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特表2024-501196筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置のための塞栓形成エマルジョン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置のための塞栓形成エマルジョン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/166 20060101AFI20231228BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 36/66 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61K31/166
A61K9/107
A61K36/66
A61P19/00
A61P21/00
A61P29/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535645
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021085284
(87)【国際公開番号】W WO2022123049
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20306538.8
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21305228.5
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523213158
【氏名又は名称】アシスタンス プブリク-オピトウ ドゥ パリ
(71)【出願人】
【識別番号】591052505
【氏名又は名称】ゲルベ
【氏名又は名称原語表記】GUERBET
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サポヴァル マルク
(72)【発明者】
【氏名】デル ジュディチェ コンスタンティーノ
(72)【発明者】
【氏名】ディーン カロル
(72)【発明者】
【氏名】ペルラン オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB11
4C076CC09
4C088AB35
4C088AC04
4C088BA06
4C088CA26
4C088MA02
4C088MA22
4C088MA66
4C088NA14
4C088ZA94
4C088ZA96
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA14
4C206GA25
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA42
4C206NA14
(57)【要約】
本発明は、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置で使用するための、ヨウ素化油と、水溶性造影剤を含む水相とを含む塞栓形成エマルジョンに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置で使用するための、ヨウ素化油と、水溶性造影剤を含む水相とを含む塞栓形成エマルジョン。
【請求項2】
前記ヨウ素化油は、ケシの実油のヨウ素化及び非ヨウ素化脂肪酸のエチルエステルの混合物を含む、請求項1に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項3】
前記水溶性造影剤は、ヨウ素化造影剤である、請求項1又は2に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項4】
前記水溶性ヨウ素化造影剤は、イオベルソール、イオパミドール、イオメプロール、イオプロミド、イオヘキソール、イオビトリドール及びイオジキサノール、好ましくはイオベルソールからなる群から選択される、請求項3に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項5】
油中水型エマルジョンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項6】
ヨウ素化油と前記水相との比は、少なくとも2:1v/vである、請求項5に記載の使用のための塞栓形成油中水型エマルジョン。
【請求項7】
前記水相中のヨウ素の濃度は、240~400mg/mLに含まれる、請求項3~6のいずれか一項に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項8】
前記組成物の粘度は、37℃において40~140mPa.sに含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項9】
エマルジョン液滴径は、10~100μmに含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項10】
a)化学療法の抗癌剤を含まず、及び/又は
b)ナノ粒子又はポリマー粒子を含まず、好ましくはいかなる塞栓性粒子も含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項11】
前記筋骨格障害は、肘、膝、手首、肩、股関節、踵、足首、母指及び/又は脊椎に影響する、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項12】
前記筋骨格障害は、腱付着部症、腱障害、炎症性リウマチ様疾患及び手根管症候群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項13】
- 前記腱付着部症は、アキレス腱付着部症、上顆炎、強直性脊椎炎、足底腱膜炎、肩回旋筋腱板症候群、肘領域の腱付着部症、手首及び/又は手根の腱付着部症、肘頭部滑液包炎、膝蓋前滑液包炎、手又は手首の滑液包炎、股関節領域の腱付着部症、股関節滑液包炎、膝の腱付着部症、足首の腱付着部症、足根の腱付着部症並びに踵骨の腱付着部症から選択されるか、
- 前記腱障害は、肩腱炎、石灰沈着性腱炎、アキレス腱炎、二頭筋腱炎、大腿四頭筋腱症、外側上顆炎、内側上顆炎、ドケルバン腱鞘炎、狭窄性腱鞘炎、手首の腱鞘炎、膝蓋骨腱障害から選択されるか、又は
- 前記炎症性リウマチ様疾患は、変形性関節症、頚部脊椎症、関節リウマチ(RA)、急性結晶関節炎、脊椎関節症、乾癬性関節炎)、シェーグレン症候群、強皮症、感染性関節炎、足底筋膜炎、若年性特発性関節炎、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症、狼瘡、血管炎から選択される、請求項12に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項14】
前記筋骨格障害は、経口鎮痛剤、抗炎症性薬物適用、理学療法及び/又はコルチコステロイド注射による処置に対して耐性又は難治性である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【請求項15】
前記処置は、前記塞栓形成エマルジョンを、罹患組織に血液を供給する少なくとも1つの標的動脈に投与することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための塞栓形成エマルジョン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋骨格障害の分野におけるものである。本発明は、より具体的には、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置で使用するための塞栓形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
筋骨格障害(MSD)は、骨、筋肉、関節、腱及び/又は靱帯に影響する。これらは、世界的に能力障害の最も多い原因であり、毎年数百万人の外来患者の通院をもたらしている(James et al.,2017)。実際、米国単独において、成人の推定50%は、MSDの影響を受けており、MSDは、労働損失日数の原因として全ての他の状態を上回る(United States Bone and Joint Initiative,2018)。最も一般的なMSDは、関節炎、腰痛及び頸部痛並びに外傷(例えば、反復運動、使い過ぎ、転倒からのもの)を含み、これは、軟部組織への損傷及び/又は骨折をもたらす。特に注目すべきことに、相対的に若く活動的な患者では、関節障害、例えばテニス肘、五十肩及び膝又は手首の関節炎は、能力障害の一般的な原因である。
【0003】
疼痛は、MSDの初期の及び最も一般的な症状の1つであり、こわばり感、圧痛、脱力及び/又は膨れ若しくは変形に加えて、罹患部位の炎症と関連付けられることが多い。炎症性関節病態の場合、難治性疼痛は、特に部分的又は完全な機能喪失と関連する。
【0004】
MSDの一次処置は、医薬組成物(例えば、オピオイド、非ステロイド性抗炎症薬、筋弛緩剤、コルチコステロイド注射を含めた鎮痛剤)の投与を含み、これらは、非薬物処置方法(例えば、ホット/コールドパックの使用、理学療法、運動、自主管理のアドバイス)を一般に伴う。しかし、長期の薬物適用はまた、肝臓及び/又は腎臓の機能障害、潰瘍形成並びにオピオイドの場合にはさらに嗜癖をもたらし得る。さらに、処置の有効性は、患者毎にかなり変動し、これは、定められたプロトコルを確立することを困難にし、難治性MSDは、高頻度である。一例として、五十肩の場合、患者の概ね30%は、一次処置方法で改善しない(Shaffer et al,1992)。しかし、一次処置に必ずしも応答しないが、手術も是認されない中等度のMSDについて、処置オプションが制限される。実際に、手術は、典型的には、最も重度のMSDのみについて準備され、それ自体の一連の欠点を伴う。特に、手術は、特に高齢者では、長い回復時間、院内感染の危険性及び全身麻酔からの合併症の危険性と関連する。
【0005】
動脈内塞栓術は、上記の治療に対する興味深い代替となる。経カテーテル動脈塞栓術(TAE)は、腫瘍の処置(例えば、手術前の脈管遮断のため又は化学療法剤を腫瘍に直接送達するため)及び出血(例えば、分娩後出血又は血友病を有する患者における滑膜炎からの出血において(例えば、Klamroth et al.,2009を参照されたい))を管理するために一般に使用される一方、この技術がMSDの処置に関連して評価されたのは、ごく最近である。
【0006】
MSDに塞栓術技術を適用することへの関心は、罹患組織、例えば腱及び腱靭帯付着部が傷害されたとき、新生血管の増加を起こすという観察から生じた(例えば、Alfredson et al.,2003を参照されたい)。関節に関連するMSDの場合、炎症は、滑膜血管形成を誘発し、滑膜内の血管の再分布をもたらし得る(Bonnet and Walsh,2005)。Okunoらは、難治性腱障害又は腱付着部症を、動脈内注射によって投与されるイミペネム(カルバペネムファミリーの抗生物質)、シラスタチンナトリウム(腎毒性代謝物へのその分解を防止する酵素阻害剤)及びヨウ素化造影剤としてHexabrix(登録商標)の混合物から構成される塞栓形成組成物で処置する可能性を最初に探究した(2013年)。わずかに少数の患者が当初試験されたが、予備段階の結果は、動脈内塞栓術が難治性腱障害又は腱付着部症と関連する容赦ない疼痛を軽減できたことを示した(Okuno et al.,2013)。しかし、患者は、特にイミペネム及び/又はシラスタチンナトリウムに対してアレルギー性であり得る。さらに、イミペネム/シラスタチンナトリウムの使用は、多くの国で細菌感染の処置のためにのみ認可されている。注目すべきことに、医学的及び経済的観点から健康製品の評価の任務を担うフランス当局(HAS)及び欧州医薬品庁(EMA)は、抗生物質耐性の発生を制限するために、特に薬物耐性腸内細菌による重度の感染症に対してイミペネムの使用をできる限り制限することを推奨している。明らかに、イミペネム/シラスタチンナトリウムは、臨床的に高リスクな敗血症にそれ自体が関与している腸内細菌及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)において抗生物質耐性を増強する高い危険性と関連するため、末梢動脈に注射することができない。このように、イミペネム/シラスタチンナトリウムは、診療所におけるMSDのために実行可能な処置オプションではない。
【0007】
より最近では、ゼラチンと架橋したtrisacrylから構成される較正されたミクロスフィア(Embosphere(登録商標)、Merit Medical)が、変形性膝関節症と関連する難治性膝疼痛の処置における安全性及び有効性を評価するために、臨床治験における膝状動脈塞栓術によって投与されてきた(Isaacson and Bagla,2018)。予備段階の結果は、患者の大部分で疼痛の減少を示した。しかし、ミクロスフィアは、非再吸収性であり、イミペネム及びシラスタチンナトリウムの混合物を含む生成物と対照的に持続性の閉塞をもたらす。実際に、MSDを処置するとき、永続的な組織虚血の危険性を低減させる一方で血管再疎通を可能にするため、一時的閉塞が好ましい。さらに、ミクロスフィアは、有害事象の危険性の増加と関連することが示されている。特に、ポリメチルメタクリレート(Embozene)ミクロスフィアで処置された20人の患者のうち、16の軽微な合併症が同定された(Bagla et al.,2020)。さらに、このような微粒子状塞栓剤は、これらが血管で容易に標的化されず、且つ放射線不透過性ではなく、これらが注射前に造影剤に浸さない限り、これらを蛍光透視法/フルオログラフィー下で可視化することを困難なものとしているために不利である。さらに、マイクロカテーテルを通した、較正された粒子の力による注射又はそれらの脱水はまた、球のひび割れをもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに関連して、新規な塞栓形成組成物がMSDの処置のために必要とされている。このような組成物は、一時的のみの塞栓術、すなわち30日未満持続する塞栓術を生じさせ、したがって虚血の危険性を制限すべきである。このような組成物は、相対的に安価及び広く利用可能であるべきである。特に、このような組成物は、特定の医学的状態、例えば細菌感染の処置のために準備されるよりむしろ、示された使用のために利用可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に関連して、本発明者らは、驚くべきことに、ヨウ素化油と、水溶性造影剤を含む水相とを含む組成物が、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成を処置するために使用され得ることを見出した。実際に、変形性関節症のミニブタモデルにおける塞栓術は、試験した全ての動物において炎症性過剰血管形成の即時の消失をもたらした。さらに、本発明の塞栓形成エマルジョンは、他の組成物(例えば、ミクロスフィア)の塞栓形成能力より大きい塞栓形成能力を有利に有し、より低い価格で利用可能である。
【0010】
このように、第1の態様では、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置で使用するための、ヨウ素化油と、水溶性造影剤を含む水相とを含む塞栓形成エマルジョンが本明細書で提供される。
【0011】
用語「塞栓形成」は、材料が血管中に注射され、それが、その後、血管を少なくとも部分的に充填するか又は塞ぎ、その結果、血管を通る血流量が低減又は停止するプロセスを指す。このように、用語「塞栓形成エマルジョン」は、本明細書で使用するように、非腸内体液、通常、血液への適用によって部分的又は完全な塞栓又は遮断を形成する組成物を指す。一態様では、塞栓形成エマルジョンは、血流量を低減し得る(例えば、塞栓術前の血流量と比較して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又は95%)。これは、大血管又は動脈が標的とされるときに特に有利であり得る。代わりに、塞栓形成エマルジョンは、完全な塞栓術又は遮断を誘発し得る。好ましくは、本明細書で提供する塞栓形成エマルジョンは、完全な塞栓術を誘発する。この場合、遮断は、一時的である。実際に、ヨウ素化油は、動脈循環の一過性塞栓術を誘発することが知られている。塞栓形成エマルジョンは、遮断又は閉塞が望ましい動脈中に注射される。このように、塞栓形成エマルジョンは、注射時に液体形態である。液体塞栓物質の場合、液体塞栓物質がマイクロカテーテルを出るマイクロカテーテルの端部と標的病変との間の距離は、塞栓剤、流れ条件、液体塞栓物質の粘度、血管のサイズ及び/又は液体塞栓物質の手動注射の強さの性質によって変動し得る。
【0012】
塞栓術は、選択的又は非選択的であり得る。「選択的塞栓術」は、塞栓形成エマルジョンを送達するためにマイクロカテーテルを、過剰血管形成に関与する動脈に直接位置付ける塞栓術を指す。「非選択的」又は「シャワー」塞栓術は、塞栓形成エマルジョンを送達するために、マイクロカテーテルを過剰血管形成に関与する動脈の近位に位置付ける(すなわちある距離を置く)塞栓術を指す。
【0013】
前記エマルジョンは、「水中油型」エマルジョン又は「油中水型」エマルジョンであり得る。
【0014】
「油中水型」エマルジョン(「逆」又は「W/O」エマルジョンとも称される)は、脂質相中の水相の液滴の分散物である。「水中油型」エマルジョン(「直接」又は「O/W」エマルジョンとも称される)は、水相中の脂質相液滴の分散物である。用語「脂質相」は、本明細書で使用するように、水と不混和性である非極性有機液体、通常、油の相を指す。このように、脂質相は、好ましくは、油、より好ましくはヨウ素化油を含む。さらにより好ましくは、脂質相は、油、より好ましくはヨウ素化油からなる。「水相」は、二相性混合物の水性相を指す。水相は、水溶性造影剤を含む。このように、水相は、水及び水溶性造影剤を含む。場合により、水相は、水溶性添加物、例えば緩衝液、pH調整剤、抗酸化剤、張性/浸透圧性調節剤及び/又は安定剤をさらに含み得る。
【0015】
前記エマルジョンは、好ましくは、油中水型エマルジョンである。このように、本発明は、好ましくは、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置で使用するための、ヨウ素化油と、水溶性造影剤を含む水相とを含む塞栓形成油中水型エマルジョンに関する。
【0016】
「ヨウ素化油」は、本明細書で提供するように、ヨウ素化脂肪酸の誘導体、好ましくはヨウ素化脂肪酸のエチルエステル、より好ましくはケシ油、オリーブ油、ナタネ油、ピーナッツ油、ダイズ油又はクルミ油のヨウ素化脂肪酸のエチルエステル、さらにより好ましくはケシ油又はオリーブ油のヨウ素化脂肪酸のエチルエステルを含むか又はそれからなる。用語「脂肪酸」は、少なくとも4個の炭素原子の炭素をベースとする鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸を指す。天然脂肪酸は、4~28個の炭素原子(通常、偶数)の炭素をベースとする鎖を有する。「長鎖脂肪酸」は、14~22個の炭素原子の長さを指し、用語「超長鎖脂肪酸」は、22個超の炭素原子の長さを指す。対照的に、「短鎖脂肪酸」は、4~10個の炭素原子、例えば6~10個の炭素原子、特に8個又は10個の炭素原子の長さを指す。当業者は、関連する命名法及び特に使用を十分承知している。Ci~Cpは、一連のCi~Cp脂肪酸を示し、Ci+Cpは、Ci及びCp脂肪酸の合計を示す。一例として、14~18個の炭素原子を有する脂肪酸は、「C14~C18脂肪酸」と記載され;C16脂肪酸及びC18脂肪酸の合計は、C16+C18として記載され;飽和脂肪酸について、当業者は、下記の命名法Ci:0を使用し、ここで、iは、脂肪酸の炭素原子の数であり(このように、パルミチン酸は、命名法(C16:0)と命名される);不飽和脂肪酸について、当業者は、下記の命名法Ci:x n-Nを使用し、ここで、Nは、酸基と反対側の炭素から出発する不飽和脂肪酸における二重結合の位置であり、iは、脂肪酸の炭素原子の数であり、xは、この脂肪酸の二重結合(不飽和)の数である(このように、オレイン酸は、命名法(C18:1 n-9)と命名される。
【0017】
最も好ましくは、ヨウ素化油は、ケシの実油のヨウ素化及び非ヨウ素化脂肪酸のエチルエステルの混合物を含む。代わりに、ヨウ素化油は、ケシの実油のヨウ素化及び非ヨウ素化脂肪酸のエチルエステルの混合物からなる。
【0018】
ケシ油は、好ましくは、ケシ変種ニグルム(Papaver somniferum var.nigrum)(黒花ポピーとしても知られている)、より好ましくはケシ変種ニグルム(Papaver somniferum var.nigrum)の種子から得られる。ケシの実油として知られているケシ油は、好ましくは、80%超の不飽和脂肪酸(特にリノール酸(C18:2 n-6)及びオレイン酸(C18:1 n-9))も含有し、その少なくとも70%は、リノール酸であり、少なくとも10%は、オレイン酸である。ヨウ素化油は、不飽和脂肪酸の各二重結合について1個のヨウ素原子の結合(Wolff,2001)、それに続くエステル交換を可能にする条件下での油、例えばケシ油のヨウ素化、好ましくは完全なヨウ素化から得られる。
【0019】
本発明によるヨウ素化油は、優先的には、29%~53%(w/w)、より優先的には37%~39%(w/w)のヨウ素を含有する。エマルジョンのヨウ素化油は、エマルジョンの脂質相中にある。
【0020】
ヨウ素化油の例として、Lipiodol(登録商標)(ヨード化ケシ油エチルエステルとも称されるケシ油のヨウ素化脂肪酸のエチルエステルの混合物)、Brassiodol(登録商標)(アブラナ(アブラナ(Brassica campestris))油に由来)、Yodiol(登録商標)(ピーナッツ油に由来)、Oriodol(登録商標)(ケシ油に由来するが、脂肪酸トリグリセリドの形態)及びDuroliopaque(登録商標)(オリーブ油に由来)について記述し得る。
【0021】
好ましくは、ヨウ素化油は、ケシの実油のヨウ素化及び非ヨウ素化脂肪酸のエチルエステルの混合物(すなわちLipiodol(登録商標)としても知られているヨード化ケシ油エチルエステル)である。Lipiodol(登録商標)は、Guerbetによって商品化されている淡黄色/琥珀色のヨウ素化油である。これは、特に成人の中間段階における肝細胞癌の経動脈的化学塞栓術中及び肝臓悪性病変の延長の選択的肝動脈診断のために、可視化、限局化及び/又はベクトル化のために使用される。この油は、ケシの実油に由来する長鎖ヨウ素化脂肪酸(特にC18脂肪酸)のエチルエステルの混合物、好ましくはエチルモノヨードステアレート及びエチルジヨードステアレートの混合物を主に含有する(特に84%超)。ヨウ素化油は、オリーブ油に由来するステアリン酸(C18:0)のモノヨウ素化エチルエステルをベースとする油でもあり得る(例えば、上記のDuroliopaque(登録商標))。
【0022】
Lipiodol(登録商標)の主要な特徴を下記の表に提供する。
【0023】
【表1】
【0024】
Lipiodol(登録商標)のさらなる特徴を下記の表に提供する。
【0025】
【表2】
【0026】
好ましくは、本発明によるエマルジョン中に存在するヨウ素化油の量は、15ml以下である。好ましくは、脂質(又は油)相は、本質的にヨウ素化油からなり、より好ましくは、脂質相は、本明細書に定義されているようなヨウ素化油からなる。
【0027】
エマルジョンの脂質相の密度は、好ましくは、1.10~1.30、より好ましくは1.20~1.30、さらにより好ましくは1.28である。
【0028】
用語「水溶性造影剤」は、本明細書で使用するように、対象に注射されたときに(例えば、X線撮影法によって)モニターすることができ、且つ水に可溶性である生体適合性(無毒性)材料を指す。水溶性造影剤は、好ましくは、放射線不透過性であり、したがってX線撮影法(例えば、血管造影図又は動脈造影図上)によって検出することができる。これは、特に硫酸バリウム又はヨウ素を含み得る。
【0029】
好ましくは、水溶性造影剤は、ヨウ素化造影剤である。このように、これは、ヨウ素を含有する。ヨウ素化造影剤において、ヨウ素は、イオン化合物又は有機化合物に結合し得、この場合、これは、「非イオン性」化合物として分類される。イオン性ヨウ素化造影剤の例は、ジアトリゾ酸メグルミン(Hypaque(登録商標))、メトリゾエート(イソペーク(登録商標))、イオタラメート(Conray(登録商標)及びイオキサグレート(Hexabrix(登録商標))、アミドトリゾ酸メグルミン及びイオキシタラム酸メグルミンを含む。非イオン性ヨウ素化造影剤の例は、イオビトリドール(Xenetix(登録商標))、イオパミドール(lopamiron(登録商標)、Isovue(登録商標))、イオメプロール(lomeron(登録商標))、イオベルソール(Optiray(登録商標)、Optiject(登録商標))、イオヘキソール(Omnipaque(登録商標))、イオペントール(Imagopaque(登録商標))、イオキシトール(Oxilan(登録商標))、イオプロミド(Ultravist(登録商標))、メトリザミド(Amipaque(登録商標))、イオサルコール(Melitrast(登録商標))、イオトロラン(Isovist(登録商標))、イオジキサノール(Visipaque(登録商標))、イオシメノール及びイオシミド(Univist(登録商標))を含む。ヨウ素化造影剤は、モノマー又はダイマー形態であり得る。これは、高い重量オスモル濃度(すなわち1200mOsm/kg以上)、低い重量オスモル濃度(すなわち500~900mOsm/kg)を有し得るか、又は等浸透圧(すなわち概ね290mOsm/kg)であり得る。
【0030】
好ましくは、水溶性ヨウ素化造影剤は、非イオン性である。好ましくは、水溶性ヨウ素化造影剤は、低い容量オスモル濃度(すなわち500~900mOsm/kg)を有するか、又は等浸透圧である。好ましくは、水溶性ヨウ素化造影剤は、イオベルソール、イオパミドール、イオメプロール、イオプロミド、イオヘキソール、イオビトリドール及びイオジキサノール又はこれらの2つ以上の混合物を含む。より好ましくは、水溶性ヨウ素化造影剤は、イオベルソール、イオパミドール、イオメプロール、イオプロミド、イオヘキソール、イオビトリドール及びイオジキサノール、さらにより好ましくはイオビトリドール及びイオベルソール、最も好ましくはイオベルソールからなる群から選択される。
【0031】
脂質相:水相の比(換言すると、ヨウ素化油:本明細書で提供するような水溶性造影剤を含む水相の比)は、好ましくは、水中油型組成物が得られるように、少なくとも2:1v/vである。実際に、脂質相及び水相間の1:1v/v比は、O/Wの方向を天然に好む。油中水型エマルジョンが望ましい場合、加えられるヨウ素化油の量を増加させなければならない。ヨウ素化油と水相との少なくとも2:1v/vの比(ヨウ素化油:水相又は脂質相:水相の比としても表される)は、W/Oエマルジョンを得ることを可能にする。より好ましくは、ヨウ素化油:水相の比は、少なくとも3:1v/v又は少なくとも4:1v/vである。一態様では、ヨウ素化油:水相の比(v/v)は、2:1~4:1に含まれ、より具体的には5:2~10:3に含まれる。ヨウ素化油:水相の比(v/v)は、特に3:1又は4:1と等しくてもよい。
【0032】
水相中(すなわち水中)の水溶性造影剤(例えば、イオベルソール)の濃度は、500~750mg/mL、より具体的には509~741mg/mLの範囲であり得る。特に、水相中の水溶性造影剤(例えば、イオベルソール)の濃度は、509、636、678又は741mg/mLであり得る。好ましくは、水相中のヨウ素の濃度は、240~400mgヨウ素/mL(mg I/mL)、240~350mg I/mL又は240~320mg I/mLの範囲である)。特に、水相中のヨウ素の濃度は、240、300、320、350、370又は400mg I/mLであり得る。水相中に存在するヨウ素は、ヨウ素化水溶性造影剤に由来し、上記で示したヨウ素濃度の範囲は、上記で開示したような通常の水溶性造影剤、特にイオベルソールを使用するとき、水溶性造影剤の濃度の上記で示した範囲に対応する。
【0033】
脂質及び水相は、同じ密度(換言すると、これらは、等しい密度のものである)又は異なる密度を有し得、イオベルソールは、1つの好ましいヨウ素化造影剤であり;Optiray(登録商標)240、Optiray(登録商標)300、Optiray(登録商標)320、Optiray(登録商標)350は、それぞれ1.281、1.352、1.371及び1.405の密度を有する。イオビトリドール(Xenetix(登録商標))は、別の好ましいヨウ素化造影剤である。Xenetix(登録商標)250及びXenetix(登録商標)300製品は、それぞれ1.28及び1.34の密度を有する。好ましくは、脂質及び水相は、同じ密度(換言すると、これらは、等しい密度のものである)又は同様の密度(すなわち、これらは、互いに10%以下だけ異なる)を有する。
【0034】
塞栓形成エマルジョンは、20℃において70~200mPa.s、好ましくは120~170mPa.s、より好ましくは150~165mPa.s、さらにより好ましくは150~165mPa.sの範囲の粘度及び/又は37℃において40~140mPa.s、好ましくは70~140mPa.s、より好ましくは80~130mPa.s又はさらにより好ましくは90~130mPa.sの範囲の粘度を有し得る。粘度値は、40mmの直径を伴う4°コーンプレートセルを有するMalvern Instruments Kinexus Proレオメーターを使用して特に得ることができる。測定は、0.16~10Paの範囲の負荷された応力で行う。
【0035】
非限定的な例として、エマルジョン中の液滴(すなわち水相液滴)のサイズは、1~500μm、1~200μm又は5~150μmの範囲であり得る。好ましくは、エマルジョン液滴径は、10~100μm、より好ましくは10~80μm又はさらにより好ましくは30~80μmの範囲である。サイズは、望ましいサイズ範囲内である限り液滴毎に変動し得る。好ましくは、水相液滴は、均一に分布している。液滴径及び均一性は、光学顕微鏡(例えば、Leica DM2000LED顕微鏡)を使用して測定することができる。液滴の凝集物が観察される場合、これらの液滴は、均一に分布していない。
【0036】
水相は、1種又は複数の水溶性添加物をさらに含み得る。前記1種又は複数の添加物は、特に緩衝剤、pH調整剤、抗酸化剤、張性/浸透圧性調節剤、密度調節剤及び/又は安定剤であり得る。前記添加物は、特に体内で治療効果を有しない。好ましくは、水相は、緩衝剤、より好ましくはトロメタミンを含む。好ましくは、水相は、安定剤、より好ましくはエデト酸カルシウム二ナトリウムを含む。好ましくは、水相のpHは、好ましくは、塩酸又は水酸化ナトリウムで6.0~7.2のpHに調節される。
【0037】
本明細書で提供する塞栓形成エマルジョンは、上述したものなどのさらなる添加物を含み得る一方、これは、好ましくは、任意のさらなる「活性」成分を含まない。「活性成分」とは、本明細書では、体内で治療活性を有する構成要素を意味する。
【0038】
好ましくは、塞栓形成エマルジョン中に存在しない活性成分の第1の例は、化学療法の抗癌剤である。実際に、エマルジョンは、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置で使用されるため、このような薬剤の存在は、都合が悪い。このような化学療法の抗癌剤の非限定的な例は、アントラサイクリン、マイトマイシンC、白金錯体、放射性元素、アルキル化/アミンメチル化剤、有糸分裂阻害剤/チューブリン阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ピリミジンアンタゴニスト、グアニジンアンタゴニスト、葉酸アンタゴニストなどを含む。より具体的には、本エマルジョンから除外される化学療法の抗癌剤は、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ネモルビシン、ミトキサントロン、ピラルビシン、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ロバプラチン、シクロホスホナミド、マイトマイシンC、ホテムスチン、イリノテカン、ミトキサントロン、エベロリムス、ソラフェニブ、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、ゲムシタビン、カルムスチン、ダカバジン、エトポシド、ビノレルビン、トポテカン、エストラムスチン及び任意のこれらの組合せである。
【0039】
このように、塞栓形成エマルジョンは、好ましくは、化学療法の抗癌剤を含まない。より好ましくは、塞栓形成エマルジョンは、上記で列挙した化学療法の抗癌剤のいずれも含まない。
【0040】
好ましくは、塞栓形成エマルジョン中に存在しない活性成分のさらなる例は、ナノ粒子又はポリマー粒子、より好ましくは塞栓性粒子である。実際に、ナノ粒子又はポリマー粒子は、代替の塞栓形成剤として使用され得る一方、これらは、本発明に関連して望ましくない。特に、非再吸収性ナノ粒子又はポリマー粒子は、持続性の閉塞をもたらし、これは、虚血を引き起こし得る。再吸収性ナノ粒子又はポリマー粒子は、それらの部分的分解及び粒子又はフラグメントの遠位迷入の結果として炎症及び/又は血栓形成をもたらし得る。このように、それらは、本発明に関連して望ましくない。用語「ナノ粒子」は、本明細書で使用するように、約1nm~約500nmの平均直径を有する固体粒子を指す。より具体的には、塞栓形成エマルジョンは、ポリエステルをベースとするナノ粒子(例えば、ポリ酢酸ポリラクチドをベースとするナノ粒子、ポリグリコール酸(ポリグリコリド)、ラクチド-グリコリドコポリマー、ラクチド-グリコリド-co-ポリエチレングリコールのコポリマー、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリブチルアセトン、ポリバレロラクトン、ポリリンゴ酸、ポリラクトン)を含まない。用語「ポリマー粒子」は、本明細書で使用するように、1つ又は複数のタイプのポリマー(例えば、ポリエステル(例えば、ポリ[ヒドロキシ酸]、ポリ[環状エステル]など)、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリシアノアクリレート(例えば、ポリアルキルシアノアクリレート又は「PACA」)及びポリホスファジン)を含む粒子を指す。ポリマー粒子は、ナノ粒子であり得る。
【0041】
用語「塞栓性粒子」は、非腸内体液、通常、血液への適用によって塞栓又は遮断を形成する任意の固体又は非溶解物質を指す。塞栓性粒子は、より具体的には、ナノ粒子及び/又は塞栓性粒子を含み得る。粒子は、回転楕円体若しくは長楕円形であり得るか、又は不規則な幾可学的形状を有し得る。対照的に、本明細書で提供する塞栓形成エマルジョンは、液体物質(例えば、ヨウ素化油及び水溶性造影剤を含む水相)から構成される。
【0042】
このように、塞栓形成エマルジョンは、好ましくは、ナノ粒子又はポリマー粒子も含まない。さらにより好ましくは、組成物は、塞栓性粒子を含まない。
【0043】
用語「筋骨格障害」又は「MSD」は、本明細書で使用するように、対象の筋骨格系(例えば、筋肉、靭帯、腱、軟骨組織、滑液包、関節又は骨)の機能が障害される任意の疾患又は状態を指す。MSDは、局所性又は全身性障害であり得;これは、急性又は慢性、より好ましくは慢性であり得る。慢性MSDの場合、これらは、連続的に存在するか又は散発的に再発し得る(例えば、紅斑)。MSDは、行動要因、環境要因、外傷性要因、免疫学的因子、変性因子及び/若しくは遺伝因子に起因するものであり得、且つ/又は全身性疾患に関連し得る。一例として、MSDは、例えば、職場において又はスポーツに関連して行われる反復運動又は激しい活動に少なくとも部分的に起因し得る。このように、一態様では、MSDは、スポーツ傷害である。MSDは、筋挫傷、捻挫、骨折、ねじれ、断裂、炎症性リウマチ様疾患、腱付着部症並びに腱障害(例えば、腱炎及び腱鞘炎)を含む。MSDは、特に肘、膝、手首、肩、股関節、踵、足首、母指又は脊椎(より具体的には頚椎、脊柱又は腰仙椎)に影響し得る。
【0044】
用語「炎症性リウマチ様疾患」又は「炎症性リウマチ性疾患」は、特に関節において急性又は慢性炎症を生じさせる疾患を指すが、他の組織、例えば筋肉又は結合組織にも影響し得る。炎症は、局在性及び/又は全身性であり得、多くの場合、自己免疫障害の結果として生じる。非限定的な例として、炎症性リウマチ様疾患は、変形性関節症(例えば、変形性膝関節症又は変形性股関節症)、頚部脊椎症、関節リウマチ(RA)、急性結晶関節炎(例えば、痛風)、脊椎関節症(強直性脊椎炎(AS)及び乾癬性関節炎(PsA))、シェーグレン症候群、強皮症、感染性関節炎、足底筋膜炎、若年性特発性関節炎、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症、狼瘡並びに血管炎を含む。
【0045】
用語「腱付着部症」は、骨への腱又は靭帯の付着が関与する障害を指す。腱付着部症は、特にアキレス腱付着部症、上顆炎、強直性脊椎炎、足底腱膜炎、肩回旋筋腱板症候群及び同類の障害、肘領域の腱付着部症、手首及び手根の腱付着部症、肘頭部滑液包炎、膝蓋前滑液包炎、手又は手首の滑液包炎、股関節領域の腱付着部症、股関節滑液包炎(例えば、転子滑液包炎、腸腰筋滑液包炎)、膝の腱付着部症、足首の腱付着部症、足根の腱付着部症並びに踵骨の腱付着部症(例えば、下方踵骨滑液包炎)を含む。
【0046】
用語「腱障害」は、腱の障害又は傷害を指す。腱障害は、特に肩腱炎、石灰沈着性腱炎(回旋筋腱板腱炎)、アキレス腱炎、二頭筋腱炎、大腿四頭筋腱症、外側上顆炎(テニス肘)、内側上顆炎(ゴルファー肘)、ドケルバン腱鞘炎、狭窄性腱鞘炎(ばね指/母指)、手首の腱鞘炎及び膝蓋骨腱障害を含む。
【0047】
さらなる例として、MSDは、首の緊張、骨粗鬆症、ベーカー嚢胞、癒着性関節包炎(五十肩)、手根管症候群、足根管症候群、橈骨神経管症候群、手腕振動症候群、膝半月板傷害、変性円板疾患、ぎっくり腰/椎間板ヘルニア、指神経炎、胸郭出口圧迫症候群、デュピュイトラン拘縮、種子骨炎、ライム病なども含む。
【0048】
好ましくは、MSD障害は、肘、膝、手首、肩、股関節、踵、足首、母指及び/又は脊椎に影響する。前記MSDが脊椎に影響するとき、これは、より好ましくは、頚椎、脊柱又は腰仙椎に影響する。
【0049】
好ましくは、MSDは、腱付着部症、腱障害、炎症性リウマチ様疾患及び手根管症候群から選択される。より好ましくは、MSDは、
- アキレス腱付着部症、上顆炎、強直性脊椎炎、足底腱膜炎、肩回旋筋腱板症候群、肘領域の腱付着部症、手首及び/又は手根の腱付着部症、肘頭部滑液包炎、膝蓋前滑液包炎、手又は手首の滑液包炎、股関節領域の腱付着部症、股関節滑液包炎、膝の腱付着部症、足首の腱付着部症、足根の腱付着部症並びに踵骨の腱付着部症から選択される腱付着部症、
- 肩腱炎、石灰沈着性腱炎、アキレス腱炎、二頭筋腱炎、大腿四頭筋腱症、外側上顆炎、内側上顆炎、ドケルバン腱鞘炎、狭窄性腱鞘炎、手首の腱鞘炎、膝蓋骨腱障害から選択される腱障害、又は
- 変形性関節症、頚部脊椎症、関節リウマチ(RA)、急性結晶関節炎、脊椎関節症、乾癬性関節炎)、シェーグレン症候群、強皮症、感染性関節炎、足底筋膜炎、若年性特発性関節炎、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症、狼瘡、血管炎から選択される炎症性リウマチ様疾患
である。
【0050】
さらにより好ましくは、MSDは、テニス肘、癒着性関節包炎、変形性関節症、症候群又はアキレス腱炎から選択される。
【0051】
MSDは、1つ又は複数の処置(例えば、一次処置、例えば薬理学的処置、例えば経口鎮痛剤、抗炎症性薬物適用、コルチコステロイド注射又は理学療法)に対して耐性であり得る。処置に対して「耐性」であるMSDは、最大推奨投与量、期間及び/又は頻度での処置により、処置に応答せず、且つ/又はかなりの応答(例えば、部分的及び/若しくは完全な応答)を生じさせる能力の低減を有する。耐性は、特に慢性MSDが連続的処置を必要とするときに獲得され得る(すなわち、これは、長期にわたって発生する)。特定の例として、疼痛は、耐えられない副作用をもたらすオピエート治療のレベルで不適当な鎮痛が達成されるとき、オピエート耐性である。場合により、MSDは、難治性である。用語「難治性」は、本明細書で使用するように、少なくとも2つの(上述したものなどの)異なる薬理学的療法に応答しないMSDを指す。前記少なくとも2つの異なる治療は、好ましくは、作用の異なる機序を有する。
【0052】
好ましくは、MSDは、経口鎮痛剤、抗炎症性薬物適用、理学療法及び/又はコルチコステロイド注射による処置に対して耐性又は難治性である。
【0053】
本発明のさらなる態様は、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置で使用するための、本明細書で提供するような塞栓形成エマルジョンに関し、前記処置は、罹患組織に血液を供給する少なくとも1つの標的動脈に塞栓形成エマルジョンを投与することを含む。本発明の塞栓形成エマルジョンは、一時的な塞栓の形成をもたらす。好ましくは、標的動脈の塞栓術は、24時間未満持続する。より好ましくは、標的動脈の塞栓術は、6~12時間持続する。
【0054】
用語「炎症性過剰血管形成」は、本明細書で使用するように、血管の数又は集中度の増加を指し、これは、炎症と関連する。これは、de novoでの血管の形成(すなわち血管新生)、現存する血管からの新規な血管の形成(例えば、後毛細管細静脈からの新規な毛細血管の成長)及び/又は現存する動脈血管の直径の増加(すなわち動脈形成)が関与し得る。
【0055】
本発明は、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成を処置するための医薬の製造のための、本明細書で提供するような塞栓形成エマルジョンの使用も含む。
【0056】
本発明は、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置における、本明細書で提供するような塞栓形成エマルジョンの使用も含む。
【0057】
筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置を、それを必要とする対象において行う方法が本明細書でさらに提供される。より具体的には、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置を、それを必要とする対象において行う方法は、治療的有効量の本明細書で提供するような塞栓形成エマルジョンの投与を含む。
【0058】
用語「処置」は、本明細書で使用するように、MSDの症状(すなわち炎症性過剰血管形成と関連する)の軽減又は前記症状のさらなる進行若しくは悪化の阻害を指す。用語「処置」は、本明細書で使用するように、症状の出現の遅延、出現による症状の重症度における低減又は疾患エピソードの頻度における低減も指し得る。同様に、塞栓形成エマルジョンに関連して本明細書で使用するような用語「有効量」又は塞栓形成エマルジョンの「治療的有効量」は、MSDと関連する症状を全体的若しくは部分的に軽減するか、又はそれらの症状のさらなる進行若しくは悪化を停止若しくは減速させる薬剤の量を指す。特に、「有効量」は、望ましい治療結果の達成において有効である量を指す。治療的有効量は、特に1回又は複数回の投与で投与され得、特に、各投与は、罹患部位内又は異なる罹患部位(例えば、全身性変形性関節症の場合には異なる関節)において異なる部分で起こる。特に、治療的有効量の塞栓形成エマルジョンは、所与の期間にわたって且つ/又は異なる動脈(例えば、同じ関節における若しくは異なる関節中にある)に1回、2回、3回又はそれより多い注射で投与される。治療的有効量は、本発明の化合物の毒性効果又は有害効果より治療的に有益な効果がまさるものでもある。
【0059】
「対象」は、任意の哺乳動物を指し、より具体的にはそれらの年齢に関わらず任意のヒト個体であり得る。具体的には、対象は、ヒトの成人又は小児であり得る。用語「成人」は、本明細書では、少なくとも16歳の個体を指す。用語「小児」は、0~1歳の幼児並びに1~8歳、8~12歳及び12~16歳の小児を含む。
【0060】
筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置を、それを必要とする対象において行う方法であって、
- ヨウ素化油と、水溶性造影剤を含む水相とを含む塞栓形成組成物を提供することと、
- 好ましくは、経カテーテル動脈塞栓術により、罹患組織に血液を供給する少なくとも1つの動脈を塞栓形成組成物で一時的に塞栓形成することと
を含み、前記炎症性過剰血管形成は、対象の1つ又は複数の組織に影響する、方法が本明細書でさらに提供される。
【0061】
さらなる態様によれば、本発明は、本明細書で提供するようなヨウ素化油及び水溶性造影剤を含むキット並びに本明細書に記載されている免疫原性又は免疫治療組成物を対象に投与するための説明書に関する。水溶性造影剤は、凍結乾燥した形態又は水相中において提供され得る。ヨウ素化油及び水溶性造影剤は、別々の容器で提供され得る。この場合、塞栓形成エマルジョンは、投与前にヨウ素化油と、水溶性造影剤を含む水相とを混合することによって調製され得る。代わりに、ヨウ素化油及び水相は、同じ容器で提供され得る(例えば、直接投与し得るエマルジョンとして)。この場合、エマルジョンは、安定化剤をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】変形性関節症のブタモデル。(A、B)過剰血管形成(矢印)及び早期の静脈還流()を示す、アルコール注射の7日後の肩の代表的な血管造影。(C、D)持続的な過剰血管形成(矢印)を示す、アルコール注射の20日後の未処置の肩の血管造影の例。
図2】変形性関節症のブタモデルにおける塞栓形成エマルジョンの効果。過剰血管形成の徴候を示さない、ベースライン(A)、及びLipiodol(登録商標)エマルジョンによる塞栓術後(B)の血管造影の代表的な比較。
図3】塞栓形成エマルジョンで処置された肢と比較した、未処置の(対照)肢の組織学的染色。(A)未処置の皮膚、(B)処置された皮膚、(C)未処置の腱、(D)処置された腱。
図4】Lipiodol(登録商標)/イオベルソールエマルジョンによる塞栓術の持続性の例示。(A)左肩へのLUF/Optiray(登録商標)の投与によるブタ#1について長期にわたり行われた例示的な血管造影。(B)左腎臓の下極動脈へのLUF/Optiray(登録商標)の投与によるブタ#2について長期にわたり行われた例示的な血管造影。
図5】臨床治験における関節塞栓術の効果。変形性膝関節症を有する6人の患者で長期にわたり(A)疼痛、及び(B)機能障害を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0063】
下記の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。下記の実施例及び添付図面に記載するか又は示す全ての主題は、例示として解釈され、したがって限定する意味で解釈されない。下記の実施例は、当業者が決定し得る任意の代替形態、均等物及び修正形態を含む。
【実施例
【0064】
1.材料及び方法
1.1 変形性関節症モデル
17~25kgの体重の4匹のミニブタを、環境的に制御された動物研究施設の別々のケージにおいて保持した。食物及び水を自由に与えた。
【0065】
全ての手順は、ケタミン(50mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)IMの混合物による全身麻酔下で行った。ミニブタは、酸素を濃縮した室内空気を使用して毎分20回の呼吸の速度及び45~50mlの1回換気量でマスクを通して呼吸した。
【0066】
1.1.1 塞栓形成エマルジョンの調製
Lipiodol(登録商標)エマルジョンは、3ccのイオベルソール造影剤(Optiray(登録商標)240、Guerbet、France)及び9ccのLipiodol(登録商標)(Guerbet、France)を使用して、2つの20mlのシリンジを、三方コックを通した反復した往復のポンピングすることによって配合した。
【0067】
1.1.2 変形性関節症ブタモデル
標準的な18Gカテーテル(Angiocath、BD medical、Utah、USA)を使用した蛍光透視法下で右肩上部及び両側の膝下部の直接穿刺を行った。右肩及び両方の膝関節で5mlの純粋なエタノール(100%)の注射を行い、慢性炎症を誘発した。左肩関節を対照として使用した。
【0068】
モデルを生じさせた7日後、超音波ガイダンス下での右大腿動脈の穿刺、それに続く4つの関節における過剰血管形成の存在を評価するために、4Fr Cobraカテーテル(テルモ、東京、日本)を使用した両側の鎖骨下動脈及び大腿動脈の選択的血管造影を行った。
【0069】
右鎖骨下動脈の選択的カテーテル法後、2.7Frマイクロカテーテル(Progreat(登録商標)、テルモ、東京、日本)を使用して供給血管過多部位の超選択的カテーテル法を行った。完全な塞栓術は、うっ滞までLipiodol(登録商標)エマルジョンの注射によって得られた(選択的塞栓術;右肩)。さらに、右大腿動脈のカテーテル法を行い、Cobraカテーテルから非選択的(「シャワー」)塞栓術を行った(非選択的塞栓術;右膝)。塞栓術後、血管造影コントロールを行い、即時の技術的成功を評価した。
【0070】
塞栓術は、左膝では行わなかった(モデルについての陽性対照)。止血は、穿刺部分の用手圧迫によって得て、動物を覚醒させた。
【0071】
塞栓術の14日後、鎖骨下動脈及び大腿動脈で選択的コントロール血管造影を行い、左総大腿アプローチによって経過観察における親血管の開通性を評価した。その後、ミニブタを屠殺した。
【0072】
1.1.3 組織学的評価
屠殺の直後に腱付着部及び腱試料を4つの関節から得て、組織分析のために10%ホルムアルデヒド中で固定した。試料を標準的な手順によって処理し、パラフィンに包埋し、薄片を作った。具体的には、各薄片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。独立した病理学者が試料を分析し、病変を特性決定した。病理学者は、ミニブタが受けた処置に対して盲検化された。
【0073】
1.1.4 研究のエンドポイント
亜急性炎症性疾患の組織学的徴候と関連する過剰血管形成の存在により、動物モデルを生じさせたことが成功したことを確認した。
【0074】
一次有効性エンドポイントは、塞栓術の直後の血管造影における炎症性過剰血管形成の消失を伴う標的血管の塞栓術の成功であった。
【0075】
下記の判定基準の全てが観察されたとき、一次安全性エンドポイントが満たされた:塞栓術の14日後の血管造影コントロールにおける親血管の開通性、非標的塞栓術が存在しないこと並びに関節及び皮膚壊死が存在しないこと。
【0076】
1.1.5 統計
全てのデータは、SPSS20.0(SPSS Inc.、Chicago、IL、USA)によって分析した。カテゴリー変数は、絶対値及び百分率として表し、カイ二乗検定と比較した。数値変数は、平均値±標準偏差として表し、対応スチューデントt検定と比較した。p<0.05(両側)は、全ての分析で統計的に有意であると考えられた。
【0077】
1.2 Lipiodol(登録商標)/イオベルソールエマルジョンの特徴の評価
2匹の45kgの健康なブタを麻酔し、フルオロスコープを使用して介入処置によって動脈内に注射した。塞栓術の介入処置は、画像ガイダンス(この場合にはフルオロスコープの使用を伴うX線)下で行われる低侵襲手技であり、カテーテルは、塞栓形成生成物の投与のために使用される。
【0078】
2つの異なる生成物について安定性を評価した:
1.イミペネム/シラスタチン、Mylan(IPM/CS)
懸濁液を調製するために、500mgのIPM/CS粉末を10mlのイオベルソール造影剤(Optiray(登録商標)300、Guerbet)に懸濁させた。懸濁液を10mLのシリンジ中に入れ、三方コックを通して3mLのシリンジに分けた。懸濁液を20回ポンピングし、均一な懸濁液を得た。
2.本明細書で「LUF/Optiray(登録商標)」とも称される、3:1の比(3容のLipiodol(登録商標)対1容の造影剤イオベルソール(Optiray(登録商標)300))を伴うLipiodol(登録商標)Ultra Fluid(LUF)をベースとするエマルジョン。6mLのLipiodol(登録商標)を、三方コックで2mLのOptiray(登録商標)300(Guerbet)を従前に充填された3mLのシリンジに分かれる10mLのシリンジ中に入れた。溶液を20回ポンピングし(Optiray(登録商標)をLipiodol(登録商標)中に押し出すことによって開始)、均一で安定なエマルジョンを得た。
【0079】
均一性/安定性は、長期にわたる目視検査によって評価した。
【0080】
塞栓術の持続性は、LUF/Optiray(登録商標)エマルジョンでさらに評価した。LUF/Optiray(登録商標)を、下記の表に詳述するように異なる標的動脈に注射した。
【0081】
【表3】
【0082】
LUF/Optiray(登録商標)による塞栓術前に、塞栓術の標的部位の血管造影を、自動注射器を使用して行い、注射部位をマッピングし、下記のプロトコルを使用して標的血管を選択した:流量:4mL/s、8mLのXenetix(登録商標)300(イオビトリドール、300mgヨウ素/mL;Guerbet)を注射。
【0083】
次いで、塞栓術を下記のように行った:
- 選択した部位の血管造影を、注射毎に概ね1mLのXenetix(登録商標)300(Guerbet)による塞栓術前に行った。この画像は、塞栓形成生成物の下流投与後の塞栓形成された血管の再透過性付与の程度を決定することを可能にした。
- 生成物(上記のように調製)を、各塞栓術について概ね1.5mLに対応する選択した部位が完全に充填されるまで注射した。注射は、2.4Fr DraKon(商標)マイクロカテーテル(Guerbet)で行った。
- 概ね1mLのXenetix(登録商標)300によって生成物の投与の1分、2分、3分、4分、5分、6分、8分、10分、15分及び20分後に血管造影を行った。
- 全ての塞栓術手順の終わりの1時間後にCTスキャンを行い、注射の標的部位における塞栓術の持続性を検出及び評価した。
【0084】
LUF/Optiray(登録商標)からもたらされる塞栓術の持続性を、血管造影によって長期にわたり(すなわち上記のように1~20分)観察した動態を比較することによって決定した。
【0085】
1.3 ヒトにおけるLipiodol(登録商標)/イオベルソール塞栓形成エマルジョンの臨床的評価
1.3.1 変形性膝関節症
患者は、有痛性の変形性膝関節症のために診療所に来院し、第1相シングルアーム非盲検臨床治験(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04733092)への組み入れが考慮された。組み入れ判定基準は、
・American College of Rheumatology(ACR)分類による変形性膝関節症並びにKellgren及びLawrenceの分類によるスコア≧2によって定義される標的関節の一次性炎症性変形性膝関節症の診断、
・手術に適していない患者(又は手術を拒否)、
・少なくとも3カ月間の鎮痛処置にも関わらず視覚的アナログスケール(VAS)疼痛≧40mm、
・NSAID及び/又はトラマドール及び/又はアセトアミノフェンによる処置の失敗若しくは不耐性及び/又は強力なオピオイド薬物適用(モルヒネ、コデイン)の失敗若しくは不耐性又は患者の拒否、及び
・コルチコステロイド浸潤の失敗又は患者の拒否
を含んだ。
【0086】
6人の患者が治験に含まれた。膝関節を3:1v/vのLipiodol(登録商標)/イオベルソールエマルジョンで塞栓形成し、経過観察で臨床検査を行った。疼痛を0~100mmの視覚的アナログスケール(VAS)でアセスメントしたが、100mmは、予想される最悪の疼痛である。疼痛は、塞栓術前のベースラインの百分率として表す。機能障害は、0~96のスケールのWestern Ontario and McMaster Universities関節炎インデックス(WOMAC)の質問表によってアセスメントした(McConnell et al.,2001を参照されたい)。より高いスコアは、より悪い機能を示す。機能障害は、ベースラインWOMACスコアの百分率として表す。
【0087】
1.3.2. 五十肩
最初の前臨床(ブタ研究)及び臨床(変形性膝関節症)安全性結果に基づいて、五十肩を呈する1人の患者は、関節を3:1v/vのLipiodol(登録商標)/イオベルソールエマルジョンで塞栓形成することによって処置された。
【0088】
2.結果
2.1 ミニブタにおける変形性関節症モデル
下記の表2に例示するように、変形性関節症モデルは、全ての動物で成功裏に誘発された。実際に、アルコール注射に供した全ての関節は、ベースライン血管造影で過剰血管形成及び注射の7日後に関節の亜急性炎症性疾患の組織学的徴候を示した(12/12の関節、100%)。具体的には、組織学的試料は、アルコール注射後に全ての関節で慢性虚血の徴候を示した。過剰血管形成又は慢性炎症の徴候は、陰性対照関節で観察されなかった(4/4の関節、100%)。
【0089】
【表4】
【0090】
過剰血管形成の即時の消失を伴うLipiodol(登録商標)エマルジョンを使用した塞栓術の成功は、全ての処置された関節で得られた(8/8、100%;表3を参照されたい)。1匹のミニブタは、塞栓術と関連していないマイコプラズマ肺炎により、コントロール血管造影前に、塞栓術の3日後に死亡した。
【0091】
塞栓術の14日後に行われた血管造影コントロールでは、標的血管の開通性が全ての場合で観察された(表3を参照されたい)。過剰血管形成の低減は、5/6の関節(83.3%)でも観察され、4/6の関節(66.7%)で部分的低減が観察され、1つの関節(1/6、16.7%)で完全な消失が観察された。
【0092】
【表5】
【0093】
発疹によって特性決定される虚血の一過性皮膚徴候は、非選択的塞栓術で処置された4つの関節の全て(4/4、100%)で観察された。これらの徴候は、全ての場合に塞栓術の数日後に消失した。ブタは、毎日の通常の行動で疼痛又は悪化の臨床徴候を示さなかった。塞栓術で処置した関節で虚血の徴候が観察されなかった(8/8、100%)。塞栓術の14日後に行われた組織学的分析では、皮膚又は滑膜壊死の徴候が観察されなかった(表3を参照されたい)。
【0094】
2.2 イミペネム/シラスタチンと比較したLipiodol(登録商標)/イオベルソールエマルジョンの安定性の比較
IPM/CS懸濁液は、調製後均一である。調製の5分後、IPM/CS粉末は、沈殿する傾向にあり、相分離を示す。このように、IPM/CSは、長期にわたり安定ではない。対照的に、LUF/Optiray(登録商標)エマルジョンは、調製後に安定及び均一であり、実験全体中に相分離を示さない。安定なエマルジョンは、より高い治療有効性を伴う標的部位における生成物の均一な分布を保証する。
【0095】
2.3 Lipiodol(登録商標)/イオベルソールエマルジョンによる塞栓術の持続性の評価
2.3.1 生成物の放射線不透過性
LUF/Optiray(登録商標)エマルジョンは、Lipiodol(登録商標)の放射線不透過性のため、注射中に蛍光透視イメージングによって検出可能である。投与後、Lipiodol(登録商標)の放射線不透過性は、血管中で持続し、投与の8分後まで検出された。
【0096】
2.2.3 塞栓特性
LUF/Optiray(登録商標)エマルジョンが注射された標的動脈は、生成物投与の8分後に完全に再透過性付与されたが、塞栓術は、成功し、一過性であることを示す。さらに、塞栓術は、再現性があり、予測可能であった。実際に、図4に例示するように、Xenetix(登録商標)300は、評価した全ての動脈ネットワークにおいて、生成物投与の8分後、2匹の異なる動物における2つの異なる標的動脈を完全に再透過性付与した。
【0097】
2.4 ヒトにおける臨床的評価
2.4.1. 変形性膝関節症
最新の利用可能な経過観察における臨床結果を図5に提供し、下記の表4に要約する。
【0098】
【表6】
【0099】
6/6の患者は、VASスケール上で報告されるように疼痛の低減を示し、5/6の患者は、WOMACスケール上で決定するような機能障害の低減を報告した。自己申告するとき、5/6の患者は、さらに明らかな改善を報告したが、2/6の患者は、身体的活動を取り戻すことができたことを示した。
【0100】
塞栓術の過程では、患者1は、紅斑を2日間及び関節周囲の浮腫が4日間発生したが、これらの両方は、軽度のものであり、処置の開始を必要としなかった。患者2は、軽度の紅斑が発生したが、これは、処置を必要とせず、4時間以内に解決した。患者管理は、塞栓術中に膝上にアイスパックを当てることによってわずかに変更された。この変更により、紅斑又は浮腫は、それ以来記述されなかった。
【0101】
6人の患者のいずれも合併症/毒性の他の徴候を発症しなかった。
【0102】
2.4.2. 五十肩
塞栓術の6カ月後、五十肩を呈している患者の臨床検査は、外旋の20°の改善及び疼痛の非常に著しい改善を伴って肩の可動性における軽度の改善を示した(オピエートによる鎮痛処置における50%超の低減を伴う)。
【0103】
3.結論
変形性関節症ブタモデルを使用したそれらの研究において、本発明者らは、驚くべきことに、筋骨格障害と関連する炎症性過剰血管形成の処置における、本発明によるエマルジョンの有効性を示した。特に、エマルジョンは、全ての塞栓形成された関節における過剰血管形成の即時の消失によって確認されるように、血管過多部位を成功裏に塞栓形成した。さらに、過剰血管形成は、選択的又は非選択的アプローチが塞栓術のために使用されたかに関わらず、成功裏に処置された。重要なことに、全ての関節で観察される血管造影コントロールでは、ドナー動脈の開通性を伴って手順が安全であった。非標的塞栓術は、選択的アプローチで観察されなかった。非選択的塞栓術が行われたとき、手術前後の期間中に一過性皮膚虚血が観察された一方、これは、14日における組織学的エビデンス及び疼痛/不快感の臨床的徴候を伴わずに手順の数日後に消失した。
【0104】
本発明者らは、本発明のエマルジョンによって誘発される一過性の塞栓術が、再現性があり、したがって予測可能であることも示した。
【0105】
ヒトにおける臨床治験により、炎症性過剰血管形成の処置における、本発明によるエマルジョンの有効性がさらに確認された。実際に、エマルジョンによる塞栓術に続いて、変形性膝関節症を有する5/6の患者は、最新の利用可能な経過観察で疼痛の低減及び関節の機能性の改善を報告したが、2/6のみの患者が軽微な副作用を報告した。本明細書で提供するエマルジョンの驚くべき効果は、五十肩を有するさらなる患者でさらに確認された。
【0106】
参考文献
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図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5
【国際調査報告】