応する真空プロファイル402bを示している。第2のティートカップ110bは、時点t1で第2の乳頭210bに取り付けられ得る。乳流量曲線401bに示されるように、第2の乳頭210bの乳槽乳排出と乳腺胞乳放出との間の乳放出に短い休止が存在してもよく、これも対応する真空プロファイル402bに反映されている。
【0116】
図4Cは、動物200の第3の乳頭210cの乳流量曲線401c、及び時点t2における対応する真空プロファイル402cを示している。乳流量曲線401cは、乳槽乳排出と乳腺胞乳放出との間で下降する傾向を示しておらず、第3の乳頭の乳流量が速く、乳流量曲線401cのプラトーまでしっかりと上昇している。搾乳セッションの終わりに向かって、乳流量はかなり急速に減少する。
【0117】
図4Dは、動物200の第4の乳頭210dの乳流量曲線401d、及び時点t3における対応する真空プロファイル402dを示している。第4の乳頭210dの乳流量は、乳流量曲線401dのプラトーまで急速に上昇している。
【0118】
提供される解決策の利点として、適切な真空圧力レベルが各乳頭210a、210b、210c、210dにかけられるように、単位時間当たりのその時の乳流量に応じて、動物200の各乳頭210a、210b、210c、210dそれぞれの乳頭下の現行の真空圧力レベルを動的に調整することが可能である。これにより、搾乳効率が改善される一方で、過剰な真空圧力による乳頭の損傷が排除される、又は少なくとも低減される。これにより、動物200の乳頭の状態が向上すると推定されるが、動物一頭当たりの搾乳時間が短縮されるため、搾乳システム100によって単位時間当たりより多くの動物を搾乳することができる。
【0119】
図5は、動物200の乳頭210a、210b、210c、210dの乳流量曲線401のさらなる例を示している。図示した実施形態では、乳頭210a、210b、210c、210dに適用される真空プロファイル402は、搾乳セッション中に維持される乳頭210a、210b、210c、210d下の一定の真空圧力レベルを含む。
【0120】
添付の図面に示した実施形態の説明において使用される用語は、説明される搾乳システム100、処理装置170及び/又はコンピュータプログラムを限定することを意図するものではない。添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の実施形態から逸脱することなく、様々な変更、置き換え、及び/又は改変を行うことができる。
【0121】
図1図5に描かれている、かつ/又は本明細書の対応するそれぞれのセクションで説明されている様々な図示された実施形態は、例えば、記載された実施形態の一部又はすべての特徴を混合及び編成することによって、有利に互いに組み合わせることができ、それによって追加の利点を達成する。
【0122】
本明細書で使用されるとき、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の任意の組み合わせ及びすべての組み合わせを含む。本明細書で使用される「又は」という用語は、数学的論理和、すなわち包含的論理和として解釈されるべきであり、特に明記しない限り、数学的排他的論理和(XOR)として解釈されるべきではない。さらに、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、「少なくとも1つ」として解釈されるべきであり、したがって、明示的に別段の定めがない限り、同じ種類の複数の実体も含む可能性がある。「含む(includes)」、「備える(comprises)」、「含んでいる(including)」、及び/又は「備えている(comprising)」という用語は、述べられた特徴、アクション、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、アクション、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことがさらに理解されよう。例えばプロセッサなどの単一のユニットは、特許請求の範囲に記載されたいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の方策又は特徴が相互に異なる従属請求項に記載されている、異なる図面に示されている、又は異なる実施形態に関連して説明されているという単なる事実は、これらの方策又は特徴の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
【国際調査報告】