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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】弁輪形成装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20231228BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20231228BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/966
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023534634
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2021084866
(87)【国際公開番号】W WO2022122859
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20212594.4
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/122,675
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523175801
【氏名又は名称】エイチブイアール カーディオ オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケラネン,オリ
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097SB02
4C267AA05
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB40
4C267CC19
4C267EE01
4C267HH08
(57)【要約】
弁輪形成装置であって、僧帽弁に隣接する冠状静脈洞(CS)内に挿入される取り外し可能で可撓性のある細長い変位ユニットと、CSの入口において組織壁に対して位置決めするための拡張状態に、可逆的に折り畳み可能な近位の可逆的拡張可能部分と、弁輪の形状を修正形状に修正する前記作動状態まで、近位拡張可能部分に対して変位ユニットの長手方向において移動可能な遠位固定部分と、変位ユニットの周囲に配置され、CS内に挿入するために変位ユニットに対して長手方向に沿って移動可能であるステントであって、送達装置に分離可能に連結され、変位ユニットと近位拡張可能部分との間に、半径方向に放射状に配置されている、ステントとを備える弁輪形成装置が開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁輪を有する欠陥のある増帽弁を治療するための弁輪形成装置(100)であって、
前記僧帽弁に隣接する冠状静脈洞(CS)内部に一時的に挿入するための取り外し可能で可撓性のある細長い変位ユニットであって、該変位ユニットは、前記CS内部に送達するための送達状態、および前記変位ユニットが前記送達状態から一時的かつ可逆的に移行可能である作動状態を有している、変位ユニット(101)と、
前記CSの入口において組織壁に対して位置決めするための拡張状態へと可逆的に折り畳み可能な近位の可逆的拡張可能部分であって、
前記変位ユニットが、前記CS内部に挿入されたときに前記弁輪の形状が修正形状へと修正される前記作動状態へと、近位拡張可能部分に対して前記変位ユニットの長手方向(104)に移動可能な遠位固定部分(103)を備えている、近位の可逆的拡張可能部分(102)と、
前記変位ユニットの周囲に配置され、前記CS内部に挿入するために前記変位ユニットに対して前記長手方向に沿って移動可能であるステントであって、
該ステントは、送達装置(106)に分離可能に連結され、かつ前記変位ユニットと前記近位拡張可能部分との間で半径方向(R)に放射状に配置されており、前記半径方向(R)は前記長手方向に対して垂直である、ステント(105)と
を備える弁輪形成装置。
【請求項2】
前記近位拡張可能部分は、シース(107)に連結され、かつ前記シースの近位部分(108)を前記遠位固定部分に向かって押圧することによって前記半径方向(R)に拡張するように構成されている、請求項1に記載の弁輪形成装置。
【請求項3】
前記ステントを包囲するとともに、前記ステントを前記変位ユニットに対して前記長手方向に位置決めするためのカテーテル(109)を備えており、前記ステントは、前記送達装置によって前記カテーテルから排出可能であり、かつ前記カテーテル内に回収可能である、請求項1または2に記載の弁輪形成装置。
【請求項4】
前記カテーテルは、前記シース内部を前記長手方向に移動可能である、請求項2および3に記載の弁輪形成装置。
【請求項5】
前記カテーテルは、前記作動状態において、前記変位ユニット上を、かつ前記シース内部を前記長手方向に移動可能である、請求項4に記載の弁輪形成装置。
【請求項6】
前記ステントは、前記作動状態において前記半径方向(R)に可逆的に拡張可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項7】
前記ステントは、前記CS内部に前記ステントを固定するための保持ユニット(110)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項8】
前記保持ユニットは、前記ステントが前記CS内部にあるときに前記弁輪に向かって配置されるように適合される、前記ステントの画定された表面部(111)上に配置されている、請求項7に記載の弁輪形成装置。
【請求項9】
複数の保持ユニットが、前記ステントの円周周囲に配置されている、請求項7に記載の弁輪形成装置。
【請求項10】
前記保持ユニットは、収縮状態から拡張状態へと弾性的に移行可能であり、それによって、
前記カテーテル内部に配置されたときに前記拡張状態から前記収縮状態へと湾曲し、かつ
前記カテーテルから抜去されると前記収縮状態から前記拡張状態へと拡張する
ように可撓性を有する、請求項3または4および請求項7~9のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項11】
前記保持ユニットは、前記収縮状態において、前記ステントの外径と実質的に同一平面上に位置合わされている、請求項10に記載の弁輪形成装置。
【請求項12】
前記近位拡張可能部分と前記遠位固定部分との間の前記長手方向における距離(L)は、前記変位ユニットが前記送達状態から前記作動状態へと移行すると、縮小後距離(L’)まで縮小する、請求項1~11のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項13】
前記近位拡張可能部分は、シース(107)内の細長い切れ目(113)によって前記シース内に形成されて前記長手方向に延在する細長いリブ部(112)を備えており、前記リブ部は前記半径方向(R)に拡張するように折り畳み可能である、請求項1~12のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項14】
前記遠位固定部分は、前記半径方向(R)に拡張可能な膨張ユニットを備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項15】
前記変位ユニットの管腔(116)内で延在し、かつ前記変位ユニットの遠位開口部(117)において前記管腔から出るように配置されたガイドワイヤ(115)を備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項16】
弁輪を有する欠陥のある僧帽弁を治療するための方法(400)であって、
取り外し可能で可撓性のある細長い変位ユニット(101)を、前記僧帽弁に隣接する冠状静脈洞(CS)内部に送達状態で挿入する工程(401)と、
前記CSの入口において、近位の可逆的拡張可能部分(102)を組織壁に対して位置決めする工程(402)と、
遠位固定部分(103)を前記CS内部に固定する工程(403)と、
前記変位ユニットを作動状態で作動させる工程であって、それによって、前記遠位固定部分が前記変位ユニットの長手方向(104)に移動されることで、前記遠位固定部分と前記近位拡張可能部分との間の距離(L)が縮小され、その結果、前記弁輪の形状が修正形状へと修正される、工程(404)と、
ステント(105)を前記近位拡張可能部分に通し、変位ユニット上でCS内部へと前進させる工程(405)と、
前記ステントを前記CS内部に固定して前記弁輪の前記修正形状を保持する工程(406)と、
前記変位ユニットを、前記ステントを介して引き抜いて(407)、前記作動状態で一時的に作動させた後に前記変位ユニットを取り出す工程(408)と
を含む方法。
【請求項17】
前記遠位固定部分は、膨張ユニットを備えており、前記遠位固定部分を固定することは、前記膨張ユニットを、心臓の冠状静脈洞内、および/または大心臓静脈内、および/または前室間枝もしくは前室間静脈内、および/または後静脈内、および/または後心室静脈内で膨張させること(4031)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記近位拡張可能部分はシース(107)に連結されており、前記近位拡張可能部分を位置決めすることは、前記シースの近位部分(108)を前記遠位固定部分に向かって押圧することで前記近位拡張可能部分を半径方向(R)に拡張させること(4021)を含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記ステントを固定することは、前記ステントを包囲しているカテーテルを引き出すこと(4061)と、前記ステントを前記長手方向に垂直な半径方向(R)に拡張させること(4062)を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記カテーテルは、前記近位拡張可能部分を通り、前記変位ユニット上を前記長手方向に移動可能である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ステントを固定することは、前記変位ユニットが引き出されたときに、前記弁輪の前記修正形状を保持するために前記ステントの保持ユニット(110)を前記CSに固定すること(4063)を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記保持ユニットを固定することは、前記保持ユニットを前記CSの組織壁内で前記弁輪の方向に固定すること(4064)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ステントを再び位置決めするか、または前記CSから取り出すために、前記カテーテルを前記ステント上で前進させて前記ステントを前記CSから外すこと(4065)を含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ステントを固定することは、前記カテーテル内に移動可能に配置された送達装置(106)から前記ステントを分離すること(4066)を含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、欠陥のある僧帽弁を治療するための弁輪形成装置の分野に関する。
より具体的には、本発明は、冠状静脈洞を介して欠陥のある僧帽弁を治療するための弁輪形成装置、およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
罹患した僧帽弁および三尖弁は、頻繁に交換または修復を必要とする。僧帽弁尖および三尖弁の弁尖または支持腱索は、変性して弱くなることがある、または弁輪は、拡張して弁漏れを引き起こすことがある。僧帽弁および三尖弁の交換ならびに修復は、弁の交換中もしくは修復処置中に、全体的な支持構造として、弁輪の直径を縮径させるか、もしくは他の任意の方法で弁輪の形状を変更するために使用される弁輪リングの支援のもとで行われることが多い。
【0003】
以前は、弁輪の形状に影響を与え、それによって弁機能に影響を及ぼすために、冠状静脈洞(CS)にインプラントが導入されてきた。WO02/062270号には、弁輪形成リングを交換することを目的とした、そのようなインプラントが開示されている。
弁輪形成装置をCS内部に埋め込むことは、例えば、適切な弁機能を維持するように弁輪を再形成することや、CS内で装置の正しい位置を長期にわたって確保することなど、いくつかの課題を伴う処置である。インプラントおよび処置の複雑さだけでなく、CSそのものに起こりうる外傷性効果も考慮しなければならない。先行技術の装置は、概して、CSを介した弁輪形成の前述した側面のいくつかにおいて、最適とはいえない性能を有する。課題は、解剖学的構造との非外傷性係合を提供しながら、弁輪の大部分を確実に再形成することである。先行技術の課題は、長期にわたって正確な機能を確保するために頻繁に調整および再配置が必要となる可能性のある、複雑で操作が難解な装置である。このことは、患者およびヘルスケアシステムに悪影響を及ぼす可能性がある。患者のリスクが増加する。
【0004】
インプラントを確実に固定し、かつCSを損傷するリスクを最小限に抑えると同時に、縮小処置、すなわち弁輪の再形成の制御度合いを高めることが望ましい。
【0005】
したがって、弁輪の縮小および再形成を行うための改良された弁輪形成装置は、有利であり、特に、長期にわたって確実に機能すること、処置の複雑さを軽減すること、および解剖学的構造に対する外傷性効果を少なくして患者の安全性を高めることが可能である。また、このような弁輪形成装置を用いて僧帽弁輪の縮小および再形成を行う方法も有利であろう。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の実施例は、好ましくは、添付の請求項に係る装置を提供することにより、上記のような、当技術分野における1つ以上の欠陥、欠点または問題を、軽減、緩和または排除しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、弁輪を有する欠陥のある僧帽弁を治療するための弁形成装置が提供され、該弁輪形成装置は、僧帽弁に隣接する冠状静脈洞(CS)内に一時的に挿入するための取り外し可能で可撓性のある細長い変位ユニットであって、該変位ユニットは、CS内部に送達するための送達状態、および変位ユニットが上記送達状態から一時的かつ可逆的に移行可能である作動状態を有する変位ユニットと、CSの入口において組織壁に対して位置決めするための拡張状態へと可逆的に折り畳み可能な近位の可逆的拡張可能部分であって、変位ユニットが、CSに挿入されたときに弁輪の形状が修正形状へと修正される上記作動状態へと、近位拡張可能部分に対して変位ユニットの長手方向に移動可能な遠位固定部分を備えている、近位の可逆的拡張可能部分と、変位ユニットの周囲に配置され、CS内部に挿入するために変位ユニットに対して長手方向に沿って移動可能なステントであって、該ステントは、送達装置に解除可能に連結され、かつ変位ユニットと近位拡張可能部分との間に半径方向(R)に放射線状に配置されており、半径方向(R)は、長手方向に対して垂直である、ステントとを備える。
【0008】
第2の態様によれば、弁輪を有する欠陥のある僧帽弁を治療するための方法が提供され、該方法は、取外し可能で可撓性のある細長い変位ユニットを、上記僧帽弁に隣接する冠状静脈洞(CS)内部に送達状態で挿入する工程と、上記CSの入口において、近位の可逆的拡張可能部分を組織壁に対して位置決めする工程と、遠位固定部分をCS内部に固定する工程と、変位ユニットを作動状態で作動させる工程であって、それによって、遠位固定部分が変位ユニットの長手方向に移動されることで、遠位固定部分と近位拡張可能部分との間の距離(L)が縮小され、その結果、弁輪の形状が修正形状へと修正される、工程と、ステントを、近位拡張可能部分に通して、変位ユニットをわたってCS内部へと前進させる工程と、ステントをCS内部に固定して、弁輪の修正形状を保持する工程と、変位ユニットを、ステントを介して引き抜いて、作動状態で一時的に作動させた後に変位ユニットを取り出す工程とを含む。
【0009】
本発明の他の実施例は、従属請求項に定義されており、第2および後続の態様に関する特徴は、第1の態様の準用である。
【0010】
本開示のいくつかの実施例は、修復された僧帽弁の長期にわたる機能を実現する。
【0011】
本開示のいくつかの実施例は、複雑さを軽減した僧帽弁の縮小処置を実現する。
【0012】
本開示のいくつかの実施例は、僧帽弁の縮小処置の、制御性向上を実現する。
【0013】
本開示のいくつかの実施例は、CSなどの解剖学的構造を損傷するリスクの低減を実現する。
【0014】
本開示のいくつかの実施例は、CSなどの解剖学的構造を損傷するリスクの低減と同時に、確実な縮小を実現する。
【0015】
本開示のいくつかの実施例は、確実な非外傷性処置と同時に、僧帽弁輪の改良された縮小処置を実現する。
【0016】
本開示のいくつかの実施例は、CSインプラントの長期的な悪影響のリスクの低減を実現する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「備える/備えた」という用語は、記載した特徴、整数、工程、もしくは構成要素の存在を特定するように解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、構成要素、もしくはそれらの群の存在または追加を排除しないことが強調されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施形態が可能であるこれらおよび他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照する本発明の実施形態の以下の説明から明らかになり、解明されるであろう。
図1】一例による弁輪形成装置の概略断面図である。
図2a】一例による弁輪形成装置の概略図である。
図2b】一例による、近位部分が拡張した状態の図2aの弁輪形成デバイスの概略図である。
図3a図3a~bは、一例による、近位拡張可能部分と遠位固定部分との間の長さが異なる弁輪形成装置の概略図である。
図3b図3a~bは、一例による、近位拡張可能部分と遠位固定部分との間の長さが異なる弁輪形成装置の概略図である。
図4a】一例による、カテーテルが細長い変位ユニット上を前進する、弁輪形成装置の概略図である。
図4b】一例による、ステントが細長い変位ユニット上を前進する、図4aの弁輪形成装置の概略図である。
図4c】一例による、ステントが細長い変位ユニットの上の所定位置に露出している、4bの弁輪形成装置の概略図である。
図4d】一例による、細長い変位ユニットがステントを通して引き出される、図4cの弁輪形成装置の概略図である。
図4e】一例による、半径方向を横切る断面図における図dの概略図である。
図5a図5a~bは、一例による、細長い変位ユニットが近位拡張可能部分と遠位固定部分とを用いて固定されている、冠状静脈洞(CS)内に配置された弁輪形成装置の概略図である。
図5b図5a~bは、一例による、細長い変位ユニットが近位拡張可能部分と遠位固定部分とを用いて固定されている、冠状静脈洞(CS)内に配置された弁輪形成装置の概略図である。
図5c図5c~dは、一例による、カテーテルが近位拡張可能部分を通って、細長い変位ユニット上を前進した、弁輪形成装置の概略図である。
図5d図5c~dは、一例による、カテーテルが近位拡張可能部分を通って、かつ細長い変位ユニット上で前進した、弁輪形成装置の概略図である。
図5e】一例による、ステントが図5c~dのカテーテル内で前進した、弁輪形成装置の概略図である。
図5f】一例による、ステントが図5c~dのカテーテル内で前進した、弁輪形成装置の概略図である。
図5g】一例による、図5e~fのステントがCS内で少なくとも部分的に拡張した、弁輪形成装置の概略図である。
図5h】一例による、図5e~fのステントがCS内で少なくとも部分的に拡張した、弁輪形成装置の概略図である。
図5i】一例による、図5e~fのステントがCS内で完全に拡張した、弁輪形成装置の概略図である。
図5j】一例による、図5iの細長い変位ユニットがステントを通して引き出された、弁輪形成装置の概略図である。
図5k】一例による、図5e~fのステントが完全に拡張して、かつCS内部に埋め込まれた、弁輪形成装置の概略図である。
図5l】一例による、図5e~fのステントが完全に拡張して、かつCS内部に埋め込まれた、弁輪形成装置の概略図である。
図6a】僧帽弁および隣接する冠状静脈洞の概略図である。
図6b】一例による、図5e~fのステントは完全に拡張して、かつCS内部に埋め込まれて、弁輪を再形成する、弁輪形成装置の概略図である。
図7】一例による弁輪形成装置を、断面図で示す概略図である。
図8a】一例による、欠陥のある僧帽弁を治療するための方法のフローチャートである。
図8b】一例による、欠陥のある僧帽弁を治療するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈されるべきでではない。むしろこれらの実施形態は、本開示を徹底的かつ完全にし、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。添付の図面に示される実施形態の詳細な説明において使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではない。図面において、類似の番号は、類似の要素を指す。
【0020】
図1は、弁輪を有する欠陥のある僧帽弁を治療するための弁輪形成装置(100)を概略的に示している。弁輪形成装置(100)は、僧帽弁に隣接する冠状静脈洞(CS)に一時的に挿入するための取り外し可能で可撓性のある細長い変位ユニット(101)を備える。変位ユニット(101)は、CS内部に送達するための送達状態と、変位ユニットが該送達状態から一時的かつ可逆的に移行可能である作動状態とを有する。弁輪形成装置(100)は、近位の可逆的拡張可能部分(102)を備える。近位拡張可能部分(102)は、CSの入口において組織壁に対して位置決めするために、拡張状態へと可逆的に折り畳み可能である。図2a~2bは、近位拡張可能部分(102)が、図2aの折り畳まれた状態から、図2bの拡張状態へと移行する例を表している。図5aは、CSの入口において壁を押圧するために、近位拡張可能部分(102)をCSの外側にどのように配置するかを概略的に示している。変位ユニット(101)は、上記作動状態へと、近位拡張可能部分(102)に対して変位ユニット(101)の長手方向(104)へ移動可能である、遠位固定部分(103)を備える。図5bは、遠位固定部分(103)をCS内部にどのように固定するかを概略的に示している。遠位固定部分(103)は、大心臓静脈に固定されてもよい。図3a~3bは、近位拡張可能部分(102)と遠位固定部分(103)との間の距離が変化するように、遠位固定部分(103)が移動可能である例を示している。該距離は、図3aにLで示される長さから、図3bにL’で示される縮小後の長さまで縮小される。作動状態でCS内部に配置されると、弁輪形成装置(100)は、弁輪が縮小し、弁尖が接合し得る修正形状に弁輪を修正する。したがって、図5a~5bに例示されるように、弁輪形成装置(100)がCS内部に配置され、かつ遠位固定部分(103)が固定されると、遠位固定部分(103)は、CSの入口において組織壁に対して対向力を加える近位拡張可能部分(102)向かって引き出すことができる。これにより、僧帽弁の弁輪を再形成することができる。
【0021】
再び図1に戻るが、弁輪形成装置(100)は、変位ユニット(101)の周囲に配置され、CSに挿入するために変位ユニット(101)に対して長手方向(104)に沿って移動可能なステント(105)を含む。図4Bは、ステント(105)が、どのように変位ユニット(101)上を遠位固定部分103に向かって前進するかを概略的に示している。図5e~5fは、弁輪形成装置(100)がCS内部に配置されたときの、変位ユニット(101)上のステント(105)の位置を示している。ステント(105)は、図5g~5iに図示し、以下でさらに説明するように、変位ユニット(101)が弁輪を再形成したときに、CS内部に固定するために拡張することができる。ステント(105)は、図4dおよび図5jに概略的に示すように、送達装置(106)に分離可能に連結されており、図5j~5lおよび図6bに示すように、変位ユニット(101)が引き出された後、再形成された弁輪の形態を維持するためにCS内で分離することができる。図6aは、僧帽弁(MV)に対するCSを見下げ図で示す、心臓の図である。CSはMVに隣接し、MVの弁輪(A)を中心に湾曲している。ステント(105)は、図4dに例示するように、送達装置(106)への解放可能な連結部(114)を有していてもよい。送達装置(106)が、変位ユニット(101)に対して長手方向(104)に沿って、ステント(105)を押したり引いたりするように構成される場合があることも考えられる。ステント(105)は、例えば図1に示すように、変位ユニット(101)と近位拡張可能部分(102)との間に半径方向(R)に配置される。半径方向(R)は長手方向(104)に対して垂直である。ステント(105)を、変位ユニット(101)と近位拡張可能部分(102)との間に配置することにより、近位拡張可能部分(102)がCSの外側で拡張し、変位ユニット(101)が作動状態になると同時に、ステント(105)を変位ユニット(101)上でCS内部に前進させることができる。したがって、ステント(105)をCS内部に配置し、最終的に固定する前に、変位ユニット(101)を用いて、長さ(L)を変化させることにより、弁輪の再形成を厳密に制御し、最適化することができる。弁尖が適切に接合し、逆流が生じなくなったら、ステント(105)は、例えば、血流の特徴および弁尖の動きを観察し、ステント(105)を覆って配置されたカテーテル(109)を引き出すことにより、以下でさらに説明するように、徐々に拡張させることができる(図5g~5i)。ステント(105)への連結は、ステント(105)が完全に拡張した後も送達装置(106)を用いて維持することができる(図5i)。その後、変位ユニット(101)が弁輪に加える力は、例えば、近位拡張可能部分(102)と遠位固定部分(103)の間の張力を減少させることによって、徐々に解除することができる。血流の特徴および弁尖の動きを継続的に観察して、逆流が生じないことを確かめることができる。変位ユニット(101)は、ステント(105)を通して完全に引き出すことができ(図5j)、ステント(105)は、逆流が生じなければ分離することできる(図5k~l)。そうでない場合は、例えばカテーテル(109)をステント(105)上を前進させることによってステント(105)を捕捉し、変位ユニット(101)を用いて弁輪の再形成をさらに調整し、および/またはサイズの異なる別のステント(105)を、近位拡張可能部分(102)を通して変位ユニット(101)上に導入して処置を繰り返すことができる。
【0022】
ステント(105)は、変位ユニット(101)が弁輪を再形成する前、または後に、近位拡張可能部分(102)を通って変位ユニット(101)上をCS内部に前進し得ることが考えられる(図5e~f)。いずれの場合も、ステント(105)は、再形成が行われた後に拡張し、CS内部に固定される。
【0023】
このようにして、弁輪形成装置(100)は、CSを介した容易な弁輪形成処置を実現する。弁輪の再形成は、変位ユニット(101)を用いて厳密に制御し、かつ最適化することができ、ステント(105)は、適切な弁機能が確認されたときに修正形状を維持するためにCS内部に固定することができる。作動状態の変位ユニット(101)が、既に弁の縮小効果をもたらしているのと同時に、変位ユニット(101)およびCSに対するステント(105)の位置を変化させ、かつ最適化することができるため、処置の安全性が向上する。変位ユニット(101)とステント(105)間の上述した組合せにより、弁を縮小するためにインプラント装置に複雑な要素、すなわちステントを導入する必要がなくなる。したがって、ステント(105)は、より頑丈で、より複雑でないものになり、それによって、弁の所望の機能を長期にわたって維持する上で信頼性が高くなる。これに対して、先行技術のインプラントは、複数の可動部間の複雑な相互作用に起因して、弁輪を縮小するために繰り返し調整する必要が生じる場合がある。また、弁輪形成装置100は、以下でさらに説明するように、保持ユニット(110)を有し得るステント(105)の代わりに、非外傷性形状の変位ユニット(101)によって縮小するこができるので、CSを損傷するリスクの低減も実現する。したがって、このような保持ユニットでCS内の組織を裂いてしまうリスクが低減され得る。
【0024】
説明したように、長手方向(104)における近位拡張可能部分(102)と遠位固定部分(103)との間の距離(L)は、変位ユニット(101)が送達状態から作動状態に移行するときに、縮小後の距離(L’)まで縮小し得る。近位拡張可能部分(102)および遠位固定部分(103)は、異なるシースまたはワイヤに連結されてもよく、該シースまたはワイヤは、図3a~3bに示すように、距離(L)を変化させるために、長手方向(104)に独立して移動可能であり得る。
【0025】
近位拡張可能部分(102)はシース(107)に連結され、かつ図2b(シース(107)付近の矢印を参照)に示すように、シース(107)の近位部分(108)を遠位固定部分(103)に向かって押圧することによって、長手方向(104)に垂直な半径方向(R)に拡張するように構成され得る。これにより、拡張可能部分(102)の拡張構成への展開が容易になる。
【0026】
変位ユニット(101)が、近位拡張可能部分(102)と遠位固定部分(103)との間に、弁の所望の縮小をもたらす距離(L’)を有して位置決めされるとき、ステント(105)は、CS内部に位置決めおよび固定するために、変位ユニット(101)上の所定の位置に移動可能である。弁輪形成装置(100)は、図4a~4bおよび図5c~5fに概略的に示すように、ステント(105)を包囲するとともに、ステント(105)を変位ユニット(101)に対して長手方向(104)に位置決めするためのカテーテル(109)を含み得る。図4aは、送達装置(106)がカテーテル(109)内でステント(105)を前方に押し出す前に、カテーテル(109)をまず変位ユニット(101)上で前進させる例を表している。しかし、ステント(105)をカテーテル(109)と同時に変位ユニット(101) 上で前進させることも考えられる。ステント(105)は、前述の送達装置(106)によってカテーテル(109)から排出可能であるとともに、カテーテル(109)内に回収可能であり得る。図4cは、カテーテル(109)が引き出されて、ステント(105)が変位ユニット(101)上に露出した状態を概略的に示す図である。
図4dは、変位ユニット(101)がステント(105)を通して引き出された状態を概略的に示す図である。近位拡張可能部分(102)が折り畳まれ、ステント(105)を送達装置(106)から分離することができる。
【0027】
したがって、カテーテル(109)はシース(107)の内で長手方向(104)に移動可能であり得る。こうして、ステント(105)が変位ユニット(101)上の所望の位置に配置され得る一方で、シース(107)に連結された近位拡張可能部分(102)は拡張し、CSの入口に固定される。
【0028】
したがって、前述の作動状態において、上記シース(107)内で変位ユニット上を長手方向(104)に移動可能であり得る。これによって、変位ユニット(101)によって弁輪の縮小量を効果的に制御しながら、CS内でのステント(105)の効果的で確実な位置決めおよび展開を実現する。
【0029】
ステント(105)は作動状態において半径方向(R)に可逆的に拡張可能であってもよい。したがって、例えば図5gに(部分的に)拡張した状態で示すように、一度拡張したステント(105)は、再び位置決めするか、または交換するために必要であれば、折り畳んで再び取り出すことができる。取り出す際には、送達装置(106)をカテーテル(109)から引き抜くことによってステント(105)をカテーテル(109)内に引き込み、ステント(105)をカテーテル(109)内部に収容することができる。ステント(105)は、カテーテル(109)から排出されると拡径するように、自己拡張可能であってもよい。そのような場合、ステント(105)は、直径がCSの直径よりも大きい拡径構成に熱固定された形状記憶材料から形成することができる。ステント(105)は、圧縮されてカテーテル(105)内に挿入された後、CS内部に排出され、そこで熱固定形状に拡径を試み、それによって、CS内の組織壁を押圧する。ステント(105)を、例えばステント(105)内を押圧するバルーンカテーテルによって積極的に拡張して、その直径を拡大し得ることも考えられる。
【0030】
ステント(105)は、図4c~d、図5g~l、および図6bに概略的に示すように、ステント(105)をCS内部に固定するための保持ユニット(110)を備え得る。したがって、変位ユニット(101)が、長さ(L)から縮小後の長さ(L’)に縮小することによって、CSの周囲の組織を収縮させて弁輪を再形成すると(図3a~3b)、再編成された組織の形状は、組織内に固定されたステント(105)によって保持され得る。保持ユニット(110)を有することにより、ステント(105)を組織内に効果的かつ確実に固定することができる。ステント(105)は、CSの長さの大部分に沿って、遮られることなくCSの組織壁に当接する長さで延在し得る。これにより、特に、ステント(105)の全長に沿って実質的に延在する保持ユニット(110)を有する場合に、再形成された弁輪を長期にわたって確実に保持することができる。ステント(105)の長さは、図5k~lに概略的に示すように、実質的にCSの長さに相当し得る。保持ユニット(110)はステント(105)の長さに沿って設けてもよい。これによりさらに、再形成された弁輪を長期にわたって特に確実に保持することができる。
【0031】
保持ユニット(110)は、一例におけるステント(105)の断面を示す図4eと併せて図6bの見下げ図に概略的に示すように、ステント(105)がCS内部にあるときに、弁輪に向かって配置されるようになされたステント(105)の表面部(111)上に配置することができる。したがって、保持ユニット(110)は、図4eに示すように、ステントの表面上の画定された円形セクタ(v)に配置することができる。保持ユニット(110)を弁輪に向かう方向に配置することで、CSの対応するセグメントに沿って組織を効果的に保持し、修正後の弁輪の形状を確実に保持することができる。一例では、ステント(105)は、少なくとも一つの放射線不透過性マーカー(図示せず)を含み得る。
これにより、弁輪の方向に対する、ステント(105)の方向付けが容易になる。
【0032】
一例では、複数の保持ユニット(110)が、ステント(105)の円周周囲に配置され得ることが考えられる。したがって、保持ユニット(110)は、ステント(105)の円周に沿って複数の円形セクタ(v)に配置することができる。このことは、保持力の増大が所望されるいくつかの用途において有利であり得る。
【0033】
保持ユニット(110)は、CS内の組織に貫通し、それによって組織に保持力を付与するように成形することができる。保持ユニット(110)はステント(105)の材料から形成することができる。このように、保持ユニット(110)はステント(105)と一体化されていてもよい。したがって、保持ユニット(110)は、ステント(105)の構造的構成内で、貫通した先端を有する、それぞれの細長い構造体として切断することができる。保持ユニット(110)を、ステント(105)の構成の一体化構造として成形することにより、頑丈で強度の高い保持ユニット(110)を実現するとともに、経時的な転位または変形のリスクを最小化する。このように、全体として、強度および信頼性の高い固定機構を実現する。保持ユニット(110)は、レーザー切断技術などの異なる切断技術によって成形することができる。
【0034】
保持ユニット(110)は、収縮状態から拡張状態へと弾性的に移行可能であり得る。したがって、保持ユニット(110)は、カテーテル(109)内に配置されたときに、拡張状態から収縮状態へと曲がるように、かつカテーテル(109)から引き抜かれたときに、収縮状態から拡張状態へと拡張するように可撓性を有し得る。これにより、カテーテル(109)を介したステント(105)の送達が容易になると同時に、カテーテル(109)の封じ込め状態から展開されると、保持ユニット(110)の拡張および組織への固定が可能になる。こうして、保持ユニット(110)は、例えば、図4d~eに示されるように、規定の拡張形状をとるように熱固定することができる。したがって、拡張形状は、保持ユニット(110)が外力によって作用されない弛緩状態に対応することができる。したがって、保持ユニット(110)は、カテーテル(109)から引き抜かれたときに、弛緩拡張状態に向かことによって、拡張形状への偏りを有し得る。
【0035】
保持ユニット(110)は、収縮状態においてステントの外径と実質的に同一平面で整列させることができる。これにより、保持ユニット(110)とカテーテル(109)の管腔内との間の摩擦が低減され得るため、カテーテル(109)を介したステント(105)の送達がさらに容易になる。さらに、断面が小さくなり、カテーテル(109)に対する摩耗および損傷のリスクが最小限に抑えられる。
【0036】
一例では、保持ユニット(110)は、形状記憶材料を含んでいてもよく、形状記憶材料の作動によって、保持ユニット(110)は、収縮状態から拡張状態へと移行する。例えば、形状記憶材料は、体温への加熱を受けたときに、保持ユニット(110)が拡張状態に向かって移動するように、温度で作動してもよい。これにより、いくつかの用途において、保持ユニット(110)の有利な展開を実現する。
【0037】
遠位固定部分(103)は、半径方向(R)に拡張可能であるバルーンなどの膨張ユニットを含み得る。これにより、変位ユニット(101)の遠位端の効率的かつ非外傷的な固定が可能となり、近位部分(102)によるCSの壁に対する効果的な固定と併せて、近位部分(102)と、遠位部分(103)の互いに向かう収縮力の効果的な移行が可能となる。これにより、CSの曲率半径の効果的な修正が可能となり、弁輪の形状の修正が容易になる。弁輪形成装置(100)は、膨張ユニットに連結され、かつ膨張媒体を膨張ユニットに送達するように構成される膨張管腔(図示せず)を備え得る。
【0038】
膨張ユニット(103)の長さは、様々な解剖学的構造に適合し得る。膨張ユニット(103)の長さは、例えば、大心臓静脈/左冠状静脈へなど、CSにさらに固定される場合、CSに連結する血管を阻害しないように選択することができる。膨張ユニット(103)の長さは、また、大心臓静脈/左冠状静脈へ移動するときに、CSの湾曲部または「隅角部」の後ろに効果的に固定されるようになされ得る。そのような固定を容易にし、CSの該湾曲部または「隅角部」から滑り出ることを回避するように、膨張ユニット(103)の長さは、十分に短くてもよい。
【0039】
近位拡張可能部分(102)は、拡張可能な弦部またはリブ部(112)を備え得る。シース(107)は、弦部またはリブ部(112)の末端に取り付けられた遠位部分(114)方向に押圧される場合がある。遠位部分(114)と近位部分(108)との間の圧縮力は、こうして弦部(112)を半径方向外側に押圧することができる。しかしながら、弦部(112)は、その弛緩状態において、拡張構成をとる傾向のある形状記憶材料を含み得ること、および弦部(112)は、跳ね返って拡張構成になるように引き戻される外側シース内に収容され得ることが考えられる。
【0040】
拡張可能な弦部(112)を有することにより、組織への柔軟な係合が実現し得るため、尖鋭なエッジやねじれがなく、CSの入口で組織を損傷するリスクをさらに低減することができる。弦部(112)は、長手方向(104)に延在していてもよく、これにより対称的な組織壁への係合が容易になり、CSへの入口付近での力の伝達が均等になるため、強固に固定することができる。また、弦部(112)の長手方向への延在により、弦部(112)に長手方向(104)への力を加えることによって、弦部(112)の拡張が容易になる。複数の弦部(112)は、組織壁の周りに対称的かつ均等に力が加わるように、円周方向に配置されてもよい。
【0041】
近位拡張可能部分(102)は、図2aに概略的に示すように、長手方向に延在する、シース(107)内の細長い切れ目(113)によってシース内に形成された細長いリブ部(112)を備え得る。リブ部(112)は、半径方向(R)に拡張するように折り畳み可能であってもよい。これにより、単純かつ強度の高い構造が実現する。したがって、リブまたは弦部(112)は、シース(107)と同じ材料から形成され得る。前述の材料は、組織に対して非外傷性であり、柔軟で可撓性のある材料であり得る。図2aで見られる折り畳まれた構成では、リブ(112)、すなわち間もなく拡張するリブ(112)は、長手方向(104)に延在し、コンパクトな半径方向プロファイルをもたらす。リブまたは弦部(112)は、シース(107)の円周周囲に等距離に配置され得る。上記で明らかにしたように、これにより、固定力の均等な分配が可能となる。
【0042】
近位拡張可能部分(102)の最大拡張直径(D)は、CSの直径の少なくとも3倍であり得る。いくつかの実施例では、CSの直径に対する近位拡張可能部分(102)の最大拡張直径(D)の比は、3~5の範囲である。いくつかの実施例では、前述の比率は、3.5~4.5の範囲であってもよく、これにより、コンパクトで扱いやすい弁輪形成装置(100)を維持しながら、近位拡張可能部分(102)の特に有利な固定が実現される。
【0043】
弁輪形成装置(100)は、図7に概略的に示すように、変位ユニット(101)の管腔(116)内で延在し、かつ変位ユニット(101)の遠位開口部(117)で管腔(116)から出るように配置されたガイドワイヤ(115)を備え得る。ガイドワイヤ(115)は、CS内部に挿入されてもよく、変位ユニット(101)は、その後、CS内で位置決めするためにガイドワイヤ(115)上を前進することができる。これにより、変位ユニット(101)の位置決めが容易になる。
【0044】
図8aは、欠陥のある僧帽弁を治療するための方法(400)を示している。方法(400)の工程を示す順序は、限定的に解釈されるべきではなく、方法(400)の工程を実施する順序は、変更可能であると考えられる。方法(400)は、取り外し可能で可撓性のある細長い変位ユニット(101)を、上記弁に隣接する冠状静脈洞(CS)内に送達状態で挿入する工程(401)と、CSの入口において、近位の可逆的拡張可能部分(102)を組織壁に対して位置決めする工程(402)(図5a)と、遠位固定部分(103)をCS内部に固定する工程(403)(図5b)と、弁輪の形状が修正形状へと修正されるように、遠位固定部分を変位ユニットの長手方向(104)に移動させて、遠位固定部分と近位拡張可能部分との間の距離(L)を縮小する作動状態に、変位ユニットを作動させる工程(404)とを含む。方法(400)は、ステント(105)を、近位拡張可能部分を通って、変位ユニット上でCS内部に前進させる工程(405)(図5e~5f)と、ステントを、CS内部に固定して弁輪の修正形状を保持する工程(406)(図5g~5i)と、変位ユニット(101)を、ステントを通して引き出して(407)、作動状態において一時的に作動させた後に取り出す工程(408)(図5j~l、6b)とを、さらに含む。したがって、方法(400)は、輪形成装置(100)および図1図7に関連して、上述したような利点をもたらす。方法(400)は、ステント(105)を確実に固定し、かつCSを損傷するリスクを最小限に抑えながら、縮小処置の制御度合いを高める、改良された弁輪形成処置を提供する。近位拡張可能部分(102)がCSの外側で拡張し、変位ユニット(101)が作動状態にあるうちに、ステント(105)を変位ユニット(101)で前進させることで、弁が変位ユニット(101)によって既に再形成されているときに、ステント(105)を確実に位置決めし、かつ固定することができる。このように、特に強固で信頼性の高い弁輪形成処置が実現する。
【0045】
図6bは、欠陥のある僧帽弁を治療するための方法(400)の別のフローチャートを示している。方法(400)の工程を示す順序は、限定的に解釈されるべきではなく、方法(400)の工程を実施する順序は、変更可能であると考えられる。
【0046】
遠位固定部分(103)は、参照番号(103)でも示される膨張可能なユニットを含み得る。遠位固定部分(103)を固定することは、膨張ユニットを、心臓の冠状静脈洞内、および/または大心臓静脈内、および/または前室間枝もしくは前室間静脈内、ならびに/あるいは後静脈内および/または後心室静脈内で膨張させること(4031)を含み得る。
【0047】
近位拡張可能部分(102)はシース(107)に連結することができる。
近位拡張可能部分(102)を位置決めすることは、シース(107)の近位部分(108)を遠位固定部分(103)に向かって押圧して、近位拡張可能部分を半径方向(R)に拡張させること(4021)を含み得る。
【0048】
ステント(105)を固定することは、図5g~hに概略的に示すように、ステント(105)を包囲しているカテーテル(109)を引き出すこと(4061)と、ステント(105)を長手方向(104)に垂直な半径方向(R)に拡張させること(4062)とを含み得る。
【0049】
カテーテル(109)は、近位拡張可能部分(102)を通って変位ユニット(101)上を長手方向(104)に移動可能であり得、上述したような有利な効果をもたらす。
【0050】
ステント(105)を固定することは、図5g~lに概略的に示すように、変位ユニット(101)が引き出されたときに、弁輪の修正形状を保持するために、ステント(105)の保持ユニット(110)をCSに固定すること(4063)を含み得る。
【0051】
保持ユニット(110)を固定することは、保持ユニット(110)をCSの組織壁内で弁輪の方向に固定すること(4064)を含み得る。
【0052】
方法(400)は、ステント(105)を再び位置決めするか、またはCSから取り出すために、カテーテル(109)をステント(105)上を前進させてステント(105)をCSから外すこと(4065)を含み得る。
【0053】
ステント(105)を固定することは、カテーテル(109)内に移動可能に配置された送達装置(106)から、ステント(105)を分離すること(4066)を含み得る(図5k)。
【0054】
本発明は、特定の実施形態に関して上述されてきた。しかしながら、上述した以外の実施形態も、本発明の範囲内で同様に可能である。本発明の異なる特徴および工程は、記載されるもの以外の組み合わせで、組み合わせられてもよい。本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定される。
【0055】
さらに一般的に、当業者であれば、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示的なものであることが意図されており、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の用途/複数の用途に依存することは、容易に理解するであろう。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
図5h
図5i
図5j
図5k
図5l
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
【手続補正書】
【提出日】2022-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁輪を有する欠陥のある増帽弁を治療するための弁輪形成装置(100)であって、
前記僧帽弁に隣接する冠状静脈洞(CS)内部に一時的に挿入するための取り外し可能で可撓性のある細長い変位ユニットであって、該変位ユニットは、前記CS内部に送達するための送達状態、および前記変位ユニットが前記送達状態から一時的かつ可逆的に移行可能である作動状態を有している、変位ユニット(101)と、
前記CSの入口において組織壁に対して位置決めするための拡張状態へと可逆的に折り畳み可能な近位の可逆的拡張可能部分であって、
前記変位ユニットが、前記CS内部に挿入されたときに前記弁輪の形状が修正形状へと修正される前記作動状態へと、近位拡張可能部分に対して前記変位ユニットの長手方向(104)に移動可能な遠位固定部分(103)を備えている、近位の可逆的拡張可能部分(102)と、
前記変位ユニットの周囲に配置され、前記CS内部に挿入するために前記変位ユニットに対して前記長手方向に沿って移動可能であるステントであって、
該ステントは、送達装置(106)に分離可能に連結され、かつ前記変位ユニットと前記近位拡張可能部分との間で半径方向(R)に放射状に配置されており、前記半径方向(R)は前記長手方向に対して垂直であり、
前記近位拡張可能部分は、シース(107)に連結され、かつ前記シースの近位部分(108)を前記遠位固定部分に向かって押圧することによって前記半径方向(R)に拡張するように構成されている、ステント(105)と、
前記ステントを包囲するとともに、前記ステントを前記変位ユニットに対して前記長手方向に位置決めするためのカテーテルであって、前記ステントは、前記送達装置によって前記カテーテルから排出可能であり、かつ前記カテーテル内に回収可能であり、
前記カテーテルは、前記作動状態において、前記変位ユニット上を、かつ前記シース内部を前記長手方向に移動可能である、カテーテル(109)と
を備える弁輪形成装置。
【請求項2】
前記ステントは、前記作動状態において前記半径方向(R)に可逆的に拡張可能である、請求項に記載の弁輪形成装置。
【請求項3】
前記ステントは、前記CS内部に前記ステントを固定するための保持ユニット(110)を備える、請求項1または2に記載の弁輪形成装置。
【請求項4】
前記保持ユニットは、前記ステントが前記CS内部にあるときに前記弁輪に向かって配置されるように適合される、前記ステントの画定された表面部(111)上に配置されている、請求項に記載の弁輪形成装置。
【請求項5】
複数の保持ユニットが、前記ステントの円周周囲に配置されている、請求項に記載の弁輪形成装置。
【請求項6】
前記保持ユニットは、収縮状態から拡張状態へと弾性的に移行可能であり、それによって、
前記カテーテル内部に配置されたときに前記拡張状態から前記収縮状態へと湾曲し、かつ
前記カテーテルから抜去されると前記収縮状態から前記拡張状態へと拡張する
ように可撓性を有する、請求項3~5のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項7】
前記保持ユニットは、前記収縮状態において、前記ステントの外径と実質的に同一平面上に位置合わされている、請求項に記載の弁輪形成装置。
【請求項8】
前記近位拡張可能部分と前記遠位固定部分との間の前記長手方向における距離(L)は、前記変位ユニットが前記送達状態から前記作動状態へと移行すると、縮小後距離(L’)まで縮小する、請求項1~7のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項9】
前記近位拡張可能部分は、シース(107)内の細長い切れ目(113)によって前記シース内に形成されて前記長手方向に延在する細長いリブ部(112)を備えており、前記リブ部は前記半径方向(R)に拡張するように折り畳み可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項10】
前記遠位固定部分は、前記半径方向(R)に拡張可能な膨張ユニットを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項11】
前記変位ユニットの管腔(116)内で延在し、かつ前記変位ユニットの遠位開口部(117)で前記管腔から出るように配置されたガイドワイヤ(115)を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の弁輪形成装置。
【請求項12】
弁輪を有する欠陥のある僧帽弁を治療するための方法(400)であって、
取り外し可能で可撓性のある細長い変位ユニット(101)を、前記僧帽弁に隣接する冠状静脈洞(CS)内部に送達状態で挿入する工程(401)と、
前記CSの入口において、近位の可逆的拡張可能部分(102)を組織壁に対して位置決めする工程(402)と、
遠位固定部分(103)を前記CS内部に固定する工程(403)と、
前記変位ユニットを作動状態で作動させる工程であって、それによって、前記遠位固定部分が前記変位ユニットの長手方向(104)に移動されることで、前記遠位固定部分と前記近位拡張可能部分との間の距離(L)が縮小され、その結果、前記弁輪の形状が修正形状へと修正される、工程(404)と、
ステント(105)を前記近位拡張可能部分に通し、変位ユニット上でCS内部へと前進させる工程(405)と、
前記ステントを前記CS内部に固定して前記弁輪の前記修正形状を保持する工程(406)と、
前記変位ユニットを、前記ステントを介して引き抜いて(407)、前記作動状態で一時的に作動させた後に前記変位ユニットを取り出す工程(408)と
を含む方法。
【請求項13】
前記遠位固定部分は、膨張ユニットを備えており、前記遠位固定部分を固定することは、前記膨張ユニットを、心臓の冠状静脈洞内、および/または大心臓静脈内、および/または前室間枝もしくは前室間静脈内、および/または後静脈内、および/または後心室静脈内で膨張させること(4031)を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記近位拡張可能部分はシース(107)に連結されており、前記近位拡張可能部分を位置決めすることは、前記シースの近位部分(108)を前記遠位固定部分に向かって押圧することで前記近位拡張可能部分を半径方向(R)に拡張させること(4021)を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステントを固定することは、前記ステントを包囲しているカテーテルを引き出すこと(4061)と、前記ステントを前記長手方向に垂直な半径方向(R)に拡張させること(4062)を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記カテーテルは、前記近位拡張可能部分を通り、前記変位ユニット上を前記長手方向に移動可能である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ステントを固定することは、前記変位ユニットが引き出されたときに、前記弁輪の前記修正形状を保持するために前記ステントの保持ユニット(110)を前記CSに固定すること(4063)を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記保持ユニットを固定することは、前記保持ユニットを前記CSの組織壁内で前記弁輪の方向に固定すること(4064)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ステントを再び位置決めするか、または前記CSから取り出すために、前記カテーテルを前記ステント上で前進させて前記ステントを前記CSから外すこと(4065)を含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ステントを固定することは、前記カテーテル内に移動可能に配置された送達装置(106)から前記ステントを分離すること(4066)を含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】