(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】個人を表し、個人の個人関連データを処理するアバター装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G06N 3/004 20230101AFI20231228BHJP
G06F 21/62 20130101ALI20231228BHJP
【FI】
G06N3/004
G06F21/62 345
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535635
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2020085821
(87)【国際公開番号】W WO2022122173
(87)【国際公開日】2022-06-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(71)【出願人】
【識別番号】517430853
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート・デ・ザールラント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET DES SAARLANDES
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(72)【発明者】
【氏名】ツィンマーマン、ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】クルツ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】フール、アントーニエ
(57)【要約】
個人を表し、個人の個人データを処理するように適合されたアバター装置であって、データ訓練による、個人の個々の精神的な反応特徴の機械学習に適合されたAIプロセッサ装置であって、精神的な反応特徴に依存した方法で質問に応答して、セマンティックな回答を生成するように構成される、AIプロセッサ装置と、AIプロセッサ装置に接続される、個人の精神的な反応特徴を記憶するように適合された第1の記憶装置と、AIプロセッサ装置に接続される、個人と対話し且つ/又は個人に関する質問を受けるように適合された入力装置と、AIプロセッサ装置によって生成された回答を表す信号を出力するように構成される出力装置とを備える。複数のアバター装置を有するアバターシステム、アバター装置の用途、及びアバター装置を動作させるアバター方法についても説明される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人を表し、前記個人の個人データを処理するように適合されたアバター装置であって、
データ訓練による、前記個人の個々の精神的な反応特徴の機械学習に適合されたAIプロセッサ装置であって、前記精神的な反応特徴に依存した方法で質問に応答して、セマンティックな回答を生成するように構成される、AIプロセッサ装置と、
前記AIプロセッサ装置に接続される、前記個人の前記精神的な反応特徴を記憶するように適合された第1の記憶装置と、
前記AIプロセッサ装置に接続される、前記個人と対話し且つ/又は前記個人に関する質問の受信をするように適合された入力装置と、
前記AIプロセッサ装置によって生成された前記回答を表す信号を出力するように構成される出力装置と
を備える、アバター装置。
【請求項2】
前記AIプロセッサ装置は、道徳的な意向、意見、価値観、関心、及び/又は倫理原則を含む、前記個々の精神的な反応特徴の前記機械学習に適合される、
請求項1に記載のアバター装置。
【請求項3】
前記第1の記憶装置は、前記精神的な反応特徴を、規則の一覧、マイクロ契約(Mikrovertraegen)、及び/又はブロックチェーンの形式で記憶するように構成される、
請求項1又は2に記載のアバター装置。
【請求項4】
前記第1の記憶装置は、前記精神的な反応特徴が依存する個々の追加データであって、特に前記個人の宗教的所属、グループ所属、協会会員及び/又は政党党員を含む、個々の追加データを記憶するように適合される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のアバター装置。
【請求項5】
前記AIプロセッサ装置は、倫理に関する表現を理解して使用するように適合される、
請求項1~4のいずれか一項に記載のアバター装置。
【請求項6】
前記精神的な反応特徴に関する知識を表す汎用追加データを記憶するように適合された、第2の記憶装置を更に備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載のアバター装置。
【請求項7】
前記第2の記憶装置が更新装置に接続されることによって、前記汎用追加データは、更新され得る、
請求項6に記載のアバター装置。
【請求項8】
前記入力装置は、前記アバター装置と前記個人との通信用に適合された通信チャネルを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載のアバター装置。
【請求項9】
前記入力装置は、前記個人に関する質問の前記受信を、所定の認可された主体及び/又は所定の許容される内容に制限するように構成された認可装置を備える、
請求項1~8のいずれか一項に記載のアバター装置。
【請求項10】
前記認可装置は、通信認証記憶域と、標準的な通信プロトコル機能とを備える、
請求項9に記載のアバター装置。
【請求項11】
アクセスキーを記憶するように適合された暗号記憶域を更に含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載のアバター装置。
【請求項12】
前記第1の記憶装置及び/又は前記第2の記憶装置の内容に対する変更の経緯を記憶するように適合された、ログ記憶域を有する、
請求項1~11のいずれか一項に記載のアバター装置。
【請求項13】
前記アバター装置の前記機能の時間尺度を提供するように適合された、タイマ装置を更に備える、
請求項1~12のいずれか一項に記載のアバター装置。
【請求項14】
前記個人と連絡を取り、且つ/又は通信するように適合された、通信装置を更に備える、
請求項1~13のいずれか一項に記載のアバター装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の複数のアバター装置を含み、各アバター装置が異なる用途に適合される、アバターシステム。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載のアバター装置の用途であって、
医学研究所及び/又はバイオバンクを事業会社及び/又は科学研究組織と接続した状態に置くための複数方向プラットフォームを形成すること、
社会調査、意見調査、及び/又はビッグデータ分析用のプラットフォームを形成すること、
患者の申告、特に、前記個人データの使用に対する同意申告を提供するためのプラットフォームを形成すること、
データ保護プラットフォームを形成すること、
患者の事前指示を生成すること、
合成生物学の手順のための入力情報を提供すること、及び
技術システムを制御すること、
のうちの少なくとも1つを含む、アバター装置の用途。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の個人のアバター装置を動作させるためのアバター方法であって、
前記個人に関する少なくとも1つの質問の受信をするステップと、
前記AIプロセッサ装置を使用して前記質問を処理するステップと、
前記少なくとも1つの質問に対してセマンティックな回答を出力するステップと
を含む、アバター方法。
【請求項18】
前記AIプロセッサ装置を使用して前記質問を処理する前記ステップは、前記個人の道徳的な意向、意見、価値観、関心、及び/又は倫理原則に依存した方式で実行される、
請求項17に記載のアバター方法。
【請求項19】
前記精神的な反応特徴は、規則の一覧、マイクロ契約、及び/又はブロックチェーンの形式で記憶される、
請求項17又は18に記載のアバター方法。
【請求項20】
前記精神的な反応特徴が依存する個々の追加データであって、特に前記個人の宗教的所属、グループ所属、協会会員及び/又は政党党員を含む、個々の追加データが記憶される、
請求項17~19のいずれか一項に記載のアバター方法。
【請求項21】
前記AIプロセッサ装置は、倫理に関する表現を理解して使用する、
請求項17~20のいずれか一項に記載のアバター方法。
【請求項22】
前記精神的な反応特徴に関する知識を表す汎用追加データを記憶するステップを更に含む、
請求項17又は18に記載のアバター方法。
【請求項23】
前記汎用追加データは、所定の時間に更新される、
請求項22に記載のアバター方法。
【請求項24】
前記アバター装置と前記個人との通信を更に含む、
請求項17~23のいずれか一項に記載のアバター方法。
【請求項25】
前記個人に関する質問の前記受信は、認可装置によって、所定の認可された主体、及び/又は所定の許容される内容に制限される、
請求項17~24のいずれか一項に記載のアバター方法。
【請求項26】
暗号記憶域にアクセスキーを記憶するステップを更に含む、
請求項17~25のいずれか一項に記載のアバター方法。
【請求項27】
前記第1の記憶装置及び/又は前記第2の記憶装置の前記内容に対する変更の経緯を記憶するステップを更に含む、
請求項17~26のいずれか一項に記載のアバター方法。
【請求項28】
前記アバター装置の前記機能の時間尺度を提供するステップを更に含む、
請求項17~27のいずれか一項に記載のアバター方法。
【請求項29】
前記個人との連絡及び/又は通信を確立するステップを更に含む、
請求項17~28のいずれか一項に記載のアバター方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人を表し、個人の個人関連データを処理するように適合されたアバター装置(「倫理的アバター」)、複数のアバター装置を有するアバターシステム、アバター装置の用途、及びアバター装置を動作させるアバター方法に関する。本発明は、特に、ここでは倫理的アバター又はアバター装置とも呼ばれる、個人の仮想的な代理を開発する方法及び該代理を確立する装置に関し、アバター装置は、例えば、個人の個々の道徳的な意向、倫理原則、価値観及び/又は更なる意見や関心を学習し、独立してシミュレーションすることができる。本発明は、例えば、個人の個人データを有するデータベースの運用、並びに/或いは特に機械学習及び/又は人工知能(AI)による個人データの処理に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
(バイオ)医学研究時と、個人(患者及び/又は被験者)に対する診療及び治療の際との両方において、生物材料(組織サンプル、体細胞又は幹細胞からのサンプル)の供与を通じて、或いは疾病の治療(生検の採取、腫瘍の除去など)の過程において、患者又は被験者に関する大量の個人データが蓄積される。個人データは、例えば、患者/被験者の遺伝情報、病歴、及び/又は曝されている環境影響に関する。
【0003】
このようなデータの管理及び保護には、このデータを取り扱う際に倫理基準の遵守を最優先することに関する情報技術への多大な出費が必要になる(データ保護及び「インフォームドコンセント」に関する規定を参照)。
【0004】
同意申告は、従来個人から書面で取得しており、第三者による無認可のアクセスから機密データを保護するために、患者/被験者の身元の匿名化又は疑似匿名化が使用されてきた。この必要な手法により、一定時間後に関係者への調査をするのが、非常に困難に、又は不可能にさえなる。状況が変わったり、新しい研究分野が切り開かれたり、個人の意見又は関心に不確定性があったりすれば、このことから生じる問題が関係者によって解決されることはもはや不可能であるか、或いは可能であっても多大な困難を伴う。
【0005】
意見調査において、社会学的又は人口統計学的分析において、ビッグデータ調査の過程(データサイエンス)において、及び産業/商業部門においては、関係者のプライバシーの安全対策を行いながら、大量の個人データが可能な限り迅速に処理されなければならず、これには今までは非常に時間及びコストがかかっていた。
【0006】
個別化医療の分野では、人体機能及び体の部分をデジタル化する試みが既に行われている(例えば、「ブルーブレインプロジェクト」や仮想心臓シミュレーションを参照)。人体の部分のデジタル版が開発されることは、従来以上に一般的になっており、細胞、臓器、或いは個人全体を仮想的に表すことが可能になろうとしている。この概念は「デジタルツイン」と呼ばれ、生物学的な複製としてのデジタルな瓜二つの人物が生成される。
【0007】
以前の手法は、人間の生理的過程のシミュレーションに限られていた。これに反して、個人の道徳的な意向、意見、個別の価値観、及び倫理原則などの精神的な反応特徴は、従来考慮されてこなかった。
【0008】
AI装置を確立する方法は、国際公開第2020/233850号(「Recursive coupling of artificial learning units」)、及び国際公開第2020/233851号(「Coupling multiple artificially learning units with a projection level」)で説明されており、これらは、いくつかのAIユニットからなる学習システムの確立だけでなく、AIシステムによる倫理原則/規則の記憶及び独立した用途も紹介している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2020/233850号
【特許文献2】国際公開第2020/233851号
【特許文献3】独国特許出願公開第102019135380号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術の欠点を回避しながら、改良された、データに基づく個人のデジタルな代理及び/又はその使用方法を提供することが、本発明の目的である。個人のデジタルな代理は、特に、個人に関する非生理的な情報などの、追加情報、及び/又はカテゴリが拡張された情報が提供されることを可能にし、且つ/或いはより広い用途が提供されるようにすることが意図されている。個人のデジタルな代理は、特に、当該個人のコメントに対するより高速及び/又はより容易なアクセスを提供し、且つ/或いは当該個人のプライバシーの保護を提供することが更に意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的は、独立クレームの特徴を有する、アバター装置、複数のアバター装置を有するアバターシステム、アバター装置の用途、及びアバター装置を動作させるアバター方法によって達成される。好適な実施形態及び本発明の用途は、従属クレームから明らかになる。
【0012】
本発明の第1の一般的な態様によれば、上記の目的は、個人を表すように、且つ個人の個人データを処理するように適合されたアバター装置によって達成される。アバター装置は、データ訓練による、個人の個々の精神的な反応特徴の機械学習に適合されたAIプロセッサ装置であって、精神的な反応特徴に依存した方法で質問に応答して、セマンティックな回答(特に、少なくとも1つの文章、又は「はい」や「いいえ」などの個々の単語)を生成するように構成される、AIプロセッサ装置と、AIプロセッサ装置に接続される、個人の精神的な反応特徴を記憶するように適合された第1の記憶装置(個人用記憶域)と、AIプロセッサ装置に接続される、個人と対話し、且つ/又は個人に関する質問の受信をするように適合された入力装置と、AIプロセッサ装置によって生成された回答を表す信号を出力するように構成される出力装置とを備える。
【0013】
本発明の第2の一般的な態様によれば、上記の目的は、本発明の第1の一般的な態様又はその実施形態に係るアバター装置の用途によって達成され、前記用途は、医学研究所及び/又はバイオバンクを事業会社及び/又は科学研究組織と接続した状態に置くための複数方向プラットフォームを形成すること、社会調査、意見調査、及び/又はビッグデータ分析用のプラットフォームを形成すること、患者の申告、特に、個人データの使用に対する同意申告を提供するためのプラットフォームを形成すること、データ保護プラットフォームを形成すること、当該個人の患者指示書を生成すること、合成生物学の手順のための入力情報を提供すること、及び技術システムを制御すること、のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
本発明の第3の一般的な態様によれば、上記の目的は、本発明の第1の一般的な態様又はその実施態様に係る、個人に関する少なくとも1つの質問の受信をするステップと、AIプロセッサ装置を使用して質問を処理するステップと、少なくとも1つの質問に対してセマンティックな回答を出力するステップとを含む、個人のアバター装置を動作させるアバター方法によって達成される。
【0015】
本発明の第4の一般的な態様によれば、上記の目的は、本発明の第1の一般的な態様又はその実施形態に係る、複数のアバター装置を含むアバターシステムによって達成され、各アバター装置は異なる用途に適合される。
【0016】
アバター装置を使用すると、AIプロセッサ装置によって、個人の精神的な反応特徴が好適にデジタル化及び/又はシミュレーションされる。AIプロセッサ装置は、例えば、少なくとも1つの人工ニューラルネットワークなどの、機械学習に基づいたプログラムを使用するように適合されたコンピュータ機器を備える。「AIプロセッサ装置」という表現は、以後、コンピュータ機器によって提供される人工知能を指すためにも使用される。
【0017】
アバター装置は好適には、アバター装置が関連する、個人のデジタルツインを提供し、アバター装置は、例えば、実際の人間の個々の意見、関心、及び/又は道徳的な意向を表す。アバター装置は、好適には、個人データの管理を簡素化し且つ/又は速度を高めることを可能にする。同時に、アバター装置は、関係者のプライバシーを保護し、関係者の利益を最大限考慮できるようにする。
【0018】
本発明に係るアバター装置は、好適には、実際の人間の代理として作用する、知的でデジタルで予測的に使用可能な支援を構成する。アバター装置は、例えば、一方では個人と、他方では研究組織又は研究機関、或いは会社などの問い合わせ主体との間の助言的な連係として使用可能であり、関係者の匿名性が保護され(個人と直接接触する必要がなくなり)、同時に他者との取引において、当該個人の利益が代表され得る。これらの利点は、特に図面を参照しながら以下で説明される。
【0019】
アバター装置は、好適には、実際の相手のコメント、特に意見を予測できるツールであり、従来時間とコストのかかる方法で何千人もの個人を調査する必要があったあらゆる形態のデータベース/分析に使用され得る。
【0020】
倫理的アバターは、特に、個人の道徳的な意向に関して個人によって訓練されることが可能であり、且つこの訓練に基づいて、新たに出された質問に対する回答を実質的に予測することが可能な人工知能(AI)を構成する。この訓練中に、アバターのAIは、個人の道徳的な意向、価値観、関心、及び信条を学習する。学習する連想型AIを使用して、アバターは、新しい(倫理的な)質問に答えるときに、前記信条/価値観/意向を用いることができる。アバター装置は、したがって、学習したことを表現するだけでなく、学習したことを知的且つ創造的に新しい文脈に適用することが可能である。その関係者の知識に基づいて、特定の新しい文脈での質問に対して、その個人がどのような意見や判断を下すかを知的に予測することができる。
【0021】
AIプロセッサ装置は、好ましくは、当該個人の道徳的な意向、意見、価値観、関心、及び/又は倫理原則を含む、個々の精神的な反応特徴の機械学習に適合される。反応特徴は、個人が質問、事実、経験、状況、他者、社会的グループ及び/又は社会概念にどのように応答するかを特徴付ける、個人の主観的な特徴を含み、応答は、例えば、コメント、感情、及び/又は挙動の形態を明確にすることを含み得る。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、第1の記憶装置は、精神的な反応特徴を、規則の一覧、マイクロ契約(Mikrovertraegen)、及び/又はブロックチェーンの形式で記憶するように構成される。しかしながら、本発明の実施は、これらの変形に限定されず、他のデジタル化可能な形式も可能である。
【0023】
好ましくは、第1の記憶装置は、精神的な反応特徴が依存する個々の追加データであって、特に当該個人の宗教的所属、グループ所属、協会会員及び/又は政党党員を含む、個々の追加データを記憶するように適合される。
【0024】
本発明の別の好適な実施形態によれば、AIプロセッサ装置は、倫理に関する表現を理解して使用するように適合される。
【0025】
好ましくは第2の記憶装置(公開記憶域、共有記憶域)が提供され、精神的な反応特徴に関する知識を表す、汎用追加データを記憶するように適合される。第2の記憶装置は、特に、更新装置に接続されることが好ましく、これによって汎用追加データが更新され得る。
【0026】
本発明の更に好適な実施形態によれば、アバター装置、特に入力装置は、アバター装置と個人との通信用に適合された通信チャネルを有する。これにより、好適には、例えば、機能をチェックするため、AIプロセッサ装置を訓練するため、又は記憶されたデータを修正するために、個人がアバター装置にアクセスすることが可能になる。
【0027】
したがって、アバター装置が関係者によって訓練されるだけでなく、アバター装置がその道徳的な意向をシミュレートする実際の人間が、更に好ましくは、いつでも倫理的アバターによって出されたコメント、特に意思決定を監視し、必要に応じて訂正し、倫理的アバターを更に訓練し、或いは記憶された価値観/関心/道徳原理を変更する能力を有する。しかしながら、個人には、意思決定の権限を全てアバターに移行し、自分自身が全て自分のアバターによって表されるようにする選択肢もある。
【0028】
アバターは、常に個人の制御下にあり、個人の個々の意見や関心などの精神的な反応特徴に基づいて、単に助言する機能を果たす補助的な代行者として機能するだけなので、好適には、実際の人間の自律性が制限されることはない。
【0029】
本発明の別の好適な変形例によれば、入力装置は、当該個人に関する質問の受信を、製薬会社及び/又は研究組織などの所定の認可された主体、及び/又は所定の許容される内容に制限するように構成された認可装置を備える。認可装置は、特に、好ましくは通信認証記憶域と、標準的な通信プロトコル機能とを備える。
【0030】
この実施形態では、個人の個人データ保護が特に重要であり、アバターは、部外者がデータにアクセスすることを許可せず、また出された質問に答えるときは、限られた範囲で、且つ認可された主体に対してのみ個人データを提供する。
【0031】
アバター装置は、好ましくは、アクセスキーを記憶するように適合された暗号記憶域を更に含む。したがって、好適には、アバター装置へのアクセスを、信頼性の高い方式に限定することが可能になる。
【0032】
本発明の更に好適な実施形態によれば、アバター装置は、第1の記憶装置及び/又は第2の記憶装置の内容に対する変更の経緯を記憶するように適合された、ログ記憶域を有する。
【0033】
さらに、好適には、アバター装置の機能の時間尺度を提供するように適合されるタイマ装置が提供されてもよい。
【0034】
アバター装置は、特に、好ましくは個人と連絡を取り、且つ/又は通信するように適合された通信装置を備える。これにより、好適には、例えば、AIプロセッサ装置によって与えられたセマンティックな回答を検証することが可能になる。
【0035】
アバター装置及びその実施形態と共に開示された特徴は、同様に本発明に係る方法の好ましい特徴を構成し、その逆もまた同様である。上述の態様、及び本発明に係る好ましい特徴は、特にアバター装置の確立、並びにアバター装置と共に説明される個々の構成要素の機能及び構成に関連し、したがって本方法にも適用される。上述した本発明の好ましい実施形態、変形例、及び特徴は、互いに組み合わせ可能である。
【0036】
本発明の更なる詳細及び利益が、添付の図面を参照しながら以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の好ましい実施形態に係る特徴を有する、アバター装置の概略図である。
【
図2】アバター装置とその周囲(外界)との間の通信、及び通信の監視の図である。
【
図3】第1の記憶装置及び第2の記憶装置の使用図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態に係る特徴を有する、アバター方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の例示的な実施形態の特徴が、アバター装置の構成及び機能を参照しながら以下で説明される。AIプロセッサ装置の詳細は、従来技術で知られている限りにおいて説明されない。AIプロセッサ装置は、特に、国際公開第2020/233850号(「Recursive coupling of artificial learning units」)、及び国際公開第2020/233851号(「Coupling multiple artificially learning units with a projection level」)で説明されているように構成されてもよい。国際公開第2020/233850号及び国際公開第2020/233851号は、特に、AIプロセッサ装置、及び入出力装置及びメモリなどのその周辺機器の構成に関して、参照することによって本開示に組み込まれる。
【0039】
図1は、アバター装置及びその機能の実施形態を示し、
図1に示すセクション(ステップ及び/又は構成要素)a~gは、以下の意味を有する。セクションaは、学習した教材を記憶するステップ、及び/又は学習した教材にアクセスするステップを含み、セクションbは、訓練ユニットの時間を記録するステップを含み、セクションcは、より知的に調査を行い、これをタイマ装置(時計システム)と比較できるようにするために、第2の記憶装置にアクセスするステップを含み、セクションdは、キー管理と認証記憶域との間の相互作用を含み、セクションeは、質問すること及び/又は情報を受け取ることについて誰が認可されているかを規定するステップを含み、セクションfは、周囲との通信、特に通信プロトコルを使用可能にすること又は防止することに影響を与えるステップを含み、セクションgは、個人によって訓練されるAI、調査されるAI、及び/又は情報を提供するAIのためのチャネルに関する。
【0040】
アバター装置とその周囲(外界、特に問い合わせ主体又はアバターを訓練する実際の人間)との間の通信(
図4を参照)及び通信の監視は、
図2に示すような以下のステップを含む。ステップaは、実際の人間との通信である。ステップbにおいて、AIプロセッサ装置は、当該個人が個人用記憶域に変更を行う、且つ/又は該記憶域と通信することを認可されているかどうかを検証するために、その暗号記憶域を使用する。ステップcにおいて、訓練を許可するかどうかについて、はい/いいえの決定が行われ、且つ/又は情報を提供するかどうかについて、はい/いいえの決定が行われる。ステップdは、研究組織などの主体から特定の項目に関して受信したクエリである。ステップeにおいて、アバターのAIプロセッサ装置は、その通信認証記憶域における、認可された全ての主体のディレクトリを使用し、特に、通信認証記憶域における通信のプロトコルを使用して、前記AIプロセッサ装置が、前記主体に情報提供することについて認可されているかどうか、及び前記AIプロセッサ装置が、どの項目について前記主体に情報提供することを認可されているかをチェックする。ステップfにおいて、チェックの結果が提供される。
【0041】
図3は、訓練内容を時系列順に並べる目的で、第2の記憶装置(共有公開記憶域)の使用と組み合わせた、第1の記憶装置(個人用記憶域)におけるデータの記憶及びデータの取り出しを示す。倫理的アバターのAIプロセッサ装置は、実際の人間の現時点の精神的な反応特徴、例えば、道徳的な意向/意見/関心を個人用記憶域に記憶し、これにアクセスする(認可されたクエリの場合。
図2を参照)ことが可能なだけでなく、実際の人間の旧バージョンの精神的な反応特徴を履歴ログに記憶し、時計システムを使用して、これを絶対的な時系列順に並べることもできる。この時系列順の割り当てにより、第2の記憶装置との整合も可能になる。例えば、AIプロセッサ装置は、第2の記憶装置にアクセスして、当該個人の教派を尋ね、「キリスト教徒」という応答を理解するので、第2の記憶装置は、AIプロセッサ装置を、実際の人間による訓練をより知的に行うために更に使用することができ、なぜならば「キリスト教徒であること」が特定の時点での道徳的な意向に関して何を意味するかが、前記の第2の記憶装置に記録されているためである。
【0042】
アバター装置は、
図1に示す以下の特徴を有する。
●アバター装置は、(1)実際の人間による個別訓練を経た、道徳的な意向を学習できる学習コンポーネントを含み、
●(2)この訓練の結果は、第1の記憶装置に記憶され、アバターのAIは、この情報にアクセスできる(第1の記憶装置は、非公開であり、即ちアバター装置の周囲からのアクセスはブロックされる)。個人の道徳的信念などの精神的な反応特徴は、アバターの第1の記憶装置内に、規則の一覧、マイクロ契約、及び/又はブロックチェーンの形式で記憶されてもよい。当該個人の宗教、又はグループ/協会/政党の所属に関する情報が第1の記憶装置に記憶されてもよく、これらから倫理的アバターは、(別の記憶域(第2の記憶装置、(4)を参照)にアクセスすることによって)当該個人の意見に関する結論を引き出すことが可能になる。
●さらに、(3)アバター装置は、当該個人の意向などの精神的な反応特徴に関するその記憶された知識に基づいて、新しい質問(入力)に対して新しい回答(出力)を独立して生成するように適合される。このようなアバターは、好ましくは、倫理に関連する表現を理解して使用でき、これは、対応するオントロジ(特に、物理的及び抽象的な対象、特徴、事実、事象、方法などの、系統的で形式化された主体の代理)によって可能になる。
●個人の道徳的な意向のための第1の記憶装置とは別に、アバターは、(4)好ましくは、別の第2の記憶装置にアクセスでき、該装置には応答特徴に関する更に基礎的な知識、例えば、道徳に関する知識が(先の専門的な訓練から)記憶されている。これは、例えば、様々な倫理的理論及びその実施に関する知識、宗教又はその他グループ(政党又は協会など)並びにその規約及び規則に関する知識、或いは道徳哲学において知られ議論されている倫理に関する表現、及び倫理的ジレンマの状況に関する他の知識であってもよい。前記第2の記憶装置(公開記憶域であって、例えば他のアバターシステムと共有される)は、アバター装置によって、個人をより知的に調査するために、個人による訓練の際に、特定の質問に対して個人の意識を高め、個人の回答を分類できるようにするために使用され得る。アバターは、訓練中にのみこの一般知識を使用するが、一定時間後にその個人に代わって倫理的な質問に答えるときには使用しない。この場合、アバターは、精神的な反応特徴、特に、前記個人の個人の価値観/関心/信条に関して知っていることに関してのみ意思決定を行う。第2の記憶装置は、定期的に更新されてもよく、この目的のために、アバター内の時計システム((9)を参照)が使用される。
●(5)倫理的アバターとその実際の相手である個人との間に通信チャネルが提供され、その結果、前記個人は、アバターを訓練でき、好ましくはいつでもそのデジタルな代理の挙動を監視し、且つ/又はそのように所望する場合は訓練を再開することができる。問い合わせ主体との通信も同様に可能になるが、好ましくは制限がかかる。好ましくは、認可された項目分野についての、認可された主体からのクエリのみが許可される。認可が実行されるのは、
●(6)標準的な通信プロトコル機能を併せ持つ通信認証記憶域による。これは、アバターが通信できるこれらの主体のディレクトリであり、問い合わせ主体からの質問に回答するために、これがどのような文脈に関連し得るかに関する条件が伴う。認可は、実際の人間自身、又は中央機関のいずれかによって指定され得る。認可された主体のみが、明確に限られた範囲内で情報を受け取ってよく、例えば、認可された医学組織は、アバターを調査してもよいが、医学関係の質問のみが許可される(
図2に、アバターと外界との通信を示す)。
●(7)アクセスキーが管理されている暗号記憶域を使用して、アバターは、好ましくは、どの主体が、情報を受け取るどのような権利をどの範囲で有しているかをチェックすることができる。このキーを使用することによって、実際の人間のみが、アバターの個人用記憶域に変更を加えることを認可されていることが更に確実にされる。
●倫理的アバターが実際の人間によって訓練され得るのは1回限りではなく、前記個人が、好ましくは個人用記憶域の内容をいつでも変更できるので、アバターは、(8)好ましくは、(例えば、ブロックチェーンなどを使用して)変更の履歴経緯が記憶される記憶域(ログ記憶域)を含む。ここで、アバターは、
●(9)様々な訓練の実行を時系列で絶対評価し、これを一般的な道徳関連知識に関して第2の記憶装置と整合できるようにするために、時計システムを有する。このようにして、特定の訓練シーケンスの時間t
xが、公開の共有記憶域に記憶されているとおりに、正にこの時間における、知識の一般的な状態に割り当てられ得る((4)を参照)。これは、それぞれの訓練ユニットの内容を理解する上で大きな意味を持つことがあり、例えば、実際の人間が、t
x時間に、特定のコミュニティの規範に縛られていると感じていることを示したか、又はそのコミュニティが規範を改めた時間t
x+nにそれを示したかどうかで違いが生じる可能性がある。両方の規範(旧バージョンt
x及び改められたバージョンt
x+n)は、(4)訓練ユニットが個人用記憶域に記憶された方法と同様に、それぞれの時間にリンクした方式で、(2)時計システムによって訓練時間にリンクされた方式で第2の記憶装置に記憶される。当該個人の個人的な意向は、したがって、絶対的な時系列順で配置される(
図3に示す)。
●倫理的アバターは、更に(10)実際の人間の基本的な都合に関するユニットを有してもよく、これは連絡手段へのリンクを提供し、或いは当該個人との連絡のつきやすさに関するコメントを出す。
【0043】
本発明の実施において、特に、以下の可能性がある。
a)実際の人間は、好ましくは対応する識別タグを含む、対応するアバター装置(倫理的アバター)を1つだけ有し、これを対象として様々な主体によるクエリが行われ得る。前記個人に関する情報は、全て、1つのアバター装置によって処理される。
b)実際の人間は、アプリケーションの様々な領域で生成された、複数のアバター装置(アバターシステム)に割り当てられてもよい。異なるアバターは、アバター識別番号(アバター情報主体によって提供される)、汎用一意識別子(患者ID又はバイオサンプルIDなど)、又は(ハッシュ化された)個人識別子(画像など[例えば、「グラバター」の概念が開発されており、グラバターは、ユーザをウェブサイトからウェブサイトへと伴わせる、識別子として機能する画像である(https://de.gravatar.comを参照)])、或いはSNP(一塩基多型)又はSTR(短縦列反復)などの遺伝的な「指紋」のいずれかによって、一個人とうまく同期され得る。ある人が複数のアバターを持っている場合は、関係する全てのアバターが、共通する実際の人間の精神的な反応特徴、例えば意向や意見に関して最新の状態を維持するように、これらのアバターは、好ましくは互いに同期される。実際の人間の様々なアバター間の整合が保証されなければならない。
【0044】
(特定の例示的な実施形態及び用途についての詳細)
[1.ビッグデータ分析/データサイエンスの例示的な実施形態]
〇医学研究所/バイオバンクと、製薬企業及び/又は科学組織との間の統合的なリンクとして機能する、複数方向プラットフォームの一部としてのアバターにより、医学関連の(商業的な)研究所が、患者の診療情報、診断結果、及び遺伝情報に関する大量のデータにアクセスする。それらは、研究部門及び産業部門でこのデータを使用することに関心がある。その一方で、製薬業界及び科学組織は、その研究において、非常に特殊な患者団体からデータを取得することに依存している。従来の技術を使用すると、これらの部門間の仲介は、非常に複雑であるが、少なくとも1つの統合されたアバター装置を含むプラットフォームを使用することで容易になり得る。プラットフォームは、両側からの情報をまとめ、どの患者が研究所でテストされているかを分析し、研究部門からの患者プロファイルのクエリから、研究所からのこれらのデータ/サンプルのどれが研究部門にとって重要かの洞察を得る。したがって、プラットフォームは、両者を支援でき、どのサンプル/データが、(研究部門にとって必要な)高価な完全ゲノム配列決定の対象とするに値するかを研究所に助言し(プラットフォームは、どのサンプル/データが研究/産業部門にとって重要か知っているため)、そうすることで、適切なコホートを収集して研究部門を支援することができる。患者の倫理的アバターは、特にその実際の相手の道徳的な意向を知っているために、この事前選択を支援する。患者のデータ/サンプルの使用については、関係する患者の同意が必要とされる。倫理的アバターは、このような申告の取得を容易にするために使用されてもよい(以下を参照)。
〇社会学的調査:アバターは、基本的に誰がどの研究項目及び調査内容に関心を持ち得るか、又は誰が直ちに異議を唱えるかの事前選択を支援することができる。
→利点:社会学的コホート/調査団体の迅速且つ適切な事前選択。
〇意見調査/ビッグデータ分析:非常に多数の個人の意見を容易且つ迅速に照合し分析することを可能にするために、倫理的アバターは、意見調査機関からの特定の質問に対する回答を支援するだけでなく、最初の段階で、(事前選択を用いて支援することによって)対応する調査対象者の適性を評価することも支援することにより、有利になり得る。
【0045】
[2.臨床状況及び生物医学研究における可能な用途]
〇インフォームドコンセントの質問についての助言の付与:アバターは、様々な同意申告の質問に対する当該個人の回答を学習し、新しい質問に対する前記個人の意向を予期して、代わりに回答することが実質的に可能になる。アバターは、個人の助言代理人の役割を果たし、その個人に代わって回答することを学習している。
→利点:(1つ又は複数の)同意申告に関する質問のために当該個人と直接連絡を取る必要がなくなり、当該個人のプライバシーの安全対策が行われると同時に、当該個人の利益及び指示を考慮する。
〇インフォームドコンセントのプロセスの標準化:倫理的アバターを使用することによって、同意申告を取得するプロセスが標準化され得る。このような国際的に適用可能な、標準化された機器を倫理的アバターとして使用することによって、異なるインフォームドコンセント文書が複数存在すること及びその複雑性が解消され得る。
→利点:このような文書の国際的な流通及び理解が簡素化され、国際的な語彙としての使用及び国際的アプローチが可能になるため、国際協力が非常に容易になる。
〇動的な患者の事前指示:アバターは、個人が自分の意思を表現できない場合に、サポート機能を実行することができる。個人が昏睡状態にある状況か、又は自分の意見を言えないという類似の状況にある場合、当該個人に対応して訓練された倫理的アバターが、前記個人の希望、関心、及び道徳的な意向に関して当該個人の代わりに前記アバターを調査できれば、親族又は法的保護者にとって大いに助けになり得る。
→利点:関係者は、自分自身に能力がない場合でも、関係者が訓練した倫理的アバターが自分の利益になる決定を予期できるという事実に頼ることができる。
〇想定していない未来の研究分野/応用領域:アバターがより広く訓練されれば、「インフォームドコンセント」の特定の質問とは別に、対応する個人のより一般的な道徳的な意向/価値観/信条を更に学習でき、「インフォームドコンセント」に対する回答を越えた質問に対する回答をも予期することができる。
→利点:既存の細胞供与を最大限に使用して、新しい研究分野への急速な参入が可能になる。
〇生物医学研究のためのコホートの層化:ここで提供されるアバターは、機密データを公開することなく、患者/被験者の代わりに行動することが可能である。ここでは、独国特許出願第102019135380.7号明細書(「Verfahren und Datenverarbeitungsvorrichtung zur Bearbeitung von genetischen Daten」、本開示の優先日に非公開であった)で述べられている技術が使用されてもよく、ここでは、データの全ての情報が開示される必要はなく、(ハッシュ化による)暗号化方式で、アクセス禁止データ(個人の遺伝情報など)で研究が行われ得る。独国特許出願第102019135380.7号明細書は、特に遺伝子データの処理に関して、参照することによって本開示に組み込まれる。この場合、アバターは、対応するハッシュにアクセスし、暗号化情報を知ることなく、出された質問にはい/いいえで回答することができる。このサービスは、特に、特定の共通する特徴を有する患者/被験者コホートの収集において大きな利点になる。例えば、研究目的では、ドナーが特定の、例えば遺伝的な共通性を有している細胞株が必要とされることが多い。この場合、対応するアバターが、クエリに応答して、前記のアバターが示すドナーの細胞株の適性を、実際の相手の遺伝情報を明らかにすることなく、承認する又は承認しないことが可能である。
〇適切な患者/被験者の検索が、好適には(個人の特定の遺伝的特徴に関する質問に回答することによって)非常に迅速に行われ、アバターは、対応する個人の根底にある機密データを開示することなく、事前選択の実行を更に支援することができる。
→利点:機密データ保護の安全対策を行いながら、対応する質問が同時に回答され、従来多大な労力及び膨大な時間を費やしてのみ可能であった、研究のためのコホートの迅速な層化が行われる。
〇合成生物学:将来的には、遺伝情報のみから合成的な生物学的単位、細胞、又はオルガノイドを開発することが可能になる可能性があり、この場合もまた、倫理的アバターが、(遺伝情報が付随する)実際の人間と、研究組織との間を代表する主体と想定される。アバターは、個人に代わって、合成物を生成してもよいもの、又はよくないものに関する同意又は禁止を示すことができる。
→利点:新しい研究分野及び応用領域において、身元の保護についての安全対策が行われながら当該個人が表され、関係者の代わりに助言的なアバターによって、迅速且つ信頼性の高い状態で質問が回答され得る。
【0046】
[3.法律が適用される状況での使用]
〇個人の責任能力を査定するための支援:ある個人が法律に関して相応の責任能力があるかどうかという問題は、特に、その個人の意見がどれだけ一貫しているか、及び近時、該意見が頻繁に、且つ矛盾した方法で変化しているかどうかによる。このようなことは全て、ある個人の現時点の意見だけでなく、その意見の「経緯」を知っており、且つ異なる意見間の論理的な関係や、場合によっては矛盾する関係を調べることができるアバターによって実施することができる。アバターは、司法制度及び心理学専門家に対して、個人の精神状態を査定するための支援になり得る。これは、医学的背景における心理査定にも関連する可能性があり、意見に一貫性がない場合は、当該個人の錯乱/認知症が進んでいることを示している可能性がある。
→利点:専門家が、査定のために個人の現時点の状態を提供されるだけでなく、経時的な意見の経緯、又は経時的な意見の動態も考慮することができる。
【0047】
[4.技術的装備の制御の実施形態]
〇技術的装備への利用:アバターは、ユーザの希望及び関心を実装して、例えば、望ましいコンテンツのみが当該個人に表示され、他のコンテンツは除外されるように、様々なインターネット検索エンジンのフィルタシステムを制御することによって技術的装備を支援でき、またアバターは、未成年者にとって不適切なコンテンツが未成年者に表示されないことを保証して、未成年者のための管理機能を実行することができる。
→ユーザの希望/関心及び道徳的な意向にかなった方法での、目標を絞った技術的装備の使用の促進
〇自動運転車への道徳の実装:自動運転車用の適切な道徳システムの模索において、従来共通認識的な解決策(平均的な道徳的な意向の実装)が求められてきたが、特に倫理的アバターの支援を用いて、自分の自動運転の乗り物に、運転者自身の道徳的な意向を実装することも可能になる。したがってアバターは、自動運転でない車に乗っている人間の運転者のように、乗り物の個々の良心として機能する。
→利点:運転者は、道路交通状況において、平均的な道徳的な意向による見解に従う必要はなく、(自明ではあるが合法的な範囲内で)自分の個人的な倫理的価値観を(手動で運転しているときのように)実施することができる。
【0048】
[5.その他の実施形態]
〇疑似匿名化された個人データへのアクセスキーの管理/安全対策:個人の権利及び個人のプライバシーを保護するために、個人のデータは、用途の多くの領域において、暗号化によって保護される。ここでは、このキーの管理が非常に重要である。このアクセスキーは、個人の失念又は不注意によって失われる可能性がある。ここで、倫理的アバターは、部外者のアクセスに対して、対応する個人のこのキーの安全対策、及び前記キーの保護を支援することができる。
→利点:倫理的アバターの支援によって個人の責任が補助され、キーが専門的に管理及び安全対策され、紛失の可能性が低くなる。
〇データ保護の監視:アバターは、個人と(医学)組織及び/又は研究機関との通信にリンクを構成する。
→利点:個人と直接連絡を取る必要がなく、個人の身元は保護したままで、同時に該個人及び該個人の関心に関連がある質問に参加する機会を最大にすることができる。さらに、アバターは、機密データを公開することなく質問に答えることができる(上記を参照)。
〇さらなる道徳哲学的な能力の提供:倫理的アバターは、学習した自然人の価値観/道徳的な意向/信条に対するアクセス権を有するだけでなく、(他のアバターと共有する別の記憶域に)広範囲に及ぶ一般的な道徳哲学的知識を更に有する。個人との訓練会話中に、倫理的アバターは、この知識を使用して、更に広範な道徳的質問に対して前記個人の意識を高め、前記個人をより知的に調査することができる。このようにして、アバターは、個人の意向を学習するだけの単なる受信側主体を超えたものになる。さらに、その独自の道徳的能力を使用して理解者になりながら、その能力は、個人による訓練のプロセス中にのみ使用する。訓練後に、その実際の人間の道徳的な意向に関する質問に答えるときは、前記アバターは、その独自の一般的な道徳哲学的知識にアクセスすることなく、個人によって出されたコメントに従う。
→利点:多くの個人が、自分の道徳的な意向の重要性に最初は気づいておらず、倫理的アバターの道徳的能力は、訓練会話中に、意思決定の自律性を損なうことなく、個人が知的に調査されることを可能にする。さらに、利害関係者は、このようにして(自分のアバターとの会話によって)、道徳的反応特徴などの反応特徴を考えるように動機付けされ、自分の道徳的判断を訓練することができる。
【0049】
上述の説明、図面、及び特許請求の範囲で開示されている本発明の特徴は、個別と、組み合わせ又は下位組み合わせとの両方において、本発明をその様々な実施形態で実現するために重要になり得る。
【国際調査報告】