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特表2024-501200シルセスキオキサン樹脂、及びこれを含む耐指紋特性の反射防止組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】シルセスキオキサン樹脂、及びこれを含む耐指紋特性の反射防止組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20231228BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20231228BHJP
   C08G 77/24 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G02B1/111
C08L83/04
C08G77/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535807
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 KR2021017975
(87)【国際公開番号】W WO2022145754
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189890
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】イム ヘリャン
(72)【発明者】
【氏名】ナム ドンジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ スンソク
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンモ
(72)【発明者】
【氏名】オ ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ハンビン
【テーマコード(参考)】
2K009
4J002
4J246
【Fターム(参考)】
2K009AA04
2K009CC42
2K009EE05
4J002CP051
4J002CP061
4J002CP081
4J002CP091
4J002CP101
4J002CP141
4J002CP161
4J002DK006
4J002EA017
4J002EA027
4J002EA057
4J002EA067
4J002EB027
4J002EB106
4J002EB127
4J002EC027
4J002EC047
4J002ED027
4J002ED047
4J002EE036
4J002EE037
4J002EJ027
4J002EK016
4J002EK036
4J002EK056
4J002EN027
4J002EN067
4J002EP017
4J002EQ016
4J002ER007
4J002ES007
4J002EU027
4J002EU046
4J002EU047
4J002EV046
4J002EV086
4J002EV207
4J002EV256
4J002EV296
4J002EW006
4J002EW146
4J002EW176
4J002EY016
4J002EZ006
4J002FD027
4J002FD146
4J002GH00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
4J246AA03
4J246AA19
4J246AB11
4J246BA140
4J246BA14X
4J246BB020
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA240
4J246CA249
4J246CA24X
4J246CA460
4J246CA469
4J246CA46X
4J246CA650
4J246CA659
4J246CA65X
4J246FA131
4J246FA151
4J246FA321
4J246FA441
4J246FB051
4J246FE22
4J246FE26
4J246FE27
4J246GB11
4J246GC03
4J246GC09
4J246GC49
4J246GD08
4J246HA22
(57)【要約】
本発明は、特定の化学構造単位及びフルオロアルキル基を含むシルセスキオキサン樹脂を含む組成物、及びこれを硬化した硬化物に関し、より具体的には、光反射防止及び撥水特性に優れた硬化物を製造することが可能な組成物、及びこれを硬化した硬化物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1~化学式3の構造単位を含む、シルセスキオキサン樹脂。
[化学式1]

[化学式2]

[化学式3]

(前記化学式1~化学式3中、Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリール基、炭素数1~30の含フッ素有機基、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基またはチオール基であり、Rのうちの少なくとも1つは、炭素数1~30の含フッ素有機基であり、
は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基である。)
【請求項2】
前記炭素数1~30の含フッ素有機基が炭素数3~15のフルオロアルキル基である、請求項1に記載のシルセスキオキサン樹脂。
【請求項3】
前記化学式1~化学式3の構造単位をそれぞれ独立して1~100,000個ずつ含む、請求項1に記載のシルセスキオキサン樹脂。
【請求項4】
前記化学式1の構造単位数と前記化学式3の構造単位数との和が前記化学式2の構造単位数の1~50倍で含まれている、請求項1に記載のシルセスキオキサン樹脂。
【請求項5】
前記化学式1の構造単位数と前記化学式3の構造単位数との比が20:1~1:20である、請求項1に記載のシルセスキオキサン樹脂。
【請求項6】
下記化学式4の構造を有する、請求項1に記載のシルセスキオキサン樹脂。
[化学式4]

(前記化学式4中、
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリール基、炭素数1~30の含フッ素有機基、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基またはチオール基であり、Rのうちの少なくとも1つは、炭素数1~30の含フッ素有機基であり、
は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
前記n、m、kは、それぞれ独立して1~100,000の整数である。)
【請求項7】
前記化学式4の構造におけるR全体の50~90モル%が含フッ素有機基である、請求項6に記載のシルセスキオキサン樹脂。
【請求項8】
前記化学式4のRにおける10~30モル%は、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基及びチオール基の中から選択される1種以上である、請求項6に記載のシルセスキオキサン樹脂。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のシルセスキオキサン樹脂と、
開始剤と、
溶媒と、を含む、組成物。
【請求項10】
前記シルセスキオキサン樹脂100重量部に対して、前記開始剤が0.1~10重量部で含まれた、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記溶媒がフッ素系溶媒を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
請求項9に記載の組成物を硬化した硬化物。
【請求項13】
屈折率が1.20~1.45である、請求項12に記載の硬化物。
【請求項14】
30~250nmの厚さを有する、請求項12に記載の硬化物。
【請求項15】
請求項12に記載の硬化物が含まれたディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月31日付で出願された韓国特許出願第10-2020-0189890号に対する優先権主張出願であり、当該出願の明細書及び図面に開示された全ての内容は、引用により本出願に援用される。
【0002】
本発明は、シルセスキオキサン樹脂及びこれを含む組成物に関し、より詳細には、優れた光反射防止効果と撥水性を同時に有する組成物、及びこれを硬化した硬化物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ディスプレイ製品が大面積化へと発展するにつれて、ディスプレイ表面を保護しながらより鮮明な画像を実現することが重要になった。
【0004】
また、タッチスクリーン式のフォルダブルやローラブルなどのモバイル用小型ディスプレイを装着した電子製品の使用量が急激に増加するにつれて、ディスプレイ保護用ウィンドウカバーは、曲げ性のない強化ガラスから柔軟なプラスチックに置き換えられている。
【0005】
このように大面積ディスプレイの表面を保護するとともに、ガラスに比べて相対的に透過度が低く、鮮明な画像実現性が劣るプラスチックの欠点を補うための技術として、耐指紋、耐スクラッチ及び反射防止コーティングが重要になっている。
【0006】
従来の反射防止コーティングは、高温真空状態の乾式工程を主に採用しており、大面積コーティングが不可能であり、連続工程の困難により生産性が劣り、耐スクラッチ特性及び接着力などの物理特性が低いため、反射防止コーティング塗膜の信頼性が劣るという欠点がある。
【0007】
例えば、韓国公開特許KR2012-0139919Aでは、基材上に高屈折物質である二酸化チタン(TiO)または五酸化ニオブ(Nb)と、低屈折物質である二酸化ケイ素(SiO)とを交互に蒸着させて反射防止多層膜を形成した。しかしながら、このような真空蒸着を用いた乾式コーティングの場合、大面積コーティングが不可能であり、連続工程の困難により生産性が劣るという欠点がある。
【0008】
また、従来技術は、韓国特許KR1395681B1のように、基材上に反射防止コーティング層とは別に撥水機能を有するコーティング層を積層することにより、反射防止機能と撥水機能を個別のコーティング層を介して実現した。しかしながら、このような場合、それぞれのコーティング層を硬化させた後に積層する過程が必要であるため、湿式コーティング工程が難しく、それにより工程性及び生産性が劣るという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来技術の問題点を解決するために、本発明の目的は、連続工程及び大面積コーティングに有利な湿式コーティング工程に適用可能であって生産性に優れながらも、優れた光反射防止性及び撥水性を同時に有する硬化物の形成が可能な組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、可視光反射防止効果及び撥水特性に優れながらも屈折率が低い硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態によるシルセスキオキサン樹脂は、下記化学式1~化学式3の構造単位を含む。
[化学式1]

[化学式2]

[化学式3]
【0011】
前記化学式1~化学式3中、Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリール基、炭素数1~30の含フッ素有機基、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基またはチオール基であり、Rのうちの少なくとも1つは、炭素数1~30の含フッ素有機基であり、Rは、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基である。
本発明の他の一実施形態による組成物は、前記シルセスキオキサン樹脂、開始剤及び溶媒を含む。
本発明の別の一実施形態による硬化物は、前記組成物を硬化したものである。
本発明の別の一実施形態によるディスプレイ装置は、前記硬化物を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるシルセスキオキサン樹脂を含む組成物は、湿式工程に適用が可能であって高価な真空乾式蒸着設備が不要であり、工程性及び生産性に優れた硬化物を形成することができるだけでなく、組成物に含まれて優れた反射防止効果、撥水性、耐指紋性、耐汚染性及び耐スクラッチ性などの物理的特性を付与し、屈折率を下げるという効果がある。
【0013】
本発明による硬化物は、撥水特性、耐指紋性、耐汚染性及び耐化学性に優れるため、タッチスクリーン形態を有する電子製品の最外郭層に位置してディスプレイなどを指紋やスクラッチなどから安定的に保護するコーティング層としての役割を果たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者はその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されるべきである。
【0015】
したがって、本明細書に記載された実施例及び製造例に示されている構成は、本発明の最も好適な一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点においてこれらは置き換えられる様々な均等物や変形例があり得ることを理解すべきである。
【0016】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施し得るように本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実現でき、ここで説明する製造例及び実施例に限定されない。
【0017】
本発明の一実施形態によるシルセスキオキサン樹脂は、化学式1~化学式3の構造単位を全て含み、硬化物に適用される場合、別途の追加コーティングなしで反射防止効果と撥水特性の両方ともを付与することができるという効果がある。
[化学式1]

[化学式2]

[化学式3]
【0018】
前記化学式1~化学式3中、Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリール基、炭素数1~30の含フッ素有機基、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基またはチオール基であり、Rのうちの少なくとも1つは、炭素数1~30の含フッ素有機基であり、Rは、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基である。
前記含フッ素有機基は、例えば、フルオロアルキル基であり得る。
【0019】
前記化学式1の構造が化学式2または化学式3の構造と結合する場合、下記化学式1-1のように化学式1の構造2つが化学式2または化学式3の結合部位に一緒に結合することが好ましい。
[化学式1-1]
【0020】
前記シルセスキオキサン樹脂において、前記化学式1は、2つのSiが互いに連結されていない形態を持っており、前記構造によりシルセスキオキサン樹脂に空隙が形成されるようにし、本発明の一実施形態による組成物に含まれることにより反射防止特性を付与する。
【0021】
前記化学式2は、ORを含むことにより、前記シルセスキオキサン樹脂が本発明の一実施形態による組成物に含まれて接着性を向上させ、安定な硬化物を形成するのに寄与する。特に、前記ORは、ガラス表面のSi-OHまたはSi-Oなどと共有結合が可能であるため、前記組成物がコーティング組成物として使用される場合、コーティングの際に基材との結合及び付着力が増大する特性を付与する。
【0022】
また、前記化学式3は、本発明の一実施形態による組成物に含まれることにより、レジン特性を付与し、撥水性を付与し、且つ低屈折率を可能とする機能をする。
【0023】
また、前記シルセスキオキサン樹脂は、含フッ素有機基を含み、具体的には、前記化学式1~化学式3のR位に位置することができる。本発明による組成物が前記含フッ素有機基を含むことにより撥水特性が付与されるという効果がある。したがって、本発明によるシルセスキオキサン樹脂は、組成物に含まれる場合、反射防止効果、撥水特性、耐指紋性及び低屈折特性を付与することができる。
【0024】
前記含フッ素有機基は、具体的には、炭素数が3以上であることが好ましい。前記含フッ素有機基は、前記化学式1~化学式3の全てに含まれることができ、炭素数が3未満である場合、前記組成物の撥水性及び反射防止効果が劣るという問題が発生するおそれがあり、炭素数が15より大きい場合、含フッ素有機基の大きさが過度に大きくなって相溶性が低下することにより、前記シルセスキオキサン樹脂が含まれている組成物を硬化物の形態で製造することが難しく、硬化後にもヘイズ(Haze)が悪いという問題が発生するおそれがあり、具体的には、炭素数が12以下である場合が好ましい。
【0025】
前記シルセスキオキサン樹脂は、前記化学式1~化学式3で表されるそれぞれの構造単位がそれぞれ独立して1~100,000個ずつ含まれて共重合されたものであってもよい。前記それぞれの構造単位が1種類でも含まれていない場合には、当該構造が付与する反射防止機能、接着力向上機能、撥水性付与機能に欠けた組成物となるという問題が発生するおそれがあり、前記構造単位が前記樹脂に100,000個よりも多く含まれる場合、前記樹脂の高分子鎖が過度に長くなり、溶媒に溶解しないためコーティング組成物への適用の際に湿式コーティングが不可能になるという問題が発生するおそれがある。より具体的には、前記それぞれの構造単位は、前記樹脂に1,000~10,000個ずつ含まれることが、各構造単位が付与する特性を効果的に維持しながら、湿式コーティングにも有利な効果がある。
【0026】
前記樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、前記化学式1~化学式3の単位構造がランダムに配列されたランダム共重合体であってもよいが、共重合体の種類に限定されない。
【0027】
前記シルセスキオキサン樹脂に含まれた前記化学式1~化学式3の構造は、特定の割合で共重合された場合に、前記組成物の反射防止機能、撥水性及び付着力が極大化でき、具体的には、前記化学式1の構造単位数(以下、n)と前記化学式3の構造単位数(以下、k)との和が、前記化学式2の構造単位数(以下、m)の1~50倍、すなわち(n+k)/mが1~50の範囲となるようにそれぞれの構造単位が含まれて共重合されたものであってもよい。上記の比率範囲に比べて化学式2の構造単位比率が高い場合((n+k)/m<1)、組成物の反射防止機能及び撥水性が劣る問題が発生するおそれがあり、上記の比率に比べて化学式2の構造単位比率が低い場合((n+k)/m>1)、組成物の付着力が低下するため、コーティング層に形成するとき、コーティング層の下部の基板からコーティング層が容易に脱着してしまうという問題が発生するおそれがある。
【0028】
前記シルセスキオキサン樹脂における前記化学式1の構造単位は、前記化学式3の構造単位に比べて多いものが組成物の反射防止機能と撥水性の両方に優れることができてよい。具体的には、前記化学式1の構造単位数と前記化学式3の構造単位数との比(n:k)は、20:1~1:20であることが良い。上記の範囲に比べて化学式1の個数比率が高い場合、撥水性が低下するという問題が生じ、上記の範囲に比べて化学式3の個数比率が高い場合、反射防止特性が低下するという問題が生じるおそれがある。
前記シルセスキオキサン樹脂は、前記化学式1~化学式3の構造単位を含み、下記化学式4で表される樹脂であり得る。
[化学式4]
【0029】
前記化学式4中、Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリール基、炭素数1~30の含フッ素有機基、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基またはチオール基であり、Rのうちの少なくとも1つは、炭素数1~30の含フッ素有機基であり、Rは、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、前記n、m及びkは、それぞれ独立して1~100,000の整数である。
【0030】
前記シルセスキオキサン樹脂に含まれている含フッ素有機基は、具体的には、前記化学式4のR位に位置することができる。しかし、R位に含フッ素有機基だけでなく、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリール基、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基またはチオール基のうちの1つが位置することができ、前記シルセスキオキサン樹脂は、少なくとも1つの含フッ素有機基があれば足りない。しかし、R位に前記他の官能基に比べて含フッ素有機基の比重が高いことが、組成物に反射防止機能及び撥水性を付与するのに効果的である。具体的には、前記化学式4のRにおいて50~90モル%、より具体的には65~85モル%が含フッ素有機基である場合、組成物に含まれているときに反射防止機能と撥水性をさらに効果的に付与することができる。前記含フッ素有機基が前記Rの50モル%未満で含まれている場合、前記シルセスキオキサン樹脂が含まれている組成物の反射防止及び撥水効果が劣るおそれがあり、90モル%よりも多く含まれる場合、前記組成物の硬化が容易に進行しないという問題が発生するおそれがある。
【0031】
前記化学式4のRにおける10~30モル%は、アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基及びチオール基のうちの1つからなっているものが硬化物の効果的な硬化に役立つ。前記アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基及びチオール基のうちの1つからなっている官能基が前記Rの10モル%未満からなっている場合、硬化物の硬化がうまくなされないため、硬化物の耐久性が劣るという問題が発生するおそれがあり、30モル%よりも多く含まれる場合、相対的に含フッ素有機基の比重が減少して反射防止機能や撥水性などの特性が組成物に効果的に付与されないという問題が発生するおそれがある。
【0032】
前記化学式4のRは、0~20モル%、すなわち20モル%以下でアルキル基、シクロアルキル基及びフェニル基のうちの1つの官能基から構成できる。前記アルキル基、シクロアルキル基及びフェニル基は、前記アミノ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、チオール基及び含フッ素有機基が位置していないRに位置し、20モル%以下で含まれて他の官能基の機能が十分に発揮できるようにする役割を果たす。しかし、前記シルセスキオキサン樹脂において主な官能基ではないので、含まれなくても構わない。
【0033】
本発明の一実施形態による組成物は、バインダー樹脂である前記シルセスキオキサン樹脂が硬化して硬化物を得るために、開始剤及び溶媒を含む。前記開始剤は、前記シルセスキオキサンに含まれる化学式1~化学式3のRに種類に応じて様々な開始剤が使用できる。具体的な例として、前記Rに不飽和炭化水素が導入される場合には、ラジカル開始剤を用いることができ、前記ラジカル開始剤としては、トリクロロアセトフェノン(trichloro acetophenone)、ジエトキシアセトフェノン(diethoxy acetophenone)、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(1-phenyl-2-hydroxyl-2-methylpropane-1-one)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン(2-methyl-1-(4-methyl thiophenyl)-2-morpholinopropane-1-one)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(trimethyl benzoyl diphenylphosphine oxide)、カンファーキノン(camphor quinone)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルブチレート)、3,3-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどの光ラジカル開始剤、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルヒドロパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、N-ブチル-4,4’-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレートなどの熱ラジカル開始剤、及びこれらの様々な混合物のうちの1つが使用できるが、上記の例示に限定されない。
【0034】
また、前記Rにエポキシが含まれる場合には、具体的な例として、光重合カチオン開始剤として、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムなどのスルホニウム系、ジフェニルヨードニウムやビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムなどのヨードニウム、フェニルジアゾニウムなどのジアゾニウム、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムや1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムなどのアンモニウム、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロホスフェートヨードニウム、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヘキサフルオロホスフェートヨードニウム、ジフェニルヘキサフルオロホスフェートヨードニウム、ジフェニルトリフルオロメタンスルホネートヨードニウム、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリ-p-トイルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリ-p-トイルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート及び(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-FeなどのFeカチオンとBF 、PF 、SbF などの[BQオニウム塩の組み合わせを用いることができるが、上記の例示に限定されるものではない(ここで、Qは少なくとも2つのフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基である)。また、熱によって作用するカチオン開始剤としては、トリプル酸塩、三フッ化ホウ素エーテル錯体、三フッ化ホウ素などのカチオン系またはプロトン酸触媒、アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩などの各種オニウム塩及びメチルトリフェニルホスホニウム臭化物、エチルトリフェニルホスホニウム臭化物、フェニルトリフェニルホスホニウム臭化物などを制限なく使用することができるが、上記の例示に限定されるものではなく、これらの開始剤も種々の混合形態で添加することができ、上記に明示した様々なラジカル開始剤との混用も可能である。
【0035】
前記シルセスキオキサン樹脂100重量部に対して、前記開始剤は、0.1~5重量部で含まれることが良い。前記開始剤が0.1重量部未満で含まれる場合、硬化開始がうまく行われないため、硬化物の形成が難しいという問題が発生するおそれがあり、5重量部よりも多く含まれる場合、開始剤が過剰に含まれるため、硬化物中の開始剤成分が残留し、硬化物の物性を低下させるという問題が発生するおそれがある。
【0036】
本発明による組成物は、前記Rの種類に応じてアミン硬化剤をさらに含むことができ、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,3-ジアミノプロパン、ジプロピレントリアミン、3-(2-アミノエチル)アミノ-プロピルアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-エチレンジアミン、4,9-ジオキサドテカン-1,12-ジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アニモシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン及び1,2-ジアミノシクロヘキサンのうちの1種以上を含むことができる。
【0037】
本発明による組成物は、前記硬化作用を促進するために硬化促進剤をさらに含むことができ、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン及び2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジンなどのトリアジン系化合物、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、ビニルイミダゾール及び1-メチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノンエン-5,1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムホスフェート、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムヒドロゲンジフルオリド、及びテトラブチルホスホニウムジヒドロゲントリフルオロのうちの1種以上が使用できる。
【0038】
また、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルナド酸無水物、水素化メチルナド酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、及び無水2,4-ジエチルグルタル酸などの酸無水硬化剤類も幅広く使用できる。
【0039】
前記組成物に含まれる溶媒は、前記シルセスキオキサン樹脂及び開始剤を溶解させることができれば、種類に関係なく使用が可能である。しかし、前記溶媒にフッ素系溶媒が含まれる場合、溶媒に溶解したシルセスキオキサン樹脂の含フッ素有機基と共に、フッ素系溶媒のフッ素が組成物の反射防止特性及び撥水特性を効果的に付与するのに役立つことができる。具体的には、前記フッ素系溶媒の含有量が溶媒中の80重量%以上を占める場合、フッ素系溶媒の使用による前記有意な効果上昇が見られ、組成物が均一な硬化物を形成するのに有利である。特に、前記組成物がコーティング組成物として使用される場合、基板上に均一にコーティングでき、平らで均一なコーティング層を形成することができる。本発明による組成物に対して、前記溶媒は80~99重量%含まれてもよく、前記シルセスキオキサン樹脂は0.1~15重量%含まれてもよい。
【0040】
前記溶媒は、例えば、シルセスキオキサン樹脂を溶解させることが可能な溶媒であって、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、パーフルオロブチルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルメチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、セロソルブ系などのアルコール類、乳酸塩系、アセトン、メチル(イソブチル)エチルケトン等のケトン類、エチレングリコール等のグリコール類、テトラヒドロフラン等のフラン系、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどの極性溶媒だけでなく、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクロニトリル、塩化メチレン、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコールなどの様々な溶媒を用いることができ、単独または2種以上の溶媒が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明による組成物は、フッ素系シランをさらに含むことができる。前記フッ素系シランは、前記組成物にさらに含まれるので、硬化させたときに硬化物表面の滑り性を増大させることにより、耐指紋効果をさらに向上させるという効果があるが、含まれなくても問題がない。
【0042】
前記フッ素系シランは、例えば、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有するシラン、クロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、アルキルシラン、ジアルキルシラン、トリアルキルシラン、アルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ベンジルシラン、ジベンジルシラン、トリベンジルシラン、シクロアルキルシラン、ジシクロアルキルシラン、トリシクロアルキルシラン、クロロ-ジアルキルシラン、ジクロロ-アルキルシラン、クロロ-ジアルコキシシラン、ジクロロ-アルコキシシラン、アルキル-ジアルコキシシラン、ジアルキル-アルコキシシランの誘導体及び重合体、または1~20個の炭素を有する脂肪族鎖で部分または完全フッ素置換されたフルオロ化単量体及び化合物であって、シラン、クロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、アルキルシラン、ジアルキルシラン、トリアルキルシラン、アルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ベンジルシラン、ジベンジルシラン、トリベンジルシラン、シクロアルキルシラン、ジシクロアルキルシラン、トリシクロアルキルシラン、クロロ-ジアルキルシラン、ジクロロ-アルキルシラン、クロロ-ジアルコキシシラン、ジクロロ-アルコキシシラン、アルキル-ジアルコキシシラン、ジアルキル-アルコキシシランの誘導体及び重合体のうちの1種以上が例示される。
【0043】
本発明の一実施形態による組成物は、本発明のシルセスキオキサン樹脂を含む組成物であって、コーティング組成物、フィルム形成用組成物、射出成形用組成物、メンブレン形成用組成物などとして使用できるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の一実施形態による硬化物は、前記組成物が硬化して形成された硬化物であって、コーティング層、機能性フィルム、射出成形品、メンブレン(membrane)などであってもよいが、これらに限定されない。
【0045】
前記硬化物の屈折率は1.20~1.45であってもよく、前記硬化物に硬化する前の組成物の屈折率も、前記硬化物の屈折率と類似した1.20~1.45の低い屈折率を有することができる。
【0046】
具体的には、前記硬化物は、コーティング層であってもよく、前記組成物が基材上でコーティング層を形成して硬化したものであってもよい。前記コーティング層は、撥水性と反射防止機能を同時に持っており、従来のように撥水性と反射防止機能をそれぞれ有する2つの層を形成しなくてもよく、それによりコーティング層形成の工程性及び生産性が大きく改善されるという効果がある。
【0047】
前記硬化物がコーティング層である場合、ガラスまたはプラスチック素材と基板またはハードコート層の上にコーティングできる。前記ハードコート層の上部にコーティングされる場合、硬化物は接着性に優れた特性を有する。前記ハードコート層の上部に本発明による組成物をコーティングして厚さ30~250nmの硬化物を形成することができる。上記の厚さ範囲は、照射される光の波長に応じて調節することができ、具体的な例として可視光線波長の1/4レベルのコーティング層を形成してコーティング層において相殺干渉が起こるようにして、本発明によるコーティング層に可視光線に対する反射防止効果を付与することができるが、可視光線領域に対する反射防止効果に限定されるものではなく、紫外線、赤外線などの光に対しても適用できる。さらに、上記の厚さ範囲において、本発明によるコーティング層は、撥水特性、耐指紋特性、耐汚染特性及び耐スレッチ特性の全てに優れている。
【0048】
前記硬化物がコーティング層である場合、コーティング層を形成する過程で、本発明による組成物は、湿式コーティング方式で適用可能である。従来、真空蒸着を用いた乾式反射防止コーティングの場合、大面積コーティングが不可能であって連続工程の困難があり、これにより生産性が低下し、耐スクラッチ特性及び接着力などの物理的特性が低下するコーティング層が形成されるという問題があった。しかし、本発明による組成物は、湿式コーティングを介して大面積コーティング及び連続工程が可能であるため、コーティング層の前記優れた物理的特性と共に生産性まで向上させるという効果がある。
【0049】
本発明の一実施形態によるディスプレイ装置は、前記硬化物が含まれたディスプレイ装置であり、具体的には、前記硬化物がディスプレイ装置のコーティング層に適用できる。しかしながら、本発明の一実施形態による硬化物がディスプレイ装置に限定されて使用されるものではなく、例えば眼鏡レンズ、カメラレンズ、建築用窓、ディスプレイパネル、自動車ガラス、太陽電池などの装置または製品に適用できるのはもとより、前記装置または製品に適用されることにより、表面に反射される光を減らし、光透過率を高める効果を発揮することができる。
【0050】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎない。本発明の範囲は、下記実施例に限定されるものではない。
[製造例:シルセスキオキサン樹脂の製造]
[製造例1]
【0051】
冷却管と攪拌機を備えた乾燥フラスコに、蒸留水25.6gとメタノール100gを混合して準備し、3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート(3-(Trichlorosilyl)propyl methacrylate)52.32g(0.2mol)を10分間ゆっくりと滴加した。この時、温度は、-4℃の温度を維持した。その後、前記混合物を20分間撹拌した後、トルエン500gをさらに滴加し、温度を常温に上げてさらに10分間撹拌を行った。その後、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-トリメトキシシラン((Tridecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrooctyl)-1-Trimethoxysilane)351.21g(0.75mol)及び(3-メタクリロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン((3-methacryloxy)propylmethyl dimethoxysilane)11.78g(0.05mol)を同時に滴加し、10分間攪拌を行った。
【0052】
前記反応の進行中に、NaCO20重量%水溶液を別途製造し、当該水溶液20gを前記反応物の含まれたフラスコに一度に滴加した。その後、温度を100℃に上げて1日間縮合反応を行った。縮合反応が行われた混合物は、水とトルエンの層分離精製を2回行い、pHが中性であることを確認した後、トルエン層を分離して真空減圧でトルエンを全て除去することにより、シルセスキオキサン樹脂を得た。
[製造例2]
前記製造例1のメタノール100gをメタノール800gに変えて混合した以外は、製造例1と同様にしてシルセスキオキサン樹脂を得た。
[製造例3]
前記製造例1のメタノール100gをメタノール30gに変えて混合した以外は、製造例1と同様にしてシルセスキオキサン樹脂を得た。
[製造例4]
前記製造例1のメタノール100gをメタノール500gに変えて混合した以外は、製造例1と同様にしてシルセスキオキサン樹脂を得た。
[製造例5]
前記製造例1のメタノール100gをメタノール50gに変えて混合した以外は、製造例1と同様にしてシルセスキオキサン樹脂を得た。
[製造例6]
【0053】
3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート(3-(Trichlorosilyl)propyl methacrylate)を104.64g(0.4mol)、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-トリメトキシシラン(Tridecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrooctyl)-1-Trimethoxysilane)を187.31g(0.4mol)、及び(3-メタクリロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン(3-methacryloxy)propylmethyl dimethoxysilane)を47.l4g(0.2mol)で使用した以外は、製造例1と同様にしてシルセスキオキサン樹脂を得た。
[製造例7]
【0054】
3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート(3-(Trichlorosilyl)propyl methacrylate)を10.46g(0.04mol)、トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-トリメトキシシラン(Tridecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrooctyl)-1-Trimethoxysilane)を444.87g(0.95mol)、及び(3-メタクリロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン(3-methacryloxy)propylmethyl dimethoxysilane)2.36g(0.01mol)で使用した以外は、製造例1と同様にしてシルセスキオキサン樹脂を得た。
[製造例8]
【0055】
3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート(3-(Trichlorosilyl)propyl methacrylate)を78.48g(0.3mol)、トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-トリメトキシシラン(Tridecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrooctyl)-1-Trimethoxysilane)を280.97g(0.6mol)、及び(3-メタクリロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン(3-methacryloxy)propylmethyl dimethoxysilane)を23.57g(0.1mol)で使用した以外は、製造例1と同様にしてシルセスキオキサン樹脂を得た。
[製造例9]
【0056】
3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート(3-(Trichlorosilyl)propyl methacrylate)を26.16g(0.1mol)、トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-トリメトキシシラン(Tridecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrooctyl)-1-Trimethoxysilane)を412.09g(0.88mol)、及び(3-メタクリロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン((3-methacryloxy)propylmethyl dimethoxysilane)を4.71g(0.02mol)で使用した以外は、製造例1と同様にしてシルセスキオキサン樹脂を得た。
[比較製造例1]
【0057】
冷却管と攪拌機を備えた乾燥フラスコに、蒸留水25.6gとメタノール100gを混合して準備し、3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート52.32g(0.2mol)を10分間ゆっくりと滴加した。この時、温度は-4℃の温度を維持した。その後、前記混合物を20分間撹拌した後、トルエン500gをさらに滴加し、温度を常温に上げてさらに10分間撹拌を行った。その後、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3-Glycidoxypropyl trimethoxysilane)11.82g(0.05mol)及び(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-トリメトキシシラン(Tridecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrooctyl)-1-Trimethoxysilane)351.21g(0.75mol)を同時に滴加し、10分間撹拌を行った。
【0058】
前記反応の進行中に、NaCO20重量%水溶液を別途製造し、当該水溶液20gを前記反応物入りのフラスコに一度に滴加した。その後、温度を100℃に上げて1日間縮合反応を行った。縮合反応の行われた混合物は、水とトルエンの層分離精製を2回行い、pHが中性であることを確認した後、トルエン層を分離して真空減圧でトルエンを全て除去することにより、シルセスキオキサン樹脂を得た。
[比較製造例2]
【0059】
3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート(3-(Trichlorosilyl)propyl methacrylate)を209.29g(0.8mol)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3-Glycidoxypropyl trimethoxysilane)を23.63g(0.1mol)、及び(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-トリメトキシシラン((Tridecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrooctyl)-1-Trimethoxysilanae)を46.83g(0.1mol)で使用した以外は、比較製造例1と同様にしてシルセスキオキサン樹脂を得た。
【0060】
下記表1は、前記製造例及び比較製造例によって得られた樹脂のF-アルキル(含フッ素有機基)の炭素数、前記化学式4による(n+k)/mの比率、前記化学式4によるR中のF-アルキル比率(モル%)を示したものである。
【0061】
【表1】
【0062】
[実施例:シルセスキオキサン樹脂を含む組成物の製造]
[実施例1]
前記製造例1で得られたシルセスキオキサン樹脂2.0gをフッ素系溶媒(3M社製のFC-3283)に溶かし、シルセスキオキサン樹脂2.0重量%を含む組成物100gを製造した。前記組成物100重量部に対して、フッ素系シラン(DAIKIN社製のOPTOOL UD509)0.1重量部及びラジカル熱開始剤(Wako社製のV65)0.1重量部を、前記組成物100gに添加し、10分間撹拌して撥水コーティング組成物を製造した。
【0063】
[実施例2~実施例5]
製造例2~5で得られたシルセスキオキサン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0064】
[実施例6]
製造例6で得られたシルセスキオキサン樹脂を使用し、ラジカル熱開始剤(Wako社製のV65)を0.2重量部使用した以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0065】
[実施例7]
製造例7で得られたシルセスキオキサン樹脂を使用し、ラジカル熱開始剤(Wako社製のV65)を0.02重量部使用した以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0066】
[実施例8]
製造例8で得られたシルセスキオキサン樹脂を使用し、ラジカル熱開始剤(Wako社製のV65)を0.15重量部使用した以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0067】
[実施例9]
製造例9で得られたシルセスキオキサン樹脂を使用し、ラジカル熱開始剤(Wako社製のV65)を0.05重量部使用した以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0068】
[実施例10]
溶媒としてフッ素系溶媒(3M社製のFC-3283)とメチルエチルケトン(Methyl ethyl ketone)が重量%を基準に7:3の比率で混合された混合溶媒を使用した以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0069】
[実施例11]
溶媒としてメチルエチルケトン(Methyl ethyl ketone)を使用した以外は、実施例6と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0070】
[比較例1]
比較製造例1で得られたシルセスキオキサン樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0071】
[比較例2]
比較製造例2で得られたシルセスキオキサン樹脂を使用し、ラジカル熱開始剤(Wako社製のV65)を0.4重量部使用した以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0072】
[比較例3]
本発明のシルセスキオキサン樹脂の代わりに、下記化学式で表される市販のシルセスキオキサン化合物[Hybrid plastics社製のFL0578(Trifluoropropyl POSS Cage Mixture)]を使用した以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0073】
[化学式a]
【0074】
[比較例4]
本発明のシルセスキオキサン樹脂の代わりに、下記化学式で表されるシロキサン系化合物(Trifluoropropylmethylsiloxane)を使用した以外は、実施例1と同様にして撥水コーティング組成物を製造した。
【0075】
[化学式b]
【0076】
[実験例:シルセスキオキサン樹脂を含む硬化物の評価]
LCD-glass(SM-TECH社製、75×75×0.5)基材に、前記実施例及び比較例で製造された組成物を塗布し、UV硬化(A-line 1J)及び150℃で30分間硬化させた後、透過率、Haze、屈折率、耐スクラッチ、消しゴム耐摩耗テスト及び消しゴム耐化学テストの評価を行い、その結果を下記表2に示した。
【0077】
・透過率、Haze:ISO 14782に基づいて、COH-400(日本電色社製)を用いて測定した。サンプル当たり5回ずつ測定して平均値を記載した。
・屈折率:プリズムカプラー(Prism coupler)を用いて測定した。サンプルあたり5回ずつ測定して平均値を記載した。
・耐スクラッチ:JIS K5600-5-9に基づいて、#0000のスチールウール(steel wool)を用いて1kgfの荷重で行った。このとき、往復回数は、過酷条件である10,000回を行い、光学顕微鏡でスクラッチ有/無を確認して、スクラッチ有/無をO/Xで表した。
・消しゴム耐摩耗性テスト:KS B ISO 9211-4に基づいて行った。このとき、消しゴムは、耐摩耗性テスト専用消しゴムを使用し、1kgfの荷重で往復5,000回行い、テスト前、後の基材表面の接触角値を測定した。
・消しゴム耐化学テスト:消しゴムは、耐摩耗性テスト専用消しゴムを使用し、1kgfの荷重で往復10,000回行った。このとき、消しゴムとサンプルとの間にエタノールを滴加し、テスト中にエタノールが乾燥しないようにした。テスト前、後の基材表面の接触角値を測定した。
【0078】
【表2】

*参考例1:組成物がコーティングされる前のLCD-glassの評価結果
【0079】
前記表2に示すように、本発明の実施例の場合、透過率94.00以上、Haze0.5以下、屈折率1.40以下であることが分かった。また、スクラッチテストにおいてもスクラッチが発生せず、消しゴム耐摩耗及び消しゴム耐化学テスト後は、接触角が95°以上であり、テスト前と比較したときに接触角の変化が小さいため、耐摩耗性及び耐化学性にも優れていることが分かる。
(化学式1~3の構造単位比率による効果)
前記化学式1~3の構造単位比率を上述したように(n+k)/m値で表して実施例1~5の値を表すと、下記表3の通りである。
【0080】
【表3】
【0081】
前記表2及び表3を参照すると、実施例2、4に比べて実施例1の透過率及び耐摩耗後の接触角が高い数値であり、前記(n+k)/m値が高くなるほど透過率及び耐摩耗性にさらに優れる。しかし、実施例5と実施例3の耐化学テスト後の接触角が実施例1に比べて低い数値を示し、前記(n+k)/m値が30を超えながら耐化学性が低下する現象が現れる。よって、透過率、消しゴム耐摩耗性及び耐化学性を全て考慮すると、実施例の中でも、前記(n+k)/m値が10~30である実施例1が最も優れた効果を示す。
(化学式4の構造における全体Rの含フッ素有機基の比率による効果)
実施例1及び実施例6~9を、前記化学式4の構造における全体Rの含フッ素有機基のモル比を基準にして下記表4に示した。
【0082】
【表4】
【0083】
前記表2及び表4を参照すると、実施例6、8に比べて実施例1の透過率が高く、前記含フッ素有機基のモル比が増加するほど透過性に優れる。しかし、実施例7、9に比べて実施例1の消しゴム耐摩耗及び消しゴム耐化学テスト接触角が低く、前記含フッ素有機基のモル比が特定のモル比以上である場合、耐摩耗性及び耐化学性が低下する現象が現れる。よって、透過性、耐摩耗性及び耐化学性を全て考慮すると、前記Rの含フッ素有機基のモル比(mol%)が65~85mol%である実施例1が最も優れた効果を示す。
(フッ素系溶媒の使用による効果)
前記溶媒中のフッ素系溶媒の重量%を基準に実施例1及び実施例10~11の値を下記表5に示した。
【0084】
【表5】
【0085】
前記表2及び表5を参照すると、溶媒中のフッ素系溶媒を80重量%未満で含む実施例10に比べて実施例1が全ての性能において優れ、フッ素系溶媒を含まない実施例11(合成例6のシルセスキオキサン樹脂を使用)に比べてフッ素系溶媒のみを使用する実施例6が全ての性能において優れる。これは、フッ素系溶媒の含有量が高いほど全般的な性能が向上することを示す。
【0086】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱することなく、様々な修正及び変形が可能であるのは、当技術分野分野における通常の知識を有する者には自明であろう。
【国際調査報告】