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特表2024-501185バリアコートされたセルロース系基材、セルロース系基材を含むラミネート包装材料及び包装容器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】バリアコートされたセルロース系基材、セルロース系基材を含むラミネート包装材料及び包装容器
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20231228BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231228BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20231228BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231228BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231228BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B65D65/40 D
B32B9/00 A
B05D7/00 A
B05D7/24 303B
B05D7/24 303J
B05D5/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535295
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021087136
(87)【国際公開番号】W WO2022136463
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216735.9
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸川 義信
(72)【発明者】
【氏名】ベルリン、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ウォールバーグ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】グイデッティ、グロリア
【テーマコード(参考)】
3E086
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086AD04
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA40
3E086BB05
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA13
4D075AC02
4D075AC21
4D075AC23
4D075AC34
4D075AC80
4D075AC88
4D075AE03
4D075BB05Z
4D075BB16X
4D075BB22X
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075BB61Y
4D075BB92Y
4D075CA42
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB18
4D075DB31
4D075DB32
4D075DB33
4D075DB36
4D075DB40
4D075DB43
4D075DC36
4D075EA06
4D075EA15
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC07
4D075EC23
4F100AD11B
4F100AH02C
4F100AJ03E
4F100AJ04A
4F100AJ04E
4F100AJ07E
4F100AK01A
4F100AK01D
4F100AK21E
4F100AK22E
4F100AK25E
4F100AL01E
4F100AL05B
4F100AL05E
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA30C
4F100CC00B
4F100DG10A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ68C
4F100EJ86B
4F100EJ86C
4F100EJ91E
4F100GB15
4F100GB16
4F100GB23
4F100JB09B
4F100JL12E
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
本発明は、還元型酸化グラフェン層でコーティングされたバリアコーティング基材ウェブ(10;25a;25b)の製造方法に関する。本発明はさらに、特に、液体カートン食品包装を意図した、バリアコーティングされた基材ウェブ(10)を備えるラミネート包装材料(20a;20b)、及びこのラミネート包装材料からなる液体カートン包装容器に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ウェブ(10a;10b)を還元型酸化グラフェン層(12a;12b)でコーティングし、包装材料(20a;20b)用の酸素バリア材料を製造する方法であって、
a)基材ウェブを提供し、前進させるステップと、
b)酸化グラフェンの単層フレーク及び最大20個、例えば、2~10個の積層された酸化グラフェンの単層フレークを有する多層酸化グラフェンプレートレットを含む酸化グラフェンを含む水性組成物を提供するステップと、
c)前記基材ウェブが前進している間に、前記基材ウェブの表面に前記酸化グラフェンの前記水性組成物をコーティングする(32a)ステップと、
d)層状酸化グラフェン粒子又はフレークの第1の乾燥層を得るため、前記基材ウェブ上の前記酸化グラフェンのウェットコーティングを強制蒸発によって乾燥させる(33a)ステップと、
e)還元剤の水溶液を、前記基材ウェブ上の前記酸化グラフェンの前記第1の乾燥層上に塗布するステップと、
f)還元剤の第2の乾燥層を得るため、前記ステップe)の後に、前記還元剤のウェットコーティングを強制蒸発によって乾燥させるステップと、
g)還元型酸化グラフェンの乾燥層でバリアコーティングされた基材ウェブを形成するため、前記第2の乾燥層の還元剤により、下層の前記第1の乾燥層の酸化グラフェンを、所定の最小温度で、所定の最小時間で還元させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
i)前記ステップg)の前又は後に実施され、前記還元剤の第2の乾燥層をコーティングするために、前記バリアコーティング基材ウェブをポリマーのさらなる層にコーティング又はラミネートするステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
h)前記ステップg)の前又は後に実施され、前記乾燥されたバリアコーティングされた基材ウェブをリールに巻き取るステップと、
をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化グラフェンの水性組成物の濃度が、0.1~15重量%、例えば0.5~10 重量%、例えば0.5~6重量%、例えば0.5~3重量%、例えば1~2重量%である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化グラフェンの水性組成物の湿潤コーティング厚さが10~400μmである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記還元剤が、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸(ビタミンC)、レモン汁、酢及び緑茶からなる群から選択される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記還元剤がアスコルビン酸である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記還元剤の濃度が0.5~15重量%、例えば1~10重量%、例えば2~7重量%、例えば3~6重量%である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップg)の前又は前記ステップg)の間に、前記ステップf)からの前記乾燥されたバリアコーティングされた基材ウェブを照射して、塗布された第1乾燥層と第2乾燥層との間で起こる還元反応を促進する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基材ウェブを一定速度で連続的に前進させる、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
液体食品用のラミネート包装材料(20a;20b)における酸素バリア材料として使用するため、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって得られるバリアコーティングされた基材ウェブ(10a;10b)であって、
基材ウェブ(11a;11b)と、前記基材ウェブの上に、還元型酸化グラフェン (12a;12b)の層状粒子又はフレークの乾燥層が塗布されている、
バリアコーティングされた基材ウェブ(10a;10b)。
【請求項12】
前記還元型酸化グラフェンの層状粒子又はフレークの前記乾燥層(12a;12b)の厚さが、50~1000nm、例えば100~800nm、例えば200~700nm、例えば200~600nm、例えば400~600nm、例えば450~550nmである、
請求項11に記載のバリアコーティングされた基材ウェブ。
【請求項13】
前記基材ウェブ(11a;11b)は、ポリマーフィルムウェブ、紙又は他のセルロース系材料ウェブ、又はポリマーコーティングされた紙又は他のセルロース系材料ウェブである、
請求項11又は12に記載のバリアコーティングされた基材ウェブ。
【請求項14】
前記還元型酸化グラフェンの層状粒子又はフレークからの前記乾燥層(12a;12b)が、隣接するポリマー層でさらにコーティングされている、又は隣接するポリマー層にラミネートされている、
請求項11~13のいずれか一項に記載のバリアコーティングされた基材ウェブ。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載のバリアコーティングされた基材ウェブ(10)を含み、第1の最外の保護材料層(22a;22b)及び第2の最内の液密でヒートシール可能な材料層(23a;23b;23b’)をさらに含む、
ラミネート包装材料(20a;20b)。
【請求項16】
紙又は板紙又は他のセルロース系材料のバルク層(21)と、第1の最外の保護材料層(22a;22b)と、第2の最内の液密でヒートシール可能な材料層(23a;23b;23b´)と、前記紙又は板紙のバルク層の内側に、前記バルク層と前記最内層との間に配置された、前記バリアコーティングされた基材ウェブ(10a;10b)とをさらに含む、
請求項15に記載のラミネート包装材料(20a;20b)。
【請求項17】
前記バリアコーティングされた基材ウェブ(10a;10b)が、アクリルポリマー及びコポリマー、デンプン、セルロース及び多糖誘導体、酢酸ビニル及び/又はビニルアルコールのポリマー及びコポリマーからなる群から選択されるバインダーを含む組成物を含む中間結合層(26a;26b)によって、前記バルク層(21)に結合される、
請求項16に記載のラミネート包装材料(20a;20b)。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載のラミネート包装材料(20a;20b)を備える、包装容器(50a;50b;50c;50d)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性プレコーティングの分散コーティングと、その後のバリア性蒸着コーティングによる、バリアコーティングされた紙又はセルロース系基材及びその製造方法に関する。本発明はさらに、バリアコーティングされた紙又はセルロース系基材を含む、特に液体カートン食品包装を意図した、ラミネート包装材料及びそのラミネート包装材料を含む液体カートン包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体食品用の一回使い切りタイプの包装容器は、板紙やカートンをベースとした包装用ラミネートから製造されることが多い。このような一般的に使用される包装容器の1つは、「Tetra Brik Aseptic(登録商標)」という商標を付して販売されており、主に、長期間の常温保存用に販売される牛乳、フルーツジュース等の液体食品の無菌包装に採用されている。この公知の包装容器の包装材料は、通常、紙、板紙、その他のセルロースベースの材料のバルク又はコア層と、熱可塑性プラスチックの液密の外側層を含むラミネートである。包装容器をガス気密、特に、酸素気密にするために、例えば、牛乳やフルーツジュースの無菌包装やパッケージングの目的で、これらの包装容器のラミネートは通常、少なくとも1つの追加層、最も一般的には、アルミニウム箔を含む。
【0003】
積層体の内側、すなわち、ラミネートから製造される容器の充填された食品内容物に面することを意図した側には、アルミニウム箔上に塗布される最内層があり、この最内層は、接着性ポリマー及び/又はポリオレフィン等のヒートシール可能な熱可塑性ポリマーを含む1又は複数の部分層を含む。また、バルク層の外側には、最外のヒートシール可能なポリマー層がある。
【0004】
包装容器は、一般に、包装材料のウェブ又は予め組み立てられたブランクからパッケージを形成、充填及びシールするタイプの最新の高速包装機によって製造される。包装容器は、ウェブの長手方向の両縁を、内側と外側のヒートシール可能な熱可塑性ポリマー層を一緒に溶着することによってオーバーラップ接合部で互いに結合させ、ラミネートされた包装材料のウェブをチューブに再形成することによって製造される。チューブは目的の液体食品で充填され、その後、チューブ内の内容物のレベルより低い位置で互いに所定の距離をおいてチューブを繰り返し横方向にシールすることによって、個々のパッケージに分割される。パッケージは、横方向シールに沿って切り込みを入れることでチューブから分離され、包装材料に予め用意された折り目線に沿って折り目を形成することで、所望の幾何学的形状、通常は平行六面体に形成される。
【0005】
この連続的なチューブ形成、充填及びシールする包装方法の概念の主な利点は、チューブ形成の直前にウェブを連続的に滅菌できることであり、したがって、無菌包装方法、すなわち、充填される液体内容物及び包装材料自体がバクテリアから低減され、充填された包装容器が、充填された製品における微生物の増殖の危険なしに常温であっても長期間保存できるような清潔な条件下で製造される方法の可能性を提供することである。Tetra Brik(登録商標)タイプの包装方法のもう一つの重要な利点は、前述したとおり、コスト効率に大きな影響を与える連続高速包装が可能である点である。
【0006】
敏感な液体食品、例えば、牛乳やジュースの包装容器も、本発明のラミネート包装材料のシート状ブランク又は予め組み立てられたブランクから製造できる。平らに折り畳まれた包装用ラミネートのチューブ状ブランクから、まずブランクを組み立てて開いたチューブ状容器カプセルを形成し、その一方の開口端を一体型エンドパネルの折り畳みとヒートシールによって閉鎖することによって、パッケージが製造される。こうして閉鎖された容器カプセルは、他方の開口端から食品、例えば、ジュース等が充填され、その後、対応する一体型エンドパネルをさらに折り曲げてヒートシールすることによって閉鎖される。シート状及びチューブ状のブランクから製造される包装容器の例として、従来のいわゆるゲーブルトップパッケージがある。また、このタイプのパッケージには、プラスチック製の成形されたトップ及び/又はスクリューキャップを備えたものもある。
【0007】
包装用ラミネートのアルミニウム箔の層は、他のガスバリア材料よりも非常に優れたガスバリア特性を提供する。液体食品の無菌包装用の従来のアルミニウム箔ベースの包装用ラミネートは、その性能レベルにおいて、今日、市場で入手可能な最もコスト効率の良い包装材料である。
【0008】
箔ベースの材料と競合する他の材料は、原材料に関するコスト効率が良く、同等の食品保存特性を有し、包装用ラミネートの完成品への材料の変換の複雑さが比較的低いことが必要である。
【0009】
液体食品用カートン包装用の非アルミニウム箔材料を開発する取り組みの中には、高いバリア特性を有する予め製造されたフィルム又はシートを開発すること、あるいは多層フィルム又はシートに複数の別個のバリア材料を組み合わせること、に対する一般的な動機付けもある。このようなフィルム又はシートは、従来のラミネート包装材料のアルミニウム箔バリア材料に代わるものであり、さらに、ラミネート包装材料のラミネート及び製造のための従来のプロセスに適合できる。
【0010】
持続可能な材料のみを使用するという要求の高まりに伴い、化石資源に由来する高分子バリア材料はあまり注目されなくなっており、リサイクル工程ではほとんど無視でき、材料の循環と再生可能な(非化石)材料に基づき、経済性にほとんど問題を引き起こさないタイプの薄いバリアコーティング、すなわち水性分散コーティング及び蒸着コーティングに取り組むことが残っている。分散コーティングされたポリマーの厚さは1~2μm程度であり、蒸着バリアコーティングは0.5μm以下、例えば、10~100nm、例えば、15~80nm、例えば、20~50nmと薄い。このようなコーティングは、長年にわたって様々な種類のものが開発されており、総合的な性能の向上を求めて、多層包装材料構造に組み合わされてきた。これらのコーティングの中には、優れたバリア特性を示すものもあるが、飲料用カートン包装業界は、あらゆる点でアルミニウム箔に代わる最適なコーティングやコーティングの組み合わせを依然として探している。
【0011】
過去の開発材料は、例えば、PVOH、デンプン等の薄層の分散及び/又は溶液コーティングに適した水性ポリマー組成物に関するものであった。この種のポリマーバインダーに共通する難点は、高湿度条件に敏感であり、湿気への暴露や水分含有量が増加するにつれて、固有の酸素バリア特性を失うこと、すなわち、充填された液体カートン包装容器のラミネート包装材料における条件である。このような薄い分散コーティングポリマー層は、架橋剤や無機粒子等の分散組成物中の追加の化合物の形で、あるいは水蒸気に対するバリアとして作用する追加の材料層の形で、ガスバリア特性を向上させるためにさらなる材料で補う必要があると結論付けられている。
【0012】
蒸着(いわゆる「真空コーティング」)バリアコーティングについては、非常に優れた亀裂発生歪み特性が達成されることもあり、剛性の包装容器の折り畳み成形や密封に十分な堅牢性を発揮するが、当然ながら、このようなコーティングが非常に薄いことを考慮すると、アルミニウム箔と比較して、機械的応力や損傷に対して比較的敏感である。
【0013】
後年、グラフェンが潜在的なバリア材料として台頭してきたが、包装材料の全面にバリアコーティングを施すためにコストがかかりすぎる。理論的には、優れたガスバリア性を得るために、厚さ1分子のグラフェンシートで十分かもしれないが、実際には、そのような薄層は非常に高価であり、製造も困難である。代替案として、グラフェンの単層フレークを有機溶媒に分散させ、分散コーティングや印刷技術によってコーティングすることも考えられるが、このようなグラフェン層のバリエーションは、使い捨て包装材料に全面コーティングとして含めるために高価すぎる。さらに、このようなコーティングからの有機溶媒の除去は、現在の持続可能な工業規模のコーティング作業において望ましくない問題となる。
【0014】
グラフェンと同等又は類似の特性を有する同様のバリアコーティングのための、より安価な材料源としては、非常に安価な原料である酸化グラファイトから剥離され、その後化学的に還元された酸化グラフェンフレーク又は粒子が挙げられる。このように酸化グラフェン粒子又はフレークを化学的に還元して、対応するグラフェン粒子又はフレークを製造することができる。グラファイトは自然界に豊富に存在するため、酸化グラファイト/酸化グラフェンへの酸化(例えば、Hummers法と呼ばれるプロセスによる)とその後のグラフェンへの還元によって得られるグラフェンは、包装材料に使用する際に安価である。
【0015】
しかしながら、還元型酸化グラフェン、すなわちグラフェンを出発点とする大規模な工業的コーティングプロセスによって、還元型酸化グラフェンの薄く均質なコーティングを提供することは、それを分散させるために必要な有機溶媒のため、またさらに精製された製品、すなわち還元型酸化グラフェンのコストが高くなるため、問題がある。
【0016】
2014年9月11日に「Nature Communications」に掲載された科学論文「Impermeable barrier films and protective coating based on reduced graphene oxide」(Y.Su、V.G. Kravets、S.L. Wong、J. Waters、A.K. Geim & R.R. Nair著)では、酸化グラフェンコーティングを施した基材を、90℃のヨウ化水素蒸気に5~30分間さらすか、還元剤としてビタミンCの溶液に90℃の温度で1時間浸漬することによって還元し、良好なガスバリア性を有する材料を得る方法が記載されている。このような方法は、1回の使い捨て包装材料のバリア層やコーティングの製造では、経済的な理由及び包装材料加工工場での実用的な非実現性から、実行不可能である。酸性蒸気の処理、又はほぼ沸騰した液体中で基材を長時間処理することは、材料の変質のリスクが高く、また、通常、広幅のウェブを高速で連続運転する製造工程では、非常に実用的ではない。
【0017】
したがって、このような還元型酸化グラフェンをベースとする材料を、合理的なコストでラミネート包装材料に適用し、リサイクル可能性及び持続可能な材料調達及び製造に関する将来の要件を満たすための改善方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、還元型酸化グラフェンからバリアコーティングされた基材を製造し、さらにそのようなバリアコーティングされた基材を包装材料に積層するための改良された方法を提供することである。
【0019】
また、本発明の一般的な目的は、還元型酸化グラフェンによるバリアコート基材を製造するための簡便な方法を提供することであり、良好なバリア特性だけでなく、リサイクル性及び将来の持続可能な液体カートンラミネート包装材料に関する要件を満たす能力を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、アルミニウム箔を含まないが、長期間の無菌包装に適した良好なガス及び他のバリア特性を有する、酸素に敏感な製品用の包装材料、例えば、液体、半固体又は湿った食品用の非アルミニウム箔のラミネート包装材料を合理的なコストで提供することである。
【0021】
特定の目的は、長期無菌食品保存用パッケージの製造のために、アルミニウム箔バリア材料と比較して、コスト効率が高く、非箔であり、紙又は板紙ベースのラミネート包装材料であって、良好なガスバリア性を有し、リサイクル可能で、持続可能な環境プロファイルを有する包装材料を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、周囲条件下で栄養品質が維持された液体食品を長期保存用の無菌包装容器を製造する目的で、良好なガスバリア特性を有する、コスト効率が高く、非箔であり、紙又は板紙ベースの、機械的に堅牢でヒートシール可能な包装用ラミネートを提供することである。
【0023】
したがって、これらの目的は、本発明によれば、添付の特許請求の範囲に定義されるバリアコーティングされた基材ウェブ、ラミネート包装材料及び包装容器の製造方法によって達成可能である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の第1の態様によれば、基材ウェブを還元型酸化グラフェンの層でコーティングすることによって、包装材料用の酸素バリア材料を製造する方法が提供され、この方法は、
a)基材ウェブを提供し、前進させるステップと、
b)酸化グラフェンを含む水性組成物を提供するステップと、酸化グラフェンは、酸化グラフェンの単層フレークと、最大20個、例えば、2~10個の積層された酸化グラフェンの単層フレークを有する多層酸化グラフェンプレートレット(multilayer graphene oxide platelets)とを含み、
c)基材ウェブが前進している間に、基材ウェブの表面に酸化グラフェンの水性組成物をコーティングするステップと、
d)層状酸化グラフェン粒子又はフレークの第1の乾燥層を得るために、基材ウェブ上の酸化グラフェンのウェットコーティングを強制蒸発によって乾燥させるステップと、
e)基材ウェブ上の酸化グラフェンの第1の乾燥層上に、還元剤の水溶液を塗布するステップと、
f)還元剤の第2の乾燥層を得るため、ステップe)の後に、還元剤の湿った水性コーティングを強制蒸発によって乾燥させるステップと、
g)還元型酸化グラフェンの乾燥層でバリアコーティングされた基材ウェブを形成するため、第2の乾燥層の還元剤により、下層にある第1の乾燥層の酸化グラフェンを、所定の最小温度で、所定の最小時間で還元させるステップと、
を備える。
【0025】
驚くべきことに、このような方法により、還元剤の塗布されたコーティングの乾燥後も還元反応が継続し、酸化グラフェンのグラフェンへの転化が十分に行われ、優れたガスバリア特性が得られることが見出された。これまで、還元剤の溶液は液体バス又はスプレーとして、あるいはスチーム処理として塗布され、乾燥した酸化グラフェン層を還元するためには、酸化グラフェン層の表面に長時間湿潤状態を維持させなければならないと考えられていたため、これは予想外のことであった。
【0026】
さらに驚くべきことに、コーティングされ乾燥された基材ウェブを一定時間高温に加熱することによっても、「乾燥」還元反応が促進され、加速され得ることが理解された。したがって、コーティング製造ラインを適切に設計することにより、加熱トンネル等を通る乾燥材料ウェブの長時間の搬送中に、コーティング及び乾燥された基材ウェブをさらに十分に還元し、高温に保持することができる。それでもなお、このような連続生産ラインは、通常のコーティング又はラミネーション作業よりもかなり低速にする必要があり、高温処理は、基材ウェブの特性に変化をもたらす危険性がないように、90℃よりもかなり低く保つ必要がある。しかし、非常に有利なことに、この製造方法では、水性コーティング作業そのものを除いて、コンバーティングラインに沿って湿潤処理や液体処理を行う必要がない。
【0027】
この方法は、ステップg)の前又は後に実施され、バリアコーティングされた基材ウェブを、還元剤の第2の乾燥層を覆うように、ポリマーのさらなる層にコーティング又はラミネートするステップi)をさらに含んでもよい。驚くべきことに、還元剤の乾燥層上に、熱可塑性ポリマーの押出しコーティング等のポリマー層をさらにコーティング又はラミネートした後も、第1の乾燥層及び第2の乾燥層間の還元反応が継続することがわかった。このような高温のポリマー溶融ラミネート作業では、さらに熱が加わり、バリアコーティングされた基材ウェブの表面に作用する。その結果、このようなラミネート作業が進行している間、還元反応はさらに促進される。
【0028】
本方法は、さらに、又は代わりに、ステップg)の前又は後に実施される、コーティング及び乾燥されたバリアコーティング基材ウェブをリールに巻き取るステップh)を含んでもよい。乾燥された酸化グラフェンの第一層の還元反応は、それが完了するまで止まらない。したがって、乾燥後にさらなる熱処理を行わなくても、酸化グラフェンの還元型酸化グラフェンへの変換は、それが完了するまで、より低い速度で継続することが示されている。したがって、塗布したばかりの酸化グラフェンの色は、時間の経過とともに黒色に変化し、これは酸化グラフェンがほぼ、実質的に完全に還元されたことを示す。このことは、コーティング製造ラインに余分な熱処理を組み込む必要がなく、バリアコーティングされた基材ウェブは、コーティングと短時間の乾燥操作の後、すなわち、わずか1分程度の間に直接リールに巻き取ることができるため、コーティング製造ラインにとって大きな利点となる。さらに、還元反応は後でゆっくりとしたペースで起こるため、製造速度はできるだけ速くすることができる。顧客への包装材料リールの輸送と流通に関するロジスティクスを計画することにより、還元反応を完了させるのに十分な時間を確保することができる。このように、塗布・乾燥後に、バリアコーティングされた基材ウェブを巻き取ったリールを所定時間保管するだけで、第2乾燥層中のアスコルビン酸と第1乾燥層中の酸化グラフェンとの還元反応を、酸化グラフェンから還元型酸化グラフェンへの十分な変換の割合に到達させることができる。
【0029】
一実施形態において、ステップg)の前又はステップg)の最中に、ステップf)からの乾燥したバリアコーティングされた基材ウェブは、塗布された第1乾燥層と第2乾燥層との間で起こる還元反応を促進するために、照射されてもよい。このような照射は、UV光、キセノン光又はレーザー光が含まれてもよい。第2のドライコーティングの還元剤とこのような補助的な照射との組み合わせは、酸化グラフェン層における還元反応をより迅速に、依然としてバランスよく促進すると思われる。還元剤を存在させずに照射のみによる酸化グラフェン層の還元は、制御が難しく、材料に欠陥を生じさせることがわかった。
【0030】
還元剤は、ヨウ化水素(HI)、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸(ビタミンC)、レモン汁、酢及び緑茶からなる群から選択されてもよい。好ましくは、還元剤はクエン酸ナトリウム、アスコルビン酸(ビタミンC)、レモン汁、酢及び緑茶からなる群から選択され、最も好ましくは、還元剤はアスコルビン酸である。後者は最も環境にやさしく持続可能な還元剤であり、アスコルビン酸は、食品及び食品産業との関連でよく承認されており、かつよく機能する還元剤であるため、このようなプロセスには最適である。
【0031】
工業生産に適応され、工業生産に適している本発明の方法により、得られるコーティングされた基材の酸素バリア透過率は、1cc/m、24時間、1気圧、23℃/50%RH、21%酸素と低くなり得る。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の方法によって得られるバリアコーティング基材ウェブ(10)が、液体食品用のラミネート包装材料における酸素バリア材料として使用するために提供され、基板材料は、基材ウェブ(11)を含み、基材ウェブの上に還元型酸化グラフェンの層状粒子又はフレークの乾燥層が塗布される。
【0033】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様のバリアコーティングされた基材を含むラミネート包装材料が提供される。ラミネート包装材料は、第1の最外の保護材料層と、第2の最内の液密でヒートシール可能な材料層をさらに含んでもよい。
【0034】
液体食品のカートン包装の目的のために、ラミネート包装材料は、紙又は板紙又は他のセルロースベース材料のバルク層、第1の最外の保護材料層、第2の最内の液密でヒートシール可能な材料層、紙又は板紙のバルク層の内側に配置され、バルク層と最内層との間にある、バリアコーティングされた基材をさらに含んでもよい。
【0035】
第1の最外の保護材料層は、汚れや湿気が積層材料の内部に到達するのを防止するための、保護ポリマーの層又はコーティングであってもよく、例えば、熱可塑性ポリマー層、例えば、液密でヒートシール可能なポリマー層、例えば、液密でヒートシール可能なポリオレフィン層、例えば、ポリエチレン等のポリマー層等であってもよい。第2の最内の液密でヒートシール可能な材料層は、ポリエチレン等のポリオレフィン等の熱可塑性ポリマーであってもよい。
【0036】
このようにして基材ウェブにコーティングされた還元型酸化グラフェンの薄層は、材料としてのグラフェンの優れたガスバリア性を示し、「アルミニウム箔の直接代替品」として液体カートン包装用のラミネート包装材料の標準的な構造にラミネートすることができる。このような「直接代替」フィルムやバリアシートを製造する以前の試みと比較すると、還元型酸化グラフェンでコーティングされたポリマーフィルムや紙基材等の基材ウェブは、ラミネート作業及びラミネートされた材料からカートンパッケージを折り畳み成形、充填、ヒートシールする充填機作業において、著しく感度が低下する。これは、材料としてのグラフェンの固有の耐久性と柔軟性によるものであるが、グラフェンは、互いに重なり合うフレークを密に重ねることによって得られる層であるため、バリアコーティングを通る酸素分子の透過は、フレーク間のいわゆる亀の道をたどらなければならないからである。このようなコーティングは、ひずみによるクラックの影響を受けにくく、パッケージへの加工中も酸素ガスバリア性を保持することができる。また、還元型酸化グラフェンのガスバリア性は、パッケージの液体内容物からの水分や水蒸気の透過の影響を受けにくいため、このような充填包装容器の長期保存にも耐えることができる。
【0037】
本発明の第4の態様では、液体、半固体又は湿潤食品の包装を意図した、第3の態様のラミネート包装材料を含む包装容器が提供される。一実施形態によれば、包装容器は、少なくとも一部が本発明のラミネート包装材料から製造され、さらなる実施形態によれば、包装容器の全体がラミネート包装材料からなる。
【0038】
(詳細な説明)
本発明に関連して使用される「長期保存」という用語は、包装容器が包装された食品の品質、すなわち栄養価、衛生的安全性及び味について、周囲温度条件で少なくとも1ヶ月又は2ヶ月、例えば、少なくとも3ヶ月、好ましくは、6ヶ月、例えば12ヶ月、又はそれ以上保存できることを意味する。
【0039】
「パッケージの完全性」という用語は、一般にパッケージの気密性、すなわち包装容器の漏れや破損に対する耐性を意味する。この用語は、充填された食品を劣化させ、パッケージの予想される保存期間を短くする可能性のある細菌、汚れ等の微生物の侵入に対するパッケージの耐性を包含する。
【0040】
ラミネート包装材料のパッケージの完全性に対する一つの主な貢献は、ラミネート材料の隣接する層間の良好な内部接着によってもたらされる。また、各層のピンホール、破断などの欠陥に対する材料の耐性に寄与し、さらに、包装容器の形成時に材料がシールされるシール接合部の強度にも寄与している。このように、ラミネート包装材自体の完全性に関しては、各ラミネート層とその隣接層との接着性、及び各材料層の品質に主眼がおかれている。包装容器のシールに関して、完全性は主にシール接合部の品質に焦点を当てられ、これは充填機における十分に機能する強固なシール作業によって確保され、さらにこれはラミネート包装材料の適切に適合したヒートシール特性によって確保される。
【0041】
「液体又は半液体食品」という用語は、一般に、任意に食品の断片を含むことができる流動性のある内容物を有する食品を指す。乳製品及び牛乳、大豆、米、穀物及び種子飲料、ジュース、ネクター、清涼飲料、エナジードリンク、スポーツ飲料、コーヒー又は茶飲料、ココナッツウォーター、ワイン、スープ、ハラペーニョ、トマト、ソース(パスタソース等)、豆及びオリーブオイルは、企図されている食品のいくつかの非限定的な例である。
【0042】
包装材料及び包装容器に関連する「無菌」という用語は、微生物が除去され、不活性化され、又は死滅している状態を指す。微生物の例としては、細菌や胞子が挙げられる。一般に、製品が包装容器に無菌的に充填される場合、無菌プロセスが使用される。包装容器の保存期間中、無菌状態を維持するためには、パッケージの完全性特性が非常に重要である。充填された食品の長期保存のために、さらに、本来の味や栄養価、例えば、ビタミンC含有量を保つために、酸素ガス等のガスや蒸気に対するバリア性を有することが重要である。
【0043】
「バルク層」という用語は、通常、多層ラミネートにおける最も厚い層又は最も多くの材料を含む層、すなわち、ラミネート及びラミネートから折り畳まれた包装容器の機械的特性及び寸法安定性に最も寄与している層、例えば、板紙又はカートン等を意味する。また、十分な機械的特性と寸法安定性を得るために、バルク層の両側で、より高いヤング率を有する安定化対向層とさらに相互作用する、サンドイッチ構造においてより大きな厚さ距離を提供する層を意味する場合もある。
【0044】
厚み測定は、Titan80-300、FEI装置を用いた透過型電子顕微鏡によって行った。サンプルは、LeicaのEM UC6 Microtomeで超ミクロトーム(ultramicrotomy)により準備されてもよい。
【0045】
OTRは、電量センサに基づくOxtran 2/21(Mocon社)装置で測定した。
【0046】
OTRの測定方法は、所定の温度、所定の気圧、一定の時間、例えば、21%の酸素濃度において、24時間の間に材料を通過する際の表面及び時間単位あたりの酸素量を特定した。
【0047】
水蒸気透過率(WVTR)測定は、Permatran 3/33(Mocon社)装置(規格:ASTM F1249-13 相対湿度検出及びWVTR測定用変調赤外線センサを使用)を使用し、38℃、90%駆動で測定した。
【0048】
「酸化グラフェン」という用語は、酸化グラフェンの単層フレーク、及び酸化グラフェンの単層フレークを最大20個、例えば、2~10個積層した多層酸化グラフェンプレートレットが含まれる。酸化グラフェン材料の乾燥重量に基づいて、より少量、すなわち15重量%未満、例えば、10重量%未満、例えば、5重量%未満の低い酸化グラフェン単層フレークのみが、20より高い数の酸化グラフェン単層フレークまで剥離された酸化グラフェンフレークであってもよいが、いわゆる「酸化グラファイトナノプレートレット」よりも横方向の粒子サイズが小さく、依然としてナノサイズである、バルキー酸化グラフェン粒子を含んでもよい。
【0049】
このような横方向にナノサイズのグラファイトフレークは、グラフェン系材料の性能をあまり低下させない限り、そのような少量が存在してもよい。好ましくは、ナノグラファイトフレーク/プレートレットは、乾燥重量を基準として15重量%、例えば、10重量%、例えば、5重量%以下の低量でのみ組成物中に存在する。
【0050】
本発明に使用できる水性分散液に適した酸化グラフェン材料は、例えば、Graphenea社製の少なくとも95%まで剥離された純粋な品質のもの、又はAbalonyx社製のペースト状の酸化グラフェンである。
【0051】
したがって、本発明のバリアコーティングに適した基材は、特定の種類の基材に限定されるものではなく、ポリマーフィルム、紙、板紙又は他のセルロースベースの基材、あるいはポリマーコーティングされた紙又は板紙、あるいはポリマーコーティングされた他のセルロースベースの基材も含まれる。基材ウェブは、ポリマーフィルムウェブ、紙又は板紙ウェブ、又はポリマーコーティングされた紙又は板紙ウェブであってもよい。
【0052】
ポリマーフィルム基材は、例えば、ポリエステル又はポリオレフィンから作成されてもよい。代表的なポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及びポリ乳酸(PLA)である。典型的なポリオレフィンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、二軸延伸高密度ポリエチレン(BOHDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等、大部分のポリプロピレン又はポリエチレンから作成されてもよい。
【0053】
セルロースベースの基材は、天然セルロース、繊維状セルロース又はフィブリル状セルロースのいずれのタイプをベースとしてもよく、これらはさらに、上記のタイプのポリマー、好ましくは、ポリエチレン等のポリオレフィンでコーティングされてもよく、その後、本発明によるバリアコーティングを塗布してもよい。
【0054】
通常、本発明のバリアコーティングを担持するのに適した紙又はセルロースベースの基材は、60g/m以下、例えば、50g/m以下、好ましくは、45g/m以下、さらに好ましくは、40g/m以下の薄さが必要である。一方、セルロース系基材が薄い、又は30g/m以下の坪量である場合は、湿潤分散液でコーティングし、その後に乾燥させると、機械的に弱すぎて、寸法安定性が低下するため、収縮やカールの問題が発生する可能性がある。したがって、好ましくは、30~50g/mの坪量、最も好ましくは、35~45g/mの坪量を有する紙である。
【0055】
一実施形態では、水性組成物中の酸化グラフェンの濃度は、0.1~15重量%、例えば、0.5~15重量%、例えば、0.5~10重量%、例えば、0.5~6重量%、例えば、0.5~3重量%、例えば、1~2重量%である。濃度が0.5重量%未満の場合、基材ウェブ上に十分な量の酸化グラフェンを塗布することが困難となり、塗布されたコーティングが十分な酸素バリア特性を発揮できない場合があるが、バリア特性の必要性が低ければ0.1重量%まで薄く塗布することも可能である。一方、濃度が6重量%より高い場合、例えば、10重量%より高い場合、例えば、15重量%より高い場合、酸化グラフェン材料のウェットコーティングが厚くなり、組成物のフレークとプレートレットの間に多くの水を含むため、塗布されたコーティングが乾燥しにくくなる可能性がある。酸化グラフェンの濃度が3重量%を超えると、コーティングの乾燥が困難になり、6重量%を超えると、塗布がさらに困難になる可能性がある。しかしながら、酸化グラフェンの水性組成物は、せん断減粘の挙動を示すため、厚い組成物であっても、塗布速度を上げても、適度な塗布厚みと良好な層形成が可能である。
【0056】
酸化グラフェンの水性組成物は、本質的に酸化グラフェンと水を含む。組成物中には、実質的にさらなるポリマー、すなわち結合剤又は同様の成分は含まれない。好ましくは、最大5重量%、例えば、最大3重量%まで分散剤、消泡剤等の添加剤のみ含む。したがって、酸化グラフェンの水性組成物は、0.1~15重量%の酸化グラフェン、0~5重量%の添加剤、及び85~99.9重量%の水を含み得る。
【0057】
一実施形態において、酸化グラフェンの水性組成物は、10~400μmの湿潤厚さでコーティングされる。10μmより薄い場合、コーティングが十分な酸素バリア特性を提供できない可能性があり、400μmより厚い場合、コーティングから乾燥除去する水の量又は厚いコーティング組成物の粘度が、実用的でない、又は取り扱いが不可能であり得る。
【0058】
還元剤を含む第2層でコーティングする場合、還元剤であるアスコルビン酸(ビタミンC)の濃度は、0.5~15重量%、例えば、1~10重量%、例えば、2~7重量%、例えば、3~6重量%である。少なくとも0.5重量%、例えば、1重量%のアスコルビン酸を有する溶液は、酸化グラフェンを還元する所望の効果を全く得るために必要であり、良好に機能する濃度の下限範囲は、約2重量%、好ましくは、3重量%である。濃度が7重量%を超えると、その効果はあまり大きくなく、10重量%を超えると、それ以上濃度を高めてもあまり有用ではなく、効果の増大はなさそうである。
【0059】
本発明の方法の乾燥ステップd)及びf)は、強制蒸発によって実施してもよい。
【0060】
さらに、基材を一定の速度で搬送されてもよい。最適かつ信頼性の高い量のコーティングを塗布するために、これはコーティング作業における重要な前提条件である。さらに、工業的に実行可能なウェブ速度及びコーティング速度は、コーティングラインの乾燥能力の寸法に応じて、100m/min、例えば、200m/min、例えば、300m/min、例えば、400m/minであってもよい。乾燥は、好ましくは、熱風の対流によって行われ、赤外線ヒーターによる照射と組み合わせてもよい。湿潤コーティングの乾燥は、基材表面の温度及びコーティングラインにおけるウェブの前進速度に応じて、少なくとも5メートルの長さ、少なくとも10メートルの長さ、少なくとも15メートルの長さ、少なくとも20メートルの長さ等、数メートルもある乾燥ステーションを通過する間に、最大でも数秒で行われる。
【0061】
酸化グラフェンは、このように水に分散され、水性「分散コーティング」プロセス又はいわゆる「液体フィルムコーティング」プロセスによって塗布されてもよい。完全に水性の分散液は、環境の持続可能性や作業の安全性の観点から好ましい。
【0062】
水性組成物は、インク及び/又は分散コーティングの形態で基材ウェブに塗布されてもよい。
【0063】
したがって、好適な塗布方法は、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の好適な印刷方法、及びグラビアロールコーティング、スロットコーティング、ドクターブレードコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング及びスプレーコーティング、ディップコーティング、及びブラシコーティングなどの種々の分散コーティング方法であってもよい。これらの印刷又はコーティング方法により、0.1~10μm、例えば、0.5~8μm、例えば、0.5~6μm、例えば、0.5~4μm、例えば、0.5~3μm、例えば、0.5~2.5μmの酸化グラフェンコーティング層の適切な乾燥材料厚さを塗布してもよい。
【0064】
より大きな厚みを得るために、酸化グラフェンの厚い層を形成するための数回の連続したコーティングプロセスが必要となり得る。ガスバリアコーティングの目的であれば、0.1~3μm、例えば、0.5~2.5μm、例えば、約2μmの乾燥した酸化グラフェンを塗布すれば十分である。導電性コーティングなどの他の目的には、より厚いコーティングが適しているが、おそらく表面全体を覆うコーティングではなく、基材ウェブの選択された局所領域にのみ適用されるコーティングであってもよい。
【0065】
本発明の実験は、グラビアコーティングによって行われたが、良好なガスバリアコーティングを提供するためには、上記のいずれの液体フィルムコーティング法も適していると考えられる。
【0066】
分散安定剤又は分散コーティング用の類似の添加剤の添加量も、水性酸化グラフェン組成物中に、好ましくは、乾燥コーティングを基準として約1重量%以下の量が含まれてもよい。
【0067】
酸化グラフェンを含む水性組成物の総乾燥含量は、0.5~15重量%、例えば、0.5~10重量%、例えば、0.5~8重量%、例えば、0.5~6重量%であることが好ましい。 乾燥含有量が低いと、ガスバリア層形成の品質が十分でない可能性が高く、その結果、乾燥コーティングから得られるガスバリア特性があまり良くない可能性がある。
【0068】
一実施形態では、酸化グラフェンのコーティングは、中間乾燥を伴う2つの連続したステップで2つの部分層として塗布されてもよい。2つの部分層として塗布される場合、各層は、好ましくは、0.1~1.5g/m、例えば、0.5~1g/mの量で塗布され、より少ない量の液体ガスバリア組成物から、より高品質の総層を得ることができる。一例として、乾燥した酸化グラフェンの総厚みが約2μmの場合、還元型酸化グラフェンへの還元後の総厚みは約0.5μm(500nm)となる。アスコルビン酸水溶液を塗布して乾燥させた後、酸化グラフェンを2回連続して塗布・乾燥させた場合、酸化グラフェンの乾燥した1回塗布の場合と同様に、酸化グラフェンが容易に還元されることが評価されている。酸化グラフェンの連続塗布・乾燥コーティングは、ほとんどの場合、別のコーティングの欠陥のない部分と重なっているため、各コーティングの欠陥カバーできる可能性がある。このようにして、塗布された酸化グラフェンの層全体は実質的に欠陥のないものとなる。
【0069】
酸化グラフェンコーティングは、紙や板紙の基材に直接塗布してもよいが、コーティングが均一かつ密着して形成されるように、コーティングされる表面が平滑で緻密であることが必要である。
【0070】
本発明の最良の性能のために、紙又はセルロースベースの基材ウェブ上にコーティングされた酸化グラフェン層の前に、ポリマーの薄いプレコーティングを設けてもよく、好適には、先行する分散コーティングステップにおいて水性組成物の形態で塗布されてもよい。このような薄いプレコーティングの厚さは、0.5~1.5μm、例えば、約1μmであってもよい。
【0071】
プレコーティングのポリマーは、任意の適切な水分散性ポリマー及び/又は再生可能な非化石ベースのポリマーであってよい。一実施形態では、プレコーティングのポリマーは、ポリビニルアルコール(PVOH、PVAL)、ポリエチレンビニルアルコール(EVOH、EVAL)、水分散性ポリエチレン等のポリオレフィン、デンプン、加工デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、ナノ/ミクロフィブリルセルロース(NFC/MFC/CNF)及びナノ結晶セルロース(NCC/CNC)からなる群から選択されてもよい。
【0072】
さらなる実施形態において、プレコーティングは、デンプン、加工デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、ナノ/ミクロフィブリルセルロース(NFC/MFC/CNF)又はナノ結晶セルロース(NCC/CNC)からなる群から選択される再生可能なポリマー又は物質を含んでもよい。
【0073】
このような天然、植物ベース、非化石ベースのポリマー又は物質は、均一な酸化グラフェンコーティング層を提供するための良好な表面平滑性を提供し得る。
【0074】
好適なデンプン原料又はデンプンの誘導体は、例えば、酸化デンプン、カチオン化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプンであってもよい。
【0075】
一実施形態では、プレコートポリマーは、ポリエチレンの非常に薄いコーティングであり、これにより、紙又は板紙基材から還元型酸化グラフェンコーティングをきれいに分離することができ、再生繊維が還元型酸化グラフェンを実質的に含まない状態に保つことができる。
【0076】
バリアコーティングされた基材ウェブがさらにロールに巻かれる際、又は多層材料構造に積層されたりする際の保護の目的で、低密度ポリエチレンのさらなる保護ポリマーコーティングを、その表面に残存するアスコルビン酸を含む還元型酸化グラフェン層上に塗布してもよい。このようにポリエチレンの層間に還元型酸化グラフェンを封入することで、後のリサイクル作業において、還元型酸化グラフェンを繊維画分から分離した状態に保つことができる。
【0077】
液体食品包装用カートンベースのラミネート包装材料は、紙又は板紙のバルク層と、第1の最外の保護材料層と、第2の最内の液密でヒートシール可能な材料層と、紙又は板紙のバルク層の内側に、包装材料から作られた包装容器の内側に向かって、バルク層と最内層の間に配置された、バリアコーティングされた基材ウェブとを備える。
【0078】
本発明で使用する紙又は板紙バルク層は、通常、約100μmから約600μmの厚さ、及び約100~500g/m、好ましくは、約200~300g/mの表面重量を有し、適切な包装品質を保つ従来の紙又は板紙であってもよい。
【0079】
液体食品を低コストで無菌的に長期包装するためには、より薄い紙製のコア層を有する、より薄い包装用ラミネートを使用してもよい。このような包装用ラミネートから作られる包装容器は、折り畳み式ではなく、ピロー状のフレキシブルパウチに似ている。このようなパウチパッケージに適した紙は、通常、約50~約140g/m、好ましくは、約70~約120g/m、より好ましくは、約70~約110g/mの表面重量を有する。本発明におけるバリアコーティングされた基材ウェブは、それ自体でラミネート材料にある程度の安定性を与える可能性があるため、「バルク」層に相当する紙層はさらに薄くてもよく、サンドイッチ構造でバリアコーティング基材ウェブと相互作用して、所望の機械的特性を有するラミネート包装材料を製造することができる。
【0080】
基材ウェブは、ポリマーフィルムウェブ、紙又は板紙ウェブ、又はポリマーコーティングされた紙又は板紙ウェブであってもよい。
【0081】
したがって、本発明のバリアコーティングに適した基材は、特定の種類の基材に限定されるものではなく、ポリマーフィルムだけでなく、紙、板紙又は他のセルロースベースの基材、あるいはポリマーコーティングされた紙、板紙又はポリマーコーティングされた他のセルロースベースの基材も含まれる。ポリマーフィルム基材は、例えば、ポリエステル又はポリオレフィン製である。代表的なポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)である。典型的なポリオレフィンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、二軸延伸高密度ポリエチレン(BOHDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等、大部分のポリプロピレン又はポリエチレンから作られ得る。
【0082】
セルロースベースの基材は、天然セルロース、繊維状セルロース又はフィブリル状セルロースのいずれのタイプをベースとしてもよく、これらはさらに、上記のタイプのポリマー、好ましくはポリエチレン等のポリオレフィンでコーティングされてもよく、その後、本発明の方法に従ってバリアコーティングを塗布してもよい。
【0083】
還元型酸化グラフェンの層状粒子又はフレークの乾燥層の厚さは、50~1000nm、例えば、100~800nm、例えば、200~700nm、例えば、200~600nm、例えば、400~600nm、例えば、450~550nmであってもよい。
【0084】
還元型酸化グラフェンの層状フレーク又は粒子の乾燥層は、分散コーティング可能なポリエチレン又は他の水溶性又は水分散性ポリマー等の熱可塑性ポリマーの薄い保護コーティングでさらにコーティングされてもよい。さらに、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン層等の隣接ポリマー層にラミネートされてもよい。このようなさらなるコーティング及び/又はラミネートは、酸化グラフェンの第1の乾燥層の酸化グラフェンを完全に還元する前又は後に実行してもよい。
【0085】
バリアコーティングされた基材ウェブは、中間接着剤又は熱可塑性ポリマー結合層によってバルク層に結合され、それによってバリアコーティングされた基材ウェブのコーティングされていない表面をバルク層に結合してもよい。一実施形態によれば、結合層は、ポリオレフィン層、例えば、特に、大部分がエチレンモノマー単位を含むポリエチレン系ポリオレフィンコポリマー又はブレンドの層である。結合層は、結合ポリマー層をバルク層のウェブと基材ウェブとの間に溶融押出ラミネートし、ラミネートローラーニップを通過して前進させながら同時に3つの層を一緒にプレスし、押出ラミネートによるラミネート構造を提供することによって、バルク層をバリアコーティングされた基材に結合することができる。
【0086】
別の実施形態では、バリアコーティングされた基材ウェブは、接着性ポリマーバインダーを含む接着剤組成物の水性分散液を、ラミネートされるウェブ表面の一方に湿式塗布し、ラミネートローラーニップを通して前進させる間に2つの紙ウェブを一緒にプレスし、湿式ラミネートによるラミネート構造を提供することによって、バルク層に接着されてもよい。水性接着剤組成物の水分は、その後のラミネート工程で、時間と共に一部蒸発する。したがって、強制的に乾燥させる工程は必要ない。接着性ポリマーバインダーは、アクリルポリマー及びコポリマー、デンプン、セルロース及び多糖類誘導体、酢酸ビニル及びビニルアルコールのポリマー及びコポリマーからなる群から選択される。最良の環境及び持続可能性プロファイルを実現するためには、植物由来又は非化石源由来の接着剤バインダーが好ましい。
【0087】
液密でヒートシール可能な最外層及び最内層に適した熱可塑性プラスチックは、ポリエチレン及びポリプロピレンのホモポリマー又はコポリマー等のポリオレフィン、好ましくは、ポリエチレン、より好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状LDPE(LLDPE)、メタロセン触媒を用いた直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)及びこれらのブレンド又はコポリマーからなる群から選択されるポリエチレンであってもよい。一実施形態によれば、液密でヒートシール可能な最外層はLDPEであり、液密でヒートシール可能な最内層は、最適なラミネーション及びヒートシール特性を得るために、m-LLDPEとLDPEとのブレンド組成物である。
【0088】
最外層は、通常、5~20μm、例えば、10~15μmの厚さで塗布される。最内層は、10~50μm、例えば、10~40μm、例えば、10~30μm、例えば、10~25μmの範囲の厚さで塗布されてもよい。
【0089】
最外層及び最内層に関して列挙したのと同じ熱可塑性ポリオレフィン系材料、特に、ポリエチレンは、ラミネート材料の内部、すなわち紙又は板紙などのバルク層又はコア層とバリアフィルム又はシートとの間の接着層にも適している。一実施形態において、熱可塑性接着層は、低密度ポリエチレン(LDPE)層等のポリエチレン層であってもよい。それは、典型的には、10~25μm、例えば、10~20μm、例えば、10~15μmの量で塗布されてもよい。
【0090】
さらなる実施形態では、第2の最内の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層は、包装材料の機械的特性の堅牢性を改善するために、上述と同一又は同様のポリオレフィンを含む予め製造されたフィルムである。フィルムブロー及びフィルムキャスティング操作における製造工程、及び任意に続くフィルム配向操作ステップのために、このようなフィルムのポリマーは、(共)押出コーティングされたポリオレフィン層から得られるものとは異なる特性を獲得する。このような予め製造されたポリマーフィルムは、ラミネート包装材料の機械的堅牢性、及びラミネート包装材料から形成及び充填された包装容器の機械的強度及びパッケージの完全性に寄与する。
【0091】
代替の実施形態によれば、例えば、バルク層又はコア層とバリアコーティングされた基材ウェブとの間、又は外側ヒートシール可能層とバリアコーティングされた基材ウェブとの間等のラミネート材料の内部における適切な結合層又は接合層も、いわゆる接着性熱可塑性ポリマー、例えば、変性ポリオレフィンであって、主に、LDPE又はLLDPEコポリマー、又は、カルボン酸又はグリシジル官能基等の官能基を含むモノマー単位、すなわち、グラフトコポリマーに基づく。例えば、(メタ)アクリル酸モノマー又は無水マレイン酸(MAH)モノマー、(すなわち、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)又はエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA))、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー(EG(M)A)又はMAHグラフト化ポリエチレン(MAH-g-PE)等が挙げられる。このような変性ポリマー又は接着性ポリマーの別の例は、いわゆるアイオノマー又はアイオノマーポリマーである。好ましくは、変性ポリオレフィンは、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)又はエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)である。
【0092】
必要に応じて、酸化グラフェン層又は還元型酸化グラフェン層との接着強度を向上させるために、基材ウェブの表面をコロナプラズマ処理又はオゾン処理などの酸化処理によって前処理してもよい。
【0093】
上記に従って製造されたラミネート包装材料は、ラミネート構造内の隣接する層間の良好な接着性、及びバリアコーティングとバリアプレコーティングの良好な品質を、それぞれ及び組み合わせて提供することにより、充填された包装容器に変形したときに良好な完全性が得られる。
【0094】
さらなる実施形態によれば、ラミネート包装材料から形成された包装容器は、包装材料のそれ自体へのシール、オプションでプラスチック製の開口部又はパッケージの上部との組み合わせによって、部分的にシールし、液体又は半液体の食品を充填し、その後、シールしてもよい。
【0095】
結論として、長期保存可能な液体食品包装用の堅牢で信頼性の高いパッケージは、改善されたバリア特性のおかげで、本発明で定義されるバリアコーティングされた基材及びそれを含むラミネート包装材料によって得ることができる。ラミネート包装材料構造は、基材とバリア材料コーティングとの間の接着性の向上、及びバリアコーティングされた基材自体のガスバリア特性への寄与の両方から、折り曲げ成形式パッケージへの成形に有利に働き、これはおそらく、バリアコーティングされたセルロース系基材のプレコーティング及びバリアコーティング層の結合力及び接着が向上したことによる。
【0096】
好ましい実施形態の例及び説明
以下に、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1a】本発明による還元型酸化グラフェンでコーティングされた基材の一実施形態の概略的な断面図を示す。
図1b】本発明による還元型酸化グラフェンでコーティングされた基材の異なる実施形態の概略的な断面図を示す。
図2a図1aの還元型酸化グラフェンでコーティングされた基材を含む、本発明によるラミネート包装材料の概略的な断面図を示す。
図2b図1bの還元型酸化グラフェンでコーティングされた基材を含む、本発明によるラミネート包装材料の概略的な断面図を示す。
図3】酸化グラフェンの水性組成物を基材上に分散コーティングする方法を概略的に示す。
図4a】中間熱可塑性ポリマーによって2つの材料ウェブを溶融押出ラミネートする方法を概略的に示す。
図4b】例えば、本発明の包装用ラミネートの最内層及び最外層を形成するために、ウェブ基材上に熱可塑性ポリマーの層を溶融(共)押出しコーティングする方法を概略的に示す。
図5a】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の典型例を示す。
図5b】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の典型例を示す。
図5c】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の典型例を示す。
図5d】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の典型例を示す。
図6】包装用ラミネートから、連続的なロール供給、成形、充填及びシール工程で包装容器が製造される原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0098】
実施例1
酸化グラフェンの単層フレーク(Graphenea社製、少なくとも95%まで剥離された純粋な品質)1重量%の水性分散液を、基材上に塗布する瞬間まで連続的に撹拌した。このようにして十分に分散した水性組成物を、ポリエチレンでプレコートされた板紙(曲げ剛性80mN、及び坪量200g/mの液体用板紙)の前進するウェブの上に、ヒラノ・ラボ・コーター(Hirano lab-coater)を用いて、湿潤厚さ約400μmになるように塗布した。塗布されたコーティング組成物中の水分は、熱風乾燥機の空気対流により、ウェブ表面温度約60℃で約1分間かけて表面から蒸発させた。その結果、PEコート紙上に塗布された酸化グラフェンの乾燥コーティング厚さは約2.2μmと測定された。
【0099】
こうして層状酸化グラフェンを2.2μmの薄さで乾燥コーティングした基板は、Ox-Tran 2/21 Mocon装置で測定した結果、約25cc/m、24時間、1気圧、23℃/50%RH、酸素21%の酸素透過率を示した。酸化グラフェンでコーティングされた基材は淡褐色(light brown)であった。
【0100】
こうして酸化グラフェンでコーティングされたウェブを、さらに3重量%のアスコルビン酸水溶液でコーティングし、ウェブの表面温度約60℃で約1分間かけて再び乾燥させ、室温まで冷却し、最後にリールに巻き取った。
【0101】
同じコーティング、乾燥した板紙ウェブから、表面温度60℃より高い温度で2時間連続的に維持したサンプルも採取した。これらのサンプルでは、少なくともコーティングされた酸化グラフェンの表面部分の酸化グラフェンは、高温での時間経過後、最終コーティングによって添加されたアスコルビン酸との還元反応によって完全に還元されたと結論づけられた。コーティングされた板紙の色は、淡褐色から濃褐色(dark brown)に変化していた。これらのサンプルについて、上記と同様の方法でOTRを測定したところ、2日後(OTR測定のためにサンプルをコンディショニングするのにかかる時間)には、1cc/m、24時間、1気圧、23℃/50%RH、酸素21%を下回っていた。この時点で、サンプルは完全に黒く変色していた。この還元型酸化グラフェンによるコーティングの乾燥膜厚を測定したところ、530nm、すなわち約0.5μmであった。このように、酸化グラフェンフレークの還元反応によってグラフェンフレーク間の距離が縮まり、バリア特性が大幅に向上した。
【0102】
その結果、コーティングされた酸化グラフェンをグラフェンに還元することによって、たとえ部分的であっても、又はコーティングの表面であっても、酸素バリアレベルは、無菌液体カートンパッケージを意図したラミネート包装材料において必要かつ望まれるレベル、すなわち、1cc/m、24時間、1気圧、23℃/50%RH、酸素21%よりも低いレベルまで、かなり改善された。
【0103】
このような還元反応を高温で2時間行う前、サンプルは表面の酸化グラフェンの完全な還元を示さず、これはコーティングの色がまだ薄茶色であることによっても示された。
【0104】
その後、常温(23℃)で1週間及び2週間保管した後、リールからさらにサンプルを採取し、熱処理したサンプルと比較した。リールに巻き取った状態で1週間常温保存したところ、紙の乾燥層内で還元反応がより高いレベルまで進行していたが、まだ完全な還元レベルには達していなかった。このことは、このサンプルが黒に近い暗褐色を呈し、OTRが約10cc/m、24時間、1気圧、23℃/50%RH、21%酸素であることから示された。
【0105】
2週間後、高温に2時間だけ維持したサンプルと同様に、サンプルが黒色を呈し、還元は完了したように見えた。このことは、リールから採取したサンプルのOTR値が相応に低いこと、すなわち1cc/m未満、24時間、1気圧、23℃/50%RH、21%酸素であることから結論づけられた。
【0106】
したがって、Williams-Landel-Ferryモデル(略してWLF)が還元反応に適用され、温度上昇及び/又は反応時間の増加によって還元反応が促進及び制御される可能性があると考えられる。最も重要なことは、コーティングされたウェブの乾燥後、輸送及び保管のためにリールに巻き取った後でも、酸化グラフェンの乾燥コーティングとアスコルビン酸の界面では、完全な変換度まで還元反応が継続することである。
【0107】
工業的なコーティング及び製造プロセスでは、2時間の反応時間は、ほとんど実現可能ではないため、この結果は、塗布された酸化グラフェンのコーティングにおけるグラフェンへの還元が、コーティング操作後も完了まで継続される可能性があることを意味しており、有利である。このように、バリアコーティングされたウェブを、さらに使用する前に、長期にわたって保管することをロジスティクス的に計画するだけで、バリアコーティングを達成することができる。リールの計画された保管の前に、バリアコーティングされた基材ウェブをさらなる層にラミネートして、完成した包装材料を形成することも可能である。ポリマー溶融押出しコーティング又はポリマー溶融押出しラミネーション等の熱供給を伴うラミネート方法の場合、還元反応のさらなる促進が有利かつ便利に達成され得る。さらに、中間保管は、実際的な状況に応じて、一部は輸送中にも行われ、一部は出荷前及び/又は一部は出荷後に顧客施設で行われるように計画されてもよい。
【0108】
さらに、添付の図に関連すると:
図1aには、本発明のバリアコーティングされた基材ウェブ10aの一実施形態が断面で示されている。基材11aは、36μmの厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムである。酸素透過率(OTR)は、約30cc/m、24時間、23℃/80%RH、100%酸素である。
【0109】
PETフィルムには、水性分散コーティング及びその後に加熱乾燥して水分を蒸発させて除去し、酸化グラフェンの乾燥コーティング12aが施される。こうしてコーティングされた酸化グラフェンの乾燥重量は約1.3μmである。さらに、このようにしてコーティングされた基材は、酸化グラフェンの第1の乾燥コーティング層上に、3重量%のアスコルビン酸水溶液として塗布されたアスコルビン酸の第2の乾燥コーティング層13aを有する。第2の乾燥コーティング層13aもまた、水溶液コーティングとして塗布され、その後、水分を蒸発させるために加熱乾燥して、水分を蒸発させて除去する。こうしてコーティングされた基材ウェブを、さらに一定期間熱処理してもよく、単に周囲温度で少なくとも2週間保存してもよく、その後、酸化グラフェンの第1の乾燥バリアコーティング層は、可能な限り、還元型酸化グラフェンに、すなわち理想的にはグラフェンに還元される。還元反応が可能な限り完了した後、乾燥バリアコーティング12aの厚さも著しく減少している。したがって、上記の例では、乾燥した酸化グラフェン層の乾燥直後の厚さは約1.3μmであったが、還元された同じ酸化グラフェンの最終的な厚さは300nm、すなわち約0.3μmであった。OTRは0.1cc/m、24時間、23℃/80%RH、酸素100%であった。同じフィルム基材を片面ずつ半分の厚さ、すなわち150nmの乾燥還元グラフェン酸化物でコーティングした場合、OTRは、0.02cc/m、24時間、23℃/80%RH、100%酸素であった。
【0110】
さらに、還元型酸化グラフェンのコーティングの堅牢性は、コーティングされた材料を1回、2回、最大20回折り畳んだり広げたりする試験(Flex-Gelbo試験と同様の原理による)によって説明できる。最初の折り畳み後、OTRは、0.03cc/m、24時間、23℃/80%RH、100%酸素に増加したが、20回の折り畳み操作後、OTRはそれ以上増加しなかった。さらに、還元型酸化グラフェンは湿気に敏感ではないため、例えば、PVOHのように湿度が高くなるとバリア性が失われるようなことはない。したがって、80%RHでのOTRは、この例のバリアコーティングされたフィルムについて同じである。
【0111】
図1bには、本発明のバリアコーティング基材ウェブ10bの異なる実施形態が断面で示されている。基材11bは、坪量50g/m、低密度ポリエチレンの薄いプレコート14が設けられた薄い紙基材であり、分散コーティングにより塗布され、その後乾燥され、最終の乾燥厚さは約1μmである。ポリエチレンのプレコーティングの乾燥表面上に、図1aと同じ種類及び同じ方法で塗布された酸化グラフェンの乾燥層12bが塗布される。酸化グラフェンコーティングの乾燥重量は約2μmである。さらに、このようにしてコーティングされた基材は、図1aと同様の方法で、酸化グラフェンの第1の乾燥コーティング層上にアスコルビン酸の第2の乾燥コーティング層13bが塗布され、その後、同様に乾燥処理される。バリアコーティングされた基材ウェブがさらにロールに巻き取られる際の保護を目的として、表面に残存するアスコルビン酸を含む還元型酸化グラフェン層上に、低密度ポリエチレンのさらなる保護ポリマーコーティング15bを塗布してもよい。十分な時間の後、乾燥層12bの酸化グラフェンが還元されたとき(すなわち、暗室又はロール上で2週間乾燥するために保管した後)、得られた還元型酸化グラフェンを有するバリアコーティングの厚さは、最終的に約500nmであった。OTRは、2日後(OTR測定のためにサンプルを調整するのに要する時間)に、1cc/m未満、24時間、1気圧、23℃/50%RH、酸素21%であると測定された。
【0112】
図示されていないが、図1bのような保護ポリマーコーティング15aを、図1aの酸化グラフェン層12a上にも任意に塗布してもよい。
【0113】
図2aでは、液体カートン包装用のラミネート包装材料20aが示されており、このラミネート材料は、80mNの曲げ力と約200g/mの坪量を有する板紙のバルク層21を含み、さらに、バルク層21の外側に塗布されたポリオレフィンの液密でヒートシール可能な外側層22を含み、この外側層22は、包装用ラミネートから製造される包装容器の外側に向けられる。この外側層22は、紙又は板紙のバルク層に施された印刷装飾パターン27を外側に見せるために透明であり、その結果、小売施設や食品店で消費者に向けて、パッケージの内容物やパッケージのブランド、その他の情報を知らせることができる。外層層22のポリオレフィンは、ヒートシール可能な品質の従来の低密度ポリエチレン(LDPE)であるが、LLDPEを含むさらに類似のポリマーを含むことも可能である。塗布量は約12g/mである。液密でヒートシール可能な最内層23は、バルク層21aの反対側に配置され、この最内層は、包装ラミネートから製造される包装容器の内側に向けられ、すなわち、最内層23は包装製品と直接接触することになる。ラミネート包装材料から製造された液体用の包装容器の強力な横方向のヒートシールを形成することになる、ヒートシール可能な最内層23は、LDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及びエチレンモノマーをC4-C8、より好ましくは、C6-C8のα-オレフィンアルキレンモノマーとメタロセン触媒の存在下で重合させて製造したLLDPE、いわゆるメタロセン-LLDPE(m-LLDPE)からなる群から選択される1つ以上のポリエチレン類の組み合わせを含む。これは約22g/mの量で塗布される。
【0114】
バルク層21は、低密度ポリエチレン(LDPE)の中間結合層26aによって、図1aのバリアコーティングされたPETフィルム基材25a;10aに積層されている。中間結合層26aは、2つのウェブの間に薄いポリマー溶融カーテンとして溶融押出しする手段よって形成され、冷却されたプレスローラーニップを3つの層の全てが通過する際に、バルク層とバリアコーティングされたPET基材とを互いにラミネートする。中間結合層26aの厚さは、12~18μm、例えば、12~15μmである。
【0115】
ヒートシール可能な最内層23は、同一又は異なる種類のLDPEもしくはLLDPE又はそれらのブレンドの1層又は2層以上の部分層を含み、バリアコーティングされたPETフィルム基材10a;25aのバリア層の表面に、中間の共押出結合層24、例えば、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)によって、単一の溶融共押出コーティングプロセスで各層を一緒に適用する際に、ヒートシール可能な最内層をバリアコーティング基材ウェブ10aのバリア表面に接着させる。
【0116】
あるいは、バリアコーティングされたPETフィルム基材10a;25aは、ラミネートの中で反対方向に回転されてもよい。すなわち、バリアコーティング層がバルク層及びラミネートの外側に向けられてもよい。
【0117】
図2bには、液体カートン包装用の、本発明の異なるラミネート包装材料20bが示されており、このラミネート材料は、構成は異なるがラミネート材料の同じ場所に配置されているバリアコーティング基材25bを除いて、図2aと同様の層構造を有している。
【0118】
バルク層21は、図1bのバリアコーティングされた紙基材25b;10bの非コート面(さらなる保護層15bを除く)に、ポリ酢酸ビニル接着剤の水性分散液を互いに接着されるべき表面の一方に塗布し、その後ローラーニップで押し付けることによって得られる、接着性ポリマーの薄層の中間接着層26bを用いた湿式ラミネーションによってラミネートされる。このラミネーションステップは、水の蒸発を促進するために必要なエネルギーを消費する乾燥操作を必要とせず、工業的な速度で効率的な冷却又は常温ラミネーションステップで実行される。中間接着層26bの乾燥塗布量は、3~4g/mのみであり、乾燥及び蒸発操作を必要としない。
【0119】
したがって、このラミネート層では、図2aにおいて層26aとして説明した従来のポリエチレンの溶融押出ラミネート接着層と比較して、熱可塑性ポリマーの量を大幅に減らすことができる。
【0120】
ヒートシール可能な最内層23は、中間の共押出結合層、例えば、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)によって、紙基材のバリアコーティングされた表面上に約22g/mの量で塗布され、これにより、単一の溶融共押出しコーティング工程で層を一緒に塗布する際に、ヒートシール可能な最内層23をバリアコーティングされた紙基材10bに塗布する。
【0121】
あるいは、液密でヒートシール可能な最内層は、LDPE又はLLDPEポリマーを任意にブレンドで含む、予め製造されたインフレーションフィルム(blown film)23bであり、バリアコーティングされた紙基材に、すなわち、その表面にラミネートされてもよい。バリアコーティングは、図2aで使用した層24よりも厚いEAAの結合層、又はより単純なLDPEの結合層を含む。中間の溶融押出ラミネート結合層24bによって、バリアコーティングされた紙基材に、すなわちそのバリアコーティングの表面にラミネートされてもよい。インフレーションフィルム23bの厚さは、12μmであるが、最大20μmであってもよい。
【0122】
代替的な実施形態では、予め製造されたインフレーションフィルム23bは、別の湿式ラミネーションステップによって、アクリル(コ)ポリマー接着剤層24b’の水性接着剤を用いて、周囲温度(低温)で、3~4g/mの量で、金属化コーティングにラミネートされる。
【0123】
記載された全ての特徴と、図2aの溶融押出しバルク層ラミネート層26aを有するが、代わりに、図2bに関連して説明したように、層24bとの溶融押出しラミネーションの手段、又は図2bに関連して記載された予め製造されたフィルム24b’の湿式ラミネーションの手段のいずれかによって塗布される、バリアコーティングされた紙基材25b及びヒートシール可能な最内層構成23b’の特徴と組み合わせる、さらなる実施形態もここに開示される。
【0124】
図2bの薄く湿った水性接着剤分散ラミネート層26aを、従来の溶融共押出コーティングされた内側層24a及び23aと組み合わせる、さらなる実施形態もここに開示される。
【0125】
図3では、酸化グラフェンバリアコーティング12a;12b及びアスコルビン酸のさらなるコーティング13a;13bを塗布するために使用され得る、水性分散コーティング30aのプロセスが示されている。紙基材ウェブ31a(例えば図1a、1bの紙11)は、分散コーティングステーション32aに送られ、そこで、水性分散組成物が基材表面の上面にローラーによって塗布される。分散組成物は80~99重量%の水性含有量を有するので、湿ったコーティングがされた基材上には、熱によって乾燥され、蒸発除去される必要のある多くの水分が存在することになり、これを熱によって乾燥させ、蒸発させ、均質で、バリア特性及び表面特性、すなわち均一性及び濡れ性に関して均一な品質を有する連続コーティングを形成する必要がある。乾燥は、熱風乾燥機33aによって行われ、これにより水分が蒸発し、空気の対流によって基材表面から除去される。乾燥機を通過する際の基材の温度は、60~80℃の温度で一定に保たれる。あるいは、熱風対流乾燥と組み合わせて、赤外線IRランプの照射熱によって部分的に乾燥を補助してもよい。
【0126】
続いて、図3に示すプロセスを繰り返し、同様に、濃度3重量%のアスコルビン酸水溶液を塗布し、乾燥する。
【0127】
得られたバリアプリコーティング紙基材ウェブ34aは冷却され、中間保管と後のラミネート作業のためにリールに巻き取られる。
【0128】
図4aは、バルク層21;43が図1a又は図1bのバリアコーティングされた基材ウェブ34a;10a;10b(すなわち、図2a及び図2bのそれぞれ25a又は25b)にラミネートされ、図2a及び図2bのそれぞれ包装用ラミネート20a又は20bの製造におけるラミネートステップのプロセスを示す。
【0129】
図2a及び図2bに関連して説明したように、バルク層板紙21は、この図に示すような溶融押出ラミネーションによって、又は湿式低温分散接着剤ラミネーションによって、バリアコート基材10;25a;25bにラミネートされてもよいが、後者の方法は図示されていない。例えば、LDPEの溶融ポリマーカーテン44がラミネーションローラー45のニップに供給され、2つのウェブ34a及び43も同じラミネーションニップに送られ、LDPEの押出接合層44によって互いに接合される。このようにして、3つの層はプレスローラーと冷却ローラーとの間に形成されるニップ45で一緒にプレスされて接合され、ラミネート材料が冷却されて、LDPEの押出接合層44が適切に固化される。得られたラミネート材料は、中間保管のためにリールに巻き取られるか、又は後続のラミネーション作業に直接送られる。
【0130】
図4bでは、板紙31bとバリアウェブ34aのプレラミネート49aは、図4aのラミネーション工程40aから直接、又は中間保管リールとの係合及び巻き戻しから、さらなるラミネーション工程40bに送られる。
【0131】
バルク層21の非ラミネート面、すなわち印刷面は、冷却ローラーニップ48aで、ラミネート材料の最外層22を形成するLDPEの溶融ポリマーカーテン46aに接合され、LDPEは押出機フィードブロック及びダイ47aから押し出される。その後、最外層22が印刷面である、すなわち外側に、コーティングされた紙のプレラミネートウェブは、第2の押出機フィードブロック、ダイ47b及びラミネーションニップ48bを通過し、ここで溶融ポリマーカーテン46bがプレラミネートの反対側、すなわちバリアコーティングされた基材ウェブ10a;10b;25a;25bのコーティングされていない内側面に接合され、コーティングされる。このようにして、ヒートシール可能な最内層23は、バリアコーティングされた基材ウェブの内側に共押出しコーティングされ、完成したラミネート包装材49bを形成し、最終的に図示しない保管リールに巻き取られる。
【0132】
ラミネートローラーニップ48a及び48bにおけるこれら2つの共押出ステップは、代替的に、逆の順序で連続する2つのステップとして実施されてもよい。
【0133】
別の実施形態によれば、最外層の一方又は両方は、代わりに、プレラミネーションステーションで塗布されてもよく、この場合、共押出コーティング層が最初に(印刷された)バルク板紙層の外側又はバリアコーティング紙基材の内面に塗布され、その後、図4aに関連して上述したように、2つのプレラミネーション紙ウェブを互いに接合してもよい。
【0134】
さらなる実施形態によれば、液密でヒートシール可能な熱可塑性樹脂層の最内層は、予め製造されたフィルムの形態で適用され、このフィルムは、バリアコーティングされた基材10a;10bにラミネートされる。
【0135】
図2a及び図2bに関連して説明したように、最内層の予め製造されたフィルム23は、湿式、冷分散接着剤ラミネーション、又は溶融押出ラミネーションによって、バリアコーティング基材10a;10bにラミネートされてもよい。
【0136】
図5aは、本発明による包装用ラミネートから製造された包装容器50aの実施形態を示す。この包装容器は、飲料、ソース、スープ等に特に適している。典型的には、このようなパッケージは、約100~1000mlの容積を有する。任意の形状であってよいが、好ましくは、レンガ状であり、それぞれ縦方向シール51a及び横方向シール52aを有し、オプションとして開封装置53を有する。図示しない別の実施形態では、包装容器はくさびの形状であってもよい。このような「くさび形」を得るために、パッケージの底部のみ折り曲げて、底部の横方向ヒートシールが、パッケージの底部に対して折り畳まれてシールされる三角形のコーナーフラップの下に隠れるように折り畳み形成される。上部の横方向のシールは広げた状態にする。このように、部分的のみ折り畳まれた包装容器であっても、取り扱いが容易であり、食料品店の棚や平らな面に置くために寸法的に十分安定している。
【0137】
図5bは、本発明による代替の包装用ラミネートから製造された包装用容器50bの代替例を示す。代替の包装用ラミネートは、より薄い紙バルク層を有することによってより薄く、したがって、平行六面体又はくさび形の包装容器を形成するのに十分な寸法安定性がなく、横方向シール52b後に折り曲げ形成されない。包装容器はピロー型の袋状容器の形態となり、この形態で流通販売される。
【0138】
図5cは、板紙のバルク層と本発明のバリアコーティングされた基材を含むラミネート包装材料から、予めカットされたシート又はブランクから折り畳み成形されたゲーブルトップパッケージ50cを示す。また、フラットトップパッケージは、同様のブランクの材料から形成されてもよい。
【0139】
図5dは、本発明のラミネート包装材料のプレカットブランクから形成されたスリーブ54と、スクリューコルク等の開封装置と組み合わせて、プラスチックを射出成形して形成された上部55の組み合わせであるボトル状パッケージ50dを示す。この種のパッケージは、例えば、「Tetra Top」(登録商標)及び「Tetra Evero」(登録商標)の商品名で販売されている。これらの特定のパッケージは、閉鎖位置に取り付けられた開封装置を備えるトップ55を、ラミネート包装材料のチューブ状スリーブ54に取り付け、このようにして形成されたボトルトップ・カプセルを殺菌し、食品を充填し、最後にパッケージの底部を折りたたんでシールすることによって形成される。
【0140】
図6は、本出願の導入部に記載された原理を示し、すなわち、包装材料のウェブが、ウェブの長手方向の縁部62、62’を重ね合わせ、それらを互いにヒートシールすることにより、チューブ61に形成されて、オーバーラップ接合部63が形成される。チューブは、充填される液体食品で連続的に充填され(64)、チューブ内の充填された内容物のレベルより下の互いに予め決められた距離でチューブの繰り返しの二重の横方向シール65によって、個々の充填されたパッケージに分けられる。パッケージ66は、二重の横方向シール(トップシールとボトムシール)の間の切断によって分離され、最終的に、材料に用意された折り目線に沿って折り目を形成することによって、所望の幾何学的形状に成形される。
【0141】
最後に、本発明は、上記に示され、説明された実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更が可能である。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
【国際調査報告】